第1巻 第240話 ミセダシ
2017年10月27(金) 16:00
佐張大学(さわりだいがく)
弥柳 「よーし、これで俺たちのケーキ屋の屋台は大体完成だ。」
小咲 「うん。お疲れ様、弥柳くん。」
小咲と蓮は、昨日で最後のメニューのチーズケーキのレシピが完成したので、
今日は講義後に佐張大学(さわりだいがく)に残って、大学祭で実際に出店するケーキ屋の屋台を、16号館の前に作って準備していた。
小咲 「でも、なんだか私の趣味で女の子っぽい屋台になっちゃって………ごめんなさい。」
弥柳 「いや、いいんだよ。
俺の頼みでケーキ屋を手伝って貰って、
練習にまで付き合わせちゃったからね。
店の外観くらいは小野寺さんに任せるよ。」
小咲の言う通り、小咲と蓮の作ったケーキ屋の屋台は、
標準的な4本の屋台用の棒にピンク色の布が被せてあり、
その布には「みななぎ おのでら ケーキ屋」と、黄色の線の中に赤い字の文字で店名(てんめい)が描かれている。
そしてその屋台の商品を置く場所には、
それぞれ「ショートケーキ」、「チョコレートケーキ」、「チーズケーキ」、
と名前と、300円という値段が書かれた値札が置いてある。
小咲 「それにしても………「みななぎ おのでら ケーキ屋」、なんて、
そのまんまの名前だよね………。」
弥柳 「うるせーな………
俺、菓子以外のネーミングセンスは全然ねーんだよ。」
アハハ………
小咲 (あれ?
そう言えば私、男の子にこんなからかうような事言うの、初めてかも………。)
小咲 (一条君や舞子君にはどこか他人行儀(たにんぎょうぎ)になっちゃって、多分言えないし、
そりゃるりちゃんには言えるだろうけど………。)
弥柳 (そう言えば俺、菓子作りの為とは言え、1人の女の子とこんな一つの事に熱中したね、初めてかもしれないな………。)
小咲 「……………。」
弥柳 「……………。」
2人の間で、数秒間の沈黙が流れた。
蓮 「と、とにかく小野寺さん。」
小咲 「は、はいっ!」
小咲は少し、慌てた様子で答えた。
蓮 「店もついに完成したし、
ここまで付き合ってくれてありがとな。
大学祭でのケーキ屋、2人で頑張ろうな!」
小咲 「は、はい!
よろしくお願いします!」
第1巻 第240話 完
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