佐倉提督「我々は」春風「第5鎮守府迫撃班で御座います」
提督達の中で一番銃火器に精通している提督佐倉修介とその秘書官春風を始めとしたとある1日の出会い
皆様こんにちは!初めましての方は初めましてメットールと申します!
コロナで自粛の中いかがお過ごしですか?自分は仕事です(;_;)
今回もスピンオフ回4回目でございます。いつもの様に誤字脱字ありますがどうぞよろしくお願いします。
迫撃……敵に肉薄して攻撃する事
鎮守府の執務室にて、そこでは春風と五十鈴が
春風「…」
五十鈴「ムー……」
少々難しい顔をして向かい合っているのを発見した海風と狭霧、何事か分からずにいたが不意に
春風「申し訳ありません。五十鈴さん」
何が申し訳ないのかいきなり謝罪した春風が
春風「五光です」ニッコリ
五十鈴「こいこいは?」
春風「致しません」
五十鈴「だあぁぁーーー!!また負けたーーーー!!」
春風「ふふふっ、猪鹿蝶狙ってたみたいですから。見逃しませんよ」
海風「あの、春風さん五十鈴さん何してるんですか?」
声をかけられてやっと気付いた2人
春風「あら?海風さんと狭霧さん。五十鈴さんと花札をしていました」
狭霧「花札?」
五十鈴「はしょって言うと絵柄合わせよ。決まった役を相手より先に揃えて先に点数を稼いだ方の勝ち」
海風「それで五十鈴さんが負けた、と」
五十鈴「うん…、言わないで…」
春風「でも、海風さんも狭霧さんも如何しましたか?司令官様に御用でしょうか?」
狭霧「あ、はい。射撃場の鍵を借りに」
五十鈴「貴方達、今日は休んでおきなさい。もう1週間ずっとじゃないの」
海風「でも…」
五十鈴「別に訓練するなとは言わないけど、特に貴方達2人は最近オーバーワークよ。それに射撃場の鍵なら松風が持ってったわよ」
海風狭霧「「えっ!?」」
春風「御2人共お茶でも」
海風狭霧「「ありがとうございます!行ってきます!!」」
2人はそう言うと踵を返し走って出ていってしまった。そして部屋にいた2人は
春風「あらあら、お忙しいですね」
五十鈴「全くよ。あの娘達もだけど夕雲達も焦り気味よ」ハァ
思わずため息を出してしまった五十鈴にお茶を出す春風。春風が席に着こうとした時に
夕張「失礼しまーす」
五十鈴「あら夕張じゃない。どうしたの?」
夕張「いやいや、いきなり海風ちゃん達が飛び出してきたから何事かと思って、あれ?提督は?」
春風「司令官様なら瑞穂さんの航行訓練で近海に行ってますよ」
夕張「あっ、そうなんだ。霰ちゃん達は?」
五十鈴「霰と大潮は勉強中よ。千歳さんと陸奥さんなら2人の勉強を見てもらってるわ。後は皆射撃場かしらね」
夕張「なんだか温度差があるわね、あんな事言われたのに」
春風「核砲弾、でしょうか?」
夕張「そうよ!なんであんな事聞いて春風ちゃん達は落ち着いてるのよ?」
春風「急いては事を仕損じる、と言いますから」
五十鈴「提督もおんなじこと言うわね」ウンウン
夕張「つまりまだ慌てるような時間じゃないってことね、落ち着いてるわね」
五十鈴「どう動くかわからないのに慌てても仕方ないじゃない。大切なのはいざって時にすぐ動けるようにすることよ」
夕張「へぇ~成る程ね」
春風「夕張さん、お茶いかがですか?」
夕張「せっかくだから頂きまーす」
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所変わってここは近海。そこに第5鎮守府提督、佐倉修介がいた。
佐倉提督「そうだ瑞穂。大分改善したな良い調子だ」
そう瑞穂に褒めた。元々が低速の水上機母艦艤装だった瑞穂だが艤装の改良と小型化した缶とタービンを組み込んだ専用ブーツによって高速+となっており速力が倍以上出せるようになった。
その反面瑞穂自身が低速に慣れてしまっていた為速力の調整を始めとした航行訓練を修介は出来る限り付きっきりで指導していた。
佐倉提督「よし!今日はここまでにしよう」
瑞穂「はい、わかりました」
瑞穂は修介の言葉を聞くと航行速度を落とし、修介の元へ近づいた。
佐倉提督「どうだ?艤装の調子は?」
瑞穂「はい、大分馴染んできたと思います。これも提督のご指導のお陰です」
佐倉提督「俺は対したことはしていない。君の努力の結果だ」
瑞穂「提督…、あっ」
佐倉提督「おっと、大丈夫か?」
瑞穂「も、申し訳ありません!私ったら…」
佐倉提督「いや、気にしなくて構わん。やはり疲れが溜まっているようだな。今日はもうゆっくり休むといい」
瑞穂「提督、感謝致します…」
瑞穂はいつも自分達に優しくしてくれている修介に対して好意を持っていた。しかし当の修介は
佐倉提督(もう少し、気の効いたことを言えればな)ウーン
提督仲間の中でも一番感情表現が苦手な修介は相手の好意などにも鈍感。その鈍感な修介は瑞穂の好意に気が付いていなかったりする。
瑞穂「提督、如何しましたか?」
佐倉提督「いや、対した事ではない。戻ろう」
こうして航行訓練も終わり鎮守府に戻る2人、その時瑞穂が思い出したように
瑞穂「そういえば、今日でしたでしょうか?新しい方が来るのは」
佐倉提督「ああ、そのはずだ」
瑞穂「どんな方でしょうか?提督はご存知ですか?」
佐倉提督「元帥閣下から聞いている。どうやらドイツ人らしい」
瑞穂「まあ、そうだったのですか」
佐倉提督「ああ…」
その話になった時、修介は元帥との話を思い出した。
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春風「グラーフ・ツェッペリンさん?」
佐倉提督「正規空母艦娘を配属させる。ですか?」
大堂元帥『そうだ』
陸奥「でも妙だわ。うちにはミヲちゃんと飛龍さんがいるのに?」
千歳「戦力的に正規空母艦娘なら在籍していない鎮守府に優先されるのでは?」
五十鈴「現に第11は敷波、第14はパースって駆逐軽巡クラスよね。第7は神州丸って変わり種だけど」
大堂元帥『俺もそうしたかったんだが』
何故か中途半端に話を切り、頭をガリガリとかく元帥に疑問がある修介。暫くして元帥が
大堂元帥『修介。お前何やらかした?』
佐倉提督「は?」
6人「えっ?」
大堂元帥『それがドイツ大使館経由からの情報なんだがその艦娘、お前の所に配属を希望しているらしいんだが。身に覚えあるか?』
佐倉提督「いや」
喰い気味に答える修介。嘘は言っていない様なので元帥は
大堂元帥『本当だな?』
佐倉提督「自分の覚えている限りではドイツ人の知り合いはいますが全員男かつ傭兵な為女性の知り合いは存じ上げません。ですが本人が来た時に話を聞きたいと思います」
大堂元帥『まあ、それで構わん。また連絡をくれ』ピッ
こうして元帥との通信が終わり開口一番
大潮「司令官!本当に知らないんですか?」
佐倉提督「恐らく覚えていないが正しいな」
霰「なんで?」
佐倉提督「向こうがわざわざ俺を指定したならなんらかの関わりがあったのかもしれないからな」
陸奥「で、当のあなたは?」
佐倉提督「全く覚えていない」キッパリ
千歳「こんな調子で会ったらグラーフさん、どうなるんですかね?」(^^;
五十鈴「提督、泣かせるのだけはしないでよ?」
佐倉提督「……善処はしよう」
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春風「司令官様、お帰りなさいませ」
佐倉提督「うむ」
五十鈴「瑞穂もお疲れ様」
瑞穂「ありがとうございます」
夕張「お邪魔してまーす」
佐倉提督「夕張もいたのか、何かあったか?」
春風「いえ、松風さん達に射撃場の鍵を御貸ししただけですわ」
佐倉提督「そうか」
五十鈴「それにしてももうすぐじゃない、例の人来るの」
佐倉提督「そうだな」
夕張「例のグラーフって人でしたっけ?どんな艤装かしら?ドイツ製の艤装は楽しみだわ♪」
五十鈴「あんたはホントにぶれないわね…」
春風「それが良いところでもありますよ」ズズッ
コンコンコンッ
佐倉提督「入れ」
陸奥「入るわよ」ガチャ
佐倉提督「どうした?」
霰「昨日言ってたグラーフさん来たよ」
大潮「ご案内しました!」
佐倉提督「そうか、ありがとう。こちらに案内してくれ」
霰「うん、今千歳さんが連れてくる」
千歳「提督入りますね、こっちですよグラーフさん」
千歳の声を聞いて1人の艦娘が入って来た。
淡い金髪に黒みかかった青い瞳の女性でドイツ独特の軍服にケープを羽織った長身の女性だった。
その女性は修介を見るや否や目を白黒させてずっと修介を見ていた。
佐倉提督「よく来てくれた。話は聞いている俺が提督を務める「修介」」
佐倉提督「ん?どうした?」
いきなり挨拶を遮る様に名前を呼ばれた修介はグラーフを改めて見ると
グラーフ「修介…」ポロポロ
8人「!?」
なんとグラーフは修介の名前を呼んで泣いていたのだった。勿論これに一番パニックになったのは修介
佐倉提督「!?!?」
一同パニックに陥る中パニックにさせた張本人は
グラーフ「修介!」ガバッ
次の瞬間修介に抱きついていたのだった。
五十鈴「えっ?えっ!?」
千歳「ちょっ、グラーフさん!?」
陸奥「提督?どういうことかしら?」
佐倉提督「待て待て待て!俺が一番聞きたい!」
グラーフ「修介…!」ギュー
泣きながら修介に抱きつくグラーフ、だが修介はなんで目の前のグラーフが自分の名前を呼び泣きながら抱きついているのかがわからない。
春風「グラーフさん、落ち着いて下さい」
春風が優しく声をかけ、それにようやく気付いたグラーフは我に返り
グラーフ「!?すまない、取り乱してしまい申し訳ない」
なんとかグラーフが落ち着き5分が経過してようやく話が出来る様になった。
霰「グラーフさんは司令官を知ってるの?」
グラーフ「ああ、と言っても修介とは20年振りなんだ」
千歳「20年振り!?」
五十鈴「提督、貴方ホントに知らないのかしら?」
佐倉提督「ああ、すまないグラーフ。俺は君とどこで出会ったんだ」
グラーフ「そこからか?なら修介グライスナー外交官を覚えているか?」
大潮「グライスナー外交官?」
陸奥「グライスナーって今のドイツ大使館の責任者よね?あら?外交官だったかしら?」
佐倉提督「グライスナー……」
何か思い出しそうな修介にグラーフは次に
グラーフ「なら、リーザ・グライスナーと言う名前に覚えはあるか?」
夕張「誰よ?」
懸命に記憶を辿る修介はその名前を聞いてハッと顔を上げた
春風「司令官様?」
佐倉提督「もしかして、リーザか?」
大潮「えっ?」
グラーフ「そうだよ、修介」
そうしてまたグラーフは修介に抱きついた。
陸奥「ちょっとグラーフさん!」
グラーフ「ああ、こんなに大きくなったんだな修介、もっと顔を見せてくれ」グイッ
佐倉提督「グラーフ?いやリーザと呼べばいいのか?」
春風「司令官様。グラーフさん。まず私達にもですが皆様にも説明が必要かと」
佐倉提督「えっ?」
グラーフ「?」
春風がそう言ったのも状況が少ししか把握出来ていない夕張と瑞穂、そして執務室入り口には射撃場から帰って来ていた飛龍や松風達が呆然として見ていた。
佐倉提督「そうだな。場所を変えて説明しよう」
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鎮守府食堂
一同は食堂に集まっていた。その食堂では修介とグラーフが並んで座っておりまるで謝罪会見の様な雰囲気となっていた。
春風「皆様。これより司令官様とグラーフさんの質疑応答を行います」
夕張「なんか物々しいわね」
松風「射撃場から帰ってきたと思ったら」
旗風「状況が分かりません…」
巻雲「夕雲姉さん!これって修羅場ってやつですか!?」キラキラ
夕雲「巻雲さん落ち着いて、そんな物騒なことではありませんよ」ウフフッ
ソラ「ナンカ面白ソウネー」
ソウ(装甲空母鬼)「ココニ来テ早々二愉快ナ展開ネ!」
春風「なお、今回は元帥様に報告する部分もありますので皆様は発言にはお気をつけて頂くようお願い申し上げます」
一同「はーい」(。・_・。)ノ
飛龍「じゃあ、まず私から!」
春風「飛龍さん、どうぞ」
飛龍「提督とグラーフさんってどこで出会ったんですか?」
グラーフ「これは私が答えよう。今から大体21年前、ドイツで出会ったんだ」
飛龍「ドイツで?」
グラーフ「私の父親は今でこそ日本のドイツ大使館の責任者だが昔は外交官をしていた。そして修介の父親も日本の外交官をしていたんだ」
飛龍「つまり提督は親の仕事で一緒にドイツに行って、そこでグラーフさんに会ったと」
グラーフ「そう言う事になる」
ジュン(重巡棲姫)「ジャ次ハアタシダ」
春風「はい、ジュンさん」
ジュン「修介トノ関係ハ?」
グラーフ「親しい友人で私の初恋相手だ。当時、私の周りは大人ばかりで年の近い人間というのが修介が初めてだった」
初恋と聞いてざわめきたつ一同
春風「皆様落ち着いて下さい。他に質問は」
霰「はい」
春風「霰さん、どうぞ」
霰「グラーフさん司令官と20年振りって言ってた。でも霰には何だか違って聞こえた」
霰のこの質問にグラーフは俯いた。明らかに様子が変わっている様に見えた
グラーフ「……嬉しかった」
霰「?」
グラーフ「嬉しかったんだ、20年前に修介は死んだと言われていたから……」
夕雲「えっ?」
秋月「ちょっと待って下さい!どういうことですか!?」
佐倉提督「そういう事か」
ソラ「チョットー、1人デ納得シナイデヨ修介ー」
グラーフ「…これを見て欲しい」ピラッ
大潮「なんですかこれ?」
グラーフが出したのは古いドイツの新聞紙だった。そこには皆が読めるように日本語訳が振られていた。恐らくグラーフが振ったのだろう。
夕雲「えっと、日付は20年前で」
狭霧「見出しは、『旅客機撃墜』?」
松風「『昨夜未明、日本行きの国際便が中東のテロによる攻撃を受け墜落』……!?」
旗風「『墜落後に火災が発生し、消火が終わり次第身元の確認を急ぐ』ってこれは…」
グラーフ「そうだ。その旅客機は修介達が乗っていた機だ……、これも見て欲しい」スッ
そしてグラーフが一同に出したのは一冊のノート、受け取った海風が中を拝見すると
海風「人の、名前?」パラパラ
ミヲ「アッ、ココノ名前ノ人、『佐倉公一』サン?修介様ト同ジ名字ノ方デス」
秋月「その下のは『佐倉絹江』さん?」
千歳「グラーフさんこれって……!」
グラーフ「そのノートは死亡者リストだ…、あの旅客機に乗っていた人間の」
その言葉に衝撃を受ける一同だったが
ソウ「デモ、『佐倉修介』ッテ名前ハ無イワネ」
海風「えっ?」
ソウ「ホラ、ドノページ見テモ載ッテナイワヨ?アラ?『行方不明者リスト』?」
ソウが見つけたのはノートの後ろに挟まっていた薄いメモ帳、中を見てみると
ソウ「コッチ二アルワ、最後ノページ二」
飛龍「えっと、『佐倉修介、遺体及び遺品発見出来ず。だが当時6歳と幼い為死亡と断定。これにより行方不明者の捜査を終了とする』……!?」
巻雲「待って下さい!これじゃ死んだって言ってるような…!」
グラーフ「そうだ…、修介は死亡扱いとして処理された。だから私は修介が死んだと聞かされた……、あの時はずっと泣いていたよ……」
瑞穂「提督、実際はどうなさったのですか?」
瑞穂の言葉で春風達以外の人間が修介に注目する形になり修介が口を開いた。
佐倉提督「当時、奇跡的に生きていた俺は墜落現場近くにいた傭兵グループに拾われて14になるまで傭兵をしていた」
秋月「傭兵?」
佐倉提督「ああ、子供なら教えれば銃も使えるようになる、もしもの時には便利だからな」
狭霧「なんですか?もしもの時って……?」
狭霧の声が震えていた。恐らく察したようだが聞かずには要られなかったのだろう。
佐倉提督「自分達が逃げる為の囮だ。だからこそ傭兵によってはあえて子供を拾ってはある程度育成するケースがある」
夕雲「そんな……!?」
飛龍「子供見捨てて逃げるなんて……!?」
ソラ「ナンセンスダワ」
佐倉提督「それが現実だ。それがいやなら戦場で敵を殺し自分の有能性を証明するしかなかった」
海風「有能性?」
佐倉提督「要は結果だよ。そうしている内に14になった時グループが大規模な攻撃を受け囮にされて置き去りにされた」
夕張「えっ?」
佐倉提督「あの時、囮にされた奴らは生き残る為に必死に敵を殺したよ。時には罠を仕掛けて殺したり、時には敵の死体から銃や弾をあさって使ったり、気が付いたら置き去りにされた連中は俺しか生き残らなかった」
修介はまるで懐かしい話をするかの様に話したがその事を初めて聞いた春風達以外のメンバーはただ黙って聞くことした出来ず隣のグラーフに至ってはずっと涙を流していた。
佐倉提督「囮にされて、そうだな10日経った頃だな。1人の人間が近づいて来た。その男は自分は日本大使館の人間だと言っていた」
松風「大使館の人間、と言うことは君は保護された、ということかい?」
佐倉提督「肯定だ。だが俺はずっと威嚇の為に銃は向けていたがな」フフッ
巻雲「笑いごとじゃ無いですよ~」
ジュン「ソコマデ追イ詰メラレテイタノネ」
ソラ「サイパン二イタ陸軍部隊ナモノネ」
佐倉提督「その例えが一番近いな。その男の説得の末俺は保護を受け8年振りに日本に帰国した」
飛龍「提督って大変だったのね」
佐倉提督「もう終わった話だ。その後俺はある人間に引き取られ日本の常識を教わり特別編入と言うことで高校にも行かせて貰えた。だが」
ミヲ「?」
佐倉提督「戦いの中生きてきた人間は戦う道以外何も思いつかなかった。俺みたいな少年兵は」
グラーフ「どういうことだ?」
佐倉提督「高校卒業後、俺はまた傭兵になり戦う道を選び紛争地帯に飛んだ」
ソラ「チョット……」
佐倉提督「多分だが、当時の俺は自分の人生に見切りをつけていたんだろうな。一種の諦めのようなものだ」
その言葉に一同は衝撃を受け沈黙した。泣き止んでいたグラーフは今にもまた泣いてしまいそうな顔をしていた。
佐倉提督「そんな時だった。『師匠』にお会いしたのは」
巻雲「師匠?」
佐倉提督「そういえば、春風達以外には師匠の話をしていなかったな。俺に薬学を教えてくれた方だ」
ソウ「薬学?」
夕張「そういえばソウさんとジュンさんは来たばっかで知らないわね」
旗風「司令官は薬学の資格も持っておられて、私達にも講義をなさって下さるんです」
夕張「勿論、薬草だけでなく毒草の知識の講義、はては火薬の調合も提督は得意なのよ!」
松風「たまにフィールドワークもやるんだ。なかなか楽しいよ」
春風「皆さん、話がそれてますよ」パンパン
佐倉提督「すまないな春風。話が逸れてしまったが、俺にも心境の変化が有り傭兵の契約満了を期に帰国し、軍に入隊したということだ。そして深海棲艦との戦いが始まった」
狭霧「成る程」
夕雲「その間グラーフさんはずっと提督の事を?」
グラーフ「いや、実は1年前まで覚えていなかったんだ」
秋月「覚えてなかった?」
グラーフ「ああ、修介が死んだと聞かされてしばらく塞ぎこんだらしいのだが、ある日を境にそんな素振りを見せなくなったらしい。母が聞いたら私は『誰?』と聞き返されたと言っていた」
ジュン「ドウイウコト?」
グラーフ「母が心配になって私を病院に連れていったら恐らく心が精神を保つ為に修介に関する記憶を消したのではと言われたそうだ。だから私は1年前まで修介の事を覚えてなかった」
巻雲「1年前って何があったんですか?」
ソラ「アラ?巻雲チャン知ラナイノカシラ?」
巻雲「?」
夕雲「巻雲さんが艦娘になったのは8ヶ月前だから知らないかもしれません」
巻雲「夕雲姉さん、何がですか?」
海風「1年前にあったことって南鳥島海戦ですか?」
松風「間違いないね。でもグラーフさんそれの何が?」
グラーフ「あの海戦の情報はドイツは勿論ヨーロッパにも伝わった。深海棲艦と共に戦っていた事も、その映像の中で修介が映っていたんだ」
ソウ「映ルワヨネ、戦ッテタ中心ガ第3鎮守府ナンダカラ」
グラーフ「修介を見た時、大切なことを忘れている感覚になった。それで周りに知られないように親を訪ねて確認することにした」
瑞穂「ご両親はなんと?」
グラーフ「私のアルバムを持って来て見せて貰った。そこに幼い頃の私と修介の写真を見て全て思い出したんだ。修介とした約束も」
佐倉提督「約束?」
グラーフ「帰国前日にずっと一緒にいたいと駄々をこねた私にまた会えるを言ってくれた時に私が会いに行くからと約束したんだ」///
グラーフは幼い日の事を思い出し少し頬を赤らめながらみんなに説明した。その表情は恋する乙女そのもので
夕雲「ロマンチックねぇ」
夕張「一途ねぇ」
ミヲ「素敵デスネェ」
グラーフ「ンン!すまないな。それから修介の事を思い出した私は直ぐに行動に出ることにした」
ソラ「行動?」
グラーフ「まずはドイツ大使館責任者の父にコンタクトをとり父の権力を少し…使って私を日本に行かせるように働きかけてもらった。これが1つ目」
夕張「それ絶対少しじゃないわよね?」
旗風「無茶苦茶です…」
佐倉提督「……?」
グラーフ「2つ目。自分の意志を通す為の戦果が必要になる。私はその為に参加出来る作戦には全て参加し戦果を挙げ続けた」
ソウ「アノ噂グラーフナノ?」
海風「あの噂ってなんですか?ソウさん」
ジュン「コニーガ言ッテタ噂話。目ノ前ノ敵ヲ殲滅スルマデ情ケ容赦ナク攻撃シテ塵微塵ニスルドイツノヤベェ奴」
飛龍「ドイツのヤベェ奴…」
陸奥「それで付いた渾名が『鉄の女の再来』ね」
嫁艦娘以外(マーガレット・サッチャー……!)
海風「情け容赦無いって……」
グラーフ「情けは実家に置いてきた。これからの戦いについてこられそうになかったのでな」
五十鈴「グラーフさんのこと調べたけど凄いわよこの戦果。中には1人で戦局ひっくり返したのもあったわ」
グラーフ「修介の元に行くのだ、生半可な事では修介にも此所にいる艦娘全員に迷惑がかかる」キリッ
千歳「それでいて縁談が来ても全て断り近づいてくる男には手厳しく撃退していたって聞きましたが」
グラーフ「当たり前だ。政略結婚などまず私は親が反対していて門前払いの状態だったからな」
霰「政略結婚?」
グラーフ「ヨーロッパでは実力ある艦娘と権力者を結ばせようという動きがあってな、それに対してヨーロッパの艦娘は総スカン状態だ。だから私を一番最初に実例として残そうとしたようだが」
大潮「司令官がいるから嫌だったんですね」
グラーフ「その通りだ!修介以外の男になんて髪の毛1本にも触って欲しくない。そもそもハゲ散らかしたオッサンとカッコカリとは言え結婚したいか?まずないだろう。現に私に触ろうとした輩に私は艤装のアシストを使い、その手を粉砕したがな」
狭霧「それ問題になりませんか…?」
ミヲ「デモ共感出来マス」
グラーフ「そこは大丈夫だ。周りの仲間もその輩が無理矢理セクハラしようとしたと全員で抗議してくれたからな。私は正当防衛、それ以降ヨーロッパ各所で憲兵の監視が強くなったのは言うまでもない」
佐倉提督「中々のクソ共が軍人をやっているのだな」
夕張「提督はっきり言うわね~」
春風「仕方ありませんわ。司令官様は元憲兵でしたから」
グラーフ「それに…」
霰「どうしたの?」
グラーフ「カッコカリするなら修介がいいと言ったら父も母も喜んでくれてな……」///
全員(まさかの親公認……!!)
五十鈴「…押しかけ女房ならぬ押しかけ空母ね」
ジュン「シカモドイツカラ」
巻雲「それで3つ目は?」
グラーフ「日本語の勉強だ」
千歳「えっ?グラーフさん艤装の翻訳機能は?」
グラーフ「使っていない。全て任務の合間に独学で勉強したものだ」
ソラ「スゴイワネェ」
春風「要点をまとめますとグラーフさんは司令官様とは昔にご縁があり、司令官様とお会いになるために実力と実績を認められて日本に来た、日本語は問題なしと」
グラーフ「相違ない」
春風「わかりました。こちらの方で元帥にご報告致します。これにて質疑応答を終わりにします」
終始ただの懇談会と化していたが修介とグラーフの質疑応答が終わりみんなでお茶にしようとした時だった。
グラーフ「修介、今日は一緒に寝てくれないか?久しぶりに」
その言葉を聞いた一同の反応は早かった
夕張「ちょっとグラーフさん!?」
ジュン「イキナリ何言ッテンダヨ!?」
海風「そ、そんな一緒に寝るって……!?」アワワ
グラーフ「?いけないのか?別に私は修介がその気なら構わないのだが」///
旗風「もっと深刻だった!?」
ソウ「流石ドイツノヤベェ奴……」
五十鈴「流石にそれは認める訳にはいかないわ」
グラーフ「駄目なのか?」
霰「司令官が捕まっちゃう」
陸奥「日本の艦娘保護法になるのだけどカッコカリ以外の艦娘に対してセクハラ案件は即逮捕ものよ」
グラーフ「そうか!カッコカリすればいいのだな!!」パァ
全員「えっ?」
グラーフ「なら修介、カッコカリしよう!今直ぐ!」ニコニコ
佐倉提督「待て待て待て待て!話が急過ぎるぞ!!」
千歳「今直ぐってグラーフさん練度は?」
陸奥「誰か練度測定器持って来て」
大潮「そう思って準備してました!測りまーす!」
そうしてみんなの前でグラーフの艤装を使い練度の測定することに、すると…
正規空母 グラーフ・ツェッペリン
艤装状態 正常
練度 99
五十鈴「練度MAX!?」
グラーフ「私の戦果を見たのだろう?もう2ヶ月前から達しているぞ」
秋月「こんな高練度の艦娘を手放すなんて……」
グラーフ「言っただろう、父の権力を少し…使ったと。さてこれで問題なかろう?」
春風「はい、問題はありません。私は認可致します」
旗風「ちょっと春姉さん!?」
春風「皆様の中に異議のある方はいらっしゃいますか?」
春風の言葉にしんと鎮まり返り暫しの沈黙が流れる、その後
佐倉提督「わかった、指輪は申請させて貰う。グラーフ、これからよろしく頼む」
グラーフ「こちらこそ、アドミラール」ニコッ
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大堂元帥『成る程、グラーフは昔馴染みだと。わかったこの報告書は確認しておく』
佐倉提督「はっ!」
大堂元帥『で、指輪の申請だな?』ニヤッ
佐倉提督「はい……」
春風「司令官様。お気を確かに」オロオロ
佐倉提督「春風、皆すまない。みっとも無いところを」
千歳「大丈夫ですよ提督。皆さん思ってませんから」ウフフッ
陸奥「むしろあなたのあんなに狼狽えてる所見れてお姉さん満足よ♪」
佐倉提督「陸奥に至っては俺と年は変わらんだろう…」
グラーフ「そうだったか」
ミヲ「陸奥サンモ修介様トオ年ハ同ジデスヨ」
大堂元帥『にしてもだ。まさか修介がカッコカリ8人目一番乗りとはな、この間カインの大馬鹿野郎が一気に7つ申請したばかりだからこれは続きそうだ』
霰「7つ?」
千歳「榛名さんや鈴谷ちゃん達でしょうか?ならお祝いを送らないといけませんね!」
佐倉提督「千歳。俺の日本酒と焼酎のコレクションからお前のセンスで人数分選んでくれないか?」
千歳「了解です♪」
五十鈴「でも元帥。申請が続きそうってどういうことですか?」
大堂元帥『そのままだ。夕禅の所は阿武隈とナツキがもうすぐで、龍生の所は足柄、飛鳥の所は黒潮と飛鷹と練度が到達するからな』
陸奥「猛ラッシュね」
五十鈴「実際うちでも飛龍さんがカッコカリに近いわよね?」
霰「飛龍さん、考えてたよ」
大潮「もうアゲアゲフィーバーですね!」
ミヲ「フィーバー!」
佐倉提督「夜にあまり騒ぐな、でだグラーフ?」
グラーフ「なんだ修介?一緒に寝るか?」
佐倉提督「そうではない、何を隠している?」
グラーフ「ん?」
佐倉提督「俺の記憶が正しければ『少し…』と言うときは何か隠している時の言い方だったはずだが?」
グラーフ「おや、そこも思い出したのか嬉しいことだよ」フフッ
陸奥「で、グラーフあなたは何を隠しているのかしら?」
グラーフ「何、隠すつもりはない。皆に今のヨーロッパの状況を伝えたい」
霰「今の状況?」
グラーフ「昼の時にも言ったが艦娘との政略結婚の件を始め今ヨーロッパ全土で士気はよろしくない。軍部への不満が酷く蔓延している」
五十鈴「でしょうね」
グラーフ「現に私の件以降でもイタリアで駆逐の艦娘にセクハラをした者が憲兵を買収してまで事に及ぼうとしたケースがある始末」
大堂元帥佐倉提督『「クソだな」』
陸奥「ホントに最低ね」
グラーフ「だがその直前で仲間が救出し、その駆逐艦娘がボイスレコーダーで暴漢共の会話を録音していたこともありそのアホ共は懲戒になったが」
千歳「自業自得ですね」
グラーフ「だが皆身の危険を感じていてな、私の同僚にレーベとマックスと言う駆逐艦娘、U511と言う潜水艦娘が居るのだが、3人共日本のドイツ大使館で保護している」
大堂元帥『他に情報は分かるか?』
グラーフ「私が知っている範囲だとイタリア大使館に駆逐艦娘マエストラーエ、グレカーレ、リベッチオ、潜水艦娘のルイージ。イギリス大使館に駆逐艦娘のジャーヴィスとジェーナス。オランダ大使館にロイテルが皆身分を隠して保護されていると父から確認した」
五十鈴「かなり日本にいるのね」
大潮「あれ?戦艦艦娘の人や空母艦娘の人は?」
グラーフ「自衛出来る者はまだ残っているんだ最近になってまた別の深海棲艦が出現してな」
ミヲ「別ノ深海棲艦デスカ?」
グラーフ「ああ、鬼級なんだが姫級を従えている個体が発見されてな」
大堂元帥『!』
佐倉提督「なんだと!?」
グラーフ「ど、どうしたんだ修介?」
佐倉提督「グラーフ。正直に答えてくれ」
グラーフ「何だ?」
佐倉提督「その鬼級は瞳が青かったか?」
グラーフ「確かそうだったな」
春風「修介様、これは大変に重要な情報だと」
佐倉提督「そうだな、ありがとうグラーフ」
大堂元帥『…その件についてはこちらでもコンタクトを取ってみることにしよう。じゃあ修介切るぞ、とそうだ最後に』
佐倉提督「何でしょうか?」
大堂元帥『どうぞ、ごゆっくり』ニッ
佐倉提督「元帥殿!?」
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元帥との通信も終わり就寝しようと私室に入る修介。すると
グラーフ「修介」
一緒に寝る気満々のグラーフが布団の上で待っていた。恐らく自分で出して来てメイキングした様で端から端まできっちり整っている。
佐倉提督「…いつの間に」
グラーフ「布団の敷き方は春風に教えてもらった。これでいいと思うんだが…」
佐倉提督「いや、それよりも目のやり場に困るんだが…」
グラーフ「似合わなかったか…?」
佐倉提督「いや!そうではない、そうではないんだ」
修介が目のやり場に困るのも無理はなかった。グラーフが一緒に寝ようと言っていたので寝間着で来るだろうと考えていたが、現にグラーフは白系のベビードールに黒レースの下着と自分の予想を越えていた。
おろした金髪と綺麗な白い肌は幼い頃の記憶のままだが明らかに成長した部分も有り
佐倉提督「…魅力的になっていたな、と」
グラーフ「修介ならいくらでも見てもいいんだぞ?それに…」
佐倉提督「!」
不意にグラーフが修介に抱きついた。グラーフの身体の感触が直に近い状態で伝わる。
特に良く実った天然グレネードの感触だの風呂上がり特有の香りだのと色々とヤバい
グラーフ「私は修介になら好きにされても…」
佐倉提督「~~~!!」
理性と本能が脳内でマウントの取り合いをしている状態で必死に答えを出そうとする修介、そして
佐倉提督「グラーフ!」
グラーフ「!」
佐倉提督「物事には順序がある。今日は一緒に寝るだけだ!」
グラーフを真っ直ぐ見据えて修介は答えた。決して修介がヘタレだとか根性が無いとかではない。修介は順序や段階というものを大切にしている。いくら相手が良くても自分が場の雰囲気に流されるのが嫌なのだ。
つまり今回は理性が本能をマウントポジションからボコボコにしたのである。
そんな修介の状態を理解したのか少しキョトンとしていたグラーフは
グラーフ「プッ、フフフッ」
つい笑ってしまった。改めて見ても自分の行動がいつもより激しいことに反省し
グラーフ「そうだな、今日は寝よう」
そうこうして2人で布団に入る時グラーフはちゃっかり腕枕を要求して寝ることにした。
グラーフ「フフ、こうして一緒に寝ると昔を思い出す」
佐倉提督「君は変わったな」
グラーフ「人は変われる、知識を得て変化を願えば、ただそれだけだよ」
佐倉提督「良い言葉だな」
グラーフ「だろう?なあ修介何で多くの艦娘とカッコカリをしているんだ?」
佐倉提督「その件は話すつもりだった。それはな___」
佐倉提督「____と、言う事だ」
グラーフ「成る程。お前は、日本の提督はそこまで先の事を考えているのだな」
佐倉提督「こう考えているのは俺達だけだ。他の提督はまだしも大本営にいる左遷した老害共は自分の保身しか考えていない。銃後でギャアギャア喚くだけ、好戦派の人間は特にだ」
グラーフ「……」
佐倉提督「それにな、これは俺の責務だ」
グラーフ「責務?」
佐倉提督「子供に銃を持たせ戦うことを強要した俺なりの責務だ」
修介のその決意のこもった言葉を聞き、グラーフは意地が悪いと思いつつこんな質問を投げ掛けた。
グラーフ「なあ修介。お前はその責務とやらでカッコカリをしているのか?私達には何もないのか?」
そのグラーフの質問に暫しの沈黙が流れる、そして修介はグラーフをそっと抱き寄せ
佐倉提督「何もないわけないだろう。いくら俺一人が権力だの金だのあった所でそこに大切な人がいなければただ虚しいだけだ」
佐倉提督「こんな俺についてきてくれている春風も千歳も陸奥も五十鈴も霰も大潮もミヲも他の皆も勿論君も俺に取っては家族であり大切な女性だよ」
グラーフ「そうか、フフ」
佐倉提督「どうかな?」
グラーフ「いや、満足のいく答えだよ。それにしても日本の提督はハーレムでも築くつもりなのか?」
佐倉提督「結果としてはそうだろうな。だが安心してくれ俺はこの人数くらいなら不自由なく暮らせる金はある」
グラーフ「おや、ちゃんと蓄えもあるのか」
佐倉提督「当たり前だ。俺が調合した薬が難しい病の特効薬になったらしくてな、その薬と特許を譲った金と傭兵時代の蓄えもあるからな」
グラーフ「フフ、私の旦那様は多才だな。私も君に見合う人間にならなければ、その前に」
そう言ったグラーフは修介に口付けをし
グラーフ「これから末永くよろしく頼む。修介」
佐倉提督「ああ、こちらこそ。リーザ」
と修介はグラーフを本名で呼び口付けをして一夜を共に過ごした。
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翌日、工廠にて
夕雲「で、夕べはお楽しみでしたね、と私も提督と…」
巻雲「夕雲姉さ~ん!戻って下さーい」
海風「でも、羨ましく無いって言ったら嘘になります」
狭霧「そうですね。提督の身体綺麗でしたから」
佐倉提督「狭霧、お前からそんな言葉が出るとは思わなかったぞ」
グラーフ「で、アドミラール工廠で何をするんだ?」
佐倉提督「もう終わっている頃だろう。妖精殿、首尾は?」
整備妖精1「ていとくさん、ばっちりです!」
艤装妖精「しあがってますよー、ぐらーふさんこちらをいつもみたいにつかってください」
妖精達から艤装を受け取ったグラーフはいつも通りに艤装を用いて発艦をすると
グラーフ「これは……、FA18ドイツ軍仕様!まさかこれを再現する為に艤装を改造したのか!?」
整備妖精1「かいぞうぷらんはいっぱいありますよー。でーたもありますから」フンス
整備妖精2「それにすいしんぶもてをくわえました。そくりょくもおおはばあーっぷ」
旗風「FA18はアメリカ軍の機体ですよね?ドイツ軍仕様とは?」
グラーフ「今のドイツはトーネードという戦闘機がもう現役を退いてな、変わりの核兵器を積むことが出来る戦闘機にFA18が配備されているんだ。まさか私が使う日が来るとはな」
グラーフは改造された自分の艤装に胸躍りながら発艦したホーネットを眺めていた。そしてひとしきり飛行させ着艦させているとあることに気が付く
グラーフ「アドミラール、艤装のこの場所が蓋になっているようなのだがこれはなんだ?」パカッ
グラーフが開けるとそこには楕円形のような物体がぎっしりと入っていた。
松風「本当になんだい?これ?」
旗風「何かの弾?と言うより爆弾みたいな…」
巻雲「あれ?どこかで見たことあるようなないような」
グラーフ「ん?この棒は何だ?」ヒョイ
狭霧「何かつきそうですけど」
海風「なにがつくんですか?」
グラーフ「ん!?これの形状はまさか……」
グラーフは楕円形の物体を一つ取り出すと棒と組み合わせる事が出来ることに気が付き
グラーフ「成る程、パンツァーファウストか」ニヤッ
夕雲「パンツァーファウスト?それって巻雲さんも使ってましたよね?でも弾頭が違いますね」
佐倉提督「巻雲や海風が使っているのはパンツァーファウスト100で対装甲用貫通弾、だがグラーフの艤装に積んでいるのはパンツァーファウスト50で対装甲用破砕弾だ」
グラーフ「どう違うんだ?」
佐倉提督「巻雲達が使っているのは一撃で相手に致命傷を与える為のもの、グラーフのものは艦載機との攻撃を想定して装甲を広範囲に破壊するものだ」
旗風「司令、100や50と数の違いは?」
佐倉提督「それは飛距離だ、グラーフの場合接近された時を想定している。その為飛距離を捨て破壊力に赴きを置いている。そして」
修介はグラーフの艤装のある部分を指差し
佐倉提督「グラーフ、まず向こうのドラム缶に真っ正面に向いてくれ」
グラーフ「向いたぞ」クルリ
佐倉提督「その右手の艦載機発艦艤装の握ったグリップの所にボタンがあるのは分かるな?」
グラーフ「あるな。はてこんなのあったか?」
佐倉提督「押してみろ」
グラーフ「押したぞ」バシュッ
グラーフが押した瞬間この字に展開している艤装の両方の先端下部から内蔵されていたパンツァーファウストが射出されドラム缶に直撃し爆発を起こした。
いきなり轟いた爆発音にグラーフを含めた7人は唖然とし
佐倉提督「よし、動作問題なし」
修介は平常運転で艤装を確認したのだった。
グラーフ「アドミラール?まさかテスト無しで試したのか?」(^^#)
松風「君?いつも言ってるだろう?」(^^#)
狭霧「提督!大きな音が出るなら言って下さいっていつも言ってるじゃないですか!」(>_<)
海風「提督!海風も怒りますよ!」(# ゜Д゜)
旗風「本当に心臓に悪いです!司令!」(>_<)
夕雲「いつもは拳銃でしたからね、流石に今回は……」(*_*)
巻雲「司令官様~」(;_;)
グラーフ「修介はいつもこんな事をやっているのか?」
旗風「はい…」
狭霧「着任後の訓練ではいきなり拳銃を発砲して『良く使用する銃だから銃声を覚えるように』と…」
海風「この鎮守府に配属になってから提督の権限で艤装以外にも拳銃の所持も認められていまして私達も」スッ
海風はホルスターから一丁の拳銃を取り出した
グラーフ「ワルサーP99か」
佐倉提督「軍で採用されている拳銃で一番コンパクトで日本でも入手出来るからな」
「司令官~!!」
いきなり修介を呼ぶ方に皆が振り向くとスナイパーライフルを担いで突っ走ってきた大潮が勢い良く修介にダイブした。
佐倉提督「おっと、大潮その様子だと良かったようだな」
大潮「はい!大潮今日も好調でした!」ニコニコ
五十鈴「大潮、いち早く提督に報告したいからって先にいかないで。誰が持つのよ」
霰「司令官、大潮姉さんがまた取ってきたよ」
佐倉提督「見事な雉だな」
大潮「あと鴨さんもです!」
春風「今日の成果は雉が二羽、鴨が一羽で御座います」
ソラ「スゴイワヨネェ」
ジュン「今日ハオ鍋ニシヨウゼ」
グラーフ「ほう、ここは狩りもするのか」
春風「はい、数が増えすぎてしまい近隣住民の方々の依頼で間引きをしています」
グラーフ「成る程な、ん?」
感心していたグラーフだが大潮のスナイパーライフルを見てあるものが無いことに気がついた。
グラーフ「大潮、君のライフルにはスコープが着いていないようだが…」
大潮「大潮はスコープ使いませんよ?」
グラーフ「何?」
大潮「大潮、元々目が良くて艤装を装備するともっと良く見えるようになります!」
グラーフ「成る程、視覚が強化されるのか。ん?」
グラーフは大潮が狩った鳥を見てある共通点があることに気付き
グラーフ「まて大潮。全て首を狙ったのか?」
大潮「はい!身体に当ててしまうと食べられる所が減ってしまいますから」
グラーフ「狙って撃ったのか?」
大潮「はい。でも人間や深海棲艦の方が簡単ですよ」
グラーフ「簡単とは?」
大潮「鳥さんは少しの気配や動きを察知して危なくなったら飛んでしまいますし、深海棲艦は潜っちゃいますけど鳥さんより簡単で、人間は気付いても飛べませんし潜れませんしで簡単ですよ!」
グラーフ「ほう、フフッ」
巻雲「どうしました?」
グラーフ「いや、大潮の言葉が往年のシモ・ヘイヘを思い出してな」
佐倉提督「ああ、俺も同じだよ。これは才能だ」フフッ
海風「誰ですか?」
グラーフ「フィンランドの白い死神と言われ恐れられた伝説のスナイパーだ」
佐倉提督「おお、そうだグラーフ忘れないうちにこれを渡しておく」
そう言って修介は一丁の銃をグラーフに手渡した。その銃を見たグラーフは
グラーフ「修介、なんでこんな銃を持っているんだ?」
狭霧「提督、この銃は?」
夕雲「これはワルサーP38ですね」
巻雲「夕雲姉さん、知ってるんですか?」
夕雲「勿論よ、ワルサーと言ったらやっぱりこれです」
佐倉提督「君の銃だ。見た目はただのワルサーP38だが内部は勿論マガジンも改良済みで装弾数は16、弾は特製の対装甲弾だ」
グラーフ「そんな銃を私に?」
佐倉提督「ああ、夕雲達には少しグリップが大きくてな、君なら丁度いいだろう」
グラーフ「成る程、ではありがたく頂こう」
松風「いいなぁ、君ああいう銃を僕にもくれてもいいんだよ?」
佐倉提督「松風、お前には4丁渡したろう」
旗風「そうですよ松姉さん、あんなに頂いたのに」
グラーフ「そんなに、松風は何を貰ったんだ?」
松風「僕はこれさ」スッ
松風は一丁の銃をグラーフに手渡した見せた。その銃はリボルバータイプの銃で
グラーフ「これは、M19か?」
松風「そうさM19コンバットマグナム。通常使用用に2丁、接射用2丁。全部僕のリクエストで2.5インチさ」
グラーフ「接射用?」
松風「0距離、及び至近距離で撃つことを想定して頑丈に作って貰ったのさ司令はガンスミスの腕もいいんだ」
旗風「松姉さん、貰ったときあんなにはしゃいでたのに」クスクス
春風「旗風さんもですよね?」ウフフッ
旗風「ちょっ、春姉さん!」///
グラーフはこのやりとりを始め皆の様子や表情、言動を改めて確認して思った。
皆言いたい事をはっきり言える環境、これは大切なことだ。恐らく修介はその大切なことを嫌と言うほど知っているからだろう。そして
ソラ「ネェネェグラーフ」
グラーフ「なんだ?」
ソラ「子供ノ頃ノ修介ノ事教エテクレナイ?変ワリニ最近ノ修介ノ事教エルワヨ」ウフフッ
グラーフ「何?」
ソラ「好キナ人ノ事ヲ知リタイノハ駄目カシラ?」
そしてここに来て深海棲艦の認識が変わった。
人間と変わらない感性がありこのソラの発言も理解出来る。好きな男性の事をもっと知りたい事は女性として当たり前の感情だ。
グラーフ「ああ、よろしく頼む」フフッ
これからここでの戦いが始まる。相手が人間だろうと深海棲艦だろうと関係無い。
大切な人達が出来た。
また握ることの出来た修介の手を離したくない。
その為なら誰が相手だろうと戦う覚悟を決めたグラーフだった。
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おまけ
ドイツ グリュックスブルク海軍基地
「ビスマルク姉様~!」
ビスマルクと呼ばれた、綺麗なブロンドのロングヘアーを揺らした女性は自分を呼んだ少女に振り向いた
ビスマルク「どうしたのプリンツ?そんなに慌てて」
プリンツと呼ばれた金髪を二つ結いにした少女が少しばかり興奮している様子でビスマルクに答える
プリンツ「聞いて下さい姉様!グラーフさんがニポンのアドミラールとカッコカリしたそうなんです!」
ビスマルク「なんですって!?グラーフが!?」
プリンツ「ニポンのドイツ大使館からの情報ですから間違いないですよ!」
ビスマルク「あのグラーフが、カッコカリしたのね。日本……」
プリンツ「姉様?」
ビスマルク「気になるわね、ならないプリンツ?」
プリンツ「私も気になります!」
この2人が後に日本に来日しドイツ大使館に厄介になった時にグラーフの変わりようを見るのはまた別のお話
読んで頂きありがとうございました!この物語のグラーフはこんな感じでお送りします。
皆様方はコロナの影響いかがですか?自分は自粛期間もがっつり仕事(定時上がり)でした(>_<)
このSSへのコメント