「ある艦娘との無人島生活」
嵐で船が難破して主人公が島に流れ着きそして、主人公の前に現れたのは・・・
「起きて・・・起きてよ。」
「う、う~ん・・・はっ!」
誰かに呼ばれ、目を覚ます。
「・・・ここはどこだ?」
辺りを見回すが、全く身に覚えのない場所である、
「ここは無人島・・・人里からかなり離れた所に位置する島さ。」
「・・・・・・」
主人公が振り向くと、そこには1人の女の子が立っていて、
「まぁ、ここらじゃ嵐が頻繁に起きる海域だからよく船が難破するんだ・・・お兄さんも船に乗っていたんでしょ?
可哀そうだけど、運が悪いとしか言いようが無いね。」
そう言って、女の子は立ち去ろうとする。
「ちょっと待て、どこへ行くんだ?」
「どこへって? これから狩りをするんだよ。 この島での生活は自給自足、こんな所で時間を無駄にする余裕は無いから。」
不愛想に説明した後、そのまま歩いて行く。
「何でついてくるの?」
女の子は睨んでくる。
「いや、オレはこの島に詳しくはないし、自給自足と言ったって何から始めればいいかも分からないから。」
「・・・・・・」
「君の生活に支障はきたさないから・・・頼むよ、一緒に行かせてくれ。」
主人公の願いに、
「ふん、まぁいいけど。 でも、食料や水は自分で探して・・・僕は自分の分を手に入れるだけで精一杯だから!」
「・・・分かった。」
こうして、主人公と女の事の無人島の生活が始まる。
・・・・・・
「ここが僕が住んでいる場所だよ。」
案内された場所は、地面と日除けのために敷かれたシートと簡易に作った寝床だけである。
「今日の成果は・・・ヤシの実と食べられそうな木の実かな。」
僅かに取れた食料をナイフで切って行く。
「食べる物は自分で取って・・・って言ったけど、初めての人間にそんな事言うのは申し訳ないし。
今日だけ特別に半分、分けて上げる。」
親切にも、女の子は取れた食料の半分を譲ってくれた。
「ありがとう、助かるよ。」
半分を頂き、女の子と一緒に食事を摂る主人公。
「質問だけど、どうして君はこの島に住んでいるんだ? 君も船で難破して、ここで助けを待ちながら生活しているのか?」
主人公の質問に、
「・・・僕が自分の意思でこの島に来たんだ。」
「えっ、どう言う意味?」
「・・・君にそんな事を話す必要は無いよ。」
女の子は急に不機嫌になり、会話は無くなる。
「と、とにかく、明日からは自分で食料を探してね! ・・・シートは余分に1つあるから、特別に使っていいから。」
不愛想の割に、気遣いのいい女の子。
翌日、
「・・・・・・」
主人公が目覚めると、女の子の姿が無い。
「早いな・・・もう食料を探しに行ったのか。」
主人公も起きて伸びをし、食料探しに出る。
「さてと、何か食べられそうな物は・・・と。」
主人公は歩きながら食べられそうな物を探す。
「おっ、木の上にハチの巣が・・・しかも大きい。 上手くやれば蜂蜜が取れるかも!」
そう思い、ポケットからライターに、自身の服を千切り、その辺に落ちていた木を拾って簡易松明を作成。
それをハチの巣の周囲に何度もあおって行く。
「いい調子だ・・・!? いてて、蜂に刺された。」
主人公は苦戦しながらも、
「よし、蜂はいなくなった・・・では失敬しよう。」
石を投げてハチの巣を破壊、落下した巣の中を見ると、
「おっ・・・たくさんの幼虫に蜜が乗った巣がいくつか! 食料としては十分だな。」
袋に巣を入れて次なる食料を探し始める。
「思い出すなぁ・・・昔、サバイバルで1人山に何年か籠っていた頃を。」
主人公は子供時代から貧乏であった。
米や肉など食べた記憶はほとんど無く、食べる物と言えば野草やキノコなどが主流である。
しかし、当の本人は貧乏とは思っておらずむしろ、”食べる物があるのだから、十分に生きていける”と常に前向きであった。
だから、この無人島での生活すら、全く苦とは思っていない。
「海・・・銛とかあれば、魚を狙えるんだけどなぁ~。」
今持っているのは、ハチの巣を入れたビニール袋に、ライターとナイフだけ。
「・・・! そうだ、この蜂の巣をエサにして・・・」
閃くとすぐに行動を起こす主人公。
夕方になり、当たりは暗くなる。
「これ以上の探索は止めておこう、続きはまた明日にするか。」
そう思い、元来た道を戻る主人公。
・・・・・・
拠点に戻ると、既に女の子は戻って来ており、昨日と同じナイフで実を小分けにしていた。
「何か取れた? ・・・って何、その膨らんだ袋? 袋の中に何が入っているの?」
袋がパンパンになる程膨らんでいる光景に、女の子は驚く。
「ああ、結構獲得できたよ。」
そう言って、主人公は袋から今日獲得した食料を出して行く。
「・・・・・・」
女の子はそれを見て驚き、言葉が出ない。
「蜂蜜がたくさん乗ったハチの巣、小魚数匹に・・・高台にあった食用キノコ、と。」
明らかに女の子が獲得した量の数倍の食料を手に入れていた。
「・・・よ、良かったね。 それだけあれば数日間は生活できるね。 うん、良かったじゃん。」
すぐに目を逸らして自分の食料を用意する。
「オレ1人では食べきれないから、一緒に食べよう。」
主人公から出た予想外の言葉、
「えっ、何で? 僕は欲しいなんて言ってないし、それは君の成果であって恵んでもらう筋合いなんて・・・」
主人公の言葉に困惑する、
「昨日君は自分の食料の半分を初対面のオレに分けてくれた、ならオレも君に分ける・・・それだけだよ?」
「・・・・・・」
主人公の厚意に抵抗しつつも、
「じゃ、じゃあ・・・その蜂蜜を少し・・・はむぅ。」
女の子がハチの巣を口にすると、口から蜜が溢れてきて、
「あ、甘い・・・とっても甘い!」
女の子は夢中で食べ続ける。
「遠慮しなくていいぞ、まだまだいっぱいあるから腹いっぱい食べな!」
そう言って、主人公は小魚を捌き、火で焙り始める。
「?」
主人公が見た光景・・・蜂蜜を頬張って泣いている女の子の姿が、
「ぐすっ、ううっ・・・」
その姿を見て主人公は、
「何だ、泣く程美味いか? そうかそうか。」
と言いつつ、
「いつからここにいるのか知らないけど、何か訳がありそうだな。」
と心に思う主人公。
翌朝、
「さてと、今日も頑張って食料を探さないと。」
女の子は道具を持って、拠点から離れようとした時、
「オレも一緒に行くよ。」
主人公も目が覚めていた、
「一緒に? どうして?」
主人公の言葉に首を傾げる。
「そのままの意味さ、君は木の実をよく手に入れる・・・それはつまり、”木登りが得意”って事だろ?」
「・・・・・・」
「オレは木登りは出来ないが、サバイバルに関しては多少の知識がある。だから一緒に行動すれば
食料探しも楽になるんじゃないかって。」
「・・・・・・」
「どうかな、君が良ければ一緒に行動しないか? 1人で出来ない作業も2人なら出来る、決して悪い話では
無いと思うけど?」
主人公の提案に、
「・・・確かに、そうだね。」
女の子は考えた後、
「じゃあ一緒に行動してみよう、君のそのサバイバル知識、拝見させてもらうよ。」
「そう来なくちゃ、お前のその身軽さも頼りにしてるよ!」
2人はこの日から一緒に行動する事になった。
主人公の判断は正しかった、
2人での連携で1人では難しかった作業が格段に楽になった。
主人公のサバイバル知識は女の子に驚きと更なる知識を与え、
女の子の身軽さを見て、身体能力の高さに驚かされた主人公。
次第に打ち解け、2人の間に自然と笑顔が出るようになった。
何日か一緒に生活する内に、会話も起きて彼女の素性の一部が明らかになる。
彼女は1年前からこの島で生活するようになった、
元はある施設で住んでいたらしいが、何故この島に来たのかは教えてくれなかった。
主人公と同じ船で渡っている最中に、難破して島に流れ着いたのだろうか、もしくは最初に彼女が言ったように、
何かしらの事情があってこの島に移り住んだ・・・いや、”何かから逃げてきた” のだろうか?
一緒に生活を続けて1週間が経つ頃、彼女との生活は急に幕を閉じる。
本来辿り着く予定の目的地に主人公が現れないため、上官が緊急で捜索に乗り出してくれていたようだ。
幸いにも、救護班が乗った船が島を横切り、主人公は狼煙を上げた結果、無事に救助された。
「無事で良かったです! さぁ乗って、上官が待っておられますよ!」
すぐに担架に運ばれ、船に乗せられる主人公。
「待ってくれ、まだ島に女の子がいるんだ!」
必死に説明するも、船が浅瀬に着いた時には彼女の姿はいなくなっていて、
「女の子? 貴方以外に見かけませんでしたよ。」
そう言って、主人公の言い分を無視して船を発進させる。
「待ってくれ、本当なんだ! まだ島には生存者が!!」
主人公の訴えも空しく、島から次第に離れてしまう船。
「・・・さようなら、お兄さん。」
木の陰で静かに見送る女の子の姿があった。
・・・・・・
・・・
・
主人公が連れて行かれた場所は・・・鎮守府。
鎮守府内では、主人公の上官であろう人間が待機していて、
「無事だったか! 一向に姿を見せないから何事かと思ったぞ!」
主人公はこの鎮守府に新米提督として着任する予定の人間だった。
担架に寝かされた状態で上官に謝罪し、道中船が難破した経緯を説明する主人公。
「そうか、それは不運だったな・・・しかし、お主は運がいい! きっと神がお主を生かしてくれたのだな。」
「・・・・・・」
主人公は何も答えない。
「島にいた女の子が助けてくれた」とは言わなかった・・・いや、言わない方がいいと無意識に判断したのだ。
「もう良い、今日はゆっくり休んで、明日執務室に来るように!」
「・・・分かりました。」
報告が終わり、主人公は休憩所へ搬送される。
・・・・・・
主人公が鎮守府に運ばれ、用意された休憩所で療養された後、
「・・・大分体が動くようになった、少し鎮守府内でも見回るか。」
そう言って、1人で立ち上がると部屋から出る。
難破して無人島で生活を余儀なくされた物の、食料は十分にあったし会話する相手もいた。
外傷が目立ったが、命には別条はなく主人公は夜の内に完治に近い状態にまで回復していた。
「もう深夜か・・・皆寝静まっているだろうな。」
それでも、回って見る。 食堂や艦娘たちが通る廊下に皆の部屋、そして浴場も見て回る。
「明日からオレは正式にこの鎮守府の提督として着任するんだなぁ。」
主人公は明日に向けて意気込みを掛けるも、
「あの子は・・・島で元気にやっているだろうか? それ以上に、あの子は一体誰なんだ?」
そう思っていると、廊下の掲示板に貼り出されている1枚の報告書に目が行き、
「・・・これは!」
主人公はその内容を見て驚く。
翌日、
「不慮の事故により、着任が遅れましたがこれより私はこの鎮守府で、精一杯に活躍していく所存です!」
改めて上官に敬礼、自身の決意を伝える、
「うむ! では、今日からお主の活躍を期待する!!」
こうして主人公は晴れてこの鎮守府の提督として就任する。
・・・・・・
主人公が鎮守府に着任して1か月が経過、
「あの子はまだこの島にいるのだろうか。」
主人公は前に流れ着いた島に再び赴いていた。
「? これは・・・誰かの墓か?」
流れ着いた時には気づかなかったが、海辺に土で盛られ木の角材が刺さった墓らしき物が複数ある、
「・・・まずは先にあの子を見つけよう。」
そう思って、主人公は森の中に入って行く。
「・・・・・・」
1か月前の事を思い出しながら、彼女がいるであろう拠点へと歩いて行く。
「・・・!」
そこには、寝床の上で取ったであろう木の実を捌いている女の子の姿が、
「! 何で? どうしてお兄さんがここに?」
女の子は主人公を見て驚き、
「ひ、久しぶり・・・時雨。」
主人公は彼女の事を”時雨”と呼んだ。
「・・・・・・」
”時雨”と呼ばれた女の子は、「ふぅ~」っとため息をつき、
「僕を知ってるって事は、僕が何者で何でこの島で生活しているのかも全て分かってるんだよね?」
「・・・・・・」
「上官に僕を捕縛しろと命令を受けた? ・・・いいよ、僕は抵抗する気は無いから、
さっさと捕縛して僕を鎮守府に連れて行きなよ。」
そう言って、時雨は主人公の前に立ち、両手を出す。
「いや、オレは時雨を捕縛するつもりで来たんじゃない・・・オレの質問に答えて欲しい。」
「・・・・・・」
「海辺にあった墓は一体誰の? 時雨の仲間だった艦娘か?」
「・・・・・・」
「鎮守府の掲示板には”駆逐艦時雨、任務を放棄して今も逃亡中”と書かれていたけど、それは本当なのか?」
「・・・・・・」
「オレは時雨がそんな事をする艦娘だと到底思えない、だから教えてくれ! 時雨はどうしてこの島に住んでいるんだ?
そしてあの墓の下にいるのは・・・時雨の仲間なのか?」
「・・・・・・」
時雨は沈黙を続けていたが、
「そう、あの墓は僕と同じ編成にいた仲間の墓だよ。」
時雨は重い口を開く。
・・・・・・
1年前、
時雨を含む駆逐艦部隊が敵戦艦の砲撃により、中大破を受け撤退。
その後も敵の猛攻は止まず・・・身を隠すために、辿り着いた場所がこの島だった。
時雨は運よくこの島に上陸出来たが、仲間である駆逐艦たちは間に合わず、敵の砲撃により轟沈。
残された駆逐艦1人も運よく追手を振り切り、海域から離脱することが出来たらしい。
1人だけ生還出来た時雨、燃料もほとんど残っておらず鎮守府に帰還することは困難であり、
倒れた仲間たちを何度も揺さぶり、耳元で呼びかけるも、息を吹き返す事は無かった。
泣くのを必死に堪えて、仲間のために墓を建て弔う時雨。
同時に出撃命令を命じた提督に対して激しい憎悪を実らせる。
実はこの犠牲は最初から決まっていた事だった・・・時雨たちは新海域攻略のために育成をされないまま(練度1)、
”被害担当艦”として出撃させられたのだ。 あくまで新海域攻略のための捨て駒であり、
生きようが沈もうが関係ない、そんな残酷な任務を任されていたのだと言う。
・・・・・・
「轟沈した艦娘は鎮守府内ですぐに伝わる・・・皆、着任時に頭の中にチップを取り付けられるからね。」
「・・・・・・」
「僕は辛うじて生還出来たけど、もう1人はどうなったのかは分からない・・・大方、鎮守府に戻って、
処分されたか違う海域で沈んだのかと思うけど。」
「・・・・・・」
「僕だけが生き残った・・・被害担当艦だから、生きようが沈もうが関係ない。
だから僕は、この島に1人で生活する事に決めたんだ。」
時雨の口から発せられた事実、それは艦娘たちの犠牲を前提とした残酷な任務が事の始まりだった。
「それなのに、提督は僕を”逃亡者”扱い、か。 人間って本当に自分勝手な生き物だよね・・・」
時雨は深いため息をつく。
「時雨・・・」
主人公は時雨に近づこうとする、
「! 僕に近づかないで!」
時雨は主人公にナイフを向ける。
「全部話したでしょ! だったら早く僕の前から消えてよ!!」
「・・・・・・」
「もう誰も信じられない! 提督も他の人間も全員敵だ! お兄さんもだ!!」
ナイフを向けながら、涙ぐむ時雨。
「僕の事なんか放って置いて! そしてもう二度とここへは来ないで!!」
泣き叫び、時雨はそのまま森の中へと姿を消す。
「時雨、時雨ぇ!!」
主人公は叫ぶが、時雨が振り向く事は無かった。
・・・・・・
「提督、今日の書類をお持ちしました。」
秘書艦が大量の書類を持って来た。
「ああ、ありがとう。」
提督(主人公)は書類を受け取り、目を通して行く。
「・・・お疲れですか? 酷く疲れている様に見えるのですが?」
秘書艦の気遣いに、
「ああ、最近中々寝付けなくてね・・・まぁ、オレは大丈夫だから、気にせず執務に取り組んでくれ。」
提督(主人公)は秘書艦に指示をする。
「・・・・・・」
主人公は悩んでいる・・・理由はもちろん時雨である、
事実を聞かされ、時雨が自分の前から姿を消した・・・それが今でも脳裏に焼き付いている。
鎮守府に戻って来てからも・・・時雨の事が頭から離れず、主人公の体調は優れない上に、執務に専念できずに
本営から叱責を受ける、そんな毎日が続く。
「・・・・・・」
それでも、主人公はずっと考えていた・・・”時雨に対して、何かしてあげられることは無いか?”と。
船が難破して、オレは島に流れ着いた。
浅瀬で目覚めるまでは意識を失っていたが、全身に感じる冷たい感触は覚えていた、
今になって思い返せばわかる・・・オレは”海中にいた”のだ。
では、どうして浅瀬で目覚めたのか? 理由は1つしかない・・・時雨が浅瀬まで運んでくれたからだ。
人が嫌いなはずの時雨、見捨てる事も出来たはずなのにどうして時雨はオレを助けたのか?
「・・・・・・」
残念ながら、理由はオレには分からない・・・ただの気まぐれだったのか、それともずっと1人孤独で、
せめて誰かと会話がしたかったのか、それは時雨にしか分からない。
「・・・・・・」
でも、時雨との無人島生活は苦では無く、むしろ楽しかった。
それは時雨も同じ気持ちだったはず・・・だって時雨も笑顔を見せていたんだから。
「・・・・・・」
だとすれば、時雨はまだ完全に人を嫌いになってはいない。
もしかすると、助けて欲しいのかもしれない・・・自分では「この島での生活がいい!」と言っていたけど、
それは”1人で生きるしかない”・・・言い変えれば”頼れる相手がいない”とも取れる。
「・・・もう一度、あの島に行こう。」
主人公は決心する。
「もう一度、時雨に会って・・・それから。」
主人公は島に行くための準備を始める。
・・・・・・
・・・
・
「驚いた、まさかまた来るなんてね。」
時雨は主人公を睨みつける。
「・・・・・・」
主人公は無言のままだ。
「お兄さんが知りたかったことは全部話したよ、それなのにどうして僕に付き纏うのさ?」
警戒はしているが、距離を置いて何かの作業を始める時雨。
「僕の口から話す事はもう無いよ・・・だからさっさと消えて、そしてもう戻って来ないで!」
前と同じ、主人公を貶す時雨に、
「時雨は今の生活に満足している?」
「えっ?」
時雨は主人公の言った意味が分からない。
「毎日食料を探すだけの生活・・・時雨は本当に今の生活に満足しているのか?」
主人公の問いに、
「うん、当然でしょ? 満足しているからここで生活しているんだけど?」
時雨の言葉に、
「いや、時雨は嘘をついている。」
「・・・その根拠は何?」
嘘と言われて苛立つ時雨。
「そのままの意味だよ・・・仕方がなかったにしろ、こんな場所で獣みたいな生活を余儀なくされ、
入浴や娯楽すら出来ず、休息でさえ困難な環境なのに・・・こんな場所で生活して本当に満足なのか?」
「・・・・・・」
「どうなんだ時雨・・・君の本音を聞かせてくれ。 本当はどうなんだ? 本当にこの生活に満足しているのか?
それとも、実際はこの生活なんかしたくないんじゃ・・・」
主人公の言葉に、
「だって、仕方がないじゃん! 僕には帰る場所なんて無いんだ! 今の僕には、この島が唯一の居場所なんだよ!」
時雨が怒りながら本音を吐き出し、
「なら、オレと一緒に来い! オレがいる鎮守府に着任してくれ!」
「えっ、今何て言ったの?」
予想外の言葉に時雨は驚く。
「オレの鎮守府に来い、そしてまた艦娘として頑張ればいいだろう?」
主人公の提案に、
「そんな事言って・・・本当は本営に僕を引き渡す口実なんじゃないの?」
信用出来ず、疑念を向ける時雨に、
「本当だ、時雨をオレの鎮守府に着任させたい。 オレを信じて欲しい!」
「嘘だ、信じられない! じゃあお兄さんの言っている事が嘘じゃないって証明してよ!」
時雨は怒声を放つ・・・でも、時雨の表情は悲しげである。
「・・・短い間だったけど、この島でオレと一緒に生活していた仲だろう、時雨?」
「・・・・・・」
「オレは時雨の事を今でも仲間だと思っている・・・そんな仲間を本営に売る行為なんて絶対にしない!
だからオレを信じてくれ、時雨!!」
そう言って、主人公は時雨をじっと見つめる。
「・・・・・・」
時雨も主人公を睨みつける。
両者のしばしの見つめ合い・・・そして、
「はぁ、お兄さんの事だ・・・今断っても、僕が「うん」と言うまで何度も来る気なんでしょ?」
時雨は心が折れたのか、
「いいよ、僕を連れて行ってよ・・・ちょうどこの生活にも飽きていた事だし。」
時雨は主人公に近づき、
「本営に引き渡すなり、重労働させるなり、好きにして・・・多分、今の生活よりずっとマシなはずだろうから。」
そう言って、時雨は主人公が来た船に乗る。
・・・・・・
鎮守府に着き、正式に時雨をこの鎮守府の艦娘として登録した主人公。
「今日からこの鍵に書いてある番号が時雨の部屋だよ。」
主人公は用意していた鍵を時雨に渡す。
「・・・・・・」
鍵を渡されても、時雨は何も答えない。
「食堂は執務室から出て、廊下を歩いて右に・・・浴場は左に行けばあるから。」
各施設の場所を簡易に説明すると、時雨は無言で頷き執務室から出て行く。
・・・・・・
時雨が鎮守府に来てから数日が経つが、
時雨の姿を見ない・・・ずっと部屋に閉じこもっているのだろうか?
「時雨、開けるぞ?」
時雨の部屋の扉を開ける主人公。
「あっ、提督? 何、どうしたの?」
時雨は布団の中で読書をしていて、入って来た提督を不思議に見つめる時雨。
「ずっと時雨の姿を見ないからどうしたのかと思って。」
「・・・・・・」
主人公が心配していたことを知り、
「ああ、ごめんね。 布団の中がとても気持ち良くて・・・」
「・・・・・・」
「ずっと島での生活だったから・・・こんな温かくて柔らかい布団の中にまた入ることが出来るなんて、
思いもよらなかったから。」
そう言って、布団を被る時雨。
「・・・そうか。 まぁ、鎮守府の生活に慣れているならいいよ。 また用があれば呼ぶから・・・」
そう言って、部屋から出ようとした時、
「提督、あの・・・」
布団から顔を出し、
「その・・・あ、ありがとう。」
それだけ言うと、恥ずかしくなったのかまた布団の中に籠る時雨。
・・・・・・
それから数日後に時雨を編成に加える。
仲間との出撃、正直打ち解けられるだろうかと心配した主人公だったが、
「僕は時雨、これからよろしくね。」
仲間に対して進んで話しかけ、交流を深めようとする時雨がおり、主人公を安心させる。
「鎮守府に入れてくれた以上は僕も頑張って戦果を取るからね。」
そこには、島にいた時の暗い印象の女の子ではなく、これからの新しい生活に前向きに取り組む時雨の姿があった。
時雨が部隊に編成してから1か月が過ぎた頃、
「えっ、僕・・・更なる改装をやってもいいの?」
時雨が所定練度を達した事で、更なる改装の権利を与えられる。
「本当にいいの? あ、ありがとう! じゃあ僕、もっともっと活躍するから!!」
主人公から改装許可書を渡されて、工廠場へと向かう時雨。
そして時雨は更なる改装を終え、主力部隊の駆逐艦枠に編成される。
・・・・・・
ある日の事、
「提督、呼んだ?」
急遽呼ばれて時雨は執務室に入ってくる。
「ほら、時雨。」
主人公が何かの書類を渡す。
「・・・・・・」
時雨は渡された書類の内容を読む。
「提督、これって・・・」
その内容は時雨にとって、忘れもしない記憶で、
「時雨の元上官・・・今は〇〇収容所で拘留中らしい。」
「・・・・・・」
「今となってはどうでもいい事だろうけど・・・一応知らせて置こうと思ってな。」
そう言って、主人公は執務に戻る。
「・・・・・・」
時雨はしばらくその書類を見続けてていた。
「提督、お願いがあるんだけど・・・」
時雨が何かの書類を持って執務室に入ってくる。
「・・・・・・」
渡された書類は、休日申請書。
「珍しいな・・・いいよ、今日は時雨は休みっと。」
今日の日程に時雨は休日と記す主人公。
「ありがとう・・・夕方までには戻って来るから。」
そう言って、時雨は執務室から出て行く。
夕方になり、
「今戻ったよ提督。」
時間通りに時雨が鎮守府に戻って来る。
「おかえり時雨、どこか旅行でも行ってたのかな?」
「ううん、ちょっと用があってさ。」
時雨はそれ以上何も言わずに自分の部屋に戻って行く。
数日後、軍事新聞に大きく一面された記事がある。
”〇〇に拘留中の元提督、独房内で首を吊って自殺をした”と。
「・・・・・・」
時雨は軍事新聞の一面を眺めている。
・・・・・・
提督に休日を貰い、向かった場所は時雨の元上官がいた〇〇収容所。
「102番、面会人だ。」
看守から呼ばれ、椅子に座る102番と呼ばれた囚人。
「久しぶりだね、提督。」
時雨は躊躇う事も無く、”提督”と呼ぶ。
「お前は誰だ? オレの記憶には存在しない。」
昔の事だろうか、全く覚えていない様子だ。
「昔、被害担当艦として育成すらされずに強制出撃させた編成にいた時雨だよ。」
「・・・・・・」
「あの出撃のせいで、僕以外の仲間が全員死んだ・・・辛うじて鎮守府に帰還出来た仲間も、その後沈んだと聞かされた。」
「・・・・・・」
「その後、僕は島での生活を余儀なくされ、今は新米提督に拾われて今に至っているよ。」
「そうか、良かったな時雨。」
悪いと思っていないのか、他人事のように語る元上官。
「君は本当に最低だね・・・いや、失望したと言えるレベルじゃないよ!」
時雨は睨みつける。
「・・・オレを殺すか? それは無理だな。」
元上官は笑い出し、
「こんな場所で騒ぎを起こしてみろ、真っ先にお前は掴まり即処刑だ。 人間社会を舐めるなよ?」
「・・・・・・」
「勘違いするな? 拘留されても階級は変わらない、お前の元上官だって事を忘れるな!」
「・・・・・・」
「後1年ほどでこの拘留所から出所する・・・その時はまたお前を使ってやるさ。
それまで新米提督の元で頑張るんだな。」
全く反省をしていない元上官に、
「そうなんだ・・・後1年ほどで出所出来るんだ。」
時雨は何故か笑顔で、
「じゃあその時にまた来るよ、大量の弾薬と魚雷を持ってね。」
時雨の言葉に、
「何を言っている? そんな事をしたらお前などすぐに捕まって・・・」
「この収容所の仕組みは知ってる? その様子じゃあ知らないようだけど・・・」
時雨は元上官に何かの書類を見せる。
「今いる鎮守府にあった資料をコピーした紙だけど、ここを見て。」
「・・・・・・」
「”この拘留所は施設内にいる者が保護が受けられる”と書いてあるよね?」
「・・・それが何だ? つまりオレがここにいる間は手出し出来ないって事だ。」
「うん、施設内ではね・・・でも、施設外ではどうかな?」
「・・・・・・」
「分かるよね? 施設の外に出た途端、”君は襲われても看守たちは誰も助けてくれないって事”さ。」
「・・・・・・」
「しかも、拘留所の周りは海で囲まれている・・・出るには船を使うしかない。」
「・・・・・・」
「だから君が施設内から出た瞬間を見計らって、君を殺しに迎えに行くから。」
「おい待て! 止めろ、早まるな!」
先程の態度から一変して急に焦り始める上官、
「僕は罰を受けようが処分されようが覚悟の上さ、せめて死んだ仲間のために出来る事・・・
それは、君の息の根を止める事・・・じゃあ1年後にまた会おうね!」
そう言って、元上官を睨みつけて拘留所から出た時雨。
・・・・・・
「・・・・・・」
時雨は新聞を丸めてゴミ箱に捨てる。
「これで僕は自由・・・これからは提督のために頑張らないと。」
昔の因縁に終止符が打てた時雨は、新たな道に進んでいく。
時雨が主力部隊に編成されてから更に2か月が経過した後、
「提督、呼んだ?」
提督に呼ばれて、時雨が執務室にやって来る。
「おめでとう! 時雨は今日で練度99に達成した!」
「・・・ああ~。うん、ありがとう。」
時雨は礼を言うも、微妙な反応である。
「何だ、嬉しくないのか?」
「ううん、そりゃあ嬉しいよ・・・でも。」
時雨が小さな声で呟く。
「僕はこの鎮守府に中途着任だから、元々いる皆よりも先に達成しちゃって何か申し訳なくて・・・」
「・・・・・・」
「それに練度MAXの艦娘なんて、この鎮守府にはたくさんいるから・・・
提督は練度を達成した艦娘1人ずつに声を掛けているの? だとしたら、ちょっと過保護だなぁ~って。」
「そうか? まぁ皆頑張ってくれているから、オレなりの感謝の意を述べているつもりなんだけど?」
「うん・・・いいと思う。 うん、とてもいい事だと思うよ・・・うん。」
「・・・・・・」
「そ、それじゃあ僕はこれで失礼するね。」
そう言って、時雨は執務室から出ようとして、
「いや、まだ話が終わっていないんだけど。」
提督が時雨を呼び止める。
「そうなの? 何かな?」
時雨が机の前に立つ。
「これを渡して置くよ。」
提督が机の引き出しから何かを出し、時雨に渡す。
「これって・・・指輪、だよね?」
時雨は「はっ」とする。
「あっ、そうか。 艦娘と結婚するから僕に仲人役をやって欲しいんだね? いいよ、任せて。」
「・・・・・・」
「それで、お相手は誰かな? 一応僕からもお祝いの言葉を掛けてあげたいし。」
時雨の言葉に、提督は何故かじっと見つめる。
「提督? な、何で僕を見つめるの?」
「・・・・・・」
提督の真剣な眼差しに、
「まさか、この指輪・・・僕に?」
時雨は静かに悟るも、
「いや、冗談でしょ? 僕は中途着任の身だし、前は被害担当艦の捨て駒だった艦娘なんだよ?」
急に自分の汚点を挙げていく時雨。
「確かに提督は優しいし、僕は好きだよ。 でも、僕は提督に拾ってもらった身だよ? それだけでありがたい事なのに、
僕と結婚したいって・・・それでいいの提督? 他の艦娘の方がいいんじゃあ・・・」
「・・・・・・」
「その方がいいよ、だって僕・・・指輪を貰う資格なんて・・・」
否定する度に時雨の瞳から涙がこぼれ落ちる。
「オレの本心だ、駆逐艦時雨! オレと結婚してくれ!」
提督の告白に、
「・・・提督って、変わり者だね。 うん、とっても変わり者・・・ははは。」
時雨は笑いながら泣き出す、でも実際は・・・
「ほら、指を出して。」
提督は指輪を取ると、時雨の指に通す。
「・・・・・・」
時雨は嵌めた指輪を見て、
「・・・分かったよ。 僕はこれからもずっと提督の側で支えるから! ずっとね、約束するから!!」
時雨は自らの想いを提督に伝える。
・・・これは偶然が重なり合った出会いである。
被害担当艦として、育成をされないまま、仲間と共に戦場に駆り出された駆逐艦”時雨”。
辛うじて生還するも、仲間は全員沈み帰還するための燃料も無いまま、無人島での生活を余儀なくされる。
同時に上官を含む人間たちを憎悪するも・・・しばらくして、無人島に後に時雨の新しい上官となる人間が海を漂う。
見捨てる事も出来たはずだが、その時の時雨はただ人として・・・「助けないと!」の一心で彼を助ける。
助かった彼はその後、時雨と短い間一緒に生活し、彼女の中に長い間忘れかけていた人の温もりを思い出し、
時雨は笑顔を取り戻すも、すぐに別れを迎えてしまう。
その後は彼女に会いたいと言う一心で、何度も彼が時雨を訪れる。
正体を知られた時雨は最初は反発するも、徐々に心が折れ最終的に彼の部下として活躍する。
本来の艦娘としての扱いを受け、十分に育成出来た彼女は更なる改装を受ける権利を与えられ、
その後は提督のために必死に戦果を獲得して行く。
提督も時雨の活躍に感謝し、彼女を愛する。
提督の気持ちを知った時雨は彼の気持ちに答え、2人は結婚。
新たな未来に2人で進んで行く。
・・・・・・
提督が指輪を渡してから数日後の事である。
執務室で提督と時雨がたくさんの資料を見て話し合っていた。
「どうしようか提督?」
「う~ん、せっかくの連休だから旅行でもしたいくらいだけど。」
どうやら2人は旅行先を検討していた模様。
「でも、他の皆も「皆でどこかに行きたい!」とか言っていたし・・・」
「それは分かるけど・・・資金が限られている、全員で旅行なんてとても無理だよ。」
本当は”新婚旅行”として行く手筈だったのが、皆からのブーイングが飛び交ったため、急遽”皆で旅行”と言う形になった。
「う~ん、結局鎮守府内で待機になっちゃうかな?」
鎮守府近海で皆で泳ぎに出る案もあったが、
「それじゃあ夏と変わらないしなぁ~、もっとこう・・・皆で行けて旅費が一切掛からなくて、
皆で楽しめそうな場所・・・無いかなぁ~?」
時雨は旅行雑誌と睨めっこしている。
「まぁ、当ては一応あるんだけどね~。」
提督は口を開いて、
「オレとしては皆で楽しめるだろうし、旅費も殆ど掛からない・・・ただ、皆は「嫌だ!」と言うだろうな。」
「・・・それはどの場所を言っているんだい?」
時雨の質問に提督は耳元で呟く。
「あ~、確かに旅費は掛からないし、楽しめると言えば楽しめるかもね・・・」
提督の案に納得する時雨。
「でも、いいと思う! 訓練の一環としてもなるからその案は悪くないかも!
試しに皆と行ってみようよ提督!!」
意外にも時雨は提督の案に同意する。
そして、時雨は皆を会議室に集め、連休の計画を報告する。
時雨の計画に、困惑・却下する艦娘がいたが、
「訓練の一環でもあるよ!」と説明すると、結局全員が承諾する。
・・・・・・
それから、
「Hey! 提督ぅ~! 食べられそうなキノコを見つけたヨ~!」
金剛が籠に沢山のキノコを入れて来た。
「・・・残念、金剛。それは全部毒キノコだよ。」
提督は金剛に捨てるように指示をする。
「司令官、食べられそうな草を見つけました!」
今度は朝潮が見つけた草を鑑定する。
「残念、朝潮。 それはトリカブト、毒草だよ。」
「そうなんですか? 失礼しました、今すぐ捨ててきます!」
朝潮はそそくさと捨てに行く。
「どう、提督。 皆はちゃんと食料を集めているかい?」
時雨が木の実やキノコを持って戻って来る。
「残念だけど、皆外ればかり持って来ているな。」
「ははは、まぁ仕方がないね。 僕や提督みたいにサバイバル経験が無いんじゃあ、すぐに探すなんて難しいよ。」
時雨は苦笑いをする。
提督達は鎮守府から少し離れた小島に赴いていた。
そこで、自給自足のサバイバル生活を皆で体験しようと言う物だった。
最初は電気も水も使えない環境に艦娘たちは抵抗をしていたが、皆で役割分担をして行く内に、
楽しくなってきたようで、今は全員で食料探しを行っている。
「提督、見てください! 大漁です!!」
軽巡の艦娘たちが籠に沢山の魚を入れて戻って来た。
「おおっ、これは凄い! これで全員の食料を確保出来たな。」
海に潜るために、全員水着を持参している。
これなら魚獲りと泳ぎの両方が出来るのだ。
「よし、オレも負けていられないな。 オレも何か探して来るか!」
提督は立ち上がると、森の中へと入って行く。
夜になり、海辺に集めた木々を積んで火を付ける・・・キャンプファイヤーである。
焼いた魚と木の実を食べながら皆で食事を、その後は歌ったり踊ったりの楽しい休暇となった。
・・・・・・
提督と時雨は、鎮守府で数々の戦果を取りつつ、何不自由のない生活を送れた2人。
その後、丸々20年鎮守府を務め提督は辞任、時雨は解体をせずに提督と余生を過ごすことを決意する。
無人島で希望のない生活を余儀なくされた1人の艦娘”時雨”。
そんな時雨が偶然にも、1人の男に出会い、再び艦娘としての人生をやり直すことができ、後に結婚する。
本当に偶然が重なった出来事であり、無人島生活だった時雨には、この幸せな結末は想像すら出来なかった事であろう。
「ある艦娘との無人島生活」 終
二次かゲームのせいかは知らないけど時雨って妙に神格化されてて
年相応の少女みたいな描写本当されないよなぁって