2015-12-12 01:01:38 更新

概要

あの日あの人が来たから。
私たちは・・・救われた。
だから、救い返さなきゃ。
私は、私たちのために海に出なきゃ。
続き↓
http://sstokosokuho.com/ss/read/4081


前書き

電「なのです。はじめに見て欲しいのです。作者は艦これssは初めて書くのです。口調や語尾がおかしいの愛嬌っておもってほしいのです!出番少ないキャラもいるけど嫌いなわけじゃないのです!」

コツコツコツ

(3章からなんとなく木曾の口調を戻しました)

電「提督がくるのです!題名は某作品のパロなのです!えーと…あ!実装されてないの?って思うものもあるかもしれないけど無視して欲しいのです。どんな装備なんだろ…。」

来栖「電ちゃん、独り事?」

電「はじまるのです!」



×月×日 ××海南西 AM1:00


その影・・・いや影たちは隊列を組みながら静かに進んでいた。

暗い海を光をつけずに進んでいく非常に危険な航海である。

しかし、光をつけたとたん敵に見つかるのは必須だった。

敵と戦うか、暗闇に紛れて進むか・・・答えを選ぶまでに彼女たちに数

秒も必要なかった。

寒い冬である。

深海棲艦は寒さに弱い・・・なんて噂があるが案外本当なのかもしれない。


??「うう・・・さすがに12月にもなると寒いネ。」


??「お姉様!榛名が温めてあげましょうか?」


??「まったく、なぜ私がこのようなことを・・・。」


??「おなかがすきました・・・。」


??「みんなもう少し緊張感をだすクマ。」


??「そうなのです。」


??『こちら第二艦隊。目的地に到着。これより偵察機を飛ばして付近を索敵後待機モードに移行する。』


??「わかりました。そちらの海では最近潜水艦が多くいる様ですから気を付けてください。」


??『心配いらないよ。イムヤがいるんだから!』


??「前方に光源体を発見。きました、ここが目的地です。」


??「全員止まってください。これから索敵をします。作戦開始時間はマルフタマルマルです。」


その小さな影は無線機に向かって話した。


これは、彼女たちによる彼女たちのための、彼女たちの意思の、彼女たちの戦いの物語である。




ー半年前ー



大きな汽笛が港に響き渡った。

たった今貨物船が到着したのだ。

大量の資源と・・・新しい提督を乗せてだ。

妖精さんたちはいっせいにタラップを下すと乗り込んでいき資源を工廠へと運んでいった。

そんな姿を眺めているとひときわ変わった姿が目に飛び込んできた。

髪はぼさぼさで来ている緑色の軍服はヨレヨレだ。

その人は大きく伸びをするとゆっくりとタラップを降りてきた。


??「やあ、こんにちは。秘書艦って言う子を探しているんだけど君は知っているかな?」


??「着任おめでとうございます。秘書艦の電なのです。」


??「あ、ああ・・・君が秘書艦か。よろしくね、電ちゃん。僕の名前は・・・。」


??「来栖(くるす)中佐・・・いや来栖提督だな。」


来栖「あ、ああ・・・来栖だ。君は・・??」


??「私は長門型戦艦一番艦の長門だ。よろしく頼む、提督。」


来栖「よろしく頼むよ。長門。」


長門「・・・私にはちゃん付けしないのか。」


来栖「そ、それはすまなかった。長門ちゃん。」


長門「冗談だ。そんなに頭を下げないでくれ。」


腰の低い・・・いいえ、気弱で押しに弱い情けない提督・・・それが私の第一印象でした。

提督は、そうか?と恥ずかしそうに言うと司令塔を見ました。


来栖「・・・。」


電「なにかありますか?」


来栖「いや・・・なんでもない。ただ・・・思っていたよりきれいだなと。」


電「・・・。」


長門「・・・。」


来栖「さて・・・司令室に案内してくれないかな?実はクタクタなんだ。」


来栖はニッと笑うと鞄を持って歩き出した。



電「2階の突き当りが提督のお部屋です。」


来栖「突き当りか・・・日当たりはいいかな?僕、日光が多い部屋じゃないと嫌なんだよね。」


電「ところで提督は・・・その・・・どこまでここの話をきいているのですか?」


来栖「んー?聞くもなにもこの鎮守府の近海は比較的深海棲艦の攻撃は少ない・・・とか近くの鎮守府とは着かず離れずの関係とかかな?」


長門「・・・。」


長門「それ以上はなにもきいていないのか?」


来栖「聞いてないけど・・・?ここってなにかマズイ場所なのかな?」


電「いえ・・・そのなんというか・・・・。」


通り過ぎる部屋で物影が動いた。

来栖はまったく気づいていないようだ。

長門は、ため息をつくとその部屋へ入っていった。


来栖「あれ?長門はどこへ行くんだい?」


電「ちょ、ちょっと野暮用なのです。ここですよ。」


来栖「ここか・・・失礼します。」


来栖はゆっくりと扉を開けた。

部屋の中は大きな机と棚があり花瓶などもあった。

埃もなく新品同様の部屋だといえるだろう。


電「これが提督のお洋服になります。」


電は、衣装棚をあけると白い服を取り出した。

来栖は、あぁ・・・というとおもむろに服を脱ぎ始めた。


電「はわわわわ!」


来栖「んん?あぁ・・・ごめんねすぐ終わらせるから少し外で待っててくれるかな?」


電「し、失礼します。」


電は急ぎ足で部屋を出た。

来栖は電が部屋を出ていくのを確認すると再びベルトに手をかけた。

ちょうど鏡があったのでその前に真新しい白い軍服に着替える。


来栖「ごめんね、終わったよ。」


電「し、失礼します・・・。よく似合ってますよ。司令官。」


来栖「そうかな?それはよかった、よいしょっと。」


最初の事件は来栖が椅子に座った瞬間に起きた。

椅子に座った来栖はなぜか笑ったまま動こうとしない。


電「どうしましたか・・・?」


来栖「電ちゃん・・・。」


電「・・・?」


来栖「どうして椅子の上にとりもちがおいてあるのかな・・・?動けないんだけど・・・。」


突然乱暴に扉が開くと2人の艦娘が飛び込んできた。


??「いたた・・・。」


電「龍驤さんに曙ちゃん?」


龍驤「乱暴するのやめえや!」


曙「そうだ!このバカ力女!」


来栖「・・・?」


長門「黙れ!提督何か異常はないか?」


来栖「異常というか・・・とりもちが椅子においてあって今動けなくなってるかな。」


長門「貴様ら!」


曙「ちゃんと確認して座らないほうが悪いのよ!」


龍驤「そうやそうや!うちらは着任祝いでおいていっただけや!」


電「苦しい言い訳なのです・・・。」


来栖「まあまあ、カリカリしないで長門も龍驤も曙ちゃんも。」


曙「ちゃん付けで呼ぶな!くそ提督!」


長門「失礼だぞ!貴様ら!!」


来栖「長門。気持ちはうれしいから。ね?今回は僕が確認して座らなかたことが悪かったことにするから。ね?」


??「あら、でしたらもう2人は連れていいってよろしくて?」


電「熊野さん・・・。」


熊野「紹介遅れましたわ。ごきげんよう、私が重巡の熊野ですわ。」


来栖「あぁ・・・よろしくね、熊野。」


熊野「提督なにか勘違いをしてなくって?気安く呼ばないでくださる?私殿方の好みにはうるさくってよ。」


長門「熊野!!いい加減にしろ!」


熊野「ふん。」


熊野は曙と龍驤をたたせると部屋を出ていこうとした。

長門がすごい殺気で睨んでいた。電は、ただおろおろとしているだけだ。


熊野「そうそう、言い忘れましたわ。ようこそ、提督殺しの鎮守府へ。」


熊野たちはそう言い残すと部屋を出ていった。

曙がさいごに舌をだしたのを見た長門はまた怒っている。


来栖(主力艦隊旗艦なのにずいぶん頭に血が上るのが速いな・・・)


電「・・・。」


来栖「電ちゃん。どういうことなのかな・・・?」


電「実は・・・。」


長門「提督、電に話をさせるのは酷だ。私が話そう。」


来栖「う、うん・・・。よろしく頼むよ。」


長門「実はな、提督・・・つまりはここ半年で来栖提督は4人目なんだ。」


来栖「前の3人はどうなったんだい?」


長門「・・・全員死んだよ。」


来栖「え・・・?」


長門「前の3人は全員死んだんだ。深海棲海に攻撃されたわけではない。ある日突然執務室で提督は死んでいったんだ。」


来栖「・・・。」


長門「自然死なのか、誰かが殺したのか・・・目立った外傷もなく、最初の提督が死んだときはわからなかった。だけど2人、3人と死んでいくたびに噂が流れた。」


電「誰かが提督を殺している・・・という噂です。」


電「本当か嘘かは、わかりません・・・だけど鎮守府内の艦娘を疑心暗鬼にさせるには十分な人数でした・・・。」


長門「うむ・・・。誰かが容疑者というわけではない。だが、自然と疑われるのを守る者、疑う者という2つのグループが出来た。さっききた熊野なんかは疑う側の代表格だ。」


来栖「なるほどね・・・ちょっと複雑だね。」


電「司令官は怖くないのですか・・・?」


来栖「あぁ・・・怖いね・・・。けど、僕が僕の仲間を疑っても仕方ないと思うんだ。」


電「司令官・・・。」


長門「貴様・・・。」


来栖「とりあえずそうだね・・・よし!今日はパーティーを開こう!親睦会だ!そうと決まればみんなを誘わなきゃな・・・。案内してくれるかな?」


電「いいですけど・・・。」


長門「あきれたやつだな・・・。」


来栖「そうだな・・・まずは工廠に行こうかな・・・。まだ取ってない荷物もあるからさ。」




   工廠


電「ここが入口なのです。」


来栖「ありがとう。あれ、長門どこへ行くんだい?」


長門「あぁ・・・少し野暮用がな。」


来栖「そうか・・・じゃあ、また後で。」


長門「すまんな。」


電「長門さんは、自警団という形で鎮守府内を回っているのです。」


来栖「あぁ・・・それは忙しそうだね・・・。さて入ろうか。」


工廠に入ると目に付くのは巨大という言葉だけでは言い表すことができない工房だ。

妖精さんたちが忙しそうに働いている。


??「あ、もしかして新しい提督ですか?」


??「そうですよ。着任おめでとうございます。」


来栖「あぁ・・・ありがとう。君たちは・・?」


??「私は、工作艦の明石です。」


??「私は大淀です。よろしくおねがいします。」


電「大淀さんは、いつおは指揮所に。明石さんは工廠にいます。」


来栖「そうなんのか、よろしくね。来栖です。」


??「明石!!早く私専用魚雷をつくるネ!」


??「そうですよ!榛名・・・お姉さまが魚雷を撃つ姿を見たいです!」


明石「だから言ってるじゃない。戦艦は魚雷がつけられないの。」


??「そんなことないネ!北上は魚雷をいっぱいつけてたデース!」


大淀「北上さんはどちらかというと軽巡ですよ・・・。」


??「な!」


??「う、嘘ですよね!お姉さま!」


電「金剛さん、榛名さん・・・?」


金剛「電ちゃんじゃないデスカー!!あ、新しい提督ですね!ヨロシクオネガイシマース!」


来栖「あぁ・・・よろしくね。金剛。」


榛名「・・・榛名です。よろしくお願いします。」


来栖「よろしくね。」


榛名「汚らわしい男が・・・。」ボソッ


来栖「・・・?!」


明石「とにかく、諦めてよ。無理なものは無理なの。」


金剛「わかったデース。」


榛名「あ、置いていかないでください!!」


あわただしく榛名は走っていくと工廠を出ていった。


電「いつも賑やかな人たちなのです。」


来栖「そうなのんだ。彼女たちをみているだけで元気が出そうだね。」


明石「提督。」


来栖「ん・・・?」


明石「私たちから言うことじゃないかもしれないんですけど・・・その私たちは味方ですから。」


大淀「なんていうのでしょうか・・・艦娘同士で争うのは・・・嫌なんです。」


来栖「そういう意味か・・・。」


電「金剛さんも同じ考えなのです。榛名さんは・・・よくわかりませんが。」


来栖「・・・。」


大淀「そろそろ私行きますね。緊急の連絡入ってるといけないので。」


来栖「あぁ・・・よろしくお願いするよ。」


電「じゃあ、次の場所へ行きましょうか。司令官。」


来栖「あぁ・・・少し外で待っていてくれ。」


電「どうしたのですか・・??」


来栖「なんでもないよ。すぐ追いつくからさ。」


電「・・・わかったのです。」


電は、肩を落としながら工廠を出ていった。


来栖「明石・・・。」


明石「・・・?」


来栖「作ってほしいもんがあるんだ。」


ーーー


電「次は、食堂なのです。」


来栖「なるほどね・・・通りで良いにおいがするわけだね。」


電「司令官・・・さっきは何の話をしていたのですか?」


来栖「電ちゃん・・・ごめん。教えられないんだ。」


電「わかったのです・・・。」


来栖はゆっくりと食堂の扉を開いた。


??「いらっしゃい・・・って新しい提督かよ。」


電「最悪のタイミングなのです・・・。」


来栖「・・・?」


??「今度はいつまで生き残れるかしらね。」


??「暁ちゃん。気持ちはわかるけど目の前で言うのはまずいっぽい。」


暁「なによ。レディーは裏でこそこそ言わないのよ。夕立はわかってないわね。」


夕立「ぽい・・・。」


響「ハラショー。」


熊野「あら、提督じゃないですか。また会えるなんて光栄ですね。残り少ない会える機会ですものね。」


来栖「そ、そうだね・・・ハハハ・・・。」


熊野「私たちは、提督とはお話しませんよ?どうかあちらにいる加賀さんたちとお話しして来たらいかがですか?」


来栖「そ、そうだね・・・。あ、そういえば、今夜親睦会を開くんだけど来ないかな・・・?」


全員「・・・。」


夕立「ちょっとぬけてるっぽい・・・。」


響「このタイミングで言うなんて・・・ハラショー。」


暁「そんな誘いじゃレディーの心は動かせないわよ。」


熊野「まあまあ、みなさんそう言わずに。そうですわね・・・どうせなら行きましょうよ。どうせ今回も提督も死ぬのですから。」


来栖(熊野の笑顔が怖い・・・。)


夕立「熊野が言うなら・・・。」


響「そうだね。」


暁「しかたないわね・・・。」


来栖「ま、まあ。暗くなったら食堂集合で。」


来栖たちはそれだけを言うと逃げるようにその場を去った。


電「あそこにいるのは特に司令官が殺されたと疑っている人たちなのです。」


来栖「・・・寂しいね。」


電「え・・・?」


来栖「やあやあ、君が加賀さんと・・・赤城さんかな?」


青い服をきた少女はくるりと後ろを向くと手を出してきた。

同じように赤い少女もだしている。


来栖「・・・?」


加賀「間宮券をください。」


赤城「私も欲しいです。」


来栖「え・・・?」


電「だめなのです!昨日の任務の報酬にあげたです。」


加賀「ケチが・・・。」


赤城「チッ・・・。」


来栖(・・?!)


加賀「わかりました。それでどのような要件ですか?」


来栖「あぁ・・・実は夜に親睦会をやるからこないかなと・・・。」


赤城「食事は出ますか?」


来栖「そのつもりだけど・・・。」


加賀「食べ放題ですか?」


来栖「ま、まあ・・・。」


加賀&赤城「行きます。」


来栖「そ、そう?じゃあ、また後でね。」


来栖は不思議な顔をしながら食堂を出ていった。

電はため息をついている。


来栖「どうしたの?」


電「司令官・・・だめですよ。」


来栖「え・・・。もしかして彼女たちも・・・。」


電「いいえ、加賀さんと赤城さんはむしろ友好的なのです。だけど・・・。」


来栖「だけど・・・?」


電「食べ物を前にすると深海棲艦より怖いのです・・・。」


来栖「え?!」


電「ま、まあ・・・大丈夫多と思うのです・・・。次はどこへ行きますか?」


来栖「そうだな・・・。兵舎に行ってみようかな。」


電「わかったのです。こっちです。」


ーーー


来栖「うーん・・・ここの窓ガラス割れてるな・・・明日にでも修理しようか。」


電「て、提督はやらなくていいのです。電たちが・・・。」


来栖「いいよいいよ。ここにきてもやることそんなになさそうだからさ・・・。」


電「そうですか・・・。」


??「なによ、龍驤はまたそんなこと言ってるの?」


龍驤「なんや!事実にきまっとるんや!」


??「どうしてそんなこと言えるのよ。」


龍驤「隼鷹は甘いんや!もっと視野を広く持たないといけないんや!」


電「け、喧嘩はいけないのです!」


龍驤「なんや、電やんか。」


隼鷹「あ、提督。初めまして。客船型空母の隼鷹です!ひゃっはー!」


来栖(ひゃっはー?)


電「じゅ、隼鷹さん!」


隼鷹「あ、えっと・・・よろしくおねがいします。」


龍驤「・・・。」


来栖「・・・?」


龍驤はクルリと背を向けるとそのまま去っていってしまった。


隼鷹「あ・・。」


来栖「なにかあったのかな?」


隼鷹「あ・・・うーん・・・。龍驤はもともと提督には味方のほうだったんだけど・・・。」


来栖「ん?」


隼鷹「い、いろいろあってさ・・・今度で良いかな・・・。」


来栖「言いにくいなら今度でもいいよ。あ、そういえば今夜親睦会をひらくんだけど来ないか?」


電「あ・・・。」


隼鷹の目がきらりと光った。

突然メモ用紙をとりだすと何かを高速で書き始める。


隼鷹「よし!お酒は私に任せてここにメモしたやつ全部用意してね!」


来栖「え・・・あ・・・うん・・・。」


隼鷹「楽しみだなー!あ、龍驤と飛鷹にも声かけとくね。じゃね!」


隼鷹も同じように走り去っていった。


来栖「げ、元気だな・・・。」


電「隼鷹さんにお酒の話はだめなのです・・・。」


来栖「そうみたいだね・・・。」


来栖(米焼酎から麦と芋まで・・・ウォッカ・・??なんだそれは。)


電「あ、長門さん!」


長門「どうだ、提督。ある程度の艦娘には会えたか。」


電「あとは・・・陸奥さんと大井さんと北上さんと雷ちゃんと球磨ちゃんと木曽ちゃんなのです。」


長門「あぁ・・・。たしか、大井と北上と球磨は潜水艦狩りにいったぞ。」


来栖「潜水艦狩り?」


長門「まぁ・・・なんとういうか魚雷をそこら中にぶっぱなすだけだ。無駄遣いはやめろといっているんだがな。」


来栖「うーん・・・その3人は・・・その・・・。」


電「大丈夫なのです。あの3人は加賀さんや赤城さんと同じで潜水艦狩りさえさせてくれれば素直なのです。」


長門「うむ・・・。どちらかというと問題は・・・。」


陸奥「あら、新しい提督じゃない。」


来栖「ん??」


陸奥「長門型2番艦の陸奥よ。」


来栖「あぁ・・・よろしくね。陸奥。」


陸奥「・・・。」


来栖「・・・?」


陸奥「ひ弱そうな提督ね。1日も持たなそうね。ま、いいわ。確か親睦会でしたっけ?熊野から聞いたわ。参加するからよろしくね。せいぜい爆発しないように。じゃあ。」


陸奥はそれだけ言い残すと兵舎を出ていった。

どうやら工廠へと向かっているようだ。


長門「すまんな・・・陸奥もいつのまにかああなってしまってな・・・。」


来栖「うーん・・・。」


ーーー


隼鷹「えー・・・マイクテスマイクテス・・・えー本日は来栖提督主催の親睦会を盛大に開きたいと思います。」


全員「いえー!」


電「来栖提督から挨拶があるのです。」


来栖「えーと・・・初めまして今日着任した来栖です。元々は・・・まあ・・・内地のほうにいました・・・・えーと今日は、僕が無理言ってみんなに集まってもらったんだけどこんなにも集まってくれてありがとう。ご飯もお酒もたくさん用意したので自由に食べてください。」


隼鷹「んじゃ、乾杯の音頭をとるぜええ!ひゃっはー!」


来栖(ふつう僕の仕事じゃ・・・。)


隼鷹「かんぱーい!」


それぞれが自由に席へと着いた。

加賀さんと赤城さんはいまだに料理を厳選しているがすでに大皿を確保していていた。


来栖「さて・・・どうしようかな・・・。」


??「提督!これあげるクマ。」


来栖「ありがとう!えーと・・・。」


??「軽巡の球磨だクマ。」


来栖「あぁ・・・ありがとう球磨。」


球磨「なでなでしないでほしいクマ。ぬいぐるみじゃないクマ。」


来栖「ご、ごめん・・・。」


球磨「やっぱりしてほしいクマ・・・。」ボソッ


来栖「・・・?」


電「司令官!ここにいたんですね。」


来栖「あぁ・・・電ちゃん。」


電「あ、球磨ちゃんおかえりなさい。」


球磨「パーティーがあるって噂を聞いたから急いで帰ってきたクマ。」


来栖「それは、本当にありがとう。」


球磨「どちらかというと北上さんのおかげかなー。」


来栖「・・・?」


??「大井っちー。ペース早すぎるよー。」


??「そ、そんなことありませんよ。ですが、隼鷹なんかより私のほうが酒豪ということを証明したいだけですわ!」


来栖「えーと、もしかして北上と大井かな?」


北上「あー!提督じゃんー!おはつー。」


大井「北上さんをつけなさい!」


来栖「あぁ・・・ごめん。」


北上「別に気にしなくてもいいよー。ね、大井っちー。」


大井「き、北上さんが言うなら。」


北上「ごめんねー。なんか最近特にピリピリしてるんだよねー。まぁ・・・理由はわかるよねー。」


来栖「そうだよね・・・。」


北上「あ、安心してねウチらは基本提督のこと好きだよー。」


大井「私も好きですよ。提督。」


来栖(なんだろうこの笑顔、榛名と同じものを感じる)


電「もともとはみんな仲がよかったのです。」


球磨「だけど・・・誰が言い出したのかはわからないけれどあんな噂が流れてからギスギスしだしたクマ。」


来栖「うーん・・・。」


球磨「あの頃に戻りたいクマ・・・。」


??「それは無理だキソ!」


球磨「どうしてそういうことを木曾は言うクマ!」


木曾「現実を言っているだけだキソ!」


熊野「そうね・・・私そう思いましてよ。」


電「け、喧嘩はだめなのです。」


来栖「そ、そうだよ・・・やめなよ、ね?」


木曾「うるさいキソ。」


暁「まったく、レディーの喧嘩に口出しをするなんて。」


響「・・・ハラショー。」


来栖「ご、ごめん。」


北上(そこで謝っちゃうのかー。」


電「北上さん、声に出てるのです。」


加賀(このチキンおいしいですよ赤城さん。)


赤城(本当ですね!)


隼鷹「こらああああ!なにしてるの!」


龍驤「なんや!へべれけは、だまっとれ!」


隼鷹「ほおお?!私とやりやおうってか!?」


長門「いい加減にしろ!」


全員「・・・。」


陸奥「さすがに羽目を外しすぎよ。いくら派閥があっても今日は、提督がせっかく開いてくれた会なんだから。しがらみは忘れなさい!」


熊野「・・・もどりますわよ。」


木曾「わかったキソ。」


暁「ふん。」


響「スパシーヴァ。」


龍驤「しけちまったやないか。飲みなおしや。」


来栖「ありがとう陸奥・・・。」


陸奥「・・・これくらいどうってことないわ。」


来栖「いや、本当にありがたいよ。」




親睦会が終わり数時間後・・・



??「いい・・・今回も・・・・せ。」


??「ま、・・・・です・・・?」


??「う・・・さい!めい・・・した・・・え!」


??「わ・・・て・・です。・・・すが・・・・ぜん・・・なん・・・か?」


??「し・・・いするな。た・・・のお・・・うだ。」


??「はい・・・。」




司令塔3階


熊野「まったく、なんで私が。」


熊野は文句を言いながらくらい廊下を歩いていた。

普通の人間よりは暗闇に目が利くとはいえやはり注意して歩かなければすぐに転んでしまいそうだった。

そもそも、この司令塔はなぜか廊下まで資料が散乱しているのだ。


熊野「誰か片づけないものなのかしら。」


熊野は、自分がけがれることが許せなかった。

生まれ時から世界は自分を中心に回っていると思う、女王なのである。

しかし、そんな自分を変だと思ったことはない。


熊野「まったく、あの人も人使いが荒いですわ。新任祝いのお香を届けろなんて。自分ですればよくなくって?」


熊野は、来栖の寝室の前につくとそっとお香を扉の前へ置き火をつけようとポケットに手を入れた。


熊野「おかしいですわね・・・。確かにいれたのですけど・・・。」



その時だ。

熊野は人の視線を感じた。

人なのだろうか、とにかく誰かに見られているのだ。

夜中の2時である。

この時間にこんなくらい廊下で・・・。

熊野は恐る恐る後ろを無振り向いた。

そこには、ガスマスクのようなつけた異様ないでたちの怪物が立っていた。

帯刀もしている。


熊野「きゃああああああ!」


熊野は意識を失うと廊下へ倒れた。



ーーー


学校に七不思議があるように、ある街に七不思議があるように古来から人と不思議な現象はきっても切れない縁である。

xx鎮守府にもそんな七不思議がある。

鎮守府の奥地にある旧滑走路。

艦娘といわれる彼女たちが現れるまでは、主に士官の移動や物資の輸送に使われた輸送機が出入りしていた場所だ。

その滑走路の奥に広がる森を抜けた井戸の底。

暗闇の中にそこへ続く扉はある。


「そこには死んだ艦娘の亡霊が根付いており、生者を食らいつくそうとする・・・。」


という曰くがあるが、実際は大戦当時、大本営が無謀にも潜水艦ドッグを作りそこへ通じるゆういつの通路である。


かび臭さとほこり臭さに耐えながら進んでいくと比較的新しい足跡の数が増える。

突き当りの扉は、大きな音を立てながら開いた。


??「ど、どうして!」


来栖「久しぶりですね。佐倉憲兵特務少尉。」


佐倉「バカな・・・。熊野はなにをしているんだ!」


突然佐倉が絶叫を上げた。

右腕は、ひじから下がなくなり血がしたたり落ちている。


佐倉「うがあああああああ!!」


来栖「みっともない。それでも軍人ですか。」


佐倉「来栖!!!貴様、再び歯向かうか!」


来栖「・・・。」


佐倉「憲兵に対しての傷害!ただで済むと思うな!」


来栖「なにを言っているのですか?」


来栖は、ゆっくりと佐倉へと近づいていった。

佐倉はおびえきった顔で後ずさっていく。


来栖「提督権限で命ずる。佐倉憲兵特務少尉。貴官を殺人罪の疑いで拘束する。」



ーーー

熊野「っ!」


熊野は飛び起きるとあたりを確認した。

近くには、ガスマスクをつけたあの異様な怪物はいなくなっていた。


熊野「ここは・・・。」


電「おはようございますなのです!」


熊野「電さん・・・。私はいったい・・・。」


電「・・・。」


長門「うむ、起きたか。」


熊野「え、ええ・・・。あの、私確か昨日提督に祝いの品を持って行ったと思うのですが・・・。」


長門「これのことか?」


長門は、袋に入ったお香を取り出した。

熊野はゆっくりうなずいた。


長門「貴様、これをどこで手に入れた。」


熊野「どこといわれましても・・・その・・・。」


電「正直に言ってほしいのです。」


熊野「そう言われましても・・・。」


長門「・・・。」


長門は、ため息をつくと思いっきり壁を殴った。

熊野は驚いたように体を震わせた。



長門「いいか、このお香はどういう仕組みかは知らんが男という性別だけを殺す成分が含まれているらしい。」


熊野「え・・・。」


長門「理解できただろ。お前は!前任の3人と提督全員にこれと同じものを届けた。」


熊野「そ、それじゃ・・・」


長門「お前が殺していたんだ。」


熊野「きゃああああああ!」


熊野の悲鳴が響き渡った。

電は心配そうにしているが長門はただ憐みの目を向けているだけだった。

顔面蒼白となった熊野がゆっくり顔を上げた。

目には涙をうかべ、信じられないといいたげである。


熊野「私が・・・。」


長門「もう一度言う。貴様は、これをどこで手に入れた。」


熊野「私が・・・。」


長門が熊野の胸倉をつかんだ。

熊野は抵抗する間もなく殴られベットへ倒れこんだ。


長門「貴様っ!!まだわからないのか!」


来栖「やめろ!」


来栖は、長門の手をつかんだ。

しぶしぶといった表情で長門は手を放した。


来栖「・・・どういう風に脅されていた。」


熊野「え・・・?」


来栖「どういう風に言われていたんだ。」


熊野「す、鈴谷が傷ついている。修理してほしければ言うとおりにしろと・・・。」


来栖「鈴谷・・・。」


来栖は、悲しそうな目をすると外を見た。

窓の外はまだ、漆黒の世界が広がっている。


来栖「鈴谷は・・・1代目の提督の無理な偵察作戦ですでに沈んでいる。」


熊野「ウソですわ・・・。」


来栖「・・・。」


熊野「こ、これは夢ですわ!!私が・・・提督たちを殺していて・・・しかもお姉さまも沈んでいる・・・。うそですわ!!!」


熊野、突然ポケットから銃を取り出すと額に当てた。



熊野「ゆ、夢なら死にませんわ!」


パンっ。

乾いた音がした。

電と長門が慌てて駆け寄った。



電「し、司令官!」


長門「大丈夫か!」


熊野「ご、ごめんなさい・・・。」


熊野は、肩を赤く染めている来栖をみると銃をおとした。

すかさず、来栖がその銃を回収する。


熊野「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」


来栖「もう、いい!」


来栖は熊野を力強く抱きしめた。

その体はワナワナと震え、強気の彼女からは想像できないほど弱弱しい姿だった。

長門と電も心配そうに来栖たちをみている。


熊野「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」


来栖「熊野!」


熊野「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」


来栖「熊野っ!」


来栖が熊野の頬をはたいた。

熊野は、呆けた顔で来栖をまじまじと見返す。


来栖「鈴谷のことは残念だ・・・僕の力不足でどうしようもない・・・だけど、自分を責めるな!お前は何も知らなかった、無理やりやらされていた。」


熊野「提督・・・。」


来栖「泣いていいんだ、お前も。苦しかったんだろ・・・?」


熊野はその一言を聞くと声をあげ泣き出した。

来栖もそれにこたえるように一層強く抱きしめる。

よくみると、長門は複雑な表情をうかべながらも目に涙をうかべていた。

しかし、そんな時だからこそ1人その異様な光景を受け入れられない者がいた。


電(司令官はいったい、なにものなの・・・?どうして、お香のことを知っていたの・・・?)


Silent walk 完






2章に続く・・・




   第2章



「ここはどこだ・・・。」


男は、部屋の中で書類の整理をしていた。

外には巨大な軍港と工廠が見える。


「いやぁー。それにしても本当に作っちまうなんてな。」


「そういうなって。研究してそれを売り出して利益を得る。それが俺たちだ。」


「でも、いまさら売れんのか?」


「売れるさ。それがロマンさ。」


隣にいた男たちは話し終わると部屋を出ていった。

時計の針は午後2時を指している。

心地よい西日に思わず男はまどろんだ。

その時だ、この穏やかな雰囲気に似合わない凶悪な音が聞こえた。

猛烈な爆音と爆風が港に響わたる。

男は、瞬間窓の外を見た。

工廠から火が上がっている。


「ウソだろ・・・!」


男は、走りだした。


「どいてください!」


道行く人に当たりながらも男は進む。

おかしなことに、みな工廠の出火には目もくれずただ避難を続けているだけだった。

もちろん消化を試みようとする者もいない。

男は、工廠の目の前まで来ると絶望した。

火の手はすでに工廠全体を包んでおり、中にいたものの生存はおろか侵入すら困難なものとなっていた。

絶望に膝をつく隣で足音が聞こえた。


「お前っ!」


男は隣にいたひげ面の男の胸倉をつかんだ。

胸には多くの勲章がついている。

階級は少将だ。


「どうしたんだよxx。そんな怖い顔して。」


「どうしてっ!どうしてこんなことができる!」


「いいかxx。戦争は終わった。いや、戦争はビジネスとなって終わる。深海棲海?それがどうした。」


「・・・知っていただろ・・・。今日はここに俺の嫁と娘が来ていたのを・・・。」


「もちろんだ。俺が見学を薦め許可を出したんだから。まったく痛ましい事故だ。こんな日に・・・。」


「事故だと?!」


「あぁ・・・事故だ。」


男は、ひげ面の男を殴りつけた。

ひげ面は、おっとなどと言いながら頬をさすっている。


「どこが事故だ・・・!」


「証拠はないだろ?これは事故さ!」


「俺を・・・はめたな!xx!」


「ふふふ・・・。知らんな。おい憲兵!」


男の後ろから数人の憲兵が走ってきた。

おかしな話だった。

港の治安を守るはずの憲兵が消火を優先するわけでもなく、ただ1人の男の拘束を優先したのだから。


「xx憲兵特務少尉!おまえ・・・。」


「残念ですよ、xx中佐。」


「そうか・・・そういうことか・・・お前らグルだったのか。」


「さあ、どうだろうな。xx。あとの話は営倉でゆっくり聞こうじゃないか。」










電「・・・・のです。」


来栖「・・・?」


電「おきてなのです!」


来栖「おおう?!」


電は、大きくジャンプすると提督の上へとのしかかった。

勢いで来栖はすっとんきょんな声をあげた。


電「おはようございますなのです。」


来栖「あぁ・・・おはよう、電ちゃん。」


来栖は、大きく伸びをすると衣装棚を開けた。

電は後ろを見ていたのでそのまま着替えてしまう。


長門「入るぞ。」


長門はノックなしに入ると来栖の姿に顔を赤らめた。


長門「き、貴様!なんという格好を・・・。」


来栖「ノックくらいしてくれ・・・。」


長門「ま、まあいい。」


長門は咳ばらいをすると、書類を机の上に置いた。


来栖「どんな感じだ。」


長門「そうだな、だいぶ落ち着いてきた。」


熊野の件から、来栖と長門と電の間の秘密となった。

佐倉発見から数週間後、彼は鎮守府内の裁判にかけられ有罪となり今は営倉にはいってもらっている。

提督派と反提督派・・・その境は、佐倉が裏で勝手に殺していたという結末で消えていた。

今は、以前まで・・・とはいかないがいさかいなくそれなりに平和だった。


来栖「それはよかった。」


再びノックなしで扉が開いた。

忘れてはいけないことがあった。

鎮守府内でいさかいの境がなくなった本当の大きな理由。

熊野が、提督に惚れてしまったということを。


熊野「おはようございます。」


来栖「あぁ・・・、おはよう熊野。」


熊野「わったく、冷たいですわ。目が覚めたというのなら真っ先に私に会いに来てもらいたいものですわ。」


来栖「あぁ・・・ごめんね。実は、僕も今さっき目が覚めたばかりで。」


熊野「そうなのですか?でしたら、今度はこの私と同じ部屋で寝ましょう。優しく寝かしつけて優しく起こしてあげますわ。」


来栖「か、考えておくよ。」


熊野「それはうれしいことですわ。では、私は哨戒任務いきますわ。ごきげんよう。」


熊野はそれだけ言い残すと部屋を出ていった。

来栖は、苦笑いを浮かべたままため息をついた。


来栖「こうなるとは・・・予想できなかったな。」


電「提督のバカ・・・。」


来栖「・・・?!」


長門「電、よく言ったぞ。」


来栖「・・・?」


電「そういえば、司令官。きょうは新しい艦娘の着任ですよ。」


来栖「あれ・・・きょうだっけ!」


電「そうなのです・・・。」


来栖「あちゃー・・・まだ夕立の転任書類で来てないや・・・。」


長門「安心しろ、すでに私が作成した。」


長門は、そういうと書類を机の上に置いた。

すでに、あとは来栖がハンコを押せば完成という状況まで出来上がっていた。


来栖「ごめんね・・・・ありがとう。」


再びノックの音がした。


来栖「誰だー?」


曙「港に新しい人が来たぞ。」


球磨「とってもかわいいクマ!」


雷「早く迎えに行きなさいよ。」


来栖は、帽子をかぶると慌てて出ていった。



ーーー


??「ここが新しい鎮守府か・・・。」


??「迎えの人遅いな・・・。」


来栖「ごめんごめん。」


来栖は息を切らしながら走ってきた。

電は、ずれている提督の帽子を直した。


来栖「初めまして。僕がここの提督をやらせてもらっている来栖です。」


??「僕の名前は時雨だよ。よろしくお願いします、来栖提督。」


球磨「か、かわいいクマ・・・。」


時雨「そんなことないよ、球磨さん。」


金剛「すごくかわいいネ!」


榛名(かわいい・・・?)


来栖(榛名の顔が怖い)


時雨「そんなことないってばー、もう、金剛さん。」


長門「むっ。まさか全員の名前をもう覚えているのか?」


時雨「そうだよ。だって、移動時間暇だったしね。」


雷「すごい暗記力ね。」


時雨「少ない特技なんだー。」


来栖「まあ、立ち話も疲れるだろうし食堂のほうに行かないかな?」


時雨「いいね!僕、間宮パフェ食べたいんだ!」


大淀『提督!緊急通信です。鎮守府近海に深海棲娘多数出没。至急迎撃すべし。』


来栖「わかった。司令室に戻ろう。」


来栖は、申し訳なさそうに時雨へ頭を下げた。


来栖「ごめんね、時雨ちゃん。夜にもう一度お誘いするよ。」


時雨「楽しみにしてるね。」


来栖はそういうと駆け出した。

後を長門と電が追っていく。


時雨「いつもあんな感じなの?」


球磨「どういう意味クマ?」


時雨「うーんと、腰が低いって言うか・・・弱気?」


金剛「たしかにそんなかんじネ。でも、そこがまたイインデース!」


榛名「来栖殺す来栖殺す来栖殺す来栖殺す。」ボソッ


時雨「へえ・・・そうなんだ。」



ーーー


来栖「状況報告して。」


大淀「10分前に哨戒にでている第2哨戒隊から通信がありました。」


来栖「旗艦は?」


大淀「飛鷹です。」


来栖「編成は?」


大淀「飛鷹 隼鷹 熊野 木曾 曙 響です。」


来栖「うーん・・・大型船との戦闘は避けたいな・・・。飛鷹につないでくれ。」


大淀「わかりました。」


しばらくするとイヤホンから飛鷹です、という声が聞こえてきた。

雑音は多いが聞き取れないほどではない。


来栖「何がいた?」


飛鷹『はい、彩雲を飛ばしてたんですけどおそらくイ級ロ級が各4機、へ級ト級が各3機ヲ級が1です。』


来栖(なんだその編成は・・・)


大淀「敵航空偵察部隊でしょうか・・・?」


来栖「それにしても空母がヲ級だけというのは少しおかしいきがするんだよね・・・。」


飛鷹『どうしますか?ヲ級は、私と隼鷹でやれます。おそらく皆練度も高いですし数では負けますが、やれます。』


来栖「・・・わかった。だけど、回線はいつでもオープンにしておいて。いちおこっちからも主力艦隊を含んだ援軍をおくるよ。」


飛鷹『わかりました。』


雑音が消えた。

飛鷹が回線を切ったのだ。


大淀「駆逐艦と軽巡の数に空母があっていませんね・・・。」


来栖「そうなんだよね・・・。まるで、2つの編成が一緒に動いているような・・・。」


大淀「援軍は誰を選抜しますか。」


来栖「・・・金剛と榛名と陸奥、それに加賀と赤城、球磨とでいかせよう。」


大淀「ずいぶん火力重視ですね。」


来栖「いいんだ・・・いやな予感がするからな。それと、長門と明石を至急屋上へ呼んでおいてほしいな。」


大淀「屋上ですか?」


来栖「屋上で大丈夫。」


ーーー


飛鷹「ゼロ式艦戦だします。」


隼鷹「OK。私は、彗星だすよ。」


飛鷹と隼鷹が、同時に弓を射る。

矢はしばらく飛ぶと、戦闘機へと姿を変え飛んでいった。


隼鷹「うーん!!いい装備を持っていると気持ちいいいい!!」


飛鷹「イ級へ級、ロ級ト級は熊野達にお願いします。」


熊野「この熊野が一ひねりで黙らせてやりますわ。」


熊野達はそういうと西へと進んでいった。


木曾「やってやるぜ!」


響「やるさ。必ず。」


曙「距離500mみえてきたよ!」


熊野「いきますわよ。主砲発射用意。」


12.7cm砲と20.3cm砲が同時に火を噴いた。

突然のことに回避する間もなく何隻かの深海棲艦は沈んでいった。


熊野「とおおおう!!」


響(ハラショー)


木曾(また変な声をあげてるキソ)


曙「沈め沈め!」


熊野「ちょっと、曙さん、戦い方にエレガントさがなくってよ。」


曙「うるせえ!奇声女!」


熊野「そんな声上げてないですわ!」


熊野と曙言いあっているうちにも深海棲艦は態勢を立て直した4隻が沈み、2隻が大破、残りも最低でも小破している状態ではあるが、その姿勢に躊躇は見られない。

突然、6本の軌跡が現れる。


響「言いあってる暇なんかない。」


響の一言で我に返ると、反転して魚雷を避ける。

続けて主砲の攻撃も続いたがすでに熊野達には、それをかわせるだけの間合いを取っていた。


熊野「いきますわよ。」


再び主砲が火を噴く。

ついに深海棲艦は、3隻を残して沈んでいった。

焦ったように3隻は反転するとその場を離れようとする。

しかし、後ろには木曾と響が放った魚雷がぴったりとついていった。

巨大な水柱が上がり、悲鳴のような声が響き渡る。

残りの3隻も、ゆっくりと沈んでいった。

そう、まるで何かを見つめるようにだ。


木曾「い、いたいキソ!!」


響「うぐ・・・これは恥ずかしいな。」


突然後方から巨大な爆音が聞こえる。


熊野「な、なんでいるんですの。」


曙「し、しるかよ!」


熊野「全員、急いで鎮守府までにげますのよ。」


熊野達の後方800m。

そこには、砲塔から巨大な噴煙を出すタ級の姿が3隻見えた。

再びタ級が砲撃を始める。

あたりはしないものの、すれすれを弾丸は通っていった。


熊野「こ、このままでは。」


木曾「飛鷹達とはつながらないの?!」


響「だめだね、なぜか強烈なジャミングがされている。」


曙「このままじゃ、ジリ貧じゃない!」


熊野「なんとしても!」


熊野が魚雷を放つ。

しかし、それは突如現れた戦闘機の爆撃によって完全に無効化された。

タ級のさらに後方500mの完全安全地帯。

そこには、さらなるヲ級の姿があったのだ。


曙「ど、どう考えても無理よ!」


響「魚雷・・・来る!」


今度は、熊野達を魚雷が襲った。

急速旋回するが、かわし切れず被弾した。


熊野「ううう!」


満身創痍だった。

全員が傷つき、後は戦艦と空母によって封じられ、鎮守府まで戻るにしても時間がかかりすぎる。

熊野の脳裏に敗北の文字が浮かび始めた。


熊野「ここまでですの・・・。」


ーーー


明石「すでに、準備はできています。」


来栖「わかった。」


来栖たち3人は屋上へと続く階段を急ぎ足で登っていた。

すでに、新たにタ級とヲ級が現れたという情報は届いていた。

水上打撃艦隊・・・いや、主力艦隊並みの兵力を持って深海棲艦は鎮守府を強襲したのだ。


来栖(まだ、敵艦が増えることは否めないな)


長門「おい、いったい私に何をさせようとしているのだ。」


来栖「ついてくればわかるよ。」


不満げな顔をしながらも長門は来栖の後をついてきた。

主力艦隊旗艦である身のはずなのに、出撃が認められていないとなると不満にな気持ちを来栖はわからないこともなかった。


金剛『出撃するネ!』


来栖「よろしく頼むよ。熊野達は苦戦を強いられている。飛鷹達とは連絡が取れないなるべく急いでほしい。」


金剛『わかっているのデース!』


明石が屋上へと続く扉を開いた。

まぶしい光が薄暗い廊下へ注ぎ込む。


長門「なんだこれは・・・。」


長門が指さした先。

そこには、地上へと固定された巨大な砲塔が鎮座していた。


明石「対大型船用65cm砲です。通称、穿つ。」


来栖「数年前大本営が試験的に運用したのだが、戦艦級の艦娘にしか装備できずさらに、運動能力の極端な低下から実装は見送られたものだ。」


長門「そんなものを・・・使えと・・・。」


長門が、砲塔に触れながら答えた。

その声は珍しく震えている。


来栖(当たり前か・・・最高機密扱いの兵器だしな)


来栖「そうしてほしい。我々・・・僕はこの砲塔を固定することでより確実に深海棲艦を狙い打てるようにしたんだ。」


明石「弾薬は、スライドすれば自動的に再装填される仕組みになっています。」


長門「・・・。」


明石「有効射程距離は3000。今、熊野さんたちを救う手段はこれしかありません。」


来栖「お願い・・・できないだろうか。」


長門「・・・わかった。提督がそこまで言うのだ。断ることは、できないだろう。」


長門はそういうと穿つの正面へと回り込んだ。

装着方法は、普通の艦装と同じで体に直接つけるものだった。

違いは、その先に固定するための足がついていることだ。

180度に砲塔を向けることはできるがそれ以上はできなかった。


来栖「大丈夫かな・・・?」


長門「問題ない。」


長門が真剣な顔つきになる。

よほど、熊野達は悲惨な状況におかれているのだろう。


長門「全砲門一斉射。撃てっ!!」


65cmの砲塔火を噴いた。

その爆音は、その振動は少し離れた場所に立っていた来栖たちにもよく伝わってきた。




ーーー


金剛「す、すごい威力ネ・・・。」


榛名「大丈夫ですかお姉さま!」


加賀「見たところ対して被害はないようですね。はやく片づけましょう。」


赤城「そうね、おなかもすいてきたわ。」


球磨「すごい音クマ・・・何か言ってほしかったクマ・・・。」


金剛は、自慢の46cm砲を構えた。

榛名も隣で心配そうな顔をしながら構える。


加賀「烈風出したわ。距離2500。有効射程距離よ。」


赤城「ヲ級は私と加賀さんでやります。」


球磨「加賀さんたちについていくクマ。」


金剛「OKデース!行きますよ、榛名!」


榛名「はい!榛名は大丈夫です。」


金剛は加賀たちが転進するのを確認すると狙いを定める。


金剛「バーニングラブ!!!」


砲弾は放物線を描いて飛んでいくとタ級に直撃した。


榛名「こちらを向きましたわ!」


金剛「わかってるネ!艦載機もいないようだし・・・一気にいくのデース!」


再び46cm砲が火を噴いた。

今度は、同時に41cm砲も放っている。

先ほどの約2倍の威力の砲撃を浴びるとタ級は大きく唸った。


金剛「早く離脱するネ!」


熊野『問題ありませんわ。全員攻撃かいしですわ!』


熊野達重巡の砲撃がさらにタ級を襲った。

先ほどまで優勢だったタ級たちであったが今は数で押され劣勢に立たされていた。


加賀『そちらのヲ級は沈めました。飛鷹達の援護に行くわ。』


金剛「さすが加賀でーす!グレート!!」


球磨『最後に魚雷あてたのは球磨だクマー!』


通信している間にもタ級は最後の咆哮をあげると艦首を金剛たちへと向けた。


榛名「勝手は榛名がさせません・・・!」


榛名が再び主砲を放った。

コンマ数秒の差で榛名が早く放ちタ級はなすすべなく海へと沈んでいった。


響「終わった・・・?」


曙「そうみたいね・・・。」


響と曙はは金剛たちと合流すると泣き始めた。


木曾「ありがとう、助かったキソ。」


金剛「例は提督に言うネ!援軍を編成するのもすごくはやかったデース。」


熊野「さすが、私の目にかなった男ですわ。あとで褒美をあげなくてはいけなくてよ。」


榛名(来栖殺す来栖殺す来栖殺す来栖殺す来栖殺す)


木曾「飛鷹たちは大丈夫キソ?」


金剛「加賀たちがいっているからノープロブレムデース!」


熊野「心配ですわね・・・。」


赤城『金剛さん聞こえる?』


金剛「ハーイ!きこえまーす!」


赤城『どうやらエリート艦だったみたいなの。だけど、どうにか撃退したわ。だけど、飛鷹と隼鷹が大破しかけてるわ。』


金剛「とりあえず、無事でよかったデース。早く帰還しましょう。」


赤城『わかったわ。加賀さん聞こえた?』


加賀『ええ。さあ、早く行くわよ。球磨は周囲の警戒をおこたらないでくださいね。』


球磨『なんか扱いがひどいクマ・・・。』


金剛「なんだかんだ言ってみんな無事みたいデース!」


熊野「そう・・・なんだか安心したわ。」


熊野はそういうとよろめいた。

急いで榛名が支える。

右足の推進機能を失っているようだった。


榛名「無理はしないでください。榛名が支えますから。」


熊野「だ、だけど・・・それじゃお荷物・・・。」


榛名「榛名は大丈夫ですから。」


木曾「そうだキソ。熊野が体を張って壁になっていたのはみんなよく知ってるキソ。」


曙「そうね。いい指揮だったわよ。」


響「スパシーヴァ。」


熊野「みなさん・・・。」


そんな和やかな雰囲気は一つの連絡で消えてなくなった。


大淀『き、緊急連絡です!!司令塔が砲撃されました!』



ー数分前ー


長門「よし、金剛たちが攻撃を始めた。」


明石「わかりました、長門さん砲撃をやめましょう。」


長門「なぜだ?援護射撃程度ならこれでもできるだろう。」


明石「それは・・・。」


来栖「長門の気持ちもわかるよ。だけど、これは結局は試作品の域を出れない代物なんだ。だから、今回はここまでにしよう。」


長門「・・・そうか。」


長門は、暗い顔つきのまま艦装をはずした。

来栖はなにも言えない自分を恥じた。

その兵器の本当の運用しなかった理由をだ。


来栖「すまん、明石。あとは、まかせるよ。少し用ができたんだ。」


明石「・・・わかりました。」


来栖は足早にその場を立ち去った。

扉を閉めるとき、ドサッという倒れる声と長門さん、しっかりしてくださいという声を無視してだ。


来栖(なぜ、俺はあれを使おうと思った。)


暗い階段を下りながら来栖は自問自答を繰り返した。

かつての彼の古巣で研究されていた対戦艦用艦装。

そして、それに足をつけ陸上に固定した今回の艦装。

所詮は原理が同じ兵器ならでる症状も同じはずだった。

あの艦装の優秀なところは、その射程距離でも砲塔の大きさでもなかった。

正確な射撃こそがあの艦装の特徴であった。

本来、海戦において一発を充てることは容易なものではなかった。

そこで、命中率を高める研究がされた。あの艦装を使いさえすれば、戦艦クラスという縛りはあるが誰でも百発百中の砲撃がおこなえるようになるのだ。

仕組みはいたって簡単だった。

艦装を装備した者の脳に直接アドレナリンを分泌する作用を流し込む。

そうすることにより、普段の数倍のパフォーマンスを行えることが出来視界も非常にクリアなものになるのだ。

しかし、同時にそれは重大な欠点を生み出すモノともなっていた。

脳に対する負荷をかけすぎるため、戦闘終了後発狂する者、長時間または複数回使用したものを廃人化するというおまけつきなのだ。

悪魔の研究・・・彼が昔管理していた場所はそう言われていた。


来栖「なぜ使おうと思った・・・。仲間の窮地だからか?なら、長門はどうなってもいいというのか!」


来栖の絶叫が廊下に響いた。

その時だ巨大な爆音とともに窓ガラスが来栖をめがけ飛んできた。

爆発が来栖の体を襲っていく。


電「あぶないのです!」


誰かにつかまれ来栖は吹っ飛んでいった。

幸いにも弾は不発弾らしくそれ以上の爆発はなかった。


来栖「い、電ちゃん?!」


電「大丈夫ですか・・・?司令官・・・。」


来栖「僕は大丈夫だけど、それより!その腕!」


来栖はハンカチを取り出すと、電の右手へ巻き付けた。

正確にはひじから下を失っている右手へだ。


電「大丈夫なのです、入渠さえすればすぐ直るのです。」


来栖「・・・。」


電「し、司令官?大丈夫と・・・。」


来栖「うるさい!」


電「え・・・?」


来栖「結衣・・・もうどこにも行かないでくれ・・・。」


来栖が懇願のような声を漏らしながら電を抱きしめた。

電は、戸惑いながらも来栖を抱きしめた。


電「大丈夫なのです。電はどこにも行きません。」


来栖「・・・。」


電「司令官・・・?」


来栖「すまない、忘れてくれ・・・。僕の失態だ・・・。」


電「そんなこ・・・。」


大淀『提督!無事ですか!』


突然の通信で電の言葉はかき消された。

来栖の顔はすでに元のひ弱そうな顔つきに戻っている。


来栖「大丈夫だよ。心配かけてごめんね。みんなはどうかな?」


大淀『よ、よかったです・・・。熊野さんたちと金剛さんたちはすでに戦闘を終えこちらに戻ってきています。熊野さんと飛鷹さん、隼鷹さん、曙さんが大破していますが幸いにも命に別状はありません。』


来栖「そうか・・・よかった。こっちも、電ちゃんのおかげで難を逃れたよ。これから電ちゃんを風呂へつれていくから再偵察の指揮を副官させるよう指示をだしておてくれないかな?」


大淀『わかりました。あの・・・電も結構ひどいのでしょうか?』


来栖「そうだね・・・腕を持っていかれた。」


大淀『そうですか・・・それは急ぐ必要がありますね・・・。』


来栖「ごめんよ、押し付けてしまって。」


大淀『そんなことはありません、なにより全員帰還する奇跡が起きて私は感動しているほどです。』


来栖「そうか・・・よかったよ。あぁ・・・あと悪いんだけど工廠の妖精を司令室4階の廊下に呼んでおいてくれないかな?」


大淀『・・・?』


来栖「ちょっと、調べてほしいものがあるんだ。」


そう言いうと、来栖は電を抱きかかえ風呂へと歩いていった。


ーーーー


熊野「提督!」


熊野はそういうと来栖へ飛びついた。


来栖「う、うわ、ふ、服を着なさいよ。」


熊野「うふふ・・・この熊野の美体を見れることに感謝してくださいよ?」


来栖「す、するからああ!」


電「最低です・・・。」


曙「くそ提督が。」


響「ハラショー。」


球磨「さすがに引くクマ・・・。」


隼鷹「酒のみてええええ!」


飛鷹「今はそこじゃないでしょ、隼鷹。」


金剛「OH!うらやましいネ!金剛も行くネ!」


榛名「お姉さま?!」


来栖「金剛もくるなああああ!」


来栖はもみくちゃにされながらも脱衣所を出ていった。


木曾「提督。」


来栖「あぁ・・・木曾か。どうしたの?」


木曾「みんな提督に感謝してるキソ。」


来栖「・・・僕は大したことはしてないよ。」


木曾「そんなことはないキソ。あの時砲撃がなければ私たちは確実にやられてたキソ。」


長門「そうだな。」


来栖「長門・・・!もう、大丈夫なのか・・・?」


長門「なにを心配している?久しぶりの戦闘で少しふらついただけだ。」


来栖(明石は、何も言わなかったのか)


長門「今回は、本当に提督のおかげだ。私からも感謝している。」


木曾「そうだキソ。提督は、もうこの鎮守府に必要不可欠な人キソ。」


来栖「・・・ありがとう・・・・、さあ2人も早く行きなよ。」


長門「泣いているのか?」


来栖「そんなことはないぞー。」


木曾「さあ、長門さん。行くキソ。」


長門は木曾に押されながら脱衣所へと入っていった。


来栖「・・・俺は・・・こんなところに・・・いていいのか・・・。」


時雨「あ、司令官!」


来栖は、涙をふくと時雨を見た。


来栖「どうしたの?」


時雨「すごい活躍だったんだってね。」


来栖「そんなことはないよ、僕はただ指揮しただけだ。」


時雨「へえー。意外と謙虚なんだね。」


来栖「・・・?」


時雨「そんなことより、間宮行こうよー。」


来栖「あぁ・・・そうだね。」


来栖は時雨に連れられて歩いていった。

心の中では、いつか告げなくてはいけない残酷な言葉を思い浮かべながら・・・。



ーーー


今は何時だ。

ここにきてどれだけの時間がたった。

朝なのか、昼なのか、夜なのか。

いったい・・・。

そう考えていると足音が彼に近づいてきた。

思わず体をこわばらせる。


「・・・。」


佐倉「そうやって・・・お前は俺を見つめてなにがしたい。」


「・・・。」


佐倉「来栖っ!」


来栖「・・・。」


毎回決まった時間に来栖は来た。

何を言うわけでもなく、ただじっと数時間佐倉をみるだけだった。

拷問もなく食事も出ていた。

罪人としてはそれなりの待遇はうけていた。

この時間を除いては。


佐倉「そうか・・・そうか・・・俺を憐れんでいるのか?」


来栖「・・・。」


佐倉「ええ?!あいつにこき使われてお前を裏切って、最後はお前に捕まえられるこの俺を!」


来栖「・・・。」


佐倉「何か言えよ!」


佐倉の悲鳴にもにた絶叫が響いた。

鍾乳洞を利用した営倉である。

声はこだましていき外まで聞こえただろう。


来栖「貴様と俺とお前はあんなに仲が良かったのにな。」


佐倉「・・・!」


初めて来栖は声をだした。

その、苦しみと悲しみにみちた表情から絞りだされた言葉に佐倉の心は締め付けられた。


来栖「いつからこうなってしまったんだ・・・。」


佐倉「・・・。」


来栖「佐倉、俺が聞きたいのは一つ。あの日の真相だ。」


佐倉「・・・すまん。」


佐倉は理解が出来なかった。

あの日も裏切り今回も裏切った自分を生かす意味を。

あの日にこだわる意味を。

あれほど優秀な男がなぜ縛られるのかを。


佐倉「俺は・・・何も言えないんだ・・・。」


来栖「・・・そうか。」


佐倉「お、おい!置いていくな!」


来栖は無言のままでていく。足音は次第に遠くなり聞こえなくなった。

再び佐倉は暗闇に取り残された。


佐倉(どうしてこうなった・・・。俺は・・来栖を売ったのか・・・?)


自問自答していると再び足音が聞こえてきた。

しかし、来栖のものとは違い音が小さい。

営倉へ続く扉がゆっくりと開き足音の主が姿を現した。


佐倉「お、おまえ・・・!」


??「・・・。」


佐倉「この手錠をとってくれ。」


??「・・・。」


佐倉「なにをしている!貴様も反逆罪にするぞ!」


足音の主はそっと拳銃を構えると佐倉に向けた。

佐倉の顔が青ざめていく。


佐倉「な・・・なにをしている・・・。」


??「コードE発動。」


佐倉「・・・!貴様・・・まさか・・・第五機関の・・・!」


??「使えない歯車は処分するように言われている。」


佐倉「ま、待ってくれ!俺は聞いていないぞ!次に来るのが来栖なんて!」


??「・・・言い訳はいらない。0か100か。失敗か成功か。それしか求められていない。」


佐倉「・・・!」


??「さようなら。」


佐倉「ま、まっ。」


数発の銃撃音が聞こえた。

佐倉の意識はそのまま深淵へと落ちていった。





また、人を殺してしまった。

これは自分の意志なのか。

自分でもよくわかっていない。

命じられるがま、引き金を引き蹂躙し、破壊する。

そんなくそったれの世界で生きてきた。


「誰?!」


視線を感じて叫ぶ。

影がユラユラとゆれると角からでてきた。



「・・・見たの?」


「・・・。」


「答えなさいよ!」


「あんしんしてくださいなのです。電も同じ第五機関なのです。」


「そう・・・僕の前に前任者がいるって聞いてたけど電だったんだ。」


電「・・・殺したんですか?」


「そういう命令だったからね・・・。ちなみにいうと、仕事をしない前任者も殺せって命令も受けてるんだ。」


電「時雨ちゃん・・・。」


時雨は銃を構えると電に向けた。


時雨「大丈夫、無断出撃の結果消息不明ってことにしておいてあげる。陸上でいきなり消息不明なんて艦娘にとっちゃ恥ずかしい失態だもんね。」


電「時雨ちゃん・・・もう、やめるのです。これ以上命令を聞く意味はないのです。」


時雨「うるさい!」


時雨「電に何がわかるの・・・?みんなあなたみたいに組織を抜けても行く当てがある人ばかりじゃない。そもそも今回の第一優先ターゲットは来栖だよ!電ちゃんこそこっちにもどってくるべきなんじゃないの?!」


電「・・・それは違うのです。自分の意志かどうかもわからないのに人を深海棲艦を殺し続けるほうがおかしいのです!もう、大丈夫なのです。来栖司令官はそんな私たちを受け入れてくれるのです。」


時雨「・・・。」


わずかな沈黙。

時雨は涙で頬を濡らしながら電を見た。


時雨「電はさ・・・夢を見る?」


電「え・・・?」


時雨「私たちは兵器として作られた。表情も感情も夢さえも見るのに・・・。」


電「・・・。」


時雨「僕はね、たまに見るんだ・・・。ある日出撃して、撃破されて深海棲艦となって元いた鎮守府を元仲間を攻撃する夢を。」


電「時雨ちゃん・・・。」


時雨「へ、兵器なら夢なんて見ない。深海棲艦の夢なんて見ないはずだよね?だけど、僕は見るよ。だから兵器じゃないよね。だけど、この考えさえも実は兵器としてプログラムされたものなのかな・・・?」


電「そ、そんなことないのです!」


時雨「なら教えてよ!艦娘は深海棲艦の夢を見るの?」



ーーー


大淀「以上より、佐倉憲兵特務少尉は自殺だという結果が出ました。」


来栖「自殺・・・。」


大淀「納得できませんか?」


来栖「・・・いいや、みんなが頑張って調べてくれた結果だもの。疑いもしないし真摯に受け止めるよ。」


来栖は立ち上がると窓の外を見た。

初夏のいい日差しが窓から差し込んできている。

こんこんとノックの音がする。


来栖「どうぞ。」


長門「失礼する。」


来栖「長門か。」


長門「うむ。調査の結果が出たからな。」


来栖「あぁ・・・それでどうだった?」


長門「あの不発弾だが、最近本土で開発されている最新式徹甲弾だった。」


来栖「九十一式徹甲弾・・・。」


長門「・・・よくわかったな。その通りだ。この徹甲弾を撃てるのは戦艦か航空戦艦だが・・・。深海棲艦にはこの弾が普及していないから除くとして・・・あの時行動が不明な・・・まさか・・・陸奥が・・・。」


大淀「いいえ、あの時陸奥さんは司令室で副指令の補佐をしている姿を私も確認しています。」


長門「そうか・・・。」


長門がほっと胸をなでおろす。

それもそうだろう、姉妹艦に提督殺害の容疑がかけられたとしたらやはり言葉では表せない悲しみや怒りというものがあるだろう。


来栖「やはり・・・あの機関がかかわっているのか・・・。」


長門「何か言ったか?」


来栖「いや、何でもないよ。それよりも疲れただろう。少し休んでいてくれ。」


長門「だ、だが・・・。」


長門はなにか言いたそうだったが大淀は気を利かせると長門を強引に部屋の外へと連れていった。

部屋は静けさを取り戻した。

平和、平穏。

そんな言葉はこの世界に入った時から求めていないはずだった。


来栖(クソ・・・。あいつらを見てるとだめになっちまう・・・)


来栖はおもむろに手帳を開いた。

久しくあっていない顔が映っている写真を手に撮る。

もう、会えないことはわかっていた。

それでも会おうと愚かにも願うの人間というものだろう。

愚かにも夢を見るのが人間というものだろう。

ならば・・・彼女たち・・・艦娘はどんな夢を見るのだろうか。

それとも、夢を見ることすら許されない存在として戦わされるのだろうか。

静寂を破る音がする。


ガチャ


??『よおよお、久しぶりだなー。元気にしてるか。』


来栖「おかげさまでな。」


??『ハハハ。お前なかなかしぶといな。佐倉はどうした。最近連絡がなくてな。』


来栖「有光。おれは、無駄話が嫌いなんだ。時間は有限だからな。」


有光『相変わらずだな。そして、勘もいい。ここをやめた後はどうなるかと思ったぜ。』


来栖「・・・。」


有光『冗談、冗談だよ。ボチボチやっているそうだがお前、そこにいった意味をわかってんだろ?』


来栖「・・・。」


有光『お前さんがどれだけ俺の邪魔をしようとかまわん。最後に勝つのは俺だからな。士官学校時代からのジレンマだろ?いいか、仕事は果たせ。』


来栖「知るか。俺に手を汚させてお前さんは高見の見物か?気に食わん。」


有光『来栖よ・・・。お前、俺に歯向かっていいことがあったか?いや、むしろ徐々に大切なものをなくしていって最後にはなにも残ってないだろ。』


来栖「その話題をだすな!」


有光『ハハハ!そう、ムキになるんじゃねーよ。まあ、いいや。お前たちがどこまで持ちこたえるのか興味はある。せいぜい足掻けよ。』


来栖は受話器をたたきつけた。

有光海軍参謀。

若干37歳で海軍参謀まで上り詰めた切れ者。裏では謀略を繰り返し、誰かを使い誰かを蹴落としていく姿からついたあだ名は、人形師。

来栖のかつての同志であり、上司であり、憎き人物であった。


来栖(有光・・・お前はどこまで堕ちていくのだ)


ーーー


龍驤「なんや・・・最近退屈やな・・・。」


球磨「そんなことはないクマ。ついこの間鎮守府が襲われたばかりクマ。」


曙「そんなことよりも、問題はくそ提督が最近遠征しかしないことよ。」


響「しかたない。鎮守府はいつもギリギリで運転している。」


隼鷹「そういうなって!帰ったら呑んで忘れよう!」


榛名「あの・・・もう少し緊張感を持ちませんか?」


榛名は、大きくため息をついた。

まだ後ろでは龍驤と球磨が言いあっている。


榛名(戦艦が1に軽空母2、それに軽巡が1と駆逐が2。少し火力不足な気がしますが・・・。近場ですし早く帰りましょう)


龍驤「ん・・・?目の前に敵や。ふむふむ・・・リ級が2にト級が4や。楽勝やな。」


球磨「よくもそんな余裕をだせるクマ・・・。」


隼鷹「いいね!勝ったら祝勝会の準備だ!ヒャッハー!」


榛名「わかりました。では、球磨が曙と響を率いてト級をどうにかしてください。その際龍驤さん。何機か艦載機をつけてあげてください。」


球磨「了解だクマ。」


龍驤「任せとき!」


榛名「私が重巡をたたきます。隼鷹さんと龍驤さんは制空権の確保ご敵の偵察機と艦爆の発艦お願いします。」


榛名と球磨の二手に艦隊が別れる。

幸いにも深海棲艦はまだ、榛名たちに気付いていないようだ。


龍驤「先生はいただたくで!」


龍驤がゼロ式艦戦を発艦させる。

ゼロ式はそのまま一直線に進んでいくと敵の偵察機をあっという間に落とした。

対空砲火を避けつつも再び龍驤の元へと帰ってきた。


榛名(これで敵の目をつぶした・・・!)


榛名「行動を開始してください!」


榛名side


榛名「龍驤さん、隼鷹さん。左側をお願いします。榛名は右側をたたきます。」


隼鷹「いくよ!ヒャッハー!」


隼鷹と龍驤が矢を射る。

勢いよく飛んでいくときれいな編成を組みながらリ級に襲い掛かった。

すでにリ級とト級は分断され、編成の意味をなしていなかった。

榛名は機動力を生かし一気に距離を詰めていく。


榛名「そんなもの・・・当たりません!」


8inch砲が榛名を狙っていた。

しかし、榛名は臆することなく突撃を続ける。


榛名「榛名は負けません!」


ゼロ距離からの射撃。

榛名は砲塔をリ級の体につけられる距離まで進むと一気に放った。

声にもならない叫び声をあげリ級が沈んでいく。


榛名「あと一体!」


リ級は仲間が沈むのを確認すると突然反転し逃走を始めた。

その後ろを彗星がぴったりとくっつき爆撃を始める。

煙を出しながらもリ級は進み続ける。


榛名「龍驤さん、隼鷹さん。深追いは禁物です。」


龍驤「いや、いけるで!」


艦爆の編隊が一気に上昇を始める。

リ級は振り返ることなく逃げるがついに、爆撃の前に爆発を起こすと沈んでいった。


龍驤「やったで!」


隼鷹「さすが、龍驤!やるじゃん!」


龍驤「ん・・・?」


榛名「どうかしましたか?」


龍驤「あ・・・いや・・・なんもないで。」


球磨『ト級が何体か逃げたクマ。』


榛名「わかりました。とりあえず目の前の脅威は去りました。帰りましょう。」


球磨『わかったクマ。』


榛名(それにしても・・・ずいぶん撤退するのが早かったです・・・。いったいなんだったのでしょうか・・・)




鎮守府哨戒船隊(同時刻)


加賀「ん・・・?3時の方向に深海棲艦がいますね。」


時雨「こんなちかくにまで来てるの?!」


金剛「ノープロブレムデース!」


北上「とりあえず早くいこー。」


大井「私も北上さんに賛成です。」


雷「そうよ。行きましょう。」


加賀「いえ・・・どうやら撤退しているようなので。」


金剛「撤退・・・?傷ついているのデスカ?」


加賀「その様子は見られませんね。」


大井「妙ですね・・・。」


北上「でも、まー撤退してるなら深追いしないほうがいいんじゃないかなー?」


加賀「そうですね。みんな優秀な子たちですが。」


雷「とりあえず、司令官に連絡だけは入れておくわよ。」


時雨「・・・。」


雷「どうしたのよ。浮かない顔して。」


時雨「い、いやあ!なんもないよ。」


加賀「熱でもあるのですか?」


時雨「まさか!僕は元気だけが取り柄だよ!」


北上「ハハハ。時雨っちおもしろいねー。」


金剛「なかなかいいデース!あとで一緒にティータイムしましょう!」


大井(時雨っち?時雨っちだと・・・殺す殺す殺す)


時雨「う、うーん。うれしいけど僕まだ鎮守府一人で探検してないから今度にしようかなー。」


雷「みんなで回ればいいじゃない。」


時雨「いやさー、いつも僕が誰かと一緒にいるわけじゃないでしょ?だから一人でも行けるようにしようかなーって。」


加賀「まあ、自分の寝床が気になるのは自然のことですしね。」


金剛「そうですかー。では、今度一緒にまわるネ!」


時雨「その時はお願いするよ。」


時雨(その時が来ればね)



ーーー


隊長「急げ。やつらに感づかれる前に片づけるぞ。」


数名の黒い迷彩をきた兵士たちは闇夜に紛れ上陸を始めた。


兵士1「それにしても、陽動うまくいいましたね。」


隊長「深海棲艦を使った陽動・・・最初は半信半疑だったがああもうまくいくとわな。」


兵士2「全員上陸しました。神風隊、雷電隊ともに無傷です。」


隊長「それではこれより、あ号作戦を実行する。標的はマルマルヒトマルに寝たものと思われる。第一標的を排除後兵舎へ向かい甲号作戦を行う。」


全員「了解。」


隊長「神風隊は俺に続け。雷電隊は副隊長に続け。」


全員「了解。」


隊長「健闘を祈る。」


兵士たちは二手に別れると行動を始めた。

港とは反対方向に上陸したため密林を抜ける人ようがあったが隠密行動に特化した彼らにはなんの傷害にもならなかった。

手には某国から密輸入をしたM16を持っている。もちろん、音が出ないように改造までしてある。


神風「前方に熱源あり。」


隊長「気をつけろ。野生動物の可能性もある。いいか、許可のない発砲は控えろ。」


神風2『こちら先行している、神風2だ。50m先で奇妙な物音がしている。』


隊長「わかった。確認して来い。全体一時停止。確認を待つ。」


全員『了解。』


隊長(予定よりやや遅れているな。急がなくては・・・)


隊長「ん・・・?神風2。状況を報告せよ。」


神風2『・・・。』


隊長「応答せよ。」


神風『・・・。』


隊長「全員俺に続け。」


すでに物音は消えていたが神風2と連絡が取れないことに隊長は焦りを覚えていた。

今日ここに隊長たちが来ることは1人を除いて誰も知らないはずだからだ。


隊長「死んでる・・・。」


隊長たちがそこへつくと眉間を撃ち抜かれた神風2の死体が転がっているだけだった。


隊長「俺だ。神風2が何者かにやられた。警戒度を引き上げる。雷電隊も気をつけろ。」


雷電『・・・。』


隊長「おい、聞こえているか。」


雷電『・・・。』


隊長「まさか・・・!」


神風3『く、くるなあああ!!』


数発の発砲音がしたあと、神風3の絶叫が暗い森の中に響き渡った。


隊長「誰が発砲していいと言った!全員固まれ!同志うちは避けろ!」


神風4『や、やめろおおおお!』


神風5『ば、化け物だ!』


神風1『ああああああ!』


隊長「全隊応答しろ!応答するんだ!」


全員『・・・。』


隊長「くそが!」


??「動くな。」


隊長「な・・・。」


隊長は腰に固いものが突きつけられていることを感じると動きを止めた。

姿は見えないがものすごい殺気を感じられる。

冷たい汗が隊長の背中を流れていく。


隊長「ふざけるなあああ!」


隊長は振り向きざまに発砲した。

しかし、すでに人影はない。


隊長「どこだ!!」


??「ここだよ。」


隊長「・・・!」


人影は突然隊長の上から降ってくると頸動脈を切り裂いた。


隊長(無念・・・)


隊長はゆっくりと目を閉じ暗闇へと意識が飲み込まれていった。







来栖「・・・。」


来栖は血にまみれたレインコートとナイフを井戸へ投げ捨てると地べたへと座り込んだ。


来栖(また・・・殺してしまった。)


しばらく目をつぶりまどろもうとしたが、足音に来栖は目を覚ました。

足音は徐々に近づきついに、森から姿を現すと止まった。


来栖「やはり・・・お前か。」


??「そういう話し方が本当の姿なんだね。」


来栖「・・・まったく、慣れないことをすると疲れるな。」


??「冗談でしょ?むしろ今さっきまでやってたことが本業じゃないの?」


来栖「嫌味のつもりか?俺はもう、提督だ。あのころと同じことをする必要はないはずだ。」


??「だけど、もしやっていなかった自分の命はおろか艦娘の命まで奪われていた。だから戦ったんでしょう?」


来栖「・・・。」


??「本当に優しい人なんだね。」


来栖「・・・お前がもう1隊をやったのか?時雨。」


時雨「・・・そうだよ。僕もこういうことは得意だからね。」


時雨はそう言うと来栖に向け銃を構えた。

来栖は、一瞬だけ時雨の顔を見たがすぐに下を向いてしまった。


時雨「そしれ僕の最優先事項は・・・来栖提督。あなたの暗殺だ。」


来栖「ふむ・・・。」


時雨「どうしたの?あなたほどの手練れなら今から逃げるなり反撃するなり色々とできることはあるはずだよ。」


来栖「時雨よ。」


時雨「・・・?」


来栖「ここは戦場だ。仮に俺がここで撃たれたとしても戦死として扱われ次の補充がくるだけだ。所詮は俺たちに階級なんてものは意味をなさない。有能か無能か。役に立つか立たないか。代替えかきくかきかいな。壊れれば修理されることもなく交換だけされる。大きな時代を担う歯車でもあるが同時に、使い捨ての道具。それが俺たちだ。」


時雨「何が言いたいの?」


来栖「お前も理由があってここに来た。俺も理由があってここに来た。それなのにお前が自分の使命を果たそうとしているのに邪魔が出来ると思うか?」


時雨「・・・もしそうなら!来栖提督!あなたに生きたいと思う意思はないの?!」


来栖「生きたいと思う意思か・・・。そんものはずいぶん昔に捨てたさ。」


時雨「え・・・。」


来栖「たまに夢を見るんだ。楽しい夢さ。そのうちそれが夢だとわかると目が覚めることが恐ろしくなって夢を見たくないと思うようになる。だけどな、夢を見ている時だけが唯一自分が誰の道具でもない、世の中をまわす歯車としているのではないと思えるときなんだ。たとえそれが悪夢だとしても、夢を見るということは兵器ではないということと同じことさ。」


時雨「兵器じゃない・・・。」


来栖「夢を見るために今を生きよう、今の俺を動かしているのはそれだけさ。」


時雨「・・・。」


来栖「時雨。お前は夢を見るか?」


時雨「・・・。」


来栖「お前は、俺と一緒に来るつもりはないか?」


時雨「え・・・?」


来栖「お前さえ良ければ俺は快くお前を迎え入れるつもりだ。俺は夢じゃなくても感じたいんだ。道具ではない自分を。歯車ではない自分を。」


時雨「・・・。」


来栖「お前はどうしたいんだ。」


時雨「ぼ、僕は・・・僕は・・・わからないよ!どうして・・・?どうして兵器に問いかけるの・・・そんなの残酷だよ・・・!」


来栖「時雨っ!」


来栖は突然叫ぶと時雨は体を震わせた。

ゆっくりと来栖は時雨へと近づいていく。


時雨「こ、こないで!」


来栖「・・・。」


時雨「こないでよ!」


乾いた音が森の中に響いた。


時雨「ひいいい!」


時雨は銃を落とすと力なくその体を来栖へと預けた。


来栖「お前が一番どうしたいのかわかっているだろう。」


時雨「提督・・・もう・・・嫌だよ・・・。自分が生き残るために守るはずの人を殺すなんて・・・。もう嫌だよ・・・。」


来栖「・・・そうだな。」


明石「提督!」


鎮守府のほうから明石が現れた。

額にある汗の量を見ると相当早く走ってきたようだ。


明石「し、時雨?」


来栖「・・・。」


明石「どうしたの?」


来栖「なんでもないさ。少しごみ処理をしていたら手を滑らせた。」


明石「・・・銃声。」


来栖「言っただろう。ごみ処理だ。」


明石「・・・わかったよ。後片付けは私がするよ。とにかく提督は、時雨を連れて早く戻って。さっきの音で何人か起きたみたいだし。」


来栖「・・・すまん。」


明石「気にしないで。」


来栖「・・・なあ。」


明石「ん?」


来栖「・・・俺が来てもう2か月がたった。そろそろ頃合いだと思うんだ。」


明石「・・・。」


時雨「え・・・?」


来栖「そろそろ全員に俺がここへ来た理由を話そうと思うんだ。」


night wark 完




3章に続く



大本営 作戦司令部 12:00



来栖「・・・。」


??「まったく・・・君は自分の行動の責任を理解できないのかね。」


来栖「いえ、けしてそのようなことはございません。」


??「なぜ呼ばれたかわかっているのか。」


来栖「・・・。」


??「何とかいいたまえ!」


??「そう怒鳴るな。」


来栖(青柳元帥に仁科大将、鵜久森参謀長、椎名法務長、このメンツに有光がいないのは不自然だな)


椎名「有光参謀はどうしたのでしょうか。」


鵜久森「どうせ、どこかで油を売っているのだろう。あの男は時間にルーズすぎる!」


仁科「まあ、あやつでも使い道があることに変わりはない。」


青柳「・・・時間だ。それではこれより来栖提督に対しての査問委員会を始める。」


来栖「・・・。」


青柳「そう固くなることはない。」


鵜久森「青柳殿。悠長なことは言ってられませんぞ。こやつは、鎮守府内では査察、監査の長である憲兵を殺害した疑いがあるのですぞ!」


椎名「これが事実ならば即刻死刑を言い渡すべきです。」


仁科「まあまあ、いちお厳正な調査の結果佐倉憲兵の自殺という結果が出ているのですから、決めつけはよくありません。」


鵜久森「ふん!そんなものいつでも偽造できるわい。」


青柳「来栖君。君はなにか いうことはあるかね?」


来栖「・・・いえ。ただ、私は佐倉憲兵を殺害してはいません。むしろ、彼がいなくなったことにより鎮守府内の治安が保たれるか不安があります。」


鵜久森「口だけはうまいじゃないか・・・さすが第五といったところか。」


椎名「鵜久森殿。それは・・・。」


仁科「さて、そうなりますと今回の論点はどこにいくのでしょうか・・・。」


青柳「しかたない、無理に話を長引かせることは国家の存亡にかかわる。いつ奴らが本土へと攻撃を仕掛けてくるかわかったものではないからな。」


椎名「では、どのように。」


青柳「来栖提督。君に、一つこなしてもらいたい仕事がある。」


来栖「なんでしょうか。」


来栖(最初からこれを頼むために読んだのだろう。無益な茶番をしやがって)


部屋が暗くなると大型のスクリーンに映像が映り始めた。

どうやら小規模の哨戒部隊のようだ。

突然、戦闘の艦娘が悲鳴を上げた。

よくみると、それは鈴谷だった。と、いうことはこの映像は半年以上前のものだった。

鈴谷は、必死に逃げようとするもののついに爆発をおこし海へと沈んでいった。

部屋が再び明るくなる。


青柳「最近、西南海域でこのように艦娘が突然爆発する事象が頻発している。」


来栖「爆発・・・。」


青柳「付近に機雷は設置されておらず、敵の反応も検知されていない。考えられるのは、空想の世界の話に近いが音もなくしのびより、同じく音を発しない武器にて艦娘を攻撃するなにものかがいるということだ。もちろん深海棲艦の可能性も考えられる。しかし、そうならば既にあらゆる海域で同じような事例が起きていなくては説明がつかんと思わんかね?」


来栖「閣下の言う通りです。」


青柳「君にはこの事象の早期解決を命ずる。」


来栖「・・・。」


青柳「頼まれてもらえるね。来栖提督。」


それは断ることのできない、お願いであった。



同時刻 控室



時雨「・・・。」


陸奥「そう固くならないでいいんだよ?私別に先輩後輩気にしないから。」


時雨「うーん・・・ならいいんだけど。」


陸奥「火遊びは、やめてね。」


時雨「・・・?」


陸奥「こっちの話だから気にしないで。」


時雨「提督遅いね。」


陸奥「このまま帰ってこないかもしれないわね。」


時雨「え。」


陸奥「まあ、あのひとなら帰ってくるでしょう。」


陸奥(それにしてもどうして私と時雨を護衛につれてきたんだろう・・・。長門をつれてきたほうが・・・)


時雨「あ、帰ってきた?」


扉がゆっくりと開く。

その先には、白ではなく緑色の軍服を着た男が立っていた。

年は来栖とおなじくらいだった。


??「やあやあ、初めましてと、ひさしぶり。」


時雨「あ、有光参謀・・・。」


有光「そんなに怖がらなくていいだけどなー。」


陸奥「あなたは?」


有光「あー、俺は有光って言うんだ。まあ、士官学校時代の来栖の同期だったんだがな・・・。来栖はどこへいった?」


陸奥「今は、査問委員会に言ってると思うわ。」


有光「そうかいそうかい。」


それは一瞬の出来事だった。

有光は不敵な笑みを浮かべると時雨を殴りつけた。

あっけにとられている陸奥をしり目にそのまま殴り続ける。


陸奥「な、なにしてるのよ!」


陸奥の特技の一つに柔術があった。

多少なりとも自信があったが、その自信はすぐに打ち破られることになった。

有光は、陸奥の勢いを利用して背負い投げをすると陸奥の腹部を踏みつけた。

苦しみに陸奥がもだえる。


陸奥「かはっ!」


有光「はははは!好戦的だな。さすが艦娘。だけど、がっかりだ。艦娘は人よりも陸上での戦闘能力は高いって聞いたんだけどな。残念だ。」


有光「なあ、時雨よ。お前、自分のやるべきこと覚えてないのか?」


時雨「や、やめ・・・。」


有光「なあ!なあ!なあ!」


時雨「やめて・・・。」


有光「はははは!使えない歯車だな!言ってみろ!お前はあそこに何をしに行った。」


陸奥「やめろ・・・。」


有光「ああ?」


陸奥「うっ!」


再び有光のけりが陸奥の腹部にめり込む。

陸奥の苦しむ顔を満足げに見ると有光は再び時雨を殴る始める。

すでに、抵抗することも言葉を発することもなく時雨はぐったりしている。


有光「ほら、起きろよ。なあ、時雨よ。」


来栖「有光!」


有光「あ?来たか。」


来栖は一気に走ると有光に殴りかかった。しかし、そのこぶしを有光は受け止めた。


有光「じかに会うのは久しぶりだな。来栖。」


来栖「お前、何している!」


有光「あ?指導だよ。命令を守らない部下に対して罰を与える。当たり前のことだろ?」


来栖「海軍法第3条。鎮守府へ所属する艦娘はそれぞれの提督の所有物となる。艦娘への障害または死亡させた場合厳罰を処する。」


有光「・・・わかったよ。すまなかったな。」


有光はゆっくりと来栖の肩へと手を置くと不敵に笑った。


有光「もう、準備はできているんだ。いまさら、悪あがきをしても変わらないぞ。」


来栖「・・・!」


有光「あばよ。時雨を頼むぜ。」


来栖「・・・。」


陸奥「提督・・・。どういうことか教えてくれないかしら。」


来栖「鎮守府に戻ったら教える。」




ーーーーー


食堂には重たい雰囲気が流れていた。

大本営で時雨は謎の負傷を遂げ今は、医務室で一人休んでいる・・・ということになっている。

ステージの上には、来栖と明石が立っていた。


来栖「全員そろったかな?」


電「そろったのです。」


来栖が大きく深呼吸をした。


来栖「では、これから大事な話をする。」


食堂が静まり返る。


球磨「て、提督ってそんな声だったクマ?」


龍驤「なんか意外や。」


熊野「こちらの声も素敵ですわ・・・。」


金剛「かっこいいネ!」


北上「若々しいねー。」


榛名&大井(来栖死ね来栖死ね来栖死ね来栖死ね)


加賀「眠たいです。」


赤城「だめですよ。先ほどボーキサイトを食べたばかりですよ。」


木曾「・・・?」


来栖「今まで猫をかぶってたわけではないが、あのしゃべり方は苦手だ。だから、もうやめだ。いいか、よく聞け。」


来栖「まず俺がこの鎮守府へきた理由からはなそう。俺の本来のここに来た目的は艦娘の抹殺だ。」


静寂が走った。

皆の表情がこわばり誰一人として発言をしようとしない。


曙「な、なに言ってるのよクソ提督。」


来栖「・・・嘘だと思うならそれでもかまわないが。」


雷「だ、だけど!誰も轟沈してないじゃない!」


来栖「・・・それは俺の気が変わったからだ。これ以上深く話すと無意味な昔話になる。とにかく今はお前たちを轟沈させたいとは思っていない。むしろ、お前たちを助けたい。」


隼鷹「そ、それはどういうこと・・・?」


来栖「・・・お前たちの中に志願してなったものはいるか?」


全員「え・・・。」


誰一人として手をあげたもの声を出した者はいなかった。

再び静寂が走る。


来栖「R計画。生死をさまよう10代の女性を対象として行う生体実験。かつての名高い軍艦の記録を記憶として情報化し非検体に埋め込み、自らを生まれ変わりと思い込ませ、戦意高揚や深層心理化でのマインドコントロールによって行われる異常なまでの肉体改造。」


飛鷹「な、なんですかそれ・・・。」


来栖「そして、無事に半年間の実地試験に生き残った者にはそれぞれ記憶の中の軍艦の名前が与えられさらに、艦装という装備を与え各地の鎮守府へ派遣する。これがお前たちの生まれた経緯だ。」


金剛「そんな・・・嘘デース・・・。」


龍驤「じょ、冗談や・・・。そういってくれや・・・。提督。」


響「・・・これには・・・驚いたよ。」


曙「いやあああああ!」


長門「おい!貴様何を言っているのかわかっているのか!」


来栖「わかっているさ!そして、かつてこの計画を最初に行った場所を第五機関という。そこは参謀支部という名目で建っているが、実際は非人道的な兵器を生み出すための工場。俺は、そこにいた。」


陸奥「あなたは!それをいってどうしたいの!」


赤城「提督、さすがにあなたの真意が読み取れません。」


加賀「・・・。」


来栖「・・・。」


電「なんとか言ってほしいのです。」


来栖「知らないほうが良かったか。知らないで済ませこのままいつか、戦いつぶされる日まで使命という鎖に縛られ、任務という糸で操られたかったか。」


隼鷹「そ、それは・・・。」


来栖「俺は初めて、ここにきて生きている艦娘に触れた、話した。前々からこの計画には疑問があった。しかしこの国を守るため誰かが犠牲にならなければいけなかった。だがな、ここにいる艦娘は・・・兵器ではない!人だ!それを・・・物として扱う考えに・・・俺は 嫌気がさした。」


飛鷹「そうはいっても!あなただって・・・昔はその第五機関の人間なんですよね・・・。どう信用しろと。」


来栖「・・・。」


全員「・・・。」


来栖「・・・俺はある秘密を知ったため謀略されここにいる。そのとき俺は命より大切な妻と娘を殺され・・・そして実験として、艦娘にされた。」


陸奥「もしかして・・・明石が・・・。」


明石「そうみたい・・・。」


来栖「艦娘には、以前の記憶は残らない。だから明石に記憶はない。だが俺には残っている・・・。」


長門「貴様も苦しんでいると・・・。」


大井「提督・・・。」


榛名「提督・・・。」


来栖「・・・今俺たちの敵は大きく2つある。1つは深海棲艦。もう1つは海軍参謀有光が率いる第五機関。俺は必ず後者だけでも打倒しこれ以上・・・犠牲者を増やしたくないと思っている。」


北上「そ、そんなことできるのー?」


来栖「ここが何と呼ばれているか知っているか?各鎮守府のはぐれモノが集まり、異端な人材を提督として抹殺する。旧世代にとらわれ疎まれ中央からは、救いは来ない。沈没まじかの箱舟。通称軍艦島鎮守府。今更失うもの怖さでしり込みすることもないだろう。」


全員「・・・。」


来栖「今日話したことはまだ、断片的なものでしかない。だがこれ以上は話す機会があるかはわからない。もし、俺をもう信じれないというものは本国への帰還書を書いてやる。遠慮せずに言ってくれ。明日の朝返答を待つ。解散。」


ーーー


兵舎2階 軽巡・重巡多目的室


球磨「どうすればいいクマ・・・。」


熊野「きまっているのではなくて?私はなにがあろうとも提督を信じますわよ。」


木曾「熊野はいいよ。答えがもう見つかってて。」


熊野「あら?それは嫌味でして?」


北上「もう、木曾っちも熊野っちも喧嘩はだめだよー。」


大井「北上さんを困らせないでください。」


熊野「・・・。」


木曾「・・・。」


球磨「提督の話は・・・本当かよくわからないクマ・・・。」


北上「だけどさー、提督さあの時泣いてたよね。」


木曾「え?」


北上「ほらー、お前たち志願したかって聞いた時。」


大井「さすが北上さん!よく見ていますね。」


北上「自分の境遇を語ってるときでもなく、あたしたちの心配をしているときに涙を流すような人が悪い人なのかなーって思うんだよね。」


全員「・・・。」


木曾「だったらよ。北上の姉貴はどうするんだよ。」


北上「あたしはね・・・信じるよ。どちらにせよ、本国に帰ってもどうせ次の場所に行かされるでしょー?だったらここで夢を見るのもありかなーって。」


大井「北上さん・・・。」


球磨「北上・・・いいこというクマ。」


木曾「そうか。」


熊野「決まりですわね。さっそく球磨。大淀さんに報告をしてきてほしいですわね。」


球磨「な、なんで球磨だクマ!」


全員「いってらっしゃーい。」


球磨「く、屈辱だクマ・・・。」



ーーーー


兵舎4階 戦艦大部屋


長門「・・・。」


陸奥「・・・。」


榛名「・・・。」


今後「そ、そんな重い雰囲気はだめネ!わ、笑うのデース!」


長門「しばらく黙ってくれないか。」


榛名「・・・!お姉さまになんて口を!」


長門「ふん!うるさいやつに黙れといって何が悪い。」


榛名「口調というものが・・・!」


陸奥「もう、こんな時に喧嘩なんかしないだよ。長門もピリピリしすぎよ。」


金剛「や、やめるデース!金剛はノープロブレムデース!」


長門「・・・。」


榛名「・・・。」


ノックの音とともに扉が開かれた。

そこには少し疲れた表情の赤城が立っていた。


赤城「少しいいかしら?」


陸奥「どうしたの?」


赤城「いちお、言っておこうと思ったのよ。私たち空母組加賀、赤城、龍驤、飛鷹、隼鷹は提督についていくわ。」


長門「・・・!」


金剛「Wow!」


榛名「それは・・・本当ですか?」


赤城「ええ。」


赤城は近くにあるソファに座ると茶菓子に手を付け始めた。


陸奥(こんな時も食べるのね・・・。)


長門「反対した者はいなかたのか?」


赤城「そうね、龍驤がだいぶ嫌がってたわね。もう、信用できるわけないやん!って。」


長門「それで?」


赤城「加賀さんがね、私たち艦娘が提督を信じなくてどうするのですかって。あの人は無能かも知れませんが愚かではありません。この世界を変えるにはあの人の力と私たちの力がひつようではないのでしょうか、って。」


金剛「珍しく加賀が熱いネ!」


榛名「加賀さん・・・。」


長門「そうか・・・。」


沈黙が流れる。

陸奥は大きくため息をつくと長門の前仁王立ちをした。


陸奥「いつまで拗ねてるのよ。主力艦隊旗艦なのでしょ?はっきりしなさいよ。」


長門「・・・金剛と榛名はどうなんだ。」


榛名「榛名は・・・。」


金剛「榛名、たまには自分の意見を言うことも大切なのネ!」


榛名「…!榛名は・・・司令についていきます!」


金剛「イエース!さすが榛名ね!私も同じ考えなのネ!」


長門「・・・決まりだな。」


ーーーー


兵舎5階 駆逐艦大部屋


響「ハラショー・・・。」


雷「まったく・・・こうなったのよ。」


曙「それよりも、これからどうするか考えなくちゃ。」


全員「うーん・・・。」


雷「そういえば、電は?」


響「先ほど時雨の様子を見るといってどこかへ行ったぞ。」


雷「そう・・・。」


曙「こんな大事な時に・・・。」


曙「それより、これからどうするのよ。」


響「・・・それが難しい。」


雷「曙はどうしたいのよ」


曙「わ、私は・・・あんなクソ提督と一緒に心中なんてごめんよ!」


雷「・・・そう。」


曙「え・・・。」


響「どこか問題でもあるのか?雷らしくもない。」


雷「べ、べつになんともないわよ。だけど、私たちって・・・司令官の話が正しいなら一度死にかけてるんでしょ?だったら二度目くらい・・・・自分の意思で死に場所をみつけてもいいのかなって。」


曙「そ、そうかもしれないけど・・・。」


響「・・・なるほど。それなら、私は司令官についていくさ。」


曙「ちょ!響本気なの?」


響「当り前さ。私たちは、また艦娘を仲良くしてもらったという恩があるからね。」


曙「響・・・。」


雷「そうね、私も付いていくわ。世界を変える?ワクワクするじゃない!」


曙は、目を丸くするとベットの上へ腰かけた。

雷が心配そうな顔をする。


雷「・・・どうするのよ。」


曙「・・・私たちなんかが力になれるの・・・。」


響「なれるかなれないかじゃないさ。司令官は、私たちを力として人として扱ってくれる。」


曙「・・・わかったわよ!もう、しかたないわね!付いていってやるわよ、クソ提督!」


ーーーー



病棟 101号室


頭が重い。

体中が熱い。

もう、夜か・・・。

そうか・・・あの後気を失って・・・提督に・・・。


時雨「そこにいるのは、電かい?」


電「・・・はいなのです。」


時雨「今は何時なんだい?」


電「夜中の1時なのです。」


時雨「そっか・・・。」


時雨は悲しそうな目で電を見た。

電の表情がこわばる。


時雨「なにがあったの?」


電「・・・司令がすべてを話したのです。」


電はゆっくりと、一つ一つ丁寧に事のあらましを話した。

時雨は何も言わず話し終わるまで涙を流しながら聞いていた。


時雨「そっか・・・全部言ったんだ。」


電「なのです。」


時雨「それで、どうするの?}


電「・・・わからないのです。」


時雨「・・・ずるいね。」


電「え・・・?」


時雨「電はずるいよ。提督が打ち明けてくれたのに逃げようとするなんて。一度信用した人を疑うなんて。」


電「時雨ちゃん・・・。」


時雨は涙をふくとまっすぐ電をみた。

雲が晴れ月明かりが時雨を照らしていた。


時雨「一緒に行こう。電。」



ーーーー

司令室


来栖「すまんな、大淀。」


大淀「いいんですよ。もとより明石さんから少しは聞いていましたし・・・それに提督はなにがあっても提督です。」


来栖「うむ・・・。」


来栖は、戸棚からコップと日本酒を取り出した。

そのまま机の上に置くとそれぞれに注いでいく。


来栖「少し休憩しよう。」


大淀「そうですね。」


明石「そうね。」


大淀と明石は、処分予定の書類にひもを縛るとコップを手に取った。


来栖「乾杯。」


静かにコップが重なる音が響いた。

それぞれがおいしそうに日本酒をあおる。


大淀「おしいですね。」


来栖「当り前だ。それなりの値段だったからな。」


明石「あの・・・提督。」


来栖「ん?」


明石「その・・・ごめん。」


来栖「・・いいんだ。俺こそわるかった全員の前で話すことではなかったな。」


明石「ううん、いいの。変に秘密にしてるほうがモヤモヤするし。そっかー、私艦娘になる前は提督のお嫁さんだったんだー。」


来栖「なんだ、不満か?」


明石「うーん、もう少しクールな人が好みかな。」


来栖「う・・・そういうか。」


大淀「もう、からかったらだめですよ。」


明石「ごめんごめん。」


来栖「いや、そんなに気にはしてないさ。」


来栖はそういうと遠い目をした。

今は倒してある写真たて。

明石は知っていた。そこには来栖と私にそっくりな人物とその二人のある人にそっくりな子供が写っていることを。辛くなると来栖がそれをみて涙を流していることを。


大淀「どれだけ集まるでしょうか・・・。」


来栖「検討もつかんな。だが、いいさ。たとえ俺に付いてこない者がいても責めたりはしない。別の場所で幸せになってもらえれば。」


明石「お人よしだね。」


来栖「よく言われる。」


コンコンというノックの音がすると扉が開いた。

そこには、来栖と同じく白い軍服を身にまとった男が立っていた。


来栖「待っていたぞ、副官・・・いや二宮。」


二宮「二宮大尉であります。」


来栖「そうかしこまるな。今は旧知の仲だ。」


二宮「で、では・・・。」


二宮は部屋の中に入ると来栖から日本酒を手渡された。

乾杯すると一気にあおる。


来栖「二宮の父親は、俺や佐倉、有光が士官学校にいた時の教官でな。二宮のことはよく聞かされていた。」


二宮「私も、来栖さんや佐倉さん、有光さんの話はよく聞いていました。なかなか骨がある期待できる提督候補だと・・・。」


大淀「3人はいわゆる、同期というものですか?」


来栖「あぁ・・・。ある事件がきっかけで道は違えたが、元々は仲が良かった・・・。」


明石「ある事件?」


来栖「・・・。」


二宮「私が話しますよ。当時の帝国海軍はいまよりもひっ迫した状況でした。艦娘も提督も数が足りずまだ船乗りが海へ繰り出していた時代です。あるとき、父が率いる士官予備班第87班は訓練概要航海中深海棲艦に遭遇しました。最初はト級だったこともあり、かろうじて撃退に成功しました。」


来栖「・・・。」


大淀「す、すごいですね・・・。」


二宮「ええ。ちなみにこの時の撃退数15は、現在の人力単艦撃最高退数記録として残っています。しかし、運悪く帰還時にタ級と遭遇。弾薬も燃料もそこを突きかけており、父は艦を放棄することを決めました。」


明石「戦艦クラス・・・。その状況では放棄もやむ負えないね。」


二宮「ええ。しかし、その艦には海軍参謀が極秘裏に開発したレーダーの試作機が搭載されており一緒に乗艦していた参謀が放棄の撤回を要求。父は人名優先として、撤回しませんでしたが逆上した参謀は父を射殺。その後タ級の砲撃により艦も轟沈しました。世にいう呉湾轟沈事件です。」


来栖「そのご、その参謀は殺人を犯しながら無罪となった。その時からだ、有光がおかしくなったのは。」


明石「・・・。」


大淀「・・・。」


二宮「重い話をしてしまいました。」


来栖「気にするな。」


来栖は、カーテンを勢いよく開けた。

朝日が部屋の中を照らし始める。


来栖「夜明けだ。そろそろ行こうか。」


ーーーー

朝日は、ガラス張りの食堂へ幻想的な雰囲気をかもしながら入り込んでいた。


長門「軍艦島鎮守府所属艦娘計24名。」


二宮「同じく、軍艦島鎮守府所属士官、下士官計350名。」


来栖「・・・いいのか。」


電「もちろんなのです。司令が行くのならば、海の藻屑になろうと地をさまよう砂になろうと付いていくのです。」


来栖「・・・そうか。ありがとう。」


大淀「提督、ご命令は。」


来栖「軍艦島鎮守府最大の目標は、これ以上の艦娘の誕生の阻止及び第五機関の撃滅だ。だが、目下の目標は近海で頻発している艦娘の謎の爆死・轟沈事件の解決である。気を引き締めるように。」


全員「了解!」


2に続く

http://sstokosokuho.com/ss/read/4081



後書き

人物紹介

来栖提督
xx鎮守府へ赴任してきた、4人目の提督。
詳しいことはまだ不明。
第五機関にいたらしい・・・?

二宮 和重
鎮守府の副官。
二宮の父は来栖たちの教官だったこともあり、来栖とは面識があった。

電(秘書官)
長門(主力艦隊旗艦)
陸奥
金剛
榛名
加賀
赤城
龍驤
隼鷹
飛鷹
明石
熊野
木曾
大淀
北上
大井
球磨


夕立→移動

時雨(2章より)

大本営

青柳大将
鵜久森参謀長
椎名法務長
仁科大将
有光参謀


鎮守府情報

西ノ海にある孤島に建築された鎮守府。
大本営からは遠く近くに東鎮守府がある。
半年で3人の提督が変死を遂げている。

第五機関
謎の新兵器などを研究、製造しているらしい・・・?

呉湾轟沈事件
外洋航行訓練帰還途中の艦がタ級に襲われた事件。
艦長の二宮 重清は、乗艦していた海軍参謀参謀に射殺されたと噂があるが真偽は定かでない。


このSSへの評価

4件評価されています


SS好きの名無しさんから
2020-05-11 00:14:28

SS好きの名無しさんから
2015-12-28 10:44:03

matuさんから
2015-10-16 22:02:08

SS好きの名無しさんから
2015-10-16 19:41:58

このSSへの応援

6件応援されています


SS好きの名無しさんから
2015-12-28 10:44:05

ふくろうさんから
2015-11-11 19:23:34

さとうきびさんから
2015-10-21 20:30:54

matuさんから
2015-10-16 22:02:08

SS好きの名無しさんから
2015-10-16 19:41:52

SS好きの名無しさんから
2015-10-15 00:42:45

このSSへのコメント

6件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2015-10-15 00:44:47 ID: QZLo7szB

誤字がありましたよ(^.^)→電「こえが提督のお洋服になります」

2: SS好きの名無しさん 2015-10-19 00:25:59 ID: NQTCUwG5

来栖の台詞のとこが熊野になってました

3: matu 2015-10-22 18:17:58 ID: Tfomnrxs

木曾って語尾にキソっていたったけ?」

更新頑張って

時雨来るかな?

4: SS好きの名無しさん 2015-10-22 19:08:40 ID: N0SQjmJ2

題名変わってる!?(゚Д゚)

5: カヤック 2015-10-22 20:04:25 ID: m9pYVi6f

matuさん

語尾はキソじゃないんですけど、なんかこうキャラ性をだしたいと無理やりしました。もしお気に召さなければやめておきますよ。

6: カヤック 2015-10-22 20:05:06 ID: m9pYVi6f


SS好きの名無しさん

某作品のパロみたいな題名にしました


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください