2021-02-23 06:49:41 更新

概要

『やっと提督になれた!』そう言って喜ぶ煩悩にまみれ気味の男、風川仁志(かざかわ ひとし)。着任した先はのどかな島の警備府でした。


前書き

今書いてる作品の息抜きがてら書いてます。どこまで続くか未定。あと、この話の時間軸は現代から数十年進んだ未来です。それから登場する人物、建物、団体、地名は全て架空のものです。


横須賀提督養成所を卒業して半年。遂に辞令が下りて、俺は横須賀鎮守府の雑用係を卒業し、近畿地方に最近できた沼島警備府の提督になった。俺は大本営に辞令を受け取りに向かい、そこで元帥から言われた言葉は


元帥「沼島は船がないと不便だから、着任までの間に船の免許を取りなさい」

俺「(゜Д゜)」ポカーン

元帥「それから、向こうは島だから補給が途絶えることがあるかもしれん。資材の浪費を防ぐため、建造や開発する際は儂に連絡して理由も説明するように」

俺「(゜Д゜)」ポカーン


いや、マジかよ。俺、建造しまくろうと思ってたのに。巨乳の艦娘をいっぱい建造しておっぱいランドを作ろうと思ってたのに。つーかなんだよ船の免許って。船がないと生活できないってウッソだろお前。


元帥「煩悩にまみれた顔をしているぞ」

俺「そんなことないです」キリッ

元帥「ほら、さっさと教習所に行きなさい」

俺「失礼します」


パタン


元帥「……まったく。あいつは何時まで経っても馬鹿だな。でも、それがいい」フフッ



・・・



俺「わーれーはうーみnぼえぇぇぇぇぇ!!」オロロロロロ

漁師「兄ちゃん大丈夫か~?船首は揺れるから船尾の方に行った方がいいぞ~」

俺「わ、わかりまsおぼぇぇぇぇ!!」オロロロロロ


数ヶ月後。俺は船の上で朝食のステーキ定食を口と鼻から盛大に吐き散らして魚に餌を与えていた。1500円の肉は美味いか魚共。


船の免許を取得し、元帥が中古の漁船を用意していたけど、風が強くて波も高かったことを心配した沼島の漁師さんが態々迎えに来てくれた。感謝しかない。多分来てくれなかったら船酔いでまともに船を操縦できずに今頃遭難してる。


胃の中にあったステーキ定食を全て吐き終え、胃液も出し切った頃、漁師さんが俺にスポーツドリンクを手渡しながら話しかけてきた。


漁師「兄ちゃん若そうだけど幾つだ?」

俺「22歳です」

漁師「22か!若いねぇ~。島にゃ若いのがあんまりいねぇから、提督さんとはいえ、若いのが来てくれると嬉しいねぇ」


うん。知ってる。ここに来る前に地図で見てみたら、めちゃくちゃ小さい島じゃん。小学校と中学校はあるけど高校ないし。ゲーセンないし。人口も1000人足らずだし。何なら人口分布も見てみたら2020年ぐらいまでは500人切ってたし。今も絶賛少子高齢化の場所だし。


漁師「うちは昔は集落全体が消滅するかもしれなかったのに、深海棲艦との戦争が始まってから島に引っ越してきた人達が居着いてくれたお陰で人口が回復して嬉しい限りだよ」

俺「そうですか」

漁師「ほら、もうすぐ到着だ」


漁師の指差す先には島の防波堤に並んで手を振る島民の方々が見える。いかん、船酔いしている場合じゃない。鼻をかんで、口をゆすいで、ブレス○ア食べて……よし。鏡で顔色確認……顔が死人のレベルで青白いけど問題ない。


漁師「ほい、じゃあこの縄を防波堤に向かって投げてくれ」

俺「わかりました」


防波堤に近づくと、漁師さんは俺にロープを渡してきた。俺が力一杯ロープを投げると、防波堤にいた方々がロープをキャッチして手際よく係留フックにロープを巻き付けてくれた。


漁師「到着だ。ようこそ沼島へ」

俺「本当にありがとうございました。そうだお名前は?」

漁師「あ、俺は淡島(あわしま)だ。これからよろしく」

俺「風川仁志です。よろしくお願いします」


淡島さんと俺は握手を交わすと、沼島に上陸した。上陸するなり島民の皆さんに囲まれる。若い女の子ばかりだったら最高なんだけど、残念ながらほぼお爺さんかお婆さんだ。


爺1「態々こんな所にまで来てくださって、ご苦労様です」

婆1「何にもないところですが、どうかよろしくお願いします」


……うん。マジで何にもない。全体的に建物は古めで、老朽化も目立つ。漁協もあるけど建物が錆だらけだ。


俺「あの、警備府は何処に……」

婆2「警備府はここから北にまっすぐ行ったところですよ」

爺2「艦娘の皆さんも待ってます」

俺「成程。ありがとうございます」


ふむ、既に艦娘は来てるのか。書面では戦艦、軽巡、正規空母がそれぞれ1。残りは駆逐艦5の計8人。艦名はわからない。元帥が教えてくれなかった。にしてもめちゃくちゃアンバランスな人選だ。普通こんな田舎の警備府だったら正規空母じゃなくて軽空母で十分だろ。火力も本土から程近いこの警備府では重巡で十分だ。ま、大本営がいいって言うのなら別にいいけどな。うん。戦艦と正規空母には巨乳の艦娘が多いって言うし。戦艦に関しては外れ無しだ。軒並みデカい。正規空母は……3人程ペッタンがいた気がする。その中でも特に絶壁なのは2人。まぁ確率は低いと言っていいだろう。


俺は島民の皆さんにお礼を言うと、荷物を持って警備府に向けて歩き出した。歩くこと10分。俺の着任する警備府の建物が見えてきた。3階建ての至ってシンプルな建物に、小さな工廠。そして山の斜面を掘って作ったらしい資材倉庫が見える。


俺「ここが俺の警備府か……」


正門の横には『沼島警備府』と墨書された木の板が掛かっている。今日から俺はこの警備府の提督になる。俺は大きく息を吸い込み、期待に胸を膨らませて正門をくぐった。


??「誰ですか?」


しばらく歩き回っていると後ろから声をかけられた。今この敷地内には艦娘しかいないはず。つまり、声をかけてきたのは艦娘。いったい誰なんだろうか。俺はクルリと向きを変えると声の主を見た。……うん、絶壁まではいかないけど、小さい。


俺「今日からこの警備府の提督を務める風川だ」

??「提督さんでしたか。私は夕張。軽巡洋艦です。この警備府の艤装の手入れや開発、設備維持をしています」

俺「よろしく頼む」


夕張の髪、銀髪って言うのかな。綺麗な髪をしてる。あとへそが見えててエロい。タイツもエロい。


夕張「どうかしましたか?」

俺「いや。さて、まずは執務室に行こうか」

夕張「では案内しますね」


夕張に案内されるままに俺は建物に入る。


夕張「警備府自体は地上3階地下2階です。地下1階には食料や水などを備蓄する倉庫、地下2階には屋内トレーニング場及び非常用シェルターとなってます。緊急時にはこちらに執務室や無線室を移して指揮を執ります」

俺「成程」

夕張「地上1階は食堂と入渠施設、それから物置。2階は艦娘居住区。3階は執務室と無線室、それから提督の部屋があります。提督の部屋には浴室もあります」

俺「ありがたいね」


正直自室に浴室があるのはありがたい。入渠施設が風呂場も兼ねてたりすると、艦娘達と時間の調整をする必要があったりするから大変なんだよね。横須賀にいるときに学んだ。うっかり艦娘が入っている時に入ったら大事件になりかねない。


夕張と共に3階に上がり、突き当たりにある少しだけ豪華な扉の前まで来ると夕張は立ち止まった。


夕張「ここが執務室です」

俺「案内ありがとう」

夕張「どういたしまして」


この扉を開ければ、俺は警備府の提督として働くことになる。どんな艦娘達が待っているのだろうか。俺は期待に胸を膨らませて扉を開いた。


俺「し、失礼するぞ」ガチャッ


俺が執務室に入ると、7人の艦娘達がソファーを囲んでトランプをしていた。


俺「……すまない。部屋を間違えたようだ」

夕張「あってますよ。ここが執務室です。皆、提督が警備府に着任したわよ。これより、艦隊の指揮に入ります」


夕張の言葉に、艦娘達は慌ててトランプを片付け、横一列に整列し、俺に向かって敬礼してきた。


艦娘達「「遠路はるばるありがとうございます!」」

俺「出迎えありがとう。早速だが、艦種、艦名、練度、改装状態を教えてほしい。夕張も改めて頼む」

夕張「はい。夕張型軽巡洋艦の夕張です。練度は88で、改装状態は改二。この警備府の副官を務めさせて頂きます」

俺「ありがとう。次」

??「金剛型戦艦、3番艦の榛名です。練度は35で、改装状態は第一次改装が終了しています」


榛名、胸デカいな……。他は……残念だな。つーか練度の落差が凄まじい。夕張や榛名はまとめ役という意味で配属されたんだろうか。夕張ほどの高練度艦がここに配属されるってのも珍しいけど。こんな田舎の警備府だったら普通は榛名ぐらいの練度の艦娘がまとめ役になるんだけどな。


??「あなた。何か嫌らしいこと考えてたんじゃない?」

俺「ソンナコトナイヨー」

??「はぁ……雲龍型航空母艦の葛城よ。練度は10。未改装よ」


……改装したらあの断崖絶壁は少しは膨らむのだろうか。駆逐艦と同等もしくはそれ以下なのは少し可哀想にすら思える。


俺「成程……残りは駆逐艦だな」

夕張「はい。駆逐艦は全員白露型で、練度は全員5です」

俺「成程。じゃあ皆自己紹介を頼む」

??「はーい!じゃあ私から!白露型駆逐艦1番艦の白露です!!よろしくお願いします!」

俺「よろしく」


すごい元気だな。


??「時雨だよ。提督、よろしくね」

俺「ああ。よろしく」


時雨は白露と違って落ち着いてる感じだな。駆逐艦達の中のまとめ役かな?


??「夕立っぽい!提督さん、よろしくお願いしますっぽい!」

俺「ああ」


一瞬犬に見えた。超人懐っこそう。不審者にでもホイホイ付いていきそうだから気をつけないと。


??「は、春雨です。よろしくお願いします……」

俺「こちらこそよろしく頼む」


時雨みたいに落ち着いてるっていうより、どちらかというと控えめっぽい感じの子だな。


??「海風です。よろしくお願いしますね」

俺「ああ。よろしく」


ザ・普通。何というか、すごく普通な子に見える。


俺「さて、俺だな。俺は風川仁志。階級は少佐。出身は京都だ。何か質問はあるか?」

白露「はい!」

俺「白露」

白露「何歳ですか!」

葛城「流石にいきなり年齢を聞くのは失礼よ……」

俺「いや、いいよ。歳は22だ」

榛名「随分若いですね。海軍には何時入隊したんですか?」

俺「中学卒業してすぐだな。だから15か。しばらくは一般兵として働いて、19の時に提督候補生として横須賀の養成所に入った」


実は俺の家、あまり裕福な方じゃなくて、勉強がよくできる妹や弟のために高校に行かなかったんだよね。高校に行かないって言ったら中学校の教師からは物凄く引き止められたし、親も反対したけど、それを振り切って中卒でも入隊できて、高収入の海軍に試験をくぐり抜けて入隊した。以来、給料の7割は実家に仕送り。2割は貯金。1割は自分のために使っている。養成所時代は衣食住は確保されていたからそれで何の問題もなかった。提督はそれより高収入だから、このままでも問題ないだろう。俺は弟も妹も大学まで行かせてやるつもりだ。


夕張「じゃあ中卒ですか?」

俺「いいや。一般兵時代に高卒認定を取ったから一応高卒だ」

海風「随分苦労されてるんですね」

俺「ま、この話は置いといてだな……他に質問は?」

榛名「じゃあ、特技は何ですか?」

俺「趣味……か。釣りと日曜大工かな。旋盤、溶接一通りのことなら何でも出来るぞ」

夕張「え?すごっ」

春雨「素人の域を超えてる気がするのですが……」

時雨「今までどんなのを作ったんだい?」

俺「え?う~んそうだな……箪笥とか、小物入れとか。バイクとか車も直したことがあるな。あと屋根の修理も」

夕立「提督さん、元々所属していたのは工兵隊っぽい?」

俺「ああ」


俺は一般兵時代、工兵隊に配属させられていた。元々物作りが好きだったこともあって、みるみるうちに色んな技術を習得して、気付けば業者に混じって兵舎の屋根の修理や水道、電気工事とかもしていた。『貴様、軍人であることを忘れてるな』と上官に呆れられたこともある。


俺「他に質問は?」

春雨「はい。京都ってお寺がいっぱいあるんですよね?よくお寺には行きましたか?」

俺「いや……よく皆が思い浮かべる京都のイメージって基本的に『京都市』のイメージだからな」


これ重要。一部の人はお茶で有名な宇治市や、日本有数の海軍基地のある舞鶴市を言ったりするが、8割方の人は京都と言ったら寺社仏閣を思い浮かべるだろう。しかし俺の生まれは京都市でも舞鶴でも宇治でもない。俺の出身は京都市に隣接する地方都市、南丹市だ。その南丹市の中でも旧美山町だ。冬は京都府内でもそこそこの豪雪地帯で、かやぶき屋根の有名な場所。でも……


時雨「じゃあ、何処出身なんだい?」

俺「当ててみろ」

榛名「舞鶴」

俺「違う」

夕張「宇治」

俺「違う」

夕立「あれ?他に何処があるっぽい?」


これだよ。とにかく知名度が低い。それはもう悲しくなるぐらいに。関西圏からでれば最早京都市、舞鶴以外は皆京都の市町村って知らないんじゃないかって疑うレベルだ。


俺「……南丹だ」

葛城「何処よそれ」

俺「京都市の隣だ。なんで知らないんだよ。南丹って結構広いぞ」

葛城「はぁ?あのね、私達は何時も海に出て深海棲艦と戦ってるのよ?そんなイノシシやシカ、サルしかいないようなクソ田舎、知ってるわけないじゃない。どうせ広いって言っても、山しかないんでしょ」

俺「(´・ω・`)」ショボン

白露「流石に言いすぎじゃない?事実かもだけど……」


事実なのが辛い……。


俺「と、とにかく、出身の話は置いといてだな、この警備府の目的は何だ?」

夕張「この警備府の目的は漁船警護及び救助、対潜警戒が主目的です。それから、遠方から帰投した艦隊の補給及び応急修理拠点という側面もあります」

榛名「この警備府の目の前の航路は神戸、淡路、瀬戸内、高松といった鎮守府の艦隊の通り道ですからね……」

海風「少し離れたところには徳島鎮守府もありますしね……」


うん、まぁ警備府の任務はこんなもんだろうな。この数、この練度で近海哨戒は無理だし。対潜警戒と言っても葛城は正規空母。対潜警戒には向かない。なんでここに送り込んだ。


俺「さて、こんなもんにして今日はお開きにしよう。明日からは本格的に任務を開始する。以上、解散」


今日はもう疲れた。任務依頼が来るのは明日からだから今日は警備府の敷地散策だな。


俺「さて、荷物を置きに行くか」


執務室を出た俺は執務室の隣にある『提督私室』と書かれたプレートが掛かった部屋のドアを開ける。


俺「思ってたより広いな」


部屋は大体10畳程の広さで、和室だ。押し入れに箪笥、本棚。小さめのテレビとちゃぶ台が置かれ、カセットガスのコンロが置かれた狭い台所にトイレと風呂が付いていた。窓を開けると、腰掛けられる程のスペースがある。丁度物干し竿を架ける場所もあるし、ここで洗濯物も干せそうだ。


俺「風呂もまぁまぁ広めだな。洗濯機まであるのか」


これならかなり快適に暮らせそうだ。必要な家具は最悪作ればいい。



・・・



俺「さて……と」


荷物を一通り片付けた俺はリュックサックに地下足袋を履いて、地図を片手に警備府の北側の山を歩いていた。警備府の敷地はかなり広大だが、大半が山になっている。沼島は島の中央部に住宅などが密集しているから、島の北部と南部はほぼ山になる。警備府のある北部も、警備府より北は山のみだ。


俺「島だから買い出しに苦労しそうだしな……」


もういっそ開墾して畑でも作ろうかな。現時点で警備府の人員は俺を含めて9人。皆で働けば畑の維持は可能だろう。実家のある南丹に比べてシカやイノシシもほぼいないだろうし、※連作障害と害虫と鳥さえ気をつけていればいいだろう。


※連作障害……同じ畑で同じ作物を作り続けると年々収量が減っていくなど、正常に栽培ができなくなること。一般的にトマトやナス、ピーマンなどは連作障害が起こりやすい。逆にタマネギやニンジン、カボチャ、サツマイモなどは連作障害が起こりにくい。


俺「流石にコメは作れないな……」


この島、一応水はあるにはあるけど、コメ作りを遠慮なくできる程の水量はない。すぐ隣の淡路島から水道やガス、電気、電話線を海底ケーブルで繋いではいるものの、やはり水は貴重だ。下手に使えない。雨水を溜めて使うことが前提だ。


俺「となると畑を作って何か育てるしかないか……後はニワトリでも飼うか」


ニワトリからは玉子が採れる。年老いて玉子が採れなくなれば、味は悪いが鶏肉にできる。


俺「早速準備するか……」


俺は山を下りると工廠に向かった。工廠には様々な機械が所狭しと置かれ、オレンジ色の作業着を着た夕張が1人でせっせと動き回っていた。


俺「夕張」

夕張「はい!何ですか?」

俺「チェーンソーを貸してくれ」

夕張「はい、どうぞ……って。着任早々何するつもりですか?」

俺「土地のリフォーム」

夕張「成程~ってなるわけないじゃないですか。説明してください」

俺「いや、万が一のことを考えて、食べ物を作ろうって思ってな。すぐそこの山を切り拓いて畑でもしようかと」


俺の言葉に夕張が疑いのまなざしを向けてくる。まぁ、着任早々畑を作るなんて言ったら普通そうなるよな。


俺「ここは離島だ。万が一敵に攻撃されたら、食料不足になるのは確実。それに備えるというわけだ。警備府の敷地内なら、多少のことは許される。住民の迷惑にならない程度にするつもりだ」

夕張「成程……そう言うのでしたら……」


そう言って夕張はチェーンソー2台にリヤカー1台、そしてロープを持って来た。


俺「おい、チェーンソーは1台でいいぞ」

夕張「私も手伝います。1人で山仕事は危険ですから」

俺「手伝ってくれるのか?」

夕張「着任早々怪我をされたら困りますから」


夕張は素早く地下足袋を身に着けると、壁に掛かっていたヘルメットを俺に押し付けてさっさと歩いていく。あ、俺がリヤカーを牽くのか。



・・・



夕張「で、どういうイメージで開拓するつもりですか?」

俺「大体のイメージはこんな感じだな」


俺は持っていた紙切れに畑の完成図を描く。地形的に斜面をならすのは難しいから、段々畑にすることにした。水は雨水に頼ることになるから、貯水タンクを作る必要があるな。山頂付近に貯水タンクを作ってみようか。


俺「一つ一つの畑の面積はそれ程大きくはならないが、それぞれの畑に違う作物を植えて栽培しようと考えている」

夕張「成程……住民の許可は?」

俺「警備府の敷地内で多少土地をいじることは許されている。問題ないだろう」


俺は早速倒しやすそうな木を見つけると、チェーンソーのエンジンをかけた。


夕張「提督。チェーンソーを使ったことは?」

俺「実家で何度か使ったぐらいだ」


実家にいた頃、親父が体調を崩していた時に台風で山の木が倒れて道路を塞いだことがあった。慢性的に若者が少ない地域ということもあって、仕方なしに近所の動ける爺さん達と一緒に木を切ったことがある。ただ『流石に子供に無理をさせるのは良くない』と周囲に言われて結局やったのは数回だけだ。


俺「あっちの方向に倒そうか」

夕張「わかりました」


俺は木の根元にチェーンソーの刃をあてて、切り込みを入れる。ある程度切ったところで夕張がくさびを打ち込み、艤装を展開して木を押し倒した。


俺「おお。すごいな夕張」

夕張「とはいっても、これでもかなり出力を抑えてますけどね」

俺「もういっそ艤装使った方が早く終わらないか?」

夕張「馬鹿言わないでください。艤装を使うと燃料を消費するんですよ?出撃も演習もしてないのに燃料が大幅に減ってるなんて大本営にバレたらただでは済みませんよ?」

俺「……確かに」

夕張「ですので、艤装の使用は最小限にしましょう」

俺「わかった」


その後も俺は夕張と共に木を伐採し、枝を全て切り落とした。目標の半分程の木を伐採したところで日が暮れたから今日の作業を終えることにした。


俺「こんなもんかな」

夕張「切った木はどうするんですか?」

俺「幹は段々畑の土留めに使う。枝は焼却処分だな。明日以降は書類作業の合間を見つつ木の伐採と根っこの除去だな」


とは言ってもこんな辺境の警備府の書類作業なんてたかがしれてるから、どうせすぐに終わる。1日の大半はこの作業に費やせるだろう。


夕張「じゃあ私はシャワーを浴びてきます」

俺「ご苦労さん」


工廠について道具を所定の場所に戻した後、夕張と別れた俺は私室にあるシャワーを浴びた。シャワーを終え、浴室から出て軍服に着替え終えたタイミングで内線が鳴った。


俺「はい。提督だ」

榛名「提督、榛名です」

俺「どうした?」

榛名「あの、警察の方達がお見えです」

俺「警察?」


俺、何かやらかしたっけ?心当たりないんだけど。


榛名「執務室にご案内してよろしいでしょうか?」

俺「ああ。お茶を出して待って貰ってくれ。すぐに行く」



・・・



俺「お待たせしました。沼島警備府提督の風川です」


数分後。俺は大急ぎで執務室に入り、ソファーでくつろいでいた警察の服を着た3人組に敬礼をした。パッと見た感じでは、2人はそれなりの立場の人達っぽいが、1人はまだ20代に見えるから、恐らく沼島を管轄している警察官だろう。


警察官1「兵庫県警本部長の永井です」

警察官2「南あわじ署署長の桑島です」

警察官3「灘駐在所の吾妻です」

俺「態々ご苦労様です」ペコリ

永井「早速話に入らせてもらいますが、実は風川さんに警察が持つ一部権限を貸し与えようと思い、本日は来ました」


……は?何で?


桑島「沼島は以前より警察が常駐していません。管轄は灘駐在所ですが、何せ沼島は離島で船で行く必要がある。天候によっては何かあっても急行できないという欠点がありました」

永井「そこで、警察の持つ一部権限を移管し、風川提督に実質的な駐在官となって貰いたいのです」


マジかよ。提督やりつつ警官もするのか俺。ちゃんとやって行く自信ないんですけど。


俺「しかし、それは私1人で判断できることでは……」

永井「既に海軍と協議をして、風川提督が承諾すれば構わないと許可は得ています」


それって拒否権ないって言ってるのと同じじゃん。


俺「そもそも、今までは灘駐在所で対応できていたんですから今のままでもいいのでは?私は警察の業務はさっぱりですよ?」

永井「そこは我々がフォローします。何か困ったことがあれば遠慮無くこちらに電話して頂ければ」

桑島「簡単な業務マニュアルも作成しましたので、こちらも参考に」


桑島さんから受け取った冊子は結構分厚かった。表紙をめくると、目次が数ページにわたってびっしりと書いてある。最早教本レベルだ。


俺「……わかりました。引き受けましょう」


最早俺に拒否権はない。



・・・



俺「……と言うわけでここ沼島警備府は警察的な役割も持つようになった」

葛城「唐突ね」


1時間後。俺は食堂に集まった皆に対して説明を行った。


榛名「でもまぁ、特段驚くことではないですね。十分あり得た話でしょうし」

俺「まぁな」


俺が承諾した後色々聞いた話によると、本当は警備府の一角を間借りし、駐在所のようにしたかったのだが、海軍が軍事機密の漏洩の可能性があるとしてこれを拒否。交渉を重ねた結果、警備府の提督に警官をやらせよう。となったらしい。











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