2019-06-01 22:04:22 更新

2017年10月23日(月) PM:15:00


凡矢理 カカオ園


小咲 「へーー、凡矢理にカカオ園なんて、

あったんだね。」


弥柳 「ここは余り、一般には知られてないからな。

俺も先日、iPhoneでネットで調べて始めて知ったよ。

基本はチョコレートを作ってる製菓会社(せいかがいしゃ)に、カカオを売ってるみたいだが、

こうやって一般の人でも金を払えばカカオを取れるみたいだ。」


小咲 「でも、弥柳くんって、

やっぱりお菓子作りに熱心だよね。

チョコレートの材料の為に、

わざわざこんな所まで調べるなんて。」


弥柳 「何言ってるんだ?

菓子職人(パティシエ)を目指す者なら、

これくらい当たり前だろ?」


小咲 「アハハ………

そうだね。」



そして、小咲と蓮のカカオ狩りは始まり………。



小咲 「弥柳くん!

たくさん取れたよーー。」


弥柳 「ちょっと見せてくれ、小野寺さん。」


小咲 「え?あ、はい。

どうぞ………。」


スッ



小咲は蓮に、自分が獲ってきたカカオの籠(かご)を見せた。



蓮 「うーん………。

確かに、数自体は獲れてるけど、

カカオの質(しつ)まで見れてないな。」


小咲 「え?

弥柳君、イチゴだけじゃなくて、

カカオの質(しつ)まで分かるんですか?」


蓮 「ああ、俺はすでに何度かカカオ狩りに来てるから、

流石に完璧では無いけど、

カカオの実を一目見れば、

大体、チョコレートにした時に、

バランス良く甘味と苦味が混ざった味のチョコレートが出来るか、一目見れば分かる。」


小咲 「へーー、すごーい!」


弥柳 「別にすごくなんか無いよ。

別に菓子職人(パティシエ)だけじゃなくて、

料理人なら自分の料理の腕を磨くだけじゃ無くて、

食材を自分で調達したり、

いい食材を見る目を自分で養うのも立派な鍛錬で、仕事の1つだ。

違う?」


小咲 「あ、はい。

そうですね………。」


蓮 「よし、じゃあカカオ狩りを再開するよ。」


小咲 「はい!」



そして………



蓮 「小野寺さん、そっちになってるカカオは、

俺の見たところ、甘味と苦味のバランスがいい。

そっちから5〜6個獲りなよ。」


小咲 「はい!」


小咲 (お菓子を作ってる時や、食材の品定めをしてる時の弥柳君って、本当に真剣な目つきしてるなぁ………。」



そして………。



蓮 「ふーー、たくさん獲れたなー!」


小咲 「うん!これだけあれば、

たくさんチョコレートが作れそうだね!」


蓮 「その………ありがとうね、小野寺さん。

大学祭の店やケーキ作りだけじゃ無くて、

その食材調達にまで手伝って貰って。」


小咲 「全然いいですよ。

私も弥柳君と一緒にお店を出すからには、

全面的に協力しないとダメですしね。

それに………。」


蓮 「それに?」


小咲 「こんなに泥まみれになって、

友達と一緒にカカオを獲るなんて、

童心に帰ってやれて、

スッゴく楽しかった!」



小咲の言う通り、小咲と蓮の服と体は、

泥まみれだった。



ニコッ


ドキッ



小咲の満面の天使の様な笑みに、

蓮はドキッとした。



蓮 (今の小野寺さん、スッゲー可愛かった………。

そういえば俺、昔から菓子職人(パティシエ)になる為の菓子作りの練習ばっかで、

女の子とこんな風に楽しく作業したの、

始めてだな………。)


小咲 (そういえば私、

男の子とこんな風に2人で無邪気に何かに熱中したの、初めてかもしれない………。

一条君が相手だと、どこか緊張しちゃうから………。)



ドキドキ………


ドキドキ………



弥柳 「と、とにかく!

このカカオは俺がここの職員さんにお金を払って買っておいて、

俺の家に保存しておくから、

今日はありがとうね、小野寺さん!」


小咲 「はい!

こちらこそ、今日はありがとうございました!」


第1巻 第228話 完


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