続、トラブルから始まった幸せ
【トラブルから始まった幸せ】の続編なので一作目を読んでいない人はそちらからどうぞ。
登場艦娘が増えて一人一人の出番は減りがちです。
何十人も登場させてるのに違和感の無いSSを書ける人凄い
今作から登場艦娘が増えていきます。
何分手探りなので指摘コメもしてくれると有難いです。
ーあらすじー
舞鶴鎮守府の艦娘に発見された初春型駆逐艦三番艦【若葉】。しかし急な欠員で大湊警備府へと転属になってしまうが
そこで出会った変わり者の提督と心を通わせ、金剛もビックリのスピードで恋仲となった。 おめでとう若葉
ー大湊の再建-の前にー
ー14,00-
提督「ふう,,,」(金剛達が送り届けてくれた資材のお陰で食堂の建築と工廠環境の整備、そして生活環境の改善も可能になった。
問題はどうやってそれを行うのか、だ)
若葉「悩んでいるみたいだな」お茶置き
提督「ん、ありがとな」ズズッ,,,
提督「,,,美味い」フウ,,,
若葉「そうか?少し練習してみたんだ。ふふっ」
提督(あの日の翌日から若葉が茶を淹れてくれるようになって早二日。淹れる茶はどんどん美味くなるし、あの日を境に
よく笑うようになった。あいつや金剛には詰め寄られたが、まったく幸せな限りだ)
提督「あ、そうだいいこと思いついた」
若葉「また舞鶴に助けを求めるんだろう?」
提督「ご明察」ニヤッ
若葉「ほれみろ」
この人はいつでも自分の姿勢を崩さない
提督「まあ今回は助言を求めるだけだけどな。建物とかどうするのか分からんし」
----------------------------------------------------
Prrrrrrrrrrrr,,, ガチャ
提督「よう」
舞鶴提督「どうした?今度は惚気話でも聴かせてくれるのか?」
提督「それはお前が来た時に聴かせてやる」ススッ,,, チラ
若葉「,,,」キラキラ
提督(あれ?)
舞鶴提督「そりゃ残念。で、今回の要件は?資材ならやらんぞ」
提督「いや、資材は十二分にある。それについては感謝してるよ。それより訊きたい事があってな、食堂を建てたいんだがどうすれば
いいのか分からないんだ」
舞鶴提督「,,,は?」(え?そういうのって妖精さんにやってもらうんじゃないのか?)
提督「食堂が無いのはかなり前から使われてないせいだぞ?」
舞鶴提督「いやそっちじゃなくてだな、,,,本当に分からん?」(いやこいつ舞鶴から離れて一カ月経ってないぞ!本当に忘れたのか?)
提督「分かってたら電話してねえだろ」
舞鶴提督「はあ,,,お前妖精さんのこと忘れたのか?」(まじかよこいつ、忘れてやがる)
提督「あっ,,, 若葉、妖精さんだって」
若葉「あっ,,,」
舞鶴提督「あーもうお似合いだよお前ら!」
----------------------------------------------------
提督「そんな訳で、一方的に電話切られたけど,,,」
若葉「どんな訳だ。まあ、妖精さんを頼ればいいということは分かったな」
私もすっかり忘れていた。全く出撃をしていなかったし、入渠もなかったからだろうか
提督「妖精さんは工廠にいるはずだからとにかく行ってみるか」
ー工廠ー
若葉「かなり錆びれているな」グググ,,,
提督「扉が開かないとかどんだけだよ,,,」プルプル,,,
ハーッ ハーッ ハーッ ,,,
提督&若葉「開かない」ガクッ
提督「おかしい、初日に確認した時は開いたのに」
若葉「だが事実として開かないぞ、この扉は」
提督「仕方無い、裏口を探すか,,,」
ー裏口捜索中ー
提督「そういえば電話の内容、聞こえてただろ?」
若葉「?確かに筒抜けだったが」
提督(惚気話のところでまた袖を掴んでくるかと思ってたんだが、恥ずかしがるどころか嬉しそうにしてたんだよな,,,)
若葉「私が袖を掴んでくるのを待っていたんだろう?左腕が僅かに動いていたぞ」
提督「お見通しか。でも嬉しそうにしてたのは何でだ?」(流石にこれを訊かれれば少しは,,,)
若葉「他人にあそこまで自信を持って私の話が出来るのは、少なからず私を好いてくれている証だからな。
嬉しくなるのは当然だ」
提督「///」カアアア,,,
若葉「ふふっ、今回は正真正銘私の勝ちだな提督」キラキラ
提督(可愛い,,,!!)
初めて口で提督に勝てた瞬間だ、悪くない
----------------------------------------------------
提督「駄弁りながら歩いてたらそれっぽいの発見だな、鍵は,,,かかってないのに開かない」
若葉「溶接した様な跡があるぞ」
提督「おお,,,正面も多分同じだな」
若葉「フッ!!」扉蹴破り バアン!
提督「!?」
若葉「突撃ィィィィィ!!!」ドンガラガッシャーン!!
提督「ワカバァー!!??」
----------------------------------------------------
ー工廠内ー
若葉「すまない、一度やってみたかったんだ」
提督「まあ壊したのは扉だけだしべつにいいだろ、入るにはどうせ壊さないと無理だったし」
提督が普段から素でもいいと言ってくれたのだ。なら、と思い我儘な気持ちを少しだけ出してみた。悪くない
若葉「それにしても暗いな」
一つも明かりが無い。が、視界の隅で何かが動いた
提督&若葉「誰だ!」
提督も気付いたらしい。私より少し前にいたというのに、私が視界の隅で捉えたものに反応している,,,
??「う、撃たんどいてや!」
提督(独特の関西弁、あどけなさの残る声、若葉の蹴破った扉から差し込む明かりで薄らと見えたショートの黒髪,,,)
提督「,,,黒潮?」
黒潮「!その声、榎本はん?榎本はんなんやな!?」
《榎本》それが提督の名字なのだろうか。
黒潮「よかっったあああああああああ,,,,,」抱きつき
若葉「!」
提督「よしよし,,,どうした?他所の工廠で扉を溶接して籠城とは、ただ事じゃあなさそうだな」頭撫で
黒潮「グスッ,,,うえぇ,,,,,」
若葉「ムスッ,,,」
提督「,,,一旦戻るか」(頬膨らましちゃって,,,)
ー執務室ー
提督「,,,落ち着いたか、さて黒潮。まず、現在の所属を教えてくれ」
黒潮「!」ビクッ
若葉(提督のことを知っていたということは舞鶴鎮守府,,,?だが,,,)
黒潮「いや,,,嫌や,,,帰りとうない,,,,,」頭抱え
提督(やば、いきなり地雷踏んじまったか)「落ち着け黒潮、お前を誰かに引き渡すつもりは無い」背中さすり
提督(黒潮は【舞鶴の黒潮】で名の通った実力者,,,。それが何故こんな状態に?)
黒潮「う、嘘やないやんな,,,約束してくれる,,,?」
提督「ああ、お前は誰にも渡さない」
若葉「ムスッ,,,」
少し言い過ぎじゃないか
提督(出会い頭に抱きついて泣くほどということはやはり舞鶴の黒潮だな、それも元俺の配下の黒潮だ。だがあいつが艦娘にトラウマを
植え付ける様な事をするとは思えない,,,。そういえば、あいつが舞鶴に着任してすぐ、大本営が鎮守府から何人か引き抜いて
いったって話してたな。三人だったか,,,、その内の一人が黒潮なのか?後の二人はどうしてる?だがそれなら辻褄が合う、大本営
のことだからいい扱いではなかっただろうし、それが忌々しい俺の、元配下の艦娘なら尚更の事,,,)さすりさすり
黒潮「うぅ,,,帰りとうない,,,帰りとうないんよ,,,」
提督「,,,よし分かった、じゃあこれだけ訊かせてくれ」
黒潮「なんよ,,,?殆ど答えられへんで,,,?」
提督「元々の所属は?」
黒潮「ッ,,, 舞鶴,,,」
提督「分かった。有難うな、頑張って話してくれて。今はゆっくり休んでくれ」毛布掛け
黒潮「榎本はんは,,,」
提督「俺は確認する事がある」ガチャ バタン
黒潮「,,,」
ー執務室前廊下ー
提督「どう思う、若葉?」
黒潮「,,,」聴き耳立て
若葉「舞鶴所属ではなさそうだな。私も此処に来る前舞鶴提督と会ったが、とても艦娘をあそこまで追い込む様な人ではなかった。
それに、舞鶴提督とあそこの艦娘の事なら提督の方がよく知っているだろう?」
提督「ああ。それに元々の所属と訊かれて舞鶴と答えたという事は今は舞鶴じゃないって事だ」
若葉「なら何処に?」
提督「あいつに訊くのが確実だろう、黒潮から訊き出すのは無理そうだしな」
提督(まあ、何となく予想は出来てるけどな。一緒に引き抜かれたやつらの事も)
若葉「だが執務室の電話は,,,」
提督「わかってる。こんな時の為の通信室だ」
この人は無線機を提督専用電話とでも思っているのだろうか
テクテク,,,
黒潮「,,,はあ。ホンッと、何でうちが選ばれてもたんやろ,,,二人は上手いこと逃げられたんかな,,,」寝転び
----------------------------------------------------
若葉「そうだ提督、一つお願いがある」
提督「どうした?珍しいな」
若葉「私の頭も撫でてくれ」
提督「黒潮が羨ましくなったか?,,,いつも有難うな若葉」ギュッ
若葉「ふあっ!?て、提督、私は頭を撫でてくれと,,,」
提督「嫌か?」
若葉「,,,悪くない///」
まだまだこの人には敵わない
ー通信室ー
提督「さて、あいつは出るかな,,,」
ザザッ
愛宕「どちら様ですかぁ~?」
提督「お、愛宕か。久しぶり」
愛宕「えっ、その声,,,本物?本当に提督なの?」(どうしよう、たまたま気付いたから出てみたらまさかの提督!?)
提督「おうよ、あいつ呼んでくれるか?」
愛宕「分かったわ。ちょっと待っててね?」ダッ
愛宕(何となく出てみただけなのにまさか提督からだなんて!?///)ダダダダダ,,,
ー舞鶴鎮守府執務室ー
愛宕「提督っ!」ドアバーン!
舞鶴提督「ドアを破るなって言ってるだろ金ご,,,愛宕?どうした」休憩中
響「ドアを破るのが流行りなのかい?楽しそうだねハラショー」
愛宕「通信室で,,,提督が,,,呼んでますよ,,,,,」ハアハア
舞鶴提督「こんどは無線とか何がしたいんだあいつは,,,はあ」椅子から立ち
響「何だかんだ言っても毎回出てるけどね」付き添い
ー舞鶴鎮守府通信室ー
舞鶴提督「何d,,,提督「訊きたいことがある!」キーン
舞鶴提督「お前音量ってのを,,,何だ?休憩時間に通信室まで歩かせた挙句鼓膜を破りにくるとは俺に恨みでもあるのか?」
提督「そんなことよりお前、着任してすぐに大本営が何人か鎮守府から引き抜いたって言ってたよな?」
舞鶴提督「ああ、言ったぞ」(そんなこと,,,?」
提督「それは誰だ?何人引き抜かれた?教えてくれ」
舞鶴「武蔵、摩耶、黒潮の三人だ。武蔵は戦艦、摩耶は重巡、黒潮は駆逐のエース格だった。武蔵は全体のリーダー的
存在でもあったな。それはお前も知ってるだろ?」
響「提督の口からそのことを伝えられた時は私も驚いたから、よく覚えているよ」
舞鶴提督「悪い。しっかり伝えておくべきだった」
提督「今更気にするなよ」
ー舞鶴鎮守府通信室前ー
愛宕「摩耶,,,」
----------------------------------------------------
若葉(ヘッドセットで会話しているせいで内容が分からない,,,)
提督(予想通りか。駆逐のエースだった黒潮が引き抜かれたって事は他のやつらも各艦種の実力者だろうからな)
提督「神通は無事だったのか?あいつは軽巡のエースだったろ」
舞鶴提督「〔神通は得体が知れない〕って大本営も避けてたんだよ、戦闘になると豹変するからな。暴れられると手が着けられなくなる
と思ったんだろ」
提督「成程な,,,三人のその後は?」
舞鶴提督「最初は会いに行く事も出来たんだが、ある時を境に会議で大本営に行った時も全く見なくなった」
提督「その〈ある時〉ってのは何時だ?」
舞鶴提督「お前がここを離れた十二日後。お前が大湊に着任したのがその二日後だ」
若葉(暇だ,,, ん?何だあれは)
提督「たった十二日でか,,,クサいな」
若葉(もう少しで届きそう,,,あっ)ズルッ
ガッシャーン ウワアアアアアア
提督「!?」振り向き
提督(若葉!?)
舞鶴提督「どうした?弾薬庫でも吹き飛んだか?」
提督「まだ使ってすらねえのに吹っ飛んでたまるか。色々有難な、じゃ」
舞鶴提督「,,,いつでも賑やかだな、あいつの居る所は」
響「ハラショー、楽しそうだね。ここもそうしようか?」
舞鶴提督「勘弁してくれ。このままで十分だ」
----------------------------------------------------
提督「大丈夫か?若葉」抱き起こし
若葉「大丈夫だ,,,と言いたいが大丈夫じゃないな。倒れた拍子に足首を挫いてしまった」
こんなところで怪我をしてしまうとは
提督「あと額から血が出てる」
,,,情けない
提督「足首を挫いたんじゃ歩くのもつらいだろ? よっっと,,,」抱き抱え
若葉「!?」お姫様抱っこ
若葉「,,,怪我の功名だな」キラキラ
提督「こういうのも悪くないだろ?医務室行っても何も無いし、執務室で黒潮の話を聴く間に応急処置するぞ」
若葉「ああ,,,悪くない」キラキラ
ー執務室ー
黒潮「,,,舞鶴の提督に訊いてきたんやろ?うちの事と,,,後の二人の事も」
提督「【舞鶴の黒潮】の名は伊達じゃ無いな。たった三人で大本営から抜け出すとは」若葉座らせ
若葉(ッッ,,,そんなことを言ったらまた,,,,,)
黒潮「流石やろ?伊達にエースは名乗ってへんで」フフン
若葉(もう回復している?此処に来てからまだ二時間程度しか経っていないのに,,,)
黒潮「それにしても、榎本はんが此処の提督やったなんてなあ、お陰で命拾いしたわ」
提督「,,,武蔵と摩耶はどうなった?」
黒潮「三人で抜け出して全員で舞鶴に向かう予定やったんやけど、道中陸路で包囲されてな,,,何とか全員逃げおおせたんやけどそこで
無線機の電源が切れて連絡が取れんくなって、何とか海に出たはええ物の羅針盤も壊れて舞鶴を諦めて海岸線沿いに北上して
行く内に、ふと思い出してたどり着いたんが此処やったんや」
提督「現在大本営は東京に在る,,,よく日本海側まで移動できたな。山越えもある、かなりの距離だぞ」
黒潮「海に出るなら太平洋側の方が早いけど、まず逃げ切れへんやろうし内陸側なら捜索の手も届きにくいと思ったんやけど、
山を越えたところで申し訳程度に飛ばされてたヘリに見つかってしもてな,,,山中やなかったら包囲網から脱出できへんかったわ」
提督「ほうほう,,,あっ、悪い若葉。応急処置するの忘れてた,,, って」
若葉「すぅ,,, すぅ,,, 」
提督「寝てる,,,」
若葉「提督,,, ふふっ、悪くない,,,,,」
黒潮「随分とお熱いようですなあ?」ニヨニヨ
提督「茶化すな」
黒潮「舞鶴時代頑なにケッコンしようとせんかった榎本はんが、こーんな所で可愛ええ伴侶見つけとるとはなあ?」ニヨニヨ
提督「茶化すなって」
黒潮「可愛いのは否定せんのやね」ニヨニヨ
提督「当然だ俺の嫁は可愛いぞ」
黒潮「本人には言うたん?」
提督「,,,まだだ」
黒潮「あかんよー?そういうところ、昔っから変なトコ優柔不断やねんから、あんまり待たせると向こうから離れて行ってまうで?」
提督「あーもう、お前には敵わねよ」
黒潮「よろしい。で、,,,どうするつもりなん?」
提督「包囲網を抜けてからは連絡が取れて無いんだよな?艦娘の艤装に組み込まれてる無線機を使ってたんなら紛失して大本営に
回収されてる心配も無いし、ダメ元でかけてみるか?」
黒潮「いや、うちの無線機の電源が切れる前に二人とも連絡出来んかったから、かけても無駄やで」
提督「じゃあどうやって,,,お、そうだアレを武蔵が覚えてれば、武蔵は何とかなるかもしれん」
黒潮「アレ?」
提督「秘密だ。黒潮は若葉を見ててくれ」
黒潮「はいはい」
ガチャ バタン
黒潮「ハナから助ける気やったんやね,,,。変わらへんなあ、 ,,,ホンマに」
ガチャ
提督「黒潮」
黒潮「どないしたん、忘れもの?」
提督「,,,無理するなよ」
バタン
黒潮(うちの迫真の演技もお見通し、か,,,敵わへんな提督には,,,,,)
ー通信室ー
提督「もし艦隊が窮地に陥った時の為に密かに決めていた俺と武蔵しか知らない特殊な波長の救難信号、アイツがこれを覚えていれば
使う筈,,,」
,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,シーン
提督「もう一度」
,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,シーン
提督「もう一度」
,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,シーン
提督「もう一度,,,!」
,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,シーン
提督「頼む,,,,,,,っ!!」
,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,シーン
,,,,,ピッ
提督「! やった!覚えてくれてたか。座標は,,,,,何だ,,,何でこんな所に武蔵が,,,,,?」
ー執務室ー
提督「武蔵の居場所が分かったぞ」
黒潮「! 何処なんや?」
提督「それがな,,,」
----------------------------------------------------
ー日本海、海上ー
武蔵(東経138度、北緯37度,,,私の改二記念に、行きたい所へ連れて行ってやろうと言ってくれた提督に釣りに行きたいと言ったら
クルーザーまで用意して連れて行ってくれた場所,,,。提督のアドバイスも受けながらの初めての釣りはとても楽しかった。
魚もよく釣れ、提督との二人だけの時間を満喫できたあの日の夕餉は、鳳翔さんと間宮さんが腕によりをかけて料理した、提督と
私で釣った魚と、白飯に豆腐の味噌汁。よく味の染みた煮つけ、あっさりとした塩焼き、こってりとした照り焼きに絶品の刺身。
どれも頬がとろける程美味く、〆の鯛のだし汁茶漬けは釣りで疲れた身体を癒してくれた。そして絶対に忘れられない、提督が
捌いた刺身を乗せて作った海鮮丼での船上の昼食。後日、大和から提督が休日を使って潮流や沖磯?を下見して選んだのがあの
場所なのだと聞かされた時、嬉しくて泣いてしまったのもいい思い出だ)
武蔵「本当に,,,幸せだったな,,,,,あの頃は」
武蔵(先の大規模作戦の結果提督は左遷。私を含む摩耶、黒潮は突然大本営によって引き抜かれ、鎮守府には提督の旧友と名乗る
男が着任したが、その男が提督の直接の上官だった男と気が付いた時は流石に驚いた,,,引き抜かれてしまった私達にはもはや関係
の無い事だったが。 その後は想い出したくもない。優秀な艦娘の分析と称した非人道的な実験の数々。痛覚実験、無呼吸実験、
長時間の拘束による精神への影響、限界を超えた運動による疲労度、睡眠無しでの生活。ほんの数日間でこれだけの事が行われた。
そして,,,当初から脱走のタイミングを狙っていた私達がそれを実行に移すきっかけとなった断食実験。
最初に言い出したのは摩耶だった。まだ力が残っている内に無理やりにでも脱走するべきだ、と。
異論は無かった。私も耐えられなくなってきていた上、黒潮が限界に近付いていた。大本営は警備体制によっぽどの自信が
あるのかそういったシステムは感嘆に値する物だったが、人は少なかった。人が殆ど居ない場所からの脱走はそう難しくなく、
警備が手薄になる02,00の交代の時間帯を見計らって牢をこじ開け、断食の前に胃を満たさせておくために用意されていた
のであろう食糧と燃料を拝借して正面の職員入り口から外に出て、近くの茂みを利用して海へ逃げたと思わせて山に入る。
交代の気の緩みを突かれた警備員は五分間も私達の脱走に気付かず、本格的な捜索網が張られたのは更にその十分後。
その間に私達は施設から離れて、既に山の中腹に達し、大本営が躍起になって太平洋側を捜索している間に山を越えることが
出来た。そこで一旦休憩を取り、山を降りて,,,今更こんなことを思い出しても仕方がないだろう。
結局二人とはバラバラになり、私はここで最期の時を待っている。藁にもすがる思いで提督との救難信号も発したが、そもそも今の
舞鶴提督の着任とほぼ入れ違いになる形で引き抜かれたせいで提督の消息すら私は知らないのだ。燃料も残り少ない)
武蔵「願う事ならば、もう一度,,,提督と会いたかった,,,,,な」
武蔵(このささやかな願いが聞き届けられることは無いのだろう、私はここで終わる。戦いの中ではなく、提督との思い出のこの地で)
ムサシイイイイイイイイ !
武蔵(提督の声,,,。天が僅かながら聞き届けてくれたらしいな)
ムサシィィィィィィィィ!!
ムサシイイイイイイイイイイイイイイイ!!!
武蔵(,,,おかしい、声が近付いてくる。それも、大きくなりながら)
武蔵いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!
武蔵「っっ」振り向き
思わず振り向くと猛スピードで突っ込んでくる見覚えのある船影。あの時提督が乗せてくれたクルーザーだ
私の目の前で停止すると、ずっと会いたかった人物が顔を出す
武蔵「提督!」
提督「役立ったろ?あの救難信号」
武蔵「ああっ,,,!」
来てくれたのだ
船尾から船に上がり、そのまま提督に抱きつく
武蔵「提督よ,,,」
再開の言葉も無く、提督を抱きしめる
そこに提督が居る事を確かめる為に、二度と離れないように
強く、強く抱きしめる
提督「ちょ,,,武蔵、ギブ,,,,,」
武蔵「っすまない」提督から離れ
船の中には後二人。先程から頬を膨らませている見慣れない駆逐艦と,,,
若葉「私も,,,」
提督「ギュッ,,,」無言で
若葉「,,,これはいい!」
武蔵「黒潮!無事だったか!!」(触れないでおこう)
すっかり回復した様子の黒潮
黒潮「榎本はんに助けてもらったんや。武蔵はんも元気そうで何よりや」
武蔵「,,,摩耶は居ないのか?」
提督「それについてなんだが、武蔵は何か知らないか?」
提督が駆逐艦の頭を撫でながら、船を帰路に就け訊いてくる
武蔵「いや,,,すまないが知らない。海に出る前にはぐれてしまってな」
黒潮「うーんうちと同じか,,,」
提督「満足したか?若葉」手放し
若葉「ああ」
【若葉】というのか。いい名前だが、何やら二人だけの空間を創り出している
武蔵「舞鶴に向かったのかもしれないな、今頃到着しているかもしれない」
場の空気に耐えられず、思い付いた事を言った
黒潮「うちらの元々の目的地は舞鶴やったからね、可能性で言えば一番高いのは舞鶴やと思うで」『武蔵はん、二人は恋仲やねんで』
武蔵「,,,何?」
信じられない。あれ程ケッコンを拒んでいた提督が恋愛など,,,
若葉「そう言えば提督」
提督「どした?」
若葉「このクルーザーは何処から?」
武蔵「私も気になるな、左遷されたとだけ聞いたがなぜ持っているんだ?」
そういえば提督が今どうしているのか訊いていなかった
提督「舞鶴から大湊への護送を断ってこいつで海路を行ったんだ。元帥は道中で深海棲艦か嵐にでも襲われてくれればとか思ってそうだが
無事大湊警備府に着任出来た」
武蔵「大湊警備府?あそこはもう運用されていなかった筈だが,,,」
提督「俺の左遷先として急遽運用が再開されたんだよ、碌に整備もされてない状態でだがな」
ー大湊警備府ー
武蔵「,,,此処が本当に我ら艦娘の一大拠点なのか?碌に整備されていない上に本棟以外ボロボロだぞ」
提督「クルーザーの上で言った通りだろ?」
武蔵「提督よ,,,貴様は本当に左遷されてしまったのだな,,,,,」
提督「やめろ、哀れみの眼差しを向けるな ,,,空しくなる」
若葉「とにかく執務室に行って舞鶴に確認を取ってみよう、それ次第で今後の方針も変わる」
武蔵「そ、そうだな,,,」(駆逐艦だというのにこの威厳は一体,,,?)
提督「いや、それは明日にして今日は寝よう、疲れた,,,」
武蔵「むぅ,,,確かに」
黒潮「でも何処で寝るんや?あの感じやと宿舎使えへんやろ」
提督「応急的だが二部屋修理してあるから、二人はしばらくそこで寝泊まりしてくれ。俺と若葉は執務室に布団敷いて寝る」
武蔵「一応訊いておくが、布団は二枚敷くよな?」
提督「当然だろ?」
武蔵「そ、そうか。ならよかっ,,,」
提督「当然一枚だ」
若葉「恋人の特権だな」
黒潮「ひゃーお熱いお二人さんやなぁ~」ヒューヒュー
武蔵「バカな,,,」クラッ
若葉「ついに提督と添い寝か,,,悪くない」
武蔵&黒潮(羨ましい,,,)
ー翌日、執務室ー
武蔵(やけに壁紙が新しいな?)
若葉(今夜も頼もう)キラキラ
黒潮(羨ましい,,,)
prrrrrrrrrrrr,,, ガチャ
舞鶴提督「今度はちゃんと電話できたな、えらいえらい」
提督「悪い、人払いしてくれ。重要な話だ」
舞鶴提督「無視かよ。悪い響、外してくれ」
響「間宮券」
舞鶴提督「しょうがないな,,,ほら」
響「スパスィーバ」ガチャ バタン
舞鶴提督「,,,で、人払いさせるからにはかなり重要な事なんだろ?響にも聞かせられないぐらいな」
提督「単刀直入に言うぞ、そっちに摩耶が来てないか?」
舞鶴提督「いや、来てないぞ?何でそんなことを訊くんだ?」
提督「,,,絶対に口外するなよ?」
舞鶴提督「分かった」
提督「念の為に暗号回線に」
舞鶴提督「したぞ」カチッ
提督「実は,,,武蔵と黒潮が今ウチに居る」
舞鶴提督「,,,は?」
提督「信じられないかもしれないが、元々は三人が大本営から脱走して舞鶴に向かう予定だったらしい。だが道中で包囲され、抜け出せた
がバラバラになってそのまま黒潮は海岸線に進み続けてウチの倉庫に隠れてたところを俺達が発見して、武蔵は海上で俺との
救難信号を出してたのを拾ってきたところだ。それでまだ見つかって無い摩耶は舞鶴にたどり着いたのかと思ってこうして電話
してる、というワケだ」
武蔵『あんなに包み隠さず話して大丈夫なのか?』ヒソヒソ
若葉『此処に来る前舞鶴提督と会ったが、悪い人ではなかった。提督の旧友だしな』ヒソヒソ
武蔵『ならいいが,,,』ヒソヒソ
舞鶴提督「二人は元気か?」
提督「ああ、今は落ち着いてる」
舞鶴提督「出来れば、そこに置いてやってくれ。お前と居る方が安心するだろう、本人の意思によるが,,,」
提督「だとよ。どうする、二人共?」
武蔵「私は残るぞ」
黒潮「うちも同じく」
提督「,,,というわけだ、じゃあ二人はウチに置いておくとして、本当にそっちには来てないんだな?」
舞鶴提督「疑り深いな、確かにこっちには来てない」
提督「,,,分かった、何か進展があれば連絡する。もちろん暗号回線で、な」
舞鶴提督「そっちも気取られるなよ?何処に監視の目があるかわからn摩耶「やっぱりアタシも置いてくれ!」
武蔵「!」
黒潮「!」
舞鶴提督「」キーン,,,
舞鶴提督「,,,黙っといてくれって言ってなかったか?」
摩耶「気が変わった、アタシもあっちに行く」
提督「おやぁ?どういうことですかなあ?」ニヤニヤ
舞鶴提督「気付いてただろ。お前の二ヤけヅラが目に浮かぶよ、昨日の夜海岸に居たら急に疲れ切った摩耶が出てきてな、事情を訊いて
匿ってたんだよ」
提督「他の奴らには?」
舞鶴提督「響も知らない」
提督「あの響に隠し通すのは一筋縄じゃあないだろ?」
舞鶴提督「苦労したよ、摩耶は適当な物資にでも紛れ込ませてそっちに送るってことでいいか?」
提督「またくれるのか?有難な」
舞鶴提督「大淀が居ないから任務も受けられないんだろ?昔のよしみだ。これが最後だからな」
提督「これ以上は悪いしな、これくらいで勘弁してやるよ」
舞鶴提督「どの口が言ってんだか、まあそういうことだ。発送は今日の昼頃、到着は晩になる」
提督「護衛はナシにしてくれよ?怪しまれると困る」
舞鶴提督「コンテナの中に摩耶が居る以上、護衛は付けたかったがそれで怪しまれて検問でもされたら本末転倒だしな」
提督「じゃあよろしくな」
ガチャッ
----------------------------------------------------
提督「途中からやけに静かだと思ったら、何で部屋の隅々までチェックしてるんだお前ら」
武蔵「通信を暗号化しても部屋に盗聴器があると意味が無いだろう」
若葉「だからこうして確認しているんだ」
黒潮「う~ん無いなあ,,,」
提督「あってたまるか。それに、最初に壁、天井の裏から床下まで隈なく確認してるから大丈夫だ」
武蔵「壁紙がやけに新しいのはそういうことか」納得
黒潮「流石武蔵はん、よう見とるな」
提督「そこまでやってるから堂々とあんな電話が出来るんだ」
若葉「さて提督、これで用事も終わった事だし二人に此処を案内しよう」
提督「近々改装予定だけど、一応やっとくか」
ー案内中ー
武蔵「知れば知る程悲しくなるな」ウンウン
黒潮「なんか無いと思てたけど食堂か,,,」
提督「改装すれば並程度の設備にはなるからそれまで我慢してくれ」
若葉「逆によくこんな所で今まで生活できていたな私達は」
ー簡易食堂ー
若葉「昼食はどうするんだ?何も買って来ていないぞ」
提督「この前のオムソバの材料が結構余ってた筈,,,」ゴソゴソ
提督「よし、これだけあれば四人前もとい七人前は作れるな」
あの材料を買った時はまだ二人しか居なかったのに、一体何日分の材料を買ったんだ
提督「七人前はちと時間がかかるぞ、適当に暇潰しして待っててくれ」
トントントン ジュー,,, カチャカチャ
※提督には聞こえてません
武蔵「随分手際がいいようだが、料理の腕はどうなんだ?」
若葉「前に作った時は十五分で二人前を作り終えていたな」
黒潮「味はどない?」
若葉「それは保障出来る。本人曰く〈早く・美味く〉が信条らしいからな、オムソバ限定でだが」
そうか、この二人はまだ提督のオムソバを食べた事がなかったのだ
反応が楽しみだな
武蔵「,,,若葉、この際はっきり訊くぞ。提督が今こうなっている理由を教えてくれないか」
黒潮「そういえばうちも訊いてないわ。教えて?」
若葉「,,,本人から聞いてくれ。私の言うことじゃあ無い」
本当は説明が苦手なだけなのだが
提督「できたぞー」
やはり早い、あの時の三倍近い量なのに四十分で終わってしまった
黒潮「えっ,,,,幾らなんでも早すぎへん?大丈夫なん?」
武蔵「」スッ パク,,,
提督「おおっ?」
武蔵「モグモグ,,, スッパク スッパク スッパク,,,, パクパクパクパクパク,,,,, お代わり」 スッ
武蔵は予想通り、あんなに早く食べ終えるとは思わなかったが
提督「言い食べっぷりだ、ほら」二個目差出し
武蔵「パクパクパクパクパクパクパク,,,,,」
黒潮「ええ,,,」
提督「武蔵がこんなになる程だ、味は保障するぞ?」
黒潮「確かにアレを見せられれば,,, パク、モグモグ,,,,,」
黒潮「,,,榎本はん?」
黒潮は少し違うようだが,,,
黒潮「これの作り方,,,教えて」
そう来たか
提督「解り易さは保障できないが、いいぞ」
黒潮「やった!これめっちゃ美味しい!」
此処に着任した艦娘は、皆オムソバ好きになる運命である
-----------------------------------------------------
武蔵「ふう,,,焼きそばに焼いた卵を乗せるだけであそこまで美味くなるとは、驚いた」
提督「コツは焼きそばを手の込んだ物にしすぎない事と、麺を短くする事、卵を巻くんじゃなくて乗せる事だな」ガチャガチャ
黒潮「ほんほん」
武蔵「っ皿洗いか、手伝おう」スッ
提督「いいって、休憩してろ」
武蔵「しかし,,,」
若葉「粘るだけ無駄だ、あの人は絶対に折れない」
武蔵「何故分かるんだ?」
何故なら,,,
若葉「既に五回挑んで全敗しているからだ」
武蔵「oh,,,」
----------------------------------------------------
提督「摩耶が来る前に、工廠の準備くらいはしとくか」
若葉「昨日それをやろうとして黒潮を見つけて、そのまま何も触れずに今日になったからな」
提督「二人も来るか?」
黒潮「まあ,,,」
武蔵「他にすることも無いしな」
ー工廠ー
提督「懐中電灯点けて,,,っと」カチッ パッ
若葉「思ったより散らかってないな」
ドラム缶は整然と並べられ、工具も殆どが工具入れに分類して収納されている。後は作業台の上が多少散らかっている程度だ
黒潮「うちが入った時はもっと乱雑やったと思うけど,,,」
提督「俺が初日に確認した時もこんなに整頓されてなかったな」
若葉「,,,そうか。 提督、これは妖精さん達がやってくれたみたいだぞ」
提督「妖精さん達がか?何処に?」
若葉「肩の上で必死に手を振ってるぞ」
提督「肩の上,,,反対かよ」
妖精さん オーイ
提督「これを妖精さんが?」
妖精さん コクコク
提督「今すぐにでも建造とかしたそうな顔してるけど、できれば此処全体の改装お願いできない?」
妖精さん オヤスイゴヨウ!!
提督「じゃあ、まず此処にいる妖精さんを皆集めてもらって、挨拶からだな。何人くらいいる?」
妖精さん ワタシダケダヨ
提督「ごめん聞こえなかったもう一回」
妖精さん ワタシダケダヨ
『妖精さん ワタシダケダヨ』,,,
『妖精さん ワタシダケダヨ』,,,,,
『妖精さん ワタシダケダヨ』,,,,,,,
提督「マジかよ,,,」額押さえ
武蔵「妖精さんが一人しかいないなど聞いたことが無いぞ」
提督「現実逃避したくなってきた,,,」
提督「,,,風呂入って来る」
若葉「まだ14,00だぞ?」
提督「べつにいいだろ、四六時中沸いてるんだし,,,」
明らかに自棄になっている
武蔵「あんな提督は舞鶴の頃からみても初めてだな」
若葉「此処に来てからも見たことが無い」
黒潮「,,,でー、どうするん?榎本はん行ってもたけど,,,,」
武蔵「,,,私達も入るか」
若葉「まあ,,,そうだな。私達に此処の運営に関する決定権は無い」
黒潮「,,,そやね」
-----------------------------------------------------
ー大浴場ー
提督「あ゛~めんどくせえ,,,どうしよ」カポーン,,,
ガラガラ,,,ペタペタ
提督「!」
提督(やはり全員入って来たな,,,だがそれを見越して俺は湯船の最奥に陣取っている。今度は前の様なヘマはしない)
ペタペタペタペタペタ ザアア,,,チャプン ペタペタペタペタ,,,
提督(あれ,,,)
ザアア,,,チャプン
若葉「ふう,,,」
提督(何の躊躇もなく俺の隣に入ってきたんだけど)
若葉「一緒に風呂に入るのも恋人の特権だろう?」
提督(それもう特権乱用,,,嬉しいけど)
武蔵「昼風呂というのも悪くないな、それに昨日は風呂に入りそびれた」
提督(どさくさに紛れて二人共近付いてきた,,,)
黒潮「あかんでえ?榎本はん、女の子を風呂にも入れんと寝かすなんて」
提督「今更だけどお前が俺を提督と呼ぶ日が来ることは無いんだろうな」
武蔵「別にいいだろう提督よ、黒潮のこれは今に始まったことではない」
提督「上官の前でもずっと名字で呼んでくるからな,,,」
若葉「名字は分かったが下の名前はどうなんだ?」
まだ提督のフルネームを聞いたことが無い、というより黒潮が来るまで名字すら知らなかったのだ
提督「あー,,,そういえば誰にも教えてなかったな」
提督「,,,聞きたい?」
三人「もちろん」
提督「,,,笑うなよ? ,,,隼三(しゅんぞう)だ」
黒潮「,,,プッ」
提督「だあー!やっぱり笑ったじゃねえか手前え黒潮!」
若葉「つまり、提督の本名は《榎本 隼三》(えのもと しゅんぞう)ということか?」
黒潮「ちょっ,,,ムリ,,,,,プッ」ピクピク
若葉「黒潮が逆上せてるぞ」
提督「溺れたらサルベージでもしてやれ。俺の本名知った奴は笑うか口を揃えて(変わった名前)って言うんだよ」
武蔵「現代人らしからぬ名前ではあるな」
提督「名前決めた親父が悪い。舞鶴の奴らにも隠し通してたんだけどな」
若葉「提督のことだからはぐらかすと思っていたんだが、簡単に折れたな」
提督「此処が大所帯になって、全員に問い詰められるくらいなら先に言っちまおうと思った」
武蔵「では私達四人の秘密というわけだな」
提督「そうしてくれ,,,胸張って言える名前じゃない」
【隼】、二月の鳥だ。そして【三】、二月・三月は〈逃げる、去る〉と言われている月,,,杞憂であってほしい
提督「さて若葉?一緒に風呂に入るのが恋人の特権なら、こういうのはどうだ」ヒョイ ポスッ
若葉「提督、これは,,,」in 膝の間
提督(若葉の着任初日に一緒にソファーで寝た時と同じ体勢、だが今度は裸で湯船の中だ。それも、ダウンしてる黒潮はともかく武蔵の
目の前)
若葉「,,,流石にまずくないか?」カアアア,,,
提督「一緒に風呂に入るのは恋人の特権なんだろ?だからこうして一緒に入ってるだけだ」ニマニマ
武蔵「若葉の言う通りだぞ提督よ、恋人とはいえ一線を越えるにはまだ早い」黒潮引き揚げ
若葉「そういう意味じゃ,,,」
提督「まだ恋人どうしになって五日目だぞ?これはただ落ち着くからやってるだけだ」
若葉「裸でくっ付くと落ち着くのか?」
提督「布越しよりも直接人肌を感じられるからな、疲れてる時なんかは特に効果がある。今もそうだ」
若葉「そう言ってもらえるのは有難いが,,,そろそろ上がらないか?私も逆上せてきた」
提督「そんなに?なら上がるか」ザバア 若葉抱きかかえて立ち上がり
武蔵「ほう,,,」
提督「何だ、悪いか?」
武蔵「いや、そっちではなくてな。,,,それなりに鍛えているな、と」
提督「ああ、こう見えて毎朝走ってるし筋トレも毎日やってるからな」
武蔵「今度スパーリングでもどうだ?」
提督「昔それやって俺が死にかけたの忘れたか?一発もらっただけで、だぞ」
武蔵「むぅ,,,」
人をお姫様抱っこしたままいつまで立ち話するつもりなのだろう
提督「じゃ、先に上がるぞ」
武蔵「私も後五分程で上がる」
ガララ,,,
ー脱衣所ー
若葉「,,,提督」
【若葉】の季節とされる四月下旬から五月の半ばにかけての期間は茶摘みの季節でもある
提督「どした?」
若葉「もしあなたが逃げてしまいたくなるような事があれば、私がその芽を摘み取ろう」
勇気を出して掴んだその心を、絶対に離さない為に
提督「,,,そうだな。大丈夫だ、俺はお前を置いて逃げたりしない。大切な嫁だからな」
若葉「ッいきなり何を,,, んっ,,,,,」
ー大浴場,引き戸前ー
黒潮「ほほう、榎本はんも中々やるなぁ,,,」
武蔵「見ているほうが恥ずかしくなるな。というか逆上せてなかったのか?」
黒潮「うちの演技力舐めたらアカんで?おかげでええもんが見れたやろ」
武蔵「,,,私達も上がるか、逆上せてきた」
黒潮「あんなお熱いところ見せられてもたらな」
※今更ですが大湊警備府のお風呂は頭を洗う所と湯船が引き戸で区切られている設定なので、四人はちゃんと頭を洗ってから
浸かっています
ー日本海北部,海上ー
?????「はあ、行動を起こしてみたはいいが見渡す限りの海,,,ここは何処なんだ。燃料もとっくに半分を切った,,,せめて陸地を
見付けねば」
?????「あれは,,,小型の輸送船か?海軍らしき紋章もある、アレの上で少し休ませてもらうとするか」
?????「コンテナの鍵を開けて,,,ここならバレないだろう。眠くなってきたな,,,仮眠するか」
ー執務室ー
提督「楽しい現実逃避の時間も終わり、時刻は15,30,,,摩耶が来るのは晩頃だからまだ時間があるが、出来ることが無い」
黒潮「榎本はんがおらんくなった後にあの妖精さんから聞いたんやけど、艦娘がある程度おってそれなりに活動してたら妖精さんは
自然と集まってくるらしいで」
提督「じゃあしばらくは無理ってことだな。出撃は摩耶が来るまで編成の都合上無理だし、遠征もこの時間からじゃ微妙だ」
若葉「他にやることは無いのか?」
提督「後残ってるのは全部妖精さんの協力が必要だしな,,,明日は初出撃になるから装備の点検と艤装の簡単な整備でもするか」
ー18,00ー
提督「これで全員完了だな、妖精さんも有難うなー手伝ってくれて」
妖精さん コレガワタシノシゴトダカラネ
ドッドッドッドッドッド,,,
提督「お、エンジン音。着いたか、迎えに行くぞ」
ー船着き場ー
提督「よう摩耶久しぶりィッ!,,,」ドゴッ
摩耶「遅い!」
提督「相変わらずだな,,,だが簡単にはくらわねえぞ」ギリギリ,,,
摩耶「フッ!」
提督「あっちょっと待って下は守備範囲外,,,」バキッ
愛宕「ほら、摩耶?提督に会えたのが嬉しいからってやり過ぎよ~?」
摩耶「う、うっせ!」
提督「おお?そこんトコどうなんだ~?摩耶」
摩耶「,,,///」
愛宕「言った通りでしょ?」
提督「前よりちょっと可愛くなったな」
摩耶「バッッ!可愛いとか、そんな,,,///」
武蔵「だがこれで無事に三人が集まったな」
提督「これでこの騒動も一段落ってところか」
若葉「提督、荷降ろしを手伝ってくれ」
黒潮「暗くなる前に終わらせんとあかんね」
提督「おう、よしじゃあ此処大湊警備府への着任おめでとう摩耶。そして荷降ろしを手伝ってくれ」
摩耶「雑用かよ!?他に言うこととか無えのか?」
提督「細けぇこたぁいいんだよ、いいから手伝え」
ー荷降ろしを終えてー
提督(あの後荷降ろしは無事に終わり、もう暗かったこともあって愛宕は泊っていくことになり、摩耶への此処の案内も済ませた。
汗をかいたから風呂を借してくれと言い出した摩耶に連られて今は皆風呂に入っている,,,物資の確認でもするか)
ー倉庫内,あるコンテナの中ー
?????「ムニャムニャ,,,スピー,,,,,」
ー倉庫ー
提督(今回届いたのは高速修復材20個と開発資材30個と改修資材が25個、それから各資材が800ずつか。,,,ん?これは,,,
寝息?だれもいない筈なんだが,,,このコンテナか、鍵が外されてる,,,)
ギイイ,,,
提督「?奥で誰か横になってるな」近付き
提督「,,,何でこんなトコで寝てんだ?」
提督「,,,ガングート」
ガングート「スヤァ,,,」
つづく,,,
[link_sstoko: SS投稿速報作品URL ]
[link_ssmatome: SSまとめ速報作品URL ]
気力が続く限り書こうとしたら徹夜になりました。人間の集中力ってすごいですね。
若葉おめでとう!
徹夜での執筆お疲れ様です
なんか呼ばれた気がしたらГангутだった(自意識過剰)
文末の空白は意図があれば別ですが、開けるなら5~6行くらいが丁度いいかと思います
次のお話しも楽しみにしています
最後のは書いている内にいつの間にか出来たスペースで、
書いても書いても埋まらないので諦めました。
登場艦娘は気まぐれで決めてるので他の方のSSで出番が少ない
娘も結構出す予定ですが、人数が増えるのに比例して文章量も労力も
増えるので話がどんどん長くなります。
三作目はようやくの出撃と施設改装、そして提督とガングートの過去に
スポットを当てる方向で構想を練っているので着任する人数は少なめ
になります。空母がいない?知らない艦種ですね。
?????さんのSS一本読んできました。
ひょっとしなくても大先輩!?
次回作頑張ります。
単なる通りすがりな私の作品も読んで下さってありがとうございます
いえいえ、単なるテキトーな奴でありますよ?
わざと文字数増やすために人数を多く出す無計画な方も居ましてね(自爆)
マイペースでいいので、今度の作品も楽しみに読まさせて頂きます
そう言って頂けると作りがいもあります。
なっがいSS書きますね(白目)