救い ⑤
トラック泊地に突如として現れた謎の人物。彼女の目的は「サミュエルを捕獲すること」。そしてサミュエルは、米国海軍の何かしらの「秘密」を握っており、水面下で行われる小競り合いによって提督を取り巻く状況はより複雑化する。
一方、目を覚ました足柄は、ドックの方から聞こえる声の元へと歩いてゆくと…?
提督…トラック泊地在任。謎の人物から襲撃を受ける。
サミュエル・B・ロバーツ…『元』アメリカ海軍太平洋任務部隊所属。アメリカ海軍の機密を知っているらしい。
赤城…一航戦旗艦。友軍救出作戦で航空支援を行った。
加賀…一航戦所属。赤城と共に友軍救出を支援。
扶桑…扶桑型戦艦1番艦。性格に難があり、周囲から疎まれがち。
山城…扶桑の姉妹艦(無血縁)。扶桑同様に曲者。
サミュエル「う"ッッ!!!!」ドサッ
提督「!?サミュエル!!!!」
サミュエル「」
提督「クソッ!!!」チャキッ
パァァァァン!!!!!
???「…無意味」
提督(脚に当てたんだぞ!?なんで立って歩いて…まさかアイツは…!?)
???「…返して」
スッ…
提督「おい待て!!!そこから動くな!!!」チャキ
???「…銃が効かないって分かってるはず」
提督「……お前、艦娘だろ」
???「…だったら何?」
提督「サミュエルを抱えてどうするつもりだ」
???「…答える必要はない」
提督「なら答えてくれるまでここにいてもらおうか」
???「…やだ」ダッ!!
提督「ッ!!」チャキ
パァァァン!!! パァァァン!!!
提督「待てッ!!!」ダッ!!
電「司令官!!!」バッ
提督「電!!あいつを止めろ!!」
電「はいっ!!!」ダッ
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【トラック泊地:食堂】
赤城「…なにか聞こえませんでした?…ほら、また聞こえた」
加賀「これは…銃声?」
赤城「確か…今提督はサミュエルさんと話をしているんじゃ…」
加賀「…嫌な予感がします」
赤城「加賀さん、行きましょう」
加賀「ええ」
朝潮「さっきから騒がしいわね…提督も『執務室には当分来るな』っておっしゃってたし。何かあったのかな…」
荒潮「サミュエルちゃんはどうなったのかしら~」
大潮「…あれっ?扶桑さんたちがいないよ?」
朝潮「ホントだ、いつの間に…」
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【トラック泊地:廊下 1時間前】
扶桑「…山城、万が一何かあった時に提督をお守りできるよう、しばらくここに隠れましょう」
山城「はい、姉様」
扶桑(あの国の事だもの…必ず何か起こるはず)
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コンコン…
扶桑(…!やはり来た… )
山城「お姉さま」
扶桑「山城、こっちよ。ギリギリまで近づいて」
山城「はいっ」
パァァァァァァァァァン!!!!!!!!
山城「ッ!?提と…ムガッ!」
扶桑「山城、落ち着きなさい。今じゃないわ」
山城「で、でも!」
クソッ!! パァァァァン!!!!
山城「提督…!」
扶桑「山城、先回りするわよ。このまま執務室に入れば乱戦が起きるわ」
山城「先回りってどこに…」
扶桑「出撃ポイント、『錨地』よ」
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【トラック泊地:錨地】
???「ハッ…ハッ…ハッ…」タッタッタッ
サミュエル「…」
???(…無い)
扶桑「お探しの物はこちら?」コンコン
???「ッ!!」チャキ
扶桑「あなたの艤装は預からせていただきます」
山城「これで帰れないわよ」
???「…チッ」
提督「さて、おとなしく武器を捨ててもらおうか」チャキ
???「…」ポイッカチャ
電「そこにひざまずくのです」チャキ
???「…」スッ
赤城「提督!!ご無事ですか!?」タッタッタッ
提督「大丈夫だ」
扶桑「提督、彼女はアメリカ艦で間違いありません」
山城「初めて見るタイプの艤装ね…新型かしら」
???「…」
提督「…サミュエルを迎えに来たようだが…それにしては少し強引すぎないか?」
???「…」
提督「サミュエルは知られたくないモノでも持ってるのか?」
加賀(アメリカは何か秘密を抱えている…?)
???「…彼女と話したの?」
提督「…さぁ、どうだかな」
???「…そう」コソコソ
提督「とにかく、サミュエルを解放して君も話し合いの席に着いてくれないか?」
???「…彼女は我が軍の所属。それ故ここは彼女のいる場所ではない。私はただ迎えに来ただけ」
提督「サミュエルは亡命を希望した、それは知ってるはずだ。亡命された以上、二つ返事で返すわけにはいかない。だから一時的にでもこちらで保護したい」
???「…それはいけない」
提督「なぜだ?」
???「…正式な除隊届をこちらは受理していないし、彼女自身も辞めるとは一言も言っていない。許可なき除隊は許されないの」
提督「亡命するのにわざわざ除隊届を出すか?それができないからこうして命からがらやってきたんだろ」
???「…それでも…軍法上、こういった者が出た場合は即座に捕獲することになっている」
提督「…こちらも、亡命した者は保護することになっているんだよな」
???「…あくまで私は規則に従って行動しているだけなの」
山城(まるで「犬」ね)
提督「…それはこっちも同じだ。」
???「…なら…どちらかが折れるしかなさそうね」
提督「どうする気だ?」
???「…『さぁ、どうでしょうね』」
提督「…上手く言い返されてしまったな」
???「…さっきの話の続きよ」
提督「続き?」
???「…言い忘れていたことがある…軍法上、その者を捕獲する際はーー
『手段を問わないの』
提督「ッ!!!伏せーーー
電「!?」
赤城「!?」
加賀「!?」
扶桑「!?」
山城「!?」
バァァァァァァァァァァァァン!!!!!
提督「…ックッソ!スタングレネード使いやがった!!おい!!全員無事かッ!?」
電「…目がチカチカして耳がキーンとするのです…」
赤城「め、目が…」
加賀「しばらく前が見えないわ…」
山城「…提督!!艤装が…ありません!」
提督「クソッ…やっぱり逃げられたか」
扶桑「相手は相当な手練れですね」
提督「ああ…まさかスタングレネードを使ってくるとは思わなかったよ。どこに隠してたんだか…」
山城「あれって…対艦娘用ですよね?」
提督「そうだ。あと少し耳を塞ぐのが遅かったら俺の鼓膜が破れるところだったよ…まったく危ないことをされたもんだな」
赤城「提督、これからどうしますか?」
提督「追撃は不要だ。あれは容易にどうにかなる相手じゃない」
加賀「周辺海域の哨戒をした方がいいのでは?」
提督「いや、当分この辺には来ないだろう。こっちもかなり警戒しているし、何より…」
加賀「?」
提督「彼女の『目的』は達成しているからな」
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【トラック泊地:近海】
サザッ
???「…こちら『ハリネズミ』アイオワ、聞こえる?」
アイオワ《聞こえるわ》
???「…『目標』の回収に成功。これより帰投する」
アイオワ《ご苦労様。それより『ハリネズミ』って名前、似合ってるじゃない》
???「…気に入った訳じゃないわ」
アイオワ《どちらにせよ、その名前で当分動いてもらうからね》
???「…了解」
アイオワ《それと、明日の任務は無いからゆっくり休みなさい》
???「…ありがとう」
ブツッ
???「…私は『ハリネズミ』…『ネズミ』じゃないわ」
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【トラック泊地:翌日】
パッパラッパパッパパ-
提督「…誰だ…って夢、か」
シーン
提督(そうだったな。みんなに休めと言ったんだった)
【トラック泊地:執務室】
電「司令官さん、今日はみんなお休みですか?」
提督「そうだよ。特に昨日の救援メンバーには『爆弾は直撃させるな』とか『艤装以外を撃つな』とか無理な注文をしてしまったからな。その分疲れただろう」
電「…司令官、流石にそれだけでは疲れないと思うのです」
提督「…つまり甘やかしすぎている、と?」
電「はい。正直に言いますと、みんな『甘く見られては困る』って感じているのです」
提督「俺としては急な出撃だったから不都合があったかなと思ったんだがな」
電「逆なのです。みんな来る日の為に頑張っているのです。ですから…
金剛「Good morning!!テートク!!」
比叡「司令!おはようございますっ!」
榛名「提督、おはようございます」
霧島「おはようございます、司令」
赤城「おはようございます、提督」
加賀「おはようございます」
提督「こら!一気に入ってくるな!!」
電「ほら、言ったじゃないですか。みんなまだまだ元気いっぱいなのです!」
金剛「テートク!!ワタシたちまだまだ動けマース!」
赤城「心配は無用ですよ、提督!」
提督「ハハハ…参ったな、いつの間にかみんなを甘く見ていたよ。さてと…それじゃあ今日もいつも通り業務に取り掛かるぞ!!」
「「「「「はい!!」」」」」
霧島「………」
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——————お前だけは———
——————頼む——————
——————やめてくれ———
足柄「誰ッ!?」ガバッ‼︎
シーン…
足柄(…隣に誰か寝ていた跡が…)
シーン…
足柄(…ここは確か…ドック近くの病室…のはず)
「———?」
足柄(何か聞こえる…話し声?)
「———!!」
足柄(とりあえず、ここらか出て誰かに知らせないと)
私…ついに艦娘になったのね…
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明石「うぅ…変な時間に寝て変な時間に起きたから変な気分…」
???「昨日私がいない間に提督と一体何をしてたのかなー?」ジ-
明石「ちょ!意味深なこと言わないでよ『夕張』!!」
夕張「明石も年頃だもんね!」
明石「夕張も年頃でしょうが!!」
夕張「こうなったら提督に直接…」
明石「やめて!!恥ずかしいからやめて!!」
夕張「あれれぇ〜怪しいなぁ〜?やましい事でもあるのかな〜?」
明石「その話はもういいから!!今日は調達したアレを整備するために呼んだんでしょ!!」
ワイワイガヤガヤ‼︎‼︎
足柄(夕張さん?誰…?私が来た時は見なかったわね…あと…アレって何の事かしら…)
スタスタスタ…
夕張「む!?何やら視線が…」
明石「え?」
足柄「あっ…」
明石「あ!足柄さん!目が覚めたんですね!ごめんなさい、本当は術後の足柄さんをずっと見てなきゃダメだったのにすっかり夕張と話しこんじゃって…あ、紹介してませんでしたね。この娘は軽巡夕張。私と同じく機械に詳しいんです」
夕張「初めまして、あなたが足柄さんね?手術の後だけど、どこか痛いところはない?」
足柄「えぇ、今のところ大丈夫です」
夕張「へぇ〜!どこも痛くないなんてすごいね!私は全身めちゃくちゃ痛かったのよ…思い出すのもイヤだわ…」
明石「痛みがないようだし、予定よりも早く艤装工事が始められそうね」
足柄「艤装工事…?」
明石「足柄さんに闘うための主砲・機銃・魚雷・装甲・機関とかを取り付けるんです。もちろんずっと装着するわけじゃないですから安心してください、着脱式になってるんで。
足柄「とうとう私も戦えるように…!」
明石「頼もしいですね…今のところ深海棲艦の攻撃はないからとりあえずは新しい体と艤装に慣れてもらいましょうか」
足柄「はい!」
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足柄「これが…私の艤装…」
明石「そう!これが足柄さん、妙高型重巡洋艦の艤装よ!」
夕張「やっぱり重巡の艤装はいいねぇ〜この山盛りの武装は強いに決まってるよ!」
明石「いやいや、注目するところはこの装甲でしょ!!一説によるとあのアメリカ艦にも勝る装甲厚だとか!!」
夕張「あんたの目は節穴かしら?この連装5基10門の主砲の攻撃力は圧倒的よ!!」
明石「はぁ!?装甲無しにどうやって戦い抜けばいいのよ!!そんなんじゃいくら命があっても足りないでしょ!?」
夕張「じゃあ装甲があれば生き抜けるって言いたいの!?そんなの魚雷が当たったら無意味よ!む・い・み!!やられる前にやれる攻撃力が必要なのよ!…ま、『図画工作艦』のあんたじゃ分からないか」
明石「もういっぺん言ってみなさい!クレーンでその頭カチ割ってやるから!!!!」
夕張「へへーんキレてやんの〜!」
明石「」ピキピキ
足柄「はいはいストーーーーップ!!!そこまで!!はい!おしまい!」
明石「チッ」
夕張「いやーごめんね足柄さん。あの娘キレやすくてさ〜」
明石「あ?」
足柄「喧嘩はそこまでッ!!私が使う艤装がどうであれ、十分に戦えるのならそれでいいです!!」
夕張「足柄さんがそこまで言うなら仕方ないなぁ」
明石「私の方もついカッとなってしまって…ごめんなさいね。夕張、後でこっち来なさい」
夕張「えっ…」
明石「さて、そろそろ艤装工事、始めましょうか!!」
足柄「明石さん、お願いしますね」
明石「はい!明石にお任せください!!」
夕張「ちょ、わ、私は…?」
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長い間更新が途絶えており、申し訳ありませんでした。
ひとまず、以前の感覚を取り戻すために軽く内容を更新しました。
これからの「救い」シリーズですが、5話を完結させた後に、ここまでのストーリーを踏まえつつリメイクしたものをいつか公開します。いつになるかは分かりませんが、とにかくリアルが忙しいので長い目で見て頂けると嬉しいです。
また、新シリーズの執筆もローペースながら進めており、公開の場をSS投稿速報に加えてpixivの方にも拡大させてみようと考えております。このような稚拙な作品を読んでくださる方はごく僅かだと思いますが、私の作品を一人でも多くの方に知っていただき、一人でも好きだと言ってくださる方を見つけるために今後の執筆活動を行っていきたいです。
今後とも私、ししろこをよろしくお願いいたします。(20230314)
アンチコメすら湧かないゴミカス知名度のコメント欄へようこそ。
隠れた名作だと思います。
ss投稿にはこんな作品みたいにまだまだ名作が埋まってる。この作品に会えて良かったです。もうこの作者さんはいないのかもだけど…出会わせてくれてありがとう!
更新お疲れ様です!自分のペースでいいと思うのです!ゆっくりまったり無理のない速度で!少なくとも私は応援しています!頑張って下さい!