アンダーアンドアップ
概要
京都の高校に通う風川翔太。中学時代は無名のピッチャーだったが、周囲に刺激されてメキメキと成長していく。目指すは甲子園。
個性溢れる女性顧問。癖のある先輩。頼れる同級生。様々な人間に囲まれて翔太の高校生活は波瀾万丈?になるかもしれない。
前書き
この話は『沼島警備府の日常』の主人公の風川仁志の弟、風川翔太が主人公となる話です。『沼島警備府の日常』の登場キャラも、艦娘もあまり出てきません。あくまでもスピンオフ作品です。
午前6時30分。今日は高校生活最初の登校日。俺は玄関で荷物チェックを済ますと、スニーカーを履いて鞄を持った。
翔太「……っし。いってきまーす!!」
母「いってらっしゃい」
俺の名前は風川翔太。今日から高校一年生の華の男子高校生だ。俺がガレージに入ると、祖父ちゃんがバイクをいじっていた。
祖父「おぉ翔太。もう行くのか」
翔太「祖父ちゃん。こっから俺の高校まで何キロあると思ってんの?今から行かなきゃ間に合わねぇよ」
俺の通う高校は家から20キロも離れている。交通費を浮かすためにバスや電車は使わない。移動手段は自転車だ。
祖父「お前も早く免許を取らんとな」
翔太「もうすぐ取れるよ」
これだけ離れてるから、高校もバイク免許取得を許可している。ただし、通学に使っていいのは125ccまでだ。俺としても早く免許を取得したいところで、今月末辺りに教習所に通おうかと考えている。4月生まれでよかった。
俺は壁に掛けられた学校指定のヘルメットを被ると、あごひもをしっかり留めて、自転車に跨がった。
祖父「気をつけてな」
走り出す時、祖父ちゃんの声が背中越しに飛んできた。
・・・
翔太「だーくそっ!遠いんだよマジで!!」
家を出て20分後。俺は愚痴をこぼしながら坂道を登っていた。既に着ていた学ランとカッターシャツは脱ぎ、シャツ一枚だ。認識が甘かった。実家から高校までは坂道も多いし、カーブも多い。学校に着くまでに汗だくになってしまいそうだ。替えのシャツを用意しておいてよかった。唯一の救いはド田舎のお陰で交通量が少なくて、思う存分飛ばせること(平地と下り坂に限る)。そんな俺の後ろから、1台のバイクが追い抜いていった。
優「がんばー」ブィィィン
翔太「ちょ、姉ちゃんズリィよ!!」
俺の叫び声に、姉ちゃんは路肩にバイクを止めると、俺の方を見てきた。スカートだけだと風でめくれるから、スカートの下に体操ズボンを穿いている。
優「ずるくないわよ。私、ちゃんと免許取ったし、学校からも許可貰ってるし。じゃ、私も朝練あるから」
翔太「あ、ちょ……」
姉の優は高校三年生。頭脳明晰、スポーツ万能、眉目秀麗を取りそろえた、誰もがうらやむ才女で、姉に告白して玉砕した男は数知れず。今はバスケ部に所属していて、主将を務めている。
翔太「……くそったれ」
・・・
俺の通う高校は府立青龍高校。通称青高。つい10年ほど前にできた新設の共学校だが偏差値が高く、毎年有名大学に多くの生徒を現役合格させている。その駐輪場で、俺は自転車のハンドルに顔を埋めていた。
翔太「通学が筋トレになってるぞ……これがしばらく続くのか」
??「おい、大丈夫か?」
俺が顔を上げると、そこには見覚えのある男が立っていた。
翔太「清瀬か?」
清瀬光太郎。中学は違ったけど、お互い野球部に所属していた事もあって仲がいい。まさか同じ高校に入学するとは思わなかったけど。ポジションはキャッチャー。中学通算14本塁打を叩き出したこの辺りではちょっとだけ名前が知られている男だ。まぁお互い野球部は弱小で、あまり勝ち上がれなかったことを考えると、この本塁打数は凄い。キャッチャーとしての能力もそこそこだと思うが、如何せん組むピッチャーや守備があまりにもヘボすぎて、幾らホームランを打っても、盗塁を刺しても(清瀬の送球を大抵内野手が捕れず、外野のフェンス際までボールが転がっていた)勝てなかった。病院院長の跡取り息子で『野球は高校まで』と割り切っているから、強豪校からのスカウトを蹴ってこの高校に来た。ついでに俺と同じクラスだ。
清瀬「ああ。で、何してんのお前」
翔太「朝から筋トレだよ。下半身強化兼スタミナ作り」
清瀬「はぁ?」
翔太「教室行こうぜ。それまでに話すわ」
~翔太説明中~
清瀬「はぁ!?20キロ離れた実家からチャリで来た!?」
翔太「うるせぇよ。頭に響くだろ」
清瀬「親は?そんだけ離れてたら普通送り迎えすんだろ」
翔太「無理だっての。親父もお袋も祖父ちゃんも仕事で忙しいし」
我が家は結構カツカツな生活だ。親父、お袋、祖父ちゃんが働いて何とか暮らしている。あと、6歳年上の兄ちゃんが海軍で働いている。中学卒業と同時に『中卒でも高収入って素敵やん!!可愛い優と翔太のためにも行くしかないじゃんアゼルバイジャン!!!』と海軍に入隊して、以後ほぼ消息不明。最前線のラバウルで大怪我をしたけど、唯一生き残ったという新聞記事と、その後またもや国防の要である硫黄島に行ったという話を聞いた。少なくとも毎月かなりの仕送りをしてきてるから、多分生きてはいるんだろうけど。姉ちゃん曰く『最近仕送りの金額が倍以上になったから、昇進したのか、またどこか最前線に放り込まれたのかもしれない』のだそう。
正直、兄ちゃんは馬鹿だ。いや、勉強が出来ないとかそう言う馬鹿じゃなくて。兄ちゃんは俺や姉ちゃんよりも勉強も運動もできた。母ちゃんが忙しい時には料理も作ってくれた。幼稚園や小学校の弁当も作って貰ったことがある。模擬試験でも府内で1番難しい難関高校でもA判定を叩き出していた。何かと問題行動も引き起こしていたけど(お陰で俺と姉ちゃんは中学時代は生徒指導から目を付けられ、上級生や同学年のヤンキー達からは『関わると兄貴にどんな復讐をされるかわからねぇ』と避けられた)、大学までいったらきっと医者とか、弁護士とか、凄い人になれるかもしれなかった。でも、兄ちゃんは俺達を優先した。『何、上手く行かなきゃ実家に帰って家の農業でもして生きてくよ。俺長男だし。学歴も高卒認定取りゃいいしな。その代わり、お前らが頑張って勉強して、偉くなって俺を養ってくれ』と笑っていた。
清瀬「だったら、下宿すればいいじゃん」
翔太「金がねぇんだよ。家にそんな余裕ねぇよ。お前、家賃から光熱費、食費やら出してくれるのか?」
清瀬「いや、無理。何かゴメン……ところでさ、部活決めたか?やっぱ野球部だよな?」
翔太「ああ」
俺の返事に、清瀬の顔が一気に明るくなった。わかりやすい。
清瀬「だよな。俺と組めば甲子園は無理でも、いいとこまでいけるって。お前、アンダースローなのに中学でMAX120キロだしてたんだ。俺が保証する。俺達は最低でもベスト16には入れる。くじ運さえ良ければ」
翔太「最後は神頼みかよ」
中学の時、俺はピッチャーだった。それも珍しいアンダースローの。アンダースローの理由は、昔読んだ漫画の主人公がアンダースローで、格好良かったから。それだけ。家族は兄ちゃんと俺以外は野球に疎くて、キャッチボールの相手もいないから、兄ちゃんが海軍に行ってからは神社の境内にある塀の壁に向かって投げる毎日だった。で、気付けばこの球速になっていた。目標は漫画の主人公のように高校1年で140キロを出すことだ。
清瀬「あの伸び上がってくるようなストレートに、抉るようなカーブ、それにスライダー。あとサークルチェンジ……だっけか?十分だろ。特にお前のカーブ。頭に当たるかと思えば、ギリギリストライクゾーンに入りやがる。守備と打撃がまともだったら最低でも地区代表ぐらいにはなれただろうよ」
翔太「そっちこそ。守備がちゃんとしてて、回ごとに大炎上するようなピッチャーじゃなきゃいいとこまでいけただろうな」
清瀬「26戦6勝15敗5分」
翔太「何だそれ?」
清瀬「中学時代のお前との勝負の結果。練習試合も含むけどな。好打者の俺をこれだけ負け越させたんだ。保証できる十分な理由だろ?」
翔太「……数えてたのかよ」
・・・
担任「え~では、今日はこれで終わりになります」
清瀬「おし。風川、部活見に行こうぜ」
翔太「部活じゃなくて野球部だろ?」
清瀬「そうとも言う」
放課後。俺と清瀬はクラブ見学をするためにグラウンドに向かった。グラウンドではサッカー部や陸上部、ラグビー部などが大きな声を出しながら練習をしていた。でも野球部の姿はない。
翔太「いないな」
清瀬「野球部はあっちだろ?第2グラウンド」
清瀬が顎でしゃくる先には、第2グラウンドと呼ばれている今いるグラウンドよりも少し小さいグラウンドでランニングをする野球部員達が見えた。
翔太「……何か人数少ないな」
清瀬「知らねぇのか?うち、野球部弱小だぞ。勝っても大体3回戦止まりだ。おまけに俺の調べでは野球部員は20人いないらしい。これならレギュラーは無理でもベンチ入りはできるぜ」
翔太「そこはレギュラーになれるって言えよ」
清瀬「先輩第一主義だったらどうすんだよ」
先輩1「おい、お前ら入部希望者か?」
清瀬と騒いでいると、一人の先輩が気付いて近づいてきた。身長は170cmぐらいで、細い。髪は坊主じゃ無くて、ツーブロックだ。
翔太「あ、はい。風川翔太です。山之上中学出身。ポジションはピッチャーです。外野経験もあります」
清瀬「清瀬太一です。谷野下中学出身。ポジションはキャッチャーです。一応ピッチャーとファーストの経験もあります」
先輩「あー俺は西大路奏太(にしおおじ かなた)。キャプテンの3年生。ポジションはキャッチャーだ」
西大路先輩は軽く頭を掻くと、後ろを向いた。
西大路「おい、新入部員だ!!」
先輩「マジかよ」
先輩「今年は早いな」
先輩「去年なんて入って来たの5月だぞ」
西大路先輩の言葉に、わらわらと先輩達が集まってくる。ある程度集合したのを確認した西大路先輩は、俺達の方に振り返る。
西大路「うちは現状3年7人、2年4人の11人。それにマネージャーの女子1人で合計19人。戦績は去年の夏が3回戦敗退、秋が2回戦敗退だ。ちなみに最高成績は創部3年目夏の予選ベスト8。俺達はこのベスト8を目指す」
甲子園は流石にデカすぎるからな~と西大路先輩は笑う。まぁ、そうだろう。これといった戦績のない普通の公立高校が、多額の金をかけて環境を整備して、他所から名のある選手達をかき集めた強豪私学に敵う訳がない。
西大路「んじゃ、早速なんだけど、実力が見たいからちょっとマウンドから投げてくれないか?」
翔太「え?今ですか?」
先輩「うちは慢性的に投手不足でね~。あ、俺は3年の赤星。今うちで唯一のピッチャー。よろしく」
翔太「はぁ」
西大路「じゃあ、風川君と清瀬君。キャッチボールして肩が暖まったら投げて」
清瀬「わかりました」
俺と清瀬は軽くキャッチボールをした後、先に俺がマウンドに立った。打席には赤星先輩が。キャッチャーは清瀬。清瀬の後ろにスピードガンを持った西大路先輩が立った。
翔太「じゃ、いきまーす」
赤星「あ、待て待て。風川君、球種は?」
翔太「あ、ストレート、カーブ、スライダー、サークルチェンジです」
西大路「多いな」
赤星「技巧派って所だな」
俺は軽くマウンドをならすと、清瀬を見た。
清瀬(最初だ。ど真ん中にストレート)
翔太(わかった)
清瀬のサインに頷いて、投球動作に入ると先輩達がざわつく。
先輩「うおっ。アンダースローか」
先輩「珍しいな」
俺の手から離れたボールは、吸い込まれるように清瀬のキャッチャーミットにスパンという音を立てて収まった。
赤星「……110位か?」
西大路「ああ。115だ。1年生……アンダースローにしては速い方だな。よし、どんどん投げてくれ」
清瀬(次は?内角高め一杯にするか?)
翔太(ここで先輩達の心象を悪くさせんのカヨ)
清瀬(ダメか?なら外角低め一杯)
翔太(……わかった)
サインと首の動きだけでのやり取りだが、俺も清瀬もお互いが喋っているかのような感覚だった。初めてバッテリーを組むのに、ここまで意思疎通ができるのかと、お互いに少し驚いていた。
俺は清瀬のサインに頷くと、外角低め一杯に投げ込む。赤星先輩はバットを振ったが、バットは空を切った。赤星先輩は苦い顔をすると西大路先輩の方を見た。
赤星「マジかよ。当てにいったのに」
西大路「何やってんだよ。ストレートだったぞ」
赤星「アンダースローの球筋に慣れないんだよ。こう、何て言うか、思ったよりも伸びがあるんだよ」
西大路「いいから打席に入れ」
西大路(確かに赤星の言った通り思った以上に伸びがあるし、球速の割りにはかなり速く見える。アンダースローの投手はそんなに多くない上に一般的な投げ方のオーバースローと球の出所が違うから、流石に強豪校はキツいかもだけど弱小校の初見殺しぐらいはできるだろう)
清瀬(次は何にする?スライダーでもするか?)
翔太(わかった)
その後、俺は変化球も交えて投げ込み続けた。赤星先輩のバットは悉く空を切り、最後の方はゲッソリとしていた。投げた球数は30球。ちょっと投げすぎたと思う。
翔太「あの……すみません」
赤星「燃えたよ……燃え尽きたよ……真っ白にな……」サラサラ
清瀬「真っ白になってる……」
西大路「はぁ、こいつは……おい、清瀬か風川、どっちでも良いから赤星の投げる球を見てくれ。打てそうなら打っていいぞ」
清瀬「あ、じゃあ俺が先に行きます」
清瀬は持って来ていた金属バットを持つと数回素振りをしてバッターボックスに立った。西大路先輩はキャッチャーマスクを被り、俺はスピードガンを持って審判に回る。エースの球筋を間近で見られるなんてラッキーだ。
赤星「よーしいくぞー」
清瀬「お願いします!」
赤星先輩は振りかぶると、勢いよく腕を振った。ストレート。だけど球速は目を見張るほどの速さではない。赤星先輩から離れたボールは吸い込まれるように西大路先輩の構えていたキャッチャーミットに収まった。外角一杯。ストライクだ。
翔太「ストライク。外角一杯」
清瀬「……」
西大路「どうだ清瀬。うちのエースの球は」
清瀬「……今のでどれぐらい?」
翔太「128」
清瀬に聞かれ、反射的に球速を答える。
清瀬「ふぅん……西大路先輩、赤星先輩って球種はどれだけあるんですか?」
西大路「ん?んーそうだな……カーブ、スライダー、チェンジアップ、フォークだな。一応シュートも投げられるぞ。あ、ちなみに最速は132な」
翔太「多いですね」
西大路「ま、投げられるだけで殆ど実戦ではそんなに使えないんだけどな。暴投されちゃたまらないし。今の時点で使えるのはスライダーとチェンジアップ。あとカーブぐらいだな」
清瀬「……これ、打ってもいいんですよね?」
西大路「ああ。打てるならな」
清瀬は本気で打つつもりなのか、大きく息を吐いて数回素振りをするとバッターボックスに入った。
清瀬「お願いします」
赤星「うし、行くぞ」
赤星先輩が振りかぶると、清瀬はバットを強く握った。赤星先輩の手から離れたボールがキャッチャーミット目がけて飛んでくる。スライダーだ。そう思った直後、清瀬の持っていたバットが消えたように感じた。清瀬がバットを振ったのだ。清瀬の振ったバットはボールを芯で捉え、快音を響かせる。
赤星「げ」
打球はあっという間に外野やネット柵を飛び越し、林の中に消えていった。打球の行方を追っていた赤星先輩は渋い顔をすると、清瀬の方を見る。まだ入部も確定していない一年生にホームランを打たれたのだ。先輩としてはちょっと嫌だろう。
清瀬「さぁ、どんどん来てください!」
赤星「えぇ……」
その後も清瀬は容赦なく5球連続で長打性の当たりを打ち、どんどん笑顔になっていった。それに対し、赤星先輩は顔面蒼白になっていった。
赤星「」ゲッソリ
清瀬「さぁ、まだまだいけま……」
翔太「清瀬、チェンジ」
このままやらせたら赤星先輩の心が折れかねないと判断した俺は、清瀬からバットを取り上げてバッターボックスから押し出した。
清瀬「んだよ。もっと打たせろよ」
翔太「アホか。今の調子でガンガン打ってみろ。赤星先輩の心が折れるだろうが。初日から干されかねないだろ」
抗議してくる清瀬の頭をバットで軽く小突くと俺は打席に立った。正直、清瀬がここまで打つとは思ってなかったけど、これは本当に守備と投手陣がしっかりすればベスト8ぐらいまでは行くんじゃないかと思ってしまう。甘い考えなのかもしれないけれど。
翔太「お願いします」
~15分後~
赤星「ギブ……ギブ……もう許して……」ショボン
西大路「完全に心が折れてやがる」
翔太「すみません」
清瀬「お前も大概酷いことしたな」
15分後。ヒット性の当たりを連発し、更にはホームランを打ったことで赤星先輩の心が折れてしまった。ただ、1つ分かったこともあった。
翔太「……何か、軽くないですか?赤星先輩の球」
清瀬「それな。球速の割りには軽く感じたな。ついでに言えばストレートはそれなりの速さだけど棒球。変化球は変化球ごとに微妙にフォームやモーションが変わるからバレバレだったし。弱小校なら抑えられるか知らないけど、俺らでこれなら強豪校なら最悪初回でノックアウトだろ」
翔太「球が軽いのはともかく、変化球ごとに変わるフォームやモーションは直した方がいいかも」
赤星「」グサッ
西大路「ごもっともな意見はありがたいが、今日はそれぐらいで勘弁してやってくれ後輩達。泣くぞ、コイツ」
赤星「もう俺投手辞める……風川がエースでいいよ」
ホームベース付近にしゃがみこんでいじける赤星先輩を見て大きなため息をついた西大路先輩は、俺と清瀬をグラウンドの隅に連れて行くと小声で話し始めた。
西大路「アイツ、元々はセカンドだったんだ。でも投手がいないからって1年の秋からずっと我慢してピッチャーをやってるんだ。ピッチャー未経験で、まともな指導者もいない中、嫌々でもこれだけやってるんだよ。理解してやってくれ」
それから、と西大路先輩は俺達を見るとため息をついた。
西大路「お前等、打つだけは間違いなくスタメンに入れるよ。風川に至っては二番手確定だ。赤星の癖の修正具合によっちゃお前がエースになる。んで、ピッチャー経験のある清瀬は三番手確定。今からお前の実力も見る」
清瀬「はい」
清瀬のピッチングは何度か見たことがある。元々選手層の薄い学校だから、色んなポジションをこなしていた。でも、ピッチングは清瀬以外のキャッチャーがヘボすぎて傍から見てもかなり手を抜いていたのを覚えている。
本気を出せばどうなるのか。気になるところだ。
このSSへのコメント