第1巻 第6話 オカエリ
凡矢理市内 沖縄料理店 残波 凡矢理店
PM:18:00 桐崎千棘、鶫 誠士郎の帰国記念パーティー及び凡矢理高校同窓会 開幕
ワイワイガヤガヤ
鈴木 「あ!桐崎さんだー」
森谷 「ホントに日本に帰ってきてたんだー。」
千棘 「みんな久しぶりー!元気だったー?」
安達 「寺ちゃんから聞いたけど、外国でファッションデザイナーの修行してたんだって?どんなんだったの?」
千棘 「ああ、色んな国を回ったよー。
例えばねぇ…………」
男子の集まりの方の席
楽 「………………………」
集 「よー、楽〜〜〜。桐崎さんと誠士郎ちゃん、大人気だね〜」
楽 「ん?ああ、さっきから話したいのに中々こっちに来られねーんだ。」
千棘 「楽ーーー!」
集 「お、来たぞー」
千棘 「お待たせ〜楽ーー!」
千棘は楽の隣の席の座布団に座った
楽 「おお、千棘やっと来れたのか。」
千棘 「みんなからたくさん質問されてね〜〜,あ、そうだ。楽、あんたお酒飲める?」
楽 「え?高校卒業してから少しは飲み出したけど……まだ法的に飲める歳ではねーし」
千棘 「私、お酌してあげるよ!日本に帰って来たら、楽にやってあげたかったんだー。」
楽 「ああ、いいぜ。ほれ注いでくれ」
千棘は楽の手のコップに、薄緑色の白ワインをお酌した
トクトクトク………
千棘 「はい、白ワイン美味しいよ〜,一緒に飲もー」
楽 「ああ、ありがと。ん?ゲッ、そういやあお前大丈夫なのか?お前、お酒にめっちゃ弱かった筈じゃあ………」
千棘 「大丈夫よ、向こうで大分飲むようになって大分強くなったから。」
楽 「お前、ファッションの勉強中にそんな事もしてたのかよ………」
千棘 「何よ、いーじゃない。これも大人の女になる道の一つよ。」
よく見ると千棘の顔も多少赤くなっていた。
しかし、高1・2の時の正月と違い、ちゃんと意識はあった
楽 「はいはい……」
グィッ
楽は白ワインを口に含んだ
トンッ
千棘 「ねえ楽………」
楽 「ん?」
千棘は楽の隣の席の座布団に腰を落とし、先程までと雰囲気を少し変えて話す
千棘 「私がアメリカに行ってる間、皆んなとはどうだったの?」
楽 「え?何だよ急に………」
千棘 「ううん、少し気になって。
私、あっちにいた間はあんた以外とは全然連絡しなかったから。」
楽 「どうって、別にフツーだったけど……」
千棘 「そっかあ小咲ちゃんとも、別に普通だったの?」
楽 「は?小野寺?何で………」
楽 (ハッ)
楽 (そうか、あの俺と千棘がお互いの想いが通じた日、あの後小野寺に抱きしめられてペンダント埋めてそれっきりだったんだ)
楽 (1年近く外国にいたコイツからしたら、気にして当然だよな)
楽 「………………………」
千棘 「楽?」
楽 「小野寺とは、あの後は本当にただの友達になったよ。」
千棘 「ホント?」
楽 「ああ、もちろん一緒に受験勉強したりしたけど、そこには集や宮本もいたし、付き合い出したあの2人みたいに、2人っきりには殆どならなかった。」
千棘 「……………」
楽 「むしろ、小野寺の方からそんな関係にしてくれたんだぜ。」
千棘 「え?」
楽 「俺が教室で勉強してる時、小野寺は俺と2人で話さないようにそのまま去ってくれたんだ。
多分、自分でもう2人になっちゃダメだって思ってたんだろうな………
俺が小野寺じゃなくてお前を選んだから。」
千棘 「小咲ちゃんがそんな事を……………」
楽 「ああ、俺はお前を選んだんだからな。
それでいいし、それが正しいと思うんだ。」
千棘 「そっかあ………」
……………………………………
2人の間に、十秒から十数秒の沈黙が流れた
千棘 「嬉しかったんだ………」
楽 「え?」
千棘 「5歳の時も、あんたと両想いで本物の十字の鍵を持って約束をしたのは小咲ちゃんだった、高校でも私と会う前から……いや、再会する前から両想いだったのは小咲ちゃんだった………そうでしょ?」
楽 「あ、いや………まあ、そうだな…」
千棘 「だからスッゴく嬉しかったんだぁ………あんたと小咲ちゃんが両想いだったのを知っちゃって、万里花みたいに諦めない事も、羽さんみたいに振られても我慢して今のままの関係を大事にする事もせずに逃げ出した私を………あんたは小咲ちゃんよりも、選んでくれた。
フラれるとばかり思って諦めてたのに………」
楽 「千棘……お前そこまで思い詰めてたのか………」
千棘 「だから、スッゴく嬉しかったし、楽に釣り合う人になる様にこの8ヶ月頑張ったんだ………ママみたいな生活にも耐えて…」
ギュッ
楽 (ドキッ)
千棘は左手で楽の右手を力弱く握り、頭を楽の右肩に置いた すがるように
千棘 「私、本当に楽の事大好きだから………、浮気しちゃヤダよ?………」
楽 「…………………」
楽 (そうだよな、俺はお前と一緒にいるのが小野寺と一緒にいる時の幸せや憧れよりも楽しかったから、お前を選んだんだ。
大事にしてやらなきゃ………)
トンっ
千棘 「んっ」
楽は千棘の頭に手を置き、ピンクのかかった綺麗な金髪を優しく撫でた
ナデナデ
楽 「俺も……千棘の事好きだよ。」
第6話 完
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