第1巻 第116話 アオエイ
楽の背後には、青色の星の光を纏った冬吾がいた。
楽 「と…冬吾………お前、星神だったのか!?」
レオン 「間違い無いよ楽。彼から流れ出てるのは、間違い無く水星の光だ。」
楽 「あれ?でも俺、この大学に入ったらすぐに冬吾と知り合ったけど、今まで星の光の気配なんて、一度も感じた事ねーぞ!?」
冬吾 「ん?何だよ楽、お前星神になってもう半年近いのに、まだ消の札(ショウノフダ)も知らねーのか?」
楽 「は?消の札(ショウノフダ)?」
冬吾 「どうりで、太陽の光をいっつもダダ漏れにしてる訳だぜ………そんなんだから、星神だってすぐバレんだよ。」
楽 「なあ冬吾、その札は一体………」
木星ワーム 「キュロロッ!!」
楽・冬吾 「!!」
楽と冬吾が話している内に、冬吾の星の光のシャワーを浴びた木星ミミズ達が再び、元気を取り戻し出した。
ウズウズ ワラワラ
木星ワーム 「キュロォッ!」
楽 「な!?コイツら………一つになりやがった!」
木星ワーム達は一つに集まり、全長5〜6m(メートル)はある巨大なミミズとなった。
纏っている星の光の量も、先程の1匹の数十倍はある。
冬吾 「楽、お前の星獣のレオンは、木星属性の相手には相性が悪い。
あのパピヨンコクーンのオバさんと戦った時も双神が来るまでは苦戦してただろ?」
楽 「な!?お前、あの戦いも見てたのかよ?」
冬吾 「まあそういう事だから、ココは俺に任せてみてよ。」
木星ワーム 「キュロォーー!!」
合体した巨大木星ワームは、楽達めがけて襲い掛かって来た。
冬吾 「来たな………」
スッ
冬吾は水色で中心に鱏(エイ)の紋章が描かれた星匣をポケットから取り出した。
冬吾 「水星流鱏(すいせいりゅうえい) クリア」
シュンッ
クリア 「ふーー久々だね冬吾、僕を召喚するの。
前に何度か起きたこの大学での星獣や星力犯罪(せいりょくはんざい)は、そこの一条って子に任せっきりだったからねぇー。」
冬吾が召喚の言霊(ことだま)を唱えると、星匣から青い光を纏った鱏(エイ)が出て来た。
空を飛んでいる。
楽 「冬吾、そいつがお前の契約星獣(けいやくせいじゅう)か?」
冬吾 「ああ、水星エイのクリアだ。」
木星ワーム 「キュロォッ!」
木星ワームが、自らの尾を鞭(ムチ)の様にしならせて、冬吾に振りかぶって来た
冬吾 「さてと………」
スッ カシャンッ
冬吾は自らの星匣に星札を刺した
冬吾の星匣 「槍の札(ヤリノフダ)」
スッ ヒュンッ
冬吾の右腕に、流れる水がそのまま棒状の形になった様な水星の光の槍が現れた
冬吾 「たぁっ!」
木星ワーム 「キュロォッ!」
冬吾の槍で尻尾を刺された巨大木星ワームは、槍の先端が軽く触れただけなのにたじろぎ、また再び木星の光を弱めてしまった。
木星ミミズ 「キュロォ………」
楽 「な…なんであんなに簡単に相手の光を消せるんだ?
軽く刃先が当たっただけなのに………」
冬吾 「そりゃそうだぜ。
水星の光の特性は、「鎮静」。」
楽 「鎮静?」
冬吾 「そう。11属性で唯一、流れる水の形をした水星の星の光には、他の属性の星の光やその元となっている感情を鎮める作用がある。
「快楽」の感情を元にしている木星の光に対しては、特に効果テキメンって事さ。」
楽 「そんな作用が………」
巨大木星ワーム 「キュロォ………」
尾の星の光を弱められた木星ワームは、上半身だけで冬吾と楽を睨み返して来た。
冬吾 「さーて、俺はこの後色々と楽という話したい事があるから、悪いけどお前の相手はこれで終わりにさせて貰うよ。」
スッ カシャンッ
冬吾の星匣 「終の札(ツイノフダ)」
クリア 「さーて、行くよ冬吾!」
冬吾 「おうよ!」
シュンッ
終の札(ツイノフダ)を星匣の発動所に刺されたクリアは冬吾の背後に飛んで周り、ブーメランの様にUターンして来て、冬吾の頭の上辺りにまで戻って来た。
ガジッ
冬吾は自分の頭の上まで来たクリアの足を掴んで、そのままクリアと共に空を飛び、
巨大木星ワームの方に向かって行った
巨大木星ワーム 「キュロォッ!」
ドカァッンッ
飛んで来たクリアと冬吾に体当たりされた木星ワームは粉々になり、それぞれの破片が纏っていた木星の光も完全に消えた。
冬吾 「俺とクリアの全ての水星の光を乗せた体当たりだ。
野良星獣じゃあ、耐えられもしねーだろ?」
ボウッ
木星ワームの破片から、星の光のエネルギーが現れた
クリア 「さて、エネルギーを貰いますよ。」
シュンッ
クリアは星化した木星ミミズの星の光のエネルギーを吸収した。
楽 「ス…スゲェ………自分と相手の相性をちゃんと考えて、有効な攻撃を出してる………」
第116話 完
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