第1巻 第21話 タスケテ
レオン 「ところで、千棘姉大丈夫?」
千棘 「うん、へーき。まだ腰は抜けたままだけど気持ちは大分落ち着いて来たわ。」
楽 「良かった、しっかし集の奴、まだ入学して1ヶ月なのにもう演劇部の奴らとパイプを持ってるとは………あいつの人脈の選手層の厚さは相変わらずだぜ。」
千棘 「アハハ………ホントそーよね……………ん?」
グィッ
千棘 「え?」
千棘は何かに足を引っ張られて、どんどん得体の知れない方向に行ってしまった。
千棘 「ほぎゃあぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!?」
楽 「うわっ!?おい、千棘!?」
ズルズルズルズルズル…………………
そのまま千棘は楽とレオンの目が届かなくなる所まで、引っ張られて行ってしまった。
集・るりペア
宮本 「は?足ひっかけトラップ?」
集 「うん。ウチの演劇部の皆んなが舞台上の無動作移動で今練習してる技術でねぇ。
ランダムに足を紐の先に作った輪っかに引っ掛けて引きずってくんだってさ。」
宮本 「それはまた……お化け屋敷みたいな仕掛けねぇ。」
その頃………千棘は
千棘 「ふんぎょわぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜。」
ガジッ
演劇部員D 「え?」
千棘は右足にかかった紐を恐怖と動揺の余りから左足で切ってしまった。
演劇部員D 「わわっ」
千棘 「きゃあっ!?」
千棘はいきなりスピードから解放された反動で、岩の隙間に落ちて挟まれてしまった。
千棘 「ちょっ!?何よココ!?ういしょっ!ういしょっ……………」
千棘は必死にその岩と岩の隙間から出ようとしたが、ゆうに2mはある大岩でビクともしない。
しかも、千棘の怪力なら壊せたかも知れないが、腕を振るスペースが無かったので力を入れれ無い。
千棘 「やだ………怖い……怖いよぉ………」
元々の曇り空と森の葉に日光が遮られた事により弊害した夜に近い暗さのせいで、千棘は暗所・閉所恐怖症で怯えきっていた。
千棘 (うう………うう………)
千棘 (そういえば、ちょうど3年前の林間学校でもこんな事あったなぁ………あの時は楽が助けに来てくれて、最初に下の名前で呼び合う様になったっけ………)
千棘 (でも、この状況はむしろ5歳の頃のアレの方に似てる………楽が岩の間に挟まった私を助けてくれた………)
千棘 (助けて………また……助けて……楽………)
楽 「おいレオン、ホントに溶けはするけど、千棘が燃えたりしねーんだよな?」
レオン 「うん。星の光は密度の濃いエネルギーだから熱は帯びるけど、炎みたいに燃える特性があるのは火星の光だけだよ。
だから大丈夫。」
千棘 「え?この声……….」
カシャンッ
「籠手の札(コテノフダ)」
ボウッ
途端に、千棘を挟んでいた岩が溶けて崩れ出した。
楽 「ふー、良かった。無事か千棘?」
千棘 「楽、レオ君………」
千棘の前側の岩が溶けた先には、レオンの頭を模した籠手を左手にはめた楽とレオンが立っていた。
ギュッ
楽 「わわっ!?」
千棘 「怖かった……怖かったよぉ〜〜〜…………」
楽 「……………………」
スッ ナデナデ
楽は抱きついて来た千棘の髪を優しく撫でた
それから約10分後、帰りの下の山道
千棘 「にしても、あんな札もあったんだね。
青いウミヘビと戦った時には剣しか見なかったもん。」
楽 「ああ、アレを使ったのはまだ2回目だし、大学で一度星獣が出た時に使っただけだったんだがな、
上手く行って良かったぜ。」
千棘 (楽は覚えてるかなぁ、あの13年前の夏に同じ様な事があったの)
楽 「お!着いたぞ、千棘。」
千棘 「あ!ホントだ………ん?」
ドンッ ドンッ
鶫 「またんかキサマー!!」
集 「かんにんや〜〜〜(-。-;」
鶫が集を銃で撃ちながら追いかけていた。
高校時代から見慣れた光景だ。
鶫 「一条楽から電話で聞いたぞ!お嬢が岩に挟まって怖い目に遭ったそうじゃないか!
貴様があんな企画など念入りに建てるからだ〜〜〜!!」
集 「だってあんな展開になるなんて夢にも〜〜あだだっ!」
楽 「……………久々に見たなこの光景。」
千棘 「ちょっ、つぐみストーップ!私も無事だったし舞子君にも悪気はなかったんだから〜〜〜」
第21話 完
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