放課後　ごらく部

京子「いや～、授業終わりの一服はたまりませんな」ｽﾊﾟｰ

京子「さすが売上No.1なだけあるよ」

京子「新作のリアルリッチもいいけど、やっぱりいつものが最高だね」

京子「飽きがこないこの味、シンプルにして王道。京子たんにふさわしい

　　　タバコだよ」ﾌﾟﾊｰ

あかり「ちょっと、京子ちゃん！」

――

京子「あれ、あかり。いつの間に？今日もステルス機能がキレッキレですな」

あかり「あかりの存在感はどうでもいいよ！それ、どうしたの！？」

京子「これ？セッタだけど？」

あかり「中学生がタバコなんて吸ったらだめだよ！」

京子「まぁまぁ、固いことは言いっこなしで」

あかり「よくないよぉ！」

――

京子「まったくあかりは子どもだなぁ。ほら、一本あげるから落ち着きなって」

あかり「だ、だめだよこんなの！」

京子「気にしない、気にしない。ここなら誰にもばれないって」

あかり「京子ちゃん、そんなことしてたら退学になっちゃうよ」

京子「それも面白そうだなー」ﾌｰ

あかり「笑いごとじゃないよ！もしそうなったら、結衣ちゃんやちなつちゃんとも

　　　　遊べなくなるよ。それでもいいの？」

京子「それはあかりがチクらなきゃ問題ないよ」

あかり「そんな…」

――

京子「どうするあかり。幼馴染でごらく部でも楽しくやってきた親友を売るのかい？」

あかり「そ、それは…」

京子「あかりはそんな薄情なやつじゃないよなー」ｽﾊﾟｰ

あかり「うぅ…。あかり、誰にも言わないよぉ」

京子「よしよし。あかりはいい子だなぁ」

ちなつ「こんにちはー…ってタバコ臭ッ！」

あかり「！？」

――

ちなつ「ちょっと、何なんですかこの臭い…。って、京子先輩！？」

京子「うーっす。ちなつちゃん、今日もかわいいね」ﾌｰ

ちなつ「何やってるんですか、いったい！」

京子「放課後の充実した一服だよ。あっ、もう替え時かな」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

ちなつ「灰皿まで用意して…」

京子「ちなつちゃんも一服どうだい？あかりもさっき一服してたし」

あかり「ちょ、京子ちゃん！勝手なこと言わないでよぉ！」ｱﾀﾌﾀ

ちなつ「ふざけないでください！」

――

ちなつ「どう考えたっておかしいですよ！中学生がタバコなんて…。まるで

　　　　不良じゃないですか」

京子「ワイルドだろぅ～？」ｱﾊﾊ

ちなつ「…京子先輩、今すぐその臭い煙をなんとかしてください。じゃないと

　　　　このことを学校にばらしますよ」

あかり「ち、ちなつちゃん…」

ちなつ「私、タバコの煙が大嫌いなんです。あんな臭くて身体に悪い煙を撒き散らして

　　　　平然としている喫煙者も大嫌いです」

京子「まいったなぁ、喫煙者は肩身が狭いや」

ちなつ「…言うだけムダでしたね、喫煙者の腐った脳には」ﾌﾟｲｯ

あかり「ま、待ってちなつちゃん！」

――

ちなつ「なに、あかりちゃん。まさか京子先輩の肩を持つわけ？あかりちゃんも

　　　　喫煙者なの？」

あかり「あ、あかりもタバコの煙は嫌いだよ。でも、このことがばれたら京子

　　　　ちゃんはごらく部に…学校にもいられなくなっちゃうよぉ」

ちなつ「そんなの当然の報いでしょ。法律で禁止されてることを、よりによって

　　　　学校の中でしてるんだから」

あかり「で、でも。京子ちゃんがタバコを吸うのは何か訳があるはずだよ。それを

　　　　聞いてみれば、もしかしたら自分から止めてくれるかもしれないよ」

ちなつ「…どうなんです、京子先輩。あかりちゃんに免じて、1回だけチャンスを

　　　　あげますけど」

京子「セッタがうまいから！」ｶﾁｯ

あかり「」

ちなつ「何を言ってもムダですね」ﾊｧ

結衣「ん。みんなどうかしたのか？」ｶﾞﾗ

――

ちなつ「結衣先輩！聞いてください、京子先輩が…」

結衣「ちょっと待って。まず一服させてよ」ｶﾁｯ

ちなつ「」

結衣「ふー、やっぱりここで吸うと落ち着くなぁ」ﾌﾟﾊｰ

京子「さすが結衣さん、サマになるね～」

結衣「ごめん、ちなつちゃん。それで、何だっけ？」

ちなつ「え、え～とですね…」

京子「結衣～。ちなつちゃんは喫煙者が…」

ちなつ「かっこいいと思ってたんです、昔から！」ｷﾗｷﾗ

あかり「！？」

――

結衣「へぇ、そうなんだ。最近のご時世にしては珍しいね」

京子「結衣さんや、ちなつちゃんにも一本分けてあげたら？」

結衣「別にいいけど…。でも、これクセが強いからなぁ」

ちなつ「結衣先輩はどんなタバコを吸うんですか？私、気になります！」

結衣「私はジタンだね。他にも色々気分によって変えてるけど」

京子「結衣のタバコはコンビニや自販機じゃ売ってないやつだよ」

ちなつ「や～ん、結衣先輩ってばチョイスもクールです！」

結衣「まぁ、その分買いに行く手間があるけどね。そうだ、ちなつちゃんには

　　　こっちのほうがおすすめかな」ｺﾞｿｺﾞｿ

京子「さすが結衣さん。ブルジョワはタバコのストックも複数あるときたよ」

――

結衣「これなんか初めてでも吸いやすいよ」

ちなつ「わっ、かわいいパッケージですね」

京子「へ～、結衣ってピアニッシモとかも吸うんだ」

結衣「ピアニッシモのフランメンソールだよ。ほんのりラズベリーの香りがするし、

　　　タールも少ないから女の子向けなんだ。ちなつちゃん、タバコの吸い方はわかる？」

ちなつ「いえ、初めてなんです…」

結衣「それじゃあ教えてあげるよ。まずタバコのこっち側をくわえて」ﾋｮｲ

ちなつ「は、はい！」ﾊﾟｸ

結衣「口で息を吸って」

ちなつ「すぅ～」

結衣「そして火をつける」ｶﾁｯ

――

結衣「喉に流す感じで煙を吸う。ちょっと息を止めてから吐けば完了だよ」

ちなつ「わっ、ほんのりと味がしますね！」ﾌﾟﾊｰ

京子「メンソールは初心者でも味わいやすいからね」

結衣「どうだい、ちなつちゃん。初めての一服は」

ちなつ「なんだかすごくオトナな気分がします…」

京子「ちなつちゃん、なかなか似合ってるよ」

結衣「気に入ってもらえたかな」

ちなつ「はい！初めてのタバコを結衣先輩直々に教えてもらって

　　　　チーナ感激です！」

――

結衣「それはよかった。記念にちなつちゃんにはこれをあげるよ。あと、

　　　ライターもね」

ちなつ「いいんですか！？」

結衣「ごらく部に喫煙仲間ができて私も嬉しいよ」

京子「これで心置きなく部室で一服が楽しめるなー」

結衣「今度、学校の裏にある公園に吸いにいかない？朝の冷たい空気の

　　　中で吸うとまた格別なんだよ」

ちなつ「ぜひご一緒させてください！」

京子「ちなつちゃん、夕陽の差し込むロマンチックな雰囲気の中で京子先輩と

　　　一服しないかい？」

ちなつ「結衣先輩と一緒がいいです」ｷｯﾊﾟﾘ

京子「即答！？」

ｲﾔｰﾏｲｯﾀ　ﾕｲｾﾝﾊﾟｲｽﾃｷﾃﾞｽ　ｷｬｯｷｬｯ

あかり「空気だよぉ…」

あかり「しばらくごらく部はお休みしようかな…」

――

数日後　放課後　ごらく部

ちなつ「やれやれ、今日も疲れたなぁ」ｶﾁｯ

京子「ちなつちゃん、すっかり馴染んでるね」

ちなつ「中学生は色々と気苦労が多いんですよ」ﾌﾟﾊｰ

京子「なんかサラリーマンのおっさんみたいだね」

ちなつ「もう京子先輩ったら！私はピチピチの中学1年生ですよ！」

結衣「あれ、ちなつちゃんタバコ変えた？」

ちなつ「はい！結衣先輩おすすめのに変えてみました」

結衣「キャスマイどうかな。吸いやすい？」

ちなつ「すごく吸いやすいです！」

結衣「ちなつちゃん、メンソもレギュラーもいけるんだね」

――

櫻子「こんにちはー！」ｶﾞﾗｯ

向日葵「けほっ…。何か煙いですね」

京子「おう、櫻子ちゃんにひまっちゃん。いらっしゃい」

櫻子「わっ、歳納先輩タバコ吸ってる！かっこいーッ！」

向日葵「えっ、タバコ？」

京子「タバコの良さがわかるとは、櫻子ちゃんはオトナだなぁ。よし、

　　　京子たんイチオシのタバコを分けてあげよう！」

櫻子「ホントですか？わーい」

向日葵「ちょ、櫻子。タバコなんて…」

ちなつ「向日葵ちゃんも一本どう？」ｽﾊﾟｰ

向日葵「吉川さん…」

――

京子「違いのわかる櫻子ちゃんにはラッキーストライクがおススメだ！」

櫻子「おー、なんかかっこいい！」

京子「ロックンロールにキメるならラキストが一番！」

櫻子「これ、どうやって吸うんですか！？」ﾜｸﾜｸ

向日葵「さ、櫻子！いけませんわ、中学生がタバコだなんて…」

結衣「まぁまぁ。大目に見てあげてよ、古谷さん」

向日葵「船見先輩まで…」

――

向日葵「（赤座さんが最近ごらく部に行かなくなった理由がわかりましたわ…）」

向日葵「（とにかく、何とかして櫻子を止めないと…）」

向日葵「櫻子！もしタバコを吸うなら、次の生徒会副会長は私で決定ですわよ」ﾋﾞｼｯ

櫻子「な、なんだってー！」

向日葵「当然ですわ。タバコを吸うような不良に副会長は務まりませんわ」

櫻子「ぐぬぬ…」

向日葵「杉浦先輩たちにも報告させてもらいますからね」

櫻子「ちぇっ、わかったよ…」

京子「あはは、櫻子ちゃんにはひまっちゃんっていう保護者がいるから仕方ないか」

――

生徒会室

向日葵「櫻子の喫煙は阻止しましたが、ごらく部のみなさんをあのままにしておくのは色々と問題がありますわね」

向日葵「ここは一つ、杉浦先輩の力を借りませんと…」

向日葵「杉浦先輩、ちょっとよろしいですか？」

綾乃「何かしら？」ｽﾊﾟｰ

向日葵「」

綾乃「あ、これは…これは違うのよ！別に歳納京子がタバコを吸ってるから私もまぜてもらおうとか、そういうのじゃなくて…」ｱﾀﾌﾀ

向日葵「私も、しばらく生徒会をお休みさせていただきますわ…」

おわり