もう勇者やめていいですか?19
オリジナルss とある種族はピンチを迎えるが…
獣人の里 ロア視点
ロア「ただいまです」
「おおロア戻ったか。仲間たちの居場所はわかったのか?」
ロア「それは…」
ロアと話しているのは里の長です。
あの白髪の人間との戦いの後一時撤退したロアは森の中にある獣人の里に戻って来たです。
あの人間…認めたくないですが、とても強かったです。ロアがまるで子供扱いされたです。
ロア「見つけてないですが、怪しい人間がいたです」
里長「ううむそうか、その人間怪しいな…」
ロア「とても強かったです、ロアでも本気出して勝てるかわからないです」
里長「なんと、ロアがそこまで言うほどか…攫われた男共がおれば…いや、男共でも敵わなかったから攫われたのか」
ロア「ロアは里の男より強いです、男がいてもあの人間には勝てないです」
ロアのスピードはともかく、パワーも負けたのはとても悔しかったです。人間があそこまでパワーを出せるのはありえないです。
それが出来る人間なんて…勇者様以外にいないです。
でもあの人間は女でした。勇者様はかっこいい男です。勇者様などではないです。
ロア「次は…倒してやるです」
里長「いけるのか?」
ロア「まだロアは魔力解放をしてないです。それを使えば…倒せるです」
里長「だがあれは負担が…」
ロア「わかってるです。でも使わずに倒すのは無理です」
里長「そうか…なら頼むぞロア」
ロア「任せるです」
次は絶対倒してやるです…ロアのためにも、里のみんなのためにも。
今この里には戦える獣人はいないです。みんな何者かに攫われたです。でもわかってるです、やったのは人間なのです。
人間はロアたちを迫害してきたです。人間には生えていないこの耳のせいで…たったこれがあるだけで人間たちはロアたちにひどいことをしたです。
…正確にはひどいことされたのはロアたちの先代のほうですけど。
けれども勇者様は、人間なのにロアたちに優しくしてくれたらしいのです。社に勇者様がくれたと言われる宝石が祀ってあるです、だから勇者様がいい人間なのは間違いないです。
はぁ…会いたいです…勇者様。今のロアたちを助けてほしいです…
ロア「……」
わかってるです。勇者様はもうこの世界にはいない。だから…今はロアがやるしかないのです。
ロア「あの人間を、倒してくるです」
里長「気をつけるのだぞ」
ロア「はいです」
出来ることをやるだけです。勇者様、見ててくださいです。
ロア「…?」
なにか足音が聞こえるです。この足音は…仲間の足音です。
まさか仲間が帰ってきたですか?
「ぅ…くそ…」
ロア「…え?」
喜びも束の間、その仲間を見てロアは固まったです。
仲間は何かで切り裂かれたかのような酷い怪我をしていて、片腕も無くなっていたです。
ロア「大丈夫です!?すぐに治療するです!」
仲間「ロア、か。はは、なんとか帰ってこれたみたいだな…」
ロア「人間にやられたですか?許せないです」
あの人間…ここまでするなんて、絶対に許さないです…!
ですが、仲間はロアの問いに違うとばかりに首を横に振ったです。
仲間「違う、人間じゃない。俺を…仲間たちをやったのは…!」
仲間がそう言いかけたところで、なにやら変な音が響いてきたです。
獣人族は耳がいいです、人間より遠くの音もよく聞こえるです。
ロア「なんの音ですか…?」
仲間「こ、これは…!みんな!建物の陰に隠れろ!!」
ロア「ど、どうしたですかいきなり」
仲間「いいから早く!ロアもだ!!」
ロア「一体なにが…」
と、音が段々と大きく近づいてくるのがわかったです。それはなにやら…なにかを切り裂いている音。
ロア「…!?」
仲間「くそっ…!ロア…!」
仲間がロアを何かから守るかのように抱き寄せたです。その直後、里に突風が襲いかかってきたです。
仲間に抱き寄せられてたおかげで周りがどうなったかわからなったですが、切り裂くような音が響き里がめちゃくちゃになっているのは見なくてもわかるです。
やがて突風は治まり周りを確認しようとしたですが…なにやら手に湿りを感じたです。
けれども一瞬で理解したです…これは、血なのです。
仲間「ぶ…無事か…ロア」
ロア「え…ぁ…」
気がついて、目の前を見るとそこにいたのは…身体中切り裂かれて血塗れになった仲間の姿でした。
今起きている状況が理解できないです…突然音がしたと思ったら突風が吹いて…そしたら仲間が血塗れになってたのです。
いや…本当はわかってるです。あの風は普通の風じゃないです。その風から仲間はロアを守ってくれたのです。
仲間「よく聞けロア…今すぐここから逃げろ…」
ロア「は、はいです…一緒に逃げるです」
仲間「俺は置いていくんだ。どうせもう…死ぬ」
ロア「だ、ダメです。一緒に逃げるです!」
仲間「ロア…頼む」
ロア「……!!」
仲間は全てを悟ったかのようにロアを見るです。
…わかってるです、この出血量じゃ助からないことくらい…ロアだってわかってるです。
仲間「早くしろ…見つかれば…やつからは…逃げら…れ……」
ロア「やつってなんですか?人間ではないですか!?」
仲間「……」
ロア「……っ!!」
仲間は全身に力が抜けたかのようにピクリとも動かなくなってしまったです。
そう…死んだのです。
ロア「……!!」
ロアの奥底から怒りが溢れてくるです。一体…一体どいつが仲間たちを襲ったですか!
ロア「……!?」
空から何かがくる音が聞こえるです。仲間を襲ったのもそいつかもしれないです!
「ガァァァァァァ!!」
ロア「グリフォン…!?」
空から現れたのはグリフォンでした。身体が大きくとても強い危獣種です。
こいつが…こいつが仲間を…!!!
怒りが最高潮に達し、殺意の衝動のままに大槌持ってロアはグリフォンに迫るです。
ロアのスピードに反応が完全に追いついていないみたいです。そのまま大槌を振りかぶり、グリフォンの頭目掛けて振り下ろします。
ロア「お前は…!ロアが殺すです!!!」
「ギィィガァァァァァァ!!?!?」
グリフォンの頭に直撃しそのまま頭ごと地面に叩きつぶしたです。肉を潰した鈍く気持ち悪い感覚が伝わったですが、仲間の仇と思うと気にならなかったです。
「ガ…ガァァ……」
今の一撃で即死したようです。
やったです…やってやったです!ロアは仲間の仇を取ってやったです!!
ロア「………」
…違うです、これはおかしいです。仲間がやられた怒りで気が動転してたですが今冷静になってわかったです。
グリフォン一体如きならいくら強いと言っても流石に仲間が複数もやられることはないです。それにさっきの突風…あんなのグリフォンが出せるわけがないです。
それに仲間の最後の言葉…あの怯え具合は普通じゃなかったです。まだ…まだ他に敵がいるです!
「きゃぁぁぁ!!」
ロア「えっ…!?」
里の中から女の声が聞こえたです。急いで里の中へ戻るとそこには…
「ガァァァァァァ!!!」
複数のグリフォンが里の仲間たちを襲ってたです。
「た、助けてくれぇぇ!」
「痛い…痛いよ…」
「うわぁぁぁ!!!」
グリフォンは次々とその爪で仲間たちを切りつけ嬲っていったです。里の至る所が血に染まり、いつも見ていた里とは一変、まるで地獄を見ているようです。
ロア「ぐ…や、やめろです!!!」
グリフォンに近づき仲間たちから追い払うですが別のところでまたグリフォンが襲い、それも追い払い…だけれどもまた別のところでグリフォンがまた仲間を襲ったです。
これではいたちごっこなのです。
ロア「はぁ…はぁ…これじゃあダメです…!」
一体一体ならロアの相手ではないですが…複数で、しかも里のあちこちの仲間たちを襲い掛かられたらロア1人じゃとても手が足りないです。
しかも今里にいるのは戦えない子どもや老人…唯一戦える若い獣人は…ロア以外やられてしまったです。
このままじゃ一族が全滅するです…それだけは…それだけはさせないです!!
「鬱陶シイ獣…邪魔ダ」
ロア「……!!!?きゃぁぁ!!?」
背後にこれまで感じたことのない悪寒がした直後…さっきの突風が吹き荒れてロアは吹き飛ばされたです。
そのまま地面を石ころのように転がっていき、ようやく止まったです。
ロア「ぐっ…なにが…いたっ」
痛みを感じ見るとさっきの風で身体中が傷だらけになっていたです。とても痛いです…息が苦しいです…
「ホウ、頑丈ナ獣ダ。ダガ弱イ」
ロア「…!!?」
先程背後から聞こえた声がし前方を見上げるとそこにはグリフォン…より一際大きいなにかがいたです。
それを見た途端、本能が告げたです。
…こいつには絶対に勝てない、と。
全身の震えが止まらないです、頭では戦わなきゃと思うですが…身体がいうこと聞かないです。
ロアは知ってるです…あのグリフォンを複数束ねる最強の生物。
「モウ終ワリカ?獣ヨ」
グリフォンの王、大危獣種…グリフィス…!
ロア「………っ」
ロアの運命は…ここで終わるのかもしれないです。
グリフィス「ドウシタ獣。コナイノカ?」
グリフィスがロアに近づきそう尋ねてくるです。
グリフィス「早ク立チ上ラント…踏ミ潰シテシマウゾ」
大きな足をロアの頭上にあげてそのまま踏みつけようとしてきたです。
ロア「ッッ!!」
全身の傷が痛む中なんとかギリギリで躱したです。
立ち上がり、近くにあった大槌を持ってロアはグリフィスに飛びかかるです。
ロア「魔力、解放するです!」
出し惜しみしてる場合じゃないです!体内にある魔力を放出し全身の身体能力を極限まで高める…これが魔力解放。ロアのとっておきです。
ロア「はぁぁぁぁ!!!」
ありったけの力を込めてグリフィスに殴りかかるです。この一撃、受け止められるなら受け止めてみろです!
グリフィス「小賢シイ…」
ロア「えっ…!?」
ロアの全力の一振りはグリフィスの翼に呆気なく止められたです。まるで鋼鉄のように硬く、びくともしなかったです。
グリフィス「我ノ翼ハ絶対ノ硬度ヲモツ、下等ナ獣相手デハ傷一ツツケラレン」
ロア「くっ…なら!」
距離を取って、グリフィスの周りを走るです。
翼に攻撃が通らないなら、別のところを叩いてやるです!
グリフィス「フン、チョコマカト鬱陶シイ!」
翼を羽ばたかせ例の切り裂く風を放ってくるです。
距離を取りつつ、魔力解放した今のロアのスピードなら躱すことは容易いです。
グリフィス「獣ガ…スバシッコイデハナイカ」
グリフィスが羽ばたきをやめたです。当たらない攻撃をいつまでも続けるほど馬鹿ではないみたいです。
でもそれはロアにとっては好機…この隙に距離を詰めてやるです!
グリフィス「一ツ忘レテイルヨウダナ獣ヨ」
ロアがなにを忘れているというのです。とっととこいつを叩きのめしてやるです!
「ガァァァァァァ!!!」
ロア「!!?」
鳴き声と気配に気づき横を見るとグリフォンがロア目掛けて飛んできたです。
グリフィス「我以外ニイルコトヲ、ナ」
「ガァァァァァァ!!!」
ロア「この!邪魔です!!」
目前まで来たグリフォンを大槌で撃退しようも振るったです…が。
「ガァァァァァァ!!」
グリフォンは攻撃してくることなくロアの大槌の攻撃範囲ギリギリで踏み止まり空中へと逃げていったです。
これは…最初からロアを攻撃する気などなかったです!?
グリフィス「ホラ、隙ダラケダ」
ロア「!!?ぐあぁ!??」
グリフォンに気を取られたロアはその一瞬の隙にグリフィスの足に踏みつけられたです。
全身に鈍い痛みが広がり気を失いかけそうになるです。
ロア「ぅ…ぅぅ!!」
グリフィス「無様ダナ獣。万ガ一ニデモ我ニ勝テルトデモ思ッタカ?」
なんてパワーです…魔力解放したロアでも、持ち上げられないです…!!
これが…グリフィスの力ですか…!
グリフィス「フン、見テミロ」
ロア「っっ…」
「ガァァァァァァ!!」
ロア「っっ!!」
グリフォンたちが次々と里の仲間たちを襲ってるです。中には無残に切り裂かれた仲間の死体も見えたです。
ロア「こ…の…!!ぐわぁ…!?」
仲間の死をみて衝動的に動こうとするですが。
グリフィス「アマリ動クナ、ウッカリ殺シテシマウデハナイカ」
やはりグリフィスの足からは抜け出せないです。
グリフィス「貴様ラハ上質ナ餌ダ。ジックリ味ワッテ食ベントナ」
ロア「味…わって…?やっぱり仲間を攫ったのは…お前ですか…!?」
グリフィス「攫ッタ?ククク、我タチガソンナ面倒ナコトナドスルモノカ」
ロア「え…?」
言っている意味がわからないです…だって仲間たちは…
グリフィス「ソノ場で全員我タチガ食ッテヤッタワ。トテモ美味カッタゾ」
その言葉は今のロアにとっては絶望の一言でした。
仲間たちが生きていると信じていて…でも全員死んでいる現実を突きつけられ、ロアは…ロアは…!
グリフィス「ン?抵抗ヲヤメタカ?」
もう…嫌です。なんでロアたちがこんな目に遭わなきゃいけないですか…?ロアたちはなにも悪いことしてないのに。
人間に迫害され、グリフォンたちに蹂躙され…どれだけロアたちを苦しめれば気が済むですか?
嫌です…こんなに苦しい思いをするなら、いっそロアは…
グリフィス「ツマランナ、ナラキサマカラ食ッテヤロウ」
体重のかかった足がどかれ身体が自由になるです。でも全身が痛んでとても動けそうにはないです。
……違うです。ロアは諦めたのです。これ以上生きるのは苦しいです…ロアは生きることを…諦めたのです。
グリフィス「デハ、イタダクトシヨウカ」
グリフィスが大きな口を開けてロアを食べようとするです。
頼むですよグリフィス、せめて一瞬で死なせてほしいです。
仲間たち…ごめんなさいです。ロアは先に逝くです…
次生まれるとしたら…勇者様のいる世界に行って…勇者様の仲間になりたいです。
さよならです…みんな…
ーーーーー
ロア「……?」
ロアの耳になにか音が入ってきたです。この音は…空から?
またグリフォンでも来たですか…?もういいです…ロアはもう…
……いいや、この音違うです。羽ばたく音が聞こえないです、なにかが…降ってくるです!
「ようやく見つけたぞ鳥頭ァァァ!!」
それは人間の女の声でした。空から飛んできたみたいです。
グリフィス「ム?ナンダ騒ガシイ…ナッ!?キサグワァァァ!!??!?!?」
ロア「…っっ!?」
その人間はそのままグリフィスに向かっていき思い切り蹴り飛ばしてしまったです。
あ、ありえないです…人間がグリフィスを生身で蹴るなんて…!?というかこの人間…あの時ロアと戦った人間!?
グレン「よーしっ、仕返し完了!」
ナル「なのだ!」
その人間は背中にもう1人貼り付けたままそう口にしたです。
さっきまでの絶望とは違い、まるで救世主のように現れたその人間の姿は…
今この瞬間だけ…ありえないですが…ロアの目には、伝説の勇者様が現れたように見えたのです。
前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください
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