あかり「誰もごらく部に来ないよぉ」
キャラ崩壊します
西日差し込む旧茶道部室
あかり「結局今日はずっとあかり一人だったよぉ・・・。」
あかり「ミラクるん読むのも飽きちゃったなあ・・・。」
あかり「もう遅いし、そろそろ帰ろう・・・。」
あかり「いてて、ずっと座ってたから、足が痺れちゃったよぉ」
あかり「あっ、ジーンズに穴が空いてる!」
あかり「帰ったらお姉ちゃんに縫ってもらおうっと」
あかり「今日の夕食は何かなあ・・・。」
*
翌朝、あかりの家
あかり「行ってきまーす」
あかね「行ってらっしゃい。あ、あかり」
あかり「何?」
あかね「大学は楽しい?もう慣れた?」
あかり「うん、とっても楽しいよ。みんなあかりに優しいし」
あかね「それは良かったわ。今日もお勉強頑張ってね」
あかり「うん、行ってきまぁす」
あかり家を出る
あかり「はぁ・・・今日もまた嘘ついちゃた・・・。」
あかり「今日もまたどうせ何もしない一日なのに・・・。」
あかり「あかりってとっても悪い子・・・。」
旧七森中前
あかり「またここに来てしまった・・・。」
あかり「誰もいない・・・。」
旧茶道部室
あかり「アッカリーン!ゆるゆり、はっじまっるよぉ~」
あかり「あかりもやっと派手な登場が出来るようになったよぉ」
あかり「・・・・・・・・・」
あかり「ねえ京子ちゃん?結衣ちゃんいないの?」
あかり「押し入れかなぁ?」ガラッ
あかり「・・・・・・・・・」
あかり「そうだ、今日は生徒会に遊びに行ってこよう!」
旧生徒会室
あかり「櫻子ちゃーん、遊びに来たよー!」
あかり「向日葵ちゃんも!」
あかり「・・・・・・・・・・」
あかり「生徒会室は遊び場じゃない?分かってますって杉浦先輩」
あかり「あぁもう机の上にこんなにホコリたまっちゃって、ちゃんと掃除しなきゃ駄目だよぉ」
あかり「・・・・・・・・・・」
再び旧茶道部室
あかり「やっぱりごらく部のみんなと過ごしたここが一番だよぉ」
あかり「・・・・・・・・・・・」
あかり「あ、京子ちゃんが持って帰り忘れたミラクるん最終巻だぁ」
あかり「もう何百回と読んだけど、また読もうっと」
あかり「やっぱりミラクるんは何回読んでも面白いよねぇ」
あかり「・・・・・・・・・・」
8時間後
あかり「そろそろ下校時刻だね・・・帰らないと・・・。」
*
路上
結衣「富山に戻ってくるのは久しぶりだなぁ」
結衣「だいぶ寂れちゃった感はあるけど、結構昔の雰囲気残ってるなあ」
結衣「まあ、誰かに会うわけでもないけど、とりあえずこの景色が見られて良かった」
結衣「そろそろ帰ろうかな」
結衣「んっあれは・・・」
向こうからあかりが歩いてくる
結衣「おーい、あかりー」
あかり「!結・・・衣・・・ちゃ・・・!」
あかり、結衣を見るなり逃走
結衣「あっちょっあかり!逃げること・・・。」
結衣(あかり、やっぱり私のこと嫌いになってたか・・・。)
結衣(そりゃそうだよな、私達、あかりを裏切ったようなもんだよな・・・。)
あかりを追いかけているうちに、旧七森中にたどり着いた結衣
結衣(少子化で廃校になってしまった母校・・・。)
結衣(わたしたちのごらく部・・・。あの頃は四人みんな揃ってて、楽しかったな・・・。)
結衣(まず京子が消えた・・・。)
結衣(あかりが中3の時、東京の進学校に合格した京子はこの地を離れた・・・。)
結衣(でもその翌年、私が入った地元の高校にあかりとちなつも入学して、まだ三人は一緒にいられると思った)
結衣(しかしちなつは高1の途中で東京の芸術系の学校に転校していなくなり・・・。)
結衣(最後に私も高3、つまりあかりが高2の時に芸能事務所にスカウトされ、本社のある東京に引っ越した・・・。)
結衣(それから2年、あかりは18歳の筈だ)
結衣(私達はあかりを独りぼっちにしてしまったんだ・・・。)
*
旧茶道部室
結衣(懐かしいな・・・入ってみよう)
結衣が旧茶道部室に入ると、そこにはあかりがいた
結衣「!あかり・・・。」
あかり「結衣ちゃん・・・来ないで・・・。」
結衣「あかり・・・ごめん、私のこと、嫌いになっちゃったよね・・・。」
あかり「・・・・・・・・・・」
結衣「でも、勝手かもしれないけど、これだけは分かってほしい!私は今でもあかりのことが好きだから。かけがえのない友達だと思ってるから!」
あかり「・・・・・・・・・・・」
結衣「・・・じゃあ、私は帰るね・・・。」
あかり「・・・・・・結衣ちゃんは悪くないよ、悪いのはあかり」
結衣「えっ?」
あかり「あかり、結衣ちゃんに友達だなんて言われる資格無いよぉ。だってあかり、すっごく悪い子、醜い子なんだもん」
結衣「どっ、どういうこと?あかりは良い子ゆるい子じゃないか!」
あかり「そんなことない、だってあかり今、なんにもしてないんだもん・・・。」
結衣「なんにもって・・・?」
あかり「大学にも行ってない。浪人生してるわけでもない。ただ毎日この廃校跡地の部室に来て、ボーッとして、ミラクるん読んで帰るだけ。お姉ちゃんにも嘘をつき続けている。そんなあかりと、誰もお話ししたくないよね・・・。」
結衣「どうしてそんな・・・。」
あかり「最初は高3の春だった。結衣ちゃんがいなくなってから我慢してたものが崩れたのかな、あかりはある日突然高校に行きたくなくなった。七森中が廃校になったって聞いてたから、ふらーっとここに来て、一日中ぼーっとしていた。昔のことを思い出すのが凄く楽しかった。そうすると益々今を生きるのが嫌になった。それから毎日あかりはここに来た。この部屋の扉を開ける瞬間は凄く快感なんだ。そしてそんな生活がやめられなくなっていった。」
結衣「・・・。」
あかり「地元の大学の入試の日も、緊張した面持ちで歩いていく受験生を横目で見ながらあかりはここへ来た。とても悔しかったけど、どうすることも出来なかった。3月になっても、卒業なんて勿論出来やしない。全然登校しないからそのうち退学になっちゃった・・・。」
結衣「あかり・・・。」
あかり「部室通いは皆勤賞なんだけどね、あはは・・・。」
結衣「あかり・・・実は・・・。」
あかり「ごめんね結衣ちゃん。こんなこと、結衣ちゃんには言わない方が良かったかも。結衣ちゃんはあかりのことなんか気にしないで、自分の人生を歩んでね」
結衣「いいや、実は私も、おんなじような感じなんだ・・・。」
あかり「え?」
結衣「芸能界に入ったはいいけど、全然売れなくて・・・。仕事が回ってこなくて、働いてる日よりも一日中家にいる日の方が圧倒的に多い生活だった・・・。」
あかり「そんな・・・結衣ちゃんが・・・。」
結衣「常に貧乏で、京子にお金を借りたこともある。他人の奨学金に手をつけるなんて、最低だよね、私・・・。」
あかり「・・・・・・。」
結衣「・・・・・・。」
あかり「あかり、これからどうすればいいのかな・・・。」
結衣「あかり」
あかり「何?」
結衣「電車に乗ろう」
あかり「え?」
結衣、あかりの手を取って走り出す。学校を出、田んぼに挟まれた一本道を走り、二人は駅に着いた。丁度来ていた電車に結衣とあかりは飛び乗った。
*
あかり「結衣ちゃん、電車になんか乗って、どうするの?」
扉が閉まり、電車が動き出す。
結衣「逃げ出すんだ、こんな町から。リセットしよう、人生を。」
あかり「逃げ出すってどういうこと?もうここには戻ってこないの?」
結衣「ああ、二人だけで生きていくんだ。今までの全てを捨てて。」
あかり「捨ててって、あかりにはおうちもお姉ちゃんもいるし、結衣ちゃんだってお仕事あるんでしょ?」
結衣「そんなものは、どうでもいいさ」
あかり「・・・・・・・・・。」
結衣「あかりの笑顔が取り戻せるなら安いもんだよ」
あかり「・・・・そう・・・・・だね」
結衣「・・・・・・・・。」
あかり「・・・電車でどこまで行くの?」
結衣「さあ・・・。降りたくなったら降りればいいよ」
それきり結衣は黙ってしまった
あかり(これからどうやって生きていくんだろう・・・。)
あかり(うまくいくのかな・・・。)
あかり(でも、もうあかりは独りじゃないんだね)
あかり(それに、結衣ちゃんは全てを捨ててって言ってたけど、ごらく部のみんなとの思い出はいつまでもなくならないよ・・・。)
あかり「またいつか、京子ちゃんやちなつちゃんに会えるかなあ」
聞こえないのか、結衣は黙ったままだった。電車の進む音だけが響いていた。
終
このSSへのコメント