Aqours『収容違反っ!!』
補遺:
SCPとAqoursの愉快な仲間たちのお話をします
番外編です。
全てのSCiPの設定は、話の都合上ある程度の改変が施されています。
加えて、Aqoursの愉快な仲間たちも普段以上の性格になっています。
宜しくお願いします。
「yeeeeeeeeeh!!!!」
ダイヤ「鞠莉さん。うるさいですわよ」
鞠莉「oh〜 sorry!」
ダイヤ「まぁ、叫びたくなる気持ちは分かりますけれど」
果南「ここからなら、街の全景が観れるね」
千歌「ほぇ〜、凄いよ!これがシチリア島の街並みなんだねぇ!」
梨子「素敵……。とっても綺麗な外観ね」
花丸「お洒落だねぇ♪」
梨子「ねぇ♪」
ダイヤ「ふふ。此処はシチリア島にある、ラグーザと言う街なのだそうですわ」
曜「ラグーザ!なんかもう全部お洒落♪」
善子「……随分と南の方まで来ちゃったみたいだけど、時間大丈夫なの?」
鞠莉「No problem!もし飛行機に乗り遅れちゃっても、またウチに泊まればいいだけだから心配ないわよ」
梨子「い、いえ……私たち帰らなくちゃいけないんですけど」
果南「まぁまぁ、せっかくここまで来たんだし、観光を楽しもうよ」
曜「そうだね。こーんな綺麗な街並みなんだもん、もう少し先まで歩いてみようよ」
ルビィ「で、でもぉ……なんだか街中から離れちゃってる様な……」
花丸「因みに、ここってどの辺なの?」
曜「ダイヤさん。さっき停泊所から持ってきた観光マップって、まだ持ってます?」
ダイヤ「有りますわよ」
ダイヤ「う〜んと……あ、街中からちょっと北の方に来てしまったみたいですわ」
善子「通りで閑散としてきたワケね」
ダイヤ「ここは……ん?」チラッ
ダイヤ「──まぁ、あれを見て下さいまし」
千歌「え?」
千歌「……橋、ですね」
花丸「随分古い橋みたいずら」
曜「渡れるのかな?」
ダイヤ「……ふむ。あの橋、紀元前に造られた物の様です」
梨子「そ、それに載ってるんですか?」
ダイヤ「はい。何故か事細かに載っていますわ」
千歌「へぇ、そんなに有名な橋なんだぁ」
ダイヤ「ですがこの橋、2006年にラグーザ歴史協会と言うところが復元しているらしいので、見た目ほど脆くは無さそうですわね」
千歌「ほぇ〜」
曜「でもさ、2006年に復元したって言う割には、結構年季が入ってる様に見えるね」
梨子「復元って言っても、壊れた箇所を部分的に直しただけなんじゃないのかな?」
ダイヤ「そうですわねぇ……。この、趣きと言いますか、味の様なものは一朝一夕で出せる物では無いでしょうから」
果南「へぇ、歴史のある橋なんだねぇ」スッ
テクテクッ
果南「ふぅ〜ん。見た目の割に結構しっかりしてる橋だねぇ」テクテク
曜「──おぉ。なんだか今の果南ちゃん、映画のワンシーンに出てるみたいだよ?」
花丸「女優みたいずら〜」
果南「あはは、なんか照れるなぁ」テクテク
果南「……」ピクッ
ダイヤ「ふむふむ……この橋は紀元前253年に、ローマ共和国によって建造された物らしいですわ」
千歌「紀元前!……えっと、ACとDCだっけ?」
花丸「それは電気かバンドずら」
曜(バンド?)
梨子「BC((紀元前)Before Christ)とAD((紀元後)After Death)だよ」
果南「……」タッタッタ
ダイヤ「なるほど。ラグーザ内での戦闘に於いて、ローマ軍への支援物資を輸送する事を目的として造られた橋なのですね」
ルビィ「た、闘ってたの……?」
鞠莉(……正直、へぇ〜って感じ)
曜(まぁ、今はただの古い橋だよねぇ)
果南「……」ダッダッダッ
ダイヤ「そうですわねぇ。当時、このラグーザは北アフリカからの侵攻を受けていたらしく、イタリア南端にあるこの地域では、頻繁に争いがあった様ですわ」
花丸「昔は何処も戦争だらけなんだねぇ」
善子「ふふ。この地でラグナロクが繰り広げられていたのね」
千歌「戦争かぁ。……ん?」
果南「……」ダンッダンッダンッ
千歌「……そう言えば、」
ダイヤ「はい?」
千歌「その、ローマ共和国って言うとこは、なんて言うとこと闘ってたの?」
ダイヤ「えっと、ちょっと待って下さいね……あ、ありましたわ」
ダイヤ「──その国はですね、」
ダンッ
『"カルタゴ共和国"』
ダイヤ「──と、言う所らしいでs」
「なんて言ったっっ!!?!?」
ダイヤ「ヒィッ!!?」ビクッ
千歌「!?」
果南「……」
千歌「か、果南ちゃん……?」
果南「今、なんて言ったっ!!?」
ダイヤ「は……はいっ?」
梨子(あ、アレが噂のガ◯ナ立ち……)
果南「……許さないっ」
千歌「え?え??」
鞠莉「what's???」
果南「この……っ」
果南「砂漠から来た○ン○ス野郎っ!!アンタとアンタの親を○ァックしたあとブチ○すっ!!!」バッ!!!
鞠莉「か、果南!!?」
果南「よくも私の両親を……っ!!」グッ
果南「私の兄さんをっ!!!」ダッ!!!
……ダダダダダダッダッダッダッダッ!!!!
ダイヤ「ひいぃぃぃっ!!?どど、どうしたんですのぉおおおお!!?!?」
曜(に、兄さん!?果南ちゃん一人っ子だったよね!?)
ルビィ「ピギャアアアアアアッッ!!!!」
果南「黒澤ダイヤぁああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」ダダダダッ
千歌「だだ、ダイヤさんっ!!果南ちゃんに何かしたの!?」
ダイヤ「なぁんにもしてませんわぁああああああああああっっっ!!!!!!!」
鞠莉「果南っ!!?果南ってばっ!!!」
果南「うぉああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」ダダダダッ
梨子「く、くるっ!!!くるくるくるうぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!!!!!!」
花丸「よよ、善子ちゃん!!頑張って止めるずらぁあああっ!!!!」
善子「わたしマジカル!!!あれフィジカルッ!!!!」
果南「このAqoursの面汚しがぁああああああっ!!!アンタが出るのはブスライブがお似合いなんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」ダダダダッ
ダイヤ「ひいぃぃぃぃぃッッッ!!!!!」
果南「あああああああああああああああああぁああああああっ!!!」ダダダダッ
果南「ああああぁぁぁ…………」ダッダッダッ
果南「…………」トットッ
果南「……」テクテク
ダイヤ「……ヒッ……か、果南……さん?」
果南「???」
ダイヤ「…………ぇ」
───
─
「いやぁ〜ごめんごめん」
果南「あははは。」
鞠莉「……果南、さっきの貴方は一体なんだったの?」
ダイヤ「ほ、ホントですわよ!私がどれだけ怖い思いをしたか……っ」
果南「う〜ん……私も良くは覚えてないんだけど、」
果南「橋の向こう側に歩いて行くに連れて、なんだか段々とイライラして来てね」
果南「それで、向こう側でダイヤの声を聞いた瞬間──」
『あのコケシ女が私の両親と兄さんを殺したんだっ!!!』
ダイヤ「!!?」
果南「──としか、思えなくなっちゃったんだよ」
ダイヤ「こっ……こけ……っ!?」
曜「くっ……っw」
梨子「っwっっw」
鞠莉「ニヒッw……っw!」
果南「ホント、なんだったんだろうね」
「ね、ねぇみんな!」
果南「ん?」
千歌「今起こった事をさ、一回順序立てて思い出してみようよ!」
果南「おぉ、千歌にしては珍しく賢い事言うねぇ」
千歌「がるるるるるっ!」
果南「あはは、ごめんよ」
梨子「順序立てて……か」
曜「た、確か……果南ちゃんが橋の向こうまで行ったあと、何故か急に怒り出してコッチに全力疾走してきたんだよね?」
鞠莉「イェ〜ス。そして私たちが今いる側、つまり南に近づく度に段々と大人しくなって行ったわね」
花丸「つまり、橋の北側に着くとみんなイライラして、南側に来ると段々大人しくなるって事ずら?」
善子「……なるほど、橋の中間に別次元へと繋がる不可視の境界があって、そこを通過すると秘めたるカルマが表出する。と言う事ね」
花丸「Can you speak Japanese?」
善子「!?」
「ちょちょ!ちょっと待って!」
花丸「?」
梨子「みんな、海外なんて非日常の中にいるから、そう言う思考に陥り易くなるのは分かるけど……」
梨子「でも、常識的に考えて?普通そんな事あり得ないでしょ?」
果南「じゃあ、私に起きた"アレ"はなんだったの?」
梨子「た、多分……夢でもみたんですよ」
果南「それこそ有り得なくない?」
梨子「そ、それは……」
鞠莉「梨子」
梨子「へ?」
鞠莉「ファンタジーは実在する。覚えておきなさい」
梨子(……どいつもこいつも、)
曜「えっと、後は何か言ってたっけ?」
千歌「"砂漠から来たなんとかかんとか"って言ってなかった?」
ダイヤ「!?」
ルビィ「た、確か……まんk──」
「ルビィッッ!!!!!!」
ルビィ「!!?!?」
ダイヤ「……それ以上はいけません。」
ルビィ「お、おねぃちゃ……?」
千歌「まん?なに?」
曜「……」
千歌「ねぇねぇ、なんなの?」
梨子「いや……ちょっと……」
「千歌さん。ルビィ」
千歌・ルビィ『???』
ダイヤ「おいでなさい」
千歌「は、はい」
ルビィ「うん」
スッ
ダイヤ「いい子いい子ですわ」ナデナデ
千歌「???」
ルビィ「ふぇ……」ホワァ
鞠莉「oh!pure girl's」
果南「私、とんでもない事言ってたんだねぇ……自分で言っておいて恥ずかしくなって来たよ……っ///」
「じゃあ、もう一回検証するずら」スッ
果南「へ?」
善子「あ、アンタっ!」
花丸「まるがアッチまで行ってみるから、みんなでまるの様子を見てて欲しいな」
梨子「は、花丸ちゃん……危ないかも知れないんだよ?」
花丸「大丈夫。果南ちゃんだって何ともなかったんだし」
ルビィ「ぁ……ほ、本当に気を付けてね?」
花丸「心配ないずら〜」
花丸「それじゃあ行って来ま〜す♪」スッ
スタッ スタッ スタッ スタッ
曜「っ」
千歌「ど、ドキドキしてきた……っ」
花丸「〜♪」テクテクッ
ルビィ「はぅ……」
花丸「……?」テクテク
花丸「……」スタスタッ
善子「ず、ずら丸?どぉ?」
花丸「……」スタスタッ
タッ
花丸「……分かんない。」
花丸「けど、なんだか無性にイライラする」
善子「い、イライラ?」
花丸「うん。でも、何にイライラしてるのか全然分かんない」
花丸「……あと、ずら丸ってゆーな」
善子「ご、ごめん」
果南「そうそう。私の時もちょうどそんな感じだったよ」
曜「でも、あの時みたいに襲いかかって来る様な感じはまだ無いね」
花丸「……」シ-ン
ルビィ「はなまるちゃん……?」
善子(こ、こわっ)
鞠莉「う〜ん……もしかして、きっかけになる様な何かがあるんじゃないかしら?」
果南「あ、ひょっとして……」
鞠莉「ん?」
曜「なになに?」
果南「……善子。」
善子「んぇ?」
果南「……」ゴニョゴニョ
善子「……え、それ言えばいいの?」
果南「大っきい声でね?」
善子「あー・・・ゴホンッ!」
善子「ずっ、……花丸ーっ!!」
花丸「……」
善子『私はカルタゴから来ました!』
花丸「!!?!?!?」ブツッ
「ふぁああらぁあああああああぁあああああああぁああああああっっっ!!!!!!」
善子「ヒイィィィッ!!?!?」
花丸「ごろすっ!!ごろぉあすっっ!!!」
善子「うわっ!!うわぁああああああああああああああああっっっ!!!!」
花丸「厨二のぼっちオンナを八つ裂きにしたいっ!!私の妹を殺した劣悪堕天使擬きを粉々にして便所に散らかしたいっ!!!」
善子「ひいぃぃぃぃぃっ!!!ここっ、こっち来ないでぇええええええええええええええええっっ!!!!!!!!」
花丸「お前が生きてる意味がわかんないっ!!!お前が呼吸している意味がわかんないっ!!!お前がっ!!!お前がっ!!!お前がぁあああああぁぁあああっ!!!!!」ズダダダッ
善子「ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんなさぁああああああいっ!!!!」
花丸「お前っ!!!お前っ!おま……」ダッダッ
花丸「っ…………」タッタッ
善子「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごっ……ッッ……っ!」ビクンッ
花丸「……」テクテク
花丸「???」
善子「」ビクンッ ビクンッ
果南(あ、泡吹いて気絶してる……っ)
───
─
「いやぁ、ごめんねぇ」
花丸「えへへ」
善子「っ……っっ」
曜「よ、善子ちゃん。もう大丈夫だから」スッ
善子「いやぁ……怖いのもういやぁ……っ」ガタガタッ
曜(……やだちょっと、この善子ちゃんかわゆすギルティなんですけどっ///)ナデナデ
千歌「う〜ん。橋のあっち側に行くと怒って、こっちに戻って来ると大人しくなる……」
ダイヤ「千歌さん?」
千歌「……なるほどね」
梨子「な、何か分かったの!?」
鞠莉「oh!さすがは千歌っち!」
千歌「……」
果南「で、原因はなんなの?」
千歌「……」
花丸「……千歌ちゃん?」
千歌「……」
千歌「zzZ」
梨子「ふんっ!」スパンッ
千歌「みみっ!」ガクンッ
鞠莉「Wao!」
千歌「いったぁい……もう、梨子ちゃん!」
梨子「千歌ちゃんまでボケに回らないで。それでなくてもツッコミ役が足りないんだから」
善子「うゅぅ……」スリッ
曜「はふっ///」ナデナデ
果南「──ま、千歌じゃこんなもんか」
花丸「うむむ……多分だけど、」
果南「え?」
花丸「さっきまるは、橋のあっち側に行った時、確かにイライラはしてた」
花丸「でも、善子ちゃんからあの一言を言われるまでは、まだ理性は保ててたんだよ」
ダイヤ「あの言葉?」
ルビィ「???」
果南「あぁ。やっぱりアレだったんだ」
花丸「うん」
花丸・果南『"カルタゴ"』
ダイヤ「──あ、」
千歌「そう言えば、ダイヤさんも善子ちゃんもそれ言ってたね!」
梨子「つ、つまり、そのカルタゴって言葉を聞くと、みんなあんな風になっちゃうんですか?」
果南「多分ね。まだ確証は持てないけど」
花丸「でも、橋のあっち側に行かなければ何ともないんだから、そんなに心配する事はないと思うずら」
鞠莉「ん〜、これはもう一度検証が必要の様ねぇ」ニヤッ
ダイヤ「はぁ!?わ、私は絶対にやりませんわよ!もちろんルビィもですっ!!」
ルビィ「ピギィ……」
曜「わ、私は善子ちゃんを見てないと……」
善子「うぅ……っ」
果南「なら、ここはやっぱり言い出しっぺの鞠莉か、若しくは千歌じゃない?」
鞠莉「〜♪」
千歌「ぇえ!?わ、わたしも!?」
梨子「当たり前でしょ。なんだかんだ言って楽しんでたんだから」
果南「……梨子ちゃんもね、」
梨子「!?」
千歌「そ、そうだよ!ここは公平にジャンケンで決めようよ!」
梨子「はぁ!?な、なんで私まで……っ!」
鞠莉「それじゃあ〜、運命を賭けたジャンケン一本勝負!やるわよー!」
梨子「ちょ、ちょっとまっ──」
千歌「ジャンッ!!」
鞠莉「ケンッ!!」
梨子「──ッ!」
『ポンッ!!!』
梨子「〜っ」
果南「……あらま、」
花丸「あ〜……」
曜「こ、これは……」
ダイヤ「……」
ルビィ「っ」
千歌「あ、あはは……」チョキ
鞠莉「yes♪」チョキ
梨子「……」パ-
梨子「……」
「なんでぇぇえええぇええええええええええええええええっっ!!?!?!?」
───
─
梨子「うぅ……、ヤダなぁ……」
千歌「梨子ちゃーん!頑張れー!」
果南「負けちゃ駄目だよー!」
ダイヤ「良いですこと?理性を保つのです!邪念は下劣な思考を生みますわよ!」
曜「梨子ちゃん!目閉じて走ればすぐ終わるよー!」
よしこ「つみきー、おゆうぎー、ちゅっちゅちょーだぁーい」キャッキャ
ルビィ「あ、足元に気をつけてね?」
花丸「平常心ずら〜」
鞠莉「梨子!ハリアップよ!」
梨子(うぅ……好き勝手言ってる……)
梨子「じゃ、じゃあ……行ってきます……っ」
千歌「頑張れー!」
梨子「〜っ」テクテク
鞠莉「……始まったわね。」
千歌「り、梨子ちゃん大丈夫かなぁ」
果南「まぁ、言ってもイライラするだけだからねぇ」
花丸「強いて言えば、怒鳴り散らしながら全力疾走するから、凄く疲れるんだよねぇ」
果南「そぉ?私は平気だったけど」
花丸「みっ、……果南ちゃんが羨ましいずら〜」
果南(み?)
梨子(はあぁぁぁぁ……、なんでこんな事に……)テクテク
梨子(こんな事になるのなら、私だけ街中の観光でもしてたかったよ……)テクテク
梨子(うぅ……や、やっぱり私も果南さんや花丸ちゃんみたいになっちゃうのかなぁ……)テクテク
梨子(で、でも、今のとこは何ともない……かな)テクテク
梨子(うん。別にこれと言って──)テクテク
梨子「……」ピタッ
千歌「──え?梨子ちゃん止まっちゃったよ?」
曜「どうしたんだろ?」
果南「……来たのかな?」
花丸「たぶん」
ルビィ「花丸ちゃん?」
ダイヤ「来た?何が来たんですの?」
果南「まぁ、見てれば分かるよ」
梨子「……」
梨子(…………あれ、なんか……)
梨子(え、何これ……なんか……イライラする)
梨子(カルタゴ……?私のお母さんと、彼……彼?誰それ……?)ダッダッ
梨子(うぅ……あ、頭の中がごちゃごちゃして来た……)
梨子(あ、アイツら……アイツらがっ……あの砂漠から来た愚民どもが……っ、私の……)ダッダッ
梨子(私のお母さんと、彼を殺した──ッ)
ダイヤ「……梨子さん、立ち止まったまま動こうとしませんわね」
曜「なんだろう、具合でも悪くなったのかなぁ」
千歌「おーい!梨子ちゃ──」
「なんでよっ!!!!!」
千歌「!?」
梨子「どうして!!?なんでみんな、あんな奴らを平然と野放しにしておけるの!!?」
千歌「あ、あんな奴ら……?」
梨子「アイツらがっ!!あの土人どもが私達の暮らしを、ただ一方的に壊して行ったって言うのに……っ!」
曜「ね、ねぇ。なんか、今までと少し違くない?」
果南「う、うん……なんでだろ」
花丸「梨子ちゃん……」
梨子「私は……私はただお母さんと彼と、三人で平和に暮らしたかっただけなのにっ!!!」
梨子「アイツらは、砂漠から来たあの略奪者どもが……私の幸せを……全てを奪っていったっ!!!」
梨子「憎いっ……憎いっ!!!殺してやるっ!!必ず殺してやるっ!!!」
鞠莉「梨子!しっかりして!」
梨子「鞠莉さん!!お願い協力してっ!!!私はアイツらを殺さなくちゃいけないのっ!!!」
梨子「その為なら……っ、その為ならわたしっ!!どんな酷い手だって使ってみせるわ!!!」
果南「……止めた方がいいね。」
花丸「……」
千歌「り、梨子ちゃん!コッチに来て!」
梨子「みんなも分かるでしょ!?カルタゴの奴らがどれだけ酷いことをして来たか!!」
梨子「みんな消えたっ!!みんな消えてった!!!もう誰もいないっ!!全部アイツらのせいだっ!!!」
果南「ね、ねぇ!やっぱり例のあの言葉でこっちに呼ぶしかないじゃ……っ」
ダイヤ「で、でも!梨子さんあんなに怒って……いえ、怒り狂っているんですのよ!?」
ダイヤ「もし、コッチに来てもまだ、あの怒りが収まらなかったら……っ」
鞠莉「……最悪、誰かが大怪我する事になるかもね」
ルビィ「そ、そんなのダメだよ!!」
曜「果南ちゃん!私たち二人で抑えられないかな!?」
果南「……今の状態じゃ、何するか分かんないよ?それでも抑えられる自信ある?」
曜「そ、それは……」
千歌「……」
千歌「──梨子ちゃん!!」
果南「えっ?」
ダイヤ「千歌さん!?」
千歌『私はカルタゴ人だよっ!!』
梨子「ッッッ!!?!?!?」ブツッ
梨子「ぁあああああぁああああああぁぁあああああああっあああああああぁああぁあああああああぁあああぁあああああああぁあぁあああああああっっっっ!!!!!!!!!」
千歌「〜ッ」
鞠莉「ち、千歌っち!?どうして!?」
梨子「お"ま"え"ッッッ!!!!お"ま"え"だけはぁああああああああああっ!!!!!!お"ま"え"だけはあぁぁぁぁああああああああッッッ!!!!!!!!!」
ダイヤ「千歌さんっ!逃げて下さいっ!!」
千歌「大丈夫!私は大丈夫だからっ!!」
梨子「ぁあああああぁああああああぁぁあああああああっあああああああぁああぁあああああああぁあああぁあああああああぁあぁあああああああっっっっ!!!!!!!!!」
果南「は、橋の真ん中まで来たのに、全然収まらない!?」
鞠莉「梨子っ!!しっかりしなさいっ!!」
花丸「──ッ!」ザッ
千歌「ッ」バッ
花丸「ち、千歌ちゃん!?」
千歌「……」
梨子「ぁあああああぁああああああああぁああぁあああああああぁあああぁあああああ……」
曜「あっ、」
鞠莉「梨子……」
ルビィ「お、収まってきた……?」
梨子「ぁあああああ……っ、ぁああああああぁぁああぁぁぁ…………あぅ……っ……あぁっ……」ヨロ...ヨロ...
千歌「……梨子ちゃん、おいで」
梨子「ぁ……ぁ…………っ」ヨロ...ヨロ...
千歌「大丈夫。」
梨子「ハ……ぁ……た……ただ…………」
千歌「もう、大丈夫だから」
千歌「ちゃんと、受け止めるから」
梨子「わ……わたしはっ……ただ……」
梨子「……しあわせに……なり……た…………か……った………の………n……」フッ
ガクンッ
千歌「ッ」バッ
ギュッ
梨子「」
果南「梨子ちゃんっ!!」
花丸「っ」
ダイヤ「梨子さん!大丈夫ですの!?」
梨子「」
千歌「……」スッ
千歌「……守れなかったのは、悔しいよね」
鞠莉「梨子!?大丈夫なの!?」
果南「千歌!息と脈を確認して!」
千歌「…………うん、大丈夫。気絶はしてるけど、ちゃんと息はしてる」
ダイヤ「……アレだけ叫びながら全力疾走したんですもの、気を失って当然ですわ」
曜「でも、どうして梨子ちゃんの時だけ、最初からあんな風に……」
ルビィ「ぅゅ……どうしてなんだろ……」
花丸「……ここを離れよう。」
ダイヤ「そうですわね。何処かで梨子さんを休ませなければなりませんし」
曜「ここに来る途中、喫茶店っぽい店があったよ?そこに行こう」
果南「梨子ちゃんは私がおぶって行くよ」
千歌「ごめんね、お願い」
千歌「……悔しいよね、」
果南「千歌?」
──────
───
─
梨子「みっ、みんなぁ……ホントに……ヒグッ、ごめんなさいぃ……っ」
果南「何言ってるのさ。誰も悪くなんかないんだから、気にしたら駄目だよ」
ダイヤ「そうですわ。あの様な結果になるだなんて、誰も予測出来なかったのですから」
曜「そうそう。だからほら、落ち着いて?」ポンポン
梨子「うぅ……っ」
鞠莉「──梨子。貴方が言っていた事って、まだ覚えてる?」
梨子「は、はい……」
梨子「あの時、橋の真ん中辺りまで歩いた時に、突然頭の中に流れ込んだと言うか……湧いてきたんです……」
梨子「カルタゴの人達が、私のお母さんと彼を……殺したんだって……全然知らない人たちなのに……」
曜「……彼って、誰なの?」
梨子「分かんない……そもそも私、カルタゴって言う国があった事すら、今日まで知らなかったんだもの」
ルビィ「で、でも……梨子ちゃんはずっと、その事で怒ってたみたいだけど……」
梨子「うん。あの時の私はお母さんと彼を……こ、殺されたって言う、私の人生で有りもしない出来事に、ただ頭の中を支配されてたんだけど」
梨子「……凄く、悔しかったんだと思う。お母さんと彼を失った事が、幸せな毎日を守れなかった事が……」
千歌「……」
梨子「そして……千歌ちゃんの、あの言葉を聞いた瞬間……っ」
梨子「わ、わたし……っ、千歌ちゃんの事をっ……本気でっ……ッ!」
花丸「大丈夫。」スッ
梨子「……ぇ」
花丸「それは他の誰かの記憶であって、絶対に梨子ちゃんのものでは無いんだから」
花丸「だって、今の梨子ちゃんはまる達の良く知ってる、優しい梨子ちゃんだもん」
梨子「……」
花丸「梨子ちゃんは今、千歌ちゃんの事をどう思ってる?」
梨子「……」
千歌「……」
梨子「……大好きっ///」
曜(あ?)ガタッ
鞠莉「sit down」
花丸「でしょ?」
花丸「だから、もう大丈夫ずら♪」
梨子「……ありがとう。」
果南「私も経験したから分かるけど、アレはただの一過性の物でしかない、気の迷いみたいなものなんだからさ」
果南「そう言うアトラクションにでも来たと思えば、少しは気が楽になると思うよ」
「──本当にそうなのかな、」
果南「え?」
千歌「……」
梨子「千歌ちゃん?」
千歌「……多分、みんな実際に起こった事なんだと、私は思う」
千歌「果南ちゃんや花丸ちゃん。それに、梨子ちゃんの時も、きっとそう。」
ダイヤ「そ、それは実際にこの目で見ましたから、確かに起こった出来事なのでしょうけど」
千歌「そうじゃなくて」
ダイヤ「え?」
千歌「三人それぞれが感じた物って、この国で本当に有った事なんじゃないのかなって」
千歌「じゃなかったら、居もしない兄妹とかの話なんてしないと思う」
鞠莉「……つまり、千歌っちはこう言いたいワケね?」
鞠莉「あの橋を渡った人は、当時この国で、無念のまま死んだ人達の、何かに取り憑かれたって」
千歌「……」
ダイヤ「と、取り憑かれる!?そそっ、それって……あの、例のアレですか!?」
果南「霊のアレだねぇ」
ルビィ「お、おねぃちゃ……アレって?」
ダイヤ「アレはアレですわよ!半透明なヤツですわ!」
ルビィ「……ゴミ袋?」
曜「それって取り憑かれるものなの?」
果南「……」
鞠莉「千歌っちは、何を感じたの?」
千歌「……悲しいなって、」
千歌「どれだけ頑張ったって、守りたかった日常や平和を守れなかったのは……本当に悲しくて……悔しかったんだろうなって」
千歌「その気持ち、よく分かるから」
梨子「千歌ちゃん……」
ダイヤ「……」
鞠莉「……そうね。」
曜「……」
ルビィ「……っ」
果南「……」
「──そう思える事が大事なんだよ。」
千歌「え?」
花丸「心が救われるって言う事は、それを真に理解されたかどうかって言う所にあるって、まるは思ってるから」
花丸「……もし、私たちがそう想う事で、他の誰かの気持ちが報われるのなら、」
花丸「今持ってるこの気持ちが、そのまま救いになるんだと思うの」
千歌「……」
ダイヤ「でも、何世紀経ってもずっと残り続けている様な、とても強烈な恨み辛みが……たったそれだけの事で、果たして癒える物なのでしょうか」
花丸「大丈夫。愛は偉大ずら♪」
花丸「それに、その人達が抱いていた様な理想を、今度はまる達の手で作って行けば」
花丸「それが本当の意味で、その人達の無念を晴らす事になるんじゃないかな」
梨子「それぞれの理想……か」
果南「恒久的な平和ってヤツかな」
鞠莉「今は異文化交流も大分進んでるから、きっとその内、戦争なんて無くなっちゃうかもね」
ルビィ「うん。みんなにとっての大事なものを大切にして行けたら……とっても素敵な事だと思うよ」
曜「……千歌ちゃん。」
千歌「え?」
曜「私たちが、学校の為に頑張ったあの日々は、決して無駄なんかじゃなかったよね」
千歌「……うん。」
曜「あの校舎にはもう通えないけど、私達の思い出は間違いなく、今もあそこにあるはずだよね?」
千歌「……そんなの、当たり前だよ」
曜「うん。ならよろしい♪」
千歌「…………幸せだった思い出は、いつまでも消えないんだ」
千歌「だから、みんなあんなに激しく怒ってたんだ。……それだけ幸せだったんだね」
梨子「……千歌ちゃん。」
千歌「次にあの橋を渡った時、もし何も起こらなかったなら──」
千歌「それはきっと、あの人達の願った幸せが叶った時なんだよね」
ダイヤ「……そうですわね。一日も早くそうなる事を願っていますわ」
ルビィ「み、みんなが仲良しになれれば、きっと大丈夫だよ」
曜「うん。仲良しがいちばん!」
千歌「ごめんねみんな。当たり前の事なのに、わたし全然気付けなくて」
鞠莉「あんな事があったんだもの、悩んだって仕方のない事よ?」
ダイヤ「寧ろ、そんな事にまで気を配れる、貴方のその優しさと懐の深さに、わたくし感銘を受けましたわ」
千歌「い、いえっ///」
果南「ふふっ。千歌らしくて良いと思うよ」
曜「発想がいつも斜め上だもんねぇ」
果南「……そういや、曜」
曜「え?」
果南「アンタ、善子はどうしたの?」
曜「……」
曜「あっ、」
鞠莉「ちょっと!?」ガタッ
千歌「も、もしかして置いて来ちゃったの!?あの橋の所に!?」ガタッ
曜「お、置いて来たってゆーか……忘れてたってゆーか……ハハ、」
ダイヤ「貴方っ!!お守りをするとか言いながら置いてけぼりにしているじゃありませんのっ!!」ガタッ
曜「ぅ、ごめんなさーい!!」
果南「いいから行くよ!」ダッ
スタタタ……
ルビィ「よ、善子ちゃん……大丈夫かなぁ……」タッタッ
花丸「そんなに時間も経ってないから、大丈夫だとは思うけど……」タッタッ
ダイヤ「いいえ!あの人は放って置くと何をしでかすか分からない方ですから!」タッタッ
梨子(……善子ちゃんの身の心配をしましょうよ)
梨子「でも、あの状態の善子ちゃんだと、危ない人に付いていったりしちゃうかも」タッタッ
千歌「うぅぅっ……変な事になってなきゃいいんだけどっ」タッタッ
果南「……居ないねぇ、もしかして入れ違いになったとか?」
花丸「う〜ん……それもあり得なくはないかも」
ダイヤ「──ん!?あの橋の向こうに居るのって!」
鞠莉「oh!いまーした!」
曜「善子ちゃん!」
果南「善子!」
「──皆さん。ご機嫌よう」
善子「世界に遍くリトルデーモン達よ。今日は我らにとって最大の宿敵、カルタゴ共和国について語らせて貰います」⚫︎REC
善子「砂漠に潜む下賤なる彼奴らは、この小さき島国を弄んだだけに飽き足らず、我ら深淵の徒を貶め、その気高き誇りに深い傷跡を残して行きました」⚫︎REC
善子「それは、決して赦される事のない罪の坩堝となり、今やその小国は、怨嗟蔓延る混沌の魔都と化しているのです」⚫︎REC
千歌「わ、渡っちゃったんだ……」
ダイヤ「スマホを持って何かしていますわね」
梨子「た、多分……生放送中なんだと思います……」
鞠莉「oh! でも、今までで一番大人しいパターンみたいね」
善子「──ヨハネの名の下に銘じます。彼の穢れた地、カルタゴ共和国を滅ぼす為の力を、境界線の彼方より私に送りなさい。さすれば、…………は?」⚫︎REC
善子「……"カルタゴなんてとっくの昔に滅んでる"?"ヨハネ様、今日おかしくない"?"チュニジア観光でもしてるのw"?」⚫︎REC
善子「はぁあああああっ!!?」⚫︎REC
ルビィ「ど、どうしよう……なんだか興奮して来ちゃったみたいっ」
花丸「う〜ん……ここはやっぱり、また例の言葉で呼ぶしかないずらねぇ」
果南「ほら、アンタの出番だよ」
曜「ぇえ〜っ、やだなぁ」
果南「お守役なんだから、ちゃんと責任果たしなって」
曜「はぁ……しょうがないかぁ……」
善子「なんでみんな分かんないのよぉ!!カルタゴは害悪なの!憎むべき世界のカルマなのぉ!!滅さなくちゃならないのよぉっ!!!」⚫︎REC
善子「話し聞いてよぉ!!!」⚫︎REC
曜「〜っ」スゥッ
「善子ちゃーん!」
善子「!」
曜『私はカルタゴから来ましたーっ!』
善子「!!?!?!?」ブツッ
善子「うぉおおぉおおおおおおおおぉおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!」ダンッ
曜「ひいぃぃっ!!?!?」
善子「カルタゴ滅ぶべしっっっ!!!!!」
おわり
番外編
SCP-2513【ともあれ、カルタゴ滅ぶべし】
と
Aqoursの愉快な仲間たち
〈本家〉
http://ja.scp-wiki.net/scp-2513
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