錆びた涙-後篇-
とある せいたいへいきと
とある かんむすたち とのおはなしです
おしまい♪
※誤字修正しました
とある せいたいへいきと
とある かんむすたち とのおはなしです
前篇はこちらになります
↓
http://sstokosokuho.com/ss/read/1419
…
イーゴ「…」
イーゴ「…」
イーゴ「…」
ドクン…
イーゴ「…」ピク
イーゴ「…」ピクピク
イーゴ(…生きてる…?)ムクリ
イーゴ(痛覚…さえも…感じなくなってる…
完全に壊れちゃったかな…)
股関節を大きくねじ曲げて―
ゴキン
足の裏を腰に持っていく
ゴソゴソ…
腰のホルスタにぶら下がっている
注射器は割れずに残り3本、
確かにそこに備わっていた
それを器用に口元に持っていき
顎を広げてくわえる
その行為を3回繰り返し
唾液を垂らしながら
3本のソレを落とさないように
慎重にくわえ続けた
そして少しずつ顎の力を強めていく
イーゴ(無駄でも…良い…から)
…ピシッ
イーゴ(…細胞が残ってるなら…)
ビキ…ビキビキ…
…パリン
イーゴ(…)
口の中でガラスの筒が細かく砕ける
大量のガラス片が口の中を犯す
縦に横に…文字通り縦横無尽に
突き刺さり、口腔に鉄の味が広がる
ガリ…バリ…
ゴリゴリ…
グッチャグッチャ…
ゴクリ…
注射器にはいった覚醒薬が染み渡る
ガラス片で傷ついた頬の裏、舌、歯茎
それらを入り口として血管に入り込む
喉を通過して胃に落ちる薬品も
ジワリジワリと吸収されていくのを感じる
-ひ…非常用動力…作動…-
- ……… -
-浸食…率……69%-
-…食率…78%-
意識がぼんやりとし始める…
まだ…
-上昇中…-
まだ…
-浸…率…83%-
まだ…!!
-………91%-
ma…da…!
-……終………食率……97%-
イーゴ(?)[[…]]
ズル…ズル…
ズル…
…
榛名「ぁ…んぅ…///」
体が持ち上げられ
浮遊感を感じました
このままもみくちゃにされて
殺されてしまうのか…
浜辺に押し寄せる波のように
引いては返す恐怖と触手による快楽
もう…何も考えられなくなってきました…
…てーとく……
…
いーごさん…………
シュルル…
ブチ…!
ドサッ
榛名「キャッ!」
一瞬、何が起きたのか…
ふやけきった榛名の頭では
理解するまで少し時間がかかりました
突然、触手だらけの
榛名の体は地面に落下しました
体に絡んでいた触手には力が無く
ただ体に纏わりついてだけとなっていました
混乱ながらも振り払うと
ボトボトと足下に落ちました
少し咳込み
先ほどまで榛名がいた空間に目を向けると
ドロドロと汚汁を垂れ流す
蠢く触手の断面が見えていました
そしてそれと交差するように
ウネり、鞭のようにしなる
別の触手―
その触手の根本を目で辿っていくと―
???[[…]]フシュルルル…
10mほど離れた所から触手を延ばす
別の肉塊…
それは
目の前の黒い巨体とは異なり
はっきりと人の形を保っていました
恐竜のような前傾姿勢
盛り上がった両肩の筋肉
太く逞しい左腕
長くこちらに伸ばした
槍のようにも鋭く、鞭のように
ヒュンヒュンと空気を裂く触手の左腕
『イ級』を象った仮面…
この目の前の黒い脅威を睨めつける
捕食者のような眼孔
妖しく輝く青白い左目
落ち着き払った黒い右目
狼のように鋭い顎、そこから垂れ流す
夥(おびただ)しい量の唾液
それをまき散らし鞭のように跳ねる
青黒い舌、その表面はまるで
ヤスリのようにザラザラとしていました
それすらも凶器のように…
そして―
???[[Shiiiiiiiiiiiii !!!!!]]
凶暴な顎を開いて
唾液をまき散らしながら
鉄板を素手で引きちぎったような
例えようのないけたたましい声を…
遠吠えを上げました
空気がビリビリと振動し
榛名と提督は耳を塞いでしまいました
ヒュンヒュン
黒い巨体と比べて随分と小さい
小柄な影は
その伸ばした触手を激しくウネりながら
収納しました
???[[Shyaaaaaaaaaaaa!!!!]]
収納の反動で体が半回転し
今度は四つん這いの体勢で
クラウチングスタートのように
屈んで一気にその体を前へ
駆け出しました
良くみるとその両足は
犬の後ろ足のように逆関節に
折れ曲がり黒い装甲に覆われていました
その足の先端も四足歩行の猛獣のように
鋭い爪が三本生えていました
足の裏が地面に着地する度に抉れ
その逞しい太股が
ポンプのように収縮していました
その小柄なイ級の仮面を付けた
触手の影の下半身…
人間でいう所の腰から膝までは見覚えのある
もので覆われていました
ふくらはぎの部分が破れているものの
それは紛れもなく
『イーゴさん』のタイトパンツでした
シュタタタタタ…
イーゴ(?) [[Shhhhhhhhhhhhhh!!!]]
…
ル-101[[wedrfghjkl;:\!!!]]
イーゴ(?)[[Shhhhhhhhhhh!!!]]
その光景は肉と肉のぶつかり合い
殴り殴り返される連打の押収
イーゴさんのタイトパンツを履いた
その人型のイ級は逆関節の両足を
駆使し滑走し、滑り込み
獣の足を振り上げその爪を食い込ませる
ようにめちゃくちゃな動きで
黒い巨体を翻弄していました
ただ黒い巨体に与えるダメージとして
はあまり効果的ではなく
これでは持久戦、
小柄な『イ級』の方は圧倒的に不利となってしまいます
榛名は、弱った体を引きずり
提督の元にゆっくり近づきました
巨体が車のボンネットを破壊した
際にタイヤが弾け飛んだらしく提督の
足に衝突し、膝があらぬ方向に折れ曲がって
いました、額には脂汗が滲んでおり
苦痛に顔は歪んでおりました
提督「は…るな…!逃げろ…!!
お前だけでも!!」
榛名「ですが…!」
榛名「提督…あれをみてください…あれって…?」
提督「…!!
なんだありゃ!?肉の化け物が…増えた!?」
榛名「あれって…私たちを守ってくれて
いるんでしょうか?
それにあのタイトパンツ…破けてますけど
イーゴさんのですよね?」
提督「…」
提督「おい…おいおい…」
提督「まさか…」クルリ
イーゴ(?)[[Shyaaaaaaaaaaaaa!!!!]]シュパッ
ゴン…!!ガツン…!!
ル-101[[sdfghjkl;:]@@@@!!]]ブンブン
榛名「…ッ!」
提督「…」
ル-101[[@:;/@:\!!]]ブン
榛名「…ぁ!」
提督「…!!」
小柄な影は徐々に動きが鈍くなり
遂に、その巨大な手に体を掴まれ
地面に叩きつけられました
グシャッ
イーゴ[[!?!?!?]]
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ!!
大きな影は小さな影を砂利の地面に体を
押さえつけ
そのまま思い切り…まるで大根下ろしを
するように長く擦りつけました………
その引きずった砂利の軌跡には
青黒い体液…
巨体の手の下からはそのイ級の彼の
右腕とおぼしき触手の塊と顔
弱い発光を繰り返す左目
光を失いつつある右目
右腕がもがくようにピクピクと
短い感覚で痙攣していました
どんどん
青黒い血溜まり、
それが砂利を徐々に濡らしていきました
…
提督「くそっ…!榛名、もういい
逃げるんだ…もう俺は足がこんなんだ…」
榛名「!」
提督「俺は大丈夫だから…お前は
逃げて…!!」
ズシン…!
提督「榛名!!後ろ!」
榛名「え」
ヒュン…
ブチュルル…
イーゴ[[……]]
目の前に立ちはだかる
二本立ちのイ級の背中…
その背を貫通し榛名の目の前で制止する
触手の槍
その槍も彼の青黒い血で汚れていました
押しつぶされたはずの彼は
あの圧倒的に不利な体勢から逃れ
榛名達の前に…盾となってくれていました
イーゴ[[…ぁ゛あ゛あ゛!…!!]]グン
ですが、彼は止まることなく
貫かれたまま巨体に向けて
ボロボロになった体を跳躍しました
一歩二歩と歩数が増える度に
体から肉片がこぼれていきました
…
ザザザ
-深…棲…状態維持 困難…す-
ザザ
-持続不可能……分解…し…す…-
…
そして、最後の大きな跳躍
ズダン…!!
グルグルと体を回転させ螺旋を描き
高く高く…
太陽の光を体に浴びて飛び上がる
傷だらけの細い影
落下する先は緩慢な動作しかできない
巨体の頭部
その盛り上がった両肩に着地しました
その頃には彼の両腕の触手は
ほぼ肩から崩れ落ちて、肩先は
『錆だらけの義手』でした
それも左腕は肘から先が失われていました
紫電の走る故障間近の両腕
ガクガクと震えている逆関節の両足
歪に凹んだ胴体
ああ、もう彼は限界なんだと
直感で感じました
そんな彼が巨体の肩の上で
思い切り仰け反りました
頭突きをするように
思い切り前に屈むと―
ヒュン…
ヤスリ状の長い舌を
巨体の首に巻き付け…
…グルン
ギチギチギチギチギチ!!!!!
激しく締め上げ…
ブシュッ
パァァァァン!!
触手にまみれた頭部が弾け飛びました
…
ザザザァァ
=頭部欠損=
ザザ
=機能停………止…=
ザ…
=自壊システム……作動……=
=任mu…続行……不nou=
=お疲れさま………でした=
…
ズドォォォォォン!!!
轟音
巨大な火柱が
その肉塊を中心として広がりました
小さな影を巻き込んで…
余りにも強い、
爆風が目の前に迫っていました
ですが提督をおいて
逃げるわけにもいきません
せめて提督だけでもと思い
提督が榛名の手を握りましたが…
それを強く振り払い
彼の前に
両手を広げて壁となります
爆風を受け止める覚悟はできています…
…最後にイーゴさんから
撫でてもらいたかったなぁ
だんだん、強烈な熱量をもった爆風が
迫ってきました…
堅く目を瞑ります
ただただ…その瞬間を命を刈り取る
その熱を受け入れるために…
やっぱり痛いんでしょうか…
それとも案外、一瞬かもしれません…
彼の…提督の助かる可能性の高い方を…
どうか助かってください…提督
…怖いよ………
イーゴさん……
…
-…身体…耐熱…限界値……突破…-
…
…
……
………
死ぬ前の瞬間は
遅いと聞きますがあまりにも
遅すぎます…
ゆっくり…恐る恐るゆっくり両目を開けます
爆発は榛名たちには届きませんでした…
いえ、正確には届いていた
『はず』だったんです
ですが『目の前の彼』によって
爆風は防がれていました
青空をバックに…
風に揺れる焦げた髪
所々が焼けて爛れた顔
閉じた口元から垂れる
青黒い液体
錆びていたり、指が欠けていたり…
もはや『腕』と
形容のしようがない義手
本来は人間の脚部であったはずの
義足は、深い深海棲艦化による変異の仕様上
逆関節に折れ曲がっていました
足下に転がっているイ級の仮面
長い長い、ヤスリ状の舌
イーゴさんが榛名たちの目の前に
二本足で立ちはだかっていました
地面をよく見ると
彼の足下から榛名たちの位置にかけて
までの地面は
砂利が残っていましたが
それ以外は深く抉れて…そこでようやく
状況を把握しました
彼が『盾』になってくれていました…
榛名「…ぁ……ぃ…ゃ…ぁ」
鼓動が速まりました
…
ガクン…
顔から崩れ落ちるように倒れる
イーゴさん
その瞬間はプッツリと
糸が切れた操り人形のようでした
榛名「…だめ!!だめです!!」ダッ!
倒れた彼に駆け寄ります
近づいて彼の頭を膝の上に乗せました
スカートとソックスに染み込む
彼のわずかに残った血液と体液
その体の深刻さがより
克明にわかりました
深く抉れた背中…
ごっそりと肉を持っていかれたようで背骨が見えていました
たった一人で戦艦に立ち向かい
たった一人で脅威を追い込み
たった一人で絶望を打ち砕いた
たった一人で榛名を提督を守った
そんな彼の両目は深く閉じられ
榛名の膝の上で沈黙していました
榛名「……」
体液と海水、血液でゴワつき
熱で縮れてしまった髪を優しく撫でます
撫でます
榛名「……コ…」ボソッ
撫でます
榛名「……イイコ…」ボソッ
撫でます
榛名「いいこいいこ…ッ…」ポロポロ
撫でます
榛名「いいこ…いい…こ…!」グス
すっかり冷たくなったイーゴさんの
額を撫で続けました
…
…
キキキキィ!!
ガチャ…バタン
女研究員「やっとついた!!
あ゛~腰いてぇな畜生!!」
蒼龍「う~…お腹の肉が
伸びるかと思ったぁ」グスン
孫提督「」オボロロロロ
女研究員「…ん?」
女研究員「…なんじゃこりゃあ!?
爆発でもあったのかよ…!?」
蒼龍「あれ?あそこにいるの提督と
榛名ちゃんですよね?
なんでこんなところに…?」
孫提督「な…は、榛名ちゃん!?」ガバッ
蒼龍「ちょ、ちょっとまってください!
何だか様子がおかしいですよ!?
なんで提督の車があんなに壊れてるんですか!?」
蒼龍「それになんか変な臭いが…」
蒼龍「あそこにいるのって…提督と
榛名ちゃんと…あと誰か…倒れてる?」
女研究員「…」
女研究員「……まさか!」ダッ
…
…
-港町 小学校(仮避難所)-
ガヤガヤ
消防職員1「―では
お疲れさまでした艦娘さん」
消防職員2「あとは
我々で対応できますので」
初雪「ん、任せた」
春雨「お願いします」
満潮「…」ソワソワ
初雪「みちしお?」
満潮「な、なに?」ソワソワ
初雪「焦ってる?」
満潮「誰が!」プイ
春雨「満潮ちゃん…早くイーゴくんに会いたいんだよね♪」
満潮「な…ぁ///」カァァァ
消防職員1「おや?艦娘さんもやっぱり
お年頃なんですね~♪いやいやウチの娘もですね~」
消防職員2「始まった…」アタマ カカエ
消防職員1「保育園に通っているんですがね~
気になる男の子がいるらしく…
父親としちゃあ嬉しさ50%悔しさ50%…
憎たらしさ100%ですね~」HAHAHAHA
満潮「ちがぁぁぁぁう!
だだだ誰があんな
へっぽこなんかぁぁぁ!///」オテテブンブン!
初雪「…ふっ」カタポンポン
満潮「なによ!///」
初雪「クリスマスはお楽しみでしたね」ニマァ
満潮「!?」ワナワナ
春雨「お、お楽しみ…クリスマス!?///」
春雨「み、満潮ちゃん…もうイーゴくんと
そこまで…!!」
満潮「はぁつぅゆぅきぃぃぃ!!」ガァァ!
初雪「」フヒヒサーセンww
春雨「満潮ちゃん…」
満潮「今度はなによ!!///」
春雨「かわいい」
初雪「かわいい」
満潮「///」ブルブル
春雨「かわいいよ満潮ちゃん!!」カワイイ!
初雪「満潮ちゃんかわいい!!」カワイイ!
満潮「ヤメテ///」マッカ
消防職員1(かわいい)
消防職員2(かわいい)
ギャーギャー!
…
焦げ臭さと生臭さ…
肉が腐ったような鼻を突く臭い
それらが立ちこめる
鎮守府の裏に私たちは集まっていました
膝の上に
イーゴくんの頭を乗せて
何度も何度も力なく彼の頭を撫でている
榛名ちゃんを取り囲むように…
女研究員さんは冷静さを保とうとしていましたけどメガネの向こうの瞳は動揺と
怒りの色を隠せずにいました
現に取り乱しそうな感情を押さえつけるように肩で息をしていました
一方、私の隣で脂汗を浮かべて
カタカタ小さく震えている孫提督は
顔を青ざめさせ、ぶつぶつと小声で
なにか声を発していましたが良く聞き取れませんでした
榛名ちゃんの膝に横たわるイーゴさんは
上半身はむき出しになり
腹部、顔、髪と露出している肌は
所々に大きな火傷の痕があり
錆びた義手、義足からはバチバチと紫電が走っており
背中からは大量の青黒い液体が流れていました
きっと榛名ちゃんの服に付いている
大量のシミは彼の体液なんでしょう
空を見上げて静かに涙を流す榛名ちゃん
半ば放心状態の
彼女の大きな目は涙で
潤んでいるにも関わらず
光が宿っていませんでした
彼女の白くて柔い手は、焦げと
体液、血液でズタズタになったイーゴくんの頭を
何度も撫でていたせいかすっかり
汚れてしまっていました
私はと言うと、榛名ちゃん同様に
片足を折ってしまった提督の体を楽な姿勢
にと膝枕をしていました
ざらざらと
彼の短く揃えられた
後頭部の感触を膝に感じます
提督「―そんなとこだ…」
提督は私に頭を預け、横たわりながら
状況説明をしてくださいました
女研究員「…そう……」
メガネを上げて目頭を押さえる彼女は
うつむきながら静かに提督の声に
耳を傾けていました
蒼龍「…そんな…」
一人で改造によって強化された
ル級モデルを倒したなんて
信じられませんでした…
暴走したル級モデルが
榛名ちゃんを捕獲した後、
ちゃんと帰投するか確証はありませんでした
だって触手の化け物に…
全身を覆うくらいの変異を『独断』で
実行した彼が…
ほぼ完全に人類の敵である
深海棲艦に意識を呑まれつつ
あった彼が
人を襲わない確証はありません
ここに来るまでにイーゴくん事を
女研究員さんから色々聞きましたが…
そんな脅威を
駆逐艦の能力しか持たない彼が…
まともな兵装を使えない旧式の彼が…
未然に防いだとあれば、驚くしか
ありません
彼は人を守ったと同時に
孫提督をも守ってくださったのです
今回の指示による孫提督のミスで失われた
命は少なくはありません…ですが
民間人に被害が及ぶ前に
彼が食い止めてくださったおかげで
これ以上、孫提督を『罪の色』に染めないで
下さったのですから…
あとは孫提督自身がお決めになることです
―私はただ…
孫提督「」ガタガタ
―ただお側で見守り続けるだけです
女研究員「…おい」
孫提督「ひぃっ!」
女研究員「わかったかい?…自分が
やらかしたことの大きさ…」
孫提督「知らなかったんだ…」ボソッ
女研究員「…あ?」ピク
孫提督「知らなかったんだよぉぉ!
こんなことになるなんてさぁ!!」
女研究員「……」イラッ
孫提督「…だって…だってそうだろ!?
こいつらは…こいつら生体兵器は
ただの『モノ』だろ!?
モノは大人しくユーザーの命令を
きくもんだろおぉ!!」
孫提督「僕は…僕はわるくない!!
悪いはずがないんだ!!」
女研究員「…このっ…!」
バゴン
孫提督「ぶぎぃっ!!」
提督「…けんな…」
蒼龍「提督!?」
提督「この大バカやろぉぉぉ!!!!」
孫提督「ひ…ひぃぃぃ!!」
蒼龍(片足で…あんなパンチを打てるなんて)
ドサッ
提督「誰が!!」
ゴン!!
孫提督「ぷぎっ!!」
提督「誰がおまえの!!」
ゴン!!ゴン!!
孫提督「ぶひっ!!ひぃっ!!」
提督「誰がお前のミスの尻拭いを
したと思ってんだ!!あぁ゛!?」
バゴン!
孫提督「いだっっ…!!いだいぃよぉ!」
強靱な片足の筋肉だけで
勢いをつけ最初の一発は
その勢いのまま倒れながら打ち込み
孫提督を押し倒して
額に血管を浮かび上がらせながら
何度も拳を打ち込みました
度重なる拳の連打によって
頬がだんだんと腫れてきました
…でもこのままじゃ
女研究員「まちな…」
女研究員さんが孫提督に近づいて…
女研究員「ふんっ!!」
スパァァン!
孫提督「」キュゥ
ビロンとだらしなく伸びた
孫提督
女研究員「んぐぅぉぉっ!
いいってぇぇぇ!!」
思い切りひったたきました
女研究員「『あたしの』イーゴを
ボロボロにした罰だこのクソ提督……!」
彼女は
ちょっと涙目でした
…
ピクッ…
榛名「…?」グスッ
ピクン
榛名「…!?」
慌ててイーゴさんの胸に手を当てます
トクン…トク…トクン
榛名「…~!!」
それはとても弱く微かな
命の鼓動でした
こんなにも
冷たく傷ついた彼の体から感じる
弱々しい命の灯火に
希望が沸いてきました
榛名「イーゴさん!!…イーゴさん!
イーゴさん!!!」
必死でした
必死に彼の名前を呼ぶと
イーゴ「」ゴフッ
口から血を吐いて息を吹き返しました
窓の隙間から漏れる風のように
ヒュウヒュウと弱々しい呼吸音
でも…彼は
イーゴさんは『生きて』います
弱く鼓動し小さく息を吐いて…
そして―
重く閉じられた両目が開かれました
嬉しくて嬉しくてたまりません…
目の前で起きた奇跡によって
視界がどんどんぼやけていきました
まだ泣いちゃだめ…
こんなくしゃくしゃな顔…
榛名は恥ずかしいです
思わず俯いてしまいました
目の端からポタポタと雫がこぼれます
彼の顔を見たいのに…
榛名は…
今の榛名の顔は見てほしくなくて…
…でも……
…ポスン
頭に感じる優しい感覚
ぎこちない感覚
顔を上げるとー
イーゴ「い……i……こ」
イーゴ「イイコ…イイコ」
指の欠けた手のひらで榛名の頭を
撫でる
イーゴ「…ご安心くdaさい…大丈夫…ですよ」
『優しい笑顔の』イーゴさん
その右の黒目の端からは透明の涙
左の赤目から流れる―
体内のパーツが錆びて循環して
涙腺を通って流れる
イーゴ「ただiま…もどりまsiた…」
―錆び混じりの…
イーゴ「……榛名…お嬢…様」
―『錆びた涙』
榛名もそっと彼の頭を抱き寄せて
今度は嬉しさを手のひらに込めて
イーゴさんの頭に手を添えます
榛名「お帰りなさい……イーゴさん…」
…
-ある病院 手術室-
理科室にあるような…ほら…あれ
『人体模型』…
今のこいつは
まさにソレだよなぁ…
だって、頭部と喉…あとは
心臓と肺だけがさ生命維持装置に繋がれてるんだもんな
あ!これさ、ぶっちゃけ超良い教材だよな!
学校に売り込んだら結構儲かったり…
まぁ、それは置いといて―
女研究員「―気分はどうだい?」
イーゴ「ええ…とても良いですよ女研究員…」
女研究員「そうかい…まぁ最も…んな状態で
良いも悪いも無いかねぇ」
イーゴ「ははは、そうですね」
女研究員「…」
イーゴ「…」
女研究員「器用に脳と心臓…肺だけ残して…残り全ての細胞を浸食させるなんてな…」
女研究員「助かるとは思わなかったよ…」
イーゴ「私もです…」
女研究員「生体部分…ほとんど無くなっちまったがね…」
イーゴ「残ったのはこの頭と僅かな臓器…良い標本ですね」
女研究員「察しが良いな、それ思った」
イーゴ「ヤメテ下さいよ?」
女研究員「冗談だよ」
しばしの談笑
鎮守府での話しや
昔の話し、訓練の話し
まだ少し引きつりながらも昔と比べて表情が増えた
イーゴを見て、本当に嬉しくなった…
こいつ…本当に良く笑うようになったよなぁ…
女研究員「本当に良いのかい?」
イーゴ「はい…もう…『次』の私には
必要ありませんから」
女研究員「そうかい…」
イーゴ「女研究員…」
女研究員「…ん?どうしたんだい?」
イーゴ「今まで…本当に」
女研究員「おっとストップ」
イーゴ「…」
女研究員「死ぬみたいな事言うなよ…
あんたは今から
『生まれ変わる』んだからさ」
イーゴ「そうですね…」ニコリ
女研究員「…」
右手をイーゴの頬に当てて
次いで、額、頭部と撫でていく
顔の
火傷の部分はこいつの幹細胞を培養させて
作った皮膚を移植
少しだけ痕は残ったけどほとんど
わからないレベルだし、まぁ良かったわね
焦げ焦げだった髪もね
女研究員「良い顔だね…」
生命維持装置を操作して
生体部分に麻酔を流し込む
女研究員「…」
女研究員「おやすみなさいイーゴ…」
イーゴ「はい…おやすみ…なさい…ませ」
少しずつ閉じられていく両目
-…-
-システムシャットダウンします-
女研究員「お疲れさま…『イ-505』……」
-今日もお疲れさまでした-
-どうか良い夢を-
…
―~♪♪~♪
―これは?
―マザーグースだよ知らない?
―いえ…聞いたことないです
―ん~紳士だったら一つくらい
覚えてた方が良いね~
―オススメはこれだよ
僕たちもわたしたちも外へ出て遊ぼう
月の光が昼間のように明るいよ
大きな輪っかや小さな輪っかを
元気いっぱい転がして遊ぼう
食べたり寝てたりしてるより
友達と遊ぶほうが楽しいよ
はしごを上ったり塀から飛んだり
おなかがすいたらパンを食べよう
でもパンがなくなったらどうしよう?
そのときにはまた働いて稼ぐんだ
―…
―マザーグースの『Boys and girls』って歌だよ
―昔のイギリスの子供達はね
家の仕事の手伝いだったりしてなかなか
遊べる時間が無かったけど
―なんとか工夫して遊ぶ時間を確保したんだってよ
そんな意味を込めた歌なのさ
―今のあんたは、遊ぶとか、良くわかんないだろうけど…
―いつか、『人間』らしい…そんな日が来ると良いね
―…良くわかりません…
―今はわかんなくても…いずれ…ね
…
あの事件から数ヶ月間
目まぐるしい勢いで環境が
変わりました―
孫提督さんは
己の犯した罪の意識に
苛まれ自ら出頭しました
これには祖父に当たる元帥殿もさすがに
頭を抱えたようです
蒼龍さんは
「あんなに身勝手な提督に
着いていけるのはやっぱり
私しかいませんから~」
と言って今でも孫提督さんの帰りを
本営で待ち続けているようです
また、この事件を受けて
世論の反応は著しく
『対深海棲艦兵器は人間が持つには早すぎた技術だ』
という声が高まり
彼らの試験運用は撤廃され
彼らを作りだした企業は
信用を失って倒産しました
そして
初雪ちゃんと春雨ちゃん
阿賀野さんと能代さんは今でも
提督と一緒に○○鎮守府で主に
哨戒活動に勤しんでいるようです
一方で
満潮ちゃんと榛名、
そして女研究員さんは―
…
-数年後-
この艦娘専用の病院には
昼夜問わず
鎮守府内の修復施設で間に合わない炙れた
多くの艦娘が運ばれてくる
小破や中破はもちろん
大破の艦娘も少なくは無い
艦娘は皆一様に
若々しく、また美しく可愛らしかった
それゆえに
皮膚が捲れて血まみれ…
あちこちを骨折…
或いは内臓を撒き散らす…
そんな
苦痛に顔を歪めて
運ばれてくる彼女達の姿を見て
気を病む職員達が多くいた
それでも事実、私達のような医師職員がいなければ
たちまち、鎮守府にはまともに戦える子達はいなくなってしまうだろう…
いやな需要と供給のサイクルが出来あがってしまっている…
またこの病院では
治療が追いつかず
手遅れになってしまったことも多々あった…
俺が覚えている限りでは十本の指では足りない…
そして今日も―
医師1「大破の艦娘だ!慎重に運べ!!」
ストレッチャーに乗せられた
傷だらけの艦娘…
軽巡『北上』だった
医師1「内臓破裂…あとは火傷も酷い…」
血塗れの彼女の体…
彼女の顔の右半分はゴッソリ弾ぜて
筋肉が露出している
また
大量の血液を
失ったせいか顔は顔面蒼白だった
俺がストレッチャーを押してズンズンと病院の
廊下を進んでいくと
背後から涙声混じりの張り裂けそうな怒鳴り声が
聞こえてきた
大井「離せぇえ゛え゛!!」
思わず後ろを振り返ると
そこには毛先の跳ねた長いブラウンの髪の
女の子がいた
彼女も艦娘だ…
確か今、ストレッチャーの上で横たわっている子と
同じ鎮守府の
大井「北上さんを…連れてかないでよぉぉ!!
きた…
北上さぁ゛ぁん!!」
艦娘の中には、姉妹艦という
人間に置き換えれば家族ともいえるべきシステムの概念があった
船であった頃の記憶だろうか
この病院に運ばれてくる際に取りみだすのは
大体にしてそのような艦娘達だった
そんな彼女も、あちこちに火傷を負っていた
この北上という子に比べて随分と軽傷に見えるが
その姿勢はまるで自分のことのように必死だった
他の医師職員達に取り押さえられていた
医師2「君!落ち着きなさい!!」
医師3「大丈夫だから!
彼女は我々が責任をもって治療するかr」
大井「離せって…
言ってるでしょうがぁぁ!!」ゴン!
医師2「ぅあっ!!」
医師3「いって…ぇ!」
大井「北上さん…!!」ダッ
医師2「いてて…!?
あ!こら!!待ちなさい!!」
医師3「止まりなさい!!君だって
傷を負っているんだぞ!!」
大井「はっ…はっ…はっ…!!」タッタッタッタ
医師4「」スッ
彼女の前に立ちはだかる
小柄な比較的若い黒髪の医師
あいつは確か―
大井「…はぁ…はぁ…邪魔よ…!」
医師4「…」
大井「そこを退きなさい!!
退かないと…人相手だとしても
容赦しない!!」ギロリ
医師4「…」
医師4「」ニコリ
コツコツコツ…
少し古めかしい革靴を鳴らして
近づく彼
大井「なに……笑ってんのよ…!
こっち来んな!ふざけんじゃな」
白手袋に包まれた手で
彼女の手を握った
ガシッ
……ギュッ
ナデナデ
医師4「イイコイイコ」ニコリ
大井(!?!?!?)
大井(なな何なのこいつ!?)
…
…
-病室-
窓から見える風景はウンザリするくらい
青い…
北上さんとならどんな風景も
美しく感じられたのに…
一人だと、どんな風景も色褪せて
見えてしまう…
大井「…」ボケー
大井「北上さん…」ボソッ
…会いたい
呟いたあと、光が射し込む病室に
誰かが足を踏み入れた
ガチャ…キィ
看護婦「失礼します大井さん♪
お加減は如何ですか?」
長い黒髪の艶のあるストレート…
白いナース服
私が身を預けているベッドに
近づくと怪訝な顔をして
次の瞬間目を見開いた
看護婦「あ、大井さん!
ダメじゃないですか!
ちゃんと食べないと!」
私の目の前にある
病院食…
仕方ないじゃない…
食べたくないんだから…
ほんと耳障り
大井「……うっさいわね」ハァ
看護婦「もう!そんな事言わないで
ちゃんと食べないといくら艦娘だからって
治る傷も治りませんよ?」カチャカチャ
食器に手を触れて
箸でカボチャの煮物を
私の口元に持ってくる
香ばしい匂い
看護婦「はい♪」
大井「なによ…これ」
看護婦「あーん♪」アーン
頭に血が上った
大井「…!!」
気がつくと私は手を振りあげていた
ブン!
ガチャン!
彼女の手にぶつかる感触
カランカラン…
大井「気安く私に…
そんな事しないでよ…!」
看護婦「…ッ」
大井「私にそんな事して良いのは北上さんだけなの!!わかる!?」
大井「北上さんの病室教えてよ!!
この病院にいるんでしょ!?
会わせてよ!!!ねぇ!!!」ガシッ
看護婦「…」
大井「…お願いだからぁっ…!」
大井「なんでも…します…からぁ」
大井「北上さんに…
会わせて…くだ…さいぃ」ポロポロ
看護婦「」ギュッ
大井「!?」
看護婦「いいこいいこ♪」ナデナデ
私を胸元に
抱き寄せて頭を優しく撫でる彼女
これ…あの医者もやってた…
彼女の胸から伝わる一定のテンポの鼓動
鼻に届く微かな柔らかな香りは
私の荒ぶった神経を宥め続けた
北上さん以外に触れてほしくないのに
…なんで
なんでこんなに…落ち着くのよ…
看護婦「落ち着きましたか?」ナデナデ
…
ガラガラガラ…
再び訪問者
コツ…コツ…コツ
この革靴の音…
医師4「こんにちは大井…さん」ペコリ
医師4「?、看護婦さん?もう仲良く
なったんですね」
こいつ…あのときのヘンテコな医者…
看護婦「はい♪この通り♪」ギュゥ
大井「」クルシイ
正直苦しい…けど………
………いい匂い
医師4「それは良かった、ですが…
少し、弛めても良いのでは?」
看護婦「?」チラリ
大井「」クルチイ
看護婦「あ!すいません!」パッ
大井「いや…別に」ケホケホッ
医師4「怪我の具合はどうですか?
幸い大井さんは小破でしたので肉体の損傷も
酷くありませんでしたから…」
医師4「鎮痛剤の投与とあとは
自然治癒で充分修復可能でしたからね、良かったですよ」
医師4「あとは…『ここ』の問題ですよね
戦線復帰できそうですか?」
自分の左胸を抑えるヘンテコな医者
大井「…」
肉体的にはもう少し休養して栄養補給をすれば再び艤装を纏って
海に駆り出ることは可能…でも…
大井「先生…教えて…ください」
聞きたい…
…聞かなきゃ
大井「あの…きた…北上さんは…」
医師4「…」
大井「…」
看護婦「…」
ちょっと待って…
やだ…なんで黙ってるのよ…
…何か…何か言ってよ…
北上さんがいなくなったら…
…戦う意味なんて…
医師4「手は尽くしたのですが…」
…死のう
…
…
医師4「」クルリ
大井「?」
看護婦「」クスクス
医師4「入っておいで…」
ガラガラガラ…
車椅子…
北上「ヤホー、大井っち~」
大井「!?!?!?」
大井「な…!…え!?…えぇ!?」ワナワナ
医師4・看護婦「せ~の…」
車いすに座ったまま
何か看板を掲げる北上さん
北上「『ドッキリ大成功』」パンパカパーン
大井「」
北上「…」
大井「」
北上「…」
大井「」ウル
北上「…」
大井「き」ウルウル
北上「…」
大井「ぎだがみざぁぁぁぁん゛!!!」ガバッ
ベッドから転がり落ちる
そして車椅子の彼女に
顔の右半分を包帯で覆った
北上さんに抱きつく
北上「い、痛いよ大井っち」
大井「ぎだがみざぁん!!
あ゛ぁ!
きだがみざはぁん!!」ギュムゥ
キタカミサァァン!!
オオイッチー
キタカミシャァァン!!
オオイッチー
看護婦「意地悪ですね」クスクス
医師4「北上さんがサプライズを仕掛けたいと…」
医師4「患者さんの要望に
お応えしただけなんですけどね~」ウーン
…
-病院 屋上-
昨日からずっと晴れているせいか
屋上に設置されたベンチもカラカラに乾いています
そのベンチに腰掛ける私と先生
耳を澄ますと
近くの神社にある林から
『蝉時雨』が聞こえてきます
すっかり夏ですね~
そういえば初めて先生とお会いしたときも
今日みたいに太陽が照りつく
とても暑い日でしたね…
…
ジーワジーワ…
ミーンミンミンミィィン…
ジジジジジ…
看護婦「イー…あ、いえいえ
…『先生』、北上さんの手術
お疲れさまでした」
ジーワジーワ…
ミーンミンミンミィィン…
ジジジジジ…
医師4「とんでもない
はるn…『看護婦』さんもお疲れさまです」
ジーワジーワ…
ミーンミンミンミィィン…
ジジジジジ…
看護婦「…暑いですね」
医師4「ええ、とても…」
ジーワジーワ…
ミーンミンミンミィィン…
ジジジジジ…
看護婦「…先生」
医師4「…はい」
ジーワジーワ…
ミーンミンミンミィィン…
ジジジジジ…
看護婦「…あの二人…どうなるんでしょう」
医師4「北上さんは、右腕切断、
片目の欠損、あとは一部臓器の人工化」
医師4「…戦線復帰は無理です」
医師4「大井さんも…
あの不安定な状態では…」
看護婦「…そうですね」
ジーワジーワ…
ミーンミンミンミィィン…
ジジジジジ…
医師4「」ゴソゴソ
医師4「これが彼女たちの鎮守府に送る診断書です」ペラ
看護婦「…」
看護婦「…!!」
診断書『軽巡北上及び大井両艦は
入念な診断により戦線復帰は難しいと判断
医療方針に則り、解体を推奨』
看護婦「これって…!」
医師4「あの二人は…
『別の生きる道』を歩んだ方が良いと」
医師4「もちろん、二人の合意の上でですが」
ジーワジーワ…
ミーンミンミンミィィン…
ジジジジジ…
…
…
-遊園地-
ガヤガヤ…
ザワザワ…
蒼龍「あ!次あれ!あれ乗りましょー♪」ピョンコピョンコ
孫提督「そ、蒼龍!ちょ、ちょっと休憩しましょう!」ゼェゼェ
蒼龍「やだやだやだぁ!
早く乗らないと日が暮れちゃいますよー!」
孫提督「はぁ…はぁ…そ…ソフトクリーム買ってあげますから」
蒼龍「うっ!」ピタ
孫提督「…チョコとバニラのダブルで?」
蒼龍「うっ!うっ!!」
蒼龍「~」ウーン
蒼龍「チュロス付きで!!」
孫提督「…か、かしこまりました」
蒼龍「ヤッタヤッタ♪それで手を打ちましょう!」
孫提督「ふふふ、さぁ、行きましょうか『蒼龍お嬢様』」
孫提督「お手をどうぞ」スッ
蒼龍「はい♪孫提t…ううん」
蒼龍「あなた♪」
…ギュッ
…
-病院 屋上-
バァーン!
蝉時雨を裂くように
勢い良く屋上と屋内に続くドアが開かれました
そこから小柄な作業衣に身を包んだ
あの頃からちょっと髪を伸ばした
―満潮ちゃん
ちょっとご立腹のようです
満潮「こらぁぁ!バカ『イーゴ』!!
メンテナンスの時間だっつってんのに
何でラボに来ないのよ!!」
イーゴ(医師4)「あれ?もうそんな時間ですか」
満潮「『もうそんな時間』よ!
あんたのその義手は昔と違って
デリケートなんだから定期的なメンテが
必要って何度言ったらわか…んの…!?」
満潮「ちょ、ちょっとイーゴ!
なんで…
なんであんたが
『榛名』と一緒なのよ!」ワナワナ
榛名(看護婦)「休憩時間ですので!
榛名は大丈夫です!」フンス
女研究員「久々聞いたねそれ」ヒョコ
満潮「~!!」ウガァ
イーゴ「」コンニチハ
満潮「ボサっとしてんじゃないわよ!!
ほら!午後の検診が始まる前に
さっさと行った行った!!」
イーゴ「は…はい」ヨッコイショ
女研究員「ん、いつも通り一階の
ラボで職員待ってるからね~
しっかり診てきてもらいな」
…
―イーゴさんは、あの事件の後
自身の体を非戦闘型に改造するよう
女研究員さんに申し出ました
強靱な怪力をもつ『破壊の手』を捨て
誰かの命の綻びを紡ぐ『再生の手』を得ました
そして医療の道へ
私…榛名と満潮ちゃん、女研究員さんは
彼についていき
榛名は看護婦として
女研究員さんはそのまま人工臓器や義肢の
点検・設計の職員
満潮ちゃんは女研究員さんに弟子入りして
同じラボでお手伝いをしています
彼とともに過ごす毎日はとても
充実していて
満潮ちゃんとも良い関係を保っています
ただ…
榛名以上にイーゴさんに密着する時が
あるので…
ちょっと榛名は
大丈夫じゃないときがあります…
あ、そうそう、それと
以前『あのお二人』に偶然お会いしたんですけど
蒼龍さんは釈放された
孫提督さんとご結婚されたようです
孫提督さんは文字通り人が変わったようでした
元が良かったのか
痩せて、格好良かったですよ
性格の方も
すっかり改心されたようで
今では気遣いができる
とても爽やかな愛妻家に
なっていました
その柔らかな物腰はまるでイーゴさんのような
『紳士』でした
…
女研究員「んでさ」
満潮・榛名「なによ(なんです)?」
女研究員「どっちが正妻?」
満潮「私よ!」
榛名「榛名です!」
満潮「あぁ?」ギロリ
榛名「えぇ?」キッ
女研究員「おぉう」ニヤニヤ
女研究員「あ、そ・れ・と」
女研究員「朗報朗報~♪」
満潮・榛名「「 え? 」」
女研究員「人間だった頃のイーゴの精子さ
実は精子バンクに冷凍保存して預けてたんだよね~♪」
満潮「…」
榛名「…」
満潮「!!!!」
榛名「!!!!」
女研究員「ん・で・さ~♪」
女研究員「どっちが正妻?」ニッコリ
-錆びた涙-完
おしまい♪
ここまで、お疲れさまでした。
前篇・後篇と分けるまで長くなったのは今回が初めてで
まさか筆休め程度に手を付けたテーマがここまで広がるとは思いませんでした。
戦闘描写が不慣れで中々伝わりづらい箇所、
他にも分かりづらい箇所が多々あり読みにくかったかと存じます。
この場をお借りして謝罪申し上げます。
また、長々とお付き合い頂いて本当にありがとうございました。ではでは
い、イーゴが・・・
ウソだ、そんなバナナ(´;ω;`)
目に汗が・・・
>ひまな人さん
コメントありがとうございます
イーゴくんは…タフですよ(ニッコリ
そろそろおわりますので
どうか最後までなまぬるくお付き合いくださいませ♪
まったくイーゴめ
目から汗が止まらないじゃないか(T_T)
らんぱくさん! なめくじのごとくお供します!!(笑)
イーゴ……うわあああああ!!
目から汗ですわ……
最後までつっぱしってください!
>ひまな人さん
毎回コメントありがとうございます
イーゴくんは不器用なのでこのような選択しかできないんです
悪しからず
これはなんと かわいい なめくじさんでしょう♪
>ラインさん
毎回コメントありがとうございます
大丈夫です!イーゴくんはまだ生きてます!
それでは…最後までどうかどうか
泣かせるなあ・・・いい男だぜイーゴ・・・
完結まで応援してます
>6コメのSS好きの名無しさん
コメントありがとうございます
イーゴくんのこと忘れないでね♪
拙い作品ですがどうか最後まで
お付き合い頂けると幸いです
お疲れ様でした!!
長大作でしたね……本当にお疲れ様です!
イーゴのことは忘れませんぜ……
次回作も楽しみにしてます!
ブラボー\(^o^)/
うん、最高。
アニメ化しよう、うん絶対メディア化
そういえばpixivに過去作品を〜って言ってたのはどういうことすかね?
当方三月末から毎日拝見させていただいておりました
どういう展開になるのか毎夜毎夜楽しみで更新が楽しみで楽しみで…
完結お疲れ様です
紳士かっこいいぞ紳士
でもこの紳士、女性に対しては些か鈍そうな…そんなイメージが…
ああ、目かラ 地球の水ガ 溢れてクる
完結 オ疲れ様デす
蒼龍ちゃんが幸せそうでなによりです。
えっ、違う?
ああ、個人的には満潮が正妻だと思いま・・・ん?砲撃音?アレ、あの徹甲弾こっちに向かってきr(ドカァァァン!!
孫提督が改心して良かった…死ぬまで罪に苛まれて刑務所だと思ってたので。
あと、榛名が妻で満潮が娘でいいんじゃないかな…
このコメントは削除されました
>葉っぱの妖怪さん
最後までお付き合いありがとうございました
ぶっちゃけ言うと最初は蒼龍もヒロイン枠の中に入ってました
葉っぱの妖怪さん…ちくしょう!無茶しやがって…!
>13コメのSS好きの名無しさん
最後までお付き合いありがとうございました
書いてて途中で『コイツどうしよう』って悩んだ結果
ああなりました。
榛名が妻、満潮が娘…
…天才ですか!?握手しましょう
完結お疲れ様でした。
主人公は死なない、ハッキリ分かんだね。
榛名と満潮で正妻の座を争ってますけど、女研究員は参戦しないんですかね?(チラッ
>コルベニクさん
コメントありがとうございます
最初はイーゴが死ぬENDも考えてました
でも書いてる内に愛着沸いてきてしまって~
女研究員にとってイーゴは弟みたいなものなので~
前編後編どちらも読ませていただきました!
イーゴが死ななくて良かったです!めちゃくちゃ感動しました!
こんないいSS久々に読んだ気がします!
>げんまいちゃさんへ
うわぁぁぁ!嬉しいです♪紳士は素敵ですよねー
感動してもらえたようで、結構難産な作品だったのでそう仰って貰えると
なんかもう感無量です
今後とも、お時間があればよろしくお願いします
ではでは
みんな別の道を歩んで行ったのですね・・・
狸の提督さんも真人間になってよかったです。