第1巻 第157話 サドウノ
10月4日(水) AM:10:00
京都の町
千棘 「楽ー!次はこのお店入ろーよ!」
楽 「あ…ああ!」
楽と千棘は、京都の町で交際半年記念旅行を満喫していた。
パクッ パクッ
千棘 「んーー。この三色団子、美味しー!」
楽 「お前、ホントに良く食うよな………」
千棘 「ん?楽、アレ見て!」
楽 「ん?」
千棘が指差した先にあったのは、
「京都茶道屋」という看板の茶屋だった。
楽 「茶道屋?お前、あんなんに興味あったのか?」
千棘 「まあね〜〜。
日本の抹茶って、一度飲んで見たかったんだ〜〜。
アメリカには無かったし!」
楽 (結局、食い意地。いや、飲み意地かよ………)
カラン コロン
千棘 「ごめん下さーい!」
千棘は早速、茶道屋に入った。
小咲 「あ、一条君に千棘ちゃん。」
千棘 「って、アレ?」
楽 「小野寺?」
楽と千棘が入ったそのお店には、既(すで)に小咲が入っていた。
千棘 「小咲ちゃんも、このお店に着てたの?」
小咲 「うん。私は前から京都のお茶屋さんに着てみたかったんだー。
本場京都の抹茶の味、春に教えればウチの抹茶味の和菓子の参考になるだろうから。
私は菓子職人(パティシエ)志望だけど。」
楽 「へぇーー、研究熱心だな、小野寺は。
やっぱり、偉いぜ!」
千棘 「さっすが、小咲ちゃん!」
小咲 「別に、そんな大した事じゃ無いよ………」
楽達が入ったその茶道屋は、
完全な日本建築で、あちこちの席で抹茶を沸かす釜と、その前で正座しながら茶道に則った飲み方で茶を飲む客が見られた。
店員A 「お!また、美人さんが来ましたね〜〜。
茶道一回につき、500円になりまーす!」
楽 「はい、お代。」
チャッ
店員A 「まいど〜〜。」
楽 「金は俺が払ってやったから、
楽しんでけよ。」
千棘 「うん。ありがとう、楽!」
小咲 「あ、そうだ。
一条君、千棘ちゃん。
私の茶道、少し見てってよ、
さっき店員さんに習ったんだ。」
楽・千棘 「えっ?」
スリ スリ スリ
ズビーー
千棘 「わぁ〜〜。千棘ちゃん、上手〜〜。」
楽 「おお………」
小咲が、黄緑色の着物姿で茶碗を2〜3回さすりながら、茶の匂いを嗅いでから抹茶を飲む姿は、まさに茶道を嗜む日本人女性と言った感じだった。
楽 (やっぱ小野寺、こういうお淑やかな嗜(たしな)み、似合うな〜〜。)
小咲 「次は、千棘ちゃんもやってみてよ。」
千棘 「う…うん。」
スッ
千棘は茶釜の前の座布団に正座して、
茶道の準備をした。
千棘 (楽は、お淑やかで女の子っぽい女の子が好きなんだ………、私も小咲ちゃんみたいに、頑張らなきゃ!)
スリ スリ クンクンッ
ズビーー
楽 ドキッ
楽はまたしても、千棘の仕草にドキッとした。
確かに、小咲の日本人女性らしい茶道に比べれば、やや下手なものだったが、
そこまで悪い作法でも無く、
あのガサツだった千棘が、
自分の為に努力しているのが、
ひしひしと伝わって来た。
千棘 「えへへ………、どうだった楽?
やっぱり私、小咲ちゃんより全然下手だよね………」
楽 「いや、別にそれでもいいんじゃねーのか?」
千棘 「え?」
楽 「昨日の紅葉(もみじ)狩りの時も言っただろ?
いきなりはムリなら、少しずつ女の子らしく、お淑やかに変わって行けば良いって、
それに………俺はお前の、そういう飾らない所や、頑張り屋な所が大好きだぞ。」
千棘 「ら…楽………」
ウルウル………
小咲 「良かったね、千棘ちゃん。」
ニコッ
店員A 「あのー、お客さん型、
茶道が気に入ったなら、
茶釜一式、買って行きませんか?」
楽・千棘 「え?」
店員A 「ウチの店は、茶道一式セットの、
茶釜と座布団と茶碗を、格安の2,000円で販売してるんですよ。
茶道をウチの店で好きになったお客さんが、家でも出来る様に。
どうです?」
楽 「是非、買います!」
ピッ
楽は店員に千円札を2枚差し出した
店員 「まいど〜〜。」
千棘 「ありがと、楽!
私、凡矢理に帰ってからも、
たくさん茶道を練習して、あんたに釣り合う女の子に、絶対なってみせるからね!」
第1巻 第157話 完
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