第1巻 第183話 ゲーセン
2017年10月12日(木) PM:14:00
その日、楽は講義が無く、
大学祭の準備も午前中だけだったので、
同じくLABが今日は午前中だけで終わった千棘と、ゲームセンターにデートに来ていた。
千棘 「何だか、ゲームセンターでデートなんて久々ねえ。」
楽 「そうだな。
高校1〜2年の時は、デートネタが尽きたらすぐにここに来てたのにな。」
千棘 「そうだよね〜〜。
高1の時、色んなゲームで勝負して、勝ち越した方がジュースを奢って貰えるって勝負をあんたとして、
最後のゲームのパンチングマシーンで、
私がゲームの機械を壊しちゃって、
店員さんから記念品を貰ったっけ。」
楽 「ああ、あったなそんな事も(笑)。」
ハハハ………
千棘 「私、あの後、「勝負に勝って試合に負けた」感じになって、ここのゲーセンにしばらく来れなかったのよね。
あ!でも、あれから大分時間も経ったし、
今のあたしは星体技(ほしたいぎ)も使える様になったし、またパンチングマシーン、やってみたいかも。」
楽 「やめとけ、やめとけ!
お前は腕力だけですら、16歳でパンチングマシーンの鉄製の支柱をへし折ったんだぞ!?
19になって星体技(ほしたいぎ)まで覚えたお前のパンチなんか喰らったら、
今度はマシーン全体が木っ端微塵(木っ端微塵)になるぞ!」
千棘 「アハハ………冗談よ。」
楽 「で、今日はどれからやる?」
千棘 「そうねえ………あ!楽、アレなんかどう?」
楽 「ん?クレーンゲーム?」
千棘 「あのウサギのヌイグルミ、可愛くない?
私、あれ欲しー!」
楽 「なるほど。よーし、そういう事なら………」
楽、1ゲーム目
ウィーン ガシャンッ ポロッ
千棘 「あ!ウサギちゃん、落ちちゃったじゃ無い!」
楽 「まあ、待てよ千棘。
えーっと、今のヌイグルミの落ちた角度から、このアームの曲がり具合は………」
ゴニョゴニョ
千棘 「ん?」
楽、2ゲーム目
楽 「よいしょっと!」
ガシャンッ ウィーン ポロッ
楽は2ゲーム目で、いとも容易く、千棘の欲しがっていたウサギのヌイグルミを取った。
千棘 「すごーい!
何で?1回目は掴んでもすぐに、落としちゃってたのに!?」
楽 「フフ………1回目はこのゲームの機械のアームの先が曲がっている角度を確かめる為のテストプレイだ。
俺に取っては、一回あれば十分だぜ!」
千棘 「あんたって、スゴ!
やっぱり、小手先だけは器用なもやし君ねぇ。」
楽 「何だと?」
千棘 「アハハ………冗談よ、冗談。」
楽 「ほれ。お前が欲しがってた、ウサギのヌイグルミだ。」
スッ
楽は景品のウサギのヌイグルミを、千棘に差し出した。
千棘 「わぁ!近くで見ると、ますます可愛いーー!」
楽 「気に入ってくれたか?」
千棘 「うん!ありがと、楽!」
ニコッ
ドキッ
千棘の礼の言葉と笑顔に、楽はドキッとした。
千棘 「で、次はどのゲームやるの?」
楽 「そうだな………あ!
そうだ千棘、アレなんかどうだ?」
スッ
千棘 「え?パンチングマシーン?」
楽が右手の人差し指で刺した先にあったのは、パンチングマシーンだった。
千棘 「でもアレ、私がやるとマシーンが壊れちゃうって、さっき言ったばかりじゃ無い?」
楽 「いや、お前じゃ無くて、俺がやるんだ。」
千棘 「え?あんたが?」
楽 「ほら、俺も蒼也に戦闘と星神のトレーニングを受け始めて、もう半年以上経っただろ?
俺のパンチ力がどんだけ上がったのか、
ちょっと試してみたくなったんだ。」
千棘 「なるほどね………
いいんじゃない?やってみなさいよ!」
楽 「おうよ。」
スッ
楽はパンチングマシーンの前に立ち、
ゲームの料金の100円をゲーム機のコイン入れに入れて、グローブを着けた。
千棘 「そういえば楽、あんたの今までのこのパンチングマシーンの自己ベストって、何kg(キロ)だっけ?」
楽 「ああ、確か31kg(キロ)だったな。」
千棘 「ふーん。
で、男の子の平均記録って、何kg(キロ)?」
楽 「よ…40kg(キロ)。」
千棘 「ぷっ、やっぱりあんたって、
もやしよね。」
楽 「うるせーー、俺だって半年間蒼也のトレーニングメニューをこなして、耐えて来たんだ。
見てろよ千棘……………てやっ!」
バガァンッ
楽はパンチングマシーンを、思いっ切り殴った。
ピーー
パンチングマシーン 「55kg(キログラム)です。」
楽 「お!自己ベストが24kg(キロ)も上がった!」
千棘 「すごーい!やったわね、楽!」
店員A 「お!お客さん、凄いねー。
男性の平均値を15kg(キロ)もオーバーしたよ!」
楽 「いえいえ、そんな………」
千棘 「ふふっ、なんか嬉しいな。」
楽 「え?」
千棘 「ほら、私が日本に戻って来た日に言ったでしょ?
「あんたが強くなって、敵対するマフィアから私を守ってくれたら、私、惚れ直しちゃう!」って………
あんたはこの半年、蒼也くんの指導にも耐えて、少しずつ強くなって行って、モヤシだったあんたが、少しずつ立派な男の子になって行く………
私、それを見てると嬉しいわ!」
ニコッ
ドキッ
楽 「そ…そうか。」
楽はまた、ドキッとした。
楽 「なあ千棘、次はどこに行く?」
千棘 「そうねぇ………あ、そうだ!
楽、あんた覚えてる?
高2の終わりに行った、私があんたを元気付ける為のデート!」
楽 「ああ、もちろん覚えてるぜ。」
楽 (なんせ、あのデートで俺は、
「親友」だと思ってたお前の事を、
「好きな女の子」だと、本当の認識が分かったんだからな。)
千棘 「今からあのデートで行った場所に、
もう一度行ってみない?」
楽 「え?」
第1巻 183話 完
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