「地図に無い島」の鎮守府 第十四話 クリスマスだ!・前編
クリスマスを迎える堅洲島鎮守府。
金剛と提督にこっそり取材して捕まる青葉。
忙しくクリスマスパーティの準備をする艦娘たち、
陸奥と少しだけ心を通わせる提督。
そして、今後対応するであろう特殊な案件についての断片。
夕方、ささやかなクリスマスパーティが始まる。
横須賀では、クリスマスそっちのけで、大淀と科学者がプログラミングをしていた。
クリスマス回はちょっと一息の鎮守府で、様々な事が起きます。
荒潮と如月がしばしば提督と話すところ、
提督と陸奥のやりとり、
元気になってきた金剛、
またもやいじられている初風、
ケーキを作ってきた曙と漣、
無理やりメイドコスをさせられる霞と満潮、
が見所でしょうか。
[第十四話 クリスマスだ! 前編 ]
―クリスマス前日、夜。金剛の私室の隣のベランダ。
青葉「・・・青葉、見ちゃいました(小声)」
衣笠「青葉ぁ、こういうの良くないよ~」
青葉「真実を追い求める為です!提督はみんなのものだし、プライベートなんて無いも同然なんです!」キリッ!
衣笠「ええー?またそんな感じになってるの?」
―金剛の私室。金剛は提督の膝の上に乗って、頭を抱きしめていたが・・・。
金剛「提督、ちょっとパパラッチを捕まえてきますネー(小声)」ダッ!ガチャツバタン!ガチャッバタンガラガラッ
提督「はっや!」
―隣室のベランダ。
金剛「さー見つけたネー!覗きはノーだよ?どうしてあげましょうかネー!」パキポキ
青葉・衣笠「はっ、速い!」
金剛「精鋭ぞろいの青ヶ島鎮守府で、伊達に練度99まで行ってないネー!」
青葉・衣笠「そっ、そんな人を連れてきちゃったの?提督は!」
提督「・・・まったく、先にそっちを取材するべきだったろうになぁ。そんなんじゃ、本当に記者になっても、いずれ東京湾に浮かんじまうぞ?」
衣笠「青葉ー、だから言ったのに。・・・提督、金剛さん、ごめんなさい。また青葉が。ほら、青葉も、一緒に謝ろうよ!」
青葉「でも、真実を伝えるのが記者の指名なので・・・」キリッ!
金剛「オーケーデス!九一式徹甲弾か、一式徹甲弾、どっちか好きな徹甲弾くらいは選ばせてあげるネー!」ニッコリ
提督「・・・あーあ、これはもう止めらんねーや」
青葉「えっ?」
提督「青ヶ島鎮守府は、大規模作戦で大破して進軍の足を引っ張ると、戦艦が仲間の引導を渡すのが伝統でさ。『勝利か?轟沈か?』を掲げている超武闘派の鎮守府なんだよ。この金剛も、練度99になって生き残るまでに、沢山の仲間を沈めてきているんだ(ウソ)」
金剛「ここでは仲間を撃たなくていいと思っていたのに、残念ですネ・・・(ウソ)」
提督(おっ、さすがノリがいいな)
衣笠「えっ、ええっ!」
提督「最後に、徹甲弾を選ばせるのがしきたりになっているんだよな」
青葉「かっ、艦隊司令部施設とかは・・・?」
提督「提督の机の上に、東京タワーのオブジェとして飾られているよ」
金剛「ふっ、東京タワーって、それは無いネー。あはは!提督、面白い事言うネ!」
提督「いやあれ、似てるだろ?」
青葉「えーと・・・」
金剛「パパラッチはダメデース!私は和を乱すようなことはするつもりはないデース!せっかくこちらに来たので、最初に私の事を取材して紹介して欲しいですネー!」
提督「青葉、取材もいいけど、ほどほどにな。最初に金剛について取材してくれよ」
青葉「でも、さっきの提督と金剛さんて・・・」
衣笠「そういう関係なのかなって」
提督「おれはそんなに手ぇ早くねーぞ。いや、早くなくもないけど、誰ともケッコンできないし、深い仲にもなれんのよ。明確な理由があってね。って、青葉にはまだ説明してなかったか?」
金剛「話はもっとシンプルデース!私が提督にくっついただけネー!みんなもくっつきたかったらくっつけばいいんデース!」
提督「いや、そこまで積極的にならなくていいけどな・・・」
衣笠「提督、思っていたより大変なのね・・・」
青葉「青葉とりあえず、金剛さんの件を取材して記事にしますね。その後で今回の件を・・・」
金剛「提督、艤装持ってきていいデスカ?」
青葉「扱うのはひとまず保留に・・・」
金剛「しばらく演習に付き合うならいいですヨ~?」ニコッ
青葉「するのもやめときます」
衣笠(すごい、言ったら聞かない青葉を黙らせちゃった!)
―これ以降、青葉は金剛の取材に細心の注意を払うようになった。
―クリスマス当日、マルハチマルマル、執務室。提督は手を組み沈黙し、沢山の艦娘はいつもと違う緊張感に包まれていた。
提督「・・・さて、事前の打ち合わせで声を掛けたものは一通りそろっているな?本年の最重要作戦について説明する。まず、今朝から昼前までに、クリスマス及び年明けまでの分の、各種大量の食材が届く。仕分け・運搬が得意なものは発注リストと届いた食材を照らし合わせ、所定の場所、および間宮さんとこに運んでくれ」
艦娘たち「サー、イエス、サー!」
提督「次に、六駆及び吹雪型、睦月型は、クリスマス会場の飾りつけを受け持ってもらう。クリスマス用の飾りも午前中には入荷予定だ。これも発注リストと照らし合わせ、レイアウトはある程度アレンジして構わない」
艦娘たち「サー、イエス、サー!」
提督「次、料理の得意な者は間宮さんたちの手伝い及び配膳を行ってもらう。クリスマスパーティの時間は夕方から、日付が変わるまでだ。その間に出る料理、ケーキ、つまみ・・・これらの供給が途切れることのないようにしてもらいたい」
艦娘たち「サー、イエス、サー!」
提督「最後に、昼の時点で本部より特別な衣装が届く者が居るらしい。現時点で初風および、駆逐艦サンタトナカイが装備しているものと同一のテーマのものになるだろう。この装備が届いた者には特殊な任務が発生するので、必ず一報入れて欲しい」
艦娘たち「サー、イエス、サー!」
江風「サンタトナカイじゃねぇー!江風だよっ!か・わ・か・ぜ!」
提督「いや一度は突っ込まんと悪いだろう。普通の艤装服も届くらしいぞ?」
江風「お、いいね!今日はともかく、ずっとこの格好はちょっとなぁ」
提督「うむ。まずは今日の最重要任務を無事にこなしてからだな。しかし、うちの子たち、ノリがいいな」
艦娘たち「サー、イエス、サー!」
提督「いやもう普通にしていいぞ。では、任務開始!」
艦娘たち「サー、イエス、サー!」
提督「いやもういいからね?」
艦娘たち「サー、イエス、サー!」
提督「ほほう・・・みんなずいぶん楽しそうだな!」
足柄「年内最後の重要任務が、まさかクリスマスだったなんて!でも、任せて!先ほどの任務内容はばっちり把握したわ!片付けも、料理も、段取りも、足柄にお任せよ!」
提督「心強いね!よろしく頼むよ、狼ちゃん!」
足柄「任せて!着任したらすぐに出張しちゃうんだもの。『待て』をされてる気になっていたぶん、張り切っていくわよ!」
提督「すまんね、思い付きで行動しちゃったからなぁ。でも金剛を連れてきたよ」
足柄「そうね、大したものだわ!ね、提督、私も今日から秘書艦でいいのかしら?」
提督「おう、よろしく頼むよ!」
足柄「ありがとう!私に任せておいて!」
陽炎「ね、司令、本の注文て、明日ぐらいまでなら年内に届くかな?」
提督「ネット注文で時間ごとに区切ってガンガン頼んでいったらどうよ?まとめて頼んで入荷が年明けじゃつまらんしさ。今日の昼前と、明日の10時前、明日の16時前くらいが発注時間の仕切りのはずだぞ」
不知火「私もその案に賛成です。本のない休暇は味気ないですからね」
提督「状態が良かったら中古でも構わんし、今夜のクリスマスパーティでも、各人三冊くらいずつリクエスト取ってみたらいいんじゃないか?本はかなり収納できるぞ?」
陽炎「あ、その案もらった!ぬいー、リスト作っとこうよ!」
卯月「司令かぁ~ん!うーちゃんも弥生と何か仕事したいっぴょん!弥生が仕事を欲しそうな目でこちらを見ているっぴょん!」
弥生「普通の顔だけど・・・」
提督「それならぴったりの仕事を考えていたんだよな。この鎮守府は元リゾート施設だから、あちこちに花瓶がある。けど、からっぽだ。どこにどんな花瓶があるか、二人で回ってリストを作ってきてくれ。あとで花を挿しとく資料にするから、『こんな花が良い』みたいな案も頼むよ」
卯月「わあ!諒解だっぴょん!弥生も嬉しそうな顔をしてるっぴょん!」
提督「そうなの?」
弥生「ちょっと楽しいです」ニコッ
―ギュ
提督「ん?」
荒潮「うふふ、着任してすぐに司令官の居ない二日は長かったわぁ。でも、一人ぼっちだった金剛さんを連れてくるなんて、優しい人なのね」
提督「うーん、優しい、のかね?人なんて、何らかの計算はあるもんだよ。無かったとしてもそういう結果になる」
荒潮「あらあら、謙遜しているのね。私に何か手伝えることはあるかしら?」
提督「さっきの一連の作業では、何か得意なものはある?」
荒潮「司令官が命じてくれたものを得意にするわよ~?うふふ」
提督「じゃあ、食材の振り分けをしたのち、間宮さんのサポートに回ってくれ。料理が得意になってくれたら良いと思うよ?」
荒潮「わかったわ!行ってくるわね~!」
満潮「司令官、これ、さっきの作業や準備の空きがあったら、多少は自由行動を取ってもいいってこと?」
提督「いいけど、何かしたいことが?」
満潮「扶桑と山城に、ちょっと挨拶をしたり、何かあれば手伝いたいなぁって」
提督「ああ、きっと喜ぶだろう。構わんよ」
満潮「いいの?ありがとう。・・・あっ、でも、こんなので私に恩を着せたつもりにならないでよね?」
提督「こんなんで恩なんか着せたことにならんだろ。あ、扶桑と山城の所に行くなら、これも持ってきな」ゴソゴソ
満潮「間宮券?いいのこれ?四枚もあるけど・・・」
提督「三枚で扶桑たちと何か食べて、一枚はバターサンドにでもとっかえてもらったらいいよ。最近、扶桑と山城とものんびり話せてないから、あまり労えてない。そのあたりを伝えといて欲しいので、その分だな」
満潮「なるほどね、私はメッセンジャーも兼ねてるわけね?でもありがと。行ってくるわね」
提督「近々呑もうって言ってたって伝えといてくれ」
満潮「もう、結局都合よく使われちゃうわね」
提督(西村艦隊、かな。最上と時雨か。時雨は案件があったなぁ、闇の深そうなのが・・・)
如月「あの、司令官、睦月型の任務は理解しているんですけど、着任した日のお話の件もあって、ひと声かけた方がいいかなって」
提督「ん、その判断で良いよ。各秘書艦にサポートが必要か声を掛けて手伝いつつ、ヒトマルマルマルには適当なクッキーとコーヒーを展望室に持ってきてほしい。今日はおれはそこにいるよ」
如月「わかったわ。秘書艦の見習い的な仕事ね。嬉しいわぁ!」
提督「そういうこと!よろしく頼むよ」
―これで、ほぼ全ての艦娘が何かの仕事で動き始めた。
提督「よしよし、これで今日はマイペースで行けるな・・・」
金剛「提督ゥー!大変ネー!お給料の切り替えをやってなかったヨー!お願いできる?」
提督「あ、それはまずいな!わかった。すぐやろう。ついでに、昨日出来なかった所属認証もやってしまうか」
金剛「オーケーネ!じゃあついていくヨ」
―医務室。
金剛「グッモーニン!ムツー!」
陸奥「あらあら、金剛と提督、おはよう!さっそく仲良しなのね」
金剛「そーなんデス!でも、ムツの邪魔はしませんからネー!」
陸奥「あらあら、私もそのつもりよ。結局一番大変なのは提督よね。ふふ」
提督「おはようむっちゃん、金剛の所属認証の血液採取頼むよ」
陸奥「なるほどね、いいわ。金剛、ちょっとそこに座っててくれる?すぐに終わるから。一度経験したと思うけど、耳たぶから少しだけ採血して終わりよ」
―プシュン
金剛「ウッ、これで大丈夫ですカ?」
提督「あとは、工廠の特殊帯認証装置に触れれば口座の移動も所属の移動も完了だな」
金剛「これで完璧にこっちの所属デース!すがすがしいですネー!」
陸奥「良かったわね。私も、処分が解ければ一緒に戦えるのだけれど、どういうわけかまだなのよね。・・・仕方ないけれど」
金剛「その日を楽しみにしてますネー!」
提督「・・・じゃあむっちゃん、後でまた遊びに来るよ」
―20分後、工廠。特殊帯端末前。
提督「よし、これで完了。30分もすれば、色々発注できるようになるはずだ」
金剛「これで一安心デース!でも、ムツちょっと元気が無かったネ」
提督「ん、あとで様子を見に行ってくるよ。じゃあ金剛、自由時間ではあるが、もし誰かに手伝うなら適当に手を貸してやってくれ。よろしく頼むよ」
金剛「任しとくネー!」
―再び、医務室。
提督「ういっす。コーヒー持ってきたぞむっちゃん」
陸奥「あら?ありがとう!本当に来るなんて思わなかったわ。何か話したいことがあるのかしら?」
提督「そうだな・・・戦いに出られないからって、気にする必要は無いからな?」
陸奥「・・・わざわざそれを言いに?」
提督「あと、疲れてるんで膝枕でもして貰おうかな?なんて。これは冗談だぞ?・・・ちょっと聞きたいことがあったのさ」
陸奥「・・・いいわよ?膝枕。むしろ、断ったら『聞きたい事』に答えてあげないわよ?」
提督「なにぃ?」
陸奥「あら、お困り?うふふ」
提督「いいのかい?そんな事されたら、すぐ寝ちゃうぞ?たぶん」
陸奥「いいわよ、30分から一時間くらいなら、基本忙しくないもの」
提督「えらく幸せな時間が訪れるもんだな!」
陸奥「さあ、どうするかしら?」ニッコリ
提督(これ、読まれてるなぁ・・・)
提督「言葉だけじゃ、届かない事も沢山あるよな」
陸奥「わかってくれてうれしいわ。さっきの言葉、まだ喜べないもの」
提督「じゃ、膝枕頼む」
陸奥「はいはーい♡、こちらにどうぞ、提督!」
―陸奥は医務室のベッドの端、枕を置くあたりに真っ直ぐに正座した。
提督「んじゃ、失礼して・・・」
―提督は陸奥の膝の上に頭を落ち着けた。そのまま上を見ると、胸の向こうで陸奥が微笑んでいる。
提督「視界の三分の一が、幸せで遮られているぞ。ん、落ち着くなぁ。戦いもいいが、白衣のむっちゃんもいいよ?良く似合ってる」
陸奥「ん、もう!むっちゃんて呼ばないでって言ってるのに。・・・やっと私にも、少しだけ気を許してくれたのね」
提督「ごめんな。そんなつもりではないんだが」
陸奥「こんなに女の子が居ても、あなたがささやかに自分の願望を言ったのは、私と叢雲だけ。みんないい子なんだから、大切にするだけでは、いずれあなたとの本当の距離感に気づかれちゃうわよ?」
提督「参ったね、お見通しか・・・」
陸奥「あなたを本気で追いかけようとしたら、大抵の子は凍え死んでしまうわよ?ふふ」
提督「いやいや、女の子に慣れてないだけさ」
陸奥「そんなわけないでしょ。つまらないウソをついちゃって」フフ
提督「そんな鋭いむっちゃんには、おれはどんな人間に見えているんだい?」
陸奥「そうね、・・・優しくて、強くて、・・・たぶんとても哀しい人じゃないかしら?」
提督「・・・それは助けられて補正がかかり過ぎだな。そんな大層なもんじゃないよ。ただの小心者ってところかな」
陸奥「あらあら、じゃあそういう事にしておくわ。私の膝枕なんて、小心者が味わえるものではないんだけどなぁ」
提督「あ、膝枕が無くなるのも困るな。じゃあ、解釈は任せるよ」
陸奥「調子がいいのね!」
提督「ところでさ、ひとつ、気になっていたんだが」
陸奥「なぁに?」
提督「むっちゃんさ、以前の酔っぱらった時以外にも、おれにくっついて眠った事あるの?どうも、漣たちから聞く話だと、そんな事が複数回あったような雰囲気だが」
陸奥「うっ!・・・怒らない?」
提督「むっちゃんが相手なら、例えば勝手にエッチな事をされたって怒らないよ。ふふ」
陸奥「残念ながら流石にそこまではないわねー。あなたが意識不明の時に、何度か添い寝していたのよ。胸にくっついてね。だって、命がけで助けてもらったのに、あなたに死なれたら、私はどうしていいかわからないもの。『死なないで!』って、ひたすら泣いて祈っていたわ。でも途中から、あなたにくっつくのが好きになっちゃったけど」
提督「いい話のようで途中からさらっとすごい事言ってるな!そうなの?しかし、そういえば、あの時の話をまともにするのも、今が初めてか。良くおれの腕も治ったもんだよ」
陸奥「・・・そうね、ほんと、良く治ったものだわ」
提督「むっちゃんも無事で、こうして素敵な時間も過ごせる、と。いいね、命を懸けた価値のある膝枕だ。ん、ちょっと寝させてもらうよ・・・」ムニャ
陸奥「どうぞ、おやすみなさい」フフッ
―提督が眠りに落ちて、陸奥は遠くの海を眺めた。
陸奥(本当に慎重な人ね。私が義理や恩を感じていると思って、あえて少し距離を取っていたのね。・・・あの日のあなたはとても勇敢で獰猛で、鍛え抜かれた身体は傷だらけだった。あなたはどんな人生を生きてきたの・・・?)
―提督は、日頃の疲れもあるのか、午前中だというのにすでに深い眠りに落ちている。
陸奥(でもやっと少し、気を許してくれたみたいで、嬉しいわよ)
―ヒトマルマルマル、展望室。
―提督はノートタブレットを持ち込むと、時々海を眺めながら作業をしていた。と言っても、いつもの執務ではない。武器商人に発注する自分用の武器のリストを詳細に作っていた。
如月「司令官、失礼しますね。わあ!眺めのいい部屋ね。素敵!」
提督「お、時間ぴったりだな。感心感心。眺めはいいけど寒いんだよな、ここ。デスクワークで熱くなりがちなおれにはいい場所だが、女の子にはちょっと寒いんじゃないか?」
如月「そうでもないのよ?艤装を展開すると・・・って無理ね。ごめんなさい、やっぱりちょっと寒いかも」
提督「だろう?自分のお茶は?」
如月「えっ?ここで一緒にお茶する感じだったの?」
提督「そのつもりだったが、ゴメン言ってなかったな」
如月「待って!すぐに自分のも持ってくるわ!司令官!」
―ガラッ!
金剛「話は聞かせてもらったワー!ちょっとWaitネ。インスタントだけど紅茶を淹れてくるネー!」
提督「お、いいね!」
如月「うーん、まあいいけど」ムー
提督「じゃあ、コーヒーのおかわりと、執務室からもう少しクッキー系を持ってきなよ・・・あ、ダメだこりゃ、ありったけに変更」
如月「ええっ?」
赤城「提督、こちらにいらしたんですか?警備任務の交代の時間なので、赤城、帰投しました!」
提督「任務御苦労。加賀さんは?」
赤城「寒いのでこたつに入りたいと言っていましたが、来ると思います」
提督「・・・如月、間宮さんに無理言って済まんが、在庫一通り頼む」
如月「そんなに?」
提督「すぐにわかるぞ」
―20分後
赤城「提督仕様のクッキー、美味しいですね」
加賀「赤城さん、私はまだレーズンバターサンドを食べていなかったのよ?そもそもこれは、執務室の提督仕様の物じゃないかしら?あまり食べ過ぎてはいけないわ」
赤城「あら?いつの間にこんなに無くなったのかしら?だれが?」
提督「いや、君だと思うが」
金剛「提督好みのお菓子、私も気に入ったネー。紅茶味のクッキーは追加しないんデスか?」
提督「紅茶味もありだな。加賀さん、おれんとこのブルーベリーバターサンドあげるよ」
加賀「いただきます。・・・美味しいですね」モグッ
提督「目にもいいから空母には相性のいいお菓子と言える。赤城さんがほとんど食べちゃったが、これで加賀さんも一通り食べれたね。如月は?ちょっと口に合わなかったかな?」
如月「うふふ、そんなことないわ、美味しいわよ?司令官仕様のクッキー。大人の味なのね」
提督「それなら良かった。とはいえ、在庫が切れちまった。今日は間宮さんたち大忙しだから、明日にならんと補充は難しいだろうな。・・・さて、偶然いいメンバーがそろっていることだし、このまま幾つか会議をこなしてしまおうか。如月、磯波を探して、特殊案件のファイルを全てここに持ってくるように伝えてくれ。それと、間宮さんに頼んで、何か適当な甘味でも持ってきてもらいたい」
如月「わかったわ。行ってくるわね、司令官」
提督「ところで金剛、格闘戦の心得はあるかい?」
金剛「格闘ですカ?」
提督「そう。艦娘との格闘戦だな」
金剛「青ヶ島鎮守府はそういう訓練もあるから、そこそこ使えるネー。大抵の相手になら、たぶん負けないデース」
提督「確かに負け無さそうだ。では、次は赤城さんと加賀さんに質問、練度が相当に高い二航戦と今の君らが戦ったら、勝率はどれくらいかな?」
赤城「彼女たちが限界に近く練度を上げていたとしたら・・・「負けないわ」」
加賀「負けないわ。苦戦はするでしょうけど、癖を良く知っているもの。私たち一航戦が負けることは無いわ」
赤城「加賀さん・・・。提督、今の質問には何か意味があるのですか?」
提督「困ったことに大ありだよ」
―カラカラッ
磯波「はぁ、はぁ、提督、お待たせしました!こちら、特殊案件の書類一式です。では、再び間宮さんのサポートに戻りますね」
提督「忙しいところありがとう。後で一緒に散歩でもするかい?」
磯波「えっ?あっ、はい!嬉しいです。では、また仕事に戻りますね!」
如月「司令官、ただいま!秘書艦のみなさん、すごくテキパキしているのね。ちょっとびっくりしちゃった。私も頑張らないと」
提督「ふむ。さて、磯波が持ってきてくれたこれらの案件だが、全てうちの鎮守府に一任されている。さっきの質問もこれらの案件が絡んでいるのだが・・・」
赤城「・・・こんな事が起きていたんですか?二航戦を中心とした、何人かの艦娘が所属する独立組織だなんて」
提督「所在は不明だが、確実に存在している。問題の多かった泊地や鎮守府をターゲットにゲリラ的な資源の強奪を行ったかと思えば、まともにやっている鎮守府の艦隊の子たちのサポートや、海難救助もしているようだ。この組織をうちに組み込むか、撃滅しろ、とさ。んなもん、味方にするしかないだろうに」
加賀「・・・」
金剛「提督、さっきの話だけど、もしかしてこの榛名の件ですカー?」
提督「勘がいいね、そう。横須賀鎮守府に所属して、以前金剛型四姉妹でアイドル活動していた榛名の件だよ。大規模侵攻で姉たちを失ってからは、一人だけで芸能活動をしていたが、最近はやさぐれてしまって活動休止状態だ。アイドル活動を終わりにして、どこかで引き受けないか?と言う話になっていたそうだが、どこも引き受けを断っている。かなり難しい子みたいだな」
金剛「私と真逆のパターンですネー・・・」
提督「この子、練度も高いが色々な格闘技も使いこなせるし、アイドル活動もしていたしと、能力は相当高い。だがおそらく、人間の都合に振り回されて疲れてしまったんだろう」
金剛「かわいそうですネ・・・」
提督「何とかしてやらないと、最後は解体になっちまうからな」
加賀「提督、この二航戦を含む独立組織の規模はどれくらいなのですか?」
提督「確認されているのは、その資料にもあるが、重巡・摩耶、鳥海と、二航戦の飛龍と蒼龍、それから何人かの駆逐艦だな」
赤城「馬鹿にならない戦力ですね。でも、なぜ彼女たちはこんな事を?いくら他の鎮守府の子を助けたり、海難救助を自発的にしても、このままではいずれ粛清されてしまいます」
提督「反乱され、脱走された、彼女たちの提督は、政府のごり押しで着任した、非適合な提督で、しかもセクハラ野郎だったらしい。彼女たちにはストレスにしかならなかったろう。んー、このデータを見ると、どうもこの野郎、巨乳好きだったらしいな。・・・貧乏人め」ボソッ
一同(あれ?今なんて?)
金剛「確かに、主要メンバーは胸の大きい子ばかりネー。そういえば、提督はどうなんですカ?」
提督「どうって?」
金剛「おっぱいの大きさデス。やっぱり大きいのが好きなんですカー?」
提督「女の子しかいないところでなんちゅう質問をするんだ・・・」
如月「私は気になるわよ?司令官の趣味だもの」
赤城「私も少し気になります。こういう話は面白いですよね!」
加賀「赤城さん、そんな事を聞くものではないわ」ワクテカ!
提督(なんか加賀さんが一番ワクワクしてないか?)
提督「以前、叢雲しか艦娘が居なかった頃、そういう嗜好の調査があったわけだが・・・。あからさまにでかいのは好きじゃないなぁ、あまり。大きくてもいいがバランスが大事だと思うんだよ」
金剛「無難な答えですネー。もう少し突っ込んだ答えが聞きたいネー。それに、艦娘にバランスの悪い子なんて居ないデス」
如月(わあ、追い打ちー)
提督「つまりどんな感じに答えてほしいんだよ?」
金剛「例えばですヨー?ここに私がいマース!私のどこが好きか言ってみて下サーイ!」
提督「ああ、全部かな」
金剛「エ?全部?All?・・・Oh・・・そんな・・・」ボッ
提督「特に嫌いな部分が無いってことは、そうなるな」
金剛「ちょっ、ちょっと頭を冷やして来るネー!」ダッ
赤城(あら?手玉に取られてますね)
如月(金剛さん、かわいい・・・)
提督「・・・さ、話を元に戻すが、この勢力、うちの鎮守府に引き込めないかと考えている。このままだと、いずれ潰されるだろうしさ」
加賀「説得に応じるでしょうか?」
提督「まだわからない。コンタクトの取り様も無いしね。ただ一つだけ言えることは、艦娘がこんな事をしなくちゃならないって事は、それだけの理由は有ったのだと思う。そこは聞いてやりたい。ただ押しつぶすのではなく、ね」
赤城「提督の読みと異なり、お話にならない時は?」
提督「戦って拘束するしかあるまいよ。それから考えるしかない。解体等にはさせたくないものだな」
赤城「わかりました」
加賀「こんな事をしても、遅かれ早かれ潰され、解体されるでしょうに、なぜこんなことを・・・」
提督「その理由を調べたいね。できれば解決させてやりたい。提督の役割を果たしている誰かが居るならまだいいが、そうでないなら大変なストレスだろう。・・・まったく、あちこち問題だらけなんだな」パサッ
―提督は、特殊な案件のまとめられたファイルをテーブルに置いた。
加賀「この数だけ、誰かが辛い思いをしているのね。例えば、金剛さんみたいに」
提督「そうなるな。年明けから、なるべく早く対応していくつもりだよ」
―夕方。大食堂と宴会場。
提督「さてと、みんな、クリスマスの準備御苦労!今年はこの鎮守府が稼働して一か月もしないうちにこの日を迎え、正直、十分なパーティとは言い難い。しかし、それでも間宮さんや伊良湖ちゃんが常駐してくれているし、仲間も増えたので、予想よりはだいぶ賑やかで充実したものになった。皆の着任と、これからに期待して、今日は存分に楽しんでもらいたい。では、乾杯!そして・・・」
艦娘一同「メリークリスマス!」
提督「・・・では、あとは各人、自己紹介の上で無礼講で好きにやってくれ!・・・あ!金剛の紹介があった!金剛、挨拶よろ」
金剛「はい。エ、エート・・・」カチコチ
提督「え?まさかこんな時あがるほう?」
金剛「エート、提督のお陰で今ここにいる金剛デース!本当ならとっくに解体になっていたはずネー!でも、縁があってここに来れて、とても嬉しいデス!作戦で一緒になったら、名に恥じない働きをしてみんなを守るから、よろしくネー!」
―艦娘たちから拍手や挨拶が返ってくる。
提督「さてと、あとは羽をクジャクみたいに伸ばすとするかねー」
荒潮「クジャクのオスが羽を広げると、メスのクジャクが寄って来ちゃうのよ~?うふふ」
提督「いつの間にか近くに来る達人だな。わざとやってる?」
荒潮「うふふ、もう少しで司令の隙が何となくわかりそう。ねぇ司令官、私、今日は料理担当したんだけど、何か好きなものをよそうわよ?何が良いかしら?」
提督「あ、じゃあ、荒潮が作ったもので頼む」
荒潮「司令官ならそう言ってくれると思ったわ~。パスタとサラダ持ってくるわね!」
―今回のクリスマスパーティは、ケーキや七面鳥、オードブルはテーブルの上にあるが、同時にバイキング形式にもなっている。食べ物の好みの違いと、とてもよく食べるメンバーへの配慮だ。
扶桑「提督、メリークリスマスです。お気遣い、ありがとうございます。三人で御汁粉を頂いたんですよ?」
山城「ごちそうさまでした。でも、折角なら提督も一緒の方が姉さまも喜んだのに」ムー
満潮「そうよ、次回は司令官も一緒の方が良いと思うわ。楽しかったけど、なんか悪いし」
提督「今回の年末年始はやる事が多くて里帰りもせんから、そういう時間は結構取れると思うぞ?」
扶桑「そうなんですか?」
提督「移転して間もないし、やる事はまだまだ多いねー。秘書艦が増えても対応しきれていないよ」
扶桑「あの、提督、扶桑にも秘書艦の仕事、お手伝いさせていただけませんか?」
山城「えっ?」
提督「えっ?」
扶桑「・・・いけませんか?」ジッ
提督「いや、ぜひお願いする。そうか、以前は少人数過ぎて考えられなかったけど、それもありだな」
山城「姉さまだけにお仕事をさせられません。私もやらせていただきます。・・・いいですよね?提督」ジトッ
提督「あ、ああ、人手は足りないから、構わないが・・・」
扶桑「山城、あなた、『提督が忙しそうだから』って、帰りの船でも言っていたじゃないの。遠回しな言い方をするのね」フフ
山城「それは言いましたけど、姉さまが忙しくなるのは、少し本末転倒なんですもの。それなら、提督にお手伝いしたほうが合理的かなと思っただけです」
提督「ありがとう、山城。嬉しいよ。とても助かる」
山城「・・・いえ、姉さまだけ忙しくなるのは良くないですし、私たちもそれなりに役には立てると思いましたから」
提督「以前はとても少人数で任務をこなしていたから、君らの負担になるような事をさせたくなかったけど、この状況なら少し余裕を持てるからね。お願いするよ」
山城「はい。姉さまと一緒に、お任せくださいね」
扶桑(山城ったら、素直じゃないのよね)ニコニコ
提督「ところで、満潮はちゃんと楽しめてる?扶桑と山城と会えたのは良かったけど、色んな子がいるからさ、クリスマスだし、ちゃんと楽しまないといかんぞ?」
満潮「わかってるけど、あまり浮かれるわけには・・・でも、ありがとう」
提督「食べ物とかは?色々あるけど、口に合うかい?」
満潮「・・・うん。おいしい」
提督「なら良かった。うちは無理な作戦はしない方針だから、心配しすぎることは無いからね?ただ、訓練は年明けから、相当きつくなる予定だから。ちゃんと食っときなよ」
満潮「うん、自分でその部分はメリハリをつけるわ」
??「きつくなるですって?聞きずてならないわね、こんなに緩い鎮守府なのに」
提督「おお?」
霞「無理な作戦はしないって司令官が宣言しちゃってたら、士気に関わると思うのよね。施設は立派だけど、ちょっと豪華すぎるし、これでは慢心のもとになりそう。良くないわね!」
提督「いやー、どうかな?年明けからの訓練は半端ないぞ?おれは、『無理な作戦はしない』と言ったが、果たして、おれが無理だと判断する作戦が存在するかどうか?」
霞「それ、どういう意味よ?」
提督「そりゃもちろん、およそどんな作戦でも無理なく成功し、生きて帰ってこれるくらいに全員鍛え上げるに決まってるだろう?」
霞「はあぁ?大きく出たわね!」
提督「いやいや、霞の言うとおりだと思うよ?甘くていいのは甘味だけだ。年明けからは文字通りガンガン行くから、そう心配いらないぞ?」ニヤリ
霞「・・・ふ、ふーん。楽しみにしているわ」
提督「ところでさ、霞や満潮って、曙の妹か何か?最初の頃の曙によく似ているんだが」
霞「そんなわけないでしょ!もう」
満潮「曙さん、そんな感じだったの?」
提督「最初はすごい突っかかられた。いきなりクソ提督呼ばわりで・・・あ、それは今でもか。うん、最近はツンツンしてないが」
曙「ちょっと、クソ提督!居ないところで名前を出してるから何かと思ったら、もう!」
満潮・霞(司令官をクソはないわー・・・。って、クソ提督呼ばわりしながらメイドコスしてる!どういう関係なの?)
漣「ご主人様ー!どう?漣もサンタのコスチュームが届いたの!かわいい?初にゃんみたいに手錠で繋ぎたくなります?・・・あ、あとこのケーキ、ご主人様用に漣の愛と、ぼのの歪んだ愛情がたっぷり込められたお手製だお!」スッ
提督「サンタコスも可愛いが、漣はメイド服が似合いすぎてなぁ。曙がメイド服を着てきた時の衝撃も凄かったが。いや、七駆はみんな似合いすぎるんだよな、メイドコスが。・・・ケーキ上手だなおい!シュガークラフトでおれと漣と曙作ったの?」
漣「ふっふーん、漣は意外と手先が器用なんですよ?漣を美味しく食べて下さいねっ♡」
曙「私がムスッとした表情なのがちょっと引っかかるんだけど、そういうとこまでむやみに表現されてるわね・・・」
満潮(ケーキかわいくて美味しそう・・・いいな)
霞「ちょっとどういうこと?なんでメイド服とか着させてるの?司令官の趣味なの?ちょっと引くわ(何よ!かわいいじゃないの!)」
提督「いや、きっかけは些細なもんよ。でも実際可愛いだろ?」
漣「ふーん?」ニヤニヤ
霞「な、なによ?」
漣「ねえご主人様、ミッチーとか、かすみんにメイドコスさせたら、ぼのの初メイド服に匹敵する可愛さだと思いません?」ニヤリ
霞「ちょっと、漣さん、なんてことを言い出すのよ!」
満潮「えっ、何で私まで?」
曙「そうね、私がこんな格好してるんだから、あんたたちもたまには新しい世界を見るのもいいと思うわ。いや、見るべきよ!」
霞「えっ?新しい世界って、だめ!私はそんなもの絶対に着な・・・あっ」ガシッ!
金剛「話は聞かせてもらったネー!誰かが逃げる気配を感じると、勝手に身体が動いて捕まえちゃうのデス!」
霞「ちょっと、離して金剛さん!」ジタバタ
金剛「ダメデース!霞はちっちゃいのにガッツがあって気に入ったネー!なので、今日は本格的にかわいくしてみるネー!そういうのも長い戦いには必要デース!ヘーイ漣、どこに連れてけばいいデス?」
漣「七駆の部屋までお願いできます?・・・七駆集合ー、かすみんとミッチーをかわいくするおー!」
金剛「諒解ネー!」
霞「だぁぁぁ!個人の意思、私の意思はぁぁー?はなせぇぇ!」ジタバタ
満潮(どうしよう・・・)
??「随分賑やかね?どうかしたの?その子は何を嫌がっているのかしら?」
満潮・霞(えっ?誰?)
―冷静な声を聞いて、霞と満潮は声の主を見た。この状況を変えてくれるかもしれない、と思ったからだ。
サンタコスに猫耳をつけた初風「どうしたの?」
霞(あ、これもっとダメな状況になる流れだわ・・・)
満潮(ああ・・・ダメだ)
提督「えーと・・・イマイチわからんが、初風、はっちゃけてるの?」
初風「うっ、猫耳には突っ込まないで。不可抗力よ!」
漣「初にゃんて何しても美人さんだから似合っちゃうんだよね。猫耳可愛いですヨ?」ニコニコ
初風「うう、サンタに続いて猫耳まで・・・でも私、今はきっと幸せだと思っているから。ごめんね、シュガークラフト一個割っちゃって」
漣「漣的には全然気にしてないですよー。猫耳初にゃんが見られてますしっ!」
提督「なるほど、話が見えた」
初風「というわけで霞、私もここに来なければ、きっとこんな姿になんかなっていないの。でも、死ぬほど恥ずかしいけれど何かが悟れそうな気もしているわ。あなたも何か見つけられるかもしれないわよ?」
霞「いらなーい!新しい発見とか全力でいらないったら!」ジタバタ
満潮「わ、私はどうしたら・・・」
―満潮は、できれば助け船が欲しくて扶桑、山城を見た。
扶桑「満潮、あなたもとてもかわいらしいのだから、たまにはそういう服装もいいと思うわよ?女の子なのだから、おめかしも必要ね」
山城「クリスマスだし、たまにはタガを外してもいいんじゃないかしら?」
満潮「」
―こうして、暴れる霞と、観念した満潮は、七駆の部屋に連れられて行った。
―三十分後
扶桑「思った通り!とてもかわいいわ!」
山城「かわいい・・・」ダキッ
満潮「そ、そう・・・かな」テレテレ
提督「いやいや、これは可愛いな!」
漣「わあ、思った以上に似合うー!」
満潮(はずかしい・・・けど、そんなに可愛いって言われたら、嬉しい)
曙「満潮はやっぱり、可愛い子なのね」
金剛「さあ、もう一人連れてきたヨー!」
初風「ええっ、これは・・・!」
髪をストレートにしてメイドコスした霞「な・・・何よ・・・」
提督「これまた、キレッキレの美少女メイドになってしまうんだな!」
金剛「こうすると普段の霞になってー」カミニギリサイドテール
一同(うん、霞だ。かわいいけど)
金剛「こうすると美少女メイドになるネー!」テヲハナシストレートヘアー
漣「逸材・・・お美事にござるとしか」
霞「こっ・・・これで満足したかしら?こっちは泣きたいくらい恥ずかしいんだけど」
提督「なるほど、そういう意味では心の鍛錬にもなるな」
霞「くっ!」
荒潮「二人ともかわいいわぁ~!ツンツンしてる子の方がメイド姿になると可愛さが何倍もアップする現象って、名前を付けられないかしらね?」
霞「大体ね、可愛さなんて戦いに必要ないのよ!クリスマスだから仕方ないけど、ちょっと浮かれ過ぎじゃないかしら?」ギリッ!
―霞の勢いで、少しだけ場が冷めかけたが・・・。
提督「いや、必要。生き延びるためには全て必要だぞ?」
霞「はぁ?どういうこと?」
提督「霞って、仕事と遊びを区別するほうだろ?」
霞「当り前じゃない!提督のくせに、そんな事もわからないの?」プンプン
一同(本気で怒ってても、かわいい・・・)
提督「どちらも突き詰めると、仕事と遊びの本気度に違いがあると考えるようでは、まだまだだと言える」
霞「ん?どういうこと?」
提督「自分のなすべきこと、仕事を、遊びのように心から楽しめるのが理想的であり、そうなれたらいいな、とおれはいつも思っているんだよ。そして、遊びは楽しい事だ。楽しい事は本気でやればさらに楽しい。こうなると、仕事にも遊びにも区別など無くなってくると思わないか?」
―霞は一瞬、考える目をした。
霞「ふ・・・ん、伊達に特務鎮守府の提督じゃないみたいね。いいわ、ならわたしも、今日はこの姿で、素直に褒められて、喜ぶことにする!」
提督(ん、この子は強くなるな。思ったより柔軟で理解も早い。そして根性もある)
初風(なるほどね・・・)
提督「わかった。じゃあ褒めとく。実にかわいい!もう一度言う。キレ可愛い」
霞「はいはいありがと!何も出ないけどね!」
龍田「提督、みんなで楽しそうなことをしているのね~」
提督「お疲れ様!楽しめてるかな?」
龍田「お陰様で~。天龍ちゃんも一緒だし、とても楽しめているわ~!」
天龍「提督、こないだはみっともないところ見せちまったけど、こっからは違うぜ!見てろよー!敵なんかみんなねじ伏せてやるぜ!」
龍田「あらあら、天龍ちゃんったら」
提督「おお、期待しているぞ!ただ、無理はしないように頼む」
天龍「任せとけ!」
―同じころ、特殊訓練施設内のどこか。
姫(楽しそう・・・。来年のクリスマスくらいは一緒に楽しめるかしら?話せるのは年明けからでしょうけど、彼は私にどんな姿と名前を与えてくれるのかしら?)
―同じころ、横須賀の総司令部。科学者の私室。
―大淀と女科学者はひたすらプログラムを打ち込んでいる。
大淀「クリスマスだというのに、私たちもたいがいですね・・・」
女科学者「ごめんね大淀、今夜一晩徹夜すれば、フレーム管理の専用アプリも形になるかな。クリスマスねぇ、今年も無縁でこんな事してるわ。来年はにぎやかに過ごせると良いのだけれど」
大淀「それ、堅洲島での事を言ってますか?」
女科学者「ううん、そんなつもり無いよ?というか、いざ接触の許可が出たら、緊張しまくりなんだけど!性的接触なんて無理無理!無理なんだよう!」
大淀「うわぁ、あれだけカッコつけといて、この時点になってそんなこと言いますか・・・」
女科学者「すいません背伸びしてました。どうしよ?男の人とろくに話したことも無いんだけど」
大淀「何日か前のドヤ顔で言っていたあなたの姿を、録画しておいて今のあなたに見せたい気分です」
女科学者「やめて!私のライフはもうゼロよ!」
大淀「まったくもう・・・」
女科学者「大淀はどうなのよ?実際のところは。ケッコンはしていたんだよね?」
大淀「それ、言わないとダメですか?」
女科学者「いや、無理にとは言わないよ?ただ、不安でさー」
大淀「何も律儀に性的な事をしなくてもいいじゃないですか。向こうの気持ちだってあるでしょうし」
女科学者「そうなんだけどさ、データも欲しいのよ」
大淀「困った人ですね・・・。で、私ですが、一度抱き合ってしまったくらいです。ほとんど事故でしたけれど。お話をするだけでも幸せだったんです。とても、話の楽しい人でしたから。・・・それに、深い関係の子も別にいましたからね・・・」
女科学者「ごめん・・・」
大淀「いいんです。そろそろ区切りをつけたいなと思っていましたから」
女科学者「そっか。行方不明だけど、そういう事にする感じ?」
大淀「いいえ、それならまだいいです。たぶん、敵になっているんじゃないかと思います。だから、もう終わらせないとダメなんです」
女科学者「えっ?・・・姫から?」
大淀「断言はしていませんが、姫の言い方だと、そう考えろと言っているような気がします」
女科学者「人間の『深海化』はまだ確認されていないけれど、何が起きてもおかしくないものね。そっか。ごめんね、仕事するよ」
大淀「いいえ、まだ確認はできない事ですから。でも、何でも終わりは来ますよね」
女科学者「・・・来年の今頃は、私たちはどっちも堅洲島だね、おそらくだけど」
大淀「たぶんそうですね、よほどの事でもない限りは」
女科学者「・・・そうすると、再来年はもしかすると、どっちも死んでいるかもしれないね」
大淀「最悪の場合は、そうなりますよね。そうならないように全力は尽くしますけれど」
女科学者「・・・ん、やる気が出てきた!私は頑張るよ。ありがとう、大淀!」
大淀「どういたしまして!」
―クリスマスだというのに、女二人の作業はまだまだ終わらない。
第十四話 艦
足柄さんが大きな雷みたいで可愛い
ありがとうございます。堅洲島の足柄さんは、とある道具系の物二つをアイコンにして活躍していきます。じっくりお楽しみくださいね。