2021-10-12 23:12:45 更新

概要

ついに自身も艦娘になることを決した文乃。明石の過去に触れ、感傷に浸る提督のもとに舞い込んできたのは友軍からの救難信号だった。同胞を助けるべく出撃する一航戦と金剛シスターズの前に立ちはだかるは、奇怪な戦術をとるアイオワたちの姿だった。彼女たちの狙いとは一体…?


前書き

提督 トラック泊地所属。以前は陸戦隊小隊長、戦艦砲手・艦長など様々な役職を転々とし、大湊の提督として着任するが軍上層部と意見が対立し、栄転という名目で前線近くのトラック泊地へ左遷させられる。トラックへ来て3年が経つ。 (少将)



文乃【足柄】提督の妻。提督を守り、睦美の仇を討つため艦娘になる事を決める。



睦美  提督の娘。睦月型駆逐艦として徴兵され、その後ハワイ沖で撃沈される。
































ピロロロロロロ ピロロロロロロ ガチャ




電「もしもし、こちら執務室秘書艦、電なのです」




明石『あ、もしもし?こちら明石です。建造準備整いました!いつでも出来ますよ!』




電「わかったのです。」




明石『ところで、今回提督はどの艦種を建造されるんですかね?』




電「ッ!じゅ、重巡洋艦なのです…」




明石『おっ!重巡ですか!?それは楽しみですね!』




電「…そう、ですね…」




明石『?どうしました?なんか急に元気がなー




電「なんでもないのです!」




明石『そうですか…?まぁ、とにかくいつでもきてくださいね!それではまた!』




電「はいなのです!」




ガチャ...




電(『楽しみですね』か…明石さん、貴艦【あなた】はそう思うんですね…)




提督「電…?どうした?」




電「いや、大丈夫なのです。今明石さんが建造の準備が整ったと連絡してくれました」




提督「そう、か…」




文乃「そんなに悲しい顔しないでよ!ほら!」ニコニコ




提督「なんでそんなに笑っていられるんだ…」




文乃「あなたと戦える事を誇りに思うから!それに…睦美だって、お父さんの悲しい顔なんて見たくないでしょ?」




提督「…ああ、そうだな」




電「司令官…どうしますか…?」




提督「…工廠へ行こう。」




文乃「お父さん、書類がいっぱいあるけど…?」




提督「書類なんか後でいいさ」




電「司令官、書類は電が片付けておくのです!」




提督「いいのか?建造にはかなり時間かかるから俺は当分戻ってこないぞ?」




電「司令官、電は秘書艦ですよ?書類仕事がこなせなければ秘書艦は務まりませんから」




提督「…すまない。では頼む」




電「お任せください!」




提督「文乃、行こうか」




文乃「はい…!」




ガチャァ- バタン







〜廊下〜


提督「本当にすまない…お前まで巻き込んでしまって…」




文乃「いいって言ったじゃない!私は嬉しいの!」




提督「……」




文乃「それにしても、あの電ちゃんはとてもいい娘だったね。良い秘書艦に恵まれたじゃない」




提督「ああ、あの娘のおかげで山積みの書類もあっという間に終わるんだ。感謝しているよ」




文乃「あっそうだ、ねぇお父さん、私まだこの泊地のことなにも分かんないから案内してほしいな」




提督「確かにまだ何も教えてなかったな。それじゃあちょっと寄り道するか?」




文乃「いいの?」




提督「ああ」



























〜屋外〜


提督「ここがさっき俺たちがいた宿舎だ。あの中に食堂もある」




文乃「一階建なのに幅と奥行きが結構あるのね」




提督「あまり高過ぎるともし空襲に遭ったら真っ先に狙われるからな」




文乃「空襲!?」




提督「今はないが、深海棲艦が活発に動いてた頃はよく爆撃されたそうだ」




文乃「つまり、いつ空襲に遭ってもおかしくないのね…」




提督「その通りだ。今、奴らは大人しくしてるがいつ襲ってきてもおかしくない状況だ。一時的に追い返しただけで、殲滅したわけではないし、奴らの発生源も特定出来ていない。嵐の前の静けさはこんなにも不気味なものなんだな」




文乃「そうね…確かに今襲ってきてもー




提督「おいやめろ。本当に来たらどうすんだよ」




文乃「あぁごめんごめん」

































〜工廠〜


提督「…さて次は工廠か。(宿舎と工廠以外何もないがな。前線近いし。)」




文乃「ついに、艦娘になるのか…」




提督「工廠の説明をざっくりとするが、地下にあり、病院(ドック)も併設している。また、この近くから出撃している。地下といっても洞窟を改造しただけだから海に繋がっているけどな。ここは過去の爆撃に耐え抜いたんだ。一応核シェルター並みの強度がある」




文乃「すごい…」




アッ! テ-トク!! ドウモ オマチシテマシタ!!




提督「ッ!!文乃、他の娘には俺の妻だと言わないでくれ」




文乃「え、あ、わかった」




提督「知られると面倒な事になる」




明石「提督、お待ちしてました!えー、この方が建造される予定の方ですね?はじめまして!私、工作艦明石です!」




文乃「初めまして、本日付でここに配属されました、文乃と申します。よろしくお願いします」




明石「では、建造を始めましょうか」




提督「ま、待ってくれ!少し彼女と話がしたい…」




明石「分かりました。お話が済みましたらお声がけください。私は機材の電源を入れてきますので」




スタスタ




文乃「お父さん?どうしたの急に…」




提督「お前がお前のままでいられる時間は残り僅かだ。その前にお前と話がしたかったんだ」




文乃「…もう、バカねぇ…」




提督「…?」




文乃「いくら身体を作り変えられようと、心は私のままだよ。身体は兵器になっても、心までは兵器にすることは出来ないもの」




提督「ッ……!」




文乃「いつだてって私は私。動かせるのは貴方だけ。艦娘になろうとも、私は貴方の部下であり、大切な夫!」




提督「…ああ!そうだな!」














文乃「さぁ!いきましょう!『提督』!!」






提督「…ああ、いこう、『足柄』」




































〜建造ドック(手術室)〜


提督「明石、待たせてすまない。始めようか」




明石「了解です!明石にお任せください!!文乃さん、覚悟は出来てますか…?」




文乃「もちろん!」




明石「では、これより重巡洋艦足柄の建造を行います。始めに、脳と肉体の改造手術をします。文乃さんこちらの台に仰向けになってください。」




文乃「はい」




提督「手術中はずっとそばにいる。心配するな」




文乃「私がいつ心配だって言いました?心配なのは提督の方では?」




提督「これは一本とられたな」




明石「提督、手術を始めますので外でお待ちください」




提督「わかった、では、頼むぞ」




明石「はい!」




ウィ---ンガシュン







明石「では、文乃さん、しばらくの間全身麻酔で眠っていただきますね。手術の内容は、あなたの骨格を部分的に入れ替えて、筋肉強化の薬を投与します。あとは、脳の神経を強化…詳しく言うと、視覚・聴覚・反射速度・伝達速度の強化です。後は言語野を刺激します。ご安心ください、目が覚める頃には手術は終わってますからね」




文乃「はい、分かりました。ところで…明石さん以外誰もいませんが、一人で手術が出来るんですか…?」




明石「はい!艦娘化のためだけに開発された補助ロボットがいますので私1人で十分なんです。私の脳波と音声でロボットに指示を出すんです。本土にある『普通の』病院には有りませんからね」




文乃(『普通』ねぇ…)




明石「それじゃあ、マスクつけますねー」




カチャカチャ シュ----.....  




文乃「…」スヤァ......









明石「さて、コイツを被って…と(カチャカチャ)久しぶりね、この緊張感…」




[脳波ヲ感知…シンクロ完了…接続、良好]ウィ--ン




明石「いくわよ…!」




明石(まずは身体から…) ウィ--ン ガシュ 




明石(腕の皮膚を筋組織直前まで切開…)ピピッ ス---




明石(うん、ごく平凡な筋肉だ…34でこの筋肉の質…なかなかね…!年齢的に難しいかと思ったけど、これなら問題ない!)




明石「ここ切開するから固定して」ピピ ピコン




明石(さて、骨まで切ったところで…)




明石「人工骨格、準備」ピピ ピコン




明石(事前にデータは取って、既に製作してあるから、本物の骨と人工骨格を入れ替えるだけ)




明石「切除開始」ピピ ピコン キュイィィィ....ン ジジジジ 




明石(この人ほんと頑丈な身体ね…羨ましいくらいだよ…私もこれくらい頑丈だったら工作艦なんかにならなかったのに…)ジジジジジジ.....




明石(まぁ、手術が出来て機械にも詳しいヤツなんて、『ここでは』私だけだけどね)ジジジジジ.....ガッ!!!




明石(よぉし…切れた、あとはコレを入れてくっつけるだけ)ガチン ガチン




明石「…ふぅ」




明石(これをあと片腕と両脚と背骨に行う…)




明石(手術って、いろんな人の特徴がよくわかるけど…)





やっぱり、たまらないねぇ……!




























明石「いよいよ、ですね」




明石「すぅ……はぁー…」




明石「よし」




明石「頭蓋骨切開準備」ピピ ピコン




明石(文乃さん、もう少しですからね)




明石「切開開始」ピピ ピコン ジジジジジジ........




明石(よし、切れた。さて、文乃さん、頭の中お邪魔しますよー)




明石(まずは視覚を強化するから…)カチャカチャ




明石(これでよし)




明石「脳波感知器付けて」ピピ ピコン




明石(次は…聴覚…っと)カチ カチャ 




明石(これでよし、変化はあるかな?)




明石「聴覚強化確認して」ピピ ピコン ピ---...




明石(よし、脳波が正常に検知されている、成功…)




明石(お次は、反射速度…)




明石「中枢神経の状態は…正常ね…脳波も問題なし」カチャカチャ




明石「よし。これでどうかな?」ツンツン




文乃「」ピクッ




明石(早くなってる…成功ね)




明石(よし、これが最後…)




明石「文乃さん、もう少しだからね…」





……さ……ん





明石(ん?今なんか聞こえたような…気のせいか)





……み…の……





明石(間違いなくなんか聞こえた…)




ピ----!!! ピ----!!! ピ----!!!




明石「はっ!?」ガタッ




明石(脳波が異常なまでに激しい!?)




明石「文乃さん!?」




文乃「ウ……ウゥ…ッ!」ゴソゴソ




明石「あっ!?」




明石(全身麻酔をかけてるのに意識が覚醒しかけている!?どうして!?このままじゃ脳が…!!)




明石「緊急麻酔薬!!早く!!」ピピ ピコン




明石(文乃さん…!落ち着いて…!)




明石「注射用意!」プスッ




明石「投与開始!」スゥ---....




文乃「ウゥ……ン…………」




文乃「………」




明石「ふぅ…危ねぇ…」




明石(覚醒してたら脳がダメになるところだった…最悪脳死もあった…)




明石「どうして…」




明石(麻酔をかけていても覚醒する患者は何かしらの強い意志があると聞いたことがある。文乃さんは一体…)



(いや、もういい。とにかく手術を終わらせないと…文乃さんの脳がもたない…)




明石「麻酔薬投与終了」ピピ ピコン




明石(あとは伝達速度…)



































明石「手術終了、止血して」ピピ ピコン




明石「文乃さん…お疲れ様…」




ウィ---ン ガシュン




提督「…はっ!?明石!文乃は!?」




明石「ちょっと!なんでそんなに慌ててるんですか!?別に命に関わる大手術じゃありませんよ?」




提督「それでも心配なんだ…!」




明石「提督…工作艦の技量をなめてもらっては困りますね…というか、なんでそんなに文乃さんのことを心配なさっているんですか?『まるで家族のように』」




提督「か、彼女はここに来る前とても不安だと言っていたから…」ヒヤアセ




明石「あれ?でも文乃さんは手術前に『心配なんかしてない』って言ってませんでしたか?」




提督「そ、そうだった、かな?」ヒヤアセタラタラ




明石「提督…?何か私に隠し事があるように見えますが…?」




提督「」ヒヤアセタバァァァ---!




明石「上司が隠し事とは…いけませんよ?」




提督「(もう正直に話そう…) 実は…この文乃は俺の妻なんだ…」




明石「…やっぱり」




提督「え?(バレてる!?)」




明石「…そんなことかと思いましたよ…」




提督「?」




明石「私は自分の立場上、他所の提督の家族や友人や自分の友人や家族など、さまざまな関係にある方を艦娘にしてきましたから…」




提督「そうなのか!?」




明石「だって、いきなり大勢の女性を徴兵すれば、いつかは自分の知り合いが艦娘になってもおかしくないじゃないですか」




提督「てことは、家族や友人を失った提督も…」




明石「ええ、たくさんいますよ。私も家族を失った身ですから…」




提督「君も家族を失ったのか…?」




明石「というと…提督も…?」




提督「俺は娘を失った…」




明石「私は姉を…」




提督「今まで黙ってて悪かった…」




明石「謝らないでくださいよ。提督も娘さんを…さぞ辛かったでしょう…といっても人の悲しみや怒りは理解できるものではありませんけど…」




提督「…」




明石「娘さんの最期は…?」




提督「ハワイ沖で戦艦の盾にされた…そっちは…?」




明石「艦隊との通信が同じくハワイ沖で途絶え、二度と帰ってきませんでした…」




提督「そうか…徴兵されると残った家族は政府相手に何もできない…それが悔しい…」




明石「提督はまだマシな方ですよ…私は『自分で家族を死に追いやったんですから』…」




提督「それは…どういう…事だ?」




ピピッピピッピピッ




明石「あっ、どうやら止血が終わったみたいです。提督、その話は場所を改めてしましょう」




提督「あ、ああ」




明石「提督、文乃さんを病室に運びますが、一緒に来られますか?」




提督「もちろんだ」




明石「では、行きましょう」スタスタ





文乃「スー… スー…」 ピッ ピッ ピッ




明石「現在脳波は安定してます、一時期危なかったですが…」




提督「危なかった?」




明石「一瞬、麻酔をかけているのにも関わらず意識が覚醒しかけたんです。なにかうなされているようでした」




提督「そんなことがあったのか…やっぱり不安なのか…?」




明石「それは多分違いますね…実はこういった現象は時々あるんです。特に何かに対して異様なほど執着していたり、強い意志があったりする方に多い現象です」




提督「もしかしたら、俺とか娘のことを考えていたのかもな」




明石「それは十分考えられますね…では、病室へ移りましょうか」




提督「ああ」




明石「文乃さん、ちょっと移動しますねー」ガラガラガラガラ....






























〜病室〜


明石「さて、今のところ文乃さんは大丈夫そうですね…」




提督「ああ…」




明石「では、話の続きをしましょうか」




提督「そうだな…まずはさっき君が言っていた『自分で家族を死に追いやった』とは一体どういう意味なんだ?」




明石「そうですね…それは私がまだ学生の時、私は工学を学んでいました。



子供の頃から機械が好きで、周りからはよく変な目で見られました。機械が好きな女なんてそうそういませんからね…



そして、卒業間近でこの戦いが始まり私は工作艦として徴兵されました。私があまり身体能力が高くなかったのと機械にある程度知識があったからでしょうかね。徴兵されたと言ってもすぐには艦娘にされず、1年ほど医療技術を教えられました。



そこで驚いたのが私と同じように徴兵された人が何人もいたんです。工作艦は大量に必要だったようです。その後艦娘化手術を受け正式に工作艦明石として、佐世保に着任しました。



他の娘も各地に配属されました。といっても他の娘も全員明石ですけど…なので私たちはお互いを番号で呼ぶことになっています。番号は番号でも語呂合わせで呼ばれてます。ちなみに私は8番目の明石なので「はっちゃん」とか「ハッチー」って呼ばれます。



工作艦の任務は装備の生産・修理、艤装の補強・修理、艦の建造などほとんどが機械系の仕事です。



私は内心『工作艦であれば死ぬことなんてない』と思い続けていました。



ある時、提督から建造を命令されました。そして工廠に現れたのが私の姉でした…お互いに驚きました。まさか自分の家族が自分の家族によって艦娘になるなんて思ってもいませんでしたから…」




提督「…」




明石「姉は私に『あなたなら安心だね』と言ってくれました。私は必死に提督に反対しましたが、命令なので抗えるはずもなく、泣きながら姉の手術を行いました…



軽巡洋艦『神通』として就役した姉は幾度となく出撃を繰り返し、いつもボロボロになって帰ってきました。普段、姉は明るく振る舞い私に戦果の自慢をしてきましたが、あれはきっと私を心配させないためだったのでしょう…



でも私は分かっていました。姉の身体は明らかに限界を超えていることに…そんな姉を見ていたたまれなくなり、提督に直訴して、姉を休ませるようにお願いしましたが、戦力を1隻たりとも休ませる余裕はないとして却下されてしまいました…



そしてあの日……ハワイ沖の戦いの最中…提督の娘さんと同じ海域ですね」




提督「ああ、そうだ。あの頃は確か本土からの出撃のみだったな。まだ、制海権が取れていなかったし…」




明石「ええ、ですから、ハワイにたどり着くまでにかなりの体力を使いほとんどの艦は疲労が蓄積していたはずです…そんな状態で戦闘を始めたわけですから味方は甚大な被害を受け、撤退を開始しました。その時に娘さんは…」




提督「…」コクリ




明石「撤退の途中、別の艦隊に遭遇し、味方は混乱。そんな中、姉の水雷戦隊は囮になると言って戦列を離れ夜戦に持ち込みました。私は機械に詳しいからと無線手も任されていたのですが、あの時の姉の水雷戦隊の無線は忘れることができません…」





___________________________________________

























ーーーーこちら第二水雷せ……旗か…神通…わが方…被害甚大…



残存…艇…軽巡1、駆ち…2…我燃りょ…タンク被弾、駆逐1隻…砲…大破、1せ…炎上…



敵戦りょ…重…2…軽巡2…駆…2…



帰還は絶望的…これよ…突撃を…敢行…る……ーーーー






























明石「お姉ちゃん!?まって!!」




『明石…どうや…こ…で最期…たい』




明石「耐えて!!帰るの!!諦めないで!!提督!!2水戦の救援を!!!」




「…ッ!どの艦も被害が大きい。撤退で手一杯…救援は不可能だ…」




明石「そんな!?せめて駆逐3隻だけでも救援に回して…!!」




「3隻のみの行動は危険すぎる。しかも2水戦の位置も分からない…何より相手が悪すぎる…夜が明ければ空襲もありえる……明石、これ以上犠牲を出してはいけない…多くを救うには今ある艦隊だけでも撤退させなければならない………すまない…ッ!」




明石「…そ、んな……お姉ちゃん…」ポロポロ




『明石…行かせて…私たち…よ…戦っ…た…もう、十分…せめて…あの艦隊…だ、けでも…』




明石「諦めちゃダメ!!!」




『…あなたのおかげで、安心して…戦え…た…あり…と…う…』




明石「お姉ちゃん!!!まって!まってぇぇ!!」




『まだ、あなた…には…(神通さん!!敵接近!距離400!!近い!!撃ってきた!!回避!早く!!!!)ドオオオオオオォォォォォン!!!!』




明石「お姉ちゃん!?お姉ちゃん!!!!」




『ザザザザザザザッザッザ-------プツッ』ーーーー






____________________________________________






































明石「艦隊が帰投した後、急いで捜索隊を編成し、捜索しましたが、結局見つかったのは姉の服だけでした…」




提督「…そうだったのか…」




明石「私は姉の死でやっと思い知らされました。『工作艦であれば死なことはない』のではなく『工作艦だから何も出来ない』のだと。機械いじりと手術しか能のない私は、壊れた装備を直して、傷ついた娘の傷を塞ぎ、再び前線に送り込む…姉もそうして沈んでいきました。」




提督「ッ…」




明石「提督、私は姉を自分の手で殺めてしまったのでしょうか…」




提督「…どういう事だ?」




明石「自分の身体能力が無いばかりに姉と戦えず、ましてや工作艦という立場で戦いを強要した…これでは姉は深海棲艦に殺されたのか私に殺されたのか分かりません…私は…何も出来なかった…」




提督「それは違うぞ、明石」




明石「…え」




提督「確かに工作艦という立場である以上、艤装の修理と艦娘の治療をしなくてはならない。だがしかし、それによって救われた艦娘もいるはずだ」




明石「…!」




提督「素人が艤装を整備すれば必ず故障する。それが戦闘中ならば間違いなく沈められる。でも君の高い技術で整備された艤装は全く故障しなかった。たったそれだけの事だと思うかもしないが、逆に考えると、たったそれだけのことをしただけで君は多くの艦娘を救っていると言えるだろう。他の艦娘にとっては君は『救い』なのではないか?」




明石「…でも私は、瀕死の姉に何もしてあげられなかった…!見殺しにしたんですよ!?」




提督「そうかもしれない……だが、」




明石「…!」




提督「さっき君は姉から『あなたなら安心だ』と言われたと言っていたな。それは妹へ命を預けることが出来るくらい信頼していた証じゃないか?最後まで戦った末に最も信頼する妹のために戦う…彼女にとっては本望だったんじゃないか?」




明石「そうですか……?」




提督「もちろん、彼女の思いは測ることは出来ない。俺たちはいつも未練を残して逝った者たちのことを想ってばかりいる。時には仲間の死を正当化したり、生かされた者たちにとって都合がいいようにその人の思いを変えていってしまう。そうしないと正気を保てなかったんだ。



…俺はこの状況を変える必要があると思う。電とも話したが彼女も親友を失った悲しみを抱いている。この泊地にはそういった者は大勢いるだろう。君は姉を亡くし、絶望した。そして君が沈めば、家族が悲しみ、絶望する。



俺はこの負の連鎖を断ち切りたい。なんとしてでも。」




明石「提督…」




提督「だから…明石、もう悲しむのはやめよう。姉の分まで生きて、戦おう…な?」




明石「…姉が沈んでから私はずっと自分を偽り続けてきました…姉を思い出して、どんなに悲しく、苦しい時も、私は平静を装っていました。



そしていつの間にか私は自分の本当の感情を見失ってしまいました。足柄さんを建造する際も電に『楽しみですね』と無意識に言っていました。ほんとうは楽しくなんかないのに…



提督、私に…今…何が残っていますか…?」




提督「…君という存在が残っているじゃないか」




明石「…存在…?」




提督「君がいるからこそ俺たちはここにいる。存在があれば、なんだって出来るじゃないか」




明石「…中身は空っぽじゃないですか…」




提督「……明石」




明石「…はい」




提督「外へ行こうか」




明石「え?」




提督「いいから、ほら、行こう」ギュッ




明石「えっ、えっ、ちょ」アタフタ



















































〜砂浜〜








明石「どうしたんですか急に?」




提督「もう夕方か…」




明石「提督…?」




提督「ほら、夕日が綺麗じゃないか…見てみろよ」




明石「…提督、そのセリフは…」




提督「……」




明石「………」(夕日を見つめる)




提督「………」



























明石「…………きれい…」



















































提督「明石」




明石「はい…」




提督「さっき悲しむなと言ったばかりだが…」




明石「?」




提督「俺はすごく悲しいッ!!!!!」




明石「!?」ビクッ!!




提督「悲しい時に本気で悲しめない、苦しい時に誰にも助けを求めない。そんな君が悲しい!!!」




明石「…!」




提督「どうして素直に悲しめないんだ!!どうして助けを求めないんだ!!」




明石「っ!」




提督「泣きたいときは泣けばいい!!苦しいときは『助けて』と言えばいい!!なのにどうして…!!」




明石「……」




提督「何をためらう必要がある?何を我慢する必要がある?」




明石「そっ、それは…」




提督「姉の事をどうして素直に想ってやれないんだ?」




明石「だ、だってみんなが…いるから…」




提督「他の娘も悲しいときは悲しい。苦しいときは苦しい。だから…何も我慢しなくていい。泣きたい時に泣けない。苦しいだろう…?」




明石「だけど…」ウルウル




提督「いいんだ…明石…今は何にも縛られなくていい…感じているものをそのまま出せばいい…今だけでもいいから…」




明石「……っ」グスッ




提督「姉のためにも…泣いてやれよ…」




明石「…うっ…ううっ…くっ…」ポロポロ



提督「……」




明石「ううぅっ…うっ…うぁぁ……」ポロポロ




提督「…」ギュゥ




明石「ううぅぅぅぅっうっうっ……」




提督「自分のことばかりで君の悲しみに気付いてやれなかった…ごめんな…」






















































〜30分後〜




提督「明石…?」




明石「すー……すー……」




提督(泣き疲れるほど…辛かったんだな…ごめん…明石…俺はまだまだだな…病室まで運ぶか)




明石「すー……すー……」ガシッ




提督「…行こうか」


















































〜病室〜


ガラガラ


提督(文乃は…まだ目覚めてないか。とりあえず、明石は文乃の隣に寝かせておこう)




コンコン シツレイシマス...




提督(この声は…大淀…?)




ガラガラ




大淀「…提督探しましたよ…一体どこをほっつき歩いていたんですか?」




提督「ちょっと明石と夕日を見に…」




大淀「冗談が言えるのは今のうちですよ」




提督「冗談じゃないんだが」




大淀「…とにかく、提督、緊急事態です」




提督「ッ何が起きた?」




大淀「先程、泊地近海を航行中の友軍艦隊からの救難信号を受信しました」




提督「救難信号…?」




大淀「鉄の珊瑚礁への遠征中にどこからともなく砲弾が降ってきた…と。恐らくは…」




提督「『例の国』の艦隊と鉢合わせた、か」




大淀「そうだと思われます。提督、どうしますか?私からは救援を提案します」




提督「…どうしたものか…ちなみに大淀、『例の国』の艦隊の戦力は?」




大淀「戦艦2、重巡1、駆逐3です」




提督「味方は?」




大淀「駆逐4隻のみです」




提督「まずいな…」




大淀「提督、ご命令を」




提督「…助けに行こう。大淀、金剛型4隻と赤城と加賀に通達。出るぞ…」























































〜宿舎内〜




ピンポンパンポン




『臨時出撃、臨時出撃。これから呼ばれた艦は直ちに出撃の準備をせよ…金剛、比叡、榛名、霧島、赤城、加賀……繰り返すーーー



金剛「やっと出撃ネ!提督の期待に応えてみせるネー!」




比叡「久しぶりの出撃…腕が鳴りますね!お姉様!」




榛名「榛名は大丈夫です!」




霧島「何一つ問題ないわね!」







赤城「もぐもぐもぐもぐ…(夕飯の前のご飯食べてるのに…)」




加賀「もぐもぐもぐもぐ(このご飯は譲れません)」




吹雪「ちょっと赤城さん加賀さん!?いつまで食べてるんですか!?出撃ですよ!!」




赤城「もくもぐも、もくもぐ(仕方ないわね、行きましょう、加賀さん)」




加賀「もくもぐも、もくもぐも(赤城さんが言うなら…仕方ないわね)」









































〜工廠〜


金剛「Hey提督!一体何事ネー?」



提督「それが、この泊地近海を航行中の友軍艦隊から救難信号を受け取った。どうやら『例の国』の艦隊と鉢合わせたようだ。相手は戦艦2隻を含む高火力の艦隊、それに対して友軍は駆逐艦4隻のみと大変危険な状況だ。至急救出に向かわないと全滅は免れない」




榛名「そんな…!早くしなきゃ!」




比叡「アメリカ……なんでこんなことしてんのよ!!」




霧島「だから、私たち戦艦が起用されたのね」




加賀「私と赤城さんは何をするのかしら?」




赤城「確かにそうね、相手は空母がいないのに私たちの出番はあるのでしょうか?偵察だけなら戦艦の皆さんだけで十分ですが」




提督「…まず、赤城と加賀が相手に対して艦載機を放ち錯乱させる。その隙を突いて金剛型4隻が友軍駆逐艦を安全な海域まで誘導、援護する。 


その際、発砲は許可するが極力至近弾か、艤装に当てろ。身体には当てるな。


空母勢も雷撃はするな、爆撃は至近弾までに抑えろ」




赤城「何故でしょうか?」




提督「相手を出来るだけ傷つけたくない…ただそれだけだ」




榛名「どういう意味ですか?」




提督「艦娘といえども元は人間だ。人間どうしが、争って何が得られる?傷をつけ合えばつけ合うほど争いが生まれる。そうだろ?」




榛名「確かに…その通りかもしれません…」




提督「人間どうしが争うことほど虚しいことなんてない。俺はそんなことをするつもりは毛頭ない……さぁ、出撃するぞ。時間はない。みんな急いでくれ。旗艦は霧島に任せる。大淀、友軍は今どんな状況だ?」




大淀「はい、何とか離脱して島陰に隠れたようですが、全艦が何かしらの損害を被っているようです。中には航行不能の艦も…しかも包囲されつつあるとのことです」




提督「何とか生き延びてくれたか…良かった…」




霧島「提督、全艦出撃準備整いました!いつでも行けますっ!!」




提督「…これより、友軍の救出作戦を実施する。全艦、出撃!!!」












































〜泊地近海〜


ザ--------  


榛名「久しぶりの海、ですね…」




金剛「いつでも海は綺麗ネー」




比叡「なんだか落ち着きます。不思議…」




霧島「お姉様方、警戒を怠らないようご注意を。あともう少しで日没です。日が沈む前に作戦を遂行しましょう」




金剛「分かってるネー!!全く霧島は心配性ネー」











赤城「…本当に久しぶりね、加賀さん」




加賀「ええ、腕が鈍ってないといいのですが…」




赤城「日頃の鍛錬の成果を発揮する時が来たようね…」




加賀「……」




赤城「加賀さん…?」




加賀「…赤城さん」




赤城「何ですか?」




加賀「赤城さんは先ほど提督の『艦娘といえども元は人間だ』という発言についてどう考えていますか?」




赤城「そうね…難しいことだと思っているわ。戦うために身体を改造され、傷付けば薬品に浸される生物。果たしてそれは『人間』なのか『兵器』なのか。


少なくとも提督は私たちに人間として接してくださっている。でも、他から見ればやはり私たちは『兵器』に見えてしまうのでしょう…


では、私たち自身は自分をどう認識しているか。加賀さん、『あなたは何ですか?』」




加賀「私、は……『人間』です」




赤城「その根拠は?」




加賀「…自分の意思で動き、話し、感じることができるからです。機械や兵器ならそのようなことはできないはず…」




赤城「そう、私たちになくてはならないもの…それは『自分の意思』だと私は考えているの。人間が人間たる所以でもあり、個性を生み出す源。 


意思がなくなれば、もはや人間ではない。だからこそ自分の意思は貫かなくてはならない。どんな姿になろうとも、意思があれば人間でいられるわ」




加賀「…私は時々、自分とはどんな存在なのか分からなくなります。これまでの『全て』を捨て、統制された『全て』を与えられる。死ねば次が引き継ぎ、同じことを繰り返す…


艦娘ほど混沌とした存在は無いでしょう。その中で自分を確立させるのは難しい。


…だけど、意思を持てば、おのずと自分は見えてくるのね」




赤城「ええ。だから加賀さん、自分の意思を忘れないで」




霧島「赤城さん、加賀さん、もうすぐ会敵するはずです。艦載機の発艦をお願いします」




赤城・加賀「「了解」」




赤城「さぁ、加賀さんいきましょう」




加賀「はい、赤城さん」




赤城「…零戦52型、発進!」キリキリ......バシュッ!!




加賀「同じく52型、発進」バシュッ!!




赤城「続いて彗星12型甲、発進!」バシュ!!




加賀「発進」バシュ!!




赤城「発艦完了です!」




霧島「了解」




比叡「友軍艦隊の信号を受信!!早く行くよ!」




榛名「島が見えました!」




金剛「さすがマイシスターネ!」




霧島「全艦、戦闘用意!!」




















































〜泊地近海〜


???「すっかり縮こまっちゃったわね、あの娘たち」



???「ふふっ、かわいいものね。追い詰められて、出口を塞がれれば、残るのは『絶望』のみ。そうでしょう?『コロラド』」



コロラド「全く、あなたも意地悪ね…包囲なんてしなくても駆逐艦4隻だけならすぐに片付けられたのに。でも、そろそろ始めた方がいいわよ。援軍を呼ばれたようだわ。敵機の反応がある。VT信管の出番よ『アイオワ』」



アイオワ「もう少し早く片付けておくべきだったわね。まぁいいわ、VT信管で一網打尽よ」



コロラド「あまり数はないから注意して使うのよ」



アイオワ「いざとなったら駆逐艦を盾にすればいい」



コロラド「…やっぱり最低ね」



アイオワ「代わりはいくらでもいるもの」


















無論、私の代わりもね





































〜とある島陰〜


???「…いっ…つ…」



???「『満潮』…!?しっかりして!!」



満潮「くっ…!…私は…まだ…!」



???「まずいわねぇ…『朝潮』姉さん、援軍はまだ?」



朝潮「あと少しで来るはず…!それまでは耐えて!こんな所でやられるわけには…!『荒潮』『大潮』敵はどう?」



大潮「まだ動いてない!だけどなんだか空ばかり見てる!」



荒潮「もしかすると援軍が近いかも…」



親潮(お願い…早く…!!)





































〜アイオワ達とは反対側の海域〜


???「はぁ…」



???「こら『サミュエル』ため息吐かない!」



サミュエル「だって私たちが何やってるか分かんないんだもん…『ジョンストン』だってこんなことして意味があると思ってんの?」



ジョンストン「仕方ないでしょ!?命令なんだから!」




???「もう、2人ともやめて!なんでいっつもこうなるの…」



サミュエル「…『フレッチャー』はどうなの?こんなことして意味があると思うの?」



フレッチャー「敵の早期発見・監視と旗艦の護衛…レーダーピケット艦はこれが仕事なの。退屈でも大切な役目だよ」



サミュエル「そういうことじゃないんだって…」



???『こちらヒューストン。あなた達、敵の増援が来たわ。艦載機が約60。総員対空警戒を厳として!VT信管の使用も許可が下りたからね』


フレッチャー「こちらフレッチャー。了解です」



ジョンストン「ジョンストン了解!」



サミュエル「…サミュエル、了解しました」





























赤城「霧島さん!敵艦隊発見しました!1時の方向に戦艦2!正面に重巡1!10時の方向に駆逐3!」



霧島「了解!索敵感謝します!これより救出活動を行う!」



金剛「やっと私たちの出番よ!」



比叡「絶対に負けない!」



榛名「必ず助け出します!」



霧島「空母部隊は後方から艦載機による撹乱攻撃。艦爆は急降下爆撃をあえて至近弾で。艦戦は低高度からの接近、機銃で敵の注意を引く」



赤城「了解しました!」



加賀「了解」



霧島「我々は包囲網を突破、友軍を安全な海域まで護衛する」



金剛「華麗に助けてみせるネー!!!」



比叡「了解!」



榛名「分かりました!!」



霧島「…作戦、開始!!」





































コロラド「アイオワ!来たわよ!!」



アイオワ「分かってるわよ。対空射撃用意」



コロラド「ヒューストン、そっちはどう?」



ヒューストン『こちらヒューストン。まだ会敵しません。艦載機は見えるんですが、狙いは駆逐艦の娘とお二人のようです』



コロラド「分かったわ。駆逐艦の娘にも状況を報告させてちょうだい」



ヒューストン『…駆逐艦のレーダーには敵機と敵艦の反応があるみたいです』



コロラド「分かったわ、十分注意して」



アイオワ「相手は私たち戦艦に撃たせないつもりね」



コロラド「この包囲網を突破するなら必ず駆逐艦がいる方に向かうはず…ていうか、なんで戦艦の戦力を二分しなかったの?」



アイオワ「そこまで分かっててなんで最後がわからないのよ…私たちの位置と駆逐艦の位置を考えてみなさい。そうすれば分かるはずよ」



コロラド「直線上に位置しているわね。あとは島と島の間に通れそうな場所がある。敵はその先にいる。さらにその先には駆逐艦が…それに何の関係が……ってまさか、あなた…!?」



アイオワ「分かったようね。それじゃあ始めましょうか…射撃開始」



ダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!



アイオワ「…っさすがに上空直掩が無いとキツいわね…2、3発くらうかも」



ドドドドド!!!  ドォン!! ドォン!! ドォン!!



コロラド「…あなたほんっとにに最低よ!?」



アイオワ「何度でも言えばいいわ」



コロラド「……ハッ!アイオワ!!上っ!!」



アイオワ「…チッ!!(これは直撃コースね…!シールド展開!)」



コロラド「避けて!!」




ドオオオオオオオオオオン!!!!! ドオオオオオオオオン!!!! トバァァァン!!!! バキィン!!!




アイオワ「チッ……(シールドが…ホントもろいわね)」





ドバァァァァァァァァン!!!!! バキィン!!!



コロラド「ううぅっ……(もうシールドがダメに…!?)」



アイオワ「コロラド、第二波来るわよ」



コロラド「なっ!?」



ドバァァァァァァァァァァ!!!!!



コロラド「くっ…(って、至近弾…か)」



アイオワ「危なかったわね」



ダダダダダダダダ!!!! ドドォン!!!!



コロラド「次!来るわよ!」



ドォォン!!! ドトォォォォン!!



アイオワ(至近弾ばかりね…相手は下手なの…?いや、そんなはずはない。確実に私たちを捉えていた)



コロラド「対空砲がダメに…」



アイオワ「コロラド、何かおかしいわ。私たちを捉えているはずなのに至近弾ばかりだわ。」



コロラド「…確かに…でもどうして…」



アイオワ「…コロラド、雷撃が来てる。9時の方向」



コロラド「!?!?」



ドドドドドドドド!!!!!  ブォォォォォォォン!!!



コロラド「うっ…!……あれ?当たって…」



アイオワ「雷撃機じゃない…?」



コロラド「あれただの戦闘機じゃない!!」



アイオワ「相手は何を考えているのかしら…」



コロラド「全く分からない…」



アイオワ「…わざと外してるのかもね」



コロラド「何のために…」



アイオワ「さぁ…相手は相当人道的な娘なのか、はたまた艦娘どうしで傷つけ合うことを恐れている腰抜けか…」



コロラド「…」



アイオワ「まぁ、どっちにしろ私たちが攻撃しやすいことには変わりはないからね。相手が手加減したからといって、『私は』それに合わせるつもりは無いわ。私は、自分がやりたいことをやるまでよ」



























霧島「正面に敵艦見ゆ!全艦、砲戦よーい!!」



金剛「一撃でやるネ!」



比叡「はい!お姉様!」



榛名「急がなくては!!」












ヒューストン「…ッ!来たわね…!アイオワさん!こちらヒューストン!敵艦隊発見!これより交戦します!!」



アイオワ『無理しなくていいわよ。あなた1人じゃ分が悪いから、出来るだけ損害を与えたらこっちに合流して』



ヒューストン「了解!(なんで2人ともこっち来ないの!?私だけって酷くない!?…まぁいい、早く合流しよう)」










コロラド「助けに行かなくていいの?」



アイオワ「敵がヒューストンを突破した後、駆逐艦と遭遇して戦闘が起きるはずだから、その前にこっちに来させればいい。」



コロラド「…本気でやる気!?」



アイオワ「ええ。もちろん、あなたも撃つのよ?」



コロラド「な!?」



アイオワ「敵を目前にして撃たない理由など無いでしょう?」



コロラド「あなたが意図的にそう仕向けたんじゃない!!」



アイオワ「何度も言ってるでしょ?『代わりはいくらでもいる』って」



コロラド「だからって…!!こんなのあんまりよ!!」



アイオワ「深海棲艦相手にもそんな事言う気?」



コロラド「う…!」



アイオワ「そもそも、戦果も挙げずにのこのこ帰ってきたらどうなるか分かってるわよね?あなただけじゃない。連帯責任よ」



コロラド「…なんでわざわざこんな事したのよ!?包囲なんかしなくたって駆逐艦4隻なんか簡単に沈められたのに!!!」



アイオワ「試してみたかったのよ」



コロラド「…?」



アイオワ「あの娘たちならどうするか、を」
































霧島「全門斉射!!」


ドドドドオオオオオオオォォォォォォォン!!!!!



ヒューストン「くっ!!(避けきれない…!)」



ドバァァァァァァァァァァン!!!! バキィン!!!



ヒューストン「ぐぅっ!(…なっ!?シールドが貫通された…!?なんて威力…!!)」



比叡「次で決める!!」



霧島「全艦!主砲に狙いを定めて!!」



ヒューストン「ッ!!(このままじゃ死ぬっ!アイオワさんたちのところへ撤退しなくちゃ!)」



ザァァァァァァァァァ!!



霧島「!?」



金剛「逃げた…」



榛名「これも作戦…なのかしら」



霧島「と、とにかく先を急ぎましょう!もう日が沈みます!!」



比叡「なんか、あっけないね…」



























ヒューストン「こちらヒューストン!敵艦隊と交戦しましたが、圧倒的不利なため今撤退します!!」



アイオワ『分かったわ』































ジョンストン「え!?こっちに来る!?」



フレッチャー「えっ」



サミュエル「…」



ジョンストン「て、敵艦の数と艦種は…?……戦艦4と空母2!?それを私たちだけで!?…ちょ、ちょっと待ってください!!それはあまりにも無茶な…あっちょ、待って!!」



フレッチャー「ジョンストン何があったの!?」



ジョンストン「敵艦隊がこっちに来てるって…しかもそれを私たちだけで相手しろって…援護はするって言ってたけど、こっちに来るまで時間がかかるし…どうすればいいのよ!!」



フレッチャー「勝ち目なんて無い…」



サミュエル「結局こうなるんじゃん…本当に意味が分からない…」



ジョンストン「あんたもぼやいてないで何か考えなさいよ!!」

















サミュエル「投降する」
















ジョンストン「……は?」



フレッチャー「それって…」



サミュエル「包囲している駆逐艦を解放する。私たちも戦わない」



ジョンストン「な、何言ってるの!?そんな事したら…」



フレッチャー「私たちただじゃ済まないよ…最悪解体されて軍から追い出される…その後私たちが横取りをしていたことを隠すために口封じで殺されるよ…!」



サミュエル「こんな無意味なことをしているくらいだったら解体された方がマシ。艦娘どうしの争いなんて人間どうしの争いと同じじゃない…」



ジョンストン「あんた…」



フレッチャー「!!レーダーに感あり!敵艦隊がすぐそこまで…!!」



サミュエル「行ってくる」



ザァァァァァァァァァァァ!!!



ジョンストン「ちょっと!?どこ行くのよ!?」







































霧島「レーダーに感ありね!全艦!砲戦よーい!」



金剛「駆逐艦なんて軽く一捻りネー!」



比叡「さっさと倒して救助に行きましょう!!」



榛名「お姉様!油断は禁物ですよ!」















サミュエル(一か八か交渉を持ちかける…!)



ザァァァァァァァァァ!!!



サミュエル(この機会を待っていた…!)





















霧島「全艦、単横陣になって待機!遠距離から制圧する!雷撃には十分警戒して!」



比叡「私たちの速さなら魚雷は回避できる!止まる必要は無いよ!!」



金剛「確かにそうネ!霧島、ちょっと慎重過ぎじゃない?」



霧島「1隻でも被雷すればその分救出のリスクが跳ね上がります。確実に味方を助けるためにもここは慎重に行動するべきです」



榛名「その通りね。お姉様、一刻も早く助けたいという気持ちは分かりますが、ここは一旦冷静になって…」



金剛「そこまで言うなら仕方ないネー」



比叡「そうね…」



榛名「…!敵艦が見えました!…って1隻だけ…?」



金剛「帽子を振ってる…」



比叡「どうしたんでしょうか…」






















サミュエル(出来るだけ敵意が無いことを知らせなくちゃ!!……あとは発光信号で…)



チカチカチカチカチカ



























霧島「発光信号…?…わ、れ、て、き、い、な、し、う、つ、な……投降する気なの?」



榛名「もしかしたら罠かもしれません。落ち着いて考えましょう」



金剛「変ネ…さっきの重巡は敵意があったのに…」



比叡「帽子を振ってたのは白旗って意味なのかな…」
















サミュエル(お願い…!撃たないで…!!)



















比叡「霧島、どうする…?」



霧島「…私たち四隻であの艦を包囲します。そこから話し合いましょう。赤城さんと加賀さんは周囲の警戒と他の5隻の監視をお願いします」



赤城「了解」



加賀「分かりました」


















サミュエル(ッ!?こっちに来る…!ダメだったか…!?)











霧島「動くな!!武器を捨てろ!!さもなくば撃つぞ!!」



ザァァァァァァァァァァァァ








サミュエル  ガジャッ!! 







霧島「あなたを完全に包囲した。下手に動けばハチの巣になるわよ」



サミュエル「元からあなた方に攻撃するつもりはありません。私はただ話し合いがしたいだけです」



霧島「…悪いけど、今そんなことをしている時間はない。あなたたちが包囲している見方を助けるのが私たちの任務だから」



サミュエル「その駆逐艦の͡娘たちのことで話があるのです」



霧島「…!」

























サミュエル「今から我々が包囲している駆逐艦4隻をあなた方に引き渡します」






































~15分ほど前~




ジョンストン「…チッ!あいつ無線切ったわね…!」



フレッチャー「レーダーには映ってるけどこのまま追うのは危険かも…」



ジョンストン「なんてことしてくれたのよ…!」



フレッチャー「とにかく…アイオワさんたちに連絡しないと…」



ジョンストン「…」



フレッチャー「ジョンストン…?」



ジョンストン「連絡したら私たち殺されるわよ…」



フレッチャー「じゃあ…どうすれば…」



ジョンストン「私たちだけで何とかするしかない」



フレッチャー「そんな無茶な!?いくらなんでも…」



ジョンストン「もうこうするしかないわ…作戦があるの、聞いて。まずは…」





















アイオワ『こちらアイオワ。困ってるみたいね。2人とも』





















ジョンストン「な!?アイオワさん!?」



アイオワ『状況は既に把握済みよ』



ジョンストン「な、なんで…」



アイオワ『言ったじゃない。援護するって』



ジョンストン「援護と言ってもまだ何も…」



アイオワ『上を見なさい』



ジョンストン「上………あっ!?」



ブ---------ン



アイオワ『私だって水上機くらい積めるわよ?』



フレッチャー「いつの間に…」



アイオワ『ま、安心しなさい。お咎めは無しよ。まだあなたたちはやってもらう事があるから』



ジョンストン「やってもらう事…とは…?」






























アイオワ『…敵艦隊をおびき出しなさい。いいわね?』




















第二話 完

____________________________________















後書き

お読みいただきありがとうございます!!よろしければコメント・応援・評価よろしくお願いします!!




もっと知名度上げたいから誰かYoutubeとかに転載してくれないかなぁ…(貪欲&他力本願)



概要を書き直しました 8/1 0108
内容を一部変更しました 12/5 1828


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2件評価されています


SS好きの名無しさんから
2020-10-04 23:57:35

SS好きの名無しさんから
2020-08-04 01:56:58

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SS好きの名無しさんから
2021-03-02 23:06:31

SS好きの名無しさんから
2020-08-04 01:56:59

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2020-10-05 00:03:03 ID: S:hyqgFc

このシリアス展開好き....更新楽しみにしてます!

2: ししろこ 2020-10-05 18:03:50 ID: S:6LB8kH

>>1様
うれしい…嬉しすぎる…ッ!!!ありがとうございます!!!!
画面を見ながら思わずにやけてしまいました。3作目はあと少しで公開できそうなのでもう少しお待ちください。死ぬ気で書きますから!!


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