奇跡の果て 人類の光 −第六話−
再びアムロの前に現れたララァ・スン。NTとして目覚めはじめ、その感覚に戸惑う夕張。ララァの告げる真実と、夕張の夢に現れた人物とは…
長らくお待たせ致しました。はて、月1更新の誓いはどこに行ったのやら…
ホントはもっと進めたかったし、書きたいこともたくさんある。…んだけど、中々まとまらないのでとりあえずここまで。一区切りの意味もかねて投稿なり~
−夕張の夢−
ティファ『貴方に、力を。』
チェーン『アムロを、貴方の仲間を守る力を。』
そう言ってティファとチェーンは夕張に光の玉を渡し、その姿は霧のように消えていく。
『『貴方と貴方の世界に、平和が戻りますように…』』
完全に消え去る直前に、そう言い残して。
−アムロの部屋(仮)−
夕張「んぅ…?」パチッ
翌日。空がうっすらと色付き始めた頃に夕張は目を覚ます。昨晩感じた、暴力的とさえ言える他者の意識と情報量の奔流は無い。実際には絶えず感じているのだが、ずっと穏やかになっており苦痛を感じるほどのものではないうえに、無意識に対処できている。
夕張(不思議な夢だったなぁ…)ポヤー
夕張(夢の中でも最初は苦しかったけど、いつの間にか温かさと安心感を感じて……彼女達に会って……)
夕張(まぁ、まずは起きt)グッ
夕張(……ん?)グッグッ
夕張「あれ…動けない?」
夕張(まさか金縛り!? オバケ!?!?)
アムロ「目が覚めたかい?」
夕張「…ほぇ?」
夕張は身動きが取れない状況に戸惑い、突然聞こえてきたアムロの声に気の抜けた返事をしてしまう。なぜ彼の声がこんなにも近くで聞こえてくるのか…。
アムロ「昨夜はどうなることかと思ったが、もう大丈夫そうだな。」
夕張「昨夜…?」ホワンホワン
アムロ「突然部屋に来たと思ったら、泣き疲れて眠ってしまうんだものな。」ニガワライ
夕張「昨夜……」ホワーン
夕張「…んがッ!?///」ボンッ!///
そして蘇る昨夜の記憶。
曲がりなりにも客人であるアムロの部屋に深夜に押しかけただけでなく、抱きついた挙げ句にそのまま眠ってしまい現在に至る。
つまり、現在夕張はアムロの腕の中にいる。
夕張「あわわわわ…!///」ワナワナ
アムロ「昨夜と比べるとだいぶ落ち着いたな。気分はどうだ?」
夕張「に……」
アムロ「に?」
夕張「ん“に“ゃ“ぁ“ぁ“あ“あ“あ“あ“あ”ああ”あ”〜〜〜〜ッ!?!?///」カオマッカ
ガバッ! ガチャッ バタン! ダダダダダ
アムロ「……行ってしまった。」ポツーン
アムロ「流石に馴れ馴れしくしすぎたか?」
アムロ「…だが、彼女が元気になったのなら良かった。」ニコッ
自分の置かれた状況を理解した夕張は、顔が燃え上がっているかのように真っ赤にしながら部屋を飛び出し奇声を上げながら廊下をひた走る。実は艤装無しの状態でありながら自身の最高速度を更新していたが、それでも戦艦より遅かった。
赤面し逃亡する夕張を見ながら、ひとまず彼女が元気になったことに安心し微笑むアムロ。
??「おやおや、これはこれは…」
??「おもしろいものが見れましたねぇ?」ニチャア
??「すぐ部屋に戻ってこの事態を面白可笑しくまとめ上げねば!」スタコラサッサ
そして、そんなアムロと夕張の様子を見て怪しく笑う影があった。
−執務室前−
ワイワイ ガヤガヤ キャーダイターン!
提督「何やら騒がしいな…?」ハテ?
長門「提督よ!」ズイッ
提督「どうした長門。これは一体何の騒ぎだ?」
長門「これを見てくれ!」グイグイ
執務室前の掲示板に艦娘が押し寄せ、各々様々な反応をしながら賑わっているところに提督が現れる。事態を把握出来ないまま、興奮気味の長門に手を引かれて件の掲示板の前に立つと提督は驚きのあまり叫んでしまう。
提督「何だコレは!?」Σ(゚Д゚)
そこには、一枚の手作り新聞が掲示されていた。
☆青葉新聞 特別号☆
【軽巡Y、昨晩はA氏と同衾か!?】
本日早朝、鎮守府客室から奇声を上げながら飛び出す軽巡Yの姿を本紙の記者が目撃。顔を真っ赤に染めながら、その類稀なる鈍足でたっぷりと時間をかけて走り去ったもよう。遅れて客室から顔を覗かせたA氏の表情は優しく、温かいものであった。
本紙は今後もこの二人について取材を続けていく方針であるため、続報を待つべし!
長門「アムロ大尉と……これは、夕張か?」
提督「これが本当ならとんでもない事態だが、青葉だしなぁ…?」
長門「今日は大尉の件を大本営に報告するのだろう?」
提督「あぁ。その前に一つ用事が増えたがな。」アタマカカエ
長門「放送で本人達を呼び出しておくか?」
提督「頼む…。」ハァ…
アムロの件をはじめとした大本営への報告事項が山のようにある中での号外。それが提督の頭を悩ませ、新たな頭痛の種となるがこちらも放ってはおけない。
ピンポンパンポーン↑
長門『夕張及びアムロ大尉の両名は、至急執務室に来るように。』
ピンポンパンポーン↓
−執務室−
提督「…で、夕張はどうした?」イライラ
長門の全体放送を聞いたアムロが執務室に来てから数分が経過しても夕張は現れず、次第に苛立ちを見せる提督。
長門「間違いなく放送で呼び出したハズなんだが…」アセアセ
アムロ「来ないな?」
提督「どんなに自分に負い目があろうと、呼び出しを無視する奴ではないだけに心配だな。」
長門「私が探してこよう。提督は先に話を進めていてくれ。」スタスタ ガチャッ パタン
提督「頼む…。」ヤレヤレ
長門が夕張を探しに行っている間に、提督はアムロと今後のことについて話し合う。号外については当事者が揃わないので後回しとなる。
提督「アムロ、君の今後の処遇についていくつか話しておこう。」
アムロ「僕はあくまでも余所者だ。仮に出ていくように言われたところで、ハヤトたちの決定に従うさ。」
提督「いや、ここまで関わりを持った以上君を放り出すようなことはしたくない。」
提督「まして、アムロは横須賀を危機から救ってくれた恩人だ。決して悪いようにはしないつもりだ。」
アムロ「僕は大したことはしていないさ。」
提督「しかし、俺一人の裁量で決められることでもない。ここが襲撃されたことも含めて、一度大本営に報告しなければならん。」
提督「すまないが、一緒に大本営まで来てくれないか?」
アムロ「それくらいはお安い御用さ。」
提督「実は、大本営の方からガンダムも実物を持ってくるように言われていてな。今輸送用のトラックを…」
ドタドタバタバタ
提督「ようやく来たか…。」ヤレヤレ
今後の方針についてアムロと提督が話し合いを進める最中、慌ただしい足音が近づいてくる。長門にどやされた夕張が廊下を走ってきているのだろうと提督はため息を吐くが、すぐにその足音が複数であることに気付く。
長門「提督よ!」ドアガチャ!
提督「どうした長門。そんなに慌てて?」
明石「提督!夕張が…夕張が!!」ドアガチャ!
提督「その夕張を呼びに行ったんだろう?」
大淀「提督!夕張さんにいったい何をやらせてるんですか!?」ドアガチャ!
アムロ「彼女がどうかしたのか?」
大淀「アムロ大尉!まさか貴方が!?」
提督「落ち着け、話が見えないぞ。」
アムロ「さっき放送で僕達が呼び出されただろう? しかし夕張が中々来ないから、長門に呼びに行ってもらったんだ。」
提督「それで、夕張は居たのか?」
長門「あ、あぁ…。見つけはしたんだが……」オロオロ
明石「早く止めないと!」アタフタ
大淀「何かあってからでは遅いんです!」
3人は余程慌てているのか話の要領を得ない。提督やアムロがなだめながら根気よく聞きだしたところ、夕張が工廠裏で何かをしていることだけは聞きだすことができた。
提督「とりあえず、工廠裏に行けばいいんだな?」
大淀「とにかく来てください!」グイグイ
明石「アムロさんも早く!」グイグイ
長門「緊急事態だ!」
アムロ「分かったから押さないでくれ。」
提督「自分で歩けるから落ち着け!」
‐工廠裏‐
ガヤガヤ ナニシテンノ!? ヤメナヨー!
アムロと提督が工廠裏に駆け付けた時にはすでに大きな騒ぎになっており、所属している艦娘たちで人混みが出来ていた。その中心にはアムロの乗機であるνガンダムと、それに取り付き何やら動き回っている作業服姿の夕張の姿があった。
提督「お前は一体何をしているんだ!!」
夕張「アレはこっちで…」ウロチョロ
提督「おい夕張!」
夕張「ここはアレして…」カチャカチャ
提督「聞こえているのか!!」
夕張「そんでここは…」スッ
アムロ「おい!」
提督の言葉にも耳を傾けず、ただひたすら作業を続ける夕張。しまいにはコックピットに入ってしまった彼女にアムロも焦りを見せ、提督と二人で慌ててコックピットに飛び込む。
アムロ「君は何をやっているんだ!」
夕張「あれ、アムロさん?」キョトン
提督「あれ、アムロさん? じゃない! お前はいったい何をしてるんだ!!」
夕張「提督まで。血相変えてどうしたんです?」
アムロ「君こそどうしたんだ? ガンダムが玩具じゃないことくらい、この艦隊では君が一番…!」
夕張「ちょっと待ってくださいね。もうすぐ終わりますから。」カタカタ ピッピッピ
提督「もうすぐ…」
アムロ「終わる?」
2人がコックピットに入ってきたことに多少驚きはしているが、それでも作業を続ける彼女。モニターや操縦桿、センサーの反応を見ながら慣れた手つきで作業すること数分。
夕張「よっし。これで完璧!」パッ
と言って顔を上げた先には、ただ驚きの表情を浮かべるアムロと般若と化した提督の姿があった。
提督「夕張ぃ~?」(#^ω^)ピキピキ
夕張「へ?」
アムロ「…」アゼン
提督「呼び出しにも応じないで、お前は何をやっているんだぁ?」ワナワナ
夕張「何って、ガンダムの整備と補給ですよ?」キョトン
夕張「戦闘の後はちゃんと整備しないと正常に動作しないし、弾薬と推進剤の補給をしなかったら次の戦闘に支障が出るじゃないですか。」
提督「…は?」ポカン
アムロ「…」
夕張「敵に新兵器がある以上、こちらも万全の備えをしておかないと。」
提督「いや待て待て、言っていることはもっともだが…」
アムロ「“そもそも何故、君がコレを整備できるんだ”?」
2人の疑問はもっともである。前日の反応を見るに、夕張は他の艦娘たちと同じくガンダムを初めて見たはずであり、そもそもこの世界にはMSが存在しない。それなのになぜ、彼女は一晩で整備や補給を行うことが出来ているのか?
夕張「何故って言われても、教えてもらったとしか…」
提督「教えてもらった? アムロにか?」
アムロ「いや、僕は教えていない。 そもそも、νガンダムは基礎設計こそ僕がしているがメンテナンスは専門の技術士官に任せていたんだ。」
夕張「知ってます。」
提督「…は?」
夕張「このνガンダムはアムロさんが基礎設計をして、チェーンが整備を担当していたんですよね?」
アムロ「何故君がそれを知っているんだ!?」
夕張「なんでって、だから教えてもらったからとしか……」
提督「いったい誰に? アムロからは聞いていないんだろう?」
夕張「チェーン本人ですよ。」
アムロ「そんなはずはないっ!!」
夕張「ヒィッ!?」ビクッ
アムロが突然大声を上げたことで夕張が小さい悲鳴とともに飛び上がるが、かまうことなくアムロは続ける。
アムロ「彼女は…チェーンはネオ・ジオンとの戦いで死んだんだ!!」
夕張「…え?」
提督「死んだって、どういうことなんだアムロ?」
アムロ「アクシズでシャアと戦っているときに、彼女の声と思念が宇宙に放たれるのを感じた…。」
アムロ「チェーンはあの戦いのなかで…」ウナダレ
戦いの中で大勢の人間が死んでいくのは当然のことであり、ベテランパイロットであるアムロもそれは理解している。一年戦争の頃から多くの敵を屠り、同時に多くの仲間を喪ってきたのだから。
アムロ「…すまない、少し感情的になってしまった。」
夕張「私の方こそ、変な事言ってごめんなさい。」ウツムキ
提督「アムロにとってそれだけ大切な人だったんだんだろう? 気にしなくていい。それよりも…」ガッ
夕張「ん?」
提督「夕張には聞かなければならんことが増えたようだ。」ニコニコ
夕張「…何でしょう?」ダラダラ
そう言いながら夕張の頭を拳骨で挟み込む提督。その表情はにこやかであるが、目は吊り上がりこめかみには青い筋が立っている。
提督「なぁ夕張ぃ?」ニコニコ
提督「なぜお前がガンダムの整備をできるのかは気になるが、それはこの際置いておこうか。」
夕張「そうですね!そうしましょう!!」アセアセ
提督「さっき、ガンダムの整備と”補給”って聞こえたんだが?」ギリギリ
夕張「いつでも出られますよ!」ダラダラ
提督「弾薬の補給とは?」
夕張「私たちが普段使っているものに少し手を加えて、バルカンとバズーカの規格に合わせました。バズーカの弾はRPGのモノを参考にしつつ、マガジンの中に残っていたものに限りなく近い性能になってます。」ドヤァ
提督「推進剤とは?」
夕張「ガンダムの背部にあるバーニアと機体各部のスラスターを点火、噴射するためのものですね。私達でいうところの燃料に近いでしょうか。」
夕張「タンクの中に残っていた物を解析したところ、液体水素を主成分にしたものだったので燃料をちょちょいと加工したら案外簡単に作れましたよ。」
提督「そうかそうか。よくやってくれたな。」ニコニコ
夕張「いえいえ、それほどでも。」ニコニコ
艦娘達「「「「「サラッとスゴイことやってるな夕張(さん)!!」」」」」
普段から明石と共に工廠で作業をしていることもあって非常に頼りになることこの上ないが、提督は彼女がはっきりと答えていない部分についに踏み込む。
提督「…で?」グリッ
夕張「ひぎっ!?」ビクッ
提督「その弾薬と推進剤、”何処から”捻出したんだ?」ギリギリ
夕張「痛い痛いタイタイタイ!!」ジタバタ
アムロ「おいハヤト…」オロオロ
提督「正直に言わないと捻りも加えるぞ?」グリグリ
夕張「もうグリグリしてるぅぅうううっ!?!?」
提督「さぁ吐け!吐くんだ!!」グリグリゴリゴリ
夕張「使った!鎮守府の資材を使いました!」
夕張「正直に言いましたよぉぉおおお!!!!」ギニャァァアアア!?!?
提督「何か言うことは?」ニコニコグリグリ
夕張「ごめんなsそれ以上はらめぇぇえええ!!頭パーになるぅぅううう!!!!」ジタバタジタバタ
提督「いや、一周回ってまともになるかもしれん。」ゴリゴリメリメリ
夕張「そ゛ん゛な゛ぁ゛~…(泣)」
アムロ「整備と補給はありがたいが、なんだか複雑な気分だな…」
資材の無断使用がバレて提督からの厳罰(艦娘たちの間では”修正”と呼ばれている)を受ける夕張をよそに、νガンダム輸送用のトラックが工廠裏に到着する。全長20メートルにも達するνガンダムを隠すため、荷台に載せた後には入渠中の艦娘を除いた全員で念入りにシートをかける。なお、その間夕張は…
夕張「ココハドコワタシハダレ…?」_(┐「ε:)_
少しばかりパーになっていた。
提督「じゃあみんな、留守を頼む。」
長門「昨日の戦闘で傷ついた者も多いと思うが、私は秘書艦として提督とアムロ大尉に同行せねばならん。」
長門「我々だけでなく、敵にとっての損害もかなりのものであると思われるが警戒は怠るな。もしも敵が攻めてきたら資材や修復材は惜しまずに使え。」
提督「留守の間は霧島と鳥海に指揮権を預ける。」
霧島「了解!」ケイレイ
鳥海「司令官さん達もお気をつけて…」ケイレイ
アムロ「夕張。」
夕張「はいぃ…?」アタマイタイ
アムロ「上官ではない僕が言うことではないのかもしれないが、現状この鎮守府でまともに戦闘が出来るのは君だけだ。」
アムロ「もしもの時は頼んだぞ。」
夕張「…はい!お任せください!」ケイレイ
こうしてアムロ、提督、長門の3人は大本営に出発した。しかし、敵の魔の手がすぐそこまで迫っていることは誰も知る由がなかった。
夕張「この推進剤、使えないかな?」
明石「くだらないこと言ってないで手を動かす!」カチャカチャ
夕張「はーい…」カチャカチャ
明石「…」
明石(何故かガンダムを知り尽くしてる夕張に鹵獲したライフルの解析は任せるとして…)
明石(昨日可能な範囲で見ることが出来たνガンダム。そして最前線で戦っていた夕張を筆頭に、みんなの艤装とνガンダムからかき集めたアムロさんの戦闘データ…)
明石(これさえあれば…!)
??「ここは…」
??「重力……地球か?」
??「目の前に光が広がって……それでどうなったんだ……?」
To be continued…
ここまで読んでくださりありがとうございます。お待たせしすぎて離れてしまった読者の方がいたらごめんなさい。今回は大したボリュームじゃないし、ストーリーの進みも亀さんなんだけどこれからも頑張って書きます。本格的に書きたい部分はもう少し先からなんだけど、そこまでストーリーを進めるのが当面の目標です。作者のモチベーションに直結するので、感想やコメントなどお待ちしてます!
このSSへのコメント