2021-02-23 00:20:20 更新

概要

元海兵が海軍に復帰。提督として歩んでいくお話し第拾話です。


前書き

はい。フラグ立った~♬


やはり面倒事が起きました




大淀「提督。全員集合しました。こちらが所属艦リストです」



 大淀から所属艦のリストを渡されて、東雲は全員の顔と艦名を確認した。



大淀「皆の前で挨拶した後、提督としての意向を示していただきます」



東雲提督「あぁ。わかった」



 外に出ると、所属艦全員が整列していた。摩耶や青葉たち……元佐伯湾泊地の艦娘達も並んでいた。



東雲提督「初めまして……になるな。俺がここの提督、『東雲 征野』だ。本来なら君たちがここへ来てすぐに、この場を設けるべきだったん

    だが……色々あって遅くなった。すまない」



 東雲は艦娘達に向けて頭を下げた。


 提督という立場の者が、部下である艦娘達に頭を下げるという行為を取る事は珍しいらしく、大半の娘は目の前の光景に驚いていた。



東雲提督「それと元佐伯湾の娘達は全員前へ。赤城と榛名も」


摩耶「おう」


赤城「はい」



 赤城と榛名、元佐伯湾泊地の娘達が東雲の前に集まり、伊勢達の方を向いた。



東雲提督「この2人は……俺の家に居候してた『赤城』と『榛名』。そして、佐伯湾泊地から転属した娘達もいる。皆今日から同じ釜の飯を

    食う者達だ。仲良くしてほしい」


赤城・榛名・元佐伯湾泊地の艦娘’s「「よろしくお願いします」」


東雲提督「よし、戻っていいぞ」



 全員が列に戻ったのを確認し、再度話を続ける。



東雲提督「俺から数点。1つは『無理をしない事』。だからと言って無理をしないでいい訳では無い」


天龍「それって、矛盾してねぇか?」


日向「天龍。今提督が話を……」


東雲提督「構わない。確かに天龍の言う通り矛盾している。この先無理を通すことは絶対にあるだろう。ただし、その時に他人や自分を犠牲

    にする事は一切あってはならない。あと少しで深海棲艦を倒せたとしても、君たちが轟沈するリスクが大きければ、俺は迷う事なく

    『撤退』を指示する」


敷波「そしたらさ、倒せる相手も倒せないよ?」


東雲提督「そうだな。だが、俺にとっては『相手を倒せない』よりも、『相手を倒す為の戦力を失う』ことの方が痛い。こっからは2つ目に

    なるんだが……そうならないように『戦力の補強と強化』を行う。建造ももちろんだが、今ここにいる全員が深海棲艦と対等に……

    それ以上の実力が持てるように訓練を行う。装備も備蓄資材と相談しながらだが充実するように開発も行う」


曙「第二改装がされている娘を使った方が戦力増強にはなると思うけど!どうせアンタも他の提督みたいに戦艦や空母を主体にして火力で押

 し切るようになるわよ! 私達駆逐艦には見向きもしないでしょ! クソ提督!!」


漣「ぼのたんストップ!」


潮「曙ちゃん言い過ぎ!」



 漣と潮が曙の口を手で塞いだ。周りの艦娘達は『やばい!』と焦りの表情を見せた。



東雲提督「………大淀」


大淀「……はい」



 艦娘達には戦慄が走った。

 

 皆東雲の過去の戦歴を知っており……以前に漣が『『クソ』って呼んだ暁にはやべーことになりますよこれ』という発言を覚えていたからだ。


 ほとんどの娘は大淀からの話しか知らないが、深淵状態の東雲の姿を見た者も少なからずいる。



大淀「えー……っと何と言いますか……曙さんはそういう娘で……前の鎮守府で色々あって…………」


東雲提督「そっか…………曙」


曙「何よ」


朧「ぼの!」


曙「……何でしょうか」


東雲提督「前に来い」


曙「はい……」



 曙が東雲の前に出た。艦娘皆……特に第七駆逐隊の娘達は顔が真っ青だった。



東雲提督「……今艤装付けてるか?」


曙「……つけてます」


東雲提督「展開してみ?」


曙「……はい」



 曙は艤装を展開した。



東雲提督「皆も、艤装を付けてる者は展開しろ」



 東雲の言葉を聞き、艦娘全員が艤装を展開した。



東雲提督「曙。今お前がつけているのは何だ?」


曙「……艤装です」


東雲提督「じゃあ、後ろにいる皆がつけてるのは何だ?」


曙「当たり前なこと聞かないd………艤装です」


東雲提督「あー……無理に口調変えなくてもいい。別にそれくらいで俺は怒らない」


曙「そう……で、だから何が言いたいのよ?」


東雲提督「確かに駆逐艦となれば、火力は戦艦に劣る。空母みたいに艦載機運用もできないしな。けどな、駆逐艦だろうが戦艦だろうが艦娘

    全員には1つだけ共通点がある。それは『皆深海棲艦と戦うための艤装』を付けているということだ。たとえ戦力に差があろうと

    も、艤装を付けている事には変わりない。君たちは深海棲艦と戦うための『力』を等しく持っている……だからな曙……『駆逐艦』

    だからって自分を卑下しちゃいかん」


曙「でも! 私達駆逐艦なんて役に立たないわよ!」


東雲提督「そんな事はない。それじゃあ聞くが、後ろにいる戦艦と曙。どっちの方が速力は早い?」


曙「決まってるじゃない! 私の方が早いわよ!」



 戦艦の伊勢・日向は25.31ノット。それに対して曙は38.0ノットだ。



東雲提督「そうだな。曙の方が早い。速力が早いということは、低装甲であっても飛来してくる弾を避けることで被弾を防ぐ事が可能だ。あ

    と、飛んでくる弾は弾幕を張ればある程度は相殺できる。しかし、君たち駆逐艦……軽巡洋艦や重巡洋艦もそうだが、弾幕ではそう

    容易く防げない装備があるだろ?」


曙「……魚雷ね」


東雲提督「そうだ。魚雷は戦艦や空母には恐怖でしかない。そうだろ?」



 東雲が曙の後ろに目をやると、戦艦や空母勢が苦笑いしていた。対処法が無いという訳では無いが、1発でも被弾すればいくら重装甲でも恐怖でしかない。


 過去の大戦では、某装甲空母が『たった魚雷1発』で沈んでいる。



東雲提督「それに、駆逐艦は輸送や護衛といった任務には適任だ。何も戦闘が全てでは無いだろ? それに、 曙が元いた場所ではどうだった

    かは知らんけど、俺は『実力主義』だ。『性能』で差別はしない、約束しよう。曙、戻っていいぞ」


曙「わかった」



 曙は皆のところに戻っていった。案外素直に聞いてくれたので、案外良い娘のではと東雲は思った。



東雲提督「あと、俺は最近海軍に復帰したばかりでな。『改二改装』って言われても俺にはさっぱり分からん。大淀、説明してくれ」



 東雲の言葉でピリついていた空気が一気に崩壊した。


 あっけにとられて、きょとんとした顔をする者もいれば、笑いを必死に我慢する娘がちらほら見えた。

  

 …………芹沢は大爆笑していた。



大淀「えっ……えっと……『第二改装』というのは艦娘の練度に合わせて艤装を『改造』によって能力が強化されます。先程お渡ししたリス

  トを見てください」



 東雲は大淀から貰ったリストを確認する。


 一部の艦娘には名前の横に『改』又は『改造可』と書かれてあった。



大淀「第一改造することで、艦娘は全員『改』になります。また、一部の艦娘はそのさらに上、『第二改造』『第三改造』が可能な娘もいま

  す。ここにいる艦娘では『隼鷹』、『伊勢姉妹』、『妙高型4姉妹』、『天龍型姉妹』、『綾波』、『敷波』、『潮』が第二改装まで改

  造が可能となっております。既に榛名さんは『改二』、赤城さんも『改二戊』と改造を終えています」


東雲提督「なるほど……では全員に聞くぞ。今から戦闘をする際、目の前に2つの武器があるとする。1つは『初めて使うが、性能が高い武

    器』。2つ目は『1つ目に比べて性能は劣るが、使い込んで慣れ親しんだ武器』。君たちはどっちを使う?」



 東雲は艦娘たちにそれぞれ挙手をさせた。


 ほとんどの艦娘は後者を選んだが、一部の艦娘は前者を選んでいた。曙と天龍、那智、足柄の4人だ。


 東雲はまだ、顔と艦名が一致していないので、リストを確認する。



東雲提督「えーっと……足柄」


足柄「何かしら?」


東雲提督「理由を聞いてもいいか?」


足柄「そうね……慣れた武器を使うという意見に反対ではないわ。だけど、性能が高い方が敵に与えるダメージが大きいでしょ!」


東雲提督「確かにそうだな。しかし、新しい武器が自分に合わず、使いずらかったらどうする?」


足柄「うーん……考えたことなかったわね」


東雲提督「まぁ。君たちの意見が悪いとは言わない。両方の意見にも賛否両論あるからな。ちなみに俺は後者だ。さっきも言った通り、『性

    能』より『実力』を重視する。それを忘れないでほしい。最後に3つ目、これは報告になるんだが……佐伯湾泊地の『加賀』と『金

    剛』、『比叡』、『霧島』が現在行方不明らしい」



 行方不明という知らせを聞いて、赤城と榛名は動揺していた。元佐伯湾泊地の娘達も同様に。


 事情を知っている青葉と衣笠はドキッとしたが、バレないようにやり過ごす。



東雲提督「現在佐伯湾泊地の娘達が探しているそうだが、見つかっていないらしい。先程、こちらの方に来ていないかという連絡があった。

    もし、今後発見したら俺の所へ連れてくること」


摩耶「なぁ。提督」


東雲提督「どうした?」


摩耶「もし見つけたら……4人はどうなるんだ?」


東雲提督「わからん。少なくとも、佐伯湾泊地の提督代理からは『除籍』という回答を受けた」



 『除籍』という言葉に、一同がざわついた。



東雲提督「まぁもしもだ。もしもこの先、見つけたらの話だからな。それじゃ俺からは以上。芹沢、何かあるか?」


芹沢副司令「私はもう自己紹介したからいいわよね。私はこの基地の『副司令官』兼『特警隊長』だから、もし横にいる『馬鹿』が何かして

     きたら、すぐに私に言ってね! まぁ、こいつの事だから何もないと思うけど」


東雲提督「当たり前だ。何もしねぇよ……大淀は何かあるか?」


大淀「これからの予定ですが、今日は完全休息日とします。今後は『基地建設』と『鎮守府近海の哨戒』を重点に置いて、設備が整うまで海

  域出撃は一切無し。船団護衛や輸送任務を出来る範囲で受けていくという方針で行きたいと思いますが……提督、よろしいでしょうか」


東雲提督「それでいこう」


大淀「わかりました。それと、この基地には提督と副司令……2人以外にもう1人、お2人をサポートするという形で女性の軍人が着任しま

  す。今日中には着任しますので」


芹沢副司令「鎮守府ならともかく、泊地に3人は多くない?」


大淀「泊地なら本来、提督と特警隊各1人の計2名ですが、少し込み入った事情が……」



 大淀は東雲と芹沢を見た後、摩耶の方に視線を送った。



摩耶「……何だよ?」


芹沢副司令「あー……なるほどぉ……」


東雲提督「確かに必要だな。芹沢以外の女性軍人がいてくれると助かる」


大淀「はい。新しく来られる方については、総長から『2人がよく知ってる人』だと聞いています。私からは以上です」


芹沢副司令「誰だろう?」


大淀「すいません。そこまでは教えてくれませんでした」


東雲提督「時期に分かるだろうさ。では各自解散!………あー……すまん。摩耶だけは残っててくれ。それ以外は解散!」



 摩耶だけはその場に残り、他の艦娘達は散らばっていった。



江風「提督! あの山になってる黄色いのは何だ!?」


東雲提督「みかんだ。見に行ってもいいぞ」


摩耶「お前ら行って来いよ! 結構美味しかったぜ!」


江風「マジか! 姉貴達! 涼風! 見に行こうぜ!!」


東雲提督「食べたければ、採ってもいいぞ」


涼風「最っ高だぜー!」



 二十四駆の娘達は山のみかん畑の方へと走って行った。


 他の皆は海辺や東雲の家に戻っていった。



東雲提督「芹沢、後頼む。俺がいたら彼女にとって良くないだろうから」


芹沢副司令「はいはい任されました。摩耶ちゃん、ちょっと私についてきてくれるかな?」


摩耶「お、おう。分かった……」



 芹沢は摩耶を連れて敷地の外へと向かった。


 東雲は自宅へと戻って行った。




==============================================================




 時を同じくして、佐伯湾泊地では……



芦原提督(佐伯湾)「……ふぅ」



蒼龍「お疲れ様です。提督」



 執務が一通り終わったので一息ついていた。


 本日の秘書艦である蒼龍は芦原提督にお茶を出していた。



芦原提督(佐伯湾)「ありがとう………まさか、着任して早々君たちの我儘を聞くことになるとはね……」


蒼龍「……申し訳ありません。ですが、私達の我儘を聞いていただきありがとうございます」


芦原提督(佐伯湾)「前にも提督をやってたけど、この書類なんて1度も書いた事はなかった。しかもこんなに……正直、余程の事が無いと

         縁が無い書類だと思ってたからね……」



 芦原提督が蒼龍に向けて4枚の書類を見せびらかした。


 その書類は……『転属願』だった。


 転属願にはそれぞれ、加賀と金剛、比叡、霧島の名前が書かれている。



芦原提督(佐伯湾)「でも良かったのか? 正直、あの4人が抜けるのは戦力としては痛いんだけど……」


蒼龍「ですが、この泊地は空母が主戦力。特に『一航戦』の御二方に頼り切っている状況でした。赤城さんが行方不明になり、それからは加

  賀さんが1人でこの泊地を支えていたも当然でした。いい機会です。この泊地は『一航戦離れ』しないと強くなれません。戦艦も榛名さ

  ん達『高速戦艦組』に頼りっきりでしたし……何より、相方や姉妹と一緒の方がいいでしょうから……これは佐伯湾泊地所属の艦娘全員

  の総意です」 


芦原提督(佐伯湾)「まぁ。あの4人があっちにいるのは間違いないだろうし、見つかっても『除籍』すると伝えているから、こっちに戻っ

         てくることはないだろう。後は東雲提督に任せるよ」

 

蒼龍「はい。そうですね」


芦原提督(佐伯湾)「ならば、彼女達が驚く程に強くなってやろうではないか。私自身も『英雄』が率いる艦隊には興味があるからね。向こ

         うが落ち着いたらすぐに演習を申し込もう。それに向けて訓練だ。絶対に勝つぞ」


蒼龍「はい!」




===============================================================


 

 

青葉「ガサ急いで!!」


衣笠「やばい! やばいって!!」



 青葉と衣笠は、ダッシュで自分の部屋に戻った。先に部屋についた青葉はドアを開けて中にいる4人に声をかけた。 



青葉「大丈夫でs……」


衣笠「あちゃ~……」



 青葉の目の前には膝をついてガックリと肩を落とした金剛と、冷静を装うも汗が滝のように流れている加賀。『ひえぇ~』と小声で言いながら慌てふためく比叡。眼鏡を執拗に上下に動かしている霧島の姿があった。



衣笠「まぁ……あれを聞いたらそうなるよね……あはは……」


加賀「……やってしまったわ」


金剛「『除籍』なんて……マズい事になったネ……」


霧島「これは……どうしましょうね……」  


青葉「とりあえず……選択肢は3つです。1つ目『自首して素直に謝りに行く』。2つ目『すぐにここを出て、佐伯湾泊地に戻って、佐伯湾

  提督に謝罪する』。3つ目『このまま隠れて、赤城さんと榛名さんの様子を見て帰って、佐伯湾提督に謝罪する』です…………どうしま

  すか?まぁ。どの選択肢を選んでも、『怒られる』のは間違いないです……ちなみに、青葉たちもですけど……」 


比叡「それって、全ての選択を選んでも最悪じゃ……」


東雲提督「よく分かってるじゃないか。それじゃ今すぐ説教してやるよ」


艦娘’s「「!?!?」」



 青葉たちの目の前に現れたのは東雲だった。東雲は先程の集会の時、青葉と衣笠が焦った表情をしたのを見逃さなかった。


 そして、彼女達が急いで自宅へと戻っていくのも見逃さなかった。 



青葉「あの……提督……そのですね……」


東雲提督「………全員、表出ろ」


艦娘’s「「…………はい」」




===============================================================




 一方、芹沢と摩耶は駅の方へと向かっていた。



摩耶「なぁ、明乃さん。あたし達どこに向かってんだ?」


芹沢副司令「ちょっと駅までね」


摩耶「何があるんだよ?」


芹沢副司令「それは秘密♪」



 道中、2人は佐伯湾泊地での話や東雲の話で盛り上がった。


 しばらく歩くと、駅に着いた。駅の前には黒い車が止まっていて、助手席から軍服姿の女性が下りてきた。



芹沢副司令「お~久しぶり!」


?「お久しぶりです。芹沢少将」


芹沢副司令「舞ちゃんは固いなぁ……普段みたいに『あーちゃん』って呼べばいいのにぃ……」


?「今は職務中ですから。いくら昔馴染みであっても、立場をわきまえないといけません」


摩耶「なぁ……この人は?」

 

都崎中佐「申し遅れました。私は『都崎 舞(つざき まい)』と申します。階級は中佐で、現在は『艦娘矯正施設』に勤務してます。主に艦

    娘のカウンセリングを行っています。一応私も『元105部隊』の1人です」


摩耶「マジ!?」


芹沢副司令「そうだよ! 舞ちゃんの後方支援のお陰で何回助けられたか……」


都崎中佐「いえ。総長と芹沢少将、東雲大佐……いえ、東雲中将の3人が前線で頑張ってくれたからこそです」


芹沢副司令「とは言っても、大抵は総長に美味しい所を持ってかれたけどね。当時はあの人バケモノだったし」


都崎中佐「それもそうですね。今となっては姫級の力を持った2人の方がバケモノでしょうけど」


芹沢副司令「それ言っちゃうの!? ねぇ!?」



 芹沢と都崎。両者は昔染みで大の仲良し。

 

 都崎は日本で有数の大企業『都崎造船』の御令嬢。お淑やかな大和撫子で軍部内でも密かにファンクラブが出来る程の人気。


 お嬢様ということもあり、幼い頃から琴や習字、茶道など……多くの習い事をやっていた。


 小学生の頃、都崎は習い事と厳しい家庭に嫌気が差して家を飛び出した事がある。どこへ行けばいいか分からず、家の近くにあった公園に行きついた。1人でブランコに跨っていたが、寂しさと家を勝手に飛び出して親に怒られると思うと涙が出た。


 そんな時、2人の子供が『どうしたの?』と都崎に声をかけてきた。その子供こそ、東雲と芹沢だった。


 3人はすぐに仲良くなり、偶然にも東雲と芹沢がいる施設は『都崎造船』の社長でもある都崎の父親が経営していたことから、都崎はよく施設に足を運んでは東雲や芹沢……施設の子達とよく遊んでいた。


 小学校と中学校は違ったが、高校では一緒に3年間過ごした。


 東雲と芹沢が高校卒業後、海軍へ入隊する事を決めた頃、都崎も両親を説得し、海軍に入隊。


 都崎は東雲と芹沢の2人とは違って士官学校ではなく、兵学校で訓練生時代を過ごした。都崎は成績最優秀者で特に狙撃術は群を抜いていた。


 兵学校を卒業直前のある日、軍の大佐が都崎を訪ねてきた。


 当時新設された対深海棲艦部隊。通称『105部隊』の隊長。現軍令部総長の鞍馬から狙撃術の高さを買われて誘いを受けた。


 都崎は悩んだが、東雲が入隊することを聞き、即入隊を決めた。


 『105部隊』解散後は『艦娘矯正施設』にて訳アリ艦娘達のフォローを行ってきた。


 彼女のお陰で、戦線に復帰した艦娘は少なくない。


 そんな彼女がここにいる理由は一つだった。



摩耶「なぁ……おい」


芹沢副司令「あっ! ごめんね! 舞ちゃん、連れてきたよね?」


都崎中佐「はい。こちらが着任に関する書類一式です。総長からの辞令もこの中に入っています」


芹沢副司令「ありがと!」


摩耶「なぁ……アタシをここに連れてきた理由を知りてぇんだが……」


芹沢副司令「ふっふっふ~♪ それじゃあ舞ちゃんお願い!」


都崎中佐「わかりました」



 都崎が車の後部ドアを開けた。


 すると、後部座席から1人の女の子が下りてきた。黒髪の長髪で眼鏡をした少女……着ている服は摩耶と全く同じ……



摩耶「……なぁ……嘘じゃ……ねぇんだよな……」



 彼女の姿を見た摩耶は涙を流し、その場に崩れた。

 

 車から下りてきた彼女。かつて佐伯湾泊地で共に過ごした。姉の2人が未着任だった摩耶にとって、たった1人の大事な妹……『鳥海』だった。



鳥海「久しぶり……摩耶」



 鳥海は摩耶の方へと歩み寄って、摩耶を抱きしめた。



鳥海「……ただいま。それと、ごめんなさい……」


摩耶「鳥海の所為じゃねぇよ……あいつらが悪いんだからよ……それに、鳥海を守れなかったあたしの所為でもあるからな…………鳥海のバ

  カ…………自殺とかしてんじゃねぇよ……あたいを置いていくなっての……」


鳥海「ごめんなさい……」


摩耶「こっちこそ、1人にしてわりぃ……もう1人にはしねぇからよ……」


鳥海「えぇ……」



 2人の目に涙が見え、互いに抱きしめている力が段々強くなる。もう離れないという意識の表れだろう……



摩耶「……これからは一緒にいられるんだよな?」


鳥海「えぇ。私もここに着任することになったの。また、よろしくね」


摩耶「あぁ!」  



 2人はしばらく、そのまま抱き合った。


 芹沢と都崎は、2人の様子をみて少し涙していた。




===============================================================




 摩耶と鳥海が落ち着いた後、全員車に乗って東雲の家へと向かった。


 駅から東雲の家まではそんなに遠く無い。歩ける距離にあるので数分で着いた。


 それまでの車内で、摩耶は鳥海に今まであった出来事を話していた。それを聞いて鳥海は笑ったり驚いたり、鬱状態に陥っていたとは思えないほどに感情を豊にしていた。


 摩耶はこの時、自分が泊地にいなかった頃に、鳥海が特警隊員から受けていた事を初めて知った。その所為で男性恐怖症になっているということも。

 

 それを聞いた摩耶は憤っていたが、芹沢から東雲がその特警隊員をボコボコにした際の事を聞いて大笑いしていた。


 都崎の話では、カウンセリングの成果が出ており、鳥海の鬱状態はほぼ改善しているらしいが、男性と接することは未だに難しいらしい。

 

 カウンセリングやリハビリのお陰で、男性とは話せないという訳ではないらしいが、一対一での会話だったり、男に近づかれると駄目らしい。


 色々話しているうちに、東雲の家に着いた。東雲の家の前には人だかりができていた。



芹沢副司令「何事?」


摩耶「さぁ?」



 芹沢と都崎、摩耶、鳥海の4人は車を降りて人だかりに近づいた。



摩耶「長良? どうした?」


長良「いやぁ……それがさ……私達も正直何が何だか…………ってか鳥海!?」


鳥海「久しぶり。長良さん」



 長良の言葉に反応した元佐伯湾の娘達は鳥海の姿を見るや、鳥海の傍に集まった。中には鳥海に抱き着く子まで。


 芹沢は鳥海の事を都崎に任せて、人だかりを掻き分けた。人だかりの中心には地べたに正座している6人の姿があった。



芹沢副司令「あー……やっぱりここにいたかぁ……」



 地べたに座っていたのは加賀、金剛、比叡、霧島、青葉、衣笠の6人だった。


 加賀と金剛、比叡、霧島には『私は泊地を無断で飛び出しました。ごめんなさい』と書かれた札が。青葉と衣笠は『私は4人を幇助しました。ごめんなさい』と書かれた札が首からかけていた。


 その6人の前には背後に不動明王が見えそうな程の剣幕を放っている東雲と赤城、榛名の姿があった。



榛名「お・ね・え・さ・ま・が・た?……き・り・し・ま?」


金剛「Oh……sorry……」


比叡「ひ……ひえぇ~……」


霧島「うぅ……まさか榛名がこれ程怒るなんて……」


赤城「加賀さん? 自分がしでかした事……理解されてますよね?」


加賀「……はい」



 普段大人しくて、『怒り』とは無縁のように見える奴程、怒った時はマジで怖い。

 

 芹沢は正直、この状況に関わりたくないと思った。


 摩耶、鳥海の2人も正座させられている加賀たちの姿を見て驚いていた。

 

 東雲がいるのを確認した都崎は東雲のもとへ向かった。



都崎中佐「お久しぶりです。東雲提督」


東雲提督「都崎か。久しぶり」


都崎中佐「これは一体どういう状況で……青葉さんと衣笠さん以外の娘はこの泊地には所属していなかった筈ですが……」


東雲提督「佐伯湾……元佐伯湾の4人って言えば分かるか?」


都崎中佐「あぁ、成程。そう言えば今朝通達が出ていましたね」



 都崎は勤務地である艦娘矯正施設を出る前、軍令部からの通達と東雲達がいる泊地に所属している艦娘名簿に一通り目を通していた。


 だから、加賀達がこの泊地所属の艦娘ではない事は瞬時に理解した。佐伯湾泊地から加賀達が所在不明になっていたのも、通達で知っていた。



東雲提督「さて……これからどうしたものか……」


五十鈴「ねぇ、金剛さん達は………」


潮「確か除籍って……」


天龍「ってことは軍令部……それか矯正施設送りか?」


東雲提督「ん?ここに着任させるぞ?」


艦娘’s「「へ?」」



 皆、東雲の発言に驚いた顔をしていた。


 芹沢と都崎は『やっぱり』という表情だった。



東雲提督「よく考えてみろ。練度も十分、どこにも所属していない正規空母に高速戦艦が目の前にいるんだぞ。軍令部に送るとか阿保がする

    ことだ。ウチの戦力が向上がるってのに。まぁ、少し反省してもらうけど……頑張って抗戦しろよ?」


青葉「抗戦?」


芹沢副司令「えぇ……あれやるの?可愛い娘達にやるのは、正直気が進まないんだけど……」


東雲提督「まぁ、俺たちの事知ってもらうには丁度良いだろ。都崎、お前も手伝え」


都崎中佐「わかりました。陣形はどうしますか?私は後衛から砲撃しましょうか?」


東雲提督「あぁ。俺は適宜前衛と後衛を入れ替える。芹沢は前衛な」


芹沢副司令「あー……私の意見は無視ってことね……はいはい、やりますよ……」



 その場にいた艦娘達は、東雲達が何を話しているのかさっぱり分からなかった。


 

大淀「あの……一体何を……」


東雲提督「大淀。海辺に全員集合させろ。正座している6人は艤装を着装して海上集合」


芹沢副司令「あ、それと明石ちゃんに『例のヤツ』を持ってこさせて」


大淀「わかりました!」



 大淀はその場にいた者達を集めて、各所に散った娘達を呼びに行った。


 榛名と赤城は金剛達を連れて海へと向かっていった。



東雲提督「さて……久々にやるか」


都崎中佐「やりましょう」


芹沢副司令「気が進まないけどね……」



 静かに闘志を燃やす東雲と都崎、気落ちしている芹沢の姿があった。




===============================================================



 

 海辺に集められた連中は皆、これから何が起こるのか分からなかった。


 なお、建設作業をしていた親方と作業員たちは、人払いの為に早上がりしてもらった。


 加賀と金剛達は艤装を付けて海に浮かんでいる。もちろん、青葉と衣笠もいる。


 他の娘達は海岸から見物している。


 そして東雲と芹沢、都崎の3人は『105部隊』時代の戦闘服を着装していた。


 芹沢、都崎の2人も部隊が解体した後も大事に残していた。


 東雲の武器はハンドガン2丁と軍刀。芹沢には片手ナイフが数本と両手に籠手を装備していた。


 ちなみに武器は『105部隊』で使用していた物では無く、明石が妖精の力を借りて徹夜して一晩で完成させた物。


 『105部隊』時代に使用していた物より性能は格段に向上している。


 芹沢の籠手には脱着可能なメリケンサックが付いていたが、芹沢は即外した。彼女達を傷つけたくはないからと。



明石「都崎中佐申し訳ありません。提督と明乃さん2人の武器は用意していたのですが……」


都崎中佐「大丈夫ですよ。武器は持ってきてますから」



 都崎は大きなケースを持っていた。そのケースには『バレット82A1』が入っていた。



明石「ほほぉ……色々と改造がされてますね……後で見せて頂いてもいいですか?」


都崎中佐「えぇ構いませんよ。私も今日付けでここの配属なのでずっといますから。いつでも好きなだけどうぞ」


東雲提督「は?」


芹沢副司令「え?もう1人って舞ちゃんの事だったの!?」


都崎中佐「はい。よろしくお願いします……それにしても明石さん大丈夫ですか?目にクマが……かなりお疲れの様ですが」  


明石「いや、あはは……2人の武器を作ってたらいつの間にか朝になってて……寝てないんですよねぇ……」


東雲提督「大丈夫か?悪い。さっき挨拶で立ちっぱなしだったろ。休ませればよかった」


芹沢副司令「明石ちゃんごめんね。大丈夫?もう今日は寝てていいからね?」


明石「いえ!?そんなお気になさらず……!?」



 芹沢は明石を抱き寄せて頭を撫でた。咄嗟の事に明石は慌てふためいたが段々と落ち着き始め、仕舞いには芹沢の胸の中で寝息を立てた。


 寝ている明石の顔は安らかというより、嬉しそうな顔をしていた。


 芹沢は明石を負んぶして、家のベッドで寝かせる為に東雲の家へと戻って行った。

 


都崎中佐「あの光景は懐かしいですね……」


東雲提督「だな。施設にいた頃は就寝時間になっても機械いじりを辞めようとしなかった優華を、芹沢がああやって寝かせて運んでたな」


都崎中佐「優華ちゃん、たまに徹夜で機械いじりした所為で施設長さんに怒られたこともありましたね」


東雲提督「あったな、そんな事……あいつ、元気にしてっかな……」


都崎中佐「優華ちゃんが高校を卒業してから、どこかの企業に就職したという話を聞いてますが……それ以外の事は私も分かりません……」


東雲提督「だな……今度あいつに電話してみるか」



 東雲は新しい武器の使用方法を明石が作った説明書を読んで確認。都崎は自分の装備を点検する。


 2人。そして芹沢は知らない……かつて施設にいた年下の女の子。優華……彼女は今艦娘になっていて、ここにいる『明石』こそが彼女であるということを。




ー続ー


後書き

次回。お仕置き開始。


このSSへの評価

1件評価されています


2021-02-23 09:21:09

このSSへの応援

1件応援されています


2021-02-23 09:21:11

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください