曙の海
曙さんを包む暖かさと傍に居てくれることの大切さのお話
ー別の場所にてー
???「あれが、あの曙かね・・・」
[ヒソヒソ]
???「とんだ欠陥物ではないか」
[ザワザワ]
???「アイツのせいで我々は損害を受けたのか。なんということをしてくれたんだ」
[ボソボソ]
曙(なんで、・・・助けてくれようと差し伸べてくれた人を・・・あの人が生きているべきなのになんであたしは生きているの・・・?
あたしなんかが生きているからみんな、あたしを嫌うの?あたしのせいで?あたしだって、みんなのために頑張ったのに・・・)
提督「君が曙かい?」
曙「ぐすっ、なによ。あんたも他の奴らあたしを笑いに来たって言うの?」
提督「なんで精一杯生きてる奴を笑わないといけないんだ。誰かの為にも生きようとした人間を笑ったり、馬鹿にできるほど俺は小さく無いよ」
曙「そう、で。ぐすっ、そんなヤツがあたしみたいなやつに何の用よ」
提督曙、俺の鎮守府に来てもらいたい」
曙「なんでよ、あたしなんかよりももっといい娘はいるんじゃないの。あんたみたいなエリートからしたらあたしなんてどうでもいいんでしょ」
提督「・・・いや、君に来て欲しいんだ」
曙「なんで?なんで、あたしを、あたしなんかを必要とするの・・・また利用する気なの・・・」
提督「俺は、昔ある女の子に助けられたことがあるんだ」
曙「え・・・?」
提督「その女の子はな、笑顔が素敵な優しい娘だったんだよ」
曙「・・・」
提督「ただな、その娘の笑顔はある日を境に曇ってしまったんだ。だから、その娘に昔のような、優しい笑顔でいて欲しいのさ」
曙「・・・じゃあ、あんたはその娘が幸せのためにいままで頑張ったの?」
提督「正直なことを言うと、それだけじゃない・・・が詳しくは俺の鎮守府で話そう」
曙(この人、もしかしたら・・・)
「わかったわ」
提督「来てくれるのか?」
曙「あんたがうるさいから行ってあげる。その鎮守府にね」
提督「そうか・・・ありがとう・・・」[ポロポロ]
曙「な、何泣いてんのよ。みっともないわね」
提督「ごめん、嬉しくって」
曙「・・・何がよ」
提督「こうやって、誰かと手を取り合えることが、できることが・・・君に会えることができて・・・」
曙「もう、そんなに泣かないでよ。あたしが困るでしょ」
提督「うん」
曙「あんたみたいのもいるものなのね・・・」[ボソッ]
提督「へ?」
曙「なんでもないわよ、ほら、さっさと行くわよ」
提督「わかった、行こう!」
ー鎮守府ー
曙「それで、あんたのことはなんて言えばいいのよ。あんた、っていうのはいささか不便だし・・・」
提督「提督、それで良いよ」
曙「わかったわ、クソ提督」
提督「ひどくね!?」
曙「ひどくなんかないわよ、あんたみたいな泣き虫、クソ提督で十分だわ」
提督「うぐぅ、言い返せない・・・」
曙「ってか、クソ提督、あんた話し方変わってない?あそことはだいぶ違うんだけど・・・」
提督「ああ、あれは作ってた話し方」
曙「なんで話し方を作るのよ」
提督「あそこの奴らは、一部を除いていちいち外見を取り繕いたがる。自分の保身ばかりで人を蹴落とすことしか考えてない奴らばかりだからな」
曙「あぁ、そうね・・・正直今は何かを信じるっていう気にはなれないわ・・・」
提督「曙」
曙「なによ」
提督「別に、直ぐに俺のことを信じられなくってもいいんだ、ただこれだけは覚えていて欲しい
君は、もう一人じゃない、俺が傍に居る。だから、一人で苦しまなくても大丈夫だから」
曙「・・・え?あれ?なんで涙が・・・?」[ポロポロ]
提督「今まで、つらかったものな・・・一人で頑張ったんだもんな・・・曙は・・・」
[ギュッ]
曙「な、なに・・・すんのよ」
提督「こうした方が、暖いだろ」
曙「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。悲しかったよ、だって、だって大切な人を見放すなんてしたくないのにっ、そんなことしたくないのに、なんでよ」
提督「全部言っていいんだ、全部出して、スッキリさせよう。今は受け入れなくたっていいんだ」
曙「大切なものを、大事なものを、全部、あいつらはあたしから奪って、のうのうと生きてるのに!あたしは、なんで・・・うっ、うっ」
提督「曙、君は全部は取られてないよ」
曙「嘘よっ、だって、だって、うううっ」
提督「じゃあ、その記憶は?その命だって君のものじゃないのかい?」
曙「あ・・・」
提督「違わないだろう?それにね、君の言っていた人は君の前に、いるんだよ」
曙「・・・え?嘘・・・」
提督「本当だよ」
曙「だって、だってあの時・・・」
提督「ああ、あの時曙を逃がして捕まった、だけどある人が助けてくれたんだ」
曙「そうなの・・・?」
提督「うん、そして君に出会うためにここまでやってきたんだよ」
曙「まったく、本当にお人好しなのは変わんないのね」
提督「・・・悪かったな」
曙「うんうん、悪くないわ。だってそこがあなたのいいところ、なんでしょ?」
提督「まぁな」
曙「じゃあ、これからは一緒にいてよね」
提督「もちろん」
ーそれから後のある日ー
曙「ん?なんか届いてるわね・・・とりあえず渡しときましょう
なんか届いてたわよ」
提督「え?」
[ゴソゴソ]
曙「で、何が入ってたのよ」
提督「曙」
曙「なによ」
提督「結婚しよう」
曙「頭大丈夫なの?」[べしんべしん]
提督「い、痛い、痛い、大丈夫だから叩かないでくれっ」
曙「大丈夫ならなんでそんなこと言ったのよ・・・」
提督「曙が好きだから」
曙「キツイのいっとく?」
提督「わ、わーっ、本当だから、本当だからやめてっ」
曙「・・・じゃ、じゃあなんで唐突にそんなこと言い出したのよ」
提督「結婚できるものがついに届いたからだよ」
曙「は?あんた何言ってんの?」
提督「実は、ずっと準備をしていたんだよ・・・曙にプロポーズするの・・・」
曙「・・・」
提督「色々考えていたんだけど、結局こんな感じになってしまった。ごめ」
曙「だったら!」
提督「うん」
曙「だったら、あたしが納得できるようなプロポーズをし直してみるくらい言ってみなさいよ!このクソ提督!」
提督「・・・わかった。すまん、曙」
曙「だから、謝んなくても・・・」
提督「違う、けじめとしてだ。大切な人に、大事な人に恥かしい思いをさせるやり方をしてしまったからな・・・
・・・曙」
曙「なによ」
提督「俺と、結婚してください」
曙「・・・いやよ」
提督「そうか・・・仕方ないか。あんな言い方だったからな」
曙「違うわよ、言い方は良かったわ」
提督「じゃあ、なんでダメなんだ・・・?」
曙「わ、わかるでしょ。あたしと一緒にいてくれっるて言うんだったら・・・」
提督「わかった」
[ギュッ]
曙「そう、わかったらいいの、んむっ」
[チュッ]
提督「これからも、一緒に歩んでいこう。曙」
曙「それは、こっちのセリフよ・・・クソ提督」[チュッ]
提督「あれから、一年か・・・」
曙「何から一年経ったって言うのよクソ提督」
提督「ん?曙をあのクソッタレな場所から連れてきた日から、だよ」
曙「ふーん、ま、あたしにとってはどうでもいいことだけどね」
提督「そうなのか?」
曙「だって、今のあたしのそばにはあんたがいてくれるんでしょ?だったら別にどーでもいーわよ」
提督「そうか、そう言ってもらえるだけでも俺は救われるよ」
曙「ちょっ、恥ずかしいこと言うなっ、このクソ提督ッ」[べしっべしっ]
提督「い、痛てっ痛てっ・・・ありがとうな」
曙「な、何?急に叩かれて興奮でもしたの?変態ねー」
提督「ちげーよ、俺と一緒にいてくれてありがとうってことだよ」
曙「ば、ばっかじゃないの?よくそんなこと言えるわね!」
提督「だめか?」
曙「ダメじゃないわよ!あたしだってあんたが大好きなのよっ」
提督「曙・・・」
曙「あたしを、あたしをあんなところから助けてくれた。世界は暖かいんだって教えてくれた・・・だからっ、だからっ・・・う、うぅ」[ポロポロ]
提督「曙」
曙「なによ」[ポロポロ]
[ギュッ]
提督「大丈夫だから、もう、もう君は一人で苦しまなくたっていい。俺が傍に居るから・・・」
曙「提督、ぐすっ・・・ありがとね」
提督「・・・うん」
ーモノローグとエピローグー
一人では乗り越えられなかった、押し潰されそうになった。でも、そばに君がいてくれたから。僕はこうしていられるんだよ。ありがとう
ー艦ー
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回は曙のお話を書かせていただきました。ちょっぴり切ないけれど、暖かいそんなお話を目指し、書かせていただきました。
リクエスト等がございましたらコメントしていただけると嬉しいです。
それでは、また次の作品でお会いできることを楽しみにしております・・・。
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