2019-11-10 08:03:59 更新

概要

かつて大川夕禅を始め6人の提督が所属していた第3鎮守府
今を預かるヒトのお話


前書き

皆さんこんにちは!初めましての方は初めましてメットールといいます!
今回はスピンオフ3回目で今回は度々出て来ている第3鎮守府のお話を1つ。ただ出てくる人物が多い為ちょいちょいのんびり書こうと思っていますことを先にお伝えさせて頂きます。
誤字脱字ありますがどうぞよろしくお願いします。





本編の前に……




主な登場人物



カイン

第3鎮守府を預かる提督の1人して穏健派深海棲艦達の現指導者。階級は中佐。年齢は大体20代半ば。

非常に珍しい深海棲艦の男性で色白のイケメン。性格も穏やかで人も良く礼儀正しく人望も信頼もある人物だが時には誰もが無茶だと言う事も平然と行う為付いた渾名が『大馬鹿野郎』。敷島龍生のもとで格闘技を習っており腕っぷしはかなりのもの。現在彼を巡り艦娘4人と海軍棲艦1人が修羅場と駆け引きを繰り広げているが本人は台風の目に入っているかの如く状況に気が付いていない。




沖久保翼

第3鎮守府に所属するもう1人の提督。階級は少佐。沖久保前元帥の孫娘で祖父に憧れ海軍の門を叩き入隊した。艦娘達や海軍棲艦達からは翼ちゃんと呼ばれている。

やる気もあり努力家なのだが空回りが多くドジっ娘な一面が多々あるためみんなのイジラレ役となっている。

カインとは自身の祖父とカインの母親が再婚したため間柄は義理の兄妹であり翼は頑張ってお兄ちゃんと呼ぼうとしている。




鈴谷

第3鎮守府に所属している艦娘でカインを巡り日々修羅場を繰り広げている1人。階級は特務少尉。

ノリが良く気遣いも出来る良い娘で自身曰くリアルラックに恵まれているとのこと。元は三笠中将の部隊にいたが結果を残す事が出来ず仲間内から良い扱いを受けていなかった。武蔵が三笠に対して反旗を翻したのを機に武蔵についていき第3鎮守府へ下る。




瑞鶴

第3鎮守府に所属している艦娘でカインを巡り日々修羅場を繰り広げている1人。階級は特務少尉。

真面目で活動的な性格の努力家なのだが戦果を残すことが出来ずに前の部隊では役ただすの烙印を押され燻っていたが三笠に反旗を翻した武蔵に誘われ第3鎮守府へ下った。その時出会った鶴姫とは双子の様に仲が良い。




鶴姫

第3鎮守府に所属している海軍棲艦でカインを巡り日々修羅場を繰り広げている1人でサイパン島で保護された深海鶴棲姫。愛称は鶴姫、鶴ちゃん

瑞鶴が活動的に対して穏やかな性格で知的好奇心が旺盛で海軍棲艦の例に漏れずコック長の元で修行し料理の腕前は文句なし。修復不可能な程元の艤装が大破したため今は瑞鶴の艤装を元にし作成された装甲空母艤装を使っている。




如月

第3鎮守府に所属している艦娘でカインを巡り日々修羅場を繰り広げている1人。階級は特務曹長。

元は第1補給鎮守府に所属だが三笠のクーデターにより鎮守府を追われた為第3鎮守府へ姉妹や天龍、長良、鳳翔や潜水艦娘達と共にやってきた。

元ストリートチルドレンでそこで培った物事や状況が良く見える眼を持っていて好機を逃さず虎視眈々と狙う娘。




白露

第3鎮守府に所属している艦娘でカインを巡り日々修羅場を繰り広げている1人。階級は特務曹長。

良くも悪くも鎮守府のムードメーカーであり一番を目指す性格。物事をはっきりと言うため前の部隊でトラブルを起こし大本営にて保護観察処分を受けていたが反旗を翻した武蔵に助けてもらいそのまま第3鎮守府へ付いてきた。




武蔵

第3鎮守府に所属する艦娘であり沖久保翼の秘書官及び後見人。階級は特務少佐。

元は沖久保前元帥の所属艦娘であり大本営に所属していたが三笠がクーデターを起こした為戦力を集め第3鎮守府に合流する。武人肌で正々堂々且つ柔軟な思考も持ち合わせている人物で翼との関係は出来の悪い妹の面倒を見る姉であり、カインに対しては親しみを込めて大馬鹿野郎と呼んでいる。




沖久保義道

海軍前元帥。三笠が起こしたクーデターの責任を取り大堂大将を新元帥に任命し辞任。現在は第3鎮守府にミズキと共に隠居中。

竹を割ったかのような豪快な性格であり機転が効き一筋縄ではいかない人物で孫娘の翼の成長に影響を与えた。またミズキと再婚したことにより何故か艦娘の不老長寿の恩恵まで得てしまった。

齢70出前だが某プロレス団体の会長並みに筋肉モリモリのマッチョであり、益々お盛んな元気なおじいちゃん。




ミズキ

第3鎮守府で暮らしている空母水鬼で皆からお母さんと呼ばれている人物。

戦争の影響で各地を転々としサイパン島に皆と潜伏し密かに当時前元帥に保護されていた港湾棲姫に情報を流し後に救助された。

どんな状況下でも肝が座って落ち着いておりサイパン島では皆の心の支えとなり、中でもその時に保護した榛名の事を誰よりも気に掛けていた。

現在は沖久保前元帥と再婚し共に隠居しておりカインを巡る修羅場に榛名をぶち込むことを考えている。




榛名

第3鎮守府に所属している艦娘。階級は特務少尉。

元三笠中将の部隊に所属し、金剛4姉妹として行動していたが、どんどんおかしくなっていく部隊に疑問を持ち隊から離脱、そこでサイパン島で自分達の実態を見て三笠の部隊を殲滅しさまよっているところをミズキ達に保護された。現在は艤装を封印し、試作艤装のテスターをしている。

カインとの関係は不明だが良好で鈴谷達からは最大の宿敵と思われている。




______________________







ここは、本土にある第3鎮守府。この昼下がりの食堂の一角で5人の女の子達が何やら会議をしていた。




鈴谷「みんな揃ったね。じゃはじめんよー」




如月「第12回」




瑞鶴鶴姫「「提督さん会議!」」




白露「いえーい!」




鈴谷「まず本題に入る前に1つ。鶴ちゃんがガッツリと抜け駆けしてました。」




鶴姫「エヘッ☆」テヘペロ




白露「まさかだよねー」




瑞鶴「まあ、驚くことでもないわよ。それに」




鶴姫「瑞鶴?」




瑞鶴「鶴姫はやってそうな感じはした」(ーωー)




如月「まあ、海軍棲艦の方もいますから誰かしら行動は起こしますわ」




鈴谷「でさー、鶴ちゃん。感触は?」




鶴姫「ウーン、アンマリ……」




鈴谷「鶴ちゃんでもダメかー」突っ伏し




如月「やっぱりまず司令官に恋心というものを理解させる必要があります」




白露「ガードが硬い以前の問題だよねー」




瑞鶴「でもさー如月ちゃん。それってつまり誰かが提督さんの初恋相手になるってことだよね?」




如月「そうなりますね」




瑞鶴「誰が?」




鈴谷瑞鶴鶴姫如月白露「「「「「勿論私が!」」」」」




皆がそう言ってしばし沈黙した。その沈黙の所へ




熊野「…貴方達は何をしてるんですの?」




食堂へやって来たのは熊野と天津風、初風、雪風、時津風。熊野が不気味に微笑んでいた5人にツッコミをいれた。




鈴谷「おー熊野ー、ちぃーす」




熊野「お止めなさい鈴谷、小さい子が真似をしてしまいますわ」




時津風「ちぃーす」




鶴姫「チィース」




熊野「ご覧なさい」ハァ




鈴谷「メンゴメンゴ」ニッシッシッ




雪風「何してたんですか?」




白露「第12回提督会議ー」




初風「もうやってるの?それ昨日確か『提督が私達の魅力に気が付くのを待つ』って言ってなかった?」




如月「言いましたわ。ですがその日の夜鶴姫さんが夜這いをしようとして私たちが止めた為緊急に開くことにしました」




鶴姫「チャンスダト思ッタノニー」ブーブー




天津風「何やってるの、よ、夜這いだなんて…」///




鶴姫「夕禅中将サン達ガ言ッテマシタヨ「皆寝室に突撃した」ッテダカラ突撃シマシタ」ピース




白露「部屋に突撃寸前で取り押さえたけどね」




時津風「よくわかったねー」




鈴谷「瑞鶴のおかげでねー」




瑞鶴「なーんか鶴姫限定だけどわかんだよねー、なんとなくだけど」




熊野「と言うか鈴谷。あなた今日秘書官の日でしょう?仕事はどうしたのかしら?」




鈴谷「今日の分の執務なら午前中に終わったよー。今提督は前元帥とドレイク隊の人らと筋トレ中」




初風「早いのね…」




如月「前元帥や大川司令官達にみっちり指導されてましたからね」フフッ




熊野「納得ですわ」




白露「……!」




鶴姫「ドシタノ白露?」




白露「私の『提督センサー』が反応した……!」




天津風「は?何言ってるのよ?第一誰が抜け駆け……」




鈴谷瑞鶴鶴姫如月白露「「「「「はっ!?」」」」」




何かに気が付いたのか5人は一斉に駆け出し食堂を後にしたのだが




ゴッチーン!!!




翼提督「きゃあ!」




白露「いったい!!」




武蔵「お前ら廊下を走るな!!」




5人「ごめんなさーい!!」




熊野「まったく…」フフッ




雪風「熊野さん楽しそうです!」




熊野「そうですわね、楽しいですわ」フフッ




そう言うと誰にも聞こえない声で




熊野「鈴谷があんなに楽しそうで良かったですわ……」ボソッ




鈴谷の笑顔をみて不意に独り言をこぼした。




______________________




第3鎮守府内 トレーニングルーム




そこは鎮守府の人間なら誰もが入る事が出来る部屋の1つ。今日もトレーニングに精を出す兵士達に混じり沖久保前元帥が300kgのベンチプレスで元気にウェイトトレーニングをしていた。




沖久保前元帥「ふう、今日はこの位にしとくか」




もうすぐ齢70だと言うのにも関わらず鍛え抜かれた身体はまさに歴戦の兵を彷彿とさせ兵士達の尊敬を得ていた。




ドレイク隊隊員「やはり凄いな。前元帥殿は」




ドレイク隊隊員「よく300kgも持ち上げられるな」




ドレイク隊隊員「俺達もうかうかしてられん」




それを見たドレイク隊の隊員達がトレーニングに熱を入れるなかちょうどカインがロードから帰ってきたようだった。




カイン「僕もこれくらいにしときましょう」




沖久保前元帥「おう、カインお前も上がりか?」




カイン「ええ、これ以上はオーバーワークですしロードで終わりにします」




沖久保前元帥「うんうん、自分の限界を理解してトレーニング出来ているな!感心感心。と客だぞ、大馬鹿野郎後ろだ」




カイン「えっ?あっ、榛名さん」




榛名「お疲れ様です。ミズキさんからお2人に持っていってと、どうぞ」ニコッ




沖久保前元帥「悪ぃな」つ水素水




カイン「ありがとうございます」つ水素水




沖久保前元帥「じゃあ、儂は先に上がるぞ。お前らも程々にな!!」




ドレイク隊「サー、イエッサー!」




沖久保前元帥「じゃお2人さんもな」




カイン「はい、お疲れ様です」




とカインは返事を返し榛名は会釈をして返した。前元帥はヒラヒラと手を振りトレーニングルームから出ていった。




カイン「最近、どうですか?テスターの方は?」




榛名「はい。最近は順調ですよ。それで……」




ドレイク隊小隊長「お前ら、ロード行くぞ。ルートはいつも通りだ!」




ドレイク隊「サー、イエッサー!」




ドレイク隊小隊長「よし行く…ぞぉ!?」チラッ




ドレイク隊隊員「どうしました?隊ちょうぅ!?」ビクッ




彼らが見たのは物陰からカインと榛名を見ている鈴谷達5人だった。




ドレイク隊隊員「じょ、嬢ちゃん達何やってんだ?」




如月「如月達のことはお構い無く」ニコニコ




ドレイク隊小隊長「お、おう悪ぃな。じゃお前ら行くぞ」




ドレイク隊隊員「は、はい」




ドレイク隊の隊員達はロードへ行きそこに鈴谷達が残ってカイン達を監視していた。




白露「よく2人っきりになってる気がするんだけど。榛名さん」ヒソヒソ




瑞鶴「てかいつもタイミング良すぎなのよ、どうなってるのよ」ヒソヒソ




鈴谷「まあ、十中八九差し金だよねー」ヒソヒソ




鶴姫「差シ金?」ヒソヒソ




如月「こんな事するのは1人しかいないわ」ヒソヒソ




鈴谷「あの人もあたしらの嫌がらせとかじゃなくてもっと別の意味でやってるから流石にいえないっしょ」ヒソヒソ




白露「何?別の意味って?」ヒソヒソ




瑞鶴「意味ってか考え方よ、確か……」ヒソヒソ




______________________





天津風「そもそもどうして鈴谷さん達は司令官に首ったけなんですか?」




鈴谷達がいなくなった食堂では熊野達5人と執務終わりで入って来た翼、武蔵に対して鈴谷達のカイン対しての事で質問をしていた。




武蔵「そうだな、確かお前達はここに来て日が浅いからな、当然か…」フム




雪風「首ったけってなんですか?」




天津風「後で説明してあげるからちょっと待って」




初風「それに、こういう女の争いって大抵キャットファイトになりますよね?それなのに抜け駆けはしてますけど互いに貶し合ったりとかのネガキャンの類いってしてませんし」




武蔵「ほう、良いところに気が付くな」




時津風「ネガキャンって何?」




初風「後で説明してあげるわ」




熊野「……まあ、あの子は自分が受けたことを相手にしたくはありませんわね」ボソッ




翼提督「熊野さん?」




武蔵「なら教えてやろう。時間はいいな?」




天津風「あっ、はい。大丈夫です」




武蔵「では明石の所へ向かうぞ」ガタッ




そう言って武蔵は席を立ち食堂を出ていった。熊野さん達は疑問を持ったまま武蔵に付いて行って一緒に工廠へと向かった。




雪風「どうして明石さんの所へ行くんですか?」




武蔵「口で説明するより見せた方が早いからな、それだけだ」




初風(見せる?)




武蔵「明石ー!!今大丈夫かー!?」




明石「はーい!只今ー!!」




直ぐ工廠へ着き、武蔵は開口一番に明石さんを呼んだ。奥の方でガチャガチャと音が響き返事をしながら明石が出てきた。




明石「武蔵さん!それに熊野さん達もどうしました?」




武蔵「いきなり押し掛けてすまないが明石、榛名と鈴谷と瑞鶴、如月、白露の最近の艤装適合率表を見せてくれないか?」




熊野(うん?それって本来提督が持っているものでは……?)




明石「ちょっと待っててくださいね~、確かここに…ありましたありました。こちらです」




と、明石さんが奥の棚から出したのは鎮守府に所属する艦娘達の艤装データが記載されたファイルだった。そして明石さんは榛名さん達5人のページに開いて武蔵に渡した。




武蔵「うむ、すまない。すまないが5人共、これを見て欲しい」




武蔵は明石さんから渡られたファイルを熊野さん達に見せた……




天津風「えっ……!!鈴谷さん適合率92%!?瑞鶴さんは88%って……!」




時津風「榛名さんが93%って一番高いねー」




ファイルのページにはこう記載がされていた。




戦艦 榛名 適合率93%

航空巡洋艦 鈴谷 適合率92%

正規空母 瑞鶴 適合率88%

駆逐艦 如月 適合率90%

駆逐艦 白露 適合率87%




5人の高い適合率に驚きの声を上げるが1人だけ




熊野「そんな……!どういうことなんですの!?」




熊野さんのだけは驚き方が違うようだった。まるで辻褄が合わないかのように




天津風「どうしたんですか熊野さん?」




熊野「どうしたもこうしたも……」




とここだけ言うと口を覆う様に手で押さえた。明らかに動揺している。




時津風「どうしたの?一体?」




武蔵「なら私が答えよう。明石すまないが」




次に武蔵から出た言葉が…




武蔵「9ヶ月前の、榛名達が来たばかりの頃の適合率表を見せてくれ」




明石さんは何かを察したのか「わかりました」とだけ言うと奥の部屋に引っ込んでしまった。2分くらい経った時に1つのファイルを持ってきた。そしてこんな事を言ってきた。




明石「5人の為にこちらの情報は他言無用でお願いします」




そう言ってファイルを見せてくれた。その内容が……




初風「ちょ、ちょっと!どういうことよ!?」




一番に目を通した初風ちゃんが反応した。私も自分の目を疑ってしまう内容だった。




時津風「え~、何々……?」




翼提督「鈴谷ちゃんの適合率23%!?これって……!?」




雪風「皆さん、なんでこんなに低いんですか?」




そこにはこう記されていた。




戦艦 榛名 適合率31%

航空巡洋艦 鈴谷 適合率23%

正規空母 瑞鶴 適合率22%

駆逐艦 如月 適合率30%

駆逐艦 白露 適合率29%




武蔵「これは、ここに来た時に計測したものだ」




そのファイルを見ていた天津風ちゃんが何かを思い出したかの様にこう発言をした。




天津風「あの、これって鈴谷さんと瑞鶴さんが三笠の部隊にいた時『落ちこぼれ』って言われてたのと関係ありますか?」




武蔵「大いに関係がある。相棒よお前でも説明出来るだろう?」




翼提督「う、うん」




雪風「どうして適合率が低いと落ちこぼれなんですか?」




翼提督「まず艤装について説明するね。まず艦娘に取って艤装は命と同じ位大切なものなのは知ってるね?」




時津風「うん」




翼提督「皆も知ってると思うけど艤装の適合率の平均は大体70%。中には著しく高い人も出てくる時があるの。例に出すと古鷹さんとか時雨ちゃん。後は満潮ちゃんと木曾さんあたりかな?適合率が高ければ高い程艤装本来の力と別で潜在的な力の2つが両立出来てスペック以上の能力を発揮するの」




初風「その人達って適合率90以上の人達ですよね?それであれ程……」




翼提督「でもね、その逆も出て来ちゃったの」




天津風「逆って、適合率が低い人ってことですよね?それが……」




時津風「それって力が上手く出せないってことー?」




武蔵「それ処か艤装との連結が上手く行かず航行の段階で支障が出るレベルだ」




翼提督「流石にそこは訓練してからだけどね」




武蔵「だが榛名は艤装のハンデがあるにも関わらず戦果を残せたのは狙撃の腕とあいつ自身自覚がないみたいだが切れ者だったからだ。まあ、三笠はおろか金剛達も気付いてなかったみたいだが」




翼提督「如月ちゃんに関しては戦闘に向かない睦月型の艤装ってこともあって後方の鎮守府に配属されたのと、睦月ちゃん達自体が気にしてなかったの」




武蔵「白露に関しては適合率云々よりあいつの行動と言動が原因で追い出されたがな」




初風「行動と言動?」




武蔵「気になるなら白露自身に聞いてみるといい、中々に面白い」クックックッ




雪風「武蔵さん嬉しそうです」




武蔵「まあな、それが面白かったからここに誘ったんだかな」




とひとしきり武蔵は笑った後、神妙な面持ちで切り出した。




武蔵「だが問題は鈴谷と瑞鶴だった。さっき天津風が言ったように2人は三笠の部隊にいた」




雪風「何が問題だったんですか?」




武蔵「当時、ある程度の鎮守府があったがその中でも一番の戦果を挙げていたのが当時の第3鎮守府の面々だった。三笠の部隊はそのダブルスコア下だった。三笠は少なくとも戦艦艦娘5人、正規空母娘が4人、重巡洋艦娘多数、奴の配下も含めれば第3鎮守府の艦娘の倍の数がいたにも関わらずだ」




熊野「…」




武蔵「だが三笠はそれで良しとしなかった。『艦娘至上主義』を掲げ、海軍を自分の物にし深海棲艦を殲滅し艦娘の力を使い自分たちが人類を我が物にする。これを成し遂げる為にも沖久保元帥、第3鎮守府が邪魔だった」




ここまで言って武蔵は咳払いをした。話が逸れたのが自分でもわかったのだろう三笠中将とはソリが合わないってずっと言ってたもんね。その中でも熊野さんがずっと不機嫌なのが気になった。




武蔵「話が逸れてしまったな」




武蔵は一呼吸いれて続けた。




武蔵「三笠は自分達の中で戦果を挙げている者を重宝していた。例を上げるなら金剛4姉妹、大和、赤城と加賀、翔鶴、摩耶と鳥海、神通、那珂、矢矧などだな。その者達の士気を上げ、戦果を挙げるならある程度の事には目を瞑る様になった」




天津風「?それってどういう……」




熊野「様はいじめの容認ですわ」




その言葉を聞いていた天津風ちゃん達はギョッとして衝撃を受けていた。私は武蔵から聞いていたが良い気持ちにはなれない。




武蔵「簡単に言うとな、隊内での暴行八つ当たり、任務での杜撰な報告、理不尽な罰則、挙げ句の果ては盾変わりでの出撃だの艦娘が出て来始めた時のブラックな事を平気でやらせていた」




雪風「そんな……!」




時津風「ほんとに…?」




熊野「全て事実ですわ」




2人の戸惑いに熊野さんがピシャリと言いきった。明らかにイライラしている。




天津風「じゃあ鈴谷さんって……」




熊野「ええ、その標的の1人ですわ……!」




武蔵「…すまないな、熊野」




熊野「仕方ありませんわ、鈴谷の場合は中心で行っていたのは摩耶と鳥海でした。瑞鶴さんは翔鶴と赤城が中心でしたわ」




初風「えっ?翔鶴さんって瑞鶴さんの姉妹艦で姉に当たる人ですよね?なんで……」




翼提督「最初は面倒を見てたらしいんだけど……」




武蔵「奴は養成学校からエリートでな、同じ翔鶴型として片割れが落ちこぼれだったのが許せなかったんだ」




熊野「それがとうとう爆発しましたの、瑞鶴さんに向かって『こんな落ちこぼれと私を一緒にするな!私はこんな奴とは違う!』と皆の前で言い放ちました」




天津風「酷い……!」




熊野「ええ、本当のことですわ。信じていた者に裏切られた瑞鶴さんはその場では悪態を付いていたものの夜私達の部屋に来て一晩中泣いていました」




4人が驚愕したようにショックを受けて黙ってしまった。私も皆になんと声を描ければいいかわからない。わからなかったが




武蔵「しばらくたって三笠がクーデターを起こし、沖久保元帥を拘束した頃だ。その情報を得た私はすぐに反旗を翻し共に戦う者を募った。その時白露に熊野達の事を聞いて熊野達を引き込んだんだ」




時津風「それでなんで適合率が上がったのー?」




武蔵「それはな、カイン、あの大馬鹿野郎のおかげさ」




初風「提督の?」




武蔵「ああ、あれを見た時は流石の私も驚いたよ。艤装適合率を上げる事が出来る奴なんて初めて知ったからな」




天津風「それがこの表ですか?でもこれって…!」




武蔵「『同調現象』と奥方が言っていたな。奥方にもわからんらしいがあの大馬鹿野郎は何故か『自分と同調した者の潜在能力を引き出して艤装を目覚めさせる』ことができるらしい。今のところ解っているのが適合率が30%程しかない者しかそれが起きていないと言うことだ」




翼提督「そういえば皆って鈴谷さん達と出撃したことなかったっけ」




時津風「ないよー、どうしたの?」




武蔵「榛名もそうだが鈴谷達は適合率だけじゃなくある状態のみだがそれぞれに身体的に特徴が出る。例を上げると鈴谷は反射神経が異常な程高くなり航空巡洋艦の艤装にもかかわらず軽空母艤装も同時に使えるようになり、如月は視野が異常な程広くなり暗視も出来艤装の索敵能力がはね上がる、後何秒で会敵するなど放たれた砲弾が何秒で何処に到達するとかが分かるようになる」




時津風「なんかすごそうだねー」




初風「あら…?」




翼提督「どうしたの?初風ちゃん」




初風「如月さんのってそれ空間認識能力ってやつですよね?それ普段から使ってるような…」ウーン




武蔵「元々素質はあったらしい、が艤装の同調現象後艤装を装備してなくてもはっきりわかるようになったそうだ」




雪風「それは他の皆さんもあるんですか?」




武蔵「ああ、確認されている。だからあいつらはカインに首ったけになった」




雪風「?」




天津風「雪風にはまだわからないかしらね」




武蔵「はしょって言えば感謝の念から恋愛感情に変わるのが時間の問題だったんだよ」




______________________




鈴谷「っくしゅっ!」




瑞鶴「鈴谷ー風邪ー?」




鈴谷「違うよ!どうせまた熊野あたりが噂してるっしょ」




如月「それにしても困りましたね…」ウーン




そう如月が言うと5人が頭を抱えるように唸った。それの理由が…




白露「どうするの?まさか榛名さんが…」




鶴姫「デート、デスカ」




瑞鶴「どうするもこうするもやることは一つよ!鈴谷!」




鈴谷「モチ、尾行するっしょ」




4人「「「「意義なし!」」」」




瑞鶴「鶴姫ー」




鶴姫「言イタイ事ワカッタヨ瑞鶴。後デ聞イトクー」




瑞鶴「あんがとー、じゃ明日の服選ぼっか」




鶴姫「ヤッタゼ」(≧▽≦)




白露「まさに決戦は金曜日!ってね」




鈴谷「白露古い歌知ってんねー」ケラケラ




如月「決戦になりますね……」




如月は独り言の様に呟き状況を確認した。まずあの後からずっと2人の会話を聞いておりデートは榛名の方から誘いカインは快く承諾、そして日時は明日で2人で昼食を食べに行き散策するような所まで聞く事が出来たのだが途中白露が乱入しようとしたため4人で食堂まで引っ張って来ていた。

幸い明日は如月、瑞鶴、鶴姫は休みの為自由に動くことが出来る。




如月「鈴谷さんはどうされるんですか?」




鈴谷「モチ熊野に変わってもらう!」




瑞鶴「即答っ!?」




鈴谷「大丈夫大丈夫、『ちゃんと』頼めば変わってくれるよ~」ニヤリ(^ー^)




如月「白露さんは?」




白露「えっ?山風に変わってもらう」




瑞鶴「おいっ!このダメ姉っ!?」




白露「だいじょぶだいじょぶ。山風だって解ってくれるって」ヾ(≧∀≦*)




鶴姫「フフフッ、コレハ素敵ナパーティーニナリソウダゼ」O(≧∇≦)O




如月「鶴姫さんキャラが可笑しいことに」ウフフ




瑞鶴「久々の休みで皆と出掛けるのが楽しみなだけよ」アハハ




鈴谷「だーけーど!皆、目的忘れないように!」




4人「了解!」ヘ(≧▽≦ヘ)♪




デートへ行くカインと榛名の追跡を画策する鈴谷達。果たしてどうなるかはまた別のお話へ……。




______________________




所変わってこちらは食堂の厨房、コック長やミズキ、主計課や海軍棲艦達を中心に夕食の仕込みを進めていた。




空母ヲ級A「スープノ仕込ミマモナク終ワリマス!」




主計課兵士「肉の切り分け終わりました!後は焼くだけです!」




空母ヲ級B「オ皿通リマース」




重巡リ級「ゴ飯150人前炊ケマシタ!残リ150人前ハ後20分後二炊ケマス!」




主計課女性兵士「野菜の下拵え後2分で終わります!」




コック長(`´)d




コック長は各報告を聞きサムズアップで返した。第3鎮守府のコック長、スティーブ大塚。かつて海軍特殊部隊にいたと噂されている人物で大堂元帥の空母艦長時代を知る数少ない人間である。




ミズキ「コック長さん。こちらの下拵えも終わりました」




コック長(`´)d!




ミズキ「ありがとうございます。みんなー!こっちへ運んでちょうだーい!」




ミズキがそう言うと皮を剥かれたじゃがいもの籠を抱えた数人の兵士と戦艦ル級が厨房へ入ってきた。




戦艦ル級「オ持チシマシタ。ドチラニ?」




ミズキ「ルカちゃん奥のテーブルの前にお願い」




ルカ「カシコマリマシタ」




ミズキから聞いたルカと呼ばれたル級は後ろの兵士にも伝えじゃがいもを運びそのまま兵士に退室を促した。




ルカ「ミズキ様、榛名ガ上手クヤッタヨウデス」ニコニコ




ミズキ「あら本当!?ふふっ、上手くいくといいわね」




ルカ「デスガ…、ヨロシカッタノデスカ?榛名バカリニ肩入レスル様ナカタチニナッテシマイマシタガ」




ミズキ「鈴谷ちゃん達は自分からアプローチ出来る娘達だけど榛名ちゃんはしようとしないでしょ?それに関してはルカちゃんとタキちゃん(戦艦タ級)がよく知ってるじゃない」




ルカ「エエ…、確カニ友人トシテモ心配ナ所デハアリマス。ソレニ……」




ミズキ「?」




ルカ「……榛名ハ艦娘トシテ戻ル事ヲ決意シタヨウナンデス」




ミズキ「その事は誰が知ってるの?」




ルカ「私トタキ位デスネ。私達ハ止メタノデスガ……」




ミズキ「ルカちゃん、正直に答えて頂戴。それは榛名ちゃんが自分で考えて決めたことなのね?」




ミズキのその言葉を聞いて少し戸惑ったルカだが、すぐに落ち着き




ルカ「ハイ、榛名ガ自分デ決メタコトデス」




ミズキ「分かった。それを信じるわ」




ルカ「ミズキ様、本当二ヨロシイノデスカ?」




ミズキ「榛名ちゃんが自分で考えて考えて考え抜いて決めた事なら私は応援したいわ。ルカちゃんは違うの?」




ルカは暫し黙りこくってしまったがミズキの質問にこう答えた。




ルカ「私ハ、ミズキ様ガ仰ッタアノ言葉ハタダシイト考エテイマス。ダカラ私ハ榛名ヲ信ジタイデス」




ミズキ「なら皆で応援しましょう。鈴谷ちゃん達もね」




コック長(`´)d!




その言葉を黙って聞いていたコック長は力強いサムズアップを送り称えた。そしてミズキは




ミズキ「善人は幸せであるべきよ。例え榛名ちゃんみたいに自分に負い目を感じてしまっている娘でも、ね」




これこそがミズキの考えているものの根っこにあるものだった。旦那の沖久保前元帥にしろ大川夕禅にしろ榛名にしろ善人ほど幸せとは程遠い道を選んでしまう。

自分に枷を付けて幸せはあり得ないと決めつけてしまう。

それがミズキは嫌だった。

人の悲しみや痛みが人一倍分かる自分だからこそ笑ってほしいと思っている。そして




ミズキ「ふふっ、明日も楽しみね♪」




幸せだろうと不幸せだろうと平等に残酷に朝日は昇る。

その明日が今日よりも幸せな物になるようにとミズキは願っている。





後書き

最後まで読んで頂きありがとうございます!!
デート回はデート回で別にやろうと思います。
皆さんイベお疲れ様でした。自分は無事に完走出来ました。
コメディは難しいなと思いました。本来はもっとドタバタしたのが好きなのですが…
次も考えているので宜しくお願いします!


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2019-12-03 21:47:39

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めぐらーさんから
2019-12-03 21:47:41

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