2018-02-05 01:23:45 更新

2017年4月6日日曜日


凡矢理市内のマンション、

スペクトル凡矢理 705号室


チュンチュン……


楽 「うーん………」


千棘 「あ!楽、良かった。やっと起きた〜〜。」


楽 「あ、千棘ぇ?」


目が覚めた楽は、マンションの自室の千棘の膝の上で眠っていた。


楽 「俺、アレからどうなって………」


千棘 「昨日、あんたがあのウミヘビを倒した後、力尽きて寝ちゃって、蒼也くんが私達をこの部屋まで運んでくれたのよ。」


楽 「蒼也?あいつがぁ?」


千棘 「うん。あんたあの後、昨日の昼ごろから今までずっと寝てて………24時間近くは目が覚めなかったのよ?

鶫によれば、まだ星の光が少ないあんたは戦うとすぐに星の光を使い果たして回復には大量の睡眠が必要になるんだって……」


楽 「そうだったのかぁ……アレ?てか千棘お前あのウミヘビにやられた足どうした?

あんなに大きな青い傷跡があって心配してたに………」


千棘 「ああ、アレ?蒼也くんが治してくれたんだ。

彼の星獣、治癒の力があるらしくて、ホラ

綺麗さっぱり!」


千棘の右足からは昨日受けた大きな青い傷跡が綺麗さっぱり消えて無くなっていた。


楽 「そっか、良かった。心配してたからなぁ………

とにかく昨日あんなんだったけど、今日はゆっくり出来るぜ!」


千棘 「あ、ちょっと待ってよダーリン。

その事なんだけど………」


楽 「あ?なんだよ?」


千棘 「その………今日これから、久々にデートに行かない。」




凡矢理市内商店街

日曜日 AM:10:00


楽 「考えてみたら一年近くデートしてなかったよなぁ」


千棘 「そうよね。私が高3の夏にアメリカに行ってそれから今まで世界中を渡り歩いていたからねぇ。」


楽 「でも、考えてみたら「定期デート」じゃない本当のデートって、コレが初めてだよな?」


千棘 「そうねぇ、天駆高原で本当の恋人になってからすぐに離れ離れだったからねぇ。」


楽 「今日からはあのメガネの監視とかも気にせずに楽しめるな。

で、まずはどこに行く?」


千棘 「そうねぇ………」


20分後、おしゃれなカフェ


楽 「なんかデジャヴだよな。」


千棘 「そうね、はじめての定期デートでもあんたにおしゃれなカフェに連れられて、マッズイ豆で600円も取られたっけ(笑)」


楽 「ああ、そんな事もあったなぁ」


楽 (あん時俺は、前々からイメージしていた小野寺との理想のデートプランをコイツに片っ端から打ち破られたんだった。)


千棘 「なんかあん時と違って、楽の事が本当に好きになった今だから感じるものも何処と無く違う気がする。」


ガッガッ


千棘は抹茶パフェを頬張りながら、昔と今のデートに対する感じ方の違いを語り続ける。


楽 「そ…そうか?」


楽 「ん?」


楽は千棘の右頬の下にクリームがついているのを見つけた。


楽 「おい千棘、ほっぺの下にクリームがついてるぞ」


千棘 「え?」


千棘は左頬の下を自分の右手の指でなぞった。当然、そっち側には何も付いていない。


楽 「んったく、」


スッ


千棘 「ひゃっ」


楽は千棘の右頬の下に手を伸ばした。

クリームを取って自分の口に運び食べた。


千棘 「あっ、ありがとう。」


千棘 「楽……」


キュン


千棘の笑顔にまた楽はドキッとした。

高3になる直前の定期デートで分かった。

「コイツと一緒にいる時だけ感じてる心地よさ」がまた来たのだ。

それも前よりも強くなって。



お馴染みのラーメン屋 2人で食事


ガッガッガッ

千棘 「替え玉一丁〜」


楽 「もう、5玉目だぜ………」


千棘 「だって、日本のラーメン久々なんだもん!スミレさんとの研修中はその国の名物料理ばっかだったし。」


楽 「それもそれで十分贅沢だろ………」


楽 (この食欲だけは、高校時代から1mmも変わってねーな)


千棘はそのまま、6玉目7玉目とどんどん痩せの大食いを進めて行く


千棘 「あんたはあんまり食べないわねぇ。

食欲無いの?」


楽 「昨日、丸一日寝てたからな。

俺はひと玉で十分。」


千棘 「ふーん。」


カチャ

千棘は楽に自分の箸を差し出した。


楽 「ん?」


千棘 「私に食べさせてよ。」


楽 「は?」


千棘 「だってもうホンモノの恋人なんでしょ?あーんくらいしてよ!あんたは私の彼氏でしょ?」


楽 「だからって….……」


千棘 「やっぱり、嫌なの?」


楽 (……………………………)


千棘は捨てられる直前の飼い犬みたいな目でこっちを見ている。

してくれないと、今にも泣き出しそうだ。


楽 「分かったよ……」


千棘 「!やったぁ!」


楽 「はい、あーん。」


千棘 「わーい」


パクッ

モグモグ


千棘は両頬をハムスターの様にい大きく頬張り、自分で食べている時より遥かに美味しそうに頬張った。


千棘 「ただのラーメンの麺の筈なのに、なんだかスッゴく美味しい!」


楽 「そういうもんなのかぁ?」


楽は顔では意味がわからないような表情をしながらも、内心ではこんなに嬉しそうに千棘が食べてくれる事がとても嬉しかった。


公園で散歩


楽 「何だかんだで定期デートの頃から、だいたい最後はここでブラブラだよね。」


千棘 「そうね。考えてみたら定番になってたわよね。」


楽 「さて、後は何をすれば……」


小野寺 「アレ?一条君?」


楽 「え?」


凄く聞き覚えのある声に楽は振り返った。

そこには小野寺がいた。


楽 「小野寺?」


千棘 「小咲ちゃん?」


小野寺 「やっぱりだ……2人の影を見たらもしかしたらって思ったんだけど……」


楽 「また妙な偶然だな。」


千棘 「小咲ちゃんはどうしてここに?」


小野寺 「私は料理教室の帰り。今日はカボチャジュースを作ったんだよ。」


楽 「へぇ〜、パティシエになる為には色々大変なんだなぁ」


千棘 「ねぇ、小咲ちゃんは料理が上手くなったの?」


小野寺 「え?あ……うん。少しずつなんだけどね。

作り方を改めつ教わってみると案外簡単にマトモなのが出来たんだ。」


千棘 「今度私も食べてみたいな♪」


小野寺 「うん、是非ね。ところで2人は今日やっぱり、デートなのかな?」


千棘 「え?うん、まあね……」


小野寺 「そっかぁ、じゃあやっぱり私、2人と一緒にいちゃよく無いよね。」


楽 「え?何でだよ小野寺?」


千棘 「そうよ!小咲ちゃんなら全然OKよ!?」


小野寺 「だって、千棘ちゃんと一条君はもうニセモノじゃなくてホンモノの恋人なんでしょ?

だったら2人きりの時間を邪魔しちゃ悪いよ。

それに………」


楽 「それに?」


小野寺 「私、千棘ちゃんが外国に行ってから、ずっと一条君とは2人だけにならない様してたし。」


千棘 「小咲ちゃん。やっぱりそんな風に………」


小野寺 「じゃあ私、家でもお菓子作りの練習しなきゃいけないから、じゃあね!」


スタスタスタ


小野寺はどこかもの寂しそうに去って行った。


千棘 「……………そうだよね。あんたは小咲ちゃんよりも私を選んでくれたんだもんね。

あの時からコレは決まっていた……」


楽 「そうだな………」


千棘 (そうだよ。楽は小咲ちゃんと一緒にいるだけで幸せで仕方なかったのに、こんなワガママな私を選んでくれた………私と2人なら、見たことも無い世界に行けそうでワクワクしそうだからって………こんな私を幸せにする為に、慣れない戦闘まで学びだして、ボロボロになって………)


千棘 (私も楽をドキドキさせてあげなきゃ。)


千棘 「ねぇ楽」


楽 「ん?」


千棘 「ほっぺに何かがついてるわよ。」


楽 「え?マジで?」


千棘 「取ってあげる」


そう言うと千棘は、楽の右頬に自分の顔を近づけた。


チュッ


楽 「え?」


楽の右頬には、何か柔らかい鳥の羽の様な感触がした。

味覚など無いはずのただの頰なのに、どこか甘さすらも感じられた。


千棘 「ふぅ〜出来た。こうやって何度も不意打ち出来た万里花ってホントに凄いわね。」


楽 「千棘………」


千棘 「私は楽を小咲ちゃんより幸せにできる人にならないといけない。

じゃなきゃ小咲ちゃんより私を選んでくれた楽に悪いもん。

まだほっぺにしか出来ないけど、今日はまずは第一歩。

私の唇をあげる!」


楽 (……………)


千棘 「じゃあ私、さきに帰ってるから。

じゃーねー!)


タンタン


そう言うと千棘はスペクトル凡矢理の方に歩いて行った。


楽 (…………………)


楽は自分の右頬を右手で抑えた。


頬にキスされた。そう気付いたのは千棘がもう見えなくなりかけた時だった。


楽 「ええぇぇぇええぇ!」


第10話 完



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