2021-03-28 13:14:58 更新

概要

ただの高校生だった加藤修司と艦娘たちの物語。


前書き

私の脳内でのイメージや願望が艦娘の性格に反映されています。ご理解とご注意を。

コメントして頂けると嬉しいです


昼下がり、数学教師が教室に入ってきた。


学級委員長の号令に合わせて私のクラスメイトは起立しお辞儀をしてそして座った。

私はこのまるで繰り返しのような世界が嫌いだった。この退屈な世界をせめて楽しもうと、私はいつも観察をしていた。


数学教師のスーツの袖のほころび、斜め前の女子の髪留め、秒針が止まった時計・・・これらを見つけたときは宝を誰よりも先に見つけられたと言う優越感で満たされた。なにかを観察しているときが私の生きがいである。


私は加藤修司。高校2年。県立高校に通っている。県内でも1,2位を争う学校だ。1クラスに4,5人は超難関校に進学している。私の成績は上位15%ぐらいだろうか。


私はこの学校が嫌いだ。クラスメイトは、みんな大学入試の勉強で昼夜問わずに勉強している。授業は、ただ教師の教科書の声を聴いているだけ。会話は、お互い業務連絡ぐらいだ。


くだらない話をして笑いあう友達もいない。難関大学に入り名声をつかむ気もしない。私にとってここは苦しみを与える場所ほかならなかった。


そんな生き地獄のようで私が見出したのが観察することだった。今では、目線を動かさなくても、目に映るすべてのものの変化を見つけられるようになった。


チャイムが鳴る。私は苦しみから解放された。解放されたとは言っても半日後には再び戻ってくるのだが。

放課後こそがわたしのもう一つの生きがいである。教室棟から出て、学校の隅、ほとんどの生徒はこの場所に来たこともないだろう。


松田 「よう!遅かったな」


加藤 「君が早すぎるんだよ」


私に話しかけてきた彼・・・私の唯一の友人といっても過言ではない。彼は。松田、私の同輩である。松田が居たこの建物は武道場。いつ建てられたかも分からない。そもそも、うちの学校は体育がないため、運動施設はほとんどない、わざわざ改装するのは金の無駄なのだろう。部活動も一度も所属せず卒業してしまう生徒が大半だ。ここは剣道部の活動場所。活動とは言ったものの私と彼が竹刀を交合わせるだけだ。他の部員はいない、顧問も一応いるがほとんど会ったことはない。


松田 「さっさと着替えろよ」


加藤 「ああ、分かっている」


カビ臭さが広がる。私はハウスダストアレルギーだったため。カビは私の天敵だ。何度か掃除を試みたが、校舎の日陰や長年使われていなかったためか何度掃除してもカビは復活した。私の完敗である。はじめは、くしゃみが止まらなかったがいまとなってはほとんど気にならない。疑似舌下治療だと一人で思って一人で笑った。


加藤 「なぁ、また汚くなってきたね、今度掃除しようか」


松田 「そうだな」


大抵の部室は賞状とかが貼ってあるのだろうがここにはない。二人とも弱くはなかったが。入賞するほどの実力はない。しかし私は彼と一緒に稽古ができることだけで満足している。


松田 「始めるか」


準備運動、素振り、足さばきいつもどおりのメニューだが何故か飽きない。スポーツは勉強とは違う。問題点を解決したからと言ってそれで終わりではない。次の問題が発生する。それを解決していく。この過程が私はとても好きだった。時には彼と相談しあい解決した。


基本打ち、稽古と進んでいった。そして西の空が赤から青へグラデーションになっていたころに練習は終わった。


加藤 「おつかれ」


私は彼にそう言った。


松田 「おつかれ」


彼も私にそう言った。このやり取りが私たちの練習後のルーティンである。


松田 「じゃぁ始めるか」


彼の合図とともに私たちは床に安座した。水がしみて凹凸ができている。黙想し全ての力を丹田に集めた。鼻から雨の匂いを感じる。梅雨入りが発表されたのも思い出す。腹に息を溜めた。口から細く長く息を吐いた。練習のあとの座禅は私が提案した。座禅をしていると。何もかもが気にならなかった。カビ臭さに包まれた空気。無言の教室・・時間も忘れられた。


空が闇に染まったころ私たちは帰路についた。


松田 「また出たんだって」


加藤 「何がだい?」


彼は私にスマホを突き出してきた。ネットの記事だ。「深海棲艦、再び漁船を襲う。」という記事だった


加藤 「深海棲艦か」


松田 「そうだよ。しばらくでないと思ってたらなまたじいちゃんらビビっちまって海に出られねえな」


彼は海の近くに住んでいるらしく、近くには漁港もあるらしい。数年前、謎の生命体が発見された。それらは深海棲艦と呼ばれた。たまに海に出た漁船が襲われるらしいが年に2,3回しか被害の報告はない。自衛隊は深海棲艦を警戒しつつも大きな脅威ではないと判断しているらしい。


加藤 「大変そうだね」


私は漁をしたことがなかったが苦労はおおよそ分かる。海を生業にしているのだ。その海に得体のしれない生物が自分の命を奪うかもしれない。おそらく私が漁師だったら彼の知り合いと同じ選択をしていただろ

う。わざわざ危険を冒してまで金は稼がない


パラッパラッ


水滴が降ってきた


松田 「お?雨だ早く帰ろうぜ」


加藤 「そうだね」


私たちは早足に駅へむかった


加藤 「激しくなる前でよかったね」


松田 「そうだな、じゃぁまた明日な」


加藤 「うんまた明日」


彼とは変える方向が反対のため私たちはいつもここで別れる。暗闇からうっすらと彼が私に手を振っている

のが分かった。私も彼に手を振り返した。


私はぼんやりと電車の窓から外を眺めていた。窓には私の顔とただひたすらの黒が広がっていた。


加藤 「進学先か・・・」


彼は学校の廊下で同級生が話していたのを思い出す。彼らは進学先を話していた。途中で私は見るのをやめ

てしまった。私は、夢はない。いや、忘れてしまったのかもしれないが今はない。おそらく中学生の時もな

かったのだろう。成績は良かったので夢が見つかったときどこへでも行けるようにするためこの学校に決め

たのだろう。つくずくここに行くと決めてしまった自分が情けない。できることならこの闇に逃げたいと思

った。しかし、嘆いていても仕方がない。戻ってまた決めなおすことはできないのだからと自分に言い聞か

せた。


電車が止まった私の家の最寄り駅だ。電車の扉は開いた。私以外だれも降りない。定期を改札機にかざし私

は家へ向かった。


私が歩いていたら白のなにかがいきなり現れた。ここだけ昼になったのかと思った。冷静にりもう一度見る

と我が家だった。闇夜にも映える白壁。白とは言ったが風雨で今はところどころ黄ばんでいる。


私はドアを開けた


加藤 「ただいま」


母  「おかえり、ご飯もうすぐよ」


加藤 「ありがとう」


料理をしているのは母だ。肉の匂いがした。この匂いは生姜焼きだろう。母は私を生む直前に会社を辞め以後十数年間、専業主婦をしている。40を超えて少ししわが増えてきた。私は母を尊敬している。私たちのご飯を作り、掃除をし・・と私たちのために色々としてくれている。しかし、成績については厳しかった。以前70点を取ってきたときはかなり怒り2,3時間は説教された。それ以来私は母に叱られないためだけに勉強をしてきた。何度も勉強の動機が彼女でいいのか思ったが、何かの勢いで剣道をやめろと言われたら困る。それは私にとっては死ねと言われたと同じようなものだから。そんなことを考えていたら、夕食が出来たらしい。私は、匂いのもとへ向かった。案の定、夕食は生姜焼きだった。


妹  「わぁ生姜焼きだ」


そう喜んでいたのは私の妹だ。彼女は中学2年、背は中学生女子にしては大きい。彼女はバレー部でスタメン

を任されている。成績は私とほぼ同じぐらいである。


妹  「お兄ちゃん帰って来たのね、お帰り」


加藤 「私は生姜焼き後ですか・・・まぁただいま」


そう冗談を言いつつ食べ始めた。ずっと食べてきた母の生姜焼きいつもと変わらない。


妹  「今日ね・・・」


妹が学校の話を始めた。誰が誰になんて言ってたとか部活の後輩がどうだったとか話していた。私は妹の話

を聞きつつ黙々と肉を口へ運んだ


母  「へぇそうだったんだ・・ねぇ修司大学決めた?」


少し遅かったか。この状態になると母は面倒くさい


母  「修司の成績だと・・」


多少相槌を打っていたがほとんど聞いていない。そして話が途切れるタイミングで


加藤 「今はまだ決めかねている。ある程度は絞っている」


と席を立ち早足で洗い場へ食器を片付けた、正直大学はどこでもいい興味がない。さっさと食器を洗い付近で拭いて洗面所へ向かった。


青の歯ブラシを手に取り歯を磨いた。歯が磨き終わったころ妹とすれ違った。


私は部屋に戻り紙とシャーペン、教科書を机に広げた。私は前までノートで勉強していたが計算式を書く時

など線が邪魔だったので今では真っ白な紙にした。


ふと時計を見たら11時を指していた。私は寝巻を準備して風呂へ向かった。服を脱ぎ浴室へ向かった。レバーを引くと温水が出てくる。私は頭から温水をかぶった。母の気持ちも分からなくはない。進学先を心配して聞いているのだろう。ただ、私にとってはおせっかいである。自分の将来は自分で決める。そのぐらいはできる。


と考え事をしていたら手の皮がふやけていた。私は頭を洗い、体を洗った。この時間だと風呂の温度は下がっている。入ったら逆に体温を下げかねないので私はいつも入らない。


部屋に戻り少し勉強をした。日付が変わってしばらくして私は床に就いた。


布団に入りつつ考えていた。私は将来どうするか。おそらく一部を除けばほとんどの職業につけるだろうと。公務員?会社員?研究者?結局考えがまとまらないまま意識が手放された。


ピピピピ


目覚まし時計で私の目が覚めた。今日もまた学校に行くと思うと憂鬱だったが、放課後、あそこで剣道が出来ると思うと頑張ろうとおもう。


父  「おはよう」


リビングには父がいた。彼は大手工業会社の工場の管理職に就いている。給料は人より少し多め。彼のお陰で私たちは衣食住不便なく生活できている。


加藤 「おはよう」


私は父に挨拶を返し、椅子に座り朝食を食べた。父は比較的無口だ。気にしてはいないが最近はあんまり会話をしていない。私は朝食を食べ終え、歯を磨いた。着慣れた制服に袖を通し、教科書を鞄にしまった。いつもの靴を履き家を出た。


加藤 「行ってきます」


いつも歩く道、最近蛙が出てきた、私の足音で目が覚めたのだろうか、そうだったら申し訳ない。本格的な梅雨が来るのかと感じたが、今は全くの雲がない晴天だ。アスファルトの道が濡れている。おそらく私が寝ている間に降ったのだろうと思う。葉の先に水滴溜まりしだれている。道の草を眺めていたら駅に着いた。天気は晴れなのにジメジメしていて気持ち悪い。いつもの3号車の右後ろのドアから入り、そこのドアにもたれかかった。そとは昨日の雨が蒸発していて霧が出来ていた。畑で野菜の世話をする老人、ヘルメットをつけて自転車で水たまりに入っていた中学生。いつも見ている風景だが、なぜか霧がかかると美しく見えた。


電車が駅に着いた。私は降りて右から二つ目の改札機で駅からでる。駅前は通勤する会社員、他校の生徒、まだ、通学に慣れていない1年生。たくさんの人が散り散りに駅から出てきた。私はその人たちを見ていた。誰も彼も無表情に見えた。なにも考えずただ淡々と目的地へ向かうロボットにみえた。どうやらこの世界に退屈しているのは私だけでないと思うと、なぜか嬉しかった。相変わらず日差しが厳しい、学校が駅の東側にあるから、毎回眩しい思いをしながら通学している。


教室に入った。すでに10人ぐらいがいた。みな参考書を広げ勉強をしていた。私は邪魔にならないようにこっそりと席へ向かった。私は窓の外を見ていた。コーヒーをドリップしたかのように生徒が校門から入っている。そして、玄関へと向かっていた。誰にも言われていないが律儀に列を作り、並んでいる様子は面白い。


チャイムが鳴って授業がはじまった。


私は小さい溜息を付きながら正面をむいた。


1,2時間目は化学、3,4時間目は数学と時間が過ぎていった。ただ教科書を読みに来ただけの教師に必要なのかと毎回疑問に思っている。私はいつもおおり観察をしている。


昼休みには、母が作った弁当を教室で食べる。昼休みといえど、教室は静かだ。ほとんどが勉強をしている。毎日、弁当を作ってくれる母には感謝しかない。


5時間目は地理、6時間目は物理と私は早く終われと願い座っていた。そして終了のチャイムが鳴る。私は荷物をまとめ教室を出た。急いで校舎から出て、武道場へ向かおうとした。


上空からキーンと書かい音がして私は驚いた。空を見ると海のほうから鳥が飛んできた、が直ぐ後そうではないと気が付いた。楕円状の飛行機がこっちに向かって来ている。そして速いものの数秒でここまで来た。飛行機は到着した瞬間何かを落とした。それは教室に入りそのあと爆発した。あれは爆弾だ。私は恐怖で動くことが出来なかった。教室からないかが落ちてきた。黒焦げだったが私は正体が分かった。腕だ、腕が降ってきた。私は思考が停止したその後も脚、胴体、そして頭が落ちてきた。もう誰が誰だか分からなかった。人間はこんなに簡単に死ぬのかと思った。ようやく、私の思考が復活した。彼は大丈夫か?武道場で私を待っているだろう彼は。そんなことを考えているよりも前に体が動いていた。彼は私のたった一人の友人だ死んではいないそう思ったが、それはただの私の望みだった。


松田 「・・・」


武道場は崩れその前には胴を噛み千切られた彼がいた。もう息はしてい。昨日まで元気に生きていた彼が死んだ。間に合わなかった・・・私はただ呆然としていた。すると崩れた武道場のを踏みつけ何かが私の所へ向かってくる。私の背丈の2倍近くある。始めた見たがなんとなく何者か分かった。あれは深海棲艦だ、あれが深海棲艦だ。あの牙で彼の胴を引きちぎったんだ。そいつがこっちに向かって来る。今度はそぐ体が動く。逃げねば、私は死ぬ。ひたすらに走った。何かを踏んだ感触があったがそのまま走った。校舎は燃えている。どこもかしこにも死体が転がっている。


私は、市内の国道に出た。もう、さっきの化け物は襲ってこないだろう。と思ったが私の目に映ったのは地獄だった。そして生臭い血の匂いが鼻に突き刺さった。周りには横転した車、頭をちぎられた死体、崩れた建物そして、深海棲艦。さっきのやつよりも大きいものもいる。人のような形も。そして、逃げ惑う人々に発砲する。着弾地点にはへこみができ、空中にはバラバラになった人が飛んでいる。真っ青な空は飛行機で真っ黒だ爆弾を投下したり機銃掃射で人々を撃っている。


私は子供のころに蟻をバラバラにしたことを思い出した。頭を取り、腹をちぎり、足を引っ張って。そして今は人間がそのようになっている。手足は引き裂かれ首は落とされている。彼らにとって人間は蟻なのかと思った。


深海棲艦が近づいてくる。私は走った。脚を踏み、腕を踏み頭を蹴った。とにかく逃げた。なんとなくだが自分が死ぬのは分かった。この道に落ちている死体のようになるのは分かったが。だが、まだ死にたくない1分でも1秒でも長く生きたかっい。しかし、こちらに機銃の音が近づいていた。私は死ぬんだ。死体も残らずに死ぬのか。彼や母、父、妹の顔が浮かび上がるこれが走馬灯か・・・。機銃の弾が私の足を撃った。私は転んだ死体の山に転ぶ。すぐに粉々になると思ったが、何故か弾が来ない。背中に一発だけだ。何故か助かった。しかし、傷が痛い、熱い。足を撃った弾は貫通したが、背中の弾は体に残っているようだ。口が血の味に染まる。なんとか立たねば。しかし右脚に力が入らない。


ドーン


どこかが爆発したようだ。


ズズズズ


とても近いな、こっち側だ・・まずいここが倒れれば私はこの家の下敷きになる。しかも燃えているじゃないか。少しでも離れなけっれば


ズズズズ


間に合わないな、一瞬だけ希望を見させて結局死ぬのか・・・道の端にいたのが運の尽きか。


ガッシャン


加藤 「あ゛ぁぁぁ」


熱い、火が背中を焼いている。重い痛い、即死せずに苦しませて。神がいるなら私は思えたちを恨むぞ。


加藤 「・・・」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「緊急放送!緊急放送!」


「ただいま、X県沿岸部に深海棲艦が上陸、破壊行為を行っています」


メディアはこのことを全国に放送、自衛隊は、防衛のため、X県に出動、しかし全く深海棲艦に敵わず部隊は全壊、翌日には深海棲艦は海へ消えていった。その後、警察機動部隊、消防、救急、自衛隊はX県に派遣された

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーなんだ?体が動かない?そうだ私は死んだのかもがき苦しみ死んだのか。本当にあの世ってあったのか。ん?あれは彼じゃないか!


加藤 「おーい!」


松田 「・・・」


彼は全く振り向いてくれない


加藤 「おーい!わたしだよ加藤だ!松田ーーー」


松田 「・・・」


ようやく体が動いた。動かすのかなり難しいな


加藤 「なんで無視するんだい」


なかなか速く歩けないな彼が遠くなっていく。あれあそこにいるのは、私の家族じゃないかなんであそこにいるんだ?


加藤 「おーい父さん母さん妹待ってくれ」


家族 「・・・」


なぜ私のことを無視するんだ?ん?なにか冷たいものが私の肩を引っ張る。


これは深海棲艦じゃないか力が強いななぜ私を彼らの所へ行かせてくれないんだ


松田 「なぁ加藤」


加藤 「なんだい?」


やっと喋ってくれた!っつあいつのせいで全然まえに進めない


松田 「君はまだ生きている。」


加藤 「私は死んだんだ」


頼む遠くへ行かないでくれ


松田 「俺が楽しめなかった分お前が人生楽しめよ」ニコッ


何を言っているんだ?


母  「元気でね」


母も


父  「元気でな」


父も


妹  「バイバイお兄ちゃん」


妹も


なんで私を置いていくんだ?ああ、もう見えなくなる。こっちに引っ張られる。闇へ落ちていく


加藤 「やめろ」



「・・・」


ここはどこだ?さっきのは夢か?私は生きているのか。ただここからでなければ。ただ私は動けない、背中は火傷で痛い・・・ここで死ぬのもいいな、彼もいないのだ夢に出てきたってことは家族も死んだんだ、私が一人生きて意味があるのか


「「俺が楽しめなかった分お前が人生楽しめよ」」


そうだ私は彼に託されたんだ。生きねば、死んでたまるか。ふぅまずは落ち着くか・・・スー・・・ハーーー・・・よしでここは私が倒れた国道、今、家の下敷き、背中はおそらく火傷を負っている。この重さはどうにかなるはずがない。助けを求めねばな、物音は・・・少し離れているな。近づいてくるか・・・よしだんだん大きくなっている。そろそろか すぅ


加藤 「おーーい助けてくれ」


いま私が出せる限界だどうか聞こえてくれ


自衛隊「おいここらへんから声がしたぞ」


よし!成功だ!あとはここで助けを待つぞ


加藤 「ここだ下敷きになっている」


自衛隊「分かった待ってろよ」


もう少しで助かるぞ


自衛隊「よし!見えた何かに挟まれたりは」


日の光が入ってきた


加藤 「大丈夫だ」


簡単に体を動かしたが挟まれたりはしていないようだ


自衛隊「じゃぁ行くぞ」


私は男に捕まり外に出た。男は自衛隊らしい、ここでがれきの撤去をしていたらしい。今回は、X県のほぼ全域が破壊され死者は100万人を超えたらしい、その後私は男に名前、生年月日、住所、家族の名前と勤務先などを聞かれた。男は田中というらしい。田中さんは私を仮設キャンプに連れていき応急処置をしてくれた。その後、私はヘリで病院に運ばれた。


<病院>


加藤 「なるほど・・そんなことがあったのですか」


田中 「そうだ本当に君が生きていたのは奇跡だ」


加藤 「治療費も代わりに払っていただきありがとうございます。」ペコッ


田中 「気にすんなって困ったときはお互いさまって言うだろう」


加藤 「ありがとうございます」


田中 「どうだい背中は」


加藤 「たまに疼きますがいまは全く痛くないです」


田中 「そうかい」


加藤 「田中さんは自衛隊のどこの所属ですか」


田中 「いや、自衛隊はなくなった」


加藤 「え?」


田中 「なくなったとはいっても名前だけだな今は軍になった」


加藤 「それってどういうことですか?」


田中 「いままで自衛隊は首相が長だったろ?」


加藤 「はい」


田中 「今後深海棲艦の活動が激しくなったからすぐに対応できるようにって幕僚長がトップになった」


加藤 「なるほど・・・」


田中 「あんたこれからどうするんだい?」


加藤 「そうですね・・とりあえずバイトしてある程度の金を貯めて、奨学金でとりあえず高卒は取ろうかと」


田中 「そうか、君、軍に入らないか?」


加藤 「でもそういうのって大学からじゃないんですか?」


田中 「まぁそうだ、来年度から高校もできる」


加藤 「高校ですか」


田中 「ああ、たぶん編入もできるからとりあえず1年は勉強してそのあと編入するって感じはどうだ」


加藤 「しかし、それって意味があるんですか?」


田中 「意味?」


加藤 「お話を聞く感じ深海棲艦はまともな攻撃が効かないって」


田中 「そのことか、それは大丈夫だ」


加藤 「なぜ?」


田中 「これ以上は言えねえなただ対抗手段はある」


田中 「むしろ俺から願いだしたいところなんだけどな」


加藤 「??」


田中 「君は一番、深海棲艦の恐ろしさを知っているだろ?」


加藤 「はい」


田中 「君が一番深海棲艦のことを理解していると思うんだだから軍に来てくれないか」


加藤 「そうですか」


田中 「どうだい?」


加藤 「まだ決めかねていますが、興味はあります」


田中 「そうかい!期待しているよ!」


1か月後


加藤 「お世話になりました」


医師 「元気でな」


加藤 「ありがとうございました」


田中 「おーい」


加藤 「田中さん?」


田中 「今日退院て聞いてな」


加藤 「そうですか」


田中 「で決まったか」


加藤 「なにがですか?」


田中 「軍だよ」


加藤 「ああ、決めました」


加藤 「私は入ります。絶対に私みたいな人を出したくないので」


田中 「そうか君ならそういうと思ったよ」


田中 「じゃぁ行こうか」


加藤 「どこへ?」


田中 「いいとこさ」


加藤 「みなさんありがとうございました」ペコッ


「バイバイー」「元気でねー」


田中 「ここに乗って」


加藤 「これって田中さんの車ですか」


田中 「そうだ」


加藤 「失礼します」


田中 「来てくれるんだね」


加藤 「はい」


田中 「じゃぁ話すか」


加藤 「何を?」


田中 「前言っていた深海棲艦への対抗策」


加藤 「はい」


田中 「これを見てくれ」スッ


加藤 「写真?」


田中 「そこの女の子たちが切り札だ」


加藤 「この子達?普通の女の子にしか見えない気がするんですが」


田中 「深海棲艦が現れてすぐに見つかったんだ」


田中 「政府はこの子達の存在を隠していたが、この件で軍には発表した」


加藤 「ほんとうに彼女らが切り札?」


田中 「ああ、彼女たちは太平洋戦争時の艦艇を名乗っていた。で、深海棲艦と戦闘させたらそいつらを倒したらしい」


加藤 「本当ですか?」


田中 「ああ、我々ははこの子達を艦娘って呼ぶことにした」


加藤 「艦娘・・・」


田中 「その子達を全国に配備し日本の防衛にあたる」


加藤 「そうねんですね・・・」


田中 「どうした」


加藤 「この子達があそこにいたらって思ってしまって」


田中 「確かにな我々の行動が遅いせいでこんなことになってしまって」


加藤 「気にしないで下さい、今少し怒っていますが正体が分からないのを味方にしにくいですからね」


田中 「すまんな」


田中 「よし!着いた」


加藤 「ここは?」


田中 「君の家だ」


加藤 「え?」


田中 「ちょっと説明が雑だったね」


田中 「まえ学校が出来るって言っただろ」


加藤 「ええ、」


田中 「それがこれだ」


加藤 「できるの早くないですか」


田中 「軍の力をなめてもらっちゃ困るよ」


加藤 「さっき私の家って言っていましたけど」


田中 「君はここで勉強してもらう」


加藤 「いきなりすぎませんか」


田中 「俺がお願いしたらOKもらったから」


加藤 「本当に何から何までありがとうございます」


田中 「こっちも新しい人材ほしいしwin-winだ」


加藤 「あの私一人だけですか?」


田中 「そうだな、今年度は君だけだね」


加藤 「マジですか」


田中 「まぁ頑張ってくれ。艦隊運営だけじゃなくて普通の勉強もあるから。まぁ君なら問題ないだろう」


加藤 「まぁそうですね。あとここにいる方々は私が何者か知っているんですか?」


田中 「いや知らないな」


加藤 「では、そのことは話さないで下さい」


田中 「分かった」


加藤 「では、私は田中さんの知り合いということで」


田中 「了解」


<学校>


加藤 「失礼します」


教師 「おお来たんだねよろしく」


加藤 「よろしくおねがいします」


田中 「こいつをお願いします」


教師 「君は優秀だって彼から聞いているよ」


加藤 「ありがとうございます」


田中 「私は失礼します」


教師 「そうかいではまた」


加藤 「お世話になりました」


教師 「よろしくね」


加藤 「よろしくおねがいします」


教師 「まずは紹介を」


加藤 「??」


教師 「君は彼に艦娘のこと聞いたかい?」


加藤 「はい」


教師 「なら話が早い。来てくれ」


霞  「霞よ」


加藤 「よろしく」


教師 「こちら艦娘の霞。」


霞  「だれなのこの馬の骨は」


加藤 「馬の骨って・・・」


教師 「彼はここに来た第一号の生徒さ」


霞  「そうなのね」


加藤 「よろしく」


霞  「まぁ期待はしてあげるわ」


加藤 「そりゃどうも」


教師 「他にもいろんな子がいるんだけどここには彼女しかいない」


加藤 「なるほど」


教師 「今日はゆっくりしな少し案内でもしようか?」


加藤 「ありがとうございます」


教師 「ここもできたばかりだからまだ不慣れなんだどね」



教師 「こんなもんかな明日から本格的に授業はじめるね」


加藤 「よろしくお願いします」


教師 「では部屋でゆっくりしていな」


加藤 「はい」


学校の寮のベッド。寮とは言っものの私しかいないのだが。私をあの時助けてくれた自衛隊の田中さんがお願いしてここに入れさせてもらえた。田中さんから艦娘のことを聞いたときは驚きとともに怒りが湧いた。もしもあの時、艦娘を配備していたらと思ってしまう。私は窓を開けた。目の前には闇夜と黒く波打つ大海原が広がっていた。ここからあいつらが来て私の大切なものを奪ったのか。


自然と涙が出てきた。出てきて止まらない。あれがあってから初めて泣いたかもしれない。母も父も妹も彼もいない分かっていたつもりだったがやはり悲しい。私のすべてを壊した深海棲艦が憎い、艦娘の存在を公表せず何もしなかった国が憎い。何もかもが憎い。


?? 「ネェ」


(何か聞こえる。疲れているのか早く休もう。)


?? 「ネェッテバ」


(いや間違えない何かが私に話しかけている。)


?? 「ソンナニ憎イナラ壊シチャオウ」


(頭の中から声が聞こえる。頭が痛い。脳みそをかき混ぜるられている。)


?? 「ネェイッショニ行コウヨ」


(体が勝手に窓のほうえ)


?? 「ミンナ海デ待ッテイルヨ」


(落ちる。この高さから落ちたら死んでしまう。)


?? 「ダイジョウブダヨ」スッ


体の自由が効かない。何しているんだ私の腕をひっかいて。鮮血とともに黒い丸いものが出てきた。虫?ではないなんだ私の体の中から得体の知れないものが


(何?止まった?こいつが私をつるしている?)


?? 「コレデダイジョウブ」


(やめろ!何するんだ!お前は一体何なんだ!)


?? 「エエ、ズットイッショニイタノニ」


(ずっと?)


?? 「ウンキミノカラダニハイッテカラ」


(入る?どういうことだ?手汗が止まらない。海のほうへ向かっている。そっちに行くと帰れない)


?? 「アセッテルネチ。デモガウヨ海二帰ルンダヨ」


(海に帰る?もしかしてお前は深海棲艦か?)


深海 「ウンソウダヨ」


(なんで私を連れて行く)


深海 「ダッテ、ミンナニクイッテイッテタジャン」


深海 「ダッタラフクシュウシヨウヨ」


(ああ、私は憎いって思ったさ、だがな復讐しようとは思わない。)


深海 「ウソダ」


(いや本当だ。私はお前らに何もかもなくされたよ。お前らが憎いさ、でも復讐はしない。何故かって。お前らには自分のした愚かさを知ってほしいんだ。)


深海 「オロカサ?」


(やられたらやり返していいのかこのままこの連鎖が続くぞ?私はこの連鎖を断ち切りたい!そしてお前らに殺される人を出さないためにここに来たんだ)


深海 「ウルサイ」


(俺はは黙らない。何度だっていってやる。俺は絶対に復讐なんかしない!)


深海 「ダマレダマレ」


(もう出て来るな。消えてしまえ。)


深海 「アアアアァァ」


やっと消えた、ってまずい落ちるぞ やばいやばいおいお前さっきまで浮かせていただろ!さっさと動けよ!っち俺はここで死ぬ気はねぇんだよ!


なんとか意思が伝わった。おい!さっきいたところまで帰りたい。


ぶふぶぶぶ


おお!ちゃんと言うこと聞いた。


加藤 「到着っと」


しかしこいつはどうするのか。


加藤 「おい戻れ」


傷口から入っていた。そして、傷はきれいになくなっていた。なんなんだ?あいつが言っていたことからすると俺の体に入ってきたということはあの時か。深い暗い場所引きずり込まれそうだったな。海があんなに見えたのは始めてだな。なんかあれがあったときから不思議なことばっかだな。


パチンッ


さっきまで風にたなびいていたカーテンの動きが止まった波のささやきや何の音も聞こえない。気が付かなかったが、今考えるとこの力で生き残れたのかと思っている。


時間の速さを扱えるようになった。あの時は無意識一瞬で出た。俺の右脚を撃った機銃はそのまま太もも腰、背中、首、そして頭を貫くはずだったが一発目が当たった瞬間俺は時間の動きを遅くした。その後よろけて転んでいる間に2発目が来たが、速度が遅くなっていたので体を貫通しなかったのだろう。その後、俺の頭上に弾が通ったんのだろう。その時は一切気が付かなかったが。病院でこのことに気が付き今は扱えるようになった。欠点はかなり体力が奪われるところ。


パチンッ


カーテンも揺らぎはじめた。海が砂浜をこする音も聞こえる


今俺がすべきことは3つ。1つ目は体力をつけることこの状態を1時間保てるようにする。2つ目はこいつを扱えるようにする。なにができるか分からないが自由に扱えるようにしないとな。最後は、艦隊のことを覚えること。とりあえず寝て明日の朝からランニングかな。4時起きかな。


4時


まだ暗いが夜見た時と全然違う。何故か優しさを感じられる。昨日もらったジャージに着替えた走り出した。久しぶりに体を動かすから準備運動をすませ出発した。まだ少し肌寒いが動いたら温かくなるだろう。ここ最近ずっと運動をしていないせいか全然体が動かない。30分ぐらいでへとへとになってしまった。


砂浜にやってきた。この時間もあってか誰もいない。砂浜に寝てみた。近くでは波の音が聞こえる。海を眺めると房総半島から太陽が出てきた。ギラギラに輝いている。真っ赤に燃え上がり夜を終わらせる。久しぶりに日の出を見た。ここまで日の出が美しいとは思わなかった。太陽のエネルギー圧倒されている。


一旦部屋に戻るため、自分の腕を噛んだ。出てこいと命令すると昨夜の黒いものが出てきた。俺の部屋の窓へ行けと命令したら。部屋へ飛んで行った。なにか頭の中に映像が流れてきた。おそらくあいつの映像だろう。窓の隙間から侵入させ鍵を開けさせた。一つでもかなり使いこなすのが難しい。これも訓練せねばな。周りを見て誰もいないことを確認し、時の流れを変える。もい一つだし俺をつるさせた。かなり動きも安定している。部屋に到着し、窓を開ける。無事に部屋に到着し元の時間に戻す。


顔を洗い、身だしなみを整える。新しい制服に袖を通す。なんとなく前のに似ている気もする。


そして食堂へ向かう


無人の食堂。冷静に考えたら。一人のためにわざわざ給仕を雇うわけないかと。教師はここにいるのか?だったら作るべきだが。すこし教師を探すとするか。黒を置いてここに誰かが来たときはすぐわかるようにした。


教師室もやはり無人、いったいどこにいるんだ?入れ違いは起きていないし。どこにいるんだ?昨日の記憶を探りながら各場所を確認。窓から朝日が差してくる。廊下をさまよっていると人の気配がする。物音的にあそこだ、すこし近づいてみる。周りを見てうろたえる艦娘ー霞がいた。少し話しかけてみるとするか。


加藤 「おはよう」


彼女の肩が縮こまる。俺の声に驚いたのだろうか。改めてみたがかなり華奢な腕と脚である。本当に彼女らがあいつらを倒せるのかと疑問に思う。


加藤 「驚いたか?」


彼女が振り向く。髪は太陽に反射し輝いている。顔は整っており美人だ。


霞  「なによ?」


少し怒っているのか?子供らしい高い声が響いた


加藤 「ちょっと教師を探していてな」


何故かイライラしている。怒らせてしまったか?


霞  「そうなのね、ここにはいない、わまだ寝ているんじゃないの」


そういえばまだ5時だ。起きる時間ではない。


加藤 「教師ってどこで寝ているの?」


寮の説明は受けたが教師が寝る場所は知らない


霞  「はぁそんなのも知らないの?ふざけてんの?」


霞はかなり口が悪い。案内してくれるようだからいいのだが。廊下を歩いていたら急に霞が止まった


加藤 「どうした?」


霞の顔色がよくない、気分が悪いのか?


霞  「ここどこよ」


え?道に迷ったのか?


加藤 「教師の寮ってどこらへんにあるの?自分で行くから、教えてくれない?」


霞は明らかに動揺している。


霞  「体育館と武道場のちかうよ」


なるほど、あそこらへんか。霞はどこへ行こうとしていたんだ?


加藤 「なぁ、君はどこへ行こうとしていたんだい?」


霞が震えている何かあったのか?


霞  「ちょっと散歩よ」


声も震えている。何かあったに違いない


加藤 「本当かい?」


固まった。どうやら図星のようだ


霞  「・・たのよ」


なにかボソボソと言っている


加藤 「??どうした」


霞  「道に迷ったのよ!悪い!」


ああ、なるほどプライドが邪魔して言いにくかったのか


加藤 「どこに行きたいんだ」


涙目の霞に聞く


霞  「部屋よ」


艦娘の部屋はどこだ・・・ああ、寮の隣か


加藤 「こっちだ案内するよ」


さっき来た道を戻る


霞  「ありがとう」


きゅうに丸くなった


加藤 「いや、まぁここは風景変わらないし迷うよな」


霞  「あんたはよく迷わないわね」


観察眼と記憶力には自信があるから道はおおよそ覚えている


加藤 「まあね」


さっきの元気はどこかへ行ってしまった


加藤 「よし、着いたな」


そのまま霞の部屋に着いた


霞  「ありがとう助かったわ」ニコ


笑顔はかわいいな。お礼なんて家族と彼以外に言われたのはいつ以来だろう


加藤 「どうも、もう道に迷うなよ」


霞の部屋を離れ食堂に向かう。結局だれも来なかった。できたばかりもあってかなり綺麗だ。家は油がたまっていたがここはピカピカだ。しばらく、俺が朝ごはんを作るのだろう。まずは米を炊かないとな。ここか、炊飯器もあるしな。


冷蔵庫は・・・大体あるな。シンプルにみそ汁、卵焼き、ほうれん草のバター和えでいいか


あれ昨日の昼夜って俺は教師と話していたってことは・・・ごはん作っていたのは霞か?


久しぶりに料理したな。まあまあかな、そろそろ時間だし教師呼びに行くか


加藤 「おはようございます。朝ご飯できました」


音もするしいるだろう。


教師 「ありがとう、すぐに行く」


返事が来た少し待つか


教師 「おお、待っててくれたのか」


ドアが開いた昨日の教師がきた


加藤 「はい。おはようございます」



教師を食堂に連れて行った。もう霞がいた。


霞  「あんたが作ったの?」


彼女は自分が作ろうとしていたのかな


加藤 「ああ」


霞は茶碗にご飯を盛り付けていた


霞  「ありがとう」


まさかそんなことを言われるとは思わず驚いた


霞  「ほらお茶碗運びなさい」


ボーッとしていたら霞に怒られた。


加藤 「おお、すまん」


朝食の準備が終わったこう見ると卵焼きが少し不格好では


教師 「いただきます」


教師が食べ始める


教師 「いいな、おいしいよ」


ホッとした。しばらく料理をしていないから感覚で調味料をいれたがちょうどよかったらしい


霞  「まぁ、おいしわね」


霞はあんまりいい評価じゃなかった


食器を片付けて授業を受けた。一般科目は通信制の教材を使っている。授業を聞いていなかったから自分のペースで勉強していたためほとんどおぼえることはなかった


やはり、特別科目はおもしろかった。陣形や戦闘の流れ、装備の種類などはじめて知ることが多く楽しかった。前までの生活では信じれない。


昼も俺がつくった。午後は霞が砲撃や雷撃を見せてくれた陸での様子とは違い凛々しかった。


夜ごはんを食べ風呂に入り筋トレ体感トレをしてねた。


かなり充実していたと思う。


今後の授業も楽しみだ。


あれから一週間たった。


朝のトレーニングに素振りも加えた。丁寧に1本1本振って心を落ち着かせる。その後ランニングをしに行った。だんだんと体力がついてきた。30分間走るのは変わらないが。だんだんペースが上がってきている。


そして砂浜で昇る太陽を見るのも習慣になった。燃える太陽を見るとやる気が湧いてくる。まだ冷たい空気を吸って。熱い体を冷ます。黒は4体ぐらいなら同時に動かせるようになった。時間の速さの変え方が分かった。成長していると実感できる。ここに来てから自分が成長していることも感じる機会が多い。これまでだったら感じられない感覚だ。ここにこれてよかったと思う。


っと考えていたら。誰かがこっちに来た。足音からして霞か。なぜこんな時間に


霞  「おはよう」


透き通る灰色の髪。間違えなく霞だ。


加藤 「おはようはやいね」


そんなことを言っていたら霞は隣に座ってきた。近くで見るとか細い。肌は真っ白で人形のようだ


霞  「はい、これ」


ペットボトルが差し出された。ありがたくいただこう


加藤 「ありがとう」


のどが水を求めている。水が体を潤す。なにか言いたそうにしている


加藤 「どうした?」


何かためらっているようにも見える。


霞  「なんで、あんたはここに来たの?」


思いの他普通の質問で拍子抜けしてしまった。ただよく考えたらその通りだ。中途半端な時期に生徒が入ってくるなんて疑問に思うだろう。ただ、まだ本当のことを言う勇気がない。


加藤 「田中さんっていたでしょう。俺が来た日に一緒にいた」


嘘はつかないが本当のことも言わない。


加藤 「俺、学校に慣れなくてね、その時田中さんがここに来たらどうかって」


実際、学校は嫌いだったし、田中さんがここを薦めてくれたのも事実だ。


霞  「そうなのね」


あっさり理解してくれた。彼女の顔に日が映る


霞  「行きましょう。朝ごはん一緒に作りましょう」


朝食作りに誘われた。心を開いてくれたのか?それだと嬉しいな。


食堂に向かい料理を始めた。そろそろ食料が無くなりそうだ。自分で買い出しに行くのかな?


教師を起こし、ご飯を食べた。金はあるから俺に任せたいらしい。ここに来てから街のほうへ行っていないから。すこし探検してみたいしいいかもな。次の休日は明日なので早速出かけよう。取り敢えず今日の授業だ。今回は知識をもとに作戦を考えるものだ。作戦に正解はない。だからこそ考えるのは楽しかった。アドバイスをもらいつつ作戦が完成した。終わったときは謎の達成感に浸されていた。


昼食を食べ。午後の授業。教師が剣道をやると言った。竹刀はあらかじめもらっていた。道着と防具はあるらしいのでそれもいただく。どうやら教師は6段を持っているらしい。かなり上手だろう。一か月振りでもあるため鈍っているかと思ったが、自主トレのお陰かかなり動きやすかった。


久しぶりに剣道をできて楽しかった。やはり俺は剣道が好きなのだろう。


教師に明日の買い物の分の金をもらった。店が開くまではトレーニングと勉強かな。


朝、武道場で素振りをした。床から伝わる冷たさが和らいできた。竹刀を振るスピードが速くなったことを実感した。一週間でこんなになるのだと自分の成長を改めて感じた。

ランニングへ行く。少し時間があるから長く走ってみようかな。アスファルトの地面が靴を押し返しているように思えるぐらい好調に走れた。夢中で走っていたら見たこともない場所へ着いた。都会とは思えない建物がおおい。道のヒビに生えた花。雑木林。壁が汚れ茶ばんでいた。ここだけ時間が動いていないようだ。そして無性に故郷を思い出した。廃れた家と緑一面の畑と手入れのされない林しかないような故郷だったが今では懐かしい。あそこはどうなるのだろうか?復興するのか?そんなことを気にしていたら潮の匂いが鼻に入ってきた。


そろそろ帰るか。朝食も作らないとな。少し遅くなってしまった。


食堂に行くといい香りがした。なにか香ばしい香りがした。何度もかいだことがある・・・そうだマーガリンだ。休日は、トーストにマーガリンを塗って焼いてみんなで食べていたな。なつかし。妹がたくさん塗って母に怒られていたな。あの、パンのカスが付いたマーガリンの箱。スプーンにくっついて離れないマーガリンをパンの耳で取って箱に戻すと起こる。マーガリンを塗るときの恒例行事だ。


霞  「なに突っ立ってんのよ!」


一人で余韻に浸っていたら霞に怒られた。


加藤 「すまない」


彼女は俺に腹を立てながら俺の前に皿をおいた。表面は薄く焦げているまさにトーストだ。隣には、目玉焼き、まさに休日の朝食だ。


加藤 「ありがとう。いただきます」


まずはトースト。マーガリンの匂いがやって来た。口に運ぶ。サクッと音が聞こえた。内側はもとの柔らかさが残っている。表面の硬さと内側の柔らかさをマーガリンが包み、口に広がる。


加藤 「このトーストとてもおいしいよ」


何回もトーストを焼いてきたがここまでうまく焼き上げたことはない。


霞  「そう、ありがとう」


そっぽを向いてしまった。少し頬が紅潮している。嬉しかったのか?素直に喜べばいいのに


さて、目玉焼きは、半生か、固まった所と液体の黄身のバランスが丁度いい。彼女かなり料理うまいな


加藤 「ごちそうさま。おいしかったよ。」


台所へ向かった。水道で皿を洗った。パンの食べかすが排水口へ流れていった。毎回トーストを食べるときはもったいないと思ってしまう。あの美味なトーストから落ちたらカスは食べられることなく捨てられるのだと。なぜか悲しみは感じなかった。


霞  「8:00に出るわよ準備しなさい」


何を言っているんだ?8:00?なにか約束したか?


霞  「食べ物買いに行くんでしょう付いて行ってあげる」


ああ、そのことか。俺一人で十分だろうがまぁ親切で行ってくれているんだし


加藤 「分かった」


部屋に戻った。よく考えたら私服って田中さんが一組買ってくださったものだけなのか。


玄関についた。まだ10分前だからさすがに来ていなかった。俺がついてしばらくして。白いワンピースの少女が来た。白い肌に人形のような顔立ち、そして髪は風でたなびいている。一瞬誰かと思ったが、すぐ霞だと気が付いた。制服姿以外は初めて見た。


加藤 「綺麗だね」


と思わず声が出た。あまりにも綺麗だった。TVにでてくる女優たちよりも綺麗なのではないか


霞  「そ、そう・・・さっさと行くわよ」


またか、照れ隠しなのか早足で先に行ってしまった。ここの近くにはスーパーが一件あったはず。


スーパーには30分もせず着いた。普通の大きさのスーパーだ。カゴも手に持ち中に入る。朝とはいえそれなりの数の客がいた。急に霞は俺の後ろに隠れた。


加藤 「どうした?」


何かにおびえているように見える。もしかして人間か?こんな大勢の人を見たときなかったのか?


加藤 「一回外に出るか」


霞は頭を縦振った。一旦店の外に出た。あまり人の目に着かない所まできた。


加藤 「大丈夫か?」


少し落ち着いたようだ。すこし震えている。怖かったのだろうか


霞  「落ち着いたわ」


加藤 「人混みは初めてか」


霞  「ええ、」


やはり、国が存在を隠していたのだから、会っていても一部の人間だったのだろう。


加藤 「帰るか?」


霞  「いえ、行くわ」


加藤 「無理しなくていいんだよ」


霞  「大丈夫、少し驚いただけ。行きましょう」


心配だが本人がそう言っているのだから問題ないかな


一週間分の食料か・・かなりの量だな。野菜はキャベツはあったからいらないな。肉は冷凍できるし多めでいいだろう。・・・


霞も大丈夫そうだな。


だいだいのものは買ったな。


加藤 「どうした?」


霞が立ち止まったお菓子を見つめている。


加藤 「ほしいのか?」


霞  「そんなわけじゃ・・・」


加藤 「いいよ買って。俺の金じゃないけど」


教師だったら許してくれるだろう


霞  「そう・・・ありがとう」


なぜか申し訳なさそう、お菓子を見ていた時は普通の子供みたいだった。


会計を済ませてスーパーを出た。


霞  「ねぇ」


霞はいま俺の隣を歩いている。レジ袋に隠れ、顔しか見えないが。


加藤 「なに?」


霞  「なんでさっき私に優しくしたの?」


俺は驚いた。話を聞く限り彼女はここの艦娘として来るまでずっと施設にいたらしい。食事はでるが、それ以外はない。部屋からを出られずほとんど一人で過ごしたらしい。誰か来たとしても自分がどんな艦娘か見に来ただけだったらしい。動物園の生き物のように扱われている。国に対する不信感しか湧いてこない。さらに娯楽として配られた鶴の折り紙をいつも食事を届けて来る職員に渡したが目の前でびりびりに破かれ捨てられたらしい。


俺はなにも言えなかった。ただただ目の前にいる少女を抱きしめることしか。そのときレジ袋がどうなったか分からない。どうなったってもどうでもよかった。


加藤 「辛かったね」


彼女は俺の言っている意味が完全に理解できていないらしい。恐らく彼女にとっては動物として扱われたことしかないからであろう。


加藤 「ごめんなさっきは」


少し落ち着いて帰路に再び着いた。結局買ったものは無事だったようだ。


霞  「まぁいいわ、さっきの答えを教えて」


なぜなんだろう。なぜ優しくする?


加藤 「たぶん嬉しいからじゃないかな」


霞  「嬉しいから?」


俺は彼女に説明した。自分でもそんなこと考えていなかったからかなりしどろもどろだった。


霞  「あんたは私に優しくして嬉しかったの」


いままで一週間の霞との会話、行動を思い出す。あの笑顔も「ありがとう」って言葉もどれも俺の心に突き刺さった。突き刺さって温かかった。


加藤 「もちろん」


霞  「そうなのね」


そして見慣れた建物が見えてきた。そこへ入っていきレシートとともにお金を教師に返した。食堂の冷蔵庫に食品をしまおうとしたら。霞が整理していてくれた。


お礼を言ったら嬉しそうだった。


霞と別れて部屋に戻った。ジャージに着替えて筋トレを始める。今回は時間を0.9倍にしてトレーニングをしてみた。普段はほぼ時間を動かしていない状態で短時間やっていたが、長時間やってみた。かなりいい負荷になっていた。これからはこの方法でやってみよう。


昼を済ませて、武道場へ向かった。道着に着替え、竹刀を構え。た。丹田に力をため、右足を前に出す、右足が着いた瞬間左足を引き付ける。それをひたすら繰り返す。その後はひたすら素振りをした。


気が付いたら。扉に入ってくる日が長くなっていた。そろそろ終わりにするか。


胡坐をかき姿勢を正した。座禅をした。聞こえるのは風に揺られる木の葉、走る車、下校している小学生の笑い声、ささやくような波の音、全てが聞こえてくるようだ。何かが近づいてきている。ここに向かって来る?この足音は


霞  「ここにいたのね」


やはり、霞だ。しかしなぜここへ


霞  「隣いいかしら?」


近くに座ったな。


加藤 「どうしたんだい?」


武道場には俺と彼女の呼吸音のみがかすかに聞こえる。


霞  「今日はありがとうね」


沈黙を彼女の声がやさしく終わらせた。


加藤 「俺はお礼をしてもらえるようなことやったかい?」


霞  「あの時、私の異変に気付いてくれたでしょう。」


加藤 「そんなことか」


霞  「あなたにとってそんなことでも私は嬉しかったのよ」


加藤 「そうか」


霞  「けどなんであの時、私を抱きしめてきたの」


なんでだろう?反射的に体が動いた気がするからな?誰の愛も受けずに育った少女が悲しそうだったから同情した?いや違うな


加藤 「安心してほしかったからかな」


霞  「安心?」


加藤 「辛いことがあったけどもう心配する必要ないって思ったからかな」


霞  「そうなのね」


再び沈黙が訪れる。しばらくして何か温かいものに包まれた。目を開けてみると。霞が首に腕を回し肩に頭を乗せ、俺の組んだ脚の上にに乗っている


加藤 「??」


霞  「嬉しくてね」


俺も彼女の細い体に腕を回した。ただ、とても温かい


加藤 「どうした?」


霞  「私に優しくしてくれてありがとう」


それ以外はなにも話さなかった。気が付いたら空がオレンジに変わっていた。


加藤 「そろそろ夜ご飯作らないとな」


霞  「そうね」


触れていた体が離れる。まだ温かさが残る。


加藤 「俺は着替えるから先に行っていて」


霞  「ここで待っているわ」


彼女を外で待たせている。手早く着替え外に出た。


加藤 「お待たせ」


霞  「行きましょう」


月が昇ってきている。今日は満月の少し前のようだ。海に月が反射している。波で月が揺れている。


加藤 「夜ご飯どうしようね」


霞  「カレー食べていは」


加藤 「それにしようか」


食堂に着いた。カレールゥは買ってあったのでそれを使った。カレー粉の匂いとともにわずかに香辛料の香りが鼻をつつく。少し多めに作ってしまったが明日の朝に食べればよいだろう。


教師を呼び食べ始めた。カレーは作るのが簡単だがうまい。


食べ終え片付けに入る。匂いが残りそうだったので換気扇と窓を開けた。


部屋への帰り道


霞  「ねぇ」


加藤 「なに?」


霞  「また買い物について行っていい?」


加藤 「いいよ」


彼女の目は輝いていた。こんなことが嬉しいのか・・彼女にこの世界をもっと見てもらいたいな


霞とは別れ部屋に戻った。


机に書類を広げ、海図を目の前に浮かせた。数日前、思いついた。海図の時間を遅くすれば海図が浮く。なかなか一つのものの時間を遅くするのは難しいかったが、コツをつかめば楽になった。深海棲艦との戦闘の報告書をもらった。それを作戦を考える参考にした。かなり分析に時間がかかったが満足していた。一旦、風呂に入りに行った。


体を温めたあとは、黒の訓練だ。徐々にだが扱える数が増えるようになった。どうやら、黒は形を変えられるようだ。まだ難しいのでこれは後回し。最近忙しかったから本を読めていなかった。この生活にも慣れて来たし、そろそろ読書してもいいかな。図書館どこにあるのかな。霞も誘っていこうかな。そんなこと考えていたら日付が変わった。さすがにこれ以上起きていたら明日・・いや今日に影響が出そうだし寝るか


朝起きて顔を洗いに行き、いつも通りのランニングコースを走ろうとしたら。彼女が立っていた。


加藤 「おはよう、早いね」


霞  「おはよう。」


目が覚めてしまったのかな?


加藤 「一緒に走る?」


霞  「うん」


簡単に準備運動して走り始めた。さすがは艦娘、かなり身体能力が高い。このペースについて来るとは思わなかった。


加藤 「ねぇ」


霞  「何?」


加藤 「本って読む?」


霞  「本?読んだことはないわね」


やはりか、本も読んだことがないのか


加藤 「ちょっと今日、本があるところ行きたいから着いて来てくれない?」


霞  「行くわ!」


彼女の目には何もかも真新しいものに見えるのだろうか。


学校へ戻って、素振りをした。彼女は俺の様子をずっと見ている。気になって集中しにくい。


いつものルーティンも終わり食堂へ向かった。小さい鍋に移しておいた昨日のカレーを温めなおした。三人で食べるには少ないので食パンに塗り上からチーズをのせてみた。案外おいしく、二人にも好評だった。


私服がないためジャージのまま外に出た


霞  「なんでジャージなのよ」


やはり突っ込まれた


加藤 「これと昨日の以外服がないからね」


艦娘は服を持っているのかな?


加藤 「じゃぁ行くか」


霞  「ええ」


どうやら図書館は少し離れているらしい。だんだん気温も上がってきて長い時間外に出ると汗がにじむ。


小高い丘上の建物が見えてきた。どうやらあれが図書館らしい。


加藤 「着いたよ」


霞  「大きいわね」


中に入ると図書館独特の空気に包まれる本の匂いもする。ここにいるだけで落ち着く


霞  「これが本なのね」


おもむろに彼女の細い手が本へ伸びて行った。


どうやら児童書らしい。表紙は日焼けし、ページも黄色くなっていた。だが彼女には宝物に見えているのだろう。


加藤 「気に入ったなら貸りるか」


霞  「持って帰れるの」


目を輝かせている。本を気に入ったらしい。


加藤 「ちょっと俺も本を探しているから他の本も探してみな」


俺は、一般書のほうへ足を運んだ。始めて来る場所なので迷ったが俺の好きな作家の場所まで着いた。中学の頃、この作家の作品に初めて出会った。試しに読んでみた。


古代中国のような場合で主人公が生き抜いていく話である。俺はこの作品の表現に感銘を受けた。空の色、水の流れ、風の動き・・鮮明に想像できるがどれも美しかった。こんな言葉でこの世界を表現できるのかと感動していた。夢中になって読んでいた。


本を手に取る。懐かしい。本はどこへでも俺を連れて行ってくれた。あの田舎町から、これぽっちの大きさのものが。それ以来、俺は本が好きになった。色々な作家の本を読んだが結局一番好きなのはこの作家だった。俺を本の素晴らしさを教えてくれた。


霞を探した。2,3冊は手に持っている。


加藤 「決まった?」


霞  「これにするわ!」


俺も聞いた時のある本だった。とても気に入っているようだ。


本をカウンターに持っていき、貸し出せるようにする手続きを済ませて、本を貸りた。帰り道、霞の足は軽やかだった。早く本を読みたそうだ。


加藤 「後で本のこと話しに来て」


霞  「本のこと?」


加藤 「ああ、ここがすごかったとか、面白かったとか」


霞  「ふふ、そうね」


どうやら楽しそうだ。連れてきてよかったと思う。本を宝物のように両手で抱きしめている。


学校に戻り昼食を作り、昨日と同じことをした。今日は霞は来なかった。部屋で本を読んでいるのだろうか。夕食作りには来てくれた。部屋に戻り分析を始めた。しばらくすると部屋をノックする音が聞こえた。ドアを開けると、霞が立っていた。


加藤 「どうした」


霞  「一冊目読み終えたから話に来たわ」


覚えてくれていたのか。その後彼女の話を聞いた。主人公がどうなったとか、あの場面がすごかったとか、ずっと本のことを話していた。とても、楽しそうだ。俺は彼女の話を相槌を打ちながら聞いていた。


加藤 「本は好きか?」


霞  「ええ!」


ここまで本を好きになるとは・・その後もしばらく彼女は本について話していた。


加藤 「おやすみ」


霞  「また来るわ、おやすみ」


霞を部屋に送った。


少し分析をし、筋トレをして寝た。


そして、春が来た。今年度は入学者はいないらしく結局このままだ。これまで月1で田中さんが様子を見に来てくれた。田中さんは提督をしているらしく、霞を演習に連れて行ったり、出撃もさせてくれた。1カ月ここを離れている間にいつの間にか改二になっていて驚いた。


霞は毎週休日に買い物に付いて来て荷物持ちを手伝ったくれたりもした。無論、本に対する熱意も変わらず、いつも俺の部屋に来て読んだ本のことを話してくれる。


そして、俺は体力も身体能力も大幅に上がった。時間の能力をほぼ使いこなせるようになった。そして黒でできることも多くなった。また、しばらくして気が付いたこともあった。


まずは、俺は歳を取っていない。艦娘同様、見た目が一切変わらない。これは髪の毛が伸びないことで気が付いた。他にも、俺は外的要因では少なくとも死なないことが分かった。どうやら黒の影響らしい。傷口がきれいに消えたことから気が付き、実際、足の指を切ったがきれいに治った。恐らく、黒が切った部分をつないでくれるらしい。だが、背中の火傷と脚の銃創は消えなかった。この体になる前の傷は治せないようだ。最後は、黒で色々なものが出来ること。例えば刀、紙など何でもなれた。見た目だけらしくものによっては機能しないものもあった。俺の体自身も変えられるようだ。背中に翼を生やしたりもできた。体の大きさ、顔の形なども変えられるらしい。今では俺は黒を不自由なく扱えるようになった。同時に複数個に違う命令も出せるようになった。


黒の影響であろか、見た目以上のパワーが出る。黒が一時的に俺の筋肉のサポートをしてくれているのだろう。また、黒の数も増え俺の体の中にも大量にいるため、ちょっとの攻撃は効かなくなった。


そして、新年度が始まった。


とはいってもやることは前とほとんど変わらない。作戦を考えたり、訓練を行ったりした。


教師 「今日から君には彼女の訓練を担当してもらう」


加藤 「霞の?」


教師の言葉に驚いた。彼女は改二であり艦娘としても高い能力を発揮している。今更訓練など必要ないのでは


教師 「これは君が提督になる準備でもある。」


提督の準備か、なるほど


加藤 「分かりました。精一杯頑張ります」


これから霞の訓練を担当することになった


加藤 「改めてよろしく」


霞  「まぁ期待はしているわ」


暖かい日の光が降り注ぐ。彼女を訓練するということは責任もある。プレッシャーとともに内側から何か燃えているようだ。


とはいっても、砲撃や雷撃は俺には教えられない。黒を使えば水の上も立てるがさすがにそれはやらない。できることといえば・・・


加藤 「俺は君に回避術をもとにした戦闘を訓練する」


霞  「回避術?」


だんだんだったがトレーニングをしていると反射神経などが人の数十倍は発達していると感じた。時間をコントロールしなくて問題ない。動体視力、反射神経、距離感、五感などがかなり鍛えられた。黒のお陰でもあるがほとんど自分の力で。そして、もとからの観察力と黒を使いこなすために鍛えた並行思考を使えば、敵の次の行動を予測し回避が素早くなるのではないか?


加藤 「手探り状態だがよろしく」


霞  「よろしく」


そして俺は霞に今から鍛えたいところを話し、メニューを一緒に考えた。今日は今後の訓練メニューを決めて終わった。


部屋に戻って分析を始めた。最近は分析だけではなくて作戦の改善点も考えることが出来るようになった。提督と艦娘の数も増えて色々な作戦に触れられるようになった。


日付が変わる直前、誰かがドアを叩く音がする。ドアを叩く位置からするに一人しかいないのだが。軋む音を出しながらドアを開ける。案の定、霞だった。明らかに様子がおかしい。何者からか逃げる様子だ。


加藤 「大丈夫か?入りな」


俺の言葉にうなずき部屋に入いるが元気がない


加藤 「どうしたんだい?」


霞  「・・夢を見たの」


ベッドに腰かけ彼女は話し始めた。周りで沈んでいった姉妹艦や水雷戦隊の巡洋艦、同じ駆逐隊の同胞、砲撃や航空機の攻撃で死んでいく乗組員達、そして身を挺して護衛するはずだった戦艦。最後には自分も動けなくなり、味方の雷撃で沈んでいったらしい。


艦娘は艦艇のころの記憶があるらしい。彼女が沈んでいった日が近づいていたためか夢に出てきたのだろう。


俺も何回も悪夢を見た。あの時の映像が出てきてその後、何百万の手が俺を引きずり落そうとする夢だ。だから彼女が苦しんでいることがよくわからる。


霞が抱き着いてきた


霞  「とっても怖かったの」


すこし体が震えている。一人でここまで来たのだろう。とても心細かったよな。俺は彼女の頭と肩に手を回した。ひたすら大丈夫と繰り返し唱えた。しばらくして彼女のすすり泣いている声が聞こえて来た。


加藤 「今日はここで寝な」


霞  「一緒に寝て。」


もし、普段だったら断っていただろう。ただ今は、目の前で震える少女をどうにかしてあげようとしか思わなかった。


加藤 「ああ、少し待ってて」


机上を整理し、ベッドへ向かう。霞はもう布団に入っていた


加藤 「お待たせ」


俺も布団に入る。霞は俺の腕に捕まって来た。左腕にのみ暖かさが伝わってくる。顔には吐息がかかる。安心したのかすぐに眠りについた。しばらくし俺も寝た。


いつもどおり走りに行こうとしたら腕が重い。ああ、霞が寝ていたのか。昨日の今日だからでいるだけ寝かせてあげよう。そういえば今日はもう授業がないのか飯は作るがまだ時間がある。


寝顔が見えた。とても安らかに眠っている。口角が上がっている。思わず頭を撫でた。さらさらした髪で手を通しても引っ掛からない。


しばらくして、霞が起きた


加藤 「おはよう」


頭が起きていないのかしばらく自分が置かれた状況を思い出せていないようだ。


霞  「おはよう、ありがとう」


加藤 「あの後は大丈夫だった」


霞  「ええ」


加藤 「またこんなことがあったらいつでも来な」


カーテン越しに朝日が入ってきた。この状況、第三者から見られたらかなりまずいのだろうなと冗談も考えつつ、布団からでてカーテンを開けた。日が陸地から少し離れている。砂浜からの日の出ばかり見ていたがこちらも悪くない。


霞と一旦わかれジャージに着替え、食堂へ向かう。今日は時間がないので、野菜を適当に切ってみそ汁に入れた。


飯を食べた後、訓練に入った。まずは、お互いにボールを投げ合い、ボールが当たったらペナルティとした。相手の投げるタイミング、場所速さなどを考えつつ、相手の隙に自分が投げる。お互い白熱しあい結局午前中はこれだけになった。結果はほぼイーブイだった気がする。


昼飯を食べ、ランニングへ向かった。10kmぐらい走り帰って来た。


その後は座禅をした。心を落ち着かせるよりも呼吸法も会得するためだ。基本、人間は息を吐いていたほうが力を籠めやすいし、体が反応しやすい。短い時間で吸って、長い時間で吐く。これを1時間ぐらい行った。


その後は、ゲームをした。かなり前からバイトを始めたが、結局使い道がなかったからこの期に色々と買い物をした。格闘ゲーム、ゲーム機、コントローラー一組、モニター、小モニター2つ、カメラ2つを買ってもまだ余っていた。


ただゲームを遊びわけではない。お互いの手元を小モニターに写しつつ手の動きを見て次の行動を予測し、避ける、攻撃などを判断。そしてキャラクターごとにリーチ、攻撃力も変わるので、そこに注意しつつ戦う。ゲームのモニターと手元のモニターを同時に見て、かつ状況を判断し、攻撃をする。かなり頭も手も使う。


数日に一回砲撃や雷撃を行わせている。


夜飯を食べて今日は別れた。部屋に戻り、作戦の分析、時間と黒の訓練をして寝た。


それを毎日毎日繰り返した。たまに教師にアドバイスをもらったり互いに相談したり改善していった。田中さんの所でもかなり戦力になっているらしい。田中さんに褒められる彼女を見ると俺も嬉しかった。演習している様子を見て他の艦娘の動きも参考にした。砲撃や雷撃、航空攻撃の回避はここでしか出来ないため問題点など観察していた。


休日は相変わらず図書館へ行った。そして本の感想を聞かせてくれる。


ひたすらに訓練をして季節は秋になった。霞は回避を基本としつつ相手の隙に攻撃することが身に付き、前線でも活躍している。俺も黒の力をほとんど使えるようになった。黒で刀を作ったら思いの他、切れ味がよかった。パワーとスピードさえあれば深海棲艦の装甲も壊れそうだった。時間を遅くすることで俺の刀の振る速度が上がり、ほとんどのものを斬れるようになった。


最近昼の時間が短くなり、風の鋭さも増してきた。今は霞の進水日(11/18)の記念に何かプレゼントを考えている。去年はブックカバーを贈った。


彼女は本が好きだからな・・一緒に探しに行くか


11月18日彼女の浸水日だ


加藤 「おはよう、進水日だね、おめでとう」


霞  「覚えていたの?」


霞にかかわらず大体の艦娘の進水日、沈没、解体日は頭に入っている。


加藤 「今日、一緒に行きたい場所があるんだが」


霞  「ええ、ありがとう行くわ」


バイトした金で服を買った。大していいやつではないがこのぐらいが自分には良い。ジーパンに長袖シャツにジャンバーとオーソドックスな服だ。


玄関で待っていたら、霞が来た。


加藤 「じゃぁ行くか」


今日は電車に乗る。あの時以来乗っていないからおそらく1年半ぶりだろう。


ただ霞は大丈夫かあの大人数の中に行くのは


加藤 「今日、いつものスーパーの比にならないぐらいの人がいる場所だけど大丈夫か?」


霞  「何言ってんのもう大丈夫よ」


加藤 「無理はするなよ」


駅に着いた。さすがは都心。常に電車が走っている。


霞  「多いわね」


さすがに驚いたようだがパニックにはなっていないようだ。改札に入りホームに着く。そして間もなく電車が着いた。やはり中に人がすし詰めだった。ドアが開き、人が出ていく。通勤者がほとんどのようだ。電車に入り霞を俺とドアで挟んだ。しばらく揺られていると目的の駅に着いた。ドアが開くと足元から冷気が襲って来る。ホームに降り改札を出た。


茶に変わった並木通りに沿って歩き出す。しばらくすると大型ショッピングセンターが見えてきた。


加藤 「ここだ」


霞  「大きいわね」


ただ平日とはいえ想像よりも人がいる。はぐれるとまずい。


加藤 「絶対にはぐれるなよ」


霞に注意していると右手が暖かくなった。最近、手足が冷えてきていたのを思い出した。


霞  「手を繋げばはぐれないわよ」


彼女の手はとても暖かい暖房の入った電車にいたとはいえ、もう数分は経っている。そういう体質なのだろうか


三階に上がり目的の場所に着いた


霞  「ここは」


加藤 「しおり屋さ」


本のしおりが彼女にはいいのではないかと思う。


霞  「これ選んでいいの?」


加藤 「ああ、お祝いだからな」


彼女は目を輝かせていた。宝石屋で指輪を眺めている女のようだ


店員 「妹さんですか?」


店員に声をかけられた。艦娘とは言えないからな


加藤 「ええ、本が好きなので誕生日プレゼントに贈ろうと思いまして」


店員 「お誕生日おめでとう」


霞  「ありがとう」


霞も何か察したらしく話を合わせてくれた。


霞  「これにするわ」


どうやら、ステンドグラス風のしおりに決めたらしい


加藤 「お願いします」


店員 「はい、では・・・・円です」


店員に金を払い店を後にした。


再び霞が手を握ってきた


霞  「私たちって兄弟に見えてのかしら」


加藤 「そうかもね」


兄弟か・・・家族を失った彼女は俺の家族のような存在な気がする


加藤 「昼ごはんどうしようね」


教師には予めこのことは伝えているので彼は自分で飯を作っているのだろう


とりあえずフードコートに着いたがこの人の混みようではさすがに座れないだろう。


加藤 「座れそうにないな他の所に行こうか」


霞  「そうね」


近くに食べ物屋はないか?最近購入した携帯で調べる。大して使わないがないと不便だな


加藤 「なにか食べたいものはある?」


霞  「今まで食べたことがないもの」


今まで彼女とは何度も食事を共にした。なにがいいのか・・・あっ


加藤 「ちょっと引き返すぞ」


フードコートに戻って来た。この匂い・・あそこか


霞  「なに食べるの」


加藤 「ハンバーガー・・肉をパンで挟んだものまぁ食べよう」


足を運んだのは超有名ハンバーガー店。


そこそこに人が並んでいた。


加藤 「これの中から選ぶのか」


最近この店に行っていないからかなりメニューが変わった


霞  「見せて」


腰をさげて彼女にも見えるようにした。彼女にとってこのメニュー表は未知への冒険書なのだろうか


加藤 「決まったかい?」


霞はメニューに指を指したチーズバーガーを選んだらしい。


俺たちの順番が来た。


俺は普通のハンバーガー霞はチーズバーガーを頼んだ。やはり席は空いていないようなので持ち帰ると店員に行った。


加藤 「寒いかもしれないけど外で食べようか」


モールの外の通路に出た。近くの自販機で温かい飲み物を買った。近くのベンチに腰掛ける。


加藤 「食べようか」


包装紙を開ける。独特な匂いがする。久しぶりのハンバーガーを食べ始める


加藤 「どう?うまいか?」


霞  「おいしいね」


顔を見ても嬉しそうだ。もう一つあそこで買ったものを出した。


加藤 「これ食べてみ」


フライドポテトだ。揚げたてで温かい


霞  「これは?」


加藤 「フライドポテト、ジャガイモを揚げたやつ。」


霞  「いただくわ」


相変わらずここのポテトの塩の量はかなり多い。


霞はせわしなくい手を動かしてポテトを取っている。気に入ってくれたようだ。


とポテトを取る手が止まった。


霞  「はい」


加藤 「なに」


ポテトを俺のほうに向けている霞。なぜか頬が少し赤い


霞  「両手に持っていたら食べられないでしょう」


今、右手にハンバーガー、左手にポテトを持っている。


加藤 「ありがとう」


彼女の手から伸びるポテトを食べる。後ろのほうが少し潰れていたが。俺のことを気にかけてくれてありがたい。


全て食べ終えゴミ箱に持って行った。


手を繋ぎ歩き出す。


加藤 「ちょっと歩いてみるか」


二人で探索した。ゲームセンターの音。そこで騒ぐ子供たち。服を選んでいる女性。それらを横目に見つつ歩いていたが霞の足が止まった。おもちゃ売り場だ


霞  「あれ、かわいいわ」


指の先にはサメの人形があった。


加藤 「ほしいかい?」


霞  「いいの」


おそらくここが人混みではなかったら飛び跳ねて喜んでいるのだろう。まだまだ残金は有り余っているので問題ない。


少し高い所に置いてあったが自分で取りたがっていたので、持ち上げた。彼女も驚いていたが、想像以上に軽くて俺もかなり驚いた。ぬいぐるみを取った彼女は抱きしめたいた。レジに持っていき購入した。さすがに店の中なので袋に入れてもらった。残念そうだったが申し訳ない。


その後も徘徊していたら15時を回っていた。


加藤 「おやつ食べに行こう」


霞  「いいわね」


カフェのような場所へやって来た。ここではパフェを撃っているらしい。椅子に座りメニューを開いた。


霞  「おいしそう」


ぬいぐるみの所といいパフェといいこういうところを見ると彼女も一人の女の子なんだと感じた。彼女普通のサイズを頼んだ。は俺はあのサイズほどはいらなかったので小さめのにした。


パフェがきた。食べてみると、生クリームのとろけ方がとても好みでおいしかった。霞は幸せそうな顔をしている。この顔を見ると連れてきてよかったと思う。


その後も歩き回った。ヘアゴムを買ったり。キーホルダーを買ったりした。そして、17時を過ぎていた。


加藤 「そろそろ帰ろうか」


霞  「そうね・・・」


少し寂しそうだ。


加藤 「楽しかった?」


霞  「ええ、もちろん」


加藤 「それはよかった。また一緒に来ような」


さっきまでの悲しみや寂しさの表情が一気に晴れやかになった。単純だな


この時間だと気温も下がり服の隙間から寒さが襲って来る。彼女と繋いでいる左手、以外はだんだんと熱を失っていく


学校の最寄り駅まで帰って来た。見慣れた街に帰って来た。


霞  「今日はありがとうね」


今日一番の笑顔を俺に見せてくれた。だが、お礼を言いたいのは俺のほうだ。ずっとそばにいてくれて俺の勉強や訓練をサポートしてくれた。彼女がいなくてはここまで成長はできなかったであろう。


加藤 「いえ、また行こうな」


日が沈み、寒さがまた一段と厳しくなったころに学校に着いた。荷物を彼女の部屋まで運び食堂へ向かった。今日の夕食はどうしようか。冷蔵庫の残りから、生姜焼きにすることにした。


生姜焼きはそこそこの出来だった。やはり母の味には敵わないな。


部屋に戻り、分析を始めた。最近は強力な敵も現れて来たらしい。姫級とか鬼級とかいるらしい。俺があの時見たやつかな。ノック音が聞こえてきた。霞だろうか。


加藤 「いらっしゃい」


霞  「お邪魔するわ」


ベッドの端この部屋に来た時の彼女の定位置だ。


霞  「今日はありがとう」


加藤 「楽しんでくれたらいいだよ」


霞  「そう、しおり屋さんのときなんで私を妹って言ったの」


加藤 「・・・」


反射的に言ってしまったたからな


加藤 「そう思ったんじゃん」


加藤 「霞は妹かなって。」


霞  「そう・・・」


霞  「よく物語に家族のお話が出て来るんだけど私、家族ってよく分からなかったのよ」


霞  「けど、今日あなたに妹って言われてから、あなたの家族だったらって考えたの。」


霞  「あなたの家族だったらいいなって思い始めたとよ」


霞  「私に姉妹艦はいるけど、この姿になってからほとんど会わなかったし」


霞  「家族って意味は分かっていてもなんか理解はできなかったの」


霞  「でも、分かったの。家族がいるって幸せなのかなって」


霞  「ありがとうね、嘘でも妹って言ってくれて」


なんて声を掛ければいいのか・・・俺も彼女も今は家族がいないし


加藤 「ずっと俺も家族と会っていないからな」


加藤 「最近は霞といる時間が多いし」


加藤 「何ていうか・・・うまく言えないけど君が家族だったらいいなって」


加藤 「一緒にいて楽しいし、笑ってくれると嬉しいし」


加藤 「俺も君が家族だったらって思うな」


霞  「うふふ」


加藤 「ふふ」


霞  「なんか同じこと考えていたのね」


加藤 「そうだね」


霞  「これからもよろしくね」


加藤 「よろしく」


霞  「ねぇ今日一緒に寝て」


加藤 「ええ、いいけどさ。まだ俺風呂入っていないからまだ寝ないよ」


霞  「分かった。待っているわ」


加藤 「了解・・・」


風呂場に行ってシャワーを浴びた。


彼女と俺が家族か・・・まさかここまでの関りになるとはな。ずっと一人で生きてきて彼女にとって俺は家族のような存在か・・・


シャワーの水が頭を濡らし肩を通り、背中を下って行く。脱衣室は寒かったが、温水を浴びたからか冷たくはなかった。着替え、部屋に戻る。


霞  「お帰り」


加藤 「ただいま」


彼女は完全にここで寝るモードに入っている。まぁ今日は彼女の進水日だしいいか


俺はベッドに座った。


加藤 「こっちに来な」


霞は俺の足の上に乗って来た。髪からほのかにシャンプーの匂いがした。


霞  「ねぇ、また行きたいな」


加藤 「今度な」


霞  「あのパフェおいしかった・・・」


しばらく俺たちは談笑していた。今日の思い出とか、今度やってみたいことたくさん話した。


加藤 「そろそろ横になるか」


霞  「ええ」


布団に入った。


霞  「ねぇ」


霞に呼ばれた。思いのほか顔が近くにあって驚いた。


加藤 「どうした?」


霞  「もし、深海棲艦が居なくなっても一緒に居てくれる」


加藤 「ああ、生きていたらな」


霞  「そうね」


加藤 「おやすみ」


霞  「おやすみ」


しばらくして霞が俺の胴に腕を回してきた。俺は彼女の頭を撫でた。そして眠りについた。


そして、風が優しくなり。梅が咲き誇る季節になった。俺と霞は訓練を重ねさらに精進した。そろそろ卒業する。上の学校に彼女も連れて行ったいいか聞くか。


田中 「おはよう」


加藤 「おはようございます。お久しぶりです。」


田中さんが来た。どうやら今日は秘書艦の金剛がいない。


田中 「加藤君、今日は大事な話が合ってな」


加藤 「はい。」


田中さんにある部屋に連れてこられた。もうすでに教師が待っていた。


田中 「君、今月でここを出るよね」


加藤 「はい」


田中 「これからはどうするつもりだい?」


加藤 「上の学校に進学するつもりですが・・・」


田中 「いや、君にはもう鎮守府に着任してもらう」


田中さんの言葉に思考が止まった。まだ18の俺に国防を任せるのか?


田中 「彼に聞いた限り、君は理解が早い。今まで言っていなかったらしいが君は大学でやる内容も終わらせている」


加藤 「え?」


教師 「高等科でやろうとしていた事、君が自分で勉強して3カ月で終わらせちゃったからね」


夢中で勉強していたから気が付かなかったがそうだったのか。色々と教師に質問したり。俺一人だったからかもしれないな。


田中 「その後1年半で大学4年分も終わらせてしまうとは。さすがだ」


加藤 「俺一人だったんで教師に分からない所もすぐ解決したのだと思います」


田中 「そうか、話を戻そう。というわけで学校で教えることはもうない。だから君には提督になってもらいたい」


加藤 「なるほど。分かりました。配属先は?」


田中 「まだ決まっていない。」


教師 「艦娘の訓練の授業があったろう」


加藤 「ええ」


田中 「大学では成績順で担当する艦娘を決めるのだが」


田中 「基本的にその子が秘書艦になるのだが君は霞だけだったな」


加藤 「はい」


田中 「選択肢がなかったから君は自由に初期艦を選んで構わない」


加藤 「いえ、俺は霞がいいです」


田中 「そうかい」


加藤 「彼女と話し合って決めます」


どうやらあの事件から自衛隊の学校が変わったらしい。学生数が多いため。多くの艦娘が配属され成績順で将来の初期艦が決まるらしい。


霞の部屋に向かった。部屋に送ったことは何度かあったが一人で来るのは初めてだ。ドアを叩く。


霞  「はーい・・ってどうしたの」


加藤 「そこそこ重要な話が合ってな。」


そのままさっきの話をした。


加藤 「・・というわけだ。俺は君に初期艦になって欲しいがいいか」


霞  「ええもちろんよ」


ホッとした。彼女以外の初期艦は誰もいないと思っていたから。よかった。


田中さんにこのことを伝えた。俺が鎮守府に着任するの4/1らしい。それまでには配属先が決まるらしい。残りのここの生活が終わる。約2年、かなり楽しかった。


田中さんを見送った。そのときには空が赤く染まっていた。


夕食を作った。その後部屋に戻った。


今いろいろな気持ちが混ざっている。提督に慣れる高揚感、それとともに現れるプレッシャー、艦娘の命を預かることによる不安。机を撫でる。手が滑る。長い時間ここに座って勉強したのか・・・今はいい思い出だ。懐かしさと寂しさが同時にやって来た。


深呼吸をした。俺も決心が付いた。迷っていたが今はそんなことは消え去っていた。爪を変形させる。鋭い歯を腕に当てる。思いっきり引いた。直後、穴の開いたホースのように血と黒が出てきた。黒を集める。足、腰、腹、胸、肩、腕、首、顔と作っていく。顔の形はどうするか・・・思いつかない。どうしよう・・・本の表紙に目が行った。鬼・・・能面の鬼にするか。面をかぶっているようにした。顔を作れなくて申し訳ない。仕上げに黒に人間の細胞になれと命令した。


すると人形が一旦は膨れ上がり破裂しそうになったが。すぐに人の形に戻った。


加藤 「分かるかい?」


?? 「あなたは」


加藤 「俺は君を作ったものさ」


とうとう生命を作ってしまった。


加藤 「ちょっと君の頭にメッセージを送ってみるから言ってみて」


?? 「かとうてすとてすと」


加藤 「素晴らしい。さすがだ」


俺は自立思考しつつ俺が操作できるものを作った。


?? 「!あなたケガしているじゃないですか」


自分の腕を傷つけたのを忘れた。すぐに修復した。


?? 「私は何ですか?名前は」


加藤 「そうだな・・・マツダはどうかな」


マツダ「マツダですか分かりました。」


加藤 「君には頼みたいことがある。艦娘を護ってほしい。」


マツダ「艦娘を護る?」


艦娘は提督の好きなようにされているらしい。暴力や性奴隷、囮、過労、場所によってはひどいことをされている。


加藤 「・・ということだ」


マツダ「なるほど・・・」


加藤 「あともう一つ・・・」



マツダ「分かりました。」


加藤 「頑張ってくれ。頼んだ。」


マツダ「はい」シュンッ


どうやら黒の力を使いこなせているらしい。マツダか・・衝動的に出たが彼の名前を付けたのか・・


彼も家族も、もう顔を思い出せない。写真でさえも残っていないからな・・・


窓を開ける、風と共にどこからか梅の花が飛んできた。手に取り再び風に流した。ひらひら飛んでいき夜へ消えた。


窓の縁に肘をついた、なにも考えていなかった。大作業をして疲れているなあそこまで黒を開放すると体力がなくなる。風呂へ向かった。背中の火傷を思い出す。ここから俺の体が変わっていったのか。ひどかった。何もなくなった。家族も親友も故郷も、しかし、出会いもあった。あれがなければ一生出会うことはなかっただろう。霞、田中さん、教師・・・本当に多くの人に助けられた。


部屋に戻る。少し、書類を見て終わりにしよう。


気が付いたら机の上に突っ伏していた。寝落ちしたのだろうか。眠気はなくなっていた。少し早いが外に出てみた。春の朝は寒い。


少し走った。砂浜を踏む音の気味がいい。いつもよりもゆっくりと走った。桜の木の間に現れるさ梅の木がみえる。うすく桃色の花。梅はいつもこの季節に咲く。別れを告げるように。俺は少しでこの学校を出る。たった一人の生徒しかいない学校を。小学校も中学校もこんな感情は湧かなかった。永遠の別れをした後の初めての別れだからだろうか。もう一生出会えないのかと思ってしまう。


霞  「どうしたの」


霞が来た。もうこんな時間か。


加藤 「おはよう」


霞  「行きましょう」


ずっとこの道を走って来た。もうここ離れてしまうのか


霞  「元気ないわね」


加藤 「こことも別れかって」


霞  「また来れるわよ」


そう思って出て行って二度と戻れなかったことがあったからな。しかし、今は違う。今は守る力をもった。俺の大事な人も場所も・・絶対に守る。


霞  「日が昇って来たわね。」


日の光が右半身を照らし始める。温かい。春の日の光は温かさある。


加藤 「学校の大掃除しようか」


霞  「使っていない場所のほうが多いけどね」


学校に帰って来た。朝食を食べ、いつも通りの訓練をした。昼食を食べた後、武道場の掃除をした。屋根の汚れや、端の埃取り、壁を拭いた。かなり汚れがたまっていた。普段は床をモップ掛けしたぐらいだったからだろう。掃除が終わったら、もう日が暮れかけていた。


加藤 「おつかれ」


霞  「けっこうきれいになったわね」


加藤 「ああ、元が汚いんだろう」


夕食を食べ、部屋に戻る。大したものはないが部屋の整理をした。今まで買った服、田中さんからもらった服・・・なにか箪笥の奥にある。


加藤 「これって・・・」


背中が焦げてないブレザー、右足に大きな穴の開いているズボン。間違えない、あの日まで着ていた制服だ。ところどころ血が付いている。他の汚れが見当たらないから、一度洗ってくれたのだろう。


まさかこれを持っていたとは・・・唯一あの日よりも前から持っていた物だろう。


整理しているとこんなことがいつかるのか・・・



私はマツダ、加藤さんに作られた。私自身、自分がどんな存在かよくわからない。数日前に加藤さんに艦娘を護ってくれと頼まれたが何をすればよいか分からない。ただ存在を知られてはいけないらしい。


そんなことを考えていたら頭の中に何かが


「A鎮守府に行け」


これは加藤さんの声。A鎮守府はここか



マツダを作った初日からとはな・・・


黒を使って一部の提督の監視をしている。まだ数が足りないから、ごくわずかだが。どうやらA鎮守府の提督が艦娘を襲っているらしい。


マツダにこのことを伝え行ってもらった



移動中に大体状況が理解できたA鎮守府の提督が艦娘を強姦しているらしい。急がねば


ここか、本当にいるのか、頭の中に映像が流れてきた。A提督が性器を艦娘の性器に入れようとしている。ドアを蹴り飛ばしその勢いでA提督を殴り飛ばす。全力で殴ろうとしたら加藤さんが「君が本気で殴れば彼は死ぬ」と言われた。急いでスピードを緩めA提督の側頭部を殴った。A提督は吹き飛び壁に激突、息はしているようだ。私の目の前には裸の艦娘がいた。


A提督 「誰だお前は!」


いきなりA提督に叫ばれ驚いたが、加藤さんからメッセージがきた。これから文章を話せと


マツダ「あなた、何をしようとしていたか分かりますよね」


A提督 「ああ、潮とエッチしていた」


潮とは彼女の名前らしい。


マツダ「本当ですか?」


A提督 「ああ、あいつのま〇見てみろ!濡れてんだろ」


潮の陰部を見た。確かに濡れている。


マツダ「しかし、膣が濡れるのは防衛本能が働くからですよ。そんなことをも知らないのですか」


煽るようにと言われた。これを聞くとA提督は怒っているようだ。潮はまだ震えている


加藤さんから左の内ポケットのボイスレコーダーを再生しろときた。ボイスレコーダーは持っていないはずだが試しに右手を服の中に入れると、固いものがあった。ボイスレコーダーだ。何故かよく分からなかったが再生した。


内容はA提督が潮を強姦しようとしたとき姉妹艦を解体することを脅しにしていた。


マツダ「ということですが」


A提督 「・・・」


マツダ「沈黙は肯定と捉えます」


潮  「あの、提督に無理やり襲われそうになりました。」


潮が初めて口を開けた。まだ肩がガタガタしている。


マツダ「大丈夫ですよ、安心してください」


と伝えると潮は泣き出した


A提督 「・・ならお前を殺すのみだ」


A提督が銃口を向けてきた。その直後発砲してきたが難なく回避。さらに数発撃ったがどれも避けた。


A提督 「っち」


足音が近づいて来る


曙  「どうしたの・・って潮!」


朧  「何があったの?」


どうやら彼女の姉妹艦が来たらしい。


潮  「提督に襲われたの」


その後、潮は説明した。


漣  「それって本当ですか?」


潮  「うんこのお面の人が助けてくれたの」


A提督 「・・ばれちまったか」


A提督が騒ぎ出したがその後、手刀で気絶させた。A提督を縄でしばり、紫の髪の艦娘にボイスレコーダーは渡した。


潮  「あの・・ありがとうございました」


マツダ「いいえ、もう安心してください」


曙  「あんた何者なの?」


マツダ「マツダと申します」


朧  「潮ちゃんをありがとうございました」


漣  「あざーす」


どうやら、加藤さんが帰りなと言われたので帰路に着いた。


加藤 「おつかれ、マツダ」


マツダ「いえ、加藤さんのお陰です」


加藤 「これからは俺はサポートできないから自分で頑張ってくれ。」


マツダ「はい」


加藤 「あと、約束してほしいことがある」


加藤さんは私に、誰も殺さないこと、周りの人に被害を出さないこと、もし相手を斬るときは自分で作った刀を作って、斬ったものは修復できるようにしろというものだった。


加藤 「約束守れそうかい?」


マツダ「はい」


加藤 「これからもよろしくマツダ」


加藤さんとの会話は終わった。



初めてだがどうにかなった。A提督はそのまま憲兵に捕まるだろう。今後マツダがうまくできるかどうか。早急に監視システムを完成させねば・・・今日はもう遅い寝るとしよう。


その後も掃除をしてとうとう最終日。俺は南のほうに配属されるらしい。


この部屋ともお別れか・・・


朝食を作りに行く。途中で霞と会った。


霞  「今日で最後ね」


加藤 「そうだね」


食堂に着く


加藤 「どうしようね」


霞  「いつも通りでいいんじゃない?」


俺はかなりソワソワしているようだ。朝食は、みそ汁と焼き魚、ご飯だ


朝食を食べ終えた後、教師に教室に来るように言われた。


片づけをして教室へ向かう。最近は外ばかりいたのであまりここには来なかった。


教師 「君に渡したいものがね」


教師は大きな袋と紙を取り出した。


教師 「これは卒業証書」


まさかこんなものをもらえると思わず驚いた。


加藤 「ありがとうございます」


教師 「お疲れ様。」


教師 「後はこれだね中を見てみな」


袋を覗き込む。真っ白い服。これって・・・


教師 「ああ、軍服さ」


加藤 「ありがとうございます」


教師 「君は明日からこれに袖を通す。これがどういうことか分かるよね?」


加藤 「はい」


明日からは俺は一人の軍人だ。一つ一つの行動に責任が発生する。


加藤 「みなさんの期待に応えられる活躍をして見せます」


教師 「ああ、期待しているよ」


とうとう卒業か・・


教師 「さっそく着てみてくれ。俺も君の軍服姿を見たくてな」


制服から軍服に着替える。まだ固くすこし重い。来ていると身が引き締まる


教師 「似合っているじゃないか」


霞  「いいわね」


加藤 「ありがとうございます」


教師 「君たちは移動があるだろうからここにいるのは昼ぐらいまでかな」


荷物はあらかじめ用意した。公共交通機関でのんびり行く。


加藤 「お世話になりました」


教師 「寂しくなるな」


どうやら今年度は新入生が一人いるらしい。教師はカリキュラムを作るとき勢いで俺の内容を書いていたらしい。


部屋に戻り軍服を脱いで畳み袋にしまった。


最後の昼食を作る。


メニューはインスタントラーメンにした。なんか特別なものを作るとここから出てこれなくなりそうだ。


教師 「忘れ物はないかね?」


玄関前、教師が見送ってくれる。


加藤 「問題ないです」


教師 「では、二人とも武運を祈る」


加藤 「ありがとうございます」


お互いに敬礼を贈り。この学校を出た。


霞  「おつかれさま」


加藤 「こちらこそ、ありがとう」


霞  「どのぐらいかかるの?」


加藤 「10時間ぐらいかな」


霞  「なかなかだね」


最寄り駅に着いた。昼のためあまり混んでいない


加藤 「東京駅まで行って新幹線で岡山まで行ってそこからは普通の電車で行くよ」


霞  「結構長いわね」


加藤 「新幹線は3時間ぐらいだけど他がね」


話をしている間に東京駅に着いた。


駅のホームに着くとすぐ真っ白な車両が到着した。


加藤 「乗ろうか」


霞  「ここね」


青い椅子に座る。少し固い。


すばらくして車両が揺れ始める。


加藤 「とりあえず岡山までだね」


霞  「そうね」


俺たちは外の風景を見ていた。並びそびえるビル群を通り抜け、湖を眺めた。途中富士山も見えた。この景色を見るのは中学の修学旅行以来だろうか。当時は友達と騒ぎまくって、外を見ていなかったが。日本には美しい景色があるのだな。しばらくしたら田んぼの風景が見えてきた。まだ、畝も整っていない。水の張った田んぼに映る空。泥をまき散らしながら帰っていくトラクター。故郷の風景がよみがえってくる。


霞  「名古屋に着いたらしいわ」


そんなことを考えていたらもう名古屋に着いていた。やはり文明の利器は素晴らしい。


その後はトンネルが多い。防音のためか。


霞  「ふふ」


加藤 「どうした」


霞  「まさか、あなたと一緒に鎮守府に行くとは思っていなかったわ」


そこから思い出話になった。始めてあったとき、道に迷っていたとき、抱きしめたとき、図書館に連れて行ったとき・・・本当に彼女とは色々な思い出があった。


霞  「これからもよろしくね」


加藤 「よろしく」


と携帯が震えた。連絡先を交換しているのは田中さんと教師だけなんだが。


霞  「どうしたの」


加藤 「田中さんから」


加藤くん卒業おめでとう。仕事が忙しくて見送り出来なく申し訳ない。あれからよく頑張った。秘書艦と共に頑張ってくれ。困ったときにはいつでも連絡してくれ。


田中さんには本当にお世話になった。彼がいなかったら俺はがれきの下で死んでいたのだろう。ほかにも感謝しきれない。


霞  「ありがたいわね」


加藤 「そうだね」


そんなことを話していたら大阪に着いた。田中さんに簡単に返事をした。


加藤 「あとすこしで岡山だ」


ゆっくりと外を眺めていたら、アナウンスが聞こえた


加藤 「降りる準備しておくか」


霞  「忘れ物はない?」


軍服も証書の入った筒もある。一応席の周りも確認したが問題ない。


新幹線から降りた。生暖かい空気が入ってくる。


霞  「とあえず岡山ね」


加藤 「そうだねこれからが長いさ」


教師に電話を入れておこう。あと、簡単におにぎりでも買っておこう


特急に乗り換え。高知へ向かう。ひたすらに田畑が広がっている。さすがにずっと見ていると飽きて来る。


霞  「風景変わらないわね」


加藤 「音楽でも聴こうか」


携帯を取り出し、イヤホンを片方、霞に渡した。俺もあんまり音楽は聴かないので詳しくないが、動画サイトで適当なものを流した。どうやら最近の流行歌らしい。日が西の山に隠れたころ高知駅に着いた。ここからは鈍行列車で行く。


腹が減ったのでおにぎりを食べた。


空も黒に染まっていく。さすがに疲れてきた。霞はいつの間にかに寝ていた。


終点に着いた。あたりはすでに真っ暗だ。


加藤 「霞、起きな」


寝ているのを起こすのは気が引けたがやむ負えない。


最後の電車に乗る。あと一息で宿毛だ。


俺も眠気に何度も襲われた。ドアが開くたびに入ってくる冷気で目が覚めた。どうやらこれで最後の駅だ。


加藤 「霞お疲れ。」


霞  「着いたの?」


霞は寝起きですこし寝ぼけてている。電車から降りた。ようやく電車旅が終わった。しかしこれからも長い。ここから歩きで鎮守府に向かう。地図をもらっているが、歩きで30分ぐらいかかる。


加藤 「霞、来な」


霞をおぶ、とても軽いが手に持っている荷物で彼女の足を支えるのが難しい。なんとかバランスが取れたので出発した。霞の寝息が背中にかかる。ぽつぽつと街灯があるだけの道路。どこか故郷を思い出す。しばらく歩くと赤いレンガの建物が見えて来る。どうやらあれが鎮守府らしい。


加藤 「霞着いたよ」


もらっていた鍵で門を開ける。だいたい図を見ていたのでどこに何があるかは覚えている。


加藤 「ここが執務室か」


明日からここが俺の仕事場になる。とりあえず隣の俺の私室に入った。もう荷物が置いてある。霞を一回起こし布団を敷いた。本当は他の片付けもしたいがそんな気力はないので寝ることにした。とりあえず田中さんと教師に連絡を入れた。霞はもう布団に入って熟睡していた。電気を消して俺も寝ることにした。


?? 「ハァハァ」


?? ドサッ


目が覚めるともう6時だった。少し動くと物音で霞が起きた。


加藤 「おはよう」


霞  「おはよう、”司令官”」


今日から俺は提督になる。一つの鎮守府を任された。


加藤 「とりあえず朝ごはん食べるか」


食堂のような場所へ向かう。厨房で簡単に朝食を作り二人で食べた。


霞  「今日はどうするの」


加藤 「施設を見て、荷物を整理して周りの人に挨拶に回るかな。」


朝食の片付けが終わった。


二人で鎮守府の探索に向かった。工廠、入渠施設、倉庫、運動場、体育館、武道場、弓道場、寮を見た。倉庫にはほとんど入っていなかった。多少の資源と資材。資源はそんなのだろう。


最後に出撃港に向かう。


霞  「ねぇ何あれ」


彼女の指の指すほうも向く。大きなごみ?


加藤 「人だ」


叫ぶと同時に走り出した。よく見ると艦娘だ。


加藤 「とりあえず運ぶか」


持ち上げ、建物へ向かった。


霞  「とりあえず、入渠の準備しておくわ」


霞と別れ俺は医務室に向かう。医務室といったものの誰もいない。ベッドに艦娘を寝かせた。艤装を外し床に置く。ところどころ傷がある。深海に襲われたか?傷口を確認しようと腕を触ったら違和感しかない。骨の感覚しかない。裾をまくった。目を疑った。目の前には枯れた老木のおような腕があった。痩せているというレベルではない。服を脱がし、腹を見る。やせ細った胴と、大量の痣がある。消える前からさらに上に痣をつけられている。棒のようで打たれたようなもの、殴られたようなものひどいものだ。上を脱がす。彼女の裸を眺める余裕はない。浮き上がったあばら。細すぎる肩。大量の痣に火傷。どう考えても人間か艦娘による暴力だろう。よく見なくてもあばらが数本折れているのが分かる。さらに悪質なのは目立たない所にあるところだ。


しかし、髪は痛み、ボロボロだ。右目に大きくかかる髪をどかす。


霞  「終わったわ。・・・って何やって・・・」


始めは霞は俺がただ彼女の服を脱がせていると思ったのだろうが、すぐに状況を理解した。


霞  「目が・・・」


彼女の右目がない。目はつぶっていたが瞼に厚みがない。右目は抜かれている。


霞  「とりあえず入渠させるね」


といって霞が運んだ。艤装をつけていない霞でも運べるほどの体重だ。艤装から考えて彼女は夕雲型であることは間違えない。ただ夕雲型は艤装のみしかわからない。田中さんの所にもいなかった。


霞  「とりあえず、行ってきたわ」


霞  「彼女は夕雲型の朝霜よ」


16番艦か、霞が判断できるのは理解している。艦娘はこの姿になってあっても認識があるものなら誰か分かるらしい。霞と朝霜は戦争の末期同じ駆逐隊に入り何度か作戦を同じくしている。


加藤 「ちょっと軽いもの作ってくるから。霞は朝霜の様子見ていて。」


俺は食堂へ向かった。確か牛乳とバナナはあった。それでジュース作ろう。バナナは栄養価が高いし、問題は砕いてどろどろにするものがあるか。


食堂に着き、急いで調理器具の扉を開けた。ミキサーがあった。牛乳とバナナをぶち込んで混ぜ始めた。一瞬でバナナはなくなり混ざった。それをもって医務室へ向かう。


一体だれが彼女にあんなことをしたのかマツダに頼もうとするも俺の監視には引っ掛からないからどうしようもない


加藤 「ただいま」


霞  「おかえり」


加藤 「飲むか?」


気が付いたら一人分にしては多かった。


霞  「そう、ありがとう」


霞も確実に動揺している。


加藤 「目、覚めそうか」


霞  「分からないわ、入渠はあと30分ぐらいね」


初日からこんなことになるとは。作ったバナナミルクを飲んだが味はよく分からなかった。


朝霜の入渠が終わった。まだ眠っている。息も脈もしっかりしているがどうなるか分からない。結局、入渠で治ったのは、かすり傷ぐらいだった。艦娘は艤装を展開していればいかなる傷も入渠施設で治る。しかし、艤装を外しているときは普通の人間と同じだ。


田中さんに連絡すべきか考えたがやめた。万が一、彼が犯人だった場合どうにもならない。彼が犯人であることは十中八九ないだろうがリスクはすべて捨てたほうがいい。場合によっては消されるかもしれない。


霞  「このままだったら、栄養失調で死んじゃいそう」


霞の目はうっすら涙が浮いている。


加藤 「ちょっと栄養剤探してくる。」


軍服のまま外に出た。あそこには黒を置いといたから部屋の様子は分かる。と住民が見えた。


加藤 「すみません、薬局ってどこですか?」


住民 「あんたさんだれだね」


加藤 「あそこに来たものです」


住民 「海軍さん?薬屋ならこの川を昇ったところにあるよ」


加藤 「ありがとうございます」


頭を下げてダッシュした。ここか?


加藤 「すみません栄養剤ください」


薬剤師「処方箋は」


加藤 「ありません、急いでいるんです」


薬剤師「しかし」


加藤 「お願いします。責任は俺がとるので」


薬剤師「海軍の方ですよね?」


加藤 「はい」


薬剤師「分かりました。あとで説明してください」


加藤 「ありがとうございます」


薬剤師「はい」


加藤 「ありがとうございます。では」


再びダッシュで戻る。点滴用だが。一応あそこには注射器は置いてあった。


加藤 「ただいま。」


霞  「お帰り」


加藤 「注射器を沸騰した水の中入れてきて」


霞  「分かったわ」


栄養剤を適当に吊るす。あとは静脈を見つけなければ。確か弾力のある真っ直ぐな静脈。朝霜の腕も触る。集中した。少し腕を握った。動きがある場所・・ここか。


自信はないがどうにかする。血管の位置を覚え、注射器を止めておくテープ、アルコールと脱脂綿の準備をした。


霞  「終わった。」


霞が注射器を持ってきた。栄養剤のチューブと注射器を繋ぐ。もう一度静脈を確認し、少し液を出して腕に刺した。血管に空気が入ると固まってしまうのを防ぐためである。


霞  「おつかれ」


肩の力が抜けた。なんとかなった。まだしっかりできているかは分からなかったがひとまず山は乗り越えた。落ち着こうと窓を開けた。目の前の瀬戸内海と太平洋の境目のような場所だ。春らしい風が入って来た。俺の心を落ち着かせる。


しばらくして点滴が成功したことが分かった。霞に朝霜の看病を任せさっきの薬局に向かう。


薬剤師「なるほどそういうことでしたか」


薬剤師に話した。もう艦娘の存在は公表されている。しかしほとんどの人間が見たことないだろう。


加藤 「すみませんありがとうございました」


薬剤師「いえ、しっかり処方箋ももらいましたから」


薬剤師はにこにこしていた。なるほどごまかしてくれたのか


加藤 「ありがとうございました」


薬剤師「お大事に」


現在、艦娘の人権はない。つまり今は人間ではない。人権を認められていないから悲しいこと起こるが、さっきのように俺が艦娘に注射しても問題はない。艦娘は遺伝子は人間と変わらないらしい。今はあの能力の解明を行っているらしい。


加藤 「お疲れ、どうだ」


霞  「変化なしよ」


霞の隣に座る。さっきよりも表情がよくなったか?


加藤 「ちょっと休憩してきな」


霞  「そうするわ」


霞が外に出た。朝霜の手を握る。骨と皮しかない。老女のような手を握った。走っている間にも黒を出し、監視を増やしたがまだ見つからない。なぜこんなことする。やるような奴らの気持ちはどうでもいいが被害にあった艦娘の気持ちは計り知れない。何のために艦娘は生まれた来たか。少なくとも人間の好きなようにこき使われるためではない。


全く起きる気配がしない。


霞  「ほら、食べて」


長い時間ここにいたらしい。霞が昼食を作ってくれた。


加藤 「ありがとう」


霞  「大丈夫かしら」


目の前のやせ細った少女、アフリカ飢餓を教えられたときの写真を思い出す。そのような姿の彼女がいる。彼女をこんな姿にした奴を絶対許さない。


霞  「交代よ」


加藤 「ん?」


霞  「看病よ、朝霜の」


加藤 「もう少し休んだら」


霞  「あなたもよ」


霞の言葉に甘えてすこし休憩した。部屋の整理をしようとしたら霞の私物が置いてあった。サメのぬいぐるみを手に取ってみた。ところどころ毛玉が出来ている。気に入ってくれたのか。あのとき・・ぬいぐるみを抱きしめていた時の顔は忘れられないな。


サメの頭を撫で、荷物の整理を始めた。


出撃港に艤装と装備を確認しに来た。霞の艤装が置いてある。今こそ1つしかないが今後増えていくのだろう。装備の部屋へ向かう。主砲3つ、魚雷発射管3門、電探2基、機銃3つ。学校のものを送ってくれた。教師もありがたい。


海に出た。砂浜が太陽に反射し輝いている。東京湾もだったが宿毛湾も島に囲まれているから波が穏やかだ。砂浜に座る。日の光で少し熱いぐらいだ。目をつぶり座禅した。


心が落ち着き医務室に入る。


加藤 「なぁなんで俺の部屋に荷物しまってんだよ」


霞  「いいじゃない、近いほうが色々と便利でしょう。」


加藤 「いいけどさ・・・」


結局、今日は朝霜の目は開かず、俺も犯人を見つけられなかった


加藤 「霞、部屋でねてきな」


霞  「あなたは?」


加藤 「ここで少し寝る」


霞  「だったら私もここで寝るわ」


説得したが俺が負け、霞もここで寝ることに。月が部屋を照らす。ただ、その光に温かさはない。


朝・・とは言ってもまだ日が昇っていないが起きたら。霞が肩に頭を乗せていた。朝霜はやはり起きていない。黒を倍近く増やしたが見つからない。時間を遅くし。椅子から立つ。霞を動かし、時間を戻す。


執務室へ向かう。昨日の朝以来、ずっと入っていなかった。書類関係の仕事をするらしいが現状その必要はない。


執務室から離れ、外に出る。南のほうにあるからか、東京よりも暖かい気がする。


砂浜を走り出す。ここは砂が柔らかく走りにくい。2,3kmほど走って。足を止めた。


黒で作ったナイフを取り出す。腕に思い切り刺した。血が海に垂れていく。黒が海へ流れる。黒を海へ出すことで深海棲艦の動きが分かるようになればいいのだが。静かな海に黒が流れていく。水に絵の具を垂らしたように黒が広がっていたがすぐに消えて行った。


鎮守府に帰って来た。まだ霞は眠っている。


武道場へ向かった。昨日、防具と竹刀をここに持ってきた。竹刀を取り出す。黒くなった柄を握る。息を吸うと同時に振りかぶり、一瞬で吐く。竹刀が風を切る。ひたすらに竹刀を降り続けた。額に汗がにじむ。手から脂が出る。


日が武道場に差し込むころ、竹刀を袋に戻し、手を洗って医務室に戻る。霞は起きている。


加藤 「おはよう、朝飯作ってくるわ」


霞  「いってらっしゃい」


ご飯とみそ汁、ゆでた野菜に卵焼きを作った。


加藤 「はい」


霞  「いただきます」


いまだに身動き一つしない朝霜の前で俺達は朝食を食べた。


霞  「今日も同じ感じ?」


加藤 「そうだろうな」


本当に朝霜は生きているのか?死んでいるのか?一抹の不安が頭をよぎる。


霞  「ごちそうさま」


霞の声で我に返る。


昨日に物の整理をして特にやることもなく時間が過ぎる。


すると突然誰かが訪ねてきたようだ。


加藤 「ちょっと行って来る」


霞  「いってらっしゃい」


黒を飛ばす。玄関前に人と艦娘がいる。軍服だ。まさか・・・


加藤 「こんにちは」


B提督 「君は加藤少佐かね?」


加藤 「はい、どうぞ上がってください」


後ろにいるのは戦艦長門のようだ。


俺は執務室のソファに二人を座らせつつ、マツダにB鎮守府に向かわせた。


B提督 「君は18だったけ?」


加藤 「ええ、」


黒で周囲を警戒しておく。おそらく朝霜を取り返すため来たのだろう。


B提督 「私からしたら君はまだ子供のようなものだがな」


煽って思考を短絡にさせるのが目的か


B提督 「失礼、では本題といこう」


加藤 「はい」


B提督 「君、うちの部下を拾ったよね」


艤装にGPSでもつけていたのだろうのだろう。


加藤 「あなたの艦娘かは知りませんが一応いますよ」


マツダが侵入した。黒を彼の体から発生させる。証拠を見つけるまでしばらく時間がかかるだろうから何としても稼がねば。


B提督 「朝霜かね?」


加藤 「はい。そうです」


B提督 「そうかい、なら彼女を渡してくれないか?」


加藤 「しかし、彼女、傷だらけでしたが本当にあなたの艦娘ですか」


B提督 「ああ、出撃時にはぐれてしまって遭難している間に怪我をしたんだろう」


加藤 「入渠しても治らなかったのですが?」


速く、見つけてくれ


B提督 「そうか、長門、これを」


長門 「ああ」


ジュラルミンから札束を出してきた。


B提督 「これで手を打ってくれないか」


相手が馬鹿じゃなくてよかった。ここでキレたりしてたら面倒だった。


B提督 「作戦の報酬だと言えば、君の家族も喜ぶぞ。」


安心しろ喜ぶ家族はもう骨も残っていない


加藤 「これで私は何をすれば?」


B提督 「さすが若者話が早い」


B提督 「君が朝霜について知ったものを忘れてくれればいい」


加藤 「あなたの部屋の本棚をどかし降りた階段の先にあるものも?」


ナイス!マツダよく見つけた。


B提督 「な!なぜそれを」


加藤 「あなたをとりあえず、憲兵に送りますね」


B提督 「おい!長門こいつを消せ!」


長門 「了解した」


長門はこいつが何しているか知っているのか


長門 「何を考えている」


加藤 「おわ!」


結構速いな


長門 「まだまだ!」


めんどくせぇ、すきはあるがこのパワーがな・・・


加藤 「ここ!」


長門 「くっ」


スピードはあるが動きは単純だ


加藤 「何回か見れば予想がつきますね」


長門 「こざかしい」


加藤 「さっさと終わられますか」


顎を直撃させる。顎が揺れると脳を揺れる。


長門 「くはっ」ドサッ


加藤 「さて、どうします?」


B提督 「この・・・死ね!」


加藤 「わざわざ銃口を向けて発砲する馬鹿がどこにいるんですか?」


足で拳銃を蹴り飛ばす。彼の腕は折れるべきでない方向に折れている。


加藤 「いま、怒っているの分かりますよね」ガチャ


まずい、誰か来る!


どん!


なに!戦艦が3隻!どこにいた


B提督 「おい!助けてくれ」


陸奥 「あらあら」


伊勢 「日向行くよ」


日向 「そうなるな」


全員艤装をつけている


B提督 「さんざん調子乗った罰だ」


加藤 「一ついいですか?」


加藤 「あなた方はこいつが何しているかご存じで?」


陸奥 「ええ、使えない駆逐艦にお仕置きしているんでしょう」


伊勢 「そうね」


日向 「同じく」


刀を抜く


加藤 「艤装をつけているなら問題ないですよね」


陸奥 「一瞬で消し炭になるのにね」


霞たちの所には誰も来ていない


陸奥 「撃てー」


執務室が吹き飛ぶ。よかったここに大切なもの置いていなくて


陸奥 「もう終わりかしら」


ボトッ、腕が落ちる。肩からは鮮血が噴出している


加藤 「撃つ体制から発射が遅いですね。安心して下さい。入渠すればきれいになりますから」


伊勢 「陸奥!」


日向 「おのれ」


瞬時に間合いを詰める、胴を思い切り割く。花火のように血が噴き出し、バランスが取れず日向の上半身が落ちていく。


B提督 「くっ」


加藤 「どうします?もうあなた帰る鎮守府がありませんけど?」


マツダが処理を終わらせた。誰も殺さず平定させた。


伊勢 「よくも日向を死ねぇ」


一直線に飛んできた。怒りに身を任せている。刀を抜くまでもない。腹に拳を一発見舞わせた。


窓側が吹き飛び血やら腕やらが落ちている。あの時に比べれば大したことない。気絶した伊勢。何もできず転がっている日向。右肩を抑えている陸奥。


B提督 「・・・」


加藤 「さあ、さっさと捕まれ」


B提督 「・・・」ガシャン


加藤 「とりあえず、バケツ持ってきますので」


倉庫からバケツを持ってきて。ぶちまけた。


加藤 「弁償してもらいますよ。あと、俺があなた方斬ったのは内緒で。もし、話したらそれ相応のことをしますよ」


全員を縛り。憲兵に連れて行ったもらった。伊勢と長門を運ぶのは大変そうだった。


霞  「大きい音がしたんだけど・・なにこれ!」


霞に説明した。


霞  「よく無事だったね」


加藤 「まさかあの訓練が役に立つとわ」


加藤 「この金で直してもらうか」


霞  「何これ?」


加藤 「あいつが賄賂で持ってきた。」


よく見たら、部屋の半分は吹き飛んでいた。ここに大事なもの置いていたら殺していたかもしれない。


霞  「朝霜が動いたの!」


加藤 「本当!」


医務室へ向かう。やはりまだ眠っている。表情が和らいでいる気がする。


朝霜 「ん・・」


加藤 「喋った?」


霞  「そうね」


朝霜 「あ、」


加藤 「お!起きた!」


朝霜 「あぁぁぁ」


朝霜が暴れ出した。注射も抜けた。パニックに陥っている。体を床にぶつける、立ち上がり走る


加藤 「おらぁ」


朝霜を押し倒す、軽すぎてほとんど力を入れずに倒した。馬乗りになる。体重をかけるとつぶされたしまいそうだった。手足をばたつかせているが拘束は外れない。


加藤 「落ち着け!」


朝霜 「逃げなきゃあたいは逃げなきゃ」


加藤 「俺はお前を傷つけない。暴れるな」


なかなか落ち着かない。このまま暴れると死ぬぞ。


加藤 「大丈夫だ落ち着け」


細い体を抱きしめる。力を入れたら壊れてしまいそうだ。だんだん抵抗してこなくなった。注射跡が出血している。赤い風船が膨らんでいく。


そのまま抱き上げベッドに戻す。


加藤 「昨日作ったやつお願い」


霞  「ええ、分かったわ」


霞が食堂へ向かう。


朝霜 「あんた誰なんだ?」


加藤 「俺は提督だ」


朝霜 「司令・・・司令、ハァハァ」


加藤 「大丈夫」


骨ばかりの背中をさする。俺の配慮が足りなかった。


加藤 「君はB提督の艦娘かい」


朝霜 「ああ」


そのまま話を始めた。今までされてきたこと。大破すると提督に金属バットで殴られ、戦艦に殴られ、食事は週に一回だけ。他の駆逐艦もそうだったらしい。見せしめにアイスピッケルで右目を潰され、くりぬかれたらしい。


霞  「できたわ」


加藤 「さぁ飲みな」


朝霜 「え、飲んでいいのか?」


加藤 「もちろん。君にために作ってくれたんだから。」


確かにマツダの映像にも朝霜のような駆逐艦ばかりいた。


朝霜は細い腕でコップを持ち飲み始めた。


加藤 「俺は昼飯作ってくる。朝霜はいるか」


朝霜 「あたいは・・・」


霞  「本当のこと言っていいのよ」


朝霜 「もう少し食べたい。」


加藤 「そうか、おかゆでいいかな?」


朝霜 「ああ」



加藤 「お待たせ」


俺たちはパスタ、朝霜は梅のおかゆにした。


加藤 「少し熱いかもな」


朝霜 「ありがとうな」


昼食を済ませ医務室に戻る。霞が部屋を整理していた。


加藤 「朝霜、まだ歩けないか」


朝霜 「いや、体力はあるぜ」


加藤 「本当に?」


さすがに心配になる。あの体で歩けるか不安だ


霞  「なぜ?」


加藤 「初日に行きたかった挨拶回りに」


霞  「そうね」


加藤 「無理はするなよ?」



加藤 「朝霜ここ気を付けて」


目は左右あることで距離感をつかめる(それよ利用した電探もある)しかし、固めの彼女には平面にしか見えない、だから階段は危険だ。


もう、修理屋がやって来た。海軍には他のことを早くしてほしい。


外に出る。ここの風景を見るのは初めてだ。川辺には桜の木がある。いくつか学校も見える。さて、まずはあそこか・・


加藤 「こんにちは」


薬剤師「あら、どうしました」


加藤 「改めてご挨拶に」


やはり薬局だ。彼の協力がなかったら朝霜はどうなっていたか。


薬剤師「よろしくお願いします。こちらが艦娘さん」


加藤 「ええ、こっちが栄養剤のほうです。」


朝霜 「朝霜さ、よろしくな」


薬剤師「よろしくお願いします」


加藤 「君の命の恩人さ」



朝霜 「そうだったか」


薬剤師「あの剣幕で入って来た時は驚いたな。」


加藤 「本当にありがとうございました」



加藤 「ほい、朝霜」


朝霜 「なんだ?」


加藤 「あとは俺が運ぶ」


朝霜 「いや・・」


霞  「あんた、自分の体考えなさい」


朝霜は俺の背中に乗って来た。やはり軽い。本当に背負っているのか不安になってくる


加藤 「では、失礼します」


薬剤師「はい、これからもよろしくお願いします」



その後、漁港や、商店街とあいさつに回った。日は海に差し掛かっている。


加藤 「おつかれさま」


霞  「おつかれ」


無事鎮守府に着いた。夕食を作った。消化のいいうどんにした。霞に朝霜を風呂に連れて行かせたもらった。その間に朝霜の布団の準備をした。俺の部屋に布団を敷いた。


霞  「ありがとう」


加藤 「おかえり」


霞  「明日はどうする?」


加藤 「とりあえず、朝霜の回復を待つかな。そこから遠征やら、出撃やらかな。取り敢えず、俺らは訓練、朝霜はリハビリかな」


朝霜 「あたいのことは気にするなって」


加藤 「そういうわけにもいかないでしょ、うちの一員なんだし」


霞  「そうよ」


電話が鳴る。執務室を直すついでにここに電話を繋いでもらった。


加藤 「もしもし」


田中 「もしもし俺だ。いやぁ聞いたよすんごいことかましたね」


加藤 「もう聞いていたんですか!」


その後、今日の午前に起きた話をした。


加藤 「あの」


田中 「どうした?」


加藤 「何か艦娘を保護する法律とかって必要ですよね」


田中 「そうだね。ただそんな簡単なことじゃないんだよ」


原因は2つある。1つは上が承認しない。田中さんも何度も提案しているがすべてはね返されている。2つは艦娘の人権保護団体だ。もし完全に艦娘の人権が認められていない法律を出したら彼らの不満が爆発する可能性があるらしい。


加藤 「なるほど」


田中 「ああ、だからしばらくは不可能かな」


加藤 「そうですか・・・」


田中 「まぁ気を落とすな君の落ち度ではない」


加藤 「ありがとうございます」


田中 「では、元気でな」


加藤 「はい、失礼します」


電話を切る


霞  「なんだって?」


加藤 「色々、今日のこととか」


艦娘を守る法律が承認されないなら、自分で艦娘を守るしかない。


加藤 「そろそろ寝るか、お休み」


電気を消す。二人の寝息が聞こえてくる。二人の頭を撫でる。二人とも人の温かさを知らずに育った。霞は動物のように扱われ、朝霜は、日々暴力を受けていた。もう、彼女たちは傷ついてほしくない。辛い思いはしてほしくない。


加藤 「おはよう」


霞  「おはよう」


霞は服を脱ぎ始める。白い首が現れる。


加藤 「ここで着替えるの?」


霞  「別にいいでしょう」


加藤 「まぁねぇ」


外へ出た。久しぶりに一緒に走る。梅の花は散りかかっている。


霞  「朝霜、かわいそうだね」


加藤 「ああ、辛い思いはもうしてほしくないな」


霞が話し出した。ここら辺は山の影響で日の出が少し遅い。今はまだ日の光が入ってこない。


霞  「でも、あなたがいるから大丈夫よね」


加藤 「がんばるさ、君も朝霜を支えてな」


霞  「ええ」


信頼されているが、とても不安である。朝霜は心も体も傷ついた。それを癒せる力があるのか。少し走るペースが落ちている。


霞  「安心して、あなたならできるわ」


加藤 「ありがとう」


出来るか出来ないかは分からない。しかし俺はやるしかないのだ、彼女を救うしかない。それが俺の義務なのだろう。


鎮守府に戻る。朝霜が起きていた。書置きには気が付いたらしい。


朝食を食べ終えた。体育館へ行き霞とボール対決をした。朝霜も見ていたがかなり驚いていた。このスピードで投げ合うのは初見は軽く引くだろうな。


朝霜のリハビリだ。彼女は戦闘中、目は使い物にならないだろう。そこで電探での索敵だ。運動場で電探を使い距離を測る訓練をした。俺がひたすら走り、5秒ごとに自分との距離を霞に伝える。普通の戦闘でも電探で距離を測るが、朝霜はどんな状況でも常に距離を測る必要がある。かなり苦労すると思うが彼女がやりたいと言ったため、実際にやってみている。


昼飯を食べていると。海の中の黒の映像にご飯を吹き出しそうになる。


海底に艦娘の死体があった。場所は海から大して離れていない。ちょっと調査しに行くか。


ちょっと貝類探してくると言い出かける。


黒の場所からここが一番近いと思う、服を脱ぎ海へ入った。黒潮が近くで流れるとはいえやはり海は寒い。しばらく泳ぎ目的の場所へ着く。一気に潜水し、捜索した。と何かゼリー状のものが見えてきた。その後すぐこれが艦娘であると気が付いた。艤装のせいで浮かんでこなかったのだろう。艤装からして巡洋艦だ。艤装を外すと自然と浮かんでいった。


俺も浮上し遺体を持ち上げる。水でふやけて原型をとどめていない。何か隠すものがないので。顔を上着で隠す。これを彼女たちに伝えるべきか。


迷ったが決めた。彼女たちにも話す。悲しいことだが伝えるべきだろう。いずれ知ることになるだろうし。自分が危険な状況にあることも理解してほしい。


遺体は置く場所に悩んだが、とりあえず、医務室に置いてきた。


加藤 「ただいま」


霞  「上着どうしたの」


加藤 「実はな・・・」


朝霜 「え・・・」


霞  「そんな・・・」


彼女たちが驚いたのはおそらく、艦娘は沈んだら深海棲艦になると言われているのを知っているからだろう。一部の艦娘は、艦娘で沈み、深海棲艦になり、再び艦娘になったものがいるからだ。そのことから、これが常識とされてきた。実際、俺もそう学んだ。


加藤 「このことは上にも報告する。」


朝霜 「その死んだ奴って今どこだ?」


加藤 「医務室にいる」


朝霜 「見ておきたいんだが」


霞  「私も」


加藤 「見学とかそんなもんじゃないぞ分かっているよな」


霞  「ええ」


朝霜 「もちろん」


加藤 「見るに堪えない姿だがいいな?」


二人とも頷いた。医務室に案内した。


加藤 「これさ」


遺体は帰って来てからタオルで上を隠した。全員で合掌する。屋根や窓をつつく音がする。


加藤 「水で膨れている。」


霞  「・・・」


朝霜 「・・・」


二人とも言葉を失っている。想像の何倍も衝撃だったのだろう。


霞  「この人はどうするの?」


加藤 「葬儀屋さんと相談して埋葬方法は決めるよ。」


朝霜 「かわいそうだな・・」


彼女は何を考えて死んでいったのだろうか、平和か?身近なものの無事か?それは分からないが、もっと生きたかったという無念が伝わってくる。


加藤 「君たちは絶対に天寿を全うしてもらうからな。この戦いで死なせないぞ」


霞  「当り前よ!」


俺も絶対に彼女たちを死なせない、そう胸に誓う。


近くの葬儀屋さんに電話をした。葬式の会場はとれなかったが火葬場が開いているらしくそこを使わせてくれるらしい。埋葬方法は彼女らとも相談し、骨を砕いて海に散骨することにした。


火葬が終わり採骨をしようと向かう。


葬儀屋「では、みなさん合掌を」


葬儀屋さんにも埋葬方法は伝えてある。


加藤 「なんだこれ?」


腰骨の下かあたりから、金属の板のようなものがある。今は熱を持っているので触れないが金色のような塗装に黒の文字が入っているように見える。


板は後回しにして。粉骨に移る。遺骨を袋にいれハンマーで砕く。思いのほか時間がかかる。粉骨が終わり、粉になった骨をツボに入れる。どうやら、板が冷えているようだ。


まだ熱を持っているが持てる程度である。すすをふき取ると輝きを持っている。何か板に文字が入っている。西暦と艦娘の名前、鎮守府の地名が書いてある。


霞  「これってこの人の情報よね」


加藤 「そうだろうな、とりあえずこれは取っておくか」


遺骨を持ち帰り、海へ向かった。散骨をし、合掌した。


朝霜 「艦娘も死ぬんだな」


風が吹いて骨が高く飛んでいく。目で追いかけている。


加藤 「帰ろうか」


鎮守府に帰り、久しぶりにゲーム機を取り出した。俺の部屋は置けなさそうだったので、執務室に置いた。霞と朝霜が始める。俺は受話器を取り、田中さんへ電話した。艦娘の遺体について話した。近くに流れ着いたことにした。


田中 「なるほど、一応、上に報告しようか」


加藤 「でも、もう燃やしてしまって、今、気が付いたんです。申し訳ないです。」


田中 「そうだな気にするな、しかしなぜ艦娘って分かったんだ」


その後、板について話した


田中 「なるほど、それではちょっと証拠にしては薄いが報告したほうがいいな」


加藤 「分かりました。」


大本営に向け手紙を書いた。艦娘であろう死体を見つけたこと、その遺体には金属の板があり、艦娘の名前などが書いてあったことを伝え、近くのポストに入れた。


執務室に戻った、二人はまだやっていた。やはり霞のほうが上手だ。適宜、朝霜にアドバイスをしつつしばらく続けていた。何度か交代して、気が付いた夜になっていた。夕食を作り。風呂に入った。


その後は、新聞や携帯でニュースを確認。国のお偉いさんのくだらないニュースや、芸能人の結婚とかだった。どうでもいいことばかりだった。携帯をいじっていたら広告が出てきた。


「あなたの勇気で救われる子がいる」


画像をタップすると人権保護団体のサイトに飛んだ。艦娘の顔写真が載っていた。下の文章は彼女らがいかにかわいそうかを伝える文章がだらだらと書いてあった。


主張はまともだが内容がずれている気がする。彼女らが軍に無理やり働かされているということだ。まぁ半強制的だが、一応、辞められる。彼女らに自分たちが救われていることを理解しているのか?そう思わせる文章だった。


そのページを去り、携帯の電源を落とす。


部屋に向かうと彼女たちがいた。少し顔が赤い、風呂上りかな


そして、床に就いた。あいつら一体いつになったらここから出るんだ?俺も眠る。


・・なにか聞こえる。寝てから2時間ぐらいか?


朝霜 「はぁ・・うっ」


朝霜?うなされている?


加藤 「大丈夫か」


肩を持つ、何度も軽く叩く、苦しんでいる。汗の量が尋常ではない


朝霜 「ん・・司令・」


起きてくれた


加藤 「大丈夫」


朝霜 「よかった、司令」


こっちに向かって来た。脇腹に腕が絡まる。


朝霜 「よかった、司令、こっちの司令」


前の鎮守府の夢でも見ていたのかな。


加藤 「ちょっと外に出るか」


朝霜を持ち上げ外に出る。春の空気が肌に当たる。桜の花が咲いてきた。


朝霜 「前の司令や長門、伊勢に殴られている夢を見たんだ」


砂浜に腰を下ろす。やはり、その夢か。


朝霜 「で、右目を刺されてもう片方もやられそうになった時、司令が助けてくれたんだ」


腕の締め付けが強くなった。頭を撫でる。


朝霜 「ありがとうな司令、助けてくれ」


加藤 「気にするなって」


加藤 「あいつらも捕まったな」


朝霜は俺に密着してきた。怖かったのだろう。


朝霜 「このままでいいか?」


加藤 「ああ」


朝霜が体重を完全に俺にゆだねた。初めて持った時よりも重くなったがまだまだ軽い、霞によると、痣も消えていないみたい。


加藤 「痣、早く消えるといいな」


朝霜 「司令は優しいんだな」


そして彼女の寝息が聞こえた。部屋に戻り、布団に入れる。俺ももう少し寝よう・・・



1月が過ぎた。桜も葉になっていた。朝霜は痣も消え、すっかり健康体になった。最近、少しづつ遠征や、出撃を始めた。資源も増えてきた。そろそろ、あれから2年か・・・ちょくちょくネットでもそれについてのニュースを見る。


今では朝、三人で走っている。すっかり寒さは消え去り、温かい。宿毛の人たちとも馴染めてきた。たまに魚やら野菜やらを分けてくれる。本当にありがたい。


霞  「おはよう」


朝食を済ませた。今日は遠征を頼もう。


二人は遠征に行った。俺は掃除をする。雑巾で簡単に拭くぐらいだが。さて、今後の艦隊をどうするか、工廠で増やしたいが、まだ資源が安定してないうちは燃費の悪い大型艦を着任させるのは悪手だろう。戦艦は朝霜のことを考えると着任は避けたい・・となるとやはり、水雷戦隊か・・・携帯に電話だ


加藤 「もしもし」


田中 「おう」


田中さんは様子が気になったらしい。朝霜のリハビリが終わり、遠征、出撃を始めたと伝えたと伝えた。


田中 「あれからもうすぐ2年だね」


加藤 「そうですね・・・」


田中 「あそこも復興してきた、見に行かないか?」


加藤 「見に行っても思い出なんてもう残っていないんで」


田中 「そうかい、では、元気でな」


加藤 「田中さんも!」


電話を切った。あれ以来あそこには足を踏み入れていない、復興のニュースも見るが、あの風景はもうない。場所こそあそこでも、もう別の場所だ。


執務室に向かい書類を片付ける、遠征の報告を書いている。結局、遺体の件は潰された。おそらく、戦線の維持が優先なのだろう。あれ以来深海棲艦を上陸させたことはないらしい。最初からそうしてほしかったものだ。


黒の監視はだんだんと増え提督数の半数を超えた。


そんなことを考えていると二人が帰って来た。


霞  「帰って来たわ」


朝霜 「ただいま」


加藤 「お帰り」


報告を受け、昼食を食べた。電気屋さんにさすがにテレビは必要だろって言われ破格の値段で売ってくれた。テレビをつけると、公共放送のニュース番組をやっていた。あのことについての


霞  「こんなことがあったのね」


加藤 「ああ、そこから艦娘の存在が明らかにされた」


朝霜 「へぇ」


霞  「私があそこから出られたけどいいことではないわね・・・」


加藤 「君が落ち込むことではないだろう?」


ニュースでは、親戚があそこにいた人のインタビューが流れていた。俺の存在は明らかにされていないのは身の安全のためだ。もしあの時メディアの耳に入っていたらとんでもないことになっていただろう。


今年も国主催の追悼式があるらしい。国の原因で発生したことをあくまで被害者面で腹が立つ。


昼食を食べ終わると、食材がないことに気が付く。


加藤 「買い出し行くぞ」


霞  「分かったわ」


朝霜 「ああ」


出かける準備をして、出発した。途中、何度か年寄りに挨拶された。


無事に食材を買い、鎮守府に戻ろうとしたら、小学生らしきガキがやって来た


小学1 「こんにちは」


加藤 「こんにちは」


小学2 「これって艦娘?」


霞  「そうよ」


小学3 「うお!喋った!」


加藤 「喋ったって・・・」


小学1 「艦娘ってテレビでしか見たときなかったからな、本当にいるのか」


小学3 「変な奴倒しているんだろ?」


朝霜 「ああ」


小学2 「ありがとな、じゃぁな」


加藤 「台風か」


霞  「そんな感じよね」


朝霜 「まぁ悪いやつではなさそうだな」


鎮守府に帰り、冷蔵庫に食材をしまい、午後はのんびりと過ごしていた。途中でお菓子を食べたりした。


と電話が鳴る


加藤 「もしもし」


田中 「もしもし俺だ」


加藤 「はい、どうしました」


田中 「こんど追悼式があるだろう」


加藤 「ちょっと待っててください」


二人には聞かれたくなかったので少し出ててもらう


加藤 「お待たせしました」


田中 「部下かい?」


加藤 「はい」


田中 「で、本題だ、君、追悼式に出てくれないか?」


加藤 「は!?」


田中 「どうやら国が君が生存者と知ってしまったらしい」


加藤 「・・・」


田中 「それで、君を助けてた俺に連絡が来た。申し訳なかったが、あの状況だとごまかせないからな」


加藤 「なるほど」


いやな汗が出た。国がどうやって知ったかはさておき、あそこに行ったら、あいつらの不手際で発生したことを許したことになりそうだった。


田中 「君の気持ちもわかるが、どうか来てほしい」


加藤 「俺は行く気がありません」


田中 「そうか、気が変わったらいつでも待っている」


どんな理由があろうと、あいつらは許さないあいつらがまともに動いていたら俺は大切な人や物を失うことはなかったし、彼女らも不当な扱いを受けることはなかったのだろう。


加藤 「お待たせ、終わったよ」


二人を執務室に戻した。体が重い。


そのまま夕食を食べ、風呂に入った。今日は早めに寝ることにした。


?? 「・・ちゃん」


加藤 「??」