2021-03-28 13:14:58 更新

概要

ただの高校生だった加藤修司と艦娘たちの物語。


前書き

私の脳内でのイメージや願望が艦娘の性格に反映されています。ご理解とご注意を。

コメントして頂けると嬉しいです


昼下がり、数学教師が教室に入ってきた。


学級委員長の号令に合わせて私のクラスメイトは起立しお辞儀をしてそして座った。

私はこのまるで繰り返しのような世界が嫌いだった。この退屈な世界をせめて楽しもうと、私はいつも観察をしていた。


数学教師のスーツの袖のほころび、斜め前の女子の髪留め、秒針が止まった時計・・・これらを見つけたときは宝を誰よりも先に見つけられたと言う優越感で満たされた。なにかを観察しているときが私の生きがいである。


私は加藤修司。高校2年。県立高校に通っている。県内でも1,2位を争う学校だ。1クラスに4,5人は超難関校に進学している。私の成績は上位15%ぐらいだろうか。


私はこの学校が嫌いだ。クラスメイトは、みんな大学入試の勉強で昼夜問わずに勉強している。授業は、ただ教師の教科書の声を聴いているだけ。会話は、お互い業務連絡ぐらいだ。


くだらない話をして笑いあう友達もいない。難関大学に入り名声をつかむ気もしない。私にとってここは苦しみを与える場所ほかならなかった。


そんな生き地獄のようで私が見出したのが観察することだった。今では、目線を動かさなくても、目に映るすべてのものの変化を見つけられるようになった。


チャイムが鳴る。私は苦しみから解放された。解放されたとは言っても半日後には再び戻ってくるのだが。

放課後こそがわたしのもう一つの生きがいである。教室棟から出て、学校の隅、ほとんどの生徒はこの場所に来たこともないだろう。


松田 「よう!遅かったな」


加藤 「君が早すぎるんだよ」


私に話しかけてきた彼・・・私の唯一の友人といっても過言ではない。彼は。松田、私の同輩である。松田が居たこの建物は武道場。いつ建てられたかも分からない。そもそも、うちの学校は体育がないため、運動施設はほとんどない、わざわざ改装するのは金の無駄なのだろう。部活動も一度も所属せず卒業してしまう生徒が大半だ。ここは剣道部の活動場所。活動とは言ったものの私と彼が竹刀を交合わせるだけだ。他の部員はいない、顧問も一応いるがほとんど会ったことはない。


松田 「さっさと着替えろよ」


加藤 「ああ、分かっている」


カビ臭さが広がる。私はハウスダストアレルギーだったため。カビは私の天敵だ。何度か掃除を試みたが、校舎の日陰や長年使われていなかったためか何度掃除してもカビは復活した。私の完敗である。はじめは、くしゃみが止まらなかったがいまとなってはほとんど気にならない。疑似舌下治療だと一人で思って一人で笑った。


加藤 「なぁ、また汚くなってきたね、今度掃除しようか」


松田 「そうだな」


大抵の部室は賞状とかが貼ってあるのだろうがここにはない。二人とも弱くはなかったが。入賞するほどの実力はない。しかし私は彼と一緒に稽古ができることだけで満足している。


松田 「始めるか」


準備運動、素振り、足さばきいつもどおりのメニューだが何故か飽きない。スポーツは勉強とは違う。問題点を解決したからと言ってそれで終わりではない。次の問題が発生する。それを解決していく。この過程が私はとても好きだった。時には彼と相談しあい解決した。


基本打ち、稽古と進んでいった。そして西の空が赤から青へグラデーションになっていたころに練習は終わった。


加藤 「おつかれ」


私は彼にそう言った。


松田 「おつかれ」


彼も私にそう言った。このやり取りが私たちの練習後のルーティンである。


松田 「じゃぁ始めるか」


彼の合図とともに私たちは床に安座した。水がしみて凹凸ができている。黙想し全ての力を丹田に集めた。鼻から雨の匂いを感じる。梅雨入りが発表されたのも思い出す。腹に息を溜めた。口から細く長く息を吐いた。練習のあとの座禅は私が提案した。座禅をしていると。何もかもが気にならなかった。カビ臭さに包まれた空気。無言の教室・・時間も忘れられた。


空が闇に染まったころ私たちは帰路についた。


松田 「また出たんだって」


加藤 「何がだい?」


彼は私にスマホを突き出してきた。ネットの記事だ。「深海棲艦、再び漁船を襲う。」という記事だった


加藤 「深海棲艦か」


松田 「そうだよ。しばらくでないと思ってたらなまたじいちゃんらビビっちまって海に出られねえな」


彼は海の近くに住んでいるらしく、近くには漁港もあるらしい。数年前、謎の生命体が発見された。それらは深海棲艦と呼ばれた。たまに海に出た漁船が襲われるらしいが年に2,3回しか被害の報告はない。自衛隊は深海棲艦を警戒しつつも大きな脅威ではないと判断しているらしい。


加藤 「大変そうだね」


私は漁をしたことがなかったが苦労はおおよそ分かる。海を生業にしているのだ。その海に得体のしれない生物が自分の命を奪うかもしれない。おそらく私が漁師だったら彼の知り合いと同じ選択をしていただろ

う。わざわざ危険を冒してまで金は稼がない


パラッパラッ


水滴が降ってきた


松田 「お?雨だ早く帰ろうぜ」


加藤 「そうだね」


私たちは早足に駅へむかった


加藤 「激しくなる前でよかったね」


松田 「そうだな、じゃぁまた明日な」


加藤 「うんまた明日」


彼とは変える方向が反対のため私たちはいつもここで別れる。暗闇からうっすらと彼が私に手を振っている

のが分かった。私も彼に手を振り返した。


私はぼんやりと電車の窓から外を眺めていた。窓には私の顔とただひたすらの黒が広がっていた。


加藤 「進学先か・・・」


彼は学校の廊下で同級生が話していたのを思い出す。彼らは進学先を話していた。途中で私は見るのをやめ

てしまった。私は、夢はない。いや、忘れてしまったのかもしれないが今はない。おそらく中学生の時もな

かったのだろう。成績は良かったので夢が見つかったときどこへでも行けるようにするためこの学校に決め

たのだろう。つくずくここに行くと決めてしまった自分が情けない。できることならこの闇に逃げたいと思

った。しかし、嘆いていても仕方がない。戻ってまた決めなおすことはできないのだからと自分に言い聞か

せた。


電車が止まった私の家の最寄り駅だ。電車の扉は開いた。私以外だれも降りない。定期を改札機にかざし私

は家へ向かった。


私が歩いていたら白のなにかがいきなり現れた。ここだけ昼になったのかと思った。冷静にりもう一度見る

と我が家だった。闇夜にも映える白壁。白とは言ったが風雨で今はところどころ黄ばんでいる。


私はドアを開けた


加藤 「ただいま」


母  「おかえり、ご飯もうすぐよ」


加藤 「ありがとう」


料理をしているのは母だ。肉の匂いがした。この匂いは生姜焼きだろう。母は私を生む直前に会社を辞め以後十数年間、専業主婦をしている。40を超えて少ししわが増えてきた。私は母を尊敬している。私たちのご飯を作り、掃除をし・・と私たちのために色々としてくれている。しかし、成績については厳しかった。以前70点を取ってきたときはかなり怒り2,3時間は説教された。それ以来私は母に叱られないためだけに勉強をしてきた。何度も勉強の動機が彼女でいいのか思ったが、何かの勢いで剣道をやめろと言われたら困る。それは私にとっては死ねと言われたと同じようなものだから。そんなことを考えていたら、夕食が出来たらしい。私は、匂いのもとへ向かった。案の定、夕食は生姜焼きだった。


妹  「わぁ生姜焼きだ」


そう喜んでいたのは私の妹だ。彼女は中学2年、背は中学生女子にしては大きい。彼女はバレー部でスタメン

を任されている。成績は私とほぼ同じぐらいである。


妹  「お兄ちゃん帰って来たのね、お帰り」


加藤 「私は生姜焼き後ですか・・・まぁただいま」


そう冗談を言いつつ食べ始めた。ずっと食べてきた母の生姜焼きいつもと変わらない。


妹  「今日ね・・・」


妹が学校の話を始めた。誰が誰になんて言ってたとか部活の後輩がどうだったとか話していた。私は妹の話

を聞きつつ黙々と肉を口へ運んだ


母  「へぇそうだったんだ・・ねぇ修司大学決めた?」


少し遅かったか。この状態になると母は面倒くさい


母  「修司の成績だと・・」


多少相槌を打っていたがほとんど聞いていない。そして話が途切れるタイミングで


加藤 「今はまだ決めかねている。ある程度は絞っている」


と席を立ち早足で洗い場へ食器を片付けた、正直大学はどこでもいい興味がない。さっさと食器を洗い付近で拭いて洗面所へ向かった。


青の歯ブラシを手に取り歯を磨いた。歯が磨き終わったころ妹とすれ違った。


私は部屋に戻り紙とシャーペン、教科書を机に広げた。私は前までノートで勉強していたが計算式を書く時

など線が邪魔だったので今では真っ白な紙にした。


ふと時計を見たら11時を指していた。私は寝巻を準備して風呂へ向かった。服を脱ぎ浴室へ向かった。レバーを引くと温水が出てくる。私は頭から温水をかぶった。母の気持ちも分からなくはない。進学先を心配して聞いているのだろう。ただ、私にとってはおせっかいである。自分の将来は自分で決める。そのぐらいはできる。


と考え事をしていたら手の皮がふやけていた。私は頭を洗い、体を洗った。この時間だと風呂の温度は下がっている。入ったら逆に体温を下げかねないので私はいつも入らない。


部屋に戻り少し勉強をした。日付が変わってしばらくして私は床に就いた。


布団に入りつつ考えていた。私は将来どうするか。おそらく一部を除けばほとんどの職業につけるだろうと。公務員?会社員?研究者?結局考えがまとまらないまま意識が手放された。


ピピピピ


目覚まし時計で私の目が覚めた。今日もまた学校に行くと思うと憂鬱だったが、放課後、あそこで剣道が出来ると思うと頑張ろうとおもう。


父  「おはよう」


リビングには父がいた。彼は大手工業会社の工場の管理職に就いている。給料は人より少し多め。彼のお陰で私たちは衣食住不便なく生活できている。


加藤 「おはよう」


私は父に挨拶を返し、椅子に座り朝食を食べた。父は比較的無口だ。気にしてはいないが最近はあんまり会話をしていない。私は朝食を食べ終え、歯を磨いた。着慣れた制服に袖を通し、教科書を鞄にしまった。いつもの靴を履き家を出た。


加藤 「行ってきます」


いつも歩く道、最近蛙が出てきた、私の足音で目が覚めたのだろうか、そうだったら申し訳ない。本格的な梅雨が来るのかと感じたが、今は全くの雲がない晴天だ。アスファルトの道が濡れている。おそらく私が寝ている間に降ったのだろうと思う。葉の先に水滴溜まりしだれている。道の草を眺めていたら駅に着いた。天気は晴れなのにジメジメしていて気持ち悪い。いつもの3号車の右後ろのドアから入り、そこのドアにもたれかかった。そとは昨日の雨が蒸発していて霧が出来ていた。畑で野菜の世話をする老人、ヘルメットをつけて自転車で水たまりに入っていた中学生。いつも見ている風景だが、なぜか霧がかかると美しく見えた。


電車が駅に着いた。私は降りて右から二つ目の改札機で駅からでる。駅前は通勤する会社員、他校の生徒、まだ、通学に慣れていない1年生。たくさんの人が散り散りに駅から出てきた。私はその人たちを見ていた。誰も彼も無表情に見えた。なにも考えずただ淡々と目的地へ向かうロボットにみえた。どうやらこの世界に退屈しているのは私だけでないと思うと、なぜか嬉しかった。相変わらず日差しが厳しい、学校が駅の東側にあるから、毎回眩しい思いをしながら通学している。


教室に入った。すでに10人ぐらいがいた。みな参考書を広げ勉強をしていた。私は邪魔にならないようにこっそりと席へ向かった。私は窓の外を見ていた。コーヒーをドリップしたかのように生徒が校門から入っている。そして、玄関へと向かっていた。誰にも言われていないが律儀に列を作り、並んでいる様子は面白い。


チャイムが鳴って授業がはじまった。


私は小さい溜息を付きながら正面をむいた。


1,2時間目は化学、3,4時間目は数学と時間が過ぎていった。ただ教科書を読みに来ただけの教師に必要なのかと毎回疑問に思っている。私はいつもおおり観察をしている。


昼休みには、母が作った弁当を教室で食べる。昼休みといえど、教室は静かだ。ほとんどが勉強をしている。毎日、弁当を作ってくれる母には感謝しかない。


5時間目は地理、6時間目は物理と私は早く終われと願い座っていた。そして終了のチャイムが鳴る。私は荷物をまとめ教室を出た。急いで校舎から出て、武道場へ向かおうとした。


上空からキーンと書かい音がして私は驚いた。空を見ると海のほうから鳥が飛んできた、が直ぐ後そうではないと気が付いた。楕円状の飛行機がこっちに向かって来ている。そして速いものの数秒でここまで来た。飛行機は到着した瞬間何かを落とした。それは教室に入りそのあと爆発した。あれは爆弾だ。私は恐怖で動くことが出来なかった。教室からないかが落ちてきた。黒焦げだったが私は正体が分かった。腕だ、腕が降ってきた。私は思考が停止したその後も脚、胴体、そして頭が落ちてきた。もう誰が誰だか分からなかった。人間はこんなに簡単に死ぬのかと思った。ようやく、私の思考が復活した。彼は大丈夫か?武道場で私を待っているだろう彼は。そんなことを考えているよりも前に体が動いていた。彼は私のたった一人の友人だ死んではいないそう思ったが、それはただの私の望みだった。


松田 「・・・」


武道場は崩れその前には胴を噛み千切られた彼がいた。もう息はしてい。昨日まで元気に生きていた彼が死んだ。間に合わなかった・・・私はただ呆然としていた。すると崩れた武道場のを踏みつけ何かが私の所へ向かってくる。私の背丈の2倍近くある。始めた見たがなんとなく何者か分かった。あれは深海棲艦だ、あれが深海棲艦だ。あの牙で彼の胴を引きちぎったんだ。そいつがこっちに向かって来る。今度はそぐ体が動く。逃げねば、私は死ぬ。ひたすらに走った。何かを踏んだ感触があったがそのまま走った。校舎は燃えている。どこもかしこにも死体が転がっている。


私は、市内の国道に出た。もう、さっきの化け物は襲ってこないだろう。と思ったが私の目に映ったのは地獄だった。そして生臭い血の匂いが鼻に突き刺さった。周りには横転した車、頭をちぎられた死体、崩れた建物そして、深海棲艦。さっきのやつよりも大きいものもいる。人のような形も。そして、逃げ惑う人々に発砲する。着弾地点にはへこみができ、空中にはバラバラになった人が飛んでいる。真っ青な空は飛行機で真っ黒だ爆弾を投下したり機銃掃射で人々を撃っている。


私は子供のころに蟻をバラバラにしたことを思い出した。頭を取り、腹をちぎり、足を引っ張って。そして今は人間がそのようになっている。手足は引き裂かれ首は落とされている。彼らにとって人間は蟻なのかと思った。


深海棲艦が近づいてくる。私は走った。脚を踏み、腕を踏み頭を蹴った。とにかく逃げた。なんとなくだが自分が死ぬのは分かった。この道に落ちている死体のようになるのは分かったが。だが、まだ死にたくない1分でも1秒でも長く生きたかっい。しかし、こちらに機銃の音が近づいていた。私は死ぬんだ。死体も残らずに死ぬのか。彼や母、父、妹の顔が浮かび上がるこれが走馬灯か・・・。機銃の弾が私の足を撃った。私は転んだ死体の山に転ぶ。すぐに粉々になると思ったが、何故か弾が来ない。背中に一発だけだ。何故か助かった。しかし、傷が痛い、熱い。足を撃った弾は貫通したが、背中の弾は体に残っているようだ。口が血の味に染まる。なんとか立たねば。しかし右脚に力が入らない。


ドーン


どこかが爆発したようだ。


ズズズズ


とても近いな、こっち側だ・・まずいここが倒れれば私はこの家の下敷きになる。しかも燃えているじゃないか。少しでも離れなけっれば


ズズズズ


間に合わないな、一瞬だけ希望を見させて結局死ぬのか・・・道の端にいたのが運の尽きか。


ガッシャン


加藤 「あ゛ぁぁぁ」


熱い、火が背中を焼いている。重い痛い、即死せずに苦しませて。神がいるなら私は思えたちを恨むぞ。


加藤 「・・・」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「緊急放送!緊急放送!」


「ただいま、X県沿岸部に深海棲艦が上陸、破壊行為を行っています」


メディアはこのことを全国に放送、自衛隊は、防衛のため、X県に出動、しかし全く深海棲艦に敵わず部隊は全壊、翌日には深海棲艦は海へ消えていった。その後、警察機動部隊、消防、救急、自衛隊はX県に派遣された

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーなんだ?体が動かない?そうだ私は死んだのかもがき苦しみ死んだのか。本当にあの世ってあったのか。ん?あれは彼じゃないか!


加藤 「おーい!」


松田 「・・・」


彼は全く振り向いてくれない


加藤 「おーい!わたしだよ加藤だ!松田ーーー」


松田 「・・・」


ようやく体が動いた。動かすのかなり難しいな


加藤 「なんで無視するんだい」


なかなか速く歩けないな彼が遠くなっていく。あれあそこにいるのは、私の家族じゃないかなんであそこにいるんだ?


加藤 「おーい父さん母さん妹待ってくれ」


家族 「・・・」


なぜ私のことを無視するんだ?ん?なにか冷たいものが私の肩を引っ張る。


これは深海棲艦じゃないか力が強いななぜ私を彼らの所へ行かせてくれないんだ


松田 「なぁ加藤」


加藤 「なんだい?」


やっと喋ってくれた!っつあいつのせいで全然まえに進めない


松田 「君はまだ生きている。」


加藤 「私は死んだんだ」


頼む遠くへ行かないでくれ


松田 「俺が楽しめなかった分お前が人生楽しめよ」ニコッ


何を言っているんだ?


母  「元気でね」


母も


父  「元気でな」


父も


妹  「バイバイお兄ちゃん」


妹も


なんで私を置いていくんだ?ああ、もう見えなくなる。こっちに引っ張られる。闇へ落ちていく


加藤 「やめろ」



「・・・」


ここはどこだ?さっきのは夢か?私は生きているのか。ただここからでなければ。ただ私は動けない、背中は火傷で痛い・・・ここで死ぬのもいいな、彼もいないのだ夢に出てきたってことは家族も死んだんだ、私が一人生きて意味があるのか


「「俺が楽しめなかった分お前が人生楽しめよ」」


そうだ私は彼に託されたんだ。生きねば、死んでたまるか。ふぅまずは落ち着くか・・・スー・・・ハーーー・・・よしでここは私が倒れた国道、今、家の下敷き、背中はおそらく火傷を負っている。この重さはどうにかなるはずがない。助けを求めねばな、物音は・・・少し離れているな。近づいてくるか・・・よしだんだん大きくなっている。そろそろか すぅ


加藤 「おーーい助けてくれ」


いま私が出せる限界だどうか聞こえてくれ


自衛隊「おいここらへんから声がしたぞ」


よし!成功だ!あとはここで助けを待つぞ


加藤 「ここだ下敷きになっている」


自衛隊「分かった待ってろよ」


もう少しで助かるぞ


自衛隊「よし!見えた何かに挟まれたりは」


日の光が入ってきた


加藤 「大丈夫だ」


簡単に体を動かしたが挟まれたりはしていないようだ


自衛隊「じゃぁ行くぞ」


私は男に捕まり外に出た。男は自衛隊らしい、ここでがれきの撤去をしていたらしい。今回は、X県のほぼ全域が破壊され死者は100万人を超えたらしい、その後私は男に名前、生年月日、住所、家族の名前と勤務先などを聞かれた。男は田中というらしい。田中さんは私を仮設キャンプに連れていき応急処置をしてくれた。その後、私はヘリで病院に運ばれた。


<病院>


加藤 「なるほど・・そんなことがあったのですか」


田中 「そうだ本当に君が生きていたのは奇跡だ」


加藤 「治療費も代わりに払っていただきありがとうございます。」ペコッ


田中 「気にすんなって困ったときはお互いさまって言うだろう」


加藤 「ありがとうございます」


田中 「どうだい背中は」


加藤 「たまに疼きますがいまは全く痛くないです」


田中 「そうかい」


加藤 「田中さんは自衛隊のどこの所属ですか」


田中 「いや、自衛隊はなくなった」


加藤 「え?」


田中 「なくなったとはいっても名前だけだな今は軍になった」


加藤 「それってどういうことですか?」


田中 「いままで自衛隊は首相が長だったろ?」


加藤 「はい」


田中 「今後深海棲艦の活動が激しくなったからすぐに対応できるようにって幕僚長がトップになった」


加藤 「なるほど・・・」


田中 「あんたこれからどうするんだい?」


加藤 「そうですね・・とりあえずバイトしてある程度の金を貯めて、奨学金でとりあえず高卒は取ろうかと」


田中 「そうか、君、軍に入らないか?」


加藤 「でもそういうのって大学からじゃないんですか?」


田中 「まぁそうだ、来年度から高校もできる」


加藤 「高校ですか」


田中 「ああ、たぶん編入もできるからとりあえず1年は勉強してそのあと編入するって感じはどうだ」


加藤 「しかし、それって意味があるんですか?」


田中 「意味?」


加藤 「お話を聞く感じ深海棲艦はまともな攻撃が効かないって」


田中 「そのことか、それは大丈夫だ」


加藤 「なぜ?」


田中 「これ以上は言えねえなただ対抗手段はある」


田中 「むしろ俺から願いだしたいところなんだけどな」


加藤 「??」


田中 「君は一番、深海棲艦の恐ろしさを知っているだろ?」


加藤 「はい」


田中 「君が一番深海棲艦のことを理解していると思うんだだから軍に来てくれないか」


加藤 「そうですか」


田中 「どうだい?」


加藤 「まだ決めかねていますが、興味はあります」


田中 「そうかい!期待しているよ!」


1か月後


加藤 「お世話になりました」


医師 「元気でな」


加藤 「ありがとうございました」


田中 「おーい」


加藤 「田中さん?」


田中 「今日退院て聞いてな」


加藤 「そうですか」


田中 「で決まったか」


加藤 「なにがですか?」


田中 「軍だよ」


加藤 「ああ、決めました」


加藤 「私は入ります。絶対に私みたいな人を出したくないので」


田中 「そうか君ならそういうと思ったよ」


田中 「じゃぁ行こうか」


加藤 「どこへ?」


田中 「いいとこさ」


加藤 「みなさんありがとうございました」ペコッ


「バイバイー」「元気でねー」


田中 「ここに乗って」


加藤 「これって田中さんの車ですか」


田中 「そうだ」


加藤 「失礼します」


田中 「来てくれるんだね」


加藤 「はい」


田中 「じゃぁ話すか」


加藤 「何を?」


田中 「前言っていた深海棲艦への対抗策」


加藤 「はい」


田中 「これを見てくれ」スッ


加藤 「写真?」


田中 「そこの女の子たちが切り札だ」


加藤 「この子達?普通の女の子にしか見えない気がするんですが」


田中 「深海棲艦が現れてすぐに見つかったんだ」


田中 「政府はこの子達の存在を隠していたが、この件で軍には発表した」


加藤 「ほんとうに彼女らが切り札?」


田中 「ああ、彼女たちは太平洋戦争時の艦艇を名乗っていた。で、深海棲艦と戦闘させたらそいつらを倒したらしい」


加藤 「本当ですか?」


田中 「ああ、我々ははこの子達を艦娘って呼ぶことにした」


加藤 「艦娘・・・」


田中 「その子達を全国に配備し日本の防衛にあたる」


加藤 「そうねんですね・・・」


田中 「どうした」


加藤 「この子達があそこにいたらって思ってしまって」


田中 「確かにな我々の行動が遅いせいでこんなことになってしまって」


加藤 「気にしないで下さい、今少し怒っていますが正体が分からないのを味方にしにくいですからね」


田中 「すまんな」


田中 「よし!着いた」


加藤 「ここは?」


田中 「君の家だ」


加藤 「え?」


田中 「ちょっと説明が雑だったね」


田中 「まえ学校が出来るって言っただろ」


加藤 「ええ、」


田中 「それがこれだ」


加藤 「できるの早くないですか」


田中 「軍の力をなめてもらっちゃ困るよ」


加藤 「さっき私の家って言っていましたけど」


田中 「君はここで勉強してもらう」


加藤 「いきなりすぎませんか」


田中 「俺がお願いしたらOKもらったから」


加藤 「本当に何から何までありがとうございます」


田中 「こっちも新しい人材ほしいしwin-winだ」


加藤 「あの私一人だけですか?」


田中 「そうだな、今年度は君だけだね」


加藤 「マジですか」


田中 「まぁ頑張ってくれ。艦隊運営だけじゃなくて普通の勉強もあるから。まぁ君なら問題ないだろう」


加藤 「まぁそうですね。あとここにいる方々は私が何者か知っているんですか?」


田中 「いや知らないな」


加藤 「では、そのことは話さないで下さい」


田中 「分かった」


加藤 「では、私は田中さんの知り合いということで」


田中 「了解」


<学校>


加藤 「失礼します」


教師 「おお来たんだねよろしく」


加藤 「よろしくおねがいします」


田中 「こいつをお願いします」


教師 「君は優秀だって彼から聞いているよ」


加藤 「ありがとうございます」


田中 「私は失礼します」


教師 「そうかいではまた」


加藤 「お世話になりました」


教師 「よろしくね」


加藤 「よろしくおねがいします」


教師 「まずは紹介を」


加藤 「??」


教師 「君は彼に艦娘のこと聞いたかい?」


加藤 「はい」


教師 「なら話が早い。来てくれ」


霞  「霞よ」


加藤 「よろしく」


教師 「こちら艦娘の霞。」


霞  「だれなのこの馬の骨は」


加藤 「馬の骨って・・・」


教師 「彼はここに来た第一号の生徒さ」


霞  「そうなのね」


加藤 「よろしく」


霞  「まぁ期待はしてあげるわ」


加藤 「そりゃどうも」


教師 「他にもいろんな子がいるんだけどここには彼女しかいない」


加藤 「なるほど」


教師 「今日はゆっくりしな少し案内でもしようか?」


加藤 「ありがとうございます」


教師 「ここもできたばかりだからまだ不慣れなんだどね」



教師 「こんなもんかな明日から本格的に授業はじめるね」


加藤 「よろしくお願いします」


教師 「では部屋でゆっくりしていな」


加藤 「はい」


学校の寮のベッド。寮とは言っものの私しかいないのだが。私をあの時助けてくれた自衛隊の田中さんがお願いしてここに入れさせてもらえた。田中さんから艦娘のことを聞いたときは驚きとともに怒りが湧いた。もしもあの時、艦娘を配備していたらと思ってしまう。私は窓を開けた。目の前には闇夜と黒く波打つ大海原が広がっていた。ここからあいつらが来て私の大切なものを奪ったのか。


自然と涙が出てきた。出てきて止まらない。あれがあってから初めて泣いたかもしれない。母も父も妹も彼もいない分かっていたつもりだったがやはり悲しい。私のすべてを壊した深海棲艦が憎い、艦娘の存在を公表せず何もしなかった国が憎い。何もかもが憎い。


?? 「ネェ」


(何か聞こえる。疲れているのか早く休もう。)


?? 「ネェッテバ」


(いや間違えない何かが私に話しかけている。)


?? 「ソンナニ憎イナラ壊シチャオウ」


(頭の中から声が聞こえる。頭が痛い。脳みそをかき混ぜるられている。)


?? 「ネェイッショニ行コウヨ」


(体が勝手に窓のほうえ)


?? 「ミンナ海デ待ッテイルヨ」


(落ちる。この高さから落ちたら死んでしまう。)


?? 「ダイジョウブダヨ」スッ


体の自由が効かない。何しているんだ私の腕をひっかいて。鮮血とともに黒い丸いものが出てきた。虫?ではないなんだ私の体の中から得体の知れないものが


(何?止まった?こいつが私をつるしている?)


?? 「コレデダイジョウブ」


(やめろ!何するんだ!お前は一体何なんだ!)


?? 「エエ、ズットイッショニイタノニ」


(ずっと?)


?? 「ウンキミノカラダニハイッテカラ」


(入る?どういうことだ?手汗が止まらない。海のほうへ向かっている。そっちに行くと帰れない)


?? 「アセッテルネチ。デモガウヨ海二帰ルンダヨ」


(海に帰る?もしかしてお前は深海棲艦か?)


深海 「ウンソウダヨ」


(なんで私を連れて行く)


深海 「ダッテ、ミンナニクイッテイッテタジャン」


深海 「ダッタラフクシュウシヨウヨ」


(ああ、私は憎いって思ったさ、だがな復讐しようとは思わない。)


深海 「ウソダ」


(いや本当だ。私はお前らに何もかもなくされたよ。お前らが憎いさ、でも復讐はしない。何故かって。お前らには自分のした愚かさを知ってほしいんだ。)


深海 「オロカサ?」


(やられたらやり返していいのかこのままこの連鎖が続くぞ?私はこの連鎖を断ち切りたい!そしてお前らに殺される人を出さないためにここに来たんだ)


深海 「ウルサイ」


(俺はは黙らない。何度だっていってやる。俺は絶対に復讐なんかしない!)


深海 「ダマレダマレ」


(もう出て来るな。消えてしまえ。)


深海 「アアアアァァ」


やっと消えた、ってまずい落ちるぞ やばいやばいおいお前さっきまで浮かせていただろ!さっさと動けよ!っち俺はここで死ぬ気はねぇんだよ!


なんとか意思が伝わった。おい!さっきいたところまで帰りたい。


ぶふぶぶぶ


おお!ちゃんと言うこと聞いた。


加藤 「到着っと」


しかしこいつはどうするのか。


加藤 「おい戻れ」


傷口から入っていた。そして、傷はきれいになくなっていた。なんなんだ?あいつが言っていたことからすると俺の体に入ってきたということはあの時か。深い暗い場所引きずり込まれそうだったな。海があんなに見えたのは始めてだな。なんかあれがあったときから不思議なことばっかだな。


パチンッ


さっきまで風にたなびいていたカーテンの動きが止まった波のささやきや何の音も聞こえない。気が付かなかったが、今考えるとこの力で生き残れたのかと思っている。


時間の速さを扱えるようになった。あの時は無意識一瞬で出た。俺の右脚を撃った機銃はそのまま太もも腰、背中、首、そして頭を貫くはずだったが一発目が当たった瞬間俺は時間の動きを遅くした。その後よろけて転んでいる間に2発目が来たが、速度が遅くなっていたので体を貫通しなかったのだろう。その後、俺の頭上に弾が通ったんのだろう。その時は一切気が付かなかったが。病院でこのことに気が付き今は扱えるようになった。欠点はかなり体力が奪われるところ。


パチンッ


カーテンも揺らぎはじめた。海が砂浜をこする音も聞こえる


今俺がすべきことは3つ。1つ目は体力をつけることこの状態を1時間保てるようにする。2つ目はこいつを扱えるようにする。なにができるか分からないが自由に扱えるようにしないとな。最後は、艦隊のことを覚えること。とりあえず寝て明日の朝からランニングかな。4時起きかな。


4時


まだ暗いが夜見た時と全然違う。何故か優しさを感じられる。昨日もらったジャージに着替えた走り出した。久しぶりに体を動かすから準備運動をすませ出発した。まだ少し肌寒いが動いたら温かくなるだろう。ここ最近ずっと運動をしていないせいか全然体が動かない。30分ぐらいでへとへとになってしまった。


砂浜にやってきた。この時間もあってか誰もいない。砂浜に寝てみた。近くでは波の音が聞こえる。海を眺めると房総半島から太陽が出てきた。ギラギラに輝いている。真っ赤に燃え上がり夜を終わらせる。久しぶりに日の出を見た。ここまで日の出が美しいとは思わなかった。太陽のエネルギー圧倒されている。


一旦部屋に戻るため、自分の腕を噛んだ。出てこいと命令すると昨夜の黒いものが出てきた。俺の部屋の窓へ行けと命令したら。部屋へ飛んで行った。なにか頭の中に映像が流れてきた。おそらくあいつの映像だろう。窓の隙間から侵入させ鍵を開けさせた。一つでもかなり使いこなすのが難しい。これも訓練せねばな。周りを見て誰もいないことを確認し、時の流れを変える。もい一つだし俺をつるさせた。かなり動きも安定している。部屋に到着し、窓を開ける。無事に部屋に到着し元の時間に戻す。


顔を洗い、身だしなみを整える。新しい制服に袖を通す。なんとなく前のに似ている気もする。


そして食堂へ向かう


無人の食堂。冷静に考えたら。一人のためにわざわざ給仕を雇うわけないかと。教師はここにいるのか?だったら作るべきだが。すこし教師を探すとするか。黒を置いてここに誰かが来たときはすぐわかるようにした。


教師室もやはり無人、いったいどこにいるんだ?入れ違いは起きていないし。どこにいるんだ?昨日の記憶を探りながら各場所を確認。窓から朝日が差してくる。廊下をさまよっていると人の気配がする。物音的にあそこだ、すこし近づいてみる。周りを見てうろたえる艦娘ー霞がいた。少し話しかけてみるとするか。


加藤 「おはよう」


彼女の肩が縮こまる。俺の声に驚いたのだろうか。改めてみたがかなり華奢な腕と脚である。本当に彼女らがあいつらを倒せるのかと疑問に思う。


加藤 「驚いたか?」


彼女が振り向く。髪は太陽に反射し輝いている。顔は整っており美人だ。


霞  「なによ?」


少し怒っているのか?子供らしい高い声が響いた


加藤 「ちょっと教師を探していてな」


何故かイライラしている。怒らせてしまったか?


霞  「そうなのね、ここにはいない、わまだ寝ているんじゃないの」


そういえばまだ5時だ。起きる時間ではない。


加藤 「教師ってどこで寝ているの?」


寮の説明は受けたが教師が寝る場所は知らない


霞  「はぁそんなのも知らないの?ふざけてんの?」


霞はかなり口が悪い。案内してくれるようだからいいのだが。廊下を歩いていたら急に霞が止まった


加藤 「どうした?」


霞の顔色がよくない、気分が悪いのか?


霞  「ここどこよ」


え?道に迷ったのか?


加藤 「教師の寮ってどこらへんにあるの?自分で行くから、教えてくれない?」


霞は明らかに動揺している。


霞  「体育館と武道場のちかうよ」


なるほど、あそこらへんか。霞はどこへ行こうとしていたんだ?


加藤 「なぁ、君はどこへ行こうとしていたんだい?」


霞が震えている何かあったのか?


霞  「ちょっと散歩よ」


声も震えている。何かあったに違いない


加藤 「本当かい?」


固まった。どうやら図星のようだ


霞  「・・たのよ」


なにかボソボソと言っている


加藤 「??どうした」


霞  「道に迷ったのよ!悪い!」


ああ、なるほどプライドが邪魔して言いにくかったのか


加藤 「どこに行きたいんだ」


涙目の霞に聞く


霞  「部屋よ」


艦娘の部屋はどこだ・・・ああ、寮の隣か


加藤 「こっちだ案内するよ」


さっき来た道を戻る


霞  「ありがとう」


きゅうに丸くなった


加藤 「いや、まぁここは風景変わらないし迷うよな」


霞  「あんたはよく迷わないわね」


観察眼と記憶力には自信があるから道はおおよそ覚えている


加藤 「まあね」


さっきの元気はどこかへ行ってしまった


加藤 「よし、着いたな」


そのまま霞の部屋に着いた


霞  「ありがとう助かったわ」ニコ


笑顔はかわいいな。お礼なんて家族と彼以外に言われたのはいつ以来だろう


加藤 「どうも、もう道に迷うなよ」


霞の部屋を離れ食堂に向かう。結局だれも来なかった。できたばかりもあってかなり綺麗だ。家は油がたまっていたがここはピカピカだ。しばらく、俺が朝ごはんを作るのだろう。まずは米を炊かないとな。ここか、炊飯器もあるしな。


冷蔵庫は・・・大体あるな。シンプルにみそ汁、卵焼き、ほうれん草のバター和えでいいか


あれ昨日の昼夜って俺は教師と話していたってことは・・・ごはん作っていたのは霞か?


久しぶりに料理したな。まあまあかな、そろそろ時間だし教師呼びに行くか


加藤 「おはようございます。朝ご飯できました」


音もするしいるだろう。


教師 「ありがとう、すぐに行く」


返事が来た少し待つか


教師 「おお、待っててくれたのか」


ドアが開いた昨日の教師がきた


加藤 「はい。おはようございます」



教師を食堂に連れて行った。もう霞がいた。


霞  「あんたが作ったの?」


彼女は自分が作ろうとしていたのかな


加藤 「ああ」


霞は茶碗にご飯を盛り付けていた


霞  「ありがとう」


まさかそんなことを言われるとは思わず驚いた


霞  「ほらお茶碗運びなさい」


ボーッとしていたら霞に怒られた。


加藤 「おお、すまん」


朝食の準備が終わったこう見ると卵焼きが少し不格好では


教師 「いただきます」


教師が食べ始める


教師 「いいな、おいしいよ」


ホッとした。しばらく料理をしていないから感覚で調味料をいれたがちょうどよかったらしい


霞  「まぁ、おいしわね」


霞はあんまりいい評価じゃなかった


食器を片付けて授業を受けた。一般科目は通信制の教材を使っている。授業を聞いていなかったから自分のペースで勉強していたためほとんどおぼえることはなかった


やはり、特別科目はおもしろかった。陣形や戦闘の流れ、装備の種類などはじめて知ることが多く楽しかった。前までの生活では信じれない。


昼も俺がつくった。午後は霞が砲撃や雷撃を見せてくれた陸での様子とは違い凛々しかった。


夜ごはんを食べ風呂に入り筋トレ体感トレをしてねた。


かなり充実していたと思う。


今後の授業も楽しみだ。


あれから一週間たった。


朝のトレーニングに素振りも加えた。丁寧に1本1本振って心を落ち着かせる。その後ランニングをしに行った。だんだんと体力がついてきた。30分間走るのは変わらないが。だんだんペースが上がってきている。


そして砂浜で昇る太陽を見るのも習慣になった。燃える太陽を見るとやる気が湧いてくる。まだ冷たい空気を吸って。熱い体を冷ます。黒は4体ぐらいなら同時に動かせるようになった。時間の速さの変え方が分かった。成長していると実感できる。ここに来てから自分が成長していることも感じる機会が多い。これまでだったら感じられない感覚だ。ここにこれてよかったと思う。


っと考えていたら。誰かがこっちに来た。足音からして霞か。なぜこんな時間に


霞  「おはよう」


透き通る灰色の髪。間違えなく霞だ。


加藤 「おはようはやいね」


そんなことを言っていたら霞は隣に座ってきた。近くで見るとか細い。肌は真っ白で人形のようだ


霞  「はい、これ」


ペットボトルが差し出された。ありがたくいただこう


加藤 「ありがとう」


のどが水を求めている。水が体を潤す。なにか言いたそうにしている


加藤 「どうした?」


何かためらっているようにも見える。


霞  「なんで、あんたはここに来たの?」


思いの他普通の質問で拍子抜けしてしまった。ただよく考えたらその通りだ。中途半端な時期に生徒が入ってくるなんて疑問に思うだろう。ただ、まだ本当のことを言う勇気がない。


加藤 「田中さんっていたでしょう。俺が来た日に一緒にいた」


嘘はつかないが本当のことも言わない。


加藤 「俺、学校に慣れなくてね、その時田中さんがここに来たらどうかって」


実際、学校は嫌いだったし、田中さんがここを薦めてくれたのも事実だ。


霞  「そうなのね」


あっさり理解してくれた。彼女の顔に日が映る


霞  「行きましょう。朝ごはん一緒に作りましょう」


朝食作りに誘われた。心を開いてくれたのか?それだと嬉しいな。


食堂に向かい料理を始めた。そろそろ食料が無くなりそうだ。自分で買い出しに行くのかな?


教師を起こし、ご飯を食べた。金はあるから俺に任せたいらしい。ここに来てから街のほうへ行っていないから。すこし探検してみたいしいいかもな。次の休日は明日なので早速出かけよう。取り敢えず今日の授業だ。今回は知識をもとに作戦を考えるものだ。作戦に正解はない。だからこそ考えるのは楽しかった。アドバイスをもらいつつ作戦が完成した。終わったときは謎の達成感に浸されていた。


昼食を食べ。午後の授業。教師が剣道をやると言った。竹刀はあらかじめもらっていた。道着と防具はあるらしいのでそれもいただく。どうやら教師は6段を持っているらしい。かなり上手だろう。一か月振りでもあるため鈍っているかと思ったが、自主トレのお陰かかなり動きやすかった。


久しぶりに剣道をできて楽しかった。やはり俺は剣道が好きなのだろう。


教師に明日の買い物の分の金をもらった。店が開くまではトレーニングと勉強かな。


朝、武道場で素振りをした。床から伝わる冷たさが和らいできた。竹刀を振るスピードが速くなったことを実感した。一週間でこんなになるのだと自分の成長を改めて感じた。

ランニングへ行く。少し時間があるから長く走ってみようかな。アスファルトの地面が靴を押し返しているように思えるぐらい好調に走れた。夢中で走っていたら見たこともない場所へ着いた。都会とは思えない建物がおおい。道のヒビに生えた花。雑木林。壁が汚れ茶ばんでいた。ここだけ時間が動いていないようだ。そして無性に故郷を思い出した。廃れた家と緑一面の畑と手入れのされない林しかないような故郷だったが今では懐かしい。あそこはどうなるのだろうか?復興するのか?そんなことを気にしていたら潮の匂いが鼻に入ってきた。


そろそろ帰るか。朝食も作らないとな。少し遅くなってしまった。


食堂に行くといい香りがした。なにか香ばしい香りがした。何度もかいだことがある・・・そうだマーガリンだ。休日は、トーストにマーガリンを塗って焼いてみんなで食べていたな。なつかし。妹がたくさん塗って母に怒られていたな。あの、パンのカスが付いたマーガリンの箱。スプーンにくっついて離れないマーガリンをパンの耳で取って箱に戻すと起こる。マーガリンを塗るときの恒例行事だ。


霞  「なに突っ立ってんのよ!」


一人で余韻に浸っていたら霞に怒られた。


加藤 「すまない」


彼女は俺に腹を立てながら俺の前に皿をおいた。表面は薄く焦げているまさにトーストだ。隣には、目玉焼き、まさに休日の朝食だ。


加藤 「ありがとう。いただきます」


まずはトースト。マーガリンの匂いがやって来た。口に運ぶ。サクッと音が聞こえた。内側はもとの柔らかさが残っている。表面の硬さと内側の柔らかさをマーガリンが包み、口に広がる。


加藤 「このトーストとてもおいしいよ」


何回もトーストを焼いてきたがここまでうまく焼き上げたことはない。


霞  「そう、ありがとう」


そっぽを向いてしまった。少し頬が紅潮している。嬉しかったのか?素直に喜べばいいのに


さて、目玉焼きは、半生か、固まった所と液体の黄身のバランスが丁度いい。彼女かなり料理うまいな


加藤 「ごちそうさま。おいしかったよ。」


台所へ向かった。水道で皿を洗った。パンの食べかすが排水口へ流れていった。毎回トーストを食べるときはもったいないと思ってしまう。あの美味なトーストから落ちたらカスは食べられることなく捨てられるのだと。なぜか悲しみは感じなかった。


霞  「8:00に出るわよ準備しなさい」


何を言っているんだ?8:00?なにか約束したか?


霞  「食べ物買いに行くんでしょう付いて行ってあげる」


ああ、そのことか。俺一人で十分だろうがまぁ親切で行ってくれているんだし


加藤 「分かった」


部屋に戻った。よく考えたら私服って田中さんが一組買ってくださったものだけなのか。


玄関についた。まだ10分前だからさすがに来ていなかった。俺がついてしばらくして。白いワンピースの少女が来た。白い肌に人形のような顔立ち、そして髪は風でたなびいている。一瞬誰かと思ったが、すぐ霞だと気が付いた。制服姿以外は初めて見た。


加藤 「綺麗だね」


と思わず声が出た。あまりにも綺麗だった。TVにでてくる女優たちよりも綺麗なのではないか


霞  「そ、そう・・・さっさと行くわよ」


またか、照れ隠しなのか早足で先に行ってしまった。ここの近くにはスーパーが一件あったはず。


スーパーには30分もせず着いた。普通の大きさのスーパーだ。カゴも手に持ち中に入る。朝とはいえそれなりの数の客がいた。急に霞は俺の後ろに隠れた。


加藤 「どうした?」


何かにおびえているように見える。もしかして人間か?こんな大勢の人を見たときなかったのか?


加藤 「一回外に出るか」


霞は頭を縦振った。一旦店の外に出た。あまり人の目に着かない所まできた。


加藤 「大丈夫か?」


少し落ち着いたようだ。すこし震えている。怖かったのだろうか


霞  「落ち着いたわ」


加藤 「人混みは初めてか」


霞  「ええ、」


やはり、国が存在を隠していたのだから、会っていても一部の人間だったのだろう。


加藤 「帰るか?」


霞  「いえ、行くわ」


加藤 「無理しなくていいんだよ」


霞  「大丈夫、少し驚いただけ。行きましょう」


心配だが本人がそう言っているのだから問題ないかな


一週間分の食料か・・かなりの量だな。野菜はキャベツはあったからいらないな。肉は冷凍できるし多めでいいだろう。・・・


霞も大丈夫そうだな。


だいだいのものは買ったな。


加藤 「どうした?」


霞が立ち止まったお菓子を見つめている。


加藤 「ほしいのか?」


霞  「そんなわけじゃ・・・」


加藤 「いいよ買って。俺の金じゃないけど」


教師だったら許してくれるだろう


霞  「そう・・・ありがとう」


なぜか申し訳なさそう、お菓子を見ていた時は普通の子供みたいだった。


会計を済ませてスーパーを出た。


霞  「ねぇ」


霞はいま俺の隣を歩いている。レジ袋に隠れ、顔しか見えないが。


加藤 「なに?」


霞  「なんでさっき私に優しくしたの?」


俺は驚いた。話を聞く限り彼女はここの艦娘として来るまでずっと施設にいたらしい。食事はでるが、それ以外はない。部屋からを出られずほとんど一人で過ごしたらしい。誰か来たとしても自分がどんな艦娘か見に来ただけだったらしい。動物園の生き物のように扱われている。国に対する不信感しか湧いてこない。さらに娯楽として配られた鶴の折り紙をいつも食事を届けて来る職員に渡したが目の前でびりびりに破かれ捨てられたらしい。


俺はなにも言えなかった。ただただ目の前にいる少女を抱きしめることしか。そのときレジ袋がどうなったか分からない。どうなったってもどうでもよかった。


加藤 「辛かったね」


彼女は俺の言っている意味が完全に理解できていないらしい。恐らく彼女にとっては動物として扱われたことしかないからであろう。


加藤 「ごめんなさっきは」


少し落ち着いて帰路に再び着いた。結局買ったものは無事だったようだ。


霞  「まぁいいわ、さっきの答えを教えて」


なぜなんだろう。なぜ優しくする?


加藤 「たぶん嬉しいからじゃないかな」


霞  「嬉しいから?」


俺は彼女に説明した。自分でもそんなこと考えていなかったからかなりしどろもどろだった。


霞  「あんたは私に優しくして嬉しかったの」


いままで一週間の霞との会話、行動を思い出す。あの笑顔も「ありがとう」って言葉もどれも俺の心に突き刺さった。突き刺さって温かかった。


加藤 「もちろん」


霞  「そうなのね」


そして見慣れた建物が見えてきた。そこへ入っていきレシートとともにお金を教師に返した。食堂の冷蔵庫に食品をしまおうとしたら。霞が整理していてくれた。


お礼を言ったら嬉しそうだった。


霞と別れて部屋に戻った。ジャージに着替えて筋トレを始める。今回は時間を0.9倍にしてトレーニングをしてみた。普段はほぼ時間を動かしていない状態で短時間やっていたが、長時間やってみた。かなりいい負荷になっていた。これからはこの方法でやってみよう。


昼を済ませて、武道場へ向かった。道着に着替え、竹刀を構え。た。丹田に力をため、右足を前に出す、右足が着いた瞬間左足を引き付ける。それをひたすら繰り返す。その後はひたすら素振りをした。


気が付いたら。扉に入ってくる日が長くなっていた。そろそろ終わりにするか。


胡坐をかき姿勢を正した。座禅をした。聞こえるのは風に揺られる木の葉、走る車、下校している小学生の笑い声、ささやくような波の音、全てが聞こえてくるようだ。何かが近づいてきている。ここに向かって来る?この足音は


霞  「ここにいたのね」


やはり、霞だ。しかしなぜここへ


霞  「隣いいかしら?」


近くに座ったな。


加藤 「どうしたんだい?」


武道場には俺と彼女の呼吸音のみがかすかに聞こえる。


霞  「今日はありがとうね」


沈黙を彼女の声がやさしく終わらせた。


加藤 「俺はお礼をしてもらえるようなことやったかい?」


霞  「あの時、私の異変に気付いてくれたでしょう。」


加藤 「そんなことか」


霞  「あなたにとってそんなことでも私は嬉しかったのよ」


加藤 「そうか」


霞  「けどなんであの時、私を抱きしめてきたの」


なんでだろう?反射的に体が動いた気がするからな?誰の愛も受けずに育った少女が悲しそうだったから同情した?いや違うな


加藤 「安心してほしかったからかな」


霞  「安心?」


加藤 「辛いことがあったけどもう心配する必要ないって思ったからかな」


霞  「そうなのね」


再び沈黙が訪れる。しばらくして何か温かいものに包まれた。目を開けてみると。霞が首に腕を回し肩に頭を乗せ、俺の組んだ脚の上にに乗っている


加藤 「??」


霞  「嬉しくてね」


俺も彼女の細い体に腕を回した。ただ、とても温かい


加藤 「どうした?」


霞  「私に優しくしてくれてありがとう」


それ以外はなにも話さなかった。気が付いたら空がオレンジに変わっていた。


加藤 「そろそろ夜ご飯作らないとな」


霞  「そうね」


触れていた体が離れる。まだ温かさが残る。


加藤 「俺は着替えるから先に行っていて」


霞  「ここで待っているわ」


彼女を外で待たせている。手早く着替え外に出た。


加藤 「お待たせ」


霞  「行きましょう」


月が昇ってきている。今日は満月の少し前のようだ。海に月が反射している。波で月が揺れている。


加藤 「夜ご飯どうしようね」


霞  「カレー食べていは」


加藤 「それにしようか」


食堂に着いた。カレールゥは買ってあったのでそれを使った。カレー粉の匂いとともにわずかに香辛料の香りが鼻をつつく。少し多めに作ってしまったが明日の朝に食べればよいだろう。


教師を呼び食べ始めた。カレーは作るのが簡単だがうまい。


食べ終え片付けに入る。匂いが残りそうだったので換気扇と窓を開けた。


部屋への帰り道


霞  「ねぇ」


加藤 「なに?」


霞  「また買い物について行っていい?」


加藤 「いいよ」


彼女の目は輝いていた。こんなことが嬉しいのか・・彼女にこの世界をもっと見てもらいたいな


霞とは別れ部屋に戻った。


机に書類を広げ、海図を目の前に浮かせた。数日前、思いついた。海図の時間を遅くすれば海図が浮く。なかなか一つのものの時間を遅くするのは難しいかったが、コツをつかめば楽になった。深海棲艦との戦闘の報告書をもらった。それを作戦を考える参考にした。かなり分析に時間がかかったが満足していた。一旦、風呂に入りに行った。


体を温めたあとは、黒の訓練だ。徐々にだが扱える数が増えるようになった。どうやら、黒は形を変えられるようだ。まだ難しいのでこれは後回し。最近忙しかったから本を読めていなかった。この生活にも慣れて来たし、そろそろ読書してもいいかな。図書館どこにあるのかな。霞も誘っていこうかな。そんなこと考えていたら日付が変わった。さすがにこれ以上起きていたら明日・・いや今日に影響が出そうだし寝るか


朝起きて顔を洗いに行き、いつも通りのランニングコースを走ろうとしたら。彼女が立っていた。


加藤 「おはよう、早いね」


霞  「おはよう。」


目が覚めてしまったのかな?


加藤 「一緒に走る?」


霞  「うん」


簡単に準備運動して走り始めた。さすがは艦娘、かなり身体能力が高い。このペースについて来るとは思わなかった。


加藤 「ねぇ」


霞  「何?」


加藤 「本って読む?」


霞  「本?読んだことはないわね」


やはりか、本も読んだことがないのか


加藤 「ちょっと今日、本があるところ行きたいから着いて来てくれない?」


霞  「行くわ!」


彼女の目には何もかも真新しいものに見えるのだろうか。


学校へ戻って、素振りをした。彼女は俺の様子をずっと見ている。気になって集中しにくい。


いつものルーティンも終わり食堂へ向かった。小さい鍋に移しておいた昨日のカレーを温めなおした。三人で食べるには少ないので食パンに塗り上からチーズをのせてみた。案外おいしく、二人にも好評だった。


私服がないためジャージのまま外に出た


霞  「なんでジャージなのよ」


やはり突っ込まれた


加藤 「これと昨日の以外服がないからね」


艦娘は服を持っているのかな?


加藤 「じゃぁ行くか」


霞  「ええ」


どうやら図書館は少し離れているらしい。だんだん気温も上がってきて長い時間外に出ると汗がにじむ。


小高い丘上の建物が見えてきた。どうやらあれが図書館らしい。


加藤 「着いたよ」


霞  「大きいわね」


中に入ると図書館独特の空気に包まれる本の匂いもする。ここにいるだけで落ち着く


霞  「これが本なのね」


おもむろに彼女の細い手が本へ伸びて行った。


どうやら児童書らしい。表紙は日焼けし、ページも黄色くなっていた。だが彼女には宝物に見えているのだろう。


加藤 「気に入ったなら貸りるか」


霞  「持って帰れるの」


目を輝かせている。本を気に入ったらしい。


加藤 「ちょっと俺も本を探しているから他の本も探してみな」


俺は、一般書のほうへ足を運んだ。始めて来る場所なので迷ったが俺の好きな作家の場所まで着いた。中学の頃、この作家の作品に初めて出会った。試しに読んでみた。


古代中国のような場合で主人公が生き抜いていく話である。俺はこの作品の表現に感銘を受けた。空の色、水の流れ、風の動き・・鮮明に想像できるがどれも美しかった。こんな言葉でこの世界を表現できるのかと感動していた。夢中になって読んでいた。


本を手に取る。懐かしい。本はどこへでも俺を連れて行ってくれた。あの田舎町から、これぽっちの大きさのものが。それ以来、俺は本が好きになった。色々な作家の本を読んだが結局一番好きなのはこの作家だった。俺を本の素晴らしさを教えてくれた。


霞を探した。2,3冊は手に持っている。


加藤 「決まった?」


霞  「これにするわ!」


俺も聞いた時のある本だった。とても気に入っているようだ。


本をカウンターに持っていき、貸し出せるようにする手続きを済ませて、本を貸りた。帰り道、霞の足は軽やかだった。早く本を読みたそうだ。


加藤 「後で本のこと話しに来て」


霞  「本のこと?」


加藤 「ああ、ここがすごかったとか、面白かったとか」


霞  「ふふ、そうね」


どうやら楽しそうだ。連れてきてよかったと思う。本を宝物のように両手で抱きしめている。


学校に戻り昼食を作り、昨日と同じことをした。今日は霞は来なかった。部屋で本を読んでいるのだろうか。夕食作りには来てくれた。部屋に戻り分析を始めた。しばらくすると部屋をノックする音が聞こえた。ドアを開けると、霞が立っていた。


加藤 「どうした」


霞  「一冊目読み終えたから話に来たわ」


覚えてくれていたのか。その後彼女の話を聞いた。主人公がどうなったとか、あの場面がすごかったとか、ずっと本のことを話していた。とても、楽しそうだ。俺は彼女の話を相槌を打ちながら聞いていた。


加藤 「本は好きか?」


霞  「ええ!」


ここまで本を好きになるとは・・その後もしばらく彼女は本について話していた。


加藤 「おやすみ」


霞  「また来るわ、おやすみ」


霞を部屋に送った。


少し分析をし、筋トレをして寝た。


そして、春が来た。今年度は入学者はいないらしく結局このままだ。これまで月1で田中さんが様子を見に来てくれた。田中さんは提督をしているらしく、霞を演習に連れて行ったり、出撃もさせてくれた。1カ月ここを離れている間にいつの間にか改二になっていて驚いた。


霞は毎週休日に買い物に付いて来て荷物持ちを手伝ったくれたりもした。無論、本に対する熱意も変わらず、いつも俺の部屋に来て読んだ本のことを話してくれる。


そして、俺は体力も身体能力も大幅に上がった。時間の能力をほぼ使いこなせるようになった。そして黒でできることも多くなった。また、しばらくして気が付いたこともあった。


まずは、俺は歳を取っていない。艦娘同様、見た目が一切変わらない。これは髪の毛が伸びないことで気が付いた。他にも、俺は外的要因では少なくとも死なないことが分かった。どうやら黒の影響らしい。傷口がきれいに消えたことから気が付き、実際、足の指を切ったがきれいに治った。恐らく、黒が切った部分をつないでくれるらしい。だが、背中の火傷と脚の銃創は消えなかった。この体になる前の傷は治せないようだ。最後は、黒で色々なものが出来ること。例えば刀、紙など何でもなれた。見た目だけらしくものによっては機能しないものもあった。俺の体自身も変えられるようだ。背中に翼を生やしたりもできた。体の大きさ、顔の形なども変えられるらしい。今では俺は黒を不自由なく扱えるようになった。同時に複数個に違う命令も出せるようになった。


黒の影響であろか、見た目以上のパワーが出る。黒が一時的に俺の筋肉のサポートをしてくれているのだろう。また、黒の数も増え俺の体の中にも大量にいるため、ちょっとの攻撃は効かなくなった。


そして、新年度が始まった。


とはいってもやることは前とほとんど変わらない。作戦を考えたり、訓練を行ったりした。


教師 「今日から君には彼女の訓練を担当してもらう」


加藤 「霞の?」


教師の言葉に驚いた。彼女は改二であり艦娘としても高い能力を発揮している。今更訓練など必要ないのでは


教師 「これは君が提督になる準備でもある。」


提督の準備か、なるほど


加藤 「分かりました。精一杯頑張ります」


これから霞の訓練を担当することになった


加藤 「改めてよろしく」


霞  「まぁ期待はしているわ」


暖かい日の光が降り注ぐ。彼女を訓練するということは責任もある。プレッシャーとともに内側から何か燃えているようだ。


とはいっても、砲撃や雷撃は俺には教えられない。黒を使えば水の上も立てるがさすがにそれはやらない。できることといえば・・・


加藤 「俺は君に回避術をもとにした戦闘を訓練する」


霞  「回避術?」


だんだんだったがトレーニングをしていると反射神経などが人の数十倍は発達していると感じた。時間をコントロールしなくて問題ない。動体視力、反射神経、距離感、五感などがかなり鍛えられた。黒のお陰でもあるがほとんど自分の力で。そして、もとからの観察力と黒を使いこなすために鍛えた並行思考を使えば、敵の次の行動を予測し回避が素早くなるのではないか?


加藤 「手探り状態だがよろしく」


霞  「よろしく」


そして俺は霞に今から鍛えたいところを話し、メニューを一緒に考えた。今日は今後の訓練メニューを決めて終わった。


部屋に戻って分析を始めた。最近は分析だけではなくて作戦の改善点も考えることが出来るようになった。提督と艦娘の数も増えて色々な作戦に触れられるようになった。


日付が変わる直前、誰かがドアを叩く音がする。ドアを叩く位置からするに一人しかいないのだが。軋む音を出しながらドアを開ける。案の定、霞だった。明らかに様子がおかしい。何者からか逃げる様子だ。


加藤 「大丈夫か?入りな」


俺の言葉にうなずき部屋に入いるが元気がない


加藤 「どうしたんだい?」


霞  「・・夢を見たの」


ベッドに腰かけ彼女は話し始めた。周りで沈んでいった姉妹艦や水雷戦隊の巡洋艦、同じ駆逐隊の同胞、砲撃や航空機の攻撃で死んでいく乗組員達、そして身を挺して護衛するはずだった戦艦。最後には自分も動けなくなり、味方の雷撃で沈んでいったらしい。


艦娘は艦艇のころの記憶があるらしい。彼女が沈んでいった日が近づいていたためか夢に出てきたのだろう。


俺も何回も悪夢を見た。あの時の映像が出てきてその後、何百万の手が俺を引きずり落そうとする夢だ。だから彼女が苦しんでいることがよくわからる。


霞が抱き着いてきた


霞  「とっても怖かったの」


すこし体が震えている。一人でここまで来たのだろう。とても心細かったよな。俺は彼女の頭と肩に手を回した。ひたすら大丈夫と繰り返し唱えた。しばらくして彼女のすすり泣いている声が聞こえて来た。


加藤 「今日はここで寝な」


霞  「一緒に寝て。」


もし、普段だったら断っていただろう。ただ今は、目の前で震える少女をどうにかしてあげようとしか思わなかった。


加藤 「ああ、少し待ってて」


机上を整理し、ベッドへ向かう。霞はもう布団に入っていた


加藤 「お待たせ」


俺も布団に入る。霞は俺の腕に捕まって来た。左腕にのみ暖かさが伝わってくる。顔には吐息がかかる。安心したのかすぐに眠りについた。しばらくし俺も寝た。


いつもどおり走りに行こうとしたら腕が重い。ああ、霞が寝ていたのか。昨日の今日だからでいるだけ寝かせてあげよう。そういえば今日はもう授業がないのか飯は作るがまだ時間がある。


寝顔が見えた。とても安らかに眠っている。口角が上がっている。思わず頭を撫でた。さらさらした髪で手を通しても引っ掛からない。


しばらくして、霞が起きた


加藤 「おはよう」


頭が起きていないのかしばらく自分が置かれた状況を思い出せていないようだ。


霞  「おはよう、ありがとう」


加藤 「あの後は大丈夫だった」


霞  「ええ」


加藤 「またこんなことがあったらいつでも来な」


カーテン越しに朝日が入ってきた。この状況、第三者から見られたらかなりまずいのだろうなと冗談も考えつつ、布団からでてカーテンを開けた。日が陸地から少し離れている。砂浜からの日の出ばかり見ていたがこちらも悪くない。


霞と一旦わかれジャージに着替え、食堂へ向かう。今日は時間がないので、野菜を適当に切ってみそ汁に入れた。


飯を食べた後、訓練に入った。まずは、お互いにボールを投げ合い、ボールが当たったらペナルティとした。相手の投げるタイミング、場所速さなどを考えつつ、相手の隙に自分が投げる。お互い白熱しあい結局午前中はこれだけになった。結果はほぼイーブイだった気がする。


昼飯を食べ、ランニングへ向かった。10kmぐらい走り帰って来た。


その後は座禅をした。心を落ち着かせるよりも呼吸法も会得するためだ。基本、人間は息を吐いていたほうが力を籠めやすいし、体が反応しやすい。短い時間で吸って、長い時間で吐く。これを1時間ぐらい行った。


その後は、ゲームをした。かなり前からバイトを始めたが、結局使い道がなかったからこの期に色々と買い物をした。格闘ゲーム、ゲーム機、コントローラー一組、モニター、小モニター2つ、カメラ2つを買ってもまだ余っていた。


ただゲームを遊びわけではない。お互いの手元を小モニターに写しつつ手の動きを見て次の行動を予測し、避ける、攻撃などを判断。そしてキャラクターごとにリーチ、攻撃力も変わるので、そこに注意しつつ戦う。ゲームのモニターと手元のモニターを同時に見て、かつ状況を判断し、攻撃をする。かなり頭も手も使う。


数日に一回砲撃や雷撃を行わせている。


夜飯を食べて今日は別れた。部屋に戻り、作戦の分析、時間と黒の訓練をして寝た。


それを毎日毎日繰り返した。たまに教師にアドバイスをもらったり互いに相談したり改善していった。田中さんの所でもかなり戦力になっているらしい。田中さんに褒められる彼女を見ると俺も嬉しかった。演習している様子を見て他の艦娘の動きも参考にした。砲撃や雷撃、航空攻撃の回避はここでしか出来ないため問題点など観察していた。


休日は相変わらず図書館へ行った。そして本の感想を聞かせてくれる。


ひたすらに訓練をして季節は秋になった。霞は回避を基本としつつ相手の隙に攻撃することが身に付き、前線でも活躍している。俺も黒の力をほとんど使えるようになった。黒で刀を作ったら思いの他、切れ味がよかった。パワーとスピードさえあれば深海棲艦の装甲も壊れそうだった。時間を遅くすることで俺の刀の振る速度が上がり、ほとんどのものを斬れるようになった。


最近昼の時間が短くなり、風の鋭さも増してきた。今は霞の進水日(11/18)の記念に何かプレゼントを考えている。去年はブックカバーを贈った。


彼女は本が好きだからな・・一緒に探しに行くか


11月18日彼女の浸水日だ


加藤 「おはよう、進水日だね、おめでとう」


霞  「覚えていたの?」


霞にかかわらず大体の艦娘の進水日、沈没、解体日は頭に入っている。


加藤 「今日、一緒に行きたい場所があるんだが」


霞  「ええ、ありがとう行くわ」


バイトした金で服を買った。大していいやつではないがこのぐらいが自分には良い。ジーパンに長袖シャツにジャンバーとオーソドックスな服だ。


玄関で待っていたら、霞が来た。


加藤 「じゃぁ行くか」


今日は電車に乗る。あの時以来乗っていないからおそらく1年半ぶりだろう。


ただ霞は大丈夫かあの大人数の中に行くのは


加藤 「今日、いつものスーパーの比にならないぐらいの人がいる場所だけど大丈夫か?」


霞  「何言ってんのもう大丈夫よ」


加藤 「無理はするなよ」


駅に着いた。さすがは都心。常に電車が走っている。


霞  「多いわね」


さすがに驚いたようだがパニックにはなっていないようだ。改札に入りホームに着く。そして間もなく電車が着いた。やはり中に人がすし詰めだった。ドアが開き、人が出ていく。通勤者がほとんどのようだ。電車に入り霞を俺とドアで挟んだ。しばらく揺られていると目的の駅に着いた。ドアが開くと足元から冷気が襲って来る。ホームに降り改札を出た。


茶に変わった並木通りに沿って歩き出す。しばらくすると大型ショッピングセンターが見えてきた。


加藤 「ここだ」


霞  「大きいわね」


ただ平日とはいえ想像よりも人がいる。はぐれるとまずい。


加藤 「絶対にはぐれるなよ」


霞に注意していると右手が暖かくなった。最近、手足が冷えてきていたのを思い出した。


霞  「手を繋げばはぐれないわよ」


彼女の手はとても暖かい暖房の入った電車にいたとはいえ、もう数分は経っている。そういう体質なのだろうか


三階に上がり目的の場所に着いた


霞  「ここは」


加藤 「しおり屋さ」


本のしおりが彼女にはいいのではないかと思う。


霞  「これ選んでいいの?」


加藤 「ああ、お祝いだからな」


彼女は目を輝かせていた。宝石屋で指輪を眺めている女のようだ


店員 「妹さんですか?」


店員に声をかけられた。艦娘とは言えないからな


加藤 「ええ、本が好きなので誕生日プレゼントに贈ろうと思いまして」


店員 「お誕生日おめでとう」


霞  「ありがとう」


霞も何か察したらしく話を合わせてくれた。


霞  「これにするわ」


どうやら、ステンドグラス風のしおりに決めたらしい


加藤 「お願いします」


店員 「はい、では・・・・円です」


店員に金を払い店を後にした。


再び霞が手を握ってきた


霞  「私たちって兄弟に見えてのかしら」


加藤 「そうかもね」


兄弟か・・・家族を失った彼女は俺の家族のような存在な気がする


加藤 「昼ごはんどうしようね」


教師には予めこのことは伝えているので彼は自分で飯を作っているのだろう


とりあえずフードコートに着いたがこの人の混みようではさすがに座れないだろう。


加藤 「座れそうにないな他の所に行こうか」


霞  「そうね」


近くに食べ物屋はないか?最近購入した携帯で調べる。大して使わないがないと不便だな


加藤 「なにか食べたいものはある?」


霞  「今まで食べたことがないもの」


今まで彼女とは何度も食事を共にした。なにがいいのか・・・あっ


加藤 「ちょっと引き返すぞ」


フードコートに戻って来た。この匂い・・あそこか


霞  「なに食べるの」


加藤 「ハンバーガー・・肉をパンで挟んだものまぁ食べよう」


足を運んだのは超有名ハンバーガー店。


そこそこに人が並んでいた。


加藤 「これの中から選ぶのか」


最近この店に行っていないからかなりメニューが変わった


霞  「見せて」


腰をさげて彼女にも見えるようにした。彼女にとってこのメニュー表は未知への冒険書なのだろうか


加藤 「決まったかい?」


霞はメニューに指を指したチーズバーガーを選んだらしい。


俺たちの順番が来た。


俺は普通のハンバーガー霞はチーズバーガーを頼んだ。やはり席は空いていないようなので持ち帰ると店員に行った。


加藤 「寒いかもしれないけど外で食べようか」


モールの外の通路に出た。近くの自販機で温かい飲み物を買った。近くのベンチに腰掛ける。


加藤 「食べようか」


包装紙を開ける。独特な匂いがする。久しぶりのハンバーガーを食べ始める


加藤 「どう?うまいか?」


霞  「おいしいね」


顔を見ても嬉しそうだ。もう一つあそこで買ったものを出した。


加藤 「これ食べてみ」


フライドポテトだ。揚げたてで温かい


霞  「これは?」


加藤 「フライドポテト、ジャガイモを揚げたやつ。」


霞  「いただくわ」


相変わらずここのポテトの塩の量はかなり多い。


霞はせわしなくい手を動かしてポテトを取っている。気に入ってくれたようだ。


とポテトを取る手が止まった。


霞  「はい」


加藤 「なに」


ポテトを俺のほうに向けている霞。なぜか頬が少し赤い


霞  「両手に持っていたら食べられないでしょう」


今、右手にハンバーガー、左手にポテトを持っている。


加藤 「ありがとう」


彼女の手から伸びるポテトを食べる。後ろのほうが少し潰れていたが。俺のことを気にかけてくれてありがたい。


全て食べ終えゴミ箱に持って行った。


手を繋ぎ歩き出す。


加藤 「ちょっと歩いてみるか」


二人で探索した。ゲームセンターの音。そこで騒ぐ子供たち。服を選んでいる女性。それらを横目に見つつ歩いていたが霞の足が止まった。おもちゃ売り場だ


霞  「あれ、かわいいわ」


指の先にはサメの人形があった。


加藤 「ほしいかい?」


霞  「いいの」


おそらくここが人混みではなかったら飛び跳ねて喜んでいるのだろう。まだまだ残金は有り余っているので問題ない。


少し高い所に置いてあったが自分で取りたがっていたので、持ち上げた。彼女も驚いていたが、想像以上に軽くて俺もかなり驚いた。ぬいぐるみを取った彼女は抱きしめたいた。レジに持っていき購入した。さすがに店の中なので袋に入れてもらった。残念そうだったが申し訳ない。


その後も徘徊していたら15時を回っていた。


加藤 「おやつ食べに行こう」


霞  「いいわね」


カフェのような場所へやって来た。ここではパフェを撃っているらしい。椅子に座りメニューを開いた。


霞  「おいしそう」


ぬいぐるみの所といいパフェといいこういうところを見ると彼女も一人の女の子なんだと感じた。彼女普通のサイズを頼んだ。は俺はあのサイズほどはいらなかったので小さめのにした。


パフェがきた。食べてみると、生クリームのとろけ方がとても好みでおいしかった。霞は幸せそうな顔をしている。この顔を見ると連れてきてよかったと思う。


その後も歩き回った。ヘアゴムを買ったり。キーホルダーを買ったりした。そして、17時を過ぎていた。


加藤 「そろそろ帰ろうか」


霞  「そうね・・・」


少し寂しそうだ。


加藤 「楽しかった?」


霞  「ええ、もちろん」


加藤 「それはよかった。また一緒に来ような」


さっきまでの悲しみや寂しさの表情が一気に晴れやかになった。単純だな


この時間だと気温も下がり服の隙間から寒さが襲って来る。彼女と繋いでいる左手、以外はだんだんと熱を失っていく


学校の最寄り駅まで帰って来た。見慣れた街に帰って来た。


霞  「今日はありがとうね」


今日一番の笑顔を俺に見せてくれた。だが、お礼を言いたいのは俺のほうだ。ずっとそばにいてくれて俺の勉強や訓練をサポートしてくれた。彼女がいなくてはここまで成長はできなかったであろう。


加藤 「いえ、また行こうな」


日が沈み、寒さがまた一段と厳しくなったころに学校に着いた。荷物を彼女の部屋まで運び食堂へ向かった。今日の夕食はどうしようか。冷蔵庫の残りから、生姜焼きにすることにした。


生姜焼きはそこそこの出来だった。やはり母の味には敵わないな。


部屋に戻り、分析を始めた。最近は強力な敵も現れて来たらしい。姫級とか鬼級とかいるらしい。俺があの時見たやつかな。ノック音が聞こえてきた。霞だろうか。


加藤 「いらっしゃい」


霞  「お邪魔するわ」


ベッドの端この部屋に来た時の彼女の定位置だ。


霞  「今日はありがとう」


加藤 「楽しんでくれたらいいだよ」


霞  「そう、しおり屋さんのときなんで私を妹って言ったの」


加藤 「・・・」


反射的に言ってしまったたからな


加藤 「そう思ったんじゃん」


加藤 「霞は妹かなって。」


霞  「そう・・・」


霞  「よく物語に家族のお話が出て来るんだけど私、家族ってよく分からなかったのよ」


霞  「けど、今日あなたに妹って言われてから、あなたの家族だったらって考えたの。」


霞  「あなたの家族だったらいいなって思い始めたとよ」


霞  「私に姉妹艦はいるけど、この姿になってからほとんど会わなかったし」


霞  「家族って意味は分かっていてもなんか理解はできなかったの」


霞  「でも、分かったの。家族がいるって幸せなのかなって」


霞  「ありがとうね、嘘でも妹って言ってくれて」


なんて声を掛ければいいのか・・・俺も彼女も今は家族がいないし


加藤 「ずっと俺も家族と会っていないからな」


加藤 「最近は霞といる時間が多いし」


加藤 「何ていうか・・・うまく言えないけど君が家族だったらいいなって」


加藤 「一緒にいて楽しいし、笑ってくれると嬉しいし」


加藤 「俺も君が家族だったらって思うな」


霞  「うふふ」


加藤 「ふふ」


霞  「なんか同じこと考えていたのね」


加藤 「そうだね」


霞  「これからもよろしくね」


加藤 「よろしく」


霞  「ねぇ今日一緒に寝て」


加藤 「ええ、いいけどさ。まだ俺風呂入っていないからまだ寝ないよ」


霞  「分かった。待っているわ」


加藤 「了解・・・」


風呂場に行ってシャワーを浴びた。


彼女と俺が家族か・・・まさかここまでの関りになるとはな。ずっと一人で生きてきて彼女にとって俺は家族のような存在か・・・


シャワーの水が頭を濡らし肩を通り、背中を下って行く。脱衣室は寒かったが、温水を浴びたからか冷たくはなかった。着替え、部屋に戻る。


霞  「お帰り」


加藤 「ただいま」


彼女は完全にここで寝るモードに入っている。まぁ今日は彼女の進水日だしいいか


俺はベッドに座った。


加藤 「こっちに来な」


霞は俺の足の上に乗って来た。髪からほのかにシャンプーの匂いがした。


霞  「ねぇ、また行きたいな」


加藤 「今度な」


霞  「あのパフェおいしかった・・・」


しばらく俺たちは談笑していた。今日の思い出とか、今度やってみたいことたくさん話した。


加藤 「そろそろ横になるか」


霞  「ええ」


布団に入った。


霞  「ねぇ」


霞に呼ばれた。思いのほか顔が近くにあって驚いた。


加藤 「どうした?」


霞  「もし、深海棲艦が居なくなっても一緒に居てくれる」


加藤 「ああ、生きていたらな」


霞  「そうね」


加藤 「おやすみ」


霞  「おやすみ」


しばらくして霞が俺の胴に腕を回してきた。俺は彼女の頭を撫でた。そして眠りについた。


そして、風が優しくなり。梅が咲き誇る季節になった。俺と霞は訓練を重ねさらに精進した。そろそろ卒業する。上の学校に彼女も連れて行ったいいか聞くか。


田中 「おはよう」


加藤 「おはようございます。お久しぶりです。」


田中さんが来た。どうやら今日は秘書艦の金剛がいない。


田中 「加藤君、今日は大事な話が合ってな」


加藤 「はい。」


田中さんにある部屋に連れてこられた。もうすでに教師が待っていた。


田中 「君、今月でここを出るよね」


加藤 「はい」


田中 「これからはどうするつもりだい?」


加藤 「上の学校に進学するつもりですが・・・」


田中 「いや、君にはもう鎮守府に着任してもらう」


田中さんの言葉に思考が止まった。まだ18の俺に国防を任せるのか?


田中 「彼に聞いた限り、君は理解が早い。今まで言っていなかったらしいが君は大学でやる内容も終わらせている」


加藤 「え?」


教師 「高等科でやろうとしていた事、君が自分で勉強して3カ月で終わらせちゃったからね」


夢中で勉強していたから気が付かなかったがそうだったのか。色々と教師に質問したり。俺一人だったからかもしれないな。


田中 「その後1年半で大学4年分も終わらせてしまうとは。さすがだ」


加藤 「俺一人だったんで教師に分からない所もすぐ解決したのだと思います」


田中 「そうか、話を戻そう。というわけで学校で教えることはもうない。だから君には提督になってもらいたい」


加藤 「なるほど。分かりました。配属先は?」


田中 「まだ決まっていない。」


教師 「艦娘の訓練の授業があったろう」


加藤 「ええ」


田中 「大学では成績順で担当する艦娘を決めるのだが」


田中 「基本的にその子が秘書艦になるのだが君は霞だけだったな」


加藤 「はい」


田中 「選択肢がなかったから君は自由に初期艦を選んで構わない」


加藤 「いえ、俺は霞がいいです」


田中 「そうかい」


加藤 「彼女と話し合って決めます」


どうやらあの事件から自衛隊の学校が変わったらしい。学生数が多いため。多くの艦娘が配属され成績順で将来の初期艦が決まるらしい。


霞の部屋に向かった。部屋に送ったことは何度かあったが一人で来るのは初めてだ。ドアを叩く。


霞  「はーい・・ってどうしたの」


加藤 「そこそこ重要な話が合ってな。」


そのままさっきの話をした。


加藤 「・・というわけだ。俺は君に初期艦になって欲しいがいいか」


霞  「ええもちろんよ」


ホッとした。彼女以外の初期艦は誰もいないと思っていたから。よかった。


田中さんにこのことを伝えた。俺が鎮守府に着任するの4/1らしい。それまでには配属先が決まるらしい。残りのここの生活が終わる。約2年、かなり楽しかった。


田中さんを見送った。そのときには空が赤く染まっていた。


夕食を作った。その後部屋に戻った。


今いろいろな気持ちが混ざっている。提督に慣れる高揚感、それとともに現れるプレッシャー、艦娘の命を預かることによる不安。机を撫でる。手が滑る。長い時間ここに座って勉強したのか・・・今はいい思い出だ。懐かしさと寂しさが同時にやって来た。


深呼吸をした。俺も決心が付いた。迷っていたが今はそんなことは消え去っていた。爪を変形させる。鋭い歯を腕に当てる。思いっきり引いた。直後、穴の開いたホースのように血と黒が出てきた。黒を集める。足、腰、腹、胸、肩、腕、首、顔と作っていく。顔の形はどうするか・・・思いつかない。どうしよう・・・本の表紙に目が行った。鬼・・・能面の鬼にするか。面をかぶっているようにした。顔を作れなくて申し訳ない。仕上げに黒に人間の細胞になれと命令した。


すると人形が一旦は膨れ上がり破裂しそうになったが。すぐに人の形に戻った。


加藤 「分かるかい?」


?? 「あなたは」


加藤 「俺は君を作ったものさ」


とうとう生命を作ってしまった。


加藤 「ちょっと君の頭にメッセージを送ってみるから言ってみて」


?? 「かとうてすとてすと」


加藤 「素晴らしい。さすがだ」


俺は自立思考しつつ俺が操作できるものを作った。


?? 「!あなたケガしているじゃないですか」


自分の腕を傷つけたのを忘れた。すぐに修復した。


?? 「私は何ですか?名前は」


加藤 「そうだな・・・マツダはどうかな」


マツダ「マツダですか分かりました。」


加藤 「君には頼みたいことがある。艦娘を護ってほしい。」


マツダ「艦娘を護る?」


艦娘は提督の好きなようにされているらしい。暴力や性奴隷、囮、過労、場所によってはひどいことをされている。


加藤 「・・ということだ」


マツダ「なるほど・・・」


加藤 「あともう一つ・・・」



マツダ「分かりました。」


加藤 「頑張ってくれ。頼んだ。」


マツダ「はい」シュンッ


どうやら黒の力を使いこなせているらしい。マツダか・・衝動的に出たが彼の名前を付けたのか・・


彼も家族も、もう顔を思い出せない。写真でさえも残っていないからな・・・


窓を開ける、風と共にどこからか梅の花が飛んできた。手に取り再び風に流した。ひらひら飛んでいき夜へ消えた。


窓の縁に肘をついた、なにも考えていなかった。大作業をして疲れているなあそこまで黒を開放すると体力がなくなる。風呂へ向かった。背中の火傷を思い出す。ここから俺の体が変わっていったのか。ひどかった。何もなくなった。家族も親友も故郷も、しかし、出会いもあった。あれがなければ一生出会うことはなかっただろう。霞、田中さん、教師・・・本当に多くの人に助けられた。


部屋に戻る。少し、書類を見て終わりにしよう。


気が付いたら机の上に突っ伏していた。寝落ちしたのだろうか。眠気はなくなっていた。少し早いが外に出てみた。春の朝は寒い。


少し走った。砂浜を踏む音の気味がいい。いつもよりもゆっくりと走った。桜の木の間に現れるさ梅の木がみえる。うすく桃色の花。梅はいつもこの季節に咲く。別れを告げるように。俺は少しでこの学校を出る。たった一人の生徒しかいない学校を。小学校も中学校もこんな感情は湧かなかった。永遠の別れをした後の初めての別れだからだろうか。もう一生出会えないのかと思ってしまう。


霞  「どうしたの」


霞が来た。もうこんな時間か。


加藤 「おはよう」


霞  「行きましょう」


ずっとこの道を走って来た。もうここ離れてしまうのか


霞  「元気ないわね」


加藤 「こことも別れかって」


霞  「また来れるわよ」


そう思って出て行って二度と戻れなかったことがあったからな。しかし、今は違う。今は守る力をもった。俺の大事な人も場所も・・絶対に守る。


霞  「日が昇って来たわね。」


日の光が右半身を照らし始める。温かい。春の日の光は温かさある。


加藤 「学校の大掃除しようか」


霞  「使っていない場所のほうが多いけどね」


学校に帰って来た。朝食を食べ、いつも通りの訓練をした。昼食を食べた後、武道場の掃除をした。屋根の汚れや、端の埃取り、壁を拭いた。かなり汚れがたまっていた。普段は床をモップ掛けしたぐらいだったからだろう。掃除が終わったら、もう日が暮れかけていた。


加藤 「おつかれ」


霞  「けっこうきれいになったわね」


加藤 「ああ、元が汚いんだろう」


夕食を食べ、部屋に戻る。大したものはないが部屋の整理をした。今まで買った服、田中さんからもらった服・・・なにか箪笥の奥にある。


加藤 「これって・・・」


背中が焦げてないブレザー、右足に大きな穴の開いているズボン。間違えない、あの日まで着ていた制服だ。ところどころ血が付いている。他の汚れが見当たらないから、一度洗ってくれたのだろう。


まさかこれを持っていたとは・・・唯一あの日よりも前から持っていた物だろう。


整理しているとこんなことがいつかるのか・・・



私はマツダ、加藤さんに作られた。私自身、自分がどんな存在かよくわからない。数日前に加藤さんに艦娘を護ってくれと頼まれたが何をすればよいか分からない。ただ存在を知られてはいけないらしい。


そんなことを考えていたら頭の中に何かが


「A鎮守府に行け」


これは加藤さんの声。A鎮守府はここか



マツダを作った初日からとはな・・・


黒を使って一部の提督の監視をしている。まだ数が足りないから、ごくわずかだが。どうやらA鎮守府の提督が艦娘を襲っているらしい。


マツダにこのことを伝え行ってもらった



移動中に大体状況が理解できたA鎮守府の提督が艦娘を強姦しているらしい。急がねば


ここか、本当にいるのか、頭の中に映像が流れてきた。A提督が性器を艦娘の性器に入れようとしている。ドアを蹴り飛ばしその勢いでA提督を殴り飛ばす。全力で殴ろうとしたら加藤さんが「君が本気で殴れば彼は死ぬ」と言われた。急いでスピードを緩めA提督の側頭部を殴った。A提督は吹き飛び壁に激突、息はしているようだ。私の目の前には裸の艦娘がいた。


A提督 「誰だお前は!」


いきなりA提督に叫ばれ驚いたが、加藤さんからメッセージがきた。これから文章を話せと


マツダ「あなた、何をしようとしていたか分かりますよね」


A提督 「ああ、潮とエッチしていた」


潮とは彼女の名前らしい。


マツダ「本当ですか?」


A提督 「ああ、あいつのま〇見てみろ!濡れてんだろ」


潮の陰部を見た。確かに濡れている。


マツダ「しかし、膣が濡れるのは防衛本能が働くからですよ。そんなことをも知らないのですか」


煽るようにと言われた。これを聞くとA提督は怒っているようだ。潮はまだ震えている


加藤さんから左の内ポケットのボイスレコーダーを再生しろときた。ボイスレコーダーは持っていないはずだが試しに右手を服の中に入れると、固いものがあった。ボイスレコーダーだ。何故かよく分からなかったが再生した。


内容はA提督が潮を強姦しようとしたとき姉妹艦を解体することを脅しにしていた。


マツダ「ということですが」


A提督 「・・・」


マツダ「沈黙は肯定と捉えます」


潮  「あの、提督に無理やり襲われそうになりました。」


潮が初めて口を開けた。まだ肩がガタガタしている。


マツダ「大丈夫ですよ、安心してください」


と伝えると潮は泣き出した


A提督 「・・ならお前を殺すのみだ」


A提督が銃口を向けてきた。その直後発砲してきたが難なく回避。さらに数発撃ったがどれも避けた。


A提督 「っち」


足音が近づいて来る


曙  「どうしたの・・って潮!」


朧  「何があったの?」


どうやら彼女の姉妹艦が来たらしい。


潮  「提督に襲われたの」


その後、潮は説明した。


漣  「それって本当ですか?」


潮  「うんこのお面の人が助けてくれたの」


A提督 「・・ばれちまったか」


A提督が騒ぎ出したがその後、手刀で気絶させた。A提督を縄でしばり、紫の髪の艦娘にボイスレコーダーは渡した。


潮  「あの・・ありがとうございました」


マツダ「いいえ、もう安心してください」


曙  「あんた何者なの?」


マツダ「マツダと申します」


朧  「潮ちゃんをありがとうございました」


漣  「あざーす」


どうやら、加藤さんが帰りなと言われたので帰路に着いた。


加藤 「おつかれ、マツダ」


マツダ「いえ、加藤さんのお陰です」


加藤 「これからは俺はサポートできないから自分で頑張ってくれ。」


マツダ「はい」


加藤 「あと、約束してほしいことがある」


加藤さんは私に、誰も殺さないこと、周りの人に被害を出さないこと、もし相手を斬るときは自分で作った刀を作って、斬ったものは修復できるようにしろというものだった。


加藤 「約束守れそうかい?」


マツダ「はい」


加藤 「これからもよろしくマツダ」


加藤さんとの会話は終わった。



初めてだがどうにかなった。A提督はそのまま憲兵に捕まるだろう。今後マツダがうまくできるかどうか。早急に監視システムを完成させねば・・・今日はもう遅い寝るとしよう。


その後も掃除をしてとうとう最終日。俺は南のほうに配属されるらしい。


この部屋ともお別れか・・・


朝食を作りに行く。途中で霞と会った。


霞  「今日で最後ね」


加藤 「そうだね」


食堂に着く


加藤 「どうしようね」


霞  「いつも通りでいいんじゃない?」


俺はかなりソワソワしているようだ。朝食は、みそ汁と焼き魚、ご飯だ


朝食を食べ終えた後、教師に教室に来るように言われた。


片づけをして教室へ向かう。最近は外ばかりいたのであまりここには来なかった。


教師 「君に渡したいものがね」


教師は大きな袋と紙を取り出した。


教師 「これは卒業証書」


まさかこんなものをもらえると思わず驚いた。


加藤 「ありがとうございます」


教師 「お疲れ様。」


教師 「後はこれだね中を見てみな」


袋を覗き込む。真っ白い服。これって・・・


教師 「ああ、軍服さ」


加藤 「ありがとうございます」


教師 「君は明日からこれに袖を通す。これがどういうことか分かるよね?」


加藤 「はい」


明日からは俺は一人の軍人だ。一つ一つの行動に責任が発生する。


加藤 「みなさんの期待に応えられる活躍をして見せます」


教師 「ああ、期待しているよ」


とうとう卒業か・・


教師 「さっそく着てみてくれ。俺も君の軍服姿を見たくてな」


制服から軍服に着替える。まだ固くすこし重い。来ていると身が引き締まる


教師 「似合っているじゃないか」


霞  「いいわね」


加藤 「ありがとうございます」


教師 「君たちは移動があるだろうからここにいるのは昼ぐらいまでかな」


荷物はあらかじめ用意した。公共交通機関でのんびり行く。


加藤 「お世話になりました」


教師 「寂しくなるな」


どうやら今年度は新入生が一人いるらしい。教師はカリキュラムを作るとき勢いで俺の内容を書いていたらしい。


部屋に戻り軍服を脱いで畳み袋にしまった。


最後の昼食を作る。


メニューはインスタントラーメンにした。なんか特別なものを作るとここから出てこれなくなりそうだ。


教師 「忘れ物はないかね?」


玄関前、教師が見送ってくれる。


加藤 「問題ないです」


教師 「では、二人とも武運を祈る」


加藤 「ありがとうございます」


お互いに敬礼を贈り。この学校を出た。


霞  「おつかれさま」


加藤 「こちらこそ、ありがとう」


霞  「どのぐらいかかるの?」


加藤 「10時間ぐらいかな」


霞  「なかなかだね」


最寄り駅に着いた。昼のためあまり混んでいない


加藤 「東京駅まで行って新幹線で岡山まで行ってそこからは普通の電車で行くよ」


霞  「結構長いわね」


加藤 「新幹線は3時間ぐらいだけど他がね」


話をしている間に東京駅に着いた。


駅のホームに着くとすぐ真っ白な車両が到着した。


加藤 「乗ろうか」


霞  「ここね」


青い椅子に座る。少し固い。


すばらくして車両が揺れ始める。


加藤 「とりあえず岡山までだね」


霞  「そうね」


俺たちは外の風景を見ていた。並びそびえるビル群を通り抜け、湖を眺めた。途中富士山も見えた。この景色を見るのは中学の修学旅行以来だろうか。当時は友達と騒ぎまくって、外を見ていなかったが。日本には美しい景色があるのだな。しばらくしたら田んぼの風景が見えてきた。まだ、畝も整っていない。水の張った田んぼに映る空。泥をまき散らしながら帰っていくトラクター。故郷の風景がよみがえってくる。


霞  「名古屋に着いたらしいわ」


そんなことを考えていたらもう名古屋に着いていた。やはり文明の利器は素晴らしい。


その後はトンネルが多い。防音のためか。


霞  「ふふ」


加藤 「どうした」


霞  「まさか、あなたと一緒に鎮守府に行くとは思っていなかったわ」


そこから思い出話になった。始めてあったとき、道に迷っていたとき、抱きしめたとき、図書館に連れて行ったとき・・・本当に彼女とは色々な思い出があった。


霞  「これからもよろしくね」


加藤 「よろしく」


と携帯が震えた。連絡先を交換しているのは田中さんと教師だけなんだが。


霞  「どうしたの」


加藤 「田中さんから」


加藤くん卒業おめでとう。仕事が忙しくて見送り出来なく申し訳ない。あれからよく頑張った。秘書艦と共に頑張ってくれ。困ったときにはいつでも連絡してくれ。


田中さんには本当にお世話になった。彼がいなかったら俺はがれきの下で死んでいたのだろう。ほかにも感謝しきれない。


霞  「ありがたいわね」


加藤 「そうだね」


そんなことを話していたら大阪に着いた。田中さんに簡単に返事をした。


加藤 「あとすこしで岡山だ」


ゆっくりと外を眺めていたら、アナウンスが聞こえた


加藤 「降りる準備しておくか」


霞  「忘れ物はない?」


軍服も証書の入った筒もある。一応席の周りも確認したが問題ない。


新幹線から降りた。生暖かい空気が入ってくる。


霞  「とあえず岡山ね」


加藤 「そうだねこれからが長いさ」


教師に電話を入れておこう。あと、簡単におにぎりでも買っておこう


特急に乗り換え。高知へ向かう。ひたすらに田畑が広がっている。さすがにずっと見ていると飽きて来る。


霞  「風景変わらないわね」


加藤 「音楽でも聴こうか」


携帯を取り出し、イヤホンを片方、霞に渡した。俺もあんまり音楽は聴かないので詳しくないが、動画サイトで適当なものを流した。どうやら最近の流行歌らしい。日が西の山に隠れたころ高知駅に着いた。ここからは鈍行列車で行く。


腹が減ったのでおにぎりを食べた。


空も黒に染まっていく。さすがに疲れてきた。霞はいつの間にかに寝ていた。


終点に着いた。あたりはすでに真っ暗だ。


加藤 「霞、起きな」


寝ているのを起こすのは気が引けたがやむ負えない。


最後の電車に乗る。あと一息で宿毛だ。


俺も眠気に何度も襲われた。ドアが開くたびに入ってくる冷気で目が覚めた。どうやらこれで最後の駅だ。


加藤 「霞お疲れ。」


霞  「着いたの?」


霞は寝起きですこし寝ぼけてている。電車から降りた。ようやく電車旅が終わった。しかしこれからも長い。ここから歩きで鎮守府に向かう。地図をもらっているが、歩きで30分ぐらいかかる。


加藤 「霞、来な」


霞をおぶ、とても軽いが手に持っている荷物で彼女の足を支えるのが難しい。なんとかバランスが取れたので出発した。霞の寝息が背中にかかる。ぽつぽつと街灯があるだけの道路。どこか故郷を思い出す。しばらく歩くと赤いレンガの建物が見えて来る。どうやらあれが鎮守府らしい。


加藤 「霞着いたよ」


もらっていた鍵で門を開ける。だいたい図を見ていたのでどこに何があるかは覚えている。


加藤 「ここが執務室か」


明日からここが俺の仕事場になる。とりあえず隣の俺の私室に入った。もう荷物が置いてある。霞を一回起こし布団を敷いた。本当は他の片付けもしたいがそんな気力はないので寝ることにした。とりあえず田中さんと教師に連絡を入れた。霞はもう布団に入って熟睡していた。電気を消して俺も寝ることにした。


?? 「ハァハァ」


?? ドサッ


目が覚めるともう6時だった。少し動くと物音で霞が起きた。


加藤 「おはよう」


霞  「おはよう、”司令官”」


今日から俺は提督になる。一つの鎮守府を任された。


加藤 「とりあえず朝ごはん食べるか」


食堂のような場所へ向かう。厨房で簡単に朝食を作り二人で食べた。


霞  「今日はどうするの」


加藤 「施設を見て、荷物を整理して周りの人に挨拶に回るかな。」


朝食の片付けが終わった。


二人で鎮守府の探索に向かった。工廠、入渠施設、倉庫、運動場、体育館、武道場、弓道場、寮を見た。倉庫にはほとんど入っていなかった。多少の資源と資材。資源はそんなのだろう。


最後に出撃港に向かう。


霞  「ねぇ何あれ」


彼女の指の指すほうも向く。大きなごみ?


加藤 「人だ」


叫ぶと同時に走り出した。よく見ると艦娘だ。


加藤 「とりあえず運ぶか」


持ち上げ、建物へ向かった。


霞  「とりあえず、入渠の準備しておくわ」


霞と別れ俺は医務室に向かう。医務室といったものの誰もいない。ベッドに艦娘を寝かせた。艤装を外し床に置く。ところどころ傷がある。深海に襲われたか?傷口を確認しようと腕を触ったら違和感しかない。骨の感覚しかない。裾をまくった。目を疑った。目の前には枯れた老木のおような腕があった。痩せているというレベルではない。服を脱がし、腹を見る。やせ細った胴と、大量の痣がある。消える前からさらに上に痣をつけられている。棒のようで打たれたようなもの、殴られたようなものひどいものだ。上を脱がす。彼女の裸を眺める余裕はない。浮き上がったあばら。細すぎる肩。大量の痣に火傷。どう考えても人間か艦娘による暴力だろう。よく見なくてもあばらが数本折れているのが分かる。さらに悪質なのは目立たない所にあるところだ。


しかし、髪は痛み、ボロボロだ。右目に大きくかかる髪をどかす。


霞  「終わったわ。・・・って何やって・・・」


始めは霞は俺がただ彼女の服を脱がせていると思ったのだろうが、すぐに状況を理解した。


霞  「目が・・・」


彼女の右目がない。目はつぶっていたが瞼に厚みがない。右目は抜かれている。


霞  「とりあえず入渠させるね」


といって霞が運んだ。艤装をつけていない霞でも運べるほどの体重だ。艤装から考えて彼女は夕雲型であることは間違えない。ただ夕雲型は艤装のみしかわからない。田中さんの所にもいなかった。


霞  「とりあえず、行ってきたわ」


霞  「彼女は夕雲型の朝霜よ」


16番艦か、霞が判断できるのは理解している。艦娘はこの姿になってあっても認識があるものなら誰か分かるらしい。霞と朝霜は戦争の末期同じ駆逐隊に入り何度か作戦を同じくしている。


加藤 「ちょっと軽いもの作ってくるから。霞は朝霜の様子見ていて。」


俺は食堂へ向かった。確か牛乳とバナナはあった。それでジュース作ろう。バナナは栄養価が高いし、問題は砕いてどろどろにするものがあるか。


食堂に着き、急いで調理器具の扉を開けた。ミキサーがあった。牛乳とバナナをぶち込んで混ぜ始めた。一瞬でバナナはなくなり混ざった。それをもって医務室へ向かう。


一体だれが彼女にあんなことをしたのかマツダに頼もうとするも俺の監視には引っ掛からないからどうしようもない


加藤 「ただいま」


霞  「おかえり」


加藤 「飲むか?」


気が付いたら一人分にしては多かった。


霞  「そう、ありがとう」


霞も確実に動揺している。


加藤 「目、覚めそうか」


霞  「分からないわ、入渠はあと30分ぐらいね」


初日からこんなことになるとは。作ったバナナミルクを飲んだが味はよく分からなかった。


朝霜の入渠が終わった。まだ眠っている。息も脈もしっかりしているがどうなるか分からない。結局、入渠で治ったのは、かすり傷ぐらいだった。艦娘は艤装を展開していればいかなる傷も入渠施設で治る。しかし、艤装を外しているときは普通の人間と同じだ。


田中さんに連絡すべきか考えたがやめた。万が一、彼が犯人だった場合どうにもならない。彼が犯人であることは十中八九ないだろうがリスクはすべて捨てたほうがいい。場合によっては消されるかもしれない。


霞  「このままだったら、栄養失調で死んじゃいそう」


霞の目はうっすら涙が浮いている。


加藤 「ちょっと栄養剤探してくる。」


軍服のまま外に出た。あそこには黒を置いといたから部屋の様子は分かる。と住民が見えた。


加藤 「すみません、薬局ってどこですか?」


住民 「あんたさんだれだね」


加藤 「あそこに来たものです」


住民 「海軍さん?薬屋ならこの川を昇ったところにあるよ」


加藤 「ありがとうございます」


頭を下げてダッシュした。ここか?


加藤 「すみません栄養剤ください」


薬剤師「処方箋は」


加藤 「ありません、急いでいるんです」


薬剤師「しかし」


加藤 「お願いします。責任は俺がとるので」


薬剤師「海軍の方ですよね?」


加藤 「はい」


薬剤師「分かりました。あとで説明してください」


加藤 「ありがとうございます」


薬剤師「はい」


加藤 「ありがとうございます。では」


再びダッシュで戻る。点滴用だが。一応あそこには注射器は置いてあった。


加藤 「ただいま。」


霞  「お帰り」


加藤 「注射器を沸騰した水の中入れてきて」


霞  「分かったわ」


栄養剤を適当に吊るす。あとは静脈を見つけなければ。確か弾力のある真っ直ぐな静脈。朝霜の腕も触る。集中した。少し腕を握った。動きがある場所・・ここか。


自信はないがどうにかする。血管の位置を覚え、注射器を止めておくテープ、アルコールと脱脂綿の準備をした。


霞  「終わった。」


霞が注射器を持ってきた。栄養剤のチューブと注射器を繋ぐ。もう一度静脈を確認し、少し液を出して腕に刺した。血管に空気が入ると固まってしまうのを防ぐためである。


霞  「おつかれ」


肩の力が抜けた。なんとかなった。まだしっかりできているかは分からなかったがひとまず山は乗り越えた。落ち着こうと窓を開けた。目の前の瀬戸内海と太平洋の境目のような場所だ。春らしい風が入って来た。俺の心を落ち着かせる。


しばらくして点滴が成功したことが分かった。霞に朝霜の看病を任せさっきの薬局に向かう。


薬剤師「なるほどそういうことでしたか」


薬剤師に話した。もう艦娘の存在は公表されている。しかしほとんどの人間が見たことないだろう。


加藤 「すみませんありがとうございました」


薬剤師「いえ、しっかり処方箋ももらいましたから」


薬剤師はにこにこしていた。なるほどごまかしてくれたのか


加藤 「ありがとうございました」


薬剤師「お大事に」


現在、艦娘の人権はない。つまり今は人間ではない。人権を認められていないから悲しいこと起こるが、さっきのように俺が艦娘に注射しても問題はない。艦娘は遺伝子は人間と変わらないらしい。今はあの能力の解明を行っているらしい。


加藤 「お疲れ、どうだ」


霞  「変化なしよ」


霞の隣に座る。さっきよりも表情がよくなったか?


加藤 「ちょっと休憩してきな」


霞  「そうするわ」


霞が外に出た。朝霜の手を握る。骨と皮しかない。老女のような手を握った。走っている間にも黒を出し、監視を増やしたがまだ見つからない。なぜこんなことする。やるような奴らの気持ちはどうでもいいが被害にあった艦娘の気持ちは計り知れない。何のために艦娘は生まれた来たか。少なくとも人間の好きなようにこき使われるためではない。


全く起きる気配がしない。


霞  「ほら、食べて」


長い時間ここにいたらしい。霞が昼食を作ってくれた。


加藤 「ありがとう」


霞  「大丈夫かしら」


目の前のやせ細った少女、アフリカ飢餓を教えられたときの写真を思い出す。そのような姿の彼女がいる。彼女をこんな姿にした奴を絶対許さない。


霞  「交代よ」


加藤 「ん?」


霞  「看病よ、朝霜の」


加藤 「もう少し休んだら」


霞  「あなたもよ」


霞の言葉に甘えてすこし休憩した。部屋の整理をしようとしたら霞の私物が置いてあった。サメのぬいぐるみを手に取ってみた。ところどころ毛玉が出来ている。気に入ってくれたのか。あのとき・・ぬいぐるみを抱きしめていた時の顔は忘れられないな。


サメの頭を撫で、荷物の整理を始めた。


出撃港に艤装と装備を確認しに来た。霞の艤装が置いてある。今こそ1つしかないが今後増えていくのだろう。装備の部屋へ向かう。主砲3つ、魚雷発射管3門、電探2基、機銃3つ。学校のものを送ってくれた。教師もありがたい。


海に出た。砂浜が太陽に反射し輝いている。東京湾もだったが宿毛湾も島に囲まれているから波が穏やかだ。砂浜に座る。日の光で少し熱いぐらいだ。目をつぶり座禅した。


心が落ち着き医務室に入る。


加藤 「なぁなんで俺の部屋に荷物しまってんだよ」


霞  「いいじゃない、近いほうが色々と便利でしょう。」


加藤 「いいけどさ・・・」


結局、今日は朝霜の目は開かず、俺も犯人を見つけられなかった


加藤 「霞、部屋でねてきな」


霞  「あなたは?」


加藤 「ここで少し寝る」


霞  「だったら私もここで寝るわ」


説得したが俺が負け、霞もここで寝ることに。月が部屋を照らす。ただ、その光に温かさはない。


朝・・とは言ってもまだ日が昇っていないが起きたら。霞が肩に頭を乗せていた。朝霜はやはり起きていない。黒を倍近く増やしたが見つからない。時間を遅くし。椅子から立つ。霞を動かし、時間を戻す。


執務室へ向かう。昨日の朝以来、ずっと入っていなかった。書類関係の仕事をするらしいが現状その必要はない。


執務室から離れ、外に出る。南のほうにあるからか、東京よりも暖かい気がする。


砂浜を走り出す。ここは砂が柔らかく走りにくい。2,3kmほど走って。足を止めた。


黒で作ったナイフを取り出す。腕に思い切り刺した。血が海に垂れていく。黒が海へ流れる。黒を海へ出すことで深海棲艦の動きが分かるようになればいいのだが。静かな海に黒が流れていく。水に絵の具を垂らしたように黒が広がっていたがすぐに消えて行った。


鎮守府に帰って来た。まだ霞は眠っている。


武道場へ向かった。昨日、防具と竹刀をここに持ってきた。竹刀を取り出す。黒くなった柄を握る。息を吸うと同時に振りかぶり、一瞬で吐く。竹刀が風を切る。ひたすらに竹刀を降り続けた。額に汗がにじむ。手から脂が出る。


日が武道場に差し込むころ、竹刀を袋に戻し、手を洗って医務室に戻る。霞は起きている。


加藤 「おはよう、朝飯作ってくるわ」


霞  「いってらっしゃい」


ご飯とみそ汁、ゆでた野菜に卵焼きを作った。


加藤 「はい」


霞  「いただきます」


いまだに身動き一つしない朝霜の前で俺達は朝食を食べた。


霞  「今日も同じ感じ?」


加藤 「そうだろうな」


本当に朝霜は生きているのか?死んでいるのか?一抹の不安が頭をよぎる。


霞  「ごちそうさま」


霞の声で我に返る。


昨日に物の整理をして特にやることもなく時間が過ぎる。


すると突然誰かが訪ねてきたようだ。


加藤 「ちょっと行って来る」


霞  「いってらっしゃい」


黒を飛ばす。玄関前に人と艦娘がいる。軍服だ。まさか・・・


加藤 「こんにちは」


B提督 「君は加藤少佐かね?」


加藤 「はい、どうぞ上がってください」


後ろにいるのは戦艦長門のようだ。


俺は執務室のソファに二人を座らせつつ、マツダにB鎮守府に向かわせた。


B提督 「君は18だったけ?」


加藤 「ええ、」


黒で周囲を警戒しておく。おそらく朝霜を取り返すため来たのだろう。


B提督 「私からしたら君はまだ子供のようなものだがな」


煽って思考を短絡にさせるのが目的か


B提督 「失礼、では本題といこう」


加藤 「はい」


B提督 「君、うちの部下を拾ったよね」


艤装にGPSでもつけていたのだろうのだろう。


加藤 「あなたの艦娘かは知りませんが一応いますよ」


マツダが侵入した。黒を彼の体から発生させる。証拠を見つけるまでしばらく時間がかかるだろうから何としても稼がねば。


B提督 「朝霜かね?」


加藤 「はい。そうです」


B提督 「そうかい、なら彼女を渡してくれないか?」


加藤 「しかし、彼女、傷だらけでしたが本当にあなたの艦娘ですか」


B提督 「ああ、出撃時にはぐれてしまって遭難している間に怪我をしたんだろう」


加藤 「入渠しても治らなかったのですが?」


速く、見つけてくれ


B提督 「そうか、長門、これを」


長門 「ああ」


ジュラルミンから札束を出してきた。


B提督 「これで手を打ってくれないか」


相手が馬鹿じゃなくてよかった。ここでキレたりしてたら面倒だった。


B提督 「作戦の報酬だと言えば、君の家族も喜ぶぞ。」


安心しろ喜ぶ家族はもう骨も残っていない


加藤 「これで私は何をすれば?」


B提督 「さすが若者話が早い」


B提督 「君が朝霜について知ったものを忘れてくれればいい」


加藤 「あなたの部屋の本棚をどかし降りた階段の先にあるものも?」


ナイス!マツダよく見つけた。


B提督 「な!なぜそれを」


加藤 「あなたをとりあえず、憲兵に送りますね」


B提督 「おい!長門こいつを消せ!」


長門 「了解した」


長門はこいつが何しているか知っているのか


長門 「何を考えている」


加藤 「おわ!」


結構速いな


長門 「まだまだ!」


めんどくせぇ、すきはあるがこのパワーがな・・・


加藤 「ここ!」


長門 「くっ」


スピードはあるが動きは単純だ


加藤 「何回か見れば予想がつきますね」


長門 「こざかしい」


加藤 「さっさと終わられますか」


顎を直撃させる。顎が揺れると脳を揺れる。


長門 「くはっ」ドサッ


加藤 「さて、どうします?」


B提督 「この・・・死ね!」


加藤 「わざわざ銃口を向けて発砲する馬鹿がどこにいるんですか?」


足で拳銃を蹴り飛ばす。彼の腕は折れるべきでない方向に折れている。


加藤 「いま、怒っているの分かりますよね」ガチャ


まずい、誰か来る!


どん!


なに!戦艦が3隻!どこにいた


B提督 「おい!助けてくれ」


陸奥 「あらあら」


伊勢 「日向行くよ」


日向 「そうなるな」


全員艤装をつけている


B提督 「さんざん調子乗った罰だ」


加藤 「一ついいですか?」


加藤 「あなた方はこいつが何しているかご存じで?」


陸奥 「ええ、使えない駆逐艦にお仕置きしているんでしょう」


伊勢 「そうね」


日向 「同じく」


刀を抜く


加藤 「艤装をつけているなら問題ないですよね」


陸奥 「一瞬で消し炭になるのにね」


霞たちの所には誰も来ていない


陸奥 「撃てー」


執務室が吹き飛ぶ。よかったここに大切なもの置いていなくて


陸奥 「もう終わりかしら」


ボトッ、腕が落ちる。肩からは鮮血が噴出している


加藤 「撃つ体制から発射が遅いですね。安心して下さい。入渠すればきれいになりますから」


伊勢 「陸奥!」


日向 「おのれ」


瞬時に間合いを詰める、胴を思い切り割く。花火のように血が噴き出し、バランスが取れず日向の上半身が落ちていく。


B提督 「くっ」


加藤 「どうします?もうあなた帰る鎮守府がありませんけど?」


マツダが処理を終わらせた。誰も殺さず平定させた。


伊勢 「よくも日向を死ねぇ」


一直線に飛んできた。怒りに身を任せている。刀を抜くまでもない。腹に拳を一発見舞わせた。


窓側が吹き飛び血やら腕やらが落ちている。あの時に比べれば大したことない。気絶した伊勢。何もできず転がっている日向。右肩を抑えている陸奥。


B提督 「・・・」


加藤 「さあ、さっさと捕まれ」


B提督 「・・・」ガシャン


加藤 「とりあえず、バケツ持ってきますので」


倉庫からバケツを持ってきて。ぶちまけた。


加藤 「弁償してもらいますよ。あと、俺があなた方斬ったのは内緒で。もし、話したらそれ相応のことをしますよ」


全員を縛り。憲兵に連れて行ったもらった。伊勢と長門を運ぶのは大変そうだった。


霞  「大きい音がしたんだけど・・なにこれ!」


霞に説明した。


霞  「よく無事だったね」


加藤 「まさかあの訓練が役に立つとわ」


加藤 「この金で直してもらうか」


霞  「何これ?」


加藤 「あいつが賄賂で持ってきた。」


よく見たら、部屋の半分は吹き飛んでいた。ここに大事なもの置いていたら殺していたかもしれない。


霞  「朝霜が動いたの!」


加藤 「本当!」


医務室へ向かう。やはりまだ眠っている。表情が和らいでいる気がする。


朝霜 「ん・・」


加藤 「喋った?」


霞  「そうね」


朝霜 「あ、」


加藤 「お!起きた!」


朝霜 「あぁぁぁ」


朝霜が暴れ出した。注射も抜けた。パニックに陥っている。体を床にぶつける、立ち上がり走る


加藤 「おらぁ」


朝霜を押し倒す、軽すぎてほとんど力を入れずに倒した。馬乗りになる。体重をかけるとつぶされたしまいそうだった。手足をばたつかせているが拘束は外れない。


加藤 「落ち着け!」


朝霜 「逃げなきゃあたいは逃げなきゃ」


加藤 「俺はお前を傷つけない。暴れるな」


なかなか落ち着かない。このまま暴れると死ぬぞ。


加藤 「大丈夫だ落ち着け」


細い体を抱きしめる。力を入れたら壊れてしまいそうだ。だんだん抵抗してこなくなった。注射跡が出血している。赤い風船が膨らんでいく。


そのまま抱き上げベッドに戻す。


加藤 「昨日作ったやつお願い」


霞  「ええ、分かったわ」


霞が食堂へ向かう。


朝霜 「あんた誰なんだ?」


加藤 「俺は提督だ」


朝霜 「司令・・・司令、ハァハァ」


加藤 「大丈夫」


骨ばかりの背中をさする。俺の配慮が足りなかった。


加藤 「君はB提督の艦娘かい」


朝霜 「ああ」


そのまま話を始めた。今までされてきたこと。大破すると提督に金属バットで殴られ、戦艦に殴られ、食事は週に一回だけ。他の駆逐艦もそうだったらしい。見せしめにアイスピッケルで右目を潰され、くりぬかれたらしい。


霞  「できたわ」


加藤 「さぁ飲みな」


朝霜 「え、飲んでいいのか?」


加藤 「もちろん。君にために作ってくれたんだから。」


確かにマツダの映像にも朝霜のような駆逐艦ばかりいた。


朝霜は細い腕でコップを持ち飲み始めた。


加藤 「俺は昼飯作ってくる。朝霜はいるか」


朝霜 「あたいは・・・」


霞  「本当のこと言っていいのよ」


朝霜 「もう少し食べたい。」


加藤 「そうか、おかゆでいいかな?」


朝霜 「ああ」



加藤 「お待たせ」


俺たちはパスタ、朝霜は梅のおかゆにした。


加藤 「少し熱いかもな」


朝霜 「ありがとうな」


昼食を済ませ医務室に戻る。霞が部屋を整理していた。


加藤 「朝霜、まだ歩けないか」


朝霜 「いや、体力はあるぜ」


加藤 「本当に?」


さすがに心配になる。あの体で歩けるか不安だ


霞  「なぜ?」


加藤 「初日に行きたかった挨拶回りに」


霞  「そうね」


加藤 「無理はするなよ?」



加藤 「朝霜ここ気を付けて」


目は左右あることで距離感をつかめる(それよ利用した電探もある)しかし、固めの彼女には平面にしか見えない、だから階段は危険だ。


もう、修理屋がやって来た。海軍には他のことを早くしてほしい。


外に出る。ここの風景を見るのは初めてだ。川辺には桜の木がある。いくつか学校も見える。さて、まずはあそこか・・


加藤 「こんにちは」


薬剤師「あら、どうしました」


加藤 「改めてご挨拶に」


やはり薬局だ。彼の協力がなかったら朝霜はどうなっていたか。


薬剤師「よろしくお願いします。こちらが艦娘さん」


加藤 「ええ、こっちが栄養剤のほうです。」


朝霜 「朝霜さ、よろしくな」


薬剤師「よろしくお願いします」


加藤 「君の命の恩人さ」



朝霜 「そうだったか」


薬剤師「あの剣幕で入って来た時は驚いたな。」


加藤 「本当にありがとうございました」



加藤 「ほい、朝霜」


朝霜 「なんだ?」


加藤 「あとは俺が運ぶ」


朝霜 「いや・・」


霞  「あんた、自分の体考えなさい」


朝霜は俺の背中に乗って来た。やはり軽い。本当に背負っているのか不安になってくる


加藤 「では、失礼します」


薬剤師「はい、これからもよろしくお願いします」



その後、漁港や、商店街とあいさつに回った。日は海に差し掛かっている。


加藤 「おつかれさま」


霞  「おつかれ」


無事鎮守府に着いた。夕食を作った。消化のいいうどんにした。霞に朝霜を風呂に連れて行かせたもらった。その間に朝霜の布団の準備をした。俺の部屋に布団を敷いた。


霞  「ありがとう」


加藤 「おかえり」


霞  「明日はどうする?」


加藤 「とりあえず、朝霜の回復を待つかな。そこから遠征やら、出撃やらかな。取り敢えず、俺らは訓練、朝霜はリハビリかな」


朝霜 「あたいのことは気にするなって」


加藤 「そういうわけにもいかないでしょ、うちの一員なんだし」


霞  「そうよ」


電話が鳴る。執務室を直すついでにここに電話を繋いでもらった。


加藤 「もしもし」


田中 「もしもし俺だ。いやぁ聞いたよすんごいことかましたね」


加藤 「もう聞いていたんですか!」


その後、今日の午前に起きた話をした。


加藤 「あの」


田中 「どうした?」


加藤 「何か艦娘を保護する法律とかって必要ですよね」


田中 「そうだね。ただそんな簡単なことじゃないんだよ」


原因は2つある。1つは上が承認しない。田中さんも何度も提案しているがすべてはね返されている。2つは艦娘の人権保護団体だ。もし完全に艦娘の人権が認められていない法律を出したら彼らの不満が爆発する可能性があるらしい。


加藤 「なるほど」


田中 「ああ、だからしばらくは不可能かな」


加藤 「そうですか・・・」


田中 「まぁ気を落とすな君の落ち度ではない」


加藤 「ありがとうございます」


田中 「では、元気でな」


加藤 「はい、失礼します」


電話を切る


霞  「なんだって?」


加藤 「色々、今日のこととか」


艦娘を守る法律が承認されないなら、自分で艦娘を守るしかない。


加藤 「そろそろ寝るか、お休み」


電気を消す。二人の寝息が聞こえてくる。二人の頭を撫でる。二人とも人の温かさを知らずに育った。霞は動物のように扱われ、朝霜は、日々暴力を受けていた。もう、彼女たちは傷ついてほしくない。辛い思いはしてほしくない。


加藤 「おはよう」


霞  「おはよう」


霞は服を脱ぎ始める。白い首が現れる。


加藤 「ここで着替えるの?」


霞  「別にいいでしょう」


加藤 「まぁねぇ」


外へ出た。久しぶりに一緒に走る。梅の花は散りかかっている。


霞  「朝霜、かわいそうだね」


加藤 「ああ、辛い思いはもうしてほしくないな」


霞が話し出した。ここら辺は山の影響で日の出が少し遅い。今はまだ日の光が入ってこない。


霞  「でも、あなたがいるから大丈夫よね」


加藤 「がんばるさ、君も朝霜を支えてな」


霞  「ええ」


信頼されているが、とても不安である。朝霜は心も体も傷ついた。それを癒せる力があるのか。少し走るペースが落ちている。


霞  「安心して、あなたならできるわ」


加藤 「ありがとう」


出来るか出来ないかは分からない。しかし俺はやるしかないのだ、彼女を救うしかない。それが俺の義務なのだろう。


鎮守府に戻る。朝霜が起きていた。書置きには気が付いたらしい。


朝食を食べ終えた。体育館へ行き霞とボール対決をした。朝霜も見ていたがかなり驚いていた。このスピードで投げ合うのは初見は軽く引くだろうな。


朝霜のリハビリだ。彼女は戦闘中、目は使い物にならないだろう。そこで電探での索敵だ。運動場で電探を使い距離を測る訓練をした。俺がひたすら走り、5秒ごとに自分との距離を霞に伝える。普通の戦闘でも電探で距離を測るが、朝霜はどんな状況でも常に距離を測る必要がある。かなり苦労すると思うが彼女がやりたいと言ったため、実際にやってみている。


昼飯を食べていると。海の中の黒の映像にご飯を吹き出しそうになる。


海底に艦娘の死体があった。場所は海から大して離れていない。ちょっと調査しに行くか。


ちょっと貝類探してくると言い出かける。


黒の場所からここが一番近いと思う、服を脱ぎ海へ入った。黒潮が近くで流れるとはいえやはり海は寒い。しばらく泳ぎ目的の場所へ着く。一気に潜水し、捜索した。と何かゼリー状のものが見えてきた。その後すぐこれが艦娘であると気が付いた。艤装のせいで浮かんでこなかったのだろう。艤装からして巡洋艦だ。艤装を外すと自然と浮かんでいった。


俺も浮上し遺体を持ち上げる。水でふやけて原型をとどめていない。何か隠すものがないので。顔を上着で隠す。これを彼女たちに伝えるべきか。


迷ったが決めた。彼女たちにも話す。悲しいことだが伝えるべきだろう。いずれ知ることになるだろうし。自分が危険な状況にあることも理解してほしい。


遺体は置く場所に悩んだが、とりあえず、医務室に置いてきた。


加藤 「ただいま」


霞  「上着どうしたの」


加藤 「実はな・・・」


朝霜 「え・・・」


霞  「そんな・・・」


彼女たちが驚いたのはおそらく、艦娘は沈んだら深海棲艦になると言われているのを知っているからだろう。一部の艦娘は、艦娘で沈み、深海棲艦になり、再び艦娘になったものがいるからだ。そのことから、これが常識とされてきた。実際、俺もそう学んだ。


加藤 「このことは上にも報告する。」


朝霜 「その死んだ奴って今どこだ?」


加藤 「医務室にいる」


朝霜 「見ておきたいんだが」


霞  「私も」


加藤 「見学とかそんなもんじゃないぞ分かっているよな」


霞  「ええ」


朝霜 「もちろん」


加藤 「見るに堪えない姿だがいいな?」


二人とも頷いた。医務室に案内した。


加藤 「これさ」


遺体は帰って来てからタオルで上を隠した。全員で合掌する。屋根や窓をつつく音がする。


加藤 「水で膨れている。」


霞  「・・・」


朝霜 「・・・」


二人とも言葉を失っている。想像の何倍も衝撃だったのだろう。


霞  「この人はどうするの?」


加藤 「葬儀屋さんと相談して埋葬方法は決めるよ。」


朝霜 「かわいそうだな・・」


彼女は何を考えて死んでいったのだろうか、平和か?身近なものの無事か?それは分からないが、もっと生きたかったという無念が伝わってくる。


加藤 「君たちは絶対に天寿を全うしてもらうからな。この戦いで死なせないぞ」


霞  「当り前よ!」


俺も絶対に彼女たちを死なせない、そう胸に誓う。


近くの葬儀屋さんに電話をした。葬式の会場はとれなかったが火葬場が開いているらしくそこを使わせてくれるらしい。埋葬方法は彼女らとも相談し、骨を砕いて海に散骨することにした。


火葬が終わり採骨をしようと向かう。


葬儀屋「では、みなさん合掌を」


葬儀屋さんにも埋葬方法は伝えてある。


加藤 「なんだこれ?」


腰骨の下かあたりから、金属の板のようなものがある。今は熱を持っているので触れないが金色のような塗装に黒の文字が入っているように見える。


板は後回しにして。粉骨に移る。遺骨を袋にいれハンマーで砕く。思いのほか時間がかかる。粉骨が終わり、粉になった骨をツボに入れる。どうやら、板が冷えているようだ。


まだ熱を持っているが持てる程度である。すすをふき取ると輝きを持っている。何か板に文字が入っている。西暦と艦娘の名前、鎮守府の地名が書いてある。


霞  「これってこの人の情報よね」


加藤 「そうだろうな、とりあえずこれは取っておくか」


遺骨を持ち帰り、海へ向かった。散骨をし、合掌した。


朝霜 「艦娘も死ぬんだな」


風が吹いて骨が高く飛んでいく。目で追いかけている。


加藤 「帰ろうか」


鎮守府に帰り、久しぶりにゲーム機を取り出した。俺の部屋は置けなさそうだったので、執務室に置いた。霞と朝霜が始める。俺は受話器を取り、田中さんへ電話した。艦娘の遺体について話した。近くに流れ着いたことにした。


田中 「なるほど、一応、上に報告しようか」


加藤 「でも、もう燃やしてしまって、今、気が付いたんです。申し訳ないです。」


田中 「そうだな気にするな、しかしなぜ艦娘って分かったんだ」


その後、板について話した


田中 「なるほど、それではちょっと証拠にしては薄いが報告したほうがいいな」


加藤 「分かりました。」


大本営に向け手紙を書いた。艦娘であろう死体を見つけたこと、その遺体には金属の板があり、艦娘の名前などが書いてあったことを伝え、近くのポストに入れた。


執務室に戻った、二人はまだやっていた。やはり霞のほうが上手だ。適宜、朝霜にアドバイスをしつつしばらく続けていた。何度か交代して、気が付いた夜になっていた。夕食を作り。風呂に入った。


その後は、新聞や携帯でニュースを確認。国のお偉いさんのくだらないニュースや、芸能人の結婚とかだった。どうでもいいことばかりだった。携帯をいじっていたら広告が出てきた。


「あなたの勇気で救われる子がいる」


画像をタップすると人権保護団体のサイトに飛んだ。艦娘の顔写真が載っていた。下の文章は彼女らがいかにかわいそうかを伝える文章がだらだらと書いてあった。


主張はまともだが内容がずれている気がする。彼女らが軍に無理やり働かされているということだ。まぁ半強制的だが、一応、辞められる。彼女らに自分たちが救われていることを理解しているのか?そう思わせる文章だった。


そのページを去り、携帯の電源を落とす。


部屋に向かうと彼女たちがいた。少し顔が赤い、風呂上りかな


そして、床に就いた。あいつら一体いつになったらここから出るんだ?俺も眠る。


・・なにか聞こえる。寝てから2時間ぐらいか?


朝霜 「はぁ・・うっ」


朝霜?うなされている?


加藤 「大丈夫か」


肩を持つ、何度も軽く叩く、苦しんでいる。汗の量が尋常ではない


朝霜 「ん・・司令・」


起きてくれた


加藤 「大丈夫」


朝霜 「よかった、司令」


こっちに向かって来た。脇腹に腕が絡まる。


朝霜 「よかった、司令、こっちの司令」


前の鎮守府の夢でも見ていたのかな。


加藤 「ちょっと外に出るか」


朝霜を持ち上げ外に出る。春の空気が肌に当たる。桜の花が咲いてきた。


朝霜 「前の司令や長門、伊勢に殴られている夢を見たんだ」


砂浜に腰を下ろす。やはり、その夢か。


朝霜 「で、右目を刺されてもう片方もやられそうになった時、司令が助けてくれたんだ」


腕の締め付けが強くなった。頭を撫でる。


朝霜 「ありがとうな司令、助けてくれ」


加藤 「気にするなって」


加藤 「あいつらも捕まったな」


朝霜は俺に密着してきた。怖かったのだろう。


朝霜 「このままでいいか?」


加藤 「ああ」


朝霜が体重を完全に俺にゆだねた。初めて持った時よりも重くなったがまだまだ軽い、霞によると、痣も消えていないみたい。


加藤 「痣、早く消えるといいな」


朝霜 「司令は優しいんだな」


そして彼女の寝息が聞こえた。部屋に戻り、布団に入れる。俺ももう少し寝よう・・・



1月が過ぎた。桜も葉になっていた。朝霜は痣も消え、すっかり健康体になった。最近、少しづつ遠征や、出撃を始めた。資源も増えてきた。そろそろ、あれから2年か・・・ちょくちょくネットでもそれについてのニュースを見る。


今では朝、三人で走っている。すっかり寒さは消え去り、温かい。宿毛の人たちとも馴染めてきた。たまに魚やら野菜やらを分けてくれる。本当にありがたい。


霞  「おはよう」


朝食を済ませた。今日は遠征を頼もう。


二人は遠征に行った。俺は掃除をする。雑巾で簡単に拭くぐらいだが。さて、今後の艦隊をどうするか、工廠で増やしたいが、まだ資源が安定してないうちは燃費の悪い大型艦を着任させるのは悪手だろう。戦艦は朝霜のことを考えると着任は避けたい・・となるとやはり、水雷戦隊か・・・携帯に電話だ


加藤 「もしもし」


田中 「おう」


田中さんは様子が気になったらしい。朝霜のリハビリが終わり、遠征、出撃を始めたと伝えたと伝えた。


田中 「あれからもうすぐ2年だね」


加藤 「そうですね・・・」


田中 「あそこも復興してきた、見に行かないか?」


加藤 「見に行っても思い出なんてもう残っていないんで」


田中 「そうかい、では、元気でな」


加藤 「田中さんも!」


電話を切った。あれ以来あそこには足を踏み入れていない、復興のニュースも見るが、あの風景はもうない。場所こそあそこでも、もう別の場所だ。


執務室に向かい書類を片付ける、遠征の報告を書いている。結局、遺体の件は潰された。おそらく、戦線の維持が優先なのだろう。あれ以来深海棲艦を上陸させたことはないらしい。最初からそうしてほしかったものだ。


黒の監視はだんだんと増え提督数の半数を超えた。


そんなことを考えていると二人が帰って来た。


霞  「帰って来たわ」


朝霜 「ただいま」


加藤 「お帰り」


報告を受け、昼食を食べた。電気屋さんにさすがにテレビは必要だろって言われ破格の値段で売ってくれた。テレビをつけると、公共放送のニュース番組をやっていた。あのことについての


霞  「こんなことがあったのね」


加藤 「ああ、そこから艦娘の存在が明らかにされた」


朝霜 「へぇ」


霞  「私があそこから出られたけどいいことではないわね・・・」


加藤 「君が落ち込むことではないだろう?」


ニュースでは、親戚があそこにいた人のインタビューが流れていた。俺の存在は明らかにされていないのは身の安全のためだ。もしあの時メディアの耳に入っていたらとんでもないことになっていただろう。


今年も国主催の追悼式があるらしい。国の原因で発生したことをあくまで被害者面で腹が立つ。


昼食を食べ終わると、食材がないことに気が付く。


加藤 「買い出し行くぞ」


霞  「分かったわ」


朝霜 「ああ」


出かける準備をして、出発した。途中、何度か年寄りに挨拶された。


無事に食材を買い、鎮守府に戻ろうとしたら、小学生らしきガキがやって来た


小学1 「こんにちは」


加藤 「こんにちは」


小学2 「これって艦娘?」


霞  「そうよ」


小学3 「うお!喋った!」


加藤 「喋ったって・・・」


小学1 「艦娘ってテレビでしか見たときなかったからな、本当にいるのか」


小学3 「変な奴倒しているんだろ?」


朝霜 「ああ」


小学2 「ありがとな、じゃぁな」


加藤 「台風か」


霞  「そんな感じよね」


朝霜 「まぁ悪いやつではなさそうだな」


鎮守府に帰り、冷蔵庫に食材をしまい、午後はのんびりと過ごしていた。途中でお菓子を食べたりした。


と電話が鳴る


加藤 「もしもし」


田中 「もしもし俺だ」


加藤 「はい、どうしました」


田中 「こんど追悼式があるだろう」


加藤 「ちょっと待っててください」


二人には聞かれたくなかったので少し出ててもらう


加藤 「お待たせしました」


田中 「部下かい?」


加藤 「はい」


田中 「で、本題だ、君、追悼式に出てくれないか?」


加藤 「は!?」


田中 「どうやら国が君が生存者と知ってしまったらしい」


加藤 「・・・」


田中 「それで、君を助けてた俺に連絡が来た。申し訳なかったが、あの状況だとごまかせないからな」


加藤 「なるほど」


いやな汗が出た。国がどうやって知ったかはさておき、あそこに行ったら、あいつらの不手際で発生したことを許したことになりそうだった。


田中 「君の気持ちもわかるが、どうか来てほしい」


加藤 「俺は行く気がありません」


田中 「そうか、気が変わったらいつでも待っている」


どんな理由があろうと、あいつらは許さないあいつらがまともに動いていたら俺は大切な人や物を失うことはなかったし、彼女らも不当な扱いを受けることはなかったのだろう。


加藤 「お待たせ、終わったよ」


二人を執務室に戻した。体が重い。


そのまま夕食を食べ、風呂に入った。今日は早めに寝ることにした。


?? 「・・ちゃん」


加藤 「??」


?? 「お兄ちゃん!」


加藤 「妹?」


妹  「いいよね、お兄ちゃん。まだ生きているんでしょう」


首を・・・力が強い・・・


母  「なんで生きているの」


父  「ああ」


加藤 「・・母さん、父さん・・・」


息が・・・


松田 「俺らばらばらにされたのにお前はなんで」


妹に父に母に彼に・・・その後ろには多くの人間が・・俺の首を絞めて来る


妹  「本当にふざけているよね」


「ふざけんな」「しね!」「一人だけ生きて楽しいか!?」


意識が飛びそうだ・・・


「・・・た」「・・れい」


加藤 「・・・」


霞  「首を絞めていたけど、大丈夫?」


ああ、夢か・・


朝霜 「司令どうした」


頭が痛い


霞  「無理しないで・・すごい汗よ!」


朝霜 「どうした?」


加藤 「妹がいた」


霞  「妹?」


加藤 「ああ・・・」


全て話した、あの日あそこに俺がいたこと、そこで何を見たか、そして俺の変化・・・全て話した


霞  「全部本当?」


加藤 「見てみるか?」


三人以外の時間を遅くした


加藤 「外を見てみな」


朝霜 「何も動いていない・・・」


霞  「ええ」


その後、黒も見せた


霞  「なんで一人で抱えたいたの?」


霞が抱き着いてきた、泣いている?


霞  「そんなことがあったんなんて・・」


朝霜 「・・・」


朝霜も来た。


加藤 「ごめんな」


霞  「あなたって強いわね、悲しいことを乗り切ってあんなに頑張っていたなんて」


加藤 「乗り切ってないさ」


朝霜 「でも悲しそうでもないな」


加藤 「まぁ、悲しむ余裕がなかったし。乗り切ると、あいつらのことを忘れちゃいそうなんだよね」


加藤 「ちょっと風呂入って来る」


霞  「私も行くわ」


朝霜 「あたいも」


加藤 「え?」


霞  「フラフラでしょ」


加藤 「まぁな」


なんか二人も着いてきた。白いうなじが服の中から見せてきた。


久しぶりに浴槽に入った。


霞  「隣いいかしら」


加藤 「ああ」


細い裸体が近づいて隣に座る。


朝霜 「ここいいか」


許可を取るつもりもないのだろう。反対側に座って来た


加藤 「朝霜、きれいになったな」


霞  「そうね、最初の時はびっくりしたわ」


朝霜 「二人のお陰さ」


加藤 「ありがとうな」


霞  「なによ」


加藤 「ここまで心配してくれて」


朝霜 「当り前さ」


霞  「家族なんだし当然よ」


加藤 「そんなこともあったな」


去年の11月か・・もうそんなに経っていたか


霞  「え・・」


朝霜 「司令?」


案の定の反応だ、久しぶりに体の形を変えてみた。


加藤 「すごいだろ?」


霞  「そっくり・・というか同じね」


朝霜 「声も霞だな」


体力がまずいので元に戻る


霞が体を近づけた来た。肌が触れ合う


霞  「私たちもあなたに助けられたから力になりたいの」


朝霜 「そうだ!」


加藤 「ありがとうな」


濡れた髪を撫でる。


風呂から上がり少し寝た。まさか全て話してしまうとはな。俺は彼女たちのことが好きなのだろう。そこらへんの若者の”愛してる”ではないのだろう。彼女らを守りたい。そう思っているし、一番信頼している。


朝起きた。二人は寝ている。多分俺が起きる前から異変を察知して起こそうとしてくれていたのだろう。本当にありがたい。


昨日、残しておいた書類を片付けていると、二人が起きてきた。


加藤 「おはよう」


霞  「おはよう」


朝霜 「おはよう」


朝食を作り、しばらくして、かけなれた電話番号にかける。


加藤 「もしもし」


田中 「どうした」


加藤 「昨日、考え直して行くことにしました」


田中 「そうかい!」


加藤 「あそこで俺は何すればいいのでしょうか」


田中 「どうやら、スピーチをしてほしいらしい」


加藤 「そうですか、なら、こう伝えてください」


1,誰も俺のスピーチの妨害をしない、2,全スピーチをネット上に国として掲載する


田中 「なるほど」


加藤 「あと、これはお願いではなく要求です。従わなければ参加しないと伝えて下さい」


田中 「こわいな、けどそれだとキャンセルされないか?」


加藤 「いや、それはないと思います。俺はあそこからの生存者で国の追悼式に参加することで国民に心情的に訴えるでしょう」


田中 「さすがの思考回路だな。詳しい日程は明日送る。」


加藤 「了解です」



霞  「どうしたの」


加藤 「3日後東京行くぞ」


朝霜 「本当か?」


加藤 「ああ、あれの追悼式に来いって」


霞  「いいの」


加藤 「ああ、いい計画がある」


二人には近海の哨戒をしてもらった。その間にスピーチを考える。


翌日、手紙が来た。専用の水上機が午後来るらしい。その後は、一日前に東京で簡単な打ち合わせをして、追悼式となる。


二人にも準備をさせた。そして、鎮守府の前に水上機がやって来た。俺がいない間は近くの鎮守府が担当してくれるらしい。


パイロ「どうぞ」


加藤 「お願いします」


乗り心地はそこそこだった。2,3時間で東京に着いた。下ではこの3倍かかったのに・・


とりあえず今日はホテルに送られた。一人一部屋のはずが、二人がやって来て狭い部屋で三人となった。


その後は観光した。浅草寺で買い物をしてきた。


部屋に戻り、片付けてから夕食を食べに行った。なかなか豪華だった。


加藤 「狭くね」


霞  「まぁ大丈夫よ」


朝霜 「一緒に寝たいんだよ」


シングルベッドに三人は狭すぎる。


朝もゆっくり起きて、出掛ける準備をした。


霞  「どこ行くの?」


加藤 「学校」


朝霜 「学校?」


海沿いの新築の建物、1月ぶりだがとても懐かしい。


加藤 「こんにちはー」


教師 「はい、・・って君か」


加藤 「ちょっとここに来たので挨拶をしに」


教師 「そうかい、ほら先輩だ」


後ろから少年が来た


生徒 「こんにちは」


彼は年相応の見た目だ、今年の唯一の入学者か


教師 「彼も優秀だよ、2年で大学課程まで終わらせた誰かさんほどじゃないけどね」


加藤 「そうでしたね」


その後、少しの間、談笑し学校を去った。


教師 「また来てな」


加藤 「はい」


爽やかな風が吹く。とても気持ちがいい。


その後はひたすら観光地を巡った。


翌日、俺たちは式場へ向かう。


受付 「あの、加藤少佐で間違えないですか?」


加藤 「はい。」


受付 「ではこちらへ」


なかなか立派だ、どうやら打ち合わせには首相の秘書、宮内庁職員などが来ていた。ほとんどの人らは慣れているのだろうが、俺は大勢の前でのスピーチをした記憶がない。一つ一つの作法を覚えた。そして解散となった。


ホテルに戻り、軽い服に着替える、今日はどこも行かず、部屋でスピーチの内容の確認をした。寝ようとすると二人がすでにベッドを占領している。仕方ないから、机で寝ることにした。


あれから2年がたった今日、朝はシンプルに和食にした。どうやら、式典の前に食事会があるらしい。参加者は政府要人、海軍要人と被災者に俺だ。さすがに二人は入れないらしい。


案内の人が来て、車に乗り込む。食事会場は、式場のすぐ近くらしい。と、大量のメディアが見える。


加藤 「こういうのっていつもこんな感じですか?」


運転手「いや、式場に少しカメラが入るぐらいだけどな・・・君が目的だろ」


加藤 「あ・・・」


そういえば俺は被害の中心地から唯一生還した人間だ・・・


運転手「これ抜けるのは大変そうだね」


加藤 「がんばります・・・」


車を降りる。どうやら俺が誰か分かった瞬間、大きな光が目の前に現れる。真正面には記者が連なっている。壁にごとくいい画が撮れるまでl逃がさないように見える。シャッターが熱い、人が群がり熱がこもる、蜂団子の中心のスズメバチの気持ちがわかる。


無理やり包囲網を突破し玄関に向かう。なんとか建物に入った。どっと疲れが溜まる。おおきな溜息をついた。これって帰りも?


少しして会場へ入る。よくテレビで見るような人がいる。と、あちらも軍服の若者に気が付いたのだろう。


加藤 「こんにちは、加藤修司と申します。よろしくお願いします」


議員 「よろしく」


その後わらわらと集まって来た。何を言っているのかよくわからない。適当に相槌を打っていた。


司会 「お話中の所・・」


司会に注目が集まる。簡単に首相の挨拶をし、時々俺に視線を向けるものもいるが誰もが俺を珍しいものも見ているかのような目で見ている。実際18のガキがこの国の中心の人たちがたくさんいる場所にいるのだから。


色々とあいさつが終わり食事に入る。なかなか高そうなものだ。一人分でうちの鎮守府の一週間分の食費以上な気がしてくる。顔合わせという感じで、挨拶回りはしないようだ。


案内 「そろそろお時間です」


人がぞろぞろと立っていく。俺も立ちはしたがしばらく待つようだろう。会場が寂しくなったころ外に出る。やはりまだメディアがいる。何か大きな生物のようにも見えて来る。まぁ嘆いても行かねばならないのだろう・・・


さっきと同じようにしてなんとか抜け出した。


加藤 「お願いします」


運転手「いやぁすごかったね」


さっきの運転手だ。すぐに会場に着いた。こっちもメディアがいるにはいるがあそこほどではない。夜の食事会もあそこで行うからな。なぜか抜け方を身に着けた。


会場に入る。さっきの人たちがいる。ほとんどが黒のスーツだからか真っ白な軍服はとても目立つ。


と、どうやら天皇と皇后が来たらしい。全員が起立する。さすがは日本の象徴、謎のオーラさえも感じる。


司会が入って来た。黙祷を行い、首相や天皇がことばを述べ、遺族代表の言葉に移る。始めは、身近な人を亡くした人達が話、俺の番が回って来た。壇上に上がる。


俺はあそこで何が起きていたか、誰が死んでどう思った、深海棲艦は怖い、数年前から艦娘がいることを知る、本当は国には深海棲艦の対策をしてほしかったがしょうがないよね、現在の艦娘の状況、艦娘を守る法が必要じゃね、改めて死者への追悼。という内容だった。文面だけなら、家族を失った少年が国を守るため頑張っているってことだが、内容はなかなかだ。艦娘はあの事件の後現れたとされているし、艦娘がひどい目にあっているなんて一般人は知らない。


席に戻るときにちらっと国の要人の顔を見ていると確実に動揺している。まぁ野党への言い訳でも考えているのだろう。


夕食の食事会へ向かう。やはりメディアがいるがターゲットが俺から要人に変わっている。会場へ向かう。ほとんどの人が集まっている。


夕食会が始まる。また高そうなものが並んでいる。天皇、首相の挨拶と献杯が行われた。危うく酒を注がれそうになったがギリギリで気が付いた。


しばらくし挨拶回りに入る。やはりまずは天皇だ


加藤 「こんにちは」


目の前に、かつて神と崇められた存在がいる。


天皇 「緊張しなくていいのですよ」


やさしく笑っている


天皇 「辛かったですよね。頑張ってくださいね」


この一族が2400年もこの国のトップだということが自然と理解できた。


天皇に一礼し、離れる。


首相 「お疲れ、よかったよ」


俺を見るなり動揺している。まぁ、政権の危機まではいかずともしばらくは批判が止まらないだろう。各大臣も同じ感じだった。


そして海軍元帥だ。もと海上自衛隊幕僚長。雰囲気が周りと違う。


元帥 「お疲れ、君ちょっといいか」


おそらく、あのことに着いてだろう。


元帥 「なぜ艦娘があれよりも前からいるか知っていた」


やはり


加藤 「海軍では一般常識なので」


田中さんから知ったなんて馬鹿ではない。


元帥 「そうだな、お疲れ」


一礼して離れる。他要人もそのような感じだった。


そんな感じでようやく夕食会が終わる。ただ、最後に退出するのでしばらくは帰れない。メディアの群れを抜け車に着く。


運転手「おつかれさま」


加藤 「ありがとうございました」


ホテルに着いた頃、電話が鳴った。


加藤 「もしもし」


田中 「そろそろ終わると思ってね。いやまたえげつないことしたね」


加藤 「まあ、はい」


田中 「本当命知らずだな」


加藤 「一度死にかけたので」


田中 「ハッハッそうだな、明日帰るのかい」


加藤 「その予定です」


田中 「そうかい、おつかれさま」


部屋に戻る。さすがに彼女らは眠っている。だろう、静かに扉を開ける。


朝霜 「司令、お帰り」


加藤 「まだ起きていたの!?」


霞  「遅いわよ」


まさか俺の帰りを待っているとわ


加藤 「ちょっとシャワー浴びてくるから寝てな」


軍服を脱ぐと改めて、疲れがやって来た。さっさと入ってしまおう。


ベッドにはすでに二人がいた。きちんと俺の場所は空いている。横になると泥のように眠りに就いた。


起きると二人はもう着替えていた。俺が一番遅いらしい。テレビをつける。すると俺の姿が映っている。それと共に、コメンテーターが何か言っている。その後、昨日の会食場前の様子が流れる。昨日の俺の発言についての追求だ。


携帯を取り出す。ネットニュースもSNSもこのことで話題になっている。ほとんどが深海棲艦の初期対応の批判だった。


朝食を食べようとレストランに行くと。目線が俺に集中するのが分かる。気にせずにここでの食事を済ませる。


加藤 「忘れものはないよね?」


霞  「ええ」


朝霜 「ああ」


3泊したホテルを出る。迎えの車が着いていた。空港へ行き。宿毛へ飛ぶ。久しぶりの鎮守府だ。


加藤 「やっと帰って来た」


霞  「お疲れ様」


朝霜 「おつかれ!」


しばらくは人権保護団体が多く訪れてきた。どうやら署名の数が一気に増えたらしい。協力を頼まれたが忙しく断った。しかし、国会で艦娘の身の安全を守る法律ができた。完全に人権が保障されたとは行かないが、大きな一歩だ。うちの鎮守府も規模を大きくしていった。水雷戦隊を中心とした艦隊となった。


夏の蒸し暑さが執務室に入って来る。


霞  「暑いわね」


朝霜 「溶けそうだ・・・」


結局、二人は俺の部屋で生活し、秘書艦になっている。初めてこのことを知った艦娘はごみを見るような目を俺に向けた来た。


龍田 「艦隊が帰って来たわよ~~」


加藤 「お疲れ、お帰り」


遠征組が帰って来た。彼女らの額にも汗がにじんでいる。この炎天下でよく汗がにじむ程度いるのか不思議である。報告を受け、アイスを食べさせに行った。最近、食堂に給糧艦の間宮と伊良湖がきた。最近はずっと彼女たちにご飯作りは任せている。それと工作艦の明石もきた。装備の改修をしてくれる。


綾波 「司令官、お願いします」


加藤 「おう!」


彼女たちも訓練をしている。二人ほどの頻度ではないが、同じことをしている。今回は綾波型全員とボールだ。結構、神経を使うがなかなか楽しい。


漣  「ご主人様、やばすぎ」


敷波 「1vs6でも全然相手にならない」


朧  「さすがですね、提督」


曙  「最後、綾波とのはやばかった」


綾波は普段はおっとりとしているが、本気になると凄まじい。これがハンドル持ったら性格変わる人間かと実感した。


加藤 「おつかれ、風呂入ってきな」


綾波型を送り、執務室に戻る。ここには涼しい場所はない。どこもかしこも蒸し暑い。これからもっと熱くなるのが信じられない。


加藤 「ただいまー」


二人がいる。そろそろ朝霜の進水日か・・・鎮守府が始まったからいるし、一緒に出掛けたいが、さすがにここを離れられないしな


霞  「ちょっと来て」


霞に呼ばれ部屋を出る。


霞  「朝霜の進水日どうするの」


彼女は服装が薄いため涼しそう。冬になったら寒そうというのだろうが。このことは霞も気になっていたらしい。


加藤 「ネットかな。ここを離れる訳にはいかないし」


霞  「そう考えていると思ったわ、私がいるから行ってきなさい」


加藤 「でも・・」


ここの書類の量は尋常ではない、三人でも厳しいのに一人で裁くのは不可能だろう。


霞  「そんなこと後で考えればいいでしょう。あの子の進水日と仕事どっち取るの」


ど正論を突かれた。仕事は最悪、時間を変えればどうにかなるが、進水日はそうはいかない。


加藤 「ありがとうな、暑さで頭やられているな」


霞  「仕事を取ったら殴っていたわ」


日陰で多少涼しい廊下から執務室に向かう。扉を開けると生ぬるい空気が入って来る。


朝霜 「どうした」


加藤 「ちょっとな」


そんなこんなで昼食の時間だ食堂に向かう。多くの艦娘がいる。


間宮 「あら、提督いらっしゃいませ」


加藤 「ああ、さっぱりしたのをお願いしたい」


間宮 「分かりました。ではそうめんでよろしいですか」


加藤 「お願いします」


しばらくして、そうめんが来た。麺はほどよい硬さで、汁と混ざり合いすすりやすい。


午後は吹雪型が演習を見に来た。基本的な動きは問題ないが細かい部分が気になる。演習していた艦をよび燃料を抜いた。明石特性のカラーボール銃を使い、限られた燃料で回避してもらう。


吹雪 「けっこう当たっちゃいました」


3発ぐらい当たり、白い制服が真っ青になっていた。ほかの子も同じ感じだった。記念撮影し顔を洗いに行かせた。


夕方になっても未だ気温が下がる気配を見せない。


残りの書類を済ませ、シャワーを浴びる。女湯のほうは毎度騒がしい。歌を唄っていたり、どんちゃん騒ぎしていたりしているが、楽しそうで何より。湯船に入るとさすがに干からびそうなので避けている。


部屋に戻ると布団が敷いてある。一度、窓も開けてみたが。ぬるい風しか入ってこなかった。布団も服も薄くなったが、寝苦しい。にすぐの寝られる二人が羨ましい。


7/18日がやって来た。


朝霜 「・・ん・・」


加藤 「朝霜、おめでとう」


霞  「おめでとう」


朝霜 「んぁ・・・おお!ありがとう!」


一瞬寝ぼけて理解できていなかったが、今日が自分の進水日だと気が付く


朝霜 「いやぁ初めてだな祝ってもらえるの」


前の所はあのことがあったのだから祝われるはずもないか・・・


加藤 「今日は出掛けるぞ」


朝霜 「え?」


加藤 「買い物しにな」


朝霜 「仕事は」


霞  「私がやっとくわ」


加藤 「本当にありがとうな。さぁさっさとご飯食べて、行くぞ」


朝食を済ませ。着替える、暑いので半袖、生地の薄い長ズボンにした


朝霜 「行こうぜ」


加藤 「じゃぁ霞、よろしくな」


霞  「いってらっしゃい」


駅に向かう。朝なのにアスファルトからの熱気がする。


ババ 「あらお出かけかい?」


加藤 「はい、少し買い物に」


ババ 「気を付けてな」


顔見知りのおばあさんに見送られつつ歩く


朝霜 「暑いな」


加藤 「店の中は冷房キンキンさ」


健康な腕が顔を扇ぐためせわしなく動く。あんな腕だったのに


駅に着く、周りには誰もいない。電車が着いても誰も降りてこない


朝霜 「うぉー涼しいな!」


ドアが開くと冷気が流れて来る。体の熱が消え去る。


貸切状態の電車に乗る


朝霜 「ありがとな、司令」


加藤 「お礼は霞にいいな一人で頑張ってくれているんだから」


となりの彼女を眺める。首、うなじ、鎖骨、肩、腕、脚・・・本当にここまで回復してよかった


朝霜 「どうした?」


加藤 「ここまでの太さになってよかったって」


普通の女性には言うべきではないのだろうが、あの簡単に折れてしまいそうな体がこうなったのだ


朝霜 「そうだな」


その後も乗り換え駅に向かうまで誰も来なかった。二人の時間を楽しんだ。


電車を乗り換え中心地へ向かう。だんだんと乗ってくる人が増える。しばらく電車に乗り、中心地に着いた


加藤 「降りるか」


もわっとした空気が体を包む。10分ぐらい歩くと、目的の場所に着いた。


朝霜 「ここか?」


加藤 「ああ」


東京ほどではないがそこそこの人がいる。


朝霜 「司令、あれなんだ?」


雑貨屋を指さす


加藤 「行ってみるか」


朝霜 「おう!」


雑貨屋を目指す。どこからか視線を感じる。


客1 「見て、あの白い髪の子」


客2 「あれって艦娘じゃないの」


客3 「その隣のってあの生存者だろ」


朝霜が注目されるのは分かったが、まさか俺まで・・あれから2カ月は経つのに


雑貨屋で彼女は物色したがここには気に入ったものは見つからなかったらしい。そこら辺をぶらぶらしていると、彼女の足が止まる。


加藤 「どうした?」


朝霜 「これ、いいなって」


アクセサリー店を指す。


加藤 「あれ」


朝霜 「あの首についているの欲しいな」


ネックレスか、そっちへ向かう。きらびやかなアクセサリーがある。目が細くなる。


朝霜 「おぉ」


彼女の片方だけの目が輝く。こういうものが好きだったのか・・・奥のほうが見ずらそうだな。腹に手を回し、持ち上げる。


朝霜 「司令、これきれいだな」


加藤 「そうだね」


しばらく、彼女はケースの中のネックレスを見ていた。俺はアクセサリーに興味がなく、あんまりこういうのに触れてことがなかった。一言にネックレスと言っても、重さや色、チェーンの形、それぞれの個性があって面白い。おそらく、俺は買いはしないだろうが。


朝霜 「よし!決めた!」


銀のネックレスを指す。特に目立った装飾はない。しかし、なぜか華やかさを感じる。


加藤 「すみません。これって試しに着けることって・・・」


店員 「大丈夫ですよ。」


店員がケースのカギを開け、目的のものを取り出す。彼女の首に掛ける。白の髪に、銀のネックレス、お互い主張しつつも邪魔もしない、ちょうどいい調和を保っている。銀の曲線は彼女の細い首とよく馴染んでいる。


加藤 「きれいだ・・」


思わず口から声が溢れてきた。


朝霜 「いいな、これ」


加藤 「これ、お願いします」


店員 「はい」


値段は1万と少し。もう少しするものだ思っていたので意外だ。鎮守府ではほとんど使い道がないので金は有り余っている・・・とは言いすぎだが今日の買い物分はある。


そのままネックレスを着けて店を出る。


加藤 「似合っているな」


朝霜 「そうだろ、あたいが選んだから間違いない」


フフッと声が出る。ここまで明るくなるとは思わなかった。そろそろ腹が減って来た。食べ物屋が並ぶところまで来た。串カツに洋食、ファストフード・・・多種多様だ


朝霜 「中華食べたいな」


加藤 「いいね、最近、食べていないし」


中華料理はインスタントラーメンや炒飯以外、作り方がさっぱりだ。


店に入る。どうやら個室制らしい。


メニューにはギョーザ、小籠包、炒飯、麻婆豆腐、油淋鶏、青椒肉絲・・・定番のものばかりだ。


朝霜 「あたいは・・・麻婆豆腐かな」


加藤 「めっちゃ辛そうだけど大丈夫」


朝霜 「けっこう辛いの好きなんだぞ」


朝霜は、麻婆豆腐、俺は、油淋鶏、二人でギョーザを頼んだ。料理が届く。ネギや生姜でできたタレが鶏肉の上で輝く。朝霜の麻婆豆腐は赤く光っている。


タレの酸味が肉と絡み合うが、タレの主張が激しい気もする。おいしくはあるが少し不満でもある。朝霜は赤い液体を口へどんどんと運ぶ。本当に辛いものが好きなのだろう。


朝霜 「司令、肉、一個くれ」


加藤 「いいよ、どこにおく?」


朝霜 「そのまま口でいいよ」


皿を見るが、肉を置くスペースがない、タレを絡ませ、腰を浮かす。彼女の口へ運ぶ。体を伸ばさないと届かない、ようやく箸が口に到着した。小さい口では一口で入らないらしく。しばらくこの体勢を保ってた。


朝霜 「うまいな!」


食べ終え彼女は満足気だ。


朝霜 「ほら司令、食いな」


レンゲを突き出される。


加藤 「いや、辛いのは・・・」


朝霜 「見た目だけさ」


絶対嘘だ・・・しかし、目の前まで赤と白いものが迫っていた。覚悟を決め口を開ける。辛さが広がるも素材それぞれの味も感じる。


朝霜 「な、辛くないだろう?」


加藤 「そうだな」


昼食を済ませ、再び歩き出す。霞にお土産を考えないとな。


加藤 「あの、ハンカチよさそうだな」


朝霜 「ほんとだ行ってみるか」


ハンカチを触ってみる。触感が全く違う。ガーゼのようなもの、粗目なもの。柄も様々だ。


三人で柄違いのものを買った。一つの店で何十分迷っていた、母の気持ちが分かる。


その後も歩いていたが身に止まるものは、ないようだ。そろそろおやつ時だ。入口近くにシュークリーム屋があったのを思い出す。


全国のチェーン店でおいしいと言う噂は聞いていた。そこでシュークリームを二つ買い。外のベンチに座る。


食べ始める。生地は固く歯ごたえが良い。中のクリームは滑らかで、舌に残りやすい。評判通りのおいしさだ。だが、朝霜の顔が暗い。


加藤 「どうした?」


朝霜 「いいのかなって」


加藤 「?」


朝霜 「あたいだけこんないい思いしていいのかな」


あいつと長門型、伊勢型、扶桑型は捕まり、あそこの駆逐艦も大丈夫だろう。


朝霜 「目をやられた後、逃げようとした時、金剛たちに見つかったんだけどあたいが逃げるの手伝ってくれたんだ」


思い出させないように話題にしていなかったが、そういうことか、さすがに協力者が居たか。


加藤 「いいと思うよ」


朝霜 「でも」


加藤 「君が命がけでここまで来て助けを求めたのから彼女らも助かったんだ。」


加藤 「むしろ君は称賛されるべきだと思うよ」


朝霜 「そうか・・・」


あそこで駆逐艦と共に金剛型が居たのはそういうことか。朝霜の逃走を手伝ったからか、暴力の跡はあったがそれ以外は特になかった。


加藤 「負い目を感じることはないよ」


頭をゆっくり撫でる。さらさらした髪だ


朝霜 「ありがとうな、司令」


加藤 「今日はお祝いなんだから元気だしな」


シュークリームを食べ終えた頃には、元気が戻っていた。


加藤 「ちょっとトイレ行ってくる」


朝霜 「じゃぁあたいも」


加藤 「ここでな」


個室に入る。携帯を取り出す。


加藤 「もしもし、霞、俺だ」


霞  「どうしたの」


加藤 「ちょっとお願いがあってな・・・」



霞  「分かったわ。うまくいくかは分からないけど」


加藤 「頼んだ。」


個室から出ると、もう朝霜はいた。ちょっと長く話したな


加藤 「お待たせ」


朝霜 「今来たとこさ」


黒で見ていたがそれなりの時間まっていてくれた。


再び歩き始めるとおもちゃコーナーに何かを見つけたらしい。


朝霜 「あれ、かわいいな」


ウミガメのぬいぐるみを見ている。なぜだろう既知感がある。


加藤 「霞も君も・・・」


今回は低い位置にあったので彼女がすぐに手に持った。案の定、ぬいぐるみを抱きしめていた。しばらく散策をしていると電話が鳴る


加藤 「もしもし」


霞  「どうにかなったわ」


加藤 「ありがとう」


朝霜 「どうした」


加藤 「霞から仕事のこと」


その後、ゆっくりとして帰ることにした。


帰宅時間のため人が多い。椅子が取れなかったので立ちっぱなしだ。


最寄り駅に着く。相変わらず蒸し暑い。


朝霜 「ありがとな、司令」


小さな手が俺の手を握る。


加藤 「いいえ、いつのお世話になっているからな」


首のネックレスが輝いている。


加藤 「ただいまー」


朝霜 「ただいま・・っうおっ」


何か大きいものが朝霜に突進していった。


?? 「朝霜ォーー久しぶりデース」


加藤 「おつかれ霞」


霞  「あっちの提督の理解が早かったからよ」


朝霜 「うぐ・・・って金剛!」


金剛 「That's right!金剛デース」


比叡 「気合入れて来ました!」


榛名 「お久しぶりです」


霧島 「元気そうでよかったわ」


朝霜 「なんでいるんだ?」


霞に頼みあそこの提督に金剛型を連れてきてもらった。隻眼の朝霜と言ったら。彼女らは理解したらしく、ここに来てくれた。


金剛 「こちら転属希望書デース」


加藤 「は?」


比叡 「ここの鎮守府に行きたいって言ったら司令にOK出たので来ちゃいました」


加藤 「あっちは戦艦4人もいなくなって大丈夫なの」


霧島 「ええ、あの後、別の扶桑型と伊勢型が着任したので」


榛名 「榛名は大丈夫です」


加藤 「まぁいいけどさ」


書類も正規の物だし、後であの人に連絡しておこう・・・


朝霜 「よろしくな!」


金剛 「提督よろしくお願いしマース」


加藤 「ああ、よろしく」


霧島 「荷物はどこに」


あいつら、ここに着任する前提で来やがって・・ああ、燃料が枯渇しそう・・・


加藤 「あっちの適当な部屋入って。」


金剛型が来て、騒がしくなりそうだ・・・


金剛 「hey!朝霜一緒に部屋に帰りまショウ!」


朝霜 「いや、あたいは司令の部屋に・・・」


金剛型「え・・・」


やばい、この目は軽蔑の目だ・・・


朝霜 「あと霞もいるぞ」


ああ・・・


金剛 「heyテイトクーちょっといいデスか?」


榛名 「これは榛名も大丈夫じゃないです」


説明をした。ずっと彼女らが居候していたことを


金剛 「ナルホド・・テイトクには朝霜を助けられた御恩がありましたね・・・」


比叡 「ええ、司令の趣味じゃなくてよかったです」


榛名 「これなら榛名も大丈夫です」


霧島 「理解いたしました。」


とんだ災難だった。金剛型には執務室から出てもらった。軍服に着替える。


朝霜 「ありがとな、司令、霞」


加藤 「どうも」


霞  「いいえ」


残った仕事を済ませ、寝た。部屋には、ウミガメぬいぐるみが新たに加わった。


朝、いつも通りの時間に起きる。いつもの道を走り始める。この時間でないと熱中症で倒れそうだ。金剛型が着任して、何やかにやで1年が過ぎた。秋の気配がしている。うちの艦隊は空母の中心とした艦隊となっている。戦艦は金剛型のみのため航空艦隊が主力だ。相変わらず霞と朝霜あそこにいる。俺も20になった。階級は少将になった。試しに酒も飲んでみたが体に合わず、一回飲んでそれきりだ


戦況はほとんど変わらない。黒で分かったことだが深海棲艦は沈んでも死んでいないことが分かった。一部は艦娘になり、一部は回復し、戦線に復帰している。他の方法で調べた結果を上に報告すると、今回はしっかり公開した。よほどあれがトラウマだったのだろう。


霞  「呉の大将から手紙が来ているわよ」


呉の大将?特に関りはないはずだが・・・


手紙の内容は演習に来いというものだった。あっちから誘っておいてそれはないだろう。


加藤 「OKって伝えるか」


加藤 「もしもし、宿毛の加藤です」


呉  「ああ、手紙が届いたのかね」


加藤 「ええ、よろしくお願いします。」


呉  「ああ、よろしく。すぐに編成を渡すから」


加藤 「はい、私もすぐに」


呉か・・ここからだとすぐか


霞  「編成は?」


加藤 「霞、朝霜、赤城、加賀、翔鶴、瑞鶴かな」


霞  「航空戦?」


加藤 「それはあとで」


俺は外へ出る。まだまだ残暑が厳しいが、弾に吹いて来る、潮風が、秋の到着を知らせているようだ。


加藤 「よーー」


弓道場へ向かう。うちの精鋭だ。死ぬほどの訓練を乗り越えて来たのだ。


赤城 「あら、提督、今日も艦載機を枯らしに?」


加藤 「第一声がそれなのか」


明石に作ってもらった対空兵装で何度も彼女らが艦載機を枯らして来たのは事実だが。


加賀 「で、御用時は」


最近、空母は自分自身での訓練をしてもらっている。


加藤 「一航戦と五航戦、来週呉に行くぞ」


瑞鶴 「なんで」


加藤 「演習に」


ここの弓道場では、一、ニ、五航戦と祥鳳型がいる。おそらく他のメンバーは今、鍛錬をしているのだろう。


翔鶴 「航空戦ですか」


加藤 「いや・・・」



演習の日がやって来た。ほとんど暑さが消え去ろうとしていた。この時期は気候が変わるのが一瞬だ。メンバーは海にいる。他の艦娘たちが見送りに来ていた。


瑞鶴 「なんでロープがあるの」


加藤 「じゃ、行ってくる」


瑞鶴に着けた水上スキーに乗る


瑞鶴 「提督さん!なんで」


加藤 「こっちのほうが速いんだよ。がんばれ16万馬力」


加藤 「加賀の速力に合わせて行くか」


風を切って進んでいく。秋晴れが気持ちいい。


翔鶴 「提督、こんな装備でいいのでしょうか」


加藤 「いいんじゃね」


赤城 「これで負けても知らないですよ」


加藤 「勝つ前提の装備なんで問題なし!」


呉  「そろそろか・・・」


大和 「あれではないですか?」


呉  「そうだな」


蒼龍 「けど7人いる気が」


「ああああああ」


飛龍 「何!?」


加藤 「瑞鶴、スピード落とせ!」


瑞鶴 「もう、無理よ」


加藤 「ぶつかるーーー!」


ザッパーン


ガシッ


加藤 「ふぅー、お待たせしました」


武蔵 「なんでピンピンしているんだ」


危ない、あそこで落ちなかったら壁に激突していた。


加藤 「では、お願いします。」


呉  「ああ、長門よろしく」


長門 「ああ、各艦準備はいいな、では、始め!」


うちは全員が突撃、あっちは、重巡(妙高、那智)、戦艦(大和、武蔵)、空母(飛龍、蒼龍)の順でいる。


呉  「なぜ、発艦しない」


加藤 「艦載機ないですし」


呉  「は?」


装備 霞 秋月砲✕2 魚雷 朝霜 D砲✕213号改 空母 15.5副砲✕2 32号 3連機銃


加藤 「・・・です」


呉  「ふざけているのか!」


加藤 「まぁ見ていてください」


空を埋め尽くす艦載機、あの時を無性に思い出させる。発艦するも、霞、空母の対空砲火で消し去る。大和型は、長距離射撃を試みるも失敗、妙高型も同じく


呉  「なんだこれ」


加藤 「聞いてみます?」


インカムを渡す。呉の大将は目を大きくさせた。


呉  「なんだこれ!」


朝霜 「セ10,56,100,ホ13,88,3・・・」


加藤 「常に彼女が電探で敵の艦載機、砲弾の発射の位置を言っています。」


艦載機 セ(戦闘機)バ(爆撃機)コ(攻撃機) 旗艦の位置を0、0、0方角とし縦、横、高さ,の順(前二つは3桁以上、高さは4桁以上省略)


砲撃、雷撃 ホ(砲撃)ラ(雷撃) 縦、横は伝え方は同じ。最後は何番艦か


加藤 「・・・です」


そんなこと言っていると相手に間合いに侵入。艦載機はすべて枯れ、きれいな空が広がっている。


加藤 「妙高、右60。那智、右70。大和,左20。武蔵、右75。」


呉  「今度はなんだ!」


加藤 「彼女らの避ける癖です妙高なら右に60パーセント避けやすいとか」


昼戦は終わり、武蔵、無傷、妙高、那智、小破、大和、中破、二航戦、轟沈判定。こちらはほぼ無傷


呉  「よし、夜戦ではこちらが有利。畳み掛けるぞ」


加藤 「二人を援護しつつよろしく」


周りを暗くする、夜戦で駆逐艦は鬼と化す。戦艦並みの攻撃力を出す。そして、夜戦は敵を見えにくいため朝霜の電探が役立つ。


呉  「なぜ、空母が夜戦をする!」


加藤 「空母が夜戦をしないのは2つの理由があります。1つは艦載機の発着艦が不可能なこと。2つは距離が離れすぎているからです」


現在、空母は前線にいる。そもそも艦載機を持たず副砲のため問題はない。


夜戦では、駆逐艦が大和型を轟沈判定、空母四人で妙高型を轟沈判定とした。


加藤 「ありがとうございました」


呉  「・・・」


呉の大将は呆然としていた。彼を無視して帰路に着く。


加藤 「おつかれさま」


霞  「おつかれ」


瑞鶴 「今度は艦載機、飛ばしたいな」


加賀 「あなたは無理よ下手すぎる」


二人が喧嘩を始めた。もはやこれはスキンシップのようなものだ


加藤 「そのまま喧嘩しているなら、間宮さんに夕食、焼き鳥と七面鳥にしてもらおうかなーー」


そう言うと基本的に喧嘩は終わる。


朝霜 「いやぁ、電探使うのは疲れるわ」


電探で索敵しかつ味方に距離を正確に伝えるのだ。疲れるに決まっている。と見慣れた風景が見えてきた。


加藤 「翔鶴。さっきの二の舞にならないようにな」


翔鶴 「ええ、がんばります」


帰りは翔鶴にした。円を描きながらスピードを緩め。俺は適当なタイミングで手を放す。あとは波に乗る簡単なお仕事。


赤城 「さすがですね」


翔鶴 「ありがとうございます」


「みんなー帰って来たよー」


うちの子たちがやって来た。圧勝したと聞いて喜んでいた。


金剛 「hey!テイトクー戦果resultデース」


加藤 「お疲れ。」


報告書に目を通す。数名小破だが相手を圧倒していた。


補給をさせ、各々帰らせる。



加藤さんから、最近、連絡はない、現在、私は、艦娘を守ることをしつつ別件の調査をしている。と、頭の中に映像が流れてきた。私は走り出す。どうやら今回は山奥らしい。眠った艦娘が箱に詰め込まれ運び出されそうだ。どうやら、外国人を一定数いる。


この小屋か・・・


扉をぶっ壊すとなかなかの体格の男が数名いる。


男1 「何だお前ふざけているのか?」


男2 「回れ右したほうが身のためだぞ」


マツダ「断る」


その瞬間、一斉に襲い掛かって来た。しかし、こちらのほうが上手だ。一人ずつ片付ける。ドタドタと男たちが倒れる。部屋はすべて処理した。艦娘を解放しようとしたら。


男3 「おい、動くな」


男4 「動いたらお前の頭とこいつの頭が無くなるぞ」


見えはしなかったがおそらく4人と艦娘が1人。


なにかを刺す音がする。男たちの叫び声も聞こえる。静かになり後ろを向くと、肩や腕を抑えうずくまる男たちがいる。そいつらを縛り、艦娘を解放する。いまだ眠っているが。山を降り。近くの憲兵隊にバレないようにそいつらを置いておいた。



ふぅ危ぶなかった。マツダが捕まると厄介だ。マツダの黒を男たちの後ろへ行かせ。とげのようにさせた。彼らからしたら。いきなり何者かに刺されたのだ。ただ、あれを見る限り。人身売買に違いない。艦娘を誘拐し、海外へ売ろうとしていたのか?


警戒すべきは提督だけではない・・・どうするか


そんなことを考えつつ食堂に向かう。さすがに焼き鳥と七面鳥ではなかった。金剛型と南雲空母が大食い対決をしていた。まぁ食費は上が持っているからこっちは痛くも痒くもないのだが。


霞  「また、バカやっている」


加藤 「食いもん粗末にしていたら怒るけどしっかり食っているしな」


朝霜 「あいつらの胃袋どうなってんだ?」


大食い対決を横目に俺たちは夕食を済ます。


出撃の報告書をまとめ。風呂に入る。隣がうるさいが気にせずに入る。こっちに聞こえているの知らないのか、最近胸が大きくなったとかも話している。


霞  「邪魔するわ」


朝霜 「来たぜ」


あっちが混んでいるときよく二人は来る。


赤城 「あら、お三方」


加賀 「こんにちは」


飛龍 「提督、おつかれ」


蒼龍 「おつかれー」


加藤 「大食いは」


加賀 「鎧袖一触よ」


しかもいつの間にか空母組もこっちに来るようになった。もうここ男湯じゃ・・・


加藤 「はぁーーー」


霞  「どうしたの」


加藤 「あれ?言ってなかったけ?」


朝霜 「とくには聞いてないぞ」



ぼや用で市役所に行ったとき


教委長「やぁ、君があそこの提督だよね?」


加藤 「そうですが」


教委長「私は宿毛市教育委員会委員長さ」


加藤 「あぁこんにちは」


教委長「君にお願いしたいことがあってね」


加藤 「はぁ」


教委長「できれば君の鎮守府にここの小学4年生を見学をさせたくて」


加藤 「なるほど、私は問題ないですが上がどうか分からないので後日連絡します。」


教委長「分かった。出来れば1月後にやりたい」


加藤 「分かりました。」



加藤 「と、いうことが」


赤城 「へぇ小学生ですか」


加藤 「上の許可も降りたからできるんだけどね何をすっかだな」


飛龍 「私たちも考えるよ」


加藤 「どうも、とりあえず上がるわ」


蒼龍 「何度見ても提督の背中は痛々しいね」


加藤 「うちの空母の背中もなかなかだけどな」


加賀 「そうしたのはどなたでしたっけ」


加藤 「さ、さぁね」


空母には重点的に訓練させていた。何回も腕立て、弓打ちをした。その結果背筋がバッキバキに。女性の体をにここまでさせてしまったのはかなり後悔しているが、彼女らは気にしていないらしい。彼女たちも俺が昔何があったかは知っているが、あの力と黒は未だ三人の秘密である。


翌日、すぐに教育委員長に連絡し、宿毛の小学4年生150人がここに来ることになった。艦娘の協力も得てなんとか、プログラムが完成した。



先生 「今日はよろしくお願いします」


小学 「よろしくお願いします」


その日がやって来た。運動場に子供たちを集めた。どうやら市内全体で150人らしい。少子高齢化は恐ろしい・・・


加藤 「みなさんこんにちはここの提督をしている加藤と申します・・・」


今回の予定と注意事項を伝えた。


鎮守府の施設案内は各小学校別に分かれる。各場所を俺、霞、朝霜、金剛に分け、バトンタッチ方式で行う。


加藤 鎮守府本館(執務室や工廠など)


霞  運動系(弓道場など)


朝霜 その他(食堂など)


金剛 海上で艦娘の紹介


加藤 「まずここが執務室です。ここで俺が雑務をしている。」


小学生たちにはかなりここに興味があるらしく、かなり好評だ。


全員に紹介が終わり、昼食の時間だ。ここには一人で人間数百人分食べる空母がいるので問題ない。間宮さんたちに頼み作ってもらった。みんなおいしそうに食べていて何よりだ。


午後は簡単な体験活動。カラーボール銃で艦娘を狙う。


少年1「ゲームみてぇだな」


少年2「楽勝だろ」


回避役は霞に頼んだ。彼らはゲームで鍛えたエイム力を見せてやるとか言っていたが一発も当たらなかった。


少女1「早すぎる・・・」


少年4「あれはやばい」


どうやら俺にやってほしいということだったのでやってみた。


数発発射しなんとか1発かすらせた。周りから、拍手が聞こえた。霞にアイコンタクトで謝りつつ体育館へ向かわせる。


加藤 「おつかれさまでした、何か質問は?」


少年5「提督さんって3年前の事件の生存者って聞きました」


そのことを聞かれるか。言い方からして親にでも聞いたのだろう。


加藤 「ええ、そうですが」


少女2「そこってどんな感じですか」


完全に興味がそっちに向いてしまった。話さない理由もないので話すか


加藤 「ええ、一応聞きたくない人は外に出ててください」


俺があの時なにを見たかこと細かく伝えた。教室に入っていった爆弾。吹き飛ばされた同級生、体を噛み千切られた彼、国道近くで見た。ばらばらの死体。あの時のことをすべて話した。


周りを見渡す。涙を流す子、脳の処理が追い付いていない子、唖然としている子。先生たちもそうだった。基本的にニュースでは、被害後のがれきの山しか映していないだろう。仮にあの時あそこでカメラでも取っていた人はみんな死んだだろうが。


最後に上を脱いだ。一切消えなかった火傷だ。騒ぐ子もいた。服を着なおし話始める。


加藤 「気分の悪いことを話したり見せていして申し訳ない。ただ、深海棲艦の恐ろしさとそれと戦っている艦娘たちには感謝してほしい。」


気持ちがいい返事が聞こえた。


その後、すこし質問を返し、今日の見学を終えた。


先生 「ありがとうございました」


加藤 「こちらこそ、最後は申し訳なかったです」


先生 「いえ、あなしか知らないことですし、子供たちも理解が深まったと思います」


加藤 「そうですか、ではお元気で。」


今日の見学は終わった。


霞  「おつかれさま」


加藤 「おつかれ」


朝霜 「司令、よかったのか?背中?」


加藤 「まぁ減るものじゃないし」


門から離れ執務室へ向かう。日が西に傾いていた。夕食を食べに食堂へ向かう。



霞  「おはよう」


加藤 「ああ」


霞  「どうしたの?」


加藤 「新しい編成が出てきた。」


最近では珍しい。基本的には深海棲艦は分隊のようなものを作っている。そこの制海権を奪うために艦娘は戦っているが、深海棲艦はほとんどの場合、すぐに復活することを見つけた。現在は何度を出撃して、一部を艦娘に戻そうとしているがジリ貧だ、敵が強力だと道中や、主力艦隊との戦いで沈んでしまう場合もある。しかし、今はそれしかしようがない。


新しい編成が現れることはそこそこ起きる。おそらく、沈んだ艦娘が深海棲艦になり新たな分隊を作ったか、減った分隊を合体させたのだろう。


朝霜 「おはよう」


朝霜も入って来た。一緒に寝てはいるが起きる時間は違う。非常時でなければ好きな時間に起きている。


霞  「敵編成は?」


加藤 「分かっているところ、空母棲姫、戦艦棲姫2隻、空母ヌ級2隻、重巡ネ級、軽巡ツ級2隻、駆逐ナ級2隻が分かっている。」


朝霜 「なかなかだな」


確かに、相手は連合艦隊だ。近くには潜水艦がいる報告がある。姫級がさらに報告されると考えると・・・


加藤 「空母機動部隊で行く。第一艦隊旗艦、羽黒、鈴谷、瑞鶴、翔鶴、加賀、最上。第二艦隊旗艦夕張、磯風、朝霜、霞、熊野、阿武隈」


霞  「なんで空母を旗艦にしないの?」


加藤 「今回は対空砲火も敵艦載機も強いとなると全体の指揮は難しいだろう」


朝霜 「なるほど」


加藤 「さっさと朝飯食ってこい!」


霞  「行きましょう」


朝霜 「ああ」


彼女らは走って食堂へ向かう。俺は、執務室の端のマイクに口を近づける


加藤 「こちら加藤、こちら加藤以後、名前を呼んだ奴は30分後食事を済ませ、執務室にこい。繰り返す・・・」


その後、俺は飛行場へ向かう。


加藤 「臨時だが飛行機の整備は大丈夫ですか」


整備士「問題ないです」


加藤 「では、これを」


整備士「了解です」


基地航空隊の援護を頼み、執務室に戻る。海図を広げる。


加藤 「ここは近くに島がない、潜水艦もまずい。主力艦隊に向かう前は、陸上の奴らに空襲されるかもな・・・」


霞  「お待たせ」


加藤 「ああ、作戦会議だ」


しばらくは、島にへばりつき潜水艦を見つけやすいようにする。空襲の可能性が高いので空母と最上は墳進弾幕、夕張、阿武隈で先制雷撃、磯風は防空、朝霜は索敵とボスへの殴り、霞も同じく。羽黒で火力を稼ぎ、鈴谷、熊野は弾着観測射撃、最上は制空稼ぎ、加賀、翔鶴は艦載機で殴り、瑞鶴は橘花と制空。


加藤 「最上は水戦ばかりで申し訳ない」


最上 「提督気にしないでボクは搭載多いし」


加藤 「正確な位置は朝霜に頼むが、それぞれしっかり敵を見ろ!」


一同 「はい!」


加藤 「では、出撃してくれ」


いやな予感がする。黒で探しても11隻しかいない。もう1隻はどこだ?半径200kmにはいない。いったい・・・


金剛 「テイトクー」


加藤 「どうした」


金剛 「私が手伝いマース」


加藤 「ありがとうな」


金剛を臨時補佐とする。ここから目的地までは4000kmある。昔の艦艇なら数日かかるが。彼女らは一日もかからずでつく。艤装をつけていると食料を食べなくても問題ないらしい。


海図とにらめっこして、作戦をなんども考え直す。戦艦棲姫は空母の一撃で小破できるかどうかだ。だとすると昼戦で空母棲姫、戦艦棲姫、ヌ級は沈める必要がある。かなり厳しいが最悪、空母は中破させれば脅威はさる。姫級が3隻、かなり厳しい。対空砲火もきついからまともな攻撃は撃ち落される。


金剛 「提督、すこしリラックスデース」


確かに焦っていた。深呼吸し、再び海図を見る。


加藤 「ここって大きな海溝あるよね」


金剛 「ええ、かなり深いはずデース」


もしかして・・・


この海溝にいる?


黒で水深3500mまでは探した。そこの海溝を重点的に探す。・・・いた!なんだこいつ・・・見覚えが一切ない。


加藤 「こちら加藤、未発見の一隻は現在海溝の奥深いと考えられる。まだ艦種は不明。気を付けて」


羽黒 「了解です司令官さん」


数時間後、目的地付近に近づいたと報告を受ける。


加賀 「空襲が来たわ」


加藤 「了解、戦闘機だけでさばいてくれ」


瑞鶴 「問題ないわ」


どうやら無傷でしのいだらしい。


その後、潜水艦に遭遇したらしいが。島を背後にしなんとかやり過ごしたらしい。


金剛 「大丈夫そうですネ」


加藤 「これからさ」


これからは島を使えない。接敵の可能性もある。


翔鶴 「敵艦発見いたしました」


加藤 「編成は?」


最上 「空母1、と他は水雷戦隊だよ」


加藤 「了解そいつらを殲滅してくれ。」


ものの数分で戦闘は終了。これは主力艦隊でないので進撃する。


あいつはまだ出てこない。


羽黒 「これより主力艦隊と接敵します」


加藤 「了解、無理はするな」


黒を上空に飛ばし様子を見る。


予め分かっている編成が現れる。基地航空隊でツ級を落とせた。こちらの艦載機は、制空権を取り大半を残すことに成功。彼女らの艦載機の指示はさすがだ。よく、あの量の艦載機を動かせるな。さらにナ級2隻を沈める。


戦艦棲姫の砲撃。予測して動かないと避けられないが翔鶴は判断を誤る。


鈴谷 「翔鶴さんが中破したよ、鈴谷が護衛に入る。」


やはり姫級3隻は厳しい。なんとか、阿武隈と霞が魚雷を当てることができた。ヌ級、ネ級を沈めた。


加藤 「何者かが浮上する。気をつけろ」


かなり速い。やはりあいつだったか


夕張 「確実に深海棲艦だけど、艦種は不明」


新たな種類の敵か。


攻撃機が磯風に迫っているが回避が間に合わない。もろにくらい大破。夕張も磯風に気を取られ爆撃機に気が付かず大破。


霞  「磯風、夕張大破、下がらせるわ。」


やはり厳しい。


加藤 「空母それぞれ攻撃機は?」


加賀 「30」


瑞鶴 「10」


翔鶴 「13」


加藤 「阿武隈、霞残りの魚雷は?」


阿武隈「8本」


霞  「5本」


加藤 「戦艦棲姫に十字を行う。最初は攻撃機で回避狙いをそれぞれで」


一同 「了解」


戦艦棲姫は耐久こそ多いが回避が低い。攻撃機で魚雷を流し。回避したところに二人の魚雷を流す。


加賀 「戦艦棲姫1隻轟沈、1隻大破よ」


加藤 「お疲れ。」


残る敵はナ級、戦艦棲姫(大破)、空母棲姫(小破)、ヌ級、そして謎の敵。こっちは翔鶴中破、夕張、磯風大破


加藤 「羽黒、ナ級を頼む。最上は鈴谷と交代。二人でヌ級を頼む」


重巡 「了解」


羽黒 「ナ級沈めました」


鈴熊 「こっちもなんとか」


よくやった、しかし残りの兵装がジリ貧だ。


加藤 「空母は囮を変なのに頼む」


加賀 「すべて」


加藤 「ああ」


空母はすべての艦載機を発艦。戦闘機を特撃させる。攻撃機、爆撃機は遠回りして裏に回る。


加藤 「重巡組は空母棲姫を中破にしてくれ」


加藤 「朝霜、索敵を引き続き頼む」


朝霜 「ブツブツ」


空母棲姫に艦載機を出されると厄介だ。


砲弾と魚雷が刺し違えるようにお互いに当たる


鈴谷 「中破にしたよただ鈴谷と熊野は中破しちゃった」


加藤 「お疲れ、旗艦に弾幕張ってて。」


瑞鶴 「準備OKよ」


加藤 「始めるぞ」


重巡組の弾幕、戦闘機で正面に注目させる。爆撃機に急降下を行う。あまりダメージが入っていない。問題はない後ろから扇状に攻撃機を展開。魚雷投下。無数の魚雷が謎の敵を襲う。


ドーン


無数の魚雷が命中。しかし中破か・・・かなり固いな


あいつはすかさず反撃。弾速は速い


加賀 「やられました」


加賀を一撃で中破・・攻撃力が高い。


加藤 「引きなさい」


瑞鶴 「邪魔な奴沈めちゃうね」


加藤 「戦艦棲姫を頼む」


大破し攻撃力が落ちたもののまだ撃って来るので回避が必要なのだろう。


戦闘機を加賀、爆撃機を翔鶴に指示させ、瑞鶴は攻撃機を戦艦棲姫に向ける。数機でも撃破した。


瑞鶴 「爆撃機と攻撃機の装填しちゃうね」


加藤 「ああ」


阿武隈「空母棲姫は?」


加藤 「発艦もできないし艦載機も枯らしたし無視で」


阿武隈「はい。そろそろ甲標的の準備が終わります。」


加藤 「ああよろしく」


敵は2隻、どちらも中破。旗艦はかなり攻撃力も装甲も高い。空母棲姫はもう何もできない。


そんなことを考えていると砲弾が飛んできた。


羽黒 「やられました。中破です。」


動きのキレもなくなってきている。


改めて被害は夕張、磯風、大破。羽黒、鈴谷、熊野、加賀、翔鶴、中破。阿武隈、最上、小破。霞、朝霜、無傷。


残りの燃料は半分を切った。弾薬は残り25%、攻撃機は動けるのが10機、爆撃機は15機、甲標的も次で最後。最上は主砲を装備していない。夜戦は阿武隈、霞、朝霜となる。これよりも被害がでる可能性もある。


加藤 「重巡組と爆撃機は空母棲姫に轟沈させろ。」


加藤 「攻撃機、甲標的は旗艦に。」


加藤 「阿武隈、霞、朝霜は夜戦で旗艦を倒してくれ」


一同 「はい!」


一部、艤装が壊れていたが残った主砲で空母棲姫に砲撃、爆撃機は急降下で爆弾を投下。なんとか撃破。


夜戦に突入する。


阿武隈「あれ?二人は?」


加藤 「阿武隈二人はあとだ。魚雷を頼む」


阿武隈「はい」


旗艦は避けたようだ。しかし背後からの影には気が付いていない。


彼女たちは相手の視界に入らず、殺気を察されないよう、動いた。ひたすら相手の動きを見れるよう訓練した。相手が見える範囲を意識することを教えた。そして、殺気を感じさせない方法も教えた。的を撃つ気持ちで撃てと。


旗艦のバイタル・・・腹を狙う。何度も砲撃した。そして、旗艦は海へ沈んでいった。


加藤 「お疲れ、帰ってきな」


羽黒 「大破を中心とした輪形陣で帰ります」


加藤 「そうしてくれ」


こぶしを強く握る。無事に勝てた。安堵のため息をつく。


金剛 「お疲れ様デース」


加藤 「おつかれ」


金剛 「危なかったデスネ」


加藤 「何とかな」


まだ彼女たちは帰って来ていない。念のため奇襲への警戒をさせた。その後、何事もなく帰投した。


加藤 「お疲れ様。補給と入渠を。ああ、入渠はバケツ使っていいよ」


羽黒 「お疲れ様でした」


ぞろぞろと執務室から出て行く。


金剛 「では、私も失礼するネ。good night」


加藤 「ありがとうな」



加藤 「お疲れ様」


霞  「ええ、なんとか勝てたわね」


朝霜 「ああ」


加藤 「風呂入ってきな」


肩の力がようやく抜けた。かなりぎりぎりの戦いだった。戦艦でも連れて行くべきだったか・・いや、彼女らは速くても戦艦だ。今回は航空戦が多かった。だと回避が高い重巡でよかったのだろう。


霞  「上がったわ」


朝霜 「司令、行ってきな」


加藤 「ああ、」


風呂に入り落ち着く。報告書もできているのでさっさと寝よう。


布団に入り眠り就こうとすると、誰かが頭を撫でてきた。


霞  「お疲れ様」


朝霜 「おつかれ」


やはり二人だった


朝霜は布団に入って来た。


霞  「ずっと気を張っていたら疲れるでしょう」


ゆっくりと優しく手を動かすその感覚が頭に伝わる。


朝霜 「あたいらのためにがんばってくれてんだよなありがとう」


温かい、だんだんと疲れがやって来る。そのまま眠った。



青葉 「司令官、準備できました?」


加藤 「準備?」


青葉 「忘れたんですか?お祭りの」


秋が一層深まり、風も冷たくなってきた。目の前の重巡は青葉。ここの行事等の幹事をしている。去年から、ここで一般人をいれて祭りを開催している。思いのほか人が来ていた記憶がある。


加藤 「っつても俺がやることなんてないさ」


青葉 「そういわないでくださいよー」


加藤 「俺は、勘定やらで忙しいんだ」


金は上から降りて来るが。申請がめんどくさい。領収書をもらい忘れて狂い掛けたりもした。


青葉 「むぅしょうがないですね」


青葉 「では、司令官がやらなくてもいいんで何か企画を考えてください。」


加藤 「一航戦vs青葉 大食い対決」


青葉 「ふざけないでください」


霞  「そろそろ出て行きなさいよ!うるさい」


青葉 「司令官と一緒にお風呂に入っているくせに・・・」


彼女は自称ジャーナリスト。基本的な艦娘の関係や、ハプニング等々はほとんど頭に入っているらしい。


加藤 「じゃぁこれはどうか?」


朝霜 「それいいな」


青葉 「いいと思います」


加藤 「じゃぁ青葉よろしく」


青葉 「え?」


加藤 「いや、これの準備」


青葉 「えー」


加藤 「ほかの奴らだって自分のことで忙しいだろうし、青葉がやるのが筋だろう」


青葉 「分かりました、でも、大変なときは手伝ってくださいね」


加藤 「ああ」


青葉は外に出る。


霞  「まったく・・・本当どうにかならないのかしら」


霞が愚痴をもらす。


加藤 「まぁいいんじゃね」


朝霜 「にしても司令、いいこと思いついたな!」


加藤 「だろ!自分でもそう思った。」


加藤 「しかし、通常の仕事に勘定って疲れるな。」


現在、出し物は


金剛型 カフェ的な  一航戦 一般人25人と大食い対決  二航戦 多聞丸グッズ販売  加賀、瑞鶴、翔鶴 加賀岬(バックダンサー五航戦)  祥鳳型 玉子焼き販売  RJ+飛鷹型+千歳型 居酒屋(店員も呑む)


最上型 瑞雲模型販売  妙高型 やきそば屋  高雄型 わたあめ  古鷹型+青葉型 青葉が進行役なのでそれの手伝い


天龍型 竜田揚げ販売  長良型 たこ焼き販売  球磨型 大井が北上の生写真を売ろうとしたが、結局、木曾のお悩み相談室  川内型 ライブ(センター那珂ちゃん) 


睦月型 唐揚げ販売  吹雪型+綾波+敷波 うどん販売  七駆 カニ鍋(それを聞いたとき朧のカニさんは泡を吹いたらしい)  六駆 ロシア料理店  朝潮型(-霞) 雑貨屋(キーホルダーとか髪留めとか) 白露型 焼き芋屋  初春型 扇子販売  陽炎型(以後書く子以外) 射的  十七駆 イカ焼き(磯風は調理場に入れさせられないらしい)  島風+天津風 かけっこ(島風に3分逃げられたら勝ち)


潜水艦+大鯨+間宮+伊良湖+鳳翔 食堂 明石+夕張 小道具大道具作り


全体で演習を披露


となっている。場所割りや予算、時間、調整は俺たち(混浴組)*空母はほんとたまにだから入らない がやっている。青葉は当日の進行やポスター作製をしている。


日頃の遠征や出撃と並走しているのでかなり前から準備している子もいる。


鬼怒 「艦隊戻りましたー」


加藤 「お疲れー」


加藤 「どうだった」


睦月 「大成功したのです」


加藤 「おお、さすが補給してきなー」


遠征 「はーい」


遠征や出撃後でも彼女らはほんとよく働く。


明石 「失礼します」


加藤 「・・・」


明石 「なんで黙るんですか!」


加藤 「なぁ、なんか嫌な予感がするのは俺だけじゃないよな」


霞  「奇遇ね、私もよ」


朝霜 「あたいも」


明石がここに来るのは基本的に装備の改修させてーとか、新しい工具が欲しいーとか、大体めんどくさいものだ


明石 「違いますよ!当日の準備です」


加藤 「ああ、重機扱えるの、お前とメロンだけか」


夕張 「誰がメロンですって?」


加藤 「じゃぁ財政破綻」


夕張 「んもぅ」


霞  「まぁいいわ始めましょう」


現在、会場に入れるのは、各テント、巨大スクリーン、やぐらなど、それぞれの入れる準備を間違えると効率が一気に落ちる。大きなものは重機を使える二人に頼み、各自でテントやその他小物を準備。青葉たちはマイクなどの、俺たちはガス関連と駐車場や案内の準備を担当している。


加藤 「で頼む」


明石 「了解です」


夕張 「お任せを」


二人は出て行った。


加藤 「ちょっと見て回るか」


朝霜 「そうだな」


霞  「行きましょう」


基本的には各自の部屋で準備する。食品関係は練習と看板等の制作をしているだろう。


加藤 「おーすっ」


飛龍 「あー提督」


蒼龍 「いらっしゃい」


山口多聞グッズを販売しようとしている二航戦。看板といい商品といい多聞色で埋め尽くされている。


霞  「これは・・・」


飛龍 「いいでしょ、特にこれ!」


加藤 「よし!ここは大丈夫そうだな。次行くぞ!」


あれはあそこで2,3時間語られそうだったので逃げるのはいい判断だったと思う


朝霜 「あれはひどいな」


加藤 「ああ、あそこまでとはな」


歩いていると演歌のような歌が聞こえる


霞  「加賀岬?」


加藤 「多分」



加藤 「よーおー」


赤城 「あら、提督、今、加賀さんと五航戦のお二人が練習中で」


朝霜 「加賀は歌うまいんだが・・・後ろのは?」


翔瑞鶴「ズイズイ」


赤城 「彼女ら曰くズイの舞らしいです」


加藤 「赤城は?」


赤城 「私は衣装作りで・・」


霞  「赤城さん衣装作れるの?」


赤城 「ええ、多少なら。時々鳳翔さんに教わりに行きます」


加藤 「じゃ、がんばって」


赤城 「はい、ありがとうございます」


部屋を出て、再び歩き出す。軽空母の量の近くでは妙に酒臭い・・・まぁなんとなく予想はついているのだが・・・


隼鷹 「ヒャッハー合法的に酒が飲めるなんて最高だな!」


千歳 「これは・・出したほうがいいですね」


あいつら・・・昼間から酒盛り開きやがって・・・ドアを蹴り飛ばす。中には顔を真っ赤にした空母が二名、周りには三名いり。もう戦意喪失している。酒を飲ませまいと戦っていたのだろう。


隼鷹 「いや・・これはその・・・」


千歳 「ええ・・・」


加藤 「俺が言いたいこと分かるよな?」


千隼 「はい、すみませんでした」


加藤 「酒片付けて、あいつらに謝れよ」


部屋から出ると、ビンを拾う音が聞こえてきて。罪の自覚あるならやらないでほしい・・・


霞  「なんであいつらがいつもあれなの?」


朝霜 「でも、あの二人が酒やめるとかのほうがビビるよな」


加藤 「そうだな」


間もなく、アルコールを消すようにいい匂いがやって来る。


加藤 「お邪魔しまーす」


瑞鳳 「ここ、こうじゃなくて、こう!」


祥鳳 「はい。ああ、お三方いらしたのですか」


祥鳳型が玉子焼きを作っている。


瑞鳳 「あ、提督。玉子焼き食べる?」


加藤 「食べるー」


彼女の玉子焼きは本当においしい。だしの匂いや、味がバランスよく。ふわふわになるように焼いている。


霞  「ほんとおいしいわよね」


朝霜 「どう作ったらこうなるんだ?」


瑞鳳 「ふふっ秘密」


祥鳳 「けっこう難しいです。菜箸の使い方から火加減までほんと・・・」


加藤 「頑張ってな」


香ばしい匂いを後にし部屋を離れる。


今度は、焼き菓子の匂いがしてきた。


加藤 「調子はどうかー?」


金剛 「提督ーtea timeですカ?」


加藤 「ちょっと見回りに」


比叡 「司令、聞いてくださいよ。お姉様も、榛名も霧島も私にお菓子を作らせてくれないんですよ」


うん、一回、比叡が料理を作ったとき。見た目は普通なのに、味がほんとひどかった思い出がある。本人は自覚がないらしく。自分のを食べても問題はないらしい。


榛名 「比叡お姉様はウエイターのほうがいいと思うのです」


霧島 「私たちよりお姉様のほうが場が華やかになると思いますよ」


比叡 「そうだったなね、ごめんで二人とも」


ちょろい姉だな・・・こちらも順調そうだ


霞  「比叡さんは・・・うん」


朝霜 「あの料理は生物兵器だな」


加藤 「確かに・・・」



加藤 「こんにちはー」


鈴谷 「ちーす提督ー」


熊野 「鈴谷、それはレディとしてはしたないですわよ」


最上 「どうしの提督?」


加藤 「様子を見に来たんだ」


三隈 「提督、どうですかくまりんこ達の作った瑞雲は」


装備の時に見ている瑞雲と形も色も変わらない。全く同じと言っても違いはない。かなり精工な模型だ。手に取り眺める。細部も細かく作りこまれている。さすが常に瑞雲を扱っているだけある。


加藤 「すごいな」


最上 「でしょ?」


霞  「細かいわね」


どうやらPCで3DCGを作り、明石の3Dプリンターで形にしたらしい


加藤 「がんばってな」


鈴谷 「バイバーイ」


食品を作る子たちは問題なく進んでいた。



加藤 「調子はどーですか」


北上 「提督ー」


大井 「あら、混浴組のみなさん」


球磨 「違うクマ。同居組クマ」


多摩 「ただのロリコンにゃ」


大井と球磨はまぁ事実だけど。多摩は・・・


木曾 「どうした?」


加藤 「様子見に来た。木曾以外は何するの?」


北上 「アタシは会計ー」


大井 「私は魔の手から北上さんを守ります」


多摩 「多摩はマスコットにゃー」


球磨 「同じくクマー」


朝霜 「半分仕事ねぇじゃん」


もっともだ、本人たちがそれでいいのならいいけど


球磨型と別れ。歌声が聞こえるほうへ向かう。


加藤 「お邪魔します」


那珂 「あ!提督!」


加藤 「順調そうだね」


川内型三人がライブの練習をしている。なかなか陽気な曲だ。問題なさそうだし、部屋を出る。



加藤 「こんにちは」


陽炎 「司令!いらっしゃい」


不知火「こんにちは」


霞  「あなたたち、射的じゃないの?」


雪風 「なにか問題でも?」


加藤 「その銃なに?」


黒潮 「猟銃やけど?」


え?猟銃?的って猪とかなの?


初風 「これでお菓子とか狙うんでしょう」


お菓子四散するよ


結局その後、説明した。専用のがあると知らなかったらしい。よかった見回りしてて。


霞  「びっくりしたわ。なんなの」


朝霜 「あれはひどい」



加藤 「ここは・・ぐほぉ」


腹に何かが飛んできた。この耳は・・・


島風 「提督ー」


加藤 「痛い」


天津風「島風やめなさい」


部屋の中に何か遊具みたいのが出来ている。二人の連装砲がせっせと作業している。


島風 「提督ーかけっこしよう」


なるほどここで鬼ごっこするのか


加藤 「何分逃げればいいの?」


天津風「3分よ」


いま、3分っていった?嘘でしょう



島風 「提督速い」


加藤 「疲れた」


加藤 「これ逃げ切ったら何かあるの?」


天津風「ええ、今はないけど林檎飴あるわ」


いい商売しているな・・・


霞  「あなたよく捕まらなかったわね」


加藤 「何とかな」


朝霜 「全部見終わったし帰るか」



執務室に帰ると、青葉がいる。


青葉 「司令官、あれの予算です」


加藤 「こんなにするの?」


青葉 「はい!豪華なものにするので」


加藤 「俺は痛くも痒くもないけどさ」


青葉 「なかなかえげつないこといいますね」


加藤 「上にはトラウマ作ってあるからな。」


一年以上たったのにまだ怖いらしい。元帥はそのままだが、首相は批判に批判で総辞職し、その政党はボロ負けしたらしい。まぁ議員は蓄えあるだろうし餓死とかはしないだろう


加藤 「これ誰がやるんだ」


青葉 「設置は青葉たちがやります。遠隔で始めるので問題ないです」



何事もあったりなかったりで祭りの日を迎える。今回は県外からも来ているらしい。まず混まない道路が渋滞起こしている。


清々しいくらい晴れている。周りにも怪しい雲もない。


出店も問題ない。


青葉 「9:00開始でーす。しばらくお待ちください」


予定の駐車場がぱんぱんになったので近くの店に頼んで貸してもらえた。


なんとか全部止めることができた。


加藤 「お疲れー」


霞  「結構いたわね」


朝霜 「来すぎなんだよ」


もう開始まで10分を切っている。今日は青葉に司会席に来いって言われている。


加藤 「おーい青葉ー」


青葉 「来てくれましたか」


これも今日のためだけに作った司会席。お知らせや、簡単な雑談をするらしい


青葉 「さぁ9:00になりました。どうぞ入って来てください」


ぞろぞろと人が入って来る。


加藤 「俺は何するんだ?」


青葉 「青葉と話していればOKです」


しばらくは出番がないらしい、一応やばいもの持っている奴がいないか黒で監視している。現在、刃物も銃も爆弾も持ってきている奴はいない。


青葉 「今、10:00より大食い対決を開始します。我こそはって言う人を25人お待ちしています。」


加藤 「ただでおいしいものを食べられます奮ってどうぞ」



青葉 「提督、いいですね」


加藤 「そうか?」


こういうことは初めてでかなり緊張している。とそんなことを言っているとガタイのいい人が集まって来た。


男A  「大食い対決はここでいいのか」


青葉 「ええ、お名前と大食いエピソードあれば、あとこれゼッケンです」


男B  「で、なにするんだ」


加藤 「それは始まってからのお楽しみで。まぁ大食いですね」


30分足らずで集まった。


大食い会場へ移動した。


青葉 「これより大食い対決を行います。選手入場」


加藤 「空は守って見せる。一航戦コンビ!」


うぉーーー


赤城 「頑張りましょう」


加賀 「鎧袖一触よ」


加藤 「数の暴力、大食い軍団」


え、まだいるんだけど、


青葉 「今回はこちらの肉じゃがを一航戦コンビと大食い軍団でどれだけ多く食べられるか競ってもらいます」


加藤 「時間は30分!よーいドン!」


一斉に箸を持つ。一気に肉じゃがを食べ始める


青葉 「ここで簡単に選手紹介。まずは一航戦コンビ」


加藤 「彼女は普段、牛丼20杯、加賀は山盛りカレーを5杯、を一瞬で平らげてしまいます。ここの食費の半分以上が彼女らです」


会場が笑いに包まれる。


加藤 「普段、セーブしていますが。今回はいくらでも食べていいと言ったらよだれが止まらなかったとか」

青葉 「この二人はいったい限界があるのでしょうか?続いて大食い軍団はじめは・・・」


その後、紹介を終え中間報告。量はお互い譲らない。


観客の数も増える。


青葉 「お?ここでごはんが到着しました。」


ごはんを目の前にし目を輝かせる一航戦、固まる軍団


青葉 「なお、ここでご飯を食べきらないと次の肉じゃがは出てきません」


加藤 「鬼じゃん・・・ってもう終わってる」


そんな話をしていたら一航戦は食べ終えていた。



青葉 「結果発表~~」


加藤 「多すぎて時間がかかってしまいました。申し訳ないです。」


裏で古鷹型、衣笠、霞、朝霜が数えていたらしい。


青葉 「まずは一航戦コンビ赤城さん75杯、加賀さん80杯。合計155杯です」


青葉 「そして大食い軍団、合計が・・・」


会場が静まり返る。心臓の音が聞こえそうだ


青葉 「131杯です。というわけで一航戦コンビの勝利です」


拍手で包まれる


赤城 「加賀さん勝ちましたよ」


加賀 「やりました」


加藤 「参加したみなさんにはちょっとしたものをプレゼントします。」


壇上から人が降りて行く。参加者には300円分の割引券を配った。


青葉 「司令官、お疲れ様です」


加藤 「お疲れー」


青葉 「今度は演習の解説をお願いします」


加藤 「何時から?」


青葉 「皆さんが飽きないように入れているんで・・・16:00です」


10:00に大食い 12:00に那珂ちゃん 14:00に加賀岬 16:00に演習 19:00にあれか・・・


青葉 「ではしばらく」


加藤 「じゃぁ」



男C  「お嬢さん」


朝霜 「あたいかい?」


男C  「ああ、ちょっとトイレはどこかね?」


朝霜 「着いてきな」



朝霜 「ここさ」


男C  「ありがとう」


朝霜 「どうも・・・んーー」


男C  「静かにしな。」


男C  「おお黄色のキャ・・・」


なんとか間に合った。人の親切心につけ込むとは。黒、大量に置いておいてよかった。走って来た勢いで頭を殴る。しかし、思いのほか飛ばない。正面に能面をつけた男が腹パンをしていた。この体系で能面、一人しかいないだろう。しかし、マツダなぜ?


男C  「ぐはぁ」


痛みに耐えきれず崩れ落ちて行った。


朝霜 「司令・・・」


霞  「どうしたの・・・って大丈夫?」


朝霜がこっちに向かって来る。涙を流し抱き着いて来た。よほど怖かったのだろう。霞も来ていたらしい。


加藤 (マツダ、)


マツダ(はい)


加藤 (他人のふりをする)


マツダ(分かりました)


加藤 「誰だお前?」


マツダ「マツダといいます。」


加藤 「それは分かったけどなぜここに」


マツダ「彼女を助けに」


加藤 「なるほど、何はともあれありがとうございました」


霞  「私からも、ありがとう」


マツダ「では」


なんとかやり過ごす。命令も出していないし、なぜだ・・・


朝霜 「ありがとう、司令」


俺の腕の中の服が破けた少女を思い出す。頭を撫でる。


霞  「取り返しのつく前でよかったわね」


本当にそうだ。本当によかった。首に何かがきらめく


加藤 「ネックレス、着けてくれていたんだ」


朝霜 「ああ、宝物だからな」


風呂の時は外しているのだろうがいつも着けていてくれたのか


霞  「着替えに行くわよ」


朝霜 「ああ」


男を縛り、近くの警察に引き渡した。顔に跡が残っていたがすぐ消えるだろう。


帰ってくると二人と会った。


加藤 「ちょっと回ろうか」


霞  「そうね」


ぶらぶらとしていると、何かを焼くにおいがする。


磯風 「やぁ司令」


加藤 「おお、磯風たち・・・イカ焼きか」


磯風 「ああ、しかし、私を厨房に入れてくれないんだ」


そうでもしないとこれ食い物にならないからな


加藤 「浜風達もがんばれよ!」


浜風 「はい!」


谷風 「がってん」


浦風 「了解じゃけぇ」


朝霜 「磯風いつも焼きすぎなんだよな」


磯風の料理は比叡とまた違う狂気を感じる。


やたらと人が集まっているところがある。


霞  「多いわね」


島風 「あなたって遅いのね!」


天津風「惜しかったわね」


男D  「くうぅ~」


あの商売上手がいる。林檎飴という景品をつらせ客を集め、島風の俊敏性で狩る。天津風の口技で何度もやらせる。さすがだ。


天津風「あれ、あなた」


加藤 「商売上手だな」


天津風「そうでしょう」


やはり自覚あったか


朝霜 「この成功者ってだれだ」


霞  「島風から逃げるってなかなかよね」


島風の身体能力を考えると、かなりスポーツをしている人しか逃げ切れないだろう


天津風「あなたよ」


加藤 「俺すか」


天津風「誰も今日のって言ってないし書いていないでしょう」


セコイ。あんな見た目して考えていることがセコイ。絶対、艦娘より向いた仕事あるだろう。


青葉 「ただいまより、ステージにて川内型姉妹によるライブが始まります。」


もう12:00か


霞  「お昼ね」


朝霜 「どうする」


なんか食堂のほうが混んでいる。耳を澄ますとスク水の子が料理運んでくれるって喜んでいる。あそこは無理だろうしどこにすっかな・・・


霞  「たこ焼き食べたいわ」


加藤 「そうすっか」


長良型のほうへ向かう。食堂があれほどだったこともあり、人はあまりいない。


由良 「あら、提督さ・・混浴組のみなさん」


加藤 「なんで言い直した。ああ、たこ焼き3つよろしく」


長良 「よしきた!」


阿武隈「なんかお客さん少ないんですけど・・・」


朝霜 「みんな食堂で潜水艦見に行っていたぞ」


鬼怒 「マジパナイ!」


名取 「どうすればお客さん来てくれるのでしょうか。」


何かで聞いたことだが値段を3つ設定する。1つ目は安め。2つ目は普通。そして3つ目は見た目のインパクトも値段も高いものにする。そうすると3つ目に目が向かい。1つ目は安すぎると思ってします。よって2つ目を買いがちになる。(行動経済学らしいです)


加藤 「って感じ」


由良 「すごい。でもインパクトってどうすれば」


加藤 「大きさとか見た目とかかな?」


鬼怒 「じゃぁ鬼怒のパナイ焼きででっかいの作ってみる」


加藤 「いいんじゃね」


長良 「さすが、提督。はい、たこ焼き3つ」


霞  「ありがとう」


朝霜 「がんばれー」


焼きたてのたこ焼きはかなり熱いそれがうまいのだが。那珂たちの歌が聞こえる。よく踊りながら歌うたえるよな。前に収録しておいたのでも流しているのか。禁忌に触れそうなのでこれ以上は考えるのはやめよう。


朝霜 「あそこ座れそうだな」


このために置いた椅子と机に座る。秋晴れの下、食事するのは気分がいい。少し冷まして、食べ始める。周りの固さがいい。タコと生地との空洞で。それぞれのおいしさも楽しめる。


6つあったたこ焼きはすぐに消えてしまった。


誰かが走って来る。


青葉 「司令官ーって、やはりこのメンバーですか」


加藤 「どうした?」


青葉 「青葉、昼食休憩したいので交代できますか」


加藤 「OK、ゆっくりして行きな」


青葉 「ありがとうございます」


返事を聞くとすぐに人混みへ消えて行った。カメラも持っていた、おそらくみんなの写真を撮りに行くのだろう。


加藤 「俺は本部行って来るわ」


霞  「いってらっしゃい」


朝霜 「あたいらは色々回っているさ」


加藤 「変な奴には気をつけろよ」


二人と別れ本部へ行った。本部では落し物、迷子等々を扱っている。


本部の張り紙があるテントに入る。


加藤 「お待たせ」


衣笠 「ごめんね、提督」


加藤 「いえいえ。衣笠は?」


衣笠 「もうご飯食べたよ。古鷹型は見回り行ってる」


会計以外の仕事は彼女らがこなしている。かなり出撃したのに完成させるとはさすがだな。


落し物も迷子もいない。今は特に問題はないようだ。


加藤 「トラブルは」


衣笠 「ちょっと落し物があったけど他はないかな」


喧嘩沙汰も起きていないし。艦娘たちがそうならないようにしているのだろう。


女A  「すみません、息子とはぐれちゃって」


加藤 「身長は」


女A  「130cmぐらい」


加藤 「服は」


女A  「えっと・・・上が赤でしたが黒だったと」


黒で見渡すが、それにあたる少年はいない。服は毎日変わるし覚えている人なんていないだろう。とあれか?一人で歩いているし迷子のような


加藤 「なるほど、衣笠はここよろしく」


衣笠 「お願いね」


少年の所まで来た


加藤 「ねぇ君」


息子 「はい」


加藤 「迷子かい?お母さんが待っているよ」


少年は青のTシャツにジーンズだった。


加藤 「ただいま」


衣笠 「もう見つけたの?」


息子 「お母さん」


女A  「ありがとうございます」


無事に見つかり親子はここを出た


衣笠 「早かったね」


加藤 「迷子の子供と一人で行動している子供の判断はつくさ」


青葉 「ただいま」


加藤 「もう少し休んでいてもよかったのに」


青葉 「いいんです、青葉的にはいい写真撮れたので」


昼ごはん食べたのかな?


加藤 「あ!」


衣笠 「どうしたの」


加藤 「演習の編成考えていない」


青葉 「盛大にやらかしましたね」


加藤 「適当に探してくるわ」


やっちまった完全に頭から抜けていた。問題は編成だ。基本的に各艦種混ぜたいからな。まずは金剛型だ。


結構ここも混んでいるな。


比叡 「司令、いらっしゃいませ」


加藤 「一人貸してくれないか?演習で必要で・・」


榛名 「なら榛名が参ります。」


加藤 「いやまだ大丈夫、15:00には出撃港で。申し訳ない」


金剛 「気にしないで下さいネ」


加藤 「ありがとう」


なんとか、次は空母か・・


加藤 「赤城ーー」


赤城 「何でしょう」


加藤 「うぉすげえな」


加賀の着物を見た。百合の花をモチーフとし、下に行くにつれて模様が増えていく。


加賀 「さすが赤城さん」


加藤 「そうだ、赤城、15:00に出撃港で演習の打ち合わせをしたい。いきなりで申し訳ない。」


赤城 「15:00ですね分かりました。」


加藤 「加賀見終わってからでいいから」


赤城 「分かりました。」


その後なんとか演習分はそろえた。


榛名 赤城 妙高 最上 三隈 川内 那珂 神通 文月 綾波 夕立 霞 朝霜


そんなこんなで14:00。加賀の歌が聞こえる。


綺麗な声色でとりこまれそうだ、そのまま彼女の歌の世界に入っていただろう・・・バックダンサーがいなければ。なにあの姉妹、腕を交互に前に出して。何してんの?


霞  「ムードが台無しだわ」


朝霜 「これは酷い・・・」


微妙な空気で演奏が終わる。その後、加賀一人で歌いなおした。彼女は拍手と称賛に包まれていた。


15:00メンバーが集まる。


加藤 「いきなりで申し訳ない。俺がちゃんと言わなくて」


文月 「司令かーん大丈夫だよ」


加藤 「ありがとな、じゃぁ編成だ」


榛名 赤城 妙高 最上 三隈 川内 那珂 vs 神通 文月 綾波 夕立 霞 朝霜


神通 「え?」


加藤 「どうした?」


最上 「偏りすぎない」


加藤 「ああ、ハンデはあるよ榛名隊は、魚雷を使えません」


赤城 「攻撃機も」


加藤 「ああ、面白そうだろ」


神通 「ええ問題ないです」


加藤 「後はお互い作戦会議。16:00に始める」


実況席へ向かう。青葉と打ち合わせをし、時間を迎える


青葉 「どーもみなさん。また青葉です」


スクリーンにここの映像が流れる。ざわざわと人々の注目が集まる。


加藤 「では選手紹介ーまず、砲撃でごり押し隊ー旗艦 榛名ー」


偵察機(鈴熊が飛ばした)からの映像に変わるそんなテンションで選手紹介を終える。


青葉 「ではルールを説明します。ごり押し隊は水雷隊にたいし一切の魚雷攻撃を禁止します。すべての艦が轟沈判定したほうの負けです」


加藤 「では、始め」


水雷隊はお互いの間隔を空けつつ突撃。


青葉 「司令官これは?」


加藤 「お互いに砲撃の巻き添えを食らわないためでしょう。しかし、一隻に集中砲火される可能性は高いですね」


よく見るとヒーロアニメのような目で見る子供たちとプロ野球観戦の目で見ている男性群がいる。


その後、拮抗した状況が続いたが


青葉 「ここで魚雷を一斉発射しますね。」


加藤 「ええ確実に相手の頭数を減らしに来ていますね」


その後、ごり押し隊 赤城、最上 轟沈判定 三隈 小破 水雷隊 文月 轟沈判定 神通 小破


青葉 「この状況どうですか?」


加藤 「いやぁまだ読めないですね、水雷隊の砲撃はほとんどごり押し隊の装甲を抜けないと思いますので」


といきなり綾波と夕立が突撃、他は支援射撃を行っている。ゼロ距離か、会場も熱気に包まれる


青葉 「ゼロ距離射撃でしょうか?」


加藤 「おそらく、確実に相手を戦闘不能にさせるためでしょう」


綾波、夕立の突撃後、三隈、川内が轟沈判定。なんとか綾波、夕立が中破し隊へ戻る。


青葉 「一気に戦況が変化しましたね」


加藤 「ええ、赤城を轟沈判定させたことで空の心配をする必要がなかったからでしょうしかしまだ油断できません戦艦の砲撃で轟沈判定されることもあるので勝負は分かりません」


ここで榛名が主砲を一門づつ発射。綾波と夕立を襲い二人はそのまま轟沈判定に


青葉 「反撃に来ましたね」


加藤 「ええ、多少の犠牲を伴うも突撃時に機関部を故障させ回避しにくくしたのでしょう。戦艦の主砲なら一門でも轟沈判定は楽でしょう」


現在、ごり押し隊 赤城、最上、三隈、川内轟沈判定 水雷隊 文月 綾波 夕立 轟沈判定 神通 小破


今では各隊に別れ応援を始めている。演習も終盤。さてどうなるか


お互い牽制し状況が変化しない。


加藤 「これは難しい状況です。ごり押し隊は魚雷の警戒で思い切り動けない。水雷隊はまともにやりあえない」


そんなことをしていると榛名が後ろに下がる。


青葉 「射程の差を利用して、砲撃ですか」


加藤 「ああ、間の那珂が三隻にたいしどこまで粘れるかがこの勝負の明暗を分けそうです。」


那珂が前線を張り、時間を稼ぐ。なんとか魚雷を回避し反撃。ここで榛名の砲撃が霞、朝霜に当たる。なんとかバイタル命中は避けたようだが二人とも中破。神通は那珂を轟沈判定にしたが、こちらも中破


青葉 「面白くなってきましたね」


加藤 「ええ、ここからは純粋な実力対決でしょう」


やはり三人は間合いを詰める。盾を持たない榛名は砲撃を試みるも外す。


青葉 「榛名さん外しちゃいましたね」


加藤 「最終決戦でしょう。榛名の次弾装填がさきか、三人が榛名を轟沈判定にさせるか」


会場の盛り上がりは最高潮になっている。野球で例えるなら。甲子園決勝九回裏満塁二アウト 二ストライク 三ボールだろうか。最後の最後


魚雷も使い果たし、主砲で榛名を集中砲火する水雷隊か、一発逆転のため主砲装填を急ぐ榛名。勝者は・・・



ドーーン


太い砲撃音が響き渡る。中破になるも主砲で3人を薙ぎ払った。全員もろで食らい轟沈判定。


青葉 「水雷隊の全員の轟沈判定を確認しました。よって勝利はごり押し隊です」


青葉の放送後再び会場が歓喜と拍手で湧き上がる。おすらく海上にも聞こえただろう。彼女の健闘をたたえる拍手が。帰投した彼女たちに大きな拍手が贈られた。バケツを使わせて。すぐ復帰させた。


会場に戻るやいなや英雄のように囲まれ、おおくの人に声を掛けられていた。


霞  「大袈裟すぎるのよ」


朝霜 「人ばかりだった」


しばらくし落ち着いたころ合流した。


加藤 「お疲れ。最後、魚雷ないのがきつかったな」


霞  「ええ、夜戦でもよかったと今思っているわ」


朝霜 「あれは勝ちたかったな」


加藤 「ちょっと着いて来な。」


二人を連れて鎮守府を出る。


霞  「どこに行くの?」


加藤 「ひみつー」



山を登り、少し開けたところに着く。


加藤 「ここさ」


朝霜 「おお!見晴らしいいな!」


宿毛湾を見下ろせる位置まで来た。その時はもう日が暮れていた。


加藤 「寝っ転がってみるのもいいんだけどな。こっちのほうが俺は好きだからな、ほれ」


霞  「天津風からもらったの」


加藤 「ああ、一応作ったが売れそうにないって」


朝霜 「ありがとな」



天津風「お疲れ、島風。はいこれ」


島風 「ありがとう!天津風!あれもっとなかった?」


天津風「ふふ、昨日のクリア報酬でね」



加藤 「そろそろだな、ゆっくり見よう。」


霞  「ええ」



青葉 「カウントダウン・・・3、2,1GO!」


加古 「ロケットかよ」


古鷹 「楽しみですね、外にでよう」


衣笠 「そうしましょう」



光が身の前に広がる。火花が広がっていく。


霞  「きれいね」


朝霜 「ああ」


花火が上がる。一瞬で咲き誇り、すぐに消える。その後、轟音が夜の空に響き渡る。儚く、美しい、これは花火のためにあるのだろう。子供のこれはただ漠然ときれいだと思っていたが、今では花火のやさしさ、かなしさが感じられ胸に変な感覚が現れる。


霞  「ありがとうね」


加藤 「いきなりどうした?」


霞  「なんか伝えたくて」


霞が手を重ねて来る。暖かい。


朝霜 「司令、世話になったな」


加藤 「お前もか!」


朝霜 「まぁな」


彼女たちの顔が近づく。いつもよりもさらに。顔に鼻の息がかかる。とても穏やかな。そして、口の中に林檎飴が広がっていく。林檎飴の味が、今までの彼女達との思い出を甦らさせる。まるでさっきの出来事かのように。顔が離れていく。甘い匂いも消え去ろうとしている。


加藤 「おぉ、大きいね」


霞  「そうね」


朝霜 「あぁ」


夜に刹那に咲いた花を三人で眺めた。それ以降はなにも起こらない。ただ黒い夜があるだけ。


霞  「まだ仕事は残っているわ行きましょう」


加藤 「走るか」


朝霜 「おお!」


海辺の大きな明かりへ走っていく。


後書き

霞と朝霜かわいい。
異論は認めない

出来ればコメント残していただくと嬉しいです!

あと、後編を乞うご期待


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2021-12-28 23:24:28

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