ラブライブxトーキョーグール2nd
第2話「道化の笑い声」
これ年内に終わるかなぁ…
〜秋葉原某所〜
穂乃果「いや〜まさか橘(たちばな)くんからクインケのプレゼントがあるとは思わなかったよ」
橘「持ってる方が安全だしな」
穂乃果「それで?これからどこに?」
橘「コクリア」
穂乃果「…コ、コク?」
橘「グール収容施設、別名”コクリア”」
橘「CレートからSSSレート、すべてのグールが収容される監獄だよ」
穂乃果「そ、そんなのあったんだ…」
橘「…石川、お前に話してたはずだけど」
穂乃果「え…忘れちゃった」
橘「…ポンコツ」
穂乃果「ポンコツはないでしょポンコツはああああああっっ!!」
さすがの穂乃果も、これには怒った。
穂乃果「もうっ!」
〜コクリア〜
橘「監獄長、お疲れ様です」
灰崎「アァ…どうも橘くん…元気そうで…」
痩せこけた顔に、死者を彷彿とさせた。
コクリアと呼ばれるグール収容所の監獄長である彼は、収容されているグールを全て管理、処分している。
…なんだか見た目がとても変わった人なのである。
橘「SSS層まで行きたいんだけど…」
灰崎「SSS層…ですか?…あそこには今グールは収容されていませんが」
橘「…は?ちょっとまて」
橘「”羆(ひぐま)”が収容されているはずだ、まだ奴のクインケだって試作段階だろ」
灰崎「先日、その件で…西木野先生がいらっしゃいましたよ」
灰崎「クインケの実験のためお借りしたい、と…厳重に事を運び、幸い何も起こりませんでしたが」
灰崎「…そちらが手配したのではないんですか…?」
橘「…!?」
穂乃果「あれ?…西木野先生って…?」
橘「あいつは今、行方不明のはずだが」
灰崎「なんと…!?それでは”羆”は…」
橘「…まさか!」
橘は何か閃いたような顔をすると、すぐさま移動を開始した。
橘「高坂!!行くぞ!」
穂乃果「う、うん」
灰崎「…まずい事に…なりましたかね…?」
灰崎は指と指をトントンと鳴らしながら、2人の背中を眺めていた。
〜秋葉原、某所〜
2人はグール対策局本部へ向かい、全力で走っていた。
橘「クッソ、まずい事になった」
穂乃果「ど、どういうこと…?」
走りながらも、穂乃果は橘に話しかける。
橘「西木野 廉藏…行方不明…これだけならまだ捜査を保留してもよかった」
橘「だが奴の手に”羆”が渡っていたなんて…クソッッ!!」
穂乃果「まさか…例の人体実験ってやつ…!?」
橘「あいつは”羆”を使って実験している」
橘「憶測が正しければ被験体は…」
橘「!?」
穂乃果「!?」
橘が話している最中、突然謎のガスマスク集団に囲まれた。
マスクから呼吸音がシュコー、シュコーと響く。
橘「なんだお前ら」
ガスマスク集団「「…」」
ガスマスク「「橘 龍也、及び高坂 穂乃果を視認」」
ガスマスク「「討伐開始」」
ガスマスクの集団の目が一斉に赤く染まる。
それと同時に彼らは背中からそれぞれの赫子を展開した。
橘「こんな時にグールかよっ!?」
穂乃果「どうするの橘くん!?」
橘「あほ、戦うぞ!」
橘「クインケ起動しろ!!」
穂乃果はアタッシュケースの取っ手のスイッチを押し、クインケを展開させた。
それと同時にガスマスクの集団は一斉にかかってきた。
穂乃果「あわ、あわわ…」
あまりの数に、穂乃果は慌てて攻撃がワンテンポ遅れてしまった。
赫子が飛んできたその瞬間に、橘が割って入ってくる。
地面に落ちていた石を蹴り、ガスマスクの目に当てる。見事に直撃し、ガスマスクの1人の態勢が崩れた。
橘「女の子1人に随分と物騒だな、オイッッ!!」
橘はクインケ”スペルビア”をすぐさま起動。同時にガスマスクの1人の頭を掴み、地面に叩きつける。
そして目の前に固まったガスマスク集団に向け、スペルビアを発砲。何人かには回避されるも、1人には確実に命中。
この間、実に2秒弱。グールであり、捜査官である橘だからこそ、なし得る技だった。
ガスマスクA「ぐっ…やるな…」
ガスマスクB「どうする、彼女を待つか?」
ガスマスクC「それが確実だが…時間稼ぎができるか?我々に」
橘「駄弁ってねーで来いよオラッ!」
橘は話し合うことすら許さない。
ガスマスクCの頭を掴み、ガスマスクBにぶつけ
重なった2人をスペルビアで撃ち殺した。
素早い動作に、ガスマスク達は圧倒されていた。
だが、スペルビアの15mm爆裂赫子弾は彼らの頭部を容赦無く破壊した。
ガスマスクA「こ、このぉぉぉ!!」
ガスマスクAが霧状の赫子を展開し、橘に向け射撃した。
橘「高坂、後は任せた」
ガスマスクA「がっッッ!?」
穂乃果は、橘の戦闘の間にガスマスクAの後ろに回りこみ、棒状のクインケ”ILA(イラ)”で強く殴りつけた。
穂乃果「はあっ…はあっ…」
橘「ナイス援護」
穂乃果「びっくりした…」
穂乃果はその場にぺたりと座り込んでしまった。
橘「さて、まだ喋れるよな?」
橘は穂乃果に殴られたガスマスクの胸ぐらを掴み、持ち上げる。
ガスマスクA「がっ…」
橘「お前ら、さっき俺らの名前を言ってたな」
橘「目的は何だ?話せば半殺しで済ませてやる」
ガスマスクA「…」
ガスマスクA「目的はお前らだよ…グール対策局を潰す為に我々は動いている」
橘「ほう…お前らのボスは?」
ガスマスクA「…我々の、ボスはー」
ガスマスクA「んがッッ!?」
ガスマスクAから、大量の血しぶきが飛んだ。橘は思わず後退し、態勢を崩した。
橘「!?」
穂乃果「あ、新手…!?」
「も〜我慢できない」
「お腹空いたぁ」
穂乃果「!!」
「ああ」
「あははは」
新手は、ガスマスクAを軽々と拾い上げ、ブチブチ、ブチブチと汚い咀嚼音を出しながら捕食する。
「あ」
「穂乃果ちゃんだぁ」
「美味しそ〜」
穂乃果の全身に、危険信号が走る。
脈がドクドクと加速し、呼吸も荒くなる。
「私ね…すっっっごくお腹、空いてるの」
突如現れた新手は、グールと断定していいだろう。しかし、明らかに普通ではない。
誰だって見ればその存在がどんなものか見極めることができる。あれは…戦ってはいけない、身体が伝えている。
「だから…」
「う」
「 ば」
「わ」
「せ」
「 ろおお おお おおおお お おお!!!」
新手は真っ先に穂乃果へ飛んで行く。
しかし穂乃果は反応はおろか、身動きすら取れなかった。
彼女の目に映ったのは、行方不明と言われた存在。
何度も何度も連絡を取ろうとして、取れなかった存在。
…西木野 廉藏に呼ばれて以来、一度も会えなかった存在。
小泉 花陽だった。
穂乃果はそれに気づいてしまった、というだけで戦力を失ってしまった。
穂乃果「う あ 」
コンマ数秒。ニタリと笑う花陽がすでに目の前にいる。
綺麗な髪の毛は、白髪交じりのボサボサ頭。
やつれた頬に、多くの傷。
豹変した、狂気の表情。
かつての小泉 花陽とは程遠く、ボロボロに果ててしまっていたのが、わずかな時間で理解できた。
花陽「くひッッ!?」
突撃してきた花陽に対し、橘が割って入って蹴りを入れた。
花陽「いたいたた」
花陽「イタイなぁ」
橘「…小泉 花陽」
穂乃果「ま、待って橘くん!相手は花陽ちゃんだよ!?仲間だよ!?」
橘「…今のを見て何も思わなかったのか」
橘「下がってろ、お前は石川さん達を呼べ」
花陽「まっずいグールにキョーミ無し」
花陽「美味しそうな穂乃果ちゃんだけ食べたい」
花陽「なっ!!」
花陽は背中から赫子を展開した。
しかし、それは今まで穂乃果が見てきた赫子には当てはまらないような、おぞましい形をしていた。
グニグニとしなる、4本に展開された赫子は橘に向かって伸びていく。
橘「珍しい赫子だな、それ」
橘「実験の成果ってやつか?」
橘は赫子をかわし、花陽の目の前まで近寄る。
左拳で強く殴り、態勢を崩した。
花陽「むぐぐ」
花陽「…何も知らないくせに」
花陽「ッッ!!!」
花陽はさらに赫子を展開した。先ほどのおぞましい形をした赫子とは違い、霧状の赫子を展開した。
橘「羽赫!?さっきまで鱗赫だったはず…」
橘「がッ!」
刃のように飛んできた赫子を橘はもろに食らってしまった。身体に大きな傷が残る。
穂乃果「橘くん!」
穂乃果も思わず立ち上がり、クインケを握る。
しかし、橘はそれを止めるように手を出し、サインを出していた。
…これ以上、彼女たちを悲劇に巻き込んではいけない。
橘の脳裏に、そんな事が浮かんでいた。
橘「…仕方ない」
橘「本気でやってやるよ」
橘を包む空気が、とても冷たくなった。
静かに動く橘の姿に、穂乃果は密かに恐怖を感じた。
橘「赫子制御装置、3分間の限定解除、開始!!」
橘の背中から煙が上がる。
プシューッ、と機械が外れる音が鳴ると彼は霧状の赫子を展開した。
花陽「せんせーの言うとおりだねぇ」
花陽「くろはねきゅん」
橘「俺は…橘だ!!」
橘は花陽に向かって走り出す。
花陽もそれに合わせ、霧状の赫子から刃を飛ばし、牽制する。
橘はジャンプでこれを回避。さらに空中で赫子の刃を飛ばし、かかと落としへと派生した。
花陽「お」
花陽「おおお」
花陽「はやいなぁ」
花陽はそのまま橘の足を掴み、地面へと叩きつけた。
橘「ぐっ…!」
橘「くそっ」
スペルビアで花陽に向け射撃。
花陽はまた別の形の赫子を展開し、これを防いだ。
橘「スペルビアが…効かない!?」
花陽「くひ くひ ひ」
花陽「あぁあああぁあっっはぱはははひひひ」
花陽「うひひあははははっはははは」
不気味な笑い声と共に、花陽は新たな赫子を展開し始めた。
巨大な赫子が、花陽を包む。
全身を覆った赫子は、かつての”羆”を連想させた。
橘「…ジジィ」
橘「…クソが」
橘は、その場からなぜか動けなかった。
…羆を、志賀 十蔵のことを考えていた。
思えば、迷惑ばかりかけていたな…。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーー
ー
十蔵「君が黒羽 竜也か…」
竜也「ーーッッ!ーーッッ!!」
体を拘束された竜也は、必死に抵抗するも、志賀 十蔵によって抑えられていた。
十蔵「君には、とても感謝している」
十蔵「君は力の使い方がわかっていないようだ…」
竜也「…ッッ!!」
咲夜「お兄ちゃん…!」
十蔵「わたしの所に来い。そして、共に戦おうではないか」
竜也「…!」
十蔵「(借りは返させてもらうぞ…竜也)」
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歪な音が、あたりを恐怖に染め上げる。
かつての強敵、SSSレートのグール
”羆”。
彼と全く同じの赫子が、橘の腹を貫いた。
穂乃果も、その瞬間を目で追うことすらできなかった。
花陽「せんせーの傑作って聞いてたけど」
花陽「こんなもんなんだね」
穂乃果「た、橘…くん?」
ニタリ、と花陽が笑う。
橘は、ピクリとも動かない。
花陽「運動したらお腹空いちゃった」
花陽「…穂乃果ちゃんにはわからないよね」
花陽「お米を食べたくても、食べれない気持ち」
花陽「だから…」
花陽は全身を覆った赫子を右腕に集中させ、巨大な腕を作り出した。
花陽「バイバイ」
穂乃果「花陽…ちゃん」
穂 乃 果 「 ど う し て … ?」
花陽「ありん?」
花陽の攻撃は穂乃果には当たっていなかった。
直前で、誰かが割って入り穂乃果を助けていたのだ。
乱入者は、穂乃果を腕で抱きかかえていた。
穂乃果「…う…え?」
花陽「な〜?」
花陽「邪魔しないでよぉ」
深い赤色をした髪に、むき出しの歯茎が特徴のマスク。
前髪の向こうから見える綺麗な赫眼に、広い世界を感じた。
「…花陽」
「西木野 廉藏はどこにいるの?」
花陽「教えるわけわけないじゃ〜ん」
花陽「ちゃん真姫♥︎」
穂乃果を抱きかかえたまま、真姫は花陽を強く睨みつける。
真姫「…花陽」
真姫「私が相手するわ」
うぷ主「僕ラブ出てみたいよなー」
真姫「無理ね」
凛「無理だと思うにゃ」
花陽「無理…です」
うぷ主「」
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