2020-04-17 14:18:27 更新

概要

オリジナルss 空の王、討伐。


グレンside


グリフィス「グォォォォ…オノレェ…!!」


顔面を蹴り飛ばしてやったのが効いたのかいっきにこちらに敵意が向いた。


グリフィス「貴様…!何故生キテイル!?」


グレン「あんなんで死ぬかってーの。いきなり攻撃してきやがって」


あの時…複数のグリフォンの姿を見たとき謎の突風に襲われた。


咄嗟に魔法で岩壁を作り無傷で守りきったのだが…自分の作った岩壁が崩れて埋まってしまったのだ。脱出するのに結構時間を食ってしまった。


そしてふつふつと感情が昂り突然攻撃してくる無礼なやつに俺は怒りを覚えた。


こっちが先に喧嘩を売られたのだ、やられっぱなしなのは我慢ならない。


ロア「……!」


ふと横を見るとあの時襲ってきた獣人…ロアだったか…?がいた。


グリフィスと戦って負傷したのか、随分とボロボロのようだ。


それに…見渡すとここは獣人の里のようだな。酷い有様だ、建物は壊れグリフォンに襲われたであろう獣人の死体がいくつか見えた。


こいつは少し…やりすぎだ。


グレン「どうやら慈悲は必要なさそうだな…そのまま背中に引っ付いてろよナル」


ナル「わかったのだ!」


グリフィス「グゥゥ…!グリフォン!コノ人間ヲ殺セ!」


「ガァァァァァァ!!!」


グリフォンの一体がこちらに飛んでくる。鋭い爪を掲げ俺を切り裂こうと近づいてきた。


グレン「…遅い!」


「ガ…ガァァ!?」


爪の攻撃を軽く避け、すれ違い様にグリフォンの首を切り裂いた。


首を切り裂かれたグリフォンは力無く地面に音を立てて倒れ込む。その姿を見たグリフィスはとても狼狽えているようだ。


グリフィス「バカナ…一瞬デ倒シタダト!?」


「ガァァァァ……!!」


他のグリフォンたちも同胞が一瞬で殺されたのを見て恐怖を覚えたのか里の獣人を襲うのをやめていた。


グレン「次はどいつが来るんだ?誰でもいいぜ。それとも…お前を先にやってしまうか?」


グリフィス「グゥゥ…!!!」


グリフィスに目を向け嘲笑う。そんな俺を見て頭に来たのか翼を大きく広げた。


グリフィス「舐メルナヨ…人間風情ガァァァァァァ!!!」


そのまま翼を羽ばたかせ、とてつもない突風を生んだ。


これは…あの時の切り裂く風か!


あの風は範囲は強力だが威力は精々木の表面に切り込みを入れる程度。岩の壁なら余裕で防げる。


グレン「……!!」


そんなことを考えていたが周りのことを思い出す。ここで自分1人とナルを守るだけでは獣人たちに被害が出る。そんなことはさせない。


あれを使うか。


魔力を練り上げ付加術を唱える。


グレン「魔法強化付加!ストーンウォール!」


巨大な岩の壁が眼前に出来上がる。その壁のおかげでグリフィスが放った突風を完全に防ぐことができた。


元々ストーンウォールは人1人分の壁しか作れない初級魔法だが、魔法強化の付加術をかければその性能を引き上げることができる。


今回引き上げた効果は、岩壁の範囲だ。


ロア「す、すごいです…!」


グレン「おい、まだ動けるか?」


ロア「え、ロア…ですか?」


予想外のことを言われたであろう表情をするロアだが、しのごの言ってはいられない。


グレン「そうだ、多分グリフィスはこの壁を壊そうと突っ込んでくる。その時に攻撃を頼みたい…いけるか?」


ロア「は…はいです!やってやるです!」


グレン「よし」


あの風攻撃がある以上、俺は里の獣人たちを守りながら戦わなくちゃいけない。完璧に守り切るには1人じゃキツい。


ここはあのロアとかいう獣人に任せよう。


俺はその隙に…"やつら"を仕留める。


グリフィス「オノレ!ソンナ壁、我ガ直接砕イテヤル!!」


案の定グリフィスが岩壁を突き破ろうと自慢の爪を向けながら飛んできた。


グレン「今だ、ロア!」


ロア「はいなのです!」


グリフィスが岩壁を爪で突き破ってきた。その直前にロアはグリフィスの顔面あたりに来るよう調節して近づいた。


グリフィス「ハハハ!我ニカカレバコンナ壁…」


ロア「はぁぁぁぁ!!!」


グリフィス「ナニッ!?グワァァァァァァ!!!??」


ロアの大槌がグリフィスの顔面に思い切り鈍い音を立ててぶつかった。やつは羽にさえ防がれなければダメージは通る。


その衝撃に耐えきれずグリフィスの巨体は地面に木々を薙ぎ倒しながら倒れていった。


流石の怪力だ。いくらグリフィスでもあれをまともに食らえば無視できないダメージを負っただろう。


よし…こっちもやるか。


グレン「身体強化…上位付加<ハイエンチャント>!!」


通常の付加術より強力な上位付加術を自身にかけ、剣を抜く。


「グワァァァァァァ…!?」


俺はグリフォンを見定め、内1匹に間合いを詰めた。


グレン「ボスのことより自分を気にかけろ…もう遅いけどな!」


「グワァァァ!??」


一太刀でグリフォンを斬り伏せ、すぐさま次の目標へと向かう。


グレン「3体目!4体目!」


「グワァァァ!?」

「ガァァァァ!?」


近くにいた2体も斬り伏せ、無力化した。


これで獣人たちを襲ったグリフォンは全滅したはずだ。


グレン「さて、後は…」


グリフィス「グヌヌヌヌ…人間如キガァァ…!!」


大変ご立腹のようだ。先に手を出してきたのはそっちだろうに。


グリフィス「グリフォン!コイツラヲ殺セ!!」


グリフィスは仲間のグリフォンに向かってそう命令を飛ばすが…なにも動きがない。


当たり前だ、なにせ命令するグリフォンは全てやられているのだから。


グレン「あんたの手下ならそこに転がってるぞ」


グリフィス「ナニ!?バカナ…我ガ倒レテタ一瞬デ…!?」


今の今まで格下と思っていた相手にここまでやられて動揺しているのだろう。不安と焦りが見える。


また被害が出ないうちにさっさと仕留めるか…いや、待て。


ロア「くっ…」


グレン「……」


この状況を見るにグリフィスは言わずも、獣人にとっては仇なんじゃないか?俺がここで直接手を下してしまうのは如何なものだろうか…


聞いてみるか。


グレン「ロア…あいつを倒したいか?」


ロア「も…もちろんです!当たり前なのです!」


グレン「だよな…じゃあ」


ロアに目掛けて、ある魔法をかける。


グレン「身体強化、上位付加!」


ロア「!!?…なんですかこれ…身体が、力が溢れてくるです!」


グレン「止めの一撃はロアが決めろ!俺は上手くあいつを引き付ける!」


ロア「…わかったです!」


そう言って一目散にグリフィスへと近づいていく。それに気づいたのか、動揺していた心を立て直しこちらに敵意を向けてきた。


グリフィス「我ガ人間如キニ…負ケルハズガナイ!!」


大きな翼を広げ、またしてもあの風を起こす気のようだ。


グレン「そうはさせない、魔法強化!ファイアショット!」


魔法陣から強化された大きな炎弾を生み出し射出する。


グリフィス「グッ、炎ダト!オノレ!!」


風を起こすのをやめ、その炎弾を翼で受け止めた。

グリフィスの翼は硬いだけではない。炎の熱や冷気も通しにくい性質でできている。


だからこの炎弾は攻撃ではなく牽制…隙を作るための魔法!


グレン「龍剣体術…!」


剣を逆手に持ち、グリフィスの眼前に飛び込む。


グリフィス「!?」


グレン「喰龍牙!!」


グリフィス「ヌ!?グォォォォ!!?!?」


空中で身体を捻らせ遠心力と身体強化の威力を乗せてそのままグリフィスの目に剣を差し込んだ。


グリフィスはこれまでにない唸り声を上げ悶え始める。


グレン「ロア!!」


ロア「はぁぁぁぁ!!!!!」


俺が呼びかけた時には既に空中にいて大槌を振りかぶっていた。動きを先読みしてたのだろう、だがタイミングばっちりだ。


ロア「これで…終わりなのです!!!」


グリフィス「グォォォォォォォ!!!!!!?!?!?」


大槌がグリフィスの頭部に直撃し、凄まじまい衝撃と共に地面へと叩き伏せた。


グリフィス「グ、グォォォ…コノ…我ガ…人間…如キ…ニ………」


その一撃を最後に、グリフィスはようやく力尽きた。


ロア「か…勝った…の…です…」


同時にロアも力を使い果たしたのか、ふらふらと眠るように倒れていった。


グレン「一件落着、か」


こうして獣人を襲った災厄を祓い、一同は勝利を収めたのであった。


ーーーーー


ーーーーー


ーーーーー


翌日 獣人の里


ロア「……ぅ…ッ!」


グレン「よう、起きたか?」


ベッドに寝ていたロアが勢いよく目覚めた。

あの戦いからロアは1日中寝てしまっていたのだ。


ロア「……」


グレン「あー…俺のこと覚えてる?一応グリフィスと一緒に戦ったんだけど…」


ロア「…覚えてるです」


即答だった。どうやら記憶は混濁していないようだ、よかったよかった。


グレン「じゃあまずはロアが寝ている間のことでも話すか」


グリフィス討伐後倒れたロアを担ぎ、ロアの家のベッドへ寝かせた。


それと、森の様子が気になった俺は当たりを偵察することにした。


予感は的中。グリフィスを討伐したおかげで森の野生動物たちは徐々に姿を現していった。


おそらくあのハンターウルフしかり、この森一帯をあのグリフィスが縄張りとしていたんだろう。


あんなものが切り裂く風を起こしながら四六時中空を飛んでいたらそりゃ逃げたくもなる。


しかしグリフィスなんて早々現れるもんじゃないんだけどな…いないとはいい切れないが炎竜の件といい大危獣種に出会う頻度が高すぎる。


これも自然発生由来じゃないと仮定するならば…人為的な可能性しかない。


そして獣人の里に戻った俺は里のみんなに英雄として祝福された。一瞬戻らなきゃよかったって思ったが神力の件を聞き出すためにはどうしても獣人の情報が必要なので仕方なくお祝いを受けるハメになった。


昨日はとてもそんなこと聞ける雰囲気ではなかったのと、ロアの様子が気になったので看病しながらロアの起床を待っていた…


大体はこんなところだ。


ロア「……」


ロアはなにかを考え込んでいるようだった。

人間になにかしら恨みを持っているのは大体察しているのでとても複雑な感情なんだろう。


ロア「ロアは…」


グレン「ん?」


突然声を出したので驚いてしまった。そのままロアは話続ける。


ロア「ロアはあの時、もうダメかと思ったのです。でも、そんなときあなたが来たです」


グレン「……」


ロア「ありえないことですが、あの時だけは…あなたが勇者様に見えたです」


グレン「え!?」


ゆ、勇者!?まさかここでそんな単語が出るとは…ていうか勇者に見えたって、一応勇者なんですけどね。


ロア「でも、勇者様は男です。でもあなたは女です。でもロアにとってあなたも勇者様みたいなのです…どうすればいいですか?」


グレン「そんなこと言われてもな…」


勇者様なんてそんなむず痒い呼び方されたくないしなぁ…別の呼び方か。


グレン「強くてかっこいい旅人さんでいいんじゃないか?」


ロア「強くて…かっこいい…」


グレン「うっ…なんでもない」


流石に自分で自分を強くてかっこいいは恥ずかしい。これはあれだ、最近会った自己誇張激しいギルド長に看過されたせいだ、あいつは絶対許さない。


ロア「…わかったです」


グレン「え?わかったの!?」


冗談のつもりで言ったんだけど今から取り消せないかな…?


ロア「っ…!」


グレン「!……ロア?」


ナル「んなっ…!?」


ロアがベッドから起き上がり、俺の腰元へ手を回して抱きついてきた。そしてこちらを上目遣いで見上げてくる。それと同時に何故かナルも声を上げる。


ロア「強くてかっこいい…あなたはロアのママなのです…!」


グレン「……え?」


今一瞬言ってることがわからなかった…ってえええ!?


グレン「な、なんでそうなるんだ!?」


ロア「ロアにとってママは強くてかっこいいのです…だからあなたはママなのです!」


グレン「えー…??」


なんとか否定したかったのだがロアの熱烈な眼差しを見てるとどうにも蔑ろに出来ない。


子どもはこういうところがずるい。


ロア「……」


グレン「はぁ…好きに呼んでくれ」


ロア「うん…!ママ…!」


ナル「んなななななな…!!」


かなり複雑な気分だがロアのうさ耳がついた頭を撫でつつあやしてやる。


これはそう、あくまで年下の子を愛でるようにだな。決して母親のようにではないぞ、絶対。


というかさっきからナルが後ろで呻き声を上げているんだが…


ナル「ぐぬぬぬぬ…!!!離れるのだぁぁぁ!!!」


ナルはそういうと俺とロアを引き剥がそうと真ん中に割り込もうとしてきた。けど…


ロア「なにするですか。ママとの時間を邪魔しないでほしいです」


ロア「ぐぬぬ!こやつ力強いのだ…!!」


グレン「そりゃ獣人だしな…ナルじゃ勝てないだろ。てかロアも抱きしめすぎだ、ちょっと苦しい」


ロア「あ、ごめんなさいママ…」


ちょっと力は緩んだが抱きつきはやめないみたいだ。離すという選択肢はないんだろうか。


ナル「むきぃぃ!!マスターこやつに甘いのではないか!!?」


グレン「そんなこと…ないと思うぞ?」


ナル「ぜっっったい甘いのだ!!わたしが抱きついてもこんな風にならないのだ!!」


グレン「ナルは余計なことばっかするからだ」


あと普段の態度とかな。


ロア「ふっ、勝ったです」


こちらからは顔は見えないが、ロアはナルに向かって鼻で笑いながらそう呟いた。


ナル「ぬ、ぬわぁぁぁ!!!!!!こいつ嫌いなのだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


なんだかよくわからないが、ロアには嫌われていないようだしこれでいいか。


今は束の間の休息を楽しむとしよう。


後書き

読んでいただきありがとうございます。


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