2020-03-14 14:13:10 更新

概要

オリジナルss 少女はかつての大切な人と瓜二つであった。


回想


「なぁ、ずっと思ってたんだがそのペンダントってなんなの?」


「さぁ…?なんか魔法石っぽいよねこれ…ってあー!!それまだ焼けてないんだから食べちゃダメ!!」


「少しくらい平気だろ」


「平気じゃないですぅー!もぉー!だからグレンを1人にしたくないの!お腹壊したらどうするの!?」


「うるさ…」


「あ、今うるさいって言った!ふーんだ、もしお腹壊しても知らないんだから」


「あーいや…ごめん」


「…わかればよろしい。本当にグレンは私がいなきゃダメなんだから」


「それ何度も言ってるけど普通逆じゃない?」


「逆じゃないもん、私が守るし!」


「そうですか」


「私には出来ないと思ってるでしょー?」


「まぁな」


「むぅぅ!!見ときなさいよ?グレンは私が命を懸けてでも守るんだから!」


「命を懸けるはいいすぎだろ」


「それぐらいグレンは危なっかしいんですー!」


「はいはい、気をつけますって」


「ほんとに…?絶対だよ?」


「わかってるって、ユリハに心配かけるようなことはしないよ…多分」


「多分って、もー!…約束だからね?」


「ああ、約束だ」


「えへへ…まぁもし破っても、私が助けるけどね!」


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聖堂からの帰り 道中


グレン「……」


あの後少女…クレハを連れて森の外に置いてある馬車へと戻り今、リーネへ向かっている最中だ。


あまりここに長居をするのは危ないということでいち早く退散した。


あの毒男はというと、魔力封じの腕輪を着けさせ馬車に積んであったロープで拘束して荷台に乗せてある。ちょっとやりすぎてしまったのか未だに気絶中だ。


クレハ「…あの」


クレハが声をかけてきた。心配そうな声音で話す。


クレハ「これから、どうなるんでしょうか…?」


グレン「……」


クレハの顔が直視出来ずに黙り込んだ。気まずいのか、おろおろし始めた。


ナル「マスター?」


グレン「…ナル」


ナル「大丈夫かの」


グレン「……平気だ」


もちろん嘘だ。こんな状況、平気でいられるはずがない。


旅の途中で死んだ大切な幼馴染みと瓜二つの少女。そんなものと会えば動揺するほかない。


あの時から200年経っているらしいが、体感的には数日しか経ってないんだ。そんなもの、心を落ち着かせろという方が無理がある。


…頭では分かっている、この子はユリハじゃない。それでもあまりに…似すぎている。


クレハ「えっと…」


何故か申し訳なさそうにしているクレハを見てこっちも少し罪悪感が芽生えた。


この子も大切な人を目の前で失っているんだ。俺がウジウジしててどうする。


グレン「……!」


クレハ「へ!?」


自らの頬を両手で叩き気持ちを切り替えた。自分のことを考えるのは後だ、まずはこの子から話を聞こう。


グレン「すまない、ちょっと疲れててな。もう大丈夫だ」


クレハ「そ、そうですか」


グレン「で、どうなるかだっけか」


クレハ「はい…私はずっと聖堂にいたので、これからどうしたらいいのか」


クレハの目に涙が溜まる。さっきまで悲惨な目にあってたんだ、そうそう切り替えは上手くいかないだろう。


グレン「…そこんところどうなんだ?」


馬車の手綱を引いているカイゼルにそう問いかけた。


解毒薬が効き、魔法の鎧のおかけで大した怪我をしていないということなので馬車の運転はまかせてある。俺馬車引けないし。


カイゼル「そうだな…聖堂の関係者ならば、こちらで保護することになるだろう、当面の面倒は見れるはず。そこからどうするかは彼女次第だ」


騎士団で保護するとなれば、そのまま騎士になるか、王宮の使用人になるか…まぁ多分この子の場合は聖堂を復興させるとは思うんだけど。


クレハ「そう…ですか」


まぁ…しばらく療養は必要だろう。


っと、その前に聞かなきゃいけないことがあった。


グレン「なぁクレハ…って呼んでもいいか?少し聞きたいことがあるんだけど」


クレハ「はい、なんでしょう…?」


グレン「聖堂に聖水ってまだあるか?」


クレハ「聖水…何故ですか?」


グレン「え?…あー、その…」


ナル「む?」


ふとナルを見る。どうする?ナルの存在を伝えるべきなのか?不用意に喋るのは避けるべきか…?


グレン「えーっと…」


クレハ「…何本か残ってるはずですよ、壊れてなければですが」


彼女は不審に思いながらもそう答えてくれた。無駄に隠したのはまずかったか?


…とりあえずあるという情報を入手しただけ良しとしよう。


ナル「…ふん」


ナルが何故かクレハを観察するかのように凝視していた。何をやっているんだこいつは。


クレハ「な、なんでしょうか」


ナル「別に…なんでもないのだ」


クレハ「…??」


クレハが困惑している。と言いつつ俺もだ、ナルの行動の意図がわからない。


グレン「どうしたんだナル」


ナル「……」


目をそらしふて腐れるように俺の膝に寝転がってきた。


ナル「ふーん、マスターが此奴のことばかり気にかけるからムッとしただけなのだー」


グレン「はぁ…?」


気にかけるのは当たり前だろう。あんなことがあったんだから…ていうかこいつ絶対今はぐらかしたよな。


と言っても話してくれそうにないし、無理には聞かないが…どさくさに紛れて膝を枕にするのはやめてほしい。


クレハ「仲、良いんですね」


グレン「まぁ…相棒みたいなもんだしな」


ナル「マスターとわたしは愛しあっているのだ」


グレン「それはない」


ナル「なんじゃとー!?」


なんていつもの調子で先ほどまで重かった空気が多少は緩和されていった。こういう時にナルの性格は非常に助かる。


とにかくこの子を助けられてよかった。思うことはあるが、ひとまずひと段落ついたことでよしとしよう。


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リーネについた俺たちは色々な手続きを踏んでいた。

毒男の引き渡し、死んでいった騎士たちと神官たちの弔い、聖堂で起きたことの報告、クレハの保護。


帰ってきてそれらを諸々していると、一日中かかってしまっていた。


グレン「あぁぁーーー………」


ソファーに腰をかけ深く息を漏らした。王宮の客室に着く頃には日が落ち切っていて今ならそのまま眠れそうまである。


ナル「おつかれだのーマスター」


グレン「おーう…やっぱ戦い以外は向いてないかも」


報告のためにあの王と話すのがとても苦痛だった。なにせ自分の素性を隠して話さなければならないので話をまとめるのが非常にめんどくさい。


頭を使うのは苦手だ。


まぁその代わりに多額の報酬を貰えたのでこれでしばらくは資金に困らないだろう。


クレハ「…すみません、私のせいで」


グレン「別にいいって、終わったことだ」


クレハもこの部屋に同席している。騎士団での管理下に置くための手続きの間俺が身を預かることになった。


しかし…クレハを狙った目的はなんだろうか、わざわざ炎竜を使ってまで聖堂を襲い手に入れようとした…この子が何かを持っているのか?


グレン「クレハ…少しいいか?」


クレハ「なんでしょうか」


グレン「やつ…毒男とは知り合いか?」


クレハ「いえ…知らないです」


顔見知りではない…とするとやっぱりこの子自体に何かあるということか。


グレン「クレハは…何者なんだ?」


クレハ「……」


彼女は黙り込み何やら言葉を探しているようだ。何かを隠しているのか、それともここでは言えないのか。


グレン「わからないんです、なにも」


グレン「え?」


クレハ「昔の記憶が…無いんです」


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ーーーーーー


翌朝 リーネ城下町


太陽が登るお昼時、俺は城下町に来ていた。


あの夜、クレハから昔の記憶がないと聞き話を伺ったがどうやら3年前からの記憶が全て無いらしい。


ある日の雨の中、気づいたらあのノイス聖堂の前へたどり着いたみたいだ。そこで3年間、あの神官たちと一緒に過ごしたという。


まだまだ謎だらけだが傷心中の彼女にこれ以上話させ続けるのは酷と思い、昨日はそれで話を終わりにした。




そして今日城下町に出た理由はある物を探すためだ。


グレン「ここか?」


地図に書いてあった場所につき、ドアを開ける。


「いらっしゃい」


グレン「歴史に関する資料ってあります?」


「あっちの本棚にあるよ」


グレン「ありがとうございます」


そう、訪れたのは図書館だ。目的はこの200年の間の歴史を知るため。カイゼルから口伝で聞いてはいたけど自分の目で確かめたくなったのだ。


それにナル…神剣のことについても何か載っているかも確かめたい。もしかしたらナルのように他の神剣たちも人化してるかもしれないし、していなくても今の保管場所がわかればそれでいい。


グレン「っとここか。どれどれ…」


本棚にある本を適当に手に取る。勇者の伝説、英雄たちの歴史、勇者たちの冒険譚…なんだこれ。


内容を確認してみると俺やカル、ミナのことがよく書かれていた。だいぶ誇張された文面だが割と合ってはいるのでなんともいえない。


それに自分のことが本になっているとか少し気恥ずかしいな、そっと本棚に戻しておこう。


しばらく本棚を眺めていると目的とは違うが有用そうな本を見つけた。


ーーー 神力について


神剣のことではないが間接的に関係がありそうな気がする、読んでみるか。


グレン「…ふむ」


『神力は聖なる力で、神が姿を変えた神剣や天使に備わる力のことである。


この力は唯一、悪魔を滅ぼすことができる。』


これは知っている知識だな。


『天使によれば、神力は日の光がよくあたり尚且つ泉などの穢れが少ないところで回復できるという。』


これも知っているな、悪魔と戦った後はよくそういう場所で体内に入った悪魔の血を浄化していた。


そもそも神力を回復させるためなら聖水で十分だからこの情報も要らないな。ナルの場合回復させても制御が効かず神力が流れでてしまうらしいからそれを防ぐ手段が載ってないものだろうか。


グレン「あれ?」


特に情報がないまま読み終えてしまっていた。やはり神力に関しては知っている知識しかなかったようだ。


うーんしかし、神剣のことがわかる資料がないな…ここまでないとやはりナルの人化がイレギュラーなのか?ますますわからないことが増えたな。


…こうなったらナルには気合で神力を制御してもらうしかないな。


脳裏にナルの顔が浮かぶ。駄々をこねてる姿が容易に想像できるな。


グレン「……」


これ以上ここで得られるものは無さそうだな、まいったな…


…カイゼルに少し相談してみるか。少なくとも今の俺よりはこの世には詳しそうだし。ここにいるよりも有意義そうだ。そうと決まれば早速王宮に戻るか。



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王宮前まで戻ってきてみると、広場で騎士たちが訓練をしていた。体力作りのためのランニングや筋トレ、剣の素振り、手合わせなど極々普通の訓練だ。


オリス「あ、レン様!」


近づいてみるとオリスがいち早くこちらに気づき駆け寄ってくる。言っては悪いがなんだか犬みたいだ。


オリス「どうされたんですか?あ、もしかして稽古つけてくれるとか!?」


グレン「えっと、ごめん違うんだ」


オリス「あ、そうですか…」


なんだか露骨にしょんぼりしている。そんなに残念がられるとこっちが悪いみたいになるからやめてほしい。


グレン「カイゼルはどこにいる?」


オリス「団長ですか?それなら裏庭の方じゃないですか?」


グレン「裏庭?」


オリス「はい、なんでも一から鍛え直すとかって…何かあったんですかね?」


グレン「ああ…そういうことか…」


毒男に負けたことを根に持っているのか…初見で対応できるやつの方が珍しいのに、真面目なやつだ。


普通のやつなら心が折れても不思議ではない…それ故にカイゼルは強いのだろう。


グレン「わかった、ありがとな」


オリス「はい!役にたてて光栄です!」


なんともキラキラしているなこの青年は。しかしなんだろうな、前も思ったんだがやっぱりムズムズする。なんなんだ?


その場を後にし、王宮の裏庭へ向かうことにした。


ーーーーーー


オリス「はぁー…やっぱかっこいいなレン様…」


騎士「おいオリス、なんだあの女は?」


オリス「え?そうだな…僕の憧れの人だよ」


騎士「へー、なんだか男勝りな感じじゃね?顔はかわいいけど…ああいうのがタイプなのか?」


オリス「男勝りって…あれは凛々しいというんだ。後あの人はそういうんじゃない!」


騎士「ふーん…なんかムカつくから王宮の周り走ってこい」


オリス「なんでだよ!?」


なんだかんだ言ってオリスは王宮の周りを走ったようだった。


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王宮 裏庭


カイゼル「ッッ!!」


裏庭につくと剣の素振りをしているカイゼルがいた。剣を振るたびに空気を重く切る音がしその気迫がこちらにまで伝わってきた。


カイゼル「…はぁ、ダメだ、こんなものでは」


グレン「よっ」


カイゼル「…!レン殿」


グレン「聞いたぞ、鍛え直すんだって?毒男に負けたことを気にしてるのか?」


カイゼル「…ふっ、痛いところを突くな」


グレン「……」


よくみてみると腕に重りをつけている。過剰な修練は却って身体を壊すっていうのに…


グレン「あまり気にするなよ、固有魔法持ちは言わば魔法のスペシャリストだ。碌な魔法も使えない騎士が勝つのはほぼ不可能だ」


カイゼル「だからと言ってそれを言い訳にはしたくない」


グレン「騎士団長として、か?」


カイゼル「…そうだ」


こいつは…ほんと生き辛そうなやつだな。


グレン「そっか、なら俺から1つ助言だ」


カイゼル「む…?」


グレン「無闇に身体を鍛えても意味はない。魔法武術が使えるなら、魔力の流れと共に身体を鍛えろ」


カイゼル「……?」


グレン「身体強化を上手く自分の動きと技に乗せるんだ。それを極めれば…!」


剣を抜いて腕に強化の付加を掛けて、カイゼルの持っていた剣目掛けて真っ直ぐ振り下ろす。


剣は切り口から真っ直ぐに両断された。


カイゼル「なっ…!!」


グレン「こんな風に同じ素材で出来ている剣同士でも、使い方次第で業剣になる」


カイゼル「……」


グレン「これが出来ればあの魔装具の剣ももっと使いこなせるようになるだろ」


…我ながら上から目線すぎたか?一応カイゼルの方が年上なんだけどな。


カイゼル「…助言感謝する。次はレン殿も驚かすくらい強くなってみせよう」


グレン「お、楽しみだな」


カイゼル「ははっ」


上から言ったことはあまり気にしていないようだ。まぁ会った時からタメ口だったし、そこは気にしてないのかもしれない。


っと、そうだった。自分の目的を果たさなければ。


グレン「そういえばカイゼルに聞きたいことがあって来たんだ」


カイゼル「む、何用か?」


グレン「この辺りに神力に詳しい…もしくは泉とかそういう場所知らないか?」


カイゼル「神力か…生憎と詳しくはないな…」


グレン「そうか…」


カイゼル「泉に関してもリーネ周辺では見たことがない。もっと辺境の地ならあるかもしれないが私は団長であるがためここから離れることが出来なくてな」


うーんということはなにも分からず終いか…


カイゼル「…なら、バルロッサに行ってみてはどうだ?」


グレン「バルロッサって…旧首都か。そこって今は確か…」


カイゼル「そう、今は冒険者の街だ。そこのギルドに行けばなにか情報が手に入れられるかもしれないぞ」


なるほど…仮にも旧首都、この大陸の情報が集まってるに違いない。そうとなれば決まりだな。


グレン「助かった、とりあえずバルロッサに行ってみるよ」


カイゼル「うむ、後でバルロッサ行きの馬車を手配しよう」


よし、この先の目標は決まったな。まずはバルロッサを目指し、神力…もといそれに縁のある場所の情報を入手する。


早速ナルに話にいかなきゃな。


カイゼル「それよりレン殿」


グレン「うん?なんだ?」


カイゼル「わざわざ剣を斬らなくても良かったのではないか?」


グレン「……すまん」


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時は同じく、リーネ 地下牢


ゼブラ「フヒヒヒヒ……」


先日投獄された男の不気味な笑い声が響き渡る。なんとも不快感極まる声だ。


見張り「あいつ昨日からあんなんだけど大丈夫か?」


見張り2「団長が言うには危険なやつらしいからなぁ、マトモじゃないんだろ」


見張り「聖堂襲ったやつだろ?よくやるぜ」


騎士たち2人が話し込む中、男…ゼブラは不敵な笑いを続けていた。


ゼブラ「フヒヒヒヒ…バカなやつらだぁ…俺の仲間がぁ、もう少しでくるのによぉ…」


ゼブラの中の殺意が膨らむ。


ゼブラ「仲間が来たらぁ、あの女は絶対に殺すぅ…俺の手で確実に殺してやるぅ…!!俺ら4人が集まればぁ、勝てるやつは存在しないぃ…!!絶対に後悔させてやるぅ…!!フヒヒヒ…フヒヒヒ!!!」


密かに小さな闇が、少しずつ集まろうとしていた。


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ーーーーー



???の場所


「…どうなってんだ?」


男は大層不機嫌そうに呟く。


「あれから数日、音沙汰無いようじゃねぇか」


「…申し訳ございません」


「謝れば済むと思ってんのか?あ?」


「っ……」


男に膨大な魔力が集まる。大気が震えて、まるで災厄が起きる寸前のようだ。


「す、すぐに確認しに行きます。我ら小天使隊全員が行けばすぐに…」


「なら何故最初からそうしなかったんだ?あ?」


「そ、それは…」


「使えない天使に羽はいると思うか?」


「お…お許しください…!!」


「す、すぐにでも例の者を捕らえてみせます!」


「……チッ」


大気の震えが止まった。先ほどまでの膨大な魔力が無くなっている。


「早く行け、速やかに成果を出さねぇと…全員殺すぞ」


「は、はい!」


小天使隊の3人は逃げるように外に飛び出し目的地へと向かった。


「くく…もはやあいつらにはなにも期待なんかしてねぇ」


男は不敵に笑う。


「これは…四聖騎士の出番だなぁ…?」






後書き

前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください


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