【第9章】帰るべき鎮守府と変わり行く提督
変わらない事が自分であり正しい事だと思っていた
でも、それは違った
変わらなければ守れないなら俺は・・・・変わろう
それが例え自分の望まない者になろうとしても
これは【捨てられた鎮守府と捨てられた提督】の続編の【おんぼろ鎮守府と捨てられた提督】の続編の【おんぼろ鎮守府と歩み続ける提督】の続編の【大切な鎮守府と歩み続ける提督】の続編の【大切な鎮守府と道を照らす提督】の続編の【君の居た鎮守府と道を照らす提督】の続編の【君の居た鎮守府と裏と表を行く提督】の続編の【帰るべき鎮守府と裏と表を行く提督】の続きになります!まず、それらから見てもらわないと全く分かりません
0章はとりあえず本編を見てから見る事をオススメします。てか、更新してるのか?
増えるの!まだ増えるのかぁああ!これ以上増えると本当ワケワカメですね!
豆腐の味噌汁が好きです
専門用語とかは全く分かりませんし、文章もおかしかったりしますが、中傷コメなどはせず、気にいらない方はそっと戻るボタンを押して忘れてください
それが貴方の為です
それでも良い方はどうぞ見てやってコメントを残してやってください
キャラ崩壊注意ですよ!本当に注意ですよ!
ー研修6日目ー
《朝(前半)》
【提督編】
白雪との別れを胸に相棒と共に立ち上がる
クルージングを三日月に反対されるがおやっさんにより強制自送還
結局クルージングはする事になる
【研修生編】
クルージングを楽しみに準備を開始
黒髪が食堂で他の艦娘達と共に弁当作り。一匹の罪のないゴキさんが踏まれる
金髪は入渠ドッグでメンテナンスの手伝い。後に朝潮と医務室へ行ってしまう
メガネは文月と共に緊急時の道具の点検をしている。なんかイチャイチャしているような
【如月編】
提督の事自分の事を考えて最近眠れていない様でとりあえず目覚ましが鳴るまでは目を瞑っている。元帥に禿げて欲しいと最近よく思う
朝礼で大本営の艦娘達と喧嘩になりかける
夕張が土下座をしていた
《朝(後半)》
【提督編】
研修生達にとってこのクルージングが良い道へと行く事を西提督と共に考え成功を祈る
【研修生編】
海へ出てクルージングを楽しむ
金髪は艦娘達の凄さと同時に無力差を知り自分の出来ることを考え入渠管理士の道を決める
黒髪はなんか髪の毛が凄い事になってる
メガネは船酔い
【如月編】
おんぼろ鎮守府へと侵入して来た青年と共に朝食をとる
守ろうと大きな罪を犯してしまった青年を提督と重ねてしまい世話を焼いてしまっている
それが青年にとっても如月にとっても良くないと知りつつも
そして更に自分の事で悩んでしまっている
その後元帥に呼ばれて執務室へと・・(此処から第9章スタート)
《昼(前半) 》
【提督、研修生編】
遺体を発見
命の尊さを知ると同時に戦う者の覚悟を知った
遺体は駆逐棲姫となり襲いかかるがメガネと金髪の活躍により撤退に成功
黒髪は蹲っていた
しかし、西提督船は壊れてしまい孤立状態となる
海でのカップ麺は最高だぜ
【如月編】
?????????
《昼(後半)》
【提督編】
気まぐれな不死鳥作戦を開始
結果は成功とも呼べずに終わり殺気を感じて無人島へと皆を連れて逃げる
西提督と殴り合いお互い二の次だと誓い合う
提督、黒髪の二人は島の探索により犯罪者である大井と出会うが追ってから彼女を逃がす為に野良艦娘である龍田に単身提督は捕まり野良艦娘達が住む元鎮守府へと連れて行かれる
龍田により一度は精神を壊されそうになるが耐える懲罰房へと入れられる
【研修生編】
気まぐれな不死鳥作戦を開始
結果は失敗に終わり無人島へと流される
提督と西提督の殴り合いを見て研修生達は肉体言語を知る
その後金髪、メガネ、西提督の三人は島の探索で連れ去られた北上と出会うが北上の抵抗に西提督が倒れる
金髪とメガネは西提督と北上を連れて浜へと向かう
黒髪と大井が追いかけっこしているところで合流
大井、北上と手を結びこの島の脱出を決意
提督が帰ってくると信じイカダ造りを始める
【如月編】
????????
《夕方(前半)》
【提督編】
元鎮守府から脱出する為に野良艦娘である電と鳳翔に手伝ってもらう
その際に負傷してしまった鳳翔を助ける為に入渠ドッグへと向かうが入渠ドッグにロックが
そしてそれを解除させまいと立ち塞がったのはおんぼろ鎮守府の大切な仲間である如月だった
【研修生編】
提督の帰ってくるのを信じていたが来ずに諦めてしまおうとした時に来たのは提督ではなく駆逐棲姫だった
大井が一人戦い皆を逃す
このままでは大井は確実に沈んでしまうと知った研修生達は一度は逃げる事にしたが立ち向かう事を決意
西提督は・・置いて来た!
【如月編】
提督を見つける
《夕方(後半)》
【提督、如月編】
研修生達を助けて駆逐棲姫へと
【研修生編】
大井、北上と共に駆逐棲姫と戦闘の末大井、北上が戦闘不能になるギリギリの所を提督達に助けられ戦闘を任せて撤退
黒髪がなんか出た
西提督回収!!
【西提督編】
無人島の強者達(カマキリとか蛇とか)との戦いで勝利
《夜》
【提督、如月編】
????????
【研修生編】
????????
《深夜》
【提督、川内編】
????????
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ーーーーーーーー
ーーー
それでは第9章もよろしくお願いします!
私は一体・・誰なの?
ーおんぼろ鎮守府執務室ー
ガチャ
如月「失礼します」
大淀「せめてノックしてから入ってもらえませんか?」
元帥「ふっ、おんぼろ鎮守府の奴等はやはりー」
如月「嫌味を言う為に呼んだなら帰ります」
元帥「ほう・・なら帰れ」
大淀「と言う事です。どうぞ帰ってください」
如月「失礼しました」
元帥「あ、本当に帰えーっ、いや、待つんだ!待ってください」
大淀「え?ま、待ちなさい」
如月「何ですか?」ギロッ
元帥「っ!」ビクッ
大淀「元帥?どうしたんですか一体」
元帥「大淀は少し出て行っててくれないか?少し二人で話しがある」
大淀「え?ですが・・少しでも目を離すのはちょっと秘書艦として・・それに書類が」オロオロ
元帥「少しの間だ。それと他の奴らが入って来ないように外で見張っていろ。だが、盗み聞きなどするなよ」
大淀「それは任務ですか?」ピタッ
元帥「あぁ、そうだ」
大淀「任務了解」キリッ
そう言うと大淀は部屋を出て行った
執務室には如月と元帥だけになった
如月「大本営の娘達は頭がカチカチの難儀な娘が多いわね。もっと柔軟な対応が出来ないのかしら」
元帥「はぁ・・で?」
如月「はい?用があるのは元帥では?」
遂にボケたの?と言う言葉は飲み込んだ
元帥「そうだがその前になんでそんなにイライラしてるんだ?本当に帰られたら呼んだ意味がないだろ」
如月「帰れと言ったのは元帥よね?」
元帥「いや、そうなんだけど・・そこは察してくれよ」
如月「はぁ・・難儀なのは元帥も同じね。いつまでそうやって本性を偽り続けるの?」
元帥「これが今の元帥に求められる姿なんだ・・部下達もだからこそ慕ってくれている」
如月「だから、常に厳しくなければならない。青年も許す事が出来ないと言いたいのね」
元帥「そうだ。私の勝手で法律を曲げてしまえばそこから綻びが生まれてしまい部下達にも法律を守って来た者達にも顔向け出来なくなる下手をすれば今の地位を無くしてしまう事にもなる」
元帥「そうすれば・・私は守れなくなるあいつを」
如月「でも、あの子はただ守ろうとして・・・それなのに」
元帥「・・・・・・・」
元帥「だが地位も法律も何も気にせず尚且つ司令官であり大本営の者達を前に大馬鹿な事を言える奴が居るなら可能性があるかもしれんがそんな奴は居ないだろうな」
如月「っ・・そうね」イラッ
元帥「・・・この話しはお終いだ。それよりやはりイライラしておるな?」
如月「・・・・・チッ」
如月「別にイライラなんてしてないわ。それより朝礼でみんなの前で呼び出された用はなんでしょうか!なんなら恥をかかせてくれたお礼を今しても良いわよ」イライラ
元帥「やはりイライラしてるじゃないか!あれはすまんかったと思ってる」
如月「すまんかった?」
元帥「申し訳ございませんでした!ちょっと遊び過ぎましたと言うより部下達の目を少し逸らしたかったんだ」
なんか朝礼の時にソワソワしていたのは気の所為じゃなかったのね
トイレなら行けば良かったのに
もしかして少し漏らしたから?逸らしたかったとか?歳的にあり得るわね
如月「もう・・少しは自重してよね?部下の前だからってカッコつけたい気持ちは分かるけどね?」
如月「朝礼前にトイレにはちゃんと行くのよ?」
元帥「はい・・ん?」
如月「ん?なに?」
元帥「い、いや、聞き間違いかな?それより先程から一つ聞きたいのだが?」
如月「なに?」
元帥「なんで元帥ちゃんって呼ばなくなった」
如月「っ・・・・・・」
突如不安と恐怖が押し寄せてくる感じがした
元帥「いや、皆の前で呼ばれると困るが二人の時はそれでも良いかな?って・・あ、でも別に呼ばれたいわけでは」
如月「も、もう呼べないわよ・・・だってその呼び方は私・・じゃないから」
不安と恐怖がどんどん強くなってくる
それと同時に頭の中で自分とは違う考えが浮かんで・・でも、それが本当に自分とは違うのかも分からなくて
あれ?
元帥「それはどう言う意味だ」
如月「私はおんぼろ鎮守府の如月で元帥の知ってる如月じゃなくて・・でも、この想いは私ので・・あれ?ううん、この想いは私のではなくて・・だったら提督へのこの気持ちも?あれ?」
あれ?あれれ?考えがまとまらない
元帥「如月・・お前もしかして」
如月「だったら・・私って誰なんだろう・・・」
誰なの?
元帥「そう言う事なんだな如月」
如月「ねぇ・・私は何なの?何者なの?」
気持ち悪い・・
元帥「やはりその気持ちは想いは沈んでも残るのか・・嬉しいと思うべきなのかもしれないが」
如月「元帥・・私の提督を思う気持ちは私のではなくて前の私の気持ちで・・今の私は何も思ってないの?」
元帥「そうとも言ってられんな」
元帥「此処に呼んだのは一つ頼みたい事があったんだがそれとは別にもう一つあったんだ」
如月「うぅ・・頭が痛い・・私は誰・・貴方は誰・・此処に居る私はなに?・・」
元帥「最近お前の様子がおかしいと思っていたのでそれについても聞こうと思っていたんだが理由が分かった」
如月「私は・・私は・・私は・・」
元帥「しっかりしないか!」バシン
如月「っ!」頬ヒリヒリ
元帥「お前は誰だ!」
如月「わ、私は・・」
元帥「記憶など関係なく誰かと聞いてる!」
如月「き、如月です・・」
元帥「所属は!お前の司令官は誰だ!」
如月「おんぼろ鎮守府で司令官は・・・・提督です!」
元帥「なら、それで良い。難しい事は考えるな良いな?お前はお前だ!」
如月「でも、私は」
元帥「良いか?よく聞けお前のその不安や恐怖は艦記魂障害だからだ」
如月「艦記魂障害?何それ」
元帥「稀だが現役の艦娘がこの障害を発症する事がある」
元帥「あまり知られていない事だがそれについて調べた事があってな実際にその障害になった娘から話を聞いた事もある」
元帥「人間である私が艦娘の事について艦娘に教えるのはおかしいが真剣に聞いて欲しい。お前のこれからに関わる大きな事だ良いな?」
如月「はい・・お願いします」
元帥「艦娘はその役目を全うし倒れる時に新しく生まれてくる同一艦にその記憶を魂を託すと言われている」
如月「ええ、だから知っていない事を知っていたり生まれた時にある程度知識があるのもそのお陰だと言われてるわ」
元帥「しかし、それは全てではない事も知ってるな?」
如月「受け継がれる記憶はロックされていて一人一人によってその解除方法も違う」
元帥「司令官である人間と話した事で人を守る存在だと知った娘もいるし逆に野良艦娘が人を恨んでいる一つには人間に会えていないからと言うのもあるが実際どうかは分からない」
如月「でも思い出す事が全て良い事だけではないけどね・・」
元帥「それだけの記憶が彼女達にはあったと言う事だ」
如月「でも、その受け継がれる記憶は思い出しても気付きはしない」
元帥「そうだ。あたかも最初から知っていた様に馴染んでいく」
元帥「例えるなら記憶のタンスに別の人の服を入れても、いざその服をタンスから出して着ても違和感を感じずに昔から着ていたかの様に当たり前に着るのだ」
元帥「故にその服が別の人の服だと気づく事もないし服も馴染んでいき自分のになってしまっている」
如月「でも、私のは・・・」
元帥「如月、はっきりさせよう。今までは私の勝手な決めつけでお前があの如月だと思っていたがそれは間違っていないな?」
元帥「お前が受け継いだ魂は記憶は提督の母親である如月で間違いないな?」
如月「はい、そうです。はっきりとそう感じたのは西鎮守府での演習中でした」
如月「負けそうになった時に気付いた事に気付いたんです」
元帥「それがおかしいとは?」
如月「その時は思わなくて提督を守らなくちゃってそれだけを考えていたわ」
如月「でも・・最近ではその思いが強くなってきて見守る事も必要だと思ってるのにそう思わない私もいて・・うぅ・・頭が痛い」
元帥「すまん深く聞き過ぎたな。もう一回いくか?」スッ
如月「うぅ・・お願い・・」
バシン!
如月「痛いわ・・」頬ヒリヒリ
元帥「叩く方も辛い・・本来ならお前が私を叩かないといけないのに・・」
如月「・・・・続き良い?」
元帥「許してはくれないか・・いや、許されない事だな」
如月「私は結局何が問題でこうなってしまったの?」
元帥「如月は記憶のタンスに入ってる別の人の服を別の人のだと気付いてしまっている。それが問題なんだ」
元帥「着ている服が他の人のだと分かっている。それなのにその服が馴染んでしまっている」
元帥「だから、本来の自分とその服とで差が生まれてしまいそれを無理矢理くっ付けた状態が生まれてしまっている」
元帥「違和感はある筈なのにそれが自分の服だと自分に似合うと思わないといけない」
如月「でも、それだけなら違和感を感じるだけじゃ?そんなものではなくて私のはー」
元帥「分かってる話しは最後まで聞けこれの一番厄介なのがその服に彼女の強い想いが染み付いてしまっている事なんだ」
如月「彼女の想い・・提督の母親のって事よね」
元帥「その強い想いがあるからお前はその服が自分のではないと気付いたんだ。そしてその強い想いは服が馴染むと同時にお前の中で違和感を残したままお前の魂に馴染もうとしている」
如月「っ!」
元帥「違和感はあるのに馴染むその矛盾と彼女の想いとお前の想いが変に混ざりかけている事から迷いが生じている」
元帥「これはお互いが強い想いを持っているから起こる事なんだ。お互いの強い想いが衝突してしまっている」
如月「私と彼女が・・」
提督を見守ろうとする私と側に置いて常に守ろうとする彼女
違っているかもしれないけど根本的な事は同じ想いだと思うのに
どうして
如月「うぅ・・・」
元帥「如月、これ以上この事を考えるのは駄目だな。なんなら元帥として正式に命令しても良い。このままの状態で混ざってしまえばお前は」
如月「もしかして彼女になってしまうの?提督の母親である如月に・・だとするならその方が」
元帥「馬鹿者!どんなに強い想いが残っていても想いだけでは何も出来ない!彼女はもういないんだ!お前と言う受け継ぐ者が居なければただの亡霊に過ぎない!その想いだけが残り声を掛けても何をしても反応もしない人形の様になるのだぞ!そんなのは死んだのと変わらない!いや、想いを腐らせるだけ尚更タチが悪い!」
元帥「お前はそんな何も成せない姿を提督に見せたいのか!私はそれを何人も見て来たが見れるものではないぞ!司令官の声にも何も答えられずその司令官がその手で処分するしかなくなった。涙する司令官に私は無慈悲な言葉を掛けて来た・・提督にもそんな思いをさせたいか?」
如月「提督!いや!そんなのは絶対にいや!」
元帥「悲しい事だが、もう彼女は記憶でしかない・・服は人の内面も外面にも大きく関わるが所詮は服であって着る人がいなければ何の意味もない」
如月「・・・・・・」
元帥「人を形成する重要な一部と言っても良いかもしれないが、だからと言って服は人にはなれないんだ」
元帥「それになきっと提督ならお前を選ぶ母親ではなくお前をな」
如月「そんな事・・・」
元帥「あいつにとってお前はそれだけ大きな存在なんだあいつを悪く見る人達や理不尽を言い付けてくる奴等・・そして私から耐えられたのは紛れもないお前の存在があったからだ」
元帥「お前がいなかったらあいつはとっくに壊れていたよ・・そして後悔していたよ・・私は」
如月「・・・・・・」
本当に難儀な人ね・・貴方は
そんなもの全て捨ててしまえば良いのに
元帥「あいつの為を思うならお前であり続けろ良いな?信じてやれ」
如月「元帥・・はい!」
元帥「難しい事を言ったかもしれないし不安もあるだろうがこいつは治す事はそう難しくないんだ」
元帥「お前がお前であり続けようと強く思っているなら時期に受け入れて違和感はなくなり記憶は正常に馴染む様になる要は心の問題だ」
元帥「だが生憎これに効く薬はないがな」
如月「そう・・・・」
元帥(私が長年掛けて調べ抜いた事だ。この障害は絶対に治る!治してみせる!そう、助けられなかった彼女達に誓った)
元帥(でも、私には如月を助ける事は無理だろう・・だから)
元帥「不安か?このままではまた色々考えてしまいそうだな。よし、お前は提督に会え今すぐにな」
如月「え?」
元帥(あいつなら)
如月「それってどう言うー」
元帥「大淀!」
〈はい!
如月「え?何処から?」
窓バリーーーン!!
如月「きゃっ!」
大淀「呼びましたか」スタッ
如月「あああ!窓が・・よくも!」
元帥「如月に例の任務について話すのだ」
如月「提督の執務室に何してくれてるの!弁償しなさい!」ポカポカ
大淀「・・・・任務ですので」
如月「人の部屋の窓を壊す任務が何処にあるのよ!依頼主は誰?言って見なさい!今すぐその人の家の窓ガラス全部割ってやるわ!」
元帥「はぁ・・窓の修理の見積もりを出しておけ」
大淀「任務了解」
如月「ガルルルル!」
大淀「・・・・・・」
如月「フシャーーー!」
大淀「少しはマシな顔になりましたね少しはスッキリしましたか?」
如月「っ!・・・・・・はい、ちょっとは」
元帥「大淀」
大淀「如月、他おんぼろ鎮守府メンバーに任務を言い渡します。これは極秘任務であり超重要で貴女達でしかやり遂げられませんそのつもりでお聞きください」
如月「は、はい」
そんな任務をなんで私達が?大本営の娘達が出来ないなら私達に出来るはずないけど・・
大淀「元帥は書類をやってください。後、窓の修理依頼」書類ドッサリ
元帥「う、うむ・・あれ?」
大淀「では、この任務表から探してください」
如月「え?言ってくれるわけではないの?」
大淀「自分でしてください皆さんもそうしてます」
如月「皆さん?でもでもお聞きくださいって」
大淀「チッ、もう良いからさっさと見ろよ時間ないんですよ?こっちは元帥が提督の分の書類仕事までやるとか言って唯でさえ間に合ってないんですから書類をさっさと書かせてくださいね」
如月「分かったわよ・・そんなに怒らなくても」
元帥「なんか多くないか?」ボソッ
大淀「気の所為です。それと無駄口叩かずさっさとしてください」
元帥「・・・・・はい」
任務表を開いて極秘任務を探す
大淀「・・・・・・」ジーーー
如月「・・・・・・」ペラペラ
やりにくい・・
それにいっぱいあって中々見つからない
遠征関係に演習関係それに工廠関係と様々だ
卯月の遊び相手募集まであるけど報酬がかなり高い
そんなにみんな嫌なの?
今度暇があったら遊んであげましょう報酬は貰うけど
大淀「任務は五つまで選べますよ」
如月「一つで充分よ」
なんかちゃっかり別のも一緒にやらせようとしてない?
如月「ん?」
【緊急任務】
《大本営の間宮さんが拗ねてしまい引きこもりました。そして恐ろしい事におんぼろ鎮守府の間宮さんがアップを始めています。これは食堂崩壊の危機です!おんぼろ鎮守府の誰かどうにかしてください。と言うかどうにかしろ!》
如月「まさかこれ?」
大淀「先程誰かが大本営の間宮さんを泣かしたらしいのですが聞いた話しではおんぼろ鎮守府の人がやったと」
大淀「まぁ、大本営の娘達では泣かす事なんて出来ませんからある意味で怯えている娘もいますよ」
如月「誰かしら?泣かすなんて酷い事するわね」
大淀「これも早急に解決して欲しいですがこれではありません貴女達にやって欲しいのは超緊急任務です。探してください」
如月「あの、どれか教えてくれれば」
大淀「甘えないでください皆さんやってる事です」
如月「だから皆さんって一体・・」
大淀「早くしてください。あ、この緊急任務は受けてくださいね皆さん大本営の間宮さんに胃袋を握られていますからこのままだと暴動が起き兼ねませんよ」
如月「っ!」
そんなに・・と言う事は大本営の娘達が食堂で会話もなしに食べていたのは食事を名一杯楽しんでいたから?
そう思うとなんかあの重い空気も少しは軽く感じられる様な気がする
蟹を食べる時にみんな黙って食べてしまうのと同じ現象なのね
如月「ふふ、次からは食堂で食べるのも良いわね」
そう思いつつ分厚い任務表を見ていく
如月「これは・・・」
元帥が提督に今すぐ会えと言った意味がやっと分かった
【超緊急任務】
《クルージングへと出た提督達を発見その後護衛せよ》
如月「クルージング?どう言う事これは元帥説明して!」
元帥「・・・・・・」書類カキカキ
如月「元帥!」
大淀「今書類に集中してるので私が説明しますがちょっと待ってください」
大淀「元帥!!」
元帥「っ!」ビクッ
大淀「窓の修理依頼からしてください」
元帥「・・・・・・はい」タウンページ
如月「元帥・・・・気の毒に」
大淀「失礼しました。では、話しに戻ります昨晩西提督から連絡がありました」
如月「と言うか最初から説明しなさいよ面倒な事を」ボソッ
大淀「規則ですので」
如月「・・・・・・・」
自分で選ばせる事で結果がどうなろうと自業自得って言って何もしてくれないだけでしょうね
大淀「説明を再開します」
大淀「昨晩西提督から研修生達を連れてクルージングをするので許可が欲しいと来ました」
如月「まさかしたの?」
大淀「西提督は周りとは違う考え方を持っていると言うのもあって孤立していると言っても過言ではない状態でした」
大淀「しかし、それでも結果を残している事もあり、周りから何かをされる事はありませんが他の鎮守府と積極的に交流を深めると言う事もありませんでした」
大淀「私達としても実力がある分周りと色々交流を深めて切磋琢磨して欲しいと思っていたんですがなんせ西提督はかなり人を選びますから」
如月「まさか、そんな西提督から頼まれた事が嬉しくて二つ返事でOKを出したとか言わないわよね?」
大淀「はぁ・・OKを出した本人は西提督に借りを作っておけば後々使えるからだと言っていますが嬉しかったんでしょう」チラッ
元帥「窓ガラスを、そう、領収書には大淀・・じゃなくて元帥でお願いします」電話中
大淀の元帥を見るその目はまるで我が子を見るかの様に優しかった
如月「貴女もしかして元帥の本性を」
大淀「さぁ?私は何も知りませんよ?ただ元帥は書類に集中すると周りが聞こえなくなりますから一人に出来ないってだけですよ?」
大淀「あのハゲは独り言が多いですから、ふふ」
元帥「・・提督が心配だOKしたのは失敗だったか・・いや、だが・・」書類カキカキ
如月「成る程ね・・良い性格してるわね」
大淀「そうかしら?貴女もそうだと思うけど?」
如月「でも、元帥も馬鹿じゃないわ。OKを出したならそれだけの準備をさせている筈よ?絶対安全とは言えないけどそれに近い事をさせないとOKはださないわよ」
大淀「そうなんですが、なんせ元帥はああ見えて心配性で今朝夢で見たらしいんです」
如月「夢?」
大淀「西提督達の船がクルージング中に爆発する夢です」
如月「笑えない夢ね・・」
大淀「それから気になって気になって朝から分かるくらいにオドオドしてソワソワしていたんです」
大淀「これは他の娘達には見せられないレベルのオドオドのソワソワでした朝礼は危なかったです。あの時貴女達に救われましたね」
如月「そう言う事ね・・もう、電話でも何でもしてやめさせれば良かったのに」
大淀「一度許可した事をそんな理由ではやめさせられないって安いプライドが言ってる様ですよ?こう言うの老害って言いますよね」
如月「貴女元帥の事嫌いでしょ」
大淀「いえ、それとなく楽しくはやらせてもらってますので嫌いではないですよ?それに仮に嫌いだとしても」
如月「しても?」
大淀「そこは任務ですので、それにあの人顔を見れば大体考えてる事は分かりますから見てて面白いですよ」
如月「そう・・」
嫌いどころか大好きって事ね・・
大淀「ちなみに嫌いな人はいませんが大っ嫌いな人はいますよ会ったら理不尽な任務を五十個程押し付けるレベルの方が」
如月「聞かないわよ・・愚痴なら元帥に言えば良いわ。二人とも良いコンビだと思うし」
難儀な性格同士お似合いね
大淀「あら、残念」
如月「それで?結局止められないから私達が提督達と合流すれば良いの?」
大淀「はい、そうです。因みに向こうには何も言っていませんし今更心配だから援軍送りましたとか元帥の閉店セールもビックリの安いプライドが許さないので悪魔で貴女達が勝手にやったと言う事でお願いします」
大淀「帰ったら元帥のお叱り受けてくださいね」
如月「本当・・勝手ね」
大淀「大きくは言えませんが他の鎮守府とかにばれるとちょっと・・いえ、かなりやばいのでクルージング事態が事を大きく出来ないので身内でどうにかしてしまえと言う事です」
大淀「ほら、大本営の娘達が動くと結構周りにすぐ知られてしまうんです。なんせ有名なもので」
如月「それは自慢?」
大淀「さぁ?どうとるかは貴女に任せます。と言う事なので何かあっても大本営は動く事が出来ませんのでよろしくお願いします」
如月「期待してないわよ」
大淀「それなら良いですが、はい、これがクルージングの航路地図です。沈む前に合流してくださいね」
如月「???」航路地図
あれ?知ってる航路地図と違う・・なんでこんなに線があるの?船って分身するの?
大淀「見方分かりますよね?距離はそんなにないと思うので予想航路や緊急航路などその他諸々を細かく描いてます。流石妙高ですね西提督には絶対描けませんね。で?大丈夫ですか?」
如月「う、うん、大丈夫よ」
ううん、大丈夫じゃない・・
今更知らないとも言い難いし
でも、やっぱり聞いた方が良いわよね。そうよね?知らないんだし仕方ないのよ
如月「あ、あの実はー」
大淀「あ、もしかして馬鹿って言われるのが怖いんですか?」
如月「はい?」
大淀「大丈夫ですよ二度ぐらいしか言わないので、ほらほら言ってみてください大淀様無知でお馬鹿な私に地図の見方を教えてくだー」
如月「分かりますから結構です!では、任務があるので失礼します!」ムカッ
ガチャ
ドン!
〈馬鹿にして明石さんに聞くから良いもん!
〈禿げろ
大淀「・・・・・・・・」
大淀「これで無駄な事は考えないで済みそうですね」
元帥「・・・なんか泣きそう」書類カキカキ
大淀「提督・・彼女を頼みますよ」
大淀「さて、少しお茶にしますか?」
元帥「っ!!」ピキーーン!
任務を受けて執務室を出た後におんぼろ鎮守府のみんな(一人を除く)を工廠に集めて今回の任務について説明した
勿論、元帥の事を配慮して理不尽に押し付けられた理不尽な任務って感じにして伝えた
報酬がうまい棒だとかその他諸々理不尽に
如月「と言う事なんだけど、提督の事も心配だしこんな理不尽な任務はみんな余り良く思わないかもしれないけど今回は従って提督に会いに行こうかと思うの」
まるゆ「う〜ん・・良いのかな?」
明石「気に入らない」
如月「え?」
明石「会いに行くって本気で言ってるの?」
不知火「明石さんは提督がどうなってもいいと?」
明石「そうとは言ってないけど他にやり方があるでしょ?」
夕張「私もそう思うなんで一々行く必要があるのかな?」
如月「どう言う意味?」
明石「要はあんたもあのハゲも提督が心配なんでしょ?目的がはっきりしてるなら他にもあるって事」
夕張「そもそも海に出なければ心配はないわけだし」
明石「どうせあのハゲがゴミ置場に放置されてるゴミ以下のプライドでこうなったんでしょ?」
鳳翔「元帥さん酷い言われ様ですね」
間宮「ハゲで元帥だと分かる鳳翔さんも大概ですよ」
夕張「あの人のプライドならあり得そうだね〜うん、絶対そう!」
如月「・・・・・・」
あってるから何も言えない・・・と言うかやっぱりこの二人も元帥の事を知ってるのね
明石「電話して提督にアホな事はやめて研修生達とUNOでもしてろって言えばいい」
不知火「ローカルルールはありですか?」
間宮「知らない人もいますしなしの方が良いですよ?」
鳳翔「話しが脱線してる様な・・」
夕張「まだ、出発まで時間あるしテルしちゃおうよ」
如月「でも、それだと元帥が・・」
このままだと提督に会えない
明石「それはどうにかするから、ほら」
そう言って携帯電話を渡された。と言うか持っていたんだ
如月「むぅ・・・・」ピッ
とりあえずメール欄を確認しようとしたら叩かれた
明石「余計な所は弄らずに早く提督に電話しろ」
如月「うぅ・・提督にも叩かれた事ないのに」
ないよね?
明石「次見ようとしたらタンコブ覚悟しろよ」
鳳翔「よしよし痛かったですね」ナデナデ
なんか恥ずかしい・・
夕張「と言うか提督の番号教えてもらってないんだよね・・信頼されてないのかな・・」
まるゆ「夕張さん、隊長はそもそも携帯電話持ってないですよ?」
夕張「え?そうなの!」
明石「はぁ・・携帯電話くらい持ってなさいよ」
如月「これじゃあ掛けられないわね」
間宮「西提督さんに直接言えば良いのでは?西鎮守府の電話番号ならすぐに分かりますよね」
なんでそんな事言うのかな・・大本営の娘達にカボチャの姿置きを振舞っていれば良いのに
明石「それはダメ。ああ言う暑苦しくて筋肉な奴は一度決めたら絶対に折れない。提督から言えばどうにかなるかもしれないけど止めろなんて直接言えば電話を切られるのが落ちね」
夕張「艦娘の言う事なんて本来無視しても良いからね。と言うか向こうがその気なら私達が職務妨害で罰せられるよ」
間宮「そうですか・・聞いた限りでは優しい方と言っていたので聞いてくれると思ったんですが」
鳳翔「優しい方なのは確かですから最悪でも罰せられる事はないと思いますよ?」
明石「その優しさが今は研修生に向いてるとしたら何としてもやろうとするだろうね」
夕張「だとするなら電話は出来そうにないね。それに切られなくてもあのハゲが許可をしたからと言われたらなにも言えないしね」
明石「本当余計な事しやがってあのハゲは」
如月「ほっ・・・」
これで提督の元へ行ける。楽になれる
楽になれる?
如月「誰が?」
提督?元帥?青年?
あれ?待って?
私がやろうとしてるのって・・会いたいからって危険だと分かっている海へと提督を・・
海に絶対の安全なんてない・・万が一が高確率で起こる世界
そんな世界に・・
如月「なにやってるのよ・・私は・・」
今が苦しいからって障害が治るかもって自分の事しか考えていないじゃない!
楽になるのは私だけ・・・・
もし提督に何かあったら・・彼女に顔向け出来ない
ううん、彼女は関係なくて私が
でも、その私は自分の事しか考えて・・
あれ?あれれれれ?
如月「うぅ・・・ダメ・・」
また、考えたら・・・呑み込まれる私じゃなくなってしまう!
でも、勝手に・・頭が・・朦朧と・・誰か・・・
助けて!
如月「うぅ・・だめだめだめ、やめて・・いや・・」ぶつぶつ
まるゆ「っ・・これは」チラッ
明石「どうしたの如月なんかぶつぶつ言ってるけど」
夕張「なんか顔色が」
まるゆ「っ!」まるゆパンチの構え
まるゆ「・・・・まるゆには出来ない・・こうなれば」フルフル
鳳翔「如月ちゃん俯いて気分でも悪いの?」
間宮「医務室に連れて行きー」
まるゆ「すぅーーー、あ!またメール欄見てますよ!これはこれは明石さんとあの人とのやり取りが!」
鳳翔「え?」
間宮「あら?」
夕張「あ、見ちゃった?そりゃあ気分も悪くなるね!明石黒歴史!」
明石「ちょっ!見るなって言っただろうが!」ゴツン
如月「ふにゅ!」
明石の拳が如月の頭へと直撃
本来なら痛みに悶えるが今の如月にとっては
如月「っ!」
正気に戻す為に必要な衝撃だった
如月「はぁ・・はぁ・・」
助かった・・もしゲンコツされてなかったらやばかったかも明石さんが暴力魔で良かったわ
如月「・・明石さんありがとう」
明石「え?なんでお礼?え?やり過ぎた!」
夕張「これは目覚めた?」
間宮「冷やす氷持ってきますね」ダッ
如月「まるゆ、助かったわ」ボソッ
まるゆ「・・・・・」グッドラック
そして聞かないでくれてありがとう
鳳翔「明石さんすぐに手を出すのはいけませんよ、めっ」ペシッ
明石「ちょっと大丈夫?でも、悪いのは」サスサス
如月「分かっているわ。それに大丈夫よ。それより早く電話をしないと」ピッ
明石「大丈夫なのかな・・」
夕張「誰に掛けてるの?」
如月「お願い出て」
もしかしたらまだ居るかもしれない
そんな期待を込めて携帯を持つ手に力が入る
少しして携帯から声が聞こえた
『もしもし?誰ですか?』
如月「もしもし、私だけど」
『え?誰ですか?』
如月「だから私よ」
『あ、詐欺師の方ですか?誰か撥ねられましたか?妊婦ですか?それとも新婦ですか?まさかまさかの自分が撥ねられたパターンですか?』
如月「はい?」
『これが私私詐欺なんですね!初めてです!さぁ、どんな設定なんですか!いくら振り込めば良いんですか!口座番号から声の特徴などのあらゆる手段を用いて特定してあげますから!さぁ!さぁ!』
なんでそんなに嬉しそうなの・・三日月が少し心配になってきた
如月「もう!如月よ!声を忘れたの?三日月」
三日月『あ・・・如月お姉ちゃんでしたかおはようございます!ふぁ〜』
今少しガッカリしなかった?気の所為?
如月「まさかだけど今起きたの?」
三日月『はい!携帯の音で起きました。昨日色々あって今の今まで起きられませんでしたから・・ふぅ、やっと薬が切れてきましたから動けます』
如月「今のは聞かないであげるけど薬なんてやめておきなさい。良い事なんてないから」
三日月『そう言うのじゃないですよ!詳しく言えませんけど信じてください!怪しい薬なんて使ってません。ちょっと背中にたくさんお注射が刺さっただけです』
如月「ううん、そうよね・・もう貴女は元艦娘であって戦いを終えたのだから好きにして良いのよね・・ごめんね余計な事言って好きにシャブでシャブりなさい」
三日月『お姉ちゃん!!』
如月「ふふ、冗談よ信じてるから三日月はそんな娘じゃないって」
三日月『お姉ちゃん』
明石「ちょっと早よ本題」ツンツン
如月「三日月実はね」
三日月『あ、お姉ちゃん聞いてくださいよ私ね気になる人が出来たんですよ!』
如月「へぇ、どんな人なの?一般の人?」
明石「ちょっと早く!」ツンツンツンツン
如月「三日月ちょっと待ってね。明石さん提督が心配なのは分かりますけど少しだけ待っててくださいね」
明石「は?心配なのはあんたで!」
如月「しーー!」
明石「ぐぬぬ!」
夕張「まぁまぁ、まだ出発まで時間あるしね?少し待ってあげようよ」
明石「早くしてよ・・」
如月「はい、あ、ごめんね続きをお願い」
悪いけど妹の気になる人はちゃん把握しておかないと悪い人だったらいけないし
三日月『えっとね・・その一般の人じゃなくて司令官でお姉ちゃんも知ってる人なんだけど』
如月「まさか・・」
三日月『そう、お姉ちゃんの司令ー』
如月「西提督さんね」
三日月『・・・・・・』
如月「三日月前に言ってたものね。自分を倒せる人じゃないと結婚しないって。でも、三日月は強いから勝てるなら西提督さんくらいしか考えられないわ」
如月「でもダメよ?彼はもう好きな人がいるんだからその気持ちは心の奥底にしまっておきなさい」
三日月『はぁ・・お姉ちゃんが信じてあげないでどうするのですか』
如月「え?」
三日月『その人は極限状態の私を倒したんですよ?しかも、向こうは病みあがりだったんです』
如月「え?」
病みあがり?筋肉じゃなくて?
三日月『それにその人の中には私の血が流れているんですよ』
まさかまさか!
如月「待って!三日月!」
三日月の気になる人って!か、確認しないと!
如月「もしかして提ー」
明石「ああ!もう遅い!」ガシッ
如月「あ、私の携帯!返して!」
明石「私のだ!もしもし三日月?」
三日月『あ、はい三日月です。貴女は?』
明石「明石だけど」
三日月『明石さんですか!西鎮守府での件以来ですねあの時はご迷惑をおかけしました』
明石「いや、お互い様だったしもう謝らないでそれよりちょっと頼みたい事があるんだけど」
三日月『はい、明石さんの頼みなら出来る限り頑張りますよ』
明石「実はこっちのハゲがアホな事した所為で面倒な事になってね」
三日月『元帥がプライドを拗らせたとそれはクソめんどくさいですね何があったんですか?』
明石「実は・・」
如月「どうしよう!どうしよう!」
三日月が提督を好きになって結婚なんかしたら!
如月「近親婚じゃない!」ゴロゴロ
洒落にならないわ!
不知火「ど、どうしたんですか!しっかりしてください」オロオロ
鳳翔「と、とりあえず深呼吸をしてください」
間宮「氷持って来ました!たくさん冷やしてください!」氷ドバァアア!
まるゆ「あ、そのまま直接は」
如月「きゃぁ!冷たい!」
夕張「ああ!ちょっとこれ私のお酒用の氷じゃない!拾って拾って!これ高いんだから!」
不知火「ぬ、ぬい!」
鳳翔「床に落ちた物は捨ててくださいね」
夕張「ほぼ全部じゃん!」
間宮「すみません・・急いでたので間違えました」
如月「うぅ・・冷たいわ」
冷たさのお陰で落ち着いてきたわ
冷静に考えれば大丈夫よ
まだ三日月も気になる人ってレベルだしまだ大丈夫
付き合ってもないしまだ慌てる時ではないわ
でも、この事はちゃんと覚えておかないと
明石「と言うわけなんだけど提督に止めるように言えない?」
三日月『そう言えばなんか慌ただしい空気がしてると思っていましたがそんな事をしようとしていたなんて・・近くに居ながら気付かないなんてなんと無能な・・』
明石「寝てたなら仕方ないと思うし余り気にしない方が良いよ」
三日月『いえ、それでもです・・いえ、後悔は後です。一応周りの娘に聞いて本当なのかどうか確認してみます。もし本当に海に出ようとするなら止めますから』
明石「面倒だけどお願い」
三日月『いえ、私も気付いたなら止めていますから寧ろ教えてもらって助かりました。では、早速行動に』
明石「それでなんだけど」
三日月『分かってますよ。電話なんて来てません私が自分で気になって聞いて気付いた。それだけです』
明石「助かる。私は提督に嫌われるのは別に良いんだけど嫌な娘もいるから」
三日月『ふふ、そうですね。そう言う事にしておきます』
明石「・・・・お願いします」
三日月『はい、三日月出撃します!』
三日月との電話が終わった
明石「本当良い娘だね。ちょっと苦手かもしれないけど」
如月「当然よ私の妹なんだから」
明石「その姉は最近なんかおかしいけどね」
如月「・・・・・・・」
明石「何かあった?」
如月「・・・・ない」
明石「教えてくれないんだ」
如月「教えるも何もないわよ」
明石「そんなに信用出来ない?」
如月「そう言うわけじゃなくて本当に何も」
明石「気付かないと思う?」
如月「だから!本当に何も!」
明石「そう・・ならもういい私の勘違いだったみたいでしたね。心配して損しました」
如月「っ・・・そんな事を言われても・・」
こんな自分でもどうにも出来ない事を言って心配させたくなかっただけなのに
みんなにも背負わせたくなかったのに・・
夕張「空気が重いね・・」
鳳翔「如月ちゃん・・」
まるゆ「・・・・・・」
不知火「電が居たらきっとこんな空気も・・」
間宮「電ちゃんは確か懲罰房へ行くと言っていましたね」
その頃電は
ーおんぼろ鎮守府懲罰房前ー
電「入れるのです!青年お兄ちゃんに会わせるのです!」
由良「貴女はダメです!前に逃がそうとした事は記憶に新しいです」
電「もうしないのです!少し話すだけ!先っちょだけ!」
由良「ダメです!信用出来ません」
電「むむむ!こうなれば!」ダッ
由良「飛んだ!」
電「少し働き過ぎだ!休みをくれてやる!なのですインパクト!飛燕!」シュッ
由良「対象を敵と判断・・」
ゴスッ
戻って如月達は三日月からの連絡を待っていた
如月「・・・・・・」
明石「・・・・・・」
夕張「うぅ・・氷溶けちゃった・・」
不知火「あの、もう三十分くらい経ちますが連絡がないですね」
鳳翔「何かあったのでしょうか?」
間宮「こちらから連絡してみるのは?」
まるゆ「明石さんどうですか?」
明石「頼んで置いてこちらから催促するのは嫌なんだけど・・いけ好かない奴とかなら気にしないけど」
如月「明石さん携帯貸してもらえますか?」
明石「はぁ・・次はメール欄見ないでよ」
如月「はい、大丈夫です」ピッ
と言うよりさっきも見てないけど
もう一回三日月に電話を掛けた
あの娘が連絡を忘れると言う事は無い筈だけど何かあったのかも
『はい、此方東鎮守府艦娘携帯電話サービスセンターです』
天城『お客様の担当をさせていただきます天城と言います。よろしくお願いしますね』
如月「え?はい、よろしくお願いします?」
明石「ん?」
夕張「これってもしや?」
天城『只今お掛けになった電話は電源が入ってないか出撃中の為電波の届がない所に居るか落として壊したかで繋がりません』
天城『まず、お客様のお名前を教えてください』
如月「えっと如月です」
え?なにこれ?三日月は?
天城『如月様ですね。所属鎮守府または元艦娘の場合元艦娘番号を教えてください』
如月「あ、あのこれは一体」
天城『あ、すみません。お掛けになられた三日月様は先程言いました理由により出られないので自動的に此方の東鎮守府艦娘携帯電話サービスセンターへ繋がり今私天城が対応させてもらっています』
如月「東鎮守府艦娘携帯電話サービスセンターなにそれ?」
聞いた事ないけど・・そんなのがあったなんて
明石「ちょっと電話貸して」ヒョイ
如月「あ、ちょっと!」
明石「もしもし?電話変わったけど良い?」
天城『あ、はい、それでは手続きの用意をしー』
明石「うちの大事な仲間を騙そうたってそうはいかないからね?」
天城『え?騙すってなんの事でー』
ガチャリ
問答無用で電話は切られた
明石「危なかった」
夕張「だね」
如月「明石さん・・今大事な仲ー」
夕張「ちなみにちなみに何がやばいって彼処の電話サービスセンターに繋がるといつの間にか留守電をお願いしちゃってんだけど手数料が高いんだよね!しかも鎮守府の司令官宛に届くという鬼畜仕様!元艦娘なら職場ね!」
夕張「だから基本繋がったら早々に切るか、イライラしてる時は鬱憤などをとりあえず全部吐き出してから切るかするのが普通なわけでまともに相手にすると提督が借金まみれになるよ!まぁ、余程の事を伝えたくて仕方なく使う人もいるけどとにかく高い!!」
夕張「でもね?艦娘や元艦娘は携帯を持つと必ず此処に届け出をしないといけないのもあるし年間費用も取られるしでとにかく!不要センター!詐欺師センター!海軍の犬センター!なんて呼ばれてるのもあり基本嫌われています!以上!」
夕張「分かった?」
明石「・・・・・・」
如月「・・・・・・」
恐ろしい所ね・・
夕張「ごめん・・空気読んでなかったね・・続きどうぞ」
明石「はぁ・・と言うわけだから気をつけな」
如月「うん・・ううん、それより今大事な仲間って」
そう言うと明石さんは少しバツの悪そうな顔をしつつも顔を少し赤らめて言った
明石「・・私だっておんぼろ鎮守府の一員だから・・如月の事は大事な仲間だと思ってるし」
如月「明石さん・・」
明石「だからこそ心配だったけど無理に聞くのは違ってたよね」
明石「ごめん・・きっと私達じゃどうにも出来ない事なんだよね?だから無理に背負わせたくないから言えなかったんだよね?」
如月「明石さん・・私はね」
明石「ううん、言わないで今言っても聞かないから」
如月「でも・・」
明石「待つよ。もし、本当に苦しくてたまらなくなった時に話して。どうにかする事は出来ないかもしれないけど一緒に悩んで考える事は出来るから」
夕張「勿論私もね!」
まるゆ「まるゆもです!」
不知火「ぬい!」
間宮「私もですよ」
鳳翔「遠慮しないでね?」
如月「みんなありがとう」
どうにかなってもいつか必ず言うから
その時まで待っててください
明石「でも、連絡が取れないとなるとどうなったのか分からないしもう西鎮守府に直接掛けるしかないよね」
如月「そうね・・もう選んでられないわ」
明石「まぁ、私が無理矢理我を通して止めようとしてるって事にすれば如月は大丈夫だよ」
夕張「そうしなくても提督は嫌ったりしないと思うけどね念の為だね」
如月「ううん、そんな事しなくて良いわ提督には私から直接言うわ止めなさいって」
明石「そう、意思は硬そうだね。ならそうして如月の方が提督も聞くだろうし今西鎮守府に掛けるね」
如月「お願い・・」
提督ごめんね・・でも、心配だから
貴方が無事なら後でいくらでも文句でもなんでも聞くから
だから許して
怒らないで・・嫌わないで・・見捨てないで・・
ガチャ
大淀「此処にいましたか。もう行ってしまったのかと思いました」
如月「大淀さん」
大淀「先程西鎮守府から出発したと連絡がありましたのでそろそろ出ないといけませんが編成は組めましたか?」
如月「そんな・・遅かった・・」
明石「ちっ、止めろって言えなかったのかよあのハゲは」
まるゆ「隊長・・」
大淀「止める?何故その必要があるのですか?まさか止めようとしていたとか言うんじゃありませんよね?」
大淀「元帥に恥をかかせるつもりなら許しませんよ?」ギロッ
不知火「ひにゅ!あ・・・」ビクッ
明石「だったらなに?」ギロッ
大淀「任務には護衛と書いてありますよね?読めないんですか?」
明石「あ、ごめん!読む暇なかった!読んでくれる?」
大淀「嫌ですが?」
明石「表出ろやハゲの犬」
大淀「では今回も任務から逃げますか?犬の様に」
明石「・・・・・・」
夕張「この人に口喧嘩じゃ勝てないって」
明石「ちっ!本当大本営の奴等はムカつく奴ばかりだよ・・やるよ!やってやるよ!」
大淀「では、編成をお願いします」
明石「私と夕張、不知火、まるゆ、鳳翔でお願いしますね!大淀さん!」
如月「え?」
大淀「貴方と夕張は元艦娘ですが良いんですか?」
明石「なめんなよ?元艦娘だろうが退役してないんだよ覚悟くらい出来てるしそこらの艦娘には負けない自信だってある!な?夕張」
夕張「え?う、うん・・たぶん」
大淀「そうですか。では、その様に」
如月「待って!私は?」
明石「如月は間宮と電とで此処をお願い」
夕張「電ちゃんだけだと何するか分からないしねお願いね」
如月「そうじゃなくて!なんで私を編成に入れてないの!」
明石「自分が一番分かってるでしょ?今の状態で海に出るのは危険と判断したからよ」
如月「私は大丈夫よ」
明石「それは私が決める」
如月「此処の代表は私よ!」
明石「艦娘のね?私おんぼろ鎮守府の司令官代理だし」
如月「そんな嘘は!」
大淀「いえ、その通りですよ明石は提督が帰ってくるまでのおんぼろ鎮守府司令官代理です」
如月「そんな・・・」
明石「悪いね」
夕張「ごめんね。私も今の如月ちゃんは危ないと思うし・・大丈夫!提督の事は任せて」
如月「っ・・大淀さん」
大淀「あまり口出しはしたくないのですが仕方ないですね。私も如月は行かない方が良いと思います」
如月「そんな・・でも、さっきは!」
大淀「任務ですから口出しは出来ませんがしろと言うならそう言う事です」
如月「っ・・まるゆ・・まるゆ何とか言って」
まるゆ「ごめんなさい・・まるゆも明石さん達に賛成です」
如月「っ・・・不知火私は必要よね?」
不知火「そうですが・・・・今は休んでください。如月がいなくても大丈夫ですから」
如月「そんな・・・鳳翔さん助けて・・」
鳳翔「如月ちゃん無理をしないでください私達だけで大丈夫ですから」
如月「そんな私は・・」
必要のない・・・・
如月「っ!」ダッ
鳳翔「あ、如月ちゃん待って」
間宮「あ、私スルー」
明石「これで良かったのよ。如月もみんなが意地悪で言ったんじゃないってのは分かってるから・・行くよみんな!総員準備!」ダッ
夕張「うん、行こう!鳳翔さん駆逐漢の操縦お願いします」ダッ
鳳翔「はい・・・・ううん、はい!」ダッ
不知火「如月・・必ず守りますから」ダッ
まるゆ「まるゆ!出る!」ダッ
間宮「みんな必ず帰って来てください・・美味しいご飯作って待ってますから」
大淀「間宮さんはご飯作る前に大本営の間宮さんと仲直りしてください」
間宮「ふふ、嫌です。おんぼろ鎮守府のキッチンは私の物です。ババアになんて渡してたまー」
大淀「うるさい。し、ろ」ギロッ
間宮「はい!して来ます!おばさーーん!」ダッ
大淀「・・・・・・・」
大淀「居たかったな・・・・貴方の居場所を奪っていたとしても此処に」
如月「はぁ・・なんて様なんだろう」
逃げて来てしまった・・それは諦めてしまうのと変わらない
もし、あの時引き下がらず言い続ければ行けたかもしれなかったかもしれないのに
仲間なのに一人になった様に怖くなって逃げてしまった
みんな私の為を思って言ってくれたのは分かってたのに・・
やっぱり私おかしいわ・・どうしてこんなに怖くなって・・
如月「そう言えば・・」
西鎮守府に居た研修生の一人は提督の事を諦めずに知ろうとした
あの時も周りは誰も味方がいなかったのにあの子は黒髪は逃げなかった
結果私は黒髪に提督の事を教えた
その覚悟があると分かったから
如月「私にもそんな強さがあったら・・」
提督がいない間に私は自分の弱さをたくさん知った
提督がいないと何も出来ない・・・
如月「戦う事も助ける事も出来ないなんて」ポロポロ
自然と出る涙を止める事が出来なかった
その場に座り込みただ泣く事しか出来なかった
でも、無情にも通り過ぎる娘達はこちらを見はするけど声を掛けてはくれなかった
声を掛けて欲しいわけじゃないけどそれが寄り一層一人だと言う意味に変わり更に悲観的になった
込み上げる負の感情に身を任せてしまう
このまま呑み込まれても・・良いのかな?
こんな私なんて誰も・・・
提督『如月』
提督・・・・
卯月「ぴょん♪ぴょん♪ぴょーん♪」
卯月「ん?あ、如月お姉ちゃんだぴょん!遊ぼ〜!拒否権ないけど」
如月「・・提督・・会いたいよ」ポロポロ
卯月「あれ?これってやばい感じ?」
如月「グスッ・・・・」ゴシゴシ
卯月「隙あり!ぴょんぴょーん」ツンツン
如月「うぅ・・・・・」ポロポロ
卯月「うん、洒落にならない状況かも」
卯月「ねぇ?どうしたの?そんなに泣いて何かあったの?」ナデナデ
如月「卯月・・・・」
卯月「お姉ちゃん食堂行こっか」
如月「・・・・・」
ーおんぼろ鎮守府食堂ー
卯月「そこ座って何か飲み物持ってくるから」
如月「・・う、うん」
何か何時もと違う感じがして着いて来てしまったけどこんな事してる暇なんて・・
如月「今日は何も予定ないじゃない・・」
そう、私は何も出来ない・・・・
このまま卯月と遊んでいる方が気が紛れるかもしれない
如月「それもイいかもネ・・」
如月「っ!」
今の感じ何?気持ち悪い・・
卯月「お待たせ間宮さん二人共運動場で青春してていないから適当に作ったけどレモネード飲める?」
如月「・・・・・・」
卯月「落ち着くよ?」
如月「いらない・・ほっといて」
卯月「そう・・」
卯月「知ってる?大本営の娘達ってみんな闇を抱えているんだよ」
如月「・・いきなり何よ」
卯月「まぁ、聞いてよ。そんなのみんなそうだよって思うよね?小さな闇もあれば大きな闇もある・・でも、違うのそんな生半可なものじゃなくて凄く凄く大きな闇なの」
卯月「それこそ他人が関わろとすれば関わった人が壊れてしまう程に大きなね・・」
如月「それは卯月もなの・・」
何時無邪気に笑っていた彼女とは程遠い下手な笑顔で言った
卯月「聞かないでくれると嬉しいかな」
卯月でもそんな風に笑うんだ・・
如月「っ・・・でも、だから何よ」
卯月や大本営の娘達が想像の出来ない程の辛い事があり大きな闇を抱えているかもしれない
だけど、小さい大きいじゃない
今が辛くて前が見えない事に大きいも小さいも関係ない
例えそれが小さくても他人から見たら些細な事でも
私にとっては胸が張り裂けそうになる程辛くて苦しい
自分も辛い事を乗り越えた闇を抱えてるから貴女も乗り越えろ抱えて生きろと言うのなら
それはその人の事を何も分かっていない押し付けにしかならない
如月「卯月が大きな闇を抱えてるからなんなの?私も抱えられると?強く生きれると思う?」
残念ながら私は・・弱い
一人じゃ何も出来ない程に
それこそ本当の意味で一人では生きられない
彼が死ねば私も・・
卯月「ううん、そんな事言ってるんじゃないよ。私が耐えられたからってお姉ちゃんが耐えられるとは思ってないし大きい小さいは関係ない」
如月「なら何よ同情ならいらない!」
妹に怒りをぶつけてしまっている
最低な姉・・
でも、止まらない
如月「どんな言葉をかけられても所詮は他人の自己満足にしかならない!誰も触れて欲しい部分には触れてもくれない!」
如月「分かってても触れてくれない!どうして?簡単よ!それは自己満足の範囲を超えてるからよ!」
如月「背負うのが怖いから火傷するのが嫌だから・・なら、もう!最初からほっといてよ!なんでそんな事するの!なんで期待させて落とすの!」
でも、それは言おうとしない自分が悪いだけでみんなは悪くない
なのに・・止まらない
もう何が悪くて良いのか分からない
卯月「落ち着いて今お姉ちゃんは疑心暗鬼になってるんだよ嫌なものしか見えてない。でも、それが全てじゃない。逆に明鏡止水でいればもっと視野は広がるよ?そうすれば色々良いところも見えてくる。その為にレモネード飲んで?自信作だから落ち着くよ」
如月「こんなの!」ガシッ
卯月「捨てちゃうの?折角お姉ちゃんの為に作ったのに・・・」
如月「っ!」ゴクゴク
レモネードの甘さが身体中に染み込む感じがした
それと同時にレモンの風味が怒りを焦りを恐怖を鎮めてくれた
だからこそ見えてしまう自分の情けなさや惨めさが
本当に嫌な女・・
如月「・・・お願いもうほっておいて」
卯月「最後まで話しを聞いて」
如月「・・・・・・」
卯月「私達は大きな闇を抱えてる。だから大本営の娘達はねお互い辛そうにしていても関わらないようにしてるの」
卯月「仲が悪いとかじゃなくてね?そう言う闇に敏感で慎重になって声を掛けれないの」
卯月「中途半端に触れられる事に恐れがあるからみんなそれだけはしないように必死なの」
如月「・・・・・・」
卯月「でも、だから周りから見ると無愛想に見えちゃったりして勘違いされるけど本当は違うんだよ?みんな心配してたんだよ」
如月「何が言いたいのいい加減に教えてよ」
卯月「私もだよ。仲間が辛そうにしても声を掛けない。私に背負える覚悟がないから・・ううん、持つ気がないからかな」
如月「なら、私にだって」
卯月「言ったでしょ?最初から持つ気がないなら声を掛けない」
如月「卯月・・・・」
卯月「お姉ちゃんの闇を全て背負う覚悟はしてるよ。他でもない大切なお姉ちゃんの為なら」
如月「で、でも・・・貴女にだって」
卯月「話さなくて良い。闇の部分だけを私に押し付けるだけでも良い。理由も大義名分もいらない。都合の良い事だけでも良い」
卯月「少しでも力になれないかな?」
如月「っ!」
卯月「この気持ちは本気だよお姉ちゃん」
その目に嘘のカケラも見えなかった
それは疑心暗鬼と言うフィルターを掛けても同じだった
透き通った純粋な目で奥から大きな決意を感じた
卯月は嘘を言ってない
本気でその覚悟を持っている
こんな私なんかの為に・・
如月「卯月・・卯月・・」ポロポロ
どうして貴女はそんなに強くいられるの
どうして私はこんなに脆いの
気付けば私は妹に泣き付いてさっきの事を話していた
こんなのは単なる我儘で自分勝手だし都合の良いように言っているのも分かっている
だけど、そんな自分勝手な我儘を受け入れて欲しかった
今の弱い私にはそれだけが救いになった
間違っててもおかしくても否定されたくなかった
でも、卯月は何時もの笑顔で言った
卯月「全てうーちゃんに任せるぴょん!」
その言葉が何より嬉しかった
でも、本当にこれで良いのかとも不安に思う
だけど今をどうにか出来るなら
乗り越える事が出来ると信じられるから
そしてあっと言う間に出撃の時間になった
おんぼろ鎮守府の港に止められた駆逐漢へと乗り込む仲間達
それを見送る
如月「みんな気をつけて絶対に無理はしないで」
乗り込む前にみんなが謝ってきたけど本当に謝らないといけないのは私であってみんなじゃない
その事だけを伝えたかった
明石「如月」
如月「明石さんみんなを頼みます」
明石「うん、任せて如月も此処を頼んだよ」
如月「うん、頑張るわ」
明石「それにしても」
卯月「船だ船だーー!」ピョンピョン
夕張「ちょっと!あまりそこら辺触らないで大人しく乗って!」
明石「本当に戦力になるのか心配だけど大本営の娘だし何より如月の妹だし大丈夫かな」
如月「ごめんなさいねこんな条件だして」
明石「大人しく留守番するから代わりに卯月を連れて行けって言われた時は少しビックリしたけど腕は確かだと思うしそれで如月が納得してくれるなら良いよ」
如月「そう言ってくれると嬉しいわ」
明石「じゃあ行くね」
如月「行ってらっしゃい」
明石「あ、そうだ電の奴何かやらかすかもしれないし気をつけてね」
如月「え?気をつける?なんで?」
明石「あの電だよ?何かするに決まってるでしょ?今は入渠ドッグだけど出たら仕返しとか考えそうだし」
如月「あ、そ、そうよね!はい、見張っておきます」
明石「後は分かってると思うけど間宮さんも入渠ドッグから出て来ても絶対にご飯作らせない様に」
如月「え?なんで?ダメなの?」
明石「え?当たり前の事聞くね?暴動起こしたい?」
如月「あ、えっと、はい!気をつけます!」
明石「なんかおかしいな・・」
夕張「明石ー!そろそろ行かないと」
明石「今行くから!」
如月「じゃあ、バイバーイ」フリフリ
明石「ん?」視線少し下
如月「どうしたの?」ペターーン
明石「んん!」チラッ
卯月「ピョンピョン!」ボイーーン
明石「あれ?如月しぼんだ?卯月は成長?え?え?」
夕張「明石ーー!早くーー!」
明石「分かってるって!」
如月「バイビーー」フリフリ
卯月「ピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョン!」
夕張「うるさ!」
明石「まぁ・・良いか・・」
こうしておんぼろ鎮守府提督護衛隊は出撃した
如月「ふぅ・・危なかった」
《メイン任務》
【目標】
提督達の発見及び西鎮守府まで無事に護衛せよ
出撃メンバー
明石(元艦娘)
夕張(元艦娘)
まるゆ(潜水艦)
不知火(駆逐艦)
卯月(ピョン♪)
明石「ねぇ夕張」
夕張「なに?」
明石「艦娘ってさ姉妹艦同士で胸の交換とかって出来るの?」
夕張「は?」
卯月「・・・・・」
まるゆ「・・・・・」ジーー
時間は昼になろうとしていた
出撃してから数時間が経った
敵に遭遇する事もあったが不知火の索敵の高さや鳳翔の運転テクもありばれる前に逃げたり、戦闘になっても明石の指揮もあり不知火達も大本営の娘達の特訓(主に避ける重視)のお陰もありほぼ無傷で撤退に撤退を重ねて進めていた
だけど、それから更に進むと手負いの敵ばかりと遭遇する事が多くなり
遂には敵に全く会わなくなってしまった
船の外を走っていた娘達を船へと戻して進む事になった
勿論索敵はしつつ慎重にかつ迅速に
でも、お腹は減るんです
不知火「・・・・・・」
明石「どう?」
不知火「今のところ敵の反応は感じませんね」
明石「そう、ならちょっと遅いけど昼にしない?一度船を止めて」
まるゆ「賛成です食べられる時に食べておく事は必要です。でも、その前に」
まるゆ「こいつを直さないと!またこいつ(駆逐漢機銃)弾詰まりしやがった!」ガチャガチャ
夕張「そんなに乱暴にしないで!もっと優しくしてあげて!此処はね?こうやって」
不知火「やっぱり心配です。念の為に少し周りを見てきます」
明石「心配性ね」
鳳翔「う〜ん、少しエンジンの調子悪いかな?」
明石「多分被弾した所為だと思うけどエンジンには当たってないし気にするほどではないから大丈夫だけど少し点検お願い夕張」
夕張「え?はーい!機銃の後に行くから!」
明石「さてと私はっと・・」
卯月「・・・・・・」ソワソワ
明石「あんたは随分とソワソワしてるけどトイレ?我慢せず行けば?」
卯月「別に・・大丈夫よ・・ぴょん」
明石「なによその取って付けた様なぴょんは」
卯月「こうやって船に乗る事なんてなかったから少し緊張してるだけ・・ぴょんぴょん」
明石「私には馬鹿にしてる様にしか見えないけど?で?どうした?」
卯月「・・・随分と呑気なものね仲間が危ないかもしれないのに」
明石「あ?」
卯月「貴女達の大事な司令官なんでしょ?どうしてそうやって呑気に構えてられるの?なんで船を止めたの?もっと急いでよ」
明石「あんた・・」
卯月「貴女にとってはどうでも良い司令官かもしれないけど、私にー、如月お姉ちゃんにとっては大切な人で」
明石「私にとってはどうでも良いって本気で言ってるの?」
卯月「そうにしか見えない。そうじゃないなら急いで」
明石「・・・・はぁ」
卯月「なによ」
明石「そう見えるならそう思ってれば良い。どちらにせよ此処の指揮は私がするから」
卯月「貴女ね!」
明石「落ち着けよ。それでも大本営の艦娘かよ目標を達成するのは急ぐだけ?仲間の状態や状況把握も出来ないでどうするの?」
明石「今このまま急いで船が壊れたら?お腹が空いて動けない娘が出たら?急ぐばかりで周りを気にせず急に襲われたら?」
卯月「そ、それは・・」
明石「指揮官ってのはそれらを全て把握してなるべく万全な状態を維持していかなければいけないの」
明石「大本営がどうだかは知らないけど私達はみんなで動く。動けなくなったら、邪魔だったら捨てるのは私達のやり方じゃない。あいつも提督もそれを望んでる」
卯月「っ!」
明石「あんたのやり方が違っても今は私のやり方に従ってもらう気に入らないなら何もしなくて良いから黙ってろ」
卯月「っ・・・・ごめんなさい」
明石「謝らないであんたらのやり方も否定する気はないし今回はこっちに合わせてって事だし」
卯月「・・それでも謝らせて・・仲間の事を考えずに自分の事しか考えていなかったんだから」
明石「仲間ね・・ねえ、なんで私が如月を連れて行かなかったか分かる?」
卯月「え?」
明石「あいつは何かに苦しんでる。多分私達ではどうにも出来ない事だと思う」
卯月「・・・・・・・」
明石「あいつは馬鹿じゃない私達に話して解決出来るならとっくにしてるしそうじゃないならバレない様に動く、だけどそれも出来てない。みんな気付いてる」
卯月「そんな・・」
明石「あいつ自身余裕がないんだ。何時もみんなの前を歩いて提督を支えていたあいつがね」
明石「それはね仲間達にも影響を受けてしまう。みんな不安になってしまって・・それを隠してしまう」
明石「そうなったら誰も気付いてあげられなくなる自分自身もね・・そして心の不安はやがて言動や行動に出てしまい戦場では一番の標的になり自分だけじゃなく周りを巻き込むことになる」
卯月「私が・・みんなを・・」
明石「大事な仲間が不安ならそう思ってるみんなも不安になる」
明石「でも、一番の理由は私なんだよ・・そんな苦しんでるあいつを見てなにもしてあげられない自分が嫌で・・とてもじゃないけど苦しんでるあいつを見て冷静に指揮なんて出来そうになかったから・・」
卯月「明石さん・・私・・」
明石「如月には内緒にしててよ?」
卯月「っ・・はい」
不知火「周りは大丈夫でした」
まるゆ「どうにか直りました」
鳳翔「エンジンも元気そうです」
夕張「明石、機銃もエンジンもまだまだ頑張れるよ!」
明石「よし、なら昼食にしようか。良いよね?卯月」
卯月「はいぴょん!」
夕張「それで食料係って誰だっけ?」
まるゆ「はい、まるゆです!」
明石「で?なに持ってきたの?ちゃんと食べられる物だよね?」
まるゆ「大丈夫です!あまり時間がなかったというのもありましたが、長く保存が出来てすぐに食べられる物を持ってきました!」
夕張「なになに!正直凄く楽しみにしてたんだよ」
まるゆ「はいこれです!」カップ麺
夕張「あれ?カップ麺?確かに長く保存は出来るけど・・」
不知火「私は食べられれば何でも構いません」
鳳翔「私も嫌いではないですよ?カップ麺」
卯月「うーちゃんカップ麺大好き!」
明石「まぁ、動いたりもしてるしカップ麺の塩分もちょうど良いかもしれないし中々良い判断だと思うよ」
まるゆ「ありがとうございます!」
夕張「あれ?私だけ我儘言ってるみたいになってる?良いよ!私もカップ麺大好きだし!ほら、食べようよ!お湯入れて食べよ!」
鳳翔「では、準備しますね」
卯月「手伝います」
カップ麺をみんなで食べた
不安だった気持ちがお腹が膨れた事で少しはマシになった
自分の勝手な考えばかりで周りを見れずにいた自分は言われた通り留守番するべきだった
明石さんが言ってくれなかったら仲間達を危険に晒していた
精神的に不安定になっているのは分かっている
でも、きっとそのままだとなにも変わらない
変わる為に動かないと
私自身が何かを成さないと維持する事は出来ても治る事はない
例えそれが仲間を騙す事になっても
みんなを心配させない為に私は今は卯月でなくてはならない
みんなごめんね・・・
卯月「・・・・・・」
まるゆ「・・・・・」ジーー
夕張「私達もしかしたら海の上でカップ麺を食べた初の人かも!教科書に載ったりして」
明石「載りたくないなそんなくだらない事で」
鳳翔「不知火ちゃん急いで食べるから口周りが汚れています。ゆっくりで良いんですよ」ふきふき
不知火「ぬい」
昼食を食べた後に改めて海路図を確認して船を走らせた
やはり敵には遭遇する事がなかった
しかし、船を走らせて数時間が経ったその時
不知火、鳳翔「「っ!」」
不知火「前方に反応があります!」
鳳翔「レーダーに反応がありました!」
明石「一旦船を止めて!各自警戒態勢!」
まるゆ「機銃はいつでも使えます!」ガチャン
不知火「卯月さん!私は前方右側をカバーします」
卯月「左側は任せるぴょん!」
二人は船から飛び出し艤装を展開させて船の前方左右に展開する
夕張「う〜ん・・これは」レーダー確認
明石「敵だった場合航路を此処から此処に変更するのはどう?」海路図
鳳翔「それだと少し燃料が足りなくなる可能性もありますからこっちの方が良いかと」
夕張「うん、これは多分」
明石「夕張、このまま進む?それとも別の航路の方が良い?」
夕張「ううん、このまま進んで動きも止まってるし真ん中の大きな反応は船だよ間違いない」
明石「それって・・随分と航路から離れてない?緊急航路も無視してるし」
夕張「何かあったのかもまだ提督達の船かは分からないけど」
明石「鳳翔そのまま進んで提督達かもしれない」
鳳翔「はい、急ぎますね」
明石「こちら明石、前方の反応は味方の可能性ありこのまま進むけど油断しないで」無線
不知火「了解!このまま進む様です。追い越されない様に且つ先へ行き過ぎない様に船の速度に合わせてください」
卯月「了解!」
まるゆ「隊長・・・・」ガチャ
そして何かが見えて来た
卯月「っ!」
不知火「船ですね周りにいるのは艦娘達ですか」
まるゆ「嫌な感じがする」
明石「休憩中には見えないな」
夕張「何か焦ってるみたい」
鳳翔「・・・提督さん」
そこに居たのは西提督船を囲む西艦娘達だった
まるゆ「なにしてる・・」
妙高「っ!貴女達はおんぼろ鎮守府の」
明石「どうやらビンゴみたい・・」
夕張「とりあえず行こ・・まるゆちゃんが飛びかかりそうだし」
明石「良いんじゃないそれで」
もし、提督達がいないなら・・ね
ー西提督船ー
まるゆ「隊長は何処だ!」
夕張「どうどう、落ち着いてね」
明石「で?どうなってんの?妙高さんよ」
妙高「それは・・・」
卯月「提督!提督何処!何処にいるの!」
不知火「船の中には誰も居ません!提督達は何処へ」
鳳翔「提督さん・・・・」カップ麺の容器
周りの娘達の表情もあまりよろしくない
中には泣いてる娘もいる
最悪の事態を考えつつも冷静に聞いた
明石「まさかスキューバダイビングしてるとかじゃないよね?」
妙高「・・すみませんでした」
まるゆ「っ!」ガチャ
夕張「まるゆちゃん駄目!」ガシッ
明石「たく、卯月と言いあんたと言い私の顔に謝れって書いてるのかよ・・何があったの提督達は何処に居るの?」
妙高「・・・・・・」
明石「あのなー」
ガシッ
妙高「うっ!」
卯月「提督は何処だ!なんで居ないの!何処に居るの!答えて!」
明石「ちょっと卯月落ち着きなってそんなに掴みかかってたら喋れないって」
不知火「・・・・・・」
卯月「っ!・・妙高さん提督は?」パッ
妙高「げほっごほっ・・貴女は?いきなりなんなんですか!」
卯月「私が誰かなんてどうでも良いでしょ?提督は無事なの?どうなの?」
明石「こいつは大本営の艦娘で訳あって如月が来れないから代わりに来たんだよ」
妙高「大本営・・彼女が・・来ていなくて喜ぶべきなのか・・分かりませんね。いえ、後で結局は・・」
妙高「卯月さん先程は失礼しました。そして御足労痛み入ります」
卯月「大本営の艦娘だからって面倒な挨拶はいらないから話して何があったの」
妙高「はい・・・」
それから事の経緯を知った
途中までは上手くいっていたが急に大量の敵が襲って来て
その対処をしておりその際に西提督船の無事を確認していたが、あらかた敵を倒した頃に救難信号が発信されている事に気付いて急いで向かうが途中で信号が途絶えてしまい見つけるのに時間がかかってしまった
本来なら西鎮守府へ帰投する筈だったのに航路から大きく外れた場所にあった事や誰もいない事から敵の襲撃の時点で何かあった可能性がある
妙高「私は西鎮守府で護衛の指揮をしていました。救難信号が発信されてから急いで来て先程着いたんです。それから捜索の指揮を取っています」
妙高「襲撃の際に援護に向かおうとした護衛の娘達は無線で安全を確認してから向かったと言っていましたが目視の確認を怠った事や護衛を一人も残さなかった事などの失態これは全て私に責任があります・・」
卯月「経緯は分かったけど提督は何処なの?まだ見つかってないの?」
妙高「それなんですが・・もし私の思う通りなら・・」
卯月「思う通りなら?」
妙高「これは最悪の事態です想定でも口には出したくありません」
卯月「そう・・でも、もし提督に何かあれば」
妙高「はい、その時は・・」
鳳翔「大丈夫ですか?」
卯月「暴れたりしないから心配しないで」
鳳翔「そう言う意味で言ったんじゃないんですよ」
卯月「・・・・ぴょん」
明石「それにしてもこの船綺麗過ぎじゃない?何かあったにしても傷一つない」
夕張「うん、そんなに頑丈そうには見えないしおかしいね」
妙高「・・・・・・」
不知火「実はこれは別の船で提督達はまだどこかに居て無事とか?」
まるゆ「きっとそうです!この船は別の人が乗ってた船なんです」
明石「私達以外にもこんな馬鹿な事をしてる奴らがいるって事?あり得ないでしょ」
不知火「ですが!」
まるゆ「どうなんですか?これは西提督船で間違いないのか?」
妙高「間違いないと思います・・不自然に綺麗過ぎですが」
明石「待って出発前はこんなに綺麗じゃなかったって事?」
妙高「・・・・はい、そうです」
明石「あんたの言う最悪の事態ってもしかして・・なら、あれは載せてたの?」
妙高「はい・・載せていましたがなくなっていました」
明石「そう・・だとするなら」
もう提督達は船の爆破で
夕張「明石、どう言う事?」
不知火「教えてください」
まるゆ「っ・・・・」
明石「恐らく提督達はー」
卯月「・・・・・・」
鳳翔「あの、ちょっと良いですか?こんな物が船内の端にあったんですが」
それは黒く汚れたスカーフの様な切れ端だった
明石「ん?これは提督達の物ではないと思うけど分かる?」
妙高「いえ、私にも分かりませんがあまり触っていたいとは思いません」
夕張「もしかしてそれが今回の元凶だったりするとか?」
明石「可能性は捨てきれないけど・・なんで船内に」
妙高「・・・・・・」
明石「どうしたの?」
妙高「いえ、どちらにせよ・・西提督達はもういません。如月さんに殺されても文句も言えませんね・・」
卯月「・・・・・・」
まるゆ「そんな・・・・」
不知火「間に合わなかったって事ですか・・」
鳳翔「・・・・・・」
明石「そうだね・・悔しいけど間に合わなかった」
夕張「っ!でも、まだそうと決まったわけじゃ!」
明石「じゃあ、何処にいるの?人間は艦娘の様に海の上を走れないし潜水艦の様に水中に長く潜れるわけでもないし装甲なんて全くない砲撃一発で簡単に死ぬ」
明石「普通に考えたら此処にいないだけで証明になる・・もっと詳しく言うなら」
夕張「もういい・・分かったから言わなくていいから・・聞きたくない・・」
明石「・・これから大変だけど頑張ろ」
夕張「・・・・うん」
不知火「何を頑張れと」ボソッ
妙高「・・・・・・」
明石「・・妙高、如月には私からもどうにか言ってみるから妙高は最善を尽くしたって」
妙高「いえ、必要ありませんその時は覚悟を決めますから・・どうせ彼のいないこの世界に未練なんてありませんから殺してくれた方が・・」
明石「本気で言ってるの?そう言う考えは好きじゃない・・彼の分まで生きようとは思わないの?」
妙高「貴女の様に強くはなれないんですよ・・私は」
夕張「っ!」
明石「っ・・へぇ、逃げるんだ西提督がそれを望んでると?」
妙高「望むわけないです・・でも、私はこれから何を信じて生きていけば良いの?大切な人も守れない私が何を守れば良いの?」
明石「妹達だっているじゃない!妙高が導いてあげないでどうするの!」
妙高「あの娘達なら私がいなくても大丈夫・・でも、私はもう」
明石「なんでそう言えるの!実際に聞いたの?辛いなら一層の事忘れてしまえば良いそうやって生きる道もある」
妙高「嫌です!絶対に忘れません!彼との思い出は私の大切な時間です!だからこそこの思い出が後悔で埋め尽くされてしまう前に・・私は」
明石「認めない!私は認めないからそんなの!」
妙高「貴女がどう言おうと罪は償わないといけません。それは絶対です。私が生きたいと願っても意味はないんです。鎮守府を持つ司令官が艦娘の所為で死んだんです」
妙高「上が黙ってると思いますか?しかも他の鎮守府の司令官まで巻き込んでいるんですよ?何もなしなんてあり得ません私が罪を全部背負って死ねば」
明石「それこそおかしい話でしょ!本当に一人でどうにかなると思ってるの?罪を認めてしまえば下手すれば西鎮守府の艦娘全員罰せられるって事もあり得る!なら、自分達は悪くないって西提督が勝手にやった事だって言えば!」
明石「普通ならあり得ないかもしれないけど自分の船で海に出ようとする西提督ならって上も納得するかもしれない!提督だって・・同じ様に言えば二人して勝手に研修生を連れて出たって」
明石「二人に罪をなすりつけて開き直ってしまえば!」
不知火「っ!」ギロッ
夕張「我慢して不知火ちゃん」
不知火「私は大丈夫です・・分かってますから」
まるゆ「っ・・背に腹は変えられません・・妙高さんそう言う事にしましょう隊長も西提督さんもきっとそう思ってます」
妙高「お断りします」
明石「っ!どうして!」
妙高「彼のする事は私のする事だからです彼のした事を否定したくないんです。それは彼だけじゃない私の生き方を否定してしまうから」
妙高「それにみんなは大丈夫です私には奥の手があるので」
明石「奥の手?」
妙高「大本営の卯月さんがいる前で言うのはなんですが上の人達が知られると困る情報を多少知っていますからどうにかしてみせます」
卯月「・・・・・・」
妙高「今捕まえますか?」
卯月「そうなったらね」
妙高「それはいつですか?」
卯月「今じゃない」
妙高「そう・・・・」
夕張「本当にそんな事が出来るの?上の人達って頭禿げてる癖に頭カチカチだよ?」
妙高「大丈夫です。私は人の嫌な部分や見ないようにしているその人の闇を見つけるのが得意なんです。簡単に言えばトラウマとかそう言う類のものですね。それを上手く使う事が出来れば不可能ではないです」
夕張「恐ろしい娘・・・・」
妙高「だから大丈夫です明石さん」
明石「何が大丈夫なんだよ」
妙高「大丈夫なんです。全て上手くいきますから」
明石「上手くいくわけないだろ!これじゃあ西提督も提督も西艦娘達も私達も妙高自身もみんなみんな!報われない!そんな最期で本当に良いの?本当にそう思ってるの?」
妙高「・・・・・・」
明石「上には私も掛け合ってみるからこれでも少しばかりコネはあるしどうにかなるかもしれない」
明石「辛くても生きていれば新たに生きる道が見つかるかもしれない。それまで我慢すれば・・一人じゃないんだから」
妙高「・・・・・・」
明石「なによ何か言いなさいよ!肯定でも否定でも良いからしなさいよ!あんたは結局自暴自棄になってるだけでしょ!」
妙高「・・・・・・」
明石「言いなさいよ!」ガシッ
夕張「もうやめなって!こう言うのは手を出し方が負けなんだからね!」
妙高「そうなんだ・・やっと分かりました」
明石「な、何よ」
妙高「貴女は強いじゃなくてヘタレだったのね。それとも大切な人が今まで出来なかったのですか?だからそんな事を言えるのよ」
明石「な、そんな事は・・・」
妙高「話を聞いて分かりました貴女にとって提督さんもその程度だったと言う事です」
明石「っ!」
妙高「貴女も提督も本当に・・可哀想な人ですね」
明石「っ・・あんたは・・・ああ、そう・・なら、もう良い勝手にしろ!」ダッ
夕張「明石!妙高さんそれは言っちゃ駄目だよ・・明石だって本当は」
妙高「分かってます。最低ですよね・・八つ当たりなんてして・・でも、あれ以上言われたら揺らいでしまいそうで・・」
夕張「妙高さん・・本当にそれしか方法はないの?明石に頼めば」
妙高「提督さんがいなくなったおんぼろ鎮守府を支える事が出来るのは彼女だけです。これ以上重荷を増やせませんよ」
夕張「そんな重荷だなんて・・私も頑張るから」
妙高「そんな簡単な事じゃないんですよ。おんぼろ鎮守府にも罪は掛かります。その時彼女に尻拭いを全て任せる事になります。でも、彼女なら明石さんならやってくれます。なるべく罪は軽くする様に動きますから」
妙高「ですが、どうしても私がダメだった時はお願いします。支えてあげてください」
夕張「決意は固いんだね・・」
妙高「はい、それに生きる気力がないのも本当なんです・・こんな私が最期に出来るのは罪からみんなを守り、その先の道をより良い方へ持っていく事です」
妙高「最悪、私と西提督を悪者にしてでも彼女達の未来は守ります」
まるゆ「くっ・・なんで・・こんな」
妙高「・・まるゆさん殴っても良いんですよ」
まるゆ「・・殴れませんよ・・まるゆには・・」
不知火「これからどうなるんでしょう」
妙高「大丈夫、おんぼろ鎮守府は彼女なら時間は掛かるかもしれないけどきっと良くしてくれる信じて着いて行ってください」
不知火「・・・・・・」
夕張「・・ねぇ、もしかして明石を試した?」
妙高「試す?さぁ、何のことでしょう」
夕張「うわっ、騙されたよ・・凄いよ俳優にでもなれば?」
妙高「そう言う道もあったかもしれませんね」
夕張「はぁ・・皮肉も通じないし・・あーあーもう終わりかな色々と、折角見つけた良い場所だったのに」
妙高「本当にすみませんでした・・」
夕張「だから謝らないでよ・・はぁ・・」
不知火「また守れなかったんですね・・私は」
鳳翔「・・・・・・」
鳳翔「本当にそうなんでしょうか?本当にこれで終わって良いのでしょうか?」
小さく呟いた鳳翔の言葉は誰にも聞こえる事はなかった
いや、聞こえてはいたが誰も反応しなかった
一人を除いて
卯月「いいえ・・まだ終わらない」
終わらせない!
鳳翔「え?」
皆が悲観する中で卯月は・・如月はカツラが落ちないように立ち上がった
この先の道があったとしても私はそれを否定する!
だって!
卯月「あの子は生きてる!」
まだ、私の信じた道は壊れていないから
そしてそう思ってる人がまだ一人いる
卯月「鳳翔さん此処はお願いします。私は・・うーちゃんはこのまま帰る気はないんで!」ダッ
鳳翔「卯月ちゃん・・・」
鳳翔「うん、そうだよね私達が信じてあげないと悲観するのは此処までです皆さん!」
ー駆逐漢ー
卯月「・・・・・・」
明石「・・・・・・」カチャカチャ
帰る支度をしてるのか気を紛らわせているのかエンジンを弄っていた
只ひたすらにメンテをしていた
その背中は弱々しく触れてしまえば簡単に壊れてしまいそうだった
私もそう見えていたのかな?だから・・明石さんは
触れるべきではない
それは分かっている
今の私が何を言おうと説得力はない
だけど、卯月としてなら今の弱りきった明石さんを助けてあげられる
私は明石さんに声をかけた
そう、なると思っていたんだけど
実際は
ー駆逐漢ー
卯月「・・・・・」
明石「・・・・・」ガチャガチャ
エンジンを弄ってるのは変わらないけど弱々しい背中ではなくオーラ的な何かが出て逆に強くなってるように見えた
正直声をかけるのも躊躇ってしまう
凄く怖い
エンジンのメンテと言うよりは破壊と言っても良いくらいにガチャガチャ言わせている
帰る準備ではなく海へ還る準備をしてると言われても納得してしまいそうだ
明石さんは落ち込むタイプではなく怒るタイプだった
ある意味で予想外
卯月「あ、あの・・明石さん」
でも、伝えないと妙高さんの本当の気持ちを
明石「・・・・・・・」ガチャンガチャン
卯月「あの!明石さん!」
明石「あ?何?」
振り向かずに答える
卯月「妙高さんは本当はー」
明石「知ってる」
卯月「え?」
明石「文字通りみんなの為に罪を一人で被ろうとしてる。自暴自棄になんてなってない生きる道があるならあいつは生きるよ西提督の分も背負って」
明石「でも、それは絶対に無理だって分かってる。きっと私達が思う以上に考えて出した答えが自分を犠牲にする事なんだよ」
卯月「分かってたの?なら、どうして」
明石「気に入らない」
卯月「・・何がって聞いても良い?」
明石「最初からあいつは答えを出してた変える気なんてなかった。結局あいつは・・妙高は私の話なんて何も聞いてない」
明石「自分の思う通りに誘導しただけで私は利用されただけなんだ」
卯月「そこまで分かっていたのね」
明石「私は一番嫌いな事があるのそれはね人を自分の良いように利用する奴が私は大嫌いなの」
明石「あいつは凄いよ多分私達と会った瞬間からこうする様に動いた。そうする事でおんぼろ鎮守府と西鎮守府を両方私達に守らせる様にしてる」
明石「いや、こうやって私が気付いて怒る事も入れているのかもしれない。どちらにせよ私達に大きな借りを作らせようとしてる」
明石「でも、凄いのはそれだけじゃない・・私との会話から落とし所を見つけてそれに触れる事で会話の始まりと終わりまでを全部操作された。あいつの言う得意は本当だよ。話を聞いている様で聞いていないだけど聞いている・・そんな矛盾を平気でやってるんだよ」
明石「だから気に入らない・・人の私の気持ちも無視した一人芝居に付き合わして自分の事しか考えていないあいつを!西提督の事を信じてない!自分本位のあいつを!」
卯月「そう・・全部分かってたのね」
明石「あんたも気付けたんだね流石大本営の艦娘」
卯月「・・・・・・・」
明石「もう、これ以上話しても仕方ない、と言うか話したくない。任務は失敗帰ってこれからについて考える」
卯月「そう・・貴女は逃げるのね?負けを認めるのね?」
明石「あ?最初から勝負になんてー」
卯月「利用されたのを知って認めて帰るのを負けと言わずなんと言うの?結局貴女は負けを認めたと言うことになる。諦めたんでしょ?」
明石「私だってあいつがやる気さえ出せば捜索をしようと!」
卯月「なんで妙高中心で考えてるの?なんで彼女が諦めてるから私達も諦めないといけないの?」
明石「っ!そ、それは」
卯月「貴女も妙高と変わらない。諦めていて、それで利用された事を利用してるだけ。自分本位なのは貴女も同じ」
卯月「私も自分本位かもしれないけど少なくとも貴女達とは違う。明石さんは提督を信じていない信じる事が出来ていないその事実から目をそらしている違う?」
明石「・・・・あんたまで私を馬鹿にするのかよ」
卯月「してるなら言わない。そんな事に時間を使うなら提督を探す馬鹿にしないで」
明石「っ・・じゃあ、どうすれば良いんだよ・・みんなもう諦めムードで自分だけ騒いでも馬鹿みたいじゃん・・普通に考えたらもう助かってるわけもない認めたくなかったよ!でも、妙高の言う事は合ってる・・」
明石「あいつは実力も本物で私より海を知る艦娘だ・・そいつがもう諦めてる状況でどうしろって言うのよ!」
卯月「・・・・・・」
明石「っ・・もうエンジンのメンテも終わったしみんなを呼んで来て帰るよ」
卯月「要は拗ねてるのね?良い様に利用されてプライドが傷付いた」
明石「だったらなに」
卯月「何もただ・・私は変装なんて出来てないって自覚はある。口調も行動も全然卯月になれてない」
卯月「こう言う時大本営艦娘である卯月ならどうするかも分からない」
明石「何を言って」
卯月「だけど、一つ思い出したわ卯月を」
明石「お前・・卯月じゃない?」
卯月「うーちゃん今日は一回もいたずらをしてないってね」ニヤリ
明石「何をする気!」
卯月「っ!」ダッ
明石「待て!」ガシッ
明石の伸ばした手は肩へ届かず卯月の髪の毛へ
スポッ
明石「は?髪の毛が取れた?ストレスでこんなに・・って違う!これはカツラって事はあいつは卯月じゃない!」カツラ
卯月→如月「うーちゃんいたずらするもんね〜」ダッ
明石「如月あんた何をして・・」
いきなりの事で思考が追いつかない
でも、一つ言えるのは卯月と言う他人にこそ言えた弱味だったが、それは違っており仲間に思いっきり弱味を見せてしまった
卯月は最初からこの船に乗ってはいなかった
胸が大きかったのは卯月じゃなくて如月だったから
最初から気付けていたのに
明石「私の馬鹿・・あんな恥ずかしい事をベラベラと」
穴があったら入りたいと心の底から思ったのだった
その時エンジンが動き出した
明石「っ!まさかいたずらって!」
一旦恥ずかしい気持ちを押し込んで操縦室向かう
西提督船に擦りながらも船が走り出した
海上を高速で蛇行走行していた
明石「うわっ!」グラッ
如月「走れ〜〜♪」
明石「如月!何してるの!これはどう言う事!」
如月「あら?あ、カツラが・・まぁ良いわ。今から提督を探しに行くのよ」
明石「だとしてもだ!他の仲間を置いてどうする!」
如月「今はみんなを説得する時間も惜しいのよ。それにこれは予想出来なかったんじゃない?」
明石「え?」
如月「私もね妙高の思い通りで終わるのは嫌だったの」
明石「如月・・私の為に」
如月「勘違いしないで、私は私の思う様に動いてる。もし、妙高達がやる気になるなら捜索に参加してくれるしそうじゃなくてもあの娘達をおんぼろ鎮守府まで送らないと行けないわ」
如月「そしたら元帥がいる。妙高の考えをそこで言えば良いわ。でも、あの娘達がそんな簡単に言わせるとは思わないし元帥の頭カチカチ差は彼女以上よ簡単にはいかないわ」
明石「どちらを選ぶにせよ妙高の思い通りには動かないって事か」
如月「そう、でも、私だってただ何も根拠がなくて動いてるわけじゃない」
明石「まさか提督達の居場所が?」
如月「絶対じゃないけど思い出したのよ」
明石「思い出した?」
如月「信じてくれる?」
明石「詳しくは言ってくれないのな・・まぁ、弱味も言っちゃったし言う事聞いとかないと喋られたら困るし良いよ信じる行こあいつの所へ」
如月「ふふ、素直じゃないのね」
明石「うるせ」
駆逐漢はそのまま走り続けるのだった蛇行走行で
イムヤ「ふぅ・・いないな・・やっぱり海底を探すしか・・ん?」
駆逐漢「」ブロォオオオオン
イムヤ「あれは・・って!」
ガンッ!!
ー西提督船ー
鳳翔「このままで良いんですか!本当にこれで終わって良いんですか!」
妙高「・・鳳翔さん私はー」
突如船が大きく揺れ出す
妙高「っ!なんですか!」
夕張「あ、駆逐漢が動き出した」
不知火「おっとと」フラッ
ツルッ
不知火「ぬい!!」ゴンッ
不知火「・・・・ぬい」ピクピク
鳳翔「不知火ちゃん!」
夕張「明石何やってんの!この船を沈める気なの!」
妙高「なにをしようと!」
まるゆ「行っちゃいました!妙高さん船のキーを追いかけないと」
夕張「ちょっと!明石!なにか忘れてませんかーー!」
鳳翔「不知火ちゃん!しっかりして不知火ちゃん!」
不知火「」
妙高「キーなら刺さったままでは?」
まるゆ「ないんです!持ってるなら出してください!」
妙高「そんな筈は!ない・・」
まるゆ「ないなら探さないと!」
夕張「まるゆちゃん!あったよ!こっち!」
まるゆ「エンジンルームの方からです」
夕張「此処に刺さってる何かのスイッチを押す為に必要だったみたい」
妙高「これは自爆スイッチです」
夕張「こうなると根本的に考えを変えないといけないんじゃない?敵にやられたわけじゃないって線も生まれたわけだし」
妙高「自分から爆破させるなんて・・でも、なんで」
それさえ分かればもしかすれば・・
まるゆ「ん?なんか此処に書いてます」
妙高「見せて!これは・・」
そこに書かれていたのは【気まぐれな不死鳥作戦を開始する】と書かれていた
まるゆ「なんの事か分かりますか?」
夕張「う〜ん、私には分からない妙高さんはどう?」
妙高「・・・・・・・」
夕張「妙高さん?」
妙高「この字は西提督の字です。それは間違いありません」
夕張「分かるなんて凄いね」
だって何年も見て来た字なのだから間違える事なんて絶対にない
でも、なんでこんな所にこんな事を書いていたのか
まるゆ「なら、きっとこれは妙高さんに宛てたメッセージなのかもしれません。妙高さんなら分かるって信じて」
妙高「私に?」
夕張「気付いて欲しい事があるんじゃないかな?」
まるゆ「生きてるって言う線でもう一度このメッセージも合わせて考えてみてください。きっと妙高さんにしか分からない事だと思います」
妙高「西提督が生きてる・・でも、いえ・・そうですね考えてみます。この気まぐれな不死鳥作戦と言うのを」
もし、本当に私に残してくれたメッセージなら私は自分しか見えていなかった
じゃなければ気付いていた
此処にいないと言う理由で諦めてしまった
この娘達がいなかったら気付けなかった
でも、まだ手遅れじゃない!
妙高「二人共お願いなんでも良いから船の中で気になる物や事があったら教えて」
夕張「うん、任せて」
まるゆ「了解です!」
妙高「さぁ、考えて私・・」
この船が一度爆発したのは確かで、それは船に載せていた女神がなくなったと言うのもあるし船が綺麗になっている事から確実
でも、それは生きてる証拠にはならない逆に爆発に巻き込まれて死んだ方が普通
だけどそれも違う可能性が生まれた自爆スイッチが使われておりそこに作戦名が書かれていた
これは自爆を使った作戦なのかもしれない
気まぐれな不死鳥作戦・・それは一体
鳳翔「何か分ったんですか?」
妙高「ええ、分かりそうな気がするんだけど・・それより不知火は大丈夫ですか?」
鳳翔「はい、床に寝させるのもいけないので船にあった毛布を使わせてもらいましたけど良かったですか?」
妙高「えぇ、毛布でもなんでも使ってください汚いかも知れませんが」
鳳翔「ありがとうございます。綺麗な毛布でしたよ。さっき聞いた女神はこう言うのも直してくれるんですね」
妙高「女神自体が不明な事が多いのであまり使いたくはないんですが備品とかもこの場合は直す対象だったのかも知れませんね」
鳳翔「備品と言えばこの船には救命胴衣はないんですか?」
妙高「え?ちゃんと載せている筈ですよ?なかったんですか?」
鳳翔「はい、私達の船には念の為に載せていたりするのでこの船にないのはおかしいとは思っていたんです」
救命胴衣がない?それだけ直されなかった?いや、毛布まで修復されてるのにそれだけってのは考えにくい
妙高「待って確認する」
救命胴衣のある場所には救命胴衣はなかった
妙高「ない・・使ったって事?」
鳳翔「だとするならないのにも納得ですね。提督さん達は救命胴衣を着たんですよ」
妙高「作戦に使われた可能性もある・・でも、まだ結論を出すには足りない」
夕張「う〜〜ん」カップ麺の容器
妙高「それは?」
夕張「いや、提督達もカップ麺食べたんだって思って私が海でカップ麺を食べた人の一番だと思ったのに残念だなって」
妙高「二番じゃダメなの?」
夕張「何事にも一番が良いじゃんってこんな事してる暇じゃないね。でも、クルージング中にカップ麺ってもう少し何かあったと思うけどね」
クルージング中?
妙高「っ!ちょっと待って」
夕張「え?は、はい待ちます」
妙高「無線でのやり取りを見る限りではクルージング中にカップ麺を食べてはいません」
夕張「え?じゃあ、襲われた時に食べてたの?案外余裕だね」
妙高「それも考えにくいけど・・一度危機を脱した時に食べた可能性もあるわね。だとするなら作戦を考える時間もある」
夕張「なんか役に立てた?」
妙高「はい、ありがとうございます。まだ、結論には至りませんが一歩前進です」
夕張「うん、ならもっと頑張るから早く西提督さんのメッセージに気付いてね」
妙高「はい!」
何も抵抗出来ずにやられたわけじゃなく一度は危機を脱している
そしてそこから何かあった
それが自爆スイッチと救命胴衣に関係している
後少しで何か掴めそうなのに
まるゆ「妙高さんこんな物を見つけました」
妙高「これはお酒?船にあったの?」
まるゆ「はい、少し減ってますけど吞んだのでしょうか?」
妙高「こんな時に呑むような人ではありません。だからと言って提督や研修生が呑むとも思えませんね」
まるゆ「呑む以外で使ったとか?」
妙高「呑む以外ですか、そう言えば西提督は気合いを入れる時に口にお酒を含んで吹きかける事をしますね」
まるゆ「お清めの意味もありますから特に絶対に失敗出来ない時などは大事な物に吹きかけたりしますよ」
妙高「絶対に失敗出来ないですか・・やはり作戦を決行したんですね」
まるゆ「問題は何に吹きかけたかですよね?」
妙高「多分女神じゃないですか?やはり女神も作戦に入ってるんですね。何時も気まぐれな奴だと噂で聞くから使わないに越した事はないと言っていたのに」
まるゆ「気まぐれ?」
妙高「はい、女神は気まぐれだそうです」
まるゆ「もしかして気まぐれな不死鳥作戦の気まぐれって」
妙高「成る程女神の事だとすれば繋がりますね」
まるゆ「だとすると後は不死鳥ですね。なんだろう?」
妙高「ありがとうございます。後は私が考えてみます」
きっと私しか分からない
まるゆ「妙高さん・・はい、頑張ってください」
これ以上は何も見つからない
みんなが見つけてくれたピースを一つ一つ繋げてそして私だけが知る西提督を重ねる
彼ならこう考えると彼の思考になる
そうすれば自ずと答えは見えて
不死鳥それはきっと女神によって一度壊れた船が復活するという事
不死鳥も一度自分の身を灰にしてから新たに生まれる
あの人の好きそうな話しではある
そしてそこから出る答えは
何かしらの襲撃から一度は危機を脱したが船はきっと壊れて動かなくなってしまった
その後カップ麺を食べてから作戦を立てて気まぐれな不死鳥作戦を考えた
前代未聞の作戦に西提督もお気に入りのお酒を使って気合いを入れた
そしてその後救命胴衣で一度海に出る
自爆スイッチで船を爆破
女神が現れて船を修復
直った船に再び乗り込む
これがあの人の考えそうな作戦
気まぐれな不死鳥作戦
妙高「そういう事ですか・・本当に馬鹿な人」
いや、大馬鹿と言っても言い過ぎではない
でも、きっと決断させたのはきっと彼と研修生達だったのでしょう
あの人の考えてる事がヒシヒシと伝わって来た
作戦をする不安や恐怖もあっただろう
でも、それ以上にワクワクしていたんだろうな
西提督にとって彼も研修生達も好みだっただろうし
信じていた
信じていたからこそ出来た
なのに私は西提督を信じていなかった・・
妙高「そうよ、あの人が簡単に死ぬ筈がない。あり得ないのよ」
それが提督と言う似たような大馬鹿が入れば尚更だ
気まぐれな不死鳥作戦は失敗している途中で何かあったのだろうけど
でも、生きてる
何故か分からないけど確信している
無線を取り出し仲間達に連絡する
妙高「こちら妙高、捜索範囲を広げてください。必ず西提督達は生きています。海底や水中を探す必要はありません私も捜索に参加します。何かあり次第連絡してください」
妙高「絶対に諦めないでください」
無線『『『了解!』』』
夕張「妙高さん分かったんですね」
妙高「はい、こんな所で落ち込んでいる場合ではありませんでした。私も捜索を開始まします」
まるゆ「なら、まるゆ達も探します」
鳳翔「この船をお借りしても良いですか?」
妙高「はい、好きに使ってください。船だけでは危ないので外にいる娘達で何人か着いていくように言っておきます
鳳翔「御配慮ありがとうございます」
妙高「お礼を言うのはこっちです。ありがとうございます。後で明石さんにも言わないとですね」
夕張「そう言うのは見つけた後に言うよきっと二人も探してる」
まるゆ「妙高さん号令をお願いします」
妙高「はい、では、皆さん捜索開始してください!」
まるゆ、夕張、鳳翔「「「了解」」」
不知火「ぬ・・ぬい・・」ピクピク
妙高「そう言えばこのスカーフの切れ端は・・ううん、今は捜索の事だけ考えましょう」
妙高「ん?無線?イムヤから?」
妙高「何かあったの?そう・・ならそのまま彼女達に着いて行って何かあったら連絡をお願いします。では」
妙高「さて、西提督には帰ったらお説教ね」
歩みを止めた彼女は再び動き出すのだった
あれからどれだけ船を走らせたか・・数分か数時間か
それさえも今の私には分からない
ただ一つ分かるのは目的の場所へと近付いていると言う事だった
近くになるにつれて胸の奥が苦しくなってくる
行かなければ行けないと思っていても身体がそれを拒否している
でも、もし・・本当に此処に提督が居るのなら
如月「私が死ぬのが先か提督が先か・・ね・・」
諦めてはいないけど覚悟はしておこう
死の覚悟を
でも、まだ希望はある
だってまだ私が生きているから
少なくとも今はまだ無事でいてくれている
如月「簡単には終わらせないから・・私も・・提督も」
明石「・・・・・・」
やがて島が見えて来たが一旦船を止めた
少し呼吸を整えたいと言うのが本音だけど遠くから様子を見ると言うのもある
もしかしたらもう彼女達は居ないかもしれない
そんな期待を込めて
如月「あったわあれよ」
明石「こんな所に島?全然知らなかった」
如月「地図にもない島だから知らないのも無理ないわ。近くの海流も特殊だから流れ着く事もない」
正確に言うと地図から消された島だけど・・
明石「成る程ね・・でも、此処に流れ着いていなくても提督達なら自力で来そうな気がするね。船のあった場所からもそう遠くない此処に島があって良かったじゃん」
如月「そうとも言えないのよ彼処を見て」
明石「ん?あの建物はもしかして鎮守府?」望遠鏡
如月「元ね・・今は鎮守府としては機能していないわ。もう十年以上はその筈よ」
明石「廃墟ってわけね・・建物だけが残ってる感じ?」
如月「そうだと良いけど・・やっぱりダメね」
明石「どう言う事?」
如月「あの建物なんかおかしくない?」
明石「ん?何かおかしい所ある?普通だと思うけど」
如月「十年以上放置してるのに普通なのがおかしいのよ。建物が綺麗過ぎる誰か住んでる証よ」
明石「さっきは鎮守府はもう機能を停止してるって」
如月「してるわ。それは確実・・問題は住んでる人達よ」
明石「鎮守府とは関係ない人達か・・普通の人達とは考えにくいし如月が恐れているところを見ても居るのは野良艦娘でしょ?それも人に対して敵対してる」
如月「そうよ・・でも、正確には元鎮守府所属の艦娘達よ」
明石「それは野良艦娘よりも厄介だね」
如月「ええ、でも、所詮は野良艦娘に成り下がった娘達よ。鎮守府が稼働出来ていないなら関わろうとしなければ脅威はないわ」
明石「だけど、関わろうとしてる脅威に踏み込もうとしてる」
如月「向こうが私の大事な人を傷付けたら・・私も向こうの大事な物を・・人を・・傷付ける事も躊躇わない」
明石「良く考えて相手の許容ラインを安易に越えたら向こうも止まらなくなるそうなれば此処だけの問題じゃなくなる」
如月「もし、提督が居て酷い目にあっていたら・・その時はもうね相手のラインとか関係ないのよ。向こうが此方のラインを越えてしまっているんだから」
如月「その時はもう止まらない・・止まれない」
明石「そう・・」
如月「無理に付き合ってもらったかもしれないけど島に降ろしてくれたら貴女は逃げて良いわ。別に恨んだりしないし提督を連れて帰れたらまたみんなで帰るだけよ私達の居場所に」
明石「確かに私は役に立たないと思う元艦娘で普通の人間と変わらない。でもね・・忘れないで私があの場所をおんぼろ鎮守府を帰るべき場所として決めた時から私のラインも如月と同じなんだよ」
如月「明石さん・・・・」
明石「無理に付き合ってなんかない此処に来たのは私の意志だよ。大体人に流されて生きて行くのが嫌で艦娘やめたんだから嫌なら無理にでも行かない」
明石「覚悟は出来てる。行こ如月」
私は勘違いをしていたみたいね
彼女も私と変わらない
苦しみを乗り越えて出来る事をしようとしている
提督の為に必死になってくれている
提督・・貴方は本当に幸せ者ね・・
だからこそそれを知らずに死ぬなんて許さない
休憩は終わりよ!
如月「さぁ、行きましょ!」
明石「あぁ、行こう」
胸の苦しみが少し楽になった様な気がした
やっぱりこの苦しみは心から来ている・・自分を強く持たないと
貴女の想いになんか負けないから
そう思いつつ船を進めた
しかし、その彼女の想いに抗う事が更に如月を苦しめてしまう事にまだ気が付かないのだった
ー島付近ー
如月「ばれると厄介よ少し離れた所に船を着けた方がいいわ。見張りはなさそうだけど油断は禁物よ」
明石「なら一層の事島の裏側から行くのは?もしかしたら裏側に居たりするかもしれないしそこから探して行くのも手だと思うけど」
如月「その可能性もあるかもしれないけど、此処は浜から先は整地もされていないジャングルの様な所よ反対側に出るには時間も掛かるし下手をすれば迷って出られなくなる」
如月「でも、彼女達にとっては庭の様なものよ。もし提督達が迷ってしまっていたら捕まえられてる可能性が高い」
如月「そして捕まっているなら余り時間は掛けられない」
もし、あの事が向こうにばれてしまえば・・すぐにでも殺されてしまう
そうなる前にあの鎮守府に提督達が居るか確かめないと
明石「如月はもう捕まってるって思ってんだね」
如月「この島に居るならね・・」
居て欲しいけど・・居て欲しくない
最近よく矛盾した事を感じる
明石「分かった。なら鎮守府へ行こう近くに着ける場所を探すよ」
如月「そこはどう?向こうから見えにくいと思うわ」
明石「お、良いね。そこに着けよう」
こうして二人・・ではなく
明石「ほら!ボサッとしてないで上陸の準備をする!ヘッポコ潜水艦」
イムヤ「酷いわね。一応怪我人なのよ?もっと優しく労わりの心を持って言ってよ。ほら、見て?タンコブあるよ痛い痛い」
明石「うちの船に大きな凹み作っておいてそんな小さいタンコブって・・ふざけてんの!」
イムヤ「ふざけてなんかないもん!本気なんだからね!本気で痛いんだから!」
明石「その言葉はせめて頭が爆散するくらいになってから言いなさいよ!」
イムヤ「ひどいわ!爆散したら喋れないじゃない!」
如月「大丈夫かな・・これで」
途中轢いたイムヤも共に
不安を交えて三人は島へと上陸したのだった
島へ上陸した私達は元鎮守府へと向かった
その途中で
明石「う〜ん・・・」
イムヤ「ん?どうしたの?やっぱり船で待ってる?元艦娘だし」
明石「あ?そんなの覚悟の上で来てるっての元艦娘だからって馬鹿にしないで」
イムヤ「じゃあ、なに?」
明石「気になる事があってね・・」
イムヤ「気になる事?」
如月「二人とも急いで置いて行くわよ」
イムヤ「如月かなり焦ってるね・・」
明石「まぁ、そうだろうね。イムヤ此処を任せて良い?」
イムヤ「どうするの?」
明石「島の反対側に行ってみる。何か胸騒ぎがするしみんながみんな捕まってる気がしなくてね。船は置いておくから何かあったら私の事は気にせず乗って逃げて」
イムヤ「大丈夫なの?」
明石「こんな所で死ぬ気はないよ。私しぶといから殺す方が難しいよ」ニヤリ
イムヤ「ふ、分かった気をつけてね。此処は任せて」
明石「じゃ、頼んだよ」ダッ
そう言うと島の反対側へと向かって行った
ジャングルで迷わなければ良いけど
イムヤ「さて、見張りもいないし如月はもう入ったかな?」
如月「・・・・・」うろうろ
イムヤ「ありゃ?入り口前で待っててくれたんだありがと」
如月「え、えぇ、明石さんは?」
イムヤ「島の反対側に行くから此処は頼んだって」
如月「そう・・・・」
イムヤ「入らないの?」
如月「入るわよ。イムヤ準備出来てる?」
イムヤ「うん、大丈夫だよ」
如月「そう・・・・」
イムヤ「??」
如月「・・・・・・」
イムヤ「それじゃあ行きますか!」ガシッ
如月「あ・・・・」
中々入ろうとしない如月の手を引いて元鎮守府へと入った
ー元鎮守府ー
イムヤ「潜入成功」
如月「・・・・・・」
中に入るとすぐに艦娘達の姿があり、一斉に怪しい目で見られる
野良艦娘達「「「・・・・・っ!」」」ギロッ
イムヤ「如月」ハイライトオフ
如月「分かってるわ」ハイライトオフ
イムヤも如月も自己的にハイライトをオフにして死んだ様な目をする事で
野良艦娘達「「「・・・・おかえり」」」
イムヤ「ただいま・・・」
仲間として入る事に成功した
提督を探す為に元鎮守府の廊下を歩く
不安と恐怖で前を見て歩くのでさえ辛かった
視界がぼやけてくる汗が止まらない
如月「・・・・・」
イムヤ「冷や汗凄いけど・・」
如月「問題ないわ・・」
逃げてはいけない・・ちゃんと見ないと
如月「っ!」
思ったより遥かに此処は酷かった
懐かしく感じる場所や匂い
でも、そこにあるのは知らない知りたくなかった現実だった
みんながみんな目に生気がない
あの時と違い過ぎている
あの時はみんな目は輝いていた。でも、それは本当の事を知らなかっただけで・・
知らなくても良かったのかもしれない
でも、それを壊してしまったのが・・私と彼だ
今こうなってるのは自分の所為で・・だから・・
ズキッ
如月「うぅ・・・・」
駄目!考えちゃいけない!でも、ちゃんと見ないと
イムヤ「ん?ちょっと大丈夫?」
如月「大丈夫・・うぅ・・あ!」
私がみんなをこうしてしまった・・光を奪ってしまった
此処を歩く資格もないのに来てしまった
あれ?私なんの為に来たんだっけ?
あれ?怖いな・・なんで此処にいるの?みんな怖いよ・・
野良艦娘達「「「・・・・・」」」ジーー
みんなの目が私を責めている様に・・いえ、責めてる・・
いや、いや!いや!!
あの時の光景が鮮明に蘇っていた。それは目を瞑っても見えてしまう
光を持つ瞳と光の失った瞳が如月を睨んでいた
如月「ああ・・見ないで・・お願い!」
イムヤ「落ち着きなって!」
如月「触らないで!」パシッ
イムヤ「っ!」
そうよ!これは私の記憶じゃない!私じゃない!出て行け!私をこれ以上苦しめるな!
如月「出て行け!私の中から出て行け!」
お前は誰だ!お前は誰なんだ!!この偽物!!
拒絶に拒絶をして自分を保とうするが、すればする程に苦しくなる
やがて靄のかかった声が聞こえてくる
そしてそれは大きくなり心に直接語りかける様に頭に響き鮮明に聞こえる様になった
『じゃあ貴女は誰なの?どうして邪魔するの?どうして逃げるの?』
貴女こそ誰よ!私の中から出て行ってこれ以上苦しめないで!
私は貴女なんか嫌い!
『そう・・貴女がこれ以上認めてくれないなら・・受けとめてくれないなら提督は』
提督・・・提督!
『提督は貴女にとって』
な、なに・・それ以上言わないでお願い!
『もうー』
やめて!言わないで!
如月「あ・・ああ・・・ああ!」ビクビク
イムヤ「やばい!このままじゃ壊れてしまう!こうなれば!ごめんね如月」
『必要のなー』
如月「あ・・・そう、私は・・」
もうだめ・・・これを聞いたら私は・・
イムヤ「おらっ!!」
ドゴッ
バタッ
如月「」
野良艦娘達「「「・・・・・・」」」
イムヤ「はぁ・・はぁ・・こんなに殴るのが辛いなんて初めてよ・・」
最後の言葉を聞く前に私の意識は深い闇へと落ちた
イムヤ「なにを抱えてるの如月は・・」
イムヤ「野良艦娘達は見てないで空いてる部屋へ案内しなさい!出来るよね?私達・・」
イムヤ「仲間だもんね?」ギロッ
野良艦娘達「「「っ!」」」ビクッ
ー???ー
目を覚ますと私は暗闇の空間にいた
如月「此処はどこ?」
暗くて狭い。そして頬が痛い
私が丸まって横になってるのは分かるけど、何処だかは光もない暗闇空間だから分からない
如月「ん?海藻の匂いがする・・何か身体に付いてる?」
このベトベトした感じに匂い
昆布などの海藻だ
それがこの狭い暗闇空間にたくさんあるみたい
正直臭い・・・・身体もベトベトするし早く此処を出たい
如月「この狭さじゃ立ち上がる事も足を伸ばす事も出来ない・・」
もしかして私は死んだのでは?そして此処が暗い海の底・・
沈んだ娘達はこんな海藻臭いベトベトした空間に入れられてしまうの?
だとしたら・・凄く退屈ね
そして寂しいわね・・・
如月「誰かいないの?」
シーーーーーン
如月「うぅ・・グスッ」
誰でも良いからお話がしたい
泣きそうになりながらも声をあげて誰かを呼ぶ
如月「誰か!誰かいないの!此処にいるわ!助けて!」
シーーーーーーーン
如月「うぅ・・それが無理でもお話ししませんか!」
シーーーーーーーーン
如月「・・・そう」
如月「うわぁあああああん!怖いよ!寂しいよ!もうお家帰るー!」ポロポロ
???「あ、起きた?ごめんごめんちょっと部屋出てた」
誰かの声が聞こえた
凄く嬉しい
如月「私とお話ししてくださーーい!」ポロポロ
???「い、いや、どうしたの?なんで泣いてるの?あ、さっきのが痛かったのかな?でも、今は出してあげられないし」
如月「話すだけでいいのでーー!」ポロポロ
???「え?もう!しっかりしなさいよ!如月!提督がそんな姿が見たら一緒に泣くよ?」
如月「提督」ピタッ
涙が驚くほどに急速に引いた
そしてさっきまでの寂しさもなくなり冷静になってきた
この声は
如月「提督は何処?そこにいるの?答えてイムヤ」
???→イムヤ「まだ居ないけど、この元鎮守府に居るのは確かだよ。色々聞いてきたからね。無事だよ提督は」
如月「そう、なら早く助けに行きましょう。此処から出して」
イムヤ「うん、それは無理」
如月「え?どうして!」
イムヤ「ん〜その話しをする前に開けるね」
パカッ
如月「っ!眩しい・・え?此処って」
どうやら私が暗闇空間だと思っていたのはダンボールの中だった
私はダンボールの中に海藻と一緒に詰められていた
出荷するの?
イムヤ「やぁ、頬は大丈夫?あ、周りは見たらダメだから私だけを見て良い?」
如月「え?うん」
イムヤ「頬は大丈夫そうね。うん、じゃあ、はいこれ新しい海藻新鮮よ」海藻ドバドバ
如月「え?うわっ、ぷっ・・何するの」
イムヤ「じゃあ」
そしてまたダンボールの蓋を閉められた
暗闇空間(海藻マシマシ)再び
ダンボール「ちょっと!出しなさい!良いわ!ダンボールの中と分かったなら無理矢理にでも・・あれ?動かない?手足が縛られてる!」
ダンボール「うぇ・・海藻臭いわ・・あ、口に入った・・ぺっぺっ・・うぅ、お願い出して・・」
イムヤ「今は無理」
ダンボール「何か気に入らない事をしたなら謝るわ。でも、今はこんな事をしてる暇はないはずよ?」
イムヤ「はぁ・・分かってないみたいだからはっきり言うよ?」
ダンボール「な、なに?」
イムヤ「あの時私達二人共ばれて捕まってたかもしれない。それ程の事をしたのよ?分かってる?」
イムヤ「潜入した先で取り乱すなんて馬鹿なの?」
ダンボール「・・・・・・」
イムヤ「船にいる時から様子がおかしいのは分かってたけどあえて言わなかった。自分でどうにか出来ると思ったから」
ダンボール「・・次は大丈夫よ」
イムヤ「ううん、信用出来ない。話して少なくとも今の如月とは行動を共に取ることも背中を任せる事も出来ない」
ダンボール「もう大丈夫だから今は落ち着いてるし今度は絶対に取り乱さないから」
イムヤ「此処が何処だか分かる?」
ダンボール「え?ダンボールよ」
イムヤ「この場所!建物は何?私達の潜入した此処は何処!」
ダンボール「・・野良艦娘達の住む・・元鎮守ーうっ・・頭が」
イムヤ「この場所で何かあったんだよね?今の如月は此処を強く拒絶してる。見る事も匂いも考える事すらも拒絶してる」
ダンボール「・・なんで私は・・こんなに・・弱いのよ」
イムヤ「弱くないよ・・此処までボロボロになっても来たんだから」
ダンボール「・・もしかしてこのダンボールは」
イムヤ「そう、今の如月を落ち着かせる為の処置よ。視覚はダンボールの中で暗闇にする事で抑えてるし海藻の匂いで此処の匂いも抑えてる。何よりも暗くて狭い場所って落ち着くでしょ?」
ダンボール「最初は怖かったわよ・・一人になってしまったと思って」
イムヤ「ごめん・・起きたらすぐ声をかけられる様にしてたんだけど中々起きなくて夕方になっちゃった。だから海藻も乾いてるしで新しい海藻取りに行ってて」
ダンボール「ううん、良いの・・ありがとう此処までしてくれて。そしてごめんなさい・・迷惑を掛けて」
ダンボール「私はもう自分が嫌で・・提督に会う資格も・・ない」
イムヤ「会うのに資格なんかいらない。私は如月の力になりたい。こう見えても野良艦娘の時は色々経験してるんだからどうにか出来るもしれない」
イムヤ「如月の様な娘を見た事もあるし話して」
ダンボール「で、でも・・」
イムヤ「提督を助けたくないの?それともプライドの方が上なの!しっかりしろ!如月!」
イムヤ「自分に負けないで!」
ダンボール「イムヤ・・・分かったわ聞いてくれる?」
イムヤ「うん、聞くよ」
私は今までの事を話した
艦記魂障害の事や此処での事
イムヤは黙って聞いてくれた
全てを話し終えて優しい言葉を掛けてくれると思ったら
イムヤ「え?それだけ?」
ダンボール「え?そうだけど・・」
イムヤ「あ〜っと・・うん、元帥の説明も如月が思ってる事も大袈裟過ぎると思うよ?まぁ、提督が艦娘と人のハーフってのは驚いたけど」
ダンボール「どう言う事よ」
イムヤ「要は、こう言う事なのよ。カロリーメイトメープルシロップ味を私が持ってます」
ダンボール「え?なんでカロリーメイト?」
イムヤ「分かりやすく説明してんだから黙って聞く!」
ダンボール「は、はい」
イムヤ「私が最初から持ってたカロリーメイトメープルシロップ味は私の物よ?私の好きにして良いの」
イムヤ「でも、あれ?私の懐からカロリーメイトチョコ味が出てきた。でも、これはあの人のだから置いておこう」
イムヤ「一日後」
イムヤ「でもな〜カロリーメイトチョコ味食べたいな〜でもでも持ち主に悪いし」
イムヤ「二日後」
イムヤ「あー、カロリーメイトチョコ味が気になって気になって集中出来ない!」
イムヤ「三日後」
イムヤ「カロリーメイトチョコ味が気になってメープルシロップ味が美味しく感じない!今はチョコ味が食べたいんだ!!」
イムヤ「四日後」
イムヤ「あれ?私が好きなのはメープルシロップ味であってチョコ味も好きだけど一番ではなくて・・あれ?どっちが一番だっけ?それどころか私の好きなカロリーメイトってメープルシロップ味だっけ?チョコ味だっけ?とにかくチョコが食べたいよ!でも、食べちゃいけない気がする!」
イムヤ「五日後」
イムヤ「食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたいチョコ味食べたーーい!」
イムヤ「六日後」
イムヤ「あああああ!!カロリーメイトがぁあああ!どうして!どうして!チョコ味は私を惑わす!苦しめる!もう食いたくない!お前を見てると苦しくなるだけだぁああ!メープルシロップ味と共に死ねぇえええ!」
ダンボール「声だけでも狂気を感じるわ・・」
イムヤ「はぁ・・はぁ・・ってのが今の如月」
ダンボール「あの・・イムヤがカロリーメイトを食べないとやばいと言う事しか分からなかったわ・・詳しく説明してくれる?」
イムヤ「仕方ないね。私がねそのカロリーメイトが人のだからと置いておくけど、ずっと目の前にあるんだよ?気になるよね?食べたいよね?でも、それをいけないと思う自分ともう良いじゃん食べちゃえと思う二人の自分がいるわけ」
ダンボール「あ、カロリーメイトなのは変わらないのね」
イムヤ「黙って聞く!最初はその二人の自分も軽く言い合いをする程度だったのよ。食べて良いじゃん!駄目だろ!常識考えろって感じのね」
イムヤ「でも、その言い合いはエスカレートしていき殴り合いに発展!食べさせろぉおおお!駄目だろぉおおお!みたいな?」
イムヤ「そこからメープルシロップとチョコの優劣が曖昧になってくる。どっちが自分のかも曖昧になって二人の自分は無駄に傷つけ合う」
イムヤ「そしてそして、ボロボロになった二人が言うのよ。元を正せばこいつの所為だ!こいつが俺たちを喧嘩させたんだ!って食べたいと思う自分と駄目だと思う自分の二人の怒りの矛先はカロリーメイトチョコ味へ」
ダンボール「・・・・・・・」
イムヤ「そしてチョコ味を強く拒絶する様になる・・見たくもないのに目の前にずっとある状態でね・・」
イムヤ「それはもはやトラウマと同等の拒絶」
イムヤ「如月がこの記憶を拒否し続けていた結果こうなったの」
ダンボール「じゃあ、どうすれば良いの?私はずっと逃げ続けてきたこの記憶をどうすれば」
イムヤ「簡単だよ。受け入れれば良い。チョコ味も自分の懐にあったんだよ?誰のか分からなくても分かっても私の懐にあった」
イムヤ「食べちゃえ!」
ダンボール「食べる・・」
イムヤ「如月、他の人の記憶だって分かってしまうのは障害じゃなくて一つの恩恵だと思う。だってその人の気持ちを知って先へと繋げる事が出来る。それは素晴らしい事だと思う」
イムヤ「その人の見た物や感じた事をその場で感じられる。なに?二度どころか三度四度も美味しいじゃない!」
ダンボール「イムヤ・・・」
イムヤ「難しい事は考えないでさ。あるんだから使わせてもらおうよ。今の如月も前の如月も提督を助けたい気持ちは同じなんだよね?だったら二人で助ければ良い」
イムヤ「カロリーメイトだって保存食品だけどずっとは保たないよ?食べないと湿気ったり形が崩れたりで美味しくなくなるよ?」
イムヤ「そうなってしまう前に食べてあげる事が持ち主の生きた意味にもなる。メーカーも喜ぶ。そう思わない?」
イムヤ「如月、メープルシロップもチョコも両方食べちゃえ!メープルシロップも最高だけどチョコも美味しいよ?好き嫌いは駄目よ?」
ダンボール「っ!・・まだ・・間に合うかな」
イムヤ「まだ、間に合うよ。出て行けと思うんじゃなくて。おいでって信じて入れてあげよ?それも如月なんだよ」
ダンボール「・・・・・・」
そう・・だから私は・・・
私の知らない提督を知ってるチョコ味である貴女に嫉妬していた・・だから受け入れられなかった・・食べようとしなかった
チョコ味である貴女の目を通して知る事が怖かった・・メープルシロップ味以外の知らない私が惨めに思えて・・・
でも、もうそれもお終いにしよう
貴女の記憶も私の記憶として受け入れるから、もう逃げないから
チョコもチーズもプレーンもフルーツもそしてメープルシロップも全部受け入れるから
貴女の見て来た物(味)を私に教えて
如月
『ありがとう』
如月「っ!」
ブチッ ブチッ
イムヤ「ん?縛ってる紐切った?」
ズボッズボッ
瞬間ダンボールから足が生え
ズボッズボッ
ダンボール正面に二つの穴が空くキュピーーンと光る眼光
ダンボール戦車「私はもう迷わない!」
イムヤ「あ・・あ、その姿は!」
かつて西鎮守府に三日月と共に走り抜けイムヤに初めてを教えた
あの伝説のダンボール戦車その姿だった
ダンボール戦車「乗って!行くわよ信じてくれる?」
イムヤ「は、はい!勿論です!」ドキドキ
ダンボール戦車「視界良好!海藻たくさん!いざ!執務室へ!」ダッ
そこで彼女に会う
彼女の想いを伝える為に
ダッダッダッ
野良不知火「さて、人間の様子でも見に・・ん?」
ダンボール戦車「イムヤ!」
イムヤ「邪魔よ!」海藻ムチ
野良不知火「な、なんですか!!」
ベチーーン!
野良不知火「ぬい!」バタッ
イムヤ「見えたわ!あれよ!走れーー!」
ダンボール戦車「っ!」ダッダッダッ
そして執務室のドアへと突っ込むのだった
ドンッ!!
野良龍田「なに!」
ダンボール戦車「・・・・・」
イムヤ「・・・・・・」
野良龍田「侵入者?それとも」
イムヤ「イムヤよ」
ダンボール戦車「・・・・・・」
野良龍田「っ・・一体何の用なのかな〜?」
イムヤ「さぁ?私は見届けに来ただけだから」
野良龍田「見届けに?」
ダンボール戦車「そろそろ降りてくれる?」
イムヤ「あ、はい」
その時ダンボールが破れて海藻だらけの如月が現れた
如月「久しぶりね龍田」
野良龍田「貴女はもしかして・・あの如月?」
如月「そうよ。随分と酷い事になってるわね」
野良龍田「ふふふ、そう、貴女なの・・誰の所為でこうなったと!!」
イムヤ「殺る?」
如月「ダメよ。私に任せて」
イムヤ「分かった」
野良龍田「よく・・帰ってこれたわね・・裏切り者が」
如月「・・・・・・」
野良龍田「あら?貴女よく見ると顔の傷がないけど?本当にあの如月?」
如月「彼女は死んだわ。私は彼女の意思を継いでいるだけ」
野良龍田「へぇ〜死んだんだ・・ふふふ、そう・・それは良い事を聞いたわね〜それで?貴女は何がしたいの?」
如月「彼女の事を知らせたかったのよ。そして彼女の言葉をね」
野良龍田「・・・・言ってみなさい」
如月「いつまで此処に縛られてるの?いい加減に前を見て進みなさい。此処の娘達が降伏をしてくれるなら保護もするし軍人としても働けるようにー」
野良龍田「それ以上言うな!!」
如月「この鎮守府はもう終わってる。いつまでは続かない!」
野良龍田「うるさい!貴女が裏切なければ・・私達はずっと幸せにあの人と過ごせていた!それを壊したお前を許せるか!信じられるか!」
如月「・・それが答え?」
野良龍田「そうよ・・今更他の人なんて信用出来ない!もう人間なんて信用出来ない」
如月「そう・・じゃあ、なんで捕まえてる人をすぐに殺さないの?本当は信じたいんでしょ?」
野良龍田「っ!どうしてそれを知ってる」
如月「それが目的だからよ」
野良龍田「目的?あ、そうか・・彼の仲間なのね?そう・・・なら、殺しておけば良かったわね〜あいつの記憶を持った貴女がどんな顔をするか見たかったし・・大切な人を殺された絶望の顔を・・」
如月「・・・・・・・」
野良龍田「そんなに大切な人なんだ〜顔を見れば分かるわ」
イムヤ「もう良いや殺った方が早いよ」
如月「やめて・・彼女は縛られてるだけなの過去に」
イムヤ「それって」
如月「うん、ある意味さっきまでの私と同じなのよ」
如月「例えるならフルーツ味に依存してるのよ」
イムヤ「フルーツ味か・・厄介だね。せめてチーズならまだ・・で?助けるの?」
如月「ううん、彼女の伝えたい事を言っただけよ。もう用はないわ」
野良龍田「何を話してるの?」
如月「いえ、それより提督は何処?」
野良龍田「あ〜それならもう死んでるかもね〜さっき天龍が向かったわ・・提督と勝負するってね!」
如月「っ!」
野良龍田「本当は死なれたら困るからそろそろ止めに行こうと思ったけどやめよ!今から向かっても手遅れよ!ふふふ!」
如月「そう、行きましょイムヤ」
イムヤ「うん、行こう」
野良龍田「なんでそんなに余裕なのよ!」ギリッ
如月「信じてるからよ」
野良龍田「っ!」ダッ
シャキン
野良龍田「どうしてぇええ!」シュッ
如月「本当に彼女が伝えたかった事なんだけど・・本当はね」
拳に力を込め相手の薙刀の突きを避けてからの
如月「一言だけよ!」サッ
野良龍田「っ!」
如月「このバカちんが!」ドゴォ!!
全力の殴り込みは龍田の顔面を捉えて吹っ飛ばした
手元から離れた薙刀を拾った
野良龍田「っ!返して・・それはあの人がくれた大切な・・・・・かえ・・し・・て・・・」ガクッ
如月「・・・・・・」薙刀
もし何時もの龍田なら私は簡単にやられていた
余程動揺していたのか・・
でも、だからこそ今なら彼女の想いを伝える事が出来る
追い詰められた心になら・・・
如月「・・・・これで伝わったかな?」
イムヤ「伝わったかは分からないけど多分このままだと死ぬよ?」
如月「え?」
イムヤ「さっき殴り飛ばされた時に結構良い感じに打ったからやばいと思う」
如月「そ、それは困るわ!こんな事私も彼女も望んでない!ただ目を覚まして欲しかっただけで!此処で終わって欲しくなかったのよ!」
イムヤ「素人はそう言う手加減ができないから駄目だね〜」
如月「ど、どしよう!手当てをしないと!でも、提督が!と言うか提督は何処に!」
イムヤ「探すしかないよ。まぁ、此処は任せて死なないように応急処置しておくから如月は提督を探して」
如月「っ!お願い!」ダッ
如月は執務室を出た
イムヤ「・・・・・・・・」
イムヤ「で?目は覚めた?」
野良龍田「・・・・・・」
イムヤ「とりあえずメープルシロップ味食べる?」
廊下を走り部屋をとにかく開けまくる
鍵のかかった部屋は薙刀で叩いたらノブは取れたけど開いた
出会うどの娘達も何の反応もしない
中には私に斬られて欲しいのか近寄ってくる娘もいた
やはり此処はもうこれ以上保たない
龍田が今の現状から目覚めない限りは・・
如月「何処なの提督・・・」
ふと、足音が聞こえた
でも、それは会ったどの娘達とも違いフラフラ歩いてる感じでもない
しっかりと踏みしめて歩いている
如月「厄介ね・・・」ハイライトオフ
ハイライトさんには帰ってもらいフラフラ歩きでやり過ごそう
野良天龍「これであいつともう一度戦える、ふふ」
如月「笑い方が龍田とそっくりね」
でも、あの娘を私は知らない。少なくとも私が此処を出てから入ってきたと言うことになる
此処が壊れ始めている時に
なのに、壊れていない
余程の精神の持ち主なのかそれとも馬鹿なのか
手に持っている刀が馬鹿とは程遠いオーラを出している気がする
一旦退く?いえ、そんな時間はない
突破する
如月「よし!」ゴソゴソ
如月「・・・・・」フラフラ
野良天龍「ん?よお!」
如月「・・・・・・・」ぺこり
野良天龍「見ない顔だな?」
如月「あ・・えっと・・」
ばれる!
野良天龍「いや、言わなくて良い。お前もきっと苦労して此処へ来たんだな・・目を見れば分かる」
野良天龍「辛いかもしれないがきっとよくなる負けるなよ」ナデナデ
怖そうな外見に似合わず優しい人だった。まだ、此処にもまだ希望はあったのね
強く生きなさい
如月「・・うん頑張る」ぺこり
さぁ、このまま先へ
野良天龍「ん?ちょっと待て」
如月「っ!」ビクッ
あれ?もしかしてばれた?
野良天龍「お前・・」
如月「・・・・な、なに?」ビクビク
野良天龍「なんか海藻まみれだぞ?泳いで来たのか?なら、ちゃんと身体を洗っておけよ」
如月「・・・・はい」
良かった・・ばれたのかと思った
今度こそ行こう
野良天龍「あ、そうそうもう一つ」
如月「え?」
シャキン
その時首筋に冷たい感触がした
鉄の冷たい感触が
如月「っ!」
野良天龍「その服の中に隠してるつもりだけど思いっきり飛び出してるのは龍田の薙刀じゃないか?何でお前が持ってる」
やっぱり長過ぎて隠しきれなかった・・
如月「こ、これは・・その・・」
野良天龍「それは龍田が大事にしてる物だ・・返答によっては斬る!黙ってても斬る!てか、斬る!」
如月「せ、せめて理由くらい聞いて!」
野良天龍「仕方ないな。なら何で持ってる」
如月「えっとですね・・」
なんて答える?貰った?拾った?それとも正直に殴り奪った?
どれも斬られる未来しか見えないわ
野良天龍「早く言えよ」キラン
如月「あ、預かってるのよ頼まれて」
野良天龍「あ?俺にも触らせてくれないのにか?」
如月「こう見えても私此処の龍田とは長い付き合いなのよ」
野良天龍「本当か?」
如月「本当よ。最近まで遠くの遠征に行ってたのよ」
嘘は言ってない
野良天龍「そんな話し俺は聞いてねえぞ」
如月「極秘だったから当たり前よ。これ以上は聞かないでね?薙刀を預かってるのも極秘なんだから」
野良天龍「う〜ん・・そうなのか分かった。悪かったな」
あれ?誤魔化せそう?もしかしてお馬鹿さん?
如月「いえ、良いのよ。それじゃあ、私は行くわね」
野良天龍「おう、頑張ってな」
勝った!
如月「ふふ、楽勝ね」
野良天龍「う〜〜ん・・いや。待った!」
此処まで何度も待ったをかけられると逆に腹が立ってくる
如月「もう!何よ邪魔しないで!」
野良天龍「やっぱり引っかかるんだ」
如月「極秘なんだから話せないわよ」ギロッ
野良天龍「お!良いね!その目!あいつとの決闘がなかったから是非相手をして欲しいくらいだ」
あいつ?いえ、もう此処まで来たら無理矢理でも
如月「なら、相手になるわよ」
野良天龍「まぁ、待てよ。これで最後にする。極秘の事は聞かない。でも、俺より龍田と長いって証明が欲しい」
如月「証明?」
野良天龍「長いなら知ってるだろ?龍田の事を。話してくれないってのもあって俺はあんまり知らなくてな一つで良い教えてくれないか?」
如月「そうね・・・・」
如月「彼女の頭の輪っか取れるわよ」
野良天龍「マジか!取れるのかあれ!」
如月「えぇ、そうよ。取ってみたら?性格が反転するわよ」
嘘だけど
野良天龍「なら、怒られる事もないな!よし!まだ時間もあるし行ってくる」
そう言って天龍が背を向けた瞬間!
如月「・・・・ごめんね」海藻
天龍の首に海藻が絡められ
野良天龍「っ!」
絞まる!
如月「っ!」ギュッ!
野良天龍「て、てめぇ!」グッグッ
海藻で首を絞められている天龍は抵抗して暴れるが如月はその手を離さなかった
そして抵抗する天龍の手は段々と力が弱まり最後には倒れた
野良天龍「」バタッ
如月「はぁ・・はぁ・・危なかった。死んではいないわね。良かったわ」
近くの部屋に天龍を隠して先へ進もうとした時
野良明石「ひぃいい!人間だぁああ!汚されたー!」ダッダッダッ
と、うちの明石さんとは程遠い明石が何やら面白い事を行って走って来たので
如月「ふん!」ドゴッ
野良明石「うげぇ!」
腹パンした。不思議と罪悪感も抵抗もなかった。明石さんだから?
ガシッ
如月「その人間は何処にいるのかな?」ニヤリ
野良明石「はわわわわ!!」
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
ー元鎮守府入渠ドックー
如月「提督・・・・・」
提督「いや、やってやる!」
そこに彼は居た
私の探していた提督が
長い道のりを超えてやっと見つけられた
私の私達の大好きな人
今すぐその胸に飛び込んで泣いてしまいたい気持ちが出てくるけど、それは今は出来ない
何故なら今提督のしようとしてる事を止めないと
彼が私が此処を裏切ってまでした事が無意味になってしまう
でも、生きてて本当に良かった・・
提督・・私頑張ったよ・・だから一緒に
帰ろ
提督「っ・・・・」
如月「そこから離れなさい!」シャキン
私達の帰るべき場所へ
提督「如月・・なのか」
如月「提督それを解いて使える様にしては駄目なの」
だけど、後少しだけ頑張るから
提督・・貴方のこれからの為にね
如月編 終
【提督編前回までのあらすじ】
野良艦娘の住む元鎮守府へと捕まってしまった提督はそこに住む野良艦娘達のボスである龍田や片腕を失った不知火そして人に怯えてしまっている電の言葉によって絶望しかける
何よりも自分の知ってる顔の娘達からの拒絶は提督を大きく追い詰めた
そして野良艦娘達の人に対する業を人の罪を一人で背負おうとしていた
心が折れるのも時間の問題だった
でも、野良艦娘である鳳翔の厳しい言葉によって提督は我を取り戻し自分の出来る事は此処にはないと脱出を決意
待っているみんなの元へ必ず帰る
改めて心に決めた
懲罰房で夕方までたくさんの野良艦娘達の見世物にされる
提督は脱出のチャンスを今か今かと待った
そして、最後に来た電の強い心に惹かれ勇気付けられ流れでヘタレ童貞の名を貰う
電と和解する事が出来た
しかし、鳳翔にそれがバレてしまい一旦は殺される事を覚悟するが鳳翔は鳳翔だったと言う事もあり脱出を協力してもらう事になる
それが提督にとっては堪らなく嬉しかった
だから、すぐに逃げず長居してしまい、天龍が懲罰房へ来てしまう
提督の軍刀を持って
それを提督、鳳翔、電の三人は防衛戦の末に勝利をした
軍刀を取り戻す事に成功したが、その際に天龍から決闘を申し込まれる
だが、提督は無視をして防衛戦で負傷してしまった鳳翔を助ける為に動かないと言われている入渠ドッグへと向かう
ポンコツ明石がいた
漏らして何処かへ行ってしまった
提督は入渠ドッグを調べるが壊れているとは思えなかった
そして誰かの手によって使えない様にされている事を知り動かす為に10桁の暗証番号へと挑もうとするが
それを止める声が提督を振り向かせた
そう、それは、提督の会いたかった
龍田の薙刀を持った如月だった
焦りと驚き
でも、一番あったのは嬉しさだった
提督「なんで如月が此処に」
如月「分かってるでしょ?こんな馬鹿な事して!海を舐めてるの!どれだけ心配したと思ってるの!」
提督「うっ・・ごめん」
如月「でも、無事で良かった・・本当に良かった」
提督「探してくれてありがと・・会いたかった」
如月「うん、私もよ・・さぁ、帰りましょ?」
提督「ううん、まだ帰れないよ」
如月「・・なんで?」
提督「鳳翔さんを助けないと」
如月「・・・・・・」チラッ
野良鳳翔「」(-_-)zzz
如月「彼女と何があったの?」
簡単に此処までの事を話した
気まぐれな不死鳥作戦から今までを
でも、こうなってしまった元凶の彼女の事は言えなかった・・
後ろめたい気持ちがあったからだ
司令官としてあるまじき行動から起きた事でクルージングの事もあるしこれ以上失望されるのが怖かった・・
あくまで急な故障で暴走して航路を外れてしまった末に船が完全に壊れてしまったと話した
いずれバレると分かっているのに・・
嘘がバレるかとひやひやしたが少し考える動作をしてから如月は言った
如月「そう、頑張ったのね。龍田はもう少し殴っておくべきだったわね」
提督「え?」
如月「なんでもないわ」
良かった信じてくれた様だ
胸が少し痛むけど・・
如月「それより聞いた話しだと彼女は大丈夫よ」
如月「艦娘はね?艤装を展開していなくても人よりは頑丈に出来てるわ。何より本人が大丈夫と言ってるなら大丈夫」
提督「そんな筈ない。苦しそうにしていたし、大丈夫って言ったのも強がりで」
如月「提督、黙りなさい」
提督「っ!」
如月「なんでそんなに知った気でいるの?艦娘は単純?鳳翔の何が分かるの?勝手に考えを決めないで」
提督「っ・・でも、本当に苦しそうで・・骨だって多分折れてると思うし」
如月「そう言ったの?折れてるって言ったの?」
提督「いや、言ってないけど」
如月「なら、折れてないし大丈夫なのよ」
提督「なんでそう言えるんだよ!見て来た様に!自分だって艦娘の事を単純に考えてんじゃないのか!」
如月「私は艦娘よ。提督よりは分かってるつもりよ」
提督「だとしても如月は鳳翔さんじゃない!鳳翔さんの何を知ってるんだよ!」
さっき言われた事をそのまま返した
如月だって此処の鳳翔さんの事をよくは知らない筈だ
彼女は自分は二の次にする人だ
だから、彼女は俺を助けてくれようとしていたんだ
如月「知ってるわよ・・提督よりは」
提督「またそれかよ・・・」
如月「提督・・貴方はまだまだ子供ね。少しは成長したと思ったんだけど違った様ね・・」
提督「っ!」
何時も俺の事を肯定してくれた如月
でも、なんだろう少し会わない間に厳しくなっている
いや、それは良いとしても
なんか・・よそよそしくて距離を感じる・・
やっぱりクルージングの件で失望して・・
提督「いや・・如月が・・そんな事は」
ないと言えるのか?本当はもうほって帰っても良いと思って
どうでも良いと思われてんじゃ?
如月「・・・・・・」
なんでそんな冷たい目で俺を見て・・
提督「如月・・・俺は間違ってるの?」
嫌われた・・のかな?
如月「そうよ。貴方は間違ってる」
提督「そうか・・」
初めてハッキリと否定された・・
泣きそうだ・・でも、今泣いたらもっと嫌われる
我慢しろ!
如月「も一度言うわ。提督は間違ってる。だから帰るの良い?これ以上失望させないで・・」
これ以上失望されたくない・・嫌われたくない
提督「嫌だ・・失望されるのは・・一人になるのは・・」
なら、一層の事・・このまま
提督「っ!」キッ
違うだろそれは!
如月「っ!」
俺は嫌われても・・
嫌われても失望されても・・例え間違ってても
それでも・・行かなきゃ・・・その先が真っ暗でも
背負ってる想いが・・あるから
提督「・・でも、俺は・・自分が間違ってるとは思わないよ」ウルウル
如月「っ・・何よ・・泣きそうになって・・そんな顔しても・・そんな・・目をしても」ウルウル
自分だって泣きそうじゃないか・・
提督「嫌われても良い・・いや、良くないけど・・ないけど!」ポロポロ
涙が止まらない止めようと思っても溢れ出る
如月「やめて・・言わないで・・」
視界が涙でぼやけるけど前を見て言わないと
提督「それでも、目の前の苦しんでる人を見捨てるだけの人にはなりたくないんだ!」ポロポロ
如月「っ!・・うぅ・・提督・・・バカ・・もう限界よ・・」ポロ
少しずつ近寄ってくる
もしかしたら薙刀で
如月「・・提督が間違ってる?」ポロポロ
薙刀を落とした
フラフラした足取りで目の前まで近寄って
如月「そんな事ないに決まってるでしょ!!」ダキッ
提督「っ!」
抱きしめられた
提督「き、如月」
如月「提督の考えは私の考えよ・・間違ってなんかいない!失望なんて絶対にしない!」
如月「もし、間違ってても、それでみんなが否定しても・・離れても・・私だけは味方で・・いるから・・」
如月「貴方の帰る場所であるから!」
提督「如月・・如月!俺だって!みんなが否定しても味方でいるから!守って・・みせるから!」
如月「提督・・少し見ない間に大きくなって・・もう、もう!大好き!!」
提督「如月こそ、泣き虫になって・・でも、そんな如月も大好き!!」
如月「ずっと会いたかった!寂しくて胸が張り裂けそうだった!」
提督「俺もずっとずっと会いたかった!如月のことを忘れた日なんてなかった!」
如月、提督「「うぅ・・うわぁあああん!」」ポロポロ
俺達は少しの間抱きしめ合って泣いた
お互いの溜まっていた気持ちをぶつけ合う様に
如月に言われ通り俺もまだまだ子供なのかもしれない
如月の胸は温かくて凄く安心出来た
まるで・・母親の様に・・
そして、何故か海藻の匂いがした
野良鳳翔「・・・・・・」
ー部屋の外ー
イムヤ「もう少し待ってあげて」
瑞鶴「はぁ・・面倒ね」
睦月「・・・・・・」
空気の読める三人だった
如月「提督・・私の可愛い提督〜」スリスリ
野良鳳翔「・・・・・」ジト〜
提督「あ、あの、そろそろ離れないと」
如月「嫌よ」
提督「いや、でもほら見てるし」
如月「提督は私の事嫌いなの?」ウルウル
提督「断じて違う!」
如月「なら、良いじゃない」スリスリ
良くはないんだけど・・
提督「はぁ・・どうしよう・・」
あの後二人で泣き続けて落ち着いたのは良いが如月が発情期の猫の様に離れなくなってしまった
いつの間にか鳳翔さんは起きていたし、と言うか無事だったんだ・・
まだ、お腹を押さえてはいるけど普通に立って龍田さんの薙刀を持ってジト目でこっちを見ている
斬られないよね?
野良鳳翔「随分と懐かれていますね」
相変わらず眉間にシワを寄せて心底嫌そうに言う
提督「何時もは頼もしい人なんですよ。今日は何故かこうなってますけど」
野良鳳翔「そうですか。ですが、此処は敵地です。そろそろふざけているなら・・また、懲罰房へ行きますか?」
如月「そんな事はさせないわ!」
提督「ん?」海藻
いつの間にか離れていた如月が言った
そして何故か俺の手には海藻
何故?
野良鳳翔「なら、さっさとその人を連れて行きなさい」
如月「・・本当に大丈夫なの?」
野良鳳翔「貴女には関係ありません」
如月「そう、提督、もう一度聞いてあげて」
野良鳳翔「むっ・・」
提督「え?あぁ、分かった。鳳翔さん怪我大丈夫なんですか?」
野良鳳翔「・・・・大丈夫だからもう行って」
提督「でも、やっぱり強がってる様にしか」
如月「大丈夫よ。彼女は嘘をついてない。と言うよりつけないのよ」
野良鳳翔「・・・・・・」
提督「どう言う事?」
如月「鳳翔は鳳翔って事よ」
提督「あぁ、成る程納得だ」
野良鳳翔「知った気でいないでください不愉快です」
提督「鳳翔さん」
野良鳳翔「な、なんですか」
提督「俺は鳳翔さんを信じて行きます。だけど、入渠ドッグを動かす事は出来ません。すみません」
野良鳳翔「・・最初から頼んでなんていません。勝手な事をせずさっさと出て行きなさい」
提督「やっぱり優しいですね。鳳翔さんは」
野良鳳翔「早く行かないと!これで斬りますよ!」
提督「はは、それは嫌だな。これ以上傷を増やしたくないから・・」
野良鳳翔「べ、別に本気で斬ろうとなんて・・い、いえ、本気です」
提督「ありがとうございました」
野良鳳翔「っ!」
提督「行こう如月」
如月「提督・・良いの?」
提督「あぁ、如月が止めようとしたのにも意味はあるんだよね?」
如月「そうだけど・・提督が望むなら」
提督「いや、俺はまた自分勝手な事をして後悔していたかもしれない」
みんなをまた危険に晒してしまう事があったかもしれない
なのに俺は如月の話も聞かずに・・また、起こそうとしていた
提督「此処は俺がどうこう出来る場所じゃ・・して良い場所じゃないんだよ」
そう決めた筈なのに・・見捨てる覚悟を決めた筈なのに
提督「分かってたのに・・駄目だな。すぐに忘れてしまう。こんなじゃあ司令官失格だ」
如月「そんな事はー」
野良鳳翔「そんな事はないですよ」
提督「っ!」
野良鳳翔「貴方のその自分勝手に救われた人もいる筈ですよ。その真っ直ぐな目で見た物を信じて行きなさい」
野良鳳翔「それは今の人間達にはなくなってしまった大切な希望だから」
提督「鳳翔さん・・」
そう言った彼女は優しく微笑んでいた
俺の知ってる鳳翔さんと同じ優しく包み込む様な顔に
でも、それはすぐに戻った
野良鳳翔「は、早く行きなさい!」
提督「はい!」ビシッ
如月「・・・・・・」ビシッ
そして二人は入渠ドッグを後にした
残った彼女は自虐的に微笑んだ
野良鳳翔「一瞬でも・・一緒に行きたいなんて思うなんて・・馬鹿ね・・・」
バタッ
瑞鶴「遅い・・・」イライラ
イムヤ「まぁまぁ、もう出てくるでしょ」
睦月「・・・・・」ピクッ
提督「あれ?イムヤさん?」
イムヤ「提督さん無事だった?」
提督「はい、大丈夫です。助けに来てくれてありがとう」
イムヤ「良いの良いの気にしないで無事なら良かったから」
如月「まさか待ってたの?」
イムヤ「ん?今来たところだよ?ね?」
瑞鶴「・・そうね、今来ました!」
睦月「・・・・・」
提督「えっと怒ってます?と言うか誰です?」
瑞鶴「怒ってないし!私が誰でも良いでしょ?」
イムヤ「彼女は瑞鶴でそっちが睦月だよ。此処に潜入した時にちょっと手伝ってもらったりしたのダンボール貰ったりとか」
提督「ダンボール?」
如月「そ、その話しは置いておきましょう!それより脱出しないと」
ツンツン
睦月「・・・・・」ニコッ
如月「ひ、久しぶりね。睦月」
提督「あ、そうか。睦月って如月の姉になるんだ」
う〜ん、似てる様な気がするけど・・
幼い感じがするのはなんでだろう?
そしてなんで冬でもないのにマフラーなんか巻いてるんだ?寒いのか?
如月「言いたい事もあると思うけど、私は私であって貴女の知る私ではないから」
睦月「・・・・・・」
睦月「・・・・・・」チラッ
提督「ん?」
睦月「・・・・・・」ビシッ
提督「あ、これは失礼しました!おんぼろ鎮守府の司令官をさせてもらっています提督です」ビシッ
敬礼に反応してしまう・・司令官の習性である
睦月「・・・・・・」
瑞鶴「おんぼろ鎮守府?聞いた事ないわね」
如月「最近出来たばかりなのよ」
瑞鶴「へぇ〜噂も聞かないし余程どうでもいい鎮守府なのね。まさか使えない奴らの集まりとか?」
提督「・・・・・」イラッ
如月「島に篭りっきりの野良艦娘には分からないでしょうね?」
瑞鶴「は?」
イムヤ「如月、瑞鶴は鎮守府所属の艦娘だよ。睦月は違うけど」
如月「・・そう、貴女が」ボソッ
提督「・・軍の艦娘?なんで此処に?」
瑞鶴「任務だからよ。それ以上は言えないけど、その任務にこの島に入って来た馬鹿な人間を逃がしてやるってのもあるのよ馬鹿な人間をね!」
提督「成る程・・此処は見捨てられた場所ではなかったんですね。と言う事は貴女が補給隊長」
瑞鶴「その名で呼ぶな!たださえダサい名前なのに!気が付いたらそう呼ばれる様になってただけよ」
提督「今から考えれば軍の艦娘がいてもおかしくないですね。此処は見捨てられた場所なのに食料には多少の余裕があった。それに人のいる場所に行かなければ補給なんて出来ない」
提督「此処は何かしらの理由で管理しなければいけない場所なんですね」
提督「そして、入渠ドッグを使えなくしてるのは・・この島から出さない様にしているから」
瑞鶴「馬鹿も嫌いだけど察しの良い馬鹿はもっと嫌い」
提督「入渠ドッグの事は正直確信はなかったんですが、その反応だと合ってるみたいですね」
提督「補給隊長さん」
瑞鶴「っ・・先の言葉撤回する。あんたみたいな奴が一番嫌い!」
如月「ふふ、やるわね」
提督「嫌いって言葉ならよく言われますよ。俺はどうやら貴女様な気の強い娘には嫌われやすいみたいです。どうでもいいですが」
提督「でも、俺の仲間を貶す事だけは許しませんよ」ギロッ
瑞鶴「っ・・悪かったわよ。そんなに睨まないでよ」
提督「分かってくれたなら良いですよ。俺も生意気な事を言ってすみませんでした」
瑞鶴「艦娘に謝るなんて変わってるわね」
提督「今がおかしいんですよ」
瑞鶴「ふふ、なによそれ真顔で言う事?でも、悪くないわ。脱出の準備は済ませてるから屋上へ向かってくれる」
野良睦月「・・・・・・」ニヤリ
如月「っ・・・・」ゾクッ
提督「屋上?瑞鶴さんと睦月さんは?」
瑞鶴「後から行くから先に行ってて野暮用が出来たから行き方はー」
如月「私が知ってるから良いわ。こっちよ」ダッ
提督「はい!それじゃあ瑞鶴さん睦月さんまた後で」ダッ
イムヤ「待ってよー」ダッ
瑞鶴「・・・・はぁ」
瑞鶴「今なら鳳翔の気持ちが分かる・ ・好きにはなれないけど・・嫌いにもなれない・・厄介な奴」
野良睦月「・・・・・」鳳翔背負い
野良鳳翔「うぅ・・・」
瑞鶴「さて、この強がり馬鹿を医務室へ連れて行かないと」
瑞鶴「嘘が苦手なのに無理なんてして・・」
ー元鎮守府屋上ー
提督「高いな〜」
夕方と言うのもあり夕日が綺麗だ
そして此処からの眺めはこの島の全体が見渡せる程だった
でも、金髪達の姿は見えない
無事だろうか
如月「此処からどうやって脱出を・・」
提督「分からないけど、あの二人は信用して良いと思う」
軍の所属だし睦月さんは如月の姉だ
騙す様な事はしないだろう
如月「提督、瑞鶴は仕事と割り切っているから大丈夫だと思うけど、睦月だけは信用してはダメよ」
提督「え?姉なのに?」
如月「恐らく彼女は私も貴方も良くは思われてない」
提督「心当たりが?」
如月「ないとは言えないけど今もそれを思ってるかは分からないの」
如月「とにかくあの娘が何を考えてるか分からないの気をつけて」
提督「分かった。でも、俺は俺の見たままを信じるから最初から睦月さんを疑う事は出来ない」
如月「分かったわ。でも、少しでも不審な動きがあったらすぐに言って」
提督「分かった」
如月「本当なら姉をそんな風には思いたくないけど・・」
イムヤ「・・・・・・」
イムヤ「嫌な空気・・・血の匂いが混じってる」
そして事態は大きく動き出す
提督「ん?向こう側の方の海に何かいる?」
金髪達ではない
反対側と言うのもあってよくは見えないけど・・この肌に染み付いた嫌な感じと風に乗ってくる血と潮とが混じった匂い
提督「あれって・・まさか!やめろ!」
駆逐棲姫「・・・・・」ガチャ
如月「っ!」
イムヤ「なになに!この感じ!」
彼女だ!俺が起こしてしまった
提督「撃つな!!」
大井「っ!」
ドンッ!!
開戦の音が鳴り響いたのだった
鳴り響く音
それは、戦いの始まりを告げる死の匂いを感じさせた
ドンッ!!
奴が来た・・・・
提督「くそっ!なんであいつが!」
如月「あれは・・」
イムヤ「嫌な感じ・・」
まさか追って来たのか?それとも偶然?違う偶然じゃない!
提督「行かないと!」
きっとあの場所に黒髪達が居るはずだ
待っていてくれていたんだ!
でも、今の一発でもう・・
ドンッ!
更に砲撃の音が続いた
提督「っ!」
一発でなく何発も続いている
黒髪達はやられてなんていない!戦ってる!
手遅れかどうかなんて見てから決めろ!行ってみんなを助けないと!
如月「提督」
提督「如月、逃げろなんて言うなよ?」
如月「違うわ。どうやって行くの?今から急いで行っても間に合うかどうか」
イムヤ「それでも走ろ!そうするしかないんだから!」
提督「そう言う事だ行くぞ!」
如月「・・・・・・」
如月「・・うん、分かったわ。提督に着いてく」
如月「場合によっては私が囮に」ボソッ
瑞鶴「いやいや、普通は逃げるでしょ!何考えてるの!」
遅れてやって来た瑞鶴さんが道を塞ぐように現れた
睦月さんはいないようだ
提督「瑞鶴さん、退いてください」
瑞鶴「正気?何が起こってるのかはよく分からないけど、あれは危険よ。絶対に勝てないし関わってはいけない」
如月「・・・・・・」
提督「その言い方何か知ってるんですね」
瑞鶴「ええ、そうよ。だから言える貴方達には勝てない絶対に」
瑞鶴「それよりももうすぐ迎えが来るから逃げて」
提督「断る・・仲間をほって帰る気はないですから」
瑞鶴「人間ではどうも出来ないって言ってるのに何考えてるの!」ガシッ
提督「っ・・それでもあいつらは!戦ってんですよ!俺が帰るのを信じて待っていたんですよ!なのに!俺だけ帰るなんて出来ない!無茶だとしても行きますよ!俺は!だから退け!」
瑞鶴「退かない!あんたがどれだけの奴か知らないけど、どうしても通りたいなら私を倒して行きなさい!」
イムヤ「なら・・殺る」
如月「待って」スッ
イムヤ「なに?」
如月「良いから」
提督「っ・・頼みます・・退いてください!」
瑞鶴「分かって・・万が一にもどうにも出来ない状況なの」
瑞鶴「提督・・いえ、提督さん!私は本当に貴方を心配して・・」
如月「嘘ね」
瑞鶴「違う!本当に心配して!」
如月「違うわ。どうにも出来ない状況って事よ」
瑞鶴「っ!何を知ったように!」
如月「てか、いつまで触ってんだよ」ボソッ
瑞鶴「え?」
如月「とりあえずその提督を掴んでる汚い手を離しなさい!」
瑞鶴「あ、とにかく退がりなさい」パッ
提督「いえ、俺はー」
如月「提督、任せて」
提督「如月・・分かった」
如月「姫種の事でしょ?分かってるわよ貴女よりもね」
瑞鶴「っ・・あんた・・なんで」
提督「姫種?如月それって」
如月「提督、彼女を動かしているのは一つだけよ。それは帰りたいと言う想い」
提督「帰りたい想い?」
如月「そう、姫種は元は艦娘であり彼女が生まれた原因は帰りたい場所があるからでその想いの強さが彼女の強さに比例する」
如月「でも、生半可な想いじゃ生まれないから生まれた時点で凄く強いわ無敵と言っても良いかもしれないわ」
提督「無敵って・・どうにか倒せないのか」
如月「彼女を倒す方法は圧倒的火力で塵も残さず消す事よ」
瑞鶴「そうよ。だけど、此処にそんな火力はない・・分かるでしょ?殆どが戦えない娘達ばかりなんだから」
瑞鶴「悔しいけど・・今の私たちには打つ手がない・・此処の娘達は隠れてもらうように睦月に頼んであるから後は貴方達は逃げて」
如月「もう一つあるでしょ?」
瑞鶴「え?」
如月「彼女の求めるものを与えてやる。そうすれば満足して海の底へと消えるはずよ」
瑞鶴「まさか探すの?」
如月「そうよ」
提督「え?でも、場所ならこの島って事に」
如月「此処に帰りたいなんて思う娘なんていないわよ。それに姫種で言う帰るべき場所は場所じゃなくて人物なのよ。私は此処の娘の誰かだと思うわ」
如月「姫種は生まれてから時間が経つ程に求めるものを強く感じ理解する。でも、そんなに時間は掛からない・・そして最終的にはそれしか見えなくなり何処までも追いかけて来るわ・・彼女自身が死ぬまでずっとね・・」
提督「っ・・・・」
イムヤ「大丈夫?」
提督「あ、あぁ、大丈夫・・」
それは、帰るべき場所となってしまった人はずっと逃げ続けなければいけないって事か・・
怖いけど・・何故か悲しく感じる
ずっと帰れないかもしれないんだから
如月「姫種である彼女の行動に意味のないものはなくなる。つまり今襲っている行為自体も求めるものに繋がっている」
瑞鶴「じゃあ何?その求める人物が彼等を助けに来ると信じてるって事?求める娘が見つかったとしてその娘にはなんて言うの?みんなの為に死ねと?」
如月「彼女が姫種になったのはその娘の所為でもあるのよ責任は取ってもらわないと・・なにも死ねとは言わないけど此処を出て行ってもらうわ。そうすれば彼女もいなくなる」
如月「なんなら軍が保護をすれば?」
瑞鶴「簡単に言ってくれるね」
如月「とりあえず此処の娘達みんな向こう側へ行ってもらいましょ」
瑞鶴「そんな事させない!残念だけど私は此処何年彼女達を島の外に出していない。そうなる要因はないの。だからあり得ない」
如月「いえ、こっそり出た娘がいたのよ。姫種が此処に来たのがその証拠よ」
瑞鶴「ないから!ちゃんと見てた。ただの通り道で向こう側にいる提督の仲間が何かしたんじゃない?それともその中に彼女が求める人物がいるんじゃ?」
如月「あり得ないわ。彼等は海には出ないし、もしそうなら此処へ来る前に襲われてる。それにただの人間には何も出来ないと言ったのは貴女でしょ忘れたの?」
如月「それに一番は貴女が信じられない事よ」
如月「提督を掴んだ提督を掴んだ提督を掴んだ提督を掴んだ」ボソッ
瑞鶴「はぁ?それって私がサボっていたと言いたいわけ?」
如月「ちがーっそう言ってるのよ」
瑞鶴「喧嘩売ってんの?」
如月「さぁ?」
イムヤ「ねぇ・・もういいかな?とりあえずさ?あの煩いの殺った方が早くないかな?背後からグキッてね」
提督「イムヤさん待ってください・・」
イムヤ「いや、でもこうしてる間にも西提督やあの子達が・・」
提督「分かってます。ちょっと整理させてください・・」
イムヤ「ん?整理」
提督「はい、大事な事なんです」
イムヤ「分かった待つから」
提督「ありがとう」
イムヤ「とりあえずそこの二人は喧嘩やめ!」ダッ
提督「・・・・・・・」
焦る気持ちを抑えて・・こんな時こそ冷静でいないと
提督「整理しよう」
そして覚悟を・・
彼女は姫種と呼ばれている深海棲艦とは違って帰りたいと言う帰省本能だけで動いてる
それは俺がおんぼろ鎮守府へと帰りたいと言う想いと同じで純粋な正の想いで目的を持っている
それだけで奴等深海棲艦とは違う
奴等は破壊に喜びを見出している悪なる負の想いを持っていてそこに明確な目的なんてないと俺は思う
深海棲艦と姫種は別物と考えよう
姫種の生まれる原因
強い帰省本能を持った艦娘が轟沈してしまう事で生まれる存在
強い帰省本能とは?帰りたい場所があるという事だ
場所と言ってもそれは人物だ
何があっても会いたいと想える人の元へと帰りたいのだ
でも、今までに俺は姫種を見た事もないし例を聞いた事もない
それとも此処が自分の帰るべき場所だとそう思ってる艦娘達がいないのか
それも今の海軍では仕方ないのかもしれないけど
いや、少なくとも居るはずだ!俺はそう信じてる
でも、居るけど生まれない・・
それ程大きな想いでないといけないという事だ
そしてその想いは時間が経つほどに強くなり永遠に追いかけて来る程になる
帰るべき場所からずっと逃げられ
ずっと帰れない・・そんな悲しい宿命を持って
倒す方法は圧倒的火力による攻撃
此処の娘達が力を合わせて立ち向かえば可能性はあるけど、動ける娘は殆どいないから無理だ
そしてもう一つが姫種に帰るべき場所を与える事
元々姫種が動いてるのは強い帰省本能だけでそれさえなくなってしまえば大人しくなるらしい
でも、恐らくその人は海の底へと連れて行かれて・・死んでしまうだろう
結局帰る事が出来ても待ってる結末は・・
好きな人と共に死ぬ事だ
そしてそれを踏まえて問題なのが、今・・此処にいる誰かが姫種の帰るべき場所であると言う事であり、姫種はその為に黒髪達を襲っている
それは必要な行動だからで、それを知って誰が来ると?
如月の言う様に此処の娘達の誰かなのだろうか?
いや、違う
なら、西提督さん、黒髪達か?
違う
瑞鶴さん?睦月さん?
違う!
如月?イムヤ?
違う!!
じゃあ、誰?もう分かってんだろう・・
黒髪達や西提督さんを大切に想ってるのは誰だ
イムヤ「ほら、やめなって!」
彼女を見つけ・・そして起こしてしまったのは誰だ?
如月「一発だけ!一発だけだから!」
彼女を抱きしめて暖かい場所へ帰してやろうと想ったのは誰だ
瑞鶴「来いよ!早く!」
如月の時と同じ様に生き返って欲しいと願ったのは
誰だ
提督「俺だ!」
イムヤ、瑞鶴、如月「「「え?」」」ピタッ
提督「俺が彼女の帰るべき場所なんだ」
それは永遠の宿命を持ってしまった事を認め背負う事を覚悟した瞬間だった
如月「身に覚えがあるの?」
でも、逃げない
提督「あぁ、俺以外にあり得ない」
せめて関係ない黒髪達は逃して・・どちらの結果になっても此処で終わらせる
如月「そう・・馬鹿な子ね」
提督「あぁ、そうだな。覚悟は出来た行こう・・」
瑞鶴「・っ・・ちょっとあんた・・」
如月「良いのね」
イムヤ「うん、良い覚悟!もしもの時は一緒に死んであげるね」
瑞鶴「もし言ってる事が本当なら確実に死ぬのよ!本当に行くの!」
提督「はい・・もう決めました」
瑞鶴「逃げて」
提督「そうしたら黒髪達もきっとこの場所も全て壊されてしまう・・そしていつか近い未来俺の大切な場所も壊されてしまう。それだけは耐えられない!」
提督「どっちの結果になっても絶対に終わらせますから行かせてください!」
瑞鶴「っ・・なんで・・なんでこんな馬鹿が・・くっ!」
瑞鶴「もう!」弓矢構え
提督「瑞鶴さん!」
如月「っ!」
イムヤ「・・・・・」
バシュ
放たれた矢は地面に刺さり
やがて大きく光って艦載機になった
瑞雲「」
提督「デカ!」
それは本来の人が乗るサイズである瑞雲の四分の一のサイズの瑞雲だった
普通に言えば小さいが、艦娘達が使う艦載機に比べるとかなり大きい
提督「瑞鶴さんこれは」
瑞鶴「ふん、もう勝手にすれば?それは思い出しただけよ」
提督「え?何を」
瑞鶴「良いから乗って!」グイグイ
提督「いや、このサイズは操縦席には乗れないです!」
瑞鶴「そのまま上に乗れば良いの!ほら捕まって!離したらダメだからね!あんた達も適当にフロート辺りに乗りなさい!」
提督「これ凄く怖い・・」
如月「嫌よ」提督にしがみつく
提督「っ!」
イムヤ「じゃあ、反対側を」しがみつく
提督「あ〜左右に柔らかい何かが・・と言うかサイズが小さ過ぎてもはや瑞雲が見えない」
でも、二人がしがみつく事で瑞雲に固定されて落ちにくそうなので少し安心だ
少し重いけど
てか、これからどうするの?
瑞鶴「これはね数年前に瑞雲馬鹿が持ってきたのよ。約束の品だって言ってね」瑞雲持ち上げ
提督「うわっ!」
瑞鶴「そんなの知らないって言ったのに此処で語り合った同士に渡してくれって言われたのよ」方向オーケー
提督「ま、まさかそのまま投げる気じゃ・・」
如月「提督!しっかり掴まって」
イムヤ「っ!」
ガチャ
睦月「っ・・・・」
提督「っ!行くぞ!」
???『行こう一緒に』
彼女の目に見えていたのは誰かの姿と重なった光景だった
気づくと
睦月「っ!」ダッダッダッ
走り出していた
瑞鶴「もう面倒だから同士はあんたで良いでしょ!確かに渡したからね!」全力投雲
提督「いや、それはー」
ブンッ
投げられた瑞雲は真っ直ぐ飛び出した瞬間
睦月「・・・・行く!」ピョン
瑞鶴「あ!」
瑞雲に手を伸ばす
しかし、睦月の手は届かずそのまま落ちー
ガシッ
如月「何してるの!馬鹿ぁああーー!」
提督「おかしぃいいいだろぉおおーー!」
イムヤ「はやーーい!」
必死にしがみつく提督
イムヤは喜び叫び
如月は睦月を掴みあげての
如月「しっかり掴まってなさい!髪の毛はダメよ抜けるから」提督の上
睦月「・・・・」ガシッ
提督「おふっ」
その上に更に如月が乗る
提督「お、重い」
言わば提督は三人に乗っかられている状態に近かった
嬉しい状況ではあるがそれは空の上でなければの話だった
提督「お、落ちるぅうう!」
そしてそのまま瑞雲は島の反対側へと飛び立った
瑞鶴「・・・・背負うなら最後までしっかり背負いなさい。途中で投げ出したら許さないからね」
瑞鶴「・・はぁ、本当に馬鹿ばっかり!元帥になんて言えば・・」
大井「っ!」
駆逐棲姫「ッ!」
ドォーーン!!
瑞鶴「ん?花火?汚い花火ね」
空が爆発したがそれがなんだったのかは分からなかった
瑞雲「」ゴォオオオオ!
提督「な、慣れてきた!」
如月「後少しよ頑張って」
睦月「・・・・・・」
イムヤ「あれ見て!」
それはまさに姫種である彼女が黒髪達に主砲を向けて撃とうとしてる瞬間だった
青いオーラに包まれた彼女からは死を予感させるほどの恐怖を感じた
大井さんと北上さんは倒れている
その二人を庇うように前に出ている研修生の三人
三人は倒れてる二人を置いて逃げたりしないだろう
例えそれで命が尽きたとしてもだ
提督「みんな無事でよかった・・」
だけど、確実に間に合わない
だから、助けようとは思わない
此処まで生き抜いたんだ。これはまぐれでも何でもない彼等の実力だ
だからお前達を信じるから
後一回だけその実力で奇跡でもなんでも起こして生き抜いてくれ!
提督「すぅーー!」
此処でお前達の道を終わらせないでくれ!
提督「負けんじゃねえぞ!!」
《雷撃戦開始》
ドクンッ!
黒髪「っ!」
如月「これは・・」
睦月「・・にゃひ」ビクッ
イムヤ「お!お!!」
金髪「大将の声だ!」
メガネ「何処に!あ、なんか飛んでる!」
黒髪「うぅ・・なんか身体が熱い」
提督「っ!」
あれ?なんか重さが増して
如月「だ、ダメよ・・出そう」プルプル
睦月「・・・・・////」
提督「どうしたんだ二人とも!なんか重くなってんだが」
イムヤ「あ、なんか魚雷出た」魚雷
提督「なっ!」
何艤装展開してんだ!!
駆逐棲姫「ッ・・・・・」ドォオン!
黒髪「行けぇええ!」シュッ
ドカーーン!!
黒髪達と駆逐棲姫の間で爆発が起こった
何が起こったかは分からないがみんなは無事だった
最高だお前ら!生きて帰れたらモンエナ奢るからな
いや、モンエナ飲み放題だ!
提督「死ねないな」
如月「ふぬぬぬ!!て、提督、も、もう!」
提督「き、如月!お、重いぞ!やめろ!こんな所で魚雷を出すな!艤装を展開するな!我慢してくれ!」
ポンッ
如月「ごめんなさい!もう無理!」魚雷
ポンッ
睦月「っ!」魚雷
提督「睦月さんもかよ!」
瑞雲「」重量オーバー
提督「ひゃぁあああ!重いぃいいい!落ちるぅううう!」
イムヤ「貴方達は逃げて!後は本職に任せて!」魚雷ポイッ
如月「ごめんなさいね・・我慢出来なかったわ・・」魚雷ポイッ
睦月「・・・・・・////」魚雷ポイッ
駆逐棲姫「ッ!」
放たれた魚雷三発は駆逐棲姫を襲い大きく爆発した
その隙に黒髪達は大井さんと北上さんを連れて逃げる事に成功した
そして提督達を乗せた瑞雲はそのまま海の方へ
提督「っ!」
イムヤ「あれ?艤装が強制解除された?待って!艤装が展開出来なくなっー」
ジャバーーーン!!
日は完全に沈み月が反射して輝く海へと落ちて行ったのだった
今日が何の日か?そう言われても何の日だ?と答える
そう、ただの変わらない毎日だ
・・・・・・・
うそ、本当は分かっている
バレンタインデーだ
聖バレンタインがなんかしたとかしないとか
お菓子会社が便乗したりとか
カップルが爆発したとか
そんな色々な事が重なり生まれたのがバレンタインデーだ
ちなみにバレンタインデーのお返しにマシュマロはダメだって聞くけど、美味しいんだし良いじゃん気持ちはちゃんと言葉で伝えてマシュマロ食おうぜ?
これは少し先の未来のあったかもしれないバレンタインデーの話しです
提督「うぉおお!漏れる!」ダッダッダッダッ
トイレまであと少し
電「っ!」
電「司令官ぁああん!」ダッダッダッダッ
正面から電が走ってくる
提督「そこをどけぇええ」
電「とぉ!」ドンッ
提督「ごふっ!」
腹へとクリティカル!
電「っ!」ダッダッダッダッ
そして蹲る俺をほって走って行ってしまった
何時もなら骨が折れたのです!慰謝料を寄越せと騒ぐのだが珍しい
提督「ん?ポケットに何か入ってる?」
そこにあったのは小さな袋に入れられたお世辞にも綺麗とは言えない形をしたチョコレートだった
強く握りしめていたのだろう少し溶けてしまっている
だけど、電らしいとも言える
提督「ふっ・・ありがとな電」
後で美味しくいただくよ
そう思いながら濡れてしまった床を一人拭くのだった
提督「・・・・・・」フキフキ
電「・・・・・」ヒョコ
不知火「提督」
提督「あれ?何処かへ出かけていたんじゃ?」
不知火から外出許可の申請があったので即理由も聞かずに受理した
不知火は何時も近くにいて役に立ってくれようとするあまりに個人的な外出なんてする事はまずなかった
だから、少し心配した時期もあった
ストレスを溜めてないとか色々と考えた
東鎮守府が運営する提督達の為の提督相談窓口に何度かけたか
だから、申請があった時は嬉しかった
不知火も女の子らしく遊びにショッピングとか行って欲しいと思ったから
提督「まだ、時間はあったのに何の用かは分からないけどゆっくりしてくれば良かったのに」
不知火「いえ、早く渡したかったので」
提督「え?何を?」
不知火「これ何時もお世話になっていますのでその気持ちです」チョコ
提督「これって」
不知火「バレンタインデーと言う日らしいので・・迷惑でしたか?」
提督「いやいや!嬉しいけど・・嬉しいんだけど」
豪華な箱なのにも関わらず小さく高いぜオーラが凄い
提督「かなり高いんじゃ?」
不知火「はい、チョコレートでもこんなに高く出来るんですねと言うくらいには高いです。でも、美味しいらしいので大丈夫です」
提督「いや、味の方ではなくて・・」
正直100円のチョコでも美味しいと思う俺がこんな高いチョコを食べて良いのか?バチが当たらないか?
やはり悪いけど断ろう・・それは不知火に食べてもらおう
不知火「もしかしてチョコは嫌いでしたか・・すみませんでした」シュ〜ン・・
提督「貰います!いただきます!」
そんな悲しそうな顔をされたら貰うしかないじゃないか!
提督「でも、安いので良かったんだよ。嬉しいけどあまり高いのだとこっちが申し訳ない気持ちになっちゃうし」
何時もお世話になってるのはこっちだし
不知火「実は私もそう思ったんですが、東鎮守府の陽炎に相談した時に」
東鎮守府の陽炎、偶に提督相談窓口で話を聞いてもらうことがある娘で不知火の姉でもある
結構辛口で相談に対してズカズカ言うので結構助かっている反面泣いた夜も多い
不知火「提督は東提督に負けないくらいの貧相な声をしてるし安い人生しか歩んでない感じがするから人生で一度くらい良い物の味も教えてあげないと可哀想だと思うと言われて納得したんです」
誰が貧相な声じゃ!と言うか東提督さんと同じって・・ちょっとショック
不知火「司令官として勉強と言う意味でも良いと思ったんです。安い物だけではなく高い物も知っている方がきっともっと上の司令官になれると思ったからです」
不知火「そして何よりも陽炎に東提督と同じ声と言われたのが凄く!すごーーく!悔しくて・・もう二度とそんな事は言われない司令官になって欲しいから・・」
提督「不知火・・・・」
そこまで考えて態々買ってきてくれたのか
その気持ち無駄にはしないから!東提督さんの様な貧相な声って言われない様に俺頑張るから
陽炎と話す時は声を張るから!ゴージャスそうな声を出すから!
不知火に恥ずかしくない司令官になるから
不知火「受け取ってくれますか?」
提督「あぁ、不知火の気持ちもチョコも受け取るよ。ありがと」
不知火「はい、良かったです」
提督「それでなんだけど・・」
不知火「はい、なんですか?」
提督「一人じゃ食べるの勿体無いからさ一緒に食べないか?美味しいなら尚更一人よりも二人で食べた方が美味しいからさ?」
不知火「提督・・・・」
提督「駄目かな?」
不知火「いえ、喜んで」ニコッ
そのチョコは当然今まで食べたチョコの中で最高だった
いや、本当・・美味いな!
ー後日ー
提督『やぁ!提督だよ!デ〜リシャ〜ス』
陽炎『・・・・・・』
電話を切られました
俺は今女の子からチョコを貰うと言う美味しいシュチュエーションにいるはず・・なんだけど
提督「・・・・・」
北上「ほい、バレンタインデーだからあげる」
それは、チョコの色をした
魚雷チョコ?「」ブルブルブルブル
ブルブルブルブルと震える魚雷の形をした何かだった
大井「はは・・・・・」
大井さんはなんか困った様に笑ってるし・・
提督「これは何かな?」
勇気を出して聞いてみた
北上「え?見て分からないの?チョコだよ?」
チョコらしいです・・
チョコらしい魚雷「」ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル
提督「へ、へぇー、チョコなんだ」チラッ
大井「そ、その食べれますよ?多分・・」
多分って・・
北上「大井っち当たり前の事言っても面白くないよ」
提督「えっと触っても?」
触った瞬間爆発しない?
北上「あ、もしかして食べさせて欲しかったり?仕方ないなこんな事本当はしないんだけど特別ね。はい、あーん」
多分食べれるチョ雷「」ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル
提督「い、いや、これは・・」
北上「あーーん」
大井「頑張って」
何を頑張れと!
ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル
提督「だけど・・」
大井「大丈夫」
何が大丈夫なんだ!
ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル
北上「あーーーーん!」
大井「信じて!」
信じたいけど!
ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル
提督「だって!動いて!」
大井「関係ない!」
ブルブルが頭から離れない!
ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル
北上「あーーーーーーん!!!」
大井「あーーーーーーん!!!」
あああああ!!ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル
やめろぉおおお!!
ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル提督「うわぁああああああああん!!」ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル
提督「ごめんなさーーーい!!うわぁあああああん!」ダッダッダッダッダッダッ
北上「あ、逃げちゃった・・チョコ苦手だったのかな?折角今何処の鎮守府でも流行ってるって言うチョコを作ったのに」
魚雷チョコ「」ブルブルブルブルブル
パクリ
魚雷チョコ「」チーーン
北上「うん、美味しい」モグモグ
大井「ちょっと意地悪しすぎたかな?」
北上「え?なんで?」
大井「それの流行ってる意味分かってました?」
北上「さぁ?でも、何処の鎮守府でもバレンタインデーに艦娘から司令官に渡すと喜ばれるチョコなんでしょ?」
大井「表ではね・・」
北上「へ?どう言う事?」
魚雷チョコ
何処かの鎮守府で作られたのが広まりバレンタインデーにはこれを司令官に渡す娘が増えた
あげた娘も貰った司令官も両方が喜ぶチョコレート
でも、裏は違う
貰った司令官は謎のブルブルに怯え、そして渡す娘はこう言って渡す
『私の気持ちです』と
何故?魚雷の形なのか?何故ブルブルしてるのか?
簡単です。それが本音の気持ちだからです
つまりこのチョコを渡す娘の本音は
『お前を今すぐにでもこの魚雷で海に沈めてやりたい』と言う遠回しの意思表示なのです
大井「本物を投げつけたいけど出来ない乙女心を隠したチョコなんです」
北上「ありゃ〜だとしたら提督に悪い事しちゃったね。謝らないと」
大井「今はやめておいた方が良いかもしれないですよ?少し落ち着くのを待った方が良いです」
北上「意味知ってたかな?」
大井「知らないとは思うけど・・だって提督さんの周りの司令官達で貰ってる人いないと思うし、あの怯え方はブルブルしてたからだと思うけど・・あの顔は中々そそるものがあります」
大井「ふふふ、可愛い」
北上「お、大井っちがしちゃいけない顔してる」
大井「っ!」
大井「と、とにかく今は待ちましょう」
北上「そうだね。そう言えば大井っちが作ったチョコって魚雷発射管の形してるけど、それにも意味はあるの?」
大井「え?ありますけど、秘密です」
北上「え〜教えてよ〜」
大井「これは北上さんの頼みでもダメですよ〜」ダッ
北上「あ、待て〜」
大井「あははは」
ー執務室前ー
如月「ねぇ!提督どうしたの!何があったの!ドアを開けて!ねぇ、提督ったら!ねぇ!!」ドンドン
ー執務室ー
提督「ブルブル怖い・・ブルブル怖い・・」ブルブルブルブル
二時間したら元に戻りました
ー間宮ー
間宮「提督の大好物とチョコを合わせてみました!」
《生のカボチャチョコレートかけ》
提督「普段より難度が上がりやがった・・はは」
電「は、はわ〜」
ー明石ー
明石「あ?バレンタインデー?そう言えばチョコがたくさん売ってると思ってたけど・・欲しいの?ん、やる」ポイッ
提督「え?」食べかけ板チョコ
夕張「お〜これは提督にとってはご褒美かな?いらないなら貰うけど」
提督「いただきます!」モグモグ
夕張「おー!やるね!私のもいる?」
提督「あ、結構です」
夕張「なんか虚しい!」
明石「・・・・・バカ」
ーまるゆー
まるゆ「出来ました!等身大隊長チョコ!」
宮間「やりましたねまるゆさん。でも・・」
憲兵「殆ど宮間さんがやりましたけどね。だけど・・」
まるゆ「うん、これで隊長も喜びます!」
憲兵「ちょっとイケメン過ぎないか?ここ削ってヒョロくして顔もキモくして」ガリガリ
まるゆ「あ、ちょっと!憲兵!」
宮間「確かに提督さんはこんなに筋肉質では」ガリガリ
町長「カキフライ美味いぞ」
まるゆ「あーー!」
そしてお披露目
《ガリガリゾンビ提督チョコカキフライ付き》
提督「・・・・・・」
俺ってこんな風に見えてたのか・・
ー鳳翔ー
鳳翔「出来ました。チョコレートの艦載機です!これを提督さんに」
鳳翔「・・でも、その前に」
鳳翔「・・・・・・」キョロキョロ
鳳翔「ブーーン、ズドドドドン!敵一機撃墜」艦載機
鳳翔「流石鳳翔さんだ頼りになるな」提督声真似
鳳翔「きゃー提督さんったら〜」
提督「っ!」
俺は何も見てない
ーおんぼろ鎮守府正門ー
憲兵「・・・・・・・」
憲兵「はぁ、あんな奴でもチョコを貰ってるのに俺ときたら・・」
ツンツン
憲兵「ん?」
女の子「あ、あのこれどうぞ」チョコ
憲兵「お、ありがとな。提督に渡しておけば良いんだよな?」
艦娘じゃない娘からも貰うとは・・あいつ爆発しねえかな
女の子「ううん、お兄ちゃんにあげる」
憲兵「え?俺?」
女の子「うん!あげる!」
憲兵「あ、ありがとな」ナデナデ
女の子「何時もお仕事頑張ってるからこれからも頑張ってください」
憲兵「あぁ、頑張るよ」
女の子「じゃあねーー」フリフリ
母親「・・・・・・」ペコリ
憲兵「あぁ、じゃあな!」ふりふり
憲兵「・・・・・・」チョコ
見てくれる人はいるんだな・・こんな仕事でも
憲兵「よし!頑張ろ!」
俺は俺でやり抜いてやる!
不知火「私のは要らないみたいですね」コッソリ
電「ませてるのです」コッソリ
鳳翔「ふふふ、嬉しそうで」コッソリ
提督に負けてたまるか!
憲兵「今なら誰が来ても勝てる気がする!うぉおお!」
憲兵「そう!あの伝説で聞いた段ボール戦車にすら勝てそうだ!」
ー何処かー
三日月「っ!誰か呼んだ?」
望月「バレンタインデー過ぎたね」
三日月「忘れてた!!」
番外編
終
海へと墜落した提督達
艦娘たちの艤装が展開されたかと思うと魚雷を出した後に強制解除されてしまう
ジャバーーーン!!
イムヤ「あぶっ!だ、だめ!艤装展開しないと泳げない!溺れる」バシャバシャ
イムヤ「潜水艦なのに溺れる〜」ブクブク
ガシッ
イムヤ「た、助かったわ。ありがとう」
睦月「・・・・・」ニヤリ
イムヤ「えっと睦月?その笑顔は不気味だからやめて欲しいんだけど」
睦月「・・・・・・」シュン
イムヤ「提督さんと如月は?」
睦月「・・・・・」フルフル
イムヤ「なら!探さないと!って!なんで浜に向かって泳ぐの!離して!提督さんと約束したんだから!」
睦月「・・・・・」パッ
イムヤ「あぶぶぶぶーー」ブクブク
睦月「・・・・・・」ガシッ
イムヤ「ごめん・・・」
睦月はイムヤを連れて浜へと進んだ
ー海中ー
どうやら海に叩きつけられた所為で少し気絶していた様だ
此処は何処だろう?
身体中が冷たくて震えが止まらない
血の味がする
頭がくらくらする
目をゆっくりと開けた
提督「っ!」
駆逐棲姫「ーーーーー」
目の前には彼女がいた
抱きしめられてキスをされている
いや、生かされていると言った方がいいだろう
彼女の口から出る酸素によって
提督「っ!!」グッ
身体が動かないと言うより俺も彼女を抱きしめていた
離れようと力を入れる程抱きしめる力が強くなる
彼女が離さないのではなく
俺が離さないのだ
提督(なんで!身体が言う事を聞かないんだ!)
どんどんと海の底へと落ちていく
もう光が遠くに見える
提督(意識が・・・・)
だめだ!このまま眠ってしまえば俺は彼女を受け入れてしまう
そう思った瞬間に俺の意識は闇の底へと落ちた
その頃金髪達は西提督と合流した
まだ、全快には程遠いが西提督も動けるくらいには回復しているが大井と北上がまだ意識を失っている状態だった
西提督「とにかく北上と大井はこのままでは危険だ。どうにかしないといけないが」
金髪「俺があそこで油断してなかったら・・」
黒髪「ううん、私だってもっと早く・・あれが出来てたら」
西提督「お前達!今はー」
メガネ「今は嘆いてる暇はないよ。僕達に出来ることを全力でやるんだよ!」
メガネ「泣き言は後で全部僕が責任を持って聞くから」
金髪「っ!そうだな!嘆いてる暇なんてないよな!」
黒髪「うん、ごめん。また、後悔するところだったよ」
メガネ「薬草を探そう。応急処置だけど何もしないよりはマシだ」
金髪「あぁ!分かった」
黒髪「どんな形の薬草なの?草の根分けても見つけてやる!」
西提督「お前達・・ふっ、よし!俺もー」
野良龍田「み〜つけた」
西提督「むぅ・・・」
金髪「誰だ!」
黒髪「金髪、此処の艦娘だよ!気をつけて刀を持ってた奴と同じ感じがする!」
メガネ「此処で会ったという事は提督さんを追って来たんだね」
西提督「ほう・・そうなのか?提督が世話になった様だな」
野良龍田「ふふ、そうだけど目的は貴方達よ。そこの倒れてる二人はお昼寝中?ふふ、呑気なものね」
金髪「なんかムカつくな・・」
黒髪「そ、その薙刀で斬り捨てごめんとかする気!」
メガネ「それから血の匂いがする。黒髪の言うことは合ってるかも」
黒髪「え!」
野良龍田「しないわよ。大人しく捕まってくれるならね?」
西提督「お前達の寝ぐらにご招待してくれるのか?」
野良龍田「ええ、してあげるわよ〜」
西提督「ふっ、断ると言ったら?」
野良龍田「無理矢理でも連れていくまでよ」シャキン
西提督「やる気か・・お前達は後ろに下がってろ此処は俺が!」
金髪「西提督さん下がっててください!」
黒髪「まだ、立ってるだけがやっとだってのが分かります!」
メガネ「時間くらいは稼げる!」
西提督「頼りになる様になりやがって・・だが、退け・・そいつは俺の獲物だ」ギロッ
研修生達「「「っ!」」」ビクッ
野良龍田「怖い目ね」
西提督「お前達は此処で終わってはダメだ!時間を稼ぐ!逃げろ!!」
金髪「嫌に決まってるだろ!俺も戦う!」
黒髪「私達これでも怪物と戦ったんだよ!」
メガネ「四人でやれば勝てる!」
西提督「相手は艦娘だ!本気を出せば人間が何人いようが変わらない!」
西提督「余り調子に乗るな!馬鹿野郎が!」
金髪「煩い!足がプルプルしてる癖に!」
黒髪「そうよ!本当は背中をかく力も残ってないんでしょ!」
メガネ「転けたらそのまま昇天する確実に!」
西提督「お前達・・良い度胸だ!気に入った!その度胸が何処まで持つか試してやる!」筋肉解放
ハジける筋肉!暑苦しい眼光!
金髪「いや、待ってください!敵は向こうで」
黒髪「背中向けたら危ないから!」
メガネ「僕達は仲間だよ!」
野良龍田「あの〜」
西提督「黙ってろ!俺は今お前達に夢中だ!良いぞ!お前達良いぞ!その度胸と向こう見ずな考え!昔の俺を思い出す!だからこそ!」
西提督「お前達を鍛え抜けば昔の俺の限界が知れる!」ハイライトオフ
この時西提督は疲労と怪我と筋肉によって脳筋化していた
金髪「あわわ!西提督さんしっかりしてください!」
メガネ「ダメだ!完全に筋肉にやられてる!」
黒髪「やめて・・」
西提督「ふはは!まずは腕立て1000回だ!」
金髪「くっ!本気かよ!」
黒髪「こんな事してる場合じゃ・・」
西提督「スクワット5000回!」
メガネ「今日が命日か・・」
黒髪「あんた達・・・いい加減にして!」
金髪、メガネ「「っ!」」
西提督「むっ?」
黒髪「大井さんも北上さんも危険なんだよ?先輩は今も戦ってるんだよ!こんな事してる場合じゃないでしょ!」
黒髪「私は先輩にも西提督さんにも大井さんや北上さんにも守って貰ったんだよ!命を懸けて・・」
金髪「あぁ、そうだ」
メガネ「僕達はみんなのおかげで生きてる」
黒髪「なら!私も命を懸けて守りたいって!そう思う事がダメなの?」
西提督「・・・・・・・」
野良龍田「・・・・・・」
黒髪「ううん、違うよね?許可なんていらない・・私は守る!誰か何と言おうと守るんだから!!」
野良龍田「綺麗事ね・・」ダッ
西提督「あぁ、綺麗事だな・・だが」
野良龍田「とりあえず貴方邪魔よ」シュッ
龍田が西提督の背中に斬りかかる
ガシッ
野良龍田「え・・」
しかし、薙刀は西提督の手によって掴まれる
西提督「嫌いじゃないな」
手から血が垂れる。しかし今の西提督に痛みなど感じなかった
西提督「そんな馬鹿どもが」
野良龍田「くっ!離しなさい!」
だか、掴まれた薙刀はビクとも動かない
西提督「ふふ・・俺が本気で狂ったと思ったか?」
野良龍田「ま、まさか!騙したのね!」
金髪「本気かと思った・・」
西提督「何が目的だ」ギロッ
野良龍田「っ!」サッ
手を離して距離を取る
西提督「ほう・・良いのか?この薙刀は貰って」
野良龍田「返して」
西提督「何が目的だ。俺達を捕まえてどうする?」
野良龍田「・・・・・・」
西提督「折るか」
野良龍田「やめて!」
西提督「なら、話せ」
野良龍田「っ・・鎮守府を立て直すのよ」
金髪「鎮守府?もしかして軍の人?」
西提督「どういう事だ。此処に鎮守府なんてないぞ」
野良龍田「あったのよ・・昔ね」
西提督「元軍人か・・お前の目的は軍に戻る事か?」
野良龍田「誰があんな所に!私の目的は・・復讐・・いえ、もうそれは良いわ。私は救いたいのよ艦娘達を」
金髪「救いたいか・・」
黒髪「救うってどうやって?」
野良龍田「簡単よ?海軍を潰せば良いのよ」
西提督「大きく出たな」
メガネ「それが救う事になるのかい?」
野良龍田「だってそうでしょ?艦娘達は人間の勝手で生み出され人間の勝手で捨てられる。此処にいる娘達はみんなそんな勝手の犠牲者なのよ?」
野良龍田「軍にいる娘達だって無理に戦わされ無下に扱われ・・そして最期には笑って死ぬ事も出来ない」
金髪「・・本当なんですか?西提督さん」
西提督「否定はしたいが、そう言う最期を迎える娘が多いのは事実だ」
西提督(顔を見る事すら出来ない娘もいるがな)
野良龍田「本当はさっきまでずっと復讐ばかりを考えていたのよ・・此処をこんなにしてしまった人へのね・・」
西提督「そいつは?」
野良龍田「もう良いわ・・思い出したくもない・・でも、その人に関わっていた娘に言われて気付いたのよ。復讐ばかりを考えて周りを見てなかった事にね・・」
野良龍田「ある意味呪いだったわね・・こんな呪いに掛かった私をずっと見守ってくれてたみんなを救いたい。苦しむ娘をなくしたい」
西提督(綺麗事だな)
西提督「俺達をどうする気だ」
野良龍田「提督をおびき寄せる餌になってもらう。そして彼に此処に残って貰うように説得してもらう」
西提督「なんだと?」
黒髪「先輩を残してどうするの?」
メガネ「成る程・・君の考えが分かった」
金髪「え?」
野良龍田「彼には此処を再興させる為に働いてもらって・・そして司令官として私達を導いてもらう」
野良龍田「そして時が来たら海軍と戦う」
西提督「戦うか・・随分とあいつを評価するんだな」
野良龍田「懐いてる娘がいるし何よりも彼はゆっくりと時間をかければ私の言う通りに動く様になるわ。絶対にね」
西提督「ふっ、そうか」
黒髪「っ・・・」
金髪「おい」
メガネ「・・・・・」眼鏡キラン
研修生達の怒りは頂点に達していた。今すぐにでも飛びかかりそうなくらいだった
どうして西提督は平気なのか不思議だった
しかし、それも次の言葉でその意味を理解した
野良龍田「だって彼は心も弱ければ簡単に罪悪感を埋め込める。心を折る事も簡単に出来るのだから」
西提督「分かったか?お前達」
金髪「あぁ、そうかそう言う事か」
黒髪「こんな事言いたくないけど哀れね」
メガネ「・・・・・・」眼鏡フキフキ
野良龍田「貴方達も言う事さえ聞けば命は助けてあげるし邪魔をしないなら島の中では自由にさせてあげる。そして新しく変わる世界を見る事が出来る。どう?最高でしょ?」
野良龍田「だから、手を貸してくれないかしら?」
そう、勝ち誇る様に言った彼女に研修生達は
研修生達「「「断る!」」」
野良龍田「なっ!」
西提督「だそうだが?勿論俺もだがな」
野良龍田「どうして・・どうして!これが上手く行けば艦娘達は救われるのよ!」
西提督「それは上手くはいかないだろうな」
野良龍田「なんでそう言えるの!」
金髪「だって、あんたは大将の事を何も分かってない」
野良龍田「いえ、私は実際に彼に会ったのよ。それはもう苦しみで心が折れかけていたわ」
黒髪「でも、折れてない。先輩はおっちょこちょいで情けないところもあるけど簡単に心が折れる人じゃないよ」
メガネ「もし折ったとしてもすぐにくっ付いて立ち上がるさ。彼にはその強さがある」
野良龍田「っ・・嘘よ!絶対にそんな事はない!」
西提督「なら、試してみると良い。多分だが心を折りかけたと言うのは本当だろうが、あいつがそのままでいるわけないだろ?」
西提督「同じやり方ではもう折る事も折りかける事もヒビ一つも付けられないさ」
西提督「あいつは常に成長しているからな」
野良龍田「っ・・なんでそんなに言えるのよ」
金髪「大将だからな」
黒髪「先輩だからよ」
メガネ「提督さんだから」
西提督「友だからだ」
その四人の目には恐怖も焦りの色もなくただ一つの信頼の色が見えた
それは今の龍田には眩し過ぎた
そして思ってしまった・・羨ましいと
野良龍田「そう・・折角チャンスをあげたのに・・なら、良いわ」
ガサゴソ ガサゴソ
金髪「誰かくるぞ」
野良龍田「呼んでおいた応援も来たみたいだし・・無理矢理にでも来てもらうわね、ふふふふ」
西提督「やるしかないか。もう逃げろとは言わんが死ぬなよ」
金髪「西提督さんこそ!」
西提督「言う様になったな」
黒髪「ふぬぬぬ!出ろ〜」
西提督「腹が痛いのか?」
メガネ「せめて一つでも眼鏡を刻もう」
西提督「お前は偶に意味の分からん事を言うが提督の真似か?」
野良龍田「さぁ!あいつらを捕まえなさい!」
明石「あ?なんで?」ヒョコ
西提督「お!」
野良龍田「明石?」
金髪「一人か?」
黒髪「なら、なんとかなるかも!私が出せればふぬぬぬ!出ない・・」
メガネ「トイレなら茂みでしてくると良いよ」
黒髪「違うから!」
野良龍田「何でここにいるんですか?入渠ドッグを直す様に言ったはずだけど?また、お仕置きされたいの?」
明石「あ?誰がお仕置きするって?こっちとら迷いに迷ってイライラしてんだけど?」
野良龍田「何時ものなよなよした態度はどうしたのよ。無理するとまた漏らすわよ」
明石「誰が漏らすって?あぁ?」ギロッ
野良龍田「ひぃ!」
金髪「勝てる自信がないんだが・・」
メガネ「うん、僕もそう思う・・」
黒髪「出ろぉおおお!」
西提督「その眼光に口の利き方はおんぼろ鎮守府の明石だな」
野良龍田「え?」
明石「ん?お!西提督発見!そしてそこの三人は研修生で間違いない?」
西提督「あぁ、そうだ」
明石「へぇ、こいつらがね」
明石「ん?あんた」
黒髪「え?」
金髪「西提督さん彼女は」
西提督「敵じゃないおんぼろ鎮守府の元艦娘ではあるが実力者だ。どうやら助けが来た様だ」
黒髪「おんぼろ鎮守府って如月さんと同じ」
メガネ「西提督さんが演習で殴り合った相手の鎮守府だ」
金髪「しかも元艦娘だ!これは・・助かった!」
黒髪「うん!元艦娘って艦娘より強いんでしょ!」
メガネ「間違いないよ僕達はそれを目の当たりにしている」
彼等の中で元艦娘は艦娘より強いと認識されてしまっている
無理もない。彼等研修生が最初に見た元艦娘は
三日月『ひゃっはぁあああ!!』ドーラン塗り
西鎮守府をほぼ制圧しかけた存在なのだから
実際に戦って負けていると言うのもあるが
三日月『遅い!』ドゴッ
金髪『ぐはっ!』
研修生達のキラキラとした眼差しに
明石「な、なによ、この子達」
西提督「どうやら尊敬されてるらしいぞ?」
明石「へ、へぇ・・まぁ、その・・よく頑張ったね。もう安心しなさい」
研修生達「「「はい!」」」
野良龍田「違うなら何で応援は来ないの!そろそろ来てもおかしくないのに」
明石「ん?あぁ、もしかして此処の奴?なら、応援は来ないよ。さっき無線であの元鎮守府は制圧出来たって連絡があったから」
野良龍田「え・・そんな・・どうして」
西提督「妙高達もやってくれた様だな」
明石「まぁね、後は提督を見つけるだけだけど知らない?死んだ?」
金髪「生きてますよ!提督さんは向こうでイムヤさんと如月さんあと一人は分からないですけど化け物と戦っています!」
黒髪「助けたいけど・・」
メガネ「でも、彼女達を」
明石「如月達がいるなら大丈夫だと思うし私達が行ってもどうもならないでしょ?それよりそこに倒れてる二人が先ね」
二人の元へ駆け寄る明石
野良龍田「でも、さっきまで居たのに・・そんなに早く制圧なんて出来る筈ない!そう言う報告もないし嘘をついてるのよ!」
その言葉に明石は振り返らず倒れてる二人から目を離さずに答えた
明石「西鎮守府の艦娘達ってほぼ全員が野良艦娘らしいから得意なんじゃない?」
野良龍田「っ!」
明石「野良艦娘の気持ちを持って潜入なんてさ」
西提督「だろうな」
その頃元鎮守府では
愛宕「パンパカパーン・・」ハイライトオフ
愛宕(パンパカパーン!)
阿武隈「うひひひひ・・」フラフラ
阿武隈(何やってんだろ・・)
「「「・・・・・・・・」」」
(((新入りかな?)))
野良天龍「提督は何処だ!まさかもう外にいるのか!」
荒潮「あら?ふふふ」ゴゴゴ
「あの娘・・かなり闇が深いわ」
朝潮(誰も外には出させません!)
朝潮「っ!」ズテン
野良天龍「っ!お前大丈夫か!顔面から転けたぞ」
朝潮「・・・・怖い・・」ポロポロ
野良天龍「っ!・・そうか、お前も辛いことがあったんだな。よしよし側にいてやるからな」ナデナデ
朝潮「・・・・チョロいです」ニヤリ
野良不知火「いてて・・何が起こったのか」
雷「提督ちゃん・・提督さん・・提督ちゃん・・提督さん・・何処?何処何処何処何処何処何処何処何処何処何処何処何処何処何処何処何処何処」
野良不知火「これは・・そうなんですね!貴方もあの人間を許せないんですね!なら、一緒に懲罰房へ文句でも言いに行きましょう」
雷「提督さー」ピタッ
雷「い、ま、な、ん、て?」
野良不知火「え?」
祥鳳「制圧完了ですね」
野良電「はわ・・」ヒョコ
文月「提督さん達はいないね」
野良電「はわわ・・」そぉ〜と
祥鳳「私達は必要なかった様ですね」
野良電「はわ〜」ホッ
文月「ん〜そうかな?どう思う?ねえ電」
野良電「はわぁあ!」ビクッ
瑞鶴「やってくれたわね・・西鎮守府は全くノーマークだった」
妙高「いえ、それ程でもありませんよ。とりあえず話しを聞かせてもらいましょうか?大本営所属の瑞鶴さん」
瑞鶴「はぁ・・めんどくさ」
妙高「何か?」ギロッ
瑞鶴「何も?」ギロッ
野良明石「・・・ふぇええ」ジョロロ〜
ー元鎮守府近くー
夕張「駆逐漢発見!やっぱり此処に隠してたね」
まるゆ「よく分かりましたね」
夕張「まぁ、明石の考えそうな事は大体予想出来るしね」
鳳翔「では、私達はこれからどうしますか?西鎮守府の娘達と同じ様にあの建物へと入りますか?」
不知火「それは必要ないと思います。逆に邪魔になるだけかと」
夕張「そうだね。私達はバレないように潜入なんて出来ないし」
まるゆ「じゃあ、待ってるだけなんですか?」
夕張「いやいや、折角駆逐漢も取り戻したし明石でも迎えに行きますか」
鳳翔「明石さんも中にいるのでは?」
不知火「いえ、明石さんも如月もー」
夕張「いや、明石は島の反対側にいる。分かるんだよね明石の考えてる事は・・そして提督もきっと向こうにいる!行こみんな!」
不知火「・・・・・・」
まるゆ「はい!」
鳳翔「全速力で行きます!」
不知火「ぬい!!」
夕張「ふふ、勝手な事をした明石も如月にも文句言ってやらないとね」
そして戻って金髪達は
野良龍田「成る程・・制圧された事すら気付いてないと言う事なのね」
西提督「どうする?まだ続けるか?ならー」
野良龍田「降参よ・・私一人じゃ何も出来ないわ・・」
西提督「いい判断だ」
野良龍田「悔しいわ・・所詮艦娘は人間に使い潰されるしかないなんて・・」
金髪「っ・・・・・」
明石「大井はまだ大丈夫そうだけど北上が・・かなりやばいね艤装が半分以上ないってのもあるけど・・これは・・もしかしたら・・なら」
黒髪「何か出来る事はないですか!」
明石「今は生かす事だけ考えるか・・なら、私のバッグから応急処置の道具を出してくれる?補助も頼める?」
黒髪「はい!」
明石「良い返事ね。それにしても・・研修生か・・姉の方はどうしたの?」
黒髪「え?一人っ子ですけど・・」
明石「ん?あ、そう、喧嘩でもしたのか」
黒髪「え!え!!なに!何か知ってるんですか!教えてください!私は一体誰でどうして魚雷がー」
明石「あーーうるさい!今はそれどころじゃないでしょ!しっかりしなさい!」
黒髪「は、はい!」
明石「地面ってのが余りよろしくないけど仕方ないか・・」
メガネ「二人を此処に!」
明石「これは?草のベッド?クオリティ高くね?シングル?」
メガネ「ダブルです。これぐらいしか造れませんでしたが地面よりはマシかと思いまして」
明石「へぇ、やるじゃん着痩せしてそうな眼鏡の研修生」
明石「その隠された筋肉は伊達じゃないって事ね」
メガネ「っ!ありがとうございます」
明石「じゃあ、大井と北上を運ぶよ!二人共ちゃん手伝ってよ!」
黒髪、メガネ「「はい!」」
野良龍田「・・・・お願いがあるわ」
西提督「なんだ言ってみろ」
金髪「・・・・・・」
野良龍田「こうなったら私も此処のみんなも解体されてしまう」
西提督「この事を上に言えばすぐにこの島に軍の者が来てみんな捕まえられるだろう」
西提督「後はお前の言う通りになるだろうな」
野良龍田「っ・・・・」
金髪「龍田さん・・俺はー」
野良龍田「お願い!今回の騒動は全て私一人でやった事にして!天龍ちゃんも此処のみんなも関係ない!私一人が!」
西提督「出来ると思うか?」
野良龍田「だから頼んでるの!人間に一度酷い目に合わされた娘達がまた人間に捕まって・・また、苦しむなんて・・そんな残酷な事をさせるなんて出来ないわ!」
野良龍田「もう・・艦娘に未来なんてない・・後は衰退を辿るだけ・・時期に人間は戦う力を失い・・海だけじゃない地上も奪われて終わってしまう・・でも、それまでは静かに此処で最期を迎えさせて欲しい・・人間のいない此処を」
金髪「っ!」
西提督「人間はもう信用できないのか?」
野良龍田「えぇ、もうとっくの昔に失望してるわよ・・人間なんて・・」
野良龍田「っ・・・・」
金髪「・・そうかあんたは」
西提督「なら、やはりお前は・・お前達をこのままにはしてー」
金髪「西提督さん薙刀を貸して貰っていいですか?」
西提督「ん?どうするつもりだ」
金髪「お願いします」
西提督「ほう・・・・」ギロッ
金髪「っ・・・・・・」ギロッ
西提督「良いだろう。持って行け」
金髪「はい、ありがとうございます」
薙刀を持ち龍田へと近寄る
西提督「おい・・馬鹿が」
金髪「龍田さん」
野良龍田「貴方のお仲間の仇なら私よ・・やりなさい。その代わりー」
金髪「あんた馬鹿だろ?」
野良龍田「は?」
金髪「さっきから聞いてればなんだ?人間に失望した?それに仇だと?ふざけるな!」
野良龍田「な、何よ!本当の事を言ってるだけじゃない!」
金髪「大将はな!まだ死んでないんだよ!仇でもなんでもないんだよ!馬鹿が」
野良龍田「っ・・馬鹿馬鹿って!」
金髪「それになんで失望した人間になんか頼んでる!信用出来ない人間に大切な仲間達を託そうとしてる!」
野良龍田「それしか方法がないからよ!もうそれしか・・出来ないから・・」
金髪「いや、違うな。あんたは此処にいる誰よりも人間に期待してる。助けて欲しいって思っている」
野良龍田「っ!知ったような事を!」
金髪「知らないさ。知らないけど分かるくらいに露骨なんだよ今のあんたは」
野良龍田「そ、そんな筈は・・」
金髪「助けて欲しいって見つけて欲しいって思ってる」
野良龍田「ない・・ない!」
金髪「あんたが大将を此処に残そうとするのは海軍と戦うためでも良いように使う為でもない」
金髪「そんな事が出来る様には見えないんだよ、あんたは」
金髪「本当はずっと一人で頑張って誰にも弱音なんて言えず孤高を貫いたあんたはただ」
野良龍田「っ・・やめて・・言わないで!」
金髪「寂しかったんじゃないか?」
野良龍田「っ!!」
金髪「失望してるのも本当だろう。でも、それ以上期待して、信用したいけど、それ以上に怖い・・復讐と言う枷がそれを見えなくした・・いや、見えないと誤魔化し続けた」
金髪「だけど、それも壊れた。もう誤魔化すのは無理なんだ。寂しくて怖くて・・それでも期待してしまう」
野良龍田「なんでそこまで・・・」
金髪「似てるからさ・・昔の自分にな・・」
強がって髪なんて染めてチャラくなって、友達なんていらないと息巻いて、他の奴らはみんな敵だと思う事で誤魔化したんだ
でも、本当は寂しいと言う気持ち、怖いと言う気持ち、助けて欲しいと言う気持ちがあったんだ
馬鹿な俺はそれを認めようとせずに壁を作り続けて出られなくなった
野良龍田「貴方は変われたのね・・羨ましいわね」
金髪「認めたな?」
野良龍田「っ!」プィッ
金髪「結局俺もあんたも人一倍求めていたのに素直になれなくてそれでも認めようとしない面倒くさい性格をしていたって事さ」
それに真っ向から向き合って壁を壊してくれた大将の背中を見て進もうと俺は決めたんだ
彼女にもそんな人がいれば・・
そんな人が・・
野良龍田「・・・・・・」
金髪「・・・・・・」スチャ
野良龍田「っ!」
西提督「金髪・・お前!」
薙刀の刃を自分の首に当てた
そして持ち手を龍田さんに向ける
金髪「約束する。艦娘達が無理に戦わないといけない今を変えると」
金髪「約束する。今も苦しんでいる娘達が今より少なくなる未来を見つけると」
金髪「約束する。野良艦娘達も人と共に生きていける未来を創ると」
金髪「約束する。君の本当の笑顔を取り戻すと」
野良龍田「貴方・・・」
金髪「貴方じゃない、金髪だ」
野良龍田「そう・・」スッ
龍田が薙刀に手を添える
金髪「信用出来ないなら。斬ってくれ・・遠慮はいらねぇ」
野良龍田「良いのね・・」
西提督「龍田やめろ!」
金髪「西提督さん・・本来頼むのはこっちだったんだ。謝るのはこっちだったんだよ」
西提督「っ!」
こうなるまで何も出来なくてごめんと
信じて欲しいと人間が頭を下げないといけなかったんだ
金髪「俺を斬ったら他のみんなは見逃して欲しい」
これが今の本来のあるべき現状なんだ
野良龍田「・・・・・・」
野良龍田「金髪・・・・」スッ
刃が首から離れていく
野良龍田「一つだけ約束して」
野良龍田「人の為に艦娘の為に死ぬ事だけはやめて・・どんな信念でも力を持っていても死んだら意味がないもの・・そこで未来はなくなってしまう。だから絶対に死なないで」
金髪「生き抜いては見せるさ。だが、絶対は無理だ。俺はいつか死ぬし大将も西提督さんも死ぬ。それは人間である限り必ず訪れる」
野良龍田「っ・・なら、やっぱり」
金髪「でも、次へ繋げる事は出来る。俺の見て来た世界を意志を託す事が出来る。それは龍田さん達艦娘が記憶を意志を受け継いでいくのと同じさ」
金髪「そこだけは人間も艦娘も変わらない。俺だけで終わらせない!西提督さんが大将が黒髪がメガネがそれを信じて着いて来てくれる人達・・みんながいるから」
金髪「終わりのない始まりさ。龍田さんはその目で確かめて欲しい」
金髪「人間達の意志の力をさ」
野良龍田「・・・・・・」
野良龍田「取りなさい」薙刀
金髪「え?これは龍田さんので」
野良龍田「約束の証よ。絶対に無くさないで・・そしていつか・・いえ、言わなくても良いわね」
金髪「分かった。これは預かっておくよ。俺と龍田さんとの約束の薙刀だ」
金髪「俺の意志をこの薙刀に誓おう。そしていつか叶った時に返そう」
野良龍田「うん、待ってる・・」
西提督「はぁ、研修生が勝手に決めてもらっては困るのだが・・」
金髪「西提督さん!今回だけは彼女達を見逃して欲しいんです!お願いします!」土下座
西提督「いや、だが・・此処までのことになると」
野良龍田「お願い・・見逃して!」土下座
西提督「あ、あのな!お前らは!」
黒髪「途中から聞いてたけど私からもお願いします!」土下座
メガネ「僕からもお願いします!」土下座
明石「価値のない頭が三つ下がってるけど?さてどうする?西提督」
西提督「うぬぬ・・はぁ・・妙高怒るだろうな・・分かった。なるべく悪くならない方へ頑張ってみるが何かしら罰はあると思え良いな?」
研修生達「「「ありがとうございます!」」」
野良龍田「・・良かったわ」
明石「まぁ、無罪ってわけじゃないからそこは分かっておこうか」
野良龍田「えぇ、分かってるわ・・もう簡単に死ねなくなったから何が何でも生きてちゃんと確認しないと」
西提督「なら、元鎮守府の方へ行って妙高と話さないとな。明石、二人は無事か?」
明石「応急処置はしたけど、危ないかもちゃんとした医療施設があれば良いけど」
金髪「龍田さん元鎮守府には医療施設はないのか?」
野良龍田「一応使える医療室があるけど医療器材はそんなにないかしら」
明石「此処よりはマシよ。なら行こうか。暗いから気を付けてよ?メガネと薙刀を持った危ないタラシのハゲは大井と北上を背負って」
メガネ「はい!」
金髪「ハゲって俺のこと?」
黒髪「先輩は!」
明石「あいつは大丈夫」
西提督「だな」
黒髪「でも・・」
金髪「まぁ、心配ではあるが」
野良龍田「なら、私が行ってなんとか」
西提督「やめておけ艤装展開出来ないんだろ?」
野良龍田「バレてたのね・・でも、少しは出来るわ」
西提督「ふっ、お前にも来てもらわないと俺達だけじゃ従わない奴等もいるだろう。着いて来い」
野良龍田「・・・・・・」
明石「おい、タラシハゲ」
金髪「はい?」
明石「いや、言えよ」
金髪「何を」
明石「あんたの命令を待ってんの!さっさと言え!提督擬きタラシハゲ!」
金髪「なんだよそれ!ちょっと嬉しい。龍田さん行きましょう」
野良龍田「はい」
その時一瞬だけ夜の空が大きく光った
ピカッ!
ドンッ!!
そして砲撃の音が鳴った
金髪「大将・・・」
黒髪「やっぱり私!」ダッ
明石「あ!イヨ待て!」
西提督「明石、行くぞ!大丈夫だ。今ので終わっただろう」
明石「全てが終わったとは思えないけど」
西提督「だとしたらそれも勉強だ。あいつなら大丈夫だ。提督の事を知っている彼女ならな」
明石「?」
金髪「なぁ、イヨって何?」
メガネ「さぁ?伊予柑?」
野良龍田「伊十三型潜水艦、二番艦で伊14って娘がいるわね。愛称がイヨって言うわよ」
金髪「なんか関係あるのかな?」
メガネ「う〜ん、さぁ?」
金髪「まぁ、何でも黒髪は黒髪だ」
メガネ「あぁ、変わらない大切な仲間だ」
こうして西提督達は元鎮守府へと向かうのだった
金髪「やっぱり暗いから歩きにくいな」北上背負い
メガネ「うむ、眼鏡さえ歪んでなければもう少しは・・」大井背負い
野良龍田「暗いの?えい!」頭のクルクル点灯
金髪「便利だなそれ」
野良龍田「(//∇//)」
ー海中ー
如月「・・・・・」キョロキョロ
如月(提督何処にいるの)
落ちた時に微かに見えた
あいつが提督を海の底へと引っ張っているのを
如月「っ・・・・」
一瞬だった・・一瞬手を離してしまった時にあいつは
息がそろそろ苦しくなってくる
下へと潜る程に暗くなり怖くなる
光が遠くなる
今から上へと泳がないと溺れてしまう
でも・・・・
如月(提督はもっと苦しんでいる・・暗い海の底に沈んでしまう前に・・)
必ず見つけるから
私の命に変えても!
如月(提督!)
そう、何度も呼びかける様に心に叫んだ
そして、暗い海の底から小さな光が
如月「っ!」
彼女は手を伸ばした
もう二度と離さないと・・今度こそは守り抜くと
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーー
あれ?俺は何をして?
此処は何処?
・
・
・
・
・
ああ、そうだ。俺は今から彼女に告白するんだ
俺を信じてくれる
あの娘に・・
思えば初めて出会ったのは俺が鎮守府へ着任した時だったな
ボロボロの鎮守府に一人で待っていてくれた
早く来てしまった様だし、少し待つ間に思いだしてみようかな?
彼女との思い出を
【思い出1】
「ボロくない?てか、廃墟じゃん!」
最初はこんな所に着任する事になって凄く後悔した
でも・・
「貴方が司令官ですか?」
「あ・・・・」
彼女と出会った時
それは、一目惚れだった
白いベレー帽を被ったピンク色の髪に左側頭部に黒紐で結ばれたサイドテールに紅色の瞳が綺麗で見惚れてしまった
そしてサイドテールの毛先に水色のグラデーションがかかっているのも良い
ピンクと水色そして紅色の三色は彼女によく似合っていた
「え、えと、これからよろしくお願いします!です!はい!」
その瞳をずっと見ていたい
そう思った
「ふふ、よろしくお願いしますね司令官」
今思えばかなりキョどって変なふうになっていたな
でも、彼女は笑って迎え入れてくれた
これが、俺と初期艦である彼女との何の変哲もない出会いだった
何の変哲もない・・筈なのに・・何故だろう違和感がー
「っ!」ズキッ
『ごめんな・・ごめんな!もっと早く見つけてあげたら・・』
頭痛と共に事切れたしまった艦娘を抱きしめて泣いている青年の姿が見えた
なんだ今のは・・気持ち悪い・・なんで海になんか出て・・
でも、この娘は大切な・・
【思い出2】
初監査の日は合格出来るか彼女と二人で祈ったな
入渠ドッグを隅から隅まで洗って、食堂には間宮さんが来てくれて、彼女が必死に資材を集めてくれた
出来る限りの全てをやったな
「これで全てですね」
「は、はい!」
これに合格しないと鎮守府を稼働させる事が出来ない
下手をすれば司令官を降ろされる事もあり得る
「ど、どうでしょうか!」
彼女も声が震えている。俺と同じ気持ちなのがちょっと嬉しい
「ふむ・・良いでしょう合格です」
「え?・・合格」
「はい、合格ですが?」
「はは・・やった・・」
「司令官!やったんですよ!もっと喜ばないとですよ!」ダキッ
「おわっ!そうか・・やったんだな!よっしゃぁああ!」
「ふふ、よっしゃあですね!本当に良かったです」グスッ
「あぁ、本当に良かった」
「ぬい・・・・」
合格が嬉しくて二人ではしゃいで泣いたな
抱きしめられた時の良い匂いと柔らかい感触も良かった
緊張もしたけど忘れられない最高の日だった
最高のー
「っ!」ズキッ
まただ!俺の思い出を邪魔するな!
『後で私も同じようにして良いですから』
『優しいですね・・っ!』
バキッ
『っ!ーー!ぐわぁあああ!』
さっきと同じ青年が・・いや、これは俺?艦娘に組み伏せられて腕を折られていたのが見えた
それと同時に腕に少しの痛みが走った
なんだよ!腕を折られてる?そんな事なんてなかった!
なんなんだよ・・艦娘と人間は共存関係にあって仲が良い筈なのに艦娘が人間に害をなすなんてあり得ない!
いや、これは害じゃない・・寧ろ・・
【思い出3】
間宮さんの作るアイスが美味しくてよく彼女と二人で食べに行っていたな
食べ過ぎで怒られて二人でシュンってなって、でも、懲りずに食べ過ぎて二人でお腹を壊したりもしたな
「誰もいないな?」
「はい、今ならアイスを食べられますよ!司令官!早く早く!」
「ちょっ!バカ!声が大きいだろ!バレたら今度こそ間宮さんにー」
「私が何ですか?」
「「あ・・・・・」」
あの時の間宮さん怖かったな
お互いがどちらが首謀者かって押し付けあって結局両方怒られたっけな
でも、間宮さんは鎮守府にはなくてはならない存在であって何時も笑顔で悲しむ顔なんて見た事もー
「っ」ズキッ
また来た。俺の思い出が間違ってるのかよ
『追い出される事も覚悟していたんですよ?』
俺と思う人と話す間宮さんがカップ麺片手に悲しそうにしている姿が見えた
間宮さんにカップ麺なんて・・・
それに俺はこんな事を言わせた事なんてない!こんな不安な顔にさせるなんて・・
俺じゃない!俺じゃない!!
俺じゃ・・・
【思い出4】
孤児院に訪問して子供達にお菓子をあげたりもしたな
彼女は子供が大好きで一緒に遊んでる姿は子供そのものだった
駆逐艦だから仕方ないかってからかうと怒ったっけな
でも、その姿が俺には何よりも愛おしかった
「ふぅ・・疲れました。やはり子供達は元気ですね」
「はは、お前も結構はしゃいでたと思ったけどな」
「むぅ!私は仕事をしていたんです!そう言う司令官は見てるだけですか?」
「俺は子供達を見守っているんだよ」
「なんですかそれ!見てるだけなのは変わってないですよ!」
「いや、守るべき存在を忘れないようにしておきたいんだ。この目に焼き付けてな」
その中にはお前もいるんだぞ?ってのはヘタレなんで言えなかったけど
「司令官・・・・」
「はは、少し恥ずかしいな」
「いえ、そう言うの良いんで次は司令官が子供達の相手をしてくださいね!それ!みんな行けぇええ!司令官が遊んでくれますよ!」
「え?うわぁ!そんなに一気に来られたらーうわぁあああ!」
俺はこの日、より一層子供達を守ろうと決めた
戦う事も出来ない弱い存在だからこそ俺が守ってー
「っ・・・・・・」
もう頭痛はしない。きっとまた見えるんだろう
『・・今度は守りたいです!守りたいんです!』
孤児院から着いてきた娘が戦う決意を見せている
守られるのではなく守る事を選んだ彼女の決意が伝わって来る
この目に輝く小さな光は
本当に君はこの先を照らしてくれる存在になってくれるの?
本当に俺は・・・君を・・
君を信じて良いんだね
【思い出5】
何度も最新の注意を払いながら出撃を繰り返してゆっくりと攻略していた
でも、ある時、彼女が大破をしたにも関わらず命令を無視して進んだ
結果は海域をクリアして彼女も無事に帰ってくる事が出来た
でも、俺は・・こんな結果を良しとしなかった
「司令官、呼び出しってどうしたの?まさか、何かくれるんですか?ふふ」
「・・・・・・・」
「司令官?」
「なぁ、なんで無視した」
「え?」
「なんで!無視して勝手な行動をしたと聞いてる!」
「司令官・・・・」
「お前に何かあったらどうする!心配したんだぞ!分かってるのか!」
「大丈夫だよ。私が沈んでも代わりはたくさんいるから」
「っ!お前は一人だけだろうが!」
「でも・・でも!!こうでもしないと!私は司令官の為に!」
「俺の為に・・俺の為に死のうとしたのかよ!」
「そうよ!私は司令官の為に戦って死にたい!」
この時はよく覚えてる。艦娘としては良い答えなのかもしれない
でも、それはみんなが悲しむ事だ
だからこそ、そう言った彼女が、なによりそう言わせる事しか出来なかった自分に腹が立ってしかたなかった
「二度と」
それは、いつか見た記憶と共に
『二度と』
あったかもしれないもう一人の自分の道を
「『二度と誰かの為に死にたいなんて言うな!俺の為でも!仲間達(ーー達)の為でも!民間人の為でも!誰の為でもない!』」
「『死ぬんじゃないみんなで生きるんだ!生きる為に戦うんだ』」
歩む可能性
「お前を失わせないからな!覚悟しておけ!」
「司令官・・・・」
「返事は!」
「はい・・はい!」
今見えたのは・・・俺自身の決意
そうか・・・これは
この記憶達は
【彼女との約束】
あれからたくさんの事があった。演習や研修生が来て無駄に偉そうにしたり、大規模の作戦も乗り越えた
彼女と一緒に泣いたり笑ったり時に殴り合ったりと数年の時が経った
でも、二人は一緒に此処まで来れた
月を二人で見ながらそんな事を話して
また、泣いたり笑ったりした
「司令官、あの時より老けましたね」
「そりゃあ、何年も経ったからな」
「私はまだピチピチですよ」
「だな。羨ましい」
「ふふ、なら、要りますか?」
「はい?」
「だから、私、要りますか?ピチピチですよ?」
「からかうなよ」
「本気だよ」
いきなり真面目な顔をして言った彼女に少しビックリしたけど、それを顔に出さない様にするくらいには成長していた
でも、内心は焦って焦って咄嗟に言った言葉が
「そんな事より月が綺麗だな」
「はい!死んでも良いです!」
「馬鹿が!そんな事は言うなって言っただろ!」
「もう!そう言う意味かと思ったんですよ!馬鹿!」
「なんだと!馬鹿と言った奴が馬鹿だろうが!馬鹿!」
「なら!馬鹿は司令官ですね!馬鹿!」
「うっさいバーカ!」
「そっちこそバーカ!」
なんて言い合いをして、お互いが噴き出して笑った
ああ・・この時間が凄く幸せだ
そして彼女は言った
「このまま時が止まってしまえば良いのに」
あぁ、俺もそう思う。そう思いたかった・・
「・・・・・・・・」
「全てが終わった時に俺の気持ちを言おうと思う」
「司令官・・」
「待っててくれるか?」
「はい、待っています。いつまでも約束です」
そして全てが終わった。いや、終わったと思っていた
俺のこの気持ちを彼女に伝えようと思う
俺は君と一緒にいる事は出来ないと
俺は彼女の知る司令官じゃない。おんぼろ鎮守府の司令官だから
帰らないとみんなのいる場所へ
提督「忘れてんじゃねえぞ馬鹿野郎が・・」
記憶達が教えてくれた俺を
これはきっと偶然じゃない
必然だ
「お待たせ。待ちましたか?」
提督「・・・・・・」
此処から出よう。でも、その前に
「司令官?」
提督「ううん、今来たところ」
「本当は待ってたんですよね?バレバレですよー」
「えへへ、あの・・それで期待しても良いんですか?」
提督「・・・・・・・」
「あ、ごめんなさい。そうですよね?そう言うのはちゃんと口に出さないと男の子ってそう言うの気にしますよね?はい、どうぞ」
彼女の笑顔に曇りは一つもない
だけど、光もなくなってしまっている
折角の綺麗な瞳なのに・・
提督「ごめん。君の気持ちには応えられない」
「え?・・そう・・なんですか。ご、ごめんなさい変な期待して」
「でも、これからも一緒にいてくれますよね?」
提督「それも出来ないよ。行かないといけないから」
「あ・・・・」
偽りの記憶だったとしても約束は守りたかった
気持ちを伝えると言う約束を
それはもう果たせた。後は此処を出ないと
何処へ行けば良いかは分からないけど、きっと出口はある
そしてそれを知ってるのは・・
「えっと・・何処へ行くんですか?私も行きます」
提督「帰るんだよ。俺の居るべき場所へ」
「え?何言ってんですか?司令官の居るべき場所は此処じゃないですか」
提督「違う」
「違わなくないです!此処で貴方は生きてきたんですよ!」
「冗談でもそう言う事言わないでください!」
提督「違うんだよ」
「まだ言いますか!やめてください・・お願いですから・・」
提督「俺の生きてきた場所ってのはこんなに優しい世界じゃない。こんなに幸せな世界じゃないんだよ」
母を俺の所為で亡くし・・父を恨み・・周りからは蔑まれ・・元帥はハゲていて・・守りたいのに守れないものばかりが見つかって・・
失って・・傷つけて・・いなくなって
野良艦娘や元艦娘達の差別もある・・でも、何も出来ない
上の人達は保身に走るので必死で現状を見ていない
深海棲艦は増えるばかりで被害も広がる
数え切れない程の嫌な事が多い
そんなクソッタレな世界
でも、逃げたくない、大切な居場所がただ一つある
それだけでそんなクソッタレな世界を・・俺の出来る限り変えたいと思える
俺の出来る事をしたい
そう思える世界に俺は生きてる
「そんな事ない!司令官が掴み取った幸せなんです!守り抜いた場所なんです!此処が貴方の居場所なんです!此処が貴方の帰るべき場所なんです!」
提督「・・・・・・」
「司令官は疲れているんです。少し休んでください・・ね?」
提督「全部思い出したんだよ。俺の知る世界へ返して欲しい」
「っ!」
提督「此処は俺の世界じゃない。君が望んだ世界だ」
「うそ・・うそだ・・」
提督「これ以上遊びに付き合ってはやれない!俺を此処から出せ!」シャキン
軍刀を彼女に突き付ける
光のなかった瞳に光が灯る
「うぅ・・・・」
提督「頼む・・」
彼女の瞳から涙が流れる。立つ力を失った様にへたり込んで
「うわぁああああん!」ポロポロ
大泣きした
提督「え、え?え!!」オロオロ
や、やばい女の子を泣かしてしまった!
提督「あ、ごめんね?軍刀突き付けるのは怖かったよね?今しまうからな?ほら、もう怖くないよ?」
「うわぁああああん!!」ポロポロ
提督「・・・・ごめん」
それから彼女は泣き続け落ち着くのに時間が掛かった
「・・・・・・・」
提督「・・・・・・」
気まずい・・
「ごめんなさい・・」
提督「いや、うん、それより大丈夫?」
「敵に大丈夫って言うのはどうかと思いますよー」
提督「敵ってそこまでは」
「敵ですよ・・貴方を此処に縛り付けようとしていた」
提督「そうか・・じゃあ、やっぱり君が」
「はい、私が元凶なんです。貴方達を襲ったのも、追いかけて来たのも全部私が原因なんです」
提督「それは違う!元は俺の所為なんだ。俺が君を起こしてしまった」
「それこそ違います。貴方があの時消えかけていた私を此処へ導いてくれたんです。感謝しているんですよ」
「もし、あの時消えていたら私はもっと厄介な化け物になってましたから」
提督「え?待ってくれ!俺が起こしてしまったからこうなったんじゃ!」
「だから違うんですよ。どちらにせよ目覚めるのは確定していました。それ程の負を持ってしまっていたんですよ私は・・」
「私って結構根に持ちますからね〜」
提督「・・・・・・」
と言う事はそれ程の怨みを持って死んだと
そうなる程に苦しんだと・・
提督「っ・・・」
「そんな顔しないでくださいよ。誰にでも闇はあるんですから、私のは少し多かっただけですよ。はい、気にしない!」
提督「・・・・分かった」
何が分かっただ!その闇を深くしたのは!
いや、やめておこう・・
提督「続きを頼む」
「はい、でも、貴方がそんな負に呑まれて消えかけていた私に光をくれて唯一の侵食されない場所をくれた・・それからなかった足をくれたんです」
「そして何の感情もない負を撒き散らす化け物になる前に執着と言う感情を持った化け物にしてくれたんですよ」
「まぁ、どちらにせよ化け物ですけど、ふふ」
提督「・・じゃあ、その執着が」
「はい、貴方への執着です。貴方が欲しいんです。私の物になりませんか?幸せにしますよ?」
提督「ごめん・・俺には」
「・・言ってみただけですよ・・もう覚悟は決めましたから」
覚悟?なんの?
提督「でも、何もないよりは執着を持ってる方が厄介だと思うけど」
「甘いですね!何もないって事は隙いる所もないんですよ?それはもう無敵なんです!」
「でも、執着を持ってるなら、その執着を折ってしまえば」
提督「それって・・」
「はい、彼女から生きる意味をなくしてしまえば弱体化します。それはもう見違える程に」
提督「でも、その執着は何処に?どうやって生きる意味をなくせるんだ」
「・・・・・・・・」
彼女の雰囲気が変わった
さっきまでの柔らかい雰囲気から一変
真剣な目で見つめられる
その目は今までの記憶の中で一番綺麗で・・怖かった
「司令官・・いえ、提督さん。貴方には二つの選択があります」
「一つは、このまま私と此処で暮らす。貴方の欲しいものは極力用意する様に頑張りますし、会いたい人にも会わせてあげます。勿論、偽者にはなりますが、本物と寸分違いません」
提督「いや、俺はもう出るとー」
「そうする事で彼女は貴方と共に海の底で活動を停止します。倒したのと変わらないんですよ。無人島のみんなも助かります。守れるんですよ?」
「そして貴方は永遠に覚めない夢を見て幸せに暮らせます」
提督「・・・・・・・」
「そしてもう一つ、執着を壊して目を覚まして彼女を倒すです」
提督「まだ、あるんだろ?」
「はい、まず、執着を壊すのは簡単です。そして壊せば此処を出られて目を覚まします。でも、海の底に近い場所です。死ぬ可能性は高いです。でも、彼女は大きく弱体化します。ほっておいても自滅するか他にやられてしまうので目を覚ました時点でみんなは守れます」
「ただし、海の底で永遠に一人になりますが」
提督「っ・・・・」
「此処で暮らし彼女と共に海に沈むか、目覚めて一人で海に沈むか」
「選んでください」
提督「俺は・・・・」
一人は嫌だ・・でも、逃げるのはもっと・・
それだけは!
提督「もう決めてるよ」
出来ないから!それだけは曲げられない!
提督「此処を出る!」
「一人を選ぶんですね」
提督「一人にはならないよ。俺は生きるから」
最後の最後まで諦めないから!
「本当に良いんですか?後戻りは出来ませんよ。此処が最後のラインですよ」
提督「俺のラインは此処にはないんですよ。あいつらのいる向こうにあるから・・そいつらとラインに立ちたいんですよ」
俺はまだ、最初のラインにも立ててないんだから
「本当の本当に」
提督「出るよ。幸せな毎日も良いけど、それはやっぱり自分の手で掴みたいから、こんな記憶だけの俺が掴んだ幸せなんて意味がないから」
最初から越えるべきラインを全部越えられてるなんてどんなチートだよ
そんなのはつまらない
「驚きました・・そこまで言える人間がいるなんて・・」
「貴方と出会っていたなら私は・・」ボソッ
提督「・・・・・・・」
「分かりました」
瞬間、さっきまで昼間だったのが夜になった
そして空には満月が見える
あの時約束した時と同じ綺麗な月だ
その光に照らされている彼女は神秘的に見えるけど、悲しくも見えた
嫌な予感がした
「執着ですが、まず、此処を維持させてるのは私・・そして」
提督「やめろ・・・」
その先を言わないでくれ
「執着も私です」
提督「そんな・・」
「言いましたよ?元凶は私だと、私が彼女の執着自身です。私を殺せば維持する力がなくなり此処から出られ彼女の生きる意味もなくなります」
提督「・・だけど、それは」
彼女は一人になってしまう
「まさか気にしてますか?良いんですよ。私は本来もう死んでいますし、短い時間だけど良い思いもしました」
「でも、もうこれ以上は私の所為で掻き回すのはやめようかなって・・貴方のいる世界をね」
提督「っ・・・・・」
なんだよ・・そんな事言われたら
「本当はお礼が言えれば良かったんです。それだけで・・でも、欲が出ちゃったみたいです。こう見えても結構欲深いですから、ふふ」
提督「俺は・・俺は・・・」
「貴方が決心させてくれたんですよ。だから今度は貴方が決心する番です」
提督「っ、ぐっ・・・っ!」ポロポロ
駄目だ・・覚悟を決めようとしても記憶が彼女と過ごした記憶が邪魔をして
この記憶は偽物なのに涙が止まらない
数年の思いが身体を動かしてくれない
「提督さん・・・・」
提督「駄目だ俺は・・・」
「しっかりしてください!最後まで私の愛した司令官でいてください!」
そんな事を言われたって俺は君の知る司令官の様には・・
提督「なれないんだよ!」
「っ!貴方の覚悟はその程度で揺らぐんですか!」
提督「こんな記憶を埋め込んで置いて何言ってんだよ!家族同然じゃないか!」
「それは偽物です!気にしては駄目です!」
提督「気にするよ!俺には家族はいなかった!こんなに心から優しくなれる人を俺は知らなかった!」
提督「人の心にズカズカ入り込んで今度はいきなり出て行けなんてふざけんな!」
「貴方が選んだ事です!否定するんですか!逃げるんですか!それなら此処を選べば良かった!」
「変わる勇気も汚れる覚悟もないのに何故前が見えるんですか!壁を見て何が面白いんですか!」
「それなら座り込んで床でも見ててください!その方が楽です!」
提督「うるさい!勝手な事ばかり言って!」
「怒りましたか?なら、斬ってください!斬って・・壁を超えて先を見てください」
「私の見れない明日を見てくださいよ・・これ以上私を苦しめないで!」ポロポロ
「お願いだから!お願いだから私を殺してよ!!楽にしてよ!!」
提督「ぐっ・・うぉおおっ!!」シャキン
軍刀を抜き彼女へと近寄る
涙で前がよく見えない
でも、彼女の紅色の瞳は涙越しでもよく見える
「やっとですか・・遅いですよバカ」
提督「バカって言った奴がバカだろ・・」
「・・やーい・・バーカ・・」
提督「お前・・こそ・・ばー・か・・」
「ふふ、言えて・・ないです・・」
提督「っ・・っ!」
初めてのやりとりなのに・・なのに!
なんでこんなに懐かしくて
悲しいんだ!
提督「・・・・・っ!!」
軍刀を振り上げる
軍刀の刃が月の光に反射して光る
「あぁ・・綺麗・・・」
提督「っ・・・・」
やっぱり無理だ
そう、軍刀から手を離してしまおうとした時
カプッ
首に噛み付かれた様な痛みが走った
痛い・・痛いけど
温かい・・・・
『て・・・・く』
誰かが呼んでる
『て・い・・く』
この声は
『提督!』
如月の声だ
提督「・・・如月」
帰らないと俺の居るべき場所へ
みんなの待つクソッタレな世界へ
提督「っ!」ジャッキ
此処で終わったら駄目だ!止まったら駄目だ!
覚悟を決めた彼女の為にも
そして
「ごめんね・・提督さん」
提督「ううん、良いんだよ。それより見てくれ」
「え?」
空を見上げて月を見る。あの時と同じ様に二人で
提督「月が綺麗だな」
「っ!・・はい、死んでも良いです」ニコッ
明日を託された俺自身の為にも
ありがとう春雨
このままでは終わらせない俺もそして君も
絶対に君を救ってみせるから
提督「っ!」
そして軍刀が振り下ろされた
これは昔あった話である
とある鎮守府に司令官が着任した
その司令官は異例の初期艦五人と秘書の人間を連れての着任だった
そして彼は色々な実績を残した
彼に惹かれて色んな仲間達も集まった
そんな時に一人の艦娘が彼の元へとやって来た
彼女は変異種と呼ばれる存在で、普通の艦娘と違い、幼い姿で精神もそれに比例している
しかも、艦娘としての力も半分以下で普通の人と比べると少し力が強いだけと言うだけで戦闘には使えないし精神は子供と言うより幼児なので逆に世話をしないといけない事になる
だから、彼女達変異種は普通の艦娘達以上に忌み嫌われていた
何故、自分達が育児などしないといけないのか
数々の司令官達は思った
だから、彼女達に残った道は、比例的に優しい司令官の元で生まれたのなら部分解体をされたのちに養子に出される
それが彼女達の唯一の幸せの道
しかし、それをするのは本当に少ししかいない
殆どは・・
生まれた瞬間に処分されてしまう
つまり彼女達は何処か分からない場所で生まれ、分からないうちに殺されるのだ
でも、それでも艤装を使えるので囮に使われたりする事もあるが・・
彼女達の中には艤装を展開出来ない娘もいたり
中には人間と同じ様に成長をする娘もいたりする
つまりは老化してしまうという事で艦娘の特権である若さで全力を出せる期間が少ないのだ
普通に人間と同じ様に歳をとり、普通の人間の様に死ぬ
当たり前である死ぬまで使い潰せる事が出来ないのだ
艦娘としては欠陥品なのだ
それを知った他の司令官達は無駄な時間だと思い、成長の見極めとして一年と言う期間でほぼ全ての変異種達は鎮守府から姿を消してしまう
成長したら殺される
悲しい存在
そんな彼女がその司令官の元へやって来て司令官は一言
「最高じゃないか!うちへ来いよ!」
彼女を受け入れた
でも、彼女自身も自分の価値を知っていた
どうせすぐに捨てられると思っていたが、司令官やその仲間達の優しさに触れて驚く程の幸せな毎日を送る事ができ
心から彼らを信じる事が出来た
そんなある日彼女は浜に打ち上げられた艦娘を見つける
その艦娘はひどく怯えており、司令官に会わせる事も出来ずにこっそりと近くの小屋に住まわせて面倒を見た
でも、それはすぐに司令官にバレていた
バレていたが、その司令官はその艦娘を知らないふりをして見守っていた
時に食べ物をこっそり置いたり、寒そうにしていたら、コタツを露骨に放置したりと色々していた
気付くとその艦娘の住む小屋はエアコンやテレビに冷蔵庫などその他諸々が付いた有用物件と化していた
そしてある日彼女から会わせたい人がいると言われ司令官はその艦娘に会ったが、人間に対して怯えてしまっている彼女を見てもう少し此処で面倒を見てやってくれと彼女に頼み、その場を去ったのだ
その時彼は言った
「君がもう一度人を・・いや、俺を信じてくれるなら受け入れてやるから来い
その艦娘は悩んだ、そして長い月を重ねて司令官の元へ行く事を決意した
司令官ともう一度会うと
その事を彼女に伝えると彼女は喜んだ
変異種である自分を受け入れてくれた彼なら大丈夫だと、色々な思い出を語った
そして二人は友達として色々な事を話した
そして約束した。二人で司令官の力になると、もし二人のどちらかが司令官の敵となった時、道を外してしまった時は全力で止めると
それが親友だと
彼女達は強く誓った
そして、司令官ともう一度会う前の日に、その艦娘は敵を察知した
でも、鎮守府の人達は気付いていない。彼女もいない
その艦娘は一人で出撃した
一度拒否をしてしまった司令官に認めてもらう為に
いや、ケジメの為に
それを知ったのは彼女が小屋へと向かった時だった
その艦娘はおらずに手紙に必ず帰って来ます書かれていたが
その艦娘が海へ出たと知り、鎮守府総出で探したが見つからず
いや、見つかった
彼女の足と思われる肉片が・・・
でも諦めずに数日探したが、彼女は帰って来ずに・・見つからずに
轟沈したと
司令官の口から彼女へと告げられた
彼女は酷く落ち込み、後悔した
僅かに胸騒ぎはしていた
だけど、明日の司令官へと会わせると言う、ほぼ決まった彼女の着任へ心踊らせ無視してしまったのだ
きっと何かの間違いだと
それから彼女は元気をなくした
自分がもっと強ければ助けられたのにと後悔した
何故自分はこんなに弱いと嘆いた
そんな時に一人の男が彼女に声をかけた
その当時は今より艦魂と軍刀の事はあまり解明されていなかった
そう言う事もあり、彼女は男に言葉巧みに任意同行され
司令官にも告げずに、もう失いたくない司令官の力になりたいと願い軍刀になる事を決め
解体された
しかし、彼女は軍刀になれるほどに艦魂を残す事が出来なかった
失敗したのだ
彼女の思いは強かった
でも、力が・・・・足りなかった
使えないと知るとすぐに廃棄されてしまった
彼女は嘆いた
司令官やあの娘に何度も謝った
でも、その声は聞こえない
誰も聞こえない
筈だった・・・・
一人の職人が廃棄所から彼女の艦魂を拾った
彼女は聞こえないと知りも叫んだ
軍刀にしてくれと、司令官の元へ届けてくれと
職人は何かを察して彼女を使って
軍刀以外には加工出来なかった艦魂をナイフにする事が出来た
そして司令官に送られたが、彼はそれを知り
怒り、彼女を受け取る事を拒否した
彼女は悲しみから深い眠りについた
それからそのナイフは彼の上司が預かり今は、誰かに渡してしまったらしい
でも、彼女はまだ眠りから覚めない
皮肉な事か
まだ、その時その艦娘は生きていた
両足を失ったが無人島へと流れ着いていた
彼女は生き残れた事を感謝して、あの鎮守府へ帰る為に何年も無人島で暮らした
心が折れなかったのは待っている親友と密かに恋する司令官に会う為だった
実は彼は何度もその艦娘へとこっそり会っていたのだ
何度も共に話したりして泣いたり笑ったりしていたのだった
そんな日々をもう一度取り戻す為に耐えて・・耐えて
耐えて!!
そして、長年が経ち、無人島を出た
帰る為に
だけど、それは叶わなかった
力及ばず死にゆく身体、薄れる意識
後悔と悲しみ、そして何よりも自分の限界への怒り
もっと頑張れたのに、何で・・動けなくなったのか
どうしてこんなに自分は弱くなったのか
こんなに帰りたいと思うのに
悔しい・・悔しい・・・
「あぁ、こんな事なら・・・」
どうせ死んでしまうなら
愛する彼に親友に殺して欲しかった
誤った道を歩んだら来てくれるかな?私を殺しに
もしそうなら・・・・
私は憎もう・・恨もう・・誰よりも
この世界を・・人間を・・カンムスタチを・・・ニンゲンヲ!
ダキッ
ふと、薄れゆく意識の中で温かさを感じた
そして懐かしい匂いを感じた
会いたかった彼と同じ
そうなんだ。貴方は・・・
お願いがあります。私の為にみんなの為に
私を殺してください
提督さん
如月「・・・・・・」
提督の元へ向かう如月の懐が少し光った
提督から預かったナイフが
如月(そう、それが貴女の望みなのね)
そのナイフに優しく手をやり、先へと向かった
提督の居る海の底へと
ー海中ー
如月(提督!)
光に導かれて進んだ先には提督がいた
でも、提督は彼女に繋がれている
それが、提督の命を繋いでいる状態なのは見てすぐに分かった
提督が彼女を抱きしめている、口と口が繋がり(キスしてる!)どうにか水中でも生きている状態
軍刀が小さく光それを拒む様に点滅している
このまま海の底へと辿り着く前に
如月(今助けてあげるから!)
艦娘とは言え今の如月は艤装を展開出来ない
それでも人間よりは身体も強くはなっているが、如月は潜水艦ではない
長く続いても数分が限界だ
今から上へ行っても間に合わない
もう、自分が助かる事は考えていない
せめて・・提督だけでも
如月(起きて!受け入れてはいけないわ!)
揺さぶるが反応はない
このままだと同化してしまう
そうなれば提督はもう・・
如月(っ・・っ!)
苦しい・・・苦しみに身を任せてしまいそうになるけど
如月(こんなのあの時に比べれば・・)
此処へ来た時のもう一人の私を拒否していた時の方がまだ苦しかった
もう、手遅れだった過去に縋り嘆くしかなかったあの時
でも、もう違う。私は私として今を・・提督を今度こそ守る為に
此処にいる!
如月(提督!いい加減に起きないと怒るわよ!)ポカポカ
反応がない
まさか、本当に受け入れてしまうの?
この世界を・・捨ててしまうの?
でも、それが提督の決めた事なら・・
如月(・・・・・)イラッ
なんか腹が立ってきた
こっちはこんなに苦しい思いをして助けに来たのに自分は楽な方へ逃げようとしてる
いえ、私は提督をちゃんと導いていかないといけない
そう、これは仕方ない事で・・・
如月(・・・・・・)
もう苦しくない・・多分苦しみが限界を超えてしまったのかもしれない
頭がスゥーっとする
朦朧とする意識
如月(提督・・・・)
もう充分苦しんできた提督にこれ以上苦しめなんて言えない
言う資格なんかない
認めるわ・・・苦しい思いをしてるからでも導いてあげないといけないからでもない
私が本当に怒ってるのは
提督へと手を伸ばし抱きしめる
如月(なに!私の前でキスなんてしてるのよ!なに抱きしめてるのよ!どきなさい!そこは!)
如月(そこは・・・私のなんだから!)
カプッ
主張する様に最後の力を振り絞り提督の首に噛み付いた
如月(提督・・提督!)
お願い・・私を置いて行かないで
逃げるなら逃げても良いから・・
わた・・し・・・も
連れて行って・・・
ギュッ
誰かに抱きしめられている
唇に何かが重ねられる
それはカサカサしていてお世辞にも柔らかいとは言えない
でも、温かくて・・恋しくて・・私が一番欲しかった
彼の愛情だった
朦朧としていた意識が回復していく
提督(聞こえたよ君の声が)
如月(もう・・お寝坊さん)
提督(ごめん・・でも、もう大丈夫だから)
提督(今度こそ守るから)
悲しげに微笑む彼からはそれでも強さを感じた
前とは違う。もう、大人になったのね・・
如月(提督・・)
・・もう私が守る必要はないのね
いえ、そうじゃない・・私は気付いたんだ
貴方に守られていたって事を
如月(これを)ナイフ
提督(これは、俺の・・如月が持っーっ!)
今度は如月から唇を重ねた
守られていた感謝の気持ちを
そして愛情を込めて
駆逐棲姫「ア、アアアアアアア!!」
彼女が目覚めた
そして襲いかかってくる
でも、大丈夫・・私には提督がいるから
提督には私がいるから
これからも共に歩んで行くから
だから、今を私が変えてやる!
このまま沈む未来を
私は認めない!
身体が熱い・・でも苦しくない
あ、この感覚に覚えがある
これは・・
如月「っ!」艤装展開
それは前とは違っていた
如月の艤装は改造をせずして改艤装へとなった
そして艤装展開により浮力が発生して上へと急速へ浮かび上がる
如月(行こ!提督)
提督(あぁ、行こう!如月)
段々と明るくなりそして二人は手を伸ばした
海の底から見える小さな光へと
ジャバーーン!!
海面から大きく飛び上がった
提督「ぶはぁ!!」
如月「ゲホッ!・・ゲホッ!・・」
生きてる。俺は生きてる!如月も無事だ
浜の方にはイムヤさんや睦月さんが手を振っている
みんな無事だった良かった
そう一瞬安堵した時だった
ジャバーーン!!
駆逐棲姫「アアアアアアア!!」
提督、如月「「っ!」」
彼女は錯乱する様にただ殺気を撒き散らしながら襲いかかる
これが、生きる意味を失ってしまったものの末路
もしかしたら俺もそうなっていたかもしれない姿
避けようにも空中なので動けないし俺を抱えている如月は砲撃が出来ない
そして月が雲に隠れて辺りが更に暗くなった
これはまずい!
提督「如月!俺を放り投げろ!」
如月「そんなこと出来ないわ!」
提督「良いからやれ!じゃないと二人ともやられる!」
如月「でもでも!そうしたら提督が!」
もう間に合わない!
提督「っ!」ガバッ
如月「何してるの!!」
如月を庇うように抱きしめる。頼むから一発くらいは耐えてくれよ!
如月「ダメよ!だめぇええ!」
駆逐漢「」ブォオオオオオン!!
提督、如月「「っ!」」
聞き覚えのあるエンジン音がした
そして
夕張「照明弾うてーー!」
まるゆ「そんなものは」サングラス装着
カチッ
不知火「・・・・・」サングラス装着
まるゆ「ない!!」閃光手榴弾
ポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッ
まるゆ「これで見えます!」
夕張「へ?」
鳳翔「なにも見えません・・」サングラス
聞こえる
頼りある仲間たちの声が
如月「みんな!来てくー」
提督「如月!見るな!」
急いで如月の目を手で隠して目を瞑る
空中に投げられた閃光手榴弾が一斉に爆発した
ピカッ!!
空が一瞬大きく光る
鳳翔「あ、見えました」
駆逐棲姫「っ!!」
不知火「見えた!」ドンッ!!
不知火の放った砲撃は空中にいた駆逐棲姫に当たらずに横ギリギリを通った
そして
イムヤ「へ?こっちになんかくる!どうしようどうしよう!」アタフタアタフタ
睦月「っ!」ガバッ
ドォオオン!
島へと命中した
駆逐棲姫「っ!」フラッ
相手がバランスを崩した
まるゆ「隊長!後は頼みます!」
提督「みんな!」
ありがとう・・ありがとう!
雲が晴れて月が辺りを照らし始めた
反撃開始だ!
提督「如月!上へ!」
如月「行きなさい!」ブンッ
如月が提督を上へと投げ
如月「貴女は落ちなさい!」ゴンッ!!
駆逐棲姫「グッ!」
そのまま落下の勢いを使って駆逐棲姫を主砲で海面へと叩きつけた
如月「後はお願い!終わらせてあげて!」
駆逐棲姫「ウッ・・ウァアアア!」
まだ、立ち上がって戦おうとしていた
諦めていないんだ
もう、武装も何もされていない
ただ、恐れている
何もない自分に
空中で体制を立て直し彼女へと向き落下する
提督「今・・助けてやるからな!」シャキン
駆逐棲姫「ア・・・・・」
軍刀が大きく光る
そして月の光が更に軍刀を照らした
見た事も無いほどに優しく、強く、そして美しく輝いていた
相棒、今最高にかっこいいぞ
駆逐棲姫「アア・・・ツキ・・が」ポロポロ
その光を見て手を伸ばす
まるで、助けを求める様に
提督「うぉおおおおおお!」
本来なら艦娘がやればすぐに終わるのかもしれない
今までも人間はそうしてきた
それを否定はしない
でも、彼女はまだ消えていない
まだ、残っている!月を見る彼女の表情がそれを証明している
何度も見てきた顔だから
手遅れかもしれない。だけど1%でも救えるなら!
俺が終わらせてやらないと
提督「いけないんだぁああ!」シュッ
駆逐棲姫「・・キレイ・・キれい・・」ガシッ
提督「ぐっ!」
白雪『死は必ず訪れます。その時は受け入れないといけません・・歴史がそうしてきたように』
そんなの!
春雨『お願いだから!お願いだから私を殺してよ!!楽にしてよ!!』
認めるかよ!!
提督「まだだ!」パッ
掴まれた軍刀から手を離し
ナイフを
あの時最初に斬った傷口へ
提督「っ!!」シュッ
ナイフ「」ピカッ!
ザクッ
駆逐棲姫「っ!!」
彼女の動きが止まった
殺気も消えた
提督「・・これで終わりだから・・苦しくないから・・寂しくないから・・帰ろ春雨」
駆逐棲姫「・・・・・・」ポロポロ
駆逐棲姫「アア・・コレデ・・カエレル・・・あリがト・・提督さん」
提督「っ!」
彼女が最後に見せた顔は俺の知る春雨の笑顔だった
提督を支える様にして動かなくなった彼女は沈む事はなかった
辺りはシーンと静まり波の音だけがする
イムヤ「喜ぶべきなのに・・なんで涙が・・」ポロポロ
睦月「・・て・・と・・・く」
黒髪「先輩・・私が・・私が先輩を守るから、誓いますから」ポロポロ
駆逐棲姫「」
提督「うぅ・・・うわぁあああん」ポロポロ
如月「・・・・・・」敬礼
不知火「・・・・・・」敬礼
まるゆ「・・・・・・・」敬礼
夕張「・・・・・・・」敬礼
鳳翔「・・・・・・・」敬礼
犠牲者は出なかったがこの戦いで失ったものは大きく、深い傷を残す事になった
これが勝利と言えるのだろうか
それはこの場にいる誰も分からなかった
ー駆逐漢ー
提督「・・・・・・」
島を出てから二時間が経っている
あれからみんなと合流した。黒髪には事の最後を見られていたようだけど何も言わなかった
金髪達も西提督さんも無事でいてくれた
お互い生きていた事を喜びあって、彼女へ黙祷を捧げた
敵だったかもしれないけど、それでも彼女は頑張ったんだ
頑張って今も生きようとしている
金髪達を身を呈して助けてくれた大井さんと北上さんも命の危機は脱した
金髪達や他の野良艦娘達も手伝ってくれた様だ
特に明石さんとメガネの二人が頑張ってくれたらしい
薬がなくなりそうになった時にメガネが、西、野良、関係なく動ける駆逐艦達を集めて駆逐薬草隊を編成して、代わりになる薬草を沢山集めてくれたお陰でどうにかなったらしい
明石さんもビックリしていた。そして褒めていた。珍しく
特に筋肉を
野良艦娘達に関しては既に妙高さんが瑞鶴さんと話し合っていた
二人ともボロボロだったけど
ポンコツ明石さんは明石さんを見てまた漏らしてた
気持ちは分かる
西提督もその話しに混ざり時間は掛かるが西鎮守府も協力して、この鎮守府を復興させる事が決定された
簡単に決められるのか?と思ったが瑞鶴さん曰くいずれはするつもりだったと
何でも、瑞鶴さんの雇い主?が決めていた基準を越えれば良かったらしく瑞鶴さんの本当の任務はそれを見届け基準をクリアした時に全力で復興作業をすると言う事だった
つまり、この鎮守府は休止状態だったらしい
でも、その雇い主?だけは教えてくれなかった
絶対機密事項らしい
なら、そのクリアした基準とは何だったのだろうか?
それも教えてもらえなかったけど、一つだけ言った
瑞鶴『殆ど今日でクリアしちゃったのよね・・私の数年間って何だったんだろう・・はは』
瑞鶴『てか!何あれ?龍田がおかしいんだけど!なんであんなハゲに女の顔なんてしてるの!おかしくない?ねえ!あれ?龍田、何よ・・ちょっと!やめなさい!首を絞めーうぇ、や、やめ!!』
金髪『ちょっ!龍田さん!俺は気にしてないから!やめ!』
龍田『は〜い』
何があったんだ金髪・・
復興の細かな事は後日話し合うらしく、俺もおんぼろ鎮守府として手伝おうと思ったんだけど、西提督さんが後は任せてくれと言ってくれたので任せる事にした
自分の所も大変だし、西提督さんなら安心出来る
と言うか俺は力になれないと思う
書類仕事が多そうだし
もう、彼女達は見捨てられた存在ではない
今この時、野良艦娘達は野良じゃなくなった
時間は掛かるだろうけど、いずれは共に戦う仲間になる
ちなみに使えなくなっていた入渠ドッグは如月が解除した
暗証番号を知っていたみたいだ
気にはなったけど自分から言ってくれるまで待つつもりだ
如月ならいつか話してくれると信じているから
鳳翔さんと野良艦娘だった鳳翔さんのやり取りは少し面白かった
鳳翔『こんばんは、おんぼろ鎮守府の鳳翔です。よろしくお願いします』
鳳翔(元)『い、いえ、こちらこそよろしくお願いします』
鳳翔『あ、もしかして怒ってますか?眉間にシワが寄ってます・・何か気に触る事をしたなら謝ります。すみませんでした』
鳳翔(元)『あ、いえ、その、これは元々で、怒ってませんから』
鳳翔『そうなんですか?なら、笑いましょう!そんな顔では怒ってると間違われますよ?』
鳳翔(元)『い、いえ、私はこれが素なので変える必要は』
鳳翔『やはり怒ってますね・・』 シュン
鳳翔(元)『いえ!ほ、ほら!』ニコッ
鳳翔(元)『こんな笑顔見ても嫌でしょ・・』
鳳翔『いえ、いい笑顔ですね!』ニコッ
鳳翔(元)『え!・・ああ、お姉様』キュン
それから鳳翔さんと話す時だけ眉間のシワがなくなっている状態になるけど、俺と話す時は相変わらず怖い
てか、シワが増えた・・
あ、不知火と不知火は・・うん・・
不知火『ぬい!』
不知火(元)『ぬい!』
で終わった
斬りかかって来ようとした天龍は止めようとした金髪が殴り飛ばされた事で一秒もせずに龍田さんに無力化された
龍田『提督は良いけど彼はダメよ〜』
天龍『は、はい』
金髪『・・・・ははは』
頭のクルクルってブーメランになるんだな・・
そして最後に睦月さんは一番おかしかった
手招きをされて行くとしゃがむ様にハンドサインをされると頭をナデナデされて抱きしめられた
と思うと、ティッシュに包まれた一万円をくれた
よく分からなかったが、なんかおばあちゃんみたいだなと思った
なんか、おばさん呼びを身振り手振りで強要されたけど・・
なんだったんだろうが?
如月はなんか嬉しそうに良かったねっと言ってたし
なんだろう・・身内の家に遊びに行ったみたいで・・なんか新鮮だった
睦月さんの匂い落ち着いたな・・・また、会えるかな
そして俺達はおんぼろ鎮守府のみんなと共に駆逐漢に乗り込み、朝より夜の方が敵も少なく《命》は安全らしく、夜のうちに帰る事になった
命は安全とはどう言う意味なのだろうか?命以外の危険があるのか?
理由を聞いた時に西鎮守府の娘達が自身の身体を抱きしめ震えていたので聞くのをやめた
一人が潜水艦怖いと言っていたがイムヤさんやまるゆが怖いのかな?と思ったけど違うらしい
みんなが帰るわけではなく西鎮守府の娘達の何人かは島に残って復興の手助けをするらしい
元が野良艦娘の彼女達なら此処の娘達の気持ちも分かり怯えさせず済むだろう
ゆっくりと慣れていけば良い
俺も余裕があれば物資を送ろうと思う
残った娘達は今も駆逐漢の周りを一緒に走って守ってくれている
少し人数が多すぎるとは思うけど
そしてみんなの視線がキラキラしてる
顔を赤くしてる娘もいるし風邪かな?
目を合わせると逸らされた・・
それから二時間が経ち今に至る
みんなは狭いながらも駆逐漢の中で休んでいる
俺は中々休めずに外に出て警護している娘達を見つつ月を見ていた
提督「月・・綺麗だな・・」
阿武隈「提督さーーん!」フリフリ
こっちに気付いた娘が手を振ってくれたので振り返した
阿武隈「きゃー振り返されたー!」
雷「・・・・・・」ジーーー
以降、こっちを見つつ並走している
前見ようよ・・・・
それになんかずっと見られると恥ずかしいな・・
提督「な、相棒」ナイフ
手に持つナイフは刃がなくなってしまっている
提督「まさか、君も艦魂から造られた軍刀だったんだな」
如月が教えてくれた
知らなかった・・俺はちゃんと誓うべき軍刀を持っていたんだ
君が側にいてくれたんだ
如月は言った
如月『彼女は折れたんじゃなくて使命を全うしたのよ。提督の所為じゃない』
この娘の事を聞いた
障害があり艦娘としての力も小さいながらも力になろうと頑張って・・自ら解体された
でも、それをその司令官は許さなかったらしい
何でも養子にするつもりだったとか
そう言えば、昔住んでた家に小さい女の子用の服がたくさんあったのは・・まさかな
あり得ないか
なんで元帥が俺に渡したのかは分からないけど・・知らなかったとは思えない
提督「あのハゲはなんなんだよ」
帰ったら聞いてみるか
いや、教えてくれないだろうな
提督「誓うよ。君の様に出来る力で精一杯戦うと」
守るよ
この身に変えても
だから、見守っててくれ
相棒
提督「はぁ・・また泣きそうだ」
白雪の様に現れて文句でも言ってくれたらどれだけ楽か・・
提督「泣くなよ・・俺・・うぅ」
雷「・・・・・」ちょっと離れてる
提督「あ、涙が・・」
雷「・・・・・」ちょっと近い
提督「ああ、で、で!」
涙が出る!
雷「我慢しなくても」かなり近い
雷「泣いても」間近
雷「良いのー」船よじ登り
提督「っ!ううん、あまり泣いてると泣き虫だって思われてしまう。気をつけないと」
雷「・・・・・・」
提督「って、あれ?雷?どうして船に掴まって?疲れたのか?なら乗るか?艤装は解除しろよ?」
雷「・・・・・」離れていく
提督「あれ〜おーい、なんか怒ってる?」
ガチャ
西提督「騒がしいな。ん?なんだ提督か休んでなくて良いのか?」
提督「あ、西提督さんこそ休んでいてください俺は少し景色を見たい気分だったので」
西提督「そうか、だが、海風は冷える。程々にしておけ良いな?ほら、温かいコーヒーだ」
提督「はい、ありがとうございます」
西提督「う〜ん、口調が固いな・・二人なんだから友として話せ」
提督「この船はお世辞にも広いとは言えませんから万が一にも金髪達に聞こえたらやばいですから研修生として話しますよ」
西提督「うむ、そうか・・なら仕方ないか」
少しの間二人で海を眺めた
自分が思っていたよりも身体は冷えていた様で温かいコーヒーが身体に染み渡った
提督「美味い・・」
こんなに美味かったかな?確か駆逐漢の常備してるコーヒーは安物だったはずだけど
そんな事を思っていると
西提督「なぁ、友よ」
なるべく周りに聞こえない様に小声で言った
提督「なんですか」
だから、自分も小声で話す
声の感じで分かる。真面目にだけど、感情を抑え込むのに必死な声
きっとあの事だ
西提督「本当に彼女の遺体をー」
提督「西提督さん、彼女は春雨って名前があります。それに死んでませんよ」
提督「眠ってるだけです」
西提督「・・・本当にそう思うか?もう春雨は確実に死んでる。起きる事はない」
提督「いや、起きますよ。何十年・・いや、何百年後かな?」
西提督「だが・・いや、お前が決めた事だからこれ以上は言わないが最後にもう一度だけ言わせてくれ」
西提督「春雨をしかるべき所へ持っていけば、お前は多額の報酬と地位が約束される。それこそなくなった階級も取り戻して更に昇格も充分あり得る」
西提督「奴らをこんな綺麗な状態で確保出来てるのは凄い事なんだ。本来なら砲撃でバラバラになるか、形は残っても灰になって消えるはずなんだ」
西提督「研究をすればこれからの発展にも繋がる」
西提督「そしてお前が倒したと言えばいい。なんなら俺が嘘ではないと証言しても良い。認められないなら証拠も揃える。そうすれば、おんぼろ鎮守府の施設も大きく変わるだろう。仲間も増えて街のみんなの見る目も確実に変わる」
西提督「英雄になれるんだぞ?」
提督「そんなのはいらない」
西提督「本気か?」
提督「確かに欲しいですよ。資金も資材も地位も名誉も・・仲間だって」
西提督「なら!」
提督「それよりも大事な事があるんですよ。春雨に必ず助けると約束したんです」
俺の一方的な約束だけど
でも、春雨がまだ姿を保っているのはまだ生きてる証拠だ
彼女の心はまだ生きてる
砲撃でバラバラになっていたら無理だっただろうけど
今は綺麗に残っている
だったら出来るかもしれない
西提督「約束か・・その為なら目の前の大きな利もいらないと?」
提督「はい」
西提督「そうか・・そうか・・」
西提督さんが俯いて震えている
かなり怒ってる
でも、それでもこれだけは譲れない
提督「だから、西提督さん」
西提督「最高だ!!」ガシッ
提督「ふぇ?」
西提督「やはりお前は最高だ!!最高の友だ!!いや、もやは親友だ!!はははははは!!」
持ち上げられて高い高いの高速バージョンをされる
西提督「お前の心意気!感動した!」ブンブン
提督「上下に〜目が回る〜〜」
西提督「今回は別に俺の言った通りにしてもお前の功績なんだから当たり前の事だと思っていた!寧ろ一緒に喜んだ!」ブンブンブンブン
西提督「だが、それすらもいらないと!たった一つの約束の為にだ!」ブンブンブンブンブンブン
提督「あ、やば、は、吐きそう」
朝潮「西提督さん、それ以上は・・提督さんが苦しそうです」
西提督「む、そうか、すまない」ピタッ
提督「はぁ・・はぁ・・うぇ・・」
いつの間にか船に上がっていた朝潮さんに助けられた
もう少しで本当に吐いてた
俺が大丈夫そうなのを確認するとまた海へと戻り警護を再開した
真面目だな朝潮さんは
西提督「おい、お前も戻れ」
荒潮「あら?ばれちゃった?」
俺の背中に張り付いていたらバレるに決まってるだろ・・
まぁ、背中をさすってくれたのは助かったけど
提督「・・・重い」
荒潮「っ!」ギュッ
提督「いっ!」
つねられた
荒潮「ふん!」
怒りながら海へと戻った
聞こえてたか
西提督「みんなお前と話したいんだろうが、提督が疲れているのもあるから我慢しているんだ。後日大変だと思うがな。サインとか求められるかもな」
それはないと思うけど・・と言いたいけど、実は言われました
野良艦娘だった電ちゃんに
電『服に書いて欲しいのです!』
嬉しさはあったが、なんか申し訳ない気持ちがあったのは秘密だ
提督「・・・・・・・」
俺の選択は本当に合っていたのだろうか
本当に
提督「西提督さん・・俺はー」
西提督「提督、お前がそれで良いなら俺はお前の言う様にする。だが、覚えておけ!」
西提督「お前の功績は称えられる事はなくても、此処にいる西鎮守府の皆は知っている!忘れるな!親友よ!」
周りから拍手の音が聞こえる
警護をしている娘達が拍手をしてくれていた
提督「西提督さん・・みんなありがとう」
西提督「お前に頼まれた。秘密裏に春雨を解体してくれる場所を探そう。妙高が詳しいからすぐ見つかるだろう」
提督「はい、お願いします」
西提督「俺も本当は思っていた。彼女には春雨には死を感じない。あの安らかな顔は死んでるとは思えない」
提督「月のように綺麗な顔ですよね」
西提督「あぁ、美しいよ・・」
嘘の記憶だったとしても
俺は彼女に
提督「惚れたんだから・・」ボソッ
西提督「本当に出るかもしれないな。解体する事で彼女の春雨の艦魂が」
提督「出ますよ。絶対に」
だって春雨は人の為に力になろうとしてくれた
その思いはきっと強い
例え穢れた存在になってしまっても変わらず
その強さがあると俺は信じてる
俺の為にみんなの為に斬られる事を選んだ彼女なら
提督「俺は信じてます・・信じたい」
西提督「うむ・・そろそろ中に戻るが」
提督「俺はもう少し見てます」
西提督「そうか、分かった」
中へと戻ろうとする途中で止まり言った
西提督「親友よ」
背を向けて振り返らずに
提督「ん?」
西提督「お前の選択は正しい。彼女を斬った事も解体する事もだ」
提督「・・・・何が言いたいんですか」
西提督「あまり自分を追い詰めるな。それだけだ」
そう言って中へと戻っていった
提督「はぁ・・顔に出てたかな」
分かってる。そう思ってる
でも、この感触は・・・
提督「キツイな・・と言うか顔びしょびしょじゃないか・・はは・・俺って奴は」
気付かぬ間に
また、泣いていた
まだ、西鎮守府までは時間が掛かりそうだ
それまでに涙は乾くだろう
提督「本当・・情けねえよ・・」ポロポロ
いや、このままじゃ無理だ
提督「なぁ・・なぁ!嘘の記憶だったかもしれない!」
叫んだ
提督「それでも彼女にとっては本当だったんだ!」
周りなんて気にする余裕もなかった
提督「だとしたら俺のこの記憶は!嘘でも・・本物なんじゃないのかよ!!」
言ったところで返事ない
分かってる
でも・・
提督「・・こんなに辛いなら・・こんなに苦しいなら・・本当の嘘の記憶なら!」
この気持ちを
提督「消してくれよ!!忘れさせてくれよ!!」
吐き出さないと
提督「こんな理不尽で・・悲しくて・・苦しい・・世界なんて」
きっと俺は
提督「みんなが・・いる・・この世界なんて」
先へと
提督「大好きなんだよ!!ばかやろーーーーーーーーーーー!!!」
進めない
提督「くそがぁあああ!矛盾ばかりじゃないかぁああ!うわぁあああん!」ポロポロ
妙高「今は泣きなさい。誰も笑ったりなんかしませんから」
妙高「それが強いって事なんですから」
周りの艦娘達は提督を優しい眼差しで見守っていた
彼の心が晴れる事を祈って
黒髪「・・・・・・」
先輩・・泣かないで・・・
提督「・・・・・・」
なんか頭が冷えてくるとさっきまでの自分が凄く恥ずかしくなってきた
提督「みんなに聞こえただろうな」
少なくとも駆逐漢に乗ってる人達にはバッチリと聞こえてしまってるだろうな
それとも、みんな休んでるから聞こえなかったかな?
いや、それでもうるさかったな
一人くらいうるさいって怒ってくると思ったけど誰も来ない
提督「うん、きっと聞こえてなかった!」
思いっきり泣いたらスッキリしたし、また頑張ろう
それで良い
それで・・
文月「提督・・・・」
提督「ん、文月さん」
確か文月さんは駆逐漢の前方を警護していた筈だけど、態々船に上がってくるって事は
文月「あのね・・えっとね・・あの・・」
提督「聞こえてましたか」
文月「・・・・うん、聞こえたよ。提督の声、何言ってたかは分からなかったけど」
提督「すみません煩かったですよね」
文月「どうして?」
提督「え?」
文月「どうして謝るの?泣くのは悪い事なの?」
文月「あたしは泣くよ?毎日・・泣いてるんだよ?」
提督「毎日?」
文月「うん、いつも思うの、自分は何者でなんの為に生まれてきたのかとか色々難しい事考えちゃう」
文月「それでね?気付いたら泣いてるの・・怖いの苦しいの」
提督「・・・・・・・」
文月「あたしって何の為にいるんだろうね」
提督「文月さん・・それはですね」
文月「むぅ、呼び捨てにして敬語も禁止」
文月「じゃないと話さないからね!」
提督「本当にですか?」
文月「うん、本当にだよ!」
提督「月が綺麗ですね」
文月「死んでも良いよ〜」
提督「意味分かってます?」
文月「分からないけど、こう言うやり取りが憧れるって荒潮が言ってた」
提督「なら、今度言ってあげれば良いですよ。ただ、返事は、でも青くはありませんね、で返すと喜ぶよ」
文月「そうなの?じゃあ、そうするね〜」
提督「それで今普通に話してるけど?」
文月「あ・・・さ、さくしゅめ・・こ、こしゃくなー」
文月「流石司令官と褒めてさしあげますわ」
提督「ぷっ、なんだよそれ、はははははは」
文月「何がおかしいの!」
提督「いや、ごめん。分かったよ。文月、これで良いか?」
文月「うん、良いよ〜特別にさっきの事は許してあげるね〜」
提督「ありがとな」
文月「ん?なんでお礼言われたの?謝ったりお礼言ったり頭大丈夫?」
提督「案外文月って毒舌だな・・メガネといる時とは大違いだな」
文月「きゃは!文月わかんなーい」
提督「メガネに声かけなくて良いのか?」
文月「・・・もう、彼は大丈夫だから」
提督「そうか、見守ってくれてたんだな。ありがと」
文月「きゃはーー!ふみちゃん褒められた〜」
提督「それで?どれが本当の文月なんだ?キャラ変えすぎて分からん」
文月「・・・・わかんない」
提督「分からない?」
文月「うん、色々考えたらね?自分が分からなくなってね・・どれが本当のあたしなのかな?って」
文月「考えれば考える程に答えが深い海の底へと沈む感じかするの」
文月「でも、考えられずにはいられない」
提督「分かるよ。その気持ち・・俺だって自分が何者で何の為に生まれてきたなんか分からない」
文月「知ってるよ」
提督「え?」
文月「如月お姉ちゃんから聞いたんだよ提督の事を」
提督「俺の事を?それは一体」
文月「内緒って言われたけど、実は提督はー」
提督「あー待て待て!それはダメだ!」
文月「むう!なんでよ!」
提督「内緒って言われてるのに言うのはおかしいだろ?」
文月「でも、知りたいんだよね?」
提督「それはそうだけど・・」
文月「なら知ろうよ。知って教えてよ自分を知るってどう言う感じなのか」
文月「あたしと同じ様に分からなくて泣かなくても済むんだよ?苦しくない、怖くないんだよ?」
提督「文月・・・・」
文月「お姉ちゃんには口がすべったって言うから、あたしならそうなってもおかしくないよ?」
提督「・・・・・・・」
文月「お願い・・」
提督「やっぱり聞けないよ」
文月「そう・・・・」
提督「如月が内緒って言ってるのはきっと今の俺は知ってはいけない事だからなんだと思う」
提督「だから話してくれるまでは待つよ。でも、自分が人とは違うって事は分かってる。だから、それから逃げたりはしない」
提督「でも、今はお願いだ、これ以上考えたくないんだ・・今、この時だけは・・」
文月「苦しいの?辛いの?」
提督「あぁ、辛いし苦しい」
提督「文月が苦しんでるのに助けてあげられない事もね」
文月「そうか・・うん、なら、それで良いよ。それで・・ね」
提督「・・・・・・・」
文月「・・・・・・・」
文月「そろそろ戻るね」
提督「・・・・・あぁ」
文月「っ・・・・・・」
文月「うん、バイバイ・・・」
肩を落として戻っていく文月
俺は彼女に何も言えない
言う資格なんてないんだ
きっと泣いてる俺を自分と同じ様に見えてしまったんだ
毎日自問自答を繰り返し
そして泣いて
苦しんで
助けて欲しいと思ってる
でも、ごめん。その答えは
俺にも分からない・・・・分からないけど!
提督「待ってくれ文月」
文月「え?」
振り向いた時、文月は泣いていた
余程苦しいんだね・・
周りの娘達の視線を感じた
あぁ、そうか。みんな知ってたんだ
知ってて俺に文月を
俺はみんなが思う程の人間じゃないのに
なのに・・バカが・・・どうなっても知らないからな
提督「もし、俺が俺の事を聞いたとしても答えには行き着かないよ」
提督「寧ろ遠くなると思う」
文月「どうして?どうしてそう言えるの?そんなの聞かないとわかんないじゃん」
提督「分かるよ。それだけはね」
文月「っ・・じゃあ、あたしは一生苦しまないといけないの?死ぬまでずっと自分を怖がらないといけないの?そんなの嫌だよ!どうやったら分かるのか教えてよ!」
提督「いや、知らん!」
文月「嘘だ!本当は知ってんでしょ?意地悪しないで教えてよ!」
提督「意地悪も何も俺だって知りたいんだ」
文月「っ・・そう、教えてくれないんだ・・」
提督「だ、か、ら、そうじゃない!自分が何者なのか何の為にいるのか、そんなのは誰も分からない!誰も答えなんて知らない!」
文月「そんなの分からないじゃない!知ってる人だっている筈だよ!」
提督「俺も西提督さんも黒髪もメガネも金髪も此処にいるみんなも世界中のみんなも!誰も!自分自身が何者なのか何の為にいるのかなんて分からないんだよ!」
提督「誰に聞いても明確な答えはないよ。寧ろもっと分からなくなるからやめておけ」
文月「そんな・・・・そんなの」ウルウル
提督「自分から見た自分も他人から見た自分も全然違う。どっちが本当かなんて誰も決められない」
提督「分かっててもそれが本物だって確証もない・・簡単に壊れてしまう事もあるんだよ」
提督「答えを求め続ける限りそれはずっと続く」
文月「いや、聞きたくない!やめて!もういい!帰る!」耳ふさぎ
提督「聞け!」ガシッ
文月「っ!」ビクッ
提督「いいか!俺も文月も!誰も決められないし決めてもくれない!」
提督「それが現実なんだ」
文月「いやだ・・う、うわぁああああん」ポロポロ
我慢していたが遂に泣き出してしまった
提督「っ・・・・・」
泣かせるつもりがなかったなんて言わない
寧ろ泣かせる覚悟をしていた
でも、やっぱりキツイな・・
くそっ・・また、涙が・・今はお前の出番じゃないんだよ!
邪魔をするな!
提督「でもな」ダキッ
文月「っ!」
あやす様に優しく抱きしめて言った
此処からは俺のアホな甘々の考えだ
提督「自分が何者なのか分からないって事は何者にでもなれるって事だと思うんだ」
文月「ふぇ?」
流れる涙を拭いてあげながら続ける
提督「文月は今、此処に居て、此処で泣いている、此処で生きている、俺達を守る為に戦ってくれている」
提督「何者でも良いんだ。文月は文月だ。それ以外に何がある」
提督「なりたい様になりたい者になれば良い。俺だって司令官として生きてる。半端強引だったけど、確かに俺自身が決めた俺の道であり俺なんだ」
提督「そこに人間も艦娘も・・姫種も関係ない」
提督「だってこれには正解も不正解もないんだから」
文月「っ・・・・」
提督「生まれた意味だってそうだよ。生まれた事に意味なんていらない。生まれてそこに居る・・それだけだ」
提督「意味に価値なんかない・・それは求めようとすればする程に逃げてしまう」
提督「だってあいつは大層な事言ってるけど、所詮は意味のない意味なんだから近づかれたらすぐ分かってしまう」
だから、意味は逃げ続ける
ずっと
その価値を知られない様に
文月「・・・・・・・」
提督「まぁ、それでも意味が欲しいなら」
提督「とりあえず今を精一杯生きろ」
それがいつか
何者だとか生まれた意味とかそんな事なんて関係ないって思える程の
大きな生きた証として君を支えてくれるから
提督「大層な事言ったけど、俺もまだ意味を求めてるよ。分かっててもそうしたいんだ」
それが楽な道だからかもしれない
それが俺だからなのかもしれない
それが運命だからなのかもしれない
それが・・・・
限界だからなのかもしれない
だけど、今、君が此処に居てくれてる事で俺は
大きく救われてんだから
それだけは分かって欲しい
提督「ありがとう文月此処に居てくれて」
文月「っ!!」
提督「これが俺の考えだ少しは楽になってくれたら良いけど、大丈夫か?」
文月「難しい事ばかりで分からないよ・・」
提督「うん、要は気にせず今の文月でいてくれって事だよ」
文月「ふ〜ん・・でも、まぁ、少しは分かったかも・・」
提督「なら良かったよ」ニコッ
文月「っ・・ね、ねぇ」
提督「ん?」
文月「かなり楽にはなったけど・・でも、まだ不安なんだよ・・」
文月「だから・・ちょうだい」ウルウル
提督「え?何を?」
文月「・・あたしの生きてる意味を」
提督「え?それって・・」
文月「・・・・・・ん」目を瞑り
提督「ん?」
文月「んーー!」顔つきだし
アヒル口可愛い・・
提督「ん〜・・・お!」
そう言えばメガネのナデナデが好きとか言ってたな
提督「よしよし〜文月は一人じゃないからな〜」ナデナデ
文月「・・・・・・」
そして極め付けは飴ちゃん!
はないから・・
提督「イムヤから貰ったカロリーメイトをあげよう」
完璧だ!
文月「ちがうっ!」バシッ
提督「うわっ!おい、押し退ける事ないだろ」
文月「ああ!何やってんのあたしは!提督は身内なのに・・////」ダッ
提督「おーーい!」
駆逐漢から飛び降りて持ち場へと戻って行った
文月「ふにゅぅううううう!!」
その姿はあっという間に見えなくなった
飛び降りた時一瞬だけパンツが・・やっぱり黒だった
提督「撫でられるの嫌だったのかな?それともメープルシロップ味嫌いだったかな?」
結局何が欲しかったんだろうか?
まさか、雷と同じ様にキスしてくれとか?
あり得ないか、あり得ないよね?
やはり女心ってのは分からないな
提督「まぁ、でも、元気になってくれた様だし良かったかな」
心なしか周りの娘達の視線が生温かく感じるが・・気の所為だよね
雷「・・・・・・」至近距離ガン見
提督「・・・・・・」
西鎮守府まではまだ少し掛かりそうだ
まだ、月を見ていたい
だから、もう少しだけ春雨と共に月を見ていようと思う
だから、雷、そこを退いてくれ
黒髪「・・・・・・・」
先輩・・私も殴って良いですか?
色々考える事はあるけど大きな声で泣いて
言いたい事を叫んだ
文月のおかげで自分自身の事もどうするべきか考える事が出来た
自分が何者なのか・・もし、それに向き合う日が来るなら俺は逃げない
そう決める事が出来た
文月、ありがとう
提督「そろそろ中に入っておくかな」
疲労もかなりピークだ。少しでも休んでおこう
そう思い中へと入ろうとした時
祥鳳「止まってください!」
提督「ん?」ピタッ
前方を護衛していた祥鳳さんが此方へ向かいながら叫んでいる
その一声で駆逐漢が止まった
提督「敵ですか!」
祥鳳「前方数キロ先に潜水艦の反応があります!」
提督「なんだって!数は?」
不知火「ぬい!」ヒョコ
提督「うわぁ!」
不知火「提督ーじゃなくて、研修生くん!数は六です。私も出ましょうか?」
提督「いや、不知火、さん、は此処に居てください。駆逐漢を守りつつ索敵で敵が・・、じゃなくて、怖いので居てください」
提督「なんせ!海に出るのは初めての研修生ですから!」
研修生達にバレてはいけないから、おんぼろ鎮守府のみんなには研修生として接しろと言っていたが難しいな
不知火「ぬ、ぬい!そうでした。研修生くんを守らないとです」
提督「そうです!研修生ですから」
不知火「はい!研修生ですからね」
不知火「やりにくい・・」ボソッ
提督「なんかごめん」ボソッ
祥鳳「西鎮守府の娘達で対応しますので大丈夫です。此処で待機していてください」
そう言うと護衛していた娘達の半数を連れて潜水艦へと向かって行った
ちょっと多い様に思えるが余程強いのだろう
何か出来れば良いんだが今は足手まといにしかならない
その際に
愛宕「これ預かってもらって良いですか?大事な物なので・・」懐中時計
と、個々の大切にしているものなどを俺に預けて行く娘が多数いた
大事な物を託すなんて・・
提督「預かるけど必ず生きて帰ってきてくださいよ」
これ全部遺品になるなんて俺は嫌だからな
と言うか下着を渡してくる娘は流石に断ったが本人達はお気に入りだからと聞く耳を持たず
半端強引に下着を渡され拒否しようものなら泣きそうな顔でお願いされたので仕方なく受け取った
なるべく見ないようにして
西鎮守府の娘達は元は野良艦娘だったからなのかな?そう言う恥がないのはいけないと思う西提督さんに伝えておこう
提督「頼むから生きて帰ってきてくださいよ」
下着をこのまま持ってたら俺は変態だ
愛宕「死にはしないと思うけど、取られたら嫌ですからね」
提督「ん?取られる?」
命を?
愛宕「まぁ、こっちに被害が出ない様にはしますから大丈夫ですよ〜では、行ってきまーす!」
なんかヤケクソ気味にパンパカパーン!と叫びつつ向かって行った
提督「え?潜水艦って深海棲艦だよな?」
不知火「・・研修生くん、彼女達が向かったのは艦娘の潜水艦です。恐らくは遠征に出されている他の鎮守府の娘達です」
提督「なら、あんな大人数で向かわなくても・・と言うより仲間じゃないですか」
提督「挨拶するくらいで良かったのでは?」
不知火「あ、そう言えば提督はー、と、研修生くんは知らなくて良いと思います」
提督「だけど!怯えてる娘もいました!」
不知火「大丈夫ですから、でも、そうですね。少し周辺を見てきます。本当に深海棲艦がいないとも限らないので、では!」ダッ
提督「あ、不知火!さーーん!」
行ってしまった・・なんで、潜水艦にそんなに怯えているんだ?
仲間の筈なのに・・
一体・・
鳳翔「提督さん、何があったんですか?」
提督「あ、鳳翔さん、潜水艦が出たらしいです」
鳳翔「潜水艦ですか・・夜なので危険ですね。どうしましょうか?私達も戦いますか?」
提督「いや、潜水艦と言っても艦娘らしくて命の危機はないらしいです」
鳳翔「え?なら、なんで」
提督「さぁ?分からないですけど、鳳翔さん、俺は研修生ですから何も知らず待ってるだけです」
鳳翔「あ、そうでした。研修生くんでしたね。なら、私達は待っていれば良いんですね」
提督「はい、怯えていたり大事な物を置いて行きましたが緊迫した感じには見えませんでしたから大丈夫でしょう」
提督「本当に大変なら妙高さんも行くと思うし西提督さんに指示を仰ぐ筈だし、今回は彼女達で対応出来る事なんでしょう」
鳳翔「ほっ、なら良かったです。最悪はこの駆逐漢で突っ込んでみようかとも考えていましたから」
提督「はは、鳳翔さんは冗談が上手いですね」
鳳翔「ふふ、割と本気ですよ?カチコミと言うんですよね?」
提督「いやいや、絶対駄目ですからね何処のヤクザですか!」
鳳翔「ふふ、はい」
提督「おんぼろ鎮守府の鳳翔さんはお茶目ですね」
鳳翔「貴方のおかげですよ提督さん」ボソッ
それから二人で少し月を眺めていた
お互いにその間会話はなかったけど心地良かった
鳳翔さんは様になるな
少し周りがざわつき出した
向かった娘達が帰ってきた
良かった・・下着を返せる
何故かみんなスク水だけど
あ、文月さんもいた。睨まれた・・
提督「何があったんだ?」
鳳翔「あの、提督さん」ダキッ
提督「え?」
後ろから抱きしめられて耳元で囁く様に言われた
鳳翔「お帰りなさい」
提督「っ!」
鳳翔「この包丁大切にしますから、ありがとうございますね?研修生くん」
そしてすぐに離れて元野良艦娘だった鳳翔さんから鳳翔さんへ渡す様に言われた包丁のお礼を言って操縦桿の方へと小走りで去って行った
渡す様に言われただけなのにお礼を言われるなんて
優しいな鳳翔さんは
それから数分後もう大丈夫と言われ駆逐漢が再び動きだす
俺は少しまたまた泣きそうになりそうなのを抑えて
その言葉を噛み締めて
提督「ただいま」
そう答えた
提督「・・・・・・」
なんか怖いな・・・・
こんなに優しくされると
黒髪「・・・・・・」
もっと近くに・・
もう少し彼女達(スク水)を見てー、じゃなくて月を見ていようと思い中には戻らなかった
提督「真ん中にちゃんと名前まで書いてるとは・・本当に何があったのか」
多分だけど旧型かな?
提督「イムヤさんと同じだよな」
まさかだけど潜水艦達に服を取られたとか言わないよな?資材の代わりに
提督「ふっ、我ながら馬鹿なことを考えてるな」
でも、中々良いものだな〜
月がだよ?
提督「黒髪とか似合いそうだな」
そう、呟いた時
ダンボール「」ガタッ
提督「ん?今なんか動いた様な気が」
周りを見てみるが特に変わった所はない
いつの間にか置かれてるこのダンボール箱は何だろう
結構大きいけど・・
なんかデジャヴ
提督「まさかまた愛宕さんが入ってるとか?」
いや、それはないか、だって今もスク水姿で鼻水を垂らしながら海を走ってるし
提督「誰かいますかー?」コンコン
ダンボール「」
提督「反応はなしか・・まぁ、当たり前なんだけど」
中を確認するか?いや、人の荷物を勝手に見るなんてダメだ
提督「気の所為って事にしよう」
ダンボール「ほっ・・あ」
提督「・・・・・・」
今、喋ったよな
この声は
提督「まさか、ずっと聞いてー」
金髪「大将!」
提督「ん?金髪かどうした?」
金髪「潜水艦が出たって聞いたんだが」
メガネ「すぐ逃げないと!」
何故この二人はそんなに潜水艦に怯えているんだ?
俺だけが知らない何かがあるのか?
提督「その件ならもう大丈夫らしいぞ?ほら、西鎮守府の娘達が頑張ってくれた」
手を振ってくれている娘もいる
そんなスク水姿の彼女達を見て二人は
金髪「言っていた事は本当だったのか・・スク水にされてる」
メガネ「だが、この光景は素晴らしいと言える」
金髪「それは声に出してはだめだ!」
メガネ「いや、出さないと!抑えられない!」
金髪「気持ちは分かる!」
メガネ「同志よ!」
提督「へぇ、二人とも前よりもすっかり仲良くなってるな、それにメガネも吹っ切れたんだな」
メガネ「みんなのお陰だよ。僕の殻を破ってくれた感謝してます」
金髪「色々あったから俺もメガネも黒髪も結束は固いぜ」
提督「そうか、良かったよ」
本当に良かった三人がこんなに立派になって
まぁ、もう一人はね・・
少し寂しいな
金髪「勿論その結束に中には大将もいるからな俺たちは大将の背を見てここまで来れた」
メガネ「提督さんの小隊なんだから、これからも見させてもらいます」
提督「お前達・・・」
金髪「俺は今日の事を忘れない。人でも力になれるって・・役に立てるって分かったから俺は戦う!そして今を変える」
金髪「この薙刀に誓う」
提督「・・・・・・」
メガネ「僕も出来ることは小さいかもしれない。でも、仲間達がいれば出来ないことはないと思う事が出来た」
メガネ「誓う刀や薙刀はないけど、誓うよ。僕は僕の出来る事を少しでも続けていくと」
メガネ「この眼鏡に誓おう!」キラン
提督「そうか・・お前達は」
もう、自分の進む道が分かったんだな
人として人間としての役割を理解して、そして力になろうとしてる
こいつらが学校を卒業した時
その姿を想像するだけで、何故こんなに嬉しい気持ちに心が踊るんだ
提督「金髪!」
金髪「はい!」
提督「その誓いを龍田さんの想いを忘れるなよ?」
金髪「はい!絶対に忘れません!」
提督「メガネ!」
メガネ「はい!」
提督「殻は破られたんだ今までのお前じゃなく新しいお前で突き進め!また被るなよ?」
メガネ「はい!一層筋トレをします!」
提督「後は、黒髪!」パカッ
ダンボールを開ける
黒髪「あ・・・・」
金髪「いないと思ったら」
メガネ「良い家だね」
金髪「ダンボールが?」
メガネ「ダンボールが」
提督「盗み聴きとはいい度胸だな黒髪」
黒髪「いや、あの、その・・えっと・・すみませー」
提督「起立!」
黒髪「は、はい!」
提督「黒髪」
黒髪「は、はい・・」
頭に手をやってポンポンする
黒髪「ふぇ?」
提督「他に反対されようと馬鹿にされようとお前の信じた道を迷わず進め良いな?」
黒髪「は、はい!私・・私はもう迷わない!決めました」
黒髪「もう・・決めたから」
提督「三人のこれからの健闘を祈る!敬礼!」ビシッ
金髪「っ!」ビシッ
メガネ「っ!」ビシッ
黒髪「・・・・・」
黒髪「・・・・・っ!」ビシッ
提督小隊解散!
妙高「貴方達の行く道が少しでも明るくある様に・・敬礼!」ビシッ
西艦娘達「「「っ!」」」ビシッ
西提督「ふっ・・青春してるな」ビシッ
まるゆ「これからさ・・これから彼等の物語は始まる」ビシッ
如月「言うじゃない。でも、その口調で提督に話しかけないでよ」ビシッ
まるゆ「ははは、今日だけさ、今日だけ研修生を見守る年寄りとしていたいのだよ」
如月「あんた相変わらずね」
まるゆ「あ〜酒が呑みたいな〜」
如月「あんたと同じのなのは気に触るけど・・そうね」
西提督「・・・・・・」
西提督(俺は何も聞いてない。聞いてないからな!)
明日はあるけど、実質の研修はこれで終わりだ
俺はみんなの手本となれたのだろうか
戻っていく彼等の背を見て
少しはなれたんだなって思う事が出来た
それだけでも俺はこの研修で変われたんだって
変わってしまったんだって
提督「良い意味でも悪い意味でも・・」
黒髪「先輩・・」
提督「なんでこんな事をしていたとかは聞かないから、もう戻って良いよ。疲れてるだろ?」
黒髪「ううん、聞いてください。最初は声を掛けようと思ったんです」
黒髪「でも、掛けられなくて・・だって凄く辛そうな顔してたから・・」
提督「そんなつもりはなかったんだけど気を遣わせてしまったんだな」
黒髪「ううん、あんな事があったんだから当たり前だよ・・敵とは言え先輩はこの手で・・」
やっぱりちゃんと見てたんだな
提督「後悔はしてないよ」
黒髪「そうですね・・その顔を見れば分かります。でも、さっきまでは違っていたんじゃないですか?少しでもその気持ちはあったんじゃないですか?」
提督「・・・・・・」
黒髪「西提督さんと何かを話してて・・泣いて、叫んで、なのに私は何も出来なかった・・」
提督「・・・・・・」
黒髪「文月さんとはいい感じになって・・気づいたら先輩が笑って・・私が笑顔にしてあげようと思ってた!でも、触れただけで壊れそうだった先輩に声を掛けられなかった」
黒髪「ううん、拒絶されてしまうかもって思って・・先輩がそんな事する筈ないって分かってたのに・・」
黒髪「先輩を信じてあげられなかった・・」
提督「そんな事ないよ黒髪は良くやってくれた俺を信じて待っててくれたじゃないか」
提督「俺・・それが凄く嬉しくて励みになったんだよ」
だから夕方まで懲罰房でも耐えられたんだ
黒髪「先輩・・」
黒髪「ううん!それでも私が納得出来ないんです!私が・・西提督さんや文月さんの様に出来てあげたかった!」
提督「黒髪・・・」
黒髪「私はずるい奴です・・先輩と正面から向き合える事の出来た人達に嫉妬して盗み聴きしようとしたんです」
黒髪「先輩と話す人達の言葉を聞けば私が出来る事が見つかるかもって!何か声を掛けられるキッカケを作れるかもって!」
黒髪(私の知らない貴方が知れるかと思ったから・・)
黒髪「でも、駄目でした・・みんな・・自分達しか出来ない事をするんですよ。鳳翔さんなんかズルいですよ・・大人な女性ですよね・・私、背が小さいから先輩をちゃんと抱き締めるなんて出来ません」
黒髪「甘えさせてあげられる事も出来ません・・」
黒髪「まぁ・・下着を預かるところは少し引きましたけど・・ね」
それには触れないで欲しかった・・
提督「・・何処まで聞いたんだ?」
黒髪「結局聴けたのは最初の金髪とメガネの内容だけでした・・後はこっそり見る事しか出来ませんでした」
という事は俺が司令官だとはバレてはいないか
俺だってズルい奴なんだよ?みんなを騙してる
黒髪「所詮私は口だけの女だったんです」
黒髪「私が守るって決めたのに・・」ボソッ
提督「それは違うよ。どうあれ行動出来たのはー」
黒髪「でも、先輩の言葉で目が覚めました」
提督「ん?」
目つきが変わった?
さっきまでの弱々しい感じは消え
その目には確かな決意が見えた
なんだよ。何が口だけの女だ
その目が違うって言ってるじゃないか
黒髪「もう迷いません。自分の信じた道を進みます。誰に反対されても決めました」
黒髪「その道を進めるならズルい奴にも最低な奴にもなる決意も出来ましたから」
提督「そうか、そこまでの覚悟があるなら出来るよ。他でもない黒髪だから言える」
それにズルい奴にも最低な奴にも黒髪はならないよ
だって君は凄く優しいんだから
黒髪「応援してくれますか?力になってくれますか?」
提督「あぁ、俺に出来る事なら言ってくれ。でも、その行動が結果的に自分を追い込む事になってしまうなら・・」
黒髪「そうなるなら?」
提督「やめろ。俺の言葉も信念も何もかも捨てて逃げろ」
逃げる事は恥ではない
それより壊れてしまう事がいけない
そうなってしまえば挽回する事も笑う事も出来なくなってしまう
それだけは駄目だ
提督「まぁ、その時はそうなる前に相談しろ、俺じゃなくても金髪やメガネでも良い」
提督「自分の信じた仲間達も信じてやってくれ」
黒髪「先輩はやっぱり優しいですね・・だからこそ私は・・」
黒髪「先輩、いえ、提督さん」
提督「はい」
黒髪の目指す未来はなんだ
どんな事だろうと黒髪が必死に考えて決めた事なら俺は
力になろう
共に歩む大切な部下であって友達だから
黒髪「貴方と一週間研修をして確信しました」
提督「ん?」
黒髪「提督さんは司令官には向いていませんよ。学校を卒業する前に退学してください」
提督「・・・・・・・」
黒髪「海軍に入っても無駄死にするだけです」
提督「冗談にしては笑えないな」
笑えない筈なのに・・
黒髪「本気です!本気で提督さんは海軍なんて入らない方が良いって思ってます!」
黒髪「もっと他にないんですか?そこしか居場所がないんですか?いえ、そう思うのも無理はありません。気持ちは分かってるつもりです・・でも、今の提督さんならすぐに出来ます」
黒髪「一人になんかなりません!」
黒髪「させませんから」ボソッ
提督「黒髪・・・・」
黒髪「このまま提督さんが海軍に入って時期に司令官になったら・・今以上に無茶をして・・傷ついて・・苦しんで・・また、泣きます・・今回生き残れたのは運が良かっただけなんですよ!分かってますか!」
黒髪「西提督さんも金髪達も艦娘達も貴方に期待してる。でも、みんなは分かってない!」
黒髪「苦しいんでしょ?辛いんでしょ?投げ出しても良いんだよ?逃げる事は恥でもない。それで良いんだよ?貴方が言った事だよ!それは自分にも当てはめてる?」
黒髪「もう良いんだよ・・十分苦しんだよ。頑張らなくても私は貴方を認めますから!」
黒髪「私一人でも貴方の味方でいますから!」
提督「っ!」
頑張らなくても・・
黒髪「こんなの・・まだ学生の研修生に掛けていい期待じゃない!こんなの持ちきれるわけない!こんな重みに耐えられるわけなんかないんです!」
提督「・・・・・・」
黒髪「今は持ててるから大丈夫だって思いますか?」
黒髪「それはその時だけです。みんなが常に居るわけじゃない!所詮人間も艦娘も持てる力に限界がある!」
黒髪「貴方は艦娘以上の期待をされてる。そんなの無理なんです!提督さんの限界は必ず訪れます。そして周りは限界と知った瞬間に」
黒髪「貴方には見向きもしなくなる」
黒髪「いえ、期待したのにと幻滅されます」
提督「幻滅か・・それはキツイな」
でも、俺はもう司令官なんだ・・
それを言えずにごめんな
黒髪「他にも道はあります。だから、此処に執着しないで・・お願い」
そう言って黒髪は頭を下げた
俺の事なのに自分の事の様に必死に
黒髪の言ってる事はないとは言いきれない
その可能性も十分にあり得る
でも、他に道があっても先には暗い道しかなくても
俺は此処が好きなんだ
みんなの居る此処が
提督「気持ちは嬉しいけど、俺は此処に居たい。この道を歩きたいんだ」
みんなに押されるからじゃなく自分から進みたい
黒髪「そうですか・・そうですよね。そう言うと思いました・・」
提督「でも、そこまで言ってくれる人はいなかった・・頑張らないとみんないなくなるかもって思った事もあったから・・だから、凄く嬉しかった。ありがとう」
黒髪「・・・・・・」ギッ
提督「黒髪?」
黒髪「変える気はないんですね・・なら!提督さん!いえ、提督!」
提督「っ!」
黒髪「宣言します!今は無理ですが貴方に追いつきます!追いついて追い越して!そして!」
黒髪「海軍から追放します!必ず!」
提督「追放・・それは」
司令官の座から落とし俺の居場所を奪うと言う事を意味してる
黒髪「今日から部下でもなんでもありません!敵です!卒業まで三年ですが、それまで猶予を与えるつもりはありません!」
黒髪「私はどんな手を使っても・・この身体を、この力を使って!成り上がりますから!覚悟していてください!」
途中からは叫ぶのと変わらない声で
黒髪「だから!それまで絶対に死なないで!生きて!五体満足で!!必ず!!必ず・・」
黒髪「会ってください・・」ポロポロ
泣いていた
その言葉が悲しくて・・でも、何か別の感情があって
提督「あぁ、待ってるよ」
考える前にそう言っていた
黒髪「っ!」
黒髪「文句の一つでも言いなさいよ!馬鹿!」ダッ
そう言うと中へと戻って行った
中に入ろうと思ったが、これは着くまで此処にいるしかないか
提督「でも、なんだろう」
この気持ちは・・
部下だと仲間だと思っていた黒髪に宣戦布告をされた
本当なら悲しむべきなんだろう
でも、全身の血がたぎる
ジッとしていられない程に
提督「あ、そうか、俺・・嬉しいんだ」
俺と言う存在を越えるべき相手と見てくれて挑もうとしている
俺と言う存在を認めて
俺と言う敵を目標にして
強くなろうとしている
かつての部下だった黒髪がだ
提督「やれるもんならやってみろよ」
思わず笑みが溢れる
今の俺は不気味だな。誰も見てないと良いが
雷「・・・・・・・」スク水
提督「・・・・・・」
俺はもっと先へと進んでやる
止まらない!止められない!
だから、追い越して俺の背ではなく
俺の正面に立て
待ってるぞ!黒髪!
提督「ふふ、ははははは!」
今なら西提督さんの気持ちも分かる!
ドMだと思ってごめんなさい
妙高「泣いたり笑ったりと忙しい人ね・・」
阿武隈「泣くよりは良いじゃないですか」
その後、西提督さんを交えて笑った
黒髪に煩いと怒られた
提督「黒髪」
黒髪「な、なによ」
提督「身体を使ってでもと言ったがハゲに身体は売るなよ?」
黒髪「しませんから!そう言う意味じゃないです!セクハラで訴えますよ!」
そして、深夜に西鎮守府へと到着してみんなはすぐに眠りについた
これで長い長い一日は終わった
でも、俺はまだ眠れそうにはない様だ
とりあえず報告書を終わらせよう
真っ白な研修報告書にペンを走らせるのだった
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ーーーーー
ー6日目の夜ー
深夜の西鎮守府の自室にスタンドのライトだけを照らしてベッドの上にダンボールを置き書き物をしている
自室と言っても四人で共用しているので俺だけの部屋ではないし二段ベッドが二個設置されてるだけで後は人が一人ギリギリ通れるかぐらいのスペースしかない部屋で他の人達を起こさないように細心の注意を払いつつ書いていた
起こすと手伝うって言って煩いし
みんな疲れているだろうから起こさないように気をつけて報告書を書く
提督「・・・・・・・・」カキカキ
任務内容【西鎮守府での一週間の研修をして西提督から合格印を貰って来る事】
1日目から思い出して6日目つまり今日の事を思い出して書く
これで終わりだ。約束の時間も近づいている
急がないと
提督「俺はもっと先へと行くから待ってろよ黒髪」カキカキ
そして今日と言う日を・・彼女を斬った感触も声も笑顔も全て忘れない
俺は確かに此処にいる俺の選択なんだ
それをハッキリと分かる事が出来た
そして安易な行動で起こってしまう悲劇も
報告書には無事に何事もなくクルージングは終わりましたと書いた
海が綺麗だと思いましたと言う文も加えて完璧な報告書だ
提督「んーーー」背伸び
報告書を思い出しながら書いていたがかなり長い時間掛かったような気がする
本当は一時間も掛かってないと思うけど
提督「さて・・」
時計を確認する
もう、日はとっくに跨いでしまっている
研修最終日7日目だ
でも、参加する事は出来ない
ごめん、西提督さん、金髪、メガネ、黒髪
シーツを畳んだりと部屋を出る準備を終えて荷物を持つ
出口のドアへと手を掛ける
前に
振り向き
寝ている研修生達に頭を下げた
心の中で皆の成長を願い
俺を成長させてくれた感謝を込めて
枕元にモンエナを忍ばせた
一人二本だけど、黒髪には強くなって欲しいので十本置いておいた
モンエナモンエナモンエナモンエナモンエナ黒髪「うぅ・・圧迫感が・・」モンエナモンエナモンエナモンエナモンエナ
飲み過ぎるなよ
提督「みんな良い夢見ろよ」
そして研修生部屋を出た
ー西鎮守府正門ー
提督「待たせてすみません」
川内「ううん、時間内だよ。それよりもう済んだ?トイレは?」
提督「はい、もうやり残した事はないです。トイレもさっき済ませました」
振り返り西鎮守府を見上げる
長いようであっという間だった
川内「なら、行こうか南鎮守府へ」
提督「はい!」
二人を救う為に歩き出すのだった
私は斬られた
これで、私は消えてしまう
なのに・・私はまだ此処にいる
だけど、どんどん消えていく感覚はする
すぐに消えてしまえばどれだけ楽か・・
消えていく恐怖を味わいながら消えるなんて・・
でも、それが私への罰なら・・それを受け入れよう
彼には悪い事をした。きっと背負って生きていく事になる
ごめんなさい・・提督さん
ピカッ!!
ふと、暗闇が照らされた
眩しい・・でも、目を離せない
だって、そこに居たのは・・
『やっと会えたね』
かつて私を救ってくれた彼女だった
成長した姿だったがそれでも彼女だと分かる
なんでこんなところに
『約束を守りに来たんだよ』
そう言って彼女は手を伸ばす
約束・・それは親友である彼女と交わした私達の証
私はその手に吸い寄せられるように彼女の手を掴んだ
『これから先の未来をお願いね』
彼女の光が私を包む
でも、彼女からは光が・・
温かい・・・・
その温かさに今までの不安も悲しみも何もかもがなくなり
消えていく彼女を見ながら
私は深い眠りについた
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ーーー
それから彼女は軍刀となった
一人の青年が彼女を授かり
これから来るであろう未来に心を躍らせていた
筈だったのだが
「帰りたい・・なんで俺が司令官にならないといけないんだよ」
やる気もない情熱もない未来なんてどうでもいいと思う青年だった
愚痴ばかりで常に眠そう
「なぁ、お前もそう思うだろ?相棒」
軍刀(春雨)「」
正直煩い・・・・
もっと情熱を持っている人とか、世界を変えてやるとか
辛くて苦しい世界でもこの世界を大好きだと言える提督さんの様な人が良かった
それが無理なら普通な感じでも良かったのに・・
こんな男の愚痴で目を覚ました私は自分が憎い・・
これから苦楽を共に歩める相棒だと思ったのに
なのになんでこんな
軍刀(春雨)「冴えない男になんか・・」
「あ?」
軍刀(春雨)「え?」
「喋った?軍刀が喋ったのか!」
軍刀(春雨)「え!え!はわわわ!」
え?なんで声が聞こえて!
でもでも、こんなあり得ない事が起これば彼もやる気を!
「まぁ、だからなんだって話だけどな・・」
軍刀(春雨)「ん?」イラッ
いやいや、何その反応?なんとなく予想してたよ!
予想を裏切りなさいよ!
軍刀(春雨)「貴方はもっと驚きなさーーい!」
「あーーうるさい!小姑かお前は」
軍刀(春雨)「小姑って!大体貴方は愚痴ばかりでこっちが煩いって思ってるんですよ!ねえ!聞いてる?聞いてますかーー!」
「はぁ、煩いのを貰っちまったな・・だけど」
軍刀(春雨)「むきーー!無視するなーー!」
決めた!私がこいつの根性を叩き直してやる!
覚悟してなさいよ!
「退屈はしなさそうだな。まぁよろしく頼むよ」
軍刀(春雨)「そっちこそ覚悟してよろしくしなさいよ!」
「「相棒」」
こうして一人の青年と喋る軍刀との物語が始まる
でも、それは長い長い先の未来での話し
彼女が目覚めるその時まで
ー某日ー
ーおんぼろ鎮守府執務室ー
提督「よし、此処に飾っておこう」カチャ
軍刀(春雨)「」
提督「いつか、君を相棒と呼んで共に歩める人が必ず現れる」
それは明日かもしれないし数百年後かもしれない
でも、見つかるまでは俺が俺達が責任を持って君を見ていてあげるから
提督「だから・・それまでは此処でゆっくり休みな」
君の物語が始まるその時まで
それまでは此処が君の帰るべき場所だよ
春雨
【帰るべき鎮守府と変わり行く提督】
終
【明日を繋ぐ鎮守府と変わり行く提督】に続く
第9章はこれで終了です!応援してコメントなどくれた方ありがとうございます!10章もよろしくお願いします!
リクエストなどは随時受け付けています
第1章から色々なリクエストを貰いましたが無視をしてるわけではなく余りにも物語の進行が遅い所為でそこまで行けてないのが現状だったりします・・すみません
コメなどくれると凄く凄く嬉しいのでお願いしますね!
ついに始まりましたか!
今回もとても良い作品なる事を期待しています!
では第9章頑張って下さい!
新章キタァァァァァア!(歓喜)
これからどうなるのか本当に楽しみです!
今回も最高に期待しています!
応援しています!
一番さん!
期待されるのは嬉しいのですが緊張するので過度な期待はせず待っていてくださいね!
第9章よろしく!
月々社畜野郎さん!
コメントとオススメありがとうございます!
一番と勿体無いお言葉この胸にダイレクトに来ました!頑張るのでこれからも飽きずに見てくれると嬉しいです!
更新お疲れ様です!
艦記魂障害.....良いネーミングですね!自分には到底思い浮かべる事ができません.....
元帥「ほう.... なら帰れ」
如月「失礼しました」
の下りで、この手の言動をよくする友人を思い出し、笑いました
大淀がガラスを突き破って登場するシーンも面白かったです。
本格的に9章が始まりましたが、やはりポテ神提督さんのssは面白いです!
最近忙しく、なかなか自分のssが書けない状況です.....
ポテ神提督さんのリクエストした如月は
最初は如月の台詞や性格が難しく、キャラ崩壊を恐れて無理かもと思っていましたが、最近気が変わり
忙しい中で如月の台詞と提督の反応を考えながら生活する日々です!
かなりの長文になりましたが
次回の更新も期待しています!
月々社畜野郎さん!!
返信遅れてすみませんでした。個人的に気合を入れないといけないイベントがあったので・・でも、終わりましたよ・・(惨敗)
と、そう言う話しは置いておいて、ネーミングは少し考えただけでそんなに深い意味はなかったりしますよ
あと、そう言うやり取りの出来る友人がいると面白いでしょうね少し羨ましいです
如月は難しいでしょうけど、自分の思った如月を書けば良いんですよ。それが貴方の作品なんだから応援していますよ。頑張ってくださいね!
更新お疲れ様です!
卯月....ええ娘や......
ところで卯月作のレモネードってどんな味なんだろうか......
美味しいことに間違いは無いみたいだけど....果たして
取り敢えずこの話は置いて
遂に動き出しましたね!自分の予想では如月無双TIMEが起きると思ってたら
如月がかなり危うい状態で..........でも他の皆が静止してくれて良かったです!
そして安定の次回を楽しみにさせる終わり方、次も楽しみになります!
最近もずっと忙しい毎日です...まさに社蓄....
安定の長話になりましたが、次回も楽しみにしていますよ!応援しています!
更新お疲れ様です!
ポテ神さんのTwitter通りファミマを回ってたらローソンで黒胡椒ポテチを見つけむしゃむしゃしながらSSを書いている所存です(笑)
松崎しげる味おいしいですね(^ω^)
次回も楽しみにしております。
初めまして!艦これのSSでなんか面白いのあるかなぁと思ってググっていたらこちらにたどり着きました!
ここまで一気読みで来てしまったけどシリアスとコメディとラブストーリーが良い塩梅でブレンドされてて面白いから何度でも読み返したいなあと思える作品だと思いました!
主人公がなんか自分と似ているなあってところがあるとも思ったのでその感情移入もあるからさらに面白いと思える作品だとも思いますね。
読ませてもらった感想…リクエストっていうか要望ですけど、今思うには元帥と提督の関係をもう少し掘り下げた展開とか、あとは叢雲が最終的には色々あるかもしれないけど帰ってきて提督との関係は元鞘に収まるみたいな展開とかあると良いなあ…と思ってしまいました。(と言ってもこうなれば良いなぁって言う一読者の下らない妄想なんであんまり気にお気になさらず)
とにかく応援してます!更新毎回楽しみにしてますね。
月々社畜野郎さん!
コメ返し遅くなって本当にすみませんでした!!
卯月のレモネードは気分によってマヨネーズやわさびが入る事があるので気をつけてください!
如月はかなりヤバイ状態ではあるので無双は無理です!この先どうなるかはお楽しみに!
そして安定のコメの長さに何時も助けられています!もっと書いてくださーーい!
MAVISさん!
見つけられたんですね!俺もやっと食べられました!あれは凄く松崎しげるでしたね!もう一個食べたいと思いコンビニへ・・しかし、ない!くそ・・
8番さん!
此処まで飽きずに読んでいただきありがとうございます!
こんなに細かく感想を言ってくれて凄く嬉しいです!!やる気がどんどん起きてきました!
主人公と似ていると言うことは・・貴様童貞だな!後頭部ハゲてるな!だが、気にするな!俺もそうだ!!
あ、泣きそう・・
リクエストはなんでもありがたいのでどんどんしてください。叢雲がどうなったとかは実は初期あたりからこうしたいと決まっています。ですが、安定の長さと遅さでそこまでいけてません・・
悪い様にはならないと思うので飽きずに見てやってくださいな〜〜
ではでは、またコメントお願いします!
2日前から読みはじめてようやく追い付きました
これからも頑張って下さい。
どうも!8番でコメントさせてもらったもんです!
ちなみにハゲてるかどうかは想像にお任せって事で(^^;
何度読み返しても面白いので仕事の休み時間の合間も読んでますが時間があっという間に過ぎる感覚です!
それと、色々アイディアを考えてみたんでリクエストがてら下に書いときます!
1:西提督と提督が夜中にこっそり妙高の中破コラ画像を見てたら...
2:比叡が提督に高速修復材入りカレーを振る舞うも食べないかと思いきやまさかの完食。そのあと...暴走した。
3:祥鳳艦載機を無くした→「私、艦載機に哀悼の意を込めて一週間黙祷します!→西鎮守府の皆さんとおんぼろ提督必死で捜索→見つからない→まさかの場所から艦載機発見!
4:おんぼろ提督天龍のライブを見に行く
5:おんぼろ鎮守府の艦娘が交換日記を始めた→案の定提督のあんなことやこんなことばっかり→
6:提督が陸軍艦娘ズ・ブートキャンプを3ヶ月間試した結果
と言うアイディアを考えてみたんですが第7章ぐらいまであった番外編みたいなショートストーリーとして独立させるか本編に組み込むかはお任せします(*^^*)
ではでは。
更新お疲れ様です!
12番さん!
返事が遅れてすみませんでしたぁあああ!!
大丈夫・・禿げてても見てくれる人はいますから!大丈夫です!!
何度も読み返してくれるだけではなく、こんな面白そうなリクエストの数々ありがとうございます!
どれかはやってみようかなって思いますよ!
天龍のライブには那珂ちゃんも連れて行ってちょっと険悪な感じになるのもいいですね!!
これからも更新が遅いかもですがよろしくお願いしますね!
13番さん!
ありがとうございます!これからも頑張るのでよろしくお願いしますですぜ!!
とても面白いです!
続き楽しみに待ってます!!
15番さん!
ありがとうございます!その言葉が励みになります!
続き楽しみにしてました
これからも更新頑張って下さい
17番さん!
更新頑張るのでこれからもよろしく!わぁーい!
黒髪がイヨだったなんて…
いずれヒトミも出るのかな?続きが気になって仕事が手につかなくなるぜ!
龍田のデレがいいですねぇ〜
昨日の休日丸々潰して読み始めました。とっても面白いです。頑張ってください。
19番さん!
イヨかどうかはまだ分かりませんぜ?ヒトミは・・・・、お仕事ガンバー!
20番さん!
デレる瞬間って自分好きです!!
21番さん!
そんなまるまる潰すなんて・・君は暇なんだね!!
僕と同じだ!!
本が出ていたら買うレベルで好きです。
これからも頑張ってください!
出来ることなら続きを早く知りたい(ボソッ
今までの全部一気読みして来たけど面白いです。まだまだ読みたいと思えました。
続きが気になります!
頑張ってください!
fayth of dreamさん!
言い過ぎですよ!そんなに褒めたって何も出ませんよ!(少しですが、書きました!!)
決着はこの章で終わらせるので気長に待っててくださいね!
24番さん!
そんな一気に見るなんて・・良くここまで飽きずに読んでこれましたね!感謝です!
まだまだ書く予定なのでこれからもよろしくお願いしますね!
ショートストーリーにあまり興味がなかったのですが、あまりの面白さに一気に読んでしまいました。
続き頑張ってください。
26番さん!
一気に読んでもらえて嬉しいです!よかったらこれからも読んでくれると嬉しいです!
コメントとかくれるともっと嬉しいです!
最近この作品を知って、一気読みした者ですが。
即出かもしれませんが。
更新頻度の目安か、そのことが書きこまれた章をお教えいただきたいです。
これからも頑張ってください‼
28番さん!
ここまで飽きずに見てくれてありがとうございます!
更新頻度は完全に気分です。早い時は早いですが遅い時は遅いです
ちなみに自分は戦闘シーンなどシリアスが苦手なので、シリアスや戦闘が近くなると遅くなると思います!
逆にほのぼのとかなら早いかもです!
更新したらツイッターに書くのでそれを確認してもらえると良いですよ
どうでも良い事も書いてるけど
今日一気読みして率直に思った感想
小説にしたら絶対全巻買う位この作品好き
30番さん!
そこまで言っていただけるとは・・感謝の極みです!最近野草にハマってるのでヨモギやスギナを大量に貴方に送りたいくらいの嬉しさです!
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします
超面白くて一章からここまで一気見してきちゃいました!!
艦娘と人間のハーフとはありそうでなかった設定で引き込まれました。
伏線も結構あるみたいでそこから予想したりするのも楽しいですしすっごい続きが気になります。
十章の執筆も頑張って下さい、応援しています。
p.s.
黒髪ちゃんはイヨのハーフでてっきり提督の所に着任するかと思ったんですけどどうなんですかね・・・
32番さん!
一気に見てくれてありがとうございます!よく飽きなかったですね!!
コメントを見ただけでよく見てくれたのが分かります!本当に感謝です!10章もよろしくお願いします!
黒髪の事をどうなるかはわからないですね〜〜彼女はどうするんでしょうか?
俺も前から考えていたのですが先越されちゃいましたね(ハーフの事)
こっちの方が断然スバラシイ出来です!
これからもがんばってください!