第1巻 第190話 エイガデ
2017年10月14日(土) AM:9:00
キリオ・凡矢理店(ぼんやりてん)
映画館の前
楽と千棘は、今日は土曜日で休日の為、
キリオにデートに来ていた。
千棘 「久々ねーー、ここに来るのも。」
楽 「そうだな。
ニセモノの恋人の時の定期デートでは、
「デートと言えば、映画は基本」、
だからって、大体デートの初めに来てたけど、
本物の恋人になってからは、
お互いがホントに好きなところばっかり来てたからな。」
千棘 「で、どれを見る?」
楽 「んーー、そうだな。
「ニャック」の新作もまだだし………」
千棘 「あ!楽、アレなんてどうだ?」
楽 「え?「ジョンとメアリー」?
恋愛映画じゃねーか。
もう、「定期デート」じゃねーんだから、
クロードの監視もねーし、
無理に恋人っぽい、恋愛映画なんて見る必要ねーぞ。」
千棘 「いや、本物の恋人になった今だからこそ、今日はアレをみたいの。」
楽 「え?」
千棘 「だって、恋人同士で恋愛映画を見るなんて、
それだけでカップルっぽいし、
映画になる様なステキな恋を観たら、
私達も本当の恋を始めた今、
何か共感する事や、感動する事もあるかもしれないじゃない?」
楽 「なるほどな………よし、分かった!
今日はアレを見よーぜ。」
そして、楽と千棘はチケットを買って映画館の中へ
店員A 「はーい、お二人様でチケット2,000円になりまーす。」
楽 「よっこいしょっと。」
ドサッ
楽と千棘は、映画館の中の席に座った。
千棘 「まだ、映画始まらないのーー?
早く見たいわーー………」
ガサッ
モグモグ………
千棘は、高1の楽との初めての定期デートで食べていたのと同じ、
ジャイアントサイズのポップコーンを食べていた。
楽 「お前、またそれ買って来たのか。
よく1人で全部食えるよな………。」
千棘 「あ!見て楽、映画が始まったわよ!」
そして、映画は始まり………
メアリー 「キャアァァッ、助けてーー、
ジョンッ!」
悪役A 「へへ………叫んでも、誰も助けにはこねぇぜ。」
千棘 「キャアァァッ!」
ギュウウッ
楽 「いててててっ!
あんま、ひっつくなよ千棘!」
千棘は、ヒロインが悪役に襲われるシーンで、恐怖の余り、楽に引っ付いた。
千棘 「だって、だって、
ヒロインの人が襲われると、まるで私が襲われてるみたいな気持ちになるんだもん………。」
楽 「どんだけヒロインに感情移入してるんだよお前は………」
ギュウウッ………
楽 (千棘が俺にしがみついてくるから、
千棘のお尻の右っ側が、
俺の腰の左っ側に当たってくる………)
ムニッ
楽 (やっぱ、こいつのお尻、
柔らかくて弾力あって、気持ちいいな………
胸もスッゲー、柔らかい………)
千棘 「うう………」
ブルブル………
楽の頭の中をよそに、千棘は怯えきっていた。
そして、映画はクライマックスに進み………
ジョン 「メアリー………やっと、君と会えた………会いたかったよ!」
メアリー 「私もよ、ジョン!」
ジョン 「メアリー………僕と結婚してくれるか?」
メアリー 「はい、喜んで!」
完
パチパチパチ………
楽 「ふーー。
終わったな、千棘。」
千棘 「……………。」
楽 「どうしたんだよ、お前?
黙り込んで。」
千棘 「え?いや………私達も、あんなに素敵な恋を出来るのかなぁって………。」
楽 「え?」
千棘 「あんな大恋愛の末に結婚なんて、
スッゴく素敵だと思ったわ。
でも、私達もあんな風に、
素敵な恋をして、
最後にあんたと結婚できるのかなぁ、
って………。」
楽 「……………まあ、今からそんな事、
気にしなくてもいいんじゃねーか?」
千棘 「え?」
楽 「5月に滋賀県に旅行に行った時も言っただろ?
「先の事はまだ分からないけど、お前との今を楽しめれば今はそれで良い。」
って。」
千棘 「う…うん………。」
楽 「それに、
映画の中の恋愛なんて、美化された恋愛だろ?
俺たちは、最初はケンカばっかのニセモノの恋人だったのが、
お互いのおくのほうのいいところが分かって来て、本当に付き合い出したんだ。
そんな、理想的な恋愛じゃ無くても、
俺たちは気取らずに好きな様に付き合って、
恋をすれば良いと俺は思うぜ。
それに、俺はお前の、
気取らないところにも惚れたんだからな。」
千棘 「楽………うん、そうだね!」
第1巻 第190話 完
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