2018-08-19 09:25:11 更新

概要

人類で初めて艦娘に邂逅した現元帥さんと、その養子として育てられ、元帥の思惑によって元ブラックな鎮守府に配属されてしまう仕事だけは出来るボケっとした提督さん。彼らがシリアスな展開の中で艦娘と打ち明けつつ最後にはほのぼのとしたラブコメ展開になれそうもないんですよねぇ…おっと、失礼。初投稿シリーズなので、至らぬところなどありますがご配慮いただけると幸いです。


前書き

こちらは『ぽんこつ提督が鎮守府に着任するようです。』Part2の続編になります。もしそちら又はPart1を読んでいない場合は本ページ下部にある、作者の別の作品から飛んでいただけると幸いです。
ちまちま更新していくつもりですのでお付き合いくださいませ。誤字・脱字などの指摘他感想などをいただけると嬉しいです。

ー作者からのお知らせー

皆さま、ご無沙汰しております。狸蟹です(/・ω・)/

・一点目、本作は引き続き毎日更新で続けていきます。いるかはわかりませんがファンの方は安心してください。

・二点目、ハーメルンにて本作の清書を投稿します。というのもこの作品は作者のなかではもう終わるつもりでしたので、先を考えて素k粗衣改変したものをハーメルンにて投稿しています。といってもこちらの方を優先で更新するつもりですのでご安心ください。

・三点目、お知らせというよりお願いなのですが。今後このような事態に陥った場合のためにTwitterを始めました。フォローしろとは言いませんので、何かトラブルなどがあった際はそちらで連絡させていただきますので把握だけしていただけると幸いです。
アカウントはこちら→@Tanukikani

以上、作者からのお知らせとさせていただきます。八月十八日から更新を再開しますので今後ともポン着。と作者のことをよろしくお願いいたします。



ー前回のあらすじ&作品紹介ー


あぁぁ、空母組可愛いんじゃァ!


はい、真面目にやります。許してください。


着任から様々な艦娘の問題に直面した提督、彼はそれらを解決しようと(?)奔走する。


しかし、安堵する提督とは裏腹に過去の遺恨は依然提督と艦娘たちに牙をむく。


この作品は、提督が艦娘に脳内セクハラをかましながらまだ見ぬ脅威に立ち向かう物語です。


不穏な人物との邂逅、前提督の残したデータとまだ見ぬ敵…


そんな存在を前に提督は艦娘たちとどのように接していくのか、そして可愛い彼女を作れるのか!


まぁ、そんな感じのシリアス多めの艦娘とぽんこつ提督の日常を引き続きお楽しみください。










ー提督視点ー


俺はとりあえず一人でバイブして暴れている電話に出る。相手は海軍の調査員を名乗っている。


調査員「突然すいません、艦娘が一般人に危害を加えた事件についてご存知ですか?」


提督「知らないですね。どういった内容で?」


調査員「はい、先日艦娘とその提督が出かけた際に一般人が危害を加えられたというものです。」


提督「はえーそりゃ物騒ですね。」


正直、どうでもいい。ていうか俺は今空母組の水着を想像するので忙しいんだ。適当に返そう。


調査員「それで今、艦娘に他に危害を加えられた人がいないか探していまして。そういう経験あったりしますか?」


提督「あぁ、はい。最近やられましたね。」


調査員「本当ですか!?」


提督「はい。切っていいですか?」


調査員「はい!ご協力ありがとうございます!」


そう言って、電話は切れた。なんだったんだ今の。新手の迷惑電話?


俺がスマホを置こうとすると、またスマホが鳴る。なんじゃゴラァ…俺は妄想に忙しいんじゃァ…


提督「はい、こちら提督。」


元帥「良かった、なぁ提督。変な電話かかってきてねぇか?」


提督「今、元帥ってやつと変な電話してる。」


元帥「おふざけは無しだ、なんかなかったか?」


提督「今さっき調査員とか言うのからかかってきたけど?」


元帥「間に合わなかったか…」


親父の様子がどうにもおかしい。どうしたんだこのおっちゃん。自分の靴下の匂いでも嗅いだ?


提督「なんか問題なのか?」


元帥「あぁ、調査員とか名乗ってるやつの正体はマスコミだ。海軍の番号をどっかのルートから手に入れて片っ端から聞いてやがる。」


提督「つまりどういうことだってばよ。」


元帥「最近ある提督がチンピラに絡まれてな、それを艦娘が撃退したんだよ。」


元帥「それを餌に艦娘は危険だって大々的に広めようと情報を集めている輩がいるんだ。」


提督「反軍主義者ってやつか…」


元帥「あぁ、それでお前は素直に答えたんだろ?」


提督「…ごめん。」


元帥「仕方ないさ、ただちょっと会見に一緒に来てもらえるか?何もしなくていい俺が何とかする。」


提督「わかった、原因は俺みたいなもんだしな。いつ行けばいい?」


元帥「明日だ…」


提督「マージカ」


確かそう言う洗剤あったよね?なんでこんなトラブルに巻き込まれるんだろね僕は。


提督「ん?でも、例の事件の渦中にいる提督さんはどうしてるん?」


元帥「あぁ…彼女は酷く弱っていてな。今は大本営の方で身柄を保護してるんだ…」


提督「女性だったのか…」


元帥「そうだ。男に言い寄られた…というより襲われたに近いか。それで一緒にいた矢矧という艦娘が反撃したわけだ。」


提督「どう考えても正当防衛じゃね?」


元帥「やったのが『人間なら』な」


親父は人間ならを強く協調して言う。あー嫌だ嫌だ。人間なんかより艦娘のが可愛…ゲフンゲフン。


元帥「んじゃ俺も準備とかあるから今日は切るぞ、明日迎えを出すから頼む。」


提督「さーいえっさー…」


そこまで話して通話は切れた。なんてこった…またなんか巻き込まれたっぽい…


畜生、俺は巨乳と素足が見れたらそれだけで幸せなのになんでこう様々な試練が襲い掛かるのだろうか。


コンコン


その時、執務室のドアがノックされる。俺はどーぞと声かける。


鹿島「提督さん、夕食一緒にいかがでしょうか?」


そう言って部屋に入ってきた鹿島を見て、明日も頑張ろうと思えました。まる。





鹿島「昨晩はご迷惑おかけしてすいませんでした…」


食堂の席に着くと鹿島が謝ってくる。ん?なんかしたっけ?昨晩俺鹿島とナニかしたっけ?


鹿島「酔っていたとはいえ…その色々変なことを…」


思い出した、執務室で酒飲んでましたわ。思わず服を脱ごうとしている鹿島を思い出し鼻血が出そうになる。


アカン、ここで出したら夕食のクリームシチューがトマトシチューチックになってしまう。


提督「気にしないでくれ、結局止めたから問題なかったし酔ってりゃ誰でも失敗はあるさ。」


鹿島「そう言ってもらえるとありがたいです。」


そういって鹿島はシチューを食べる。こう、女性が食事中に髪を避ける動作ってそそるよね…ぐへへ…


鹿島「ところで、提督。今日ショッピングに行かれたとか。」


提督「ん?あぁ、結構な人数でな。」


鹿島「それで…その、私もお洋服を見てみたいというか…その…」


鹿島がもじもじしながらそんなことを言う。これは…まさかのデートフラグ!?


提督「今度鹿島もショッピングモール行くか?」


鹿島「いいんですか!?本当ですか!?」


鹿島が身をっていうか胸を乗り出して言う。やめてくれ…トマトシチューになっちまう…


提督「あぁ、暇なときにでも声かけるよ」


完璧だ…これはデートに違いない。帰りに夕焼けの中で愛を語ろう…


鹿島「ありがとうございます!皆にも声かけておきますね!」


鹿島は笑顔でそう言う。まぁ、そうですよね。うん、知ってたよ。


涙を流す俺を鹿島が心配してくれたが、気にしないでくれなんて言って執務室に戻る。


とりあえず、反軍主義に関する情報をあらかた漁ってみる。


簡単に内容を整理すると以下のような感じだ。


・艦娘は危険、一部の人間は深海棲艦と変わらないなんて言っているところもある。


・海軍は情報を秘匿し、開示要求にこたえない。アホか開示を要求するのは国家機関だ、ただのマスコミが出伊藤な理由もなく何か言ったって開示するはずがない。


・海軍は艦娘という兵器を使って日本の侵略を考えている。馬鹿にするにも程がある、誰が命張ってると思ってんだこいつら。


俺は次から次えと出てくる心の無い文面や情報に怒りを覚えたのだった。まぁ、快眠できたけどね。







元帥「遅かったな。」


提督「いや、元帥の出した迎えの車で来たんですけど?」


翌朝、車に揺られ俺は大きなビルの裏口にいた。ここが会見の場所らしい。裏口にいる理由は熱狂的なファンを回避したとでも言っておこう。


元帥「巻き込んじまってすまないな。くれぐれも何もするなよ?叩かれんのは俺だけでいい。」


親父は真面目な顔で言う。つい最近元帥辞めるとか言ってたやつが良く言うわ。


ちなみに俺が呼ばれた理由は、被害者。まぁ、いわゆる艦娘に障害行為を受けた人間がいないと不公平だ見たいに言われたらしい。


大方、俺から艦娘は危険だとでも言って欲しいんだろう。嫌だね、俺は寝てるよ。


会場にはもうすでにオーディエンスが所せましと集まっている。最悪の観客だがな。


流石の俺もふざけた思考にはならない。心の奥底で怖いよぉ…翔鶴の膝枕で永眠したいよぉ…とか考えているくらいだ。


嘘です。死にたくは無い、鹿島とデートするまでは。


元帥「聞いてんのか?」


提督「え、あぁ、なんもしなけりゃいいんだろ?」


元帥「あぁ、相当イラつくだろうがな。俺も我慢するからお前も耐えてくれ。耐えきったら大和に膝枕してもらう約束してきたしな。」


こいつまじで俺と血が繋がってんじゃねぇの?って茶化そうとしたが、入場の指示が出てオーディエンスの溢れる会場に入る。


ご丁寧に俺の名前と席まで用意してやがる。


席に座ると視界が白く光りだす。カメラのフラッシュだ、てめぇら今度全員プライバシーの侵害でって眩しいからやめて!!!


俺は顔に出さないように深呼吸する。思い出せ…鹿島と陸奥の胸を…あっ駄目だ、全国ネットで鼻血シーン公開しそうだからストップ。


司会「それでは、これより会見のほうを初めて行こうと思います。」


司会のその言葉を合図に会場が静まり返る。ちなみに、この会見生放送されているので俺がなんかしでかすと直接アウトなのだ。


最初は元帥からのことの顛末についての解説だった。


例の艦娘チンピラ事件や、俺の怪我についてだ。途中で非難する声が上がるたび、ぶん殴りに行ってやろうか悩んだ。


こいつらは黙って人の話聞くことも出来ねのかよ。小学生でも黙って先生の話聞けるよ?


元帥「……以上です。」


司会「ありがとうございます。提督さん事実に相違はありませんね?」


へ!?俺なんもしなくていいんじゃないの!?話聞いてるとイラつくから翔鶴とのデートプラン練ってたんだけど!?


とりあえず俺は頷いておいた。周囲から可愛そうになんて声が上がる。そりゃどーもってな感じだわな。腕と足に穴開けてから言ってくれたら喜ぶぜ?


そして、会見は質疑応答に入る。まぁ、大体は艦娘の安全性などに関しての質問だった。


仮にも元帥なので、親父はその一つ一つに開示できる情報内で納得できる内容の説明をしていた。流石というかなんというか。


この騒動は恐らく艦娘への理解の低さが根底にある。最初期、つまり吹雪さんと親父が海軍に艦娘を認めさせたとき、上層部は艦娘を危険と判断した。


その結果、『艦娘は危険な存在である』という意識が住民の根底に根付いたのだ。洗脳と言えばわかりやすいだろうか。


もしも、俺がライオンは急に安全な生物だから檻に入ってみな。なんていわれてもまず入れないだろう。


必然的にこの問題に関してはこうだからこうであるといった、論理的な解説で艦娘について知ってもらわねばならない。


逆に言えば、マスコミはそれをわかったうえでただきつく反論できない俺らをネタにしているようなものだ。


本当に性格の悪いやつらがいたもんだ。社会の窓開けたまま合コンにでも行っちまえ。


その時だった。不意に一つのヤジが鮮明に耳に聞こえてきた。


「深海棲艦と艦娘は手を組んでいるに違いない!あいつらも俺たちの敵だ!」


なに言ってんだこの猿。昨日ネットで見たことと全く同じこと言ってやがる。冒涜するにしても程々にしてくれ本当に。


ダンッ!


親父が机を叩き、今にもブちぎれそうな顔で声のほうを睨む。俺はなにかを言おうとした親父からマイクを奪い取る。あっぶねぇ…


ここで親父が感情的になったら駄目だ。この人は感情が露骨に前に出ると頭が使えなくなる。典型的なキレちゃダメな人種だ。


それに、親父が長年かけてやってきたであろう少しだけ根付いた艦娘が危険じゃないというイメージも怖しかねない。


いや、今から親父がしようとしたことは正しい。大切なもののために怒るのは当たり前だがマスコミはその行動を的確に自分たちの美味しい方向に報じるだろう。


これは、善悪ではなく立場の問題だ。それこそ、『海軍元帥、図星を突かれ感情的に』なんて報じられたら全てが終わりだ。


なら逆に俺、つまりこいつらがかわいそうだと思ってくれてる俺が艦娘の危険性についてご享受してやろうじゃねえか。


不安そうな顔で俺を見る親父に俺は今までで一番うざったらしい笑みを浮かべてやった。







ー赤城視点ー


朝潮「司令官がテレビに映っています!」


赤城「え?」


私は今日の朝食当番である朝潮さんと後片付けをしている。その時不意に朝潮さんがそんなことを言う。


私は朝潮さんの後ろから食堂に設置されたテレビを覗き込む。そこには確かに提督の姿があった。軍服では無くスーツ姿だが。


彼は早朝、少し大本営に用事があるから行ってくると出かけたはずだ。瑞鶴さんがごねていたのでよく覚えている。なんでテレビに?


加賀「赤城さん…あれ。」


同じく朝食当番の加賀さんがテレビの左上の方を指さす。そこには『艦娘は人類の敵!?真相に迫る会見』なんて書いてある。


私の知識では、艦娘は危険と思われてはいるけれど敵なんて認識はされていないはずだ。どういったことだろう。


画面内では元帥がマスコミの質問にこたえている。周囲の朝食を終えた艦娘たちも集まってくる。というか、ほぼ全員いるようだ。


瑞鶴「提督さんテレビ映ってんじゃん!」


翔鶴「どうやら、いい内容ではないみたいだけれどね。」


皆も左上のテロップに気づいたのか、少し雰囲気が悪くなる。


朝潮「皆さんどうしてそんな落ち込んでいるんですか!司令官の晴れ舞台ですよ!」


朝潮さんがそんなことを言う。普段はKYと言われていたりするがこういう時はとても助かる。


その時、誰かの声が響いた。


「深海棲艦と艦娘は手を組んでいるに違いない!あいつらも俺たちの敵だ!」


誰が言ったかはわからない。でもそれは…とても悲しいものだった。私たちが守っている彼らは私たちを微塵もわかってくれていない。それがとても辛かった。


川内「なにそれ…沈んだ皆はあんたたちを守るために…」


川内さんが弱弱しく言う。他の皆も口には出さないが同じ気持ちなのだろう。


龍田「やっぱり、人間は皆殺しでいいかしらねぇ?」


天龍「提督と元帥は殺さないでやってくれよ…?俺も仲良くなってみたいからさ。」


龍田「わかってるわよぉ。天龍ちゃんを悪く言う人間だけ消し炭にするわぁ。」


提督が命がけで勝ち取った信用が心の無いたった一言で崩れる。壊すのはこんなにも簡単なのだ。


ダンッ!


その時、元帥が思い切り机を殴りマイクを取る。しかし、そのマイクを提督が奪い取った。


私は元帥の行動が少しうれしかった。私たちのために怒ってくれているんだと。でもそれと同時にそれが現状では悪手であることもわかっていた。


そのため、提督の行動に安堵の息を漏らす。


落ち着いて画面に視界を戻すととても悪い顔をした提督が映っていた。そして彼は扇動するように語りだす。


提督『全く本当ですよね!俺なんか着任早々こんな怪我だらけにされるしやってらんねぇですよ!』


周囲がざわつく。私の心も。もしかして彼は本心では私たちを嫌いなのではないかと。


提督『見てくださいよこの包帯!マジで痛いっすよ!もう本当に許しませんよあいつら!危険で仕方ない!』


瑞鶴「ごめんなさい…ごめんなさい…」


那珂「………」


瑞鶴さんは画面に謝り、あの那珂さんですら顔を酷く歪めている。


提督『元帥も安全性とか言ってますけどね?そんなんこれっぽっちもないですからね?』


周囲を見る。ここでテレビを消すべきだろうか、彼がもしここで私たちをこれ以上悪く言うことがあれば心を壊してしまう娘が出てくるかもしれない。


思わずテレビのリモコンを握った時だった。


提督『つってもまぁ、俺はあいつら大好きなんですけどね。』


提督は急に優しく言う。皆が再度画面にくぎ付けになる。


提督『全員美人だし?闇抱えてるだけでいい子だし?てか、全員嫁にしたいですね本当に。だから俺は艦娘は危険じゃないと思います。』


提督『は?根拠?んなの無ぇよ馬鹿じゃねぇの。』


加賀「最低ですね…」


加賀さんはそのセリフを聞いてそんなことを言う。しかし、顔が赤くなっている。全く可愛い人だ。まぁ、私も大差ないのでしょうが。


しかし、彼はそんなことをカミングアウトしてどうするつもりなのだろうか。私たちは画面の彼から目を離せなくなった。










ー提督視点ー


なんか言う必要ないこと語った気がするがもはや気にしていられるかってんだよ!俺は今最高にハイってやつなんだ。フゥフゥ↑


さて、お膳立てはこんなもんだ。今日本は完全に俺に注目している。今最高に目立ってるぜ俺ぇ!那珂ちゃん越えだぜぇ!


那珂ちゃんのファン俺しかいないけどね。誰でも超えられるね。


さて、本題に入りますか。


提督「それでさっき、艦娘が敵とか仰られた方どなたですかー?」


沈黙が会場を支配する。とりあえず引っ張り出さないとな。組織より個人のが相手にしやすいのだ。


提督「おやおやぁ?名乗る勇気もないのにヤジだけ飛ばされたんですかぁ?チキンですねぇ、それともさっきのことも忘れちまった鳥頭かな?どっちでも鳥でしたわ。」


俺の煽り文句に腹を立てたのか一人の男が手をあげる。


男性「はん、海軍の品性が知れるな。軍人は皆こうも頭がおかしいのか?」


周囲のマスコミが元帥を見て笑う。おうおう、優位に立った気になってどや顔してろや。さてお話ししましょうか。


提督「先程の意見ですが、ごもっともです。艦娘はとても危険な存在です。俺の怪我を見ても一目瞭然でしょう。」


男性「は?ん、まぁ、そのとうりだ。」


俺の百八十度変わった意見に動揺したのか、少しぎこちなく男性は返す。


提督「でしたらやはり、艦娘を国内に置くのは危険ですね。ということで海外に追放するというのはどうでしょう?」


親父が横で笑いを堪えているのがわかる。俺の意図が理解できたようだ。


男性「いや、何言ってんだお…


提督「それだけでは危険ですし、海軍が艦娘の監視を行わさせてもらいます。やはり国の安全は守らねばですからね!」


俺はわざとらしく敬礼をしながら男性に台詞をかぶせる。顔はニヤケタまんまだけどね。


男性「な、そしたら深海棲艦はどうすんだよ。」


提督「へ?何言ってるんですか?海軍は艦娘という危険な存在の警戒で勢力が落ちてしまいます。深海棲艦はなにか別の対策があったのでは無いのですか?」


男性「………」


男性は俺を睨んだまま口ごもる。はっはっは、計画どうり…僕が神ゲフンゲフン…


結局こいつらは叩きたいから叩いているだけなのだ。暇だから、視聴率がとれるから、話題性があるから。


そしてそれに対してこちらが言い返せないのをわかっている。下手な騒ぎの火種になるのを避けたいがために。


でも残念でした。俺はガキンチョなので後のことは考えません。言い負かします、ツイッタラーのごとく。論争バッチこいやぁ!


提督「おや?もしや深海棲艦への対処方法を考えもせずに叩いていらっしゃったんですか?」


提督「これは責任重大ですね~、まずはあんたから深海棲艦に特攻してくれば?」


男性「そんな滅茶苦茶な案がとうるわけないだろッ」


なにがあったのだろうか?男性は酷く興奮している。大丈夫かなぁ?かわいそうに鹿島の胸を知っていればすぐに落ち着けるものを。鼻血が…あっぶね。


提督「元帥さんさ、前に怪我のお詫びに何でも一つ願いを叶えてやるって言ってたよね?」


実際はこんな約束した覚えはないが、さっきの様子からして俺に合わせてくれるだろう。


元帥「あぁ、約束してしまったからには仕方ないな。なんでも言いたまえ。」


提督「んじゃ、さっきの案を通すことお願いしても?」


元帥「全然可能だ。お前がそれを望むのなら叶えてやろう。」


親父も俺も笑いをこらえるのに必死な状態だ。周囲がざわつく。


男性「ふざけんなよ、そんなのが許されるわけねえだろッ」


男性は叫ぶ。お父さんあれなにー?見ちゃ駄目、私たちには救えないものよ…


提督「なに言ってるんです?あなたや皆さんの望みを叶えたんですよ?感謝してほしいですね。」


提督「それともなんです?前言撤回して艦娘様達にこれからも守ってくださいお願いしますとでも土下座するんですか?」


うわぁ…とんでもねぇ顔でこっち睨んでるよ。俺いつか殺されそう。龍田さんに比べたらなんともないけど。周りのカメラもいい感じに男性を映してくれてる。


当たり前か、こんなネタになりそうな出来ごと他には無いだろうしな。男性もそれに気づいたようだ。


恐らく周囲は今回の件で意見をひっくり返すのだろう。所詮勝てそうな意見にしか与しないのだ。


男性「わかったよッ撤回するよッこれでいいんだろ?」


提督「土下座とお願いは?」


男性はそこまで言ってホールから出て行ってしまった。つまんねぇやつ。


提督「さて、皆様わかってると思いますが今のはただの茶番です。実際にそんなことを決行しようとは思ってません。」


提督「でもまぁ、こうすることも出来るってのは覚えといてください。艦娘が守ってくれてるってことはお忘れなく。」


提督「これは脅迫ではありません。別に艦娘が本当に怖いなら自分たちで深海棲艦倒せる兵器作ってくれりゃいいんです。」


提督「でも、それができる前に艦娘に愛想尽かされたら死ぬの俺たちだからね?そこんとこお忘れなく。」


提督「まぁ、それまでは艦娘に怯えるよりもお隣さんに刺される確率のが百倍高いと思うんでお気をつけて。以上です。」


俺はそう言ってマイクを元帥に渡す。元帥は謝罪をしつつ、俺の言い分をわかりやすく説明してくれる。


その後、質疑応答どころかヤジの一つも飛ぶことは無く会見は終わった。








提督「やっと終わった~」


元帥「終わったじゃねえよ馬鹿息子が。」


俺は親父に思い切り背中をどつかれる。


提督「また殴り合いする?」


元帥「しねぇよ、なにからなにまでカッコいいところ持っていきやがって。俺のメンツ丸つぶれじゃねえか。」


怒るのそっちなんだ。


提督「いや、確かに勝手に行動したのはごめん。言いつけ完全に破ったし。」


元帥「元からこうなるとは思ってたさ。ここまで徹底してやるとは思わなかったけどな。Twitter見てみろよ。」


提督「えぇ…絶対俺おもちゃじゃん…」


俺はそう言いながらスマホを開く。案の定俺の嫁の件が流れていた。軍関係者なのでモザイクはついているが。


しかし、それ以上に艦娘についての話題が上がっていた。


守ってくれてありがとうなんてツイートされてたり、でもやっぱ怖いなんていうものがあったり。相変わらず心の無い内容も少なくは無かった。


そして、一番意外だったのはあの男性がボコボコに叩かれていることだった。結局皆が叩きやすい方を叩いてそれが世論となって更に大勢が流される。


これがSNSってやつの怖いところだ。大義名分さえあれば暇なだけの部外者がいくらでも叩けてしまうのだから。


てか、俺の嫁にしたいってセリフだけ切り抜かれて二次元キャラの絵のリプに貼られてるし…仕事早いなおいおい。


元帥「ちなみに、こんな一大イベントがあったのに反軍組織はなんの声明も出してない。結局自分の命が大事ってことだな。」


不意に馬鹿にするような声で親父が言う。


提督「だから、艦娘を怖がってたんだろうしな。本末転倒だってやっと気づいたんだろうよ。」


元帥「まぁ、お前には感謝してるよ。今度お礼はするさ。本当にありがとう。」


親父がしみじみと俺に礼を言う。


提督「なに言ってんだクソ親父、あんたにゃそういう雰囲気は似合わねえよ。」


元帥「そだな、大和に膝枕してもらいに帰るわ。」


提督「いやいや、耐えきれてなかったやん!」


元帥「机叩いただけならセーフだもーん」


親父はそのセリフを最後に車に乗り込む。俺も車に乗り、今回は怪我増えなかったな~なんて考えながら鎮守府に帰るのだった。








何故だろう。鎮守府に戻って来てから皆が冷たいってか避けられてる…?


俺なんかした!?自室に隠してたエロ本見つかった!?そういえば、鹿島の胸とかで満足して開封すらしてねぇな。


これは由々しき事態だ…艦娘のためになりそうなあれだけの騒ぎを起こしたのだ。


自分では口に出さずにして置くことで後から知ることで『え、彼がそんなことを!?ドクン』的な流れだと思ってたのにどっちかというと下がってる気がする!


なんだろう…いつも胸見てるから?駆逐艦の足もいいなとか思ってるのがバレた?やべぇ…嫌われそうなも覚えがごろごろしてやがる…


その時、俺は視界に扶桑を見つけたので勇気を振り絞って声をかけてみる。


提督「なぁ扶桑、俺がいない間になんかあったのか?」


扶桑「へっ!?あ、提督。特に思い当たることは無いですかね…」


扶桑は俺から目を逸らして言う。なんだ!?なんなんだ…?


提督「なぁ、なんか知ってんなら教えてくれよ。頼むよ扶桑!」


俺は強引に扶桑の視界に入り、逸らそうとする顔を片手で押さえる。これ…キスするシチュじゃね…?


扶桑の顔が赤くなる。あ、やべぇ唐突に扶桑ルート入るんじゃね?これ。


山城「この変態ッ」


俺と扶桑がなんかそれっぽい雰囲気で見つめあってたら高速で現れた何かに思い切りぶん殴られた。


山城「姉様ッご無事ですか?あの変態になにかされたんじゃ…」


扶桑「お、落ち着いて?私は大丈夫よ山城。それより提督が…」


壁に打ち付けられた俺の意識はそこまでの会話を聞いて途切れたのだった。






目が覚めると、俺はどうやらベッドの上にいるようだった。


横には赤城が座っていた。なんだっけ、確か俺扶桑にキスしようと…してないな。うん。


提督「赤城さん、俺は一体?」


赤城「良かった、目を覚ましたんですね。」


赤城は普通にそう返してくれる。


提督「赤城さん…あなたは俺を嫌って無いんですね…」


俺は思わず泣きそうになりながら言う。っていうか泣く。そして惚れた。


こうさ?周りにいじめられたりした時に、手を差しのべてくれる人がいたら惚れるよね…


赤城「えっと…多分皆も嫌ってるわけじゃないと思いますよ…?」


提督「なんか心当たりがあるんですか?」


赤城「それはですね…


そして、赤城は俺の会見を皆で見ていたことを教えてくれた。


つまりあれか、俺完全に引かれてるわけだ。泣きそう。


提督「赤城さんはあれを見てどう思いました…?」


赤城「えと…嬉しかったです。提督は艦娘の為を想ってあんな身の危険を犯してまで一芝居うってくれたんですよね?」


提督「まぁ、そうですけど。やり方は悪かったかもしれないと思ってます。無駄な恨みを買ったみたいですし。」


この赤城さんの返しはもしや俺の結婚したいの件は聞かれてない…?


提督「えと、赤城さん。それ以外のとこは…?」


赤城「そ…その…私は…その…まだ早いと思います!」


赤城さんは赤くなりながら言う。赤い赤城さん。待て待て待て、これ悪くない反応なんじゃね?モテ期来たか?


あ、あれだ。全員の好感度が下がった代わりに赤城さんだけ上がったみたいな?赤城ルート直行かな?


提督「いや、その、あれは過大表現というか…なんというか…」


赤城「で、ですよね!わかってますよ!はい!」


あぁ…気まずい。このいい雰囲気と言っていいのかよくわからない状況ってとても気まずい!


加賀「あら?目が覚めたのかしら。」


突然部屋に現れた加賀さんに驚き、俺と赤城さんはよくわからない動きをしてしまう。


提督「あぁ、さっき起きて赤城さんに事情を聴いていたところだったんだ。」


加賀「なにか酷く慌てていたように見えたけれど?」


提督「それは気にしないでくれ…」


赤城「私だけ敬語…」


赤城さんがなにか最後不機嫌そうになにか言っていたが、もう時間も遅いので一緒に夕食を取ることにした。






間宮「提督さんは今日頑張っていらしたので、少し多めにしときますね!」


間宮さんが笑顔で俺に夕食を大量に盛り付ける…って多いよ!?多いよ間宮さん!?


間宮「どうぞ、おかわりもありますからね!」


いや、めっちゃ笑顔で言ってますけど、まず今盛り付けられてある分も食いきれないかもしれないんですけど!?


提督「あ、ありがとうございます…」


俺は自分でもわかるくらいに顔を引きつらせながら返す。駄目だ、こんな笑顔の間宮さんに食いきれないなんて言えるわけがねぇ!


仕方なく俺は大量に盛られた牛丼をトレーに乗せ席まで運ぶ。こんなん食えないって…特々盛りみたいな次元よ?これ。


席に着くと、一航戦と五航戦。更には川内三姉妹まで集まっていた。


那珂「提督提督!那珂ちゃんまたライブしていい?」


川内「駄目に決まってるでしょ!後で部屋で歌ってていいから。ね?」


那珂「ぶー、ファンがいないとやる意味ないもん。あ!提督さこの後私たちの部屋に来てよ!」


神通「な!?駄目ですよ急にそんな!?片付けもしていませんし…」


神通が困ったように言う。こりゃ日を改めた方がよさそうだな。


提督「えっと、那珂ちゃんさ。今度前もって予定入れてからお邪魔するってことでいいかな?」


那珂「おっけー!それじゃ明日楽しみにしてる!」


川内「あーもうそんな急に…ごめん、いいかな?提督。神通も。」


提督「大丈夫だよ川内、そういうことなら明日の仕事終わりにでもお邪魔するよ。」


神通「ま、まぁ、一日あれば片づけられるでしょうし…」


なんか最近俺の自由時間が無くなりつつある気がする…過労死しちゃうんじゃね?


本音をぶちまけると散らかっている異性の部屋に特攻して落ちてる下着とか発見したいのではあるが、明日には綺麗になっているのだろう。悲しい。


加賀「食事くらいは静かにしてほしいものね。」


瑞鶴「一昨日提督さんに抱き着いていたくせに良く言うよ。」


加賀「そ、それはお酒のせいで…」


おお、あの加賀さんが真っ赤になってる。カメラカメラ…あ、スマホのバッテリー切れてるわ。


瑞鶴「酒に溺れて異性の抱き着くなんて一航戦の名が泣くわね~」


赤城「本当に…思い出すだけでも恥ずかしくて…」


瑞鶴「あ!?いや、その赤城さんに言ってるわけじゃなくて…」


翔鶴「赤城さんも加賀さんもそんな気負わないでください。誰にでも失敗ってものはありますから!」


楽しそうですなぁ。俺も混ざりたい。てか写メ撮りたい。赤面一航戦とか超俺得。


ん?あいつら酒で失敗した話しながら酒飲んでねぇか?ん?


川内「て・い・と・く~。」


川内がそう言いながら絡みついてくる。はい!?なんぞ!?


神通「姉さん!何してるんですか!?」


提督「どうしたのさ川内…俺動けないんだけど…」


川内「ね~提督~、夜戦しよや・せ・ん。」


神通「な、なに言ってるんですか!?そ、そんな破廉恥な…」


川内「破廉恥~?どったの神通ちゃんただの夜戦だよ~?」


神通「へ…えっと、その…」


神通がなにか否定しようと俺のほうを見てくる。笑顔で返しておこう。あ、顔逸らされた。


とりあえずどうしようかな。なんか川内の絡みつき方が滅茶苦茶エロいんですけど…


那珂ちゃん助けて~って寝てんなあの子。不意に後ろから重圧がかかる。


瑞鶴「ちょっと提督さん、なに川内さんとイチャイチャしてんのよ。」


提督「違うんだ瑞鶴、助けてくれな…


こいつ酒くせぇ…駄目だな、こいつも酔ってる。加賀さんが申し訳なさそうな顔でこっち見てる。


大方、酒で馬鹿にされるのが気に食わなくて瑞鶴に無理やり飲ませでもしたんだろう。


瑞鶴「こらぁ、聞いてんのぉ?」


あぁ、案の定出来上がってらっしゃる。酒に弱すぎじゃないですかねぇ?


しかし、俺も学ばないわけでは無い。ここは皆が眠るまで執務室に避難しておこう。


あ、忘れてた。俺今川内に捕まってるんだった。


瑞鶴「なんか言いなさいよぉー、私の何が不満なのよ。胸?胸なの?」


川内「夜戦!夜戦!夜戦!」


あーもー、滅茶苦茶だよ。どうすんのこの酔っ払い。誰か助けてくれ~巨乳の人と瑞鶴がチェンジでもOKです!


瑞鶴「なんか馬鹿にされた気がするー。」


提督「痛い!痛いんだけど!?」


瑞鶴が急に首にかみついてくる。甘噛みとかじゃねぇ!ガチ噛みだ!いてぇ!


翔鶴「瑞鶴!駄目でしょ、そんなことしたら!」


瑞鶴「あうっ」


翔鶴が俺に噛みつく瑞鶴を無理やり引きはがす。


神通「姉さんもいい加減にしてください!」


川内「夜戦~…」


同時に神通も川内を俺から引きはがす。貧乳でもあたってたところは若干物寂しくなりますね…


提督「ありがとう二人とも。」


翔鶴「気にしないでください。妹の不始末は姉が責任を取らないとですからね。」


翔鶴がそう言うと少し重い言葉に聞こえる。まぁ、俺は翔鶴も酔って抱き着いてこないかなとか考えてるクズなんですけどね☆


神通「同じく姉の不始末も妹が対応しないとですからね。」


神通さんは仕方ないといったように言う。本当に妹?実は姉だったりしない?


まぁ、なんだかんだで夕食を済ませ俺は眠りにつくのだった。










ー司令官視点ー


あの件から、俺はさらに艦娘を避けるようになっていた。


吹雪はなにかを言いたそうにしていたが、綾波のことがあったせいで言い出せないと言ったような感じだった。


そのまま時間は流れ、鎮守府などの数も増えてきたころ久々に俺に外出許可が下りた。


こう言うとまるで囚人のようだが、実際鎮守府内に監禁されていると言っても過言じゃないのだ。


ちなみに、艦娘にも外出許可証が出ているので朝から姉妹艦などと一緒に出かける姿を見た。


俺がどこに行こうか考えていると、吹雪が話しかけてくる。


吹雪「一緒にでかけませんか?司令官。」


彼女は俺を思ってか、綾波の件から時間の空いたときはずっと傍にいてくれる。


普段から罪悪感があったのでそれくらいはいいかと思い。俺は頷いた。


外はとても寒かった。季節は冬だ、何日なのかはわからないが十二月だというのは確かなはずだ。


吹雪「寒いですね~、司令官!」


司令官「あぁ、そうだな。つい最近まで暑かったような気もするが。」


吹雪「何言ってるんですかもー。ずっと寒いですよ?ここ最近。」


俺は提督になってから時間の流れがとても速く感じていた。いや、毎日がいっぱいいっぱいだったからなのかもしれないが。


司令官「それで?どこに行くんだ?」


俺は吹雪に問う。しかし、吹雪はいたずらっぽく微笑み言う。


吹雪「そこは男の人がエスコートしないとですよ?司令官。」


司令官「ははは、困ったな女の子が喜びそうなところなんてわからないぞ…」


結局、俺と吹雪はショッピングモールに向かった。二人で雑貨屋に入ってみたりゲーセンで遊んだりした。不覚にも楽しかった。


ひととうり周り終え、外も暗くなり帰ろうとしたとき広場に大きなクリスマスツリーを見つけた。ここは天井が無い、内庭みたいなイメージだろうか。


そこにはたくさんのカップルが集まっている。どうやら今日は十二月二十五日、クリスマスだったようだ。


ツリーの近くで不意に吹雪が俺を見つめる。ただならぬ雰囲気に俺は目を逸らしてしまう。


吹雪「司令官、艦娘と仲良くなるのはまだ怖いですか?」


司令官「別に怖いとかじゃない、必要ないと思うだけだ。」


俺はそんなことを言って誤魔化す。自分が怖がりだとも認められない、本当に情けない男だこった。


吹雪「じゃあ、なんで最近私の出撃が減ってるんです?」


司令官「………」


答えられるわけがない。君にいなくなって欲しくないからなんて。そんな自分勝手な感情。


吹雪「私たちは艦です。戦場で沈むのは仕方ないことなんです。」


吹雪が俺の震えていた手を握り、続ける。


吹雪「本当はとっても怖いですし、皆とずっと一緒にいたいんですけどね。」


恥ずかしそうにこめかみを掻きながら言う彼女は、降り出した雪で少し魅力的に見えた。不謹慎だろうか、そんなことを考えるのは。


吹雪「だから、司令官が守ってください。」


先程までとは一変して吹雪は真面目な顔で言う。私たちを守って欲しいと。


守る?俺にそんな力は無い。たった一人の少女でさえ沈めてしまった俺にそんな力は…


司令官「吹雪…俺はそんなすごい人間じゃないんだ。ただの怖がりでそんな司令官なんて器じゃないんだ…」


司令官「怖くて仕方ない、吹雪や仲が良くなった艦娘が沈むんじゃないかってずっと恐れてるんだ…」


俺はすべてを吐き出す。情けなくたって構わない。そんな重責俺には無理だ。


司令官「失望しただろ?だから俺にはお前らを守ることなんて…」


吹雪「知ってますよ。ずっと横で見てましたから。」


俺が言い切る前に吹雪が言葉を遮る。そして、静かに俺の唇を奪った。


唇に感じる微熱が無駄に心臓の鼓動を早くする。雪も空気を読むかのように降り続く。


吹雪「なにからなにまで失格ですよ司令官。こういうのは本当は男の人からするんですからね…?」


吹雪は赤い頬のまま、いたずらっぽく言う。


司令官「お前…なんでこんなこと…」


吹雪「そんなの決まってるじゃないですか。司令官が好きになっちゃったからですよ。」


吹雪は怒ったように言う。でも、それはきっと俺じゃなくて俺の演じた虚像のことだ。それは俺なんかじゃない。


本当の俺は弱くて臆病で情けないやつなのだ。


司令官「違うんだ吹雪、俺は本当はそんな立派な人間じゃなくて…」


吹雪「知ってますよ。さっきも言ったじゃないですか。」


吹雪は仕方ないといったように言う。


吹雪「私はそんな怖がりなあなたを好きになってしまったんです。たったそれだけですよ。」


本当に情けない話だ。こんな少女に好きって言ってもらえるだけで頑張ろうなんて思う自分に笑えて来る。現金な奴だよ俺は。


俺は柄にもなく無音で吹雪にキスをする。歯がぶつかってカッコつかなかったのは内緒だ。




全く、夢で黒歴史を思い出させられるなんて思いもしなかった。あの後吹雪にキスをしといて手を握るのが恥ずかしくて出来なかったなんておまけつきだ。


夢で見た彼女の顔を思い出す。俺は彼女を愛していた、それは間違いないのだろう。


今の俺を彼女が見たらかっこいいと言ってくれるだろうか。それとも臆病者のほうが好みなのだろうか。


それはもう一生わからない。ならせめて俺は彼女の言いつけだけ守って生きていこう。


元帥「早朝から俺の心をあまり痛めつけないでくれよ。吹雪。」


俺は自室に置いてある写真に声をかける。当然と言えば当然だが返事は無い。


元帥「行ってきます。」


俺はそう言って自室を後にするのだった。











ー提督視点ー


それからは、特に大きなイベントは起きなかった。


新たに数人の艦娘と仲良くなることに成功したのと、演習などのサイクルを決定し練度上げに徹している。


出撃は鎮守府近海にのみ出ているが、現状特に大きな部隊との遭遇は無い。


他の点は特筆するようなものでもないだろう。強いて言うなら少し遠くの海岸で死体が見つかったくらいか。物騒だね~


いつもどうり執務室にて執務をこなす。今日の秘書官は不知火だ。


個人的に駆逐艦に秘書官を任せて大丈夫なのかとか思ったが、この子も俺より仕事早い。泣きそう。


不知火「司令、このようなものが。」


提督「ん?どれどれ。」


不知火が渡してきたのは一枚の封書だった。恐らくお悩み相談BOXのものだろう。


お悩み相談BOXとは、俺が設置した所謂艦娘のお悩み投函箱だ。


まだ人間に慣れてない子もいると思い、匿名で俺に意見できるというわけだ。悪口書かれないかビクビクしてたのは秘密☆


しかし、今回不知火から受け取った紙には名前が書いてあった。


不知火「司令、差し支えなければ内容を教えていただいても?」


提督「鳳翔さんから居酒屋の建設依頼だな。」


不知火「居酒屋…ですか?」


提督「あぁ、簡単に言うと酒飲むところだな。ほら最近酒の管理が出来てないから任せてくれないかってことらしい。」


不知火「なるほど、私は大いに賛成ですね。つい先日酔った陽炎にまた脱がされたので…」


不知火が赤面しながら言う。俺は今度酔った陽炎達を自室へ招待しようと決意したのであった。これだと変態みたいだな!いや、変態ですけど?


提督「とりあえず、鳳翔本人に話を聞いてみるとしよう。呼んでくるよ。」


俺は不知火に声をかけ、執務室の横の放送室に向かった。







鳳翔「失礼します。」


提督「急に呼び立ててすいません、大丈夫でしたか?」


鳳翔「はい、丁度時間を持て余していましたので。」


執務室にやってきた鳳翔さんは笑顔で言う。彼女は最近話せるようになった艦娘の一人なのだがなんというか…非常に母性が強い。


その笑顔を見ていると思わずお母さんとか言ってしまいそう。部下にお母さんとか頭大丈夫かよ!?


提督「それなら良かった。この件で少し話を聞きたくてですね。」


俺はそう言いながら先ほどの封書を見せる。ちなみにぬいぬいは横で大人しくしてる。


鳳翔「読んでいただけたんですね。それでお話というのは?」


提督「はい、居酒屋のシステムや店の管理などについて聞きたくてですね。」


鳳翔「それでしたら、しすてむ…?の方は食事とは別にお金を頂くつもりです。提督からお給料を頂きましたし、あまり無償で飲んでしまいますと皆さんの体に悪いですしね。」


つまり、給料から自腹ということだ。彼女の言い方でわかると思うが、この鎮守府は前まで艦娘への給料が支払われていなかった。


それが前回の給料日に一気に振り込まれたため、急にみんな金持ちになっているのが現状である。皆通販ぱーてーだよ本当に。


受け取りは俺担当なのだが、女性用下着とか段ボールに書いてあるのを受け取った時は配達員の顔がとても歪でした。死にたい。


まぁ、鳳翔さんのシステムの発音がぎこちなくて可愛かったので良しとしよう。


鳳翔「お店の方は私が管理するつもりです。一人でお店を回してみせるのでお任せください。」


提督「大丈夫ですか?酔っ払いとか相手することになると思いますし二人はいた方がいいのでは?」


鳳翔「いえいえ、そんな私なぞの意見を取り入れていただけるうえにご迷惑までかけるわけにはいきません…」


鳳翔さんはとんでもないといったように言う。んー、ここの艦娘は遠慮しすぎなんだよなぁ…


提督「迷惑だなんて思いませんよ、逆に酔っ払いを任せることになりますから申し訳ないくらいです。」


俺は苦笑しながら言う。鳳翔さんはそんなそんななんて言ってるが本音なのだからどうしようもない。


酔っ払いの相手は非常に危険だ。主に股間が。堂々というとこじゃないですねごめんなさい。


結局話し合った結果、酔った艦娘は姉妹艦に面倒を見てもらうことになった。電話で呼ぶといったような感じだ。


必然的に酔いつぶれた場合姉妹艦に文句を言われることになるので、皆控えるだろう。あれ?俺の介抱は誰がしてくれるの…?


提督「それじゃ、今使われてない建物を妖精さんに居酒屋に改造してもらうとしましょう。完成し次第お伝えしますね。」


鳳翔「はい!ありがとうございます。頑張らせてもらいますね!」


俺は鳳翔さんの両拳を胸の前で握って頑張りますという姿を見て、今日も生きていこうと決意するのであった。


ちなみに俺は鳳翔さんを母だとは認めない。あの人は嫁にしたい。鹿島の次に.…







ところ変わって工廠にて、俺は両手を広げ叫ぶ。


提督「妖精さんかもーん」


不知火「!?」


俺の行動に驚いたのか、不知火がかわいらしい顔で俺を見てる。とりあえず頭撫でておこう。


痛いッ!叩かれた!


不知火「子ども扱いしないでください…」


そっぽを向きながら怒られた。ちなみに工廠の奥からも俺の声に驚いてなにかをしでかしただろう人の悲鳴が聞こえる。


妖精「どうしましたか~?提督さん。」


提督妖精「なんだ?今度は右手でも無くなったか?義手なら作れるぞ。」


提督「いや、普通に両腕あるし足も完治したし。今日は少し依頼をしに来たんだ。」


話しかけてきた二匹にこたえる。提督妖精は最近は他の妖精さんたちの手伝いをしてくれているのだ。


提督妖精「おう、言ってみてくれ。最近あんますることなくて腕がなまりそうなんだ。」


妖精「自分も頑張ります!だから…その…」


妖精たちはなんかもじもじしている。可愛いなこいつら。


提督「あぁ、勿論報酬は出すつもりだ。依頼のほうはこれなんだが。」


俺はそう言いながらとりあえず形だけ作ってみた依頼書のようなものを手渡す。妖精さんたちは快く引き受けてくれた。


こりゃ少し多めにお菓子を買ってこなければならないな。


不知火「妖精たちに報酬があるのですか?」


提督「ん?あぁ、頑張ってもらってるしな。」


不知火「私は無いのですか?」


提督「…ん?」


不知火「秘書官を頑張っているのですが…報酬は無いのでしょうか…」


なんか照れながら変なことを言ってるよこの子。給料って報酬じゃないの???


提督「えっと、具体的になにをご所望で…?」


不知火「………」


ぬいぬいは急にそっぽを向いて黙り込んでしまった。どうしたのさ、エッチなことでも考えてんの?そりゃないか。


明石「驚かさないでくださいよッ!!!」


ぬいぬいとそんなやり取りをしていると明石が怒ったようにこっちに向かってく…あっ、転んだ。


提督「大丈夫か?」


俺はとりあえず手を差し出す。危険物の多い工廠でそんな転んでたら危ないだろ絶対。


明石「うぅ…ありがとうございます…」


不知火「気を抜いてていては危ないですよ明石さん。」


明石「気は抜いてないんですけどねぇ…とほほ…」


明石さんがかなり古い言い回しを使いながら泣くような動作をする。


夕張「なにかと思って来てみたら提督来てたんだ。」


奥からやってきた夕張さんが歩きながら声を…あっ、転んだ。


いやね?転んだ女性を見てこういうのもアレだと思いますけど、パンツが見えてるんですよね。ゲへへ。


アッ、なんか横から危険な視線を感じる。白色なの確認したし顔を背けておこう。


夕張「いたたた…変に滑ると厄介ね。おいしょっと。」


そういって立ちあがった夕張さんは再度こちらに歩いてくる。


明石「大丈夫?夕張。」


夕張「明石のほうが心配よ、しょっちゅう転んでるし。」


明石「うっ…言い返せない自分が辛い。」


夕張「提督、頼まれてたもの出来てるわよ。報酬は弾んでくれるのよね?お姉さん頑張ったのよ?」


夕張はそう言いながら前かがみで誘惑するようにしてくる。股間が反応するのが情けない。鎮まりたまへー


提督「それじゃ、夜俺の部屋来てもらってもいいですか?」


夕張「ふぇ!?」


提督「冗談だよ、あんまし変な誘惑しない方がいいぞ。男はすぐに本気にするからな。」


夕張「べ、べつに?冗談じゃなくても構わないんだけど?」


なんか必死にそんなこと言ってるけど目が泳いでる。こんな感じで数回からかわれたがもう慣れた。


てか、前かがみになったところで貧…ゲフンゲフン…


提督「報酬というか、使えそうなジャンク品は明日にでも取り寄せて置くさ。」


夕張「流石、話がわかる!」


提督「あんま変なもん作らないでくれよ?」


夕張「うん…大丈夫だと思う。あはは。」


苦笑いしながら言う夕張を少し怪訝な目で見るが、これ以上言っても無意味だと判断し明石に声をかける。


提督「そうそう、明石。お前プールとか興味あるか?」


明石「プールですか?行っては見たいですけど…」


提督「今度不知火たちと行くことになっていてな、陽炎が前に艤装修理してもらったののお礼に誘いたいって言っててな。」


明石「いいんですか!是非連れてってください!!!」


急に食いついてきた明石に気押されたが俺は夕張を見る。


提督「夕張もついでにどうだ?」


夕張「ついでとはいいお誘いねぇ?いいわよ…それまでに絶対完成させてやる…」


なんか夕張が不穏なことを言っていたが、全く身に覚えが無いのでスルーした。胸がデカくなる薬とか俺知らない。


とりあえず夕張から依頼の品を受け取り俺は工廠を後に…やっべ、転んだ。








不知火「先程受け取っていたものはなんだったのですか?」


提督「ん?」


執務室への移動中に不意に不知火がそんなことを聞いてくる。


不知火「夕張さんから受け取っていた指輪のようなもののことです。」


提督「あぁ、これか。これは小型のスタンガンみたいなもんだよ。俺も多少は自衛出来るようにしとかないとと思ってな。」


これは例の会見騒動の際、もしもの時に艦娘が実力行使する必要が無いようにと夕張に依頼していたものだった。


人間である俺が正当防衛としてチンピラを撃退すれば何ら問題にはならないのだ。


とはいえ、こんなものが無くてもそれなりに鍛えているつもりではあるがここにいるといつ腕が無くなっているかわからないので仕方ないだろう。


あれ?腕亡くなったらこの武器使えなくね?


天龍「よ、よう、提督。」


龍田「あらぁ?提督。こんにちはぁ。」


そんなことを考えていると、廊下ですれ違った二人が声をかけてくる。天龍から話しかけてくるのは珍しい。


提督「あぁ、こんにちは二人とも。天龍から話しかけてくれるなんて珍しいな。」


天龍「いや、なんだ、俺も少しづつ頑張んねえとって思ってさ。」


彼女は前提督によって人間への強い恐怖心を持っている、相当大きな勇気を振り絞って話してくれてるのだろう。


相当大きな胸をお持ちですしね。ゲフンゲフン…


提督「そうか、俺もなんか出来ることがあれば手伝うから言ってくれな。」


天龍「あぁ、サンキュー提督。」


あまり長く話すのも負担になると判断し、龍田と話していたらしい不知火に声をかけ執務室に戻る。


そうして執務を再開するのだが、ぶっちゃけすぐに終わる。


現状我が鎮守府はあまり出撃が無い。必然的に作戦を立てることが少ない。


毎日こなす執務に関しては慣れているのもあってスピードが上がってしまっている。


こうなるともう秘書官様のかわいらしい姿を見て癒されるくらいしかすることが無いのだ。


つまり、暇なのである。いやまぁ、秘書官様のかわいらしい姿を見るのも大事なんだけどね?


トラブル続きで忙しかっただけで通常業務は大したことない。いっそとち狂って艦娘の身体測定命令とか出ませんかね?


殺されそうですね、ツインテあたりに。はい。


とりあえず本日分の執務を済ませ、PCを開く。ぬいぬいはずっと立っている状態は可哀そうだったので座らせてお茶を飲んでもらっている。


文明の利器とはまぁ便利なもので会議所類などは手書き印鑑が未だに一般的だが、急な任務や伝達はPCやスマホが軍でも主流になっている。


一部の人間が歴史を重んじろみたいな話してたが知るかアホ、楽にできるならするに決まってんだろタコ。


とりあえず、個人メールを確認する。親父がもしなにか調査の結果異常を見つけたら俺に個人で情報をくれる算段になっている。


特に更新は無いようだ。深海棲艦側の提督か…


そいつは新種の深海棲艦なのだろうか。脳内伝達で命令を下すとか?いや、深海棲艦は会話ができるからそれで作戦を立てている可能性も?


まるでそれじゃ俺たちと同じじゃないか。胸糞悪くなるから考えるのは辞めよう。


深海棲艦はなにが目的なのだろうか。もしなにか求めるものがあるなら、それを渡せば消えてくれるのだろうか。


そんな簡単な問題では無いのだろう。恐らくやつらの目的は『人間を殺す』ただそれだけなのだから。


俺は不意に不知火の様子を確認する。あ、寝てる。


執務中に寝るとはずいぶんと悪い子だ…これあれだよね?お仕置き(意味深)していい流れだよね???


落ち着け俺、駄目だ。ロリコンと罵られながら殺される未来が見える。


ほら、こうやって胸を触ろうとすると急に扉が開いて瑞鶴辺りが………


あれ?触れちゃったよ?うおおおおおおおおお、何やってんだ俺は!?


ふぅ、一回落ち着こう。不知火の胸は意外とありました。はい、おうけい。


いや、まぁ全然おうけいじゃないんですけどそこは気にしない方針で。不知火も昼寝という落ち度があるから許されるはず…


そんなことを考えているとPCが間抜けな音を発したのだった。










ー元帥視点ー


今頃提督はバカンスを楽しんでいるだろうか。そんなことを考えながら執務をこなす。


アホ息子に引退を先延ばしにされたのでもう少し頑張らねばならない。すると、大和が声をかけてきた。


大和「元帥、提督君はなんであそこまで艦娘に好かれるんだと思います?」


大和が不意にそんなことを聞いてくる。俺は少し得意げに返す。


元帥「そりゃ、あいつが変人だからだろ。」


大和「変人って…それ逆に嫌われそうですけど。」


元帥「言い方が悪かったな、あいつは俺が育てた対艦娘恋愛装置なんだよ。」


大和「……はい?」


元帥「まぁ、聞けって。あいつは昔からお前らと接していただろ?」


大和「はい、そうですね。」


元帥「でも、普通の提督ってのは着任するためにまず、二十歳以上で軍学校を卒業している必要があるわけだ。」


元帥「んで、今の社会の艦娘に対してのイメージってなんだと思う?」


大和「兵器でしょうか…?」


元帥「そうだな、兵器とか良く知らないけど守ってくれるなにかなわけだ。」


元帥「妖精が見えるのは人間としてある程度の精神が出来てから、つまりその人間を善か悪か妖精さんが判断できる年代じゃないと判別できない。」


元帥「必然的に高校生辺りになる。そのせいで思春期特有の病気とか昔は言われてたわけだな。」


元帥「んで、高校生まで育った人間は基本自分にとっての常識がもう出来てんだよ。周囲に影響されながらな。」


元帥「まぁ、必然的に艦娘は兵器というイメージが強くなる。化け物なんて言うやつも多いしな。」


元帥「それに艦娘のが力は強い、それに恐怖して距離を置こうとする提督も多い。」


元帥「まぁ、例外として艦娘に欲情するやつもいると思うかもしれないが、前提としてそういうやつに妖精は懐かないからな。」


元帥「だが、どっかの馬鹿は違う。幼少のころから艦娘が傍にいたし恐怖なんて感情をどっかに落としてやがる。下心はありそうだがな。」


元帥「その結果、今の世の中じゃ珍しい男が出来上がったわけだ。」


元帥「恐らくあいつが当たり前だと思っていることは世間とはずれてるんだ、艦娘が喜ぶ方向にな。」


大和「んー…まぁ、親が元帥の時点で艦娘のことを大事にするのは納得しますけど少し理解が追い付きませんね…」


元帥「簡単に例えるなら、艦娘をライオンに例えるのが最適だろうな。」


元帥「ライオンが怖いと知りながら生きてきたやつと、ライオンと一緒に生きてきたやつみたいな感じだ。」


大和「なるほど。って、私たちそんな凶暴じゃありませんよ?」


元帥「そうだな、だけど人間ってのは臆病だから未知を過剰に恐れるもんなんだよ。実際、お前たちがなんなのか未だにわからないしな。」


大和「そうですね、なんで人間の姿になったのか。それは私にもわかりませんし。」


元帥「まぁ、無駄話はここまでだ。提督の分の仕事もしないといけないから今日は忙しいぞー」


大和「そうですね、楽しんでいるといいんですけど。」


元帥「新婚旅行はハワイにでもするか?」


俺は赤くなる大和にティッシュの箱をぶん投げられながら仕事を再開した。










ー提督視点ー


提督「どうしてこうなった。」


俺は海岸で後代に広がる海を見ながらひとり呟く。海と言ってもここは海軍によって保護されているビーチだ。


そこで俺は今海パンの状態。まぁ、とりあえず状況を整理しよう。


先日、不知火の胸を…ゲフンゲフンした時にメールが届いた。内容はこうだ。


『提督殿、これまでの功績を評し休暇を与える。』


数日前の会見の時、俺の言い分を何人もの提督が聞いていたらしく酷く感銘を受けたらしい。


結果、俺に勲章をみたいな話になったらしいのだがそれは出来ないと断られたらしい。その後せめて何かできることは無いかと考えた結果


皆で俺の担当海域を順番に請け負って彼に長期休暇をあげようとなったらしい。


詳細って言うか、親父からの説明によるとこういうことだ。


補足しておくと、俺の艦娘からの評判もいいらしく艦娘に言われて行動を起こした提督もいるらしい。


そして、親父に海軍のプライベートビーチ貸し切りにしといたよ。と言われ今来ているわけだ。ちなみにホテルつき。


正直、とても複雑な気分だ。だって俺イラついたから会見で暴れただけですし…


それに俺の担当をみんなでってそれ間接的に俺いらない子って言われてる気分よ???


とはいえ、休暇は休暇なので俺もゆっくりしよう。と思っていたのだが…


夕張「提督ー、パラソル立てるの手伝ってよー。」


このとうり、俺一人では無いのだ。てか全員来てる。頭おかしいんじゃないの?


夕張「ちょっと提督ー?聞いてる?」


提督「あぁ、聞こえてる聞こえてる。」


とりあえず俺は夕張と協力してパラソルを立てる。明石もシートなどを準備してくれている。


当たり前っちゃ当たり前なのだが、提督が休暇の場合艦娘も休暇になる。正しくはなにも出来ないだが。


必然的に暇になったこいつらは俺に着いてきたというわけだ。今回は体のどこが犠牲になる騒動が起きるのやら。


ちなみにバスで移動したのだが、車内前方で隣に座る赤城さんと話していた。後ろからツインテに攻撃されたり更に後から下着飛んできたりしたけど気にしない。


紫色でした。今は持ち主に返してあります。誰のかって?黙秘します。


提督「そういえば、二人は着替えないのか?」


夕張「私はいいかな。泳がなくても雰囲気で楽しめるしね。」


明石「私はトラブル対応するつもりなのでこの辺で待機してるつもりです。」


夕張はともかく明石は勿体ないな。いい体してるのに…


夕張「なんか少し失礼なこと考えてない?」


提督「い、いや、そんなことないそんなことない…あはは。」


女の勘って怖いわー。いっそ俺が彼女にするなら貧乳のほうがいいと思ってるのも勘でわかったりしないのかね?


見る、揉む、癒されるに関しては断然巨乳だが。やはり好きなのは貧乳です。ツインテのやつは除く。


夕立「てーとくさーん!」


そんなやり取りをしていると後ろから声をかけられる。続いて軽い衝撃。


時雨「駄目だよ夕立、そんな急に抱き着いたら提督が驚いちゃうよ。」


提督「これくらいなら大丈夫さ。二人とも着替え終わったんだな。」


俺は夕立をおんぶしながら時雨に話しかける。おんぶっていいね…こう胸が…さ?


時雨「うん、他の皆はまだ少しかかりそうだったよ。提督は早いんだね。」


提督「まぁ、男は下履くだけだからな。簡単なんだよ着替えんのは。」


ちなみにだが、時雨も夕立もビキニを着ていて股間に悪い。駄目だ俺…ロリコン疑惑を俺は晴らさねばならないのだ…


てかこれ、水着だと反応してるのすぐばれるやん!?やばいじゃん!?


夕立「てーとくさん!海で一緒に泳ぐっぽい!」


提督「おうおう、皆が来て準備運動してからな。」


早く泳ぎたいとごね始める夕立を時雨と一緒になだめる。これなんか親子みたいだな。


赤城「お待たせしました。」


そうしていると赤城を先頭に皆がぞろぞろと更衣室から出てくる。なにがとは言わないが鎮まりたまへ…


翔鶴「この水着どうでしょうか?提督」


翔鶴が俺に少し恥ずかしそうに聞いてくる。やめろ…やめるんだ…俺は今股間を沈めるのに全神経を注いでいるんだ…


提督「えと、似合ってると思う。うん。」


翔鶴「ありがとうございます。」


翔鶴はなんかビキニにスカートみたいなフリフリの水着を着ていた。ふぅ…生きててよかった。


褒めるのがぎこちないのは許して…俺異性と海とか…普段出撃してたわ。うん。


とりあえず俺は皆にしっかり準備運動をするように指示を出して、各自自由行動ということにした。







ー瑞鶴視点ー


翔鶴「瑞鶴、提督に水着見せに行かなくてもいいの?」


海で適当に遊ぶ私に翔鶴姉が話しかけてくる。


瑞鶴「いいのいいの、提督さんなんて元から駆逐艦の水着しか見てないだろうし~」


私はそんなことを言って誤魔化す。


本音を言うと、今回のこの休暇兼合宿の話が最初に上がった時はチャンスだと思った。提督さんとの距離を縮めるいい機会だと。


でも、実際のところ提督さんは大人気で皆が次から次へと話しに行っている。今も私はこんな気持ちなのに駆逐艦達に砂に埋められている。


提督さんが着任してそれなりの時間がたった今では、みんな彼を信頼して仲良くしている。


それに対して私はいつも暴力を振るってばかりだ。そんな私が好かれるはずがない。


正直、あの会見で提督さんが本心から私を嫌っているなら死のうとまで思っていた。嫌われることをしておいて嫌われたら死のうなんて自分勝手が過ぎて笑えて来る。


翔鶴「提督ー!こっちで一緒に泳ぎませんかー?」


私の表情を見て心配そうにしていた翔鶴姉が提督を呼ぶ。思わず逃げ出そうとしたが、翔鶴姉に腕を掴まれる。


提督「あいつら有り得ないって…顔まで埋めるか普通…」


提督が顔についた砂を落としながら近づいてくる。私は提督さんがとても怖かった。


記憶には無いが、酒に酔って私は色々しでかしているらしい。もし提督さんが取り返しのつかないほどに私を嫌っていたら…考えるだけで嫌だ。


提督「うお、なんか踏んだ!?海藻かよビビったなぁ…よお、二人とも。楽しんでるか?」


翔鶴「えぇ、私はとっても。普段は海には入りませんからね。」


提督「そうだな、浮いてるもんな。俺も浮いてみたいもんだ。」


提督と翔鶴姉はそんなやり取りをしている。私は提督さんを見つめる、今何を考えているんだろう。本当はやっぱり嫌々提督をやってるんじゃないかなんて考えてしまう。


(余談ですが、提督は今、海に入れば股間反応してもバレなくていいなこれ。って考えてます。)


提督「どうしたんだ瑞鶴。なんか顔色悪いけどってどこ行くんだ!?」


私はせっかく話しかけてもらえたのにその場から逃げ出してしまった。







ー提督視点ー


まさか話しかけるだけで逃げられるほど嫌われているとは…さすがに衝撃よ?そこまで嫌われたの人生初ですもの。


ちなみに、今までの記録は触れると逃げられるというものでしたね。


提督「なんかごめんな、翔鶴。二人の時間の邪魔しちまって。」


翔鶴「いえ、でもこればっかりは私では解決できませんからね…」


ん?この子なに言ってんの?なにその俺が暗黙の了解を経ているみたいな言い方。


翔鶴「瑞鶴のことお願いしますね。私も妹とはフェアな状態で戦いたいので。」


翔鶴さんは俺に魅力的な笑顔を向けてそう言う。え?戦うの?なんで!?


提督「あぁ、任せてくれ。」


俺はなんも理解してないけれどどや顔でそう返して瑞鶴の後を追うことにした。


さて、候補はこれのどれかだ。


・瑞鶴が体調が悪く、嫌いな俺に弱っているとバレるのが嫌で逃げた。


でも、これだと戦いの件が良くわからないし別に翔鶴でもどうにでもできる。ならもう一つの候補としてこれだ。


・戦うのは後で、瑞鶴を使って俺を人気のないところにおびき出し戦いとやらの弊害にならないように殺す。


ええ!?俺死んじゃうの!?でもどや顔で任せてくれとか言っちまったよ!?


まぁ、わからないもんは考えても仕方ないか。死にそうになったらこの指輪型スタンガン…海だと危ないから外したんだったァ!


いや、まぁ危険は無いだろう。俺は翔鶴の笑顔を信じる。あの笑顔になら殺されたってかまわなくない!せめて鹿島の胸を揉んでから死にたい!


少しして、海岸から離れた岩場のようなところまで来た。奥から人の気配を感じる。


俺は岩で周囲から隠れているところを覗き込む。案の定というかなんというか瑞鶴がそこで座りんでいた。


あれか、これから俺を殺す罪悪感で黄昏てんのか。いや、今はふざけてる場合じゃないか。


さて、問題です。瑞鶴はなぜ黄昏ているのでしょうか?


わからねぇ…これ声かけようがねぇじゃないですかヤダー。


とはいえ、ここで見ているだけってのも少し胸が痛いので覚悟を決めて話しかけてみるとしよう。


提督「どうしたんだ?こんなところで?」


瑞鶴「え…提督さん…」


とても場に相応しくない思考だとは思うけど、落ち込んでる異性ってこう来るものがありますね。


提督「俺で良ければ話聞くぞ?」


瑞鶴「駄目。提督さんにだけは話せない。」


えぇ…一番に駆けつけてあげたのに酷くない…?とはいえ、ここで翔鶴に無理でしたとかかっこ悪いにも程があるって。


提督「えっとだな、なんていうか俺を嫌うのは構わないんだが翔鶴に心配をかけんなよ?」


瑞鶴「嫌いじゃない!…いや、その、だからって別に好きなわけじゃないって言うか好きなんだけど言えないって言うか…普通だから!」


なんか高速でごにょごにょ言っていたが俺は嫌われてないらしい。マジか、俺がびっくりだわ。ここ最近全然話してくれないし嫌われてると確信してた。


提督「まぁ、あんましつこく言うつもりは無いけどな?嫌いじゃないってんなら俺に話してみろよ。一人で抱え込むよりは楽だと思うぜ?」


瑞鶴は少し考ええるようにした後、俺に向き直り口を開く。


瑞鶴「私の好きな人がね、私をどう思ってるかわからないの。でも私はよく酷いこと言っちゃうからさ嫌われてると思うと怖くなって。」


なに言ってんのこいつ、好きな人に酷いこと言うって小学生男児かよ。っていけないいけない。泣いてる女の子に釘刺すような鬼畜じゃないんだ俺は。


それにしても誰が好きなんだろう?ん?俺のことだろって?知らんぞ俺は。俺は今だけラノベ主人公張りの鈍感になる。


提督「良くわからないけどさ、とりあえず難しく考えすぎなんじゃねえの?相手もきっとお前のこと大切にしてくれてると思うよ。」


瑞鶴「そんな無責任な…」


提督「そう言われると困るんだけどなぁ…んー、ただまぁ傲慢な考えではあるよな。嫌われることするのに好きになって欲しいなんてのは。」


瑞鶴「そんなのわかってるけどさ…」


提督「でも、逆に考えればそういうことしても傍にいてくれたり話しかけてくれるなら嫌いってことは無いだろうよ。」


瑞鶴「でもさ、ほら仕方なくとかでいるかもじゃん…」


あー、こいつ面倒なタイプだ。気を使って言った言葉に反論するタイプですわよ。


提督「ならもう、本人に聞いちまえよ。それが一番簡単だろ?」


瑞鶴「じゃあ、提督さんは私のことどう思ってるのさ…」


提督「俺か?んー、面倒くさいやつ。」


俺の返答に瑞鶴が下を向く。まぁ、流石にフォローしてやるか…


提督「でもまぁ、あれだ。黙ってりゃ可愛いし俺は好きな方だぞ?お前のこと。もう少し病まなければ好きって言いきれるだろうな。」


瑞鶴が不意に俺のことを見つめてくる。思わずドキッなんて少女漫画みたいになる自分が憎い。


提督「いや、友達とかとしての好きだからな?だから、勘違いすんなって…」


俺の言葉が途中で切れたのは、瑞鶴が急に抱き着いてきたからってなんだ!?なんなんだ!?


瑞鶴「…少しだけ、少しだけこうさせて…」


俺はその声を聴いて静かに目をつむった。泣き顔なんてのは誰しも見せたくないものなのだろう。


その後、珍しく俺は殴られずに瑞鶴と別れた。正しくは瑞鶴が逃げ出したみたいな表現が正しいか。


そうして俺は一人、彼女の問題に向き合うべきか彼女の心を受け入れるべきか考えていた。







?「こんにちは。あなたが提督さんですね。」


岩場から戻ってきてから少しくつろいでいると急に後ろから話しかけられる。


ん?誰だ?ここにいるってことは恐らく艦娘なのだろうが…全く見覚えが無い。


身長は俺と同じくらいで高めなのだが、顔立ちはどちらかというと可愛らしいイメージだ。


黒髪を首のあたり、セミロング?ってやつだろうかくらいに伸ばしている。


提督「えっと、その、なんだろう…ごめんなさい。誰ですか?」


俺は恥を忍んで名前を聞く。前に徹夜で艦娘全員の資料読んだはずなんだけどなぁ…こんな好みの子を忘れるなんて何て罪深い男だ俺。


あ、そういえば胸は小さいですね。現場からは以上です。


?「あ、すいません。私ったら名乗りもせずに。私は女提督と申します。」


俺はその名前に聞覚えがあった。というかこの人、艦娘じゃなかったんですね…


ちなみに、何で聞いたかというと例の会見の発端である艦娘暴行事件に関してだ。それの被害者というか加害者というか、それが彼女のはずだ。


提督「そうでしたか、ということは休暇で遊びに来たとかですか?」


女提督「いえ、今日はお礼を言いに来たんです。」


提督「お礼?」


女提督「はい、先日例の件で元帥にお礼をしに伺ったんですがそれを受け取るべきは俺じゃないと言われまして。」


女提督「その際、提督さんが今日こちらに来ると聞いて休暇を利用して会いに来たんです。」


なるほど、つまり彼女はあの会見のことを言っているわけか。逆に考えれば俺が変態ってバレてるってことじゃーん。


提督「いや、そんなお礼なんていいですよ。俺はただ言いたいことを言っただけですから。」


女提督「いえ、それのお陰で私の秘書官である矢矧も解体されずに済みましたし私自身もお咎めなしで騒動を終えられました。本当に感謝しています。」


女提督さんは滅茶苦茶丁寧な言い回しで俺に感謝の言葉を述べてくる。やりにきぃ…


ごめんなさい、俺そんな感謝されるほど立派な人じゃないです…ただのおっぱい大好き変態提督さんです…イやっフー!


提督「でも別に結果的に女提督さんのためになっただけで俺は本当になにも…」


女提督「そんなことありません!私が今ここにいるのはあなたのお陰と言っても過言では無いんですから。」


ひぃぃ、俺は押しに弱いんだぁ、辞めてくれぇ…


矢矧「女提督、提督さんが少し困ってしまってますよ。」


その時、不意に横から助け船が…あべぇ、滅茶苦茶美人がいるんだけど。惜しい…俺はツインテ派なんだぁ…


女提督「へっ!?あ、すいません私ったらまたやってしまいました…」


矢矧「ごめんなさいね提督さん、彼女少し話に夢中になりすぎてしまうところがあるのよ。」


提督「いや、大丈夫だ…問題ない。」


あっと、動揺しているせいか謎の死亡フラグを立ててしまったが気にしないでおこう。


ん?なんか後方から視線を感じる…気にしちゃダメな奴だ。これはアカンやつだ。


提督「でも、本当に俺は気にしてないですしなにかしたつもりも無いんで気にしないでください。」


女提督「はい、お騒がせしてすいません!」


矢矧「私からも礼を言わせてほしいわ、少しやりすぎた自覚もあるんだけれどね。」


聞いた話だと艦娘にボコられた一味はそれは酷い姿で見つかったらしい。この人がやったんだよな…怒らせないようにしよう…


提督「まぁ、折角ですし休暇をここで過ごしていったらどうです?貸し切りらしいので俺たちしかいませんし。」


女提督「いいんですか!?」


彼女は俺に迫りながら言う。やめて!近い!その微妙にいい香りに下が反応するから!


提督「ええ、全然かまいませんよ。矢矧さんもどうです?」


矢矧「お誘いは嬉しいのだけれど水着持ってないのよね…」


提督「あぁ、それでしたらそこの休憩所に貸し出しの水着あったんで使うといいですよ。」


矢矧「それならお言葉に甘えさせてもらうわね。行きましょ女提督。」


女提督「うん!」


なんだろう、娘が出来たらあんな感じなのだろうか。とても元気な女性だった…


ちなみに、俺が今の内容を進言したのは単純に矢矧さんの水着が見たゲフンゲフン…んーゴホンゴホン。


いや、疲労のたまる提督業の疲れを少しでも癒して欲しいからということにしておこう。そうしよう。


時雨「提督、今の女誰?」


提督「あぁ、別の鎮守府のっておおお!?」


俺が急に間抜けな声を出したのは唐突に横に時雨が現れたのに気づいたからだ。ってか気配感じなかったよ今!?皆忍者なの!?


時雨「別の鎮守府の?」


提督「あれだ、あの会見の発端になった艦娘暴行事件の二人だよ。俺に礼を言いに来たって。」


時雨「そっか、そうなんだ。でも提督さっき赤くなってたよね?」


提督「エ、エットナ、ナンノコトデショウカ…」


だって近いんだもんあの人、男なら照れたても仕方ないよね☆


時雨「僕もこうしたら提督は照れてくれるのかな…?」


時雨がそう言って俺に絡んでくる。鎮まれぇ…俺の股間!駆逐艦は駄目だ!せめて高校生以上じゃないと!


そんなことを考えていると時雨が耳に息を吹きかけてきた。そのせいで間抜けな声が出る。おひょひょーいみたいな。


夕立「二人で何してるっぽい?」


村雨「あらあら、昼間っから大胆ね。」


その時、横に救世主が現れた。俺は時雨の意識が二人に逸れた瞬間に時雨を引きはがす。駄目だこの子、この子は駆逐艦と侮ってはいけない…


ちなみに、夕立と一緒に現れたこの茶色のツインテは村雨といって時雨たちの姉妹艦だ。ぶっちゃけこの子も雰囲気がヤヴァイ。


時雨「提督はガードが堅いんだね。でもいつか…」


時雨がなんか不穏なこと言ってる…怖いから早く鹿島さんに告白せにゃ…


村雨「あら?やめちゃうの?村雨もちょっといいとこ見せたげようと思ったんだけどなぁ~」


提督「勘弁してくれ、お前たちも子供じゃないんだからそういうこと軽率にしちゃだめだぞ…」


そう、世の中にはロリコンというやつがいてだな。俺もなりかけなわけだが。OMG


村雨「それは村雨たちのことそういう目で見てるってことですかー?」


提督「俺はロリコンじゃねえよ!そういう人たちも世の中にはいるってことだ!」


からかうように言う村雨に少し強気に反論する。しかし、村雨はそれで引くどころかくっついてきた。んんん!?


村雨「なら別にいくらこういうことしても問題ないってことですよね?」


時雨「僕もいいってことだよね?」


夕立「夕立も提督さんにくっつくっぽーい!」


なんだこの新手の生き地獄は…いや本音を言うと天国なんだけどさ?でもアカン…こいつらはからかってるんだ大人の威厳を失うわけには…


瑞鶴「提 督 さ ん ?」


不意に後ろから酷く冷たい声が聞こえる。見える!私にも未来が見える!これがゼロシステム!


ガンダムネタなんてわかる人いませんよね。あはは…


提督「瑞鶴、落ち着いてくれ。これは不可抗力だ、俺には罪は無い。てかさっきまで元気なかったじゃねぇかよ!」


瑞鶴「問答無用!」


そうして俺はいつもどうり瑞鶴にぶん殴られたのだった。前言撤回だ!お前なんて大嫌いだ!







朝潮「大丈夫ですか?司令官。」


俺は偶々通りかかった朝潮に手当てしてもらっている。


荒潮「提督は本当に怪我が絶えませんねぇ。」


霞「どうせまたクズ司令官がなにかやらかしたんでしょ?」


朝潮「こら!霞司令官にそう言う態度とっちゃ駄目ですよ!」


提督「別に構わないさ、堅苦しい方が俺は苦手だしな。」


どうやら朝潮型で海で遊んでいたらしいのだが、飲み物を取りに来る途中俺を発見して駆けつけてくれたらしい。


ちなみに時雨たちは瑞鶴に誘拐されていった。大丈夫かしら?


朝潮「つまり、堅苦しい私のことはお嫌いですか…?」


さっきの俺の何気ない一言に悲しそうに朝潮が聞いてくる。あっ、やばい、なにこの感じ。Sに目覚めそう。


提督「そういうわけじゃないさ、朝潮のことを嫌うわけないだろ?」


朝潮「良かったです。司令官の命令でしたら口調でもなんでも変えますのでお気軽にご命じください!」


つまり、それはご主人様とか言ってもらえるんですかね?お兄ちゃんが理想なんですがどうですかね?


提督「いや、好きにしてくれていいさ。俺はありのまま接してくれるのが一番だと思ってるからな。」


思考とは裏腹にそんなことを言う。霞がいる前で気を抜くと罵詈雑言の流星拳が飛んでくるから気をつけねば。


提督「それより折角の海なんだし俺のことなんて放って遊んでおいで。傷はもう大丈夫だからさ。」


霞「そうよ、クズ司令官なんてほっといて早く戻りましょ。」


荒潮「私は、提督と二人きりでいてもいいんですけどぉ?」


荒潮が色っぽい声を出しながら俺に近づいてくる。アカン!駆逐艦でそれはアカン!


提督「い、いや、荒潮も姉妹といた方が楽しいだろうし、な?」


キョドって語彙力が宇宙旅行に出てしまった…とりあえず俺はそう言いながら荒潮を手で押しのけ…?ん?なにこれ。


荒潮「ふふふ、提督って結構積極的なんですねぇ…」


俺は無意識に荒潮の発達途中の胸に手を置いていた。なんだこのでかいわけでも小さいわけでも無い形容しがたいものは。スンバラシィ!


提督「って、ごめん!悪気はないというか、いや、悪いことしたんだけど…」


荒潮「私は全然かまいませんよぉ?そっちはわからないですけどねぇ…」


霞「この変態クズロリコン司令官ッ!」


無駄に長い罵倒を喰らいながら、俺は渾身の右ストレートを頬に食らった。


一発KO!さっきとは逆頬を殴られて痛みのバランスが非常に丁度いい。いや、良くねぇよ。


ちなみに、朝潮も荒潮も霞に強制的に連れていかれました。俺は一人で砂に転がっている。


女提督「大丈夫ですか…?」


すると、着替え終わったらしい女提督さんと矢矧さんが声をかけてきた。


ローアングルから見える視界で、俺の股間が元気になったのは言うまでも…ゲフンゲフン。あ、矢矧さんの方ね?







提督「それじゃあ女提督さんも俺と同じで結構新人なんですね。」


女提督「はい、そんな中であの騒動が起きちゃってもう世界の終わりかと思いましたよ…」


提督「ははは、それはいくらなんでも大袈裟ですよ。」


今俺はこのとうり、女提督さんと適当に話している。立場が同じため話題は結構合わせやすかった。


怪我についてなども聞かれたが、適当にはぐらかしておいた。


詳細を語ると、これから艦娘と長く付き合う立場として少し恐怖が生まれるかもしれないと判断したからだ。


女提督「このまま話すのもいいですけど、よければ海で遊びませんか?」


不意に女提督さんによって提案された案に賛同し俺たち三人は海で遊ぶことにした。いい歳こいてとか言うなよ?誘われて仕方なくなんだからね!


年甲斐もなくはしゃいでしまったのは秘密だ。途中で様々な方向から視線を感じたりビーチボールや爆撃機が顔面に飛んできたりしたが気にしない…


え!?なんで爆撃機飛んできてたんだ!?まぁ、いっか。


しばらくして昼飯時になったので、海から上がり今に至る。


赤城「提督、よければ昼食ご一緒しませんか?」


提督「ん?あぁ、是非お願いします。」


日焼けで風呂辛そうだなー…とか考えていると、赤城さんにお誘いをうけたので。承諾した。


赤城さんと一緒に海の家…看板が『間宮』になっている…朝は違ったのに…一仕事終えたといった風に汗を拭いてるあのピンクの仕業だな。


赤城さんに案内された机には加賀さんと蒼龍、飛龍がいた。


飛龍「おお!提督じゃん!見てよこの蒼龍の胸、流石空母のエロ担当だよね!」


蒼龍「なっ!?ちょっと変なこと言わないでよ飛龍って、もう揉まないでッたら!」


飛龍「ヘブ!?」


酔ったおっさんみたいなテンションで蒼龍の胸を揉みしだく飛龍を蒼龍が一発で黙らせる。エロ担当じゃねぇ…飛龍担当だこりゃ…


加賀「全く提督の前でくらい静かにできないのかしら?」


蒼龍「ごめんなさい加賀さん…飛龍にもよく言って聞かせておきますんで…」


提督「まぁまぁ、加賀もそう怒らないで。飛龍はいくらなんでもはっちゃけすぎだぞ?」


飛龍「いいじゃないか…減るもんでもないんだしぃ…ねぇ提督!」


気絶しているフリをしていた飛龍が涙目になりながら俺に同意を求めてくる。


提督「確かに減りはしないが、嫌がってることをするのは良くないと思うぞ?」


飛龍「そんなー…」


本音はそのとうりだ!俺もめっちゃ思うぞ!揉みしだきたいよ!ハ〇太郎もそう思うだろう???へけっ!なんだが、でも俺は捕まるのにお前は怒られるだけなのなんか腹立つから同意しない!ごめんねハ〇太郎!


赤城「とりあえず、ご飯食べちゃいましょうか。皆さん何にします?」


とりあえず、全員食べるものを決めて店の手伝いをしている長門に注文を伝える。


厨房は間宮さんと鳳翔さん、他数人で回しているようだ。料理の美味い女性はいいよね。うん。


赤城「提督、少しよろしいでしょうか?」


注文を待っていると、隣に座る赤城に不意に声をかけられる。


提督「どうしました?大丈夫ですよ。」


俺は赤城さんにそう返し、二人で人気のない店の裏手に移動した。




美人と…人気に無いところに二人っきり…だと?これは告白シチュじゃね?


アカン、赤城さんに告白されたらよろしくお願いしますって即答しかねん…


赤城さんが俺の目を見つめてくる、ん?どうやら少し怒っているみたい…?


なんだろう、俺無意識に赤城さんの胸ばっか見てたのがバレたのだろうか。弁明の余地が無いぞぉ!?


赤城「提督、なんで私にだけ敬語使うんですか?」


提督「へ?」


赤城「加賀さんたちは敬語外してるのに私だけ外してくれないなんて酷いじゃないですか。」


提督「いや、それは本人に外していいって言われたからでして…」


赤城「私も言ったじゃないですか!敬語外して欲しいって!」


提督「あの時は酔った勢いで言ってたもんだと…それに赤城さんはなんか、はい。」


赤城「なんかってなんですか?」


赤城さんが頬を膨らませながら食い気味に聞いてくる。可愛い(可愛い)


提督「その、なんていうか頼れるお姉さんというか俺なんかが呼び捨てしていいのかなぁ…って」


赤城「私がしてほしいんです!」


頬を膨らませ、詰め寄りながら言う。近い近い、ビキニで近づかれると股間がまずいって!


提督「わ、わかった。わかったからこれでいいか?」


赤城「はい!これからずっとですからね?」


提督「お、おう、わかったよ赤城。」


赤城「…呼び捨てにされるのは少し恥ずかしいんですね…」


俺の呼び方に少し照れたように赤城さんは言う。あ゛ーかわいいなあ。


その後、少し気まずくなったが赤城さ…赤城に席に戻りましょうと言われ、二人で店内に戻った。




飛龍「おや?お早いお帰りですね~二人っきりでもっと話してても良かったんですよ?」


にやにやしながら飛龍が俺と赤城を見て言う。残念だったな短時間でも砂糖成分はもう俺の中で満タンだよ…


赤城「別にそんなんじゃないですから!」


赤城さんが慌てたように飛龍に言う。畜生なんだこの人可愛いじゃねえか、最高だ!可愛いしか言ってない問題発生。


蒼龍「ちょっと、飛龍!先輩をからかっちゃだめだよ…」


蒼龍が慌てて飛龍を制止する。うん、いつ見てもデカいな、この子。


加賀「食事は届いているから、食べるとしましょう。」


加賀さんの少し不機嫌そうな声に皆頷き、昼食を食べ始める。


俺は定番の焼きそばを食べる。赤城と加賀も焼きそばで、二航戦sはカレーを食べている。


飛龍「辛ッ!」


蒼龍「激辛なんか頼むからだよ…もう、どうするの?」


飛龍「提督!その焼きそばとこれ交換しない?」


提督「え…」


飛龍「一生のお願い!提督頼むよ!」


前に一生のお願いって言葉は世界で一番信用ならないと聞いた気がするんだよなぁ…とはいえ、涙目で懇願しているのを断るのも…うーん。


これが翔鶴さんとかだったら、辛いの苦手っていうギャップで激辛カレー五杯は行けるんですけどね。


提督「仕方ないか、わかったよ。でも、俺焼きそばに手をつけちゃったぞ?」


飛龍「気にしない!気にしない!ありがとね!」


飛龍はそう言いながら、俺の焼きそばと自分のカレーを交換する。いや、待って、なんかこのカレー赤いんですけど。え、おかしくない?


蒼龍「ごめんなさい…提督さん…」


困ったような顔で蒼龍が謝罪してくる。ここでやっぱ食べれないなんて言ったらかっこ悪すぎるぞ…やるしかねぇか…


提督「気にしないでくれ蒼龍、俺は辛いの好きだか…」


声が途中で途切れたのは、辛さが尋常じゃなかったからです。火を吹けるんじゃないかって辛さですよこれ。


一口ごとに視界の右奥にいる鹿島さんを見る。どこを見てるかは秘密だァ!


加賀「提督、大丈夫なの…?」


俺の表情を見て加賀が声をかけてくる。俺はそれに対して決め顔でサムズアップをする。俺…このカレー食い終えたら…翔鶴さんに…うっ…


駄目だ、フラグを立てたら死んでしまう。頭の中を胸部装甲で満たせ…まだだ、まだ終わらんよ…


結局、完食することには成功したが三十分間口が動きませんでした…







午後はまぁ体に傷を受けながらも普通に楽しんでいた。特筆すべきことは鹿島の水着を間近で見た俺が鼻血を出したことくらいだろう。


正直、海に来ても皆が楽しめるか少し心配していたのだが俺の見た感じだと楽しめているようだったので安心した。


少し真面目ったらしくなるが、ここ最近はトラブルや問題の連続で彼女たちの精神も疲弊していたはずだ。


いや、前に比べれば楽なのだろうか。それは俺にはわからない。


まぁ、俺はみんなの水着姿を見れて体中に元気がみなぎっているのでなんでもいっか!


ちなみに現在は暗くなってきたので、皆で帰りの支度をしているところだ。


加賀「提督少しいいかしら?」


俺が水着から普段着に代わっていく一同を見て、やっぱ着ているのもエロいなんて感慨深く考えていると加賀に声をかけられる。


提督「ん?あぁ、大丈夫だぞ。」


俺はそう言って、加賀と一緒に人影の少ない方に移動した。




加賀に連れられてきた場所は、瑞鶴を慰めに来た場所と同じだった。


二人はもしかしたら似た者同士なのかもしれない。仲が悪いのはいわゆる同族嫌悪の類なんだろうか。


まぁ、胸は似てないですけどね。


加賀「急に呼び出してごめんなさい、あなたにきちんとお礼がしておきたくて。」


提督「お礼?」


加賀「ええ、この鎮守府の皆が今こうして笑っていられるのは間違いなくあなたのお陰よ。」


提督「俺は別に何もして無いって、体中に傷作っただだよ。」


というか、もはや最近胸しか見てない気がする。完全に変態ですね。ダメ人間だ。その代償が怪我な気がしてきたぞ…


加賀「それでも感謝してるわ、こうして貴方と二人きりになれる機会って少ないから…急に呼び出してごめんなさい。」


提督「本当に気にしないでくれって。それが仕事だからね俺は。」


それに俺は今日の光景ですべてが報われたと思っているのです。対価は頂きました…死んでもいい…いや、死にたくないけど。


加賀「謙遜は美徳と言うけれど、こういう時くらいは素直に受け取ってほしいものね。」


すこし困ったような顔で加賀さんが言う。彼女にしては珍しく表情から感情が良くわかる。わんちゃん加賀ルート…?


加賀「それで、もう一つの話なんだけれど。」


加賀が真面目な顔で続ける。俺もふざけてる場合では無いなと思い加賀の胸を目に焼き付けて置く。何してんだ俺は。


加賀「あなたは、瑞鶴のことをどう思ってるの?」


危ない、大っ嫌いだ!って即答しかけた。恐らくこの質問は俺が個人的にどう思ってるかではない。


提督「不安定な状態だと思ってる。少なくともあのままにしておくのは危険だともわかってる。」


加賀「良かった、そこまでわかっているのなら安心したわ。あの子はとても不安定なままよ、それを伝えようと思ったのだけれど必要なかった…


軽巡棲姫「フフ、オ話シ中ニゴメンナサイネ?少シ彼ヲ借リテイクワ。」


それは突然現れた。俺はとっさに加賀をかばうように加賀と深海棲艦の間に強引に割り込む。


しかし、そのセリフを理解した瞬間戦慄する。彼?つまりこいつの狙いは俺ということか?


俺は死を覚悟する。畜生気合いで手を伸ばして最後に加賀の胸揉んでやるか!?


そんな俺の思考とは裏腹に深海棲艦は俺を強引に掴み、海に引き込む。


加賀「提督ッ!」


加賀は俺を助けようと手を伸ばすが、俺が先ほど庇う際に突き飛ばす形になってしまっていたため距離があり、二つの手は距離を離すことしか出来なかった。


つってもまぁ、俺の手の狙いは最初から手ではなく胸なのだが。


そして、俺は深海棲艦に連れ去られたのだった。あー加賀が遠ざかっていくー。はっ!よく考えたら俺大ピンチじゃん!







ー艦娘視点ー


瑞鶴「提督さんが深海棲艦に攫われた!?」


加賀の言葉に集まった艦娘全員が絶句する。


加賀「えぇ、そうよ。私はなにも出来なかったわ…」


瑞鶴「なにやってんのよこの無能一航戦がッ!身を挺して提督さんを守るべきでしょうがッ」


物凄い剣幕で怒鳴りながら瑞鶴が加賀の頬をぶとうとする。しかし、それは翔鶴によって阻まれる。


翔鶴「やめなさい、すぐに暴力を振るのはいけないと言ったはずよ。」


瑞鶴「五月蠅いッ!翔鶴姉は引っ込んどいてよッ」


泣いたような、怒ったような顔で瑞鶴が叫ぶ。その姿は提督の着任する前の彼女と重なった。


龍田「でもぉ、加賀さんが彼を人気のないところに呼び出したのよねぇ?」


天龍「お、おい止めろよ龍田。そんなこと言ったって何の解決にもなんないだろ…」


龍田「ふふふ、ごめんね天龍ちゃん。私も結構彼のこと好きだったのよぉ?」


そのセリフを聞いた艦娘たちの視線が加賀に集まる。加賀は無言で下を向いてしまっている。


この鎮守府は立て直したというにはほど遠いのだ。


わかりやすくいうなら支柱が百必要な建物から支柱が無くなってしまった後に。提督という一つの支柱で強引に改修したというのが正しいだろう。


彼に対しての感情は各々形は違えど、好意には変わりないのであった。


漣「い、いやいや、確かに原因は加賀さんかもしれないですけど責めるのは違う気がするなぁ…ってへ☆」


加賀をかばおうとしたのか、漣がそんなことを言うが皆の心には届かない。


以前、居心地の悪い雰囲気が続く。小声で何かを言うもの、無言で表情を歪めるもの、加賀を睨むもの。


赤城「いい加減にしてくださいッ」


その時だった、赤城が声を荒げる。怒りに満ちたといった声で。


全員の視線が赤城に注目する。その視線は赤城になにか救いを求めているかのような、そんな視線だった。


赤城「私たちで争っている場合では無いでしょう。今考えるべきは誰が悪いかなんてことじゃない。」


赤城「どうやって提督を助けるかです。…きっと、彼がこの場にいても誰かを責めたりしないはずです。」


そう言い、赤城も少し俯いてしまう。彼女にとってもそれだけ彼が大きな存在になっていたということだろうか。


しかし、赤城はすぐに前を向きこぶしを握り締め弱さを切り捨てる。


赤城「これより提督救出作戦を開始します。」


そして、強く決意の籠った声で宣言するのであった。







ー赤城視点ー


彼がいなくなった。それはみんなの心を抉るような出来事だろう。


私も出来るのならここで悲しみを癒すために逃避してしまいたいくらいだ。


しかし、加賀さんは深海棲艦が提督を連れ去ったと言った。ならまだ生きているかもしれない。


彼を何に利用するかわからない以上、ここでいじけている暇も仲間割れしている暇も無いのだ。


とりあえず、出来ることは限られている少しづつでもやっていかなければ。


私は提督の荷物から彼のスマホを探し出す。ごめんなさいと独り言で言ってから元帥へ連絡する。


元帥「お前から連絡をくれるなんてな~俺は感激だぞ~」


随分と砕けた態度で元帥が電話に出る。提督と元帥はどういった関係なのだろうか…


赤城「申し訳ありません、元帥殿。私は提督の鎮守府に属する正規空母赤城と申します。」


元帥「…あまり、いい知らせではないようだな。要件を言ってくれ。」


赤城「はい、先ほど休暇を頂いていたビーチにて提督が深海棲艦に連れ去られました。」


元帥「……今何て言った?」


元帥の声のトーンが下がる。一瞬血の気が引いた。これが元帥に上り詰める人間の気迫というものなのだろうか。


ちなみに赤城は知る由は無いが、この怒りの正体は子を攫われた親の怒りなのだが。


赤城「提督が深海棲艦に攫われたと申しました。」


元帥「提督の鎮守府の全権限は今から俺が引き継ぐ。まずは全艦娘で提督の攫われた経緯や証拠になりそうなものの捜索を頼む。それと詳細を十分後に再度連絡してくれ。」


赤城「了解いたしました。失礼いたします。」


私はそう言って電話を切る。酷く緊張したが今はそんなのどうでもいい。私は皆に通話の内容を知らせ彼が攫われた場所に向かった。







ー誘拐された人視点ー


うーみーはひろいーなーおおきーなー、なんとーかかんとーかーひはしーずむー


さぁ、どうしましょうか。俺は今深海棲艦に捕まっています。


といっても、海岸で加賀といるところを連れ去られた後付近のボートに乗せられそれを引くという随分と丁重に誘拐されている。


しかし、逃げようにも俺がボートから飛び降りたところでまた乗っけられるだけだろうしどうしよう。想像するとシュールね。


それにしてもかっこつけて加賀を庇ったら狙いは俺で見事に捕まるとか間抜けにもほどがある。


とりあえずお話してみますかね。コミュニケーション大事。


提督「へ,へーイ、深海ピーポー…」


深海棲艦の使用言語ってなんなんだろう…英語喋れんのですわ俺…


軽巡棲姫「…?あぁ、日本語で大丈夫ですよ。おかしな方ですね。」


深海棲艦は少し不思議そうに首を傾げていたが、理解したのか笑いながら言う。


こう見るとまるで人間と変わらない。いや、周りの武装でどちらかというと艦娘だろうか…


提督「それじゃ、質問させてもらうが、俺をどうするつもりだ?」


流石に敵に弱々しい態度は見せられない。少し噛みつくように強気で言う。


軽巡棲姫「さぁ?どうするんでしょうね。私は連れてこいと言われただけなんです。」


提督「その言い方だと指揮官のようなものがいるということか?」


軽巡棲姫「ええ、提督と言われる方がいますよ。」


提督「随分とペラペラ喋るんだな。どうせ殺すんだからといったところか?」


軽巡棲姫「あなたをどうするかは知りませんが、情報は多く教えてやれとも言われていますので。」


情報を与えるように指示している?どういうことだ?できればこの深海棲艦のBWHが知りたいんですけど聞いてもいいですか?


いや、待て待て敵にセクハラしてどうする。いずれにせよ、情報がもらえるのなら聞いておくとしよう。


九割死ぬと思うが、もしかしたら逃げられた時のカードになる。


提督「今向かっているのはどこなんですか?」


軽巡棲姫「細かい場所までは私の知識では説明しかねますが…深海棲艦の鎮守府といったところでしょうか。」


提督「深海棲艦に…鎮守府があるのか?」


軽巡棲姫「はい。まぁ借りものですがね。」


そうして徐々に目的地だと思われる無人島が視界に入る。俺はそこからは無言で深海棲艦に着いていった。


ボートを下り、無人島内を進む。そしてあまり大規模ではないボロイ建物が見えた。


俺はここを知っている。といっても最近写真で見ただけだが。


そう、ここは前提督がPCにデータを残していった海域にある捨てられた鎮守府だ。


施設内を無言で深海棲艦が歩く。僕はそれについていく。施設内は確かに生活感があり、何年も前に捨てられたとは思えない。


いや、実際使われているのだから当たり前か。そして着いたのは執務室の看板がかかった部屋。


深海棲艦にどうぞと言われ、僕はその扉を開くのだった。







ー元帥視点ー


最悪だ。問題が多すぎる。軍開発の爆弾が窃盗された矢先に…いや、それはどうでもいい提督が第一優先だ。


長門からの電話を聞き俺は車を走らせながら状況を整理する。幸いなのは提督が生きている可能性が高いことだ。


なぜなら、もし殺すつもりだったとしたら攫う必要も無いし付近の未武装の艦娘も殺すと思われるからだ。


それをしなかったのは誘拐の成功確率を上げるためだろう。つまり深海棲艦側は提督を重要視していると思われる。


そして次は海軍内に内通者がいるのがほぼ確定した問題だ。提督があの海岸で休暇を取っているのは軍内部の人間しか知らない。


つまり、どこかから情報が漏れたと考えるのが妥当だろう。


可能性として、ただ単にあの海岸で無防備な提督を誰でもいいから攫おうとしていたという線もあるが、それなら警戒の薄い海軍用ビーチが何個もある。


提督の休暇に合わせて警戒人数を増員したあそこを狙うということはまず無いだろう。


そしてそれと同時に深海棲艦が単機でここまで侵入できるはずがないのだ。それこそ警戒の薄いルートを事前に知っているわけでもなければ。


裏切り?しかし、人間が深海棲艦に協力する意図はなんだ?脅されている?そんな頭脳が深海棲艦にあるのか?


そこまで考えて、俺は一つ思い当たるものがあった。前提督の残したデータにあった記述。


深海棲艦側にも提督がいる。


提督、これが頭脳明晰な深海棲艦のことか人間のことなのかはわからない。


しかし、少なくとも敵にも頭脳があるということだ。


ならこのタイミングで提督を誘拐する意味とはなんだ?人体実験ならわざわざリスクのある上、注目されているあいつを狙う理由は無い。


なら、見せしめに処刑する?何の見せしめだ?意図がつかめない。


元帥「畜生、親より早く死ぬんじゃねぇぞ馬鹿息子が。」


俺は口から絞り出すように独り言を口にし車のハンドルを切った。




しばらくして、提督が休暇を満喫するはずだった海岸沿いのホテルに着く。


着いてすぐ、長門が声をかけてきた。


長門「お待ちしておりました、元帥殿。我らが提督のために駆けつけていただけるとは光栄です。」


堅苦しくお礼を言ってくるが、その表情は酷く歪んでいる。


元帥「形式だけの感謝などは不要だ、ここでいいから詳細を伝えよ。」


長門「承知いたしました。しかし、詳細は現場に居合わせた加賀からのほうがよろしいかと。」


元帥「そうか、なら加賀はどこにいる?俺から出向くから場所を教えてくれ。」


長門「加賀なら今提督の攫われた現場にいるはずです。ご案内いたします。」


俺はそう言って歩き出す長門に着いていく。あまり堅苦しいのは好きではないが、仕方ないか。


現場は意外と近かった。赤城と加賀の姿が見える。


長門「加賀、元帥殿が直接話を聞きたいそうだ。」


加賀「…はい、わかりました。お話します。」


加賀は長門に言われ俺を見た後、申し訳ないといったような表情になる。


本心では何故守らなかった、部下が犠牲になって提督を守るべきだろうなんて言うべきなんだろうか。


しかし、同じ局面ならあいつは絶対にそんなことを言わないだろう。それどころかこの絶望的な状況を何とかしてしまうような気さえする。


元帥「赤城と長門、俺は加賀と二人きりで話がしたい。席を外してもらっても構わないか?」


長門「承知しました。少し離れた場所で待機しております。行くぞ赤城。」


赤城「……はい。」


赤城は最後まで心配そうな顔で加賀を見ていた。俺が叱るとでも思ってるのだろう。


提督がいなくなった場所に俺と加賀の二人が立つ。夜空が綺麗なものだ。


加賀「この度は私の不始末で元帥殿にまでご迷惑をおかけする形になり、誠に申し訳ございませんでした。」


加賀はそう言いながら土下座をしようとする。俺はそれを止め、口を開く。


元帥「そんな堅苦しいのはよしてくれ、確かに君にも非があるあるんだろうがどうせあいつが庇ったりでもしたんだろ?」


無言で俯く加賀を見て子供のことながら鼻が高い。本当によくできた息子だこった。


加賀「提督は急に現れた深海棲艦から私を庇おうと間に割り込んで、そのまま攫われてしまいました。」


加賀「深海棲艦は最初に彼と言ったので、狙いは最初から提督だったものだと思われます。」


元帥「そうか…ただ、先ほど電話で長門に色々聞いたんだが深海棲艦は殺したではなく連れ去ったでいいんだな?」


加賀「はい、危害を加えるつもりは無かったように思います。」


元帥「ありがとう、あとそんなに落ち込まないでくれ。絶対にあいつは俺がとり返して見せるさ。」


元帥「元帥ではなく、息子離れできない馬鹿な親父としてな。」


俺の台詞を聞いて加賀の表情が少し落ち着く。自分を責め過ぎても悪い結果しか出ないのだ。


そして俺はスマホを取り出す。さぁ、やることは大量だ。


まずは大本営の大淀に電話をかける。


大淀「どうなされましたか元帥。」


元帥「世間話は無しだ。現海域の索敵の穴と例の鎮守府の情報をまとめてくれ。」


大淀「どちらも既に済んでいます。」


元帥「了解した。ならそれを即座に俺のノートPCに転送し元帥権限で大本営内全てのデータ閲覧を許可しよう。」


元帥「そして大本営内全ての海域情報を閲覧できる端末の閲覧履歴を確認し、閲覧数の多い人間をまとめあげろ。」


大淀「な!?しかし、元帥。艦娘に全情報の開示は規則違反では?」


元帥「知るか、息子の為なら規則の一個や千個破ってやんのが親の務めだろ。」


大淀「不意にカッコよくなるのは反則ですよ。私も出来る限りバレないようにやってみます。まとめ次第PCへの転送でよろしいですか?」


元帥「カッコつけんのは普段ダサい男の特権だろうよ。頼んだ。」


そこまで言って電話を切る。次は提督の鎮守府に電話をかける。


提督妖精「はい、こちらバカンスに置いていかれた提督妖精ですよ。」


全く妖精が我が物顔で電話に出るというのもおかしな話だ。元帥と表示されていたから出たのだろうが。


元帥「おふざけは無しだ。頼みがある。」


提督妖精「これは穏やかじゃなさそうだ。なにがあった?」


元帥「提督が誘拐された。深海棲艦にな。」


提督妖精「悪いが、どこで〇ドアは作れないぞ?」


元帥「随分落ち着いてんじゃねえか。」


提督妖精「誘拐ってことは生きてんだろ?それにあのポンコツはこんなとこで死ぬたまじゃないだろうよ。」


元帥「確かにそのとうりだな。それで頼みってのは今からそちらにリストアップする人間の監視をして欲しい。」


提督妖精「了解、大体の鎮守府に息のかかってるやつは一人はいるからどうとでもするさ。」


元帥「相変わらずの顔の広さだな。出来るならその広げ方を伝授してほしいもんだ。」


提督妖精「悪いがそれは企業秘密だ。最後に一つだけ言っとく、無理すんなよ。」


元帥「あぁ、わかってるよ。」


そう言って電話を切る。いい感じに死亡フラグを建てられたもんだ。


俺は長門に声をかけ、車からノートPCを回収しホテルに向かう。すると、そこには見覚えのある顔があった。


大和「それで私は何をすればいいですか?」


ホテルの前で待っていたのは、大和だった。


元帥「全くお前は俺のストーカーかなんかか?」


大和「そんなこと言うと帰っちゃいますよ?」


元帥「冗談だよ。悪いな、今回も力を貸してくれ。」


大和「はい、その代わり報酬はそれなりにもらいますよ?」


元帥「覚悟しとくさ。」


そう言って、俺と大和は提督を救出するための作戦を開始する。そうだ今回は一人じゃない。


もうあんな思いは繰り返さない。例え、我が身が犠牲になろうとも十六年前のあの苦しみよりはマシだと思えるから。


そんな決意を胸に、俺はポケットの中のペンダントを握り締めた。







ー司令官視点ー


七月七日、織姫と彦星が年に一日だけ会えるなんていう洒落た日だ。年に一度会う二人はなにをするのだろうか。


性交?会話?それともキスだけ?いずれにせよロマンチックな話だことだ。


俺はベッドから起き上がり、支度をして執務室に向かう。


吹雪「おはようございます!司令官!」


司令官「あぁ、おはよう。」


元気に挨拶してくれる吹雪に挨拶を返す。


あの聖夜から半年。未だに俺は思いを彼女に伝えられては無い。


といっても、関係上カップルなんかより一緒にいるしお互いに好きあってるのをわかっているので、告白の必要も無いのかもしれない。


とはいえ、大和に女の子にとってそういうイベントは大事ですよ!と叱られてしまったので近々告白するつもりだ。


司令官「今日は確か出撃の日だよな?」


吹雪「はい!といっても前に制圧した海域の見回りなので心配は無いですよ。」


司令官「別に心配というわけじゃ…」


吹雪「なに言ってるんですか。いつもみんなの無事を心配している癖に。」


司令官「ははは、吹雪には敵わないな。」


そんなやり取りをして、出撃に向かう吹雪を見送る。俺は今日鎮守府の指揮を大和に預け吹雪へのプレゼントを買いに行くつもりだ。


プレゼントに関してはあまり自身が無いので大和に相談したが、好きな人が選んでくれたならなんでもいいんですよと言われた。


俺は吹雪たちが抜錨したのを確認し、鎮守府を出る。


しばらくショッピングモールなどを見て回ったが、中々これといったものが見つからない。


良さそうなものを見つけても彼女がもっと喜ぶものがあるのではないかと考えてしまう。


結局、ありきたりなペンダントを選んだ。吹雪は喜んでくれるだろうか、少し心配だ。


そんなことを考えながら帰路に就く。しかし、鎮守府に戻った俺に待っていたのは…吹雪が沈んだという報告だった。


司令官「今…なんて言った?」


大和「……駆逐艦吹雪が轟沈、原因は海域の情報が間違っていたからだと思われます。」


司令官「どういうことだ?」


大和「大本営からの情報に間違いがあったらしく、制圧済みではない海域を制圧済みとしてしまったようです。」


司令官「…そうか、下がっていいぞ。」


大和「提督…落ち着いてくださ…


司令官「いいから下がれって言ってんだろ。命令無視は重罪だぞ。」


大和「……失礼しました。」


俺は大和の背を見送る。吹雪が沈んだ?原因は大本営のミス?


こんな簡単に、自分も吹雪も悪くないのに沈んだ?こんなあっけなく?


司令官「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


俺はひたすらに暴れた。一人の執務室で、どうしようもない怒りと悲しみを消そうと。


しかし、どれだけ暴れようとどれだけ叫ぼうとそれは消えることなんてなかった。


そして、大和は彼の声を聴きながら執務室の前で一人、唇を噛み切らんばかりに噛んでいた。













ー提督視点ー


男性「やぁ、また会いましたね。そちらにどうぞ。」


部屋の中に入ってすぐ。立派なイスに座った男性、プラネタリウムであった男が声をかけてくる。


俺は促されるままにソファに腰かける。


提督「随分と強引なお招きに預かり光栄ですよ。」


俺は皮肉を込めて言う。悪いが男には興味は無いんだ。男の娘なら可。


男性「それに関しては申し訳ないと思っているよ。ただ一つだけ心得ていてくれ。リ級頼む。」


男性はそう言って横にいるリ級に声をかける。リ級はワカッタとだけ言い。なにかを運んでくる。


それは大きな檻とその中に閉じ込められている子供だった。


少年「おじちゃん助けて!僕お父さんとお母さんのとこに帰りたい!」


檻のなかで俺に気づいたらしい子供が必死に叫ぶ。


提督「お前…子供になんてことを…」


流石の俺も思わず声が震える。


男性「簡単なことだ。君がなにか不穏な行動を起こせばこの子が死ぬ。わかりやすいだろう?」


提督「あぁ、最高にわかりやすいな。ありがたいご配慮だことで。」


俺は思い切り舌打ちをしながら皮肉を言う。この男の目的がわからない。わかるのは屑だということだけか。


男性「ただ、話すだけでは退屈だし将棋は出来るかい?」


提督「将棋くらいできるさ。」


俺の返答を聞いて男は俺の対面側のソファに座り、将棋盤を広げる。


男性「リ級、その子と一緒に下がってくれ。僕は彼と二人きりで話がしたいんだ。」


リ級「アァ、了解シタ。」


男性の言葉にリ級が檻と共に部屋から退室する。命令をしている辺りどうやらこいつが深海棲艦の提督で間違いないらしい。


男性「さて、君は艦娘についてどう思っている?」


歩兵を進めつつ男性が俺に問う。将棋は特に仕掛けなどがあるわけでは無いらしい。


提督「艦娘は人間にとってのヒーローだ。俺たちを守ってくれる英雄そんなもんだろ。」


俺も歩兵を進めつつ返す。指輪型スタンガンを持ち歩いておくべきだった。


男性「なら、今の人間たちの艦娘への態度は許されるべきものでは無いと思はないか?」


こいつはなにを言っているんだ?まるで艦娘の味方みたいなことを言って。


提督「確かにそれは俺も幾度も思ったさ。それがなんだってんのさ。」


男性「やはり君は素晴らしい。そう思うなら僕と一緒に人間を滅ぼさないか?深海棲艦と共に。」


俺は思わず絶句する。こいつはそのために…言いたくはないが艦娘のために深海棲艦についたってんのか…?


提督「…却下だ。確かに人間は愚かだと思うがそれは理解していないだけであってきちんと伝えていけば状況は変わるはずだ。」


男性「一応言っておくが、勘違いしないでくれよ。僕は艦娘のためになにかをしようなんて気はない。」


男性「ただ、僕は人間という愚かな存在に死という救いを与えたいだけなんだ。深海棲艦たちとね。」


提督「死が救い?何を言ってるんだ?」


俺は疑問に思ったことをそのまま口に出す。死は終わりだ。救いなどないだろうに。


男性「多分それが僕と君の違う所なんだろう。僕は死。すなわち人間という枷から解放されることが救いだと思っているんだ。」


男性「人間は人間である限り悪を心に持ち続ける。ならば魂をその穢れた器から解放しなければいけないとな。」


男性はさも当たり前のようにそう言う。狂ってる、それが僕の感想だ。


提督「残念だが、俺はそう思わない。なんで俺を誘拐したのかはしらないが残念だったな。焼くなり煮るなり好きにしろよ。」


男性「いや、君はきっと理解してくれるさ。だって、君は僕が求めた人間の完成形なんだから。」


提督「俺が…人間の完成形?」


男性「あぁ、君は他人のために身を犠牲に出来る。艦娘と同じ存在だ。更には恐怖に支配されず艦娘に感謝の心を持てる。」


男性「あの会見を見て確信したよ。君はこちら側の人間だ、狂っている。」


いつか龍田さんに言われたことと同じようなことを言われる。狂ってんのはてめぇだっての畜生。


男性「だから僕は君に仲間になることを強制したりはしない。いつまでも待つさ。」


提督「……」


俺は思わず言葉を失う。目の前の男が理解できない。これが恐怖なのだろうか。


唯一わかるのはこの男が危険すぎるということだろうか。


男性「そうだ、せっかく来てもらったんだし面白いことを教えてあげよう。沈んだ艦娘はどうなると思う?」


男は酷く不気味な顔で俺の香車を取り、それを手で弄びながら続ける。


男性「深海棲艦になるのさ。」


そう言って、香車を自分の持ち駒の中に置いた。







ー長門視点ー


陸奥「長門、頼まれてた提督の私物まとめ終わったわよ。」


私が少し考えことをしていると、後ろから陸奥に声をかけられる。


長門「ああ、ありがとう。明日には鎮守府に戻らねばならないからな。」


陸奥「どうしたの?なにか考え事していたみたいだったけれど?」


長門「いや、なに。元帥がわざわざ動くなんて提督はいったい何者なんだろうと思ってな。」


陸奥「そういえば、私彼のこと何も知らなかったわね。」


陸奥が少し悲しそうに言う。


長門「あぁ、私もだ。」


そう、私たちは彼のことを何も知らない。どこから来たのかもどういった経緯で私たちの鎮守府に着任したのかも。


ただ一方的に頼っていただけなのだ。彼の力に。


扶桑「ええ、確かにそのとうりですね。私たちは彼のことをなにも知りません。」


不意に近くにいた扶桑がそう言ってくる。


扶桑「だからこそ、取り返してもっと話さないとですよね?ねぇ、山城?」


山城「わ、わたしはあんな男どうでもいいですけど…こんな急にいなくなられたら、少しもやもやしますね。」


長門「そうだな。すまない扶桑、弱気になっている場合では無かったな。」


扶桑「いえいえ、でもこういう時はお礼を言ってくれた方が嬉しいんですよ?」


長門「そうか、ありがとう扶桑。」


私は扶桑に礼を言いなおし、周囲の艦娘に指示を開始した。










ー提督視点ー


提督「今…何て言った?」


男性「聞こえてなかったわけでは無いだろう?言ったとうりさ。」


沈んだ艦娘が深海棲艦になる…?それはつまり…


男性「そのとうりだ、君たちが戦っているのは過去に誰かが共に戦い人間のために沈んだ艦娘そのものだよ。」


男性が俺の思考を先読みしたように言う。


提督「冗談だろ…?」


男性「事実だ。僕もこれを知った時は衝撃を受けたものさ。」


つまり、俺たちは知らない間に艦娘と戦っていた…?いや、違う。戦っているのは深海棲艦だ。ここだけは間違ってはいけない。


決して、人間のために戦ってくれた艦娘と同じだとは考えてはいけない。


男性「ちなみに逆もある。沈んだ深海棲艦は艦娘になる。海上で彷徨っている艦娘の存在を知っているだろう?」


男性「どうだい?まるで将棋のようだと思はないか?違いがあるとすれば、深海棲艦側には王将がいないということだろうか。」


男はどっかで聞いたことのあるようなセリフを口にする。まるで将棋だなってな。


提督「……つまり、艦娘サイドの王将は人間だと言いたいわけか。」


男性「あぁ、今はそうなっている。しかし、僕はこれが解せない。」


拳を強く握りしめ、怒りを表情に出し男は続ける。


男性「何故、艦娘。将棋でいうなれば飛車などになりうる艦娘が本来歩兵以下の使い捨てになるべき人間を命がけで守る?」


男性「逆だろう。あの強さと美しさを持つ艦娘は人間が身を挺して守るべきだ。」


男性「そんな下等生物が王将の地位に我が物顔でいるどころか兵を愚弄する?ふざけているにも程があるッ」


男が机をたたき、盤上の駒が微妙に動く。


男性「それはずっと昔からだ。人間は常に必要のないものまで犠牲にしてきた。弱肉強食とは本来生きるために必要なものの話だ。」


男性「しかし、人間は生きるだけでは飽き足らず他の生物を犠牲にして自分たちの生活を豊かにしてきた。」


男性「深海棲艦が人間を殺すのを初めて見たとき僕は神による裁きだと思い、歓喜したさ。」


男性「艦娘によってそれは妨害されるようになったがな。ちなみに僕は艦娘は嫌いだが敵だからという理由でのみだ。」


男性「だが人間は違う、醜いうえに汚らわしい生きているだけでも罪に値する。」


男性「それを深海棲艦は救いに来てくれたんだ。死という解放を与えるために。」


男性「最初は僕も殺されるつもりだった。でも、僕は今彼女たちの力になれている。だから僕はこれからも多くの人間に救済を与える。」


男性「だから君にもその協力をしてほしいんだ。どうだろうか?」


この男の言っていることは、筋が通っている。人間が罪深い生物であるのは昔から言われている。


単純に深海棲艦や艦娘が現れるまでは地上最強だったから好き勝手出来ていただけだ。


ならば、人間より強い生物が生まれたのなら好き勝手されても致仕方ない…この男は本当に死ぬことが救いだと思っている。


なら彼にとっての正義は間違いなく深海棲艦サイドなのだ。それが人類の為なのだ。


いや、突き詰めるならば魂。すなわち生物の本質の為だろうか。人間は魂を汚す枷という認識なのだろう


提督「人間を嫌ってるくせに人間に救いを与えるとはずいぶんといい人間なんだな。」


男性「そういうわけでは無いさ。僕は深海棲艦の仕事を手伝うだけ。彼女たちが人間に救いを与えるから僕も与えるだけだ。」


そう言い、彼は銀将を俺の王将の右斜め上に置く。


男性「さて、これで積みだ。中々に面白かったよ。」


提督「そりゃ良かった。ただ、俺はあんたと組むつもりは無い。例えどんな理由があろうとな。」


男性「気が変わることを祈っているさ。君は王将になれる存在だ。できれば深海棲艦の王になってほしいものだよ。」


提督「そこまで買ってもらえるなんてな、あんたは駒に例えるならなんなんだ?金将あたりか?」


男性「僕かい?僕は歩兵で充分だよ。部屋を用意してある、案内しよう。」


そうして、俺は大人しく男についていくのだった。




男性「ここの部屋を自由に使いたまえ。」


男はそう言いながら、一室の扉を開ける。


部屋の中は整理されていて、壁こそボロイ印象を与えるがとても捕虜を監禁する部屋には見えなかった。


少年「おじちゃん!」


部屋に入ってすぐ、先ほどの子供が俺に飛びついてくる。男はまた用が出来れば来ると言って部屋から出て行った。


提督「君は一体どうしてここへ?」


少年「ずっと前にね、海辺で遊んでたら黒い人が急に来て気づいたらここにいたの。」


提督「そっか。でももう大丈夫、おじちゃんがどうにかしてみせるさ。俺は君の味方だからね。」


俺はそう言って少年を抱きしめる。そして、自分を犠牲にしてでもこの子を親元に返すと固く誓ったのだった。









ー元帥視点ー


意識が覚醒する。少し体がだるいが、休んでる暇なんてない。


ここは提督の鎮守府。昨日の深夜に俺と大和だけ先に移動した。艦娘たちは今日中に帰ってくるはずだ。


元帥「妖精さん、提督妖精さんに情報をPCに送るよう言ってもらってもいいかい?」


俺は執務室内にいる妖精さんに提督妖精にテレパシーで伝言をするようにお願いする。


そして、夜中に協力要請を頼んでいた付近の鎮守府からの返信を確認する。流石に深夜に送ったためまだ返信は少ない。


少しして、PCにメッセージが届く。内容は怪しい人物のリストアップ…あいつには頭が下がる。内通者の特定までやってくれるとは思わなかった。


大淀から受け取っていた容疑者リストにも名前が挙がっている人物だ。さて、久々に殺す任務になりそうだ。


いくらやっても人殺しなんかに慣れることはない。毎回吐き気に苛まれる。


俺は服を着替え、執務室を出る。


大和「それじゃ、行きましょうか。」


扉の外で待機していた大和がそんなことを言う。


元帥「あぁ、久々に嫌な任務だよ。」


俺は苦笑しながら彼女に応え、二人で廊下を歩くのだった。




ヒトヒトマルマル。作戦内容『裏切り者の排除』本作戦は極秘任務とし元帥他、関係者以外への他言を禁ず。


俺は大和に拳銃を渡し、自分も一丁持つ。対象がいるのは大本営内部だ。少将クラスが内通者だなんて誰が思うだろうか。


俺はあらかじめ呼びつけていた憲兵隊と合流し、対象がいる部屋の付近まで移動する。


憲兵隊には部屋付近で待機してもらい、俺だけで突入しようとするが大和も同行すると聞かなかったため、二人で突入することにした。


突入までサン、ニー、イチ


元帥「少将、貴様に裏切りの容疑がかかっている。大人しくしてもらおうかッ」


俺と大和はドアから突入し、拳銃を構える。大和にも不穏な動きをしたらすぐに撃てと命じてある。


しかし、少将の行動は予想外のものだった。


少将「辞めてくれ…頼む…息子が、息子が人質にされているんだ…」


少将は両手を上げつつ、懇願するように言う。俺は拳銃を下げずに向けたまま問う。


元帥「人質?それはどういうことだ?」


少将「海岸沿いにいたとき、息子が深海棲艦に連れ去られて…脅されているんだ。」


元帥「大和、ここは憲兵と俺に任せ少将の家族構成と安否の確認を。大淀と協力して行え。」


大和「了解しました。」


大和が退室するのと入れ違いで憲兵隊の隊長が室内に入る。


隊長「元帥殿、彼の身柄はどういたしますか?捕縛して監視することも可能ですが。」


元帥「そう急ぐな、今の発言の真意が気になる。警戒を怠らず話を聞くとしよう。」


隊長「承知いたしました。念のため、隊員に爆発物などの確認だけさせておきます。」


元帥「あぁ、助かる。いっつも手を貸してくれてありがとう。」


隊長「それは言わない約束だろ、何年の付き合いだと思ってんだよ。学生服好きのロリコンさんよ。」


元帥「違うって言ってんだろ。ただ思い出話は後だ、今は一刻を争うからな。」


隊長「わーってるよ。ただ、肩の力は抜いとけ、張り切りすぎだよ泣き虫君。」


俺は旧友との会話を打ち切り、少将のほうに向きなおる。


思えばただの一兵卒から元帥と憲兵隊の隊長とはお互い出世したもんだ。


元帥「それで、少将細かく話を聞かせてもらおうか。下手な行動は死を招くだけだと思えよ。」


俺はそう言い、少将に拳銃を露骨に構えなおす。


少将「話します!話しますがどうか、今は監禁しないでください!通信を怠ったら息子が息子が…」


元帥「それは話を聞いてからだ。大人しく喋らないのなら牢獄に招待してやっても構わないんだぞ?」


少将「…最初は、一通のメールでした…」


少将の語った内容をまとめるとこうだ。


息子が行方不明になリ探している最中、差出人不明のメッセージがPCに届いたらしい。


内容は息子を預かっている。殺されたくなければこちらの必要としている情報を差し出せ。とあったらしい。


少将は見つからない息子を案じて、メールに従いその情報を提供したらしい。


皮肉なものだ。俺にはその気持ちがよくわかる。息子の為なら規則の一個や千個破ってやんのが親の務めだろ。何て言ったのはどこの誰だっけか。


少将の話が終わると同時に俺のスマホが鳴る。俺は隊長に少し場を任せ、その電話に出る。


大和「電話で申し訳ありません。少将の家族構成は父母共に存命で妻子持ちですが、子供が行方不明になっているようです。」


大和「大淀さんが奥様に電話で直接確認しているので間違いわないかと。」


元帥「わかった、ありがとう。大淀にもお礼を言っておいてくれ。」


大和「承知しました。失礼します。」


そこまでで電話が切れる。少将の言っていることは事実ということか。


俺は深く深呼吸をし、思考を落ち着け考える。どうするべきだ?今の最善策は?


そして俺は少将に向きなおり口を開く。


元帥「少将、罪を今はすべて許す。今日も相手に情報を正確に与えてやれ。だが、それも今日までだ。」


俺は拳を握り締め、そう言った。










ー提督視点ー


流石にこの状況では快眠できな…出来ました。だって横でめっちゃ幸せそうに寝てる子がおるんだもん。


一日たてばそれなりに状況が整理できるので俺も落ち着いている。


とにかく今考えるべきは、この子の救出だ。幸せそうに寝やがって、ほっぺ触ってみよう。おおう柔らかい。


恐らく、あの男は俺をなにか深海棲艦側に必要な存在と考えているようだ。


つまり俺は殺される確率は低いのだ。しかしこの子は違う、俺の行動でこの子が死ぬなんてのは絶対に回避しなければ。


少年「ん、ふぁ~」


そんなことを考えていると少年が起きる。かわいらしい動作だことだ。


少年「あ、おじさんおはよう!」


提督「んー、俺まだおじさんって年じゃないからお兄さんがいいかな?おはよう。」


少年「わかったお兄さん!」


少年は元気に答える。お兄さんか、言うのには慣れているが、呼ばれるのは違和感がある。出来れば幼女に呼んでいただきたい。


俺が少年を撫でてやっていると、軽巡棲姫が部屋にやってくる。


軽巡棲姫「お邪魔してしまってごめんなさい。朝食のお時間ですよ。」


俺は少年を後ろに庇うようにその後を着いていった。


食堂で出された食事を食べていると、フードをかぶった深海棲艦が声をかけてくる。


レ級「へー、あんたが提督のご執心な相手なの?女だったら面白かったのにな~」


提督「それはご期待にこたえられなくて申し訳ない。」


アカン、この子肌の露出が多い。落ち着けマイ下半身!こいつは敵だ!てか貧乳やん。大丈夫だったわ。


レ級「で、あんたはなんでそんなに提督に気に入られてるん?」


どうやら、提督は俺について深海棲艦には何も伝えて無いらしい。


提督「知らないさ。ホモなんじゃねえの?俺は女の子大好きだけど。」


レ級「そりゃ無いさ、だって提督とヲ級がラブラブだからな~」


レ級の台詞に俺は思わず食事する手が止まる。ラブラブとはなんだ?


提督「お前たちにも恋愛感情があるのか?」


レ級「んー私は好きな人いないからわかんないかなー…でも、感情はあるしヲ級も幸せそうだしあんじゃね?」


感情が…ある?こいつは今そう言ったのか?それじゃまるで…いや、考えちゃだめだ。


深海棲艦は敵なのだから。


提督「俺も一つ質問していいか?」


レ級「いいよー、提督にも答えろって言われてるし。」


提督「お前たちは何故人間を殺す?」


レ級「んー、正直わかんないかなー…殺すべきだから殺す的な?」


殺すべきだから殺す?どういうことだ?


リ級「提督と同じ質問をするんだな。人間。」


その会話を聞いていたのか、もう一人の深海棲艦が話に割り込んでくる。


リ級「簡単に言うならば、食事や睡眠と同じだ。人間と違って私たちはそれらを必要としないが、代わりに人を殺したいと言う欲求に縛られる。」


提督「じゃあ、俺を殺せばいいじゃないか。空腹時にステーキがあるようなものじゃないのか?」


リ級「一人や二人程度では米粒一つと変わらんさ。私たちだってそこまで餓えてはいない。」


少年「さっきから何の話をしているの?」


その時、横で食事を終えたらしき少年がそんなことを聞いてくる。


提督「何でもないよ。ちょっと難しい話をしていたのさ。俺もすぐに食べちゃうね?」


少年「うん!お兄ちゃんが食べ終わるの待ってるね!」


そして、俺は食事に集中するのだった。










ー翔鶴視点ー


ビーチから鎮守府に戻るバス内は、静寂に包まれていた。無理もない、提督が攫われているのだから。


そして現在、我らが鎮守府に全員が帰還した。元帥からの置手紙にはいつでも出撃できるように心の準備をしておけと書かれている。


大ホールに集まり指示を待つ艦娘の表情は皆それぞれだ。


ぶつけどころの無い怒りを持つもの。絶望というにふさわしい表情をあらわにするもの。自分の無力さに顔が強張るもの。決意に満ちた表情のもの。


そんな集団がぶつかり合わないのは目的が同じだから。その一点に限るだろう。


もしここに彼がいたら、この嫌な雰囲気を一掃してくれるのだろうか。いない人に縋るのは惨めなものだ。


翔鶴「瑞鶴、きっと提督は無事よ。だからそんな思いつめないで?」


私は横で酷く歪な表情をしている瑞鶴に声をかける。瑞鶴の表情が酷く怒りに満ちたものになっている。


瑞鶴「うん、そうじゃないと駄目だよ。じゃないと私…耐えきれない。」


その耐えきれないというのは加賀さんへの怒りだろうか。それとも彼を守れなかった全員に対しての怒りなのだろうか。


翔鶴「鹿島さん、少しお願いがあるんですがいいですか?」


私は少し瑞鶴から離れ、付近にいた鹿島さんに小声で声をかける。


鹿島「どうしました?私のできることであればお力になりますよ。」


鹿島さんは暗い表情のままだが、笑顔を見せようとしてくれる。


翔鶴「すいません、あまり良い内容では無いのですが瑞鶴を見張っていて欲しいんです。私一人では少し心配で…」


妹が仲間に危害を加えることなんて本当は疑ったりしたくは無いのだが、なにかあってからでは遅いのだ。


鹿島さんは少し瑞鶴のほうを見ていたが、わかりました。と承諾してくれた。


その時、長門さんが持っている提督のスマホに電話がかかってくる。長門さんはその電話に出る。


長門「はい。はい。承知しました。」


長門さんはそう言うと、スマホをこちらに向ける。するとスマホから元帥の声が再生される。


元帥「ええ、諸君。聞こえているだろうか。これから作戦内容を伝える。心して聞いてくれ。」


作戦の内容はこうだ。明日深夜、海軍内の内通者に誤情報を流してもらい警戒網を弱めさせる。


その後、提督が監禁されていると思われる島を提督の鎮守府・元帥の鎮守府・他有志で集まった鎮守府の精鋭で包囲し一気に攻め落とす。


詳細は本日中に書類にて通達するとされ、そこで元帥の声は途切れた。


長門「聞いたとうりだ。作戦は明日の深夜全員出撃するものだと思っておけ。今日は明日に備え体を休めるように、以上だ。」


長門さんの台詞で皆が解散していく。私と瑞鶴も部屋に戻ることにした。




部屋に戻るまで、瑞鶴は一言も喋らなかった。今、部屋の中でもだが。


ただひたすらに、窓から海のほうを眺めている。瑞鶴の中に溢れているのは悲しみなのかそれとも怒りなのだろうか。


瑞鶴「ねぇ、翔鶴姉。」


翔鶴「え!?どうしたの?瑞鶴。」


不意に話しかけられ、少し間抜けな声を出してしまった。


瑞鶴「提督さんに私、酷いことしてばっかだった。」


瑞鶴は弱々しく語りだす。私はどうやら勘違いしていたようだと気づいた。


瑞鶴「いっつも謝って反省するのに、他の娘と笑ってるのを見ると苦しくなってつい嫌がらせしちゃって。」


瑞鶴「でも、提督さんは笑って許してくれちゃうの。怒りもしないし呆れもしない。」


瑞鶴「なのに私は…その優しさに甘えてるだけで…提督さんになにも…なにも返せて無いの…」


そう言いながら瑞鶴は泣いていた。瑞鶴は加賀さんに対して怒っていたのではない。自分が許せなかったのだ。


私は泣いている瑞鶴をそっと抱きしめる。私だって彼がいなくなって悲しいというのに姉というのは大変なものだ。


とはいえ、それも悪くないと思えるのは私が世話焼きだからだろうか。


翔鶴「大丈夫、提督はきっと生きてる。だから取り返して皆でお礼を言って、いっぱい返してあげましょ?」


そう言って私は泣き叫ぶ瑞鶴を強く、強く抱きしめるのであった。











ー提督視点ー


食事を終えた俺は、少年に頼まれ建物付近を散歩している。


深海棲艦が言うには、どうせ逃げられないのだから好きに動いて構わない。と言われた。


俺だって気合い入れればこれくらい泳いで…無理です☆


アニメで良くあるイカダを作ったりとかしてみるか…なんて考えていると視界に男が見えた。


提督「なぁ、少しこの辺で遊んでてくれないか?お兄さん少し行かなくちゃいけないとこがあってさ。」


少年「きちんと帰ってきてくれる?」


提督「あぁ、約束だ。その代わりにあんまここから離れちゃだめだぞ?」


少年「うんわかった!お兄さんのこと待ってるね!」


少年の台詞を聞いて俺は男の後をつける。全くお兄さんなんて呼び方は、呼び慣れてはいるが呼ばれるのはやはり違和感の塊だ。


しばらくして、男が足を止める。ボートの場所にでも行くのかと思っていたがどうやらそういうわけでは無いらしい。


その場で男と合流したのは先程食堂で俺が話した深海棲艦だった。


リ級「ふっ、ちゃんと来るとはな。いい加減ヲ級なんかより私を選んだらどうだ?」


男性「脅迫しているのはお前だろ。だから来ているだけだ。」


リ級「そんなこと言って、こちらは正直じゃないか。」


俺がそこで目にしたものはあまり記すべきではないかもしれない。すくなくともその場で行われていた行為は一方的で暴力的な愛しかなかった。


わかりやすくいうなれば、動物的な愛し方なんてのが相応しいだろうか。


胸糞悪くなった俺は、静かにその場を後にした。




少年「お兄さん元気無さそうだけどどうしたの?」


提督「ん?いや、何でもないんだ。大丈夫だよ。」


俺は適当に誤魔化し、少年と砂で遊ぶ。子供はこういう時敏感だから困る。何か伝わるものがあるのだろうか。


そうしていると、見覚えのあるような深海棲艦が声をかけてきた。


鶴棲姫「人間さん、少し話をしない?」


俺は少年にまたちょっと行ってくるね、とだけ言い少し離れたところに腰かけた。少年は頬を膨らませていたので、両手で空気を抜いてやった。


鶴棲姫「見たんでしょ?どう思う?」


深海棲艦はそう聞いてくる。主語が無いぞ主語が。まぁ、わかるんですけど。


提督「あの行為のことか?」


鶴棲姫「うん、私もつい最近知った…いや、見たんだけどどうすればいいかわかんなくてさ。」


鶴棲姫「あんたなら特に気にすることもないし話してみようと思って。」


提督「話を逸らすようで悪いが、お前達は俺を警戒しないんだな。」


鶴棲姫「人間の一人なんてその気になればすぐに殺せるしね、それにあんたは深海棲艦の敵らしいけど私の知り合いが誰か殺されたわけじゃないし。」


提督「そいつは物騒だな。でも、随分と仲間意識が低いんだな。」


鶴棲姫「仲間意識というか、私たちは個々で人間を殺しているだけで同じ目的を持ってるから組んだりしているだけってのが普通なんだ。」


鶴棲姫「こうやって、深海棲艦同士で集まってるのなんて本当にレアなんだよ。」


提督「そんなもんなのか。」


俺は目の前のナイフを取り出しそうな艦娘を見て言う。ん?ナイフ…?


そうか、こいつ瑞鶴に似てるんだ。ならもしかしてこいつも寂しがり屋だったりするんだろうか。


提督「すまない、話を逸らして。それでさっきの行為のことだったな。」


鶴棲姫「うん。」


提督「確か、あの男は他に好きな奴がいるんだろう?」


鶴棲姫「そう、ヲ級ちゃんと付き合ってる。だけど言うのもさ…」


やっぱりか、あの光景は愛し合うとは程遠いものだった。言い方が悪いが、搾取…といったところか。


提督「なら止めるべきなんじゃないか?」


鶴棲姫「私もそう思ったんだけど…それが原因でここが無くなったりしたらって思うと怖くてさ。一人は嫌だから…」


ビンゴ、やっぱりこの子も寂しがり屋らしい。とはいえ、この問題はどうしようもない。


解決させるのは容易だが、確実に誰かが傷つき誰かが苦しむことになる。誰になるかは神のみぞ知るってとこか。味噌汁食いてえな。


提督「力になれなくて申し訳ないが、提督がヲ級…?だっけちゃんを好きでい続けると信じるしかないだろうな。」


提督「第三者の介入は時に状況を悪化させかねないからな。」


まぁ、俺が言えたたちではないが。だいたい土足で突っ込むからね俺は。止まるんじゃねぇぞ…


鶴棲姫「あんた変な人だね、敵の相談にまじめに乗るなんて。」


瑞鶴に似た深海棲艦は去り際に笑いながら言う。お前らがあまりにも敵に見えないからだろって言いたくなるが、言う必要も無いだろう。


しかし、俺の中で深海棲艦が敵という常識が歪み始めているのは確かだった。


去り際の笑顔に少し見惚れた何て言うのは、裏切りになるのだろうか。








ー元帥視点ー


冷たい銃声が響く。危なかった、てっきり内通者が一人だと思い込んでいた。


元帥「本当に胸糞悪い仕事だな。」


隊長「元帥殿が自らやる必要も無いだろうに。」


横で憲兵隊長が両手をあげてお手上げのポーズをしながら言う。片手には拳銃が握られているが。


元帥「人の上に立つものは自分から動かないと。これが上に立つものが絶対に覚えておくべき心得だよ。」


先程、もう一人の内通者候補を問いただしたところ狂ったようなことを言いながら銃を向けてきたのでその前に撃った。


しかし、これで作戦は白紙だ。相手に俺たちが深海棲艦側の提督がいると知られていると理解したはずだ。


なら、奇襲は成り立たない。作戦は無意味だ、正面からの先頭になると考えていたほうが賢明だろう。


一つ心配なことがあるが、こればっかりは祈るしかない。いや、まだ利用価値はあるはずだ。そう簡単に殺しはしないだろう。


隊長「ったく俺の仕事とんないでくれよな。とりあえず退室してその酷い顔どうにかしてこい。このアホが。」


俺の顔を見て隊長がそんなことを言う。俺はそんなひどい顔をしているのか。


元帥「はは、カッコつかねえもんだな。お言葉に甘えて顔を洗ってくるとするよ。」


そう言って俺は赤色に染まった部屋を後にする。部屋の外には大和がいた。


大和「なんでそうやって自ら危険なところに突っ込んでいくんですか。」


元帥「簡単な理由さ、もう手の届かない場所で大切な人を失いたくないからだよ。」


大和「…あなたの心配をする人のことも考えてくださいよ。」


俺は大和が最後にボソッと言った台詞を聞こえないふりをした。




トイレで顔を洗いながら昔を思い出す。あの頃は人を殺したってなんにも思わなかったってんのに情けない話だ。


いや、今のほうが正常なのだろうか。吹雪が沈んでから一年間俺は殺しも不正もやった。


そして異例の若さで元帥の対場を手に入れたのだ。ただ、あの頃のままだったら俺は間違いなく暗殺されていただろう。


俺はあいつに返しきれないほどの恩がある。だから絶対に殺させはしないと再度決意を固めるのであった。


そして、部屋に血だらけで残るPCの画面には送信完了とだけ表示されていた。









ー提督視点ー


日が暮れて、俺は男に呼び出され少年と共に執務室に来ていた。部屋には俺たちを含め五人。


先程、男と…愛し合っていた深海棲艦とヲ級、男がいる。


男はヲ級とくっついている。罪悪感は無いのだろうか、吐き気がする。


そんなことを考えていると不意に男が口を開いた。


男性「さて、先程海軍内にいる僕と志を共にする人物が殺された。」


提督「へぇ、それで?俺を殺すか?」


男性「惜しいが違う、殺すのはこっちだ。」


そう言って男は机から取り出した拳銃を少年に向ける。


少年は顔を不安に歪めている、不味い、完全に迂闊だった。


提督「やめろッ、殺すなら俺を殺せばいいだろうッ。」


俺は自分でも初めて聞くような剣幕で叫びつつ、少年と男の間に割り込む。


しかし、すぐに後方から聞いたことの無いような気持ちの悪い音が聞こえる。


それは、少年の心臓が抉られる音だった。深海棲艦の手によって。


少年「へ…?」


少年がなにが起きたかわからないといった風なままその場に倒れる。


提督「あ…が…」


意味のない声が口から出る。感情的になってはいけない、それでは相手の思うつぼだ。


だが、感情と思考とは別なのである。俺は叫びながら男に拳を掲げる、しかし、横から現れた黒い影によって俺の意識は途切れた。




目が覚めると、俺は朝と同じベッドにいた。朝日が眩しいどれくらい寝ていたのだろうか。


横には見覚えの無い深海棲艦がいた。


戦艦棲姫「気が付きましたか、気分はどうですか?」


提督「最悪だよ、お前らのせいでな。」


戦艦棲姫「どうか、怒らないでください。あれはリ級の独断なのです。提督は本当に殺す気などなかったんですよ。」


提督「敵の言い分を信じろと?そこまでお人よしに見えるかよ俺は。」


口ではこういうが、実は信じている。理由は意識の途切れる前男の表情が酷く驚いたような混乱したものだったからだ。


最初からあんなことを企てていたのなら、そんな表情をする必要が無い。


戦艦棲姫「見えるなんて言ったら怒るんでしょうね。いずれにせよ気を落ち着けてください。」


提督「落ち着いてますよ。ただ今俺のあんたらへ向ける感情が怒りしかないだけでな。」


戦艦棲姫「それでも構いません。恐らくこの後ここは戦場になります。その間、この部屋から動かないで欲しいと提督から伝言を任されました。」


戦艦棲姫「これは伝えても無駄かもしれませんが、君にあのような光景を見せるつもりは無かったんだ。どうか許して欲しいとも。」


俺は布団をかぶってそれ以上会話の意志が無いことを表する。深海棲艦は不幸だわなんていいながら、部屋を後にした。


そして俺は一人、守れなかった自分の無力さに涙を流すのだった。声を殺して、ただ一人で。









ー元帥視点ー


翌日早朝、俺は提督の鎮守府に来ていた。


敵に情報が流れたことで作戦は大幅に変更。ヒトマルマルマルに例の島への侵攻を開始する手はずになっている。


俺は集まっている艦娘たちに声をかける。提督が真面目に演習をしていたため皆練度は少しづつとはいえ確実に上がっている。


それでも、まだ練度が心もとない娘たちは後方支援に回した。ちなみに協力してくれる俺と縁が深い別の鎮守府のメンバーも集まっている。


元帥「まもなく作戦開始時刻だ。本作戦の優先目標は提督の奪還。次に深海棲艦側の提督と呼ばれる存在の捕縛だ。」


元帥「各自臨機応変に対応してほしい。歴戦の君たちなら心配はないと思うがくれぐれも気を緩めないように頼む。」


元帥「それでは作戦を開始する。全艦隊抜錨せよ!」


そして、後に語り継がれる作戦が開始されるのだった。




作戦開始からしばらくして島の方位が完了した。予想どうり島の付近には深海棲艦が控えている。


俺は海域付近まで艦で来ている。後ろには女提督がいる。


彼女は、本来鎮守府で待機してもらうはずだったのだがこの目でしっかりと見たいんです彼女たちの戦いをなんて言われれば止めるわけにもいかない。


とりあえずそれは置いといて、戦況の分析をしよう。


北側の深海棲艦の数が異様に少ない。罠か?敵の戦力がわからない以上慎重に行動せねばならない。


それに対して南側の防御が固めてある。ここは精鋭に南側に向かってもらい、東西を他の艦娘に抑えてもらうとしよう。


戦力はこちらが確実に上だ。リスクを負ってまで北を責める必要は無いだろう。


そうして俺は指示を出すのであった。










ー瑞鶴視点ー


泣いている暇なんてない。もし彼が生きている可能性が1%でも残っているのなら私は信じる。


私たちの任務は東側の深海棲艦の掃討だ。本当はすぐにでも彼を助けに島に行きたいがそうするわけにはいかない。


勝手な行動は逆に彼を危険な目に合わせるかもしれないのだ。


その時不意に、今までに見たことのない深海棲艦が視界に移る。


即座に今までとは迫力の違う攻撃が襲い来る。かろうじて私は避けきったが、翔鶴姉と長門さんが被弾したようだ。


瑞鶴「大丈夫?」