「提督と清霜」
戦艦になりたい駆逐艦、清霜の物語。
戦艦になりたい・・・
改装もたくさんして、出撃もして・・・この前はMVP取れたよ・・・でも、いつになったら戦艦になれるのかなぁ・・・
皆は「そのうち」とか「頑張れば」とか言うけど・・・どれだけ頑張ればいいかわかんないよぉ~。
・・・・・・
清霜、昔と比べて・・・強くなったよね?
皆から頼られるようになったよね?
だから今度は戦艦になって皆を守っていきたいの・・・
・・・・・・
お姉さんたちに聞いてみても、
「清霜はまだ子供だからいつかきっとなれるわ。」
「頑張れば必ずなれるわ。」
なんて言ってくれるけど、詳しくは教えてくれない・・・
武蔵さんに聞いても、
「たくさん食べて、たくさん出撃すればお前もいつか戦艦になれるだろう!」
なんて言ってたけど・・・本当はどうなんだろう・・・
・・・・・・
戦艦になりたい。
そう呟いていたら、目の前に司令官がいた。
「戦艦になりたいのか?」
司令官の質問に「なりたい!」と言うと・・・
「なら、お前の願いを叶えてやる!」
!? 本当に!?
司令官の言葉に私は喜んだ。
・・・・・・
・・・
・
「まずは練習だ、そのロボットの中に入れ。」
目の前に大きなロボットが置いてあって、私はその中に入るように言われた・・・
入ってみると中には大きな画面とたくさんのボタンが設置してあって・・・
「赤いボタンを押せ。」
司令官の言われたとおりに押してみたら、画面が映り司令官の姿が見えた。
「それは”強化外骨格”と言って人と同じように行動できるロボットだ。」
きょうかがいこっかく? 清霜にそんな難しい言葉はわかんない・・・
「右手からは主砲、左手からは副砲が撃てる、試しに一回ずつ撃ってみな!」
司令官の言われたとおりに指示されたボタンを押してみると・・・
ドォン!! ドォン!!
大きな爆音とともに、目の前の障害物が吹き飛んじゃった。
凄い! 凄い威力!
「凄いだろう? それが戦艦が撃つ砲撃力だ。」
練習用だけど・・・本当に戦艦になっちゃった気分。
しかも、画面を見ると司令官を上から見ている感じ・・・そっか、戦艦は背が高いから司令官が低く見えるんだ。
「これから練習用に、進水する。 近海を進んでいけ。」
わぁ~い! 私戦艦になっちゃった♪
指示された操作で海に進水して、私は海に出た。
・・・・・・
すご~い!
駆逐艦の時とは違って、進むときの力強さ・・・強力な武器、戦艦並みの長身・・・練習用だけど、
その時、私は本当に願いが叶ったと思っていた。
「そろそろ戻ってこい。」
でも、私は興奮のあまり、司令官の言うことを無視してそのまま進んじゃった・・・
何度も何度も呼び出しを受けたけど・・・私はこの状態が気に入っていて、この中から出るのが何か嫌だった。
・・・・・・
鎮守府が見えなくなったところで気づき・・・
鎮守府に戻らないと・・・
と思った矢先の事・・・
ドォン! (敵の砲撃)
遠くから砲撃の音がして、見ると・・・敵の戦艦がいた。
敵の戦艦!? 勝てっこないよ!
私はすぐに逃げようと思ったけど、
・・・・・・
よく考えたら、今私が乗っているロボットは戦艦の練習用・・・だったら、
今の私だったら、倒せる!
その時はそう思った。
敵の砲撃が繰り返す中、私は砲撃を何度も受けて・・・
・・・・・・
戦艦の練習用ロボットなのか耐久力があって私は無事で済んだ。
でも、砲撃を何度も受ける光景は駆逐艦の時と比べものにならない怖さだった。
怖い・・・戦艦っていつもこんな感じなのかなぁ・・・
それでも、我慢して私は主砲を撃った。
ドォン!
命中しなかった・・・弾を装填中・・・直後に敵の攻撃が激しくなった。
戦艦並みでも、装甲は徐々に損傷して、次第に壊れていって・・・動かなくなった。
動かないよぉ・・・お願いだから・・・動いて!
敵が撃った徹甲弾が直撃して・・・ロボットは大破! 私は海に投げ出された。
助けて・・・助けて・・・助けて!
敵が近づいてきて、私は泣いた。
助けて・・・お願い! 誰か助けて!
敵が目の前に来て、主砲を向けてきたその時、
ドオオォォォン!! (味方の砲撃)
目の前の敵が倒れて、援軍が来てくれて・・・私は助かった。
「清霜ちゃん、大丈夫?」
心配そうに私に近づいてくるお姉ちゃんに私は泣き叫びながら抱き着いた。
怖かった・・・怖かったよぉ~!!
その後は皆と一緒に鎮守府に帰った。
・・・・・・
鎮守府では司令官が待っていて、私は謝った。
「ごめんなさい・・・練習用の・・・壊しちゃった。」
でも、司令官は怒りもせず、
「無事でよかった、次から勝手なことはするんじゃないぞ。」
・・・・・・
私は気づいた。
戦艦は憧れだけど・・・本当は怖くて、覚悟が必要なんだ・・・って。
最初は背が高くなったとか強力な武器があるとか耐久力が高いことが嬉しかったけど・・・
実際は・・・それだけ大変な任務を受けたり、責任があるんだなぁと・・・
お姉さんや武蔵さんが言ってたことは、私に気を遣って言ってたわけじゃなくて、
「今の私(清霜)には戦艦になるための覚悟が足りない」と言っていたのかも・・・
だから私・・・もっと出撃や遠征とかで頑張って自分を鍛える!
そしていつか・・・いつか戦艦になったら・・・
皆の前に立って・・・皆を・・・守りたい!!
「提督と清霜」 終
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