当たり前だと思っていた
命を捨てて愛する人を守った提督とそれによって言葉と感情を失った千歳のお話
シリアス系無理,,,
ー半月前に起きたあの忌まわしい出来事。あれを境に、私は言葉と感情を失ったー
ーもちろん仲間達は必死で私を支えてくれたー
ーだけどー
ー私はまだ、あの瞬間見てしまったものに囚われ続けているー
ー半月前ー
提督「深海棲艦の大艦隊が真っ直ぐ此処に向かっている!?」
大淀「はい、大本営の偵察機からの報告では少なくとも、レ級五隻・ル級十二隻・ヲ級十七隻と随伴艦が重巡級約二十五隻・
軽巡級約三十六隻と、駆逐級は,,,不明です」海図広げ
提督「何故情報が曖昧なんだ?」
大淀「敵艦隊の偵察を終える前に全機が撃墜されてしまったんです,,,それも、偵察に出ていた七機全てです」
提督「七機も出すということは、大本営もかなり焦っているみたいだな」
大淀「本来なら鎮守府の報告を受けた後に大本営がもう一度偵察を出すなんてことはないですから」
提督「,,,此処の防衛について意見は?」
大淀「私達の戦力を以てすれば、短時間の防衛なら可能でしょう。ただし、長期戦になれば勝機はありません」
提督「,,,そうなるよな」
大淀「はい」
提督「この位置からなら、あと半日程度で到達するな」
大淀「最短距離で到達するには波の荒い海域を通ることになりますが、敵は前代未聞の大艦隊。多少の犠牲を出しても突っ切って来る
でしょう」
提督「,,,十分後に全員を食堂に集めてくれ。現状の説明をする」
大淀「了解しました」ガチャ バタン
提督「,,,出てこい、千歳」
千歳「ばれちゃいましたか」
提督「話、聴いてたろ。はあ、初めてのケッコン記念日がこんなことになるとはな」
千歳「まったくですね,,, どうするおつもり何ですか?」
提督「,,,此処を守り切る。,,,お前もな」
提督、千歳「・・・・・・・・・・・・・・・」
大淀「提督、そろそろ」ガチャ
提督「分かった、今行く」
ー食堂ー
ザワザワ,,, ナンノハナシダロウネー? プレゼントデモクレルノカシラ? アカギサンゴハンタベナイデー
提督「よーし、静かにしてくれ」
シーン,,, モグモグ
提督「本日10,00に、敵の大艦隊が此処に向かっているとの通達が、大本営からあった」
一同「!?」 赤城「ブッッ!?」
提督「正確に分かっているだけでもレ級五隻、ル級十二隻、ヲ級十七隻が戦力の中核にいる」
提督「そこに大量の随伴艦が加算されるわけだ。この戦力に勝利出来るほどの戦力は、此処にはハッキリ言って無い」
提督「幸いにも敵艦隊が此処に到達するまであと半日ほどある。それまでに各自準備をしておくように。それと、各艦隊旗艦は
この後作戦室に集合、以上だ。解散」
テキノダイカンタイ? ヤセン!? フコウダワ,,,
ー作戦室ー
提督「よし、武蔵・長門・赤城・瑞鶴,,,全員集まったな。それじゃ作戦概要の説明だ。まず、今回の戦闘は全て夜戦になる。
それは解ってるな?そこで、この辺りの島が多い地形を利用して必ず敵と正面から撃ち合わないようにする」
武蔵「だが提督よ、夜戦なら我々戦艦や空母の出る幕はあるのか?」
提督「大有りだ。順を追って説明すると、最初に北上、大井、木曾に全酸素魚雷を三派に分けて発射してもらい、第一派の着弾と同時に
駆逐艦四隻によるサーチライト照射を行う。それで敵の気を引いている間に島影で待機させておいた大和型、長門型を
除く戦艦一同による一斉者を行い、数を減らす。他の重巡、軽巡、駆逐は外周から散発的に砲雷撃を行い、とにかく敵の撹乱を
優先する。大和型、長門型の四人は鎮守府正面から敵艦隊へ弾着観測射撃を敢行、敵を撹乱し、こちらの戦力を把握される前に
撤退に追い込むのが本作戦の最終目標だ」
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千歳(提督の作戦は上手くいった。サーチライト要因に選ばれた島風、雪風、夕立、時雨は一発の被弾も無く生還し、魚雷の波状攻撃と
島影からの砲撃、外周からの散発的な攻撃と超遠距離からの砲撃で敵は驚くほど早々と撤退行動に移った。作戦は成功したと思わ
れた瞬間、私と提督の居た通信室に衝撃が走った。爆風で吹き飛ばされ、目を開けると倒れている提督。肩には通信機のものらし
き破片が刺さっていた。急いで穴の開いた壁から外を見ると、既に撤退した筈のレ級が立っていた。バカな。そう思った直後、
提督が肩を押さえて立ちあがる)
提督「成程,,,妙に撤退が早いと思ったら、最初から目的は俺であの大艦隊は囮か,,, 千歳、避難していろ」
千歳「えっ,,,?それはどういう,,,」
私の返答も聞かず、提督は走り出す。今思えば、あそこで引き留めればよかったのだ。私は提督と出会って短くない、彼が何をしようと
しているのか、分かっていた。分かっている,,,筈だった。なぜあそこで引き留めなかったのか、何度自分の行動を呪ったか。
どれだけ悔やんでも仕方ない。解ってはいるが、私は見てしまったのだ。通信室の壁は鎮守府の裏に面していた。レ級を鎮守府から
引き離そうと裏に泊めてあるボートへ走る提督とそこへ容赦無く砲撃を浴びせるレ級。提督がボートに乗り込みエンジンを掛けよう
とした瞬間ーレ級の砲弾が着弾する。至近弾だったお陰で絶対に見たくない光景は見ないで済んだ。しかしー、戦艦の至近弾をまともに
受けた提督は木の葉の様な軽さで宙を舞い、海面へ没したー。
目が合った。宙を舞う提督と、目が合ったのだ。その瞬間、これまでの提督との想い出が驚くほど鮮明にフラッシュバックする。
嫌だ、一人にしないで。そんなことを言った気がする。
私の心中を察してのことか、それとも私の前だけでは【そういう人】だったからなのか、
最後に見た提督の顔は、私の前でしか見せることの無かった《柔和な笑顔》だった。
end
息抜き程度に作ったss
良いですね!次の作品も期待してます!