第1巻 第209話 オオアメ
2017年10月20日(金) 16:00
その日は、クラスでの学祭の準備が特に無かった楽と千棘は、
学校の講義だけを終えて、早めにスペクトル凡矢理に帰っていた。
ザーーザーー………
千棘 「うー〜、スゴい雨ねーー………。」
楽 「天気予報で、雨が降るかもっては出てたけど、
まさかここまでドシャ降りになるとはな。
降っても、小雨だと思ってたぜ。」
千棘 「どうすんのよ?
私もあんたも傘は持って無いし、
このままじゃあ、ずぶ濡れになっちゃうじゃない!」
楽 「………持ってねーもんは仕方ねーだろ。
とにかく、走ってスペクトル凡矢理まで帰るぞ!」
千棘 「うん!」
タタッ
楽と千棘は、バッグを傘がわりにしながら、
スペクトル凡矢理まで走りました。
楽 「ハァ…ハァ………
結構疲れたな。」
千棘 「あんた、蒼也くんに鍛えられてる割に軟弱ね。」
楽 「そういうお前は、
雨の中あんだけ走ったのに、なんで殆ど息切れしてねーんだよ………。」
千棘 「でも、お陰で大分ウチまで近づいたわね。」
楽 「そうだな。
あと、10分か20分も走ればマンションに着くんじゃねーのか?」
千棘 「そうね。
早く行きましょう、楽。」
楽 「ああ………!」
千棘 「?どーしたの楽、いきなり顔を赤くして………!」
千棘は、楽が顔を赤くした理由が分かった。
カバンでは傘ほど完全に雨を防ぎきれなかったので、千棘の服が濡れて、
ピンク色のブラジャーが服の上からうっすら見えてしまっていた。
千棘 「もう!
何まじまじと見てんのよ!
このヘンタイ!」
楽 「うわっ!
わ、わりぃ………。」
千棘 「もう!
この前の遊園地のオバケ屋敷で私が転んだ時も、
パンツ見るし………あんたってホンット、
エロもやしよね。」
楽 「………ほれ、これ着ろよ。」
スッ
千棘 「え?」
楽は千棘に、自分が着ていた上着を差し出した。
楽 「俺の上着、俺のカバンはお前のより大き目だったからあんま濡れてねーし、
これなら下着も透けて見えねーだろ?」
千棘 「………ありがと。」
ガバッ
千棘は楽から上着を受け取り、自分の服の上に羽織った。
千棘 「………さっきは悪かったわよ。
オバケ屋敷の時も、今もあんたは見たくて見たわけじゃ無かったのに………。」
楽 「いや、俺もじっと見ちまったし………。」
千棘 (………ホントは、あんたになら、
もう下着くらい見せても良かったんだけどね。)
ドンガラガッシャーン
その時、2人の近くで雷が鳴り落ちた音がした。
楽 「うおっ!?」
千棘 「キャアァッ!」
ギュッ
楽 「わわっ!ち、千棘!?」
千棘は、楽に抱きついた。
千棘 「ゴ、ゴメン楽!
でも、あんた私が雷苦手なの知ってるでしょ?」
ムニュッ
千棘が抱きついたので、楽の胸板には千棘の濡れた胸が当たった。
楽 (うぅ〜〜………千棘の胸が、俺の胸板に当たってる………
今までも何度か胸が当たった事はあったけど、
こうして濡れてると、まるで水に濡れた果物みたいだ。
スッゲー気持ちいい………。)
千棘 「うぅ〜〜………。」
千棘は、怯えきっていた。
楽 「おい千棘、大丈夫か?」
千棘 「むり〜〜。
腰が抜けちゃって、立てない〜〜。」
千棘は涙を溜めた目で、楽を上目遣いで見上げた。
楽 (うぅ〜〜、可愛い〜〜。)
楽 「でも、このままここでじっとしてたら、
もっと怖い事になるぞ?
もしかしたら、雷が俺たちに落ちてくるかも………。」
千棘 「!やだ、怖い事言わないでよ!」
楽 「わ、わりぃ!」
千棘 「あんたがそんな事言うから、ますます立てなくなっちゃったじゃ無い!」
楽 「………ったく、しょうがねーな。」
ガバッ
千棘 「え?」
楽は、千棘をおんぶした。
千棘 「ら、楽!
あんた何を………。」
楽 「お前が自分じゃあ動けないんなら、
こうするしか無いだろ?」
千棘 「そりゃそうだけど、
いきなり恥ずかしいじゃない、こんなの!」
楽 「我慢しろよ!
俺だって恥ずかしいんだから!」
千棘 「うぅ〜〜………
こんな事になるなら、心の準備くらいさせてくれってのよ、全く………。」
楽 「ん?なんか言ったか?」
千棘 「なんでも無いわよ!」
楽は、千棘をおんぶしたまま、
スペクトル凡矢理の方に向かって歩き出した。
スタスタ スタスタ………
通行人A 「お、見ろよあのカップル、
彼女をおんぶしてるぜ。」
通行人B 「熱いねーー。」
千棘 「うう………。
恥ずかしい………。」
楽 「我慢しろよ。
もうすぐ、スペクトル凡矢理に着くから。」
千棘 (雨も、たまには悪く無いかもね………。)
第1巻 第209話 完
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