2019-05-12 04:54:13 更新

2017年10月18日(水) PM:15:00


オバケ屋敷をお姫様抱っこで脱出した楽と千棘は、次のアトラクションに向かっていた。


千棘 「はぁ〜〜、恥ずかしかった〜〜。」


楽 「俺だって、恥ずかしかったんだよ!」


千棘 「だったら、もっと別の方法を考えなさいよ、

女の子をあんな公衆の面前でお姫様抱っこしたりして、

このセクハラもやし!」


楽 「うぐっ!」


千棘 「でも………ありがとう、楽。

お陰であんまり怖くなかったわ。」


カァァ………


千棘は顔を赤らめて礼を言った。


楽 「お、おう………。」


千棘 (あんたに、いきなりお姫様抱っこされて、オバケや暗さの怖さなんてすっかりフッ飛んじゃったからね………。)


楽 「で、次はどこ行くよ?」


千棘 「そーねぇ、

もうお昼の3時だし、そろそろ次のアトラクションで最後にしないと。」


楽 「あ!

そうだ千棘、アレなんてどうだ?」


スッ


千棘 「え?」


楽が指差した先にあったのは、観覧車だった。


千棘 「観覧車かぁ………

うん、いいかも!」


楽 「2人っきりで観覧車に乗るなんて、

まさに恋人同士っぽいだろ?」


千棘 「そうね!

さあ楽、行きましょ!」


タタッ


楽と千棘は観覧車の乗り場に向かった。


店員F 「はーい。

お二人様で、1周600円になりまーす。


カチャ


楽と千棘は、14番の観覧車に乗った。


ウィーン


観覧車は上がりだした。


千棘 「わーー。

楽、上がりだしたよ。」


楽 「おう。

お前、高い所は大丈夫だったか?」


千棘 「大丈夫に決まってるじゃ無い!

むしろ、高い所なんて私にとっては楽勝よ!」


楽 「そうだお前、

星神になる前から、屋根の上を猿みたいに自由自在に走り回れる女だったよな、

鶫(つぐみ)やポーラみたいな訓練も積んで無いのにな。」


千棘 「な、なによ!

誰が猿よ!」


楽 「わりー、わりー。

確かに、暗いとこ怖い、狭いとこ怖い、

雷も怖いで、更に高い所まで怖かったら、

お前はどんだけ弱点があるのかって話だよな。」


千棘 「まったく………私はそんな、弱点だらけの女じゃ無いわよ。」



ウィーン ガシャン


そして、観覧笹はどんどん上に上がり、

全体の1/4(4分の1)程まで来ました。


千棘 「わーー。

見てよ楽、私達の町が見えるよ!」


楽 「まあ、この遊園地は凡矢理市内にあるんだから、むしろ当然だよな。」


楽 「アレ、あんたの家じゃ無い?」


スッ


千棘が指差した先にあったのは、

庭が大分大きい和風の屋敷だった。


楽 「ああ、ホントだな。」


千棘 「あそこは、私の家だ!」


次に千棘が目線を移した先にあるあったのは、

楽の家よりも更に1回りも2回りも大きい、

西洋風の屋敷だった。


楽 「あそこなんか、橘が住んでるマンションじゃねーか?

あいつ、あんな立派なマンションの最上階のワンフロアを全部借りてるんだぜ?

金持ちだよなーー、

って、俺が言えた立場じゃねーけど。」


千棘 「それにあそこは、小咲ちゃんの家の和菓子屋さんだぁ!」


アハハ………。


千棘 「………ねえ楽、

ホントに色々あったよね。」


楽 「え?」


千棘 「こうやって、高い所から凡矢理市を見下ろすだけで、

私とあんたが出会ってからみんなにも出会って出来た思い出の場所や、皆んなの家が見えて、

色んな思い出が蘇ってくる………

私とあんたは、高校の時はただのニセモノの恋人だったのに、

本当に付き合いだしてまだ半年目で、

これからも色々ある筈なのに、

もうこんなにたくさんの思い出がある………

そう考えると、とっても嬉しいな………。」


楽 「ああ、そうだな。

高1の時に、お前と出会ってからというもの、

ホントに色々あったよな。」


千棘 「あ!そうだ楽、

あんた今日は、ペンダント持って来てる?」


楽 「ん?

ああ、持って来てるぜ。」


スッ


楽は千棘との約束の為に用意した、

新しいオレンジ色のペンダントを出して千棘に見せた。


千棘 「今ここで、錠を開けて今までの思い出を見てみよーよ!」


楽 「え?

なんで?」


千棘 「いいから………ほら!」


スッ


千棘は、自分も楽の錠と対になる、

オレンジ色の鍵(かぎ)を出した。


カチャ


千棘は鍵を開けた。


ボウッ


楽 「おーー。」


楽のペンダントの中から、

楽と千棘が、星の光に変えてペンダントに貯めておいた自分達のこれまでの思い出が、

オレンジと銀色の光になって、出て来た。


千棘 「見てよ楽!

この私が日本に戻って来てあんたと再会した時の思い出、あの河原(かわら)じゃ無い?」


楽 「お!ホントだ………。」


千棘が指差したのは確かに、

約6ヶ月前、千棘が日本に戻って来て楽と再会した河原だった。


楽 「こっちの縁日の思い出、

あの神社じゃねーか?」


千棘 「あ!ホントだ!

こっちの海での思い出は、今年行った海水浴のだ!

あの海よ!

両方とも、あんたと私がホンモノの恋人になってから始めての縁日と海水浴だったわよね。」


楽 「ああ、そうだったな………。」


アハハ………。


楽と千棘が、自分達がペンダントに貯めた星の光に映る思い出を見て振り返り語り合ってる間に、

観覧車はすでに全体の半分近くまで上がり、

てっぺんの1番高い場所近くまで来ていた。


千棘 「………やっぱり、色々あったわよね。」


楽 「そうだな………。」


ドキドキ………。


楽と千棘は、お互いにドキドキしていた。


楽 (あーもう!なぜかドキドキが止まらねー………

千棘と2人っきりで、観覧車に乗ってるってシチュエーションだからか………?)


千棘 「………ねえ楽、」


楽 「ん?」


千棘 「キスしよっか。」


楽 ブブー!


千棘 「ど、どうしたのよいきなり?」


楽 「いきなりはそっちだろ?

別にキスくらいいいけど………

なんで今?」


千棘 「だって、

今までの思い出を見てたら、

これからももっと、あんたや皆んなと色んな思い出を作りたいって思ったし、

それに………。」


楽 「それに?」


千棘 「こんな観覧車の1番高い場所でキスだなんて、なんだかムードが出て、

素敵じゃない?」


楽 「………そうだな。」


千棘 「いいわよ。

久し振りに私からするから、

ほら、目ぇ閉じて。」


楽 「おう。」


スッ


楽は目を閉じた。


スッ


スッ


チュッ



観覧車の1番高い場所の、

2人が住む町、凡矢理市を一望できる

観覧車の中でキスをして、

楽と千棘の遊園地デートは幕を閉じました。


第1巻 第204話 完


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください