ことり「……海未ちゃん」 海未「……どうしましたか、ことり」
分岐2、無事完結しました。
なんだか打ち切りみたいな強引な終わらせ方になっちゃいましたが、許してくれるよね?
以上をもちましてこの作品は完結とさせていただきます。
ご愛読ありがとうございました。
ss初投稿です。
いろいろと至らない点が多いとは思いますがご了承ください。
設定などは特に定めていません。
ある程度キリがいいところで完結させるつもりです。
※キャラ崩壊あり・鬱展開かも(たまに凄く適当になります)
評価・応援ありがとうございます。
皆様のおかげで分岐1を無事完結させることができました。
このような作品を最後まで読んでいただき、本当に感謝で一杯です。
なお、分岐2につきましては短めにして、この作品を本当の意味での終了とさせていただきます。
最後までこの作品にお付き合いしていただけると嬉しいです。
なお、コメントの返答につきましては後書きで返させていただきます。
ご了承ください。
ことり「……最近穂乃果ちゃんと一緒にいられる時間が少ないよね」
海未「……ええ」
ことり「今日の放課後、3人で遊びに行こうよ」
海未「そうですね」
穂乃果「おーい」
海未(穂乃果が来ましたね。今日は3人で遊びたいものです)
ことり(今日は穂乃果ちゃんと3人で遊びたいなぁ)
穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん、おっはよう」
ことり「おはよう穂乃果ちゃん♪」
海未「おはようございます穂乃果。今日はやけに上機嫌ですね」
穂乃果「そうかなぁ? えへへ」
ことり「何か良いことでもあるの?」
穂乃果「うんっ。今日、絵里ちゃんとご飯食べに行くんだ~」
海未「」ギリッ
ことり「」ギリッ
穂乃果「どうかしたの?」
海未「なんでもありませんよ」(はぁ……)
ことり「ううん、なんでもないよぉ」(今日もダメなんだ……)
穂乃果「?」
海未「とりあえず学校に行きましょうか」
ことり「そうだね」
穂乃果「よーし、今日も頑張るぞー!」
ことり「今日のお昼は花陽ちゃんたちのところかぁ」
海未「穂乃果と最後にお昼を食べたのはいつでしたっけ?」
ことり「たぶん……3日前くらいかな」
海未「1週間の間違いでは?」
ことり「……そうかも」
海未「穂乃果がいろいろな人と仲良くなるのは良いことなのですが……」
ことり「うん」
海未「何だか胸がモヤモヤしますね」
ことり「何でだろうね」
「「…………」」
海未「考えても仕方ありませんし、お昼にしましょうか」
ことり「うん」
海未「ことり、今日の放課後はどうしますか?」
ことり「二人でクレープ食べに行こうよ」
海未「ああ、そういえば。最近新しくできたらしいですね」
ことり「うんっ。……でも本当は穂乃果ちゃんと海未ちゃんの3人で行きたかったなぁ」
海未「仕方ありませんよ。穂乃果にも予定がありますから」
ことり「うん」(分かってはいるんだけどぉ……)
海未「3人で行くのはまたの機会にしましょう」(いつになるのか分かりませんが……)
ことり「楽しみだなぁ」
海未「ええ。本当に楽しみです」
絵里「今日の練習はここまでにしましょ」
凛「か~よちんっ。一緒に帰ろう」
花陽「う、うん」
凛「今日もラーメン屋行こっ」
花陽「きょ、今日も行くの……!?」
にこ「はぁ……疲れたわ」
真姫「はい、にこちゃん」
にこ「あ、ありがと」
真姫「それじゃ、私は帰って勉強するから」
にこ「え~! それならぁ、にこと遊んで帰った方が良くな~い?」
真姫「……そんなに暇じゃないんだけど」
穂乃果「え~りちゃんっ」ギュッ
海未「!」
ことり「!」
絵里「きゃっ! も、もう穂乃果ったら……急に抱き着くのはダメよ?」
穂乃果「ごめんね絵里ちゃん。今日ずっと楽しみにしてたから、つい……」
絵里「ふふっ……本当に楽しみにしてくれてたのね」
希「どうしたん、えりち。穂乃果ちゃんに抱き着かれとるみたいやけど」
絵里「希、……これは穂乃果が今日のことを楽しみにしてたからって」
穂乃果「あっ、希ちゃん。穂乃果は今から絵里ちゃんとご飯食べに行くんだよっ」
希「へぇ~」
穂乃果「希ちゃんも一緒に行こうよっ。いいよね絵里ちゃん?」
絵里「ええ。もちろんよ」
希「じゃあお言葉に甘えて、ついて行かせてもらおうかな」
穂乃果「やった~!」
絵里「それじゃ……行きましょうか」
穂乃果「うんっ」
希「どこまでもお供するで~」
ワーワー
海未「…………」
ことり「…………」
海未「……私たちも行きましょうか」
ことり「……そうだね」
海未「ことり」
ことり「どうしたの、海未ちゃん」
海未「先ほど穂乃果が絵里に抱き着いたのを見て、どう思いましたか?」
ことり「……海未ちゃんはどう思ったの?」
海未「私は……恐らく絵里に嫉妬のようなものを抱いた気がします」
ことり「ことりも、同じかな」
海未「ことりもですか」
ことり「うん。それにことりは最近、穂乃果ちゃんが誰かに抱き着いてるのを見たら……胸がチクッってしちゃうんだぁ」
海未「私もです。穂乃果は誰にでも抱き着くということは分かっていますが、最近はそれを目の当たりにすると……なんだか心が落ち着かなくなります」
ことり「どうしてだろうね」
海未「分かりません。ですが、あまりいいことではないでしょうね」
ことり「誰かに相談した方がいいかも」
海未「明日、希か絵里に相談しに行ってみましょうか」
ことり「うん、そうだねっ。……あ、もう着いたみたい」
海未「美味しそうな匂いがしますね。人も結構並んでいるみたいですし」
ことり「わぁ。すごく楽しみ」
海未「これは期待が膨らみますね」
ことり「早く並ぼ……あっ」
海未「ことり?」
ことり「海未ちゃん、あれ……穂乃果ちゃんと絵里ちゃんじゃない?」
海未「……ええ。穂乃果と絵里ですね」
ことり「…………」グッ
海未「…………」グッ
ことり「今日は……帰ろっか……」
海未「そうですね……」
ことり(穂乃果ちゃん、楽しそうだったなぁ)
海未(穂乃果は私たちといるよりも、絵里たちといた方が楽しいんでしょうか)
ことり「おはよう、海未ちゃん」
海未「おはようございます、ことり」
ことり「穂乃果ちゃんは?」
海未「まだ来ていませんよ」
ことり「そっかぁ」
海未「また寝坊したのでしょう」
ことり「…………」
海未「…………」
ことり「そういえば穂乃果ちゃん、今日のお昼は絵里ちゃんのところに行くんだって」
海未「昨日の夜にメールで送ってきてましたね」
ことり「……今日も2人で食べよっか」
海未「……ええ」
ことり「明日は一緒にお昼食べられるかなぁ」
海未「残念ながら明日は休みですよ」
ことり「あ……そ、そうだったね」
海未「ふふっ」
ことり「わ、笑わないでよぉ」
海未「す、すみません。まさかことりが穂乃果のような間違いをするとは思わなかったもので」
ことり「もう……! ちょっと忘れてただけなんだよ?」
海未「ええ。分かっていますよ」
ことり「本当に?」
海未「もちろんです」
ことり「ならいいんだけど……」
海未「それにしても今日の穂乃果は遅いですね」
ことり「そうだね」
海未「ちょっと連絡してみま……メールが届いていますね」
ことり「穂乃果ちゃんからかなぁ」
海未「そのようですね。”寝坊したから先に行って”とのことです」
ことり「そっか」
海未「……行きましょうか」
ことり「うん……寝坊なら仕方ないよね」
海未「仕方ありませんね……」
穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん、朝は本当にごめんっ」
海未「別に気にしていませんよ。穂乃果が寝坊するのはいつものことですから……仕方ありません」
ことり「だ、大丈夫だよっ穂乃果ちゃん。誰だって遅れちゃうことくらいあるから……仕方ないよ」
穂乃果「明日は遅れないようにするからっ」
海未「穂乃果、明日は休みですよ」(今朝のことを思い出しますね)
穂乃果「あれ? そうだっけ?」
ことり「そ、そうだよ」(朝のこと思い出しちゃった……)
穂乃果「じゃ、じゃあ月曜日は早起きするよっ」
海未「その言葉、忘れないでくださいね」
穂乃果「もも、もちろんだよっ」
ことり「頑張ってね、穂乃果ちゃん」
穂乃果「うんっ」
海未(……穂乃果とことりの3人で話しているととても落ち着きますね)
ことり(穂乃果ちゃんと海未ちゃんの3人でお話してるととっても幸せだよぉ)
穂乃果「やっとお昼だ~! それじゃあ穂乃果は絵里ちゃんのところに行ってくるねっ」
海未「あ……そうでしたね」
ことり「……いってらっしゃい、穂乃果ちゃん」
穂乃果「また後でね~」タッタッタッ
海未「……なんだか穂乃果が遠く感じますね」
ことり「……一番近いところにいるはずなのにね」
海未「…………」
ことり「…………」
海未(穂乃果がいないと寂しいですね)
ことり(穂乃果ちゃん、このままどこかに行っちゃうのかな?)
海未「穂乃果、戻ってきませんかね……?」
ことり「戻ってきてくれたら、嬉しいなぁ……」
海未「そうですね……」
ことり「絵里ちゃんが休みだったら、もしかしたら」
海未「そんなことを言ってはいけません!」
ことり「っ! ご、ごめんね。ちょっとことり、どうかしてたみたい」
海未「謝らないでください、ことり。……元はといえば、私が変なことを言ってしまったのがいけなかったんです」
ことり「海未ちゃんは悪くないよっ! 悪いこと言っちゃうことりが悪いんだよ……」
海未「いえ、私が全て悪いんです! 私が……全部悪いんですよ」
ことり(ことりのせいで海未ちゃんが傷ついてる。ことりが悪い子だから……)
海未(私が寂しさを言葉にしてしまったせいでことりが傷ついてしまいました。……悪いのは全て私なんです。だからそんな暗い顔をしないでください、ことり)
ことり「ごめんね、海未ちゃん……」
海未「すみません、ことり……」
海未「」ズーン
ことり「」ズーン
にこ「」
希「」
にこ「ちょ、ちょっと希、あの2人暗くない!?」
希「そ、そうやね。最近様子がちょっとおかしいような気がしたけど……ここまで酷いとは思わんかった」
にこ「ど、どうすんのよ?」
希「う、うーん……ウチらが余計なことするよりも穂乃果ちゃんに任せた方がええかもしれん」
にこ「その肝心の穂乃果がいないんだけど」
希「えりちとお昼食べてるからね」
にこ「はぁ!?」
希「いや、だってえりちが約束を取り付けてたみたいやし」
にこ「アンタ、知ってて穂乃果に任せようなんて言ったの!?」
希「こ、こんなに酷いとは思わんかったんよ! 最初に言ったやん」
にこ「えぇ……」
希「ご、ごめん。でもあれはウチらじゃどうしようもないって……カードもそう告げとるし」
にこ「……ったく、仕方ないわね。とりあえず穂乃果のところに行きましょう」
希「う、うん。そうやね」
にこ「なんとかしてくれるといいんだけど」
希「きっと大丈夫。穂乃果ちゃんたちは幼馴染でずっと一緒にいたんやから」
にこ「だといいけど」
穂乃果「ねえねえ海未ちゃん、ことりちゃん」
海未「どうしましたか穂乃果?」
ことり「どうしたの穂乃果ちゃん?」
穂乃果「今日の放課後遊びに行かない?」
海未「!」
ことり「!」
海未「も、もちろんいいですよ!」
ことり「う、うんっ! どこに行くのぉ?」
穂乃果「う~ん……ゲームセンターとか、どうかな?」
海未「ゲームセンターですか? 私は構いませんよ」
ことり「ことりは穂乃果ちゃんと一緒ならどこでもいいよ」
穂乃果「それじゃ決まりだねっ」
海未(久しぶりに3人で遊べるんですね。ふふっ、放課後が楽しみです)
ことり(久しぶりに3人で遊べるんだぁ。とっても嬉しいな♪)
穂乃果「つ、疲れた~」
にこ「あ、足が……」ゼェゼェ
凛「さすがに凛も疲れたにゃ~」
絵里「少し……熱が入り過ぎたかしら」
海未「どうやらそのようですね」
花陽「はぁ……はぁ……」
ことり「ほ、穂乃果ちゃん……大丈夫……?」
穂乃果「な、なんとか……」
真姫「え、エリーも……海未も本気で、やりすぎよ」
絵里「ごめんなさい……」
海未「反省しています……」
海未(放課後が楽しみだったもので、つい……)
希「こ、これは……ちょっと、アカンわ」
にこ「し、しばらく動きたくないわ」
凛「かよちん、飲み物だよ」
花陽「あ、ありがとう……凛ちゃん」
穂乃果「み、水を……」
ことり「は、はい、穂乃果ちゃん。お水だよぉ」
穂乃果「ありがとう、ことりちゃん」ゴクゴク
希「ま、真姫ちゃん……飲み物取ってくれん? ウチ、しばらく動ける気がせんのんよ……」
真姫「じ、自分で取りなさいよ……! 私も動きたくないんだから」
希「そ、そこをなんとか……!」
真姫「む、無理なものは無理。頼むならエリーに頼みなさいよ」
希「え、えりち……飲み物を」
絵里「希ったら……だらしないわよ」
希「えりちと海未ちゃんが、凄すぎるだけや」
海未「心外ですね。私だって疲れているんですよ」
絵里「そうよ。……さすがに私も疲れたわ」
凛「そんなケロッとしたところを見せられて信じる人はいないにゃ……」
花陽「ふ、2人とも……すごいです……!」
にこ「海未も絵里も、化け物に違いないわ……!」
海未「どうやらにこはまだまだ練習量が足りないていないみたいですね」
絵里「そうみたいね」
にこ「えっ!? いや、その……に、にっこにっこにー☆」
絵里「……にこ、今から私と一緒に特別メニューをしましょうね」
にこ「ちょっ、む、無理無理無理!」
海未「頑張ってくださいね、にこ」
にこ「ま、待って! 謝るから! 絵里の特別メニューだけは……!」
絵里「さ、行きましょうか……にこ」
にこ「いっ!? だ、誰か助け……! いやぁぁぁぁ」
ことり「あ、あはは……」
真姫「自業自得ね」
海未「それではにこ以外は今日の練習は終わりです。帰ってしっかり身体を休めてください」
「「「はーい」」」
凛「かよちん、立てる?」
花陽「も、もう少しだけ……」
希「にこっち、大丈夫やろうか?」
真姫「さあね。たぶん大丈夫なんじゃない?」
海未「穂乃果、ことり、大丈夫ですか?」
穂乃果「大丈夫、大丈夫」
ことり「ことりも平気だよぉ」
海未「あの……2人とも疲れているでしょうし、今日は遊びに行かず帰りませんか?」(2人に無理をさせるわけにはおきませんし)
ことり「そうだね」(本当は遊びに行きたいけどぉ……2人とも疲れてるもんね)
穂乃果「う~ん……それなら穂乃果の家に来ない?」
海未「私は構いませんが……ことりは大丈夫ですか?」
ことり「もちろん、大丈夫だよ♪」
穂乃果「じゃあ決まりだね。今日は穂乃果の家でダラダラ過ごそうよっ」
海未「宿題を終わらせたらいいですよ」
穂乃果「あ、明日休みだから別に今日やらなくても……」
海未「ダメです」
穂乃果「あうぅ……海未ちゃんの鬼~」
海未「鬼で結構です」
穂乃果「…………」
ことり「ねえ、穂乃果ちゃん。明日お休みだから……お泊りしてもいいかなぁ?」
穂乃果「もちろん! あ、海未ちゃんも泊まってくよね?」
海未「まあ……穂乃果の家の方が良いとおっしゃるのであれば」
穂乃果「それなら大丈夫! 2人ならいつでも歓迎するってお母さん言ってたし」
ことり「良かった~。海未ちゃん、今日は穂乃果ちゃんの家にお泊りするんだから、宿題は明日でも大丈夫だよね?」
海未「それはそうですが……」
ことり「海未ちゃん、おねがぁい」
海未「はぁ……ことりはずるいです」
ことり「やったね、穂乃果ちゃん」
穂乃果「ことりちゃん、ありがとう。これで今日は宿題しなくて済んだよっ」
ことり「どういたしまして♪」
海未「その代わり、明日はきちんとやりますよ」
穂乃果「わ、わかってるよ」
海未「それでは一度帰宅して、穂乃果の家に集合ということでいいですか?」
ことり「うんっ」
穂乃果「オッケ~」
海未「では、後ほど穂乃果の家で」
ことり「今日はお世話になります」
穂乃果母「話は穂乃果から聞いてるわ。いらっしゃい、ことりちゃん。2人なら上にいるわよ」
ことり「ありがとうございます。お邪魔しまぁす」
穂乃果「あっ、ことりちゃん。お茶持っていくから部屋に上がってて~」
ことり「うんっ」チュンチュン
海未「ことり」
ことり「海未ちゃん、今日はずっと穂乃果ちゃんと一緒だねっ」
海未「ええ。これもことりが穂乃果にお泊りのことを提案してくれたおかげです」
ことり「ことりはただ、3人でいたかっただけだよ」
海未「そういうことりの優しさが、今のお泊りを実現させたんですよ」
ことり「そ、そうかな?」
海未「そうですよ」
ことり「海未ちゃんに褒められると……嬉しい」
海未「私も今こうして3人でいられることがとても嬉しいです」
ことり「ずっとこのままでいられたらいいのにね」
海未「そうですね……。いつまでもこうして3人で過ごしていきたいものです」
穂乃果「お待たせ~。はい、お茶とおかしだよ」
ことり「ありがとう、穂乃果ちゃん」
海未「ありがとうございます」
穂乃果「今日は何しよっか?」
ことり「トランプなら持ってきたけどぉ……」チラッ
穂乃果「あぁ……」チラッ
海未「どうして私の方を見るんですか?」
穂乃果「えっと、海未ちゃんはトランプでもいいのかなって」
海未「別に構いませんが……」
ことり「それなら、ババ抜きにしよっか?」
穂乃果「よ~し、今日もじゃんじゃん勝っちゃうよっ!」
海未「今日は負けません」ゴゴゴゴゴ
ことり(今日の海未ちゃんはなんだか気迫があるなぁ)
穂乃果「おぉ! 今日の海未ちゃんは燃えてるねっ」
ことり「じゃあ、カード配るね」
穂乃果「今日も穂乃果が一番だねっ」
ことり「おめでとう、穂乃果ちゃん」
海未「……なぜ勝てないのですか」ズーン
ことり「それは……」
穂乃果「なんでだろうね~?」
海未「くっ……」
ことり「そ、それよりもそろそろ下に行った方がいいんじゃないかなぁ?」
穂乃果「あ、そっか。もうすぐご飯の時間だもんね」
海未「もうそんな時間ですか」
ことり「穂乃果ちゃんたちといるとあっという間に時間が経っちゃう」
穂乃果「ほんと、ほんと。3人で遊んでると時間のことなんか忘れちゃうよ~」
海未「そうですね」
穂乃果「やっぱり3人でいると楽しいからかな?」
ことり「きっとそうだよ」
海未「私もそう思いますよ」
ことり(それに穂乃果ちゃんと海未ちゃんが傍にいるって感じられて、ことりとっても落ち着くんだぁ)
海未(3人でいるからこそ、このひと時が楽しく感じますし、不思議な安心感がありますね)
穂乃果母「3人とも降りてらっしゃい。夕飯の支度ができたわよ」
穂乃果「は~い。今日のご飯は何かな~?」
海未(いつまでもこうして3人でいられたら……)
ことり(ずっとずっとこのままでいられないかな……)
穂乃果「2人とも、すっごく楽しそうな顔してるけど……何か良いことあったの?」
海未「ええ。とても楽しいですよ」
ことり「ことりも今がすっごく楽しいんだぁ」
穂乃果「そっか。穂乃果も今が一番楽しいかな」
雪穂「お姉ちゃん、早くしなよ! ご飯冷めちゃうじゃん」
穂乃果「ごめん、ごめん」
雪穂「まったく、もう……急いでよね。あ、海未さん、ことりさんいらしてたんですね。いつも姉がお世話になっています」
穂乃果「いつもってわけじゃ……」
雪穂「いつもじゃん」
穂乃果「うぐ……」
海未「まあまあ雪穂、穂乃果をお世話するのはいつものことですから大丈夫ですよ。それと今日は泊まりになるので、よろしくお願いしますね」
ことり「雪穂ちゃん、今日はよろしくね♪」
雪穂「こちらこそよろしくお願いします。それじゃお姉ちゃん、下で待ってるからね」
穂乃果「あ、うん」
海未「相変わらず仲が良いですね」
穂乃果「ま、まあね~」
ことり「雪穂ちゃんはお姉ちゃん想いだね」
穂乃果「そ、そうかな? 今みたいにいつもいろいろ言われて大変なんだけど……」
ことり「それだけ穂乃果ちゃんのことを気にかけてくれてるんだよ」
穂乃果「そうなのかな~?」
ことり「そうだよっ」
海未「雪穂も大変でしょうね。こんなだらしない姉をもって」
穂乃果「だ、だらしないは余計だよっ。……そりゃあ雪穂に比べたらそうかもしれないけど」
海未「ふふっ」
穂乃果「笑わないでよ、海未ちゃん!」
ことり(雪穂ちゃん、穂乃果ちゃんのこと好きなんだろうなぁ。……いいなあ、いつも一緒にいられて)
海未(なんだかんだで穂乃果は雪穂のことを本当に大切に思っているんですよね。……羨ましいです)
穂乃果「もうおなかいっぱい」
ことり「ことりもたくさん食べちゃった」
海未「あんなに美味しいと箸が自然に進みますね」
穂乃果「ふぁ~……なんだか眠くなってきちゃった」
海未「食べてすぐ寝ると身体に良くないですよ」
穂乃果「わかってるけど、眠いったら眠いんだよ~」
海未「はぁ……ことりも何か言ってやってください」
ことり「えっ! う、う~ん……ことりは穂乃果ちゃんがやりたいようにしたら、それでいいと思うなぁ」
海未「ことり……」ジトッ
ことり「こ、ことりには無理だよぉ」
穂乃果「ことりちゃんは穂乃果の味方だもんねっ」
海未「まったく、ことりは穂乃果に甘すぎますよ」
ことり「ご、ごめんなさい」
穂乃果「海未ちゃんは逆に厳しすぎるって、穂乃果は思うんだけど」
海未「これくらい厳しくしないと穂乃果のためになりませんから」
穂乃果「もう少しだけ……優しくしてくれない?」
海未「考えておきます」
穂乃果「そ、そこは頷くところじゃないの~?」
ことり「まあまあ、穂乃果ちゃん。海未ちゃんも穂乃果ちゃんのためを思って、厳しく言ってるんだよぉ」
穂乃果「そ、それはわかってるよ」
海未「そんなに嫌なら少しは自分の生活態度を改めようと努力するべきです」
穂乃果「それができたら海未ちゃんに怒られてないんだよっ」ドヤッ
海未「なぜそんなことを得意げに言うんですか……」
ことり「穂乃果ちゃん……」
穂乃果「う……」
海未「とにかく、穂乃果もそろそろ自分でしっかりするようにしてくださいね」
穂乃果「が、頑張ります」
ことり「でも、無理はしちゃダメだよ? 何かあったらことりに相談してほしいな♪」
穂乃果「ことりちゃん……! ありがとう!」ギュッ
ことり(穂乃果ちゃんの身体、とっても温かい……それにいい匂いがするよぉ)
海未「ことりの言う通りです。無理は禁物ですよ、穂乃果。それにことりだけでなく、私もいますからね」
穂乃果「もちろん、海未ちゃんも頼りにしてるよっ」ギュッ
海未「い、いきなり抱き着かないでください、穂乃果! は、恥ずかしいです」
穂乃果「え~、そうかな?」
海未「そ、そうなんです!」(ああ、穂乃果に抱きしめられてます。……とても温かくて気持ちいいです)
穂乃果「穂乃果は恥ずかしくないよ」
海未「わ、私が恥ずかしいんです!」
ことり「海未ちゃん、顔が真っ赤だね。それならことりもぉ」ギュッ
穂乃果「こ、ことりちゃん!? てっきり海未ちゃんに抱き着くと思ってたよ」
ことり「穂乃果ちゃん、あったか~い♪」
海未「ほ、穂乃果、離れてもらえませんか? は、恥ずかしすぎて火が出そうです」
穂乃果「う~ん……ことりちゃんが離れてくれないと無理かな」
海未「なっ!? こ、ことり!」
ことり「離れませ~ん♪」
穂乃果「じゃあ穂乃果も離れないよ」
海未「そ、そんな……!」
ことり(こうやっていると、いつまでも3人でいられるって思えるから。しばらく離れたくないの……ごめんね、海未ちゃん)
穂乃果「こうしてると、この先もずっとこの3人でいられるって気がするよね」
ことり「!」
海未「え、ええ。そうですね」(確かにそんな気持ちで一杯になります)
穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん。穂乃果はずっと2人と一緒にいるよ?」
ことり「穂乃果ちゃん……」(もしかして気付いてたの……?)
海未「穂乃果……」(気付いていたのですか? ……私とことりが寂しがっていることに)
穂乃果「だから、心配しなくても2人を置いてどこかに行ったりなんかしないよ。それに仮にそうなっちゃったとしても、2人には一番最初に伝えるからね」
ことり「本当に?」
穂乃果「穂乃果、嘘はつかないよ」
海未「その……約束してくれますか? ずっと一緒にいることを」
穂乃果「ずっと一緒にいられるかはわからないけど……でも約束するよっ。2人を置いていったりしないって」
ことり「約束だね」
海未「約束です」
穂乃果「うんっ。約束」
ことり(約束……絶対だよ、穂乃果ちゃん)
海未(約束は必ず守ってくださいね、穂乃果)
穂乃果「もしもし希ちゃん?」
希『ああ穂乃果ちゃん、2人は大丈夫やった?』
穂乃果「うんっ。心配いらないよ」
希『それなら良かったわ』
穂乃果「それにしても希ちゃんに言われるまで、私全然気付かなかったよ」
希『穂乃果ちゃんはみんなと一緒に遊ぶの、純粋に楽しんでたもんな』
穂乃果「あ、あははは……そうなんだよね」
希『ウチはそういうところ、穂乃果ちゃんらしいなぁって思うよ』
穂乃果「えへへ」
希『ただ前にも言われただろうけど、周りにもちゃ~んと目を向けておかんといけんよ?』
穂乃果「う、うん」
希『特に海未ちゃんやことりちゃんには気を付けてあげて。まあウチが言わんでも穂乃果ちゃんなら分かってるやろうけど』
穂乃果「ううん、そんなことないよ。希ちゃんに言われるまで私、2人のこと気付いてあげられなかったもん。だから何かいけないところがあったら遠慮なく言ってほしいんだ」
希『穂乃果ちゃん……』
穂乃果「とりあえず、これからはちゃんとみんなのこと見るようにして気を付けるよっ」
希『うんうん。いい心掛けやん』
穂乃果「でしょでしょ? それじゃ、長話もあれだからそろそろ切るね」
希『うん。それじゃ、また今度』
穂乃果「それじゃあね~。本当にありがとね、希ちゃん」
希『…………』
海未「穂乃果、お風呂空きまし……誰かと電話してたんですか?」
穂乃果「あ、おかえり海未ちゃん。ちょっと希ちゃんとね」
海未「そうなんですか」(希と……何の話をしていたんでしょうか?)
ことり「ふぅ。いいお湯でした♪」(3人で入りたかったなぁ)
穂乃果「それじゃ、お風呂入ってくるね」
海未「ええ」
ことり「いってらっしゃい♪」
穂乃果「いや~、今日も遊んだね~」
ことり「楽しかったねぇ」
海未「そうですね。今日はもう遅いですし、そろそろ寝ましょうか」
穂乃果「え~! 穂乃果まだ眠くないよ~」
ことり「ことりもまだお話したいな」
海未「ですが……」
穂乃果「それに少しくらい夜更かししても明日は休みなんだから大丈夫だよっ」
ことり「そうだよぉ」
海未「ことりまで……! 2人とも明日は朝早くから宿題をすると決めていたではありませんか!」
穂乃果「確かに宿題をするって決めてたけど、時間までは決めてなかったはずだよね?」
海未「え!? そ、そんなはずは……!」
ことり「海未ちゃんの中では決まってたことみたい」
穂乃果「海未ちゃん……」
海未「い、いいじゃないですか! いずれやることになるんですから」
ことり「それはそうだけど」
穂乃果「でも、朝早くからやりたいとは思わないかな」
海未「そ、そうですか……」
ことり「と、とにかく明日のことは明日決めよう?」
穂乃果「そうそう。今はおしゃべりすることの方が大事だよっ」
海未「はぁ」
穂乃果「海未ちゃん、テンション低いよっ」
海未「夜なんだから当然です」
ことり「穂乃果ちゃんはテンション高いね」
穂乃果「もちろんだよっ。今日は2人といっぱいお話ししたいからね」
海未「!」
ことり「ねえ、海未ちゃん。海未ちゃんは本当にお話ししたくないの?」
海未「そ、そんなことはありません!」
穂乃果「じゃあ今日は夜更かししようよ!」
ことり「3人で話すんだから、少しくらい寝るのが遅くなっても仕方ないよぉ」
海未「え、ええ。仕方ありませんね」
穂乃果「やった!」
ことり「それじゃあ、何話そっか?」
海未(これは仕方ないんです。そう、穂乃果とことりの3人の時間を大切にしたい。だから決して悪いことではありません!)
穂乃果「じゃあ最近あったこととか!」
ことり「う~ん……」(穂乃果ちゃんと全然話せなかったことくらいしか思い浮かばないよぉ)
穂乃果「ことりちゃんは考えてるみたいだから……海未ちゃんは何かあった?」
海未「わ、私ですか? そうですね……」
穂乃果「あ、お稽古の話はなしだよ?」
海未「家で日舞の稽古などを……え?」
穂乃果「当たり前だよっ」
海未「…………」(困りました……。穂乃果と話せない寂しさを稽古で発散させていたので、本当に何もしていないのですが)
穂乃果「…………」
ことり「あっ」
穂乃果「ことりちゃん、何かあったの!?」
ことり「そういえばことり、無意識にお裁縫してたときがあったの」
穂乃果「無意識に!? ねえねえ、何を作ったの?」
ことり「そ、それは……」(穂乃果ちゃんのお人形さんを作ってたなんて言えないよぉ)
穂乃果「それは?」
ことり「お人形さん、だよ?」
海未(なぜ疑問形なんでしょう?)
穂乃果「すご~い! さすがことりちゃんだね」
ことり「あ、ありがとう」
海未「どんな人形を作ったのか、ぜひ見せてもらいたいものです」
穂乃果「そうだねっ」
ことり「う、うん。今度見せてあげるね」
穂乃果「わ~い、楽しみだなぁ」
海未「ことりのことですから、さぞ良いものができたんでしょうね」
ことり「う、うん」(確かにすごく上手にできたんだけど……さすがに見せられないかなぁ。何か別のものを用意しておかなきゃ)
穂乃果「それで海未ちゃんは最近どうだったの?」
海未「私は……特には何もありませんでしたね」
穂乃果「す、少しくらいは……」
海未「すみません、本当に稽古くらいしか思い浮かばないのです」
穂乃果「そ、そっか」
ことり「相変わらず海未ちゃんは大変だね」
海未「今までやってきたことですから、そこまで大変ではないですよ」
穂乃果「穂乃果が海未ちゃんと同じことしたら、すぐ倒れちゃう気がするよ」
ことり「ことりも無理かなぁ」
海未「ふふっ。大丈夫ですよ、2人とも。慣れてしまえばどうってことはありませんから」
穂乃果「……それって慣れるまでが大変ってことだよね?」
海未「そうなるんでしょうか?」
ことり(海未ちゃんって超人なのかな?)
穂乃果「ほ、穂乃果に聞かれてもわかんないよっ」
海未「でしたら、一度体験してみますか?」
穂乃果「遠慮します……」
ことり「ことりも……ちょっとぉ」
海未「ふふっ。冗談ですよ」
穂乃果「だ、だよね~」
ことり(本気で言ったのかと思っちゃった)
海未「でも体験してみたかったら、いつでも言ってください。すぐにできますので」
穂乃果「そ、そろそろ時間も遅いから寝よっか」
ことり「そ、そうだね」
海未「そうですね……って穂乃果は自分のベッドがあるでしょう?」
穂乃果「え~、いいじゃんいいじゃん! 穂乃果だけ仲間外れは嫌だよっ」
海未「しかし、さすがに3人だと狭いと」
穂乃果「大丈夫、大丈夫。こうすれば」
ことり「うん、とってもあったかいね♪」
海未「ふ、2人ともくっつき過ぎではないですか?」
穂乃果「でもこうしないと3人で寝られないし……」
ことり「それにこっちの方が気持ちよくて、よく眠れそうだよ?」
海未「そ、そうかもしれませんが」
穂乃果「もうっ、これでいいの! 2人ともおやすみ~」
ことり「おやすみなさい♪」
海未「ちょ、ちょっと2人とも!」
穂乃果「すぅ……すぅ……」
ことり「」スヤスヤ
海未「ほ、本当に寝てしまったのですか!?」
穂乃果「ぐ~」
ことり「」スヤスヤ
海未「……仕方ありませんね」
穂乃果「えへへ……海未ちゃん……ことりちゃん」
ことり「」スヤスヤ
海未「……2人ともおやすみなさい」
希「それで、昨日は海未ちゃんたちとお出掛けしたん?」
穂乃果「うんっ。でも1日の半分は勉強だったんだけどね」
にこ「さすがね。休みの日に勉強なんてありえないわ」
穂乃果「海未ちゃんは真面目だからね。本当は穂乃果もやりたくなかったんだよ」
希「まあいいやん。そのおかげで今日はゆっくり遊べるんやから」
穂乃果「それもそうだね」
にこ「それより海未とことりはもう大丈夫なの?」
穂乃果「大丈夫! 穂乃果がバッチリ解決したよっ」
にこ「そう。なら良かったわ」
希「だから言ったやん。穂乃果ちゃんに任せたら大丈夫だって」
にこ「そうね」
穂乃果「ごめんね、心配かけちゃって。穂乃果が早く気付いてたら良かったんだけど……」
希「いいんよ穂乃果ちゃん。ウチらがたまたま気付いただけなんやし」
にこ「それに1人でできることなんてたかが知れてるでしょ? 私たちは仲間なんだから、そういうとこをフォローすればいいだけよ」
希「おっ。にこっち、良いこと言うやん」
穂乃果「2人とも、ありがとう」
にこ「お礼なんていいわよ」
希「それじゃ報告も済んだみたいやし、焼き肉でも食べに行かん?」
にこ「昼から焼き肉になんて行ってどうすんのよ!」
穂乃果「いいねいいね! 行こうよ、焼き肉」
にこ「アンタ、正気!?」
希「それじゃ多数決で焼き肉に決定や。ウチの行きつけの焼き肉屋に行こっか」
穂乃果「賛成!」
にこ「え!? これってにこがおかしいの!?」
希「にこっち、はよ来んと置いていくよ~」
穂乃果「にこちゃん、早く~」
にこ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
ことり「もしもし、海未ちゃん」
海未『どうしましたか、ことり』
ことり「今日、穂乃果ちゃんは希ちゃんとにこちゃんと遊んでるんだよね?」
海未『昨日そう言っていましたから、恐らくそうでしょう』
ことり「……今頃何をしてるんだろうね」
海未『……お昼を食べているのでは?』
ことり「そ、そうだよね! ごめんね、変なことで電話しちゃって……」
海未『いえ、大丈夫ですよ。それよりことりは何が不安なのですか?』
ことり「えっ?」
海未『……私には今のことりは何かに怯えている。そんな気がします』
ことり「そ、そんなことないよぉ」
海未『そうですか……?』
コンコン
親鳥「ことり、今いいかしら?」
ことり「あ、ちょっと待って。それじゃお母さんに呼ばれてるからもう切るね」
海未『ええ。また明日学校で会いましょう』
ことり「うんっ。また明日」
ことり(なんでだろう? 海未ちゃんと穂乃果ちゃんと一緒にいないと、すごく寂しい……なんだか落ち着かないよぉ)
親鳥「ことり、もういいかしら?」
ことり「あっ、いいよ」
親鳥「申し訳ないんだけど……ちょっとお遣いに行ってくれないかしら? 今、少し手が離せなくて」
ことり「大丈夫だよ」
親鳥「ありがとう。助かるわ」
ことり「それで、何を買ってくればいいの?」
親鳥「このメモに書いてあるものを2つずつ買ってきてちょうだい」
ことり「わかったよ」
親鳥「お願いね」
ことり「うんっ。いってきます」
ことり「あと……これとこれを買ったら、終わりかなぁ」
??「ことり?」
ことり「あっ、絵里ちゃん。こんなところでどうしたの?」
絵里「私はちょっと買い出しに来てるの。……ことりこそどうしてここに?」
ことり「ことりも、絵里ちゃんと一緒だよ♪」
絵里「そうなのね。ねえことり、もし良かったら少しの間だけど……一緒にお買い物しない?」
ことり「もちろん、いいよ」
絵里「ありがとう。それじゃ行きましょうか」
ことり「うん♪」
絵里「そういえば、ことりは何を買うの? ……私は野菜を買うつもりなんだけど」
ことり「ことりはお肉かなぁ」
絵里「……見事に逆方向になっちゃったわね」
ことり「そ、そうだね」
絵里「それじゃ、まずはことりの方から行きましょうか。……そっちの方が効率がいいみたいだし」
ことり「あ、そっか。野菜売り場の方がレジに近いもんね」
絵里「そういうことよ」
ことり「さすが絵里ちゃん」
絵里「でしょ? ……あれって希たちじゃない?」
ことり「え? どこ?」
絵里「ほら、外を歩いてる3人組」
ことり「あっ、本当だね」(穂乃果ちゃんたち、どこに行くのかな……)
絵里「こうしてみると希って、穂乃果とにこのお姉さんみたいね」
ことり「そうだね」
絵里「ふふっ。3人とも楽しそうでいいわね」
ことり「……うん」(穂乃果ちゃんと一緒、羨ましいなぁ。ことりも穂乃果ちゃんの隣にいたいよ)
絵里「ことり?」
ことり「…………」(どうして、ことりはここにいるのかな……もしかしてことりじゃダメなのかな)
絵里「ことり」
ことり「あっ、ご、ごめんね絵里ちゃん。ちょっとボーっとしてたみたい」
絵里「それならいいけど……大丈夫?」
ことり「だ、大丈夫だよ」
絵里「そう……あんまり無理しちゃダメよ」
ことり「うんっ。そろそろお買い物の続きをしないとね」
絵里「そうね」
ことり(穂乃果ちゃん、本当にずっと一緒にいてくれるんだよね? 離れたりしないよね? 信じて、いいんだよね……?)
穂乃果『海未ちゃん、どうしたの?』
海未「少し気になったことを話しておこうと思ったんですが、時間は大丈夫ですか?」
穂乃果『大丈夫だよ。それで気になったことって?』
海未「ええ。今日の昼頃にことりから電話がかかってきたんです」
穂乃果『ことりちゃんから? もしかしてことりちゃんの身に何かあったの?』
海未「いえ、普通の電話でしたよ」
穂乃果『よかった。ことりちゃんに何かあったのかと思っちゃったよ』
海未「もしそうだったら、こんな遅くに電話したりしませんよ」
穂乃果『そ、それもそうだね……あはは』
海未「それでその電話の内容も特別なことではなかったんです」
穂乃果『ふむふむ』
海未「ですが、そのときのことりは何かに怯えてるような……そんな気がしたんです」
穂乃果『何かに怯えてる……?』
海未「その……私もハッキリとは言えないんですが、なぜかそう感じたんです」
穂乃果『う~ん……何か嫌なことでもあったのかな?』
海未「それは分かりませんが、なんだかいつものことりらしくなかったのは確かです」
穂乃果『じゃあ明日ことりちゃんに聞いてみようよ』
海未「ええ。もしかしたら何か抱え込んでいるのかもしれません」
穂乃果『うんっ。それで何か手助けできることがあるかもしれないもんね』
海未「そうですね」
穂乃果『よ~し、明日はことりちゃんのために穂乃果、ひと肌脱いじゃうよっ』
海未「その前に明日はきちんと早起きしてくださいね」
穂乃果『わ、わかってるよ~』
海未「だといいのですが」
穂乃果『もう穂乃果だってやればできるんだから、大丈夫だよっ』
海未「ふふっ。そうでしたね。穂乃果はやればできますよ」
穂乃果『……それって褒めてる?』
海未「ええ、まあ」(3割ほどは違いますが)
穂乃果『えへへ、海未ちゃんに褒められると嬉しいなぁ』
海未「……とにかく、明日は寝坊しないでくださいね」
穂乃果『は~い』
海未「では、おやすみなさい穂乃果」
穂乃果『おやすみ~』
海未(”海未ちゃんに褒められると嬉しい”ですか)
海未「ふふっ。なんだか胸の奥が温かくなりますね」(ああ穂乃果……私も貴女に喜んでもらえるととても嬉しいです)
~♪
海未「ことりから電話ですか。もしもし」
ことり『……海未ちゃん、時間大丈夫かな?』
海未「大丈夫ですよ。どうしましたか?」
ことり『その……ちょっと海未ちゃんとお話したくなったから電話したの』
海未「そうなんですか。私は構いませんよ」(様子がおかしいですね……やっぱり何かあるのでしょうか)
ことり『ありがとう海未ちゃん。今日ことりね、お母さんに頼まれてお買い物に行ったんだけど』
海未(昼のあのときですかね)
ことり『そこで絵里ちゃんと偶然会ったんだぁ』
海未「絵里とですか?」
ことり『うん♪ ことりもビックリしちゃった』
海未「ふふっ。確かにバッタリ会ったら一番驚く相手ですね」
ことり『それで一緒にお買い物したんだけど、絵里ちゃんって意外に子供っぽいの』
海未「子供っぽい……?」
ことり『最初はお野菜とか買うつもりだったみたいなんだけど、お菓子コーナーの前を通ったときにちょうどチョコの特集をしてたの。それを見た絵里ちゃんが”ハラショー……!”って言ったのと同時に、チョコのお菓子を2つか3つくらい籠の中に入れたの』
海未「そういえば絵里はチョコレートが好きって言ってましたね」
ことり『とっても好きなんだと思うよ。だってそこで10分くらい立ち止まってたもん』
海未「10分もいたんですか!?」
ことり『うん。いっぱいチョコがあったみたいで、どれを買うか迷っちゃったみたい』
海未「想像できませんね。でも確かに子供っぽいですね」
ことり『でしょ? あのときの真剣な顔でチョコを選ぶ絵里ちゃん、可愛かったなぁ』
海未(そこまで真剣に選ばなければいけないものなのでしょうか?)
ことり『それで結局全部を1個ずつ買ったみたいで、籠の中がチョコだらけになってたよ』
海未「全部買ったんですか……」
ことり『絵里ちゃん、すっごく嬉しそうだったよ。それでも買い過ぎじゃないかなぁってことりは思ったけど』
海未「どれくらい種類があったんですか?」
ことり『たぶん……16種類くらいかな』
海未「買い過ぎです」
ことり『やっぱり海未ちゃんもそう思うよね』
海未「そんなにたくさん買ってどうするんですか絵里は……」
ことり『でも好きなものだから、つい買っちゃうんだと思うな』
海未「ふふっ。そうなんでしょうね」
ことり『今度は皆でお買い物に行ってみたいな』
海未「そうですね。とても楽しそうです」
ことり『明日絵里ちゃんに相談してみるね』
海未「それがいいかもしれません」
ことり『あっ、もうこんな時間なんだ。ことり、そろそろ寝るね。遅くまでお話してくれてありがとう、海未ちゃん』
海未「私もことりのおかげで楽しい時間を過ごせました。ありがとうございます、ことり」
ことり『どういたしまして♪ それじゃ、おやすみ海未ちゃん』
海未「おやすみなさい、ことり」(さて、私も寝ましょうか)
穂乃果「おっはよ~」
海未「おはようございます、穂乃果」
穂乃果「あれ? 海未ちゃん、ことりちゃんは?」
海未「それが何も聞いてないのです。穂乃果は何か知りませんか?」
穂乃果「ううん、何も聞いてないよ」
海未「そうですか……何かあったのでしょうか?」
穂乃果「もしかしたら寝坊しちゃったのかな」
海未「ことりは穂乃果じゃないんですから」
穂乃果「ちょっと言ってみただけなのに……酷いよ、海未ちゃん」
海未「す、すみません穂乃果」
穂乃果「……それにしてもことりちゃん、本当にどうしちゃったんだろう」
海未「連絡してみましょうか」
穂乃果「そうだねっ。何かあったら心配だもん」
海未「少し待ってくださいね。電話してみますから」
穂乃果「うん」
海未「…………」
穂乃果「…………」
海未「……出ませんね」
穂乃果「もしかしたらことりちゃんの身に何かあったのかも」
海未「縁起でもないことを言わないでください!」
穂乃果「ご、ごめんね」
海未「まったく……しかし、ことりに連絡がつかないというのは不安ですね」
穂乃果「そうだね……あ、そうだ! 今からことりちゃんの家に行けばいいんだよっ」
海未「ですが、時間が……」
穂乃果「もうっ! 海未ちゃんはことりちゃんのことが心配じゃないの!?」
海未「そ、そんなことは言ってません!」
穂乃果「じゃあ、ことりちゃんのところに早く行こうよっ」
海未「もう……仕方ありませんね。では学校に遅れることを連絡しま」ガシッ
穂乃果「ことりちゃ~ん、今行くからね~!」タッタッタ
海未「ほ、穂乃果、まだ連絡ができて……! ああ、もう! じ、自分で走れますから手を引っ張らないでくださぁぁぁい!」
ことり「急がないと……!」バタバタ
ことり(ことりのバカぁ……! 昨日あまり寝付けなかったからって、寝坊しちゃうなんて……)
??『お~い、ことりちゃ~ん!』
ことり「ほ、穂乃果ちゃん!?」
穂乃果『ことりちゃ~ん、いないの~?』
海未『大声で呼ばなくても、インターホンを鳴らせばいいと思うんですが……』
穂乃果『あ、そっか』
ことり「海未ちゃんも……!」(ど、どうしよう! まだ準備ができてないのに)
ピンポーン
ことり「穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ごめんね。まだ準備ができてないの」
穂乃果『そうなんだ。待ってるからゆっくりで大丈夫だよ~』
海未『ことりが寝坊なんて珍しいですね』
ことり「う、うん。ごめんね」
穂乃果『気にしなくていいよ。穂乃果もよく寝坊しちゃうし……』
海未『穂乃果は寝坊しすぎですけどね』
穂乃果『ま、まあそうだけど……今は言わなくてもいいじゃん』
海未『とにかく、ことりは準備を優先してください』
ことり「うんっ。できるだけ急ぐね」(急がないと……2人に迷惑かけちゃう)
ことり「お、お待たせ!」
穂乃果「ことりちゃん、何もなくて良かったよ」
ことり「ごめんね。ことりのせいで2人とも遅れちゃうことに……」
海未「いいのですよ、ことり。誰だって失敗はありますから」
ことり「うん……」
穂乃果「それじゃ、学校に行こっか」
海未「ええ」
ことり「急がないとね」
海未(ことりが寝坊するなんて……やはり何か悩みがあるんでしょうね)
ことり(明日から気を付けないと……2人に迷惑がかからないように)
穂乃果「いや~、今日もパンがうまいっ」
海未「今日もパンですか」
ことり「穂乃果ちゃんはパンが好きだねぇ」
穂乃果「だっておいしいんだもん」
海未「栄養が偏ってしまいますよ」
穂乃果「大丈夫、大丈夫~」
海未「……太りますよ?」
穂乃果「んぐっ!?」
ことり「う、海未ちゃん……」(さすがに直球過ぎるよ……)
穂乃果「こ、怖いこと言わないでよっ!」
海未「私は事実を言ったまでです」
穂乃果「そ、そうかもしれないけど……! もう少しオブラートに言ってほしいかな~」
海未「それでは穂乃果のためにはなりませんから」
穂乃果「わ~ん! 海未ちゃんがいじめるよっ。助けてことりちゃん!」ギュッ
ことり「わっ」(穂乃果ちゃん、とっても温かい……それになんだか気持ちいいよぉ)
海未「また穂乃果は……。ことりも何か言ってやってください」
ことり「え、えっとぉ」(ふふっ。海未ちゃん、穂乃果ちゃんのお母さんみたい)
穂乃果「ことりちゃんは穂乃果の味方だもんねっ」
ことり「ことりは2人の味方だよ?」(どっちかを選ぶなんてできないよぉ。だってことりは2人のこと大好きだもん)
海未「だそうですよ、穂乃果」
穂乃果「え~! ことりちゃん、穂乃果の味方じゃないの?」
ことり「そんなことないよっ。ことりは穂乃果ちゃんの味方だよ! けど、海未ちゃんの味方でもあるのです!」
穂乃果「つまり……中立ってこと?」
海未「そういうわけではないと思います」(ことりは3人で仲良くしていたいんですね)
穂乃果「どういうこと?」
ことり「えっとね、ことりは2人のことが大好きってことだよ♪」
ことり(離れたくないくらい好き! ずっと、このまま……でも、もしかしたら……)
穂乃果「穂乃果もことりちゃんと海未ちゃんのこと、大好きっ!」ダキッ
海未「ふ、2人とも! ここは学校ですからこういうことは控えて……」
ことり「」ギュッ
海未「ことり?」(微かにことりの身体が震えているような……気のせい、でしょうか)
穂乃果「2人ともあったかいね~」
海未(穂乃果は気付いていないようですし……勘違いみたいですね)
ことり「うんっ。ポカポカだね♪ それになんだかとっても安心しちゃう」
穂乃果「うんうん!」
海未「それは良いことなのですが……恥ずかしいです」
穂乃果「でも気持ちいいよねっ」
海未「それは……まあ暖かいですし」
穂乃果「問題なしだねっ」
ことり「海未ちゃんも気持ちいいんだもんね」
海未「そ、それとこれとは話が別です!」
穂乃果「恥ずかしがらなくてもいいと思うよ」
ことり「3人が仲が良い証拠だもんね」
穂乃果「ね~」
海未(くっ……! なぜこういうときは2人の息がぴったりなんですか)
ことり(恥ずかしがる海未ちゃん、可愛い♪)
穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん、一緒に帰ろうよ」
海未「もちろん、いいですよ」
ことり「うんっ」
穂乃果「せっかくだし、どこかに寄ろうよっ! このまえのリベンジだよ」
海未「そうですね。ゆっくり話したいこともありますし」
ことり(穂乃果ちゃんと海未ちゃんと放課後も一緒にいられるなんて、すっごく嬉しい)
穂乃果「そうと決まったら出発だよ」
海未「ええ。どこに寄りましょうか」
ことり「ことりはどこでもいいよ」(2人と一緒だったら、どこでも楽しいもん)
穂乃果「じゃあ、最近できたクレープ屋さんに行こうよっ! あそこのクレープおいしいんだよ」
海未「!」(あそこですか)
ことり「!」(あそこのクレープ屋さんかぁ……)
穂乃果「あれ? もしかして嫌だった?」
海未「そんなことはないですよ。そうですよね、ことり」
ことり「…………」(穂乃果ちゃん、絵里ちゃんと一緒に食べてるもんね)
海未「ことり?」
ことり(絵里ちゃんが穂乃果ちゃんを誘わなかったら……もしかしたら3人でもっと楽しく食べられたかもしれないのに)
穂乃果「ことりちゃん?」
ことり(……がいなければ……ことりたちが……)
海未「ことり、どうかしたのですか?」
ことり「あっ、ご、ごめんね。ちょっと考え事してて……」(ことり、今最低なことを……)
穂乃果「ことりちゃん、大丈夫?」
海未「顔色があまり良くないみたいですが」(急にどうかしたんでしょうか? もしかして風邪を引いたのかもしれませんね)
ことり「だ、大丈夫だよぉ。確かクレープ屋だったよね? 早く行こう」
穂乃果「でもことりちゃん、いいの?」
ことり「えっ?」
穂乃果「だってすごく気持ち悪そうだよ?」
ことり「そ、そんなことないよ」
海未「ですが、ことり。体調が悪そうにしか……」
ことり「大丈夫だよっ!」
穂乃果「!」ビクッ
海未「!」ビクッ
ことり「あ……」
穂乃果「ね、ねえ、ことりちゃん。何かあったの?」
ことり「な、何もないよ。きょ、今日はことりもう帰るね。それじゃあ」タッタッタ
海未「ことり、待ちなさ……行ってしまいましたね」
穂乃果「うん。逃げられちゃったね……」
海未「あんなに大きな声を出したことりは初めて見たかもしれません」
穂乃果「そうだね」
海未「よっぽど深刻なことなのかもしれません」
穂乃果「ことりちゃん……」
海未「絵里や希……いえ、全員に話しておいた方がいいでしょうね」
穂乃果「……今からみんなに話そう」
海未「今からですか?」
穂乃果「こういうことは早い方がいいと思うからね」
海未「……分かりました。部室に今から集まってもらいましょう」
穂乃果「じゃあ穂乃果は絵里ちゃんたちのところに行ってくるね」
海未「では、私は真姫たちのところへ行きます」
穂乃果「それじゃ海未ちゃん、部室でね」
海未「ええ」(ことり……一体どうしたというんですか?)
絵里「ことりの様子がおかしい?」
海未「はい。何か悩みを抱えてるんだと思います」
希「その悩みは具体的に分かってないんやね?」
穂乃果「うん。今日の帰りに聞こうと思ったんだけど……」
にこ「失敗したってわけね」
海未「すみません……」
穂乃果「ごめんなさい……」
にこ「別に責めてるわけじゃないわよ」
絵里「……誰かことりの悩みを聞いてないかしら?」
希「ウチは聞いてないなぁ」
真姫「私も知らないわ」
花陽「わ、わたしも……聞いてない、かな」
凛「凛も知らないにゃ」
にこ「そもそも2人が聞いてない時点で、誰も知らないと思うわ」
絵里「そうよね……何か手掛かりがないかしら」
希「う~ん……ウチはなんとなくなんやけど、穂乃果ちゃんと海未ちゃんが関係してると思うんよ」
海未「私たちがですか?」
穂乃果「それってどういうこと?」
希「ウチにもわからん。ただの直感やからね」
海未「直感ですか」
にこ「それでよく言えるわね」
凛「でもでも、希ちゃんの直感ってよく当たるから」
花陽「もしかしたら……」
真姫「いくら希の直感がよく当たるからって、それが全て正しいってわけじゃないんじゃない?」
凛「あ、そっか」
花陽「そ、そうだよね……」
絵里「……まずはことりの悩みが何か知る必要があるわね」
穂乃果「じゃあみんなでことりちゃんと話すのが一番だよっ」
にこ「みんなで一斉に悩みを聞くなんて無理に決まってるでしょ!」
希「逆に話しづらいもんなぁ」
穂乃果「いい考えだと思ったんだけどなぁ」
海未「それなら、毎日1人が代表してことりと行動を共にするというのはどうでしょう?」
絵里「それはいい考えだわ」
真姫「私は1人よりも2人の方がいいと思うけど」
希「真姫ちゃんの言う通り、ウチも2人の方が良さそうな気がするわ」
絵里「じゃあ1人じゃなく2人で決まりね。……いいかしら海未?」
海未「ええ」
凛「凛はかよちんとペアを組む!」
花陽「凛ちゃん、頑張ろうね……!」
にこ「にこは~真姫ちゃんと組もうかな~?」
真姫「……別に誰でもいいけど」
にこ「ちょ、そこは素直に喜びなさいよ!」
穂乃果「じゃあ穂乃果は海未ちゃんと!」
絵里「私は希とね」
希「ペアは決まったから、明日は誰から行くか決めよっか」
海未「私と穂乃果が行きます」
穂乃果「今日の失敗を取り戻したいからねっ」
絵里「それじゃ明日は2人で決定ね」
海未「ありがとうございます」
希「明日で解決しちゃうかもしれんね」
真姫「それでもいいんじゃない? ことりの助けになるのが一番なんだし」
にこ「どうかしらね」
凛「にこちゃんは解決するって思わないの?」
にこ「正直、難しいと思うわ」
花陽「で、でも……穂乃果ちゃんたちなら、きっと……」
希「一発解決しちゃいそうやね」
絵里「そうね」
にこ「だといいけど」
ことり(どうしてあのとき、あんな酷いことを考えちゃったんだろう……)
ことり「はぁ……」
ことり(せっかく遊びに行こうって誘ってくれた海未ちゃんと穂乃果ちゃんにも悪いことしちゃったし)
ことり「2人に謝らなくちゃ」
ことり(それで明日こそ一緒にどこかに遊びに行けたらいいな)
ことり「…………」
ことり(そういえば、海未ちゃんと穂乃果ちゃんが顔色が悪いって言ってたけど)
ことり「どこも……悪くない、よね」
ことり(2人の勘違いなのかな?)
ことり「念のために今日は早めに寝ようっと。おやすみなさ~い」
「ことり、あなたは……」
「海未ちゃん、今日は……」
(この声は穂乃果ちゃんと海未ちゃん?)
「い、いえ。なんでもありませんよ。ね、穂乃果」
「う、うんっ」
(2人とも、ことりに何か隠してる……?)
「か、隠し事ですか? ……何もありませんよ」
「こ、ことりちゃんに隠すことなんてないよ」
(2人とも、絶対何か隠してる。ことりには話せないことなの……?)
「そんな顔しないでください、ことり」
「ことりちゃん、笑顔だよっ、笑顔」
(ことりだけ仲間外れなの……?)
「ことり、どうしたのですか? 身体が痛むのですか?」
「保健室、保健室に行こう」
(違う……! 2人はそんなことしない、するわけない……!)
「口を手で押さえて……もしかして吐きそうなのですか!?」
「ほ、穂乃果、絵里ちゃんたちを呼んでくる!」
(ことりは……ことりたちは今まで3人で……!)
「ことり、しっかりしてください!」
(穂乃果ちゃんは……? 穂乃果ちゃんはどこに行ったの?)
「今、穂乃果は人を呼びに行っています。もう少しの辛抱ですよ」
(穂乃果ちゃん、ことりを置いてどこかに行っちゃったんだ……)
「ことり、寒いのですか? 身体がこんなに震えて……」
(もしかして、本当はことりのこと……)
「何か暖かいものは……」
(嘘……ありえないよ、そんなこと)
「そんな不安な顔をしないでください。みんなすぐに来ますよ」
(…………)
「大丈夫ですよ、ことり。本当はみんな分かっているのですから」
(みんな……何を?)
「本当はアナタガサイテイナヒトッテコトヲデスヨ」
(う、み……ちゃん?)
「アナタハイツモヒトヲフコウニシテイク」
(そ、そんな……!)
「ソンナヒトトイッショニイタイナンテ、ダレガオモウ?」
(こ、ことりは何も……!)
「ジャアドウシテ、ドウシテエリヲコロシタ?」
(絵里ちゃんを……殺、した?)
「ジャマダッタンダロ?」
(してない! ことりはそんな酷いこと……!)
「イイヤ、コロシタ」
『ことり』
(え、絵里ちゃんなの……?)
『そうよ』
(ど、どうしたのその傷!? す、すぐに手当しないと……)
『いいえ、その必要はないの』
(えっ……?)
『だってもう死んでるもの……ことり、アナタガワタシヲコロシタカラ』
(やってない、ことりはやってない!)
『ネエ、ドウシテワタシヲコロシタノ……?』
(やめて……来ないで!)
『コタエテ、コタエテヨ』
(ことりは何もしてない!)
『コロシタノハオマエ。オマエガコロシタ』
(ちが……!)
「やっぱりことりちゃんが絵里ちゃんを……」
(ほ、穂乃果ちゃん!? ち、違うの!)
「ことり……あなたは最低ですね」
(う、海未ちゃんまで……!)
「あなた、人として最低ね」
「殺人犯だにゃ~」
「……最低、です」
(ことりは知らない! そんなことしないよっ!)
「うっわ……自分のやったことも認められないなんて、人としてどうなの?」
「えりちと同じ苦しみを味わって、死んじゃえばいいのに……」
(う、うぅ……)
「そうやって泣けば誰か助けるとでも?」
「誰も助けないよ」
(ご、めん……なさ……い)ポロポロ
「人殺し」
「犯罪者」
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)ポロポロ
「人でなし」
「極悪人」
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)ポロポロ
「謝れば許されると思ってんの?」
「そんなんじゃ、えりちが浮かばれるわけないやん?」
(じゃ、じゃあ……どうしたら)
「あそこから飛び降りるの」
(あそこから……?)
「そう」
(…………)
「早く飛び降りなさいよ」
(みんな……絵里ちゃん……ごめんなさい。ことりは……)
「そういうのいいから、早くしてほしいな」
「もう突き落しちゃえ」ドンッ
(あっ……イヤァァァァァ!)
ことり「きゃぁぁぁ!」ガバッ
ことり(ゆ、夢……?)
ことり「良かった……」
親鳥「ことり、どうしたの!?」
ことり「あっ、お母さん。ちょ、ちょっと怖い夢を見ちゃっただけだから……」
親鳥「大丈夫? すごい汗かいてるわよ」
ことり「だ、大丈夫だよ。それより起こしちゃってごめんね」
親鳥「別にいいのよ。ことりが無事ならそれで」
ことり「ありがとう、お母さん」
親鳥「それじゃあ、私は部屋に戻るからね」
ことり「う、うん。おやすみなさい」
親鳥「おやすみ。無理はしないようにね」
ことり(私、迷惑かけてばっかり……)
ことり「本当にみんなを不幸にしちゃうのかな……?」
ことり(結局あの後、眠れなかった……)
海未「おはようございます、ことり」
ことり「おはよう、海未ちゃん。昨日はごめんなさい……」
海未「大丈夫ですよ、ことり。私たちは気にしていませんから」
[あなたは最低です]
ことり「!」ビクッ
海未「どうかしましたか?」
ことり「な、なんでもないよ……本当にごめんね」
[謝って許されるとでも?]
ことり(あ、あれはただの夢だから……気にしちゃダメ)
海未「…………」(昨日よりも調子が悪そうですね)
ことり「ほ、穂乃果ちゃんはまだかなぁ?」
海未「恐らくそろそろ来るかと」
穂乃果「おっはよう、2人とも!」
ことり「おはよう、穂乃果ちゃん」
海未「おはようございます。珍しく今日も遅れませんでしたね」
穂乃果「め、珍しくは余計だよっ」
海未「いつもは寝坊することが多いんですから、珍しいというのがピッタリです」
穂乃果「そ、そこまで頻繁に寝坊してないし!」
海未「頻繁に寝坊しているから、こうして言っているんです!」
穂乃果「うっ……こ、細かいことはいいじゃん!」
海未「全然細かくありません!」
ことり「ふふっ。2人とも漫才してるみたいだね」
海未「ことり、これは漫才なんかでは……!」
穂乃果「漫才か~。海未ちゃん、一緒に漫才師を目指そうよっ。目指すは日本一だよ!」
海未「お断りします! 第一、そんなもの目指してどうするんですか!」
ことり「まあまあ、海未ちゃん。落ち着いて」
海未「そ、そうですね。少し熱くなってしまいました」
穂乃果「もっと熱くなれよっ!」キリッ
海未「熱くなってどうするんですか!」
ことり「ナイスツッコミだよ、海未ちゃん」
穂乃果「これは漫才師を真剣に目指すしかないねっ!」
海未「2人ともいい加減にしてください! 悪ふざけがすぎますよ!」
穂乃果「わっ! 海未ちゃんが怒ったよ、逃げろ~」タッタッタ
ことり「ま、待って穂乃果ちゃん!」タッタッタ
海未「待ちなさい2人とも!」タッタッタ
穂乃果「あはははっ!」
ことり「ふふっ」
海未(ことり、楽しそうに笑っていますね。やっぱりあなたは笑顔が一番ですよ)
穂乃果「ことりちゃん、聞いてもいいかな?」
ことり「えっとぉ……何を聞きたいの?」
穂乃果「今日って宿題あったっけ……?」
ことり「穂乃果ちゃん……」
海未「もしかして、やってきていないのですか?」
穂乃果「う、海未ちゃん! いつの間に!?」
海未「私がいたらマズいんですか……へぇ、そうですか」
ことり(やっぱり宿題やってなかったんだ)
穂乃果「い、いや~……」
海未「穂乃果、学生の本分は何だか分かっていますよね?」
穂乃果「勉強、だよね」
海未「それが分かっているのに、どうして宿題をしていないのですか!」
穂乃果「ちょっと忘れてて……」
海未「忘れていたからといって許されるわけではないんですよ!」
ことり「」ビクッ
穂乃果「わ、わかってるよ」
海未「分かっているならきちんとしてください!」
穂乃果「はい……」シュン
海未「では今日の宿題は写さずに頑張ってください」
穂乃果「そ、それはちょっと……」
海未「頑張ってくださいね」ゴゴゴ
穂乃果「わかりました……」
海未「まったく……穂乃果にも困ったものです。ことりも穂乃果に宿題を写させないようにしてくださいね」
穂乃果「そんな!?」
海未「これくらい当たり前です」
ことり「…………」ブツブツ
海未「ことり、聞いていますか?」(何か言っているみたいですが、声が小さすぎて分かりませんね)
ことり「あ、う、うん」(海未ちゃんはあの夢のことを言ってるわけじゃないのに……)
穂乃果「ことりちゃん、宿題見せて~」
ことり「いいよ。はい、どうぞ」
穂乃果「さすがことりちゃん、ありがとうっ」
ことり「どういたしまして♪」
海未「聞いてないじゃないですか!」
ことり「ふぇ?」
海未「穂乃果に宿題を見せないようにと言ったばかりだというのに」
ことり「ご、ごめんなさい」
海未「はぁ……もういいです。見せてしまったものは仕方ありませんから」
ことり「ごめんなさい……」
海未「次から気を付けてくださいね」
ことり「うん……。本当にごめんなさい」
穂乃果「~♪」
ことり「あれ? 穂乃果ちゃんは?」
海未「希に相談したいことがあるみたいで、お昼は一緒にできないそうです」
ことり「そうなんだ……」
海未「仕方ありませんよ。穂乃果にも都合がありますから」
ことり「わかってるけど……」(3人でいたいよぉ……)
海未「何か不安なことでもあるんですか?」
ことり「う、ううん」フルフル
海未「嘘ですね」
ことり「そ、そんなことない……!」
海未「じゃあどうしてそんなに不安そうな顔をしているのですか?」
ことり「ふ、不安なんかじゃ」
海未「どうして意地を張るんですか、ことり。本当は悩みがあるのでしょう?」
ことり「…………」
海未「あのときみたいに相談してくれないのですか? 私じゃなくとも、穂乃果や絵里たちにもできないのですか?」
ことり「…………」
海未「答えてください、ことり」
ことり「ことりはね、海未ちゃんと穂乃果ちゃんの3人でずっといたいの……」
海未「私もですよ」
ことり「でも、最近は穂乃果ちゃんは絵里ちゃんたちのところによく行っちゃう」
海未「……確かにここのところは3人でいられる機会が少なかったですね」
ことり「うん。だからことり、もしかしたら穂乃果ちゃんはこのままどこかに行っちゃうんじゃないかって思ったら……すごく不安になっちゃって」
海未「そうだったんですか」
ことり「海未ちゃんは心配じゃないの?」
海未「私は特に心配していませんよ」(穂乃果は私たちとずっと一緒にいると言っていましたから)
ことり「そっか……」(3人でいないと不安になるのはことりだけなのかな)
海未「心配せずとも穂乃果は突然いなくなったりしませんよ」
ことり「うん……」
海未(ことりの元気がない理由は分かりましたが、これは本人の気持ちしだいという感じですね)
絵里「今日の練習はここまでにしましょう」
海未「そうですね」(ことりの様子は……あまり変わりないように見えます)
ことり「今日も疲れたね、穂乃果ちゃん」
穂乃果「そうだね~。でもこれからもっと頑張らないとねっ」
にこ「その通りよ」
穂乃果「わっ! びっくりした~」
にこ「穂乃果にしては良い心がけだわ」
穂乃果「”穂乃果にしては”ってどういうこと!?」
にこ「細かいことは気にしないの」
穂乃果「細かくなんかないよっ。すごく気になって仕方ないよ」
ことり「穂乃果ちゃん、あんまり気にしない方が……」
にこ「あーもう! 鬱陶しいわね」
穂乃果「え!?」
にこ「とにかく、ラブライブ出場のためにも今以上に頑張る必要があるってことよ」
穂乃果「そ、それはそうだけど……穂乃果ってうっとうしいの?」
にこ「鬱陶しいわ」キッパリ
穂乃果「そ、そんなぁ」
ことり「穂乃果ちゃんは鬱陶しくなんかないよ!」
穂乃果「こ、ことりちゃ~ん!」ダキッ
ことり「穂乃果ちゃん、よしよし」ナデナデ
にこ「ことりは本当に穂乃果に甘いわね。たまには厳しく言わないとダメよ」
ことり「そうだね」キッ(にこちゃん、穂乃果ちゃんのこと鬱陶しく思ってたんだ……ふ~ん)
にこ「……何か文句あるわけ?」
ことり「ううん。何にもないよぉ」
にこ「そう」
穂乃果「うへぇ……厳しいの嫌だぁ」
にこ「文句言わない」
希「にこっち、あんま厳しすぎるのも考えもんやない?」
にこ「ああ希。確かにアンタの言う通りだけど、穂乃果にはちゃんとリーダーって自覚を持ってほしいのよ」
希「穂乃果ちゃんやったらそれくらい分かってると思うよ」
穂乃果「もちろんだよっ」
ことり「さすが穂乃果ちゃん」
にこ「いいや、全然ね」
穂乃果「え~」
ことり(穂乃果ちゃんはいつも頑張ってるのに……何が全然なの? にこちゃんは穂乃果ちゃんが嫌いなの?)
希「穂乃果ちゃんはよく頑張っとるよ。ただ、にこっちの目標が高すぎるだけやから気にせんでいいで」
にこ「そ、そこまで高くないわよ!」
希「だったら少しは穂乃果ちゃんのこと、褒めてあげてもいいんやない?」
穂乃果「そ~だ、そ~だ!」
にこ「ぐっ……! ま、まあ確かによくやってることもないけど……それでも今以上にやらないとダメよ!」
穂乃果「わかったよ! 穂乃果、もっと頑張るからっ!」
希「……本当に素直やないなぁ」
ことり(結局、最初とあんまり変わってない……。無理して穂乃果ちゃんが倒れちゃったら、どうするつもりなのかな)
にこ「ふんっ。精々頑張りなさい」
ことり(もしかして穂乃果ちゃんを……?)
希「分かってると思うけど、あんまり無理しちゃダメやで?」
穂乃果「うんっ」
ことり(……穂乃果ちゃんのこと、ことりが助けないと。じゃないと3人でいられなくなっちゃう)
ことり「穂乃果ちゃん、ことりも一緒に頑張るよっ」
穂乃果「本当!? あ、でも無理しちゃダメだよ?」
ことり「うんっ。心配してくれてありがとう、穂乃果ちゃん♪」(ことりたちの大切な場所、守るよ……絶対に)
穂乃果「よ~し、明日から頑張るぞ~!」
ことり「お~」(頑張らなくちゃ……)
海未「穂乃果、ことり、そろそろ帰りましょうか」
穂乃果「オッケー」
ことり「うんっ」
海未「それでは私たちは先に帰りますね」
にこ「はいはい、それじゃあね」
希「気をつけてな」
海未「穂乃果、分かっていますね?」ヒソヒソ
穂乃果「もちろんだよ」ヒソヒソ
ことり「?」
海未「ことり、もし良ければどこかに寄って帰りませんか?」
ことり「うん、いいよ」
穂乃果「じゃあじゃあ、ハンバーガー食べに行かない?」
海未「……あなたが食べたいだけでしょう」
穂乃果「だっておなか空いちゃったんだも~ん」
ことり「たくさん動いたもんね」
海未「はぁ……仕方ありませんね」(座って話すのにはちょうどいいかもしれませんし)
穂乃果「やった! それじゃ行こう!」
海未「穂乃果、そんなに急がなくてもハンバーガー屋は逃げたりしませんよ」
ことり「穂乃果ちゃん、パンが好きだから」
海未「もう……仕方ありませんね」
ことり「ことりたちも追いかけよう」(穂乃果ちゃん1人じゃ心配だもん)
海未「ええ」
穂乃果「う~ん、動いた後のハンバーガーは最高だねっ」
ことり「そうだねぇ」(穂乃果ちゃん、すごくおいしそうにハンバーガー食べてる……可愛いなぁ)
海未「カロリーが大変なことになりそうですけどね」
穂乃果「そ、その分ちゃんと運動するから大丈夫だよっ」
海未「では後で走り込みをしますか?」
穂乃果「走り込みなんて嫌だ~!」
ことり「こ、ことりも今日は疲れちゃったから」
海未「2人とも油断しすぎです! 余分に摂取したカロリーをしっかりと運動して消費しないと、後で痛い目を見ますよ」
穂乃果「な、なんとかなるよ……きっと」
ことり「海未ちゃん、厳しい……!」
海未「当たり前です!」(私が厳しく言わないと誰が言うんですか)
穂乃果「そ、それよりことりちゃん」
ことり「ふぇ?」
穂乃果「穂乃果にしてもらいたいことないかな?」
海未(……逃げましたね。今回は許しますけど)
ことり「穂乃果ちゃんにしてほしいこと?」
穂乃果「うんっ。なんでもいいよ」
ことり「なんでも?」
海未「ことり、分かっているとは思いますが、破廉恥なものは却下ですからね」
ことり「わ、分かってるよぉ」
穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃんが考えてるんだから口出ししちゃダメだよっ」
海未「す、すみません……」
ことり「う~ん」
海未(真剣に考えていますね)
ことり「じゃあ、2人ともことりには絶対、隠し事しないでください」(これならきっと……)
穂乃果「わかったよっ」
海未「わ、私もですか!?」
ことり「ダメかな?」
海未「別に……構いませんけど」(穂乃果だけにお願いすると思っていましたが……見当違いでしたね)
ことり「ありがとう、海未ちゃん♪」
穂乃果「ことりちゃん、他にはない?」
ことり「えっとぉ……今はないかな」
穂乃果「そっか~。あ、思いついたらいつでも言ってね。穂乃果、待ってるからっ」
海未「私もできるだけことりの力になりたいと思っています。少しでも何かあったら相談してくださいね」
ことり「うんっ。2人とも大好き♪」ダキッ
穂乃果「えへへ」
海未「も、もう! ここはお店の中ですよ」カァァァァ
ことり(穂乃果ちゃんも海未ちゃんもとっても優しいし、温かいなぁ。2人がいてくれたらことり、幸せ……)
海未(うぅ……2人とも恥ずかしいです。でも、これで少しはことりの悩みを軽減できるのであれば……)
ことり「2人がいれば関係ないよ」
穂乃果「ことりちゃんは大胆だねぇ」
海未「だ、大胆というより甘えん坊なのでは?」
穂乃果「そうなの?」
ことり「そうなんです。ことりは甘えん坊なのです。だからもっとぎゅってしちゃいます」ギュゥゥゥ
穂乃果「あはは。苦しいよことりちゃん」
ことり「穂乃果ちゃんはいい匂いがするねぇ」クンクン
海未「あなたはおじさんですか……」ジトッ
穂乃果「や、やめてください。私には夫が……!」
ことり「少しくらいいいじゃないかぁ」
海未「変態じゃないですか」
穂乃果「もうっ! 人がせっかくノリノリで遊んでたのに~」
ことり「海未ちゃん、酷いっ」
海未「ど、どうして私が責められるんですか!?」
穂乃果「海未ちゃんがノってくれないからだよっ」
ことり「ことりも頑張ったのに」
海未「うっ……すみません」
穂乃果「まあ海未ちゃんだから仕方ないね」
ことり「そうだね」
海未「な、納得いきません!」ガタッ
穂乃果「う、海未ちゃん!」
ことり「お店の中だから……!」
海未「あっ……」
穂乃果「そ、そろそろ出よっか」カァァァ
ことり「う、うん」カァァァ
海未「そ、そうですね」カァァァ
海未「……恥をかいたじゃないですか」
ことり「ご、ごめんね」
穂乃果「ちょっと悪ふざけが過ぎちゃったみたい」
海未「まったく、2人とも悪ふざけが過ぎますよ」
ことり「ごめんなさい……」
穂乃果「反省してます……」
海未「そもそも公共の場であのようなは、破廉恥なことをするのが間違っています」
ことり「でも」
海未「でもはなしです」
ことり「はい……」
海未「だいたい時と場を考えてみてください。普通はあんなことできませんよ」
穂乃果「う、うん……そうだけど」
ことり「嬉しくなっちゃったからつい……」
海未「それでもきちんと考えるべきです!」
ことり「う、うん」
海未「第一に私たちは学生なのですから、節度ある行動を」
穂乃果「わ~っ!」
海未「い、いきなりなんですか!」
穂乃果「もうお説教はうんざりだよっ」
海未「な、なんですって!?」
穂乃果「今日はことりちゃんのために相談に乗ろうって言ったのは海未ちゃんだよっ! それがどうしてお説教に変わってるのさ!」
ことり「えっ。そうだったの?」
海未「…………」(そうでした。すっかり忘れていました……)
穂乃果「もしかして海未ちゃん、忘れて」
海未「いえ、そんなことはありませんよ。私が忘れているわけないじゃないですか」
ことり「…………」(ことりのこと、忘れてたの?)
穂乃果「むむっ。怪しい」
海未「あ、怪しくなんてナイデスヨ」
ことり(海未ちゃんにとって、ことりはどうでもいい存在なのかな)
穂乃果「もう……それならお説教じゃなくてやることがあるよね?」
海未「……そうですね」(すみませんでした、ことり)
ことり(ことりはこんなにも海未ちゃんのことを大切に思ってるのに……)
穂乃果「ことりちゃん、ごめんね」
ことり「あっ、うん。大丈夫だよ」
海未「すみません、ことり」
ことり「ううん、気にしてないよぉ」(た、たまたまだよね。海未ちゃんも忘れることくらいあるもん、仕方ないよね)
穂乃果「ダメだよ、ことりちゃん。今度お詫びに何かしてもらうしかないよっ! 例えば遊びに行きたい、とか」
海未「な、何を言っているんですか穂乃果は!」
ことり「じゃあ……今度3人でどこかに遊びに行きたいなぁ」
穂乃果「だってよ海未ちゃん。これは約束決定だよね?」
海未「…………」
ことり「ダメ、かな?」
海未(穂乃果が勝手に言い出したことですから断ってもいい気がします。しかし、ことりが望んでいることでもあるみたいですし……さて、どうしましょうか)
~分岐1~
海未「もちろん、構いませんよ」
穂乃果「さすが海未ちゃん。良かったね、ことりちゃん」
ことり「うんっ。穂乃果ちゃんのおかげだよ」
海未「ですが、いいのですかことり?」
ことり「?」
海未「3人で遊びに行くのはいつも通りな気がするのですが」
ことり「そうかもしれないけど……ことりは3人で遊びに行くのが好きだから」
海未「ことり……」(あなたは何よりも3人でいることを選ぶのですね)
穂乃果「それじゃあ今度の土曜とかどうかな?」
ことり「賛成~」
海未「では土曜日で決まりですね」(結局穂乃果が仕切るのですか……)
穂乃果「土曜日は海未ちゃんの奢りだ~!」
海未「だ、誰がそんなこと言いました!?」
ことり「海未ちゃん、ご馳走になりますっ」
海未「ことりまでその気に!?」
穂乃果「土曜日が楽しみだね」
ことり「うん♪」
海未「くっ……!」(覚えておいてください穂乃果。いつか必ず……!)
穂乃果「それじゃことりちゃん、また明日ね~」
ことり「うん。また明日」
ことり「土曜日が待ち遠しいなぁ」
ことり(海未ちゃんもことりのために約束してくれたんだよね。やっぱり大切に思ってくれてるんだ)
ことり「嬉しい……」
親鳥「ことり、ご飯よ」
ことり「はぁい」(やっぱり3人が一番なんだよね? 穂乃果ちゃん、海未ちゃん)
親鳥「なんだか嬉しそうね。何かいいことでもあったの?」
ことり「今度穂乃果ちゃんたちとお出掛けすることになったの」
親鳥「あなたたちは本当に仲が良いわね」クスッ
ことり「うんっ。3人でずっと一緒にいたいくらいだよぉ」
親鳥「そうね。その関係のままでいられたらいいわね」
ことり「”いられたら”じゃなくて”絶対いる”よ」
親鳥「え、ええ」ゾクッ
ことり「だってことりたちは今まで3人でやってきたんだもん。これからも3人でいられないとおかしいよね?」
親鳥「そ、そうかもしれないわね」
ことり「だから3人ずっと一緒にいられるように、ことり頑張っちゃうから」
親鳥「そ、そう。無理しないようにね」
ことり「大丈夫だよぉ。ちゃんと体調管理には気を付けるから」(じゃないと2人に心配かけちゃうからね)
親鳥「なら、いいのだけど……」
ことり「お母さんは心配性だね」
親鳥「親なら子の心配をするのは当然よ」
ことり「ことりのこと心配してくれてありがとう。でも本当に大丈夫だから」
親鳥「……分かったわ。でも何かあったら絶対相談してちょうだい。いいわね?」
ことり「もちろんだよ、お母さん」
海未「ことり、喜んでいましたね」
穂乃果『そうだねっ。ちょっと強引だったかなって思ったけど、結果オーライだったよ』
海未「強引だと思うならもう少し他の方法を考えてください」
穂乃果『ごめんごめん』
海未(まあ、いつもそうやって強引にでも私たちを新しい場所へと連れ出していくあなたには感謝していますよ)
穂乃果『でもこれでことりちゃんの不安を解消できるのかな?』
海未「……正直なところ、難しいと思います」
穂乃果『そっか……。でも少しは力になれるんだよね?』
海未「ええ。穂乃果がいれば必ず」
穂乃果『穂乃果だけじゃなくて海未ちゃんもいなきゃ』
海未「そうでしたね」クスッ
穂乃果『でも結局ことりちゃんの悩みが何かまでは聞けなかったね』
海未「そうですね」(穂乃果にことりの悩みを話しても穂乃果の負担が増えるだけでしょうし、ここは黙っておきましょう)
穂乃果『海未ちゃん……穂乃果って頼りないのかな?』
海未「そんなことありませんよ。ことりにも心の整理が必要なのでしょう。それに今度話してくれると言ってたじゃないですか」
穂乃果『うん……』
海未「元気を出してください。穂乃果が暗いと私まで暗くなってしまいます」
穂乃果『海未ちゃんまで暗くなったら大変だね』
海未「そう思うならいつもの穂乃果らしくしてください」
穂乃果『もうっ! そんなこと言われても穂乃果よくわかんないよっ』
海未「分からなくても大丈夫ですよ」(普段通りに明るくいてくれたらいいのですから)
穂乃果『むっ。なんだか子ども扱いしてない?』
海未「気のせいです」
穂乃果『そうかなぁ?』
海未「とにかく、私たち以外にも絵里や花陽たちも協力してくれるんです。あまり気を落とさずにゆっくりと解決しましょう」
穂乃果『うん、そうだねっ』
海未「ふふっ。元気になったみたいで良かったです」
穂乃果『海未ちゃんのおかげだよっ! よ~し、明日から張り切っちゃうぞ~!』
海未「あまり張り切り過ぎて倒れないでくださいね」
穂乃果『あ、あははは。気を付けます……』
海未「よろしい」
穂乃果『じゃあ穂乃果そろそろ寝るから電話切るね』
海未「ええ。明日も寝坊しないでくださいね」
穂乃果『ど、努力します』
海未「はぁ……先が思いやられます」
穂乃果『だ、大丈夫だよ……たぶん』
海未「だといいのですが」
穂乃果『海未ちゃんのいじわるっ!』
海未「はいはい、おやすみなさい」
穂乃果『……おやすみなさい』
海未「まったく……本当に困ったものです」
海未(穂乃果もことりも私がしっかり支えていかないといきませんね)
海未「明日からしっかり気を引き締めなければ」
海未「おはようございます、穂乃果。今日も寝坊しなかったようで何よりです」
穂乃果「穂乃果だって寝坊したくてしてるわけじゃないからねっ」
海未「いつもこうやって早起きしてくれればいいのですが」
穂乃果「それは難しい注文だね」
海未「そんな自信満々に言わないでください」
ことり「…………」フラフラ
穂乃果「あっ、ことりちゃんが来たみたい」
海未「身体がふらついているようですが……大丈夫でしょうか?」
穂乃果「お~い、ことりちゃ~ん!」
ことり「……穂乃果ちゃん、海未ちゃん」
海未「大丈夫ですか、ことり」
ことり「大丈夫だよ」
穂乃果「でもすっごく体調悪そうだよ?」
ことり「そ、そうかな?」
海未「無理せずに休んだ方がいいのでは?」
穂乃果「海未ちゃんの言う通りだよっ」
ことり「無理なんてしてないよ」
海未「ですが……」
ことり「それに熱もないから」
穂乃果「どれどれ」ペタッ
ことり「あっ」(穂乃果ちゃんの手……気持ちいいなぁ)
穂乃果「確かに熱はないみたいだよ?」
海未「本当ですか?」
ことり「う、うん」
海未「……体調が悪いようでしたらすぐに言ってくださいね」
穂乃果「ことりちゃん、カバン持つよっ」
ことり「ありがとう、穂乃果ちゃん」
海未(昨日のあの後、何か悪いことでも起きたんでしょうか? 目の下に少しクマができていますね)
ことり(2人に余計な心配かけちゃった……。ことりが悪いんだよね? ごめんね、2人とも)
穂乃果「…………」
海未「すみません、ことり。今日は弓道部の子たちとお昼を一緒にしなければいけませんので」
穂乃果「ごめんね、ことりちゃん。穂乃果もちょっと希ちゃんのところに行かなきゃいけないから」
ことり「う、うん。それじゃ仕方ないね」
海未「本当にすみません」
穂乃果「それじゃ、ちょっと行ってくるね」
ことり「いってらっしゃい……」
ことり(今日のお昼は2人ともいないんだ……寂しい)
凛「ことりちゃん、いる~?」
花陽「り、凛ちゃん……ここは一応、上級生の教室だよぉ」
凛「あっ、そうだったにゃ」
ことり「凛ちゃんと花陽ちゃん……?」(一体どうしたんだろ?)
凛「ことりちゃん、見つけた!」
花陽「あ、え、えっと……一緒にお昼とか、どうかなって思ったんだけど」
ことり「うん、いいよ」
凛「それじゃ早速、屋上で食べよう!」
ことり「ちょっと待っててね。お弁当取ってくるから」
花陽「凛ちゃん、良かったね」ヒソヒソ
凛「うん。これから頑張ろうね、かよちん」ヒソヒソ
ことり(2人で何を話してるんだろう? ……ことり、何か悪いことしちゃったのかな?)
ことり「お待たせ。それじゃあ屋上に行こっか」
凛「了解にゃ!」
花陽「う、うん」
花陽「風が、気持ちいいね」
ことり「お日様もポカポカだねぇ」
凛「こ~んないい天気だと、お弁当がとってもおいしく食べれそうだね」
花陽「そうだね、凛ちゃん」
ことり「凛ちゃんのお弁当、美味しそう」
凛「えへへ。お母さんが作ってくれるんだ」
花陽「凛ちゃんのお母さん、お料理上手だもんね」
ことり「そうなんだぁ」
花陽「あっ。ことりちゃんのお弁当も、すごくおいしそう……!」
凛「本当だ~! それにカラフルできれいだね」
ことり「今日は頑張っちゃいました」
凛「えぇっ!? これってことりちゃんが作ったの!?」
花陽「す、すごい……!」
ことり「今日はちょっと早起きしたから自分で作っちゃいました」
凛「ほぇ」
ことり「良かったら食べてみて」
花陽「えぇっ!? い、いいの?」
ことり「もちろん♪」
凛「じゃあじゃあ、みんなでおかずを交換しようよ!」
ことり「賛成~」
花陽「わたしも……いいよ」
凛「なら凛は……ことりちゃん、その卵焼きちょうだい」
ことり「いいよ。じゃあ、ことりはその唐揚げをもらっちゃう」
凛「おっ。この唐揚げに目をつけるとは、お嬢さんいい勘をお持ちですな」
ことり「お褒めに預かり光栄です」
凛「かよちん、そのベーコン巻ちょうだい」
花陽「うん、いいよ」
ことり「花陽ちゃんは何か欲しいものある?」
花陽「じゃ、じゃあ……ごぼうのきんぴらを、もらおうかな」
ことり「はい、どうぞ。ことりはその里芋をもらうね」
花陽「ふふっ」
凛「かよちん、どうしたの?」
花陽「えっとね……こういうお昼も楽しいなって」
ことり「いつもと違う人と食べてるってのもあるかも」
凛「どっちにしても、凛はご飯がおいしく食べられたら満足だにゃ」
花陽「凛ちゃんらしいね」
凛「そうかな?」
ことり「2人とも仲良しだね」
凛「うんっ。凛はかよちんのことが一番だもん」
花陽「り、凛ちゃん……恥ずかしいよぉ」
ことり(ことりも穂乃果ちゃんと海未ちゃんのことが一番だけど……2人はどうなんだろう?)
花陽「あ、でも……ことりちゃんたちも仲がとってもいいよね」
ことり「えっ……そ、そうかな?」(きっと一番に思ってくれてるよね。今度遊びに行く約束もしてるし)
凛「うん。いつも3人一緒にいるって気がするよ」
ことり「……そうなんだ」(でも最近は一緒にいられることが少ないから……分からないや)
花陽「ことりちゃん、元気がないみたいだけど……大丈夫?」
凛「何か悩み事でもあるの?」
ことり「悩み事かぁ……特にはないかな。2人とも心配させちゃってごめんね」
花陽「ううん、気にしないで。わたしが勘違いしちゃっただけだから」
凛「ことりちゃんが元気なら、凛たちも嬉しいから良かったにゃ」
ことり「2人ともありがとう。ことりのこと、心配してくれて」
花陽「そ、そんなお礼なんていいよぉ」
凛「そうそう。それに凛たちだけじゃなくて、みんなことりちゃんのこと心配してるよ」
ことり「そうなの?」(みんなに心配かけてたんだ……)
凛「うん。特に穂乃果ちゃんと海未ちゃんが一番心配してたよ」
ことり「本当?」
花陽「う、うん」
ことり「そっかぁ」(海未ちゃんと穂乃果ちゃんが一番に心配してくれてたんだ)
凛「ことりちゃん、嬉しそう」
花陽「そうだね、凛ちゃん」
凛「嬉しいいことでも思い出したのかな?」
花陽「そうかもしれないね」
凛「肝心なことはわからないけど、ことりちゃんが笑顔になったみたいでよかったにゃ」
ことり(今度遊ぶ約束もあるし、2人はことりのこと一番に考えてくれてる……すごく嬉しい。今日見た夢は、やっぱり夢でしかないんだ)
海未「すみません、今日は弓道部の方へ顔を出してきますね」
絵里「分かったわ」
穂乃果「頑張ってね、海未ちゃん」
ことり「いってらっしゃい」
にこ「それで今日はどうするの? 海未がいないなら全体練習しても意味ないんじゃない?」
絵里「そうねぇ……。今日は基礎練習を軽くやって解散しましょうか」
真姫「それでいいんじゃない。基礎は大事なんだし」
凛「え~! それじゃ物足りないよ~」
穂乃果「穂乃果も今日はいっぱい練習したい気分だよ~」
にこ「そのやる気は明日の練習で発散させることね」
穂乃果「そ、そんなぁ」
ことり「穂乃果ちゃん、今日は仕方ないから明日頑張ろう?」
穂乃果「うん……」
ことり(それに、ことりも海未ちゃんがいないと……)
凛「残念だにゃ……」
花陽「凛ちゃん、また明日頑張ろう?」
絵里「話は済んだかしら? ……それじゃあ柔軟から始めましょうか」
凛「う~、なんだか暴れたりない感じがする」
花陽「れ、練習した気がしないんじゃなくて、暴れたりないのぉ?」
凛「そうとも言うかもしれない」
ことり「”言うかも”じゃなくて、そうなんじゃないかな……?」
凛「……凛は細かいことは気にしない主義にゃ」
花陽「細かいことじゃ……ないと、思うよ?」
凛「かよちん、世の中には気にしちゃダメなことがあるんだよ?」
花陽「う、うん……そう、だよね」
ことり「あはは……」
凛「それより今日はせっかくことりちゃんと一緒に帰るんだから、凛はどこかに寄って帰りたいなぁ」
花陽「そ、そうだね。せっかくだから……どこかに寄りたいよねっ」
凛「ことりちゃんはどこか行きたいところとかある?」
ことり「ことりはちょっとお腹が空いちゃったから、何か食べたいかな」
凛「それならオススメのラーメン屋さんがこの近くに」
ことり「り、凛ちゃん、さすがにラーメンはちょっと……」
凛「ダメかにゃ?」
ことり「ダメって言うわけじゃないけど……たぶん食べられそうにないかなぁ」
花陽「凛ちゃん、ラーメン屋さんはまた今度にしよう?」
凛「そうだね。ことりちゃん、また今度教えてあげるね」
ことり「ごめんね、凛ちゃん」
花陽「じゃ、じゃあ……ケーキとか、どうかな?」
ことり「ケーキ……!」
凛「凛は賛成!」
ことり「ことりも賛成~」
花陽「それなら、ケーキ屋さんがこの先にあるから……そこに行こう?」
凛「そうと決まれば、急いで行こう!」タッタッタ
花陽「あっ、凛ちゃん待って~」
ことり「凛ちゃん速いねぇ」(昔の穂乃果ちゃんと海未ちゃんを見てるみたい)
花陽「凛ちゃん、ことりちゃんのこと置いていっちゃった……ごめんね」
ことり「ううん、ことりは気にしてないよ。それよりも早く凛ちゃんを追いかけないと」
花陽「そ、そうだね」
ことり「行こっか」
花陽「う、うん」
海未「ことりの様子はどうでしたか?」
花陽『悩んでることは、わからなかったけど……とっても楽しそうだったよ』
海未「そうですか」(少しは気持ちに余裕が出てきた、ということでしょうか)
花陽『あ、で、でも……少し気になったことがある、かも』
海未「気になったことですか?」
花陽『う、うん。でも、もしかしたら気のせいかも……』
海未「どんな些細なことでも構いませんから話してください、花陽」
花陽『えっとね、今日のお昼のときなんだけど……ことりちゃんと話してたとき、一瞬だけすごく寂しそうな顔をしてたの』
海未「寂しそう……」(ことり、あなたは……)
花陽『海未ちゃん、心当たり……あるの?』
海未「そうですね……少し気になる程度のことですが」
花陽『そっか。何か手伝えることがあったら、花陽たちに相談してね? 力になれるかわからないけど……頑張るから』
海未「花陽……ありがとうございます。頼りにしていますよ。……それではそろそろ夜も遅いですし、切りますね。今日はありがとうございました」
花陽『うん。ことりちゃんの悩み、解決できるといいね』
海未「ええ、そうですね。そのためにも頑張りましょう、花陽。それではおやすみなさい」
花陽『おやすみなさい』
海未(ことり、あなたにはこんなにも慕ってくれる後輩がいるんですよ? ですから私や穂乃果だけではなく、周りにも心優しい仲間がいるということに早く気付いてください)
(ここは……どこだろう? 暗くてよく見えない)
(誰かいないの?)
「ことりちゃん」
(その声は……花陽ちゃん?)
「う、うん」
(他のみんなはどこにいるか知らない?)
「わたしも知らないんだ……ごめんね」
(ううん、仕方ないよ。ねえ花陽ちゃん、これから一緒にみんなを探そう?)
「うん、いいよ」
(良かった……1人じゃ寂しかったんだ)
「わたしも……ことりちゃんがいてくれて良かった」
(それじゃあ、手を繋いで行こう?)
「そ、そうだね」ギュッ
(ふふっ。花陽ちゃんの手、温かいね)
「ことりちゃんの手も……温かいよ」
(なんだか花陽ちゃんが一緒だと安心しちゃう)
「そ、そうかな?」
(うんっ。1人だと良くないこととか考えちゃうから……)
「その気持ち、わかるなぁ……。わたしも凛ちゃんと一緒じゃないと、よく考えちゃうから)
(ことりたち、似た者同士なのかも)
「そうかもしれないね」クスッ
(よぉし、早く海未ちゃんと穂乃果ちゃんを探さなきゃ)
「凛ちゃんたち、何もなかったらいいけど……」
「お~い、かよち~ん!」
「あっ、凛ちゃん」
「やっと見つけたにゃ」
(良かったね、花陽ちゃん)
「うんっ」
「ことりちゃんも一緒で良かった。凛、もう誰にも会えないかと思ったよ」
(ことりも凛ちゃんや花陽ちゃんが見つかって良かった♪)
「凛ちゃん、他のみんなを見なかった?」
「それが誰も見てないんだ……。みんなどこにいるんだろ?」
(う~ん、暗いからよく分からないけど……きっとどこかにいると思うな)
「それじゃ早く探さないと」
「凛ちゃん、はぐれないように手、繋ごう?」
「は~い」
(3人だと、なんだか周りが少し明るくなった気がするねぇ)
「そうだね」
「よ~し、早くみんなを見つけるにゃ~!」
「「「お~!」」」
ことり「海未ちゃん、おはよう」
海未「おはようございます、ことり」(今日は元気そうですね)
ことり「穂乃果ちゃんは?」
海未「どうやら今日は寝坊したみたいですね」
ことり「あはは……」
海未「そういえば、ことりに伝えておかないといけないことがありました」
ことり「何かな?」
海未「今日、にこと真姫が一緒にお昼を取りたいと言っていましたよ」
ことり「にこちゃんと真姫ちゃんが?」
海未「ええ。何か聞きたいことがあるそうで」
ことり「そうなんだ。うん、分かったよ」
穂乃果「2人とも、お待たせ」
海未「遅いですよ、穂乃果」
ことり「おはよう、穂乃果ちゃん」
穂乃果「おはよう。いや~、さすがに早起きを続けるのは難しかったみたい……」
海未「習慣として身に付けていないから難しいんです。日頃から意識して早起きをすれば」
穂乃果「ほ、穂乃果だって頑張ったんだよ?」
海未「確かにここ数日はよく頑張っていたと思います」
ことり「穂乃果ちゃん、ちゃんと早起きできてたもんね。偉いっ」ナデナデ
穂乃果「えへへ」
海未「ですが、それは毎日続けなければ意味がありません」
穂乃果「うっ……返す言葉もございません」
海未「ことりも、穂乃果を甘やかしてばかりでは穂乃果のためになりません。少しは厳しく接することを意識してください」
ことり「で、でもぉ……」
海未「意識してくださいね?」
ことり「は、はいぃ……」(穂乃果ちゃんに厳しくなんて、できないよぉ)
海未「それでは、行きましょうか」
穂乃果「……うん」
ことり「……はい」
にこ「ことり、迎えに来たわよ」
ことり「あっ、にこちゃん。すぐ行くね」
穂乃果「ことりちゃん、今日はにこちゃんと食べるんだ」
ことり「うん。ちょっと聞きたいことがあるからって」
穂乃果「そうなんだ」
ことり「だから今日は一緒に食べられないけど……ごめんね」
穂乃果「ううん。穂乃果たちのことは気にせず、ゆっくりしてきてね」
海未「穂乃果はここでお説教ですけどね」
穂乃果「えっ!?」
海未「にこたちのところでゆっくりしてきてください、ことり」
ことり「う、うん。それじゃあ行ってくるね」
海未「ええ。いってらっしゃい、ことり」
穂乃果「う、海未ちゃん」
海未「分かっているとは思いますが、冗談なんかじゃありませんよ」
穂乃果「そ、そんな……!」
にこ「もう遅いわよ」
ことり「ご、ごめんね」
にこ「別にいいわよ」
真姫「それで、どこで食べるの?」
にこ「部室よ。それでいいでしょ?」
ことり「うん、ことりはどこでもいいよぉ」
真姫「別にいいんじゃない?」
にこ「それじゃ行きましょ。時間がもったいないわ」
ことり「うんっ」
真姫「そうね。……ねえ、ことり」
ことり「ん? どうしたの、真姫ちゃん」
真姫「どうでもいいことなんだけど、そのお弁当ってことりの手作りなの?」
ことり「ううん、今日はお母さんが作ってくれたから」
真姫「そ、そう」
にこ「真姫ちゃん、何か残念そうね。ひょっとして、ことりの手作り弁当食べたかったの?」
ことり「そうなの?」
真姫「ち、違うわよ! そんなわけないでしょ!」
にこ「何だか怪しいわね。本当に違うのかしら?」
真姫「ちょ、ちょっと気になっただけじゃない! にこちゃんには関係ないでしょ!」
にこ「なっ!? 関係ないことはないでしょ!」
真姫「関係ないじゃない!」
にこ「あるわよ!」
ことり「ふ、2人とも落ち着いて、ね? 3人で仲良くご飯を食べるんだよね?」
真姫「え、ええ! その通りよ」
にこ「も、もちろんよ」
ことり「だったら喧嘩しちゃダメだよぉ」
真姫「そうよね……」
にこ「ことりの言う通りだわ……」
ことり「じゃあ2人とも仲直りしないと」
真姫「にこちゃん……ごめんなさい」
にこ「にこの方こそ……悪かったわね」
ことり「2人が仲良くしてくれて良かった」
にこ「その……誘ったのに迷惑かけたわね」
ことり「気にしないで、にこちゃん。ことりは迷惑だなんて思ってないよ?」
ことり(むしろ穂乃果ちゃんと海未ちゃんが言い合ってるように見えたから、少しだけ安心しちゃった)
真姫「お詫びってわけじゃないけど……良かったらお弁当のおかずを分けてあげる」
ことり「それなら3人でおかずを交換して食べたいな♪」
にこ「別にいいわよ。どれもにこが作った自信作なんだから!」
真姫「私もいいわ。にこちゃんと違って自分で作ったわけじゃないけど……そこそこ美味しいと思うわ」
ことり「ふふっ。楽しみだね」
にこ「そうね。私が2人のお弁当を批評してあげるから、覚悟しなさい!」
真姫「別に自分で作ってないんだから、批評されても意味ないと思うけど」
にこ「細かいことは気にしないでいいのよ」
ことり「にこちゃん先生、お弁当の評価よろしくお願いします♪」
にこ「任せなさい! きちんと評価して見せるわ」
真姫「はぁ……もうそれでいいわ。部室にも着いたみたいだし、さっさと評価してもらいましょう」
ことり「うんっ」
ことり「本当に好きなものを選んでいいの?」
真姫「別にいいわよ。いつもことりにはお世話になってるんだし。それにこれくらいどうってことないわ」
にこ「さっすが真姫ちゃん、太っ腹~」
真姫「あっ、にこちゃんは自分で払ってよね」
ことり(このチーズケーキ、とっても美味しそう……! あ、でも昨日も花陽ちゃんたちと食べたから今日は違うのにしようかなぁ)
にこ「ちょっと! そこはにこも奢ってくれる流れじゃないの!?」
真姫「知らないわよ、そんな流れ」
ことり(せっかくだからパフェとか……ああ、でもちょっとなぁ)
にこ「ぐぬぬ……」
真姫「もう、冗談よ冗談」
にこ「冗談って……アンタねえ! 本気で払わなきゃいけないかと思ったじゃない!」
ことり「わぁ~。これ美味しそうだねぇ」
真姫「そうね。見た目も綺麗だし、とっても美味しそう」
にこ「人の話を聞きなさいよ!」
真姫「はいはい。とりあえずメニューでも見て落ち着いたら?」
にこ「なんかにこの扱い雑じゃない!?」
ことり「にこちゃん、美味しそうなものがたくさんあるよ」
にこ「い、今はそんなことよりも大切なことが……確かにどれも美味しそうね」
ことり「こんなにたくさんあると迷っちゃうね」
真姫「それなら3人で別々のものを頼むのがいいんじゃない?」
にこ「そうね。それがいいわ」ジーッ
ことり「それでもこんなにあるとなかなか決められないよぉ」
にこ「そうね」ジーッ
真姫「にこちゃん、すごく真剣に選ぶのね」
にこ「当たり前でしょ! こんなに美味しそうだとどれを頼むか悩まない方がおかしいわ」
ことり「真姫ちゃんはもう決めたの?」
真姫「私? そうね……ショートケーキにしようかしら」
ことり「じゃあことりは……このブルーベリータルトにするね」
にこ「2人とも決めるの早くない!?」
真姫「にこちゃんが遅いだけなんじゃない」
にこ「そ、そんなことないわよ」
真姫「それならさっさと決めてよね」
にこ「わ、わかってるわよ」
ことり「にこちゃん、時間はたくさんあるからゆっくり選んでいいよ」
にこ「……ありがと」
ことり(にこちゃん、おやつを選んでるときの穂乃果ちゃんみたい……可愛い♪)
にこ「はぁ……チョコレートケーキ、とっても美味しかったわ」
ことり「真姫ちゃん、今日はありがとう」
真姫「喜んでくれたみたいで良かったわ」
にこ「にこもぉ真姫ちゃんには感謝してるよ~」
真姫「……そう」
にこ「むっ……にこのときだけ適当な気がするんだけど」
真姫「別にそんなことないわよ」
にこ「……まあいいわ。それよりもことり、最近何か悪いことでもあったの?」
ことり「悪いこと……?」
にこ「ほら、例えばテスト失敗したとか」
真姫「テストで失敗するのはにこちゃんでしょ?」
にこ「うるさいわね。例えよ、た・と・え」
真姫「はいはい……」
にこ「それで何かあったの?」
ことり「う~ん……特にはないよ?」
にこ「嘘つかない。最近、悩んでるって聞いたんだから」
真姫「そうよ、ことり。にこちゃんじゃ頼りないかもしれないけど、誰かに悩みを相談するのは大切よ」
ことり(ことりのこと心配してくれてるんだ……)
にこ「真姫ちゃん、頼りないは余計だから。……そりゃ私にもできることとできないことがあるし、アンタの力になれるって保証もできない。けどね、だからって仲間のために何もしないって選択はしないわ。困っている仲間を見捨てることなんてできないし、それに……今こうしてスクールアイドルとして活動できてるのも、アンタたちが私のことを見限ることなく仲間として行動してくれたおかげだと思ってる」
真姫「…………」
ことり「にこちゃん……」
にこ「だから私はアンタたちに大きな借りがあるし、どんなことでも力になってあげたいって思うの。それ以前に同じグループのアイドルとして、助けになりたいのよ」
真姫「そうね。にこちゃんの言う通りだわ」
ことり「真姫ちゃん……」
真姫「私だってみんなに助けてもらったことはたくさんあるわ。もちろんことりにも。私はそのお返しがしたいの、仲間としてね」
ことり「でも……」
にこ「いいことり、よく聞きなさい。仲間は助け合うものなの、そこに遠慮はいらない。困ったことがあれば、みんなを頼ったらいいのよ。それで、もし他の人が困っていたら……今度はその人を助けてあげるの」
真姫「前は私たちが助けてもらったわ。今度は私たちがことり、貴女を助ける番」
にこ「だから悩んでいることがあるなら、ハッキリ言ってちょうだい」
ことり(2人ともこんなに真剣にことりのことを考えてくれてるんだ。それなのにことりは……)
にこ「…………」
真姫「…………」
ことり「2人ともありがとう。ことりのこと、とっても心配してくれてるんだって思ったらすごく嬉しかった」
真姫「あ、当たり前でしょ」
にこ「大切な仲間なんだから」
ことり「うん……。でもことりの悩みは自分で解決しないといけないんだって思う。だからごめんなさい。2人には話せない」
にこ「……そう」
真姫「……別に謝ることじゃないでしょ」
ことり「でも、もしことり1人じゃどうしようもなくなったら……ちゃんと相談するから!」
にこ「それでいいわ。そのときは絶対力になってみせるわよ」
真姫「私だって絶対に解決して見せるわ」
ことり「ふふっ。ありがとう♪」
ことり(仲間……そうだよね。ことりたちは9人揃ってミューズだもんね)
「ことりちゃん」
(う、ん……?)
「良かった……目が覚めたみたい」
(凛ちゃん、花陽ちゃん)
「もう心配したんだよ。突然どこかに行っちゃっうからビックリしたにゃ」
「で、でもまた会えて良かった」
(心配かけてごめんね)
「まったく……1人で突っ走るんじゃないわよ」
(あれ? にこちゃん?)
「私もいるんだけど」
(真姫ちゃんも……)
「ことりちゃんを探してるときに偶然会ったんだ」
「真姫ちゃんもにこちゃんも、一緒にことりちゃんのこと……探してくれたんだよ」
(そうなんだ……。みんなありがとう)
「お礼なんていいわよ。……仲間なんだから、探すのは当然でしょ」
「ことりが無事に見つかって良かったわ」
「これで5人集まったんだね」
「なんだか3人でいたときよりも、周りが明るくなった気がするね」
(そうだね。これならすぐにみんな見つかりそう)
「そうね。でも油断は禁物よ」
「にこちゃんの言う通りね。いくら明るくなったからって、はぐれたらどうなるか分からないんだから」
「大丈夫だよ。みんなで手を繋げば、はぐれたりなんかしないにゃ」ギュッ
「そ、そうだね凛ちゃん」ギュッ
(それに手を繋いでると、すっごく温かいよねぇ)ギュッ
「ほら、にこちゃんと真姫ちゃんも手を繋ごっ!」
「し、仕方ないわね」ギュッ
「しょうがないわね~。世界のスーパーアイドル矢澤にこと手を繋ぐなんて普通はできないけど、今回だけは特別よ。アンタたち感謝しなさい」ギュッ
「まだそんなこと言ってるんだ。ちょっと……いや、かなり寒くないかにゃ」
「なんですって!?」
「り、凛ちゃん……! そんなこと言っちゃダメだよぉ……」
(あ、あははは……)
「そんなことより早くみんなを探しましょ。時間がもったいないわ」
「そんなことって……!」
「け、喧嘩はダメだよぉ」
(ふふっ。とっても賑やかで楽しいなぁ……穂乃果ちゃんたちが見つかったら、もっと賑やかになっちゃいそう)
ことり「おはよう、穂乃果ちゃん」
穂乃果「おはよう、ことりちゃん。あれ? 海未ちゃんは?」
ことり「今日は弓道部の方で朝練があるみたいで、先に行ってるって」
穂乃果「そうなんだ。じゃあ、行こっか」
ことり「うんっ」
穂乃果「ことりちゃん、今日はなんだか楽しそうだねっ」
ことり「そうかな?」
穂乃果「うんっ。何か良いことでもあった?」
ことり「ちょっとだけあったかも」
穂乃果「なになに? 穂乃果、気になっちゃうよ」
ことり「大したことじゃないよぉ」
穂乃果「大したことじゃなくてもいいから教えてよ~」
ことり「う~ん」
穂乃果「ダメ?」
ことり「ダメじゃないけど……やっぱり秘密です♪」
穂乃果「え~!」
ことり(ふふっ。穂乃果ちゃんと2人きりで登校できるのがちょっとだけ嬉しいかも)
穂乃果「あ、そうだ! ことりちゃん、明日のことなんだけど、どこに行くかことりちゃんに決めてほしいんだ」
ことり「ことりが?」
穂乃果「うんっ。海未ちゃんもことりちゃんの行きたいところでいいからって言ってたし、何よりこれはことりちゃんのためのお出掛けだからねっ」
ことり「う~ん……じゃあ少し考えてみるね」
穂乃果「ことりちゃんの行きたい場所なら、穂乃果もどこでもいいからねっ。好きなところを選んでね」
ことり「う、うん」(ことりの行きたい場所……)
海未「2人とも、今朝は一緒に行けなくてすみません」
穂乃果「ううん、弓道部の朝練なら仕方ないよ」
ことり「部活を掛け持ちしてるんだから、こういう日もあるよ」
海未「ありがとうございます、2人とも。それで明日のことなんですが」
希「やっほ~、3人とも何話してるん?」
穂乃果「あっ、希ちゃん。明日のお出掛けのことを話してたんだ」
希「明日どこかに行くん? 羨ましいなぁ」
海未「希がここに来るなんて珍しいですね。何か用ですか?」
希「ん~。実はことりちゃんに用があるんやけど」
ことり「ことりに?」
希「うん。でも今はちょっとタイミングが悪いみたいやし、また後にするわ」
穂乃果「別に今でもいいけどなぁ。ねえ海未ちゃん?」
海未「ええ。私たちはそこまで急いでいるわけではありませんから」
希「ホントにいいん?」
ことり「ことりは別にいいよ」
希「じゃあ遠慮なく。ことりちゃん、今日の放課後にウチとえりちとで遊びに行かん?」
穂乃果「おおっ! ことりちゃん、最近みんなからモテモテだねぇ。羨ましいよっ」
ことり「も、モテモテなんかじゃないよ」(多分みんな、ことりのことを心配してくれてるんだと思うんだ)
海未「ですが、ここ最近のことりはみんなに引っ張りだこにされていますから……モテモテというのはあながち間違っていませんね」クスッ
ことり「う、海未ちゃんまで……!」
希「ことりちゃんも罪な女やねぇ」
ことり「そ、そんなんじゃないよぉ」
希「ふふっ。まあ冗談はこのくらいにして、放課後どうかな?」
ことり「う~ん……」(今日中には明日のこと決めないといけないと思うから……3人で話し合うためにも断った方がいいかな)
穂乃果「行っておいでよ、ことりちゃん」
海未「そうですね。明日のことは夜にでも話せばいいことですから」
海未(それにみんなと放課後遊び出してから、ことりも少しずつ元気を取り戻しつつあるみたいですし)
ことり「2人とも……うん、わかったよ」
希「じゃあ決まりやね。練習が終わったらまた詳しく話すわ」
ことり「うん。ありがとう希ちゃん」
希「それじゃあ、ウチは教室に戻るわ」
穂乃果「希ちゃん、また後でね」
希「放課後にね」
絵里「希……どうだった?」
希「大丈夫だって」
絵里「そう。……それなら放課後のことを考えておかないといけないわね」
希「考えるって……今から?」
絵里「……そんなわけないじゃない」
希「今の間は何なん?」
絵里「ちょっと考え事をしてただけよ」
希「ならいいんやけど」
絵里「とにかく、ことりにリラックスして話してもらうためにはどうすればいいか……希も一緒に考えましょう?」
希「ああ、うん。ちなみに、にこっちたちも花陽ちゃんたちもケーキ食べに行ったみたいやから、今日はそういうのはなしね」
絵里「……早急に何か考えなくちゃいけないわね」
希「えっ……」
絵里「私も今日、ケーキを食べに行こうと思っていたのよ……」
希「そうなんや」
絵里「希は何かないの?」
希「ウチ?」
絵里「ええ」
希「ん~……占いとか?」
絵里「希らしいわね」クスッ
希「そうかな?」
絵里「ええ。……それに占いはいい考えだと思うわ」
希「本当にそう思ってるん?」
絵里「もちろんよ」
希「でも占いってすぐ終わるんやけど、その後はどうするん?」
絵里「……悩み相談に決まってるじゃない」
希「まあ自然な流れで持っていけるとは思うよ」
絵里「それじゃあタイミングは希に任せるわ」
希「うん、わかった」
絵里「よろしくね」
絵里「お疲れ様。今日の練習はここまでにしましょう」
海未「明日は練習が休みなので、しっかりと休養して日曜日の練習に備えてください」
「「「は~い」」」
海未「それでは皆さん、気を付けて帰ってください」
穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん、一緒に帰ろうっ」
ことり「ほ、穂乃果ちゃん、えっとぉ……」
海未「穂乃果、もう忘れたのですか?」
穂乃果「えっ? あ、そうだった」
ことり「ごめんね、穂乃果ちゃん」
海未「まったく……しっかりしてください」
穂乃果「あはは……ごめんごめん」
海未「はぁ……。では今日の夜に改めて連絡しますね、ことり」
ことり「うん、わかったよ」
穂乃果「ことりちゃん、また夜にお話ししようね~」
ことり「うんっ♪」
希「ことりちゃん、お待たせ」
絵里「ことり、そろそろいいかしら?」
ことり「あっ、うん。大丈夫だよ」
穂乃果「それじゃあ楽しんできてね」
海未「私たちはこれで失礼しますね」
ことり「じゃあね、2人とも」
絵里「穂乃果も海未も気を付けて帰るのよ」
希「2人ともまたな~」
絵里「それじゃあことり……生徒会室に行きましょう」
ことり「生徒会室に?」
絵里「ええ」
希「そこでことりちゃんのことをウチが占ってあげようと思って」
ことり「希ちゃんの占いかぁ……すごく楽しみ♪」(そういえば、占ってもらったことないかも)
希「ふふっ。そんなに楽しみにしてくれてるなら、ことりちゃんのためにも気合い入れて頑張らんといけんね」
絵里「頑張ってね、希」
希「えりちもな」
絵里「……もちろんよ。さあ、一回部室に戻りましょう」
ことり「はぁい」
ことり「そういえば希ちゃん、ことりの何を占ってくれるの?」
希「そうやなぁ……ことりちゃんは何か占ってほしいこととかある?」
ことり「ことりは明日の天気を占ってほしいかな」(明日は穂乃果ちゃんたちと遊びに行くから、天気がいいか気になっちゃう)
希「明日の天気ね。ウチに任せとき」
絵里「明日の天気なんて占えるものなの?」
希「細かいことはいいやん」
絵里「……細かいことかしら」
ことり「と、とりあえず占ってもらおうよ。そしたらきっと分かると思うな」
絵里「それもそうね」
希「それじゃあウチなりに占ってみるから、静かにしててな」
ことり「うん」
絵里「分かったわ」
希「…………」ブツブツ
絵里「…………」
ことり「…………」(希ちゃん、手を前で組んで何か呟いてるみたい)
希「…………」ブツブツ
絵里「ね、ねえ希」
希「えりち、集中しとるから話しかけんでくれる?」ニコッ
絵里「ご、ごめんなさい」
ことり(の、希ちゃん……笑顔なのにすごく威圧感があるよぉ)
希「……分かったよ。明日の天気」
ことり「穂、本当?」
絵里「……何もしてなかったように見えたけど」
希「もちろんや。何もしてないように見えるけど、ウチはちゃんと占ってたんやで」
絵里「ハラショー」
ことり「それで明日の天気は……?」
希「明日は雨やな」
ことり「雨なんだ……」せっかく穂乃果ちゃんと海未ちゃんでお出掛けするのに……残念)
絵里「明日の天気予報は……確かに雨みたいね」
ことり「…………」
希「ことりちゃん、雨が嫌なん? なら、とっておきの魔法があるんよ」
ことり「とっておきの魔法?」
希「まあ魔法って言うより、おまじないって言った方がいいかもしれんね」
絵里「おまじない……気になるわね」
ことり「希ちゃん、どんなおまじないなの?」
希「それはな、”大切な人たちと一緒に過ごす”っていう意思を持つこと」
ことり「意思……」
希「それと”周りのことを信じる”ってことを忘れんことかな」
絵里「希、それは……」
希「ふふっ。えりちの考えてる通りやと思うよ」
ことり(?)
絵里「そう」
ことり「なんだか不思議なおまじないだね」
希「そうかな? でもこのおまじないはどんなことにでも効果があるんよ」
絵里「確かに効果がありそうね」
希「そうやろ? これはことりちゃんには絶対覚えておいてほしいんよね」
ことり「そうなんだ。じゃあ、しっかり覚えておくね」
希「もし忘れてたらわしわしでお仕置きやで」
ことり「わ、忘れたりしないよぉ」
絵里「ことりなら大丈夫そうね」クスッ
希「さてと、結構集中力使ったからお腹減ったなぁ」
絵里「……帰りに何か食べて帰る?」
希「そうやな。ことりちゃんはどうする?」
ことり「ことりも何か食べて帰ろうかな」
希「じゃあ決まりやね」
絵里「それじゃ、帰りましょうか」
ことり「うん♪」
絵里「……これで良かったのかしら?」
希「心配せんでも大丈夫やで、えりち。ことりちゃんはもう分かってるんやと思う」
絵里「希が言うなら間違いないわね」
希「そんなにハッキリ言われたら、なんか照れるやん」
絵里「あら? ……私は自分の気持ちを素直に言っただけよ」
希「もう……えりちはいじわるやなぁ」
絵里「ふふっ」
希「……明日、晴れるといいね」
絵里「そうね」
穂乃果『ことりちゃん、聞こえる?』
ことり「聞こえてるよ、穂乃果ちゃん」
穂乃果『海未ちゃんも聞こえてるよね?』
海未『ええ、聞こえていますよ』
ことり「ことりも海未ちゃんの声、聞こえてるよ」
海未『それでは3人揃いましたし、明日のことについて話し合いましょうか』
穂乃果『そうだねっ。ことりちゃん、明日どうしたいか考えた?』
ことり「うんっ。ことりはショッピングがしたいなぁって」
海未『ショッピングですか』
穂乃果『いいねいいね。せっかくだし、ちょっと遠くに行ってみようよ』
海未『そうですね。ことりもそれでいいですか?』
ことり「ことりは大丈夫だよ。あっ、でも天気が……」
海未『そういえば、明日は雨の予報でしたね』
穂乃果『きっと大丈夫! なんとかなるよっ』
海未『その自信はどこから来るんですか……』
ことり「穂乃果ちゃんは前向きだから」
穂乃果『とにかく、明日は絶対晴れるよっ!』
海未『ですが……』
ことり「ことりも明日は晴れると思うな」
海未『こ、ことりまで……! 万が一晴れなかったらどうするんですか』
穂乃果『そ、そのときはそのときだよ』
海未『何のために事前に話し合っているか分かっているのですか?』
穂乃果『それは……』
ことり「海未ちゃん、ことりは行き当たりばったりでもいいと思うな」
海未『ことり……しかしそれでは』
ことり「ことりはね、海未ちゃんと穂乃果ちゃんと一緒にお出掛けできるだけで嬉しいんです」
穂乃果『穂乃果も2人と一緒にお出掛けするの楽しいよっ』
海未『2人とも……もう仕方ありませんね。明日は晴れそうなので少し遠くに行きましょうか』
ことり「ありがとう、海未ちゃん」
穂乃果『わ~いっ! 明日がすっごく楽しみだよ』
ことり「ことりも楽しみ♪」
海未『では明日は10時頃に穂乃果の家に待ち合わせしましょうか』
穂乃果『オッケー』
ことり「うんっ」
穂乃果『それじゃ、穂乃果は明日に備えて寝るね。2人ともおやすみ』
ことり「おやすみ、穂乃果ちゃん」
海未『おやすみなさい、穂乃果』
穂乃果『おやすみ~』
海未『私たちも寝ましょうか』
ことり「そうだね。おやすみなさい、海未ちゃん」
海未『おやすみなさい、ことり』
「ことり、起きなさい」
(にこちゃん、ここは……?)
「アンタ寝ぼけてるの?」
(そうかも)
「ことりちゃん、おはようにゃ」
(おはよう、凛ちゃん)
「やっと起きたのね」
(あっ、真姫ちゃん。おはよう)
「おはよう、ことり」
「ことりちゃん、目が覚めたんだね」
(花陽ちゃん、おはよう)
「おはよう、ことりちゃん」
「お~い、みんな~」
(この声は……)
「希、絵里。やっと見つけたわ」
「それはこっちのセリフやん」
「ようやく合流できたわね」
(絵里ちゃん、希ちゃん、大丈夫だった?)
「もちろんや」
「ええ」
「ようやく7人集まったわね」
「あとは穂乃果ちゃんと海未ちゃんだけか~」
「すぐ見つかるんじゃ……ないかな」
(周りがすっごく明るくなったもんね)
「ホントやね。さっきよりもすごく明るい」
「そうね。……人が多いとその周りが明るくなるのかしら?」
「スピリチュアルやね」
「とにかく、あとは穂乃果と海未だけなんでしょ? さっさと探しましょ」
「そうやね」
(あっ。あっちに誰かいるみたいだよ)
「本当ね。穂乃果たちなんじゃない?」
「凛が呼んでみる。お~い、穂乃果ちゃ~ん! 海未ちゃ~ん!」
「凛ちゃ~ん!」
「ほ、穂乃果ちゃんたちみたいだね」
(やっと全員揃ったね)
「やっとみんなに会えたよ」
「そうですね。ことりも無事みたいで良かったです」
「おっ。全員揃ったら周りがよく見えるようになったなぁ」
「本当ね」
「ようやくここがどこか分かるわね」
「にこちゃんに分かるの?」
「わ、分かるわよ!」
「凛ちゃんは……ここがどこか分かる?」
「全然わからないにゃ」
「海未ちゃん、ここどこか分かる?」
「私も分かりません」
「ことりちゃんは?」
(ことりも……分からないかなぁ)
「そっか~。でもそれならこれって奇跡だよね」
「何が奇跡なのよ?」
「9人全員揃ったことだよっ! それにさっきまで暗かったのに、全員揃ったらすっごく明るくなったんだよ」
「そうね。穂乃果の言う通りだわ」
「でしょでしょ! 穂乃果たち9人が集まったらどんな奇跡でも起こせそうな気がするよっ!」
「確かにそうですね」
「まあ……何かが起きそうな気はするわね」
「私も……そう思うな」
「凛は9人でいると楽しいよ!」
「やっぱりミューズは9人じゃないとね」
「ウチも9人ってことが大事やと思う」
「誰も欠けることなく、全員揃ったもの。……これからも9人でいられるわ」
(……9人)
「ことりちゃん」
(穂乃果ちゃん?)
「9人でいたら何も怖くないよね?」
(う、うん)
「良かった。これからもみんなと一緒に毎日楽しもうよっ」
「「歌も!」」
「「踊りも!」」
「「「ここにいる9人で!」」」
(うんっ♪)
ことり「9人で楽しもう、か」
ことり(雨は……少しだけ降ってるみたい。でも、きっと)
ことり「もしもし、海未ちゃん。お願いがあるんだけど」
ことり(奇跡が起きるよね)
にこ「遅いわよ、ことり」
希「にこっち、ウチらが早すぎただけやから」
花陽「みんなでお買い物……楽しみだね、凛ちゃん!」
凛「そうだね、かよちん。楽しみだにゃ~」
真姫「た、たまたま今日は何もなかっただけなんだから」
絵里「……誰に言ってるのかしら?」
海未「まったく、ことりが突然あんなこと言い出すなんて驚きました」
ことり「ごめんね、海未ちゃん」
海未「こういうことは事前に言ってくださいね。声をかけるのも大変なんですから」
ことり「う、うん」
穂乃果「今日は賑やかでいいね~」
海未「やっと来ましたか」
穂乃果「そ、そんなに遅れてないよ!?」
真姫「まあ遅れてはないわね」
にこ「いや、遅れてるから」
絵里「まあまあ。みんな揃ったんだからいいじゃない」
希「そうそう。それに雨も止んできたみたいやし」
凛「本当だ~」
花陽「晴れてきたね」
海未「1日中雨の予報でしたが……晴れたようで良かったです」
穂乃果「やっぱり昨日穂乃果が言ったことは間違いなかったね!」
ことり「……そうだね、穂乃果ちゃん」(みんなといると奇跡は起きるんだ)
海未(どうやらことりの悩みは消えたみたいですね。あの曇り空のように)
穂乃果「よ~し、今日はいっぱい楽しも~!」
「「「お~!」」」
ことり(これからはみんなと一緒に、もっといろんなことを楽しめたらいいな♪)
○分岐1完○
※ここから先はことりへのお詫びと称したお出掛けの提案を海未が断った場合の話です。
(人死にが出ると思います。それとキャラがあり得ない言動や行動を取ったりします。苦手な方はスルーしてください)
~分岐2~
海未「穂乃果! 約束決定などと勝手に決めないでください! 私にも予定はあります」
穂乃果「そ、そんなに怒らなくてもいいじゃん!」
海未「私は怒ってなどいません。穂乃果が急に変なことを言い出すから」
穂乃果「それを怒ってるって言うんだよっ」
ことり「ふ、2人とも喧嘩は止めよう? 海未ちゃんが無理なら、ことりも無理して頼みたくないから」
穂乃果「で、でもことりちゃん……」
ことり「もういいの、穂乃果ちゃん。ことりは2人が仲良くしてくれた方が嬉しいから」
海未「すみません、ことり。その……」
ことり「海未ちゃん、気にしないで。ことりは大丈夫だから」
海未「……すみません」
穂乃果「ごめんね、ことりちゃん」
ことり「穂乃果ちゃんも海未ちゃんも謝らないで。今日はもう帰ろう?」
穂乃果「うん」
海未「そうですね」
ことり「…………」
ことり(海未ちゃんはいろいろなことをやってるから仕方ないよね。……別にことりのことが嫌いなわけじゃない、よね)
親鳥「ことり、ご飯よ」
ことり(大丈夫。海未ちゃんは忙しいだけ、そうに決まってるよ)
親鳥「ことり?」
ことり「お、お母さん……どうしたの?」
親鳥「呼んでいるのに来ないから様子を見に来たのよ」
ことり「ご、ごめんなさい」
親鳥「何か悩みでもあるの?」
ことり「ううん」
親鳥「本当に?」
ことり「う、うん」
親鳥「そう……。もし何かあったら、話してちょうだい。いつでも相談に乗るから」
ことり「うん。ありがとう、お母さん」
(ここは……?)
「海未ちゃん、お待たせ」
「遅いですよ穂乃果」
(穂乃果ちゃんと海未ちゃん……?)
「さあ、行きましょうか」
「……そうだね」
(あれ?)
「今日の宿題はきちんとやっていますか?」
「もちろんだよっ」
「……ここ最近は穂乃果とは思えないほど真面目ですね」
「むっ。失礼しちゃうな、もう! 穂乃果だってやればできるんだからねっ」
「はいはい。そうですね」
「む~。絶対わかってないよね」
「きちんと分かっていますよ。どれくらい一緒にいると思っているんですか」
「ならいいけど……」
(2人とも楽しそうだなぁ)
「ねえ、海未ちゃん」
「ことりのことですか?」
(えっ)
「なんでわかったの?」
「ことりがいなくなってから、たまに暗い顔をしていましたからね。すぐ分かりますよ」
(ことりがそんな……どうして?)
「暗い顔してたかな?」
「ええ。さっきもしてましたよ」
「そっか……ごめんね、海未ちゃん」
「いいんですよ、穂乃果。私だってことりがいなくなってしまったことは悲しいですから……」
「どうしてことりちゃんはいなくなっちゃったのかな?」
(ことりはここにいるよ! どこにも行ってなんかないよ!)
「分かりません……。ですが、ことりが望んで消えたとは思えません」
「そうだよね! ことりちゃんが穂乃果たちと離れたいなんて思うわけないよね」
「ええ。ずっと3人でいたいと言っていましたし」
(そうだよ。ことりは3人でいたい、離れたくなんてないよ)
「ことりちゃん、きっと帰ってきてくれるよね?」
「必ず帰ってきますよ」
(2人がこんなに不安そうにしてるのに……ことりはどうして傍にいないの?)
「うん……」
「さ、穂乃果。今日も1日元気に頑張りましょう」
「うんっ」
(海未ちゃんと穂乃果ちゃんがことりとずっと一緒にいたいって思ってくれてるのに……おかしいよ)
「ことりちゃん、早く帰ってきてね」
(2人のためにもことりが一緒にいなくちゃ。何があっても……)
海未「おはようございます、ことり」
ことり「おはよう、海未ちゃん♪」ギュッ
海未「こ、ことり!?」カァァァ
ことり「海未ちゃんは温かいねぇ」
海未「い、いきなり抱き着くなんて……は、破廉恥です!」
ことり「ことりは破廉恥なんかじゃないよぉ」
海未「そ、そうですが……!」
ことり「海未ちゃんは嫌なの……?」
海未「えっ?」
ことり「海未ちゃんはことりと一緒にいるのが嫌なの? ことりのこと嫌いなの?」
海未「ことり……?」
ことり「ことりは海未ちゃんとずっと一緒にいたいって思ってるのに……海未ちゃんは違うんだ」
海未(今日のことりは……様子が変ですね。前よりも不安定になっているのでしょうか……?)
ことり「でも大丈夫だよ。海未ちゃんがことりのこと嫌いでも、ことりはずっと一緒にいるから」
海未「ことり」
ことり「だって3人一緒にいないといけないもんね」ボソボソ
海未「ことり、落ち着いてください」
ことり「あっ、ご、ごめんね海未ちゃん。ずっと抱き着いたままだったね。ことりのこと嫌いだから嫌だったよね? ごめんね」パッ
海未「ことり、あなたは何か勘違いをしているみたいですね」ギュッ
ことり「あっ……」
海未「私がことりのことを嫌いなわけありません。……ただいきなり抱き着かれて驚いただけです」
ことり「海未ちゃん……」
海未「ですから安心してください」
ことり「うん」(海未ちゃんに嫌われてなくて良かった……これでずっと一緒にいてもらえる)
穂乃果「2人とも、朝からお熱いねぇ」
海未「なっ! ほ、ほほほ穂乃果」(いつからそこにいたのですか!?)
ことり「おはよう、穂乃果ちゃん」
穂乃果「おはよう、ことりちゃん」
海未「あ、あのっ穂乃果、ここ、これにはワケが……」
穂乃果「海未ちゃん、慌てすぎだよ。それよりもことりちゃんにハグしたなら、もちろん穂乃果にもしてくれるよねっ?」
海未「そ、それは」
ことり「海未ちゃん、穂乃果ちゃんにもハグしてあげないと」
海未「こ、ことりまで何を言い出すんですか!?」
ことり「だって、ことりだけ海未ちゃんにハグしてもらうのって不公平だと思うなぁ」
穂乃果「そ~だ、そ~だ!」
海未「ふ、不公平なんて言われましても……」
穂乃果「いいじゃん、いいじゃん! 減るもんじゃないんだし」
海未「そういう問題ではありません!」
穂乃果「海未ちゃんのケチ!」
海未「け、ケチとはなんですか!」
ことり(このままじゃ仲良く3人でいられなくなっちゃうかも……ことりがなんとかしないと)
穂乃果「ケチはケチだよっ」
海未「私はケチじゃありません!」
穂乃果「ケチだよっ!」
海未「違います!」
ことり「2人ともやめて! ことりは2人に喧嘩なんてしてほしくないよ……」
穂乃果「ことりちゃん……」
海未「ことり……」
ことり「3人で仲良くしようよ……じゃないと、ことりすっごく悲しくなっちゃう」
穂乃果「そうだよね……仲良くしないとダメだよね」
海未「すみません、ことり、穂乃果。変な意地を張ってしまって」
穂乃果「ううん、海未ちゃんは悪くないよ。穂乃果がちょっとふざけすぎちゃっただけだから。ごめんね」
ことり「ことりも悪かったから……ごめんなさい」
海未「……なんだかおかしな感じです」クスッ
穂乃果「3人が一斉に謝るもんね。なかなかこんなことないんじゃないかな?」
ことり「うんっ♪ これで一件落着だね」
海未「ええ」
穂乃果「でも良かったよ。今日このままだったら穂乃果、絶対だらけてた自信あるもん」
海未「あなたはいつもだらけているでしょう……」
穂乃果「い、いつもじゃないよっ」
ことり「あはは……。けど、ことりも安心しちゃった」(喧嘩したままなんて嫌だもん)
海未「そうですね。私も正直ホッとしています」(朝から喧嘩したままというのは、辛いですから)
穂乃果「ことりちゃんのおかげだね」
海未「本当にその通りです。ことりには頭が上がりませんね」
ことり「そんなことないよぉ。ことりはただ3人で仲良くしていたいだけだから」
海未「その心がけに救われたんです。ことりは立派ですよ」
穂乃果「そうだね。ことりちゃんはすごいよっ」
ことり「ありがとう」
ことり「穂乃果ちゃん、海未ちゃん、お昼食べよう?」
穂乃果「うんっ。ちょっと待ってて」
海未「穂乃果」
穂乃果「あっ、海未ちゃん。ちょうど良かったよ。一緒にお昼」
海未「」ガシッ
穂乃果「え?」
海未「すみません、ことり。今日は弓道部の方たちとお昼を一緒に取ることになっていますので……」
ことり「そうなんだ……。分かったよ」
海未「本当にすみません。それと少しだけ穂乃果を借りていきますね」
ことり「う、うん」
穂乃果「わわっ! 海未ちゃん引っ張らないでよ~」
海未(いつかのお返しです)
穂乃果「もう! 海未ちゃん、どうかしたの?」
海未「穂乃果、声が大きいです。もう少し抑えてください」ボソボソ
穂乃果「う、うん」ボソボソ
海未「それくらいでいいです」ボソボソ
穂乃果「それで海未ちゃん、声を小さくしてどうするの?」ボソボソ
ことり(2人で何の話をしてるんだろう? 内緒話みたいだけど……)
海未「はぁ……。忘れたのですか?」ボソボソ
穂乃果「何を……って、あ~!」
ことり「!」ビクッ
海未「い、いきなり叫ばないでください! うるさいです」
穂乃果「すっかり忘れてたよ」
ことり(穂乃果ちゃん、いきなりどうかしたのかな? それに忘れてたって……?)
海未「やっと思い出しましたか」
穂乃果「海未ちゃんに教えてもらわなかったら、いつも通りにことりちゃんとパン食べてるところだったよ」
海未「まったく……穂乃果は本当に仕方ない人ですね」
穂乃果「あ、あはは……面目ない」
凛「ことりちゃん、いる~?」
花陽「り、凛ちゃん、ここ上級生の教室だよ……」
ことり(凛ちゃんと花陽ちゃん? ことりに何か用があるのかな)
凛「あ、すっかり忘れてたにゃ」
海未「凛、花陽」
花陽「あっ、海未ちゃん」
穂乃果「穂乃果もいるよ」
凛「ねえ海未ちゃん、ことりちゃんいる?」
穂乃果「穂乃果のことはスルー!?」
凛「冗談だよ。穂乃果ちゃんでもいいからことりちゃんを呼んできてほしいな」
ことり(穂乃果ちゃん”でも”いいから……? 凛ちゃんは穂乃果ちゃんのことをその程度でしか見てないってことなの?)
穂乃果「任せてよ!」
海未「…………」(穂乃果……あなたはそれでいいんですか?)
花陽「凛ちゃん……」
凛「い、いや……わざとじゃないよ?」
海未「はぁ……まあいいです。では私はこれで失礼しますね」
凛「う、うん」
花陽「引き留めてごめんね、海未ちゃん」
海未「気にしないでください花陽。急ぎの用というわけではないですから」
花陽「そ、そうだったんだ……」
海未「はい、そうですよ。……2人ともことりのこと、頼みますね」
凛「任せて!」
花陽「が、頑張ります!」
穂乃果「ことりちゃん、凛ちゃんたちが呼んでるよ」
ことり「あっ、うん。ありがとう穂乃果ちゃん」
穂乃果「それとことりちゃん、ごめん!」
ことり「ほ、穂乃果ちゃん?」
穂乃果「今日のお昼は一緒に食べられないんだ……。本当にごめん!」
ことり「えっ……そ、そうなんだ」(どうして……? さっきはいいよって言ってくれたのに)
穂乃果「また今度一緒に食べよう」
ことり「う、うん」(もしかして……凛ちゃんと花陽ちゃんが来たから?)
凛「ことりちゃ~ん、一緒にお昼ご飯食べよう!」
花陽「凛ちゃん、静かにしないと……!」
穂乃果「凛ちゃんが呼んでるよ」
ことり「うん……今から行くね」(やっぱりそうなんだ……)
穂乃果「いってらっしゃ~い」
花陽「ことりちゃん、ごめんね……急に誘いに来ちゃって」
ことり「ううん、大丈夫だよ」
凛「それじゃあ屋上で一緒に食べようよ!」
ことり「……そうだね」(……がいなければ、穂乃果ちゃんと離れずに済んだのに)
花陽「……? ことりちゃん、元気がないみたいだけど……」
ことり「そ、そんなことないよ」
凛「本当に大丈夫?」
ことり「大丈夫だよ。屋上に行くんだよね? 早く行こう」
凛「行っくにゃ~!」
花陽「う、うん」
凛「今日はいい天気……だったはずなんだけど」
花陽「少しだけ、曇ってるね」
ことり「そうだね」
凛「うぅ……絶対晴れてると思ったのに」
花陽「どうしようか……。雨が降ったらいけないから、中で食べる?」
ことり「ううん。2人がことりのために選んでくれた場所だから、ここでいいよ」
凛「えっ……いいの?」
ことり「うん」
花陽「それじゃ、食べよっか」
凛「いただきま~す」
ことり「いただきます」
花陽「ことりちゃんのお弁当、美味しそうだね」
ことり「花陽ちゃんのも美味しそうだよ」
凛「かよちん、その唐揚げちょうだい」
花陽「うん、いいよ凛ちゃん。……ことりちゃんもどうかな?」
ことり「いいの? じゃあお言葉に甘えて、いただきます♪」
凛「この唐揚げ美味しいにゃ~」
ことり「花陽ちゃん、この唐揚げすごく美味しいよ」
花陽「2人が喜んでくれて良かった」
凛「ねぇねぇ、どうせならみんなでおかずを交換しようよ」
花陽「いい考えだね、凛ちゃん! ことりちゃんもそれでいいかな?」
ことり「うん、いいよ」
凛「やった! それじゃあことりちゃん、その卵焼きちょうだい」
ことり「はい、どうぞ」
凛「ありがとう」
ことり「花陽ちゃんにも、はい」
花陽「あ、ありがとう」
凛「この卵焼き、甘くてすっごく美味しい!」
花陽「ご飯にすっごく合うね!」
ことり「ご飯に合うかは分からないけど……口に合ったみたいで良かった♪」
凛「お礼に凛のこれあげるにゃ」
ことり「これは……ベーコン巻かな?」
凛「うん、そうだよ」
花陽「凛ちゃん、私ももらっていい?」
凛「もちろんだよ、かよちん」
ことり「ん~! ベーコンとお野菜が美味しい!」
花陽「凛ちゃんの家のベーコン巻って、いつも美味しいね! それに中身も毎回違うし……すごいなぁ」
凛「えへへ。お母さんが高校生になって、凛がよく頑張ってるからってご褒美で作ってくれてるおかげだよ」
ことり「ご褒美かぁ」(ことりも穂乃果ちゃんと海未ちゃんのために何か作ってあげたら、喜んでくれるかな)
花陽「ことりちゃん、ご褒美がどうかしたの?」
ことり「あ、えっと……ことりも誰かに何かしてあげたいなぁって」
凛「それがことりちゃんの悩み?」
ことり「う~ん……そうなのかなぁ?」
凛「きっとそうだよ! だったら凛も一緒に考えるにゃ」
花陽「わ、私も……手伝うよ」
ことり「だ、大丈夫だよ」
凛「え~。凛たち、ことりちゃんのために何かしたいよ~」
ことり「で、でも……」
花陽「えっと……私もしたい、かな」
ことり「花陽ちゃんまで……!」
凛「ことりちゃん、何かない?」
ことり「う、う~ん……」
凛「なんでもいいから言ってみてよ」
ことり(……どうしてこんなにことりに構ってくるの?)
花陽「凛ちゃん、あんまりしつこく聞いちゃダメだよぉ。ことりちゃんも困ってるよ」
凛「あっ……ごめんね、ことりちゃん」
ことり「ううん、気にしないで」(何かことりに知られたくないことがあるの? それとも……)
花陽「凛ちゃん、ことりちゃん、そろそろ教室に戻らないと……」
凛「もうそんな時間だっけ?」
花陽「う、うん」
ことり「それじゃあ戻ろうか」
凛「そうだね」
花陽「ことりちゃん」
ことり「ん?」
花陽「今日の放課後……何か用がある、かな?」
ことり「特に何もないよ」
凛「じゃあじゃあ、一緒に帰ろうよ」
ことり「穂乃果ちゃんたちがいるから……」
花陽「そっかぁ……」
凛「それじゃ仕方ないにゃ」
ことり「2人とも、ごめんね」
花陽「ううん。今日は急だったけど……一緒にご飯を食べてくれて、ありがとう」
ことり「うん」
凛「今度また一緒に食べよう」
ことり「……そうだね」
穂乃果「そういえばことりちゃん、花陽ちゃんたちとのお昼どうだった?」
ことり「う、うん。楽しかったよ」(穂乃果ちゃんと海未ちゃんと一緒に食べる方が楽しいけど……)
穂乃果「そっか~」
ことり「ねえ穂乃果ちゃん、今日の帰りは寄り道しない?」
穂乃果「いいね~、って言いたいけど……ごめん! 今日はお店の手伝いをしなくちゃいけないんだ」
ことり「お店の手伝いなら……仕方ないね」
穂乃果「本当にごめんね、ことりちゃん」
ことり「ううん、いいよ。穂乃果ちゃんは悪くないよ。……ことりのタイミングが悪いだけだよ」
海未「穂乃果、ことり、そろそろ次の授業の準備をしてください。もうすぐ先生が来ますよ」
穂乃果「もうそんな時間? すぐに準備しなくちゃ」
ことり「海未ちゃん、いつの間に戻ったの? 全然気付かなかったよ」
海未「ついさっきですよ」
ことり「そうなんだ……気付かなくてごめんね」
海未「それくらいで謝らないでください、ことり。誰にでもそういうときはあります」
ことり(海未ちゃんのことも穂乃果ちゃんと同じくらい好きなのに、どうして海未ちゃんが戻ってきたことが分からなかったんだろう……)
海未「それよりも次の準備をしなくていいのですか?」
ことり「あ、うん……すぐ用意するね」
海未「そろそろ休憩にしましょうか」
絵里「そうね。ちょうどキリのいいところでもあるし……この後のことを考えたら少し休んだ方が良さそうね」
海未「では10分ほど休憩にします。水分補給はしっかりしておいてください」
「「「は~い」」」
穂乃果「やっと休憩だ~」
ことり「疲れたねぇ」
海未「2人ともだらしないですよ」
穂乃果「今は休憩中なんだからいいじゃん」
海未「だからと言って地面に寝転がるのは……」
ことり「海未ちゃんも一緒に休もう?」
海未「そうですね。さすがに寝転がったりはしませんが」
穂乃果「なんだか海未ちゃんの言葉に棘を感じるよ……」
ことり「き、気のせいだよ穂乃果ちゃん」
海未「この後も厳しくいくので、しっかり休憩してくださいね穂乃果」ニコッ
穂乃果「うへぇ……」
海未「変な声を出すのはやめなさい」
穂乃果「えぇ……」
ことり「た、大変だね」
凛「かよちん、大丈夫?」
花陽「だ、大丈夫だよ凛ちゃん」
真姫「あまり無理しちゃダメよ、花陽。しっかり水分を取って休んでおかないと危ないわ」
花陽「う、うん」
真姫「はい、水」
花陽「ありがとう、真姫ちゃん」
凛「り、凛の役目が……真姫ちゃんに盗られたにゃ……」
真姫「意味分かんない。別に誰の役目ってわけでもないでしょ」
凛「そうだけど……」
真姫「だけど?」
凛「なんか真姫ちゃんが相手だと悔しい」
真姫「喧嘩売ってるの?」
花陽「り、凛ちゃん、真姫ちゃんも喧嘩はダメだよぉ」
凛「かよちん、心配しなくても大丈夫だよ。凛は別に真姫ちゃんと喧嘩したいわけじゃないからね」
花陽「本当に?」
凛「もちろん! かよちんに嘘つくわけないにゃ~」
花陽「なら……いいけど」
真姫「よくないわよ!」
希「にこっち」
にこ「希? 何の用よ?」
希「何か用がないと話しかけちゃダメなん?」
にこ「べっつに~」
希「……そんなにわしわししてほしいん?」
にこ「そんなわけないじゃない! ちょっ、近寄らないで!」
希「そんな酷く言わんでもええやん……傷つくなぁ」
にこ「それくらい嫌なのよ!」
希「そう嫌がらんでもいいやん。ウチなりのスキンシップってことで」
にこ「どんなスキンシップよ……」
希「ん~? 親密な関係になるため、かな」
にこ「親密というより険悪になるためのセクハラ行為ね」
希「ふ~ん。にこっちはそう思ってたんやね」
にこ「そ、そそそんなわけないでしょ」
希「いいんよ、いいんよ。にこっちが素直に言うことなんて珍しいし」
にこ「それじゃにこがいつもは素直じゃないみたいじゃない」
絵里「……でも素直とは言えないんじゃない?」
にこ「いきなり出てきて何言ってくれんのよ絵里」
絵里「本当のことなんだから仕方ないじゃない」
希「それににこっちも否定せんってことは、自分でも自覚が」
にこ「あ~もう、うるさいわね! 別にどうでもいいでしょ」
絵里「……どうでもいいとは思わないけど」
希「まあいいやん。本人がどうでもいいって言うんやし」
にこ「ふん」
絵里「にこ、拗ねないでちょうだい」
にこ「拗ねてないわよ」
希「ホント素直じゃないなぁ」
にこ「素直じゃなくて悪かったわね」
絵里「もう……たまに素直になったらいいだけじゃない」
希「それが出来たら今のにこっちはおらんと思うな」
にこ「…………」
海未「すみません絵里、そろそろ練習を再開しようと思うのですが……」
絵里「ええ、そうね。……十分休憩もできたと思うし、後半の練習を始めましょうか」
海未「はい、お疲れ様でした」
絵里「みんないい調子でできているわ。……明日もこの調子で頑張りましょう」
凛「は~い」
花陽「が、がんばります」
穂乃果「明日の練習も張り切っちゃうよ~」
ことり(穂乃果ちゃん、可愛い)
海未(その熱意を勉強にも回してくれれば……はぁ……)
にこ「ま、まあにこにかかればこれくらい当然よね~」
真姫「息かなり上がってた癖に」ボソッ
希「まあまあ真姫ちゃん。にこっちにも見栄を張りたい時があるんよ」ボソッ
真姫「いつものことじゃない」ボソッ
にこ「聞こえてるわよ」
絵里「それじゃ、今日はお疲れ様。気を付けて帰るのよ」
「「「は~い」」」
凛「海未ちゃん海未ちゃん、ちょっといいかな?」
海未「? どうかしましたか、凛」
凛「お願いがあるんだけど……」
海未「お願い……?」
凛「うんっ。えっとね」
ことり(凛ちゃん? 海未ちゃんと何を……)
穂乃果「ことりちゃん、どうしたの? 海未ちゃんの方をじっと見てるみたいだけど」
ことり「え、あ……なんでもないよ」
穂乃果「そう? あ、ことりちゃん、穂乃果先に帰るからって海未ちゃんに伝えておいて」
ことり「うん、いいよ」
穂乃果「ありがとう。それじゃまた明日ね~」タッタッタ
ことり「じゃあね、穂乃果ちゃん」(穂乃果ちゃん……忙しそう。ことりも何か手伝えたらいいのに)
海未「……なるほど。いい考えだと思いますよ」
凛「本当!?」
海未「ええ」(それにことりにもいい刺激になりそうです)
凛「良かったにゃ~。それじゃ、このことかよちんにも伝えてくる!」
ことり(海未ちゃんと凛ちゃん、お話終わったのかな)
海未「ことり、ちょっといいですか?」
ことり「もちろんだよ。あ、穂乃果ちゃんは今日家の手伝いがあるからって先に帰ったよ」
海未「そうですか。それでですね、ことり」
ことり「うん?」
海未「今日は少し用事ができてしまいまして……一緒に帰ることができそうにないんです」
ことり「……え?」(海未ちゃんまでいないの?)
海未「ですので、ことりは先に帰っていてください」
ことり「……どうして」ボソッ
海未「ことり?」
ことり「……うん、先に帰ってるね」
海未「すみません、急な話になってしまって」
ことり「ううん、海未ちゃんは悪くないよ。それじゃあね」
海未「ええ。また明日」(ことり……目に見えて元気がなくなっていますね。凛、花陽、どうかことりのことを頼みます)
ことり「はぁ……」(海未ちゃんも穂乃果ちゃんも忙しいんだから仕方ないよね)
凛「ことりちゃ~ん!」
ことり(2人と違ってことりは……何もない)
凛「聞こえてないのかな?」
花陽「そうかもしれないね」
ことり(もしかしたら……ことりは2人の足を引っ張ってるだけなのかも)
凛「もっと近くで呼んでみようっと」
ことり(……本当にことりが一緒にいてもいいのかな?)
凛「ことりちゃん」
ことり「あっ、凛ちゃん……どうかした?」
凛「もうさっきから呼んでたんだよ」
花陽「ご、ごめんねことりちゃん。何か考え事してたのに……邪魔しちゃって」
凛「え? そうだったの?」
ことり「ううん、邪魔なんかじゃ……ないよ」
凛「良かった~。ねえことりちゃん、途中まで一緒に帰ろうよ」
ことり「えっ、でも……」
凛「今日は穂乃果ちゃんも海未ちゃんも用事でいないんでしょ? なら凛たちと帰ろう」
ことり(なんでそれを……)
花陽「ダメ、かな?」
ことり「ダメじゃないけど……」(……そういえば、さっき凛ちゃんは海未ちゃんと何か話してた)
凛「じゃあ一緒に帰ろう!」
ことり「う、うん」(もしかして……海未ちゃんに何か悪いことを?)
凛「それじゃ出発にゃ~」
花陽「凛ちゃん、ゆっくり歩かないとせっかくの時間が……」
ことり(時間……?)
凛「あ、そうだった」
ことり「ねえ、時間って?」
花陽「な、なんでもないよ。ねえ凛ちゃん?」
凛「う、うん」
ことり「……2人とも何か隠してない?」
花陽「そ、そんなことないよ」
凛「か、隠し事なんかないに決まってるよ」
ことり(絶対何か隠してる……でも何を?)
花陽「そ、それよりも今日の練習は大変だったね」
凛「そうだね、かよちん」
ことり「…………」(どうして隠すの? ことりに知られちゃいけないことなの?)
花陽「たくさん動いたから、少しお腹が空いちゃったよ」
凛「せっかくだし、3人で帰りに何か食べて帰る?」
ことり「ことりは……ちょっと……」
凛「ええっ!? せっかく海未ちゃんにお願いして」
花陽「り、りりり凛ちゃん!」
凛「え? あっ……」
ことり「海未ちゃんにお願い……?」(そんな……凛ちゃんにお願いされたからって海未ちゃんは用事があるって嘘をついたの……?)
凛「ち、違うんだよ! これにはわけが」
ことり「……だ」
花陽「こ、ことりちゃん、これは……その」
ことり「……そだ」
凛「えっと、その……凛たちはことりちゃんのために」
ことり「嘘だ!」
花陽「ひゃうっ!?」
凛「こ、ことりちゃん……?」
ことり「海未ちゃんが……そんな、嘘嘘嘘嘘ウソウソウソ!」
花陽「り、凛ちゃん……!」
凛「か、かよちん、どど、どうしたら」
ことり「海未ちゃんはことりに嘘をつくなんて有り得ない! 有り得ないよ!」
花陽「こ、ことりちゃん……落ち着いて」
ことり「あっ……ご、ごめんね2人とも。そうだよね、落ち着いて考えなくちゃダメだよね」
凛「そ、そうだよ! 落ち着かなきゃダメにゃ」
花陽「そ、そうだよぉ」
ことり「うん……落ち着かなきゃ、いけないよね」(もしかしたらことりの間違いかもしれないもんね)
凛「今日は家に帰ってゆっくりした方がいいと思うよ」
花陽「お風呂とかで、ゆっくり休むのが……いいと思うよ?」
ことり「そうするね……じゃあことりはこっちだから」
凛「うん。気を付けてね」
花陽「じゃあね、ことりちゃん」
ことり「バイバイ」
凛「ことりちゃん、本当に大丈夫かな……」
花陽「なんだか大変なことになってる気がするね……」
凛「海未ちゃんたちに連絡した方がいいよね」
花陽「そうだね……できるだけちゃんと伝えないと」
ことり「ただいま……」
ことり(って、まだお母さん帰ってきてないんだ)
ことり「…………」
ことり(なんでだろ? いつもより家の中が暗く感じちゃう)
ことり「きっと……嫌なことを無意識に考えちゃってるせいだよね」
ことり(……落ち着かなきゃ。ことりは悪い方に考えすぎなだけかもしれないんだから)
ことり「大丈夫、大丈夫……海未ちゃんはきっとことりのためを思って」
『本当に? ことりのためを思うなら、一緒に帰ってくれるはずだよね』
ことり「大丈夫、大丈夫……海未ちゃんは傍にいてくれるって」
『じゃあ、どうして今日は一緒に帰れないなんて嘘を? 傍にいてくれるなら嘘なんかつかずに一緒に帰ってくれるはずだよ)
ことり「大、丈夫……きっと、大丈夫……海未ちゃんは」
『それに穂乃果ちゃんだって、もしかしたら嘘をついたのかも』
ことり「2人が……ことりに嘘つくわけ……約束だって」
『でも海未ちゃんは嘘をついた』
ことり「違う……海未ちゃんは、嘘なんか……」
『凛ちゃんは海未ちゃんに何かをお願いしたって』
ことり「いや、でも……けど……まさか」
『そのお願いを聞いて海未ちゃんは嘘をついたんだよ。それが事実』
ことり「そんな……違う……だって、海未ちゃんも穂乃果ちゃんも、一緒にいてくれるって」
『けど今日は一緒にいてくれなかった。お昼も帰りのときも』
ことり「そ、それは……」
『いい加減認めようよ。嘘をつかれたんだってことを』
ことり「……違う。海未ちゃんは嘘なんかついたりしない、穂乃果ちゃんだってちょっと忙しいだけに決まってるよ」
ことり(そうだよ、2人がことりに嘘をつくわけないもん。約束だってしたし、そんなこと有り得るはずがないよ)
ことり「きっと凛ちゃんたちが海未ちゃんを脅したんだ。そうに決まってる。そうじゃなきゃおかしいよ」
ことり(早くことりがなんとかしないと……! 海未ちゃんを助けないと)
ことり「海未ちゃん待ってて……すぐに助けるから」
海未「そうですか」(ことりがそんなことを……)
凛『うん。凛たちどうすれば良かったのかな……』
海未「大丈夫ですよ凛。何もできなかったかもしれませんが、きっとあなたたちの想いはことりに通じているはずですから」
凛『そうかな?』
海未「ええ。私はそう思います」
凛『そっか……。だったら良かったにゃ~』
海未「凛は思いやりのある良い子ですね」
凛『え?』
海未「そうやって相手のことを考えられるのは心が優しい証拠です」
凛『て、照れちゃうよ~』
海未「ふふっ。凛は可愛いですね」
凛『も、もうっ! 海未ちゃんの意地悪~』
海未「すみません、凛。少しからかいすぎましたね」
凛『海未ちゃんなんて知らない』
海未「それは困りました……」
凛『ふ~んだ』
海未「せっかく今度の休みにラーメンをご馳走しようと思ったのですが」
凛『ラーメン!?』
海未「しかし凛がそこまで嫌がるのであれば仕方ありませんね。ここは花陽を誘って」
凛『凛は全然嫌なんかじゃないにゃ~!』
海未「本当ですか? 無理しなくてもいいのですよ?」
凛『無理なんかしてない! さっきのはちょっとした冗談だから! ね、ねっ?』
海未「分かっていますよ。では花陽も呼んで3人で食べに行きましょうか」クスッ
凛『いいの? やった~!』
海未「喜んでもらえて何よりです。では詳しい日時などは花陽も呼んで明日決めましょうか」
凛『は~い』
海未「それではまた明日、学校で」
凛『また明日にゃ~』
ことり「……もしもし、凛ちゃん?」
凛『ことりちゃん? ……どうしたの?』
ことり「帰りのことをきちんと謝りたくて……本当にごめんね」
凛『ううん、凛は気にしてないよ』
ことり「そう言ってくれると嬉しい。それでなんだけど……」
凛『うん?』
ことり「お詫びにって言うのもおかしいけど、お菓子を作ったんだ。もし良かったら、今から会えないかな?」
凛『今から? 別にいいけど……』
ことり「良かったぁ。明日でもいいんだけど、出来立てを食べてほしかったんだ」
凛『ことりちゃんのお菓子は美味しいから楽しみにゃ~。あっ、かよちんも呼んでもいい?』
ことり「もちろんだよ。花陽ちゃんにも渡したかったからちょうど良かった」
凛『それじゃかよちんと一緒に行くね。場所は……どこにしよう?』
ことり「それならことりの家に来てくれると嬉しいな。準備とかもすぐにできるから」
凛『分かったよ』
ことり「ことりが声を掛けたのに、家に来てもらう形になっちゃってごめんね」
凛『大丈夫だよ! ことりちゃんのお菓子のためなら、これくらいなんともないにゃ』
ことり「ふふっ。ありがとう凛ちゃん♪」
凛『じゃあ今から行くね』
ことり「うん、いろいろ用意して待ってるね」
凛『は~い、それじゃあまた後でね』
ことり「うん、バイバイ」
ことり(ふふっ……)
海未「おはようございます、ことり」
ことり「おはよう、海未ちゃん♪」
海未「今日は機嫌がいいみたいですが、どうかしたのですか?」(凛たちからの電話で少し心配でしたが……大丈夫だったみたいですね)
ことり「えへへ。昨日家でとってもいいことがあったんだ」
海未「そうなんですか。どんなことがあったんですか?」
ことり「えっと……お菓子作りがいつもより上手にできたの」
海未「それは良かったですね。ことりのお菓子はいつも美味しいですから、それ以上のものとなるととてもいい出来なんでしょうね」
ことり「海未ちゃんにそう言ってもらえるとすごく嬉しいなぁ」
海未「本当のことですから」
ことり「あ、そうだ。昨日の分じゃないんだけど……お菓子があるの。良かったら食べて?」
海未「いいのですか?」
ことり「うんっ。もちろんだよ♪」
海未「では、お昼のときにいただきますね」
ことり(できれば今すぐ食べてほしいけど……いっか♪)
穂乃果「ことりちゃん、海未ちゃん、おはよう」
ことり「おはよう、穂乃果ちゃん」
海未「おはようございます、穂乃果」
穂乃果「なんだか美味しそうな匂いがするね~」クンクン
ことり「穂乃果ちゃん、鼻がいいね。実は今日お菓子を持ってきたの」
穂乃果「お菓子!? ちょうだい、ことりちゃん!」
海未「すごい食いつきようですね、穂乃果」
穂乃果「だってお菓子だよ? 甘い物だよ? テンションも自然と上がっちゃうよ~」
海未「はぁ……そうでしょうか?」
穂乃果「そうだよ! 穂乃果が言うんだから間違いないよ」
ことり「ことりもそう思うな」
海未「わ、分かりました……。確かに甘い物は気分転換にはいいですからね」
ことり「う~ん、気分転換ってわけじゃないと思うけど」
穂乃果「どっちにしてもことりちゃんのお菓子が食べられるなら、穂乃果はなんだっていいよ」
海未(お菓子さえ食べられたらいいのですか……)
ことり(穂乃果ちゃんがことりのお菓子をそんなにも好きでいてくれるなんて……穂乃果ちゃんのためにももっと頑張らないと!)
穂乃果「どうしたの2人とも? 早く行かないと遅刻しちゃうよ?」
海未「あ、いえ。なんでもないですよ」
ことり「うん、なんでもないよ」
穂乃果「?」
海未「それよりも穂乃果の言う通り、そろそろ急がないと遅刻してしまいそうですね」
ことり「そうだね。ちょっと急がないとね」
穂乃果「それじゃ急ごっか」
海未「ええ」
ことり「うんっ」
凛「…………」
花陽「…………」
海未「おや? あれは……」
穂乃果「凛ちゃんと花陽ちゃんみたいだね。なんだか元気がないみたいだけど」
海未「体調が悪いのかもしれませんね」
ことり「…………」ギリッ
穂乃果「ちょっと行ってみるね」
ことり「あ、それならことりが行くよ」
穂乃果「そっか。ことりちゃん、保健委員だもんね」
ことり「うんっ。だから2人のことはことりが引き受けちゃうね」
海未「分かりました。私たちは先に教室の方へ行っておきますね」
ことり「分かったよ」
穂乃果「じゃあことりちゃん、2人のことお願いするね」
ことり「ことりにお任せください♪」
凛「…………」
花陽「凛ちゃん……元気、出そう?」
凛「かよちん……」
ことり「凛ちゃん、花陽ちゃん」
凛「」ビクッ
花陽「」ビクッ
ことり「おはよう♪」
凛「こ、ことりちゃん……?」
花陽「ど、どうして……?」
ことり「調子が悪そうだったから声を掛けたの。海未ちゃんたちも心配してたよ?」
凛「…………」
花陽「そ、そう……なんだ」
ことり「2人とも大丈夫? 保健室で休んだ方がいいんじゃない?」
凛「……誰のせいで」ボソッ
ことり「ん?」ニコッ
凛「ひっ……!」
ことり「どうしたの凛ちゃん? そんなに怯えちゃって」
凛「な、なんでもないにゃ!」
花陽「わ、私たちは大丈夫だから……! こ、ことりちゃんも教室に行った方が……」
ことり「そう? じゃあことりは教室に戻るね」
花陽「う、うん。……心配かけて、ごめんなさい」
ことり「ううん、気にしてないよ」
凛「……良かった」ホッ
ことり「ただ……あんまり元気がないみたいだと、海未ちゃんたちがまた心配しちゃうから……分かってるよね?」
凛「」ゾクッ
花陽「も、もちろんだよ」ビクビク
ことり「なら良かった♪ ことりもあんまりひどいことしたくないからね」
花陽「……そ、それじゃあ私たちはもう行くね」
凛「…………」
ことり「うん、2人ともバイバイ」
海未「ことり、2人は大丈夫でしたか?」
ことり「うんっ。ちょっと朝ご飯が足りなかったみたい」
穂乃果「朝ご飯は大事だもんね~」
ことり「そうだねぇ」
海未「朝ご飯も大事ですが、生活習慣を整えることも大事ですよ。特に穂乃果は」
穂乃果「い、言われなくてもわかってるよ」
ことり「ふふっ。あ、もうすぐ授業始まっちゃうよ」
海未「そうですね。穂乃果、途中で寝ないでくださいね」
穂乃果「穂乃果はいつも寝てるわけじゃないよっ!」
にこ「ことりはいるかしら?」
ことり「あれ? にこちゃん、どうしたの?」
にこ「ちょうど良かった。ことり、今からお昼を持って部室に来なさい」
ことり「えっ。ど、どうして?」
にこ「そんなの決まってるじゃない。一緒にお昼を食べるのよ」
ことり「で、でも……海未ちゃんたちと」(またことりの邪魔をしようとするんだ……)
海未「行ってきてはどうですか?」
ことり「う、海未ちゃん……?」
にこ「ほら、海未もこう言ってるんだしいいじゃない」
ことり「…………」(なんで? どうして? 海未ちゃん……)
海未「ことり、わざわざにこがここまで足を運んでくれたのですよ? それにたまには、にこたちとお昼を一緒にするというのもいいと思います」
にこ「そうよ。この世界のアイドル、矢澤にこが直々に誘いに来たんだからね」
海未(上から目線過ぎです、にこ……まったく)
ことり「海未ちゃんが……そう言うなら」
にこ「なんだか嫌々って感じね」
ことり「そ、そんなことないよ」(本当は離れたくないけど……我儘言って海未ちゃんを困らせちゃうのも嫌だから……)
にこ「ふ~ん……。ならいいけど」
ことり「……ちょっと待っててね。今から用意するから」
にこ「はいはい、早くしなさいよね」
ことり「はぁい」
海未「にこ、あの……」
にこ「はいはい、分かってるわよ。強引過ぎるって言いたいんでしょ?」
海未「いえ、そうではなく……いや、強引過ぎるとは思うのですが」
にこ「大丈夫よ、ことりは少しくらい強引に誘うくらいがちょうどいいんだから」
海未「そうかもしれませんが……」
にこ「……何が心配なのかは分からないけど、安心なさい。たまには上級生である私を頼ってももらわないと困るわ。それにことりのこと、なんとかしたいって思ってるのはアンタだけじゃないんだから」
海未「にこ……」
にこ「ほら、アイドルは笑顔よ! どんなときでも笑顔を忘れなかったら、きっといいことがあるんだから」
海未「……そうですね」クスッ
ことり「お待たせ、にこちゃん」
にこ「そう。それじゃ行きましょ」
ことり「海未ちゃん、ごめんね」
海未「謝らないでくださいことり。穂乃果には私から伝えておきますから安心してください」
ことり「うん」
にこ「ことり、急ぎなさいよ」
ことり「う、うん」
海未(ことり……きっと、大丈夫ですよね)
ことり(さっきにこちゃん、海未ちゃんに何か言ってた……。きっと凛ちゃんたちと同じでにこちゃんも……許せない)
にこ「真姫ちゃん、待たせたわね」
真姫「もうっ! どれだけ時間が掛かってるのよ」
ことり(真姫ちゃんもにこちゃんの仲間なの? ……みんな、そんなにことりを2人から引き離したいの……?)
にこ「うるさいわね……仕方ないでしょ? 急に誘ったんだから時間くらい食うわよ」
真姫「はぁ? 私がうるさいって? 意味分かんない。ちょっと遅かったからそう言っただけじゃない」
にこ「そうは思えないんだけど。あからさまに非難してたじゃない」
真姫「別に非難なんかしてないわ」
にこ「だから、そう聞こえたって言ってるのよ」
真姫「わ、悪かったわよ……」
にこ「わっ、分かればいいのよ」
ことり「…………」
にこ「と、とにかくお昼にするわよ」
真姫「そうね。いい加減お腹が空いたもの」
にこ「ことり、お昼にしましょう」
ことり「うん、そうだね」(……別にことりがいなくても良かったんじゃないかな)
にこ「ことりはこっちの方ね」
ことり「えっ……う、うん」
にこ「真姫ちゃんは……面倒だしそのままでいいわ」
真姫「当然よ。動けって言われても動きたくないわ」
にこ「んで、にこは部長だから~ここね」
真姫「はいはい、どこでもいいじゃない。お昼を食べるだけなんだし」
にこ「こういうの1つでも、こだわっておかないとアイドルとして失格なのよ」
真姫「そう」
ことり「あ、あはは……」
にこ「それで、何か面白い話はないの?」
真姫「あるわけないじゃない。そもそもお昼を食べるだけでしょ? 別に話さなくてもいいじゃない」
にこ「いやいやいや、お昼を食べるだけなら集まる必要ないでしょうが」
ことり「そうだね。ことりが来なくても良かったよね」
真姫「そ、そこまで言ってないわよ」
にこ「ま、真姫ちゃんが変なこと言うから」
ことり(海未ちゃん、穂乃果ちゃんと……一緒にお昼食べたかったなぁ)
にこ「ほら、ことりが落ち込んじゃったじゃない」ヒソヒソ
真姫「悪気があったわけじゃ……」ヒソヒソ
にこ「それはいいから、責任もってどうにかしなさいよ」ヒソヒソ
真姫「に、にこちゃんも手伝いなさいよ」ヒソヒソ
にこ「ったく……しょうがないわね」
真姫「ことり、その……きょ、今日はいい天気ね」
ことり「……曇ってるよ?」
真姫「…………」
ことり「…………」
にこ「…………」
真姫「わ、私は曇りが好きなのよ!」
ことり「そ、そうなんだ」
にこ「へ、へぇ~」
真姫「…………」
にこ「…………」
ことり「…………」(えっ……それだけ?)
真姫「こ、ことりは!?」
ことり「えっ?」
真姫「ことりは……曇りは好き、なの?」
ことり「ことりは……曇りより晴れてる方が好き、かなぁ」
真姫「そ、そうよね」
ことり「…………」
真姫「…………」
にこ「…………」
真姫「わ、私も……」
ことり「?」
真姫「私も、曇りより晴れの方が……好きよ」
にこ「なんでよ!?」
真姫「」ビクッ
ことり「」ビクッ
にこ「自分で曇りが好きって言っときながら、意見を変えるとかありえないでしょ!」
真姫「こ、言葉のあやよ」
にこ「そ、れ、で、も! 自分が言ったことくらい責任を持ちなさいよ! 第一、天気の話から始める時点でおかしいでしょうが! なんで”初対面の相手に何話したら分からないから、とりあえず天気の話でも振っておこう”みたいな感じになってるのよ!? 同じミューズの仲間でしょう!? いくらなんでもそれは酷すぎるわ!」
真姫「だって……」
にこ「だってじゃないわよ! そんなに話すことがないの!? ダンスとか衣装とかいろいろ話すことはあるでしょう!? それに他にも私生活のこととか聞いてみてもいいじゃない!」
ことり(にこちゃん……なんだか必死だね)
真姫「そ、そうだけど……頭の中が真っ白になっちゃったから」
にこ「それがおかしいのよ! なんで頭の中が真っ白になったりするの?」
真姫「さあ?」
にこ「いろいろおかしすぎるでしょ!」
ことり「にこちゃん、そろそろその辺で……」
にこ「甘いわよ、ことり。ここは厳しく言っておかなきゃダメなところよ」
ことり「で、でもお昼が終わっちゃうよ?」
真姫「そうよ。このまま続けてたら何のためにことりを呼んだか分からなくなるわ」
にこ「うっ……それはマズいわね」
真姫「でしょ? それにお説教なんか受けたくないわ」
ことり「ことりもお説教されてる真姫ちゃんは見たくないなぁ」
にこ「はぁ……仕方ないわね。真姫ちゃんにはまた今度みっちり話をするから、いいわね?」
真姫「別にいいんだけど」
にこ「い、い、わ、ね?」
真姫「はいはい」
ことり(真姫ちゃんも大変だなぁ)
にこ「それで、ことりは何か話せるようなこととかないの?」
ことり「ことりが話せること? う~ん……」(穂乃果ちゃんのこととか海未ちゃんのことかなぁ)
真姫「ほら、すぐに話せることはそうそう見つからないのよ。分かったにこちゃん?」
にこ「なんでアンタが得意げなのよ? とにかくなんでもいいのよ」
ことり「本当になんでもいいの?」
にこ「ええ」
真姫「つまらなければなんでもいいわ」
にこ「地味にプレッシャー掛けてんじゃないわよ……」
ことり「それじゃあ……穂乃果ちゃんのことを話すね」
~以下割愛~
ことり「それでね、穂乃果ちゃんと海未ちゃんが」
にこ「も、もういいわことり」
真姫「え、ええ。ことりが穂乃果と海未が大好きってことはよく分かったわ」
ことり「そう? まだたくさんあるのに……残念」
にこ「続きはまた今度でいいわ。それにそろそろ昼休みが終わるわよ」
ことり「もうそんな時間になっちゃったの?」
真姫「そうね。楽しい時間はあっという間に過ぎるっていうし」
ことり「そっかぁ」
にこ「まあことりの意外な一面も見れたみたいだし、良い時間にはなったんじゃない」
真姫「確かに」
ことり「意外な一面?」
にこ「好きなものはとことん好き、ってところかしら」
ことり「好きなものは好きだから、好きなものじゃないの?」
にこ「あ~、そういうのとはまたちょっと違うんだけど……まあいいわ」
真姫「……?」
にこ「とりあえず教室に戻りましょう」
真姫「ええ」
ことり「そうだね」
にこ「それじゃ、また放課後」
真姫「……すぐじゃない」
ことり「あはは……またね~」
海未「おかえりなさい、ことり」
穂乃果「おかえり~」
ことり「ただいま海未ちゃん、穂乃果ちゃん」
海未「にこたちとの食事はどうでしたか?」
ことり「楽しかったよ♪」(海未ちゃんと穂乃果ちゃんのことをいっぱい話せたもん)
海未「それは良かったです」(にこと真姫は上手くやってくれたみたいですね)
穂乃果「いいなぁ。こっちは海未ちゃんのお説教で全然楽しくなかったよ……」
海未「私だって、お昼のときくらいお説教をしたくありませんよ」
穂乃果「じゃあしなくてもいいじゃん!」
海未「そうはいきません。こういうことはきちんと言っておかなければいけませんから」
穂乃果「うぅ……! 海未ちゃんの鬼! 悪魔!」
ことり「ほ、穂乃果ちゃん」
穂乃果「鬼畜! お説教魔!」
ことり「そろそろやめておかないと……」
海未「穂乃果、覚悟はできているんでしょうね?」ニコッ
穂乃果「…………」
ことり「だから言ったのに……」
穂乃果「ことりちゃん、助けて!」
ことり「う、海未ちゃん」
海未「ことり、何も言わなくても分かっていますよ」
ことり「……それならいいんだけど」
穂乃果「こ、ことりちゃん!?」
海未「穂乃果、後でゆっくり私とお話しましょうね」
穂乃果「え、遠慮させていただ」
海未「しましょう、ね?」ニコッ
穂乃果「……はい」
ことり(穂乃果ちゃん、ごめんね……。ことりもさすがに今の海未ちゃんは止められないよぉ)
真姫「ね、ねえことり」
ことり「真姫ちゃん? どうしたの?」
真姫「その……お願いがあるんだけど」
ことり「真姫ちゃんがお願いなんて珍しいね。ことりにできることなら何でも言って」
真姫「じゃあ……今日、これから一緒に遊びに行かない?」
ことり「……今から?」
真姫「え、ええ」
ことり「ちょっと待っててくれる?」
真姫「分かったわ」
ことり「海未ちゃん」
海未「ことり、ちょうどいいところに来てくれました。穂乃果がどこへ行ったか知りませんか? いつの間にかいなくなってしまったみたいで」
ことり「穂乃果ちゃんがいなくなっちゃったの……?」
海未「私が少し目を離した隙にどこかへ逃げてしまったみたいで……まだお説教の途中だったんですが」
ことり(海未ちゃんのお説教は長いから、穂乃果ちゃんじゃなくても逃げちゃうかも)
海未「まあ私のことはいいですね。それより、ことりこそ何か用があったんじゃないですか?」
ことり「あ、うん。今日は真姫ちゃんと帰るけどいいかなぁって」
海未「真姫がことりを誘うなんて珍しいですね。もちろんいいですよ」
ことり「……ありがとう海未ちゃん。じゃあことりは先に帰るね」
海未「? ええ、また明日」(一瞬ことりが寂しそうな表情をしたような……?)
ことり「バイバイ」
海未(気のせい……でしょうか?)
ことり(海未ちゃんだったら……そうだよね)
穂乃果「ことりちゃん、みんなと仲良くできてるみたいだね。良かった、良かった」
海未「そうですね。これで少しでも元気になってくれるといいのですが」
穂乃果「きっと大丈夫だよ」
海未「……ところで穂乃果、私はじっとしているようにと言ったはずなんですが、どうしてその場から離れていたんですかね?」
穂乃果「そ、それは……」
海未「それは?」
穂乃果「誰かが助けを呼んでいた気がしたからかな」
海未「……怒りますよ?」
穂乃果「ごめんなさい、嘘です……」
海未「正直でよろしい。では私たちも帰りましょうか」
穂乃果「えっ? う、うん」
海未「どうかしましたか?」
穂乃果「い、いや~てっきりお説教されるのかと思っちゃって」
海未「ああ、なるほど。まったく穂乃果は何を言っているんですか?」
穂乃果「ん?」
海未「帰ったらあなたの家でお説教に決まってるじゃないですか」
穂乃果「ですよね~」
ことり「真姫ちゃん、お待たせ」
真姫「そこまで待ってないから大丈夫よ」
ことり「それじゃあ帰ろっか」
真姫「そうね」
にこ「ちょっと待ちなさい」
ことり「にこちゃん?」
真姫「いきなり出てきてどうしたのよ?」
にこ「いきなりじゃないわよ! さっきからいたでしょうが!」
真姫「…………」
ことり「そういえば、いたような……?」
にこ「アンタたちって何気に酷いわね……」
ことり「ご、ごめんねにこちゃん」
にこ「別にいいわ……気にしてないから」ズーン
真姫「気にして落ち込んでるじゃない」ボソッ
にこ「何か言った?」
真姫「何でもないわ。それじゃ帰りに何か食べて帰りましょ」
ことり「そうだねぇ」
にこ「いいわね。さ、行きましょう」
真姫「あ、にこちゃん待ちなさいよ」
ことり「2人とも待って~」
海未「穂乃果、早くしないと日が暮れてしまいますよ」
穂乃果「そんなこと言ったって……帰ったら海未ちゃんのお説教が待ってるんでしょ? だったら帰りたくないに決まってるよ」
海未「ですが帰らないわけにはいかないんですから、大人しく諦めてください」
穂乃果「嫌だよ! 諦めたら、そこで試合終了なんだよっ」
海未「何の試合ですか! まったく、もう……早く帰りますよ」ガシッ
穂乃果「さ、攫われる~!」
海未「人聞きの悪いことを言わないでください!」
穂乃果「だって本当のことだもん」
海未「ただあなたの家まで引っ張って行くだけです」
穂乃果「あう……」
海未「ほら行きますよ」グイッ
穂乃果「わわっ!」
海未「ほんとに世話が焼けますね」
穂乃果「う、海未ちゃん引き摺らないで~!」
海未「お断りします」
穂乃果「えぇ!?」
海未「冗談ですよ」パッ
穂乃果「じょ、冗談だったんだ……」
海未「私が本気でそのようなことをすると思っていたんですか?」
穂乃果「そんなこと……ないよ」
海未(今の間はなんですか……)
穂乃果「と、とにかく家に帰ろうよっ! よ~し、家まで競争だよ」ダッ
海未「ちょ、穂乃果! この辺りは見晴らしが悪いので危ないですよ!」
穂乃果「平気、平気!」
海未「いいから待ちなさい!」タッタッタ
穂乃果「海未ちゃん、早くはや」ドンッ バァァン
海未「えっ……?」(今の音は……? それに、穂乃果が消えて……)
何だ今の音は!?
トラックが塀に突っ込んでるぞ!
警察に電話しろ!
おい……あれ、トラックと塀の間に人が挟まってないか?
ウソだろ……
しかも女の子みたいだな……
海未(ま、さか……そんなこと……)
海未「ほ、のか? 穂乃果、穂乃果ぁぁぁ!」
ことり「このアイス、美味しいねぇ」
真姫「そうね。値段にしては美味しいわね」
にこ「でしょう? 最近見つけたのよね~」
ことり「そうなんだ。穂乃果ちゃんと海未ちゃんにも教えてあげなくちゃ」
にこ「アンタは本当にあの2人が大事なのね」
ことり「もちろんだよ♪」(だって大切な友達だもん)
真姫「海未や穂乃果とあれだけ仲が良い理由がよく分かるわ」
ことり「あっ、でもみんなのことももちろん好きだよ」
にこ「分かってるわよ」
真姫「別に言わなくても分かるから」
ことり「そっか。えへへ」
にこ「……なんかくすぐったいわね」ボソッ
真姫「そうね……まあ悪くないかも」ボソッ
ことり(穂乃果ちゃんと海未ちゃん、今頃どうしてるんだろう?)
にこ「? 誰か携帯鳴ってるわよ」
真姫「私じゃないわ」
ことり「ことりの携帯みたい」
にこ「早く出た方がいいんじゃない?」
ことり「そうだね。2人ともごめん、ことりちょっと席を外すね」
真姫「別にいいわ」
にこ「気にしなくていいわよ」
ことり「ごめんね」
ことり(あっ、海未ちゃんからだ。どうしたんだろ?)
ことり「もしもし海未ちゃん、どうしたの?」
海未『ことり……穂乃果が、穂乃果が……』
ことり「穂乃果ちゃんが?」
海未『……ました』
ことり「?」
海未『トラックに……轢かれて……』
ことり「えっ……」
海未『死にました』
ことり「う、そ……」
海未『…………』
ことり「嘘だよね? ことりをビックリさせようと思ってそんなことを言ってるんだよね?」
海未『…………』
ことり「ねぇ海未ちゃん、本当のことを言ってよ。嘘なんだよね? ことりは分かってるんだから」
海未『…………』
ことり「何か言ってよ……」
海未『…………』
ことり「なんで黙ったままなの? それじゃまるで……」
海未『本当、なんです』
ことり「そ、んな……どうして、穂乃果ちゃんが……」
海未『分かりません……』
ことり「……穂乃果ちゃん」
海未『…………』
ことり(会いたいよ……)
海未『すみません、ことり』
ことり「謝らないで、海未ちゃん」(海未ちゃんは悪くないんだから)
海未『ですが……』
ことり「もういいの海未ちゃん」
海未『そう、ですか』
ことり「うん……。じゃあもう切るね」
海未『……すみませんでした』
ことり「…………」
真姫「遅かったじゃない」
ことり「ごめんね」
真姫「ああ、責めてるわけじゃないの」
ことり「うん、分かってるよ」
真姫「ならいいけど」
にこ「ねえ、ことり」
ことり「どうしたのにこちゃん?」
にこ「気分でも悪いの? 顔色悪いわよ」
ことり「あ、あはは……そうかなぁ」
にこ「……今日はもう解散ね」
ことり「ことりは大丈夫だよ?」
真姫「全然大丈夫そうには見えないわ」
にこ「無理しないでゆっくり休みなさい」
ことり「う、うん」
真姫「それじゃ帰りましょ」
にこ「そうね」
ことり「ごめんね……」
真姫「いいのよ。また今度みんなで来ればいいんだから」
ことり「……うん」
にこ「…………」
ことり「……ただいま」
親鳥「ことり、穂乃果ちゃんが」
ことり「うん、海未ちゃんから聞いたよ」
親鳥「そう……。あまり自分を追い詰めちゃダメよ。これは不運な事故だったんだから」
ことり「……うん。ことり、部屋に戻るね」
親鳥「え、ええ」
ことり(不運な事故……なんで穂乃果ちゃんがそんな目に遭わなくちゃいけなかったの?)
ことり「酷いよ」ボソッ
ことり(会いたい、会いたいよ穂乃果ちゃん)
海未「穂乃果……」
海未(私があのとき、穂乃果のことを無理やりにでも止めていれば……こんなことにはならなかった)
海未「私が無力だったばっかりに、穂乃果が……!」
海未(忘れられません。これから起こることなんて一切感じていない、純粋無垢な笑顔を浮かべていたあのときの穂乃果の姿を)
海未「穂乃果ぁ……」グスッ
海未(何もできなかった私を許してください……)
『許さないよ』
海未「えっ」
『絶対に許さない』
海未「ほ、のか……?」
『海未ちゃんがもっと強かったら、穂乃果も死ななくて済んだんだよ?』
海未「それは……」
『違うって言いたいの? でも穂乃果は死んじゃったんだよ?』
海未(……穂乃果はこんなこと言いません。これは幻聴、そうに決まっています)
『幻聴なんかじゃないよ』
海未「幻聴に決まっています!」
『ふぅん。そう思うならそう思ってればいいよ』
海未「黙りなさい……! 穂乃果の声で変なことを言わないでください」
『酷いなぁ海未ちゃんは。穂乃果のことを見捨てただけあるね』
海未「なっ!? 見捨ててなんて……!」
『見捨てたよ』
海未「そんなわけ……」
『ないって言いきれるの? さっきあんなに後悔していたのに?』
海未「…………」
『海未ちゃんが自分で言ったんだよ?』
海未「私は」
『そうやって言い訳して、穂乃果が死んだことをなかったことにできると思ってるの?』
海未「ちが……!」
『嘘つき』
海未「嘘なんて」
『薄情者、嘘つき……! ずっと海未ちゃんのこと信じてたのに』
海未「ご、めんなさい」
『これからも一緒にいられるって思ってたのに』
海未「ごめんなさい……ごめんなさい」
『穂乃果1人じゃ……寂しいよ』
海未「穂乃果……」
『海未ちゃん……会いたいよぉ』
海未「私も……あなたに会いたいです、穂乃果」
『だったら……海未ちゃんも、コッチニオイデヨ』
海未「……穂乃果の元へ?」
『ウン。ソシタラホノカモサビシクナイシ、ウミチャンモホノカトアエルヨネ?』
海未「そう、ですね」
『ハヤクウミチャンニアイタイナ』
海未「私もです……。待っててください、穂乃果。今、会いにイキマスカラ」
しょうがない、よね?
穂乃果ちゃんに会いたいんだもん。
海未ちゃんやみんなには悪いって思うけど……。
穂乃果ちゃんがいないんだったら、生きてても仕方ないと思うの。
だから、ごめんね。
ことりは穂乃果ちゃんのいるところに行くから。
待っててね、穂乃果ちゃん。
ことりもすぐそっちに行くから。
また一緒に仲良く遊ぼう。
大好きだよ、穂乃果ちゃん。
●分岐2完●
なんだか中途半端で変な終わらせ方になってしまいましたが、以上で完結となります。
方向性の修正など多々ありましたが、無事書き終えることができて本当に良かったです。
これも皆様の応援のおかげです。ありがとうございました!
なお、次の作品は”艦これ”で挑戦していくつもりです。
どんな作品になるか分かりませんが、皆様の要望や自分のやりたいことをやりつつ、できたらいいなと思っています。
次の作品でも温かい応援をもらえると嬉しいです。
何度もお礼を言うようでしつこいですが、本当に心から感謝しています。
誠にありがとうございまいました!!
※コメントへの返信※
1のコメントの方へ
コメントありがとうございます。
このような作品で今後の展開を楽しみにいただけるとは光栄です。
分岐1についてはハッピーエンドとなっていますが、実は作者の当初の予定ではハッピーエンドは予定していなく、このような無理やり感あるエンドとなってしまいました。
しかし、分岐1の救われた展開で読者の方が本当に良かったと思えるようなエンドにできてホッと安心するとともに、作者としても良かったなぁと思えました。
これも皆様のおかげですね。
2のコメントの方へ
コメントありがとうございます。
続きが遅くなってしまって申し訳ないです。
ですが、お陰様でこうして無事完結させることができました。
またこのような作品に素晴らしいという評価をいただけて、とても嬉しかったです。
次の作品も良い評価をいただけるよう頑張っていきたいと思います。
これからも応援よろしくお願いいたします。
分岐1は救われてよかった……
分岐2の展開が期待です……!
ああ、ゾクゾクしてきた……
早く見たいです!!!素晴らしい!!!