第1巻 第12話 ダイガク
チュンチュン
月曜日 朝7時
千棘 「スー……スー…」
楽 「おい千棘!朝だぞ起きろ!」
千棘 「うーん……」
楽 「遅れちまう……」
千棘 「あ、楽おはよ〜」
楽 「ああ、おはよ……じゃねーよ!、さっさと凡矢理駅に行くぞ!」
AM:7:30 凡矢理駅
千棘 「ゴメン〜昨日あの寝方に慣れるのに時間かかって中々寝付けなかったの」
楽 「ったく……」
楽 (まあでも、コイツが無事に眠れて良かったか。)
宮本 「あ、一条君と千棘ちゃん。」
千棘 「るりちゃん!」
楽 「宮本」
2人が振り返るとそこにはるりが立っていた。
楽 「アレ?宮本、集は?お前ら俺らと同じでマンションで同棲してるんだよな?」
宮本 「集君は午後から今日はの講義よ。2人は今日は一限からなの?」
楽 「あ…いや俺は今日講義の時間割を決めに行く日で講義自体は明日からだ。」
千棘 「私はもう今日から初授業よ。基本の裁縫から。」
宮本 「そうなの」
千棘 「でも、舞子君とるりちゃんが付き合い出したって、楽からメールで聞いた時はビックリしちゃったわ。」
宮本 「まあ、そうでしょうね。
あなた達と同じで私が本当に気持ちに気付いたのは高3の夏だったから。」
宮本 「それはそうと一条君、千棘ちゃんを守る為の戦闘の訓練とやらは進んでるの?」
楽 「え?ああ、まだ一回鶫に基礎を教わったきりだ。」
楽 (ヤクザやギャングと無関係の宮本に星神やレオンの事は話さない方がいいな………)
宮本 「そう…とにかく、必死に頑張ってよね。」
楽 「え?」
宮本 「だってあなたは小咲を振ってまで千棘ちゃんを選んだのよね?千棘ちゃんを幸せにしなきゃ、私も許さないわよ。」
楽 「分かってるって………」
凡矢理駅から東駅行きの電車の中
ガタン…ゴトン
千棘 「ねぇ……楽」
楽 「え?」
千棘 「また髪の毛撫でてよ」
楽 「ハァ?」
千棘 「昨日はしてくれたじゃない。」
楽 「だってあん時は2人っきりだったから……」
千棘 「そんな事私は気にしないわよ?」
宮本 「そうよ一条君。もう本物の彼女なのにそんな事も出来ないの?」
楽 「………分かったよ。」
ポンッ
楽は千棘の頭に手を置いた。
ナデナデ
千棘 「ん〜〜」
ギュッ
楽 「わわっ!おい千棘!」
千棘は楽に抱きついた。顔を真っ赤にして嬉しそうに。
AM:8:00 東駅
千棘 「じゃーね、るりちゃん!」
るり 「うん、凡矢理外大は向こうだから。」
楽と千棘はるりを見送った。
楽 「なぁ千棘、そのLABって専門は何処なんだ?」
千棘 「ああ、あのタワーよ。」
スッ
千棘は東駅から1km弱離れた巨大な螺旋状のタワーを指差した。
楽 「アレかぁ?バカでけーな」
千棘 「うん。学費も結構食うし……あ、まあ、私には大した問題じゃないんだけどね。」
楽 「まあお前、ギャングのお嬢様だからな。」
楽 「じゃあ、凡矢理大は向こうだから、そろそろ俺行くな。」
千棘 「あ、うん。学校終わったらメールして、一緒に帰ろー。」
楽 「あ、おうよ!」
楽は千棘と繋いでいた手を離して、凡矢理大に向かった。
AM:9:00 凡矢理大学
凡矢理大学 ナゴヤドーム7個分の面積がある、7学部23学科からなる総合大学。
生徒数は12,000人以上でこの中部地方で第2位のマンモス大学だ。
講義選択室
楽 「うーむ、公務員を目指すからにはやっぱり行政と法律は必須だよな〜。あと取っておきたいのは………」
20分後
楽 「アレ?えーっと、時間割作った後は何処に出しゃあいいんだ?」
? 「あ、時間割は教務課に提出すればいいよ。」
楽 「あ、どうも。ありがと……」
紅介 「ん?君は………」
楽 「あ!お前入学式ん時の!」
紅介 (!…………………星の光が安定して体の中でおそらく星獣化してる。そうか…あの後「覚醒」したのか)
紅介 「へぇ……どうやら「覚醒」した様だね。」
楽 「お前…星神の事知ってたのか!?」
紅介 「まあね。つーか俺もマフィアの星神だし。」
楽 「やっぱり………あの口ぶり、一般人にしてはおかしいと思ったんだ!」
楽 (いや………蒼也と初めて会った時も思ったが、こいつ大分蒼也と……)
楽は紅介の顔を見れば見るほど、茶髪以外は蒼也と似ているのに気付く。
楽 「あ!そういやああいつ双子の兄も星神だって……」
紅介 「ああ、やっぱり蒼也に会ったんだね。」
楽 「じゃあ、やっぱりお前が蒼也の兄貴なのか?」
紅介 「そうだよ。まあ任務でアイツも日本に来てるのは知ってたしね。」
楽 「任務?俺の教育係の事か?」
紅介 「いや、ソレはあいつがビーハイブから与えられた2つの任務の内の一つでしかない。」
楽 「え?じゃあもう一つは?」
紅介 「ああ……それはね、俺の…」
ドゴンッ!
楽 「な!?」
紅介 「!」
火事だーー、噴水近くの丘で、
え?でも、あそこは火なんてどこにも……
でも草が大量に燃えてるぞ?
楽と紅介の星匣
「ピカー!」
楽 「!星匣が赤く光ってる!?」
紅介 「へぇ……火星の星の光がこの大学に集まって来てたからもしかしてとは思ってたけど……今日は思わぬアタリが来た!」
紅介 「ダッ!」
楽 「あ!おい、待て!」
レオン 「楽、ボクたちも行くよ!」
楽 「レオン?いつの間に?」
レオン 「ボクを呼ぶ時の言霊を教えておくよ。
「九愛太陽 レオン」こう呼ぶとボクは星匣から出てくるよ。」
楽 「わ…わかった!とにかく
あの紅介って奴を追うぞ!」
ダダッ
凡矢理大学14号館前 丘
ニャー
楽 「あっ!あいつか?」
楽の目の前には赤い光を帯びた燃えた猫がいた
レオン 「火星ネコだ。火星の星の光はは怒りの感情で増幅するんだ。
アイツは若者の怒りで発現するから学校に出やすいんだ!」
楽 「分かった!行くぞ。
九愛太陽 レオン」
レオン 「ガォォッ」
レオンが星匣から出てきた。この前より一回りだけ星の光を多く纏っている。
楽 「よし…行くぞ……」
紅介 「待った。」
楽 「あ!お前….…」
紅介 「最近、星の光をあまり与えて無くてね、コイツは貰いたいんだ。」
楽 「待てよ!お前まだ俺の敵か味方かも………」
紅介 「呪禁冥王 リズ」
シュワー
紅介の星匣から金色の光と、頭から4本の触手が生えた金色のリスが出てきた。
リズ 「オヨビデスカ?」
楽 「こ…紅介、それがお前の星獣か?」
紅介 「そうだよ。結構珍しい冥王属性のね。
まあ、見てなよ。」
シュッ
カシャン
「鞭(ムチ)の札(フダ)」
シュンッ
紅介の左手に金色の植物のツタの様なムチが現れた
紅介 「さてと、」
火星ネコ 「ニャァァー!」
火星ネコは紅介に牙と爪を向けて来た。
シュン
火星ネコ 「ギィャァァ〜」
紅介が鞭を振るうと、火星ネコは苦しみ出した。
楽 「何だよアレ?ムチの先端が少しだけ触れただけでネコが苦しんでる?」
レオン 「それが冥王星の星の光の特徴だよ。」
楽 「特徴?」
レオン 「うん。星の光はその光を放つ惑星ごとに特徴があるけど、冥王星の星の光の特徴は「呪術」」
楽 「呪術?」
レオン 「うん。もちろん文字通り他の星の獣や人間に呪いや毒をかけて、時に心まで操る。
憎しみや過去に強いトラウマを持つ人間が集めやすい、11属性の中で一番忌まわしい光と言われている属性だよ。」
楽 「そんな力がアイツに……」
火星ネコ 「ニャオォー!」
火星ネコは混乱して無差別に炎を吐き出した
楽 「うっ…うわー!」
紅介 「ヤバ、ネコ科の星獣は混乱すると、見境なくなるんだった!毒は相性悪かった!」
楽 「ヤベ……」
レオン 「楽、盾(タテ)の札(フダ)だよ!」
楽 「は、盾ぇ?コレか?」
「盾(タテ)の札(フダ)」
シュンッ
レオンの毛皮の生えた背中を模した盾が楽の左手に現れた
楽 「スゲェ!あんなに大きな炎で火傷一つ付いてない!」
レオン 「星力防壁だからね。あの程度の星の光のエネルギーは無効化出来る。
ただし物体に対する防御力は薄いよ。」
楽 「そうなのかぁ?色々あるんだな星札ってのは。」
紅介 「ぐっ!」
楽 「!おい紅介!」
紅介は火星ネコの火炎に足を焼かれ、立つのがやっとになった。
紅介 「暴走しやすいタイプの火星属性だって事、見落としてたよ……」
火星ネコ 「ニャオーォ!」
火星ネコが楽と紅介に向かって走りかかって来た。
楽 「うわっ!他に何か星札は……」
楽 「後はコレくらいか……」
カシャンッ
「籠手(コテ)の札(フダ)」
シュンッ
楽の右手にレオンの頭を模した籠手の様なものが現れた。
楽 「何だコレ?どうやって使えば?」
レオン 「楽!ソレを火星ネコに向けて!」
楽 「こ…こうか?」
楽は火星ネコに右手の籠手を向けた。
ゴォォォ〜〜!
火星ネコ 「ギャァァァァ!」
籠手の口から橙色の炎が放射され、火星ネコの体を纏っていた赤い炎を打ち消し体ごと焼いた。
楽 「スゲー………」
紅介 「なるほど…合格!」
楽 「え?」
楽が振り返ると紅介は、余裕の表情で立っていた。
楽 「紅介、お前立てなかった筈じゃあ……?」
紅介 「もう君の力を試すための演技はいいね。」
紅介 「リズ、終わらせるよ!」
リズ 「カシコマリマシタ」
カシャンッ
「終(ツイ)の札(フダ)」
リズ 「ウエニマイリマス」
リズはそう言うと触手を伸ばし、紅介の頭上に移動して、触手で紅介を包んでドリル状になった。
シュンッ
次の瞬間、ドリル状になったリズと紅介は火星ネコの上に移動して、貫いた。
火星ネコ 「ギィャァー!!」
火星ネコは爆発し、後には赤い星の光のエネルギーが残った。
紅介 「エネルギーは君の星獣にやるよ。」
楽 「え?いいのか?」
紅介 「君の力をテストするのが今日の目的だったからね。
それは合格祝いだよ。」
楽 「よくわかんねーけど、貰っとくよ。
レオン。」
レオン 「ガォーン」
シュンッ
レオンは赤い星の光を吸収した。
紅介 「じゃあまた、今度は弟も含めて話せたらいいね。」
楽 「あ、ま……」
「移(ウツリ)の札(フダ)」
紅介は呼び止められる間も無く、星札で一瞬にしていなくなった。
楽 「….………………」
楽 「蒼也の兄………あいつは結局、敵なのか味方なのか?」
第12話 完
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