リヴァペト、〜あなたの腕でいつまでも〜
…わたしのことをずっと忘れないでください。兵長。あなたはとても優しくしてくれて人生を共に、体を共にしてきました。もう失いたくない…
ペ「検索してくださったんですね、ありがとうございますっ!」
リ「おいペトラ?誰に話している?」
ペ「この話を検索してくれた画面向こう側の方ですよ!」
リ「そうか。」
ペ「ではでは、お茶やお菓子を食べながらゆっくり読んでくださいね!」
長い雨が続いてペトラは気が落ち込んだ。外に咲いている花は全て散ってしまっているだろう。風が強まり窓がガタガタとなる。今はリヴァイ班本部での休暇中だった。
(できればどこかに出かけたりしたかったな…)
ため息をつきながら窓の外を見た。すると目を疑った。
(こんなに雨、風が強いのに誰かがポストに配達をしに来た…?)
椅子から立ち上がりマントを羽織った。ドアノブを回し外に出るといきなり風がペトラに体当たりし少しよろけた。そしてバチバチと顔に雨粒が当たる。雹に近い雨だ。
(休暇中だからと言って長いスカートをはいた自分がバカだった。)
足元でバサバサといいとてつもなく邪魔に思った。ようやくポストの位置につきホッとした。
(いつもなら1分も経たずにつけるのに…)
手をマントの隙間から出そうとしたが至難の技だ。風が邪魔してせっかく出てもまた覆ってしまう。ふたを開けるようにポストを開け中に手を突っ込んだ。ビニールの袋に入ったのが6つ。きっと誰もとっていなかったのだろう。そこには日々の新聞も入っていて軽いとは言えなかった。勢いよくフードがめくれ髪の毛にザバザバと降りかかる。ドアを開け城内に入ると明るく温かくとても安心した。新聞や手紙を床に置いた。
(こんなに濡れてちゃ兵長に怒られるな、今日掃除したばっかりなのに)
マントを脱ぐと絞った。立ち量の水がマントから落ち、もしやと思いスカートも絞るととてつもない水の量だ。
「おいペトラ。」
いきなりリヴァイが顔を出した。
「んぉっあ、はいっ!」
怪訝な目でびしょ濡れのペトラを見下す。
「…どうした?」
「新聞が届いてるようなので取りに行ってまいりました。」
「こんなに雨が降ってるのに?」
「はい…すいません、床をこんなに濡らしてしまって。」
「いいや、謝ることない。むしろ…」
「む、むしろ??」
「ありがとう…」
「へっ!?そ、そんなっ!いえいえとんでもない。」
「風邪ひぃちまうだろうが。」
頭の上に柔らかく優しいものが被さった。
「んぁ??」
「明日休まれると困るからな。タオルだ。頭と体拭いて洗濯出しとけ。」
「あ、あのっ!新聞あとで兵長の部屋まで届けに行きますね」
「わかった。そーいやぁ」
「何ですか?」
「水で濡れてシャツ透けてんぞ。」
「えっ!あっ///着替えてきますよ!」
白いシャツが濡れ薄ピンク色のものがうっすら見えてた。マントでおおいながら自分の部屋まで走っていった。
自分の部屋を開けると読みっぱなしになった本がそのまま開いてある。本を閉じてからシャツのボタンを外した。何かの縛りから解かれたような感じがした。
(最近シャツきついからかな?)
リヴァイから受け取ったタオルで体を拭いた。洗濯から取ってきた服に着替え新聞を袋ら出した。
『リーブス商会の範囲が広がるばかり』
大見出しで書いてある。いつも紅茶を買いに行くのはリーブス商会のものではないが今度買ってみようと思った。ペトラがいつも楽しみにしている記事の種類が3ページにある。しかしそこの記事は調査兵団のことがぎっしり載っていた。
『今回の壁外調査の結果はいかに!?そしてこれからの実績を見かねて…』
「いつもこれだよね…」
(…兵長はこんな記事嫌がるんじゃないのかな…?)
新聞をたたんで部屋を出た。
廊下で数人通り過ぎた。他の人はずっと部屋にいるのだろう。大部屋が暖かいとはいえ廊下は寒かった。
「兵長?」
「ペトラか?」
ドアを開けるとリヴァイの顔が覗いた。
「き、今日の新聞なんですけど3ページとてもつまらない記事でしたっ!なので読まなくてもけっこうです。」
何か隠しているな、と眉を吊り上げた。ペトラは慌てて違うと繰り返した。
「ペトラ。」
「はい?」
「入れ。」
リヴァイが部屋の中に手招きした。後からついていくとペトラは自分がリヴァイの部屋に入ったのが初めてだということに気づいた。部屋の中はとても綺麗になっていて埃や黒シミなど一つも見当たらなかった。
「すごく…綺麗な部屋ですね」
「?そうか?」
ペトラに座れ、と言った後リヴァイは新聞を広げた。1ページ目は読まずにとばし2ページ目から読んだ。
「1ページは読まないんですか?」
「人がどこを読んでも文句はないだろ?リーブスの記事などくだらない。」
何を話せばいいのかわからず気まずい雰囲気が流れた。
「兵長。もし私が死んだらどうしますか?」
ペトラはぽつりと会話を切り出した。
「…何が言いたい?」
「えっと…私と同じ班員やいろんな人が亡くなっていって今度は私の番がくるような気がするです。」
「…ほう。」
リヴァイは新聞紙をたたみ腕を組んでペトラを見た。
「おまえが俺の班に来て壁外調査は経験していなかったな。」
「…はい。次の壁外が不安で。」
「大丈夫だ。俺がいる。」
つかつかと歩み寄りペトラの手をつかんだ。
「必ず、次の壁外調査でおまえを死なさない。約束だ。」
リヴァイの顔を見上げた。
(…この人ならなんか安心できるな。)
「兵長、なんか安心しました。」
にっこり笑うとリヴァイは顔をしかめた。
「…なんか安心できました?何を言っている?なぜ最初から安心していない?俺がいる限りでは大丈夫だ。」
「そうですよね、ありがとうございました。」
部屋から出て行こうとするペトラの腕をリヴァイは掴んだ。何かいいかけようと口を開きかけた。
「いや、なんでもない。風邪に気をつけろ。」
「はい。」
陽があたり暖かく気持ちよかった。あの日と同じ部屋でリヴァイは目を細めた。
(あれから何日たつ?)
立ち上がろうとすると足に痛みが走る。眉をひそめて窓の外を見た。ポストもそのままだ。
「喉が渇いたな…おい、ペト…」
言いかけてやめた。リヴァイの声に誰も反応しなかった。
(俺はバカだな。まだ忘れられない。)
今とあの日と違うのは自分の大切な人がいないということだ。小さい頃から母親が死に、地上に出てきたら仲間が死ぬ。人が死ぬことに至って慣れてきたと思っていた。慣れてはいけないものだと思いながら。
(あれから一日しか経ってないからか?)
ペトラといた日々が忘れられない。掃除ができて料理もできる、理想を超えた女性だった。人を思う気持ちもその場の空気を明るくすることも得意だった。
(あいつがこの班に来て2回目の壁外だったから大丈夫だと思ったのか俺は)
「畜生!」
遠くで多くの団員の悲鳴が聞こえる。多くの人が食べられる音と親に会いたいと叫んでいる。
…しかしそれは幻聴だった。
ペトラは部屋の中にいるリヴァイを見下ろしていた。自分が死んでいることには気づいているようで気づいていなかった。最後に覚えているのはオルオが叫んで…しかしそれも全てあの時あの瞬間に忘れてしまった。
(後悔がないように悔いがないように生きれたかな…)
自分の透けている手を見つめ悲しそうに笑った。
(もう少し…もう少しでいいから…兵長のそばにいたかった。)
薄くかすかな涙が頬を伝う。そして涙が落ちた。
(私はいつでも幸せでした。あなたが忘れない限りずっとずっと心の中で生き続けられます…だから…)
忘れないでほしい。とおもった。でもそれは兵長にとってとても残酷なことなのではないか、ペトラはリヴァイの隣に寄り添って手を握った。リヴァイは気づくはずがない。絶望したように外を見つめるだけだ。
「私はあなたの腕でいつまでも守ってもらってました。幸せです。」
耳元で囁きペトラは消えた。
ペトラの声がしたような気がしてあたりを見たが誰もいなかった。
また新しく花が咲いた
前書きとは違い、かなり暗い内容になっちゃいました…今度はもうちょっと明るいものをかけるようにしたいです!!
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