艦娘「握手、しませんか」
描写を一切しない自分。地の文の練習用短編
私はとある港、元々は鎮守府があった場所で彼を待っていた。
時期は関係なく、きっと彼は何時で会っても来てくれたに違いない。と、勝手に思っている。
約束の時間、それの随分前に到着していたのは、私の期待の裏返しだったのだろうか。とにかく、早く会いたかった。
ただ、随分前に来たのは良かったが、時間を過ぎてもなかなか現れなかった事には少し驚く。
しばらくして、口元に髭を蓄え、顔には幾らかの皺が刻まれた、初老の男性が現れる。遠目に見た時は若々しく、その変化をいざ近くで見ると歳月を感じさせた。
人違いか、軍服と重ねられた階級章を見ればそうではない事は確かだった。それ程までの変化だった。
「 お久しぶりです 」
私は嬉しそうに、いや、実際嬉しかったのだが、驚きの感情がそれを上回っていたのだと思う。相手は照れ臭そうに、しかし慣れているようだった。
「 会えて嬉しい 」
また驚いてしまった、以前の声は、聞くたびに身が引き締まる様な、如何にも軍人らしい凛々しいモノであった。それとはかけ離れていたので、当時の癖で身構えていた分、尚更。
初老の男性、その声にかつての面影は無かった。弱々しく懇篤であったのだ。話す言葉に困ったのか、少し間を置いて。
「 たまに他の娘も来るんだ 」
しかし、他の娘という言葉に引っかかった。今日は私が来たのに、元艦娘は一括と捉えているのだろうか。私はムッとしながら。
「 どういう意味ですか 」
男性は気が付いた様に慌てて、「すまない」と付け足した。ただ単に不器用なだけなのだ。歳月は、彼自身を変えなかったことに少し安堵しながら。
「 握手、しませんか 」
「 握手だと? 」
如何にも軍人、横にも縦にも広く、男性らしい体格をした青年は、不満足そうに。顔をしかめて、目の前の齢二十辺りの小娘に。
「 はい、握手です 」
一方の娘は、全く恐れずにそう続けた。男性の方がその気になれば、折ってしまいそうな華奢な腕を突き出した。男は少し迷って、ため息を一つ。
「 これで満足か 」
心底嫌そうに、嫌味も含めているのか、男の握る手に力が入る。しかし、娘の方は顔色一つ変えずに返した。
「 はい。満足です 」
手を離す直前、娘は軽く力を込める。男は、驚いた様に、そして手を引っ込めた。表情を少し顰めながら。
「 痛かったですか 」
意地悪そうに娘が問いた。
「 ちっとも 」
手を摩りながら男は答える。
「 握手か 」
初老の男性、身体は歳月を経て皺を刻み、縮み、幾つかの古傷が軍人であった、或いは今も軍人であることを彷彿とさせる。
「 はい。握手です 」
一方の娘は、そう続けた。男の方が、その気になれば折られてしまいそうな、華奢な腕を突き出した。娘は少し驚いて、呼吸を一つ。
「 これで満足です 」
心底嬉しそうに、しかし何処か寂しそうに、娘の握る手に力が入る。そして、男の方は顔色一つ変えずに返した
「 そうか、満足か 」
手を離す直前、男は軽く力を込める。娘は、驚いた様に、そして手を引っ込めた。表情を少し綻ばせながら
「 痛かったか? 」
意地悪そうに男が問いた
「 ちっとも 」
手を摩りながら娘は答える
「 まだまだ現役だ 」
にやり、と男がそう付け足せば。娘の方は何処か嬉しそうだった
同窓会で、恩師が年老いているのを見て、歳月を感じました
実話...ですかね?
分からないけど人間である提督と機械である艦娘の歳の差を見るに70年は経ってる