2022-09-30 06:46:16 更新

概要

俺よりも千歳お姉の方が大事なんでしょ?
じゃあ秘書艦から外すわ。

続きはpixivにてどうぞ。


前書き

ボリュームの関係で『ケッコンオコトワリ勢を突き放してみた』に入れられなかった千代田のお話。
今回はバッドエンド目指してます。








【鎮守府内 執務室】





千代田「これでよしっと…お疲れ様、提督」


提督「ああ。今日もお疲れ様」



一日の仕事を終えて机の上の書類を片付ける。



千代田「はいこれ」


提督「ありがとう」



机の上から書類が無くなるとすかさず千代田がコーヒーを置いてくれる。

そんな気が利く彼女に礼を言って椅子に深く座ってリラックスする。


…まだそんなに遅い時間じゃないな。



提督「なあ千代田、もしよかったらこの後…」


千代田「あ、ごめんね、私千歳お姉と約束してるから。じゃあね」


提督「あ、ああ…お疲れ様…」



俺の誘いをするりと躱し、千代田が執務室を出て行こうとする。



彼女が執務室に出る前、指に嵌められている指輪がキラリと光った。









提督「はぁ…」



千代田に指輪を渡してはや半年、相変わらず彼女との距離感は縮まろうとしない。


何かと誘いは掛けているのだが、毎回毎回色んな理由をつけて逃げられる。


そう言えば指輪を受け取る時も『お気持ちは嬉しいけれど、千代田はやっぱり千歳お姉が心配だから』と言ってたっけ…。


断られたと思ってガッカリしていたが、千代田は一応指輪は受け取ってくれてその後は毎日嵌めて仕事に来てくれている。


その姿を見れば俺に対して脈が無いというわけでは無さそうなのだが…こうも毎回誘いを躱されると堪えるものがある。




提督「どうしたものかな…」




以前千代田のことを千歳に相談した時、こんなアドバイスが返ってきた。




千歳『提督が迫るから千代田が逃げるのですよ?あの娘、こういうことに耐性ないですから。ですので…』




千歳からのアドバイスは『押してダメなら引いてみろ』だった。


このままでは進展の見込みもないので妙な説得力を感じたそのアドバイス通り動こうかと思い立つ。




提督「やって…みるか…!」



俺は早速一旦閉じたパソコンを立ち上げ、偽造書類の作成から始めた。





作られた書類の内容は『秘書艦の交代』を告げるものだった。










【翌日 鎮守府内 執務室】






千代田「え…?秘書艦交代?」


提督「ああ」



翌日、千代田がいつも通り執務室に来ると同時にその書類を渡す。

余程のことが無い限り偽物とはバレないくらいよくできてしまっている。


提督「最近着任した海外艦の艦娘がいるだろ?その娘達の適性を見ろって大本営から…」


千代田「…誰と?」


提督「は?」


千代田「誰と代わるの?」



もっともらしいことを言う俺に対し千代田が疑いの視線を向けてくる。


もしかして嫉妬してくれたのかと少し期待してしまう。



提督「まずはサラトガかな?とりあえず数日やってもらって順番に回していくよ」


千代田「ふーん…サラトガさん美人だもんね」


提督「おいおい、任務でやるんだぞ?そんな風に言わないでくれるか?」


千代田「わかったわよ。それじゃあ千代田は千歳お姉のとこで休んでよーっと」


提督「ああ。これを機にゆっくり休んでくれ」


千代田「はーい」



早速効果があったのかはわからないが、千代田は少しつまらなそうな顔をしながら執務室を出て行った。


指輪を渡して以降、あんな千代田は見たことが無かったので、俺はこの後も色んな千代田が見たいという欲にも駆られ千歳のアドバイス通り色んなことを試してみようと思った。












この後、俺は調子に乗ってやることがどんどんエスカレートしていき







あんな大変なことになるとは思いもしていなかった…







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【鎮守府内 執務室】




サラトガ「航空母艦サラトガです。提督、本日よりよろしくお願いしますね」


提督「こちらこそよろしく。ほんの数日だからそんな固くならなくてもいいからな」


サラトガ「はい」



丁寧に頭を下げてサラトガが俺の隣に来る。


彼女からする甘い匂いに少しクラクラとした。



提督「良い匂いがするな…」


サラトガ「ふふ、特別な香水を使いました。今日という日のために前から準備していたのですよ?」


提督「そうか、それは恥ずかしいところをみせられないな」



俺の作りだした嘘の任務、こんな我が儘に付き合わせてしまった彼女を失望させることが無いよう、俺はいつも以上に気合を入れて仕事に取り組んだ。





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【鎮守府内 食堂】




千代田「…」


千歳「提督を探しているの?」


千代田「え?べ、別に…早く食べちゃおっと」



千代田は千歳に指摘されてキョロキョロとしていた視線をすぐに戻す。


内心は『いつもだったらこの時間にお昼を…』と思っていたがそれを悟られないよう取り繕った。






「さっき執務室行ったらサラトガさんが秘書艦してたよ」



「あれ?千代田さんは?」



「なんでも任務で新戦力の適性検査で秘書艦やらせるとか」



「ふーん、そんな任務あるんだー」





千代田「…」


近くの艦娘達の世間話が耳に入る。


そこまで秘書艦に執着していたわけでも無いのにどうしても気になってしまう。




「提督さ、なんかいつもより気合入ってたよ」



「サラトガさんの前だから頑張ってるのかな?」



「この調子で気を引き締めたままでいて欲しいかも、なーんて」









千代田「なによ…それ…」



続けて聞こえてくる自分不在の執務室の様子に千代田は悔しそうに顔をしかめた。




千歳「…」




そんな妹に対して千歳は




千歳「うふふ…」




千代田に聞こえない小さな声で笑っていた。



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【鎮守府内 執務室】



提督「サラトガ、今日はお疲れ様」


サラトガ「いえ、提督の方こそお疲れ様でした」



一日を終えてサラトガを労うと彼女は丁寧に俺に頭を下げて俺に応えた。

優雅なのにどこか優しさと包容力を感じさせる彼女に俺は思わずドキリとする。




…いかんいかん、本来の目的を忘れそうになった。


それほどまでにサラトガは魅力的な艦娘で俺は邪な考えが湧いてくる前に彼女を離そうと思ったが…



サラトガ「提督、サラの秘書艦はいつまででしたか?」


提督「え?えっと…明後日の朝までだな。そこで次の娘と交代してもらう」


サラトガ「そうですか…」



当初は5日くらいやってもらうつもりだったが、2日間に短くすることにした。

このままだとサラトガに魅了されてしまうようなそんな危ない気持ちが湧き上がりそうだったからだ。


俺の言葉に残念そうな顔を見せていたサラトガだったが…



サラトガ「わかりました。明日を楽しみにしていて下さいね。それでは失礼いたします」


提督「ああ、お疲れ様」



再びサラトガは俺に深く頭を下げて退室していった。






提督(ん…?)




楽しみに…していて下さい?




サラトガに言っていた意味がわからず俺は首を傾げていた。






【翌日 鎮守府内 食堂】




「司令官、おはよー」


「おはようございます提督」



提督「ああ。おはよう」



翌朝、いつも通り食堂に行って朝食を頂く。



千代田「おはよ、提督。昨日は楽しかったみたいね」


提督「ん?」



俺の隣に千代田が座ってきた。


特に珍しいことではないのだが、千代田はどこか俺に疑いの視線を向けてきた。



提督「楽しんだ?何がだ?」


千代田「サラトガさんを秘書艦にして…随分と張り切ってたみたいじゃない?」



これまで千代田以外を秘書艦にしたことがなかったから誰かが話をしてて千代田の耳に入ったのだろうか?



提督「そうか?まあ、あまり恥ずかしいところは見せられないって注意はしたけどな」


千代田「ふーん…」


提督「なんだよ?」


千代田「別にー…」



俺の模範的な回答に千代田がつまらなそうな顔をする。


やはり秘書艦を交代させたことが効いているのか、これも見たことがない反応で少し楽しかった。



この調子でもうしばらくは続けようかと思った時




サラトガ「おはようございます提督」


提督「ああ、おは…」



サラトガに声を掛けられてそちらに視線を向けると思わず言葉が途切れてしまう。



提督「サラトガ…その服…」


サラトガ「どうですか?天城に借りてきたのですけど…着付けは鳳翔がしてくれました」



サラトガはいつもの服では無く着物を身に纏っていた。



提督「あ、ああ…バッチリ似合ってるぞ」


サラトガ「本当ですか?良かった…一度着てみたいと思っていましたし、どうせ着るなら提督の御傍にいられるこの日が良いんじゃないかって…」



サラトガが恥ずかしそうに顔を少し赤くする。


そうか、楽しみにしていてくれってこのことだったのか。



サラトガはそのまま空いている俺の隣に座り朝食を摂るようだ。


着物を着たままでも優雅な動きに俺は思わず見とれてしまった。





千代田「ごちそうさまでしたっ!!!」


提督「うぉ!?」




反対に座っていた千代田が不機嫌そうな態度で立ち上がりズカズカとそのまま食堂を出て行った。


止めようかと思ったが



サラトガ「提督、まだ朝食が残っていますよ。早く食べて執務室へ行きましょう」


提督「そ、そうだな…」



タイミングよくサラトガに腕を掴まれてしまってそのタイミングを逸してしまった。




まあ、これも千代田の嫉妬心に火が付いたと思えば…


そんな楽観的な思考もあり、そのまま見送ることにした。






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【鎮守府内 千歳の部屋】





千代田「千歳お姉!」


千歳「どうしたの?」


千代田「着物持ってない!?うんとかわいいやつ!!」


千歳「無いわよそんなの…梅雨の時に着てたアレは」


千代田「ああいうのじゃなくってもっと華やかでかわいいやつがいいの!!」


千歳「…」




いきなり部屋に来て可愛い服を探し始めた千代田。


その焦る妹を見ながら千歳は楽しそうに笑っていた。





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【鎮守府内 執務室】




サラトガ「提督、こちらの書類は…」


提督「こっちだ。ありがとう」



今日のサラトガの動きはとても二日目とは思えないような手際の良さだった。


慣れない着物を着ているというのに動き辛そうな様子も無かった。



サラトガ「今日の書類は…これでおしまいですね」


提督「え?あ、本当だ…」



その手際の良さが手伝ってか、夕方になる前に本日の仕事が終了してしまった。




提督「ありがとうサラトガ。君のおかげで今日はもうおしまいだな」


サラトガ「ふふ、お役に立てて光栄です提督」


提督「だから今日は…」


サラトガ「提督、コーヒーを淹れますね」



『今日はもう上がってくれ』



そう言おうとしたが、サラトガがそれを遮るようにコーヒーを淹れに立ち上がった。



正直サラトガの魅力にこれ以上惹かれたらまずいと思って彼女を退室させようと思ったのだが…



サラトガ「提督どうぞ、こちらに」



サラトガはコーヒーを執務室の机ではなくソファのテーブルの方に置いた。

こちらでリラックスして欲しいということだろうか。



提督「ありがとう。それじゃあ…」



せっかく俺のためにコーヒーを淹れてくれたサラトガに応えようと俺はソファに座る。



サラトガ「失礼しますね」


提督「え?」



サラトガは俺と対面で座らず俺の隣に座ってきた。



サラトガ「どうかしましたか?」


提督「い、いや…」



『あっちに行け』と邪見にするわけにもいかず、俺はそのままサラトガを隣に座らせた。



提督「二日間ありがとうなサラトガ。君のおかげで仕事がかなり捗ったよ」


サラトガ「いえ…」



俺の労いにサラトガが少し寂しそうな顔をする。



サラトガ「今日で終わりなのですか…?」


提督「え?あ、ああ…本来は明日の朝までの予定だったがここまで順調に仕事が片付くと…」


サラトガ「でしたら」


提督「うぉ…!?」



サラトガが俺にしっかりと身を寄せてくる。

それだけに留まらず彼女は俺の腕にしっかりと両手を絡ませてきた。


着物でも隠し切れない彼女の大きな胸が俺にピッタリとくっつけられ、柔らかく形を歪ませる。

その拍子に着物は少しはだけ、彼女の胸が見えそうになっていた。



サラトガ「余った時間…提督と過ごしたいです」


提督「え…」


サラトガ「明日の朝まで…お供させていただけないでしょうか…?」



サラトガは潤んだ瞳で俺を見上げる。


明日の朝まで、その意味がわからないほど鈍感じゃない。

もしも俺が千代田に指輪を渡していなかったらこの場で彼女を押し倒していただろう。




だが…ここで本来の目的を忘れるわけにはいかない…!




俺はテーブルにあるコーヒーをわざと自分の方に倒した。



提督「あっち!!」


サラトガ「て、提督!?大変!」



サラトガがパッと俺から離れる。


俺はズボンを濡らしたコーヒーの熱さに耐えながら立ち上がった。



提督「すまん!せっかく淹れてくれたのに!」


サラトガ「ま、待って下さい!今冷やして…」


提督「すぐに着替えなきゃな!よし!じゃあ今日はお疲れ様!」


サラトガ「え?あ、ちょっと待っ…」




サラトガの言葉を待たず俺はさっさと執務室を出て行った。




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サラトガ「…」



後に残されたサラトガは台拭きでテーブルを奇麗にする。




サラトガ「残念…」




そしてひとり寂しそうに呟いた。





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【鎮守府内 廊下】




千代田「あれ?提督、何して…」


提督「千代田…?」


千代田「ど、どうしたのよその格好!?」


提督「コーヒー零しちゃってな…って」



廊下に出ると執務室に向かって来ていた千代田が走り寄って来る。



提督「千代田こそ、なんだその服」


千代田「え?あ…」



千代田は見慣れないを服を着ている。


いや、あれは秋に見たことのある着物だったか…?



千代田「べ、別にいいでしょ!少し着てみたかったのよ!」


提督「…」


千代田「な、なによ…何とか言ってよ!」


提督「やっぱり似合ってるな。可愛いぞ」


千代田「うぅぅぅ…!」



褒めると恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。

以前褒めたときには見られなかったその反応にとても嬉しい気持ちになった。



提督「もしかしてサラトガに対抗して…?」


千代田「いーの!なんでもいいでしょ!ほら!早く脱いで!洗ったげるから!」



恥ずかしさを隠そうと千代田が俺のズボンを脱がそうとする。



提督「やめろこんなところで!誤解を招くだろ!」


千代田「早く脱がないとシミに…」



俺のズボンを脱がそうとしていた千代田の手が止まる。



提督「千代田?」


千代田「…」



千代田が俺に近づきスンスンと鼻を鳴らす。

匂いを嗅いでいるようだ。



千代田「…サラトガさんと何してたの?」


提督「え?」


千代田「サラトガさんの匂いがするよ…」




そうか…さっき密着された時に彼女の香水が…!



提督「千代田、これはだな」


千代田「バカ…」


提督「え?」


千代田「バカバカバカぁ!提督のバカ!もう知らないんだからぁぁ!!」




千代田は目に涙を溜めながらそのまま走り去ってしまった。




提督「ち、千代田!待ってくれぇぇ!!」




俺はズボンをコーヒーで濡らした間抜けな格好のまま千代田を追い続けた。












その後、何とか千歳が間に入ってくれて誤解を解くことができた。










【鎮守府内 執務室】



提督「いい加減機嫌直してくれよ千代田」


千代田「ふーんだ」



翌日は朝から千代田が執務室に来ていた。

昨日誤解を解くため謝り続けたが、結局最後まで機嫌を直してはくれなかった。


もう一度謝ろうかと思ったとき、千歳の言葉が思い出される。


押してダメなら引いてみろだったな・・・


提督「・・・」


千代田「・・・?」



俺はこれ以上弁明することは止めて机にある資料に目をやった。

急に黙った俺に対し、千代田がチラチラと視線を送っているのがわかる。


こんなにも効果があると楽しくなってしまった。



千代田「ね、ねえ提督」


提督「なんだ?」


千代田「どうしてサラトガの誘いを断ったの?」



見ると千代田がこちらを上目遣いで見ていた。

何か不安を抱えているように見えるが、同時に何らかの期待をしている様にも見える。



提督「そんなこと、言わなきゃわからないのか?」



試しに少し突き放すような態度を取ってみる。



千代田「言って!」


提督「ぅお!?」



しかし千代田は離されまいと食いついたままだ。



千代田「教えてよ提督・・・提督の口から聞きたいの・・・」


提督「千代田・・・」



真剣な表情の千代田にこれまでになかったものを感じる。

これはもしかしてチャンスなのでは・・・?


そう思った俺は千代田に対し迫ってみようと思った。



提督「俺がサラトガの誘いを断ったのはな・・・」


千代田「あ・・・」



俺は千代田に近づき、両肩に手を置いた。











アクイラ「ボンジョルノ~」



その時、ノックもせずにアクイラが入ってきた。


そういえば自由な艦娘が多いって誰かが言ってたな…。


アクイラ「あら提督、今日から秘書艦だとお聞きしましたので伺いました」


提督「あ、ああ・・・」



既に次の秘書艦をアクイラにお願いしていたことをすっかり忘れていた。



千代田「・・・」



まずい、千代田の視線が痛い。



千代田「どうぞお楽しみに!じゃあね!」



千代田は怒って執務室を出て行ってしまった。



アクイラ「提督?どうかしましたか?」


提督「いや、すまない。それじゃ始めようか・・・」


アクイラ「はーい」



アクイラはウキウキしながら秘書艦業務に取り掛かった。




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千代田「ふん…!もう知らないんだから…!」



不機嫌そうな態度のまま千代田が歩いていると反対から千歳がやって来た。



千歳「あら千代田、どうしたのそんな不機嫌そうな顔して」


千代田「千歳お姉…提督ったらね、また別の秘書艦を…今日からはアクイラだって!」


千歳「まあまあ…千代田落ち着いて」



不機嫌を隠し切れない千代田に千歳が優しく宥める。



千歳「でも大丈夫なの?また提督を別の秘書艦と二人っきりにさせて」


千代田「サラトガは余り大丈夫じゃなかったけど…アクイラは…まあ大丈夫じゃない?」


千歳「あらどうして?」


千代田「だってこれまで提督に対してそんな素振り見せたこと無いし、いつもぽわぽわしててそんな様子無いって…」


千歳「ふふ、そうかもね」


千代田「間宮行こ、千歳お姉。ストレス解消にスイーツ爆食いしてやるんだから!」



悪いことを忘れようと千代田は間宮の方へと向かって行った。




千歳「ねえ千代田」



千歳は千代田が聞こえない小さな声で呟く。




千歳「恋する女性はね、いつでも鋭い牙を隠しているものなのよ」



そう言って千歳は妖艶な笑みを見せていた。







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【鎮守府内 執務室】




社長「この程度の賠償で納得できるかっ!!」



少々まずいことになった。


先日の海上護衛任務の際、出撃した艦娘達は深海棲艦から船団を護ることはできたのだが、戦いの際に艤装を船にぶつけてしまった。

船についた傷は海軍の規定通りの修理費用で補償されるのだが、どうもこの社長はそれでは納得してくれないらしい。

『長年使用された愛着のある船』だの『その傷から沈む可能性がある』だのあるのか無いのかわからないことを延々と繰り返して補償額を増やそうとしていた。


こちらに非はあるというのは確かなのだが、相手の高圧的な態度からここは譲るわけにはいかない。

この手の連中は少しでも隙を見せたらつけ込まれ、計り知れない金額を請求されるからだ。



提督「申し訳ありません、しかし規定通りの金額はお支払いしました。これ以上は海軍から補償されることはありません、どうかご納得いただけないでしょうか」


社長「なんだその態度は!人の船を傷つけておいて偉そうに!」


提督「頭ならいくらでも下げます、しかし金額の面はこれ以上の補償はできかねます。既にお支払いした補償金でどうか…」



座ったままにはなるが社長に対し頭を下げる。



アクイラ「まあまあ社長さん、これを飲んで一息つきましょうよ」



合間を見てアクイラがティーカップを持って来た。



社長「ふんっ!!」


アクイラ「ああっ!!」



しかしアクイラがテーブルに置こうとしたティーカップをそのまま掴み俺に中身をぶちまけた。


中身がアイスティーだったのは助かった。

熱かったらこの場でみっともなく叫んでいたかもしれない。



社長「今日はこれくらいで勘弁してやる!しかし金が支払われるまで毎日来てやるからな!!」



聞き覚えのあるような無いような捨て台詞を残して社長は執務室から出て行った。



提督「やれやれ…昨日はコーヒーで今日はアイスティーか」


アクイラ「提督…!」



俺はハンカチを取り出して自分を拭こうと思ったが、アクイラが先に俺の濡れた部分を拭いてくれた。



アクイラ「申し訳ありません…アクイラが余計なことをしなければ…」


提督「いや、むしろ助かった。おかげであのバカ社長が帰ってくれたからな」


アクイラ「提督…」


提督「こっちこそ秘書艦体験にあんな奴の対応させて申し訳ない」


アクイラ「いえ、私は…」


提督「ちょっと着替えてくるな。すまないけどテーブルをキレイにしてもらっていいか?」


アクイラ「はい」





俺は執務室を出て自室に着替えに向かった。















「提督…」


「あの、ごめんなさい…私達のせいで…」


提督「ん?」



廊下に出ると申し訳なさそうな顔の艦娘が立っていた。


この娘達は先程言っていた船団護衛に出撃した艦娘達だ。



提督「こんなこと気にするな。この先艤装を船にぶつけることの無いようまた皆で作戦と演習方法を考えような」


「う、うん…!」


「ありがとう提督!」


「精一杯頑張るね!」



俺の言葉に艦娘達は顔を上げてホッとした顔を見せてくれた。



提督「廊下は走るなよー」



元気を取り戻した彼女達を見送り、俺は着替えに自室に向かった。






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アクイラ「うふふ」




アクイラはドアの隙間からその様子を伺っていた。


その笑みはとても嬉しそうなものとどこか妖艶なものを含んでいた。





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【鎮守府内 談話室】



「…ということがあったの」


千代田「へぇー、提督がね、まあ…あの人ならそう言うでしょうね」



その話を耳にした千代田がどこか自慢げな顔を見せている。



千歳「あら千代田、嬉しそうね」


千代田「べ、別に…!そんなこと…」


千歳「うふふ、提督が褒められたことがそんなに嬉しかったのね」


千代田「そんなんじゃないもん…」



千歳の指摘が図星だったのか千代田が顔を真っ赤にして目を逸らした。




千代田(まあ、でも…良いところ見せてくれたんだから後で労いに行こっかな)




後程適当な理由をつけて提督に会いに行こうと頭の中で思っていた。





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【鎮守府内 執務室】




提督「ああ、よろしく頼む。きっとボロが出るだろうから、報酬は…」



着替えた後、俺は早速先程の社長の尻尾を掴むため調査機関の派遣をした。



アクイラ「先程の賠償請求の件ですか?」


提督「早いところ対処しないと艦娘達が暗い顔するから、とっとと本性暴いて化けの皮を剥がしてやる」


アクイラ「あらあら悪いお顔」


提督「はは、すまないな」



楽しそうに笑うアクイラに俺も思わず笑みを返してしまう。


彼女には場を和やかにする不思議な魅力を感じるな。



アクイラ「先程の提督、凄くかっこよかったですよ」


提督「え?」


アクイラ「艦娘達を責めようとせず一緒にこれからのことを考える姿勢は思わずキュンときちゃいました」


提督「そいつは照れるな」



正面切ってアクイラに褒められたため少しくすぐったくなった。



アクイラ「でもね、提督」


提督「なんだ…って…」



アクイラが椅子に座る俺の正面に来て自分の胸の方に俺の顔を抱き寄せる。

彼女の大き目の胸が顔にくっつけられ、柔らかな感触に身体が固まってしまう。



アクイラ「自分だけで何事も抱えないで下さいね。ここにはあなたの仲間が、味方がたくさんいるのですから」


提督「アクイラ…」


アクイラ「よしよし」



まるで子供をあやすようにアクイラが俺を抱きしめながら頭を撫でる。




提督「こ、子供扱いすんなって…」


アクイラ「うふふ、たまには良いじゃないですか」



その優しい行為に甘えていたいが何とか理性を振り絞りアクイラから離れた。



提督「でもありがとうな。何だか気が楽になった」


アクイラ「ふふ、これからも甘えたくなったらいつでも言って下さいね」


提督「はは…」



両手を広げていつでも来て良いというアクイラの態度に俺は顔を赤くしながら苦笑いをするのだった。






【鎮守府内 執務室前廊下】



提督「それじゃあまた明日、よろしくな」


アクイラ「はい。お疲れ様でした」



行儀良さそうにアクイラが俺に頭を下げて反対方向へと歩いて行った。


先日のサラトガのような誘惑は無く、今日は何事も無く仕事を終えられた。



提督「ふぅ…」



千代田のジェラシーを引き出すため始めたことなので、誘惑に流されないよう緊張感を持つようにしていた。


しかし先程アクイラに抱きしめられた時はまるで全てを彼女に委ねてしまいたい衝動に駆られそうになった。



提督「気を引き締めないとな…」


千代田「何が?」


提督「うぉぉ!?」



いきなり千代田に声を掛けられて変な声が出てしまった。



千代田「な、なによ変な声出して…」


提督「いきなり声を掛けるからだろ」


千代田「ふーん…なんかやましいことしてたんだ?」


提督「おいおい…」



千代田が俺に疑いの視線を向ける。


秘書艦外してからこんなのばかりだな。



提督「俺に用があったんじゃないのか?」


千代田「くんくん…また甘い匂いがする…」


提督「そりゃあ…一日アクイラと一緒にいたからな」


千代田「そうですよねー、一日一緒にいましたもんねー」



千代田がツンと顔を逸らしてこちらを見ようとしてくれない。


ここで俺がさっきアクイラに抱きしめられナデナデされていたなんて知ったらどんな顔をするやら…








アクイラのナデナデ…良かったなぁ…。



不思議な魅力でいっぱいだった…日々の疲れが癒されるような…味わったことの無い感覚…






千代田「な、何よ急に黙って…」


提督「なあ千代田、俺を抱きしめてくれないか?」


千代田「は、はぁ!?」



俺のお願いに千代田が思いっきり眉を顰める。



提督「嫌なら別にいい」


千代田「も、もう…何なのよ…!」






千代田は仕方ないなと呆れた顔をしながら俺に近づき俺を正面から抱きしめてくれた。



千代田の大きな胸が俺の腹部に当たり柔らかい感触に思わず下半身に血が流れそうになった。




千代田「こ、これでいいの…?」




まさか本当に抱きしめてくれるとは思っていなかった。


これも秘書艦を外した効果なのかと有頂天になりそうになったが…




提督「なんか…違うんだよな…」


千代田「はぁ!?」



アクイラの時のような圧倒的癒しが感じられず余計なことを口走ってしまった。




千代田「なによせっかく恥ずかしいの我慢してやってあげたのにぃ!!ばかぁ!もう知らないからぁぁ!!」




千代田は怒って走り去ってしまった。



提督「ま、待ってくれ千代田ぁ!」




俺は先日に続いて千代田を追いかけ、夜通し謝り倒す羽目になってしまった。












【鎮守府内 執務室】




アクイラ「提督、こちらの書類を…」


提督「ああ」



翌日もアクイラを秘書艦にしての仕事は続いた。


昨日のような情けない姿を見せることの無いよう気を引き締めて掛かった。




…と思っていたのだが



アクイラ「提督、書類の進み具合も良いですね。さすがです、よしよし」


提督「お、おい!よせって…言って…」




何かにつけてアクイラが椅子に座る俺を正面から抱きしめ、顔を胸に埋めさせたまま頭を撫でてくる。



抵抗の意思を見せるがアクイラはお構いなしに抱きしめてくれた。





提督(何なのこれ…)




優しさ、安らぎ、癒し。その全てを含んだアクイラのナデナデは俺を完全に虜にしていた。




アクイラ「さあもう少しでお昼です、頑張りましょう」


提督「そうだな…」




このままではダメだと思いつつも俺はアクイラの成すがままになっていた。






【鎮守府内 食堂】




「こんにちはー提督」


「今日はアクイラさんが秘書艦なんだね」



食堂に行くと既に艦娘達が昼食を摂っていた。



その中には…



千代田「…」



千代田は俺の視線に気づくとプイっと横を向いた。


どうやらまだ昨日のことを許してはくれないらしい。



早いところ機嫌を直してもらおうと千代田の隣に座ろうとするが…



アクイラ「失礼しますね」


千代田「え…」


提督「アクイラ?」



俺よりも先に千代田の隣に座ったのはアクイラだった。



アクイラ「すみません千代田、秘書艦業務のことで少し伺いことが…」


千代田「ああ、そういうこと…」



どうやら仕事のことで千代田から聞きたいことがあったらしい。


それならと納得して俺はアクイラの隣に座り食事を摂ることにした。





千代田「…ということよ、だから後は」


アクイラ「はい、わかりました。ありがとうございます千代田」


千代田「べ、別に良いわよ…」




アクイラのぽわぽわした雰囲気に絆されてか千代田も少し照れ臭そうな顔になっている。


もしかしてアクイラは俺と千代田のことを気遣って…?


そう思いアクイラに感謝しようとしたのだが…




アクイラ「これで今後私がずっと秘書艦でいても大丈夫ですね」


提督「え…」


千代田「は…はぁ…!?」




地母神のような雰囲気を感じさせていたアクイラがいきなり牙をむき出しにした野獣に見えた。




アクイラ「ねえ千代田?私、この先もずっと秘書艦を続けたいのですけど…よろしいですよね?」


千代田「な、何言ってんの…ダメよ!」


アクイラ「どうしてですか?」


千代田「ど、どうしてって…秘書艦はずっと私が…とにかくダメなの!」



千代田の大きな声に周りの艦娘達の注目を集め騒がしくなってくる。






「なになに?どうしたの?」


「アクイラさんが『秘書艦を譲れ』って…」


「わー!宣戦布告だー!」


「提督どうするんだろう…」




艦娘の注目は俺がこの後どう言うのかということにも集まっているらしい。



千代田「ど、どうなの提督!」


アクイラ「どうなのですか?」


提督「うぐ…」




ほら来た…



俺は『あくまでアクイラの秘書艦は一時的なもので終わったら千代田を秘書艦に戻す』と言おうとしたのだが…




サラトガ「私も秘書艦になりたいです」


提督「さ、サラトガ…!?」




獲物の匂いを嗅ぎつけた目をしたサラトガまでやって来た。


躊躇せず俺の腕を絡めてきて大きな胸をくっつけてきた。


柔らかい感触と甘い匂いにまたクラクラする。




サラトガ…諦めてなかったのか。




千代田「ちょっと!離れてよ!!」


アクイラ「では私は空いているこっちを…」


サラトガ「提督…サラは提督のためならどんなことでも…」




その後、しばらくそんな騒がしいやり取りが続き…







国後「ちょっと!食堂では静かにしてよね!!」






海防艦である国後の一喝でその場は上手いこと収まってくれた。






ありがとう、国後…









【鎮守府内 執務室】




アクイラ「…」


提督「アクイラ…?」



夕方、先程まで元気だったアクイラが浮かない顔をしている。

仕事はもう片付いたというのにアクイラはサラトガのように何もアクションを起こさなかった。



提督「アクイラ、どうかしたのか?」


アクイラ「え…あ、提督…すみません、なんでも…」



何でも無いという顔には到底思えない。



提督「さっきの演習か?」


アクイラ「…」





先程鎮守府内で演習を行った。


1対1の演習でアクイラは同じ空母の千代田と当たった。



結果は千代田の勝利。

今日の千代田の気合の入りようは異常でやる気どころか殺意まで覗かせていたような気がする。


あんな千代田初めて見た…やっぱり俺のせいかな?




提督「そんなに演習の結果を引きずらないでくれ、これから…」


アクイラ「私…正規空母なのに…」


提督「え?」


アクイラ「性能も良くありませんし…他の軽空母の方より劣るところも…」


提督「アクイラ…」



確かに搭載数やそれぞれの性能を見るとアクイラは軽空母にすら劣るところはあるかもしれない。



アクイラ「こんな私では…艦隊の…提督の御役に立てませんよね…」


提督「…」



アクイラが俺に縋るような顔を見せている。

本当は以前からずっと自分の性能のことは気にしていたんだろう。


助けを、救いを求める感情が伝わってくるが少し遠回りをすることにする。




提督「それは過去2度あった欧州遠征の最終海域でアクイラを旗艦に抜擢した俺への作戦批判か?」


アクイラ「え…」


提督「そうだとしたらがっかりだな」


アクイラ「ち、違います!私そんなつもりじゃ…!」



アクイラが慌てて取り消そうとする。

そんなアクイラの頭にポンと手を置く。



提督「あの欧州遠征では期待以上に働いてくれた。あの時の活躍を嘘だとは言わさないぞ」


アクイラ「提督…」


提督「他の艦娘との差を気にするなと言っても難しいだろうが…どうか卑屈にならないでくれ」



頭に置いた手をナデナデしてやる。



提督「俺はアクイラの頑張りをちゃんと見てるからな」


アクイラ「う…提督…恥ずかしいです…」


提督「はは、いつものお返しだよ。よしよし」


アクイラ「むぎゅぎゅ…」



自分がやっても恥ずかしくないのだろうが、俺に頭を撫でられるのが恥ずかしいみたいでアクイラは顔を真っ赤にして俯いた。




秘書艦に据えることでアクイラの悩み、本音が聞けて良かった。


千代田を妬かせるという不純な動機で始めた秘書艦交代だったが、この時は成功だと思った。





…しかしそんな甘い考えはあっという間に消滅する。





アクイラ「提督…」


提督「なんだ?」


アクイラ「さっきのお返事…聞いていません」


提督「な、何がだ?」



俺を見上げるアクイラの目が獣の目に変わっていた。



アクイラ「千代田に代えて私を秘書艦にするお話です」


提督「あ…それは…」


アクイラ「私は提督のためならどんなことでも…」



アクイラが俺の胸に顔を埋める。


これは…サラトガの時と同じようなパターン…!



二度も同じ轍を踏むわけにはいかない!



提督「すまんアクイラ!」


アクイラ「きゃっ」



俺はアクイラの両腕を掴み自分から引き剥がす。



ここは毅然と断ろう。


そう思ったのだが…



アクイラ「…」



アクイラの悲し気な瞳、先程聞かされた悩みのことでストレートな返答を変化球にさせてしまった。





提督「その…秘書艦は体験で色んな艦娘を交代でさせてるんだ…!最終的には…!」


アクイラ「そうですよね…」


提督「ち…え…?」



『最終的には千代田に戻す』

そういう前にアクイラが頷いてくれたのでその後の言葉を繋げなかった。



わかってくれたのか…?



アクイラ「サラトガから私、それに他の皆さんにもチャンスをあげないとフェアじゃありませんよね」


提督「ちがっ…!?」


アクイラ「わかりました、このアクイラ、提督に選ばれる日を待って実力と女を磨いて待っています!失礼します!」


提督「ちょ…!?アクイラ!話を…!」




アクイラは俺の話を聞こうとせずそのまま執務室を出て行ってしまった。



















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青葉「青葉…聞いちゃいました…!」








その話を執務室の前で聞いていた青葉が楽しそうな表情でどこかへ向かって行ってしまう。



青葉は千代田から『執務室で提督が怪しいことしないか確認して!』と頼まれていた。


千代田は自分が行ってしまうとまたバッタリ提督と会って気まずくならないかという心配から青葉に頼んでしまっていた。







執務室の提督とアクイラのやり取りは翌朝



『提督が新たなケッコン相手を探すべく秘書艦を交代で味見している』とかなり歪曲されて鎮守府中に伝わり



所属する艦娘全員が知ることとなってしまった。









それを知った千代田が激怒したのは言うまでもない…













【鎮守府内 執務室】





提督「あああああああああああああああああああああ!!面倒なことになっちまったぁぁ!!」






今朝、食堂へ行くと多くの艦娘達が熱い視線を送ってきた。



『提督!次の秘書艦は誰ですか!?』


『新しいお嫁さん候補を探しているって本当ですか!?』


『私、前々から秘書艦をやってみたくて…!』


『提督のためなら…!』




青葉の巻いた噂の種はあっという間に多くの花を咲かせてしまったらしく、多くの艦娘達からの熱いアプローチを受けることとなった。



このまま放っておいてはまずい…!



そう思った俺は逃げるように執務室に入り大本営へ電話をした。



大本営から『そんな任務は存在しない』と言ってもらうためだった。

嘘の任務を作ったなどと知られては想像もつかないような罰を受ける可能性もあったが、このままだと大混乱は避けられないため背に腹は代えられなず大本営へと報告した。




結果、俺は罰を受けることは無かった。


なぜかというと…




提督「せ、正式に任務にする!?どういうことですか!?」




青葉が話の裏を取るため既に大本営に確認の連絡をしていた。


それを聞いた大本営の役員が『それ面白いな、いっそのこと本当に任務にしてしまうか?』と話を進めてしまったらしい。




提督「どうしてそんなことに!?任務を出す最終的な権利は元帥殿に…」


役員『今の元帥閣下がケッコン指輪を渡した艦娘はご存じで?』


提督「…誰です?」


役員『龍田、比叡、筑摩だそうです』


提督「ああ…」




その艦娘達も姉妹艦に執着が強く、ケッコンを断る艦娘として有名だった。



役員『その秘書艦を交代させるという話を聞いて「その手があったか!」と張り切ってしまいまして…』


提督「…」




元帥殿の気持ちが痛いほどわかるのでこれ以上何も言えなかった。







そんなことで俺は次の秘書艦を選ばなければならなくなった。



正式に通達が来た任務の内容は『現秘書艦以外の艦娘5人を秘書艦として1日以上体験させること』というものになった。



つまり俺の場合、あと3人の艦娘を秘書艦体験させなければならない。






千代田「ねえ提督?」


提督「ち、千代田…?」




頭を抱えている俺の目の前にいつの間にか千代田がいた。



千代田「新しい秘書艦は決まったの?」


提督「い、いや…その…」


千代田「任務なら仕方ないよねー?それで?」


提督「はい?」


千代田「だれ?だれがやるの?」


提督「う…」




俺のあらぬ噂を信じてか、千代田が据わった目で俺に問い詰めてくる。


ジェラシーからの行動なのだろうが…今は怖さしか感じない。




次の秘書艦…


そういえばアクイラ以降はまだ誰にも頼んでいなかった。




提督「イ、イントレピッド…?」


千代田「ダメ!空母禁止!」



ダメって…



提督「それじゃあウォースパイト?」


千代田「ダメダメ!」


提督「リットリオ…」


千代田「戦艦も禁止っ!!」



まあここ最近のこと考えたら警戒したくもなるか。



提督「それじゃあ…ザラ?」


千代田「あの娘も提督狙ってるよ!ダメ!」



一応妬いてくれてはいるようでホッとした。



提督「アブレッツィ」


千代田「イタリア艦禁止!」出入り禁止!」


提督「だったらアトランタ?」


千代田「もう!!軽巡以上禁止ぃぃ!!」




そんなこと言われたら選択肢が殆ど無くなるな。

軽巡以下って駆逐艦か海防艦くらいか?



提督「フレッチャーで」


千代田「海外艦はダメよ!」


提督「わ、わかったよ…それじゃあ涼月か萩風か海風か…」


千代田「ちょっと!?」


提督「な、なんだよ…」


千代田「おっぱいで艦娘選んでない!?」


提督「そんなわけ…」





…無いとは言えない。




この他に頭に浮かんだ艦娘が浜風、浦風、潮だったからだ。




千代田「これはもう私が選ぶしかないようね…!」


提督「なんで千代田が…」


千代田「何か言った!?」


提督「い、いや…別に…」




鋭い眼光を見せる千代田に何も言い返せなかった。




千代田「そうだ…!!」




千代田がこの任務に…というより今の俺に最適の艦娘を思いついたようですぐに執務室を出て行った。





誰を連れて来たのかというと…








【鎮守府内 執務室】




国後「それで…私が秘書艦をすると…」


千代田「お願い!もう国後にしか頼めないの!」



千代田が両掌を合わせ頭を下げながら国後に頼み込んでいる。



国後「わ、わかりましたからっ、千代田さんがそこまで言うのなら私引き受けます!」


千代田「ホントに!?ありがとう…!遠慮なく提督の性根を叩き直してあげてね!何かしてきそうだったら蹴飛ばしてもいいからね!」


国後「はい!」


提督「…」




国後なら間違っても手を出すことは無いだろうと思っての抜擢なのだろう。




国後「さっそくお仕事を始めるわよ!ビシバシいくからね!」


提督「わかったよ…」




こうして今日からの秘書艦代理は国後となった。





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【鎮守府内 執務室】




国後「はいこれ、次はこっちね」


提督「ああ、ありがとう」



国後は思っていた以上にテキパキと秘書艦業務をこなしてくれた。


まだ子供だからと少し侮っていた自分を恥じる程だ。



しかしどこか張り切っているような…



提督「ん?」



執務室のドアが少しだけ開いている。

よく見るとそこには縦に並んだ顔が3つ。





占守「ふひひ、しっかりやってるっしゅ」


八丈「クナは真面目だねー」


石垣「心配して見に来たけど…大丈夫みたいね…」



どうやら姉妹達が国後の様子を見に来たらしい。




国後「ん…?あーーー!あれだけ言ったのに見に来ないでよー!」


占守「しまったっしゅ!見つかったっしゅ!」


八丈「て、てったーーい!」


石垣「頑張ってね…」


国後「こらーーーー!待ちなさーーーい!」



蜘蛛の子散らす如く3人は執務室から逃げ出してしまった。




提督「ふ、あははは」


国後「笑うんじゃないわよ!」




国後と姉妹艦のやり取りに和みつい笑ってしまった。






【鎮守府内 食堂】




「あ、提督だ!」


「国後ちゃんが秘書艦なんだ…」


「司令官…守備範囲広っ!」


提督「こらこら変なこと言ってないで早く食べろよ」


「はーい」



食堂に行くと任務のこともあってどうしても注目を集めてしまう。



国後「司令、ほら!早く食べて仕事に戻るわよ!」


提督「そうだな」



しかし国後のピリピリした雰囲気に他の艦娘達は近寄ろうとしなかった。

ピリピリしつつもどこか和やかなその空気を艦娘達は邪魔しないようにと苦笑いを見せていた。





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千代田「ふふ、上手くいってるみたいね」



少し離れた位置から千代田が満足そうに見守っていた。



千歳「あら、今日の秘書艦は国後ちゃんなのね」


千代田「ふふーん、私の抜擢よ。これでもうおかしなことにはならないはず!」


千歳「それはどうして?」


千代田「どうしてって…国後はまだまだ幼いし、しっかりしてるし、提督のことを好きなようには見えないし」


千歳「ふふ、それはそうかもしれないわね」


千代田「でしょ!?もうこれ以上おかしなことにはならないんだから!」




千歳に認められ、千代田が嬉しそうに食事を終えて食堂を去っていった。




千歳「…」




千代田を見送った後、千歳は提督と国後の様子を見る。


確かに千代田の言った通り国後からはサラトガやアクイラの時のような恋愛感情は一切見られない。





千歳「でもね千代田…」




千歳はまた小さな声で呟く。





千歳「幼くて恋に未熟だからこそ、燃える時は…激しい炎になるものよ」






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【鎮守府内 執務室】




夜、執務室で資料作成をしていた。


秘書艦をしている国後がハキハキと仕事を手伝ってくれている。



今日は国後が傍にいる間は誰からもアプローチさせることは無かった。


サラトガもアクイラも遠くから見るだけで迫って来ることも無かった。


もしかして千代田はこれを見越して国後に秘書艦を頼んだのだろうか?



国後「…」


提督「どうかしたか?」


国後「な、なんでも…ない…」


提督「?」



さっきから国後の様子がおかしい。ずっとソワソワしている。


もしかしてトイレを我慢しているのかと思って一旦資料室にお使いに行かせたが、戻って来てもその様子が変わっていない。



どうしたものかと思い頭を悩ませていると…



提督「ん…?」



千歳から携帯にメールが来た。


何事かと思って見てみると『今日は海防艦達が楽しみにしているドラマの日よ』と書かれていた。



なるほどな…



時間を見るともうすぐ夜の9時になろうとしていた。


あ、国後も同じように時計をチラリと見た。


どうやら千歳のアドバイス通りのようだ。


占守達姉妹艦と見るのを約束していたのか、本人がこのドラマを楽しみにしていたのか。



今日一日秘書艦をさせて思ったより大人びていると思ったが、子供らしいところが見られて微笑ましくなる。




提督「お疲れ様国後、今日はありがとうな」


国後「え…?でもまだ資料が…」


提督「別に急ぐようなものじゃないよ、大丈夫だ」


国後「そ、そう?それじゃ…お疲れ様!」


提督「ああ、お疲れ様」



ペコリと頭を下げると走りながら執務室を出て行った。



やっぱり楽しみにしていたんだなと思わず笑ってしまった。






とはいえ…




提督「どうすっかな…」




国後にはああ言ったが月末の資料作成は一人で行うと二人の時の3倍も4倍も時間が掛かる。

明日までに作成し大本営に報告しなければならないので本当は力を借りたいのだが…




提督「ま、これも身から出た錆だ。頑張ろう」




そう自分に言い聞かせて資料作成に励むことにした。





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【翌日 鎮守府内 執務室前】




国後「よし、今日も頑張っていくわよ!」



まだ陽も昇っていない朝5時、本日も秘書艦ということで国後は気合を入れて執務室前に訪れていた。



国後「あれ…司令早いわね…」



執務室には既に電気がついているのか、灯りがドアの隙間から廊下に漏れていた。



国後「おはよう司令、今日もよろ…」


提督「…」


国後「司令…?」



国後が執務室に入ると提督は机に突っ伏したまま動かなかった。



近寄ると静かに寝息を立てているのがわかる。




国後「昨日何時まで…あ…!」



提督が広げっぱなしの資料を見ると国後がハッとする。


それは昨日国後が執務室を出るまで見ていたものと同じだった。




国後「司令…」




国後は提督が気を利かせて自分を帰してくれたことに気づいてしまった。




提督「んぉ…あ、朝か…」


国後「…」


提督「…あれ?国後か、おはよう…」


国後「…」



提督が国後に挨拶をするが国後が申し訳なさそうに俯くだけだった。



国後「ごめんなさい…」


提督「何が?」


国後「昨日…私に気を遣って帰してくれたでしょう…?まだいっぱいお仕事が残っていたのに…」


提督「ああ…」



国後の指摘に提督がバツの悪そうな顔をする。



国後「うわわっ」



しかし国後を心配させまいと頭に手を置いて優しく撫でる。



提督「ドラマ楽しかったか?」


国後「え…な、なんで知って…」


提督「どうだったんだ?」


国後「た、楽しかった…けど…」


提督「ならば良し!今日もよろしくな!」


国後「も、もう…!誤魔化さないでよぉ!」


提督「あっはっはっは」




自分が気にしすぎないように明るく振舞ってくれた。


そう思うと国後にも自然と笑みが零れていた。










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【鎮守府内 食堂】




千代田「えっと…」



食堂を訪れた千代田がキョロキョロする。

提督と秘書艦をしている国後を探しているのだが…



千歳「提督ならあそこよ」


千代田「あ、ホントだ」



千歳が指差して教えてくれたが、既に提督の近くは他の艦娘達が集まっていて隣に座るのは困難だった。



千代田「まあいっか…国後が傍にいるのなら変なことには…」



仕方ないので千歳は少し離れた位置から提督と国後の様子を見守ることにした。

千代田の隣には千歳が座る。



千歳「あら?でも昨日より二人の距離が近くなってない?」


千代田「え…?」



千歳の指摘に千代田が二人に視線を送る。









曙「ねえ、明日の秘書艦はもう決まったの?」


霞「仕方ないから私がやってあげてもいいわよ」


曙「クソ提督は頼りないから…私が…」


霞「私も暇だから…たるんだりしないか見張ってやっても…」


提督「はは…」



相変わらず素直になれない曙と霞に対し提督はいつものことだと苦笑いをする。



そこに…





国後「司令は頼りなくなんかありません!!失礼な言い方は止めて下さい!!」


曙「え!?」


霞「な!?」


提督「く、国後…!?」



国後が立ち上がり大きな声で反論した。

その声の大きさと内容に食堂の艦娘達の注目を集めてしまう。



国後「あ…その…そ、そんなこと言っていると司令に誤解されちゃいますよっ」


曙「そ、そうよね…」


霞「ごめんね司令官…」


提督「はは、気にしてないよ」


国後「…」



国後が恥ずかしそうに着席するとその場は収まり他の艦娘達も大人しくなった。



提督「ありがとな」


国後「ひ、人前で頭撫でないで…」



恥ずかしそうにしつつも国後は提督の手を振り払うことも無く大人しく受け入れていた。







千代田「ほ、ほら…微笑ましい光景でしょ?」


千歳「声が震えているわよ?」



その光景を千代田が複雑な表情で見ていた。





千歳「ふふ、うふふ…」



そんな妹を千歳が妖艶な笑みで見守っていた。





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その日の午後、俺は鎮守府付近の港に用事があって出掛けていた。


鎮守府の留守を国後に任せようとしたのだが、『私も一緒に行く!』と中々納得してくれなかったが、留守も秘書艦の仕事だと言い聞かせてようやく鎮守府を出ることができた。




港での仕事を終えて鎮守府に戻ろうとした時…



提督「ん?国後…あれ?」



国後から電話が掛かってきたが、すぐに切れてしまう。

こちらから掛け直しても電話に出てくれない。



俺は少し胸騒ぎを覚えたので走って鎮守府へと戻った。




【鎮守府内 執務室前】




??「いいからささっさと提督を出せぇ!!」



鎮守府に戻り執務室へ向かうと廊下まで耳障りな大声が聞こえてきた。


聞き覚えのあるその声に俺は急いで執務室に入る。



提督「なんだ一体…」


社長「あ!」



執務室に入ると以前アクイラが秘書艦をしていた時に来た男の姿があった。


この男、海上護衛の失敗に過剰な賠償金を請求してきた…



国後「し、しれぇ…ぐすっ、ひっく…」



執務室の隅っこで国後が泣いている。


どうやらこの男に凄まれて怖かったからだろう。



提督「…何の用だ」


社長「何の用かだと!?お前だな!俺の所に調査機関を送り付けてきたのは!?」


国後「ひっ…」



男の大声に国後が身体を竦ませる。



提督「おい」


社長「お前のせいで俺は余計な税金を…うぐっ…!?」



これ以上国後の前で大声を出させないよう正面から首を掴む。



社長「がはっ…!ぐっ…」


提督「不正だらけの経営をしていたお前が悪いんだろうが」



そしてそのまま社長を床に叩きつけた。



社長「グヴェ…!!」


提督「そんなことに国後を巻き込むな。さっさと帰れ、さもないと…」



俺は国後には見えないように銃を取り出し社長の額に銃口を突きつける。



社長「わ、わかった!帰る!たすけてくれぇぇ!!」



脅しに屈した社長は慌てた足取りで執務室から逃げ去ってしまった。







提督「…すまなかったな、国後。怖い想いを…」


国後「…!!」


提督「ぅお!?」



謝ろうと思った俺の胸に国後が飛びついてきた。



国後「ぐす…えぐ…こ、怖かったよぉ…ひっく」


提督「すまない…こんなことに巻き込んでしまって」


国後「うぇぇぇ…」



たとえ深海棲艦と戦っていても、人間を超える力を持っていたとしても、国後はまだ小さな子供。

この様にいきなり大人に凄まれてしまっては怖いのだろう。


彼女は軍人とはいえ、まだ小さな子供なのだ。




俺はその後、国後が泣き止むまで抱きしめ、頭を撫でながら慰め続けた。








国後が泣き止んでから俺は謝罪を込めて国後に『俺にできることならなんでもする』と言った。



最初は『そんなの必要無い』と言っていた国後だったが、あるお願いをしてきた。






そのお願いとは予想外のものだった。








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【鎮守府内 提督の私室】





仕事を終えた夜、いつもだったらそろそろ寝ようかという時間。




国後「司令…入っていい…?」


提督「ああ、どうぞ」



小さなノックの後、国後がパジャマ姿で入ってきた。



国後「ごめんなさい…こんなことお願いして…」


提督「いいよ、これくらいお安い御用だ」




国後のお願い、それは『一緒に寝て欲しい』というものだった。


耳を疑う内容だったが、昼間怖い想いをしたこと、それに姉妹艦の占守達が遠征に行って今日は帰らないこともあってそのお願いを受け入れることにした。



提督「それじゃあもう寝ようか」


国後「うん…」



国後は少し躊躇しながらも俺の布団の中に入ってきた。


これが千代田やサラトガ、アクイラだったらとてもではないが理性を保てそうにない。

しかし国後相手ならどこか和みを感じる余裕があった。




提督「おやすみ、二日間ありがとうな」


国後「おやすみなさい」



電気を消して国後と一緒に寝ることにした。




国後「司令…」


提督「…ん?」


国後「ありがとう…」



そう言いながら国後が俺にくっついてきた。


可愛らしいその仕草に俺は優しく頭を撫でてあげた。





提督(千代田が知ったらどう思うやら…)





こんなところ青葉に見られたらと思うが既にその対策はしてある。


権利を悪用してあいつは丸一日の長距離遠征に出ていて明日の昼まで帰ってこない。

この場が激写される可能性は無いはずだ。



提督(あと2人か…)



俺は明日から誰を秘書艦にするかを考えながら国後と一緒に眠りに就いた。





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国後「ん…」




陽が昇る前の早朝。



提督「ん…くー…」



国後は提督より先に目を覚ました。



国後「…」



頭の中に思い浮かぶのは昨日の提督の姿。


自分を庇いあの悪者に立ち向かってくれた姿。


まるで私を助けてくれる白馬の王子様のような…



国後「司令…」



胸のドキドキが収まらないまま国後は…



国後「ありがとね…ん…」




提督の頬に軽いキスをした。








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【鎮守府内 廊下】





提督「な、なんじゃこりゃあああぁぁ!?」




その日の朝食後、掲示板に張り出された新聞を見て思わず絶叫を上げてしまう。



その内容とは…




千代田「国後を助けた王子様…」


サラトガ「お姫様をそのまま部屋に迎え…」


アクイラ「共に夜を過ごし…」


千歳「お目覚めのキスをプレゼントされる、へぇ~」




昨日あったことがそのまま記事にされていた。しかも写真付きで。




俺も国後もカメラの存在など全く気付かなかった。



それは執務室にも俺の部屋にも隠しカメラが設置されているということだった。




「きゃーーー!提督カッコイイーーー!!!」


「国後ちゃん…海防艦だと思って油断してたわ…」


「これはうかうかしてられないわね!!」




掲示板を見た艦娘達が色めきだった声を上げている。

そして熱い視線が俺と国後に注がれてきた。




国後「ーーーーーーーー!!!!」




国後は顔を真っ赤にしながらどこかへ走り去ってしまった。


どうやら恥ずかしさに耐え切れなくなったらしい。





千代田「へ…へぇー、か、カッコいいじゃない提督…」


提督「う…」




千代田が口元をひくつかせながら俺を褒めてくれた。


まあ国後を選んだのは千代田だし俺は別に恥ずかしいことをしたつもりは無い。


褒めようにも色んな複雑な感情が混じっているのだろうな…。






それにしても…





提督(一体誰が…?)





青葉は遠征からまだ帰っていない。


この場にいないのだから新聞を作ることはできないはずだ。



その証拠にこの新聞は青葉の作ったものと比べると字体も掲載の仕方も全然違う。





提督(誰が…隠しカメラを…?)





俺は誰かに監視されているという不気味さに寒気を感じていた。























「うふふふ…」
















「楽しくなってきたわね…」










































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【鎮守府内 執務室】




千代田「ああああああ!!もう!どうしよう!誰にすればいいのかわかんないじゃない!」




執務室に千代田の嘆きが響く。


いつの間に秘書艦を選ぶ権利が千代田に渡っていたんだ?




千代田「いっそのことガングートとか武蔵に提督を厳しく躾てもらって…?」


提督「おいおい…物騒なこと言うなよ」


千代田「なによ!良いよね提督は国後からキスしてもらえて!さぞ嬉しかったでしょうよ!」



千代田が半泣きになって言い返してくる。

そんなに国後が俺にキスしたことに怒ってくれているのか?



提督「まあ…嬉しかったよ、寝てたから覚えていないのが勿体ないな」


千代田「え…本気で言ってるの…」


提督「そうだな」


千代田「…」



俺の言葉に千代田が俯いて黙ってしまう。




まずいな…千代田を煽って嫉妬心を揺さぶるつもりが失敗したかもしれない。




千代田「提督は…ああいうことされると嬉しいんだ…」


提督「もちろん、俺だって男だからな」


千代田「…」


提督「それが好きな相手なら尚更だな」


千代田「…?」



千代田が顔を上げてこちらを見る。


俺はそれに対し真剣な目で見つめ返す。





内心は『これで俺の想いが伝わって無かったら一巻の終わりだ』とドキドキだった。




千代田「ふ、ふーん…そうなんだ、ふーん…」



千代田が少し顔を赤くしながらこちらへ近づいてくる。



千代田「目、閉じて」


提督「…なんで?」


千代田「いいから!!」


提督「わ、わかったよ…」



千代田に言われるがまま俺は目を閉じる。


そして千代田が俺の両肩に手を置いてきた。




…嘘だろ。


マジか?



千代田の吐息が俺に近づいてくるのがわかる。





俺は胸の高鳴りを覚えながらこのまま千代田に身を任せた…









千歳「提督、入ってもよろしいかしら?」




千代田「っ!?」


提督「い!?」



ドアの向こうから千歳の声とノック音が聞こえて千代田が俺から離れてしまった。




あと少しだったのに…





千代田「ど、どどどどうぞ!」


千歳「あら、千代田もいたのね?お邪魔だったかしら?」


千代田「そそそ、そんなことないよ!!」



顔を真っ赤にして千代田がしどろもどろになっている。


そんな千代田を見て千歳が楽しそうに笑っていた。



千歳「青葉が帰ってきたのだけど…やっぱり今朝の掲示板のことは彼女の仕業では無さそうね。『そんな美味しい記事があったのなら遠征なんか行きたくなかった』って嘆いてたわよ」


提督「そうか…やっぱり青葉じゃ無かったんだな」


千代田「だったら一体誰が…」




俺から直接聞いても青葉が話すとは思えなかったので千歳から聞いてもらったのだが…やはり遠征に行っていたので青葉が俺の部屋を盗撮していたわけでは無さそうだ。



提督「…」



俺は執務室の隅に置かれた小型カメラを見る。


先程自分の部屋と執務室に隠されていたカメラだ。


指紋も無く誰が犯人なのか特定は難しそうだな…。




千歳「それで千代田、今日の秘書艦は決まったのかしら?」


千代田「うー…それが全く…誰を選んでも提督とフラグが立ちそうで…」


提督「フラグってなんだよ、人を恋愛シミュレーションの主人公みたいに言うな」


千代田「たった2日で国後とあんなことになった人に言われたくないわよ!!」


提督「あ、あれは偶然だろ…」



千代田が頭を抱えながら次の秘書艦を決めようと云々唸っている。



千代田「そっか…」


提督「ん?」


千歳「誰か決まったの?」


千代田「うん!そうよ!私と同じタイプを選べばいいんだ!」


提督「は?」






そう言って千代田はさっさと執務室を出てその艦娘を連れに行ってしまった。




千歳「…?」


提督「どういう意味だ?」




俺と千歳は目を合わせてお互い首を傾げていた。



























山城「それで…私に秘書艦をしろと?」


千代田「ねえ!山城!!」



ソファに座る山城に千代田がバンッと両肩に手を置く。



山城「痛っ!何よ…」


千代田「提督と扶桑さん、どっちが好き!?」


山城「はぁ?」


千代田「ねえ!提督と扶桑さん!どっちが好きなの!?」


山城「そんなの…扶桑姉様に決まってるじゃない…」


千代田「そうよね!ね!」




ああ、自分と似たタイプってそういうことか。


予めフラグが立たないことを念押ししてから秘書艦を頼もうってことか。



千代田「これで安心ね、山城、よろしくお願いね!」



千代田はホッとした笑顔を見せながら執務室を出て行った。


その様子は2日前に国後に依頼した時と同じだった。



同じことの繰り返しにならなきゃいいけど…





山城「はぁ…いきなり秘書艦だなんて…不幸だわ…」


提督「すまんな、面倒だろうがよろしく頼む」


山城「わかったわよ…それじゃ扶桑姉様にも言ってくるわ…」



秘書艦を任せられた本人は本当に面倒くさそうに執務室を出て行った。


あの調子じゃ本当にフラグが立ちそうにないな。




千歳「それじゃ提督、私も失礼するわね」


提督「ああ、千歳ありがとうな」


千歳「どういたしまして」








3人とも執務室を出て行って執務室が一気に静かになった。






それにしても…





提督「惜しかったな…」





タイミングの良いところ、後少しのところで千歳が入ってこなければ



そう惜しまざるを得なかった。








____________________









【鎮守府内 廊下】





千歳は廊下に出ると山城を追い掛けて声を掛けた。



千歳「山城、ごめんなさいね面倒なことになって」


山城「本当よ、妹の躾はしっかりとしてよね」



謝る千歳に山城は面倒そうに言葉を返す。




千歳「ふふ、ごめんなさいね。でもね…山城」


山城「…?」


















千歳「このままで…いいの?」












山城「え…」












急に覗き込むような目で見られ山城が足を止める。



千歳「千代田はあなたのことを『提督とは何の関係にもならない安全な人』と思っているのよ?」


山城「そ、それが何よ…」


千歳「いいの?このままで…本当にいいの?」


山城「…」




何か言葉を返そうにも千歳から感じる威圧感に何も言い返せなかった。




千歳「頑張ってね、うふふふ…」




そのまま千歳は妖艶な笑みを浮かべながら先を行ってしまった。




















山城「馬鹿に…しないで。私だって…!」












後に残された山城が小さく、しかし力強く呟いた


























【鎮守府内 執務室】




提督(さて…山城は…)



準備のためと出て行った山城が中々戻って来ない。


呼びに行こうかと思った時、執務室のドアからノックする音が聞こえた。



山城「提督…いい?」


提督「なんだ改まって、どうぞ?」



執務室に入る前にわざわざ山城が確認してきた。


そんな気にするような間柄じゃなかったと思うけど…



提督「あ…」


山城「…」



執務室に入ってきた山城は正月に見せた着物を着ていた。



山城「べ、別にどんな格好でも良いんでしょ…?サラトガだって着物着てたし…」


提督「ああ。構わないよ」



もしかして着物で秘書艦をやるのが流行ってるのか…?



山城「…」



仕事を始めるのかと思いきや、山城が何も言わずに立っている。



ああ、これはもしかして…




提督「山城」


山城「な、何よ…」


提督「似合ってるよ」


山城「…!さ、さっさと仕事を始めるわよ!」



恥ずかしそうに書類を奪った山城は耳まで真っ赤になった。



提督(へぇ…意外と可愛らしいところもあるじゃないか)



てっきり山城は俺に対して全く興味が無いものと思っていたが…



そんな山城との一日はこうして始まった。







【鎮守府内 執務室】





昼のチャイムが鳴る。


そろそろお昼にしようかと山城に声を掛けようと思ったのだが、山城は少し前に『準備してくる』と言って執務室を出て行ってしまった。



今度は何の準備だろうと山城の帰りを待っていると…




山城「提督…開けてくれない?」


提督「え?」



ドアの向こうから山城の声がした。

開けて欲しい?どういうことだろうか。




提督「どうしたん…」


山城「…」



ドアを開けると両手に料理を持った山城が立っていた。


先程の着物姿と違い今度はエプロン姿だった。



山城「お昼…作ってきたの、食べましょう」


提督「…どうして?」


山城「どうしてって…今の状況わかってるの?食堂に行ったら嫌でも騒がしくなるでしょう?」


提督「それもそうだな、それじゃあ遠慮なく頂くよ」



山城が俺の前に料理を置いてくれる。

俺は両手を合わせてありがたく頂いた。

鳥肉と野菜を炒めたシンプルなものだがとても美味しかった。



提督「うん…美味いな」


山城「本当?」


提督「ああ。大したものだよ」


山城「そう、ふふっ…」



満面の笑みを見せる山城に思わずドキリとした。


いつもは俺に対し、面倒くさそうな顔しか見せてくれなかったそのギャップなのか、その笑顔が眩しく見えてしまう。


提督(いかんいかん…しっかりせねば)




俺はうっかり山城に気持ちが揺らがないよう言い聞かせていた。













【鎮守府内 演習場】





午後、山城の作ってくれた昼食を終えて演習場へと向かった。


山城は『片付けてくる』と言って先に執務室を出て行き、後で演習場で合流すると言っていたので今は俺一人だ。





…一人で来たのは失敗だったかもしれない。




「提督ー!ぎゅーーー!」


「えへへ、こっちみて、チラッ」


「おニューのブラだよ、どう?似合ってる」




演習場へ行くと艦娘達が一斉に集まり俺に対してスキンシップを始めたのだ。


スキンシップというにはあまりにも悩ましく艶めかしいものだった。


俺に抱き着いてきたり、胸を押し付けてきたり、スカートの中を見せてきたり…



提督「こ、こら!やめないか!」


「次の秘書艦にしてくれるのならやめてあげるー!」


「あー!ずるいー!次は私だよ!」


「私を秘書艦にしてくれるのならイイコトしてあげる」



離れようにも艦娘達の力は強くどうにもならなかった。



千代田「こらーーー!!なにやってんの!?離れなさい!」



少し離れた位置で千代田が叫ぶも全く効果が無い。


サラトガやアクイラなんかは得物を捕らえる前の獣の目をしていた。

じっくりと好機を狙っているかのような…






山城「…」



収拾のつかない状況にどうしたものかと思っていたら後ろからゆっくり山城が現れた。



「きゃっ…!山城さん…」


「わわ!掴まないでー!」


山城「…」



山城は無言で艦娘を掴むと俺から引き剥がしてくれた。




山城「…何遊んでんの?演習よ?」


「はい…」


「ごめんなさい…」



山城の謎の威圧感に艦娘達は我を取り戻したかのように演習場へと向かい始めた。



提督「助かったよ山城」


山城「あなたがちゃんと言い聞かせないからでしょ?しっかりしてよ」


提督「う…すまない…」



山城の言うことは尤もなので何も言い返せずに謝るしかなかった。












山城「もう…これじゃあ私は離れるわけにはいかないわよね…」










山城の小さな呟きは俺には聞き取れていなかった。





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千代田「ほ、ほら!千歳お姉!上手くいってるよね!?」


千歳「そうね、見事な手際ね。うふふ」




千代田が嬉しそうに提督と山城を指差して喜んでいる。


これなら変に進展することは無いと千代田は安心して演習場の方へと走って行った。







千歳「…」







千歳は離れたところから山城を見る。








千歳「ほんの数時間で女の顔になってるわね…うふふふ…」







千歳は妖艶な笑みを浮かべながら演習場の方へと向かった。







【鎮守府内 執務室】






この日も順調に仕事を終えられそうだ。


窓を見ると太陽が沈もうとしていて空がオレンジ色に染まっている。



提督「山城、今日はもう上がって…」


山城「暑いわね…」


提督「え?」



陽が傾いて涼しいどころか、これから寒くなるだろうと思ったのだが…




山城「脱いでも良い?」


提督「はぁ!?」



山城から耳を疑う発言がされたので、俺は止めさせようと椅子から立ち上がった。


しかし山城の脱ぐ方が早かったため止めることはできず、彼女の衣服がハラリと床に落ちる。



提督「お、おい!」



俺は目を閉じるべきか逸らすべきか混乱してしまい逆に凝視してしまう。


下心があったのは否定できない…



山城「何慌ててるのよ、ちゃんと中に着てるわよ」


提督「へ?」



山城は服の中に水着を着ていた。


そういえば毎年夏は水着を着てたっけか…



提督「な、なんだよ…驚かすなって…」


山城「ふんっ…」




山城は恥ずかしそうに少し顔を赤くしながらプイっと横を向く。


そんなに恥ずかしいのならやめればいいのに…と思いつつ、ついつい視線は山城の方に言ってしまっていた。




提督(待てよ…?)




もしもこの場をまた隠しカメラで見られてたら?


もしも千代田がいきなり執務室に入ってきたら?



俺はそんな危機感を感じて自分の上着を脱いだ。




山城「ちょ、ちょっと!?」




山城は何をされるのかとギョッとした顔になる。


これは何か勘違いされてるな…と苦笑いしつつ俺は自分の上着を山城に着せた。



山城「あ…」


提督「せっかく水着を見せてくれて嬉しいけど…寒いだろ?」


山城「別に…そんなこと…」


提督「無理しないでくれよ、こんな時期に水着でいて体調を崩したらダメだからな」


山城「わ、わかったわよ…」



山城は俺の言うことを聞いてくれて上着をギュッと握りしめた。


よし、これで何とか誤解されるようなことは無くなったはず…。



山城「…」


提督「どうした?」




山城が俺の上着をクンクンとして匂いを嗅いでいる。


まさか臭いとか…?そんなはずは…



山城「制服、洗っておくから」


提督「え?」



山城は脱いだ自分の上着を拾ってそそくさと執務室を出て行った。




提督「あ、あれ…?」




後に残された俺は上着が無くなって少し寒気を感じてしまっていた。






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【鎮守府内 扶桑・山城の部屋】






山城「…」




まずいわ…


提督のことが頭から離れない…




部屋に戻っても私は提督に渡された上着に包まれたままだ。


彼の匂いと優しさに包まれているようで胸がドキドキする。




本当は…提督のこと、そこまで意識していたわけじゃなかった。



千歳に煽られて意地になって私の方を見てもらおうと思っただけだった。



でも…執務室で見せる彼の笑顔、優しさ、料理を美味しそうに食べてくれた時の顔、上着を着せてくれた思いやり。



それらが私の胸の中に残り、さっきから溢れんばかりの想いでいっぱいになっていた。






山城「扶桑姉様…」





私には扶桑姉様さえいれば良いとずっと思っていたのに…





扶桑「山城?」


山城「ひっ!?」



急に扶桑姉様に声を掛けられて私は提督の上着を投げてしまった。



扶桑「秘書艦体験、楽しかった?」


山城「は、はい…!た、楽しかったです!」


扶桑「そう、良かったわね…」



扶桑姉様が私に対し笑顔を見せてくれる。



山城「…!?」



でも…その笑顔になぜか寒気を感じてしまった。



扶桑「ねえ山城、まさかとは思うけど…抜け駆けなんてしないわよね?」


山城「え…」



扶桑姉様が私に対し、敵を見る…そう、まるで深海棲艦を見るような目をしていた。



扶桑「山城は私が提督を愛していることを知っているわよね」


山城「…」



そう、扶桑姉様はずっと前から提督のことが好きだった。

だからこそ私は提督に対し反抗的な態度を取ってきたのだけど…


千代田に指輪を渡した時にもう諦めたと思っていたのに…ここ最近の出来事で扶桑姉様に火をつけたのかしら…



扶桑「それなのに提督を奪い取ろうなんて…」


山城「ふ、扶桑姉様!私は…」


扶桑「なあに?」


山城「わ、私…私、は…」




『そんなことありません』と否定できませんでした。


だって…私は…本当は…










扶桑姉様の視線から逃れるように俯くと…なぜか涙が零れてしまいました





扶桑「ごめんなさい山城…あなたを試すようなことをして…」


山城「え…」




そんな私を扶桑姉様が優しく抱きしめてくれた。



扶桑「山城の本音を聞きたかったのよ、本当は提督をどう思っているのかって…」


山城「扶桑姉様…うぐ…えぐ…わ、私…」


扶桑「提督が…好きなのよね?」


山城「…」




私は扶桑姉様の胸の中で頷いた。









扶桑「だったらね…山城、こうするのはどうかしら…」








扶桑姉様の提案に私は驚きを隠せなかったけど…








山城「はい!扶桑姉様!私もそれで良いと思います!」







私は提督と扶桑姉様と一緒になるためにその提案を快く受け入れた。














【鎮守府内 廊下】




提督「ふぅ…」



翌朝、廊下の掲示板には特にこれといった話題のものは張り出されていなかった。


その事にホッと一息ついて朝飯を食べに食堂へ向かおうとした。




千代田「提督ー!」



そこへ千代田が走ってやって来る。



提督「どうした?」


千代田「これから朝ごはんでしょ?」


提督「ああ、今から食堂に…」


千代田「こっち来て!」


提督「?」



千代田が片手を後ろに回したまま物陰に来て欲しいと手招きする。



千代田「はいこれ!」


提督「お…?」



千代田が渡してきたのは弁当箱だった。


作り立てなのか、弁当箱は暖かった。



千代田「食堂に行くと騒がしくなるでしょう?だからこれを執務室で食べて?」


提督「それは…ありがたいな、助かるよ」


千代田「それとね!」



ただ騒がしいのを避けるためでは無いと千代田が話を続ける。



千代田「あ、あのね…その…私が誰かのためにお弁当を作るのって初めてだから!」


提督「千代田…」


千代田「ちゃんと味わって食べてよね!」


提督「おう、ありがたく頂くよ」



恥ずかしそうに顔を赤くしながら千代田がその場を離れようとした。



千代田「そ、それと、この秘書艦任務が終わったらどこか遊びに行かない?」


提督「え?」



耳を疑った。


これまで何度千代田を誘っても断られ続けてきたからだ。



提督「それは二人きりでか?」


千代田「そ、そうよ!」



マジか…


千代田の誘いに俺は心躍り嬉しさで胸がいっぱいになった。



ここ最近色んなことがあったけど…俺はやっぱり千代田が好きなんだな。




提督「わかった、楽しみにしてる」


千代田「うん!それじゃあ今日も頑張ってね!」





俺の返事に満面の笑みを見せてくれた千代田に俺も頬が緩むのが我慢できなかった。





提督「よし!今日も頑張るか!」





俺は自分の頬を叩き、気合を入れながら執務室の方へと向かった。









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山城「…」


扶桑「…」







離れた位置から扶桑と山城がその光景を見ていた。




扶桑「ね、山城…うかうかしていられないでしょう?」


山城「はい、扶桑姉様…」




山城が手に持っている弁当箱がバキバキと音を立てている。







山城「扶桑姉様の作戦…さっそく実行に移しましょう」








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【鎮守府内 廊下】




千歳「あら千代田、お弁当は渡せたの?」


千代田「うん!ありがとう千歳お姉!おかげで大成功だったよ!」


千歳「ふふ、おめでとう」



今朝、千代田は千歳からあるアドバイスを受け取る。


それは昨日の提督と山城の様子で、昨日一日の間に何がったのか教えてくれた。



そして昨日の映像を見せた後、『このままじゃ山城に提督を取られるわよ』と伝え千代田を煽り行動に移させたのだ。



千代田「でも千歳お姉」


千歳「なあに?」


千代田「どうしてあの執務室の動画を千歳お姉が持っていたの?」


千歳「ふふ…」




千歳は千代田を不安にさせない爽やかな笑みを見せる。




千歳「それは企業秘密よ、ちょっと食堂に行ってくるわね」




千歳は人差し指を口元に立ててその場をやり過ごした。




























千歳「サラトガ、アクイラ」




千代田から離れ、千歳は食堂で提督の姿を探しているサラトガとアクイラに声を掛ける。



サラトガ「千歳…?」


アクイラ「どうしました?」


千歳「二人にお願いがあるのだけど…」
























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【鎮守府内 執務室】



山城「おはよう提督」


提督「ああ、おはよう。今日もよろしくな」



千代田の弁当をありがたく頂いた少し後、山城が執務室にやって来た。



山城「提督、お願いがあるのだけど」


提督「どうした?」


扶桑「失礼します」


提督「扶桑?」



山城がお願いがあると言うとすぐに扶桑が執務室に入ってきた。



山城「実は…扶桑姉様を同席させて欲しいの」


提督「扶桑を?」


扶桑「せっかくの山城の晴れ舞台ですもの、どうしても近くで見てみたくて…」


提督「そんな大げさな…」



相変わらず仲が良いなと思わず苦笑いをする。



扶桑「どうかよろしくお願いします」


提督「わかったよ、好きにしてくれて良いからな」


扶桑「ありがとうございます」


山城「ありがとう提督」



扶桑と山城が顔を見合わせて笑顔を見せる。



まあ扶桑がここに居てくれれば間違いが起こることも無いだろうとも思えて俺も少しホッとしていた。







今日は落ち着いた日になりそうだ…









俺のそんな甘い考えはすぐに消し飛ぶことになる。

















【鎮守府内 執務室】





山城「そろそろお昼ね」


提督「ん、そうか」




その日の仕事が順調に片付いて午後を迎えようとしていた。



扶桑「それじゃあ準備してくるわね」


提督「え?扶桑が?」


扶桑「昨日は山城が用意したのですよね?今日は私にさせて下さい」


提督「わかった、よろしく頼むよ」




この秘書艦任務が終わるまでは混乱を避けなければならないので扶桑の言葉に甘えることにした。





扶桑の料理はとても出来が良く美味しかった。



俺は箸を進め彼女の料理を褒めると山城と一緒に満面の笑みを見せてくれた。





しかし…食事を終えてしばらくすると俺の身体がおかしくなり始めた







提督「…」


山城「提督?」


扶桑「どうかしましたか?」




やばい…なんか熱っぽい。


身体が熱くて下半身がムズムズする。



山城「熱でもあるの?」


提督「…!?」



山城が俺に近づいて額に手を当てると俺はビックリして身体を起こしてしまう。


なぜか胸の鼓動が強くなり、今すぐにでも近くの山城に対してキスをして押し倒したい気持ちに駆られた。




提督(い、いかんいかん…何を考えているんだ…!)



俺はそんな邪な考えを振り払うように首を横に振った。




扶桑「…」


山城「…」




扶桑と山城がなぜか顔を見合わせながら頷き合う。



山城「提督、ちょっと休んだ方がいいわよ。こっちに来て横になって」


提督「ん…ああ…」



俺は山城の言われるままにソファに横になった。



扶桑「…」





なぜか扶桑が執務室のドアの方へ行って





鍵を閉めた。




提督「…?」


山城「提督…」


提督「え…んむぅ!?」




山城は横になっている俺に覆いかぶさって来てキスをしてきた。


山城は俺の両肩をしっかりと抑えているため抵抗ができない。



提督「や、んむ、やまし…ん…!?」


山城「ん…ちゅ…ん…んぅ…」



抵抗しようとする俺をお構いなしに山城は舌を入れ口内を蹂躙してきた。

口にも力が入らない俺は成すがままになってしまっている。


山城のディープキスと彼女の柔らかさを感じてしまい否が応でも下半身に血が流れてしまう。



扶桑「うふふ、提督…ここ、大きくなっていますよ?」


提督「んぐ!?」



いつの間にか扶桑が近づいていて俺のギンギンになった下半身を弄り始めた。



提督「ぷはっ!お、おい!二人とも何をして…!」


山城「ごめんね提督、こんな強引なことして…でもね?」




俺を押さえつけている山城が頬を赤くしながら怪しい瞳で俺を覗き込む。



山城「私達には…今、この時間しか無いの」


扶桑「すみません提督、私も山城も一度きりのこのチャンス、逃すわけにはいかないのです」


提督「何を言って…って、おい!扶桑!脱がそうとするな!」



扶桑が俺のズボンのベルトを外し、ボタンを外してチャックを降ろした。



扶桑「うふふ、大丈夫です。優しくしますね、と言っても…」


山城「私達も初めてだから…優しくしてね…ん…」


提督「や、やめ…んぅ!?んっん!?」




再び山城に口を塞がれ両肩を押さえつけられ、俺はこの状況を脱することができなくなってしまった。





このまま二人の成すがままになるしかないのか…!



どうにか抵抗しようとするが、山城のキス攻めと扶桑の下半身への刺激に頭が回ってくれなかった。














突如、ガシャン!と窓ガラスが割れる音がする。



扶桑「え!?」


山城「な、なに!?」



音のした方へと視線を向けると割れた窓ガラスから艦載機が飛び込んできた。

飛び込んできたのは2機。



山城「誰が…きゃぁ!!」


扶桑「山城!」



1機は山城に向かって突っ込み、もう1機はそのままドアにぶち当たる。

その拍子に山城の拘束が解かれ、ドアはその衝撃で壊れてしまっていた。



提督「い、今のうちに…!」



山城の拘束が解かれた俺は執務室から脱出しようとする。



山城「ま、待って提督!」


提督「うお!?放してくれ!」


扶桑「場所を変えるわよ山城!ここはもう…うぐっ!?」


山城「扶桑姉様!?きゃあ!」



再び俺を掴まえようとした扶桑の背中と山城の顔面に続けて飛び込んできた艦載機が特攻して衝撃を与えてくれた。



提督「だ、誰か知らんが助かった!」



俺は脱がされたズボンを履き直す情けない格好で執務室から逃げるように出て行った。





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サラトガ「ふぅ…千歳の言った通りだったわね」


アクイラ「本当…油断も隙も無い…」



執務室に艦載機を飛び込ませたのはサラトガとアクイラだった。



二人は千歳から『扶桑と山城が結託して何かしようとしている』と聞き、艦載機を使って窓から中の様子を探っていた。




サラトガ「共闘はここまでね」


アクイラ「はい。それでは」



二人は目的を果たすとそれぞれ別の方へと走って行った。





その目は既に獣の目に変わっていた。








【鎮守府内 廊下】





提督「ぐ…ヤバイな…これ…」



扶桑の奴…俺に何を食わせたんだ…。

下半身のムラムラが治まっておらず、俺は腰の引けた足取りで廊下を歩いていた。


もしかしたら精力剤の類を食べさせられた可能性があるため、このままでは艦娘を見掛けたら誰彼構わず襲いかねない。



提督「そんなことになってたまるか…!」



俺はふらつく足取りのまま鎮守府内にある浴場へと向かった。





【鎮守府内 浴場】




鎮守府内には浴場が2つある。

ひとつは艦娘用の大浴場、もうひとつはほぼ俺専用の浴場だ。



俺は自分が普段利用している浴場へと向かった。



まだ夕方にもなっていないため湯が張られていない。

しかしそれよりも火照った身体を冷やすために頭からシャワーを被った。



提督「うおおおおおおおおおおおおおっ冷てえええええええぇぇ!!」



あまりの冷たさに全身が凍るのかと思ったが、そのおかげかしばらくすると下半身の火照りが収まり、ギンギンだった俺のムスコが萎えてくれた。





提督「はぁ…今度は暖めないと…」




このまま冷えたままでは体調不良になりかねないので俺は温水に切り替えて身体を暖め始めた。

一旦冷え切った身体に温水は刺激が強く、全身がピリピリと痛みを走らせてしまった。




しばらく温水を浴びていると後ろからドアが開いて閉まる音がする。



提督(ん?誰か入ってきたのか…って!!)



この鎮守府に男は俺しかいない!



一体誰が、と後ろを振り返ると




アクイラ「提督?お背中流します~」


提督「ア、アクイラっ!?」



アクイラがいた。


しかも裸で。



前を全く隠そうとせず大きな胸も少し毛の薄い秘部も露わになっていた。


刺激の強すぎる姿に改めて下半身に血が集まってきてしまう。



アクイラ「お身体冷えていますよね~?少し待って下さい」



アクイラは自分の身体にボディソープを塗り始めた。



アクイラ「私が暖めてあげますね~」



ま、まずい…!アクイラの奴俺に抱き着くつもりだ!


こんな状況で抱き着かれたらあっという間に昇天するぞ…!




提督「や、山城!?」


アクイラ「ええ!?」



俺の声にアクイラがビックリして後ろを振り返る。



しかしそこには誰もいない。


今だ!



提督「すまんアクイラ!」


アクイラ「あ!提督!ちょっとぉ…!」



俺はアクイラの横をすり抜けるようにして浴場を脱出した。




そして濡れた身体のまま脱衣所で下着だけを着て廊下に出る。





国後「…っ!」


提督「く、国後!?」




廊下に出ると国後に出くわしてしまった。



国後「ぁ…ぅ…し、しれ…」


提督「す、すまん!」



国後は顔を真っ赤にしてカチコチに固まってしまう。


変なものを見せてしまって申し訳ないと思いつつ俺は自室へと濡れた身体のまま走って行った。



少し後から国後の悲鳴が聞こえたような気がする。





【鎮守府内 提督の自室】




提督「あ~…えらい目に遭った…」



ようやく自室に辿り着くとドッと疲れが押し寄せてきた。


とりあえず下着のままでは身体によろしくないので着替えようとタンスに近づく。



提督「ん…?」



着替え終えると室内に甘い匂いを感じた。


この匂い…



俺は部屋をキョロキョロと見まわしてみる。



提督「…」



部屋のベッドの布団が盛り上がっている。


嫌な予感がしながらも俺は布団を剥ぐってみた。



サラトガ「…」


提督「サ、サラトガ!?何やってんだ!」



布団の中にはサラトガが入っていた。



サラトガ「提督がお部屋に戻るのをお待ちしていました…思ったよりも早かったですね」


提督「待ってたって…うっ!」



サラトガは透けているネグリジェ姿だった。


上も下も下着は履いておらず艦娘トップクラスの巨乳とアクイラより濃いめの恥毛がハッキリと見えてしまった。


半端じゃない刺激的な姿にズボンの中のムスコが滾り始めた。



サラトガ「提督…今日こそ…」


提督「ままままま、待て待て待て!」



サラトガは自分の身体を隠そうともせずに俺にゆっくりと近づいてくる。



俺は慌てて逃げようとしたが…



サラトガ「発艦開始!」


提督「は!?うおぁ!!」



サラトガはベッドの下に潜り込ませていた小型の艦載機を使い俺に足払いをしてきた。


予想外の足払いに俺は情けなく尻もちをついてしまう。


…というか艦載機ってあんな使い方できるのか。



サラトガ「提督…ちゅ…」


提督「んぐぅ!?」



サラトガはその隙を逃さず俺に覆いかぶさりキスをしてきた。


二度も同じことをさせないよう抵抗しようとしたが、サラトガはすぐに俺の後頭部に両腕を回し頭をガッチリ固定する。

しかもすぐに口内に舌を入れてきて中を舐め回され、吸われた。


山城より激しすぎる濃厚なキスとサラトガの甘い匂い、そして密着されて形を変える大きな胸の感触、更には滾り始めた俺の下半身を容赦なく太ももで攻めてきた。



提督(ま、まずい…このままでは…!)



本日3度も我慢させているムスコが限界を迎え発射するかと思われた時…





サラトガ「んちゅ…ん…んん…っ…」



キスをしていたサラトガの動きが急に止まり



サラトガ「…」


提督「え…」



急に俺にもたれかかり、眠ってしまっていた。




何事かと思っていた俺だったが




提督(な、なんだ…こ…れ…)



目の前が白くなり、急に耐え難い眠気に襲われた。




その眠気に抵抗できぬまま、俺は意識を投げ出してしまった。























「うふふふ」










意識を失う直前、誰かの笑い声を聞いたような気がした。





【鎮守府内 ?????】






「提督…」





「提督…大丈夫ですか?」






提督「ん…?」




聞き覚えのある声が聞こえて徐々に意識を覚醒させる。


自分がベッドのような物に寝かされていることがわかってきた。




提督「千歳…?」


千歳「大丈夫ですか?」



目を開けると千歳が心配そうな顔で俺を覗き込んでいた。



提督「ここは…?」


千歳「私と千代田の部屋です」


提督「え…?」



部屋を見渡すと確かに自分の部屋ではないようだ。



提督「どうして…?」


千歳「何があったのか聞きたいのはこちらです、どうしてお部屋でサラトガと一緒に倒れていたのですか?」


提督「え?」



部屋で倒れていた…?



そういえば意識を失う前サラトガに押し倒されて…



その後の記憶が曖昧だ。



千歳「とりあえず千代田と一緒に提督を私達の部屋に連れてきました。大丈夫ですよ、他の子には見られてませんから」


提督「ああ…」




確かに自分の部屋に居たらサラトガみたいに夜襲を掛けられる可能性が高い。




千歳「千代田は今サラトガを部屋に送って…」


千代田「提督っ!!」



千歳が言う前に千代田が部屋に入ってきた。



千代田「大丈夫!?心配したんだよ!?」


提督「あ、ああ…大丈夫…」



千代田を心配させまいと上半身を起こす。


しかし立ち眩みのような症状に襲われて身体がふらついてしまった。



千代田「ま、まだ寝てなきゃダメだよ!無理しないで!」


提督「すまん…」



千代田に両肩を抑えられてベッドに寝かされる。


真剣に心配してくれる千代田の気持ちがとても嬉しかった。



が、しかし…



千代田「何か鎮守府の中が騒がしいから心配になって千歳お姉と提督の部屋に行ってみたんだけど…」


提督「え?」




千代田から心配する雰囲気が消えて探りを入れる様な目で俺を見ていた。



千代田「サラトガと何してたの?」


提督「…」



千代田の質問に絶句してしまう。



意識を失う前…サラトガとしてたことと言えば…




千代田「な、なんで黙るのよぉ!一体何してたって言うのよ!そもそも山城が秘書艦じゃなかったの!?ねえ!」


提督「う…」




裸を見せられてディープキスされて押し倒されて下半身を刺激されてたなんて言えるはずも無い。




千歳「提督、正直に言って下さい。そうでないと千代田が心配で眠れなくなりますから」


提督「…」




千歳の咎めるような言葉に俺は観念して今日あったことを話した。



途中で話を切り上げようとしたが、泣きそうな千代田と背景に鬼が見える千歳に洗いざらい全て話すことになってしまった。



山城と扶桑に襲われたことも、アクイラに風呂に突撃されたことも、山城とサラトガに2度も唇を奪われたことも全部…






千代田「うそ…」




ヘナヘナと千代田が力無く部屋の床に両膝を着いた。



千歳「すっかり暴走しちゃってるわね…」



千歳が呆れながら苦笑いをしていた。


冷え切ったこの空気をどうしたものかと頭を悩ませていると千歳が俺の耳元に口を寄せてきた。



千歳「ここはお任せします、上手くやって下さいね」


提督「え?」



そう言って千歳はさっさと部屋を出て行ってしまった。


もしかして気を遣って千代田と二人にしてくれたのだろうか?




千歳がこの場を任せてくれたのは俺にとってチャンスであるというメッセージだと受け取りここは久しぶりに攻勢に回ることにした。




提督「千代田、何をそんなに落ち込んでるんだ?」


千代田「え…」


提督「別に気にすること無いだろ、それくらいのことで…」


千代田「な…!」



俺の言葉に千代田が勢いよく立ち上がる。




千代田「それくらいのことって何よ!」


提督「俺が誰とキスしたって千代田には関係無いだろ?」


千代田「関係無くないっ!!」


提督「…!」



俺の煽りに千代田が顔を真っ赤にして反論する。

予想外の勢いに思わずビックリしてしまった。



千代田「悔しいに決まってるじゃない!国後の時はまだ我慢できたけど…!山城に…さ、サラトガにまで…うっ…く…えぐ…」


提督「…」



千代田が本気で悔しがって泣いてくれている。

それが嬉しくて仕方なかった。



千代田「て、提督を…ひっく…誰かに取られるのが…誰かと一緒にいるだけで、えぐ…こんな気持ちになるなんて思ってなかった…」


提督「千代田…」


千代田「ごめん…ごめんね提督…ずっと提督は…っ…わ、私を…」



涙をポロポロ零し、これまでのことを謝る千代田に居ても立っても居られなくなり、俺はベッドで上半身を起こし千代田を抱き寄せた。



提督「千代田」


千代田「え…んむっ!?」



抱き寄せてすぐに千代田にキスをする。


唇をつけて1秒くらいの短いキス、千代田がビックリしないようこれくらいにしておいた。



提督「山城やサラトガにキスされてしまってから言うのもあれだけど…」


千代田「…」


提督「俺は千代田だけとこうしたいと思っていたよ」


千代田「提督…んっ!」



そう言ってすぐに千代田を引き寄せてまたキスをする。


今度は5秒ほどのキス。


最初は身体を固くしていた千代田も少し身を任せてくれてリラックスしてくれた。




千代田「バカ…強引過ぎだよ…」


提督「すまないな。でも俺が愛しているのは千代田だけだから」


千代田「提督…ん…」




今度は千代田の方からキスしてくれた。


俺はゆっくりと千代田の後頭部に腕を回し…



千代田「ん…!?んむぅぅ…ちゅ…じゅる…」



口の中に舌を入れてみた。


抵抗されるかと思ったが千代田はおずおずと口を開けて受け入れてくれた。




30秒くらいずっとキスをしてから離れると二人の間に唾液の橋ができる。



千代田「ばかぁ…」



千代田が顔を赤くしながら潤んだ瞳を見せる。


そんな千代田を見て俺は我慢できそうもなく、千代田をそのままベッドに押し倒…




千歳「上手くいったみたいね」


提督「うぉぉ!?」


千代田「ふぇ…?千歳お姉!?」



いきなり戻ってきた千歳にビックリして離れてしまった。



千歳「まったく、いつまで経っても千代田が提督に心を許さないからこんな面倒なことになったのよ?」


千代田「う…ごめんなさい…」


千歳「まあ仕方ないわよね、千代田にとっても誰かからアプローチされるのなんて初めてのことだったんだから。どうしていいのかわからなかっただけなのよね」


千代田「う、うん…」



千代田のことを理解している千歳ならではの言葉に思わず感嘆とするしかなかった。



千歳「提督と距離を取ってみて自分がどう思っているのかやっとわかったでしょ?」


千代田「うん、私はね…」



千代田が俺の方を見る。



千代田「提督のこと、大好き」


提督「千代田…」



恥ずかしそうな上目遣いで千代田が俺にそう言ってくれた。


あまりの嬉しさで眩暈がするくらいだった。



提督「俺も千代田のことが大好きだぞ、それは指輪を渡す前からずっと変わっていない」


千代田「提督…!」


提督「うお!」



千代田が俺に抱き着いてきた。


俺はそれを受け止め開いた手で千代田の頭を撫でてあげた。


柔らかな千代田の感触と愛おしさに泣くのを我慢するほどだった。






























千歳「さて提督、この後ですけど…」



ようやく落ち着いて千代田が離れた時、千歳が口を開く。



千歳「秘書艦任務はあと一人分残っていますよね?」


提督「ああ…」


千代田「まだやるのぉ…?もういいでしょ…」



千代田がウンザリした反応をする。


無理もない、誰を秘書艦にしても俺に対して牙を剥いてきたのだからな…



任務に関しては自分が大本になっているだけにここで止めるわけにはいかない。




提督「それについては誰にするかもう決めているんだ」


千代田「え?」


千歳「それは?」


提督「千歳、頼まれてくれるか?」


千歳「私ですか?」


千代田「そっか!その手があったわよね!」




千歳ならさすがに大丈夫だろうと最後の手にとって置いたのだった。



千歳「わかりました、二日間よろしくお願いしますね。千代田、サポートしてくれる?」


千代田「もちろんだよ!」



快く受け入れてくれると千代田もサポートにつけれくれた。


これで何の問題も無く2日間を終えられれば晴れて千代田を秘書艦に戻すことができる。



そう思えるとホッと胸を撫で下ろすことができた。





千歳「うふふ…」




千歳が優しく笑みを見せてくれる。




その笑みはこれからの俺と千代田の関係を祝福してくれているように見えた。


























そう、見えただけなのかもしれない…
































【鎮守府内 執務室】




翌朝、鎮守府の廊下には体験秘書艦に千歳と張り出した。


ある程度予想通りだったのか、艦娘達の混乱は思ったよりも小さかった。




千歳「提督、こちらを」


千代田「こっちもできたよ、はい」


提督「ああ。ありがとう」



執務室では千歳と千代田が仕事を手伝ってくれている。


千歳が千代田をサポートに呼んでくれたためいつもより一層仕事に力が入った。


千代田と離れてみて彼女が好きなことを再認識させられたせいか、いつも以上に張り切ってしまった。



千代田「提督、あまり無理はしないでね」


提督「大丈夫だよ」



千代田も以前より声を掛けてくれるようになった。


お互いの気持ちを確かめ合えたということもあってか、そこに照れのようなものは見えず彼女の気持ちをしっかりと感じ取ることができた。



千歳「うふふ、少し席を外すわね」



そんな俺達を気遣ってか千歳が執務室を出て行く。


千歳が部屋に出て行ってから…



提督「千代田…」


千代田「提督…んぅ…」



俺は千代田を抱き寄せてキスをする。


千代田は拒否することなくそれを受け入れてくれる。




執務室には二人だけの吐息が聞こえていて



とても幸せな時間が流れていた





色々あったけど、千歳の言う通りにしてみて良かったと心から思えた。




千代田「えへへ…」




照れ臭そうにはにかむ千代田の笑顔がこんなにも近くで見られるようになったのだから。








【鎮守府内 提督の部屋前】




その日の仕事を終えて部屋に戻ろうと思った時だった。




提督(ドアが…開いてる…?)



今日は執務室に行く前、部屋に鍵を掛けたはずだが…



恐る恐るドアを開けて中を伺う。


昨日のようにサラトガが潜んでいないかと警戒するが、どうやら部屋には誰もいないらしい。



提督「ん…?」



ホッと一息しながら部屋に入ると部屋の机に見慣れない物が置いてあった。


置いてあるのはノートだった。

普段使っていないタイプのノートだったので一目で自分の物では無いとわかった。



そのノートの表紙にはタイトルが書かれている。







提督「千代田観察日記…?」






自分の机の上に置かれていたということもあって俺はそのノートを開いてしまった。








____________________







今日は待ちに待った千代田が着任した日だった。


千代田は『お姉、会いたかったよぉ!』と私を見るなり抱き着いてきた。


私は愛おしさを感じながら千代田を抱きしめる。



また会えてよかった…



今度は置いて行ったりしないからね





____________________




書かれているのは千代田が着任した日からだった。



提督(千歳の日記だろうか…)




____________________






千代田が秘書艦に選ばれた




嬉しそうに部屋に帰ってその事を言っている千代田を見ていると




嬉しいような悔しいような



複雑な気持ちになってしまっていた




私は…一度も秘書艦にしてもらったことなんてないのに
























千代田が『秘書艦って大変だね』と疲れた顔して部屋に帰ってくる




愚痴っているつもりなのだろうけど




本人は気づいているのかしら?




その顔が充実感に満たされていることを



























千代田が顔を真っ赤にして帰ってきた




何があったのかと聞いてみると提督から指輪を受け取ったとのことだった




『千歳お姉…私どうすればいいの…?』




受け取った時点で答えは出ているようなものだけど、千代田は『千歳お姉がいるから』と言ってしまったらしい





その事を話す千代田が泣き出してしまい、私も同じように悲しい気持ちになる












それと同時に私の中で何かが生まれたのを感じていた






____________________





提督(ん…?)




読んでいる途中で『千歳が千代田のことを知ってもらうためにわざわざ置いた』と結論付けようとしたけど




何だか雲行きが怪しくなってきた





____________________







千代田が提督から指輪を受け取ってから数日が経った




仕事を終えた千代田は毎日浮かない顔をして帰ってくる




そんな千代田に対し『ざまあみろ』という気持ちでも『何とかしてあげたい』という気持ちでもない




『千代田は…こんな顔もできるのね』という何か感動めいた気持ちが湧いてきた






誰が言ったか、恋する乙女は美しい




それを思い出させるような千代田の悩む顔に




私の下半身になぜかゾクゾクとするような甘い痺れが襲った











もっと…



千代田の色んな顔を見てみたい…












私はずっと千代田と提督の関係に嫉妬しているのかと思っていたけど





どうやらそれは違うみたいだった






























提督から千代田のことを相談された




『何とかして千代田との距離を縮めたい』




ある程度予想していたけど、本当に聞かれると苦笑いしか出なかった








でも…



わざわざ餌を撒かなくても獲物の方からやって来るなんて好都合ね








私は提督に千代田との距離を縮める方法を教える前に




色んな事を聞いてみた








好きな服装



好きな匂い



家族のこと等色んなことを聞いた







最初、提督は『変なことを聞くんだな』という顔をしたけど、千代田とのことを何とかしたいのか包み隠さず教えてくれた









実は着物が好きなこと



甘い匂いが好きなこと



幼少期に母を亡くして愛情に飢えていること






正直に打ち明けてくれる提督には申し訳ないと思いつつ




私の欲のために利用させてもらうことにした












『一度、千代田から距離を取ってみたらどうですか?』



『例えば…秘書艦から外したりとか…』



『あの子、恋愛に全く免疫無いですから、がっつくと逆に逃げちゃいますよ?』






提督へのアドバイスはこれで十分のはず



頭の良い彼はきっと何かの方法を思いつくはずだから







後は彼に任せた








私は…





その準備に動き始めた



























千代田が怒った顔をして帰ってきた




『何よ…任務だか何だか知らないけど…!』



何があったのかは聞くまでも無い、秘書艦を外されたのだろう



どうやら提督は作戦を始めたようで早速効果が表れている





私は表面上は千代田をなだめ、慰めていても




下半身に感じる甘い疼きを味わっていた




やっぱり…提督を利用して正解だった




この調子だと千代田の色んな顔を見ることができる







そんな欲望を千代田に見せないよう必死に取り繕いながらも




私はこの先のことを思うと胸の高鳴りを抑えることなんてできなかった













サラトガには匿名でメールを送っておいた




『提督は和装がお好みよ、特に着物が好きみたい』



『香水はあのブランドのものが…』






匿名でメールを送られてサラトガはきっと驚いたことでしょう




でも彼女が提督を好きだったのは前から知っていた




隠しているつもりだったのでしょうけど、今日の嬉しそうな彼女を見れば千代田だって気づくくらいに




サラトガのような子ならきっとこのチャンスを全力でものにしたいと思うはず




藁にも縋る気持ちでしょうからきっと提督の気持ちを揺さぶるためにメールの通りに動くと思う












私は執務室に設置した隠しカメラの映像を見ながら提督とサラトガの様子を伺っていた





万が一、提督の心が折られ、誰かと肉体関係を持ってしまったら全ての計画が水の泡だ




そうなりそうな時はいつでも止められるようにするため




私は二人の様子を伺っていた






















サラトガの秘書艦が二日目に入った時




彼女は予想通り着物姿で執務室を訪れて




提督はその姿に釘付けになっていた


























『千歳お姉!着物持ってない!?』




その日の朝食を終えて千代田が血相を変えて部屋に戻ってきた。



どうやらサラトガに刺激を受けて焦っているみたいね






必死になって対抗しようとする千代田を見ていると



私の下半身にまた甘い痺れが襲ってきた






もっと…



もっと見たい



もっと見ていたい






そんな欲に駆られてしまった私は




その後はアクイラに色々アドバイスしたり




国後が提督を好きになるように誘導したり




山城を挑発して恋心に火をつけたりした








彼女達が提督にアプローチを掛けるたびに千代田は触発され、色んな表情を見せてくれた



その度に私は言葉にできないような快楽を感じて増々のめり込んでいった



もちろん間違いを起こさないよう、執務室と提督の部屋に設置した隠しカメラから全てを見ていた



サラトガが暴走した時だってこれ以上はマズイと思って催眠ガスを流したもの



最終的には千代田と結ばれてもらうのだから、それだけは許されない

















そして…






提督と千代田は想いを確かめ合い






深いキスをして結ばれた















その日の千代田の浮かれようは尋常では無く




これまで見たことも無いような最高の笑顔を見せてくれた




その表情は私も幸せにしてくれて




千代田の想いを受け止めてくれた提督に感謝し




これからの二人の幸せを願っていこうと誓ったのだった












____________________













提督「ふう…」














まさか千歳にこんな拗れた性癖があったとは…






俺はずっと千歳の手の平の中で遊ばれていたらしい





少し憤りを感じたが、それでも千代田の幸せを願っている千歳に対し怒る気にはならなかった









まあ…千代田のことを心の底から大切に想ってのことみたいだし、これは見なかったことに…













提督「ん?」


























もう何も書かれていないと思ってペラペラとノートをめくっていたら





最後のページに何か書かれていた











____________________


















もし…




もしも…





この後、提督と無理矢理肉体関係を持ってしまって




それを千代田に見られたとしたら





あの子はどんな表情を見せてくれるのだろうか?














それを想像するだけで











甘い疼きとともに濡れてくるのがわかってしまう
















私は…




















もう自分を止められそうにないみたい




















____________________










千歳「見ましたね?」



提督「!!!!!????」




いきなり後ろから声を掛けられて心臓が飛び出るかと思った。



提督「ち、ち、ち、千歳!?」


千歳「見ましたね?」


提督「あ…う…その…!」





千歳は何かを引きずって俺に近づいてくる。








提督「あ…!!」







千歳は…






千代田を引きずっていた。







千代田は意識を失っているのかぐったりとしていて





千歳に襟を掴まれて成すがまま引きずられていた。









千歳「大丈夫ですよ。ちょっと眠ってもらっただけですから」


提督「な、何言って…」



千歳はその場にゆっくりと千代田を置いて俺に近づいてくる。



俺は千代田と一緒に逃げ出そうとするが、千代田に一気に距離を詰められて




提督「うがっ!?」


千歳「うふふふふ…」



片手で首を抑えられた。


剥がそうとしても艦娘の力は強く、なんともならない。




千歳「失礼しますね」


提督「んむぅ!?」




苦しさから口を開けていた俺は千歳に迫られ



口で口を塞がれた。




千歳「んみゅ…ん…」


提督「んん!?」




そして…何かを口の中に流し込まれる。


千歳はそれを確認すると俺を放した。




提督「うぐ…ゲホ…!な、なにを…」


千歳「幸せになれるお薬ですよ」


提督「え…ぅ…」




段々と視界が白くぼやけ、千歳の姿が何人にも見えてくる。





千歳「提督…さきにあやまっておきますね…」




そして千歳の声も遠くなる。









「ていとくには…ふぃなーれのためのたいせつなやくを…」










そして俺は意識を失ってしまった。














____________________






















ん…





あれ…?





私、いつの間に寝ちゃったんだっけ…?













意識を覚醒させようとしたけど





すぐに違和感に気づく






手も…足も…動かない




口にも何か…





千代田「ん…んん!?んぐ!?」




何事かと私は目を見開き



自分がどうなっているのかを確認する。




両手を後ろに縛られて


両足が全く動かせないように縄でぐるぐる巻きにされている



それだけじゃなくて口も布のようなもので塞がれていた




千代田「んん!?んむ!?んむむぬぅぅ!!」



大声を出そうにも布で邪魔されて響かない。



それにこの部屋…執務室だっけ…?



私は床に寝っ転がされている。











状況を把握しようと周りに意識を向けた時だった

















くちゅ…くちゅ…と



何かの水音がする







執務室にある大きなソファーで





千代田「んむぁぁぁぁ!!?」





提督が裸で寝かされていて




千歳「ん…ちゅ…じゅる…」




千歳お姉が…同じく裸で…




千歳「ちゅる…じゅ…む…んみゅ…」




提督の…アレを口に咥えていた…








千代田「んむぁぁ!!ぁああああぁぁあ!!」



千歳「ちゅ…ん…?あら千代田、起きた?」



千歳お姉は悪びれる様子も無く、提督のモノを手で持ちながら笑みを見せていた。








何…?



何が起こっているの…?



どういうことなの?



千歳お姉、何しているの?





千歳「見ればわかるでしょう?」



私の考えていることを感じ取ったかのように千歳お姉が答える。




千歳「んちゅ…」



千歳お姉は提督のモノを掴んだまま提督にキスをした。



千代田「んぐうぅぅぅっ!!!」



提督はぐったりと横たわっているだけで抵抗しようとしない。

意識は無いみたいで千歳お姉の成すがままになっていた。



千歳「ちゅ…ふふ、提督と肉体関係を結んで…ううん」



千歳お姉が…











千歳「あんたから…提督を奪っているのよ」












見たことも無いような悪魔の顔をしていた





まるで私を深海棲艦のように見る目…



その恐怖に私は震え上がった




千代田「ふぁんれ…?」




なんで…?


どうしてこんなことするのよぉ…




千歳「そんなの決まってるじゃない、あんたが気に入らないのよ」



また千歳お姉が私の思考を読んで答える。


いつも私の考えることを読み取ってくれるって嬉しかったのに…




それなのに…




千歳「いつもいつも金魚の糞みたいにまとわりついて…」



今の千歳お姉は私をゴミを見るかのように見下ろしてくる。



千歳「それなのに秘書艦に選ばれて…私から提督を奪い取って…」


千代田「うぅ…」


千歳「いつかこうしてやろうって、ずっと思っていたわ」




千歳お姉は一旦提督から離れ、提督のモノを掴みながら




千歳「そこで見てなさい」




提督に跨ってそれを自分の膣中に…



千代田「ひゃめ…て…」


千歳「んぁぁぁぁっ!!」



一気に挿入れてしまった…



千歳お姉の太ももに血が伝っている




千歳「痛っ…うふふふ…私の初めて、提督に捧げちゃいました…」


千代田「う…ぐ…ぅぅ…」



私は提督と千歳お姉が繋がっているという絶望的状況をただ見ていることしかできない。



千歳「提督の…硬くって…素敵…」



千歳お姉はうっとりとした表情を浮かべながら腰を動かしている。


ぐちゅぐちゅとした濡れた肉が絡み合う音を嫌でも聞かされる。




千歳「ふふふ、良い表情、良い顔してるわぁぁ!千代田!!」




何もできず無力感に苛まれる私を千歳お姉が嘲笑う。





段々と…



悲しみよりも怒りが強くなり




千歳「あははははは!それよ!それが見たかったのよ千代田!あははははは!」


千代田「うぐ…うがぁぁ!!ぁぁぁぁぁぁ!!!」




千歳お姉への憎しみが現れ始めた




悪夢のような光景が脳裏に焼き付き始める



それから目を背けようと思っても私の目は見開かれ、提督と千歳お姉の絡み合う姿を見てしまう










やがて…





千歳「あははは!すごぉい!見てよ千代田!提督のがいっぱい出てるのよ!!」





提督の精が千歳お姉の膣中にドクドクと注がれているのがわかってしまう




私は自分の口を塞ぐ布をギリギリと噛みながらそれを見続けるしかなかった






千代田「うぐ…うぅぅぅ…うぁぁぁぁ…」




どうしようもできない絶望感と千歳お姉への憎しみ



そしてそれ以上に胸の奥から湧き出てくる敗北感から私は泣いてしまった






















千歳「これで終わりだと思ってるの?」




千代田「うぇ…?」





















いつの間にか千歳お姉は





手にナイフを握っていた






















千代田「ぁ…なにふぉ…」



千歳「何をすると思う?」





太ももから血と精を滴らせている千歳お姉がナイフを私に向ける








この上千歳お姉に殺されるの…?





そう恐怖に顔を引きつらせたけど…







千歳「うふふふふふふふふふ…あははははははは…!」





千歳お姉は…

































ナイフを提督の胸に突き刺した
























千代田「むああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」






ナイフと提督の胸の隙間から血が飛び出していた







千歳「あははははは!あはははははははは!!きゃはははははははははは!!!」




千歳お姉は何度も何度も




何度も何度も何度も提督の胸にナイフを突き刺した







千代田「ぐああああああああああああああああああ!!むぐあああああああああああああああああああ!!!!」






私は布の隙間から叫ぶことしかできず





最低最悪の光景を見続けることしかできなかった










千歳「あはははははははは!最高よ!最高よ!それが見たかったの!最高よ千代田!愛する者を奪われた気分はどう?あはははははははは!!」











狂ったように提督にナイフを刺す千歳お姉に




私は悲しみと絶望感と憎しみを込めた目で睨みながら












いつまでも叫び続けていた




















提督…




提督…









ごめんなさい提督…










私がもっと早く










素直になっていれば























こんな…

































後書き

ケッコンオコトワリ勢はみんなデレさせたい。


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2020-05-20 11:17:33

SS好きの名無しさんから
2020-05-19 07:45:59

SS好きの名無しさんから
2020-05-18 18:59:53

SS好きの名無しさんから
2020-05-14 09:56:38

DELTA ONEさんから
2020-05-14 07:08:12

SS好きの名無しさんから
2020-05-10 12:22:56

SS好きの名無しさんから
2020-05-09 19:03:55

SS好きの名無しさんから
2020-05-07 19:13:16

SS好きの名無しさんから
2020-05-06 18:16:23

Adacchieeeeさんから
2020-05-03 19:33:47

SS好きの名無しさんから
2020-04-30 22:16:25

seiさんから
2020-04-30 14:26:52

刹那@川内提督さんから
2020-04-29 11:29:25

SS好きの名無しさんから
2020-04-29 11:08:14

SS好きの名無しさんから
2020-04-29 03:55:25

お布団さんから
2020-04-28 06:58:45

SS好きの名無しさんから
2020-04-27 20:11:04

安部鬼さんから
2020-04-27 08:24:22

SS好きの名無しさんから
2020-04-26 22:24:29

ぴぃすうさんから
2020-04-26 19:15:16

2020-04-26 18:10:15

このSSへのコメント

24件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2020-04-26 22:25:08 ID: S:Q0feZr

こうゆう感じのSS待ってた!

2: SS好きの名無しさん 2020-04-27 10:07:21 ID: S:9G_pEJ

×デレさせたい ◯曇らせた後デレさせたいの方があってるような・・・
楽しみに待ってます!

3: SS好きの名無しさん 2020-04-27 20:56:04 ID: S:n3vVI-

新作キター
結末が楽しみです

4: お布団 2020-04-28 07:02:19 ID: S:m9Zw0N

こういう系統は大好きだから楽しみ
続き待ってます

5: ウユシキザンカ 2020-04-29 06:28:25 ID: S:ePrPZp

>>1 ありそうであまりないジャンルかもですね

>>2 徹底的に曇らせてやろうかな

>>3 衝撃の結末にご期待ください

>>4 ご期待に応えられるよう頑張りますね

6: SS好きの名無しさん 2020-05-03 15:26:27 ID: S:HExB_I

千歳怖えぇw

7: SS好きの名無しさん 2020-05-12 04:26:18 ID: S:n10UaA

なにこの素晴らしいSS

8: SS好きの名無しさん 2020-05-15 19:53:54 ID: S:bL9Dmi

バッドエンドにならずハーレムエンドの予感がするんですが‥‥
結末が気になって1日8時間しか寝れません。

9: SS好きの名無しさん 2020-05-17 21:57:37 ID: S:1AoUeW

青葉ェ…

10: ウユシキザンカ 2020-05-18 07:09:04 ID: S:4iHVzs

>>6 怪しさ満点ですね

>>7 ありがとうございます!

>>8 ハーレムエンドなんて夢のまた夢

>>9 青葉を雇う千代田さん再度にも問題があります

11: SS好きの名無しさん 2020-05-19 00:28:47 ID: S:DYmGDo

なんか千代田は既にデレきってる様な…

12: SS好きの名無しさん 2020-05-20 14:44:38 ID: S:H0OUWR

最近更新早くて嬉しい↑

13: あだっち 2020-05-29 13:45:17 ID: S:AhYQ8w

キャーーー‼提督カッコイイーーーー‼

14: SS好きの名無しさん 2020-05-29 15:36:31 ID: S:0Rd5VJ

ピクシブに掲載されてる「ガラスの残骸」の後書きに書かれてた「最近千代田が妙に優しい」とはこの作品ですか?

15: ウユシキザンカ 2020-05-30 06:13:30 ID: S:PlFgGL

>>11 もうここで押し倒しちゃえばいいのにね、しかしこれまでがこれまでだから提督も動けない。

>>12 そんなこと言われるともっと更新したくなります。

>>13 白馬の王子様ですからね。

.>>14 そうです、当初の予定からかなり内容が変わりました。

16: SS好きの名無しさん 2020-05-31 10:29:02 ID: S:sUoG60

山城が出てきた!お断り勢同士の対決になるのかなぁ?

17: sei 2020-06-02 10:03:35 ID: S:V8DT2B

推しの山城がこんなにも可愛らしく尽くす姿が拝めるなんて。

シアワセ...シアワセ……

18: SS好きの名無しさん 2020-06-05 06:57:51 ID: S:7TxNAw

艦娘達を共倒れさせ、漁夫の利を狙う千歳の姿が•••
無いか?

19: SS好きの名無しさん 2020-06-14 23:52:58 ID: S:VEl5aG

あーラスボス来た

20: sei 2020-06-15 07:51:09 ID: S:fR_tFO

今回の登場人物の中で千歳が一番ヤバイ気がする…

21: SS好きの名無しさん 2020-06-26 21:44:26 ID: S:6Whq1F

゜゜ (  )

22: sei 2020-06-27 23:43:34 ID: S:djSTAE

( д ) ゜ ゜

23: SS好きの名無しさん 2020-07-07 16:41:10 ID: S:Wd4O6U

え?消えてる?

24: SS好きの名無しさん 2021-04-25 07:47:04 ID: S:A0YWTW

° ° ( ロ )


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