2021-01-19 23:41:14 更新

概要

私は....何者....?

ある日、一人の少女が鎮守府に流れ着いた
何処から来たのか...何者なのか...彼女は全てを忘れていた
何もかも失っている彼女にあったもの...

ミューロック

その名前だけであった...


前書き

初のオリジナルストーリーです
こちらに出てくる鎮守府は「死亡ドッキリ」の鎮守府なので一応続編にあたる作品です
ですが前回とテイストが変わり比較的真面目な作風のストーリーとなっているのであまり続編感はありません...
今回はこちらからリクエストを求めるということはしない予定ですがもし何か要望があったら是非コメント欄へお願いします
初めて知の文を使いこちらで一から構成したオリジナルストーリーなので色々酷いですが、温かい目でご覧ください
またこのSSは多聞丸さんとK,Eさんとのコラボ作品でもあるのでお二方の要素や人物が登場します


[プロローグ]




「はぁ.....はぁ.....」


一人の少女が傷を負いながら砂上を死にもの狂いで歩き続ける


「ぐっ....」ドシャ....


しかし彼女にもう歩き続ける力は残っておらず膝から崩れ落ちる


「誰か...」


「誰か...誰か....」


今ある力を最大限に出し必死で助けを求める

しかしその微かな声はこの広大な海に無情利にもかき消される


「誰....か.....」クテッ...


最後の声を振り絞り、彼女は遂に力尽きる....


.....


(っ...)


彼女が目を覚ますと全体が白に統一されている場所だった


(ここは....)


体は動かせない為、必死にぼやけた目で辺りを見回す


(どこ....?)


その時...


アッ!メヲサマシタ!!


ハヤクアカシサンニレンラクヲ!!


(っ....?)


右側で何者かが甲高い声で話している

目がはっきりとしていないので具体的な外見は分からないが空中に浮いていて小さい見た目をしていることだけは分かった


(....天使....?)


本来は違うのだが生死をさ迷い満身創痍の彼女にとっては天使に見えてしまった


(あぁそっか....お迎えが来たんだ....)


(もう....疲れた...)


そう思って彼女は再び深い眠りについた...


.....


「....さい...!」


「...ください!」


「....っん...」


誰かが呼んでいる....


「....てください!!」


その声は必死で誰かに訴えかけているような感情がはらんでいた


「起きてください!!」


「っ...?」パチッ...


「....えっ...」


彼女が目を覚ました場所は天国....ではなかった

彼女の視界には先程と同じ光景が広がっている

視界や脳が先程よりも動くようになり、自分はベッドで寝かされていることを認識できるようになった


「良かった...目が覚めたんですね...」


「っ....?」クルッ...


そこには桃色の髪をした綺麗な女性がいた


「えっ....?」


「提督には黙っていたけど資材使って医療器具作っておいて正解だった...」


「これで提督にもこの医療器具の正当性が証明できる!」


目の前にいる私を無視するように独り言を繰り返す


「あの.....」


「あぁすみません、ついつい別の話を...」


「コホン...」


息を整え姿勢を正す


「申し遅れました、私、工作艦の明石といいます、貴方の医師、そして看護師を勤めています」


「ア...カシ...?」


明石...それが彼女の名前だった


明石「それで大丈夫ですか?体の具合とかは...」


「えっ...?」


「あ、あぁ...特には....」クルッ...


全身にあった無数の傷は消えており、入院服のようなものが着せられていた


明石「良かったてす...」


「あの...私は一体...」


明石「えっ覚えていないんですか?」


「は、はい....」


明石「もしかして、その時の記憶が...」


明石「だとしたら厄介ですね...」


「...っ?」


明石「まぁそれは後々調べますか...」


明石「それで貴方の名前は?」


「えっ?」


「な、名前....?」


明石「そうです、名前が分かれば名字から特定して貴方の家に返せると思うのですが...」


「...私の名前....」


「.....」


「.....ミュ....」


明石「ミュ?」


「ミューロック.....」


明石「ミューロック?それが貴方の名前ですか?」


ミューロック コクン....


明石「なるほど....」


明石 (ということは外国の人...?)


明石 (確かに見た目も日本人というよりハーフな感じが...)


青く光る瞳に端正な顔立ち、白く伸びる美しい長髪...純日本人とは言えない外見であった


明石「えっとミューロックさんでよろしいんですね?」


ミューロック「は、はい....」


明石 (なんかこの名前...聞いたことがあるような...)


明石「ではミューロックさん、貴方の住所や家族について教えてください」


ミューロック「ちょ、ちょっと待って!!」


明石「えっ?」


ミューロック「貴方は...一体なんなんですか....?」


ミューロック「それにここは...」


明石「あぁ....えっと...」


困惑し、頭をかく


明石 (これ言っていいのかな...いやでも言わないと彼女からしたらヤバい組織と思われそうですし....)


明石 (よしっ...!)


明石「....今から話すことは口外しないと約束出来ますか?一応あまり口外されると面倒なので...」


ミューロック「えっ?あ、はい....」


明石「ここは鎮守府という場所で海軍の基地です」


ミューロック「海軍...?」


ミューロック「っ!」ブツン...


...


「....ロック...」「はや....に....ろ....」「お...じ...う...きろ...」


...


ミューロック「ぐっ!?」


明石「えっちょ!?大丈夫ですか!?」


ミューロック「はぁ...はぁ...」


突如として彼女に謎のフラッシュバックが襲う


ミューロック (い、今のは...)


明石「ミューロックさん!?」


ミューロック「えっ?」


ミューロック「あ、あぁ大丈夫です...少し目眩がしただけで...」


明石「そ、そうですか...」


明石「それでですね、貴方はここ海軍の基地、鎮守府に流れ着いていたんです」


明石「それを私達が保護したというのが今の現状までの経緯です」


ミューロック「私が....」


明石「はい、焦りましたよ...朝になって海岸を散策していたら虫の息の血だらけの貴方を見つけて...間一髪でした」


ミューロック「じ、じゃあ、変な組織とかで実験をするとかじゃ...」


明石「えっ?いやいや!しませんよそんなこと!私達は貴方を一時的に保護してるだけです、身元が分かり次第解放しますよ」


ミューロック「そうなんですか....」


明石「それで貴方の住所や家族の名前は?」


ミューロック「.....」


明石「っ?ミューロックさん?」


ミューロック「分かりません....」


明石「えっ?」


ミューロック「何も...分かりません....」


ミューロック「分からないんです...何も...」


ミューロック「私が...何者なのか....」


明石「えっ....えぇぇぇ!?」


ミューロック...それは一人の矛盾をはらんだ少女の話....




[chapter1: 疑惑 ]




明石「えっ...覚えてないって何も!?」


ミューロック「何も....」


明石「えぇ...」(嘘でしょ....)


ー執務室ー


扉コンコンガチャ....


提督「ん?」


明石「失礼します...」


提督「おぉ明石か、って、ん?」


顔が青ざめて、声にも覇気がなかった


提督 (な、何だ...?)


明石「あの...今朝の怪我人の話なんですが....」


提督「おぉあの人か、どうだ?容態は...」


明石「幸い命に別状はなく、今はもう傷もほぼ完治しています」


提督「そうか、なら良かった...」


明石「しかし一つ問題が...」


提督「えっ?」


明石「記憶が...」


提督「えっ?」


明石「記憶が...ないんです...」


提督「はっ?」


提督「えっ...いやどういう...」


明石「ないんです...名前以外の記憶が彼女には...」


提督「そ、それって...」


明石「はい....」


明石「記憶喪失です...」


提督「えっ...えぇぇぇぇ!?」ガタッ


勢いよく椅子から立ち上がる


提督「いや何で!?」


明石「恐らく事故が原因で脳に何らかの損傷が入り記憶の一部が欠如していると...」


提督「そ、そんな...」


提督「じゃあ身元も...」


明石「はい...家族も住所も何も思い出せないと....」


提督「マジかよ....」


明石「まぁ検査の結果、完全に欠如している訳ではなくわずかに断片的に記憶が残っているので記憶を復活させることは可能ですが...」


明石「そう簡単には...なんせ彼女の記憶になっている事を見つけなきゃいけませんし...」


提督「そうか...」


提督 (記憶障害...)


提督「...分かった、とりあえず明石はその人を保護しておいてくれ」


提督「俺は青葉とかと共に記憶になるものを探すから」


明石「了解です、提督」


明石 (早く見つかるといいですが...)


ー医務室ー


ミューロック ガバッ...


あの明石という人がしてくれた治療のおかげで段々と体が動かせるようになった


ミューロック (....やっと体の意識が戻ってきた...) 


ミューロック ズキッ...


ミューロック「いっ!?」


ミューロック (いった...)


だかまだ日常で使う動きは難しく一動作ごとに痛みを伴うため、上半身を起こすのと腕を軽く動かすくらいが限界であった


ミューロック「.....」


病室の小窓から小鳥の囀ずりと共に暖かい日差しが彼女を優しく照らす


ミューロック「はぁっ....」


ミューロック (何で...何も思い出せない...)


ミューロック (私は...何者....?)


ミューロック (どうして...どうしてこんな事に....)


深いため息と共に今自分が置かれている状況を整理しようとする

だが当然、納得のいく結論は出なかった

その時...


扉ガチャ...


ミューロック「っ!」


明石「おまたせしました、ちょっと長話になって...って!ミューロックさん!」


明石「動けるようになったんですね!」


ミューロック「えっ?あっはい、まだ少しだけですが...」


明石「良かった...身体機能にも特に異常はありせんね」


明石「後、数日もすれば身体も完全に動かせるようになると思います」


ミューロック「そうですか....」


明石「ミューロックさん?」


彼女にとっては喜ぶべき報告、だが何故か浮かない表情をしていた


ミューロック「身元は....分かったんですか?」


明石「えっ...」


明石「あっ...えっとそれは...」


明石「すみません...まだ何も...」


ミューロック「そうですか...」


明石「だ、大丈夫ですよ!時期に分かります、だってこんな美人さんなんですから!、調べていけば直ぐ分かりますよ」


彼女の気を落とさない為に必死に励ます


ミューロック「明石さん....」


明石「あっそうだ、一段落したとこですし少しお茶にしません?」


明石「いい茶葉があるんです、どうですか?」


ミューロック「あっ、じゃあいただきましょうかね...」


明石「分かりました!」タッタッ...


ミューロック「....」


ミューロック (明石さんの言う通り、今は少しゆっくりしようかな...)


ミューロック (ずっとこんな事を考えてたら頭痛くなっちゃうし...)


少し安堵したのかミューロックの口元が緩む


タッタッ...  


明石「おっまたせしました!」ガチャガチャ


明石「明石特性の緑茶でs」バンッ...


明石「あっ...」


ミューロック「えっ?」


明石「きゃぁぁぁ!!」ビタァァン!!


足元を気にしなかったが故に段ボールの角に足を引っ掛け勢いよく顔から転ぶ


明石「いったた...す、すみませんよそ見してまし.....はっ!?」


ミューロック ポタッ....ポタッ....


目の前には高速修復材の液が入ったバケツが転がっている...


明石 (ま、まさか...!?)


ミューロック「あの...」ポタッ...ポタッ...


明石「ご...ごめんなさぁぁぁい!!」ダッ!


明石「大丈夫ですか!?お怪我は!?」


ミューロック「あっはい、大丈夫です...そのバケツにあった水を被っただけですから...」


明石「本当にすみません!早く代わりのお着替えを...あっそれに床拭かないと...」


ミューロック「あっ床拭きなら私も手伝いますよ」ガタッ...


ゆっくりとベッドから降りる


明石[いやいや!ミューロックさんはそこにいてください!怪我人なんですから!」


明石「まだ上半身しか動けないし....えっ?」


ミューロック「ん?」


明石「ミュ、ミューロックさん...ベッドから...」


ミューロック「えっ...?」


ミューロック「っ!?」 

 

ごく自然にとった行動が彼女に取ってはおかしい事に時間差で気づく


ミューロック 「う...動けてる...?」


試しに足を出したり腕を回したりする


ミューロック「っ!」


ミューロック「痛みが...ない....」


明石「えっ....?」


あり得ない出来事に両者共に困惑する


明石「あっ、えっ、ミュ、ミューロックさん!?身体が...!」


明石 (嘘っ...何で....全治には数日....)


明石「っ!」


....


ミューロック (あの...)ポタッ...ポタッ...


明石 (ご...ごめんなさぁぁぁい!!)ダッ!


明石 (大丈夫ですか!?お怪我は!?)


ミューロック (あっはい、大丈夫です...そのバケツにあった水を被っただけですから...)


....


明石 (あのバケツに入っていたのって...確か高速修復材の...)


明石「っ!?」


明石 (ま、まさか....) チラッ...


ミューロック「...っ?」


ー取材室ー


青葉「んー...」パラパラ...


数えきれない調査本から一つを取り出し顔をしかめながら調べ続ける


青葉「やっぱりないですね~、ここ辺りで事故が起きたという話は」


提督「そうか...」


青葉「迷子や行方不明の報告もありませんし、その人に繋がるものはないですね...」


提督「なるほど....」(青葉の調査でも分からないとは...)


青葉はジャーナリスト顔負けの情報収集力の持ち主、その彼女が分からないのだからかなりの難問である


青葉「一体誰なんですか?その人」


青葉「記憶喪失なんて滅多にあることじゃありませんし、絶対に普通じゃありません」


提督「そうなんだよな...絶対何かあるんだけど...」


提督「でもそれが分からんだよな...」


ダダダダダ!!


バァン!!


提督・青葉「うおっ!?」「きゃっ!?」ドサッ


唐突に大きな音がしたせいで調査本を落とす


明石「はぁ...はぁ....」


提督「あ、明石...?」


明石「提督、ちょっと!」グイッ!


提督「えっな、何だよ!?」ヨロッ...


乱暴に提督の腕を掴み引き連れる


扉バタン...


青葉「....」


青葉 (あの焦りよう...)


青葉 (気になりますね...)スッ...


ジャーナリスト魂に火が灯り二人を追いかける


ー廊下ー


タッタッ...


明石「....」ピタッ...


明石 (ここなら誰もいませんね...)


提督「ちょ明石!何だよいきなり!?」


明石「ふぅっ...」


明石「提督....」チラッ...


提督「あ、明石?」


いつにもまして真剣な表情で見つめる


明石「提督...落ち着いて聞いてください」


提督「お、おう...」


明石「例の彼女...」


提督「あぁミューロック...って名前の人だよな」


明石「その人...人間じゃないかもしれません...」


提督「えっ?」


明石「先程、こちらの事故で高速修復材が彼女にかかったんです...」


明石「そしたら...全治に数日かかる怪我が一瞬で治ったんです...」


提督「そ、それって...」


明石「はい....」


明石「彼女は...艦娘です」



[chapter2: 存在]




提督「はっ?艦娘?」


明石「はい....艦娘です...」


提督「えっ....えぇぇ!?」


提督「ちょ、ちょっと待て!か、艦娘だと!?」


提督「そんな馬鹿な!だってあんな娘、見たことがないぞ!?」


明石「私だって信じられませんよ!」


明石「けど...高速修復材で傷が治ってしまったんです...」


明石「あれは普通の人間が被ったところで何も起きない代物....」


提督「じゃあ...本当に....」


提督「でも...大本営からも新しい艦娘が入るなんて情報は....」


明石「あぁ...もう何が何だか...」


謎を解明するつもりが余計に深くなった謎に頭をかかえる


青葉「.....」


青葉 (新しい...艦娘!?)


片隅から覗き二人の会話をメモしていた手が止まる


....


衣笠 ツカツカ...


衣笠 (全く青葉ったら...朝は一緒に食べようって約束したのにいなくなって...)


衣笠 (またあの部屋で調べごとしてたりして...)


ピロン♪


衣笠「ん?」スッ...


軽快な音と共にスマホの通知が鳴る


<日本銀行と鉄工所で同時襲撃事件発生、目撃者の情報によると犯人は十人以上の女性グループであり外見は十代から二十代、二つの事件はこのグループの同一犯として警察は捜査を続行....>


衣笠 (物騒ね....早く捕まって欲しいわ...)


衣笠 (あっそれよりも早く青葉のとこに)


ー取材室ー


扉ガチャ...


衣笠「青葉、入るわy....えっ?」


そこには普段とは違う光景が広がっていた


衣笠「な、何これ...」


乱雑に置かれた調査本...散乱している調査書...地面に雑に置かれた多数のカメラ...

綺麗好きである青葉がここまで部屋を散らかすことはなかった、ましてや彼女にとって命とも言えるカメラをここまで雑に置くこと自体あり得ないことだった


衣笠「どういうこと...こんなに散らかって...」


その時....


青葉「....はなし....発表は.....」


衣笠「ん?」


奥の資料部屋からブツブツと見覚えのある声が聞こえる


衣笠「青葉?」スッ...


ー資料部屋ー


扉ガチャ....


衣笠「青葉...」キョロキョロ...


青葉「....報告はない....前例なし...」ウロウロ...


衣笠「っ!?」 


散らかった周りを気にも止めず、ひたすらノートと向き合い独り言を言いながら部屋をうろつく


青葉「大本営からの発表がない...記憶を失っている...」


衣笠「あ、青葉!」


青葉「ふえっ!?」ビクッ


自分に対する呼び掛けに我を取り戻す


青葉「き、衣笠...」


衣笠「ちょっとどうしたの!?あんなに散らかして...それにカメラをあんな...」


青葉「えっ?あ、あぁ何でもないよ...少し寝ぼけて散らかしただけで...」


衣笠「....」


衣笠「嘘をつくにしてももう少しマシなのをついたら?」


青葉「えっ?」


衣笠「こんな状況でそれを聞いて私が納得すると思う?それに貴方もそんな我を忘れたように集中して...」


青葉「っ....」


衣笠「ねぇ青葉教えて、何かあったんでしょ?誰にも言わないから...」


衣笠「だから...ね?」


青葉「衣笠....」


思惑のない真っ直ぐな目で見つめる


青葉「...誰にも言わないって...約束出来る?」


衣笠「もちろん、約束するわ」


青葉「....実は...」


今ある情報を全て衣笠に話す


衣笠「新しい艦娘....」


青葉「まだ確証はないけど...」


青葉「あの二人の表情...ただ事じゃなかった」


青葉「誰にも言うなと言っていたし...」


衣笠「それで青葉は、今に至るわけ?」


青葉「うん、何か彼女の手がかりになるものがないかと全て読み漁ったんだけど...何も無かった...」


青葉「ここまで情報がないのは初めて、青葉も白旗寸前...」


衣笠「なら直接聞いてみればいいじゃない!」


青葉「えっ?」


衣笠「そのミューロックって人に」


衣笠「記憶が無いにしても何かしらはあるはずよ」


衣笠「断片的でも何か記憶が」


青葉「う~ん...でも司令官と明石さんが許可してくれるかどうか...」


衣笠「大丈夫、私からもお願いするから!」


衣笠「さっ行こっ?」


青葉「....」


青葉 (一生の後悔よりも一瞬の恥...)


青葉「フフッ...そうだね」


青葉「よしっ、行こう!ミューロックさんのとこへ!」


ー執務室ー


提督・明石「話しがしたい!?」


青葉「はい!お願いします司令官!」


衣笠「私からもお願い!」


提督「えぇ...」


提督「てか、何でその事知ってるんだ!?」


青葉「あぁそれは...」


今に至る経緯を全て説明する


提督「なるほど...後をつけていたと....」(さすがジャーナリスト...)


衣笠「その後に私も青葉から聞いたってわけ」


明石「いつの間に...」


青葉「てことで司令官、ミューロックさんに取材がしたいんです!」


明石「無理ですよ!彼女は色々と大変なんです!それにまだ記憶が...」


提督「あぁ...今、彼女を刺激するのは...」


青葉「...お言葉ですが司令官、明石さん」


青葉「そんな消極的で彼女の記憶が見つかると思いますか?」


彼女にしては珍しい生真面目なトーンで話す


提督・明石「えっ?」


青葉「お二人が彼女のことを考えての結論ということは十分承知しています」


青葉「ですがそれでは前には進めません」


青葉「彼女のことを考えている、記憶を取り戻したいと思うなら、もっと彼女に踏み入らないと」


明石「し、しかし!ミューロックさんに聞く以外にも方法があるはず...」


青葉「その方法とは何ですか?」


明石「っ...そ、それは...」


青葉「少し自惚れた話をしますが....青葉の取材力と調査力はこの鎮守府でも一番だと思っています」


青葉「その青葉が何年も集めた資料の中で一つも彼女の情報がないんです」


青葉「そんな状況の中、彼女本人に聞く以外に方法はありますか?」


明石「っ....」


反論出来ない事実に唇を噛み締める


提督「...分かった」


明石「っ!提督!」


提督「だが面会の時間は30分だ、それ以上は彼女の精神状態もかねて許可出来ない」


青葉「ありがとうごさいます司令官!」


青葉「それくらいあれば十分です」


青葉「よしっじゃあ行こう衣笠!」ダッ!


衣笠「えぇ!」ダッ!


明石「あっ二人共!」


ガチャン....


明石「行っちゃった...」


明石「だ、大丈夫なんですか提督...?」


不安の眼差しで提督を見つめる


明石「青葉さんの場合...入ってはいけないとこまでズカズカと入っていきそうな...」


提督「大丈夫、そういうとこはあいつも気を付けてる」


提督「それにもし何かあったらストッパーとして衣笠がいるしな」


明石「ならいいですけど....」


ー医務室ー


ミューロック「よっと....」ススッ...


理由は分からないが急速に身体が回復していき今では手すりに寄りかかって歩ける所まできていた


ミューロック (凄い...さっきまであんなに動けなかったのに...)


ミューロック (何でこんないきなり...)


ミューロック (あのバケツのせい...?)


そう思考を巡らせていると...


扉ガチャ....


ミューロック「っ!」


「失礼します!」


ミューロック「あっ明石さん!私もう歩けるように...って...えっ?」


そこにいたのは明石ではなく薄い桃色の髪をした女子高生のような見た目をした者がいた

しかも二人である


青葉「おぉ...貴方が...」


衣笠「綺麗...ハーフの人?」


ミューロック「だ、誰...?」


青葉「あっすいません、私青葉と申します、明石さんの同僚でジャーナリストやってます」


衣笠「同じく衣笠といいます」


ミューロック「青葉さん...衣笠さん...?」


その手には手の平サイズのノートと年季の入ったボールペンが握られていた


青葉「明石さんから許可をもらい貴方に一つ取材をしようと思いまして...」


ミューロック「取材?」


衣笠「えぇ、貴方の記憶の解明について...」


ミューロック「っ!」


ミューロック「ということは何か分かったんですか!?」


青葉「いえ、まだ何も...だから貴方に取材をしにきたんです、記憶の解明の...」


ミューロック「そう...ですか...」ガタッ...


近くにあった椅子に脱力感もあって寄り掛かる


青葉「それでミューロックさん、何か覚えていることはありますか?」


ミューロック「覚えている事?」


青葉「はい、何でも構いません、些細な情報でも残っていれば...」


ミューロック「すみません...何も覚えてないです...」


青葉「そ、そうですか...」


衣笠 (何も覚えてない...)


衣笠 (っ!)


衣笠「ねぇ青葉、ワードとか言えば思い出すんじゃない?」


青葉「ワード?」ヒソッ..


衣笠「艦娘なら軍とか深海棲艦とかのワードに見覚えがあるはずよ、それが何か分からなくても...」ヒソッ..


青葉「なるほど...いい考えね」ヒソッ..


青葉「じゃあミューロックさん今から言う言葉に見覚えはありますか?」


ミューロック「言葉?」


青葉「例えば...深海棲艦」


ミューロック「....いや...特に見覚えは...」


青葉 (違うか...)


青葉「なら艤装」


ミューロック「それも....」


その後も何度か問答を繰り返す


衣笠 (今のところ情報は0....)


青葉「では次は...海軍」


ミューロック「っ!」フッ!


ミューロック「ぐあっ!?」


その言葉を言われた途端、頭の中に何かが駆け巡る


青葉・衣笠「っ!?」


ミューロック「ぐっ...!」


青葉・衣笠「ミューロックさん!?」


ミューロック「あっ...あぁ...!」


踞り頭をかかえる


ミューロック「....ロック...」「はや....に....ろ....」「お...じ...う...きろ...」


青葉「えっ...?」


衣笠「ちょっとミューロックさん!」ユサユサ


ミューロック「っ!」フッ...


ミューロック「あれ...私...」


我に返ると先程の記憶が全て消えていた


衣笠「ミューロックさん!大丈夫ですか!?」


ミューロック「えっ?」


衣笠「頭をかかえて苦しそうな声上げてましたけど...」


ミューロック「いや...私は何とも...」


青葉「....」


衣笠「そう...ならいいですけど...」


青葉「...衣笠撤収よ」パンッ...


ボールペンの芯を戻しノートを閉じる


衣笠「えっ?」


青葉「ミューロックさん、今回は青葉達の取材に協力していただきありがとうございます」ニコッ...


ミューロック「は、はい...」


青葉「帰るよ衣笠」


衣笠「ちょ、ちょっと!」


衣笠「あっすいませんミューロックさん...ここで私達は失礼しますね」


....


明石「....」


明石「大丈夫かな...」


天井のライトを見ながら不安そうな表情でつぶやく


ガチャ...


明石「っ!」


青葉「....」


明石「青葉さん!」ダッ!


青葉「...ありがとうごさいます明石さん」


明石「えっ?」


青葉「おかげでいい情報が手に入りました」ニコッ


青葉・衣笠 ツカツカ...


明石 (嘘でしょ...まだ5分しか...)


明石 (っ!まさかミューロックさんに変なことを!?)ダッ!


....


扉ガチャ!


明石「ミューロックさん!」


ミューロック「あっ、明石さん!」


明石「何かされませんでしたか!?」


不安な声で彼女に駆け寄る


ミューロック「えっ?何かって?」


明石「ほらっ今取材にきた二人に何か変なことされたとか...」


ミューロック「あぁ青葉さんと衣笠さんのことですか?」


ミューロック「いえ、何もされてませんよ、何回か質問されただけで帰っていきました」


明石「えっ....」


明石「そ、そうですか...」


明石 (嘘っ...数回質問しただけなのに青葉さんは...)


次から次へと疑問が広がっていく


...


青葉 ツカツカ...


衣笠「ちょ、ちょっと青葉!」


青葉「ん?」


衣笠「もう良かったの?まだ少ししか話してないのに...」


青葉「うん、十分な情報が手に入ったよ」


衣笠「えっ本当に?」


青葉「もちろん、大体のことは見えてきた...」ニヤッ...


彼女にとって予想以上の収穫に笑みが溢れる


衣笠「それはどういう...」


青葉「さっきうずくまっていた時があったでしょ?」


衣笠「えっ?あっあれね...」


青葉「その時にね」


「....ロック...」「はや....に....ろ....」「お...じ...う...きろ...」


青葉「この三つの言葉が彼女の口から無意識に出ていたの」


衣笠「そういえば確かに何か言ってたわね....」


衣笠「でもこれが何?」


衣笠「何かに繋がるようには思えないけど...」


青葉「いやそうでもないよ」


青葉「まず「....ロック...」ってワード、これは彼女自身ミューロックさんを表してる」


衣笠「あぁ確かにロックってことはミューロックさんになるね...」 


青葉「それと「はや....に....ろ....」「お...じ...う...きろ...」というワード...」


青葉「どちらも命令口調になってる」


青葉「まずは最初の「はや....に....ろ....」これは恐らく「早く逃げろ」と言っている」


衣笠「早く逃げろ...はや...に...ろ...あぁ!確かに!」


青葉「そして「お...じ...う...きろ...」...」


青葉「最後の「きろ」は生きろ、そして「じ...う...」は自由」


衣笠「生きろ...自由...」


青葉「これは青葉の補完もあるけど...」


青葉「「お前は自由に生きろ...」これだと思う」


衣笠「お前は自由に生きろ...」


青葉「早く逃げろ...お前は自由に生きろ...」


青葉「海軍というワードに反応...」


青葉「恐らく彼女は海軍に追われていて寸前まで誰かと一緒にいた、そして口調からしてかなり危険な状況のはず」 


衣笠「じゃあ...浜辺に傷だらけでいたというのは...」 


青葉「逃げる道中で深海棲艦にでも襲われたんでしょう、あの傷は深海棲艦でなきゃ不可能」


青葉「これが現時点での青葉の推理かな...」


衣笠 (凄い...それだけでそこまで...)


青葉「しかし...まだ具体的なことは分からない...彼女が何者なのかも...」


青葉「...やはりあそこに行くしかないね...」


衣笠「あそこ?」


青葉「大本営だよ、あそこなら色々分かるは

ず...」



[chapter3: 記憶]



...


ー医務室ー


ミューロック ツカツカ....


手すりなしで部屋の端から端を歩く


明石「特に異常はなし....」


明石「よしっ!」


明石「ミューロックさん、おめでとうございます」


ミューロック「えっ?」


明石「もう歩行なども問題なく出来て体の異常もありませんので完治の条件に十分に達しています」


ミューロック「っ!てことは...」


明石「はい、もう貴方の体は問題ありません」ニコッ


ミューロック「っ!」


ミューロック「ありがとうございます明石さん!死ぬ寸前だった記憶のない私にここまでしてくれて...」


明石「いえいえ!当然のことをしたまでですよ」


明石「あっそれと完治祝いとして...」スッ...


ミューロック「それは?」


明石の手には綺麗に折り畳まれた洋服があった


明石「ミューロックさんが浜辺で倒れていた時の服を再現したものです、まぁ損傷が激しかったので完全には再現出来ているとは限りませんが...」


ミューロック「これが私の....」


明石「早速、着替えてみてはどうですか?いつまでも入院服でいるのもあれですし」


ミューロック「そうですね」


明石の言葉に甘え、医務室のカーテン付きベッドを試着室代わりに着替え始めた


ミューロック (私...こんなの着てたんだ....)


着替えを始めてから数分後...


ミューロック シャッ..


軽快な音と同時に着替えを終えた彼女が登場する


明石「おっ着替え終わりましたか!」


第二ボタンまでが開いた白のワイシャツに紺色のネクタイ...

白のラインが入った茶を基調としたプリーツのミニスカートと大人びた黒い靴に白ニーハイ

そして赤ラインが入っている黒の上着を白い長髪を2つに分けフードを被っている


全体的に大人びたカジュアルな服装だった


https://twitter.com/SS09145314/status/1341750188453466124?s=19


明石「おぉ!似合ってますね♪」


ミューロック「そ、そうですか...?」


明石「えぇ?大人っぽさとカジュアルさがうまく混じっていてとても良いです!」


明石「それに....」チラッ...


ミューロック「っ?」


入院服の時は分からなかったが中々の胸部装甲である


明石 (おっきいですね...)


ミューロック「明石さん?」


明石「えっ?あぁすみません」


ミューロック「あの...退院したのと服をもらったのは嬉しいですけど...」


ミューロック「まだ記憶が...」 


ミューロック「それに自分が何者なのか...」


明石「っ....」


晴れやかな笑顔が退き表情が曇る


明石「それに関してなんですが...少しだけ分かったことがあります」


ミューロック「えっ!?」


ミューロック「それは一体!?」


明石「場所を変えてお話します」


明石「どうぞこちらへ...」


ミューロック「えっ?は、はい...」スッ...


ジャリ....


ミューロック「ん?」チラッ...


足に何かしらの違和感を感じる


明石「ミューロックさん?」


ミューロック「あっいえ何も」


ミューロック (何....今、砂のようなものを踏んだ感触が...)


....


明石「着きました」


ミューロック「ここは...?」


明石「執務室ですよ、提督の」


ミューロック「提督?」


明石「まぁ会ってみれば分かります、さっどうぞ」ガチャ...


明石に先導され中に入る 


ミューロック「おぉ...」


部屋はどこか古さを感じつつもモダン的な雰囲気の部屋で大型のソファーや紅茶セット、その他にも色々なものが置かれ飾られており自分が想像していた執務室とはかなり違かった


ミューロック (執務室ってこんななの...?)


明石「提督!例の人です!」


提督「おっそうか」ダッ...


奥の部屋から男性の声がする


提督 ガチャ...


その男の人は白い軍服のようなものを着ており軍帽を被っている

だが見た目のわりに硬い雰囲気は全くなくむしろ優しい、物腰が柔らかそうだと感じた


提督「あっ君が例の...」


ミューロック「えっ?あ、はい」


提督「ミューロック...だね、明石から話は聞いてるよ」


その後、彼の自己紹介が始まった


...


提督「まぁ自分の説明はこんなとこかな」 


提督「気軽に提督と読んでくれればいいよ」


ミューロック「わ、分かりました...」


ミューロック「提督....」


提督「それで早速なんだけど君に伝えなければいけないことがあるんだ」


ミューロック「伝えなきゃいけないこと?」


提督「まぁとりあえずそのソファーに座ってくれ」


ミューロック「はぁ...」スッ...


提督・ミューロック ギシッ...


提督「...君は確か記憶を失っているんだよね」


ミューロック「はい...何もかも...」


提督「その事なんだが...少しだけ分かったことがあるんだ」 


ミューロック「っ!本当ですか!?」


前のめりになり瞳孔が開く


提督「あぁ...けど少し衝撃的なことになるかもしれない...」 


ミューロック「えっ?」


提督「ふぅっ...」


二度ほど深呼吸をし息を整える


提督「君は...人間ではない」


ミューロック「....はっ?」


提督「いや語弊があるな...人間とは少し違う存在なんだ」


ミューロック「違う...存在...?」


提督「君は...艦娘なんだ」


ミューロック「艦娘...?」


彼からの話によると私は深海棲艦という敵を倒す為に太平洋戦争で活躍した艦の生まれ変わりの存在らしい

感情もあり機能なども人間と同じ

けど少し違うところは艤装という兵器を着用でき、人間よりもはるかに頑丈な体をしてる


提督「それが艦娘...君の存在なんだ」


確かに衝撃的な内容

けどそこまで私は動揺はしなかった

むしろ、自分の正体が分かり安堵という感情が私の心を覆った

それにどこか...理由も根拠もないが予感がしていた


ミューロック「じゃあ私は...その深海棲艦という敵を倒す為に生まれたんですね」


提督「あぁ簡単に言えばな」


提督「けど...分かるのはそこまで」


提督「君の前世の艦が何なのか...どこから来てどこで生まれたのか...何故あぁなっていたのか...それはまだ分からない」


ミューロック「っ....」


再び彼女の顔に陰りが出る


提督「けど安心してくれ、君については必ず俺達が解明してみせる」


ミューロック「っ!」


励ますように優しい口調で彼女に希望を持たせる


ミューロック「提督....」


断言した彼の自信...それは数十分前に遡る


.....


提督「なるほど...大本営の資料室で彼女の詳細を見つけると...」


青葉「はい司令官、あそこなら沢山の資料や文献があります」


青葉「そこなら絶対になにかは見つけられるはずです」  


提督「分かった、行ってこい」


青葉「ありがとうごさいます司令官!」


提督「けどあまり大本営に迷惑はかけるなよ」


青葉「分かってますよ、司令官」フフッ...


....


提督 (あの青葉だ...絶対に何か見つけてくれるはず....)


....


ー首都高ー


ブロロロ...


雲ひとつない青空の下、法的速度を守りながら車を走らせる


衣笠「しかしこんな車があったとはね....」


....


ー鎮守府ガレージ前ー


提督「衣笠、お前確か免許持ってたよな?」


衣笠「えっ?あぁ少し前に取得したわ、偽名使ってだけど...」


青葉「えっ!?」


衣笠「あぁそういえば青葉には言ってなかったね」


青葉「そうなんだ...」(最近よく出掛けてると思ったら...)


世間に艦娘という存在が認知されてない以上、偽名を使わないと免許などが取れなかった

また体が大人びてる駆逐艦を除外した駆逐艦や海防艦などは外見の都合上偽造が出来ず免許が取れない


提督「そうか、ならこれを出せるな」


衣笠・青葉「っ?」


バサッ....


大きめの布を勢いよく取る


衣笠・青葉「おぉ!」


そこには美しい白色をしているスポーツカー、RX-8の姿があった


提督「提督への着任祝いとかで大本営から数台車が授与されただけど、余り使ってなくてな....こいつに関しては一回も」


提督「大本営は都内だが少し距離があるからこれ使ってくれ」


....


衣笠「驚きよ...」


青葉「それよりも青葉は衣笠が免許取ってたことに驚きだよ...」


衣笠「えっそう?」


そうこう話している内にあっという間に大本営へ着く


ー関係者用駐車場前ー


憲兵「IDの提示をお願いします」


衣笠「はい」スッ...


二人分のIDカードを渡す


憲兵「少しお待ちを...」


......鎮守府....

青葉型一番艦 青葉 


.....鎮守府....

青葉型二番艦 衣笠


憲兵「はい確認しました、どうぞ」


IDカードを返し駐車場へ誘導する


青葉・衣笠 ガチャ...バンッ!


青葉「よしっ...行こう衣笠」


衣笠「えぇ」


......


ー関係者用資料室前ー


女性警備員 バッバッ...


女性警備員「はい、大丈夫です」


女性警備員「ごゆっくりどうぞ」ニコッ..


女性警備員がボディチェックを済ませ笑顔と共に中へ案内する


ー関係者用資料室ー


衣笠「おぉ...!」


青葉「凄い...資料がこんなにも...」


綺麗な列を取りながら一例ごとにびっしりと置かれた文献や資料

三階にまでそれは及ぶ


青葉「...準備はいい衣笠?」


衣笠「フフッ...もちろん」


青葉「さぁ...宝探しの始まりだよ」


.... 


同時刻...


ー工房ー


ガシャン...


ミューロック「これは....?」


明石「艤装というものです、私達、艦娘だけが装着することの出来る武器のようなものですね」


明石「これは練習用のやつですが...」


ミューロック「これを私が装着するんですか?」


明石「まぁまだ艦娘としての道が決まった訳じゃありませんが...」


明石「一応艤装に慣れておこうということで...」


明石のサポートもありつつ、艤装を装着する

見た目のゴツさとは裏腹に重さなどは全く感じなかった


提督「おぉ、うまくはまったか」


ミューロック「これが艤装....」


明石「では早速、水上を滑る練習からしょうか」


ミューロック「水上を滑る...?」


三人は舟に乗り近くの安全な海面エリアへと移動する


明石「よっと!」ピョン!


ミューロック「えっちょっと!?」


勢いよく海に飛び込む


明石 タッ...


ミューロック「っ!」


その足は沈まずに海面の上に浮かんだままでいる


明石「私達はこうやって艤装をつけていれば海面の上に立つことが出来るんです」


明石「それに...」スシャ...スシャ...


明石「このように歩くことも」


ミューロック「す、凄い...」


明石「さっミューロックさんもやってみてください」


ミューロック「わ、私も!?」


感心していたのもつかの間、自らがやると知ると急に焦りだす


明石「当然ですよ、ほらっ早く!」


ミューロック「っ....」


不安にかられ一歩が踏み出せない


提督「大丈夫だミューロック」


ミューロック「っ!」クルッ...


提督「恐れる必要はない、艤装をつけた状態で海に沈むなんてことは絶対にないよ」


ミューロック「そうなんですか...?」


提督「あぁ、もちろん俺が保証する」


ミューロック「っ...」(そこまで言うなら...)


ミューロック「ふぅ...」


呼吸を整え緊張を抑える


ミューロック「はっ!」スッ!


勢いよく飛び海面につく


ミューロック「....」


ミューロック「っ...」パチッ...


再度、目を見開いた先は海中ではなく先程と同じ夕日が綺麗な光景が広がっている


ミューロック「っ!」(やった!?)


ミューロック「提督、明石さん!私、出来ました!」クルッ...


称賛の表情を期待して振り替えるが...


提督・明石「っ....」


ミューロック「えっ...」


実際は彼女の足を見て困惑した表情をしていた


明石「ど、どういうこと...?」


提督「これは...!?」


ミューロック「っ?」チラッ...


二人が凝視する足を見ると...


サァァ....


ミューロック「えっ?」


彼女がついていたのは海面ではなく....砂であった


ミューロック「な、何これ...」スッ...


サァァァ...


ミューロック「っ!」


一歩左足を退くとそれに反応するように自分の足場にある砂が移動し左足をささえる


ミューロック「なっ!?」


提督・明石「っ!?」


どれだけ歩いても、両手をつけようとしても砂の壁が邪魔をし海面に触れることが出来ない


ミューロック「何...何なの!?」


砂を掘ったり、飛び込んでどうにか海面に触れようと試みる

しかし結果は全て砂に阻まれ体力の無駄になるだけだった


ミューロック「はぁ...はぁ....」


提督「これは一体...」


明石「何で砂が...!?」


場所的に砂が発生することはまずありえず、ましてやその砂はまるで生きてるかのようにミューロックに付きまとっていた


....


青葉 パラパラ...


情報収集を始めてから三時間が経過していた


衣笠「あぁ...見つからない...」


時間は19時をまわり体力と気力の限界も近かった


衣笠「ねぇ青葉、本当にここにあるの?」


衣笠「さっきから一つもミューロックさんの情報がないけど...」 


青葉「海軍の頭脳とも言える場所だよ?絶対にあるはず...」ペラペラ...


衣笠「そう....」


衣笠 (全く...一回スイッチが入ると凄まじいほどの集中力ね...)


そう関心しながら再び目を擦りながら情報収集を始める

そして一時間後....


青葉 ペラッ....


青葉「っ!」 


青葉「衣笠!!」 


衣笠「ん?」


青葉「見つけた...彼女の情報!!」


衣笠「えっマジで!?」ダッ!


先程まで彼女を襲っていた睡魔が一瞬の内に飛び青葉の元へ駆け寄る

彼女が提示した物...それは誇りを被った古い一つの黒い本だった


青葉「ほらっここに...!」パラッ...


衣笠「っ!本当!」 

 

衣笠「あれっ...でもこれ....」


......


2100


提督「....」スッ...


神妙な面持ちで天井を見上げる


....


ー工房ー


提督「どうだ、明石何か分かったか?」


明石「いえ全く...」


明石「何故砂が発生したのか...何故砂がミューロックさんの身体に付きまとっているのか...科学的根拠が一つもありません」


あの後、ミューロックの身体を調べ謎の究明に当たったが...何一つ得れるものはなかった


提督「そうか....」


提督「何であんな能力が...」


明石「もしかしたら...前世に関係があるかもしれません」


提督「前世?」


明石「私達艦娘は生まれ変わりの際に必ず前世の艦の特性を何かしらは持っています」


提督「じゃあミューロックは砂が関係してると?」


明石「恐らくは...しかしそれがどういう経緯で関係しているのかは分かりません」


提督「青葉達を待つしかないか...」


....


提督「なるべく早く解明しないとな...」


ミューロックのことは明石、青葉、衣笠以外の艦娘には騒ぎや混乱が起きることを防ぐ為に伝えていない

その為ミューロックは明石の部屋に寝泊まりしている


提督 (いつまでも誤魔化すことは出来ない...)


とは言っても提督や明石などの不審な動きに疑問を持つ艦娘も出現している為、バレるのも時間の問題だった


提督 (あの砂の能力....一体何なんだ?)


その時...


扉コンコンガチャ...


青葉「司令官!」


提督「っ!」


衣笠「待たせたわね提督!」


提督「お前ら!!」


待ち望んだ二人の帰りに歓喜の表情を浮かべる


青葉「見つけました...彼女の前世を」


提督「本当か!?」


青葉「とりあえず明石さんとミューロックさんにここへ来るよう伝えてください」


数分後....


ミューロック「前世が分かったって本当ですか!?」


明石「一体どんな!?」


声を大きくし目を輝かせ青葉を見つめる


青葉「はい、ここに...」スッ...


提督「これは...本?」


青葉「許可を得て一週間という期間だけ借りてきました」


青葉「そして....」ペラペラ...トン...


目的のページを開き指をさす


一同「っ...」


そこには一つのモノクロ写真と箇条書きになった文章があった


青葉「ミューロック・マル....それが貴方の名前です」


ミューロック「ミューロック・マル....」


青葉「そして貴方は高雄型の五番艦でした」


提督・明石「高雄型!?」


ミューロック「っ?」


提督「た、高雄型って...あいつらは四姉妹じゃ....」


明石「というか...日本艦なんですか!?」


青葉「う~ん....ハーフって感じですね」


提督・明石「ハーフ?」


青葉「ミューロックさんは元々アメリカで作られ生まれたんです」


青葉「しかしそのモデルになったのは理由は分かりませんが高雄型...そしてアメリカ兵は飛行場の名前をいじってミューロック・マルと名付けたみたいです」


提督「だからハーフだと...」


衣笠「高雄さん達とは血の繋がらない姉妹という関係かしらね」


ミューロック「血の繋がらない...姉妹...」


青葉「そしてこれは驚いたんですが...この艦は砂漠で生まれ一度も海に入ったことがありません」


提督・明石「はっ!?」


ミューロック「っ!?」


衣笠「この艦は元々砂漠にあるアメリカ軍の攻撃演習の為に作られた模型のような存在だった」


衣笠「だから海に出たこともないし、情報もアメリカで作られたから日本には情報が全くなかったの」


ミューロック「じゃあ...海に触れると砂化するのは...」


明石「っ!まさかミューロックさんのあの砂って!?」


青葉「砂?」


先程起こった不可解な現象を青葉達に話す


青葉「なるほど...砂が邪魔をして海に触れないと...」


衣笠「多分これが原因ね」


衣笠「艦娘は何かしらの前世の特性を持ってる、ミューロックさんの前世は海に触れたことがない....」


衣笠「それがその不可解な現象を起こしているのだと思う」


ミューロック「そう...だったんですね...」


三人を悩ました疑問が遂に解決する

しかしそれはまた新たな疑問を出してしまうことになった


提督 (海に触れられないって...)


明石 (それ...艦娘として致命的では...)


青葉「...とりあえず分かったのはここまでですね」


ミューロック「えっ....あのこれまでに何があったとかは...」


青葉「すみません、そこまではまだ...」


衣笠「この本には前世の情報しかなくて....」


ミューロック「そうですか...」


青葉「...司令官」


提督「ん?」


青葉「少しご相談が....」


提督「えっ?あっおう...」


場所を提督の私室へと変える


青葉「司令官...」


青葉「クライムブレインに...行かせてください」


提督「っ!」



[chapter4: 交渉]




クライムブレイン....海軍関係が疑われる事件の資料か集約された場所


提督「なっ!クライムブレイン!?」


青葉「はい司令官」


提督「いやあそこは...てか何でそこへ?」


青葉「実は....」


取材中にミューロックが謎の単語を述べていたことを打ち明ける


提督「つまり...ミューロックの話は事件性が高いと...」


青葉「はいっ、単なる事故ではないと思います、ですからクライムブレインから資料を借りていきたいんです」

 

提督「だが....条件をクリアしないと...」


青葉「条件?」


クライムブレインに入る為には海軍トップ2の承認するくらいの相応の理由が必要、ましてやそこから資料を借りるとなると難易度はより一層上がる


提督「あの二人を認めさせない限り、クライムブレインに入る事は出来ない、簡単ではないぞ...」


青葉「なるほど...ならこちらにも考えがあります」


提督「考え?」


....


ー翌日ー


昨日と同じように雲一つない晴天が地上を照らしている


ー大本営ー


ブロロロロ...


憲兵「IDの表示をお願いします」


衣笠「はいはい~」スッ...


憲兵 カタカタ....


憲兵「あれ...お二方、昨日も来ていましたよね、何かあったんですか?」


衣笠「えっ?あぁ...」


青葉「ちょっと資料室で調べごとをしてましてね...少し時間がかかってるんですよ...」


困った微笑をしながら穏やかな口調で話す


憲兵「そうなんですね、お疲れ様です」


憲兵「どうぞ」


衣笠「ありがとうございます」ニコッ...


IDを返し駐車場へ誘導する

 

青葉・衣笠「ホッ...」


緊張から解放され心が安らぐ


青葉「もう大丈夫ですよ」


バサッ....


大きめの布を静かに取る


ミューロック「....ばれてませんか?」


衣笠「大丈夫、憲兵さんの表情的に疑いもしてなかったわ」


青葉「しかし上手くいくものだね...」


....


提督「ミューロックを連れてく!?」


青葉「はい、ミューロックさんの今ある情報と本人を連れていけば最高の交渉カードになると思います」


提督「まぁそうかもしれないが...」


提督「ミューロックは艦娘であれ大本営からは正式に認められてない...ばれたら憲兵に追い出されるぞ...」


青葉「大丈夫です、手は打ってありますよ」


提督「そうなのか...?」


青葉「えぇもちろん、少しグレーですが...」


提督「えっ...」


青葉「あぁ大丈夫です!何かあった場合はこちらで何とかしますから!」


提督「大丈夫かよ...」


....


衣笠「席のシートと同じ色の布を被せてごまかす....シンプルすぎると思ったけど案外いけるわね...」


ミューロック「でもこれ...ばれたら色々まずいんじゃ...」


青葉「大丈夫!大丈夫!交渉カードということが認められればこれくらい不問にしてくれますよ」


ミューロック「っ....」(楽観的...)


そうこう話しながら車を停める


バンッ!


青葉「よしっ....」


衣笠「大丈夫?ミューロックさん」


ミューロック「もちろん、このまま謎のまま終わらせたくはないです...!」


青葉「フフッ...分かりました」


青葉「さぁて...交渉に行きましょうか...」


青葉「海軍のトップ2...元帥と獅子丸大将の元へ...」ニヤッ...


.... 


提督「一応、獅子丸大将からは時間を頂いてる」 

              

提督「だが時間と言っても30分しか許可がおりてない...短期勝負だぞ...」   


....


青葉 (やってやりますよ...)    


ー大将室ー     


扉コンコン...


獅子丸「っ...どうぞ」      


青葉「失礼します」         


衣笠「し、失礼します!」     


獅子丸「おっ君達は...」        


青葉「◯◯鎮守府の青葉と申します、こちらは衣笠です」  


衣笠「ど、どうも....」


青葉「少し前にこちらの提督からご連絡があったと思いますが...」  


獅子丸「あぁ君たちが...」


獅子丸「ようこそ、大本営へ」ニコッ...


朗らかな笑顔で青葉達を向かい入れる


獅子丸「それで儂に話とは何かな?」


見た目とは裏腹に穏やかな口調で話す  


青葉「...クライムブレインへの入室の許可をお願いしにここに来ました」


獅子丸「...」ピクッ...


衣笠「っ!?」(えっいきなり言う!?)  


獅子丸「...何故そこに入りたいのかな?」 


先程の笑顔が消え冷徹な表情を取る


青葉「少し調べたいことがありまして...」


獅子丸「取材ということかな?」


青葉「まぁそうとも言えますね」


獅子丸 ガタッ...


ゆっくりと立ち上がり青葉達に近づく


獅子丸「あそこは海軍関係の疑われるあらゆる犯罪が集約された場所だ、君達も知っていると思う」    


獅子丸「遊びで入っていい場所ではないのだよ」ジッ...


衣笠「っ!?」ビクッ!


あまりにも威厳ある威圧的な視線...

海軍ナンバー2を示す十分な説得力がその視線にはあった


衣笠 (これが獅子丸大将...!)


衣笠 (や、やばっ...怖くて足が....)


緊張と恐怖から冷や汗をかき足が硬直する


衣笠 (青葉...ここは退いたほうが...)チラッ...


状況に耐えきれず青葉に目で訴えかけようとする

しかし....


青葉「フッ....」


衣笠「えっ...?」


獅子丸「....っ?」


彼女は笑っていた


青葉「その威厳と威圧感...さすがは伝説の三大将と呼ばれることはありますね」


青葉「けど...青葉達も退くわけにはいかないんです」


獅子丸「.....」

   

獅子丸 (少しも怯まないとは....) 


青葉「それに決して青葉達は遊びでここに来たわけではありません」


青葉「ちゃんとした理由があります」  


獅子丸「ほぅ...」           


少し息を整え獅子丸を真っ直ぐに見つめる


青葉「獅子丸大将、ミューロックという艦はご存知ですか?」


獅子丸「ミューロック?」


獅子丸「あぁ...あの幻の艦といわれるやつか、ミューロック・マル...名前は聞いたことある」


獅子丸「まだ艦娘としても存在していないはず....」


獅子丸「だがそれが何だ?」


青葉「そのミューロック・マルなんですが...」


青葉「ここにいるんです、艦娘として」


獅子丸「っ!?」


獅子丸「何を言ってる!?その艦はまだ...」


青葉「それがいるんです」


青葉「....もう入っていいですよ」


ガチャ....


獅子丸「っ!」


コツコツ....


獅子丸「君は...」


「始めまして、獅子丸大将」


深々とお辞儀をする


ミューロック「高雄型5番艦...ミューロック・マルと申します」


獅子丸「ミューロック・マル...君が....?」


ミューロック「はい、その証拠として...」


ミューロック サラサラ....


獅子丸「っ!?」


握った拳から砂がおちる


獅子丸「これは....」


ミューロック「獅子丸大将、私が前世で一度も海に出たことがなく砂漠に存在していたことはご存知ですか?」


獅子丸「あぁ、もちろん」


ミューロック「艦娘は皆、前世の特性を持っていると明石さんから聞きました」


ミューロック「そして私の特性はこれです」


砂が出現する手を見せながら話す


ミューロック「私は...海に入ることが出来ません...触れることも...」


ミューロック「その代わりこうやって砂を出せるんです...砂漠にいたからか...」 


ミューロック「これこそ、私が艦娘でありミューロック・マルということを示す証拠です」


獅子丸「.....」


獅子丸 (あの砂...何かを仕組んでるようには見えない...)


獅子丸 (つまり...この娘は本当に...)


青葉「獅子丸大将、これで分かっていただけましたでしょうか?」


獅子丸「....あぁ、認めざるを得ないな」


獅子丸「君が艦娘だと言うことを...」


一同「っ!」


全員が希望の表情を浮かべる


獅子丸「だが一つ聞きたい」


獅子丸「君とクライムブレインに何か関係性はあるのかな?」


青葉「それはですね....」


今までの経緯を全て打ち明ける


獅子丸「つまり...君は記憶を失いボロボロの姿で発見され、海軍という言葉で何かをフラッシュバックしているのか...」


青葉「はい、彼女の発した言葉からしても事件性が高いと思われます」


獅子丸「それを示すものは?」


青葉「ここに」スッ...


ポケットから小型の録音機を渡す


獅子丸「ほぉ...どれ...」カチッ...


青葉が提示した録音機を耳にあてる


獅子丸「......」


獅子丸「....なるほど」ピッ...


獅子丸「君達の言っていた事は嘘ではないようだ」


獅子丸「それに...海軍という言葉に反応...確かに事件性も考えられる....」


青葉「っ!じゃあ....」


獅子丸「うむ、君達のクライムブレイン入室の許可を認めよう、元帥にはこちらから話しておく」


一同「っ!!」パァッ!!


青葉「ありがとうございます!獅子丸大将!」


衣笠「やったわね青葉!」


ミューロック「ホッ....」


全員が歓喜に沸く


獅子丸「では早速君達を案内しよう」


獅子丸「ついてきてくれ」スッ...


そう言うと、彼はエレベーターで地下まで降り、そこにある鉄の厚い扉を自身が持つ鍵を使って開けた

彼女達が案内されたのは青が主体のライトが光るエリアであった


獅子丸「ここがクライムブレインの警備エリアだ」


天井や壁には無数の監視カメラや赤外線があり、銃を持った兵士が数名、入口と思われる場所に二人、犯罪記録や資料がある場所故か面積とはアンバランスの厳重な警備態勢が敷かれていた


衣笠「ずいぶんと厳重ね....」


青葉「そりゃまぁ犯罪資料がある場所だからね....」


兵士達「お疲れ様です、獅子丸大将!」バッ!


獅子丸「お疲れ様」バッ...


警備エリアにいる兵士全員が彼にキレのある動きで敬礼をする


獅子丸「クライムブレインに入りたいんだがいいかな?」


兵士「はい!どうぞ!」


ーパスワードを入力してくださいー


獅子丸 ピッピッ...


扉の前に提示された暗証番号を誰にも見られないように入力する


Authentication...


ー網膜認証と指紋認証を行ってくださいー


人差し指をスキャン位置にあて、網膜を赤外線センサーに当てる


Authentication completed....


ガチャ....


自動で目の前の扉があく


獅子丸「こっちだ」


中に入るとそこには無数の犯罪資料や証拠品などが綺麗に置かれていた


一同「おぉ!」


青葉 (凄い...資料室とは訳が違う...!)


獅子丸「ここがクライムブレインだ、存分に調べてくれ」


獅子丸「規則としてここに入る場合は儂か元帥が同伴することになっているが余り気にしないで欲しい」


青葉「了解です!!」


衣笠「さぁ調べるわよ青葉!ミューロックさん!」


ミューロック「はい...!」 


早速三人は一階、二階、三階と散らばり収集を開始する


...


青葉「へぇ....」パラッ...


海軍関係者の汚職事件...艦娘と思われるグループの強盗事件...ブラック鎮守府の摘発....技術開発者の無断建造...


青葉 (色々ありますね...)


青葉 (あっいけない、お目当ての情報を探さないと....)


ー1時間後ー


衣笠「ねぇ青葉、何か見つかった?」


二階から伝わるような大きさの声量で彼女に呼び掛ける


青葉「いやまだ何も...」


衣笠「そう...」


衣笠 (これはまた長丁場になるんじゃ...)


ー三階ー


ミューロック ゴソゴソ....


ミューロック「何か...何かないの...」


ミューロック ゴソッ...


ミューロック「っ!」


ミューロック「これは....」スッ...


多数ある証拠品から一つの黒いケースを取り出す


ミューロック「何だろ....」


ミューロック「青葉さん!衣笠さん!ちょっと気になるものが!」


青葉・衣笠「えっ!?」


獅子丸「っ?」


三人が急いで階段を上がる


ミューロック「これなんですけど...」


青葉「これは...ケース?」


獅子丸「それか...」


衣笠「っ?ご存知なんですか?」


獅子丸「あぁ少し前にな...」


獅子丸「二週間前、ある技術者が無断で建造装置を使った後に失踪したことが分かってな」


獅子丸「直ぐに海軍がその技術者の捜索を行ったのだが...」


獅子丸「発見した時にはもう遺体となっていた、福岡で...」


一同「えっ...」


青葉 (福岡...!?)


獅子丸「側に拳銃が置かれていたので自殺ということでこの事件は終わった」


獅子丸「だが...一つだけ問題があってな...」


獅子丸「彼の近くにそのケースが置かれていた、ロックがかかった間...」


獅子丸「どうにか解除をしようと技術者が色々試みたのだが...全て失敗に終わった」


獅子丸「唯一分かったこととすれば...」スッ...


ケース表面の指が入る程度の開閉部分を開く


ブォン!


一同「っ!」


光と共に一つの写真が投影される


青葉「これは...」


獅子丸「ここを開くとこの海を写した風景が投影される」


獅子丸「それが何を意味するかは分からないが....」


ミューロック「...青葉さん、もしかして...」


青葉「えぇ...あれが...」


青葉「獅子丸大将」


獅子丸「っ?」


青葉「そのケースとその技術者に関わる事件の資料...一週間だけこちらに貸していただけませんか?」


獅子丸「何?」


青葉「もしかしたらそれが...ミューロックさんと関係があるのかもしれません」


獅子丸「その根拠は?」


青葉「確実な根拠はまだ...けど何かしら関連があると思うんです」


青葉「ミューロックさんが発見された日とその技術者の事件、時間的にはそこまでの大差はありません、つまりこの二つが結び付く可能性もある...」


獅子丸「....」


二択に迷う表情を見せる


青葉「大丈夫です、この資料は必ず一週間後にお返しします、もしそれでも不安ならそちらの憲兵をこちらの鎮守府に来させ監視するのも構いません」


獅子丸「...分かった」


獅子丸「一週間だけ憲兵を君達の鎮守府につけることを条件に貸そう」


一同「っ!」


青葉・衣笠「ありがとうごさいます獅子丸大将!!」


ミューロック「ありがとうごさいます...!」


獅子丸「だがこの事は君達の提督以外には絶対に口外してはならないよ」


青葉「分かってますよ」ニコッ...


青葉「よしっ...じゃあこれを持ち帰って調査しましょう!」


ミューロック「はい!」  


衣笠「....」


青葉「衣笠?」


衣笠「えっ?あっ、なんでもないよ!」


青葉「っ?」


衣笠 (青葉って...本当に交渉とか上手いわよね...)


お目当てのものを手に入れた三人はクライムブレインを後にする


??「....」



[chapter5: チェイス]




ー駐車場ー


バンッ!!


ミューロック スッ...


クライムブレインから借りた資料を後部座席の左に置く


青葉「さぁて、早く帰って検証を...」


衣笠「あれっそういえば獅子丸大将が言ってた憲兵というのは?」


青葉「なんか後々鎮守府に来るらしいよ、グレーの車だって」


衣笠「そう...」


ミューロック「....」


青葉「ミューロックさん?」


ミューロック「えっ?」


ミューロック「いや何でも...」


ミューロック (何...この胸騒ぎ...)


少しの違和感を抱きながら来たときと同じように布を被る


ー駐車場ゲートー


憲兵「あぁちょっとお待ちを!」


一同「えっ?」キッ...


突然ゲートにいた憲兵に止められ、促されながら窓を開ける


衣笠「あの...どうしました?」


憲兵「実は出口ゲート付近で大規模な事故が起こりまして...」


青葉・衣笠「事故!?」 


ミューロック (事故...?)


憲兵「はい....それで交通機能が停止してしまって...」


衣笠「嘘でしょ....」


予期せぬ不幸に肩を落とす


憲兵「あっでも安心してください!」


憲兵「特別ルートがありますから」


衣笠・青葉「特別ルート...?」


ー大本営地下トンネルー


ブロロロロ....


暖色のライトが灯る一本道を走らせる


.....


青葉「地下トンネル?」


憲兵の説明によると物資や機材などを運ぶために作られた特別通路

一般公開はされておらず地図にも記載されていないが、全国の高速道路に繋がっている


青葉「そこからなら事故エリアに当たらずに高速道路に行けるということですか?」


憲兵「はい、そうです」


...


衣笠「都内にこんな地下通路があるなんてね...」


衣笠「でもおかげで早く着けるわ」


青葉「.....」


青葉「なんかおかしくない?」


衣笠「おかしい?」


スマホを怪訝な表情で見つめながら話す


青葉「今スマホアプリで交通情報見てるんだけど...大本営近くで事故が起きたなんて情報ないんだよ...」


衣笠「えっ?通知が遅れてるとかじゃないの?」


青葉「いやこのアプリ最新のだから遅れるなんてことは...」


二人は不信感を抱き始める

だがそれは今更だということをこの後、痛感することになる


ミューロック「...ん?」クルッ...


ミューロック「何か後ろから来てません?」


衣笠・青葉「えっ?」


バックミラーを見ながら後方を確認する


衣笠「本当....何か来てるわね...」


後方から黒の4Runnerが一台、自分達に近づいてくる


衣笠「あれが獅子丸大将の言ってた護衛の車?」


青葉「いや違うと思う...グレーって言ってたし....」


そうこうする内にRX-8の横に4Runnerが並ぶ


ミューロック「何....?」


4Runnerの窓が開く


カチャ....


一同「えっ?」


ダァン!!


こちらに目掛けて弾丸が放たれる


衣笠「うわっ!?」


青葉「なっ!?」


ミューロック「っ!?」


キィィィィ!!


弾丸はドアに当たり焦りからか運転が乱れる


衣笠「チッ!」グルッ!


必死のハンドル操作で何とかバランスを戻す


青葉「ちょ何なんですか一体!?」


ダァン!ダァン!!


衣笠「ぐっ!?」カァンカァン!!


彼女達の戸惑いを無視するように次々と弾丸を放つ


ミューロック「ど、どういう事ですか!?」


衣笠「分からないわよ!何でいきなり!?」


突如とした出来事にパニック状態に陥る

そしてそれを加速させるように...


4Runner ドガァ!!


一同「うわっ!?」


RX-8に近づき車体をぶつけ右側のサイドミラーを破損させる


4Runner ドガ!ドガ!!


衣笠「ぐっ...このっ!」グルッ!


キィィィ!!


ドガァァ!!


負けじと衣笠も車体をぶつける


逃げ道のない一本道

お互いに車体をぶつけ、激しいカーチェイスを繰り広げる


青葉「正気なんですかあの車!?」


衣笠「そんな訳ないでしょ!」


衣笠「確実に...私達を殺しにきてる...!」


一同「っ!」


ダァン!!


衣笠「っ!」キィィィィ!!


衣笠「くっ!このままじゃ防戦一方よ!」


衣笠「何か...何か打つ手は...!」


ミューロック「打つ手....」


サラサラ...


ミューロック「っ!」


手から溢れ落ちる砂を見て閃く


ミューロック「衣笠さん!スピードを上げて!」


衣笠「えっ?」


ミューロック「言いからスピードを!」ギッ!


青葉「っ!」(目つきが変わった...!?)


衣笠「え、えぇ!」グッ...!


ブォォォン!!


アクセルを全開で踏み4Runnerと距離をとる


??「何だ...急に加速した!?」


??「追え!奴らを逃がすな!」


逃がすまいと4Runnerも追走する

だが出遅れたのもあり中々RX-8に追い付けない


ミューロック「衣笠さん!もっと!」 


衣笠 ブォォォン!!


青葉「ミュ、ミューロックさん何を!?」


ミューロック「一矢報います!賭けですが...」


青葉「えっ...?」


衣笠「180キロ...これが限界よ!」


ミューロック「っ...」チラッ...


4Runnerとの車間距離は15M...


ミューロック (いける...!)


ミューロック「衣笠さん!あの車の進路を塞いで!!」


衣笠「塞ぐ!?」


ミューロック「hurriedly!!ここしかチャンスがない!」


青葉・衣笠「っ!」


衣笠「わ、分かったわ!」ギッ...


ミューロック カチャ....クルッ...


青葉「えっミューロックさん!?」


シートベルトを外し右腕に巻き付ける


衣笠「いくわよ!!」グルッ!!


サイドブレーキやブレーキングを使用しドリフト気味に4Runnerの進路を塞ぐ


??「っ!?」


ミューロック ガチャ!


青葉「なっ!?」


塞ぐのと同時にドアを開く


ミューロック バッ!


左手を迫ってくる4Runnerに向ける  


ミューロック サァァァ...


砂が左手に集合していき球体のようなものが生成される


青葉・衣笠「っ!」


??「何だ何して...」


??「構うな!引き殺せ!!」


??「あ、あぁ!」ブォォォン!!


ミューロック「...」サァァァ!


ミューロック「はぁぁ!!」ドグォォォン!!


青葉・衣笠「っ!?」


??「っ!?」


凄まじい速度で球体が放たれ


バジュ!!


着弾した瞬間、球体が破裂しフロントガラスが砂で覆われる


??「何っ!?み、見え!?」キィィィィィィィ!!


視界が遮断され完全にコントロールを失う


??「ぐわぁ!!」ズガァァァン!!


バランスを崩し激しく横転する


ドガドガドカドガァァァア!!


何度も車体が転がりRX-8を横切って壁に激突した


パラパラ....


横転時に割れた窓ガラスが落ちる


青葉「えぇ....」


衣笠「嘘でしょ....」


衝撃的な映像を目の当たりにし、唖然とする


ミューロック「ふぅっ....」(いけた....)


衣笠「ミュ、ミューロックさん今のどうやって...」


ミューロック「砂を扱える...」


衣笠・青葉「えっ?」


ミューロック「私の周りにはいつもこの砂が付きまとっています...生きたように意のままに操れるんです...」


ミューロック「だからこれを応用すれば一矢報いることが出来るんじゃないかと思ったんです」


青葉「それであれを....」


衣笠 (うっそ....)


咄嗟の判断力と応用力、そしてまるで魔法のように砂を操る姿に二人は感服する


青葉「っ!そ、それよりも早くあの車を確認しないと!」


我に返り扉を開け、激しく損傷した4Runnerに近づく


衣笠「一体なんなの...」


ミューロック「誰が....」


ガチャ....


一同「っ!」


??「ぐっ....」


数人のフード付きの黒服を着た男達が出てくる   


青葉「貴方達は....」


??「このっ!」ダァン!!


青葉「うわっ!?」カシュン!


間一髪で弾丸を避ける


衣笠「青葉!?」


カチャ...


ミューロック「っ!伏せて衣笠さん!」ガバッ!


ダァン!ダァン!


ミューロック バザッ!!


ザシュ...


??「何!?」


砂の壁を作り弾丸を防ぐ


ミューロック「はぁ!」ブォン!!


再度、砂の球体を生成しフード男にぶつける


??「ぐあっ!?」ドガァッ!!


??「っ!?」


腹に直撃し横転した4Runnerまで吹っ飛ばされる


??「貴様!!」カチャ!!


ミューロック「っ!」


一進一退の攻防を繰り広げていたその時...


憲兵「動くな!!」


一同「っ!」


??「っ!」


振り替えるといつの間にか軍用車数台が自分達がカーチェイスを行った道に止まっており黒服達に憲兵達が銃を向けていた

そしてそこには...


獅子丸「....」


青葉「っ!獅子丸大将!」


??「お、おいまずいぞ!あれって獅子丸大将じゃねぇか!?」


??「ぐっ...こうなったら!」チャ....カシュン...!


ナイフを取り出し給油部分に穴を開けガソリンが漏れる


??「逃げるぞ!」


??「あぁ!」ダッ!


憲兵達「っ!待て!!」


?? バァン!


4Runner ボッ....


ミューロック「っ!伏せて!」


4Runner ドガァァァァァン!!!


一同「うわっ!?」


獅子丸「っ!」


弾丸が着弾した瞬間、轟音と共に激しく爆発する


憲兵長「ぐっ!追え!」


憲兵 ダッ!!


衣笠「ば、爆発した....?」


獅子丸「大丈夫かい君達!?」


衣笠「っ!は、はい...」 


青葉「何故ここに....」


獅子丸「通信室から連絡があってな、君達を乗せた車に謎の車が接触していると...」


青葉「だからここへ...」


獅子丸「あぁ....」


獅子丸「憲兵長」


憲兵長「はい!」


獅子丸「大至急あの男二人の捜索を開始してくれ」


憲兵長「はっ!」ビシッ!


敬礼をした後、憲兵達を連れてフード男が逃げたと思われるルートを進む


獅子丸「ふぅっ...」


獅子丸「そういえば何故君達はここへ?」


一同「えっ?」


獅子丸「何故ここの地下トンネルから出ようとしたのかね?通常の出口があるというのに...」


衣笠「えっ?」 


衣笠「いや駐車場ゲートにいた憲兵から出口ルートは事故が発生して通れないからこのルートを使ってくれと言われて...」


獅子丸「っ?何を言っている?」


獅子丸「事故なんて発生しておらんぞ、ここ付近は」


一同「っ!?」


ミューロック「えっ....どういう事....」


青葉「っ!まさか...」


青葉「嘘をつかれた....」


衣笠・ミューロック「っ!」


獅子丸「嘘....?」



[chapter6: 迷走]




提督「....はっ!?ミューロック達が!?」


明石「えっ!?」


受話器を取りながら立ち上がる


提督「それで三人は!?」


提督「...あぁそうですか、分かりました...」


ガチャン...


明石「あの...提督何が?」 


提督「ミューロック達が乗車した車が何者かに襲撃されたそうだ...」


明石「襲撃!?」


提督「幸い怪我はないが...襲撃した人物は行方不明...獅子丸大将達が捜索してるらしい」


明石「そんな....」


...


2200


ー鎮守府駐車場ー


明石「....まだですかね...」


手を無意味に触りながら緊張を抑える


提督「連絡だともうこちらに向かってるらしいが....」


ブロロロロ....


提督・明石「っ!」


一台の乗用車が提督達の目の前に止まる


ガチャ...


提督「っ!皆!」


青葉「あっ司令官!」


提督「お前ら大丈夫か!?襲われたって...」


衣笠「あぁそれなら大丈夫よ、ミューロックさんのおかげで何とかなったわ、車は破損してしまったけど...」


提督 (ミューロック...?)


提督「車は大丈夫だが...ミューロックが襲撃を退けたのか?」


ミューロック「はい、少し力を使って...」サラサラ...


砂を見せ状況を考察させる


提督「あぁそういうことか...」


憲兵「遅れてしまい申し訳ごさいません、少し聴取などをしていたので...」 


申し訳なさそうに頭を下げ話す 


提督「いえいえ大丈夫ですよ、三人が無事に戻ってくれただけで本望です」  


憲兵「では私達はこれで...」バンッ...


提督「はい、ありがとうございました」


ブロロロ....


明石「ふぅっ....とりあえず戻りますか」


提督「あぁそうだな...」


ー執務室ー


三人は調子が安らいだのを機に全ての経緯を話す

黒ケースと技術者の自殺...謎の襲撃....

不可解なことが立て続けに起こったことも...


提督「そうか...」


衣笠「散々な一日よ....」


青葉「それと資料のことなんですけど」スッ...


数個のファイルそして、黒いケースを出す


提督「それがミューロックの情報なのか?」


青葉「はい、まだ可能性の範囲ですが...」


ミューロック「それにこれに関しては...」カチッ...


ブォン...


提督「うおっ!?」


ミューロック「この黒ケース、どうやら鍵やロックするものがなく、ただこの写真が流れるだけだそうです...」


提督「この写真が...」


明石「海を写したようなものですね...」


ミューロック「恐らく私に関係する可能性があるので持ち帰りましたが...解除方法は分かりません」


青葉「それと...襲撃などがあったので、貸し出し期間は本来一週間でしたが二日に縮められました...」


提督「二日!?」


青葉「安全を考慮してとのこと...身の危険もあるため長くは貸せないと獅子丸大将が...」


提督「マジか...」(二日...)


あと二日...時間にすると48時間の間にこのファイルとミューロックの関連性...そして黒ケースの解除と二つの関連性を示さなければならない


明石「さてっ...じゃあどうします?早速調べますか?」


青葉「いえ、今日は休みましょう」


一同「えっ!?」


思いがけない発言に一同が驚愕する


衣笠「や、休む!?」


ミューロック「ちょ、ちょっと青葉さん!?私達に休む暇は...!」


青葉「じゃぁその疲労した状態で調べますか?それじゃかえって気力を無駄に消費するだけですよ」


ミューロック「つ、疲れてなんか...!」


青葉「足」


ミューロック「えっ?」


青葉「たいぶ震えてますよ?」


ミューロック「っ!」


心身への連続したストレスによって彼女の体は無意識にSOSを出していた


青葉「衣笠も、手が震えてる」


衣笠「っ!」


青葉「一秒でも早く真相にたどり着きたいのは分かります、けどそれは自分の首を絞めることにもなる」


青葉「急がば回れ、いち早く調べることが最善の方法とは限りませんよ」


衣笠・ミューロック「....」


提督「...そうだな」


衣笠・ミューロック「っ!」


提督「確かに今日は三人にとって波乱続きの日だったと思う、だから今日はゆっくり休んでくれ、入渠も用意してあるからさ」


衣笠「けど...」


提督「大丈夫、お前達が休んでいる間、俺がある程度は目を通しておくから」


衣笠「....分かった」


衣笠「二人の言う通り今日は休む...」


ミューロック「衣笠さん...」


青葉「無理はいけないですよ?やる時はやる、休む時は休む、そうしないと体調を崩してしまいます」


ミューロック「っ...!」


ミューロック「...そうですね...体調なんて崩したら元もこうもない...」 


青葉「よしっ!それじゃあ早速入渠に行きましょう!」


衣笠「ついてきてミューロックさん」


ミューロック「あっはい!」ダッ!


提督「よしっ...俺もやるか...」 


明石「提督、私も手伝いますよ」


提督「えっいいのか?」


明石「はい、三人があんなに苦労してるというのに見たままではいられません!」


提督「そうか...」


ー入渠ー


ザブゥン....


一同「ふぅぅぅ....」


シャワーを浴び三人は深い息と共に大浴場へ入る


青葉「いやぁ生き返りますね~♪」


衣笠「ほんとに...」


衣笠「ってあれ?ミューロックさんお風呂大丈夫なの?砂とか...」


ミューロック「あぁ大丈夫ですよ、どうやら砂が勝手に発生するのは海に触れる時だけでこういうものには特に問題ないようです」


衣笠「良かった...」


青葉 (人口的なものには問題なく触れられるんですよね...)


青葉 (やはり海限定で...)


心地よい風呂に浸かりながら思考を整理する


衣笠「青葉...」トントン...


青葉「ん?」


だが衣笠の小声での呼び掛けにより一旦思考を止める


衣笠「大きいよね...」


青葉「大きい?」


衣笠「ほらっ...」チラッ...


青葉「えっ?....おぉ...」


水面から浮かび出る二つの綺麗な球体に釘付けになる


ミューロック「....っ?」


青葉 (これがアメリカンボディ...)


衣笠 (戦艦に勝るとも劣らずね...)


ミューロック「あの...二人共...?」(どこ見て...)


疲れを流しながら束の間の休息を取る

そして....


ー翌日ー


0700


ミューロック「っん~~~!」


背筋を伸ばし眠気を飛ばす


ミューロック「はぁ...よしっ...!」


青葉「フフッ...気合い入ってますね」


衣笠「ミューロックさんおはよう!」


ミューロック「あっ青葉さん、衣笠さん、おはようございます」ニコッ


青葉「さぁ...やりますか...」


衣笠「絶対見つけてやるわ!」


ミューロック「よしっ...行きましょう...!」


喝を入れ執務室へ歩き出す


...


ー執務室ー


大嶺誠 (34)

大本営直属の建造に関わる技術者顧問

昔から優秀な腕を持ち、大本営からの評価も高い

その反面、建造に異常なほどの熱意を向けており、周りからは変人と思われることもあった

だが二週間前、建造装置を無断で使用し、逃亡

目撃情報から新幹線で移動したと思われる

捜索の末、福岡の廃工場で遺体として発見、周りには黒いアタッシュケースがあるだけであった

無断使用の動機は建造への異常な熱意の暴走とされている


提督「...昨日資料を読み込んでその技術者の重要な要点をまとめたのがこんな感じだ」


青葉「なるほど...ずいぶんと期待されていた技術者のようですね」


ミューロック「.....っ?」ブツッ....


頭に何かが走る


青葉「ミューロックさん?」


ミューロック「あっなんでも...」


青葉「っ?」


提督「上も昇進を考えていて、彼にとって絶頂期ともいえる状況下で軍法でもかなり上の罰にあたる建造装置の無断使用をしてしまい、失踪だと...」


衣笠「そんな人生を棒に振るようなことを何で...いくら建造に熱意があったとはいえ...」


提督「そこまでは分からない...」


提督「獅子丸大将は今も襲撃犯、そして繋がっている人物の特定を急いでるそうだ」


青葉「特定出来るんですか?」


提督「あぁ、どうやら襲撃犯の一人の持ち物と思われる破損したスマホが見つかったらしい」


衣笠「っ!じゃあそれがあれば!」


明石「いえそれだけで解決とはいきません、復元出来るかすら不明ですから...」


衣笠「そう...」


微かに見えた光の不安定さに三人は肩を落とす


提督「となるとやはり...」チラッ...


提督「これだな...」ガチャ...


机の上に例のケースを置く


青葉「やはり鍵を握るのはそれですか...」


提督「恐らくな...確証とは言えないが...」


衣笠「よしっじゃあそのケースを開けましょう!」


ミューロック「どうやって?」


衣笠「それは...やりながら考える...」


青葉 (はぁっ.....)


青葉「分かりました、司令官、空き部屋ってありますか?」


提督「空き部屋か?それなら俺の自室のリビングなら大丈夫だぞ」


青葉「ありがとうごさいます、青葉達はそこでこのパンドラの箱の解除方法を探りたいと思います」


ー提督の自室ー


青葉「とは言ったものの...」


ケースを凝視しながら頭を抱える


青葉「どうすればいいか...」


衣笠「時間的に大本営に持ってく時間を含めたら...24時間ほどね」


ミューロック「それまでにこの黒ケースを開けないと....」


青葉「まぁまずは手当たり次第試してみますか...」


....


黒ケースの解除方法の模索は既に三時間経過していた


衣笠「あぁ駄目...うんともすんとも言わない...」


何処かにパスワードがあるのではないか、隠しボタンかあるのではないか、ひたすらからくりを見つける為に奔走するが、全くと言っていいほど何もない


青葉「はぁっ...何か隠されたシステムがあるわけじゃなさそうね...」


ミューロック「となると...」カチッ...


ブォン...


白い壁に海岸を撮ったであろう写真が投影される


ミューロック「やはりこれですか...」


青葉「そうなりますね」


青葉「しかし海に何の意味が...」


衣笠「まさか、ケースの解除方法が海に眠ってるとか!」


青葉「いやそれはないでしょ...」


衣笠「そうよね...」


三人「はぁ...」


光が全く見いだせない状況に肩を落とす 


ガチャ...


提督「お前ら差し入れだぞ」


青葉「っ!司令官!」


間宮のお持ち帰り弁当を手に現れる


衣笠・青葉「おぉ!」


青葉「これ間宮さんが新しく作った!」


提督「あぁお偉いさんにという理由で三人分用意させた」


ミューロック「間宮さん?」


衣笠「あぁえっと...私達の料理を作ってくれる...艦娘兼コックよ」


ミューロック「コック....」


ミューロック (だからこんないい匂いが...)


提督「それでどうだ?解除方法は」


青葉「いえまだ何も...」


提督「そうか...」


提督「あっそれと」バサッ...


ホッチキスで止められた数枚の資料を手渡す


青葉「それは?」


提督「獅子丸大将から、あの技術者に深い関わりがある者をピックアップしたらしい」


青葉「ほぉほぉ...」ペラッ...


そこには三人の海軍関係者の詳細が記されていた


大道 礼二(52)

中将の階級で海軍でも上の存在

技術チームの監督、そして海軍士官養成所の校長を勤める

大嶺 誠との関係は良好だったとの証言あり


橘 一樹(35)

技術者チーム所属、大嶺 誠の同僚

優秀な腕を持ち建造装置製作の主力

関係は良好だったと思われる


桜木 紗理奈(28)

技術者チーム所属、大嶺 誠の部下

技術者チーム最年少であり誠に憧れを抱く

深い関係はないと思われ、関係は同じく良好


提督「この三人が例の技術者と深い関わりがあるそうだ」 


衣笠「どれも関係は良好...怪しい雰囲気の人はいないわね...」


提督「破損した携帯の修復が出来ればかなり絞れると思うが....しかしそれだけじゃ証拠不十分だと」


提督「大本営もやはりそれが一番だとも...」


青葉「ケースですか...」


青葉「あれっそういえば司令官、この技術者って家族とかいないんですか?」


提督「家族?あぁそれは...」


言いずらそうに口を噛む


提督「彼には妻と4歳の娘がいたが...事故で亡くなったらしい...」


青葉・衣笠「えっ...」


ミューロック「....っ!?」ブツン...


提督「二年前に車の事故に巻き込まれたらさく...彼は助かったが他は...それに証拠不十分で犯人も見つかっていないと...」


青葉「そんな...」


ミューロック「ぐっ!?」ブツン...!


衣笠「えっ?」クルッ...


衣笠「っ!?ミューロックさん!?」


提督・青葉「っ!?」 


頭を左手で抑え苦痛の声を上げる


ミューロック「っは!」


ミューロック「はぁっ...はぁっ...」


衣笠「ちょミューロックさん大丈夫!?」


提督「ミューロック!?」


ミューロック「...は、はい...何か頭に痛みが走って....」


青葉「痛み...?」


青葉 (っ!まさかフラッシュバック...)


青葉 (家族に関係が....?)


....


青葉 (海軍...家族...)


青葉 (はぁっ...掴めない...)


更に6時間が経過し、タイムリミットは着実に迫っていた


衣笠「はぁっ...日が暮れてきた...」


青葉「まだ解除方法はゼロ...」


青葉「何を見落としてる...」


青葉 (ミューロックさんのフラッシュバックの原因も分かりませんし...どうすれば...)


青葉「...」カチッ...


ブォン...


青葉「これに何の意味が...」


衣笠「横から見たら何か変わるとか...」


衣笠「ごめん、何もなかった...」


青葉「っ...!」


青葉 (視点を変える...?)


衣笠「絶対にこの写真にヒントがあるはず何だけど....」


ミューロック「海...Sea...」


青葉「っ!」


からくりのないアタッシュケース...

投影される謎の海の画像...

Sea...

視点を変える...


青葉「はっ!」


青葉「分かった!!」


衣笠・ミューロック「えっ!?」


衣笠「分かったの!?一体答えは何なの!?」


食いつくように青葉に質問責めをする


青葉「このケースのヒント...それはあれ!」ビシッ!


投影された海の画像をさす


ミューロック「あれが?」


青葉「だけど、見るのはそれじゃない!」


衣笠・ミューロック「えっ!?」


青葉「見る必要があるのは...こっち...」


黒ケースに目をやる


衣笠「黒ケース?でもそれに目をやるって...」


青葉「何故パスワードの解除方法がなかったのか...何故一つも仕掛けのようなものが見当たらなかったのか...」


青葉「それはただ一つ...この投影部分こそ、解除方法だったから...」


衣笠「これが!?」


青葉「そして...海の画像の意味...」


青葉「海は英語にするとSea...他に同じ発音をするものは?」


ミューロック「同じ発音...」


ミューロック「Sea....See...」


ミューロック「っ!見る!」


青葉「そう!それです!」


青葉「つまり、これはこの投影部分に目を当てろと言うことです!!」


衣笠「それなら早速!」


青葉「ミューロックさん、この部分に目を当ててもらえませんか?」


ミューロック「ここに...分かりました...!」


一度投影部分を閉じミューロックを投影部分の目の前に移動させる


青葉「いいですかミューロックさん...」


ミューロック「はい...!」


パカッ...


ジィィィ!


ミューロック「っ!!」


Retina authentication ...


青葉・衣笠「っ!」


ミューロックの右目に緑の光が当たり謎の音声がケースから流れる

それと同時に...


ミューロック「がっ!?」ブツン!!


....


....ロック....

逃げろ....!


ミューロック (はぁっ!はぁっ!)

 

お前は艦娘...

自由に生きろ....

すまなかった....


ミューロック (はぁっ!はぁっ!)


マコト...無事でいて!

違う...娘だ...


ミューロック (はぁっ!はぁっ!)


逃げるんだ....

私が...絶対...!



6h6r59965bgj16rwv199rzzr9r964zrzwr

6i6r6p6245¥4"i5q6rSEA3i66rzpzp9

.@5r3r6rz6rMAKOTO3r6rzzrs

KANrrr61jr6r@69rw@MUSUME3ir66rgmw8s


ミューロック (っ....!!)





















































ミューロック....





































....


Authentication complete ... unlock case...


ガチャ....


青葉・衣笠「っ!!」


青葉「開いた....」


衣笠「やった....!」


青葉・衣笠「やったぁぁぁ!!」


歓喜に湧き抱擁しあう


衣笠「凄い青葉!解除方法を見つけるなんて!」


青葉「衣笠とミューロックさんのおかげだよ!」


青葉「ねっミューロックさん!」


ミューロック ガクッ...


青葉・衣笠「えっ...?」


頭を抱え、意識が朦朧としたようにふらつく


ミューロック ドサッ...


青葉・衣笠「っ!?」