2017-01-20 19:53:45 更新

概要

かな〜り短いですが、11月分こんだけにします、申し訳ない


前書き

大変遅れましたが、新年明けましておめでとうございます。今年も何卒何卒m(_ _)m

大変短くなってしまった11月分、12月もかなり短くなることでしょうが、3月ぴったりにはもっていきたいと思っている所存でありますのでご了承願います。

キャラ紹介は・・・

ご要望に応じて





11月11日



国民に愛されている細長い棒状のお菓子が四本並んでいるように見えるから、という安直な理由で決められた祝日でもなんでもない日。



元々は日本のすぐお隣の国のお菓子メーカーが販売している、パクリ疑惑がでるほど日本のそれにそっくりなお菓子の日としてお隣の国で流行ったものが、日本でも普及したのが由来である。



だが、お隣の国ではバレンタインデー、ホワイトデーに並ぶ一大イベントとして日本の比にならないほど毎年盛大に行われている。パクリ疑惑のある商品の方が現地の人々に愛されているというのは、なかなか皮肉なものだ。



だが、だからと言って日本でそこまで人気がないかと言われればそれも違うだろう。長いこと多くの人々に親しまれており、ポッキーの存在を知らない日本人はまず滅多にいない。チョコ嫌いでない限り、それを嫌いだという者もそうそういないだろう。





そんなことより、当鎮守府でも筆頭補佐艦殿の鶴の一声で、折角だから楽しもうではないかということになり、今現在執務室を完全に占拠してパーティーが催されている。





卯月「それでは!ポッキーの日を祝して乾杯ぴょん!!」



一同『乾杯〜!』





提督「わざわざ艦隊運営を一切禁止にしてまでやることなのか・・・」



天龍「まあまあ、そう堅いこと言うなって。どうせ今日はもう何もできないんだから、ここは大人しく楽しんでおこうぜ。」



提督「お前はお前で随分とはしゃいでるな、片手に四本ずつ持つとかどんだけ食いしん坊だよ。」



天龍「いいじゃねえか、甘くて美味いんだから。ほら、俺のやるから提督も食べろって。」



提督「食いかけを寄越すな!」



天龍「そんなのやるわけねえだろ、隣のを食えって言ってんだ。」



提督「紛らわしいなおい!」



提督「まあいい、俺は自分で勝手に取るから、手に持ってる分はお前が食べろ。」



天龍「つれねえな〜、分けあって食べるからいいんだろ。遠慮せず俺のを食えって。」



提督「・・・わかった、なら一本もらうぞ。」



天龍の指の間から一本抜き取って口に咥える。甘いが、どこかほんのりと苦くて懐かしい味が口の中に広がった。



提督「美味いな。」



天龍「だろ?」



天龍が勝ち誇ったかのような笑顔を見せる。おおかた分け合う喜びを教えてやったぜ、みたいなことでも考えているのだろう。



提督「そう言えば、ここ最近全然食べてなかったな。最後に食ったのは…バレンタインデーの時だったか。」



天龍「提督ってそういう義理チョコ似合うよな。」



提督「流石にそれは酷くないか?一応と言うか、ちゃんと手作りのチョコだってもらったんだぞ。」



天龍「悪い悪い、なんとなくそんなイメージがあったもんだからつい。」



提督「俺のイメージって・・・」



確かに、あまりモテていなかったのは認めよう。元々の鎮守府の仲間で唯一好きだと言ってくれたのは叢雲ただ一人だったし、他の者自分には全くもって無関心だった。手作りのチョコも、叢雲にしかもらった試しがない。



だが、今は扶桑と山城だって好きだと言ってくれているのだ。流石に非モテは脱却したと自負していたのである。



天龍「そんな落ち込むなよ、オレのもう一本やるから元気出せって。」



何も言わず、いつの間にか補充されていたポッキーを引き抜いてまた咥える。なんだか先程より苦く感じた。



睦月「ねえねえ天龍さん!ポッキーゲームしよ!」



天龍「はぁ!?なんでオレと!?」



睦月が手に袋を持ってこちらに駆け寄ってくると、突然天龍にそう言って詰め寄った。



提督「いいじゃないか、やってやれよ。」



天龍「提督まで何言い出すんだよ!だいたい、そんなの如月とやればいいだろ。」



睦月「だって、如月ちゃんとやったら危うく本当にキスされそうになったんだもん。いくら如月ちゃんでもファーストキスはあげられないよ。」



ゲームをゲームで終わらせようとしないあたり、いかにも彼女らしい。何の気なしにふと彼女の方を見ると、今度は菊月をターゲットにしたらしたようだ。そっぽを向き続けようとする菊月に、無理にでも咥えさせようとしている。



睦月「ね、ポッキーの日と言ったらポッキーゲームだもん!一緒にやりましょうよ!」



天龍「知るかよんなこと!如月がだめでも他の奴らとやればいいだろ!」



意地でも天龍とやりたいんだと言わんばかりに迫る睦月を見ていると、本当に姉妹は似るものなのだと実感する。というか、睦月達姉妹は全員妙な所で食い下がらないしぶとさがあった。



睦月が姉妹(特に如月)以外にこうして甘えるのも割と珍しいが、どうやらここ最近睦月は天龍に懐いたらしい。彼女のお姉さん気質に惚れたのかどうかはわからないが、何かと一緒にいるのをしばしば見かけるようになった。



つまり今こうして天龍にゲームを強いるのは、もしかしたら彼女なりの主人に対する愛情表現のようなものなのかもしれない。



睦月「お願い天龍さん、一緒にしましょ〜よ〜。」



天龍「ああもう、わかったからそんな揺するなって。」



睦月「本当!?やったぁ!睦月感激い〜♪」



天龍「ったく・・・提督、何ニヤニヤしてんだよ。」



提督「いや、随分と好かれるようになったな〜と。でもまあ良かったじゃねえか。」



天龍「別に良かねえよ。・・・まぁ、感謝はしてるけどよ…」



提督「ん、何て言ったんだ?」



天龍「別になんでもねぇよ。」



睦月「ほい、へんりゅーはん♡」



天龍「咥えたまま話すなよ・・・い、いくぜ。」



天龍「・・・」



ジリジリと先端部分に口を近づける。だが、あと少しというところで首を引っ込めてしまった。



提督「何してんだよ、睦月が待ってるぞ。」



天龍「う、うるせえな…オレにはオレのペースってもんが…」



再び天龍のチャレンジが始まる。だが、やはりあと少しのところで怯んで遠ざかってしまう。



睦月「へ、へんりゅーはん…はやくぅ…」



睦月にそう急かされながらも、何度も何度も近づけたり遠ざかったりを繰り返し、なかなか食いつこうとしない。



仕方ないので、提督が背中を押してやることにした。



提督「ほれ、とっとと終わらせてしまえよ。」



天龍「!?」



提督が軽く後頭部を押すと、丁度良く天龍の口に入っていった。



急に睦月の顔がズームインされたことに驚いたのか、すぐさま噛み折り顔を背けた。



睦月「ん・・・えへへ、やっとポッキーゲームできた♪」



提督「良かったな睦月・・・で、お前はなんで赤くなってるんだよ。天龍?」



天龍「う、うるせえ…こっち見んな・・・」



どうやら照れてるようだ。なんだかんだと天龍も嬉しかったらしい。恥じらいを誤魔化すためか、自分のを片っ端から頬張っている。



如月「あら、睦月ちゃん天龍さんとしてもらったの?」



提督「あれ、如月いつの間に。さっきまであっちにいなかったか?」



如月「睦月ちゃん達が楽しそうなことしてるから、来ちゃったの。」



先程まで如月がいた所を見やると、菊月が顔から煙を出して倒れていた。どうやら結局やられてしまったらしい。菊月をあなんな風にノックアウトするなんてどんなゲームだったのだろうか。



睦月「天龍さん、なかなか食べてくれなくて大変だったんだよ?結局ちょっと齧って止めちゃったし。」



如月「あらあら、天龍さんって意外と照れ屋さんだったのね〜。」



提督「まあ言ってやるなよ、本人は相当やばかったみたいだし。」



如月「ふ〜ん、そうなの・・・じゃあ司令官はどうかしら?」



提督「え?」



おもむろに如月が新しい袋を開けると、中から一本取り出して持ち手の部分を口に咥えた。すると、咄嗟に反応できないほど素早く滑らかなモーションで提督の頭をロック、ゲーム開始まであと数センチという状況を作り上げてしまった。



如月「はい、ひれいはん♡」



提督「いや、ちょっと待て。俺はやるとは一言も・・・」



天龍「お、二人とも仲良いじゃねえか。どれ、俺が手伝ってやるよ。」



いつの間に後ろについていた天龍がさも楽しそうな声色でそう伝えて来た。なんとなくだが、絶対に今彼女の目は笑っていない。



提督「天龍、お前・・・」



天龍「さあ如月、ゲームスタートだ。」



だめだ、一切こちらの声は聞こえていない。いや、聞こえているのだろうが女性限定のスペシャルアビリティ、無視を使っている。



如月「ほんな顔ひないで、ひれいはん。ほら、あまふておいひいはら。」



提督「物咥えながら話すのは止めようか。」



如月「は〜い、ほめんなはい・・・えい♡」



提督「むぐっ!?」



心の準備がまだできていないままチョコレートが口の中に侵入してくる。かと思えば如月が一瞬で唇の間の距離を詰めてきた。



提督 (ちょ、これマジでやば・・・)



そう思った時にはもう手遅れだった。既に如月の顔はすぐ目の前にあり、唇には小さくて柔らかく、ほのかにチョコレートの香りがするものが触れていた。



如月「ん・・・ぷはっ、ごちそうさま♡」



睦月「あわわ…如月ちゃん・・・」



天龍「如月、お前・・・」



天龍と睦月が、呆然と如月を見ている。おそらく、提督も似たような顔をしていることだろう。というか2人よりも格段に呆けた顔をしているはずだ。



如月「あ、そうだ。私だけ多く食べてごめんなさい。はい、これ食べて。」



そう言って新しく取り出したのを提督のだらしなく空いた口に入れた。種類が違うのだろうか、天龍からもらったものより甘く感じられた。



提督「如月…」



如月「いいの、これが私のき・も・ち♡」



呆然とする提督を残して、そのまま如月は他のグループの元へ向かった。



提督「・・・はっ、こうしちゃいられない。今すぐ離脱しないと俺の命が…」



嫌な予感がして、その場を離れて部屋を出ようと体を動かし始めたその時。途轍もない重圧感を含んだオーラとともに、提督に忍び寄る影があった。



山城「て・い・と・く?どちらに行かれるんですか?」



一瞬で体がギクリと反応してしまう、穏やかなのに身の毛もよだちそうな声。予感的中というやつだ。



提督「いや、ちょっとトイレに・・・」



山城「何も飲んでいなかったのにおかしいですね、ひょっとして私から逃げようとしているんですか?」



初めて使われる敬語が、事態を緊急のものだと伝えてくる。それでなくとも、最近この二人の機嫌の良し悪し、その他体調などに敏感になってきているので嫌でも逃げないと危ないのはわかる。



提督「そんなことないだろ。俺が山城から逃げようだなんてそんな天地がひっくり返ったって・・・あいだだだだ!」



千切れるのではないかと思うほどに耳をつねられ、そのまま引きずられ始める。おそらく、行き先は扶桑の元だ。



山城「提督、19種類19箱全部でポッキーゲーム。終わるまでまで許さないから。」



提督「何ですと!?」



提督「慈悲はないんですか!」



山城「ない!」



提督「お、お待ち下さい!俺は別に望んだわけじゃ…」



山城「聞く耳持ちません!」



提督「そんな!頼む、俺が悪かったから許してってあああああ・・・」






天龍「提督、なんかごめん。」



睦月「如月ちゃんがご迷惑おかけしました。」





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11月ともなれば寒さが強くなって、昼夜を問わず暖房器具の使用時間が増えてくる。実家にいた頃などは床暖房とエアコンの恩恵に預かっていられたため、冬場の室内での自由は約束されていたものだが、鎮守府に勤めるようになってからはもっぱら大きめの炬燵の中で執務をするようになった。



軍人にあるまじき業務態度ではあるのだが、ストーブはおろか暖炉すらないクーラーだけの部屋での書類仕事などただの拷問でしかない。まあ勿論、定期的に監査が入ったりするので、来客予定にかなり過敏になりながら生活をしていた。だが、ここ不幸鎮守府では来客など皆無に等しいので、四六時中炬燵出しっぱという背徳感ありありの提督ライフがエンジョイできてしまう。それでもちょくちょく癖でカレンダーや手帳を気にしてしまうが、実に悪くないものだ。



ただ、暖を求めるものは提督に限った話ではない。炬燵の温もりは老若男女ばかりでなく、生きとし生けるものするの全てを惹きつける魔性の魅力を持つので、当然のように提督の周りに1人は必ずいることになる。



提督「なあ初雪、ネトゲなら部屋でやってくれないか…」



初雪「ん・・・何、何か言った?」



本日の炬燵に魅せられた困ったネコ第1号の初雪が、頭に付けていたヘッドホンを外しながら復唱を求めて来た。流石にその程度のことで腹をたてるほど度量の小さい人間ではないから何とも思わないが、威厳が足りなすぎると言われないか少し不安ではある。



提督「それ、ここじゃなくて部屋に戻ってやれよ。」



初雪「いいじゃん、キーボード叩く音くらいしか邪魔してないし…」



提督「確かにな、タイプ音くらいじゃ俺は別にどうこう言ったりしないけどよ…何と言うか、こっちは仕事中なわけで…」



初雪「むぅ、じゃあ仕方ない…」



やけに素直だなと思ったのもつかの間、ノートパソコンを持った初雪は提督の向かい側に移動すると、天板に隠れるように寝そべって続きを始めてしまった。



提督「はあ、仕方ないな・・・こっちもこっちだし。」



初雪がいるあたりから視線を左にズラすと、そこには本日の補佐艦担当のはずの望月の寝顔があった。これが三日月なら初雪の振る舞いを正してくれるのだが、彼女の担当は昨日の初雪が遠征に行っていた日だ。彼女を連日のように駆り出すわけにもいかないのだが、つくづく運がない。



提督 (どうにかしてこいつらに仕事させたいけど…)



いかんせん、こんな日に限って仕事が少ない。提督1人でも夕飯前どころか八つ時には片付いてしまうというかもうすぐ八つ時になる、だから仕事が多くて大変だのと言った口実も作れやしない。



提督「まあいいか、俺と違って寒い中頑張ってくれてんだもんな…」



少し文字を綴る速さが落ちてきてしまったので気分転換がてら掛け布団を引っ張り出して来て、背中の筋を痛めることがないように炬燵から引っこ抜いた望月共々ソファーに横たえてやる。勿論、寝返りをうった時に破損しないよう眼鏡はちゃんと外してやった。



体温を受け取っていなかったソファーに触れて少し寒そうにしていたのがちょっといい気味だったが、起きる様子のない彼女はまたすぐに安らかな寝息をたて始めた。



初雪「・・・なんかニヤニヤしてますけど、どうかしたんですか…?」



提督「うわっ、初雪か…急に横に立たれたからビックリしたぞ。」



初雪「こたつの中に冷たい空気が入ってきてこっちが先にビックリです…」



提督「出入りしたらそりゃそうなるだろ…」



確かに外の冷気はあまり喜ばしいものではない、だがなるだけ中の空気を閉じ込めておこうとするものならそれこそ移動する等のコマンドが犠牲になる。コタツムリになるのだけは勘弁してほしいものだ。



初雪「かわいい…」



提督「だな、眼鏡取ると案外美人なもんだ。」



望月のことだ。綺麗な長髪といい、少し大人びた感じのする端整な顔立ちが、子供のそれとは少し趣きの異なる美しさを出している。にも関わらず初雪にかわいいと言わしめるのは無防備に寝いるその姿故だろう。見ていて頰をつつきたくなる。



初雪「・・・」



提督「ん、どうした初雪?」



初雪「おデコに肉って…」



提督「書いちゃいけません。」



何を言い出すのかと思えばお約束である。どうして人間寝ている者を見れば額に肉と書きたくなってしまうのだろうか。



提督「はぁ、もし初雪が寝ている間にデコに肉って書かれたらどうするよ。」



初雪「ん…呪う?」



提督「いきなり怖えこと言うな、普通まず怒るだろうに。しかも何故疑問形。」



初雪「ん…わからない。」



提督「わからないって、んな馬鹿な。」



初雪「この前加古さんにやったら何もしなかったから…」



提督「既に実行済みかい!」



加古も加古で何故そこで怒らないのだろうか、寝ぼけていたとしても夜には起きてるのだから普通そこで気づくはずだ・・・はずだが?



提督「なあ初雪、加古って鏡見ることあるか?」



初雪「う〜ん・・・無いかも。寝癖は古鷹さんに直してもらってるし、お風呂も鏡で何かするような人じゃないから…。」



提督「あーうん、加古らしい。」



ならば気づいていなくとも無理は無さそうだ。女子なのだからもう少し外見に拘ったほうが良いのではないかと思うが、そう言えば何故か加古の肌はいつも綺麗だ。昼夜逆転というとことん不健康な生活を送っているはずなのに、どうしてあそこまで健康的な肌を維持できるのかもう訳がわからない。



それはそうとして鏡を見ていないにしろ、周囲の反応からして何かしら異常に気づくはずだがそれはどうしたことか・・・と思ったが至極簡単なことだった。



提督「そういや、加古って前髪多くてデコ見えなかったな。」



提督「あ、お前も前髪長いから上手いこと隠せるんだな。」



初雪「おお、そうでした…」



提督「じゃあわからないのも仕方ないか…」



初雪「うんうん…そういうわけで、書いても?」



提督「良いわけ無いだろ、何でそうやって持っていく。」



イタズラ心を責めるつもりはないのだが、もう少しかわいいものを選んで欲しいものだ。まあ、どこまでのラインがかわいいのかは知らないが。



提督「はぁ…」



初雪「お疲れ…?」



提督「お前のボケに付き合うのに疲れた。」



初雪「まあまあ、今頑張っておけば漫才師も夢じゃない…」



提督「目指してねえよ、というかボケてる自覚あったのか。」



初雪「いや、全然。そうとらえたんだなとしか…」



提督「うん、じゃあ本当にボケてる可能性があるな…」



明石の所にでも連れて行けば直るだろうかと思ったが、直した所で正論人間になるのもこれまた面倒臭いので無しだ。



提督「そうだ、ポッキー食べないか?丁度3時だし、甘いの欲しいだろ。」



初雪「それこの間の残りじゃ…」



提督「あいつら余ったやつ全部俺に寄越したんだよ。1人じゃ消化しきれないから人助けだと思って、な?」



初雪「まあいいですけど…さっき頭使って甘いの欲しいのは本当だし、助けてあげますか…」



提督「恩にきるよ。」



布団から足を抜いて寒い外気に足を晒しながら、執務机の1番下の引き出しにこれでもかと押し込まれた菓子の箱を二つ取り出して、そそくさとまた足を布団に突っ込む。箱を手渡すと、初雪はパソコンごと側に寄ってきて中身を取り出した。



提督「そういや、それで頭使ったって言ってたけど随分と知的なゲームやってるのな。」



初雪「そこまで知的でもないですよ…MMOでレイドやってただけです…」



提督「ん、ならそんな頭使わないだろ。」



物にもよるが、PvPでなければ大規模戦となると大体はヘイトコントロールだのパーティーの状況把握、連携を重視した立ち回りを考えるくらいだ。さしあたって糖分を欲するほど脳の要求される活動量は少ないはずだが。



初雪「普通にやってればそうですけど…一応ギルドのレイドマスター任されてますから、あれこれ考えないと…」



提督「成る程、そりゃご苦労さんだな。」



つまり司令役だ、先の事を数十人単位で考え実行する。数人程度のものとは比べものにならないほどの思考量、センスやリーダーシップも問われるのでかなりの重役である。それに技量の問題だけでなく様々なプレッシャーも伴ってくる。顔つき合わせているのとは違い、ネットは顔が見えないし匿名にするのも自由だ。無能ぶりを晒せば手厳しいじゃ済まないほどのバッシングを受ける。



提督「・・・よく頑張った。」



初雪「ん、ゲームで褒められたの初めて…」



提督「凡人にできるもんじゃないからな、才能ってのは目的がなんであれ褒めて伸ばしておくものさ。」



初雪「・・・司令官には敵いませんよ…こんな事当たり前みたいにやって、みんなのこと守ろうとして…」



提督「おっと、ようやく俺のすごさに気づいたか?」



初雪「やっぱなしです・・・今ので見直し撤回…」



提督「はは、そんなこと言うなよ。俺だって偶には褒められたい時もあるんだから。」



彼女の肩を抱き寄せて、そのまま頭を撫でる。いつもグータラな彼女だが、なんだか今はそうしたい気分だった。何かが足りないこのくらいの頭の高さが恋しかったのかもしれない。



提督「・・・まあなんだろうな、当たり前なんかじゃない。いつもお前達がこの部屋を出る時、今になってもすごく不安だよ。いくら良く出来た作戦でも、完璧な指揮でも、的中しやすい予報でも・・・」





提督「お前達が沈みそうになった時、俺はなんもしてやれないんだ。ここで帰投命令出して、帰ってくることを祈るしかないんだ。」



初雪「・・・」



よく、士官学校時代の同僚にいい加減割り切れと言われる。多分、その方がいいだろう。無駄にプレッシャーをかけることなく、指揮に集中できてミスもぐっと減る。こんなんだからいつまでも出世できない。



だがやはり難しいのだ。ミスしても自分は死なない。一種の杭だ、それがあるからいつまで経っても割り切れない。この気持ち、寄り添って共に暖をとっている彼女には伝わっているのだろうか。



提督「・・・すまない、俺なんかよりずっと年下に見えるお前に弱音吐くなんてな。こんなんだからいつまでも半人前だって言われるんだろうな。」



初雪「どこ行くんですか…?」



提督「ちょっと自販機、冷たいのとあったかいのどっちが良い?ついでに買ってきてやるよ。」



初雪「ん…冷たいので。」



提督「了解、ちょっと待ってろ。」



布団から出て冷気に包まれる足を無理くり動かして執務室を出るためにドアへ向かう。すると、背中に質量大きめの衝撃が突撃してきた。



提督「どうした初雪?そんな風にくっ付かれたら買いに行けないんだが…」



初雪「必ず…帰ってくるから・・・」



初雪「司令官がいるここに…絶対みんなで帰ってくるから・・・」



提督「・・・ああ、そうしてくれ。」




惰眠と0と1にまみれた少女には、どうやらちゃんと届いていたらしい。





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恋はどこにあるのかわかったもんじゃない





翔鶴「それでは教k…いえ提督、行ってまいります。」



教官「呼びやすい方で構わん、それにどちらかと言うと教官の方が呼ばれ慣れている。」



翔鶴「しかし、もう私の提督なのですから呼び方はきっちりさせていただきます。」



教官「そうか、まあ好きにしろ。」



教官「戦果を期待している、存分に戦ってこい。」



翔鶴「はい、ご期待にそえるよう全力を尽くします。」



敬礼をし終わって海へ駆けて行く後ろ姿に、敬礼を返して見送る。最近新しく出撃前の習慣になったのだ、先月までは決戦の時くらいしかこうして見送りに港まで足を運ぶことはなかった。



教官「さて、私も司令室に向かうとするか…」



今日は大淀が休みをとっているので、代わりに自分が無線を操らなくてはならない。恥ずかしい話、才能がないのかあまり得意ではない。士官学校で講義は最後までキチッと受けたはずなのだが、革新を嫌う軍の旧世代の通信機はいくつ年を重ねても難敵である。



とは言っても、練習は全くしていないというかできないので年を重ねたところで知識を劣化させる一方なため時間はこの際関係は無い。そう言うのも無線機は大淀が私物化していると過言では無いほどに完全に掌握してしまっているので、触りたくとも触れないのだ。



じゃあ何故大淀を休ませたか。簡単だ、艦娘とて病にはかかる。真面目で勤勉、日々の健康管理に余念が無い彼女にしては珍しいことだが、それでも感染することがあるのはインフルエンザの恐ろしいところである。



青葉「やあやあ司令官、お見送りの帰りですか?」



無線機の操作手順を頭の中から探り出そうとしていると、自称艦隊ジャーナリストと偶然出会った。良いネタでも見つかったのだろうか、機嫌が良さそうである。(この場合の良いネタとは青葉にとって美味しいという意味であり、それが他人の幸を呼ぶか不幸を呼ぶかはわからない。)



教官「ああ、今しがた翔鶴達を送り出したところだ。」



青葉「毎度毎度ご苦労様です、おかげで皆さんの士気もここのところかなり上々ですよ。」



教官「なんだ、今度は私のことをネタに記事を書くつもりか?」



青葉「ええまあ、そのくらいだったらいいですよね?」



教官「別に構わんが…あまり仰々しくしないで欲しいものだな、やり辛くなる。」



青葉「わかってますって、トップ記事はもうできているのでさり気なく載せておきますね。」



その気遣いはありがたいが、普段はあまり艦娘との交流が無いこともあって記事に載ることもまず無い。折角の機会をさり気ないもので終わらせてしまうのは惜しいような気もした。



教官「うーむ・・・そうだ、今回は新聞の予算を多めにしよう。」



青葉「え、いいんですか!?」



提督「その代わり、発行部数を増やして欲しい。内容は自由に増やしてくれても構わん。」



青葉「おお!今日の司令官太っ腹ですね!!」



青葉「あ、さては自分の記事が載るのが嬉しかったとか?」



教官「私とて人の子だ、注目を集めてみたいという気持ちはある。だがあくまで記事はさり気なくだ、これは厳守するように。」



青葉「了解しました!不肖青葉、張り切ってやらせていただきます!」



意気揚々と彼女は大急ぎでどこかへ行ってしまった。追加の記事のネタでも探しに行くのだろう。



教官「いつまでも自称扱いは、流石に甘えかもしれんな…」



青葉「ところで司令官!」

ヒョコ



教官 ビクゥ!?



突然真後ろからほんの十数秒前まで聞いていた声が耳元に飛んできた。驚き過ぎて声にもならない。下手をすれば腰を抜かすところだ。



青葉「あれ、どうかしました?」



教官「青葉、頼むから私の心臓に負荷をかけるような真似はよせ。老い先短いこの命、明日にでも尽き果ててしまったらどうする気だ。」



青葉「またまたぁ、あと30年は保証されるようなお年じゃないですか。」



教官「家電のように言ってくれる…」



取り替えられるのであらばその時は是非とも取り替えてもらいたいが、体と心一つの人間である以上叶うはずがあるまい。



教官「まあ良い…それで、私に何か質問でもあるのか?」



青葉「いや、つかぬ事なんですが…」



教官「つかぬ事で一々驚かされたのでは到底かなわぬな…」



青葉「まあまあそう言わず、司令官は翔鶴さんのことをどう考えてらっしゃるのかなと思いましてですね。」



教官「何、翔鶴?」



青葉「見ればいつも一緒にいるじゃないですか、司令官がこうしてお見送りするものあの人がここに正式に配属されてからですし。何とも思わないのかなと。」



教官「別に何とも思っていないわけではない、あれは良く出来たやつだ。住み慣れた場所を離れてこうして来てくれているというのに、まるで最初からいたように尽くしてくれる。感謝は常にしているさ。」



青葉「うーん、そういうことじゃないんですがね〜…」



教官「なんだ、これでは何か不満か?」



青葉「不満というわけじゃなくてですね…その、もっと恋愛的な意味で何か思うところはないのかなって。」



教官「ふむ、特にこれといって思い当たるものはない。」



青葉「え、無いんですか!!うそぉ!?」



そんなに驚かれるようなことだろうか、別に無いものは無いのだからこれ以上はなんの返答もできない。かと言って嘘だとまで言われてしまっては何か答えなくてはならない気がする。



青葉「な、何かあるんじゃないですか!あれだけずっと一緒にいて、ご飯作ってもらって秘書艦に任命して!」



教官「そう言われもだな…無いものは無い。」



青葉「えぇ、そんなんじゃ翔鶴さん報われませんよ?」



教官「翔鶴に本当にその気があるのかわからんだろう、根も葉もない憶測で言動を乱すのはあまり感心せんな。」



青葉「うーん、根も葉も無い憶測じゃないと思うんですよね〜…」



まだ食い下がろうとしている青葉からどう逃れようかと腕時計に助けを求めると、作戦開始まであまり余裕が無かった。



教官「おっと、そろそろ作戦が始まる。私は司令室に行かなくてはならないので、これで失礼しよう。」



青葉「あ、そうでしたか。すみませんお時間をとらせてしまって。」



教官「構わん。取材、良く励めよ。」



青葉「はい!司令官も頑張ってください!」



走りながらこちらを振り向いて敬礼する彼女の背中を見送り、司令室へ向かうために廊下を右に曲がった。広大ながらも単純な作りになっている我が鎮守府は、目隠しされても目的地にたどり着けるのではないかと思うほどに馴染み深いものだ。考え事をしていても足がひとりでに連れて行ってくれるような感覚さえ覚える。



司令室の前まで来ると、途中暗唱してきたマニュアルの内容を復唱し、頰を叩いて喝を入れた。緊張が適当に高まってきた段階で中に入る。



すると、誰もいないはずの司令室にいるはずのない人物がいるのが見えた。



教官「大淀!?そこで一体何をしている!」



大淀「あ、提督ゴホッ…少し心配になったものですから、来てしまいました・・・ゴホゴホッ」



教官「何を馬鹿なことを言っている、今日は休養をとって回復に専念しろと言ったはずだ!」



マスクで顔が覆われてはいるが、どう見ても健康体の人間が見せる顔色ではない。無理やり彼女を無線機の前の椅子から引き離すと、上着を敷いた長椅子に彼女の身を横たえる。少しの抵抗が出来ない程に弱った体はかなりの熱を帯びている。



大淀「提督…」



教官「何も言うな、お前の気持ちには感謝してもし尽くせないが、今無理をして余計に酷くなってしまったらその方が痛手だ。今迎えを呼ぶから部屋でおとなしくしていろ。」



大淀「すみません…」



教官「勝手をしたことに謝るのであれば、私は謝罪を受ける。だが病に倒れたことを詫びるのであれば、私は何も聞いていない。」



迎えに来た明石に大淀を任せて、早々と準備に取り掛かる。既に作戦海域に艦隊が到着したとの通信が入っており、慌ててヘッドセットを付けてチャンネルを合わせるのだった。




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翔鶴『敵艦隊、撤退していきます。追撃しますか?』



教官「いや、旗艦を撃沈したのなら問題ない。ご苦労だったな、直ちに帰投せよ。」



ブツ



教官「やっと、終わったのか…長い戦いだった・・・」



ここの席に座ってからいったい何時間が経ったのだろう、5連戦は正直辛すぎた。



教官「皆に比べれば大したことないのかもしれんが…やはり慣れないことをするは大変だ。」



今日改めて大淀の有り難みわかった気がする。かつて連合艦隊の旗艦を務めただけあってその手腕はかなりのものだということも、今更ながら理解できた。




教官「ともかく休もう…こんなボロボロの有様では、翔鶴達に失礼だ…」



今すぐにでも目の前の机に突っ伏して寝てしまいたかったが、この無骨な金属製の机は体温を容赦なく奪う。大淀の二の舞いになってしまっては鎮守府の主として示しがつかないし、それに変に緊張したせいでシャツがびっしょりになってしまったからそれも流しておきたい。



教官「湯は・・・張っているはずもないか…まあ良い、後で入り直そう。」



本音を言うと、湯船に浸かりながら酒でも飲んでダラけてしまいたい。まだ月曜だと言うのに情けない話ではあるが、精神的にかなりの疲労が蓄積されてしまった。



教官「ん…ああ、明日は火曜なのか・・・よりによって議会の招集とは、厄介なことだ…」



教官「ええい、ガタガタ言っても致し方無し。まずは湯浴みだ、あとはそれから考えよう。」



頰を引っ叩いて風呂場に向かう、何かを考えるのも面倒なので速歩きだ。



手早く汗を洗い流して、体が冷えないうちにとっとと水分を拭き取って着替えを済ませ髪を乾かす。一切の無駄を切り捨てた流れ作業に大した時間はかからず、これなら多少仮眠をとることが可能だ。まるで強者を打ちのめしたような達成感である、人知れず時計の針にどんなもんだと言ってしまった。



教官「善は急げ、一寸の光陰軽んずべからずだな。」



ジトっとした汗を落としたおかげか、だいぶ気分も良くなった。整容は最も気分転換に適しているという話は間違いではないらしい。



だがおかげで眠気もどこかへ行ってしまった。体は疲れているはずなので休ませておきたいところだが、こう気分が高揚しては寝るのも惜しくなってしまう。艦隊の帰投時間まではまだなので、談話室から新聞を一部拝借した後自販機で飲料を買って執務室へ戻ることにした。まだ仕事はいくらか残っているが、食後から始めても問題ないはずだ。



漣「あ、ご主人様お帰りなさいませ〜。お風呂上がりですか?」



教官「ああ、少しばかり汗を流してきた。やはり私に無線はむいていないらしい。」



漣「大淀さん今日お休みですもんね、ご苦労様でした。」



教官「・・・随分と片付いているな、漣がやってくれたのか?」



漣「漣にこんなハイエンドな家事スキルがあったらいいんですけどね。提督が朝来た時、というかここ二、三日前から既にこうでしたけど。」



教官「そう、だったか…?」



おかしい、自分の知っている執務室はこんな整理整頓と掃除の行き届いた部屋ではなかったはずだ。床には所々に書類資料の山があり、机は使うたびに一々謎の紙束で形成された覆いをどかさなければならないという始末だったはずだ。



漣「ご主人様、自分の身の回りのことに興味無さすぎじゃないですか?」



教官「いや、なんだか仕事しやすいなとは思っていたんだが…」



漣「もう、翔鶴さん『提督に喜んでいただきたくて』なんて言ってすごく張り切ってお掃除してたのに、まさかお礼も何も言ってないんですか?」



教官「う…面目無い。」



漣「そう言えば、朝晩食事を作ってもらってますけど、いっつも「すまんな」で済ませて、一度でもキチンとお礼をしたことがありましたか?」



教官「そ、それは・・・」



なんという失態だろう、面目丸つぶれもいいところだ。穴があったら自ら飛び込んで泥をかけられたい。



教官「私は、とんだうつけ者だな。」



漣「乙女の敵ですよもう。」



教官「そうだな、敵だな・・・いや待て、敵だと?何故だ?流石にそこまで言われる所以がわからんのだが…」



漣「ご自分で考えて、どうぞ。漣はこれから七駆のみんなと約束があるのでもう行きますね。」



教官「あちょっとm・・・漣といい、あやつといい何故私はこんなにも見放されてしまうのだ…」



もう自分はどうしようもない人間になってしまったのだろうか、そう考えると流石に凹んでしまう。



翔鶴「失礼します、第一艦隊只今戻りました・・・教官、どうかされましたか?」



教官「すまん翔鶴、私が愚かなばっかりに・・・」



翔鶴「わ、私ですか?何も謝られるようなことはされていませんが…」



教官「3日前にここを掃除してくれたのだろう?なのに私は部屋の変わりようにも、お前の心遣いにも気付かず・・・本当にすまない!この愚かな私をどうか許してほしい!」



頭を床に擦り付ける勢いで土下座する。そのまま踏まれようが、足を投げられようが構わない。恩知らずなこの身をひたすらに恥じていた。



翔鶴「顔を上げてください!私は全く気にしてませんから、そんなことで私なんかに頭を下げないでください!」



教官「『翔鶴なんか』ではない、日頃あれだけ尽くしてくれたお前に私は何もしなかった…」



外気で冷たくなった指先が頰に触れた。そのまま張り手をもらうと思い覚悟したが、優しい彼女の手は頰を包むと顔を上げさせ、彼女の顔をを見るように促した。



翔鶴「顔を上げてください、そんな風に謝られてもかえって恐縮してしまいます。」



翔鶴「それに、そうやって申し訳ないと思っていただけでも私は十分ですから。」



教官「何故、そこまで私を責めない。」



翔鶴「教官がどんな方か知っていますから。」



教官「お前のことを理解しようともしなかった私をか?」



翔鶴「余所者の私をお側に置いてくださるだけで、有難いことですから。」



教官「・・・ならんな。」



翔鶴「はい…?」



教官「お前は無欲すぎる、少しは見返りを求めろ。それを許さぬ私と思うな。」



彼女の手を振りほどいて戸棚の元へ行き、中に格納された金庫から着任以来一切手をつけていなかった小箱を取り出す。



教官「いつまでもお前に損をさせるわけにはいかん。私の嫁になれ、翔鶴。」



翔鶴「え・・・うそ、どうして…?」



教官「その無欲な性分が気にくわない、だがそこに惚れた。これ以上の理由が欲しいのならばいくらでも考えてやる。だからこの指輪を受け取るのか受け取らないのか、今ここで決めてもらおう。」



暫し逡巡を見せた翔鶴だったが、やがて瞳が霞んでしまうほどの涙をたたえた眼差しでこう言った。



翔鶴「僭越ながら…お受けさせていただきます…」

ポロポロ



教官「あまり泣いてくれるな、男は女の涙に弱い。」



翔鶴「でも、嬉しくて…」



教官「・・・手を貸せ、付けてやろう。」



涙を拭っていた両手のうちの左手を取ると、薬指に指輪を通した。おかげで右手は、更に涙が勢いを増した両目を拭かなくてはならなくなり、とても大忙しだ。



翔鶴「大切に…します・・・」

グラッ



教官「おっと・・・しっかりしろ、それでは五航戦の名が廃るぞ。」



翔鶴「すみません、嬉しすぎて腰が・・・もう少しこのままでいいですか…?」



教官「仕方のない奴だな。まあ良い、好きなだけこうしていろ…」




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青葉「うわぁ・・・青葉、見ちゃいました。」



偶々執務の前を通ったら、ドアの隙間から翔鶴に土下座する司令官の姿が見えたのでそのまま覗いていたら、まさかの俺のものになれ宣言でとんだサプライズである。写真を撮らなかったのは迂闊としか言いようがない。



青葉「それにしてもあの堅物の司令官がまさか…やっぱり胃袋を掴まれたか、翔鶴さんやるなぁ。」



これはもう一面丸ごと使ってもいいレベルの特集が組めそうだ。部数上限の解放を許可された矢先にこれは幸先が良い。



青葉「でも・・・やっぱり止めておこうかな。司令官、大袈裟なこと好きじゃないし。」



ちょっと前なら絶対にこんな風に考えることなどなかっただろう、だが今は遠慮ができる。



青葉 (ネタ、探さないと…どうかお幸せに。)



青葉「・・・私も、指輪欲しかったな。」




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後書き

新年を迎えてもうだいぶ経ちますね、皆さん体調など崩されてはいませんか?僕は正月からずっと体調不良が続いてます。早く治れ

毎回五万字ほど書かせていただいているところを今回大幅にカットしたのには実は理由がございまして、去年の夏くらいまでこのSSと同時進行させていた作品のリメイク版というか、再スタートを4月からやりたいなと思っているのです。そこで、間に合わないのならいっそ切り捨ててしまえと思い切ったわけでございます。(おい)
誠に勝手ではございますが、今年の4月までどうかこの作品をよろしくお願いいたします。


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SS好きの名無しさんから
2016-11-13 06:57:07

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このSSへのコメント

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1: SS好きの名無しさん 2016-11-13 08:01:15 ID: AUj6QeLN

多分それきっと山城だけじゃなくて扶桑もするんだろうなぁ提督が貧血になりそう

2: 影乃と月の神 2016-11-13 11:35:19 ID: 7buE28b9

コメントありがとうございます

話を聞いた叢雲さんも後で駆け付けてきました( ˘ω˘ )


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