宣戦布告!!♯4
3人の女の前に現れる雪ノ下陽乃
そして比企谷八幡が取る奇策とは…
サブタイトルは
「次回予告なんて当てにならない」
ついに話も佳境ですよ。
今回から解決に向いますねー
書きたいことが多すぎてですよ次回予告なんてふっ飛ばしました…これ♯4前編ですよ…
4月16日土曜日午後2時22分千葉駅前
お兄ちゃん達に会う前に偶然結衣さんと雪乃さんに会った。
2人は小町に昨日のことを謝り「実は…」と切り出し話を聞いた。
戸部?って人がラブホに向うのを見た?お兄ちゃんといろは先輩が?
いや…お兄ちゃんがそんな大胆な事するかな?
そもそも昨日のいろは先輩の感じだとそんな関係じゃなかったはずだし…
それをお兄ちゃんと会う前に伝えたけど結衣先輩は聞く耳を持ってくれ無かったし、雪ノ下先輩は着いてくる事こそするけど、なにか無感情に無言を貫いてた。
ただそれとこれとは別。
結衣さんは絶対にやっては行けないことをした。
「結衣さん、あれは最低ですよ、小町だってちゃんと説明したのに…勝手にあんな事言って周りを滅茶苦茶に傷つけて自分の事ばっかりで少し…考えられないです」
ぐしゃぐしゃに泣く結衣さんは見てて痛々しいけどここで言わないと本当に何もかもダメになる…
「そう…だよね…ごめんね…私帰るね…」
鞄を握りしめる結衣さんの手がギュッと強くなったのが分かる。
止めなきゃいけない、でも…それを良心に近いモノがそれを拒絶する。
言葉が出ない。
結衣さんは後ろを向き走るように去ろうとする。
「逃げないで!!!」
横から大きな声が聞こえ、結衣さんが足を止める。
「今逃げて何になるの?」
悲鳴のような声の先に雪乃さんがいた。
この声とは裏腹に優しい顔をした雪乃さんに釣られるかのように私もやっと声がでた
「結衣さん!ちゃんと話しましょう!そしてちゃんと話を聞いて下さい!」
「私にそんな資格あるとおもう…?」
結衣さんは苦しそうに言葉を絞り出す
「無いわ」
バッサリと斬り裂くように雪乃さんは続けた
「逃げる資格なんて無いわ、由比ヶ浜さん。小町さん昨日はごめんなさい。私は比企谷君が好き、今この状態でもそう思えるわ…ただ起こったことに呆然としてて、何も喋れなかった…それについても謝るわ、ただ、思う所が有るのよ…今日は絶対に逃さないわ、由比ヶ浜さん。ただココではあまり良くないわ…そうね…何処かカラオケかなにかに行きましょう、小町さんも一緒にお願いできるかしら…」
凛とした雪乃さんは言葉を紡いだ。
私は特に予定も無いし、この状態を良しとは出来ないので、言葉は出さず頷いた。
「少し…電話してくる」
結衣さんはスマホを取り出し何処かにメールを送っているようだ
多分送り終え、こちらを弱々しく振り向き
「用事断ってた…ちゃんと話聞く…」
そこで結衣さんは私と雪乃さんの後ろにいる人物に少したじろぐ私と雪乃さんは後ろを振り向くと…
「ひゃっはろー!ガハマちゃん、後…比企谷君の妹さんの…小町ちゃんかな?それに雪乃ちゃん…なんか楽しそうだねーおねーさんも混ぜてー!」
「姉さん…」
そこにはお兄ちゃんが言うところの魔王こと雪ノ下陽乃さんがいた。
「雪乃ちゃんあんなに大きい声が出るんだねー取り敢えずカラオケでしょ!さぁ行こ行こ!」
「聞いてたのね…姉さん悪いけど帰って頂戴。今は、人にごちゃごちゃと言われてる場合では無いの…」
凛とした顔を崩さず雪乃さんは言った。
「比企谷君…」
ぼそっと陽乃さんが名前を告げ、兄の名前を聞き、3種3様の表情を見て続ける…。
「ふーん…なるほどねぇ…何が起こったのかはまぁ…聞いてないから分からないけど大体の根本は分かっちゃったかもー」
「姉さんなんの話?」
雪乃さんは少し苛立った口調で陽乃さんに聞く
「んー小町ちゃんは分かってる、雪乃ちゃんは気づかない振りをしてる、ガハマちゃんは何も分かってないって事かなー」
「…っ」
私は今起こってることじゃなく、根本を指摘された気がして驚いた。
その私の顔を見て陽乃さんは
「やっぱりねー小町ちゃんはお兄さんと違って分かりやすいなぁー可愛い」
「…小町ちゃんどういう事?」
結衣さんと雪乃さんの目線がコチラに向う
結衣さんはホントに分からないみたいだ。
なんであんなに一緒にいて分かってないのか?と、少し苛立ちを隠せずもう全部吐き出してやろうと思った
「あの「ダメだよ小町ちゃん。」…」
陽乃さんが食い気味に私の言葉を断つ
「自分で気づかなきゃダメだよ?ガハマちゃん、ちゃんと自分で気づかなきゃ、小町ちゃんも言っちゃダメだよー…でも…」
とコチラをニコニコと似顔を振りまきながらコチラを見つめ
「もう、我慢できなくなったら怒っていいよ?私は今からこの2人から話を聞く。そしてガハマちゃんと雪乃ちゃん、2人の考えを聞いて本当に間違ってたらそれだけ指摘してあげる。その後は小町ちゃんに聞く、それに私も朝、比企谷くんといろはちゃんに会ったんだよ」
3人とも言葉を発せず、陽乃さんのワンマントークに耳を傾ける。
「その時の態度で何となく彼が思うことがあるのはわかったけど…さぁ…じゃあ行こうかー!おねーさんが奢ってあげよー!」
と陽乃さんは息巻いて先導し、私達4人は近くのカラオケ屋に向かった。
――――――――――
4月16日土曜日14時42分千葉駅付近カラオケ店
3人でこれまでの経緯を話した。
陽乃さんは『なんとなく』だそうだ、がメモを取り始めたそれを少し眺めていた。
事の発端は、一色いろはによる『宣戦布告』
2人は一色いろはの『宣戦布告』に何も答えられず、一色いろはは帰っていった。
放課後、小町ちゃんは2人をサイゼリヤに連れ出し、「兄を好きか?」と聞いた
が、雪乃ちゃんは「好きになるなんて無い」といつものネチネチと毒を吐き
ガハマちゃんはもじもじしてるだけでそれを見かねて小町ちゃんは帰宅した。
2人は雪乃ちゃんの部屋に向かって、何も無かった事に過ごそうとした。
けど、やはり気になりお風呂を出たガハマちゃんが「これからどうなるのか?」雪乃ちゃんに聞いたが、お茶を濁してその話を聞かなかった。
痺れを切らして朝から会う約束だけしてガハマちゃんはタクシーで家まで帰った。
その朝、何も言わない雪乃ちゃんに痺れを切らして怒ったガハマちゃんと『自分を全部知ってるかの様な口ぶりをしてくるガハマちゃんと2人喧嘩をした。
が、本音を言い合い、また友情を深め合い、比企谷八幡と言う1人の男に対する恋を2人は確信にまで積もらせた。
近くのオープンカフェで比企谷くんについて話していると、そこに由比ヶ浜結衣のクラスメイトで同じグループの戸部翔と偶然出会い、一色いろはと比企谷八幡が肩を寄せあいラブホに向かって行ったと話を聞く、
お互い何も喋れなくなって呆然としていると、一時間位して偶然、小町ちゃんが通りかかる。
なにか知ってるかも知れないとガハマちゃんは小町ちゃんを呼び止める。
それで戸部から聞いたことを小町ちゃんに言うと、小町ちゃんはそんな事する関係じゃ無いと思うとそれを否定。
だが、その話を全く聞かないガハマちゃんはうっかり小町ちゃんが急いでいて、焦って今から比企谷くんに会うのを告げてしまった小町ちゃんに着いて行くと言い出す。
小町ちゃんは嫌な予感がして断ったが、全く引こうとしないそんな時に比企谷くんから電話が掛かってきた。
そして2人仲良くいる比企谷くんと一色いろはを見てガハマちゃんが
「なんて言ったの?」
スラスラと綺麗な字でルーズリーフの紙に書き込みながら、ただ真剣に結衣さんを見つめて話を聞いていた。
結衣さんは少し俯きぽつりぽつりと話し始めた
「私達に分けわかんない宣言して…勝負しようと見たいな口ぶりだったくせに実はやることやってたんだ…って」
「んで?」
「あんな宣言をして、苦しむ私達の事を見て影で笑ってたのか?とか私達をぐちゃぐちゃにして楽しい?とか言いました…」
…ちがう。
「そう…それだけ?」
…ちがう。
「その後…ヒッキーに…私達も傷ついてるって言ったら小町ちゃんにほっぺた叩かれて、ヒッキーがお前絶対許さないって走っていろはちゃんを追いかけて行き…」
「違う!!!!」
この人は知ってか知らずか隠した。
「そんなんじゃないです!」
3人の顔がこちらに向く
雪乃さんは察したかの様に目を背け、陽乃さんは少し驚いていた様に見えたけど何事も無かったかの様に
「ガハマちゃんどこが違うの?正直に言いなさい」
叫んだ小町にでは無く、結衣さんに話を振った。
「え?ドコって…分かんないです」
何を言ってるんだこの人はと、頭を掻きむしりたくなるほどのフラストレーションを感じる
なんで一番言ってはいけないこと言った事を忘れれるだろう…。
「じゃあ雪乃ちゃん…ドコが違うの?貴方にはわかる?」
陽乃さんはまた沈黙をしていた雪乃さんに話を振る。
「…由比ヶ浜さん自分でホントに覚えてないの?」
彼女を信じているのだろう。
結衣さんをじっと見つめながら言った。
「あの…アハハ…私、バカだからさ…気が動転っていうか、しちゃってて…」
何笑ってるんだこの人
「もう良いです。小町が言います」
「小町ちゃん限界?」
陽乃さんはこちらを見て少し諦めた様な顔で私を見る
陽乃さんごめんなさいと一言告げ
「正直あり得ないです。『由比ヶ浜さん』貴方が言ったことはそんな事じゃ無いです!いろはさんの気持ちを勝手にお兄ちゃんといろはさんの前で喋ったことです!」
「それは…だってそんな感じだって戸部っちに聞いたから…」
「一生懸命我慢して、言わないようにしてたって、いろはさん言いながら走って行きました。なんで自分の気持ちを貴方が言うんだ?って…そんな事…そんな事されたら…小町なら…」
いろは先輩の気持ちを考えるともう感情の我慢は出来なくなった。
もう喋れないほどの涙が押し寄せる
雪乃さんがそっと近づき私を撫でてくれるがそれですら今はうっとしい。
例えば必死でやむを得ない理由で好きだって伝えられない中で勝手に自分以外がその人と本人の前でべらべらと勝手に伝えたとしたら…
いろは先輩は正々堂々とお兄ちゃんと付き合いたくて、だから『宣戦布告』なんて言葉を使って宣言したんだ。
気づいてたんだ『この2人』から横取りなんてしたって上手く行かないのが分かってたんだ。
だからあの時『必死で我慢して言わないようにしてた』って言ったのかも知れない。
多分そうだと思う。
少ししかお兄ちゃんに聞いてないし、会った中でも自分に似てる所も有る人だと思ってた。
使えるもんは使っとけ見たいな人だと思ってた。
でも全然違った。
兄に対してひたすら真っすぐと自分の気持ちを分かって貰おうと好きになって貰おうと…
真っ直ぐ、真っ直ぐとお兄ちゃんに向かおうとしてくれた人
頼むからお兄ちゃん…
その人を救って…
本当にお願い
―――――――――――
4月16日土曜日午後2時29分総武線快速車内
「なにも…言ってくれないんですね」
次の駅で人が乗るから…と一色を電車に座らせた。
そんな彼女は俯き枯れた花の様に元気を無くしポツリと呟いた。
何をしていいかも分からないし、何を言ったら良いのかも分からない。
この状況で何とかしたいと切に思っているにも関わらず、思考は完全にストップし、窓から見える代わり映えのしないビルや道をただ見ていた。
「なぁ…一色どっか遠い所行かないか?」
無意識、何も考えずただ、本能なのか逃避なのかは分からない。ただポツリと言葉が出た。
返事は無く、彼女も俺の言葉に反応したかのように虚ろげに外の景色を見つめていた
三鷹行きの快速は止まってしまった俺達の時間とは裏腹にドンドンと千葉から離れて行き、東京駅にまもなく着く。
「…戻りましょっか、ちょっと私1人になりたいので、別で帰らせてもらって良いですか?」
覇気の無い顔でコチラを見てボソボソと呟く
何も出来ないのか?ただ、このまま終わらせたくないそんな気持ちと一色を尊重したい気持ちが自分の中で葛藤していく
東京駅に着くと一色はぬくりと立ち上がって電車を降りて行く、それに俺もノコノコと…ホントに苛つく位ノコノコと
後ろを着いて行く。
「着いてこないで下さい」
彼女はこちらを見ず少し冷たい声だけで拒絶をした。その拒絶の言葉に心が折れる。
「わるい…」
それだけ言うと、俺は人混みに消えていく彼女の姿を立ち尽くし見続け、そして一色いろはは視界から消えていった。
近くに有った柱に背中を預け、そのまま俺は座り込んだ。
何も出来ることが分からない。
情けない…こんな自分が情けない。
アイツはあの時どんな気持ちで俺の居場所になるって伝えてくれたんだろう…その勇気が欲しい。勇気が有っても何を伝え、何をすれば良いのか分からない。
ポロッと小さな箱がポケットから転げ落ちていた
「誕生日プレゼント…か」
いつか渡せるタイミングあんのかな…?
誕生日以外に渡す日が?
誕生日に渡せなかったプレゼントってか?
『いろはさんを笑顔にすること!!良いから!!行け!』
と、小町の声が頭に響いた。
「なにやってんだ…俺は」
ポツリと一言呟き、彼女の去っていった方を見て立ち上がった。
なにもまだ出来てないじゃないか…
なにをあんな言葉に折れて道草食ってんだ俺は…!
傷ついてるのは一色いろはじゃないか
まだ数十秒しか経ってないはずだ。
すくりと立ち上がり必死で目でその姿を探す。
「あの…バカ後輩、後で絶対もう一回笑わせてやっからな…」
言葉に出ていたのかは分からない。
けど、そんな事はどうだって良い。
ひたすら走り、見渡す。
いた…ホームの一番端にポツリと1人立っていた一色を見つけた。
走って彼女にかけ寄る。
すると俺に気づき少し曇った顔を見せ
「今は顔みたくないです…」
風に飛ばされそうな声でポツリと呟いた。
「お前は…俺の居場所になってくれんだろ?居なくなられると困るんだよ」
すこしの沈黙が2人を挟む。
「本当に人を好きになったことなんて一度も無かったんだと思います」
「そうか」
「でも、最初はね、せんぱいなんて捻くれてるし、目が腐ってるし、性格も腐ってるし、あの2人がいるし、目が腐ってるしなんとも思ってなかったんです」
「んん?お…おう…そうか」
「でも、せんぱいは私を見つけてくれたんです。本当の私を見つけてくれたんです。バカみたいにステータスやらなんやらを追いかけてた私を止めてくれたんです」
「そうか」
「せんぱいに会わなかったら、多分一生そんな女だったんだと思います、それに…せんぱいの優しさってすごく温かいんです」
「ドンドン惹かれて、ドンドン好きになって、付き合えたらあぁしたいな…こーしたいなぁっていっぱい想像して…」
「でも、結衣先輩も雪ノ下先輩もいるし…」
「なんの関係があるんだ?」
「やっぱり唐変木ですね…せんぱいは…『あの人みたいな事』したくないので言いませんけど」
自傷的に笑う一色は続ける
「だから、何度も諦めようって思ったんです、好きになるんじゃ無かったって…何回も何回も後悔して、それでもやっぱり…私は……私だって……」
「本物が…欲しいんです」
彼女の頬から一筋の涙がこぼれ出す。
彼女は一度俯き数刻、また言葉を俺に言葉を続ける
「今日は…私の誕生日で…私、今まで誘うのにこんなに勇気要るって思いませんでした、昨日電話で嫌ってもらえて嬉しいって言われた時も、結衣先輩に私の気持ちを言われた時も…こんなに辛いこと初めてでした…ホントに自分で伝えたかった…」
「悪かった…」
「謝る事なんて無いですよ、きっと周り回って私が全部悪いんですから…」
ちがう…そんな訳あるかよ…
俺があの時、あんなことで腹を立てなければ…
由比ヶ浜が…
なんでこの子がこんなに傷つかなきゃならない。
「違う…そんな考えは…俺が許さない」
「良いですから…そういうのが一番傷つくんですよ?そう思わないとやってられないんです…」
はぁ…っと一息つき一色は仮面を被った様な明るくて暗いそんな笑顔をした
「せんぱい!わたしはせんぱいのこt「なぁ一色、着いて来てくれないか?」…へ?」
彼女の表情にとてつもない不安を感じ、彼女の言葉も聞かず、俺は彼女に歩み寄り、何年ぶりかと思えるくらい久しぶりに彼女の手を握り早歩きでだだっ広い東京駅を歩く。
どこへ行くんだ?とか離さないと大声で叫ぶだとか言ってくる一色を無視して目的地を探す
迷いながら駅の中をひたすら歩き緑の窓口を見つけた。
「すいません、一番早い名古屋行きを2枚自由席お願いします。後、デビット使えますか?」
「え?ちょ!?せんぱい?」
「良いから」
そして彼女を引き連れ、新幹線乗り場へ向った
幸いこの時間の新幹線は土日とは言え混んでおらず、適当に空いていた窓側へ彼女を座らせて席に着いた。
「多分こっちだと富士山みえるぞ」
「ねぇ…何がしたいんですか?」
「分かんねーよ…ただ今あの瞬間に俺は言われたく無かっただけだ。それによ…名古屋って、絶対行かねーだろ?京都か大阪まで多分行っちまうし…大都市なのになんか可愛そうだろ?行ってみたかったんだ俺…」
「ふふっ…なんですかそれ」
クスリとまだ影はあるにせよ彼女の『本当の笑顔』が少し見えた
「やっと…ちゃんと笑ったな」
それに嬉しくて俺も少し頬が緩む…そしてその笑顔に感情が昂ぶる。
「なんで…全部気づいちゃうんですかね…せんぱいは…」
「誕生日おめでとうな…これあれだ…プレゼントだ…その…なんだ…気に入らなかったら捨ててくれて良いから…」
小町から受け取った勇気を彼女にすっと手渡す。
俺は俺のやり方で絶対にこの子を笑顔にする……今日を俺はやり直す覚悟をする
「やり直そうぜ。誕生日…あんな事で壊されてたまるかよ、無理はしないで欲しいけどよ俺は…俺は…さ」
グッとあの千葉駅で、電車で見た悲しい顔をした一色いろはの顔を思い出す。
前の俺なら、今のこの現状に葉山は?これはドッキリ?そしてこんなボロボロになった彼女にすら、もしかしたらお前の感情は勘違いなんて言ってのける事は、やったかも知れない。
「俺はお前が…」
好きになった理由を突然言い出した時、俺は万感胸にせまるというか…心が打たれると言うか。
あの時俺が言ったあの言葉…
本物が欲しいなんてクソ恥ずかしくて今でも悶えそうなあの言葉。
俺も欲しいと思った。コイツが求める『本物』を…
「俺は…一色…」
ただ、自分の気持ちが分からない、今の気持ちが本当に『好き』とか『愛』なんて言うのが、まだ分からない。
『好き』とか『愛』だの、そんなもん幻想だ、嘘っぱちだそう思ってしまう自分もいる。
ただ、一つ言える。
俺は一色いろはの笑顔が好きだ。
自分に無い素直さ、そして負けず嫌いで
上手いこと行った時の笑顔も
嬉しさを表現する笑顔も
俺をからかってケタケタと可笑しそうに笑う笑顔も
全部好きだ。
だから…今言える本当の自分の気持ちを…
もう少し待たせるかも知れない、情けない限りだ…でも、今じゃない…100%一色いろはを好きだって言える時が来たら
そんな関係を本当に求めたいと自分が思えたとしたら…
その時は必ず俺も言おう。
彼女からは言わせない。
その時は俺から必ず言おう。
だから少しだけ待っててくれ
今は今思う、この気持ちを伝えたい。
「俺は…お前が笑顔じゃなきゃ嫌なんだよ…!!」
自分の頬をつたう涙が自分の情けなさを証明するかの様に流れる。
何も守れなかった自分への怒りが、手に連動しズボンを掴む、腿の掴み握り潰す位に掴む。
恥ずかしさや色んな感情が込み上げ彼女の顔も見れない。
「せーんぱい」
いつものあざとい、誰かさんを呼ぶ声が聞こえ、温かくて小さな手が俺の両頬の涙を優しく拭き、頬を包み込む様に覆われる。
そして勢い良く彼女の顔がぶつかる
「カチッ」っと歯がぶつかる音がして、結構真面目に痛い…口に少し鉄の味がしているが、それでも彼女は離れない。
静電気の様なキス…ちょっと痛いんだな…そんなワケの分からない比喩が頭に過ぎる…って何てことしてんだコイツ…と思ってもなんか色々考える事がアホらしくなった。
目を閉じる事も出来ず、ひたすら眼前に浮かぶ一色いろはを呆然と眺めた。
そして少し唇が離れ、お互いに目が合う、少し顔を赤らめ、唇から少し血を滲ませ漫画喫茶で感じた女の顔を見せながら、口から出た血なんてお構い無しにまたゆっくりと優しくもう一度、唇と唇が触れ合う。
俺はそれを受け入れ、次は静かに目を閉じた。
彼女から俺のことを好きだと言う気持ちが本当に伝わってくる様な凶暴で優しくて…そんなキスだった。
そして、ようやく俺達を乗せた新幹線が動き出したと同時に唇が離れた。
「卑怯かも知れないですけど、コレくらい…許されますよね?私」
「は?何いってんの?お前」
何に対して言ってるのか分からないが、卑怯らしい…
「んーと、多分私ってめちゃくちゃ独占欲強いっぽいです!」
「いや、まてお前1人で何を言ってんだ…ってか何でキ…キ…キスなんてしたんにゃお前…」
「やだなー!どもり過ぎですよ!」
「うっせぇよ」
「なんて言うんですかねー?恥ずかしくて何時もなら言えませんが、嬉しくてせんぱいが全部欲しくなっちゃった感じ?です!」
「そうか…」
「それにしても!せんぱい!くちびる!ちょー痛いです!あっ!せんぱいも血が出てますよ!これじゃあ血を交わし合った仲みたいですね!」
「へんな事言ってじゃねぇよ…つーか誰のせいだよ…顔面の隕石が飛んできたみたいだったぞ…」
「えへっ♪まぁまぁ!ねぇせんぱい!プレゼント空けても良いですか!」
「あぁ…もう勝手にしろよ」
俺が買った物はなんか…ヴィ…ヴィ?……なんかババンゴ西川さんみたいな名前のブランドの小さなUFOみたいなのがトップに着いたネックレスだった。※ヴィヴィアンウエストウッドのORBです
前に一色の財布を見た時に、このUFOが印象に残りこのブランドが好きなんだな…と昨日プレゼントを買いに行った時たまたま思い出して探して買ったものだった。
「せんぱい!ヴィヴィアンじゃないですか!すごい可愛いです!ありがとうございます!」
目をキラキラと輝かせてこっちを見てくる。
「そうだ…ヴィヴィアンさんだ…誰だよババンゴさんって…今思い出した」
「え?ババン…なんですか?ってか私がヴィヴィアン好きなの知ってたんですか?」
「あー前にな、サイゼ行った時、財布見てな…名前なんて知らないからさ、それで探しまわっ……………別に何となくだよ…」
急にこっ恥ずかしくなり、顔が熱くなる
「せんぱい好きです!全部愛してますよ!」
「随分と現金な愛だな…」
「違いますよ!だってさっきは誘拐されたせいで言えませんでしたし…さっきのキスに思いっきり愛を詰め込んだつもりだだったんですけど、言葉でもやっぱり伝えたいなぁ!って…私のファーストキスで愛はちゃんと伝わりましたか?」
誘拐って…まぁ事実だけど…え?事実なの?
「あざとい…別に…」
「別には、YESかNOじゃないですー!もぅ!伝わったぜ?いろは…みたいな感じでこう…格好良く言えないんですか?」
「うわぁ…その気持ち悪い声やめてくんない?真似してるとしても鳥肌立つんだけど…」
少し自分がそれを言ってる所を想像して思わず鳥肌が立ちそうだった
「しつれーですよ!まぁ…ちょっと先輩が愛を囁く姿を想像しましたけど気持ちわる…ちょっとせんぱいっぽく無いですね!」
「おい。今、お前絶対気持ち悪いって言おうとしたろ」
「え?や、やだなーそんなわけ無いですよー」
「……………ちゃんと伝わってたぞ…バカ…」
ボソリと聞こえるか聞こえないか分からない程度に小さく呟いた。
「え?なんて言いました?」
「なんでもねーよ…」
「そですか…ちゃんと伝わっててよかったです!」
「聞こえてんじゃねーか…ほんとうぜぇ…」
「ねぇせんぱい…これ着けてくださいよ!」
とネックレスを俺に差し出す。
「は?着け方わかんねーよ、これ以上俺のSAN値を削らないでくれ…自分でつけろ」
「ここの小さいの粒みたいなのを下に引くとこれが外れるのでお願いしますね!」
「良いから!頼むから少しで良いから俺の話を聞いてくれ…」
結局、無理矢理ネックレスは着けさせられた。手鏡でニコニコと見つめ、さっきまでの落ち込みはなんだったんだろう…すげー元気になってる一色を見て、俺は不安になった。
この素の笑顔を作り出せるメガ進化でもしたんじゃないか?
ムリはしてないのか…彼女の一挙手一投足が不安になる。
その不安は彼女に伝染したらしく、俺をじっと見つめる。
「無理してんじゃないか?って思ってます?」
一色は別にいつも接するなんでも無い顔でこちらを見つめる
「あぁ…そうだ、悪い」
「あー…あのですね、せんぱい、大丈夫です」
「ん?」
「せんぱいが伝えてくれた言葉と、私が何回も逃げても追いかけてくれてですね、そんな小さい事に捕らわれるの嫌になったんです。確かに、思い出すと胸がズキズキしますし、結衣先輩は今は凄く…なんて言いますが…」
「濁さなくて良いぞ、気にすんな」
「あはは…そですか…あんな事されて嫌いになりましたけど…けど…私の為に必死になってくれたせんぱいが隣にいるじゃないですか、どー考えたって私の大勝利ですっ!」
「そうか…そんな考えが出来るんだな…やっぱ凄いわ…お前は」
「そうですよ!私は凄いんです!」
胸に手を当てドヤ顔を決め込む一色を見て俺の心の不安が和らぐように感じた
「後あれ、嬉しかったですよ?」
「あれってなんだよ」
「大事なもの壊して絶対に許さないって大声で怒ってくれたじゃないですか」
「えー…聞こえてたのかよ」
「そりゃ、あんな大声でしたもん」
今日は恥ずかしい事オンパレードである。
じゃあもう何も恥ずかしくないと俺は心を決める。
「なぁ…一色」
「なんですか?」
「俺…お前の居場所になれるように頑張るわ…その…だからよ…その時は…俺からだ…俺から必ず話をさせてくれ」
彼女は少し顔を赤くして俺をじーっと見つめるとニコりと笑った
「も…もー仕方無いですねせんぱいは…じゃあ私は待ちますから、ちゃーんとその時まで待ってあげますよ!でも待つだけじゃ嫌ですから、私からガンガン行きますからね!覚悟してください!」
「こえぇな…後よ、今は忘れようぜ…あのガハマ事件は…とりま名古屋だぞ?名古屋味噌カツだろ?あとなに?しゃちほこ?取り敢えずアレだ、今日はヤケクソに楽しもうぜ…そうだ腹減ってないか?後よ、ビール飲んでみようぜ、前からどんな味か気になってたんだよ…」
どうやらガハマ事件がツボだったらしく、ケタケタと笑い
「ヤケクソですね!なんでも来いですよ!次コロコロの人が来たら頼みましょう!」
「そうだな…プッ…コロコロの人な…」
「私なんか名古屋のいい場所探しときますね!あと横浜のシュウマイ弁当食べたかったんですよ!」
「は?もう過ぎたぞ新横浜」
「えー!?なんで言ってくれないんですか!」
「知らねーよ」
これを書いてる時、名古屋に住んでる友達からラインが来ましてね、
ほんとはあたしの愛する故郷京都にしようと思ったんですけどね…あたしたぶんヒッキークラスで京都を愛してますのでそこ書いてるだけで50万字くらいガチで行きそうなので名古屋にしました照
つーわけで次は♯5で、お会いしましょう!
〜次回予告〜
戦場ヶ原「阿良々木君と比企谷君って似てるわね?」
八幡「え?そっすか?」
暦「どこがだ?戦場ヶ原なんとなく察しはつくけど…」
戦場ヶ原「流石ね阿良々木君、勿論アホ毛よ」
八幡、暦「「やっぱりな…」」
戦場ヶ原「やっぱりアホ毛が似てると言葉も似るのかしら?後そこのゾンビ谷君だったかしら?目が腐ってるわよ?目が落ちそうで見てられないわ…早くしまいなさい」
八幡「おい、あんたの彼女いきなり人をディスって来たぞなんだよ…この人超こえーよ…後、しまうってなんだよ…」
暦「比企谷、済まない。これがコイツの平常運転だ」
八幡「あぁ…そんな奴俺の周りにもいるんだよ…人を見かけては毒を噴射してくる冷血の女が…」
暦「そうか…」
八幡、暦((…お互い大変だなぁ))
雪ノ下「…クチュン」
※今回は次回予告はありませんので今数秒で考えた茶番を書いときました
更新お疲れさんです、今回も面白い!
ガハマ事件(笑 …まあ、結衣好きじゃないけど
ここまで馬鹿だとなんかかわいそうになってきた(笑
名古屋泊まるのかな?さすがにまずいか…
いろはすとりあえず笑顔もどって一安心、続きが楽しみです。
今回も面白かったです(´∇`)
いやぁ〜いいですね!
やっぱりいろはは笑顔いちばんです!
今後の奉仕部メンバーの様子も気になりますねぇ〜o(* ̄o ̄)o”ウキウキ♪
何が言いたいかと言うと、私も小町のような妹が欲しかった!!
いやー、このまま八色で行くようで安心しました!(大丈夫だよね?NTRないよね。。。
とりあえずいろはすかわいい!
ガハマ終了のお知らせ。わら
いつも楽しませてもらってます!
続き楽しみにしてます!
小町がイケメン過ぎて濡れた
誰かを悪者にするのは好きじゃない。
奉仕部の女共大嫌いだからもうそいつらDEADENDがいいな、うん。
面白いからこそ誤字が気になる...
楽しみにしてるのでこれからも頑張ってください!
いろはルートを明言してないだけにどうなるか解らなくて不安でしたが、気流が安定したようで良かったですw。
やはり誰かを悪役にしないとこの物語は成り立たないと思います。悪役が居ることでいろはが輝くんですから。悪役がいない物語なんてそれこそ糞だと思います。
ですが、結衣推しの方も雪乃推しの方も少なからずこのSSを読む可能性があるので冒頭で注意換気した方が良いかもしれませんね。
中傷的コメントは無視して
応援コメントと批評コメントのみを受けとめて頑張ってください!。
中傷的コメントは作者にとってプラスになりませんから!
原作のキャラとはかけ離れた行動をさせてまで劣らせて相対的に好きなヒロインの立場を上げるってそれ人としても表現としても最低レベルなんじゃ…
というかこの手のSSや賛同している人間は逆に一色が槍玉に挙げられたらどんな気持ちになるかとかそういう考えには及ばないのだろうか
米9
>逆に一色が槍玉に挙げられたらどんな気持ちになるか
そういうのはそもそも最初から読みません
奉仕部の馬鹿二人は原作でもじゅうぶん糞!
一色推しの奴らって絶対奉仕部二人を糞呼ばわりするよな
一色が槍玉に挙げられたのは読もうとすらしないのに馬鹿二人は糞って言ってんだもんなー
果たしてどっちが馬鹿で糞なんだか
一色推しというより雪結嫌いが多いんだよ
まあ嫌なら読むなってことで
八色読んで他キャラが、いろはのために使われてるって言われてもねー。
そりゃさ、八色イチャイチャだけ描いてりゃそれでいいのかも知んないけど、
書き手さんにもいろいろあって、それだけじゃ書いていてつまんないって
こともあるんですよ。
物語なんだから、喜怒哀楽も作中で描きたい書き手さんも多いと思うし、
自身の成長のために様々な手法や構成、設定を設けて描くし、
極端にいうとたとえば八色にしても八結しても八雪にしても、他カプにしたって
中心に据えたヒロイン以外はみんな舞台装置でしかないんですよね。
それで他のヒロインを貶めたりディスたりしているわけじゃないんですが、
やれ結衣が雪乃がって言われてもね。
なら推しキャラカプだけ読めよって、思うわけですよ。
オールマイティーさんなら、どんなカップリングでも楽しめるかもだけど、
強く推すキャラをお持ちの方は、自分好みのカプだけ読めばいいじゃん。
それでも自分の好みに合わない、出会えないなら自給自足すればいいんですよ。
八色厨が騒いでるけど原作の方で一色ルートがあり得ないんだから二次創作くらい夢を見させてあげましょうや。
騒いでるのは八雪厨と八結厨
読まなきゃいいのに
早く続きがみたいです‼
八色も、八結も、八雪も全部いいんです。
けどその中でいろはすが1番すきなんですけど今全部このSS読ませてもらってなんというか……うん……これなら単純に八色でいいんじゃないかなって……イチャイチャさせて終わりが1番好きですわ……こんないろはすも結衣もゆきのんも読みたくなかった……ってのが感想っすね。
けど続きは読みます。どうなるのか気になるので。結衣とゆきのんの立ち位置回復期待してます。
流石にこの結衣とゆきのんの立ち位置はひどいっす(泣
続き楽しみだなあ
やっぱり俺ガイルssは八色なんだよな。八雪や八結も読んできたけど、やっぱり八色だわ。文書が巧い人が書くとめちゃくちゃ面白い。ペース早めに読んでしまったので、改めてゆっくり読み直させていただきます!とても面白いです!
シリアスあっての俺ガイルssだと思います。甘々も良いですけどね。
というか元凶は戸部なんだよなぁ...
そろそろ続きが読みたいなあ…
禁断症状が……
エタったのか?
俺はいつまでも待ってるぞ
続きが気になって気になって
>次は♯5のベースを今書き終えて色々と加筆してます。
>ではまた一週間位で出来そうなのでまたその時お会いしましょう
これから2週間以上たったけどなんかあったんだろうか…
心配ですね
失踪するなら書くなよな
もやもやして逆にイライラする
たまごさんここ見てないのかな?
続き書けないのなら報告してほしい
残念だけどもうチェックしないから…
遅れるなら何か言ってほしいな
いつやるのかなー?
所詮SSだし書くのは自由、読むのも自由
コメント書くのも自由、それが荒らし以外なら自由、批判も受け止めるんだぞ、それも含めて評価、感想なんだからな
結衣と雪乃にも救いがあるみたいなこと書いてたが本当にあるのか楽しみだわ
速く戻ってくることを祈ってます!
速く八色の続きが見て~
とうとうなんの連絡もなく1ヶ月か…
続き読みたかったなあ
いつまでも待ってるよ
つ…続き……
エタ・・・
地の文書くくらいなら小説家になろうとかハーメルンとかで投稿して自己陶酔に浸ってなさいな。
これSSというより小説もどきのポエムだよ。
続きはまだか!?
まぁ気長に待ってます
続きが気になってます
いろはす〜
はやくやってくれー
まだ?
待ってます
続き待ってます
続きみたい
とてもおもしろかったです。
続き楽しみにしてます!
続き書いてよ
続き待ってます。
来年こそは続きを見たいです
今年こそは続きを見たいです
もうすぐ1年か…
今更ながら読みました。
今までの作品もすべて読み終わり、作者さんがすごく好きになりました。きっと、いつか、続きを書いてくれることを願っています。ありがとうございました。
完走してくれー
すいませ〜ん、木下ですけど、ま〜だ時間かかりそうですかね~?
まだ俺は待ってる