たとえ不幸でも・・・神無月の章
12/19更新です。もう少し書くとは思います。
そんな進んでないですが、どうぞどうぞ
人物紹介はまた後で
10月、ようやく残暑と別れを告げ、晴れの日には秋らしい過ごしやすい日が続く一年のお休みのような月。かと思えば、一雨ごとに冬の訪れを感じさせる少し寂しい季節だ。
だがこの時期は、山々は赤や黄の色を付け足され見るものの心を動かし、色とりどりの果物や金の穂は人々の腹と心を満たしてくれる恵の時期でもある。
急に冷え込んで体調を崩すことも多々あるが、精神的な安らぎは誰の心にも等しく与えられることだろう。たとえそれが来年の春に受験を控えた学生だろうと、気晴らしにほんの数分外を眺めて木々の色が変わるのを楽しむくらいの余裕はまだあるはずである。
提督「だけどお前らは少し楽しみ過ぎだな。」
天龍「面目ねえ…」
加古「うぅ…眠いのに頭痛いし体熱いし…」
初雪 ムキュー
ゴーストデストロイヤーズ(自称)2人に加え、天龍が熱を出して倒れてしまったのだ。何でも、星が綺麗だとか言って寒い中上着も羽織らずに空を眺めていたらしい。確かにここら辺は街灯が立っていない上に街明かりも届かないので天体観察にはもってこいではあるのだが、冷たい夜の海風に吹かれてはこうなるのは割と自明のことである。
古鷹「もう、日中はまだいいけど夜は冷えるから気をつけてってあんなに言ってたのに…ただでさえ夜戦もして帰って来てから鎮守府ウロウロしてるっていうのに。」
加古「わ、悪いねえ世話してもらって。」
古鷹「本当だよ、しかも提督の手まで貸してもらってるんだから。ちゃんと反省してもらわないと困ります。」
3人「ごめんなさい…」
提督「まあ俺は病人食作って食わせるだけだから大した手間じゃないけどな。」
古鷹「それでもです!」
提督「あ、はい…」
何故か怒られてしまった。
コンコン
ガチャ
睦月「失礼しま〜す。提督、来ましたよ〜。」
提督「お、待ってたぞ睦月。悪いな、急に呼び出して。」
睦月「ううん、このくらい大丈夫です。それより天龍さん、加古さん、初雪ちゃん大丈夫?」
天龍「睦月か、みっともねえ所見られちまったな。」
睦月「本当ですよ〜、いつもあんなにかっこいいのに台無し〜。加古さんも〜。」
加古「あはは…人間偶には力を抜かないとね〜って。」
睦月「そうじゃなくて、いつもグデッとしてるのに余計かっこ悪いですよ。」
加古「古鷹〜この子可愛い顔して割と毒吐いてくるよ〜。」
古鷹「自業自得です。」
加古「無慈悲だ〜、夜になったら加古さん凄いのに〜。」
睦月「初雪ちゃんは大丈夫?すごく辛そう。」
初雪「はぁ…頭がガンガンするし…おまけに気持ち悪い…」
睦月「んー、熱もひどいね。タオル冷やしてくるから、ちょっと待ってて。ついでに汗も拭かないと。」
睦月「天龍さんはタオルぬるくなってないですか?それとも汗拭きます?」
天龍「タオルだけ頼む、汗はあまり出てないからいい…」
加古「古鷹〜レスポンス返ってこない上に空気扱いされたよ〜。」
古鷹「はいはい、加古は私が面倒見てあげるから。」
意外にも有能ぶりを見せつけた睦月にちょっと驚いた。何となく天龍と仲良いみたいだからいいかなって思って呼んだだけなのだが、これは大当たりだったらしい。まあ、10人の妹達を束ねる(?)長女なのだからこのくらいは慣れたものなのかもしれない。
提督「それじゃあ俺は執務室に戻るから、何か要り用だったら言ってくれ。睦月、古鷹、後は頼んだぞ。」
古鷹「はい、任せてください。」
睦月「はあ〜い、司令官も頑張ってくださいね〜。」
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提督「水無月、これ付箋で区切ってあるからそれに従って輪ゴム掛けておいてくれ。」
水無月「うん、了解。よいしょっと・・・」
提督「次は紹介依頼片付けるか、えーっと確かこの辺に・・・」
菊月 ズイ
提督「お、ありがとな菊月。さてと、ここのを紹介して欲しいという今日の物好きさん第1号は何をお望みかな・・・」
男湯と女湯を間違えるような艦娘はいませんか?
提督「いるかんなもん!!どんなピンポイントドジっ娘だよこのスケベ野郎!」
菊月 ドスン
何やら机の端から鈍い振動が伝わってきた。
提督「え、ああ別にシュレッダーはいらないぞ?」
だが、菊月はそれを聞かずスイッチを入れた。どうやら使いたくて堪らないらしい。
提督「まあいいけどな、ほら。」
紙を差し出してやると、それを受け取った菊月は早速シュレッダーの口に挿入した。
提督「楽しいのか、それ?」
うんともすんとも言わないが、少し口角が上がっているように見えた。ざまあみろとでも思ってそうな気がするが、どうやら純粋に楽しいらしい。
提督「さて、次だ・・・胃に優しい子はって正露丸かよ!」
提督「珍しく多いなって思ったらこれかよ・・・後は何だ、降霊術ができる?UMA好き?ゲテモノメイカー?」
提督「やめた。今日寄越された紹介状出してくれ、依頼書は全部シュレッダー行きにしてそっち片付けよう。」
何だか妙にウキウキしているように見える菊月に紙の束を渡して、彼女が予め置いて置いてくれた紙を手に取る。
菊月 スッ
提督「ん、どうした?」
菊月が一枚だけ残して戻してきた。見れば先ほどの正露丸のやつだ。何故そんなことをするのかと首を傾げると、とある一文を指差してきた。
提督「何だ・・・うちの曙と交換してください…」
提督「はは〜ん、新人だな。」
大方豆腐メンタル持ちなのだろう、曙との付き合い方がわからずにストレスを抱えてしまっているとかそういった感じではないだろうか。
提督「本当はいい奴なんだけどなぁ。ま、新人にいきなり慣れろなんて言うのも酷だわな。」
出来ればどうにかしてあげたいものであるが、そんな胃に優しいなんて言われても甘やかして欲しいのかただ曙よりマシ者を求めているのかわからない。どうしたものかと考えていると、一つ妙案が浮かんだ。
提督「菊月、悪いが曙を呼んできてくれるか?」
水無月「あ、丁度こっち終わったからボクが行ってくるよ。」
提督「そうか?じゃあ水無月にお願いしようか。菊月は代わりにそこの棚から書類一式持ってきてくれ。」
妙案と言ったが、その実別に大したことはない。ただ曙と引き換えに曙を送る、それだけのことだ。もっとも、不幸鎮守府の曙は普通の曙と違って胃に優しいことこの上ない。
ガチャ
水無月「連れて来たよ〜。」
曙「曙、只今参りました。何かご用でしょうか?」
提督「随分早かったな。」
水無月「えへへ、すぐそこでバッタリ会ったんだ。」
提督「そうか、ありがとな。でもって曙、お前に移籍の話があるんだ。」
曙「え、本当ですか!?」
提督「ああ、新人の所みたいなんだが丁度お前にぴったりの場所が見つかってな。どうする?俺はお前の意思を尊重するけど。」
曙「こんな私を必要としてくださる方でしたら、はい喜んで!」
提督「じゃあ決まりか、紹介状は後で渡そう。移籍の具体的な日時もその時までに決めておくよ。」
曙「はい!今までお世話になりました!寂しくなりますが、移籍先でも精進いたします!」
提督「お前が嬉しそうで何よりだ。よし、今日はちょっとばかしパーティーの計画でも立てておいてやるかな。」
曙「本当ですか!光栄であります!」
水無月「パーティーやるの!?わーい、楽しみだな〜。」
提督「折角だからな、別れ際に花を持たせてやりたいだろ。な、菊月。」
突然話題を振られた菊月だが、この時はちゃんと頷き返してくれた。
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今までのワンパターンな流れ的にお気づきの方も多かろうが、本日、いや今月の補佐艦担当は菊月と水無月だ。(別に扱いに困ったから二人まとめたわけじゃないんだからね!)
知っている方も多いだろうが、菊月は九月の異名であり、つまるところ姉の長月と名の意味は同じだ。(某人気アニメ映画のあの五月姉妹的な感じ)
だが彼女は先月補佐艦の日を増やしてくれとは言ってこなかった。気になって一体どうした事かとお伺いを立てたところ…
菊月「私が一緒だと、長月の仕事を取ってしまうだろ。折角頑張ろうとしているのに、そんな無粋な真似ができるか。」
とのご返答があった。全く大した姉想いである。思わずホロリときてしまった。
だが彼女は、当然提督はその名が九月のことを意味するのだと知っていると思っていたので、彼女が名乗りを上げないことに何かしらツッコミを入れてくれるはずだと信じていたらしく、それが無かったことに只今絶賛御立腹中である。
それ故のあの執務中に無言を貫き通した態度であり、提督は折角築けた良好な関係を崩してしまったことについて深ぁ〜く反省している。そして、お詫びに今更ながら彼女のシフトを多めに組んだというわけだ。
一方の水無月は、自分の名の月が既に過ぎ去ってしまっていることを残念に思っていた。着任したのが7月のことなので致し方無いことではあるのだが、他の姉妹全員にはチャンスがあることが羨ましくてたまらなかったらしい。
そこで、だったら語感が似ている10月でもいいじゃないかと思い立って名乗りを上げたのだそうだ。
提督としては、そんな水無月の思いを無下にすることなどできるはずがなく、その後なんだかんだとあって菊月と水無月が毎日二人でこの10月の間の補佐艦を担当することになったのだ。
これに対して他の姉妹に何か物申し上げられるではないかと思ったが、筆頭の卯月は基本的にシフトを無視することが多いし、他の者達もやりたければ勝手に来てやるという形に落ち着いたらしい。普段の自由度の高さがここにきて役立ってくれたようだ。
提督「それで、菊月さん。そろそろ許してくれる気にはなりましたでしょうか?」
菊月「・・・」
菊月 バッ!
提督「やっぱそうか…」
ガク
ちょっと逡巡を見せた彼女はすぐさま腕を胸の前で交差させた。完全に否定された形である。
提督「できれば許しを得たいんだけどなぁ…何をすれば許してくれるんだ?」
菊月 ぷい
今度はそっぽを向かれてしまった。これではまた白旗を上げざるを得ない。だが、今日の提督は一味違った。ちょっとせこいが秘策を用意してきたのだ。
提督「あ、そうだ。昨日洋梨のパイを焼いたんだよな〜。今日のオヤツにみんなで食べようかと思ったんだけど、菊月は俺の作ったのなんて食べてくれないよな〜。」
菊月 ピク
究極の秘密兵器、デザートである。菊月くらいの年齢の少女であればその名を耳にしただけで反応せざるを得ないであろう、甘い物はどんな時であっても体が欲してしまうものだ。
提督 (さあどうだ、流石に許してくれよ!)
水無月「洋梨パイ、ボク初めてだけど食べた〜い!」
提督 (よし、水無月が食いついてくれた。)
提督「水無月は食べてくれるか?」
水無月「もちろん!司令官の料理、ボク好きだもん。きっくーは食べないの?勿体無いなぁ〜。ボクが代わりに食べちゃおうかな〜。」
水無月の援護射撃もくらった菊月だが、依然としてそっぽ向きっぱなしである。だが、肩が小刻みに揺れているので頭の中は揉めに揉めていることだろう。
菊月「・・・だぞ…」
提督「?」
菊月「食べ物で釣るなんて、卑怯だぞ…。」
水無月「あれ、きっくー泣いてる?」
なんだか目が赤い。涙腺の辺りもなんだかキラキラしているみたいだ。
菊月「私が、嫌だと言えないの、知っておいて…この、卑怯者ぉ…!」
菊月「許す、許すから、私も食べたい…!」
ついに菊月は、こらえ切れずしゃくりあげ始めてしまった。なんだか物凄ぉく罪悪感を感じる。彼女が普段滅多に泣かないからだろうか、それともその表情か。あるいは横から「うわ、泣かせた〜」とでも言いたげな視線を送る水無月のせいか。
提督「ああ悪い悪い、そんな頑張ってくれてるお前にだけ食べさせないわけないだろ。本当に嫌だって言うなら別だけど、俺はちゃんとお前も俺の作ったやつを喜んで食べてくれてたの知ってるから。」
菊月「むうぅ…嵌められた。」
提督「悪かった、でもお前と仲直りしたかっただけだからさ。」
菊月「・・・うう、このことは絶対許さない。」
提督「なんと!?」
菊月「・・・うそだ、ばぁか。」
なんとなく彼女の年相応な部分が見れた気がして、この時はその拗ねた顔がとても可愛らしく見えた。
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提督「さてと…そろそろ昼飯にするか。二人はどうする?炒飯で良ければだけど、俺の部屋で食べてくか?」
菊月「別段、誰かと食べる約束もしていない。折角だからご相伴に預かろう。」
水無月「あ、ごめんね司令官。ボクはふみちゃんと間宮さん行くって約束してたから。」
提督「お、そうか。じゃあまた後でな。」
水無月「うん、パイ楽しみしてるね♪」
手を振りながら文月の下へ向かう水無月に手を振り返して、菊月と共に自室に向かう。顔からはわからないが、率先して前を行くあたり随分と乗り気らしい。そのことがなんだか嬉しくてつい勝手に頭を撫でてしまった。
菊月「む、なんだ司令官。」
提督「いや、別になんでもない。軽いスキンシップだよ。」
菊月「なんだか言い方が親父臭い気がする。」
提督「ちょ、それは酷くないか!?俺まだ四十路にもなってないぞ。」
菊月「なら普通にしていろ、そうすれば少しかっこいいんだ司令官は。」
提督「え、本当か?普通にしてりゃモテる?」
菊月「知るかそんなこと、私に聞くな。大体もう一応妻帯者なんだからこれ以上増やしてどうする!」
提督「いや〜男ってのは幾つになっても可愛い子からチヤホヤされたいこれまた悲しい生き物なんだよ。」
菊月「これだけの女性に囲まれて、みんなから敬意を払われているんだ。それで十分だろう。」
提督「御もっとも、確かにちょっと贅沢だったな。」
下手をすれば鎮守府なんて息の詰まる職場にすぐ早変わりだ。道行く女性達、つまり所属する艦娘全てに白い目で見られるなんて地獄絵図は想像することすら恐ろしい。それに同性の者が周りにいないなんてのは、新米だった頃の2番目の苦痛だったような気がする。(生えある1番目は叢雲の存在だったはずだ。)
提督「そういや菊月は?男にモテたいとかあるのか?」
菊月「無い、というかわからないのが本音だ。私にも異性と結ばれて子を残したいという生物的な本能があるのかどうか、それすらも怪しい。戦うことしか、ロクに学んでいないからな…」
提督「そうか…」
まだ彼女の心が未熟だからか、それとも本当にそういうものなのかわからないが、なんだかあまり聞いていい気はしなかった。これを聞いた菊月がどう思うのかは別として、少し、いやとても可哀想に思えた。人間とてそう変わらないかもしれないが、定められたことにしか自信を持てないのは酷く不幸な気がする。
菊月「同情しているのか?」
提督「まあな。」
菊月「そう気にしなくていい。私は私だ。それに、異性からの評価なんて司令官のものだけで十分だ。」
誇らしげにそう宣言した彼女を見て、少し涙腺が緩んでしまった。
提督「うぅ…菊月ぃ…」
ギュッ
菊月「な、なんだいきなり!はなせ!そういう所がダメだと言っているんだ!」
引っぺがそうとする彼女に御構い無く、そのままの状態を維持しようとした。涙を見られたくなかったのもあるが、彼女にそこまで思ってもらえていたのかと思うと嬉しくてたまらなかった。
夕張「あれ提督、こんな所で何してるんですか?」
提督「お、夕張じゃないか。なんか久しぶりだな。只今昼飯食べに部屋に戻る最中だ。」
菊月「じゃあなんで抱きつく必要があるんだ。いい加減離れろ!」
かなりしばらくぶりの登場でお忘れの方も多いかもしれない、緑がかった星色の髪の少女に声をかけられた。工廠にでも行っていたのだろうか、珍しくつなぎ姿だ。
夕張「へ〜、菊月ちゃん随分提督に懐いたのねぇ。」
菊月「だ、誰が懐くか!じゃれつかれているだけだ!」
確かに、周りから見ればかまちょな飼い主が嫌がる猫と無理やりスキンシップをしようとしているように見えるかもしれない。そういえば往来のど真ん中だったことに気づき、このままでは互いにまずかろうと菊月を解放する。
提督「明石のとこにでも行ってたのか?」
夕張「そうそう、なんでも新兵器の搭載試験がしたいとかで呼ばれたの。」
提督「またあいつは、懲りないな〜。」
夕張「満載の私でも載せられる小型カタパルトを作ってるらしくて…でも、なかなか上手くいかないみたい。」
提督「仕方ないな、そう簡単に搭載可能装備が増やせるわけない。やりたきゃちっちゃい空母作って引っ張ってくしかないだろうな。」
夕張「だとすると、結果としてますます足が遅くなっちゃうか〜。」
提督「まあ夕張は今のままで十分役立ってくれてるから、別にそんなことする必要無いけどな。」
夕張「え、本当に?本当にそう思う?」
提督「じゃなければゲーセンの経営で忙しいのに態々出撃させないさ。」
夕張「えへへ、そう言われると流石に照れちゃいますね。」
頰を赤らめながら照れ隠ししようとしているあたり、本当に照れているようだ。この頃はあまり褒めるような機会も無かったので、その反動もあって有頂天になったのかもしれない。
グーキュルキュル
もう少し話そうかと思っていると、下の方から空腹を訴える可愛らしい音が聞こえてきた。
菊月「司令官、そろそろ立ち話もその辺にしないか…」
提督「え、ああ悪い悪い。待たせてしまったな。」
物凄い勢いで顔を真っ赤にした菊月に謝ると、部屋に戻ることにした。これ以上音を聞かれてしまうのは流石に恥ずかし過ぎるだろう。
提督「そうだ、夕張も一緒に食べるか?炒飯でよければ馳走するけど。」
夕張「本当!行く行く行きます!私も朝から動き回ってたからお腹ぺこぺこ〜。」
提督「OK、なら早めに部屋に行こうか。とっとと行って準備しないと。」
夕張「それにしても嬉しいな〜、提督がランチに誘ってくれるなんて。」
提督「今日は二人の帰りが遅いからな、こちらとしても寂しい昼食にならずに済んで良かったよ。」
扶桑と山城には悪い気もするが、偶にはちゃんと他のメンバーとの交流も持たねばないらない。帰ってきたら思う存分労うと心に誓って、今は目の前の2人をもてなすことに専念した。
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水無月「う〜ん!この洋梨パイ美味しいよ司令官!」
夕張「この洋梨の水々しさと生地のサクサク加減がクセになるわね〜♪」
提督「そうか?そりゃ良かった。ずっと前に作って以来だったから、そう言ってもらえて安心した。」
八つ時、折角ならおやつも一緒にと誘って夕張も提督のパイに舌鼓を打っていた。今思えば、夕張に手製の菓子を振る舞ったことは今回が初めてかもしれない。
菊月「司令官、もう一切れいただいても良いか?」
提督「ああ、構わないぞ。そんなに気に入ったか?」
菊月「甘くてとても美味しい、いつ何時でも食べたい味だな。」
提督「お褒めの言葉、感謝するよ。お茶淹れてくるから、勝手に取っててくれ。」
菊月「ん、すまないな。司令官ばかり働かせて。」
提督「自分の部屋で踏ん反り返るバカがあるかよ。今はオフの時間で、お前たちは客人だ。」
夕張「あ、私砂糖多めでお願いね。」
水無月「ボクのはミルク入れて欲しいな。」
菊月「私もミルク入りがいい。」
提督「了解、少し時間かかるから待ってな。」
湯を沸かすために席を立つ。この際だから新しく買った茶葉でも開けてしまおう。良いスイーツには良い茶をだ。
提督 (なんて、ちょっと自画自賛か。)
提督 (そういや、風邪ひきさん達はどうしてるかな。お粥ちゃんと食ってたらいいんだが…)
古鷹と睦月が食べさせておいてくれるというので、置いてそのまま行ってしまったが、やはり少し気掛かりだ。逐一報告してもらえばいいのかもしれないが、2人にそこまで負担をかけるのは気が引けた。
提督 (飲み終えたらリンゴすり潰して持ってくか、残りの仕事は夕方からやれば終わりそうだし。)
提督 (あ、でも初雪は無理か。かなり辛そうだったし…)
提督 (多分水分ちゃんと摂れてないよな、ポカリは冷蔵庫に入ってないから自販で買わないと…)
水無月「司令官、どうかした?」
いつの間にか横に立っていた水無月がこちらの顔を覗き込んでいた。随分と心配そうな顔ををしている、顔色でも悪かっただろうか。
提督「何でもない、ちょっと考え事。」
水無月「そう?でも何だか心ここにあらずって感じだったよ。もしかして疲れてるんじゃない?」
提督「本当に大丈夫、心配されるほど参ってないさ。それに俺なんかよりずっと心配されてる奴らがいるからな。」
水無月「そっか、そうだったね。あ、そうだ何か手伝うことない?」
提督「ん、じゃあそこにカップあるからそれ持って行ってもらえるか?もうすぐできるから。」
水無月「うん、任せてよ司令官♪」
水無月はこういう事に異様に聡い。人の微妙な表情の変化にすぐ気付くし、しかも気遣いも上手いときた。おまけに自分の笑顔にどれだけの力があり、何ができるのかを知っている。菊月ほど事務能力があるわけではないが、彼女がいると日々のルーチンも精神的にかなり楽だ。
それから、4人はゆっくりと茶を飲みながら他愛もない話で盛り上がった。おかげで病人のことを危うく忘れかける所だったが、秋晴れの空の下で笑いあうこのひと時は戦いとは最も程遠い時間だった。
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コンコン
山城「ただいま、作戦が終り・・・また外見てたの?」
提督「お、山城か。おかえり、もう帰ってくる時間だったんだな。」
山城「何よその言い方、まだ海の上にいれば良かった?」
提督「そんなこと言うわけないだろ、いつの間にか時間が経ってて驚いただけさ。」
山城「この頃ボーッとしすぎなんじゃないの?」
提督「まさか、仕事に手を抜いたりしないって。」
山城「それはそうだけど…」
最近、提督の様子がなんかおかしい気がするのだ。ひと気がないとよく窓の外を見つめていたりする。考え事にしては呆けた顔をしているし、目の焦点が合ってない。確かに提督の言う通り業務には差し支えていないが、筆を持っている時もなんだか覇気が無いように見える。
山城「もしかして疲れてるんじゃないの?」
提督「いや、それはないな。頭は冴えてるし、倦怠感も何もない。それよりだったら帰ってきたばかりの山城の方が疲れてるだろ?このまま残るなら立ってないでそこに掛けてていいぞ。」
なんか妙に切り返しが上手くなった気がする。隙が無いというか、ガードが固くなったというか。
でも、どことなく強がっているようにも見えた。人に心配はさせまいとしている。
山城「ねえ、提督。」
提督「なんだ?」
提督「こっち来て。」
提督「どうした急に、肩でも揉んで欲しいのか?」
山城「いいから、こっち来る。」
魅力的な問いを敢えて無視して、再三提督を呼ぶ。これ以上はまずいと思ったのだろう、慌ててこっちに来た。少し言い方を間違えたと反省だ。
山城「座って。」
提督「わかった。」
提督「それで、どうかしたのか?」
山城「横になって、膝貸してあげるから。」
提督「へ?」
毎度毎度思うのだが、何故こうも予測していなかったことを言われるとこんな間抜けな顔になるのだろうか。これさえ無ければ彼はもっとずっといい男でいられると思うのだ。まあ、悪い虫が付くのも困るので敢えては指摘しないでおくが。
山城「膝枕してあげるって言ってるの・・・それとも何、私じゃ嫌なの…?」
提督「ああいやすまない、そんなわけじゃなくて…それじゃあ、失礼して。」
少しだけ演技してみたが、もの凄い効果抜群だ。か弱い系乙女に対して免疫が無さ過ぎるのではなかろうか。
だがまあ良いだろう、自分の好きな男はこういう男なのだ。今みたいな表情をしても何も感じない冷徹な男に自分がなびくはずがない。
山城「どう?」
提督「すごく気持ちいい。柔らかくて、あったかで。」
山城「もうちょっとこっちに来ていいのよ?真ん中じゃ安定しないでしょ?」
提督「良いのか?」
山城「提督だったら…」
提督「じゃあお言葉に甘えて。」
そう言うと、遠慮がちに耳が腹部に触れるくらい彼は頭をずらした。
提督「寝やすい。」
山城「でしょ?」
提督「それにすごくいい香りがする。潮の匂いに混じって山城の匂いが。」
山城「あまり嗅がないでよ、動いた後でまだお風呂に入ってないんだから。」
提督「はは、そりゃ無茶な注文だ。でもありがとな、真っ先に来てくれて。」
山城「報告までが任務だもの、それに被弾もほとんどなかったし。」
提督「へえ、珍しいこともあるもんだな。運が無いわけじゃないのか。」
山城「む、ひどいこと言うわね。」
提督「だっていつも必ず小破して帰ってくるもんな。中破大破も普通だし。そう言えば報告に来てくれたのは随分久しぶりか。」
山城「仕方ないでしょ、防御はどうにもならなかったんだから。」
提督「そうだったな。まあ、言っておいて何だがあまり気にしなくて良いぞ。帰ってきた時の姿想像すると毎回ビクビクさせられるけど、誰も責めるつもりは無いから。」
山城「もう・・・提督だけよ、そう言ってくれるのは。」
そう、今までは何かにつけては散々あげつらわれて、上手くいかないことも全部それのせいにされてきたが、彼だけは受け入れてくれた。どうにもならないなら、それを見越して作戦を立てれば良いと。
被弾前提で立てられる作戦計画に最初は反発したものだが、今はおかげで随分と心が楽になった。提督の計らいで他のメンバーからバックアップに理解と賛同を得られていることもその要因だろう。
提督「なあ山城…」
山城「何?」
提督「お前本当胸大きいよな。」
山城「な、急に何言ってるのよ!」
提督「いや、だってこうして見ると顔が…あいだだだ!!目を抑えるな目を!」
山城「この変態!今日の提督なんか変よ!?」
提督「痛た…う〜んそうだな、やっぱ山城の言う通り疲れてんのかもな。思考回路がちょっと変な気がする。」
提督「まあ、こうしてれば時期に良くなるさ。」
そう言って提督は頰を腹部に当て、鼻先を服にうずめた。いつもと違って大胆な行動に頰が火照るほどに体温が急上昇するが、やはりどうもおかしい。彼はちゃっかり居座る宣言ができるような人では無いはずだ。
山城「地下で、何かあったの?」
提督「・・・」
反応は無かったが、ギクリと体を硬直させたのが見え見えだ。目は口ほどに物を言うというが、彼の場合全身に出る。
地下というのは、例の化け物事件の際にこの鎮守府とつながったという大きな地下空間だ。提督は先月の末にまたそこへ行った。窓を眺めるようになったのも確かそのあたりからだ。
山城「そろそろ、話してくれても良いんじゃない?」
提督「・・・悪い、言ったらダメな気がする。」
山城「どうして?」
提督「・・・止めてくれ、俺が隠し事下手クソなの知ってるだろ?山城にこれ以上何か言ったらボロが出る。」
山城「隠し事、してるの?」
提督「少なくとも、聞かなくともお前達に不利益があることじゃないはずだ。当然、浮気だの不倫だのとは無関係だよ。」
山城「浮気してるかどうかなんて私聞いてないけど。」
提督「どうせ隠し事と聞いて心配するのはそこだろ?そうやって疑うなら今度地下に行った時俺の服を調べても良いぞ。他の女の髪なんて付くはずないし、匂いって言ったってホルマリンか消毒液の匂いだ。」
どうやら嘘をついてはいないようだ。彼は隠し事が苦手なら嘘も下手だ、目を見れば即刻見通せる。だから嘘では無いとわかった。
山城「わかったわ、でも始めから疑ってなんかないわよ。」
提督「え?」
山城「提督のこと、いつでも信じたいって思ってる。私世界で1番提督のこと信じてるんだから。」
提督「へぇ、扶桑さんより?」
山城「妹だからって劣るとは限らないでしょ。」
提督「ごもっとも、でも扶桑さんが聞いたらなんて言うかな。」
山城「いいの、姉様は大切な家族で最高のライバルなんだから。」
提督「そうか。まあそのなんだ、ありがとう。」
そう言った彼は、急に体を起こしたかと思うと強引にこちらの唇を奪った。決して嫌だったわけではないし、こちらも全く拒もうという意思はなかった。ただ少し急で驚いただけである。だが、触れた彼の唇はとびきり優しかった。
提督「・・・俺のこと気にしてくれてありがとな、でも俺だって隠さないといけないことくらいあるんだ。」
山城「わかった、もう追求しないわ。」
提督「恩にきるよ。」
安心したのか、彼はまた膝の上に頭を乗せてきた。いい加減執務に戻らなくてもいいのかと思ったが、なんだか甘えたがっているように見えて何も言わないでおいた。
ここのところ触れ合うことも少なかったので、姉には悪いが普段と一味違う提督をこの期にめい一杯堪能させてもらうことにした。
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提督「もしもし、こちら提督。只今会議中につきまた後ほどご連絡していただければさいわ・・・」
叢雲『何よその出て早々他人行儀な態度は!着信画面に名前出るでしょう!?しかも会議中ってあんたこの時間仕事してないし、いつも電話掛けて寄越すじゃない!つくならもっとマシな嘘をつきなさいな!』
提督「はは、冗談だって。お前は本当冗談通じないよな。」
叢雲『知ってるわよそんなこと!態々そんなことする理由がわからないのよ!』
提督「良いだろ偶には。というか、いくら電話越しでも今夜だからな?俺の鼓膜痛くなるくらい怒鳴られたら流石に迷惑だって。それに、怒鳴ると良い女が台無しだぞ?」
叢雲『あんたがミュートで対策してるの知ってるのよこっちは、それと余計なお世話。』
提督「流石俺の専属秘書艦、お見通しだったか。」
叢雲『元ね、元。それを取って欲しかったらさっさと帰って来なさいよ。』
只今1日1回のお楽しみの時間である嫁第1号の叢雲との電話中だ。(その呼び方をすると激怒されそうなので彼女には内緒だが) 告白を受けて以来、約束を守って毎日欠かさず続けている。
提督「おいおい、任期はまだまだ続くんだぞ。いつの間にか半年過ぎようとしてるけど。」
叢雲『こっちはやっと半年経った思いよ。』
提督「春が待ち遠しい?」
叢雲『わかりきったこと態々聞かないでよ。』
提督「だって気になるだろ。なかなか顔見て話す機会も無いんだから。」
だが、彼女は結局そのくらい察しろと言って答えてくれなかった。相変わらずプライドが高い。まあ今回は珍しく向こうからかけてくれたのでそれでチャラにする。
提督「それで、何かあったのか?」
スピーカーが急に黙った。多分図星だったのだろう、いきなり指摘されて驚いたらしい。
提督「・・・そう身構えるなよ、珍しくお前からかけてくれたもんだから少し気になっただけだ。何も無いなら、それでいい。」
叢雲『はぁ、あんたって無駄に勘が良いわよね。偶に。』
提督「偶には余計だろ。あと無駄も。」
叢雲『普段は鈍感の癖に何を言うんだか・・・』
画面の向こうで叢雲がやれやれと言いたげなジェスチャーをしている絵が頭に浮かんだ。おそらく今の想像、多少は的を射ているはずである。
叢雲『この頃、みんなの様子がおかしいの。』
これまた随分と穏やかではない。聞いた瞬間頭の中が一瞬で先程の雰囲気から切り替えられた。ボリュームを上げてしまいそうになった声をすんでのところで抑えつけて。冷静さを装う。
提督「具体的には?」
叢雲『何て言うのかしらね…なんだか今のうちの司令官にみんなべったりなの。』
提督「べったり・・・つまり仲が良いってことか?なら別に構わないんじゃないか?」
少しジェラシーを感じるが、そのくらいのことであれば特に問題は無いだろう。寧ろ関係が良く無いほうが一大事である。
叢雲『うーん、そうじゃなくて・・・』
提督「何か違うのか?」
なかなか煮え切らない様子の彼女だが、こういう時あまり提督は助け舟を出してやることができない。だから黙って彼女の返答を待ち続けた。
叢雲『誰かがべったりとかじゃなくて、本当にみんな私以外そうなの。しかもちょっと度が過ぎてると言うか、なんかあんたのことすっかり忘れたみたいで…』
叢雲『もう、あの司令官しか目に入らないとかそんな感じかしら。あまりよくわからないけど、そんな感じがするの。』
提督「そうか…」
なかなか漠然とした話ではあるが、叢雲の口ぶりからしてただごとではないことは何となく伝わってきた。
提督「まあ何だろうな、代理のことをアイドルか何かみたいに思ってるんじゃないか?顔も悪くないって言うし、ちょっと人気が出すぎただけだと思うぞ。」
提督自身あまり認めたくはないが、だからと言って何か良くないことの前触れであるとか、代理が何かしているとは到底思えない。それにあのオドオドした男に何かを企むような度胸は無さそうだ。
叢雲『そう、そうかも知れないわね。少し考え過ぎたのかも。』
提督「もしも何かあれば、また教えてくれ。それがどうしようも無ければこっちに来ても良いから。」
叢雲『わかったわ、ありがとう。』
提督「自分の鎮守府のことは自分でってのもあるけど、嫁を助けるのだって当然の責務だからな。どんどん頼ってくれて良いぞ。」
叢雲『うん。』
提督「それじゃあお休み。また明日な。」
叢雲『ええ、お休みなさい。』
通話が切れた事を告げる音が聞こえるのを待って携帯を置く。
提督「べったりねぇ、昔の俺だったらハンカチ噛み締めてたかもな。」
なんて、少し古臭い気もするが。嫉妬の眼差しで代理を見ただろうことは間違いない。
提督「・・・何も無いなら良し、あればその時は…」
守らねばならない。失って良い物など、あれから一つたりとも与えられていないのだから。
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叢雲「さて、お風呂まだ開いてるかしら。早く入って寝ないと、吹雪にまたしかられちゃうわね。」
部屋に洗面道具を取りに行くために廊下を歩いていく。確か今日は間も無く遠征艦隊が帰投するはずだ、今なら十分間に合うはず。
チラリと、左手の指輪に視線を送る。だいぶ慣れてはきたが、やはり見るたびにどうしても心が温かくなる。
付けてもらった時の情景は鮮明にと脳に記憶されているので、今だってあの時の事がつい先ほどのことのように思い出せる。
まあ、それができるのは最近直に会っていないせいで余計に恋しくなってしまったのもあるのかもしれない。触れて欲しくて、触れられた時のことを思い出すのだ。
叢雲 (でもだからってこっちから会いに行くなんて…)
会いたかったから来たなんてそんな事を言えばきっと笑われてしまうかもしれない。可愛いと頭を撫でられるのは、自分は子供なのだと言われているようであまり素直に嬉しいとは受け取れないのだ。
叢雲 (まあ、そろそろ我慢出来なくなって向こうから来るでしょ。)
そんな保証は無いのに、会って早々どんな顔をするのか考えてしまうあたりやはり会いたくてたまらないらしかった。でもそう考えると自分だけこんなに想っているのではないかと思ってしまい、少し寂しく少し腹が立った。
それらを紛らわせるために早歩きをして部屋に向かうと、部屋の前に誰か立っていることに気がついた。
叢雲 (吹雪?何してるのかしら。)
叢雲「どうしたのよ吹雪、こんな所で突っ立って。」
俯いて黙って立っているルームメイトに声をかけるも返事が無い。近寄って肩を揺するがそれにも動じない。
叢雲「吹雪!ちょっとしっかりしなさいよ吹雪!聞こえてないの!?」
以前として無反応。顔をを覗き込むと、そこには完全に精気を失った表情があった。
若手司令「叢雲さん、どうかしましたか?」
叢雲「吹雪の様子がおかしいのよ、起きてるのに意識が無いみたいで。」
若手司令「それは大変だ、すぐに医務室へ連れて行かないと!僕、先生に連絡してきます!」
若い司令はすぐに医務室へと走って行こうとしたが、叢雲は彼の後ろ姿に異常を見つけ、見過ごす事も出来ずに彼を呼び止めた。
叢雲「待ちなさい!」
若手司令「っ…なんですか?急がないと吹雪さんが・・・」
叢雲「あんた、その後髪どうしたの?」
チョコレート色とでもいうべき明るい茶髪の彼の後頭部の毛は、まるで重油でもかけたかのように真っ黒く染まっていた。
若手司令「そんな、髪なんてどうでもいいじゃないですか。」
叢雲「いいから答えなさい!!」
若手司令「急にどうしたんですか?貴女らしくもない。」
自分の気がふれているとは到底思わない。だって、彼の僅かに顔をのぞかせたうなじは髪と対照的に異常なまでに血の気のない白色をしていたのだ。
叢雲「あなた、本当に人間…?」
若手司令「・・・フッ、フフフフフフフアハハハハハハハ…」
叢雲「何がおかしいのよ、いいからさっさと答えなさい。」
若手司令「そうですねぇ…」
笑い終えてこちらに視線を向けた彼の瞳を見た瞬間、背筋が凍った。何も恐怖する対象など写っていないのに、彼の急変した雰囲気に頭がアラームを出す。
若手司令「人間ですよ、死の直前まではね。」
最後に見たのは、一瞬にして変わり果てた若い男の醜い顔だった。
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ちゃんとしたのはまた後でになります。
頑張って更新ペース早めていきたいとは思ってますが、まとめて派の方々はまたお待たせしてしまうかもしれません。
追伸:水無月って菊月になんてあだ名付けるんでしょ。もっちーみたいなノリで付けちゃいましたけど…
にゃしい言わない睦月だったか思い出せずにまた読み直すということをしてしまったorz
寒くなってきて(自分だけかもしれませんが)手が思うように動かない状態で
文字を打つのが辛くなってきましたね。
最近増えてきたインフルとかにかからないことを祈ります。頑張ってください
ありがとうございます!早いですねぇ、びっくりしてしまいました。(^-^;
確かに、基本的に夜に書いてるものですから指が動かない時が出てきましたね〜、塗るカイロが欲しいなって偶に思います。
お気遣い感謝です、お互い気をつけましょうね
うちの睦月ちゃんはにゃしにゃし言わなかったような気がしますが、僕も確かめておかないと(おい)