もう勇者やめていいですか?16
オリジナルss 最強の冒険者、現る。
バルロッサ 中央通り
シルヴィと別れた後、ようやくバルロッサの中心部に近づき元王城…冒険者ギルドが見えてきた。
ギルドに近づくにつれ人も増えており時折なにやら視線を感じていた。
グレン「うぅ…やっぱこの格好慣れないな…」
ナル「まだ言っているのかマスター、そう恥ずかしがっていると余計目立つのだ」
グレン「なんでだよ、関係ないだろ」
ナル「わかってないのーマスターは…それじゃあマスターはかわいい女子が顔を赤くしてもじもじしていたらどう思うのだ?」
グレン「え?それは…あ…」
そう言われてふと気づく。もしかしなくても今までの視線ってまさか…
グレン「そういうことかぁ…よし、なら堂々としよう。それなら問題ないな!」
ナル「変わらないと思うがのー…」
まだまだ気恥ずかしさが残る中、ギルドの入り口に差し掛かった。
元王城なだけあって広くて、なにより人の出入りが激しい。
これから依頼をこなす者、報告をする者。それらが入り混じっているようだ。
中はもっとしっかりしているのかと思ったが酒場のような和気あいあいとした場所になっておりそこで各々食事ができるようになっていた。
冒険者は気ままと聞く。こういう自由なところが冒険者って感じなのだろう。
グレン「さて受付は、っと」
受付は酒場のカウンターでやっているようだ。そこに冒険者と話しているお姉さん方がいた。受付嬢というものだ。
グレン「すみません、いいですか?」
受付嬢「はーい、こちら冒険者ギルドバルロッサ本部です。依頼の受付ですか?」
グレン「いえ、少し知りたい情報があって」
受付嬢「そうですか。登録証はお持ちですか?」
グレン「登録証?」
受付嬢「はい。なんの情報を知りたいのかは存じ上げませんがここの全ての情報は冒険者の方のみに提供しています」
グレン「はぁ…」
つまりは冒険者じゃないと教えてくれないということか?めんどくさいな…
グレン「登録証ってどうやって作るんですか?ここに来たの初めてで」
受付嬢「そうでしたか、ではこちらの書類にお名前をご記入ください」
受付嬢に言われ資料を受け取り目を通す。ここのギルドの登録に必要な書類みたいだ。
色々な規約が書いてあるが…簡潔に言えば金が稼げる依頼を斡旋してやるからその分積極的に働けよ、みたいな文だった。
依頼を受けて達成さえしてくれれば色々なサービスが受けられるみたいだ。それこそ俺がほしい情報もだ。
必要な項目をささっと書いて受付嬢に渡す。
グレン「これでいいですか?」
受付嬢「えーっと…レン様、ですか。主な武器は剣…魔法は初級のみですね」
もちろん自分の固有魔法については隠してある。固有魔法は大っぴらにするもんじゃないしな。
受付嬢「はい、登録完了ですね。少々お待ち下さい」
そういうと受付嬢はカウンターの奥に行き、数分してなにかを持って戻ってきた。
受付嬢「お待たせしました、これが登録証もとい冒険者を示す身分証になります」
グレン「どうも」
渡されたのは銅色のドッグタグだった。そこに俺の名前と登録日が刻まれていた。
受付嬢「冒険者は初めてということで、階級の説明を致しますね」
グレン「階級?」
受付嬢「はい、階級は主に4つに分けられます。下から銅階級、鋼階級、銀階級、金階級の順になります。銅階級…主に駆け出しの冒険者ですね。採取採掘諸々危険が少ない依頼を受けてもらうことになります」
なるほど、確かに階級を分けないといきなり命の危険があるような依頼を駆け出しが受けてしまう可能性があるのか。それを上手く斡旋するみたいだ。
受付嬢「お次に鋼階級。ある程度慣れた方々が多いですね。主に護衛や下級の危獣種の討伐などがメインとなります。その上の銀階級はベテラン冒険者揃いですね。上級の危獣種の討伐、危険地帯の捜索など命の危険が十分ある依頼を受けられます。その分報酬金も高めですね」
ふむふむ…手っ取り早く金を稼ぐなら危獣種を狩った方が早そうだな。
受付嬢「そして金階級…この階級に関してはあまり気にしなくていいかと思いますが一応。金階級は今のところ世界に3人しかおりません」
グレン「3人?」
随分少ないな、それほどまでに強いのか?
受付嬢「金階級に上がる条件はただ一つ…大危獣種を討伐したことがある方のみです」
グレン「大危獣種…」
さっきから下級のだの上級のだの言っていたが次は大と来たか…
大体は察しがつく。危獣種ごとにランク付けがされているのだろう。前にイビルボアを倒した時にカイゼルは驚いていた…多分イビルボアは上級危獣種なのだろう。
そして炎竜…カイゼル曰く伝説上の生き物らしいから多分炎竜くらいの強さが大危獣種なのか?
グレン「1つ聞きたいんですけど」
受付嬢「なんでしょう?」
グレン「炎竜ってどのくらいの階級なんですかね?」
受付嬢「え、炎竜ですか??」
受付嬢の顔に焦りが見えた。いきなり何を言い出すんだとか思われたのだろうか。
受付嬢「炎竜…いえ、竜族は当然大危獣種に分類されますが…あっ、そういえばリーネに炎竜の遺体が運ばれたという情報が…でもこれは一般的には公開されてないはず…まさか」
グレン「え、いやーははは…」
受付嬢がすごい眼差しで見つめてくる。あれ、これもしかして余計なこと言ったかも…
あまり目立ちたくはないのでなんとか誤魔化そうと考えていると、ギルドの入り口がなにやらざわつき始めた。
「おい、あれって…」
「あぁ間違いねーよ、あれが…」
「まじかよ…」
なにやらみんな驚いているようだ。なんか有名人でも来てるのか?
大勢の観衆の中1人、受付カウンターに向かう軍服に似た格好をした男がいた。
グレン「……!?」
その男を見た瞬間に分かった。これは強者のオーラ。少なくともカイゼルより遥かに上の実力者だ。
「やぁ、帰ったよ」
受付嬢「ぎ、ギルド長!?」
その男はギルド長と呼ばれているみたいだ。そのままの意味で言えば冒険者ギルドの1番偉い人…か?ただの偉い人ではなさそうだが。
「おや?君は?」
グレン「え、あぁ…冒険者の登録にきたレンっていいます」
「そうかいそうかい!ってあれ?もしかして僕のこと知らない?」
グレン「知らないですね」
「えー!!ショックだなぁ…」
強者の雰囲気とは真逆ななんだか緩そうな人だな。しかしこいつの顔なんだか既視感があるんだけど…どこかで会ったか?
「仕方ない、この機会に是非僕のことを覚えていってくれ!」
すると男は着ていたコートを派手に手で広げて大袈裟なポーズを取り自己紹介を始める。
ルベルト「僕はルベルト、この冒険者ギルドの全てを束ねる長だ!そして…」
俺の目を見て更に続ける。
ルベルト「世界に3人しかいない金階級冒険者…その内の1人が、この僕だ!」
グレン「……」
ルベルト「どお?僕強そうでしょ」
グレン「はぁ…」
ギルド長と呼ばれるこの男…ルベルトは世界に3人しかいない金階級冒険者だと言う。どれほど強いのかはわからないがこの男に関しては相当な実力を持っていることはわかる。が…
ルベルト「まぁ事実僕は強いからね、仕方がないね!」
グレン「……」
いかんせん自己誇張が激しい。強いのはわかるがまるで威厳がない。
ルベルト「それで、何を話してたんだい?」
受付嬢「えっと、それが…炎竜の件についてこの方がなにか知っているみたいなんですよ…」
ルベルト「へぇー?」
興味を惹く内容だったのか意味ありげにこちらを見てきた。
…炎竜の話はまずかったかなー、まさか秘匿されてるとは思わなかった。
するとルベルトは指で音を鳴らしまたしても大振りなポーズで話を進める。
ルベルト「ここではなんだ、この奥にギルド長室がある。そこで話そうじゃない、か!」
この人はいちいちポーズを決めないと死ぬ病気なのか?鬱陶しいんだが…
ナル「変な人間なのだ…」
グレン「同感だ」
ナルでさえも変と言われる辺り本当に変なやつなんだろう。こんなのがギルド長って大丈夫なのか?
ーーーーー
ーーーーー
ーーーーー
そんな疑問を抱いつつルベルトの後に続きギルド長室へと通された。
中は客室を広くしたような感じで、ギルド長が座るであろう机の上に大量の書類が置いてあった。
ルベルト「あちゃー、また書類が溜まってるよ…まぁ後でいいかー」
ルベルトはめんどくさそうにソファーに腰掛けた。それに続き対面に俺とナルがソファーに座る。
ルベルト「いやー悪かったねー。いつもは裏口からこそこそここまで来るんだけど今日は表から行きたい気分だったんでね。驚かせちゃったね」
グレン「いえ、気にしてないんで」
なるほど、他の冒険者が驚いてた理由はそれか。この人普段は滅多に人前には現れないんだろう。
ルベルト「あー後そんなかしこまらないでいいよ。ギルド長といっても同じ冒険者、タメ口でおっけーおっけー」
グレン「…じゃあ遠慮なく」
一応冒険者でも相当な先輩なはずだがそっちからタメ口でいいと言うのならありがたくそうさせてもらおう。敬語ってめんどくさいし…
ルベルト「それで、炎竜の件だよね…単刀直入に聞くけど、その情報どうやって知ったんだい?」
本当に容赦なく聞くなこの人。まぁ別に隠すようなことでもないけど…
グレン「現場にいたからな。それより炎竜のことを知っているってことは聖堂の件も知っているのか?」
ルベルト「もちろん。てか聖堂の件に関しては大きな事件になっているからねー、隠しようがないよ」
グレン「それもそうか」
弔いもしたしな、そこは認知されているのは知っていた。
ルベルト「その原因が炎竜を使っての襲撃…ってことは隠しているんだけどね。悪虐の魔法使の仕業ってことでね」
グレン「なんで炎竜の存在を隠す必要があるんだ?」
率直な疑問だ。この世界にとって竜は危険らしいので隠す必要がないと思うんだが。
ルベルト「君は聞かなかったのかい?竜の扱いについて」
グレン「え?あー確か大危獣種に分類されるって」
ルベルト「そうだね。大危獣種の危険性はね、国をも動かしかねないんだ」
グレン「国が動く?」
ルベルト「そう。大危獣種に分けられる危獣種の要因は1つ、1匹で国を滅ぼす力があるかどうかだ」
グレン「ふむ」
炎竜くらいの強さがあれば国一つくらい滅ぼすのはわけないな。まぁ俺の戦ったのは洗脳されて弱体化してた炎竜だけど。
しかしこの話を聞いて見えてきたぞ。つまりは炎竜はそれほどまでに危険だったということ。それが世間に知れ渡ってしまえば国民がパニックになってしまいかねないということ。
そんなところだろうか。
ルベルト「だからね、炎竜の遺体が届けられたと報告が入った時すごく驚いたんだよ。誰がやったんだろうって」
そういうと同時にルベルトは俺の目を見てきた。その目はもはや俺を見透かしているかのような視線だ。
ルベルト「リーネの騎士団長ならもしかしたら勝てるかもしれないけど、目立った怪我もしていないみたいじゃないか。流石に1人で戦って倒したとは考えにくい」
含みのある笑いでさらに話続ける。
ルベルト「一体誰が代わりに倒した、もしくは手伝ったんだろうねー?」
グレン「……あーもう!そんな含みのある言い方しないでくれ。隠す気なんてないよ」
ルベルト「そうかそうか」
ルベルトは意地悪く笑いこの状況を楽しんでいるようだった。良い性格してるなこの人は。
グレン「そうだ、炎竜討伐を手伝ったのは俺だ。カイゼルに聞いてみればわかる」
元々隠す気はあまりなかったので素直に白状した。
ルベルト「やっぱりそうだったか!いやー君を一目見た時に強そうだと思ってね。炎竜のことも知ってたからまさかとは思ったけど」
グレン「それで、なんかまずいのか?」
ルベルト「いやいや、強い人が冒険者に来てくれるのはこちらとしてもすごく助かるよ。本来なら君を金階級にしたいくらいなんだけど…」
ルベルトは少し困った顔をした。理由はなんとなくわかる。
炎竜の存在は公にはされていない。だからぽっとでの俺がいきなり金階級の称号を得れば嫌でも目立ってしまう。さらに金階級に上がる条件が公表されているのであれば大危獣種の存在を仄めかすようなものだ。
そこから露呈してゆくゆくは炎竜の存在がバレてしまい問題に…てところかな。
グレン「正直俺は階級はどうでもいいよ。1つ言うならそうだな…採取採掘系は苦手なんで討伐依頼が受けられる鋼階級以上が望ましいかな」
金稼ぎのためにも、そっちの方が助かるしな。
ルベルト「そうだねー…それがいいかな」
どうやらルベルトもこの意見に賛成らしい。これでようやく話が終わると思いきや、続け様にルベルトが提案してきた。
ルベルト「でも君の言葉だけじゃまだ信用はできない。炎竜を討伐したのは嘘で、偶然その場に居合わせただけなのも否定できないからね」
グレン「それも…そうだな」
ルベルト「だから1つ提案だ。僕と一緒に依頼を受けようか」
グレン「はい?」
なんか…なんだかまた面倒なことになりそうな予感がした。
前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください
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