2020-07-05 21:32:16 更新

概要

オリジナルストーリー、オリジナル能力などを含んだSSとなります。誤字や脱字がある可能性があります。それでも良い方はどうぞゆっくりとお楽しみに下さい。誹謗中傷などのコメントはお控え下さい。


前書き

この物語は、二人の救世主と艦娘達の世界に出てくる、深海の王者アビスの過去編になります。人によっては気分が悪くなる作品なのでご覧になる際は注意してご覧下さい。















ザッザッザッ……



青年「はぁ……何で僕はこんなにも駄目なんだ……今日も仕事で怒られてばかり……こんな生活……いつまで続けばいいんだろう……」



ザッザッザッ……



昔から僕は一人だった……幼い頃に病を患ってからは身体が弱くなっていつもいじめられてたよ……今は手術を受けたお陰で病は治ったけど……身体は弱いまま……何をやっても失敗ばかり……そのせいか父も母に失望して僕を見放した……どんなに傷ついても誰も助けてくれない……みんなにとって僕は異物なんだ……僕はもう……誰も信用出来ない………



ザッザッザッ……



青年「もういっそ何もかも辞めようかな……僕が辞めたところで……誰も………」



ザッザッザッ……  ピタッ



青年「ん……あそこに誰かいる………この夜中の時間帯で浜辺にいるのは僕だけだと思ったんだけど……僕の他にも人がいるんだね……って」




青年「あれ倒れてるじゃないか!もしかして海に流されたとかだよね!?急いで行かないと!」



ザッザッザッザッ!



僕は急いで倒れている女性の元に駆け足で向かった。



青年「あの!大丈夫ですか……ってうわぁ!」



?「……」



僕は女性を見て思わず腰を抜かした。何故なら、下半身が明らかに人のものではなく、口のような黒い何かだったからだ。



青年「もしかして……深海棲艦……?確か突如として全世界の海に現れた謎の生命体だよね…人類から制海権をを奪ってるみたいだけど……実際に見るのは初めてだ………」



?「……」



青年「どうしよう……これって通報した方が良いんだよね……深海棲艦は人類の敵な訳だし……でも………」



青年「…………」























青年「………連れて帰ってきてしまった。まさか初めての客が深海棲艦だなんて……正直今は一人で助かったよ………」



?「……」



青年「これからどうしようかな……誰かに見られたら不味いし……海に戻すか通報した方が良いんだろうけど………」



?「……」



青年「はぁ……何やってんだろ僕は………」



?「……」



青年「とりあえず怪我とかしてるみたいだから一応手当てしておこう。深海棲艦に効くかどうか分からないけど………」






30分後……






青年「手当てして気がついたんだけど……これ目覚めたら不味いよね……人間の僕じゃ勝ち目ないし……下手したら死n………」



?「……ン……此処ハ………」パチッ



青年「あっ」



?「……ッ!?人間ッ!?」



ガコン!



目覚めた深海棲艦は瞬時に起き上がり、下半身の口を大きく開いて僕に向けた。



青年(終わった……確実に死んだ……でもいいかな……正直生きる意味も無かったし……どうせ死ぬなら……一瞬でやってくれた方が………)



?「……」





青年「……あれ?」



いつまで経っても痛みはやって来ない。僕を目の前にしているにも関わらず、深海棲艦は僕を襲わない。何故だろう……?



?「…………無イ……」



青年「え?」



?「弾薬ガ無イ……」



青年「弾薬?」



?「弾薬ガ無イト……撃テナイ……」



青年「あっ……はい」



すっごい単純な理由だった。



?「……?」



青年「いや、気にしなくていいよ……」



?「………」



青年(これ助かったかな。まさか弾が無いなんて……態々それを使わなくてもやれると思うんだけど………)



?「………」



青年(今はこっちの問題をなんとかしないと……さっきから僕を見つめてるだけだし………まぁ、目覚めたら深海棲艦にとって敵の人間がいる訳だし警戒されるのは当然かな)



?「……キ」



青年「え?」



?「……私ヲドウスルキ?」



青年「どうするって……何もしないよ。通報する気もないし、殺すつもりもないよ」



?「……ジャア……何デ?」



青年「何でって……人が倒れてたらほっとけなくて……」



?「私ハ人間ジャナイ」



青年「確かにそうかもしれないけど、その……足に付いてる物以外は容姿が女の子だからね。相手が何者でも、倒れてる人を見たら助けるのは普通だよ……そんな機会はあんまり無いけど」



?「……変ワッタ人間」



青年「確かにそうかもね……」



僕と深海棲艦の会話に静寂が続く……正直気まずい。



青年「ね……ねぇ、どうして君はあの浜辺で倒れていたんだい?」



?「っ……」



僕がその質問を言った瞬間、深海棲艦の表情が暗くなった。



青年「あっ、勿論言いたくないならそれでいいから!」



?「………」



青年「そ……そうだっ!君、お腹空いてるでしょ!ちょっと待ってて!」



タッタッタッ



?「…………」






数十分後……






青年「さぁ、出来たよ」



?「……コレハ何?」



青年「オムライスだよ。冷蔵庫にある物でこれしか作れなかったんだけど……嫌だったかな……?」



?「…………」



パクッ



?「ッ……!?」



ムシャムシャモグモグ! ゴグン!





青年「えっ……もう食べ終わったの!?」



?「……オイシカッタ」



青年「そ、そうなんだ……良かったよ……」



一瞬何が起きたか理解するのに時間が掛かった……彼女がスプーンでオムライスを口にした瞬間、あっという間に平らげていた。何という速さだ……!



?「…………」



青年「ど、どうしたの……?」



?「…………」



ズイッ



青年「ちょ、近い!顔が近いよ!」



?「…………」



青年(駄目だ全く話を聞いてくれない……!このままじゃ……まさか今ここで僕を殺s)



ポスン



青年「……え?」



?「スゥ……スゥ……」



青年「えぇ……」



何故か彼女は僕の身体に寄りかかって眠ってしまった……いや本当に何故?さっきまで警戒していたのが嘘みたいだ。



青年「とりあえず……布団に寝かせてあげよう」











翌日………




青年「もう朝か……朝食でも作ろっ……」



ギュウ



青年「……な、何か違和感が……」



バサッ!



僕は布団を思いっきり捲った。そこには……



?「スゥ……スゥ……」



深海棲艦である彼女が僕に抱きついたまま布団の中で眠っていた。



青年「じ、状況を整理しよう。確か昨日は寝てしまった彼女を部屋の布団で寝かせてあげた。でも僕は別の部屋の布団で寝た。それで目が覚めたら彼女が僕の布団に……一体どういう事なんだ?」



?「ン……」



青年「あっ、おはよう……」



?「…………」



青年「あの、目が覚めたばかりで申し訳ないんだけど……どうして僕の布団に居るの?」



?「……温カイカラ」



青年「え?」



?「……」



青年(温かい?どういう事なんだろう。僕の体温が高いって事かな?確かにそうだけど……深海棲艦でも分かるんだ……)



?「……?」



青年「と、とりあえず朝食でも作るからキッチンに行くね」



?「……私モ行ク」











青年「よし、出来たよ」



僕は朝食を机に置いて彼女の方にスライドさせる。すると物凄いスピードで食べ始めた。



?「パクパクモグモグ……」



青年(ほんとよく食べるなぁ……今までこうして誰かと食事を取るのは久々だったし、自分が作ったものを食べて貰えるのは……少し嬉しいかな)



?「……オカワリ」



青年「あっ、うん。ちょっと待ってて」







数分後……







青年「ごちそうさまでした」



?「……?」



青年「えっとね。ごちそうさまでしたって言うのは料理をした人や、食材に命を頂きましたって感謝を込めるんだよ」



?「ドウシテ……?」



青年「うーん…………生き物ってさ、何か食べ物や飲み物が無いと生きられないんだ。例えば草食動物は草や果実とかの植物を食べるけど、肉食動物は草食動物の肉や別の肉食動物の肉を食べる。植物が草食動物に食べられて、その草食動物が肉食動物に食べられる。つまり弱肉強食なんだ。特に人間は雑食で動物や植物でも何でも食べるんだ。そうしないと生きられないけど命は命。だからこそ、その命を頂いた事に感謝して残さず食べる。それでごちそうさまでしたって感じかな」



?「……ゴチソウサマデシタ」



青年(何だろう……彼女と話してみると深海棲艦が人類の敵だとは思えない。姿は違うけど、人間と何ら変わらない……食事もするし睡眠も取るし。何より言葉の意味を理解出来た。なのに何で戦争なんて……)



?「……ドウカシタノ?」



青年「え、あっいや……何でもないよ!」



?「ソウ」



青年「そ、そういえば君の名前は?まだ聞いてなかったからさ」



?「名前……?」



青年「僕は淵夜(えんや)だよ」



?「……軽巡棲鬼。人間カラソウ呼バレテイル」



淵夜「軽巡棲鬼……」



?「デモ……名前付ケテ」



淵夜「え、僕が?急に言われても……」



?「駄目……?」



軽巡棲鬼と呼ばれる彼女は上目遣いに潤んだ瞳、そして今にも消えてしまいそうな声で僕に問う。それを見てドキッとしてしまう。



淵夜(かっ……可愛い……って何を言っているんだ僕は!確かに下半身以外の容姿は滅茶苦茶好みだしこうやって抱きつかれるのは悪くないけど……でも彼女は深海棲艦で僕は人間。とてもじゃないけど無理だ……ってそれよりも名前名前…………あっ)



淵夜「じゃあ『れいか』って言うのはどうかな?」



?「レイカ……?」



淵夜「特に深い意味は無いんだけど、君が浜辺で倒れていたのを家に運ぼうとして肌に触れた時に冷たくてひんやりしてたから、それで思いついたんだけど……」



?「レイカ……レイか……レいか……れいか……」



淵夜「い、嫌なら言ってね……!」




れいか「私ノ名前ハ……れいか。アリガトウ淵夜。私ニ名前ヲ付ケテクレテ」



淵夜「あっ、うん。それなら良かった」







こうして僕とれいかの同棲生活が始まった。一時はどうなるかと思ったが、彼女と一緒に暮らし始めてからは辛かった毎日が嘘みたいに楽しくなった。今まで誰にも受け入れられずに生きてきた僕だったが、彼女だけが僕を受け入れてくれた。それから僕は生活費を稼ぐ為に今まで以上に仕事を頑張った。上司や先輩達からは無能のレッテルを剥がされ、上手くいくようになった。これも全部れいかが居てくれたお陰だ。









先輩1「お前最近調子良いな。あんなにダメダメだった奴が立派になったもんだな」



淵夜「あはは、ありがとうございます」



先輩2「ねぇねぇ淵夜君。良かったら私達と一緒にランチしない?」



先輩3「あっ良いねそれ!行こうよ!」



先輩4「私も海深君と話してみたかったし、丁度良いかもね」



淵夜「えっと……折角誘って頂いて申し訳ないんですが、僕はこれから急用がありまして……それでは!」



僕は逃げるように席を立ち、先輩達の方を振り返らずに退出する。正直此処にはあまり長居したくない。僕が無能だったのをいい事にあれだけ責任ばかり押し付けた先輩達なんて……








ガチャ ギィィィィィ……




淵夜「ただいまー」



タタタッ ギュッ!



れいか「お帰リ、淵夜」



僕を出迎えてくれたれいかはエプロン姿で抱きついてきた。僕が仕事から帰宅した後に毎日やってくるんだけど最初の頃はドキドキしたよ。でも慣れてくると、これが帰ってきた証拠にもなって安心する。



そういえば、最近れいかは辞書やネットなどを使って日本語を勉強している。彼女曰く『淵夜トモット話シタイ』って言っていた。充分話していると思ったけど、嬉しくなった僕は仕事帰りに自宅の居間で教えたりしている。





淵夜(誰かが居てくれるって……良いな。こんなにも安心出来ちゃうんだからさ……例えそれが深海棲艦でも……幸せだなぁ……)



れいか「淵夜……泣イてルノ……?」



淵夜「え……?」



僕は気が付くと目からポロポロと涙が出ていた。



淵夜「あれ……おかしいな……悲しくなんかないのに……何で……」



れいか「……」



ギュウゥゥ……



淵夜「れいか……?」



れいか「大丈夫……私ガ居る。ずット一緒ダから……」



淵夜「れいか……うぅ……ぐすっ……」







それから僕はひたすら泣き続けた。どれくらい泣いたか覚えていないけど、れいかに抱きしめられた時の冷たかった肌は……僕には温かく感じた。












淵夜「ん…………あれ、僕は確か……」



いつの間にかベッドで寝ていた僕は起き上がろうとする。しかし右腕に何かが絡みついており、右側を見る。



れいか「スゥ……スゥ……」



淵夜「れいか……あの後僕を運んでくれたんだね。ありがとう」



僕はれいかの頭を撫でる。



れいか「ンン……フフッ……淵夜……」



淵夜「……そろそろ朝食でも作ろうかな」



僕は絡みついているれいかをゆっくりと離し、寝室を出る。



ガチャリ バタン





れいか「ンン……淵夜……?」










トントントントン



淵夜「野菜はこれくらいで良いね。後は……」



バタンッッッ!!!



れいか「淵夜ッ!」



淵夜「うわっ!?」



ドンガラカッシャンッッ!!!



れいか「良カった……此処ニイて……」



淵夜「いてて……れいか?」



れいか「一人にシなイで……」



飛びついてきたれいかは身体が小刻みに震えている。



淵夜「……大丈夫だよ。僕とれいかはずっと一緒だ。心配させてごめんね」





















淵夜「落ち着いた?」



れいか「ウン……ありガトウ……」



淵夜「それなら良かった」



れいか「え、淵夜……ソの傷……」



淵夜「あっ、この傷はー……」



さっきれいかが飛びついてきた時に、手に持っていた包丁で指を切ってしまっていた。傷は浅いが血が出てしまっている。なんとか誤魔化そうと口を開く。しかし……



れいか「……」



パクッ



淵夜「ひぃっ!?」



急にれいかが僕の指を口に入れた。



淵夜「ちょっ……やめっ!?」



口に入れただけでなく、その指を舐められる。



れいか「んっ……んっ……」



淵夜「大丈夫!大丈夫だから!消毒液塗って絆創膏貼れば大丈夫だから!」



しばらくして口に入れられた指が解放される。



れいか「ぷはっ……」



淵夜「もう!指なんて舐めちゃ駄目だ……よ」



僕は指を見ると包丁で切った筈の傷が無くなっていた。まるで切る前の状態に戻ったかのように……



淵夜「れいか……何したの?」



れいか「傷ヲ治しタ」



淵夜「傷を治したって……」



れいか「私達深海棲艦ハこの程度ノ傷ナら再生出来ル。でも、人間ニやっタのは初メて」



淵夜「へぇ……そうなんだ。凄いね深海棲艦って」



れいか「……凄クなんカないヨ」



淵夜「え?」



れいか「何デもナイ」



淵夜「そ、そっか。もうすぐで朝食出来るから待ってて」

















淵夜「ごちそうさまでした」



れいか「ごちソウさまデシタ」



淵夜「お皿は洗うからそれ貸して」



れいか「ウン」













淵夜「僕はそろそろ仕事に行くよ。今日はちょっと遅くなるけど大丈夫だから」



れいか「早く帰ッテ来てネ」



淵夜「うん。それじゃあ行ってきます」




ガチャリ バタン



れいか「……」















その後、仕事を終えた僕は少し寄り道をしてから自宅に帰宅していた。実はその寄り道こそが帰りが遅くなる理由だった。



淵夜「はぁ〜……緊張するなぁ……でも、もう後戻りはしない……!」



僕は手に持っていた紙袋から一つの黒い小箱を取り出す。








僕は今日、れいかにプロポーズをする。








今思うと、あの時れいかと会わなかったら今の僕は居ない。もしかしたら自殺していたかもしれない。でも、そんな自分を変えてくれたれいかに僕は…………恋をした。例えそれが深海棲艦でも関係ない。僕は彼女が好きだ。大好きだ。この世の誰よりも……だけどもし断られたらどうしよう。もしもこの行動であの幸せな時間が消えてしまったら……僕はもう……



淵夜「……何を迷っているんだ僕は!もう考えるのはやめだ!僕は……れいかに想いを伝えたい!」



そうして僕は自宅に付き、玄関の扉を開く。



淵夜「た、ただいまー……」



シーン……



淵夜「……れいか?」



いつもなら玄関に入ってすぐに抱きついて出迎えてくれるが、今日に限っては無かった。それ以前にれいかの姿は無く、不審に思った僕は靴を脱いで家の中を探索する。



だが、れいかの姿は見当たらなかった。




淵夜「何処にも居ない……もしかして外に居るのかな……さっきはプロポーズをするかどうかで迷ってて気づかなかったけど戸締まりしてた筈だった玄関の鍵が開いてたし……でも何で……」




僕は急いで家を飛び出し、れいかを探す。








淵夜「はぁ……はぁ……れいか……れいか……!一体何処に行ったんだ……?」




あれから数時間以上が経ち、外はもう真っ暗で自分の知る限りの場所を探し続けたが見つかる事は無かった。



淵夜「いや……一つだけ探してない場所がある。あそこならっ!」














ザッザッザッ!




淵夜「っ!れいか!!」



僕はれいかと初めて出会った浜辺に行き、ようやく自分の探し求めていた相手を見つける事が出来た。



れいか「……淵夜……?」



淵夜「探したよ……心配したんだよ?こんな所に一人で居ちゃ駄目だよ。下手したら通報されちゃうからさ……」



れいか「……ごめんナサイ」



淵夜「さぁ、帰ろう」



れいか「ねぇ、淵夜……」



淵夜「どうしたの?」



れいか「私ね……此処カラ出テいくの」



淵夜「え……?」



れいか「私ガこノまま淵夜ト居タら、他ノ人間達ニ殺サれちゃうから……」



淵夜「ちょっと……何言ってるの……?」



れいか「私ネ……淵夜ト会ウまでは艦娘ト交戦シテいたの。それで負ケて命カラがら逃ゲて来タ。デもネ……その艦娘達ハ今モ私ヲ探シている。こノまま私ガ居たら……淵夜ガ殺さサれちゃう。だから……ここでお別レ。少シ寂シいけど……楽シかったよ……ソレじゃあネ」



淵夜「そん……な……嫌だよ……そんなの嫌だっ!僕はれいかと離れたくない!」



れいか「ゴメンなさい……デも、淵夜ヲ巻キ込ミたくないカラ……」



淵夜「構わないよ!僕はれいかと一緒なら「ヤメて!」




れいか「ヤメて……私ハ……貴方ニは死ンで欲シくない……!」



淵夜「それは僕も同じだよ!僕はれいかのお陰で変わる事が出来たんだ!無能だった僕に……温もりをくれたのは他でもない君だけだ!」



れいか「私ハ温カくなんてない……冷メたいよ……」



淵夜「そんな事無い!あの日僕が君に抱き締められた時に感じた!あの温かさは君にしかないんだ!」



れいか「淵夜……」



淵夜「自分勝手なのは分かってる!でも……僕は君が好きだから!」



れいか「ッ……!」









淵夜「それに……ずっと一緒って言ってくれたじゃん。僕もれいかと一緒に居たい。例え周りから嫌悪されようと、裏切り者と言われても、君と居られるならなんだっていいんだ……それでも此処から出て行くなら……僕も行く」



れいか「どう……シテ……どうシテそこマデ……私ト居テくれるの……?」ポロポロ



淵夜「さっきも言ったじゃないか。君が好きだって」



僕はポケットにしまっていた黒い小箱を取り出し、それを開けて膝をつく。



淵夜「れいか……僕と結婚して下さ「居たぞ!!」




ダダダダダダダダダッ! ガチャチャチャチャ!




突如、銃を持った人達が僕とれいかを囲んだ。



淵夜「なっ……!?」



れいか「っ……!」





憲兵1「目標軽巡棲鬼!発射!」





バシュンッ!! ジャララララララッ!




れいか「くっ……!?」



淵夜「れいかっ!?」



銃を構えた人達から鎖が発射され、れいかを拘束した。



憲兵2「対深海棲艦用の拘束弾だ!そう簡単には解けまい!」



淵夜「れいか!」



憲兵3「ふんっ!」



ブンッ!



淵夜「がはっ……!」



僕は後ろから殴られ、後ろ手を拘束された。



れいか「淵夜ッ!?貴様ァッ!」



憲兵「発泡!」



ドドドドドドドドドドドドドドドドォッ!!



れいか「ウゥッ……!」



銃を持った人達はれいかに向かって一斉射撃をした。



淵夜「れいかっ!」



憲兵4「やっぱり銃じゃ死なないか。どんな装甲してんだよ」



憲兵5「だが最近開発された拘束弾のお陰で身動きが出来ないみたいだ。これで思う存分鬱憤が晴らせる」



淵夜「やめて……やめてくれ!彼女を傷つけないでくれ!」



憲兵6「所でさっきから何なんですかコイツは?何で深海棲艦を庇ってるんですか?」



憲兵7「知るか。だが深海棲艦を庇うなど言語道断。反逆罪に当たる。恐らく死刑は確実だろうな」



れいか「淵夜……!」




憲兵1「第二射撃用意!始めっ!」




ドドドドドドドドドドドドドドドドォッ!!



れいか「グゥッ……!」



淵夜「れいかっ……!」



憲兵3「大人しくしろ!」



ブンッ!



淵夜「ぐはっ……!」



れいか「淵夜ッ……!淵夜カラ離レロッ!」



憲兵1「第三射撃用意!始めっ!」



ドドドドドドドドドドドドドドドドォッ!!



れいか「ぁっ…………!」



淵夜「れい……か……!」


















何度も、何度も何度も何度もれいかは撃たれ続けた。あれから何発撃たれているか分からない。僕がどんなに主張しても彼らはやめない。何でそこまでしてれいかを傷つけるんだ。彼女が一体何をしたんだ。やめろ。やめてくれ。










あれからどのくらい時間が経ったか分からない。れいかは既に弱りきっていて、拘束している鎖をもがく事が出来ていない。






憲兵2「これだけ撃てば流石に弱るだろうな」



憲兵4「いい加減これで死んでくれ」







れいか「………ぅ……………ぁ…………」





淵夜「もう……やめてくれ……お願いだから……」




憲兵1「最終射撃を開始する!各自例の兵器を用意しろ!」



そう言って銃を持った人達は……ロケットランチャーの様な物に持ち替え、それを一斉にれいかに向けた。




やめろ……やめろ……やめてくれ……頼む……



憲兵1「最終射撃用意!」



やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ。




憲兵1「発射っ!」





やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
















































れいか「………………ごめんなさい」ニコッ









バゴォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!






淵夜「あ………………」




























淵夜「れい……か……?」






何で……何で……何で……






























ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ……





ナン…………デ…………………………………




アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッ!!??
















淵夜「何で……何で……何で……何で……」




憲兵3「やっと死んだか……深海棲艦のくせに俺達の領海に入りやがって」



淵夜「何で……何で……何で……れいかを……」



憲兵3「何で?深海棲艦だからに決まっているだろ。大体深海棲艦を庇う意味が分からないな。深海棲艦は人類の敵だ」



憲兵5「特に軽巡棲鬼は他の深海棲艦よりも危険だ。駆除しておく事に越した事は無いだろ」



憲兵6「それに艦娘じゃない僕達が深海棲艦を倒した事で上から高額の報酬が貰えるので最高ですよ!」



憲兵7「寧ろ足りないくらいなんだがな。俺達は艦娘の様な兵器でも無いから深海棲艦に生身で戦ってる事自体讃えられるべきだよなぁ?」





憲兵達「「「「ハハハハハ!」」」」
































今……










何 て 言 っ た ?



  







フ ザ ケ ル ナ 








お 前 ら の 私 欲 で れ い か が 沈 ま な い と い け な い の か ?








お 前 ら に れ い か の 何 が 分 か る ?









深 海  棲 艦 と 言 う だ け で 沈 ま な い と い け な  い の か ?

















































憎い




















憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い




 




お前らはれいかを奪った。








俺の大切れいかを……殺した。







許さない。







殺す。殺してやる。奴らに苦しみを。絶望を与える。生きている事が辛くなる程に。




















『憎いか………………?』










誰だ?













『奴等ガ憎イカ………………?』










憎い。










『殺シタイ程ニカ……………?』











殺したい。




















『滅ボシタイカ………………?』





















滅ぼしたい。
























『ナラ…………力ガ欲シイカ………?』








力?
















『全テヲ滅ボス力ダ……………』












全てを…………滅ぼす力……?










『憎イノダロウ…………殺シタイノダロウ……………?滅ボシタイノダロウ…………?』











あぁ、何もかも全て。













力が欲しい。今目の前に居る奴等を。殺す 潰す消す 抉る 刺す 撃つ 切る 裂く 射る 喰らう












滅ぼす



























淵夜「…………」




スッ




俺は無言で立ち上がる。そして目の前の屑に……



ザクゥゥッッッ!!



憲兵3「あ……?」



左手の付け根から蠍の尾のような長い針が屑の心臓を刺す。








憲兵4「なっ!?」



ガブゥゥゥゥゥッ!



次に右腕を突き出し、右手が鮫の頭に変化し喰らう。








憲兵5「っ!?」



スザァァァァッ!!



両脚が蟹の鋏の様に変化し、挟むように屑の身体を上斜めに切断する。










最後に背中からダイオウイカの様な触手を生やし、屑共をまとめて死ぬまで殴る。







もう数えるのは飽きた。こんな肉片の塊など覚える気にはならない。







『想像以上だ……まさか我の力を使っても死なぬとはな……気に入った。貴様、名は?』




「……淵夜だ」



『淵夜か……ならば、今日から貴様は深海の王者アビスとなるのだ!』



「深海の王者?」



『そうだ。貴様には深海棲艦を指揮する深海提督となり、この世界を滅ぼせ!そうすれば、貴様が愛している者を生き返らせよう!』



「っ!?」



『どうだ?引き受けるか?』



















「…………………………あぁ、やってやる」













アビス「俺は、深海の王者アビスだっ!!!」





















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2020-07-05 22:45:58

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