2015-11-01 17:27:49 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い、本当に長い


前書き

25回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

それではこの番組は

提督「どうでもいいけどさ…金剛にラーメン作らせたら、天下◯品みたいになりそうよね?」
如月「せーのっ♪」
睦月「全部溶け込んでるしっ」
卯月「全部溶け込んでるぴょんっ」
菊月「全部溶け込んでるからなっ」
文月「全部溶け込んでるもんねっ」
望月「全部溶け込んでるんだろ?」
金剛「…な、泣いて良いですか…」
皐月「あははは…」
弥生「でも、私はアレ、結構好き…」
三日月「意外、かも?」
長月「…フォローにはなってないがな」

球磨「クゥ~マ~、クマ、クマ♪」
木曾「なんだあれは…」
大井「ただの鳴き声じゃないのよ…」
北上「あんまり騒ぐと、追加ボイスの無い娘の僻みに聞こえるよー」
瑞鳳(…黙っとこう)(←追加ボイスあった娘
多摩「じゅるり…」
夕張「食べ物じゃないからね…念の為、ほんとうに念の為、ね?」

大鳳「今日も鎮守府は平和ね。そろそろ、はじめましょうか」

もろもろのメンバーでお送りします


↑前「提督とお月見」

↑後「提督とハロウィン」



提督と海外艦



ー鎮守府近海・海上ー


夜。風もなく、波も止まったように凪いでいる

まるで眠っているような静かな海だった

そんな中に一つの小さな白い影

暗い海の上に浮かぶそれは、一見すれば水面に映り込んだ月の様にも見えた

だが、とうのお月様は別の場所に映っており、その影が月ではないのを証明している


仄かな月明かりが、朧気ながらも浮かぶ影を照らしている

良く良く見ればそれは人影だった

濃紺の衣装は暗い海の中に溶け込み、辛うじて海面に出ているのは顔は少女の物だった

白い肌をした顔。水面に広がる長い銀髪が、月明かり反射してキラキラと星の輝きのようにも見える


瞳は閉じられたまま、身じろぎ一つもない

力の抜けた体はただただ波間に浮かぶのみ

凪いでいる今だからこそ浮かんではいるものの、天候が変われば今にも沈んでしまいそうだった


「…何かと思えば」


ふと聞こえてくる声。何時の間にか少女の隣には誰かが立っていた

いや、つま先一つを海面に付けるだけのその姿勢は、立っているというよりも浮いているといった方が正しいだろう

白い軍服、それを隠すように羽織られた紺色の着物が風もないのにふわふわと揺れている

中性的な顔立ちに浮かんだ気怠げな表情。そして、夜の色を貼り付けたような黒い髪が腰の辺りまで無造作に伸ばされている

軍服を着て無ければ誰が軍人だと思うだろうか。いや、着ていたとしてもそう見るのに疑念が付きまとう格好だった


「…生きてはいるか。おーい」


海面に浮かんだままに膝を折り、少女のほっぺを突いてみる

あまり肉付きが良いようには見えなかったが、返ってくる感触は不健康という程のものでもなさそうだ


少女「…ん」


ゆっくりと少女の目が開く、そこから覗いたのはアイスブルーの瞳だった

ぼんやりとした瞳が次第に焦点を結び、目の前で自分の頬を突いてる人と目が合った


少女「あなたは…だぁれ?」

提督「私は提督。ここは何処?も必要かい?」

少女「ん」


こくりと、小さく頷く少女


提督「海の上」

少女「知ってる…何処の海?」

提督「日本の…」

少女「それも知ってる…」


間を引き延ばすような答えを、即座に断ち切りその先をと促す少女だった


提督「うちの鎮守府の近くだよ…」


観念したように息を一つ吐くと、正直に現在地を伝える提督だった


少女「そう…よか、った…」


何が良かったのか、そんな事を聞き返そうとしたその前に

ふっと、少女の体から完全に力が抜けゆっくりと海の底へと向かっていく


提督「…」


さて、どうしたものか。今ならまだ手が届く距離だが…

良かったというなら、少女の目的はここに来たことで達成されたのか

それならこのまま捨て置いても良い気もする、暗に私が助けるのを期待してないなら、だけど

そもそも助ける義務どころか義理もないし…そりゃ、可愛い娘を助けるのに理由は要らんだろうってのは分かるが

同時にこういうのは厄介事もセットで舞い込むものだと相場が決まってもいる

とはいえ、か…。こんな所まで足を運んで、手ぶらで帰るのもなんだろうか


などと考えながらも、気まぐれに子犬を拾うような気安さで手を伸ばすと、沈み行く少女の体を引き上げ、抱き上げる

見た目通りというべきか、小柄な少女の体は相当に軽く感じられる

白い肌も相まってみれば、それはいっそ人形、あるいはそういうものにもみえてくる


提督「ん?」


ふと、胸元に違和感を感じて覗き込んでみれば

少女の小さな手が提督の白い軍服を弱々しく掴んでいた

そんな儚げな所作の上に、どっしりとした濃紺のボディースーツが何ともアンバランスに映る

こんなもの付けてなけりゃ、さぞや可愛い手をしているのだろうなと思わなくもない


提督「やっぱ、ババ引いたかなぁ」


可愛い娘には面倒ごとが付き物だと、改めて思う

しかしとりあえずは後だ。軽いとはいえ少女1人抱え続けているのは流石に面倒くさい


提督「帰ろ」


そうつぶやいた途端に、少女を抱えたままの提督がその場から掻き消える

風もないのに流されるように、波もないのに飲まれるように

最後に一つ、つま先を付けていた場所から波紋が広がった

残されたのは白い月

そして、風もなければ、波もない、まるで眠っているような静かな海だけだった




ふと、肌に感じる温度が冷たいものから温かいものへと変わっていることに気づく

体はまだ動かない、目を開けることさえも無理そうだ

そもそも自分がいま起きてるかどうかさえ怪しい物だった

夢を見ているような、そんな薄ぼんやりとした意識の中、今日の出来事が走馬灯の様に過ぎていく


移動中に敵に襲われたのは不運だったと思う

なんとか助かったのは幸運だったと思う

けれど、1人で暗い海の上を漂ってるのは、やっぱり不運だなって思った

それでも、こうやってまだ誰かの事を感じられる今は、やっぱり幸運だなって思う

お礼を言わないと。けど、まだ体が上手く動かないから、だからそう、目が覚めたらちゃんと言おう


少女(…Danke、ありがとう…あってる、かな)


そうして、少女は微睡みの中に落ちていく



ー鎮守府・執務室ー


薄暗い部屋の中、カーテンから差し込む光が線を引き、僅かな光源となっている

ソファの上には少女が1人。窓から差し込む光に瞼をつつかれて、眩しそうにしながらもゆっくりと目を開けていく


少女「…ん、あ…あれ?」


目が覚めてみれば、知らない天井

それに、いつもと違う枕と布団…

そこでようやく思い出す、昨日の出来事を。多分これはその続きなんだろう

そこで一つ思い至る、ここはあの人の、鎮守府の一室なのかなって


部屋の様子を確認しようと辺りを見回す

執務室なのだろうか、大きめの机、その奥に小さな本棚

そして、簡素な冷蔵庫の上には簡単なお茶セットが乗っかている

ぱっと目につく物はそれだけ、質素な部屋だなって感想を抱くのには困らない室内

ただ、その割には、自分が寝ていたソファだけは ふかふかで何となく高そうだなって感じがした


少女「あ…」


そんな部屋の隅に黒い塊を見つける

なんだろうと目を凝らしてみれば、それは自分の軍服だった

上着もインナーもグローブもブーツも全部が一緒くたになって置かれている

濡れたまま捨ておいたのだろう、そんな状態では三日三晩経とうが乾くわけもなく

滲み出した水分が染みとなって床板に広がっていた


干せばいいのに…なんて思わなくも無かったけれど

助けてもらった手前、これ以上の贅沢は言えないかなって思う

そんな少女の視線の先には寝ている提督の姿

いつもそうしているのだろうか、それが当たり前のように反対側のソファに転がっている


少女「Admiral?」


恐る恐る声をかけてみる

昨晩、提督と名乗っていたし、間違ってはないとおもうが

初対面の相手、それに軍人に見えない格好が、もしかしたら違うんじゃないかと思わせて、少女の声を小さくさせていた

とはいえ、呼んだ所で返事はなく、少女の杞憂は無駄に終わるのだけれど


仕方なくソファから体を起こす少女

寝ている提督の前まで移動すると、その体を遠慮がちにゆすり始めた


少女「ねぇ、おきて?Guten Morgen…おはようって?」


しかし、押せども引けども変化はない

薄暗い部屋の中、カーテンから差し込む光はだんだんと強くなってきている

時計を探してみれば、飛び出してきた鳩とちょうど目が合った

どう考えても寝坊の様な時間だった


少女「Admiral…えっと、提督さんっ、おきてって」


最初に比べればかなり大きな声で、そして今度は強めに体を揺すってみても起きる気配はまるでなし


少女「ぁぅ…」


少女の頭の中に嫌な想像が浮かぶ

昨晩、何時だったかまではわからないけれど、かなり遅い時間だったはず

それに船も艤装も何も無しで、海の上に浮いてたし

もしかしたら、自分を助けるために無理をさせてしまったのではないだろうかと

そのせいで寝坊なんてさせてしまったら、ほんとうに申し訳がたたない

だんだんと、少女の顔が白くなる。元から白かった肌から目に見えて血の気が引いていった


少女「Admiral!Admiral!起きてって、ねぇ、ねぇっ…!」


時計の鳩よりも大きな声で、荒れてる海の様に体を揺すってみてもやっぱり起きない


少女「ぅぅぅ…」


提督を起こさないといけないなんて、必要もない使命感と過ぎていく時間に焦らされて

だんだんと少女の瞳に涙が溜まってくる


少女「Verzeihung…ごめんなさいっ…ぇぃっ」


謝った所で聞こえてはないだろうけれど、それでも一言断りを入れて

少女が寝ている提督の体に飛び乗った




司令官を起こす所から今日の一日が始まるはずだった

最初に異変に気づいたのは、執務室のドアの前

いつもなら司令官と望月が寝てるだろう執務室から、何やら物音が聞こえていた

まあ、異変と言ってもそれくらいだ

珍しく早めに起きた二人がまた何か悪戯でも考えてるだろうと、そのくらいの感想しか持たなかったんだ

そうして、扉は開かれる

皐月が固まるのに、時間なんて要らなかった


皐月「なっ…」


多分書類とか手に持ってたら、見事に取り落としていただろう

手ぶらだったのが幸いした、本当に

だって、おかしいじゃんか

知らない娘が執務室にいるんだもの、百歩譲ってそれは良いとしたって

なんで裸なのか


固まった皐月と、振り返った少女の目が合う

白い肌に銀の髪、そしてアイスブルーの瞳が目を引く少女

窓から差し込む朝日に照らされた少女の体は、どこか人形の様な美しさを持っていた

全裸じゃないだけマシと自分に言い聞かせたいところだが

灰色の下着が最低限度の箇所を覆っているものの

綺麗な白い素肌を惜しげも無く晒したその格好は、余計な想像を膨らませるには十分だった


更に問題だったのが

そんなあられもない格好の少女が、司令官の上に跨っているなんて絵面だった


少女「あ、よかった。Admiral…全然、起きなくて…」

皐月「…あ、うん」


一瞬、人形が喋ったなんて妄想が頭をよぎるがそんな訳がないと早急に振り払う

アトミラール…司令官が普通こんな時間に起きてるわけもないのはいつもの事だし、それはいい

1にも2にも聞かなければいけないことは山ほどあるが

先ずは一つ…


皐月「ごめん…服、着てくれない?」


姉妹達の裸なら見慣れてはいる

だが、知らない娘の、人形みたいに綺麗な女の子の体を見ているのはどうにも目のやり場に困る


少女「…あ」


そこでようやっと気づいたのだろう、自分の素肌が全力で晒されている事実に

すっと少女の頬に朱が差した、白い肌だとそれが本当によく分かる

隠すように、自分の体を抱く少女

羞恥と抗議の混じった視線で皐月を見据えた後、一言


少女「…えっち」

皐月「ボクに言わないでよっ!」


完璧に濡れ衣だった



ー望月達の部屋ー



三日月が一通りの身支度を整えた後、望月がようやっと目を覚ました

これでも早いほうだと言うのだから、なんともはや


2段ベッドの上の階で体を起こす望月

髪はボサボサ、寝間着ははだけて用をなしておらず

眼の焦点は合わずにボーっとしたままだった

これで よだれでも垂らしていたら、ダラしないのフルコースってものだ


三日月「おはよ、望月」

望月「おー…はぁ…寝よぅ」


ベッドの上で望月の体が揺らいだと思えば、直ぐに倒れた


三日月「こーらーっ!いい加減おきなさーいっ!」

望月「んだよー、お艦かっ」

三日月「こんなだらしない娘に育てたおぼえはありませんー」


本当に。執務室で寝ている時とは偉い違いだった

望月でも人の視線…ちがうかな、司令官の視線は気になるものなのか

なんて考えながらも、ベッドに上った三日月が望月を叩き起こした


望月「あれ…着替え、どこだっけ?」


着替えの途中、寝間着を脱いだ望月がキョロキョロと辺りを見回している


三日月「こっちでしょ…まったく」


呆れ混じりにそう言うと、タンスの一つを開けて替えの制服を取り出す三日月だった


望月「ああ、そっちか。最近、ここで寝てないから分かんなくなるなぁ」

三日月「もぅ、あんまり司令官に迷惑かけちゃダメなんだから…」


ぶつくさ言いながらも、どこかそわそわしている三日月

そう、いつからだったか望月が執務室に寝泊まりするようになってから

こうして、朝一番に望月と会話をするというのが、ちょっと嬉しかった

シスコン…なのかなぁ、なんて少し思わなくもないけれど

さすがに、長月と菊月達ほどじゃないだろうからまだ大丈夫、きっと多分


そんな三日月をよそに制服に袖を通していく望月

上着を頭から被り、袖から両手だして、服を下に引き下ろすと、すぽっと頭が飛び出した


三日月「ほら、髪もちゃんと直さないと…」

望月「んぅ~」


望月を椅子に座らせると、後ろに回り髪を梳き始める三日月

茶色の長い髪に、そっと櫛を通すと優しく髪を撫でていく


三日月「それで、今日はどうして?」


簡潔な問いだった

正確に言うなら「今日はどうして、こっちで寝てるの?」になるけれど

姉妹なら、望月になら、それで十分通じるのが分かっているからこその問いだった

そう、昨夜三日月が布団にはいった時には、いつも通り1人だったのに

夜遅くに望月が上のベッドにもぞもぞと潜り込んでいた

夜中にそれを問う気も起こらなくて、その時はそのままにしていたけれど


望月「いやぁ、昨日の夜お客さんが来てさぁ」

三日月「お客さん?」

望月「ああ。今頃きっと皐月は面白い顔してるぜ?」


にっしししーっと、楽しそうに笑う望月

たとえ姉妹であろうとも

事情を知らない三日月には、その笑みの意味するところが分からずに、頭に疑問符が浮かんでいた


「司令官のばかーっ!!さっさとおきろーっ!!」


突然、こっちにまで聞こえてくるほどの大声

聞き間違いようもないくらい、皐月の声だった


望月「あははははははっ♪」

三日月「ああ…うん」


声を上げて笑い出す望月に、なんとなーく事情を察した三日月だった



ー執務室ー


既に開け放たれた窓からは、心地良い秋の風がゆっくりと流れてくる

だというのに、そんな爽やかな秋風とは対照的に、室内は一足早くに冬空みたいに冷えきっていた


皐月「…(むっすー」


むくれていた、誰がどうみたってご機嫌斜めだった

いつもの様に机に腰掛けてはいるものの、書類は無造作に机の上に広がったまま

時折、コツコツと持て余した感情が指を動かし、机の上を叩いている


提督「U-511ねぇ…」

ゆー「そう、ゆーとお呼びください」


提督の隣には、U-511と名乗った少女が、ちょこんと寄り添うように座っている

最初に合った時のように、濃紺のボディースーツに身を包んだ格好だった


文字通り皐月に叩き起こされた後、一応の説明はしては見た

この娘は?と問われれば、拾ったと返して、叩かれる、理不尽だ

服はっ!と問われれば、脱がした(望月が)と返して、叩かれる、不条理だ

そのうち、見ていられなくなったのか、ゆーが口を挟み、代わりに状況説明を始める


移動中に敵に襲われて、漂流してた事

沈みそうだった時に助けて貰ったこと

最後に、Admiralに優しく抱きしめてもらいました、なんて事も付け加える

その瞬間、皐月に睨まれるくらいには余計な一言だった

その後、皐月を宥めて何のかんのと誤解を解きしたものの

机の上でむくれる皐月の出来上がりだった、一体何が不満なのか

まあ、ジェラシックオーラ剥き出しじゃ何もかにも合ったものじゃないか

…面白いからほっとこう


こんこんこんっ


皐月「…どうぞ」


ノックの音に反応して、ぶっきら棒に応じる皐月


大鳳「提督。起きてるかしら?」


所在確認をすっ飛ばして、起床確認からされるあたり大概な状況だった

執務室に入ってきた大鳳

その目に、明らかにおかしい物が2つ映る

一つはむくれている皐月、そしてもうひとつは知らない娘


両者に視線を這わせる大鳳

知らない娘の方は物静かに提督の隣に座っているだけ

皐月の方はといえば、明後日の方を向いてはいるが

時折、提督と その娘を横目で見つめていた


大鳳「…」


思考すること瞬きひとつ分くらい

ヤキモチね、結論は早かった

喧嘩というわけでもないし、今はおいておいても良いかしら、と

自分の要件を口にした


大鳳「提督。大本営から連絡があったのだけれど…もしかして、その娘、U-511かしら?」

ゆー「はい、ゆーです」

大鳳「そう、よかった…」


とりあえずの問題は解決したと、ほっと胸をなで下ろす大鳳だった


提督「あのちんちくりんが何だって?」


面倒臭そうに先を促す提督

そんな提督に「それ、本人の前で言っちゃダメよ?」と、一応の釘は刺しておく


大鳳「潜水艦がこの付近で消息を立ったから探してこい、だそうよ」


色々言われはしたけれど、細かいことを言ってもしょうが無いので

大分噛み砕いて要件を伝える大鳳


提督「で、それがこの娘?」

大鳳「そうね、無事でよかったわ」

ゆー「ごめいわく、おかけしましたって…ごめんなさい」


折り目正しく、頭をさげる ゆーだった


提督「…ゆー、ちょっと」

ゆー「?」


ゆーの肩を突っつく提督

そして、振り返った所にそっと耳打ちをした…かんかんこれこれ


ゆー「それ、言えばいいの?」

提督「うん」

ゆー「うん、わかった」


素直に頷く ゆーが、大鳳に向き直る


大鳳「なぁに?」


ゆーに視線を合わせて優しく微笑みかける大鳳


ゆー「ママ…だっこ…」

大鳳「…」


大鳳に向かって、両手を広げる ゆー

笑顔のまま固まる大鳳

その後の展開に期待してニヤついてる提督

その後ろで、あまりの展開に吹き出す皐月


大鳳「うん」


大鳳が一つ頷くと、ゆーの隣へ腰を下ろす

そして、広がった両手をとり、ぎゅっと抱きしめると、優しく頭を無で始める

流石に、親子というほど見た目は離れて見えないけれど

ゆーを撫で続ける大鳳は、母親のそれのような慈愛に満ち満ちていた


ゆー「あ…ん」


すっと目を細めるゆー

すっかり安心しきったのか、体から力を抜いて大鳳に身を任せていた


提督「これでもダメか…」


ゆーとは別の意味で、体から力を抜く提督

今までさんざ悪戯してきたが、大鳳が驚いたり、照れたりしてるのを見たことがない

今度こそいけるとおもったけれど…結果はご覧のとおり


大鳳「…ねぇ、ゆー?」

ゆー「んー?」


惚けている ゆーの耳元で囁く大鳳…かんかんこれこれっと


ゆー「それ、言えばいいの?」

大鳳「ええ」

ゆー「うん、わかった」


素直に頷くゆーが、提督の方を向いた


提督「なに?」

ゆー「パパ…だっこ…」

提督「…」


提督に向かって、両手を広げるゆー

固まる提督

だいたいの展開を予想してニコニコと笑顔の大鳳

その後ろで、あまりの展開に吹き出す皐月


提督「大鳳…」


震える声で大鳳を呼ぶ提督

その頬は赤く染まり、ゆーの事を直視出来ずに俯いていた

クリティカルヒットだった


大鳳「なぁに、提督?」


あくまで余裕の大鳳さん


提督「覚えてろ…」

大鳳「ふふ、期待してるわね」


提督から、恨みがましい声が漏れるものの

余裕の笑みを浮かべたままの大鳳だった


ゆー「あれ…間違ってた?」


提督が抱きしめてくれないことに、不安になったのか

ゆーが大鳳の方へ振り返る


大鳳「ううん、間違ってないわ」


そんな ゆーを再び抱きしめる大鳳


ゆー「Admiralは…ゆーのこと嫌いじゃない?」

大鳳「さあ、どうかしらね?パパ♪」


いつも提督がしているように、いつも卯月がしているように

悪戯っ子な笑みを浮かべる大鳳さんだった


皐月「…(むすーむすー」


そんな光景を1人、横目で眺めている皐月

その表情は弥生見たいに無表情に固定されていた

いや、弥生だって着任当初に比べれば大分柔らかくなってる分、弥生以上に固い表情だった

必死でなんでも無い風を装ってはいるのは

今、自分のなかでザワザワしているものから、目を逸らしていたいからだと自覚はしていた


司令官が知らない娘と仲良くしてるのが気に入らない

大鳳さんだって悪ノリ始めるし

だいたい、なんで普通に司令官の横に座ってるのさ、あの娘は…

司令官のバカ…ボクらの時はあんなに逃げまわってたのにさ…


なんて言い出すとキリが無かった

理性では、司令官の人見知りがマシになったと思えば良い事だと思うのに

感情がそれを否定する

おまけに勢いで叩いてしまった手前、話しかけづらい

素直に謝れば良いだろうと思うけど、だってしょうがないじゃないって、意固地になってる自分がいる

ぐるぐると、皐月の中でもやもやした感情が、ざわざわと広がっていく


大鳳(…ちょっとやり過ぎたかしら)


入ってきた時よりも、ジェラシックオーラが2割増しくらいになっている皐月を見ながらそんな事を思う

それと同時に少し、羨ましいとも

皐月達は私のことを大人だと言ってくれるけども

実際の所は、皆に、提督に、格好良く見られたいだけなのだ

もし、私があんな風に拗ねてみせたり、ワガママを言ってみたら提督はどうするだろうか

怒るかな?困るのかな?それとも、笑って許してくれるかな?

なんて、思うこともあるけれど…今はとりあえず、と

内心の感情に区切りを付けて、皐月に助け舟をだす大鳳だった


ー母港ー


如月「それで、司令官…いつまでこうしているのかしら?」


母港。その片隅で、提督が如月を背中から抱きしめていた

より正確に言うのなら、抱きしめてるというよりは、抱きついているが正しい

そう、子供が怖いものから身を隠すようなそんな感じ


提督「二人の愛が永遠に変わるまで?」

如月「ぅ…」


如月の耳元で囁かれる歯の浮くような台詞

それにつられて、如月の頬に赤みが差し込む

そんなもの冗談だと分かってはいるし、いつもの様にからかわれているだけなのも分かってはいるけれど

その言葉を無視できないくらいには、この人の事を想っているのもまた事実だった


如月「そう…それは、魅力的な提案ね」


高鳴りだした鼓動を何とか抑えこみ、作り出した平静を使って受け流そうと試みる


提督「よし、じゃあこのまま執務室に帰っていい?」

如月「だーめっ」

提督「ちっ」

如月「まったくもぅ…」


小さく息を吐く如月

歯の浮くような台詞をあっさり口にする割には、言動が丸っきり子供なんだから

これでは色気も何もあったものじゃない…その御蔭で、ギリギリ普通に対応してられるのは幸か不幸か


そもそもの問題が、現在港のほうで再開を喜び合ってる娘達だった

うち一人は、昨日提督が拾ってきた娘、U-511、愛称ゆーちゃん、それだけなら別に良かったのだけど

お迎えに来た娘達が、まったく知らない娘、それだけでも距離を取りたくなるのに

異国の人っぽい、と言うより ゆーと同郷なら確実にそうだろうってのがさらに拍車をかけていた


睦月「はいっ提督っ!睦月が行ってくるから褒めてっ!」


出番とばかりに手を上げて、睦月が提督の前に躍り出る


提督「あーじゃあ、それでも良いか…はい、これ」

睦月「おおっこれはっ!」


提督の手から、睦月の頭の上へと何かが放られる

それが空中で広がると、ひらひらと揺れながら睦月の頭を通り肩へと引っかかる

それは一本の帯、たすきの様で、そこには「ていとくだいり」と、わざわざ平仮名で銘打たれていた


睦月「ふっふっふっ、ついに、ついに睦月の時代がっ」


我が世の春が来たとばかりに喝采を上げる睦月


提督「んな、大げさな」

睦月「大げさではないっ、睦月が提督ってことは司令官殿っ!命令だしっ、睦月を褒めるが良いぞっ!」


当初の目的を完全に放棄した睦月

腰に手を当て無い胸を精一杯張って、頭を撫でろと褒めそやせと要求しだした


提督「…ぼっしゅー」

睦月「ああっ」


提督が睦月の肩から「ていとくだいり」のたすきを引っこ抜いた


睦月「かえしてーかーえーしーてー」


ひらひらと目の前で揺れる たすきに手を伸ばす睦月

時折飛び跳ねたりしてる様は、釣られた魚の様にもみえた


金剛「Hey!ていとっくー!こーんな隅っこでなーに騒いでるデース!」

提督「ん…金剛か…あっ」

睦月「とったー!」


提督が金剛に気を取られた隙に、睦月が たすきの奪取に成功した


提督「まぁいいか…それにちょうど良い」

金剛「?」


金剛に視線を移した提督の頬がニヤリと歪んだ




如月「…ねぇ、司令官」

提督「まぁまぁ、きっと面白いよ?」


金剛の背中を見送る二人

その横では「ていとくだいり」のたすきを装備した睦月がはしゃいでるが

そこは、頭を撫でくりまわして黙らせておくとする


金剛には、「提督英語とか分かんないから頼んだっ」とは伝えてある

「期待してネ!」なんて飛び出したは良いが、あの娘達は多分ほぼ確実にドイツ娘

遠回しに英語で話しかけて来てねとは言ったが、さてどうなるこの一手


などと考えている内に、金剛がゆー達が集っている一角に到着する

威勢よく話しかけたは良いが、だんだんと雲行きが怪しくなってきたのが見て取れた

ゆーだって日本語喋ってたんだし、金剛が英語を使っても日本語で返してくるって懸念はあったが

どうやら冗談は通じる相手らしいな


「てーいーてーくー!」

やがて、ぱたぱたと慌てて金剛が引き返してくる


提督「おう、おかえり金剛。どうだった?」

金剛「ど、ドイツ語だったっ!」

提督「くふっ…ふふふふふふ…」


だめだった

作戦失敗の報を聞いた途端に吹き出す提督

お腹を抱えようと腕に力が入ると、自然とその中に収まっていた如月が抱きしめられた


如月「ぅぅぅ…」


ちょっと息苦しい

しかしそれよりも、提督に力強く抱きしめられているという事実を甘受する事にする

これが不慮の事故で、たとえ提督にそんな気がなくても


そんな風に如月がぼた餅を頬張っているとは対照的に、がっくりと肩を落とす金剛さん


睦月「大丈夫だよっ金剛さんっ!」

金剛「む、むつき…」


落ち込む金剛の肩に手を伸ばす睦月が、まっすぐに金剛を見つめる


睦月「睦月もドイツ語わっかんないからっ!」

金剛「お、おぅ…それは…」


フォローのつもりなのでしょうか?

そんな疑問も、キラキラとした笑顔で「一緒だねっ!」と言われてしまえば

飲み込まざるを得なかった




ビス「ドイツの誇るビスマルク級超弩級戦艦のネームシップ、それが私よ

   ドイツらしい重厚かつ美しいデザインでしょう?いいのよ、もっと褒めても」


何のかんのと騒いでいると、集まってきた皆の前でビスマルクと名乗った少女がドーンっと胸を張っていた

それ自体が金色に輝いているかのような、長いブロンドの髪

キリッとした目に灯るのは氷のように透き通った青い瞳

程よく締まった体に、スラリと伸びる手足は、高めの身長も手伝って、どこかのモデルのようにも見える

そんな美人さんに、グレーを基調とした軍服の様な衣装と、戦艦特有の重厚な艤装

どこかアンバランスなその組み合わせは、装備の無骨さも相まって彼女の美しさを際立たせていた


文月「おおー、かっこいいかっこいい」

菊月「見ろ長月、戦艦なのに魚雷が付いてるぞ」

長月「わかったから、お前ら少し落ち着け…」


文月の一言を皮切りに、あっという間に駆逐艦に囲まれるビスマルク

あちらこちらから手が伸びて、ペタペタと艤装に触っては

すごーい、だの、かっこいー、だのと褒めそやしていく


ビス「…」


正直困っていた

賞賛されるのは悪い気はしないが、彼女の頭にあったのは社交辞令的な大人の会話である

褒められた所で、こちらも相手をほめ返す、そんなやり取りを想定していたのだが

実際は、小さな娘に囲まれているお姉さん

キラキラと好奇心で輝く瞳、掛けられる言葉には裏表なんてなく、ただ純粋な好意のみ


ビス「…」


ちらっと、一緒に来ていた娘

重巡、プリンツ・オイゲンに視線を送る、単に助けて欲しかった

子供の扱いなんて軍じゃ習わなかったし

何より格好をつけた手前、弱音を吐くのは躊躇われた




卯月「あどみら、る…ひゃっはー?」

睦月「ヒャッハー♪」

弥生「…それじゃ、危ない人」

プリン「ひゃっはーじゃないよー、ヒッパーだよ-」


卯月達の前で腰を降ろし、視線を合わせているのはプリンツ・オイゲン

金色の髪をツインテールに纏め、ビスマルクと同じ青い瞳が目を引く少女

たれ気味の目は優しげな印象を与え、同じ青でありながらも水面の様に柔らかだった

また服装もドイツ艦娘の常なのかグレーを基調とした軍服のようなもの

背負った艤装は、ビスマルクのそれをコンパクトにまとめた様なものだが

重巡と言うだけ合って、軽巡や駆逐艦のそれよりも強力そうなのが見て取れる


弥生「ごめんなさい、悪気はないと、思うから…」


問題なのは、本当に聞き間違えたのか、面白がってるだけなのかの判断が付かない所だけど


プリン「いいよー、怒ってないからねー」

弥生「あ、うん…」


優しく弥生の頭を撫でるオイゲン

照れくささと、ニコニコと微笑む彼女が眩しくて俯く弥生


睦月「あーっ、弥生だけずるい-、睦月も睦月もー」

卯月「ちょっと待つぴょんっ、うーちゃんが先だぴょん」

睦月「妹よ、年功序列という言葉を知らんのか」

卯月「しらんぴょん」


ドヤッと難しい言葉を投げかける睦月に対して

真顔で知らんと叩き落とす卯月


「…」

睦月「むーつーきーもーっ」

卯月「うーちゃんもーっ」


暫しのにらみ合いの後、再開されたのは餌をねだるひな鳥のような争いだった


プリン「はいはーい。順番にねー、お姉さんは逃げないからねー」


我先にとじゃれてくる睦月達を相手にも余裕のプリンちゃんだった




ビス「…」


そんなプリン達の様子を盗み見ていたビスマルク

そう、頭を撫でれば良いのかしら…

意外と簡単そうで、内心胸をなでおろす

そして、よしっと気合を入れなおすと、試しにと文月の方へ手を伸ばした


文月「およ?えへー♪」


ぽふっと、頭に置かれた手に一瞬不思議そうな顔をするものの、直ぐに笑顔で返す文月

たどたどしい手つきで文月の頭をなでるビスマルク

そのせいか、撫でる度に揺れる文月の頭

それに合わせて揺れる文月のポニーテールが、なんだか犬の尻尾の様に見えてくる


ビス「…かわいい…あ」


思わず口にしてしまった言葉

それを慌てて飲み込もうとした所で、流れでた言葉は風にのって文月の耳に届く


文月「ありがとうねー。ビスマルクさんも綺麗だよー」

ビス「と、とうぜんよ」


褒めて褒め返される。それは最初に想定していた会話の流れだったけど

花が咲いたように笑う少女の前では、そんな事を考えていた自分が恥ずかしく思えてくる


ビス「そ、そうだわ…あなたも」


話題を逸らそうと、今度は菊月の方へ手を伸ばす


菊月「む…子供扱いはやめて欲しい」

ビス「え…ああ、そうなの、ごめんな、さい」


無遠慮に菊月の頭に手を置くビスマルク

たがしかし、帰ってきた反応は文月とは逆のものだった

ビスマルクの指が菊月の頭に触れると同時に、するりと逃げられてしまった

彼女の指に残ったのは、流れるように通り抜けていった菊月の銀髪の感触だけ

逃げられはしたものの、まだ手の届く範囲にはいるし

未だにこっちを興味深そうに見ている姿はなんかネコみたいだった


子供ってわからないわ…

そんな感想を抱き、内心頭を抱えるビスマルクだった


「はぁ…」

溜息が2つ重る

すると、どちらからでもなく二人の視線が交わった


ビス「苦労してそうね…」

長月「わかるか…」

ビス「少しは…」

長月「すまないな…」

ビス「良いのよ…」

長月「ありがとう…」

ビス「ええ…」


淡々と交わされる会話

その単調な流れに、すこし落ち着きを取り戻したビスマルクだった




レーベ「あははは。ここの艦娘達は皆元気だね」


銀色の髪に白い肌と青い瞳

優しげな表情は中性的に纏められ、短めの銀髪も手伝ってか、男の子にも見えなくはない

全体的に白っぽい印象のせいか何処か儚さを纏う容姿

紺色のセーラー服がその白い肌をより印象づけていた


マックス「すこし、度が過ぎるような気がしないでもないけれど」


すっと、目を細めるマックス

赤茶けた髪と同じ色をした瞳

姉のレーベとは対照的に、キツそうな感じのする顔立ち

とはいえ、機嫌が悪いとか怒っているとか言うよりも

表情が硬いだけに思えるのは、きっと弥生のお陰だろう


そんな二人がビスマルクとプリンツ・オイゲンの二人を遠巻きに眺めていると


如月「悪いわね…みんなはしゃいじゃってて」

レーベ「いいさ。それよりも、お礼がまだだったね。ユーを助けてくれてありがとう」


そう言って、頭をさげるレーベとマックス


如月「良いのよ。司令官が拾ってきただけだから、ね?」

提督「ん、まぁ…ね」


さっきから自分を掴んで離そうとしない提督を、小突いてみせる如月


マックス「やっぱり、その方が提督なのね」

ゆー「ですって」


そっと提督の方に身を寄せる ゆー、その反応が答えを後押していた


如月「ふふふ。そうは見えないわよねー」

ゆー「ねー」


如月が ゆーに微笑みかけると、無表情ながらも如月の真似をして返すゆーだった


マックス「そうね、艦娘の後ろに隠れてる提督というのは流石に…」

レーベ「うわわわわっ。マックス、失礼だって」


慌てて、マックスの口を塞ぎに掛かるレーベだったが、時既に遅し


提督「…君だって、スカート履き忘れてここまでくるのはどーかとおもうがな」


独り言の様な提督のつぶやき

しかしそれでも、マックスの耳に届くのには十分な大きさだった


マックス「ふーん、へー、そう。制服は艤装の一部見たいなものだって、常識だと思っていたけれど

      貴方、バカなの?それともデリカシーが足りないのかしら?」


元からキツかった目がさらに釣り上がり、もはや睨むように提督方を見据えるマックス


提督「勝手に常識だと決めつけて、相手の判断を下すなんて、そっちのほうがバカなんじゃないのか?」

マックス「まさか、バカにバカと言われる日が来るなんてね」


呆れ果てたとばかりに首を横にふるマックス


マックス「そうやって、人の事をバカにする貴方も相当バカじゃないの?」

提督「お、自分のバカは認めるのか?」

マックス「ええ、貴方からしたらそうなんでしょうね。けど、貴方はよりマシなつもりよ」

提督「人を踏み台にして自分の評価を上げるなんて、デリカシーが足りないんじゃないか」

マックス「…」


あっはははーと笑う提督に対して、閉口したマックス

その肩がカタカタと震えだす


レーベ(…あ、怒ってる。マックスが怒るなんて、珍しいかな)


そうは思うけれど、これ以上は流石にまずい気もしてきた


如月「あらあら、もう仲良くなったのね」

レーベ「え?」


そんな言葉と共にニコニコと嬉しそうにしている如月

いつのまにやら、提督の腕の中から逃げ出してレーベの隣に立っていた


如月「だって、司令官がお喋りになってるんだもの。あの娘だってそうなんじゃないの?」

レーベ「それは…」


確かにいつも以上に口数は多くなってるように見えるけど


パシンッ!

そして、ついにというか案の定というか

乾いた音が響いてみれば、マックスの平手の跡が提督の頬にくっきりついていた

そしてそのまま、ぷいっと頬を膨らませたマックスが立ち去っていく


如月「さて、私たちはフォローフォロー。レーベちゃんはマックスちゃんをお願いね」

レーベ「あ、うんっ」


日常茶飯事なのだろか

とても手慣れた様子で動き出す如月に背中を押されて、レーベも慌てて動き出した


提督「痛いわ」

ゆー「とんでけーとんでけー…あってる?」

提督「あってるあってる」


提督の物理的に赤くなった頬を、ゆーの小さな手がペタペタと押し付けられる

健気なその仕草はある種の感動を覚えるほど


如月「ほんと、バカなんだから」


提督の隣に立つと、如月がその脇腹を肘で小突く


提督「ついね…怒らせたかな、本気で?」

如月「平気だとは思うけれど…」

提督「そう、きさらが そう言うならそうなんだろうな」


その一方で


マックス「ど、どうしよう…レーベ、私、手を上げて…」


そんなつもりは無かったのに、物の弾みというか、その場の勢いでやらかしてしまった

ゆーを助けてくれた人なのに、他所の提督なのに、というか他国の…

先程まで赤く膨れていた頬はしぼみきり、白い肌は完全に青ざめていた


レーベ「あははは…だいじょうぶ、だいじょうぶ」

マックス「でもっ、国際問題になってしまったら、私どうやってお詫びを…」


しまいには目尻に涙まで溢れだす始末


レーベ「その時は僕も一緒に謝りに行くからさ」

マックス「まちなさい、これは私の問題で、レーベにまで迷惑をかけるわけには…ああ、今から謝りに、でも…」


でもしかしだ、引っ叩いた直後に謝りにもどるなんて、そんなのあんまりにも…

国際問題なんて大げさな恐怖と、恩人への感謝、それに先程までの怒りとが

マックスの中でくるくる回っては入れ替わっていく

傍から見たらその百面相は愉快なことになっていた


レーベ「…なるほど」


そこで1人納得するレーベ

如月が仲良くなったと言っていた意味が何となく分かった気がする

喧嘩するほど仲がいい、日本ではそんな言葉が合ったはずだと



ー工廠ー


「ふぉぉぉぉぉっ!」

工廠、それだけ聞けば鉄と油が似合いそうなその場所で声が上がる

それは歓声であり喝采だった

作業台と思しき広く大きな机にはずらっと、装備妖精さんが並んでいる

それも、どれも見たこと無い妖精ばかり


夕張「対空機銃、ロケット砲、電探、魚雷、偵察機、艦爆、大中小の主砲群、ここは天国かっ!」

プリン「あはは…喜んでもらえて、うれしいよ…うん」


どれをとっても、一級品の装備に夕張の目がキラキラと輝き出す

喜んでもらえたのは嬉しいが、正直ちょっと引いちゃうプリンちゃんだった


夕張「試し撃ちしなきゃっ(使命感」


必要もない使命感に駆られて、装備を物色し始める夕張さん


菊月「…では私は、この…ぶ、べ…WG42で」


Wurfgerat 42(←ヴェーゲー42

ドイツ語なので読めなくても勘弁してあげて下さい


卯月「うーちゃん対空機銃とっぴっ♪」


迷うことなく対空機銃(2cm 四連装FlaK 38)に手を伸ばす卯月

もう一つFlaK M42もあるにはあったのだが

「4連装のほうが強そうぴょんっ」というのが主な理由だったりする


卯月「ずーいーほーっ、一緒に遊ぶぴょんっ」


そして、そのまま瑞鳳のもとへ駆け寄ると

キラキラと上目遣いでおねだりを始める


瑞鳳「やだ」


そっぽを向いて一蹴された。即答だった


卯月「ぶーっ、瑞鳳のケチ-、はやく艦載機飛ばすぴょーんっ。ずいほー、ずいほー」


瑞鳳の袴を掴み、ダダをこね始める卯月


瑞鳳「いーやーだっ、あんたの遊びにいちいち付き合ってられませんー」


駄々をこねる卯月と、意固地になってる瑞鳳

傍からみればどっちもどっちな構図ではある


卯月「はぁ…七面鳥かと思ったらとんだチキン野郎だったぴょん」

瑞鳳「…」


盛大な溜息をついた後、今度は瑞鳳を煽りだす卯月

押してもダメなら引いてみろ、中々に煽り慣れていた

それを聞いた途端、瑞鳳のこめかみがヒク付きだした

怒ったら負け、理屈では分かっているが

七面鳥だのチキンだのと言われて黙ってられる空母がどれほどいるかという


卯月「艦載機を飛ばさない空母なんて飾り物に劣るぴょんっ!」


ピシッと手に入れたばかりの対空気銃を瑞鳳に突きつける卯月

だがそこまで、そこで卯月の動きが固まった

その足元には穴が空いていた

今だ煙を吐き出しているあたり、今しがた穿たれたものに違いはないだろう


瑞鳳「艦載機を飛ばさない空母が何だって?」


ニッコリと笑う瑞鳳

展開された艤装には15・5cm3連装砲が搭載され

その砲口からは、熱気と硝煙とを吐き出していた


卯月「ぴょーん…]


足元の穴と、瑞鳳に搭載された3連装砲

それらを繋ぐように卯月の視線が泳ぐ

いくら卯月の頭でも、状況を理解するのにそう時間は要らなかった


卯月「瑞鳳のひきょうものーっ!」


捨て台詞を吐き出すと、脱兎のごとく逃げ出す卯月


瑞鳳「何処へ行こうと言うのかしら?」


笑顔を貼り付けたままの瑞鳳が、軽い足取りで卯月を追い掛けていった




木曾「なーにやってんだかなぁ…」


呆れ顔で二人を見送る木曾さん

毎度の事とはいえ、よく飽きないものだと感心する

とはいえ、卯月がガチで逃げ出したのはちょっと新鮮だったか


菊月「木曾…いいか?」

木曾「ん?」


外套を引っ張られ、視線を向けてみれば菊月の姿が目に入る

まあ、この状況だ。言いたいことはだいたい予想はつく


木曾「標的艦ならやらねーぞ?人前で馬鹿騒ぎするもんじゃねーよって」


悪戯っ子を窘めるように、木曾が菊月のおでこを突っつく


菊月「むぅ…」


図星とおでこを突かれて、菊月が不満そうに頬を膨らませた


菊月「ふん…七面鳥かと思ったらとんだチキン野郎だなっ」


なにか悩む素振りを見せた菊月

口を開いてみれば、どうしてその選択になったのか、ついさっき聞いた台詞だった


木曾「あのな…そんな台詞は、空母の連中に言えっての」


空母じゃなかろうが、チキン野郎なんて言われれば腹が立たなくもないが

それ以上に気が抜けた


菊月「だめか…夕張、木曾がケチだ」

木曾「てめぇは…」


不満気だった表情を素に戻すと、夕張の方を振り返り木曾を指差す

こっちの方がよっぽど腹の立つ言動だった


夕張「ふふっ…ダメよ菊月。ホントの事言っちゃ可哀想でしょう?」

菊月「そうか、それはすまなかった」


素直に謝る菊月だが

このタイミングでそんなこと言われても、余計にイラつくだけというもの


木曾「お前ら…」


木曾の怒りが、錨の様に徐々に徐々に巻き上げられていく


夕張「そ・れ・に…ごにょごにょ」

菊月「ふむ…わかった」


菊月になにやら入れ知恵をする夕張さん

それに一つ頷き、菊月が木曾へと向き直る


菊月「祝、今年度罰ゲーム最多勝」

夕張「♪」


木曾を指さし、言われるままに言葉を紡ぐ


木曾「ふっ、ふふ…ほぅ、面白い冗談じゃねーか」


木曾の錨が巻き上げられた、抜錨である

別に木曾が弱いって訳じゃない、勝率の話をすれば最下位ということもないが

なにぶん、分母が違う。何かにつけて球磨に突っかかっては返り討ちにあってる代償ってだけ


木曾「面に出やがれ-っ!」

菊月「ははっ、木曾が釣れたぞっ」

夕張「さ、色々試してみないとねっ♪」


艤装を展開した木曾さんから、蜘蛛の子散らすように逃げ出す二人


「瑞鳳っ、遊んでないで艦載機上げろっ」

「卯月っ、対空戦闘用意っ、菊月は…それ,対地用…なんだけど?」

「当たれば痛いだろう?」

「ったく、結局こうなるんだからっ」

「いやだいやだといってもからだはしょうじきぴょん」

「…ぜったい泣かしてやるんだから…」




試製FaT仕様九五式酸素魚雷改

命中率向上のために蛇行しながら進む謎の装置Fatとかいうものを酸素魚雷にくっつけたものらしい


大井「あら、魚雷もあるのね」

北上「おぅ、これは…酸素魚雷になんかくっついてるねぇ」


全発射管をこの魚雷に取り替えたらと考えると、ちょっと面白いか?


多摩「ちょっと待つにゃ…。北上、まさかコイツをバラ撒く気じゃ?」

北上「え?」


多摩に指摘されると、それの何が行けないの?なんて顔をする北上様


多摩「え、じゃ無いにゃ…」


考えても見て欲しい

重雷装艦の20だの40だのって魚雷発射管が一斉にこんなもの発射したら

あたり一面グネグネと蛇行する魚雷だらけで気持ち悪いのも程がある


大井「まぁ、そうね。撃ち逃げならともかく。艦隊決戦中は同士討ちの危険もあるし…」

北上「ああ、それもそうねぇ…ざーんねん。かくなる上は魚雷発射管を増設するしかっ」

大井「…あ、あの、これ以上何処に増設しようと?」

多摩「艦首にでもつければいいにゃ」

北上「艦首…なるほど、流石はお姉ちゃん」

大井「貴女達は…何処を見ていっているのかしら?」


ぎゅっと自分の胸を両手で隠して、一歩下がる大井さん

艦娘の艦首と呼べる場所なんて、頭の天辺か、艤装の先っちょか、考えられるほど多くはないけど


北上「大井っち、おっぱい魚雷ってどう思う?」

大井「要りませんそんなものっ!」

北上「1度でいいからさぁ」


珍しく北上の意見を全否定する大井さんに、ヌルヌルと擦り寄っていく北上様


多摩「一度というか、一度キリだけどにゃ」

大井「一度も二度もありますかっ!」

北上「いやまって、大和さんの徹甲弾見たいに、おっぱいの上から装備すればっ」

多摩「にゃるほど…巨乳にPADにネタにもなる…大井、目立つチャンスにゃっ」


きらーんと、4つの瞳が同時に大井を見つめる


大井「やりたいなら自分のに付けなさいなっ」

多摩「多摩がこれ以上ネタ増やしても あざといだけ…ネコキャラだけで十分」

北上「…分かっててやってたのね、多摩っちは」


姉の猫かぶりが手動だったという現実に直面にした北上様

長女といい、うちの球磨型は何処にむかっているのか、そろそろ心配になってきた


大井「とーにーかーくっ、やりませんからねっ!」


ピシャっと話を断ち切ると、踵を返して逃げ出した

多分このままこの場にいれば、なし崩し的にやらされるの明白だった

おっぱい魚雷など、そんな恥ずかしいこと…しばらくは勝負事も控えないと

罰ゲームとかいってやらされたらたまったものじゃない


多摩「逃げたか…北上、裏から回れ」

北上「ほーいっ」


大井とは反対方向へと駆け出す北上様

それを確認すると、多摩が大井の後を追って走りだす


「げっ、こっちきたっ!」

「逃さないよ、大井っち」

「北上さんまでっ!いーやーぁぁぁぁ」




プリン「あれ、この装備は…」


過程はどうあれ、何のかんのと皆が外へ飛び出していく中

ふと、プリンの目に見慣れない妖精さんが映る


球磨「ああ、それか…重巡なら行けるかもしれんな、使って見るクマ?」

プリン「いいの?」

球磨「クマ」

プリン「やった♪それじゃあ、いっくよー、艤装展開っ!」


球磨が頷き返したのを確認すると

すぐさま妖精さんに手を伸ばし、艤装を展開させる

手のひらサイズの妖精さんから光が溢れだすと

その姿が形を変え、それは現出する


ごぉんっ!!


最初に聞こえたのはそんな音

コンクリートの床に、鉄の筒でも叩きつけたようなそんな音だった

そして、鈍い音が響くなかに、小さく悲鳴が混じる


プリン「きゃっ!?」

球磨「な~に、やってるクマ?」


前かがみになっているプリンちゃん

その手には自身の身長と同じくらいはあろうかという程の巨大な鉄の棒

そのあまりの重量に、持ってると言うよりは引きづられてるという感じだった


プリン「な、なにってこれ…おもっ」

球磨「何って、巡洋艦用主砲、私製46cm単装砲だクマ」


必死に持ち上げようとしているプリンの横で

涼しい顔をしている球磨が、その名を告げる


プリン「よ、よんじゅうろくって…沈んじゃうよっ!」

球磨「クマ。まあ、作ったは良いがオモチャみたいなものクマ」


砲塔なんて用意できるわけもないので、砲架にして無理やり乗っけてるだけだし

取り回しは悪いわ、弾は少ないわで、ろくな物じゃない

ただまあ、手段としては無いよりはマシかという程度、少なくとも陸上攻撃とか、動かない的になら


球磨「腕の力だけで持とうとするからそうなる…こういうのはっ!」

プリン「ひゃわっ!?」


球磨が床に擦っていた46cm単装砲の先っぽを蹴り上げると

プリンが支えていた真ん中の部分を軸にして跳ね上がる

そのまま自分の所に倒れこんでくる単装砲を片手で受け止めると

更に下の方を蹴り上げ、片手を添えて、足を開き、気合を入れて


球磨「ふんっ!」

プリン「おー」


プリンよりは一回りは小柄なその体で

自分の身長よりデカイであろうその主砲をがっしり構える球磨

その迫力に、プリンが素直に賞賛の拍手を送っていた


球磨「ざっとこんなもんクマ。体全部使えば持てないこともない…海に出れば動けもする」

プリン「でも…動けるだけだよね?」

球磨「だからオモチャだと言ってるクマ」

プリン「なるほど…」


発想の段階で要らない装備なのはわかっていただろうに

それでもやってしまうあたり、技術屋というのは海を超えても同じなのだなと

広い世界の中で、狭い世界を見つけたプリンちゃんだった


「fat魚雷はっしゃだよーん」

「うわ…なにあれ」

「荒ぶってるな…」

「気持ち悪いぴょん…」

「しゃーっ!バラ撒くにゃっていうにっ!」(回避

「うわっ、あぶなっ」(回避

「は?魚雷…」(どかーん

「言わんこっちゃない…」


そんな感想を抱いている中

外の様子がだんだんと騒がしくなっていた


プリン「…みんな元気だねぇ」


それはいい事だけれど、有り余ってるなぁとも思う


球磨「はぁ…まあ、オモチャとは言ったが…」


砲身を振り回す様に動かし、がっしりと狙いを定める球磨


球磨「長い砲身にはこういう使い方もあるクマ」

プリン「あわわわっ!」


発射シークエンスに入った球磨を見て、慌てて耳を塞ぐプリン

その直後、工廠内から音が消える

砲身後部より吐き出されたバックブラストが、後ろにあった机やら何やらを巻き込んでふっ飛ばし

響く爆音は耳を潰すには十分な衝撃を撒き散らす


「きゃぁぁぁぁぁぁ!」


そして、屋外では

工廠内で消えた音が移動したかのような悲鳴が上がっていた


球磨「ふぅ…。てめえら、ちったー静かにするクマ。姉ちゃんは非常に恥ずかしいクマ」


ふんすっ!と鼻息も荒く、不満を口にする球磨姉ちゃん

その足元にガランっと46cm砲の排莢が転がった


プリン「…」


どっちもどっちだと思う、なんて口が裂けても言えなかった




工廠から飛び出してきた面々が、ドンドンパチパチとおっぱじめているそんな頃


工廠に入るでもなく、入口に付近の壁に背中を預ける皐月

その顔にはいつもの笑顔はなく

なにか物思いに耽るような、そんな暗さが纏わりついている

時折吹く潮風が、金色の髪をサラリと撫でてはいくが

今はそれすら煩わしいのか、首を振っては頬に掛かる髪を払っていた


皐月「はぁ…」


これで何度目だろうか、息を吐いた所で胸の中のモヤモヤは消えてはくれなかった

そういえば、司令官も良く溜息を吐いていたけれど、こんな気持だったりしたのだろうか


皐月「司令官…ばか」


まただ。考えないようにしているのに

そう思えば思うほどに意識してしまっている

目の前の喧騒に意識を向けてみても、心の隙間をつくように司令官の事が浮かんできていた


「はぁ…」


積み重なっていく溜息の数

しかし今回は、別の声が混ざっていた


皐月「ん?」


自分のものではない吐息に、皐月が顔をあげる

紺色の制服に身を包んだ少女

ユーと同じ白い肌に、赤い髪が目を引いた

たしか、海外からの…マックスさん、だったかな


皐月「どうしたんだい?溜息なんかついてさ?」


多分、自分も同じ様な顔をしてるんだろう

どこか落ち込んだ様子のマックスに声をかける

といっても、親切心とかおせっかい、というよりも

なにか別のことを考えていたいだけというのが大きいけれど


マックス「あ、ごめんなさい…なんでもないから」


皐月に声を掛けられると、慌てて表情を引き締め直すマックス

自分の心境はどうであれ、人に気を使わせた事を恥じているようだった


皐月「ふふっ。ほんとに 何でもないって娘は、何でもない何て言わないんだよ?」

マックス「そう、なの?」

皐月「うん。司令官が…はぁ…」


司令官がそう言ってた…

その言葉が口から出る頃には、溜息に変わっていた

結局また、司令官が出てくるんだなって…


マックス「貴女の方こそ…大丈夫なの?」


表情は硬いながらも、心配そうに皐月の顔を覗き込むマックス


皐月「うん、大丈夫だよ…」

マックス「それは…そう…貴女の言葉を借りるなら…」


本当に大丈夫な人はそうは言わないんじゃない?

きっかりと、自分の言葉がそのまま返って来た

まるで鏡でも見ているような


皐月「あははは。まあ、そうなんだけどさ…」


とはいえ、ユーにヤキモチ焼いてます、なんて言えるわけもなく

乾いた笑いを貼り付けて、曖昧に誤魔化すしかなかった


皐月「それよりも、マックスさんの方こそどうしたのさ?」


だから、これ以上なにか聞かれる前に話題を変えることにする

手っ取り早いのは、同じように溜息を吐いていたマックスの事

その原因が、海上の馬鹿騒ぎでないことを祈りつつ


マックス「私は…別に…いえ、そう、ね、うん」


答えるつもりは無かったのだろう

しかし、首を軽く振り、暫し逡巡した後に一つ頷くと

背筋を伸ばし、皐月の方を見据えて口を開いた


マックス「ごめんなさいっ、貴女の提督引っ叩いてしまったわ」

皐月「…へ?」


意外といえば意外だし、予想外と言えば確かにそう

しかしそれは、マックスが引っ叩いたという事実を除けば割りと日常の光景で

そんな些細な事を、真剣な顔をして謝ってくるマックスの事が少し可笑しかった


皐月「ふふふっ」


口元に手を当て小さく笑う皐月

なんだか今日は初めて笑った気がする


マックス「あの…私、何か変な事を言ったかしら?」


そんな皐月の様子が腑に落ちず、困った顔をしているマックス


皐月「ううん、変じゃないよ。ただちょっと新鮮というか、懐かしいというか」


自分たちも最初の頃は司令官に遠慮していたような気がしなくもない

ただ、今となってはどうだったのか、良くは思い出せないけれど

そう、思い出せないくらいには、今の関係が当たり前になっていた


マックス「…謝なければいけないのだけれど…どんな顔をしていけばいいのかって…その」


自分が悪いのは分かっているのに、素直に謝れない

そんな葛藤に押されて、マックスの言葉尻がだんだんと小さくなっていく


皐月「いいよって。放っときなよ?」

マックス「そんな訳には…艦娘が提督に手を挙げるなんて…」

皐月「まぁ、普通の鎮守府ならそうだったかもしれないけど…」


マックスの言うことは基本的には正しいのだけれど

あの司令官の事だし、基本の話しをしてもしょうが無い

それに…


皐月「どうせ、司令官になにか言われたんでしょ?」


何かされた、と言わなかったのは

いくらなんでも、初対面でスカートはめくらないだろうって、最低限の信頼からだった


マックス「む…それは、そういう面もあったけれど…」


しかしあれは、私が余計な事を言った面もある

全面的に提督を批判するわけにもいかない…あまつさえ、こちらは手を上げたのだし…


皐月「真面目だね、マックスさんは」


さて、こういう娘にはなんと言ったら良いものか

大丈夫だといっても多分に聞きやしないだろうし…


皐月「そうだね。それじゃ、ボクの方もタネ明かししようかな?」

マックス「?」


不思議そうな顔を浮かべるマックス

そして、皐月が息を一つ吸い込んだ


皐月「その、さ…ボクも司令官引っ叩いちゃってさ?どうやって謝ろうかなーって思ってたんだ」


そして最後に「一緒だねっ」と付け加えて

苦笑するような、それでも最初に溜息をついてた時よりは、幾倍か明るい笑顔をマックスに向ける


マックス「ぅっ…そう、貴女も、なのね」


そんな笑顔を真に受けて

照れくさかったのか、視線をずらすマックス


皐月「そうそう。秘書艦のボクだって引っ叩いてるんだから、大丈夫だよってさ?」

マックス「そう…貴女がそう言うなら。ありがとう、皐月」

皐月「どういたしまして♪」


そうして、司令官を引っ叩いた者同士

小さく笑い合う二人だった


「にしても…ここの提督は、いつもああなの?」

「裏表が無いって言ってあげると、聞こえが良くなるよ?」

「…ダメじゃないの、それ」

「うん」


ー母港ー


海面に46cm砲の砲弾が突き刺さり

周囲にいた艦娘達を巻き込んで、巨大な水柱を上げる中


長月「…はぁ」


両手で顔を覆って長月がその場にしゃがみ込んだ

恥ずかしい…それ以上も以下もない

この場にいるのが、身内だけなら日常だから良いとしても

今は客の前で、海外の皆様で、これが日本のグローバルスタンダートと思われでもしたら

他の鎮守府の人達に合わせる顔がなかった


ビス「…」


そんな光景を能面の様な顔して見つめているビスマルク

なまじ整った顔立ちのせいか、表情の無くなった顔は作り物めいた冷たさを纏っている

突如として始まった演習、かと思えば無秩序に交わされる砲雷撃、遭遇戦より酷い有様だ

とても訓練なんて言えたものじゃない、むしろ遊んでるだけと言われたほうが納得がいく


戦艦ビスマルク、彼女は謙虚で寛大だが、どうにも許せないものが3つあった

規律を守らない奴、規則を破る奴、そして、規律を守らない奴である

それに加えて、目の前で頭を抱えている長月に対する同情もある

袖振り合うのも他生の縁、なんて言葉をビスマルクが知っているわけもないが

要はそういうことで、ちょっとしたおせっかいでもあった


ビス「顔を上げなさい長月。貴女が言いたい事、私が言ってきてあげるわっ」


そう言い残し、提督の方へと歩いて行くビスマルク


長月「は?お前は、なにを?」

ビス「ああ。良いのよお礼なんて、貴女と私の仲でしょう?」


ビスマルクの背中に声をかけるも、返って来たのは見当違いの言葉だった


長月「いや、礼とかではなく…」


肩越しに振り返り、軽く手を上げるビスマルク

「大船に乗った気でいなさい」

なんて言葉で長月の口を塞ぐと、金色の髪を靡かせて優雅に去っていった


長月「はぁ…」


大船どころか泥船が沈んで泥沼になるまで想像できてしまう

何を言うつもりか分からないが、あんな調子で司令官に突っかかって行ったら

オモチャにされるのが火を見るより明らかだった


望月「あーあ…いるよなぁ、人の話聞かない奴って」

三日月「良いのかな…放っておいても…」


ニヤニヤと笑みを浮かべる望月と、心配そうに見送る三日月

その心配は長月と同じものであるし

望月のそれもまた、そんな光景に期待しての物だった


長月「…三日月…ちょっと」

三日月「?」

長月「すこしだけ…」


長月が抱きつくように三日月に寄りかかると、その小さな胸に顔を埋めた


長月「…もぅやだぁ…」


それは、三日月だけに聞こえる程度の小さな声で

それは、いつも気を張っている長月の小さな弱音で

それは、頼られるばかりの彼女のちょっとしたワガママだった


三日月「え、えーっと…」


そんな長月を困り顔で抱きとめている三日月

誰かに助けて欲しくて、辺りを見回してみると選択肢が2つほど

一つ、素知らぬ顔で、と言うよりはビスマルクの様子が気になってしょうがない望月

二つ、ちょうど良い所で目が合った弥生お姉ちゃん


弥生「ぐっど」


しかし何故だろうか、なにゆえ親指を立てサムズアップをしてくるのだろうか、この姉は

なんでそんなに満足そうなのだろうか、この姉は

一体何処に向かっているのだろうか、この姉は

妹も妹であんなだし…


三日月「もぅやだぁ…」


口から零れたのは長月と同じ言葉で

目の前の姉を見失わないようにと、しっかりと抱き返す三日月だった




ビス「提督、少し良いかしら」


カツカツと軍靴の音を響かせて、提督へと向かっていくビスマルク


睦月「呼んだかにゃ?」(←ていとくだいり


提督とビスマルクの間に滑り込んでくる睦月が、両手を広げて存在をアピールする

肩から下げられた たすきには「ていとくだいり」の文字

真面目に今日一日やるつもりらしかった


ビス「ごめんなさい。真面目な話なの、後にしてちょうだい」


睦月の肩に手を置き、通せんぼする睦月を退かすように力を入れるビスマルク


睦月「睦月だって真面目だしっ!」


なんて抗議の声をあげる睦月を横に置き

一歩、提督の前へと進み出るビスマルク


提督「付き合ってあげればいいのに」


提督の腕の中には文月がすっぽり収まっていた

めっきり冷たくなってきた潮風に負けないようにと

しっかりと、文月を抱きしめている


ビス「貴方がそんなだから…」


ビスマルクの呟きが潮騒に消えていく

規則も規律も規範も無いこの状況に、言葉の端々から苛立ちが溢れていた


ビス「こほんっ」


それでも、と。気持ちを入れ替えるために、ひとつ咳払いをする

ユーを引き取りに来ただけなのだ、使える時間はそう多くはない

だがそれでも、このどこの馬の骨ともいえぬ集団に、少しは規律というものを教えて上げましょうと

彼女にとっては親切心、場合によってはお節介

割りと世話焼きたgirlなビスマルクだった


ビス「提督、貴方の艦隊は少し規律が緩んでいるようね。私が一から教えてあげるわっ」

提督「ふむ…」


まっすぐに提督を見据えるビスマルク

いっそ、真っ直ぐ過ぎて怖いくらいだと思う

何かの拍子に折れやしないかと…あぁ、でも、でも少し、ほんの少しだけ

イジメたくなるような真っ直ぐさだな、と…


提督「どうしよう文月、褒められちゃったよ?」

文月「よかったねぇ、しれーかーん」


抱きしめ、その顔を覗き込むと、下から見上げてくる文月と目が合う


文月「そんなのないのにねー」

提督「まったくな」


そう、規律なんてありはしないのだ

こんな状況で緩い程度済んでるのなら、他の鎮守府も大概なのだろうかと思えてくる


ビス「褒めてないわよっ、こっちだって気を使ってるのよっ、察しなさいよっ、そういうの得意なんでしょっ日本人はっ」


キリッと引き締めた表情を崩して、捲し立てるビスマルク


提督「まぁ、そう怒らないの」


内心、やっぱりコイツ面白いなとか思いつつも

まだまだ表情には出さない提督さん


ビス「怒ってないわよっ。だいたい、提督である貴方がしっかりしないから、皆好き勝手にしてるんじゃないのっ」


それは、ごもっともな指摘では合ったが


提督「そうなの?」

文月「そうだよ?」

提督「「そうかな?」

文月「そうかも?」

ビス「…」


イライライライライラ…

提督と文月のふんわりとしたやりとりに、不満を募らせていくビスマルク

それはもう、誰が見たって黒いオーラが見えるほど


ビス「シャーッ!もういいわっ、とりあえず貴方っ、その娘から離れなさいっ、こんな人前でハレンチなっ!」

提督「艦娘と仲良くするのも提督の仕事だろ?」

ビス「限度と程度を考えなさいよっ!」

提督「そんな固いこと言ってると、行き遅れるぞ?」

ビス「そこに直れ」


即答であった

重厚な金属音を響かせ、ビスマルクの38cm連装砲改が提督の方へ向けられる

46cm砲のそれとまではいかないが、主砲を向けらるのはぞっとするものでもない

人に規律云々言っておいて、提督に砲口を向けるのはどうなのよ?

事と次第じゃ軍法会議だっていうのに…まあ、いいけど


提督「なぁ、ビスマルク。私達の仕事とはなんだ?」


ニヤけ始めた顔を元に戻し

最初にビスマルクがしていたそれのように、表情をひきしめる提督

それと念の為、文月を自分の後ろへ回しておく


ビス「決まってるじゃないっ、深海棲艦を倒すことよっ」


引いては、国を人を平和を守るためだと

ついでに「そんな事も分からないの?」なんて小馬鹿にされた


提督「そうだな。決して、規律や規則や規範を守るためではないよな?」

ビス「それすら守れなくて、一体何を守るっていうの」

提督「まあ、そうなるか」


予想通りといえばそんな答えだ

だから一つ、一番わかり易い解決法を提示する


提督「こう…」

金剛「yes」


名前を呼ばれると、音もなくビスマルクと提督との間に割り込む金剛

未だ、38cm砲が向けられているが、そんなもの気にもせず、提督を庇うように前に出た


金剛「Hey,ビスマルク。規律も規則も良いですが、時間と場所は弁えましょうか?」


それは、ここはそういう場所ではないと、人の家に余計なものを持ち込むなと暗に告げていて

それよりなにより、提督にそんなもの向けてんじゃねーデスと、言わんばかりにビスマルクを睨みつけた


ー海上ー


わかりやすい話だ

「そんなに言うなら金剛に勝ってからにしろ」なんて提督の提案を受け入れ

海上に上がる、金剛とビスマルク


ビス「知っているわよ。貴女、金剛型なんでしょう?」

金剛「ですが?」

ビス「たった、35・6cm砲で私の装甲を撃ち抜けると思っているのかしら?」

金剛「ふむ」


何を言うかと思えばそんな事か、と

大して興味もなさそうに、話しを聞き流す金剛

対して、反論が無いのを良い事にさらに言葉を重ねるビスマルク


ビス「それに比べて、見なさいっこの私の38cm連装砲をっ

   高初速に、砲撃制度、近距離でならどんな戦艦の装甲だって撃ちぬいてやるわっ!」

金剛「はぁ…」


こんな恐ろしい主砲を扱えるのは世界でも…うんぬんかんぬん

長い、まだ続いている…


妖精さん「お姉様、お茶です」

金剛「Thank you…ふぅ、46cm砲用意」


あまりの長さに、妖精さんがお茶の用意を始めていた

それに口をつけると、射撃用意の命をだす


金剛「弾頭は…そうね、三式弾を…」

妖精さん「あいては戦艦ですが?」

金剛「せめてもの情け」

妖精さん「アイ、マム」


確かに、優秀な砲だとは聞いていますが

いろいろと不調もあったという話も聞こえてくる

それに、それじゃダメなんですよ…それじゃ大和の装甲を撃ち抜けない

そんなんじゃ提督が満足しませんから…


妖精さん「準備完了いつでもどうぞ」

金剛「OK」


紅茶を飲み干すと、残ったティーカップを妖精さんに返す


ビスマルク「さぁっ、何処からでもかかってきなさいっ!」

金剛「Fire…」

ビスマルク「へ?」


ビシっと金剛に指先を突き付け、演説を終えるビスマルク

それと同時に金剛に搭載された46cm砲が発射された


ビス「キャーっ!」


ビスマルクがそれに気づいた時には既に砲弾は目の前まで迫っており

しかもそれが爆発四散して雨霰とふってくるのだ

避けようもなく、破片やら仕込まれた焼夷弾やらに巻き込まれる

見事なまでに直撃だった

とはいえ、それで装甲が抜けるわけもないし、ただの嫌がらせなのだけれど

人の身で言えば霰や雹にでも振られてるような気分だろうか


ビス「ひ、卑怯じゃないのっ!不意打ちなんてっ!」


三式弾の雨の中からようやっと抜け出すビスマルク

息も荒く、髪も乱れて、せっかくの美人が台無しになっていた


金剛「Hey,German girl…一つ、良い事を教えてあげるわ」


再装填を終えた46cm方が一斉にその砲身をビスマルクへと向ける


金剛「こんなものは、撃てて当たればいいんですよ?That’ll teach you(勉強になりましたね?)」

ビス「っ!」


Fire!と再度発射される46cm砲

今度は3式弾ではなく、きっちり徹甲弾に換装済みで

次々と海面に突き刺さって行く砲弾が、順繰りに水柱を上げていく


ビス「35.6cmって…なんだったのよ…」


飛んで来る脅威はとてもそんなサイズのものじゃなかった

自分の使っている38cmのそれより確実にでかい…あれが噂のビッグ7とか言う奴なの?


ビス「だからってっ、そう何度も当たってやるもんですかっ、Feuer!」


体勢を立て直したビスマルクが、金剛に向けて射撃を開始する

38cm連装砲、たしかに通常の戦艦と撃ち合うなら申し分は無いのだけれど


金剛「ナンセンス…」


飛んでくる38cm砲の砲弾を避けるでもなく見つめている金剛

その目には危機感や諦観なんてものはなく

ただ自然体のままでそれを受け入れる


ビス「やったわっ!」


直撃の手応えにぐっと拳を握るビスマルク

相手がなんだろうが、この距離で直撃を受けて無事で済む船なんていないと

そう思ってた時期もありました


金剛「それで?」


何かしたのかと?そんな言葉を言外に含み

爆発の煙が晴れる中、姿を表す金剛

仁王の様に直立し、堂々を腕を組んでいる

その全面には、艤装の舷側から伸びた装甲が、盾のように広がり金剛を護っていた


ビス「ちょっとっ!?何よそれっ聞いてないわよっ!」

金剛「AGPとか言うらしいデスネ…」


艦娘になると色々出来ることが増えるものだ、46cm砲しかり、これもその一つってだけ

とはいえ、カスダメでも受け続ければそれなりに面倒だ

しかし、それでも不動で耐える

2度と3度と撃ち込まれる砲弾にも動じないように気を張って


金剛「気は済みましたか?」

ビス「ぐぬぬぬぬぬ…」


苦渋の表情を浮かべるビスマルクとは対照的に、優雅に微笑む金剛さん

そう、相手の心を折るには多少の虚勢も必要なのだ

効果は覿面、ご自慢の主砲が通らない事に愕然としたビスマルクの足が止まっていた


金剛「それでは、提督の気が済むまで侘び続けるといいデス」


そう、彼女は少しだけ怒っていた

どこの馬の骨ともしれん小娘が、提督に主砲を向けるなどと…

そして一発。最後の一撃は切なかった


ー母港ー


ビス「しくしくしくしく…」


金剛に引きずられるように港に旗艦したビスマルク

地面にへたり込むと、さめざめと涙を流し始めた


肩は震え、涙が頬をから流れ落ち、風に揺れる金糸の髪が濡れた頬に張り付く

割りと嗜虐心をそそられる絵面だった


金剛「さぁっ!ビスマルクっ!罰ゲームのお時間デース!」


ビスマルクを一発すっ飛ばした事で気も晴れたのか

いつものテンションで金剛が高らかに宣言する


ビス「はぁっ!?何よそれっ聞いてないわよっ!?」


沈んでいたビスマルクの顔が跳ね上がる


提督「郷に入れば郷に従えって言うだろ?」

ゆー「…」


さて、どうやって悪戯してやろうかと、ニヤつく提督の隣で

「それもどうなのかなって?」思う ゆーだったりするが

これも日本式なのだろうかと、とりあえず納得しておく


ビス「なによっ!どうせ乱暴する気なんでしょうっ!○○同人みたいにっ○○同人みたいにっ!」


自分の体を抱きしめて、へたり込んだまま地面の上をズルズルと後ずさるビスマルク


金剛「失礼なっ!そんな事をして喜ぶのは提督だけデースっ!」

提督「失礼な…私にだって選ぶ権利はある」

ビス「失礼ねっ!どういう意味よそれっ!」

金剛「じゃあするデスか?」

ビス「いやに決まってるじゃないっ!」

提督「ったく、めんどくせーな…睦月っ」


めんどくさそうに頭を掻きながら、睦月を呼びつける提督

すると呼ばれて飛び出て、「はーい」などと元気よく提督の傍までよってくる睦月


提督「好きにしていいぞ?」

睦月「いいの?」

提督「代理だろう?」

睦月「そうであったなっ!では皆の者っ!奴を引っ捕らえるしっ!」


ビスマルクに指先を突きつける睦月

それと同時に、潮風が睦月のジャケットを旗目かせ、波が勢い良く護岸にぶつかり飛沫をあげる

命は下された

長姉の号令にわらわらとビスマルクの元に集まってく妹達


「ほらっ、さっさと立つぴょんっ」

「両手ひろげてー、片足もあげようねぇ」

「あと、これも…」(←赤い箱乗っけてる

「はーい、それじゃ写真とるわよ」


パシャリ!


そして、映像記録は完成する


睦月「出来たっ!」

如月「これは…」(←写真とった奴

弥生「ひどい…」(←箱乗せた奴


頬を染め、口惜しそうに歯噛みするビスマルク

両手を持ち上げ、片足立ちになり、荒ぶる鷹のポーズ

そして、帽子の唾の上にはビ◯コの赤い箱が乗っかっていた


マックス「…ふっ」


出来上がっていた写真を覗きこんでいたマックス

その無表情が一瞬だけ、ピクリと動いた


ビス「ちょっと、マックスっ!貴女今、笑ったでしょうっ!」

マックス「まさか…友人の痴態に心を痛めているだけよ…」


ちなみに、笑ってないとは言ってない


プリン「まぁ、負けたお姉様が悪いっていうか?」


表情を消して、なるべくビスマルクの方を見ないように、呟くプリンツ・オイゲン


ビス「真顔でなんてこと言うのよっ!貴女、ほんとは私の事嫌いでしょうっ!」

プリン「そんな事ないですよっ!カッコいいお姉様は大好きですっ!」


ぐっと拳をにぎり力説するプリンちゃん


卯月「カッコいいぴょん?」


そんな彼女に写真を見せつける卯月


マックス「…ふふっ」

プリン「…」


そっと目を伏せるプリンの隣で、マックスの肩が揺れていた


ビス「レーベっ!」

レーベ「ぼ、僕に言われても…」


何故かトバッチリを受けるレーベだった





そうして、昼間の喧騒も、日が沈んでしまえば静かなものだった

ゆーを引き取っていったドイツの娘達

最後にビスマルクの「覚えてなさいよっ、あんた達っ!」

なんて言葉が耳に残っている


皐月「はぁ…」


誰もいない港、その端っこ

護岸に腰掛け、時折向かってくる波を蹴っ飛ばしては気を散らしている皐月の姿

吐き出される溜息も潮騒の一部になって溶けていく


結局、今になるまで謝れずじまい

幸い、ドイツの娘達と遊んでいたおかげか、司令官と顔を付き合わせることにはならなかったけれど

もういいか、とも思う

勢いで叩いちゃったのは、確かに気が咎めもするが、別に謝る程のことでもないし…

いつもなら気にもしなかったのに、結局やきもちなんだよなぁって

直ぐに手を出すボクよりも、大人しい娘の方が…なんて考えてしまってるんだから


提督「で、いつまでお前はむくれてるんだ?」

皐月「っ!?し、司令官…」


突然、後ろから声をかけられ皐月の肩が跳ねる

それは、今一番会いたくない人であり、会いたい人でもあった


提督「ヤキモチも過ぎると可愛げがないぞ?」


皐月の隣に腰を下ろす提督、その間に僅かに出来ている隙間

ほんとなら、少し身を寄せて隙間を埋めたくもあるのだけれど…

叩いてしまった後ろめたさが壁になって動けない

いっそ、気まずさから少し隙間を広げたくもあったが、後ろ髪を引かれてそれもできず

結局、中途半端な距離を開けたまま、その場に固まるくらいしか出来なかった


皐月「…ヤキモチなんて、焼いてないもん」

提督「そうか?私はてっきり…」


勘違いして引っ叩いて、謝ろうとしたけど

他の娘と仲良くしているのが気に入らなくて

今の今まで拗らせてるのかと思ってたんだけどな?


皐月「…わかってるなら、すこしは、さ…」


図星だった、一字一句間違いないほどに


提督「あら、好きな娘がヤキモチやいてるなんて、可愛くてしょうが無いじゃない?」

皐月「むぅ…」


ニヤニヤと笑っている提督を横目で睨む皐月

そんなのは分かっている、ヤキモチ焼いたって司令官が喜ぶだけだって

だからって、はいそうですかと割り切れるわけでもないし

それならいっそ…これで司令官が喜んでくれるなら…

くらいには考えなくもなかった


提督「けどま…」

皐月「…」


空いていた隙間を埋めるように、提督が皐月方へ身を寄せる


提督「そろそろ笑ってくれないかい?」

皐月「うっ…」


提督が頭を傾けると、ちょうど皐月の頭の上に頬が重なった

確かに、謝るなら今だろう

これ以上意地を張ったって、可愛げがないというのも その通りだし…


皐月「あのね、司令官…ごめん」


そう言って、力を抜くと提督の方へと体を預ける


提督「別に怒ってはなかったけどな」


今更、皐月に叩かれた所でいつもの事なのだし


皐月「知ってたけど、さ…」


そのまま会話が止まる

寄せては返す潮騒の音をBGMにして、静かな時間がゆっくりと流れていく

そんな中、ゆっくりと皐月の手が提督に重なる

同時に、ちらちらと何か、戸惑うように躊躇うように提督の顔を覗き見ている


提督「…」


だ…だめだ、まだ笑うな…しかし…

皐月の視線がくすぐったい、今すぐにでもからかって上げたい

けれど、けどもだ…この後の展開を考えるに、それはまだ早い気もしている


「すぅ…はぁ」そんな提督の思惑も知らず、皐月が深呼吸を一つ

そして、意を決したのか皐月が動く

提督から少し体を離すと、体を伸ばし、顔を近づけて…


ゆー「ぷはぁっ」

皐月「うわぁっ!」


ゆーが海面から顔を覗かせるのと、皐月が飛びのくがほぼ同時だった


提督「くくくくくくくっ…」


そんな皐月の様子に我慢できず笑いを零す提督

さっきから ゆーが近づいてるのは分かってたし、この展開も期待通りのものだった


ゆー「ん?びっくりさせました?ごめんなさい?」


今にも心臓が飛び出しそうって顔をしてる皐月に、素直に謝るゆー


皐月「え、あ、いや…うん」


もう少しだったに…けど、もう少し遅かったら、見られていたのかと思うと

悔しいのとほっとしたので、頭のなかがぐちゃぐちゃになっていた


提督「忘れ物?」

ゆー「んーん、お届け物」


「よいっしょっと」なんてゆっくりと ゆーが陸にあがると

懐から、一通の封筒を取り出す、水にも濡れてないのはきっとドイツの技術力のせい


提督「…あの、ちんちくりん」


受け取った手紙を開封する

「やったわね提督っ、幼女が増えるわっ!」

大本営の印章と共に添えられている余計な一言、おいやめろと言いたくなる


ゆー「U-511,艦隊に着任しますって」

提督「えらく急だな…」

ゆー「アトミ…提督さんにお礼がしたいって言ったら、こうなりました…ここ、潜水艦いないからって」


最後に「迷惑だった?」なんて不安げな顔になってしまう

実際、潜水艦がいるのは良いことだ、それ自体は大歓迎なのだけれど

そうだな、一つだけ面白そう…もとい、懸念があるとすれば


提督「皐月が良いって言ったらな?」

皐月「へっ!?ボク?」


ようやっと落ち着いてきた皐月の心臓がまた加速する

なんでここでボクに振るのかと

いや、分かっててやっているのは明白だ、またかこいつはと思ってしまう


ゆー「皐月…」

皐月「な、なに?」


てとてと と、軽い足音立てながら皐月に近づいていく ゆー

そして、皐月の手を取ると一言


ゆー「ユーは2号でも良いよって?」

皐月「ぷっ!?」


途端、皐月が吹き出した

だってその言葉の意味する所は、ここまでヤキモチを焦がしてしまった半分くらいの理由だったから

多分これが他の娘だったら、ここまで焦げ付かせてはいなかったろう

さつき1号、それはU-511の日本名だった

自分と同じ名前を持ってる娘が提督と仲良くしてる…それが皐月には気になってしょうがなかった


提督「…なんだ、2号って?」

ゆー「ん?だって、ゆーは…」

皐月「わーっ!わーっ!」

ゆー「むぐぅ」

提督「ん?」


すんでの所で ゆーの口を塞ぐことに成功する皐月

苦しそうにゆーがもがいているが、この際我慢してもらう事にする


皐月「なっ、何でもないからっ!ゆーは此処に配属ってことでいいからっ!」

ゆー「むーむー…」

皐月「じゃあボクはっ、ゆーを部屋まで連れてくからっ!」

ゆー「むぅむぅ…」

皐月「行くよっ!」


捲し立てるだけ捲し立て、ゆーを引きずっていく皐月


提督「なんだ、あれ…」


そんな皐月の背中を、不思議そうな顔して見送る提督

後日、さつき1号の名前が提督の耳に入ると、案の定、滅茶苦茶可愛がられた皐月だった


ー鎮守府・廊下ー


大鳳「明日から、また騒がしくなりそうね?」

金剛「デスネ…」


提督と皐月、それにひょっこり顔をだしたゆー

その3人を窓から眺めている二人

とりあえず、皐月が元気になって良かったと思う大鳳


大鳳「でも、意外ね。私は、金剛さんも妬くんじゃないかと思ってたんだけれど」

金剛「私が?まぁ、そうですねぇ」


窓枠に体を預け、頬杖をつく金剛さん


金剛「独り占め、したいと思うこともありますが…ヤキモキするのも恋の華ですから、ね?」


そういって、静かに笑いかける金剛


大鳳「なるほど…」


その気持ちは分からないでもなかった

バーニングラブが代名詞みたいなこの人には、静かな恋路よりも

このくらい動きがあったほうが楽しいのだろうと

でも、少しだけ気になることが1点


大鳳「でも、相手がビスマルクさんだったらどうだったのかしらね?」

金剛「…」


そう、相手が幼女じゃなかったら

まして、自分と立場のかぶるビスマルクだったらこの人はどうしてたのだろうかと


金剛「Hey大鳳。それは、この艦隊に翔鶴を招いても良いということですか?」

大鳳「…そう、ね。愚問だったわ」


結局、金剛さんも私も同じなのだ

皐月の事を可愛いと思う反面、明日は我が身

艦娘になってそう日が経ってるわけでもない、感情を持て余すことなんてしょっちゅうだった


金剛「ふふっ。大人の振りをするのも大変ですね」

大鳳「ほんとうに」


苦笑しあう二人

それでも、やることは変わらない

皆のために、提督のために、支えになれるのならそれは素敵なことだからと


ーおしまいー


後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです

それではこの番組は

ゆー「潜水艦、U-511です。よろしくお願いしますって」
卯月「やはりユーゴーの手先ぴょんっ!」
菊月「きたいないな、さすがアカデミア」
長月「…」(←頭痛い
三日月「…」(長月の頭撫でてる
弥生「…グッド」
弥生「弥生お姉ちゃーん、変なとこいかないでねー、戻ってこようねー?」

提督「うふふふ、皐月は何時だって私にとっては1号だよ?」
皐月「くぅ~っ。だれだよっ司令官に変な事教えたのはっ!」
睦月「ん?さっき、きさ…むぐぅ」
如月「だれかしらねぇ?」
望月「バレバレじゃねーか」

北上「でさー、この写真どうすんの?」
球磨「んなもん、本国に送りつけてやると良いクマ」
木曾「止めてやれよ…死体蹴りじゃねーか」
大井「送られる本国もいい迷惑よね…」
多摩「信じて送り出したビスマルクが…」

夕張「新装備♪新装備♪」
金剛「ふむ、主砲は38cm砲ですか…46未満はちょっとデスネ…」
大鳳「Ju87C改(スツーカ)も良い装備ではあるんだけれどね…」
瑞鳳「いーやーだー、99艦爆良いのっ!99艦爆じゃないと駄目なのっ!」

もろもろのメンバーでお送りしました


ー以下蛇足に付きー


♪教えて皐月ちゃんのコーナー♪

提督「というわけで、ドイツ艦のお話でした」
皐月「ボクらの艦隊も大きくなったね、結構さ」
提督「最初は皐月と二人だったのにねー」
皐月「ちょっと懐かしいよね」

提督「ていうかなにげに、オイゲンさんって初重巡だよ」
皐月「…そういえば、そうだったね…」
提督「最初は青葉でも入れようかと思ってたんだけどな…」
皐月「どうしてやめちゃったの?」
提督「いやね…これ以上トラブルメーカー増やす意味がなかった」
皐月「あぁ…そう、だね。卯月に睦月に…」
提督「そうそう…放っておいても騒ぐから…あの娘ら」

皐月「ちなみに、マックスはちゃんと司令官に謝りに行ってたからね」
提督「真面目な娘ってからかうの楽しいよね」
皐月「…せっかく謝りに来てたのに、また怒らせてさ…」
提督「いや、ついね」

♪皐月ちゃんラジオ♪ 

皐月「さ、今回のお手紙紹介コーナー」
提督「それで、今回は?」

・もっちー可愛いx2
・大鳳と文月のお料理シーン
・指輪使用のデメリット
・睦月型大好き勢にとってはたまらんですな

皐月「こんな感じだよ」
提督「それじゃ、上から行こうか」

・もっちー可愛いx2

提督「よかったな、皐月の次にだってよ?」
皐月「え、いや、でも、今回は望月達のお話だったじゃん?」
提督「皐月ちゃん可愛い」
皐月「あ、ぅぅ」
提督「さっつきっ♪さっつきっ♪」
皐月「あーもーっ、つぎ行くからっ」

提督「しかし、三日月が少し目立ちすぎたかな、とは思ったけど」
皐月「最後に逆転したのかな?」
提督「文字ばっかりのシーン書いたの初めてだったけど。まぁ、望月可愛いが伝わったようで良かった
    三日月をからかうのはそりゃ楽しいが、望月がたまにデレてくれるのも最高だよね」
皐月「司令官がそんなだから、三日月と長月がいつも…」

・大鳳と文月のお料理シーン

大鳳「ふたり、どぅびどぅば♪」
文月「ふたり、どぅびどぅば♪」
大鳳「良かったわね、文月。ときめいて貰えたみたいよ」
文月「やったね、大鳳さん。ときめいて貰えたよっ」
大鳳「ああ、でも。実際にやるときは、火の側や、刃物には注意してね?」
文月「怪我したら、胸のどきどきが、怪我のズキズキに変わっちゃうからねぇ」
二人「やくそくだよ♪」

提督「やる機会ってあるのか?」
皐月「嫁艦とやりたい人はいるんじゃん?」

・指輪使用のデメリット

提督「うん、覚えてた人がいるとはな。出来るなら有耶無耶にしたかった」
皐月「シリアスな事出来るかなって思って、変な設定作るから」
提督「だって、初めてだったんだもの…」(さめざめ
皐月「いや、司令官がそれやっても気持ち悪いから…」
提督「という訳で、バックナンバー漁ればなんか書いてるかもしれないけれど」
皐月「今現在は、使うと司令官のおなかが減る程度になってるよ」
提督「多分このくらいが一番扱いやすい気がしてる…今日このごろ」
皐月「また、設定ころころ変わるかもしれないけど、その時は気にしないでね」
提督「フレーバーテキストみたいなものだよっ、気にしたら負けだよっ!」
皐月「素直に謝りなよ?」
提督「ごめんなさい…いろいろと お粗末な面が多いですがご容赦下さい」

・睦月型大好き勢にとってはたまらんですな

提督「我らが睦月型の光をっ、遍く世界にっ!」(ビシっ!
皐月「…やらないからね?」
提督「えー、やろうよー。かっこいいじゃんこれ」
皐月「恥ずかしいだけだって…」
提督「皐月がやるまで毎回やるからな…」
皐月「絶対やらないからなっ」



皐月「今回はここまでだよっ」
提督「ここまで読んで頂きありがとうございます
   また、いつも応援いただき、ありがとうございます
   長文でも短くても、こういうことやってるとコメント貰えるのはとても嬉しいのです」
皐月「それじゃ、次も良かったら一緒に遊ぼうなっ」
提督「そろそろ寒くなってきてるけれど、体調には気をつけて」


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2015-11-01 12:13:57

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2015-10-24 15:24:12

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1: SS好きの名無しさん 2015-10-13 23:59:38 ID: 8b7l88zk

妬いてる皐月は想像しただけで可愛い

2: SS好きの名無しさん 2015-10-17 14:12:53 ID: 3l4rvbHE

タイトル25になってるぞ

3: フラン 2015-10-24 15:30:43 ID: ITQH-l_h

ヤキモチ妬いてる皐月可愛いですwそれとビス子と戦った時の金剛は提督への愛を凄く感じました!

ちょっと思い出したことなのですが提督って神様でしたっけ?だとしたら何の神様なんです?(自分が忘れてるだけだったらごめんなさい)神隠しとかしてましたよね?暇な神様だったんです?

最後に突然の無茶振りにも動じない大鳳さん大人の余裕ですね。とても魅力的でした!

4: SS好きの名無しさん 2015-10-26 10:18:09 ID: a5zjIqBU

長月可愛いなぁほんと……。
弥生さんに便乗して、( -`ω-)b

5: SS好きの名無しさん 2015-11-01 13:27:20 ID: hR6aqJH-

大鳳さんがやたらクールだったのは、提督やみんなの目を気にして格好つけていたからだったんですねぇ。
彼女が素直に照れたりデレたり甘えたり出来る日が来ることを祈ります。

ゆーの口調や仕草に和みました(*^^*)
これまでの鎮守府に無かったキャラですね。今後の活躍に期待です。

そして金剛さんカッコいい(^o^)
最近弄られキャラ化してましたが、戦艦とバーニングラブの本領発揮ですね。
ビス子さんは…あー、ドンマイです(^.^)/~~~

さて、海外艦にして初の潜水艦であるゆーの加入によってますます賑やかさを増すことが予想される○○鎮守府。
筆者としてはメインのキャラがまた増えて大変だと思いますが、頑張って下さい。
応援すると共に、次回も楽しみにしています。


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1: SS好きの名無しさん 2015-11-01 12:06:20 ID: hR6aqJH-

艦これ好きなら、オリキャラが苦手な人以外は総じて楽しめると思う良作。
どちらかと言えば取り上げられることの少ない睦月型と球磨型がメインを張るという希少さも魅力。

誤字の多さが目立つ点と、オリキャラが駄目な人は厳しいかなぁと思うので一つ減らして星9個です。


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