2021-02-19 23:25:10 更新

概要

元海兵が海軍に復帰。提督として歩んでいくお話し第玖話です。


前書き

やっと自宅に帰れた東雲達。
しかし落ち着けるわけも無く、面倒ごとが増えそうです。


帰還。早々説教です




東雲提督「榛名ー。メール送った?」


榛名「はい! 『明乃』さんという方にメールを送りました!」


東雲提督「ありがと」


赤城「今、関門海峡を渡りましたので……家まであと2時間ってところでしょうか?」


東雲提督「だな。普段なら1時間半ぐらいで着くんだけどな。もしかしたら2時間超えるかもしれん」



 東雲がのる車には赤城と榛名、青葉、衣笠の5人が乗っている。


 その後方には摩耶と長良、五十鈴、名取、海風、山風、江風、涼風の8人が乗っているマイクロバスが走っている。


 マイクロバスの運転は佐世保支部の軍人が運転している。


 東雲はそいつから山口県の土地勘があまり無いと聞いたため、付いて来れるように少し速度を落として運転している。



青葉「ほぉ~……これが九州と本州を結ぶ『関門海峡』の上ですか………あ、あれは!! 司令官! あの建物って『海響館』ですか!?」


東雲提督「知ってんのか?」


青葉「はい! 前にネットで色んな種類の河豚が見れて、ペンギンやイルカ、アシカのショーもあるとか!」


東雲提督「まぁ……そんなだったな。もう何年も行ってないな………中学生以来か」


青葉「今度、連れてってくださいよ!!」


東雲提督「余裕ができたらな。ってか、見たことなかったのか? 任務とかで響灘を通ることぐらいあっただろ?」


青葉「ありましたよ。でも、あそこにいた時は外出が禁止されてましたので………それに、私達には無縁だと思ってましたから………」


衣笠「そうだね………私達、基本『外出禁止』でしたから……」


東雲提督「はぁ? 外出禁止?」

  

赤城「佐伯湾提督………『元』佐伯湾提督は、万が一のことを考慮して、たとえ休暇中でも外出を許しませんでした…………というのは建前

  で…………お気に入りの空母組や、榛名さんのように頻繁に出撃や任務に従事した艦娘は特別に外出を許可されていました。万が一とは

  言っていましたが、在籍する艦娘の数が少なくて、身動きが取れていないのが原因ですけど……」 


東雲提督「差別だな………そんなことをする奴を提督の座から落として正解だったかもな」


衣笠「衣笠さんと青葉はあまり任務を言い渡されることがなかったからね………外出できる組にお土産をせびってたっけ?」

  

榛名「そうでしたね。榛名、青葉さんにカメラの部品を買って欲しいとお願いされたことがありました。他にも色々と……」


青葉「榛名さんは優しいからですね、外に何か欲しい物があったときは毎度お願いしてました!」


東雲提督「なぁ。赤城? 艦娘の外出って制限されているのか?」


赤城「いえ。そんなことはありません。あそこの環境が異常だっただけです」


東雲提督「そうか………まぁ。休暇取ったら好きなところへ遊びに行けばいいさ」


青葉「いいんですか!?」


東雲提督「良いも何も、自由を抑制する権利は無い。仕事上ある程度抑制されるかもしれんが、門限を守ってくれればそれでいいし、間に合

    わないのなら一言連絡くれればいい。人生楽しまなきゃ損だろ?」


衣笠「そう……だね……」


東雲提督「あと、外泊したけりゃ言って来い。許可してやるから。もし車がいるってなら1台あるから使っていいぞ。今乗ってるこの車でも

    いいし」


榛名「M〇Z〇A2ですね! 運転なら私と赤城さんもできますし………」


衣笠「え!? 免許持ってるんですか!?」


赤城「えぇ。佐伯湾泊地にいた時、飛龍さんに誘われて取りました」


榛名「私もです」


青葉「流石……佐伯湾司令官のお気に入りは自由ですね…………」


東雲提督「ってか、よく手元に持ってたよな」


赤城「あの時、慌てて出撃しまして……財布を胸ポケットに入れてままでした………財布と財布に入っていたお札は海水でダメになってしま

  いましたけど……」


榛名「私は財布を佐伯湾泊地に置いてきたので、先程取ってきました」


青葉「赤城さん!榛名さん!!何かあったときは頼ってもいいですか!!」


赤城「はい。いいですよ」


東雲提督「青葉。別にお前も欲しけりゃ免許取りに行ってもいいからな。基地が完成しない以上、しばらくは運用もしないから」


青葉「いいんですか!? やったー!!」


東雲提督「その辺って何か規定があるのか?」


衣笠「確か………駆逐艦と軽巡洋艦の娘は免許が取れなかったと………」


赤城「軽巡洋艦の娘は、普通二輪までの二輪免許なら許可されていますよ」


東雲提督「艦種別で差があるのか………」


榛名「仕方がありません………駆逐艦と軽巡洋艦の娘は、世間的には『学生』にしか見えないみたいで……」


東雲提督「なるほどな………っと、話してたら『魔のカーブ』に差し掛かってきたな……悪い。ちょっと少し黙るわ。運転に自信がないって

    わけじゃないが、この区間はあまり好きじゃない。地元民も出来るなら避けて通るからな。はぁ……通りたくねぇ……」


青葉「青葉、聞いたことがあります。以前、お笑いタレントの人が単独事故で車外に出たところを撥ねられたって……」


東雲提督「あぁ。それがここだ。ここは下りだし曲がりも大きい。事故多発区間なんだよ。全く……後ろのマイクロ運転してる奴が知らずに

    美祢ICまでの高速券を軍から貰ってきやがったからな。ほんとなら下関ICで降りたかったのに……」

  


 東雲は文句を言いながら少し減速し、その速度を維持しながらカーブに差し掛かった。




==============================================================




 それから2時間半後…………



東雲提督「はぁ………」


 

 東雲の家に着くと、新基地に所属する艦娘達と芹沢が出迎えていた。


 新たに所属になった青葉や摩耶たちはマイクロバスから荷物を下して、大淀や赤城、榛名主導で荷物搬入をしていた。


 宿舎が完成していないので、彼女たちが居住する場所は東雲の家。


 赤城と榛名ならまだしも、家主である東雲も主導で動くべきである。


 しかし、その家主は今………



芹沢副司令「まさか溜息を吐く余裕があるとはねぇ……………反省してるかなぁ?」


東雲提督「…………この度は大変申し訳ございませんでした」



 居間には仁王立ちしている芹沢。芹沢の目の前に正座して土下座をしている東雲の姿があった。


 大淀達に出迎えられた直後、大淀から『副司令が居間に来るようにとのことです』と言われ、東雲は居間へと向かった。


 居間に入ると、仁王立ちしていた芹沢が待ち構えていた。


 芹沢は終始無言で東雲を見下していた。


 東雲は自分が犯した事態を再確認したことで、この状況に至っている。



芹沢副司令「ほんとさぁ~……誰かの為に突っ走るのは、征野の良い所だけどさぁ~………自分の立場を考えなさいよね。今の征野はここの

     『司令官』。ここにいる艦娘………彼女たちを預かる身なの。今回は事態が事態だったから目を瞑るけどさ………その司令官が持

     ち場を離れるなんてありえないんだから!」


東雲提督「……すいませんでした」


芹沢副司令「彼女たちと、一度でも顔合わせした? 話をしたの?」


東雲提督「………会ったのは大淀と明石だけです……………他の皆とは…………会ってません………」


芹沢副司令「………お前コラ」


東雲提督「はい。反省してます………」



 この状況を大淀と明石は遠目から見ていた。



大淀「あの……副司令。その辺にしておいた方が………」


芹沢副司令「なに?」


大淀「あ………いえ。何でもありません」



 大淀が間に入ってくれたことで、この事態を終息に持っていけると信じた東雲だった。


 しかし、それは芹沢の剣幕に押された大淀が折れたことで希望は潰えた。



芹沢副司令「……反省してる?」


東雲提督「……反省してます」


芹沢副司令「なら。反省を態度で示す事!」


東雲提督「はい」


芹沢副司令「起立」


東雲提督「はい」



 東雲が立ち上がった途端だった。


 芹沢が『深淵状態』になり、右拳を東雲の腹部にめがけ放った。


 それを瞬時に察知した東雲も『深淵状態』になった。



東雲提督「ぐっ!?」


芹沢副司令「…………一線を退いても、身体は鈍ってないみたいね」


東雲提督「お前……殺す気だったろ今? それと家ん中で力使うな。家が壊れたらどうする気だ」


芹沢副司令「その時は修理すればいいじゃない。あー……一発殴ったらスッキリしたぁ~……」


東雲提督「そうかい………そりゃ良かった………ってか、お前その姿………」


芹沢副司令「びっくりした? 色々あってね………私も『姫級』になったの」


東雲提督「マジか……」


芹沢副司令「はい、説教は終わり。それじゃ………大淀ちゃん。私の書類カバンから白紙持ってきて。あるだけ全部」


大淀「はい」



 大淀は一度東雲達から離れ、少しして戻ってきた。


 数枚の白紙を持って………


 その白紙がどういう意味なのか……東雲はすぐに理解した。



東雲提督「あの…………大淀さん………それを避ける方法は…………」


大淀「ありません」


東雲提督「……芹沢」


芹沢副司令「あははぁ……」


東雲提督「…………明石、助けて」


明石「あっ!私そろそろ作業に………」



 明石は即座に回れ右をして、この場を立ち去ろうとした。


 すると大淀が明石の左腕を掴んで、明石をその場に立ち止まらせた。



大淀「待って明石。貴方もよ」


明石「へ?」


大淀「明石………貴方にも反省文を書いてもらいますからね」



 明石の顔が一気に青ざめた。



明石「一体何のことでしょう……あは……あはは………」


大淀「明石。昨日の夜、勝手に外出しましたね?」

 

芹沢副司令「しらばっくれても無駄よぉ~………昨日の夜、私と大淀ちゃんの3人で話した後...……小1時間ぐらい一体貴方はどこに行って

     たのかなぁ~………」


明石「あはっ………あははは………………」


芹沢副司令「あははぁ…………」



 芹沢と明石の2人が笑いながら見合っていた。


 笑っているが2人の表情は間反対だった。


 明石は引きつった苦笑いであったが、芹沢に関しては声は笑ってはいるものの、目は笑っていなかった。


 そんな状況が数秒続いて……



明石「ごめんなさい!! 市街地まで出てました!!」  



 明石は芹沢に向かって土下座した。



芹沢副司令「忘れてるかもしれないけどぉ~私ね、ここの『副司令』でもあるけど常駐の『特警隊』でもあるのよねぇ~。昨日寝る前に監視

     カメラ見たら、敷地内を誰かが出入りした反応があったから確認したらさぁ~……見事に明石ちゃんが映ってたんだよねぇ~……

     何か言い分あるかなぁ?」


明石「ありません!!! 小腹がすいたのでロー〇ンまで行ってました!」


東雲提督「よく行けたな。ここからロー〇ンまで結構距離あるぞ。それに、俺は監視カメラなんて設置した覚えねぇぞ」


芹沢副司令「私が独断で夕張ちゃんにお願いして設置してもらっているの。昨日の時点で征野の家周辺と、この家につながる小道全部。建設

     してる基地周辺の設置箇所は夕張ちゃんと現場監督さんに任せてる」


東雲提督「俺の家まで設置してんのかよ…………プライバシーゼロじゃねぇか」


芹沢副司令「仕方ないでしょ! 提督になるんだから、それ程の重要人物になるんだから我慢しなさい。ってことで、明石ちゃんは『無断外

     出』と『資材の無断使用』で反省文400字ね。次から外出する時は『私』か『征野』に事前報告すること!資材を使用する時も

     ね!」


明石「はい………すいませんでした」


芹沢副司令「あ。ちなみに征野は『職務放棄』と『佐伯湾泊地の建物損壊』について反省文2000字」


東雲提督「なっ!?」


芹沢副司令「いくら状況が状況とはいえ、貴方『元105部隊』の人間でしょうが。建物壊さず『あのアホ』をとらえるの簡単でしょが!!

     相手は『人間』! 『深海棲艦』より楽勝でしょ!! どうせ、頭に血でも上ったんでしょ、 この単細胞! それとさっきも言ったけ

     ど、『提督』という立場の人間がそう易々と持ち場を離れるなんてありえないの! いくら総長の許可が出たからって許さない事や

     ってんだから!! 特警の私を頼るとか色々方法があったでしょ!!」


東雲提督「ぐっ……おっしゃる通りです」



 東雲は言い返さなかった。いや……言い返せなかった。


 事実だからだ。



東雲提督「……反省します」


芹沢副司令「してもらわないと困るよ! そんじゃ、反省文書いたら私に持ってきてね!」


東雲提督・明石「「はい……」」




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 その頃……



青葉「ふぅ~………」


衣笠「終わったぁ~……」



 今日から着任した娘たちは、東雲家の空き部屋にそれぞれ荷物を搬入し、荷解きを終えていた。


 すでに海風姉妹は新基地を見るために海岸沿いへ向かっていた。


 長良姉妹と摩耶は大淀からみかん畑の存在を知り、みかん畑へと向かった。 


 青葉と衣笠は荷解きを終え、テーブルを囲んでゆったりしていた。


 ゆったりとは言うものの……彼女たちの表情は不安に満ちていた。



衣笠「まさか、衣笠さんまでこっちの所属になるなんてね……」


青葉「楽しくなりそうですけどねぇ~。早速司令官が怒られてましたし……副司令、綺麗な方だったなぁ~……後で写真1枚とっとこ」


衣笠「きちんと許可取るんだよ。って言うか、提督なんだけど……絶対私たちのために動いたことで怒られてると思うよ」


青葉「そうですねぇ………事情が事情ですけど、司令官って『職務放棄』しちゃってますからねぇ。それで………今の私たちが置かれてる状

  況からして………司令官がもっと怒られることになりそうな気がして仕方ないんですけどね………」


衣笠「……そうだね」


?「No problemですよ青葉! 心配nothingデース!」


?「えぇ。何も心配ないわ」


?「気合い!入れて!榛名を見守ります!」


?「比叡お姉さま。バレてはいけませんので静かにしててください」


青葉「……この人達の存在忘れてたぁ!!!」


衣笠「う~ん………やっぱりマズいよねぇ………」




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 昨日の晩の事……

 

 赤城と別れた加賀は部屋に戻り、窓の外から景色を眺めていた。



加賀「……はぁ」



 轟沈したと思われていた赤城が生きていた事が嬉しかった。また会えて嬉しかった。


 しかし、赤城は佐伯湾泊地には戻ってくることはない。新しく出来る基地の配属になっているからだ。


 その事を考えると、少し寂しい思いもあった。


 物思いにふけっていると、部屋のドアをたたく音がした。



加賀「どちら様?」


金剛「私デース……金剛ネ」



 部屋にやってきたのは金剛だった。


 金剛もまた、轟沈したとされた妹の榛名が生きていた。


 しかし、その榛名も佐伯湾泊地には戻ってこない。


 相方……妹と相手の立場は違えど、同じ境遇にいる者だ。



金剛「赤城が生きてて良かったですネー……」


加賀「えぇ。貴方も妹さんが生きてて良かったわね」


金剛「そうですネ。でも………」


加賀「えぇ。赤城さんと榛名さん……あの2人がここに戻ってくることはないわ」


金剛「そう思うと、寂しいネ………」


加賀「ところで、私に何か用?」


金剛「今のワタシと加賀は同じ気持ちだと思うネ。せっかく会えたのに、離れ離れになるのは……寂しいネ……」


加賀「別に一生会えない訳では無いのですから」


金剛「分かってるネ。けど、ワタシ達にとって『赤城』と『榛名』はあの2人だけデース……」


加賀「そう……ね……」



 この先、建造や出撃を繰り返せば……いつかは『赤城』と『榛名』にまた出会えるだろう。


 だが、2人が知ってる『赤城』、『榛名』とは違う。


 同じ見た目でも違う………2人にとって『赤城』、『榛名』は彼女たちだからだ。



金剛「そこで相談があって来たネ。私達もあっちに転属するってのはどうですカ?」



 突然の事に、加賀は驚いた。



加賀「貴方………何を言っているのか分かってるの?」


金剛「分かってるネ。分かってるけど………ワタシにとっての『榛名』は、あの『榛名』だけデース………この先、他の『榛名』が来ても妹

  として変わりなく接することが出来るか………正直自身が無いネー………」


加賀「……珍しいわね。貴方が弱音を言うなんて……明日は槍が降るわ」


金剛「それはどういう意味ネー……ワタシだって弱音ぐらい吐きマース……」



 いつもポジティブで天真爛漫、明るいイメージだった彼女。


 こういう姿は新鮮であった。



加賀「だからって私達まで転属したら、ここの戦力に問題があるわ」



 佐伯湾泊地にとって、加賀は空母の中心メンバー。


 金剛は『改』ではあるが、戦艦の中ではNo.1の練度だった榛名の次に練度が高い。今後も戦艦の中心になる。


 各艦種で中心になる者たちが、いなくなるのは問題だ。



金剛「だとしても……ワタシは榛名が心配ネ。向こうでしっかりやっていけるか……東雲提督に迷惑をかけてないか……加賀も心配ではない

  のデスカ? 転属はできなくても、向こうでの2人の姿を見届けたいネ」


加賀「それは……心配ですけど………だとしてもどうやって、あちらへ行くのかしら」



 佐伯湾泊地は提督不在。仮提督の着任は明日の昼になると聞いていた。外出の手続きはできない。転属届も出せない。基地から外に出る方法がない。


 東雲達は明日の朝、帰ってしまう。



金剛「大丈夫デース……方法ならありマース……」



 金剛は加賀に近づいて、方法について耳元で囁いた。



加賀「……あまり気分が乗らないわ」


金剛「こうするしか無いネ。怒られるのは承知デース……」


加賀「……そう………わかったわ。こうなったら一蓮托生です」




==============================================================




 2人は少し経って、とある者達の部屋へと向かった。艤装を着用して……



金剛「……準備は良いですカ?」


加賀「鎧袖一触よ」


金剛「では、行きマス」



 金剛は掛け声とともに、部屋のドアをこっそり開けた。


 時間は深夜2時。皆寝静まっている時間帯。暗い中、部屋で寝ている2人を発見した。


 金剛はその内の一人の上に跨って、艤装の全砲門を住人に対して向けた。加賀も、もう1人の住人の上に跨って、矢を構えた。

 

 寝ている2人とは……



金剛「……青葉……青葉。起きるネー……」


青葉「うーん……金剛さんですかぁ……一体こんな時間に何事d……ひっ!?」


衣笠「ちょっと青葉……どうs……なっ!? えっ!?」



 青葉と衣笠……青葉型の2人だ。



金剛「青葉。お願いがあって来たネ」


加賀「少しでも大声を出したら……分かってるわね」



 青葉と衣笠は暗闇でも分かる程の威圧に負け、首を縦に何度も振った。



青葉「な……何事ですかぁ」

  

加賀「大した事ではないわ。明日ここを出るでしょ。その時に、何かしらの方法で私達も連れて行って」


衣笠「いや加賀さん……それ、普通に大ごとですから」


加賀「何か?」


衣笠「ひっ……何でもありません!」


金剛「責任は私達が受けるネ。だから……向こうでの榛名と赤城の姿を見てみたいだけネ……」


加賀「影でひっそり見るだけよ。終わったら電車とか新幹線使って自力で帰るわ」


金剛「何か、バレずに忍び込める方法ありますカ?」


青葉「わかりました!……わかりましたから、脅すのはやめてください!!」

  


 金剛と加賀は艤装を解除して、2人から離れた。


 青葉は起き上がって卓袱台を持ってくる。衣笠はお菓子とコーヒーを卓袱台の上に用意した。


 4人は卓袱台を囲むように座り込んだ。



青葉「……ほんと、青葉たちに被害を向けないでくださいよ」


金剛「了解ネー」


衣笠「うーん……バレずにか……あの提督だもんなぁ……バレそうだなぁ……」


青葉「そうですねぇ……あの人、私が執務室の屋根裏にいるのを姿を見ずに察知しましたからね……」


衣笠「……マジ?」


青葉「歴戦の猛者ってやつですかねぇあの人……」


加賀「そうね……執務室にいた人はあの姿を見てるから……できれば二度と対峙したくないわね」


金剛「……案外simple is the bestが良いのもしれないネ」


衣笠「それはどう言う……」


 

 金剛が言うシンプルとは……引っ越し荷物の中に紛れ込むというものだった。



衣笠「……バレそうだけど……あれこれ考えても仕方ないか。バレたらバレたでしょうがないもんね」


加賀「でも、私たちが入る程の段ボール箱ってあるのかしら?」


青葉「2人が1つの箱に入らずに、1人1箱にした方がいいと思いますよ! 2人は駆逐艦とは違って身体が大きいですから。あまりに大きい

  段ボールが置いてあったら怪しまれます」


加賀「それもそうね」


金剛「それじゃ青葉姉妹! よろしくネ!」


 

 金剛は加賀を連れて部屋を出て行った。


 翌日、青葉が用意した段ボールに入り、加賀と金剛。そして、姉の行動を察知した比叡、霧島も加わった4人は荷物に紛れることに成功した。


 そして現在に至る。




==============================================================




青葉「……バレてないよね?」


衣笠「多分、バレてないと思うけど……」



 青葉たちの荷物は新たに着任した娘と赤城、榛名達で部屋へと運び込んだ。


 金剛と加賀、比叡、霧島が入っていた段ボールは、青葉と衣笠の2人で運んだ。


 艤装を展開することで、重労働の筈がかなり楽だった。



青葉「それで……ここに来て何する気ですか?」


金剛「ワタシは榛名の様子を見れればいいだけデース」


比叡・霧島「「同じく」」


加賀「……私は、赤城さんがここで迷惑をかけてないか心配です」


衣笠「いや……実際に迷惑かけてるのは貴方たちでs」


加賀「何か言いましたか?」


衣笠「なんでもありません!」


金剛「それじゃあ、陰からこっそり見に行くデース!」


加賀「気分が高揚します」


青葉「されても困りますぅ……」



 東雲が知らないところで始まった、金剛と加賀、比叡、霧島の潜入。


 後に、この潜入がまさかの事態になるとはだれも予想しなかった。




==============================================================




東雲提督「……もう嫌だ」


明石「同じく……」



 東雲と明石は2人仲良く居間にいた。


 お互いが向き合う形で卓袱台に座っており、台の上には白紙と定規、筆記具が置かれている。


 周囲にはくしゃくしゃになった紙や、ビリビリに破かれている紙が散らばっている。


 原稿用紙ではないので字がズレないように、定規を使って白紙に鉛筆の線を薄く引ひて行をそろえる。誤字脱字は許されない。


 2人共、既に何度か書き終えて芹沢に提出したが……行がズレていたり、誤字脱字が見つかった瞬間……目の前で芹沢に用紙を破かれた。


 身体を動かす方が得意な2人にとって、事務仕事は天敵と言ってもおかしくない。地獄である。


 書いては破かれ……書いては破かれを数回繰り返し、2人の心は半ば折れていた。


 それでも頑張って書き続けて、1時間半後……



大淀「………いいでしょう」



 芹沢が忙しかったので、途中からは大淀が代わりに反省文の添削をしていた。


 ぶっちゃけ、芹沢より大淀の方が添削が厳しかった。


 しかしそれはもう終わり。2人は地獄から解放された。



東雲提督「終わった……」


明石「大淀の鬼ぃ……鬼畜ぅ……諸悪の権化……」


大淀「そんなこと言ってていいのかしら? 明石………いえ、ゆu」

  

明石「あーーーーーー!!!! あーーーーーーー!!!!!」



 大淀が言いかけた言葉をかき消すように、明石が大声を出した。



東雲提督「どした?」


明石「あ……いえ。なんでもないです……」


東雲提督「いきなり驚かすなよ……」


明石「すいません……あはは……」



 明石は東雲に苦笑いを向け、すぐさま大淀を睨みつける。


 大淀は『面白いおもちゃ』でも見つけたかのように、ニタァと笑っていた。  



東雲提督「……大淀?」


大淀「いえ。何でもありません」



 大淀はニヤけ顔から真面目顔に戻った。



東雲提督「とりあえず……俺は何をしたらいい」


大淀「基地完成まで、泊地運用及び艦娘運用に関する関連法令と規則を叩き込んでもらいます」


東雲提督「……座学か」


大淀「ですが……提督はまず、皆に自己紹介をした方がよろしいかと……」


東雲提督「確かに。大淀、全員を家の前に集めてくれないか」


大淀「分かりました」

  

東雲提督「明石は芹沢を呼んで来てくれ。家の中のどっかにいるだろうから」


明石「了解です!」

  


 大淀と明石は居間を出て行った。


 その時だった。東雲の携帯電話が鳴った。



東雲提督「はい。東雲です」


?『君が、新基地の提督の東雲で良かったかな?』



 電話の主は声からして40歳前半ぐらいの男性。


 今までに聞いた声ではなかったので、東雲は声の主が誰なのか分からなかった。



東雲提督「はい……そうですが……」



芦原提督(佐伯湾)『初めましてになるのかな。私は本日付けで佐伯湾泊地の提督代行に任命された『芦原 功太(あしはら こうた)』だ。

         階級は君と同じ『中将』。君の電話番号は鞍馬総長から聞いたよ』


東雲提督「そうでしたか。初めまして、新基地の提督『東雲 征野』です」


芦原提督(佐伯湾)『君には迷惑をかけたね。あいつ……元佐伯湾提督は私が佐世保支部にいた頃の元部下だったんだ。誠実で真面目な奴だ

         ったんだが……どこで道を間違えたのやら……とにかく、元部下が迷惑をかけた。すまなかった』


東雲提督「いえ。貴方が謝ることでは……」


芦原提督(佐伯湾)『それもそうなんだがな。一度でも私の下にいた以上、部下の失態を謝罪するのは当たり前だろ? まぁ、あいつの話をし

         たくて電話したわけでなくてな……1つ、聞きたいことがあるんだ』


東雲提督「はい、何でしょうか?」


芦原提督(佐伯湾)『佐伯湾泊地所属の『加賀』と『金剛』『比叡』『霧島』の所在が分からなくなった。君は何か知らないかね?』


東雲提督「……いえ、知らないですね……佐伯湾の艦娘達は何か知しっているのではないですか?」


芦原提督(佐伯湾)『いや、それが皆『知らない』と一点張りなんだ………これはあくまで私の推測だが……4人は君の所に忍び込んでいる

         のではないか?』


東雲提督「本当ですか!?」


芦原提督(佐伯湾)『別におかしい話ではないと思うんだよ。4人にとって、君のところにいる『榛名』と『赤城』は大切な存在だ。再会を

         果たせたのに、一緒にいられないのは寂しいだろう?』



 確かにそうかもしれない。轟沈扱いとされていた『大切な存在』と再会できたのだ。


 しかし、所属は一緒にならない。金剛たちが、『一緒にいたい』という考えに至ったとなると、ここに忍び込む理由には当てはまる。



芦原提督(佐伯湾)『これはあくまで予測だ。万が一の話だが、4人を発見した場合は俺に連絡して欲しい。その時は彼女達を『職務放棄』

         とみなし、佐伯湾泊地から『除籍』する』


東雲提督「えっ!? いや……そこまでする必要が……」


芦原提督(佐伯湾)『甘いな君は。私たちは深海棲艦から国民の命を守る者だ。それを放棄して『妹』や『相棒』を優先するのは決してあっ

         てはならないんだよ』


東雲提督「・・・。」



 東雲は言い返せなかった。



芦原提督(佐伯湾)『私にとっても苦渋の判断なんだ。4人がいなくなることは、佐伯湾泊地の戦力がかなり下がるからね』

 

東雲提督「……わかりました。こちらでも探してみようと思います」


芦原提督(佐伯湾)『わかった。こっちでも何か情報を掴んだら、また連絡する』



 その言葉を最後に電話が切れた。



東雲提督「……さて、どうすっかな…………」




―続―


後書き

これからの東雲達は?そして新基地に忍び込んだ加賀たちはどうなってしまうのか。


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2021-02-20 00:05:51

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2021-02-20 00:05:53

このSSへのコメント

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1: 頭が高いオジギ草 2021-02-20 00:35:01 ID: S:ZK3GcC

更新ありがとうございます。いつも楽しく拝読しております。
金剛型と一航戦が別れ別れになって何も起きないはずがなく…
といった感じでしょうかw
いろんなお尻に敷かれる座布団提督の様相を呈してきてますね。
まだ基地もできていないのに…
末筆ですが、時節柄お身体にはくれぐれもご留意ください。

2: ふぐ提督 2021-02-22 23:53:38 ID: S:WRYi4E

>>頭が高いオジギ草
 新作公開しました。
 いつも、コメントやお気に入り、評価etc…していただき、ありがとうございます。
 ……言われてみれば、まだ基地出来てなかったですね(;´∀`)
 早めに完成させますので(笑)
 私が住んでいるところでは少しずつではありますが、コロナウイルスの感染者数は減少しつつあります。
 頭が高いオジギ草さんも、体調には気をつけてください。


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